1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月二十日(火曜日)
午前九時五十九分開会
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本日の会議に付した事件
○社会福祉事業法案(内閣提出)
○結核予防法案(内閣送付)
○予防接種法の一部を改正する法律案
(内閣送付)
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001・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それでは厚生委員会をこれから開くことにいたします。
昨日に続きまして社会福祉事業法案を議題にいたします。昨日に続いて今日は御質問のところを皆さんからおつしやつて頂くことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/1
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002・有馬英二
○有馬英二君 私は民主党を代表いたしまして、この法案の審議について、もう少しく愼重に本案を審議すべきものである、委員長におかれましては、その点御考慮煩わしたいということを申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/2
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003・石原幹市郎
○石原幹市郎君 それでは二、三御質問申上げますが、昨日の話合いではできるだけ今日上げる。できるだけではない、今日上げるということになつておりますので、簡単に質問申上げますが、答弁も極めて簡単で結構であります。
先ず第一は、この法律案を円滑に施行して行くには、社会福祉主事に適任者を得て行かなければならないと思いますが、人を充実することが、立派な人を得ることが第一であると思いますが、今度は法律で相当資格も制限されて、又いわゆる人員の数等も法定されることになつておりますので、こういう資格の人が果してこういうふうに十分得られるかどうか、又こういう人の指導、訓練その他についてどういう準備をされておるか、そういうことについて簡単に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/3
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004・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) その主事の人選につきましては、お説の通りに極めて重要なことでありますので、この資格を持つております者をできるだけ充実いたしたいと考えまして、昭和二十五年度から職員の研修をいたしまして、その研修を終了いたしました者がこの資格を得られるようにいたしております。なおそのほかに各地区ごとに厚生大臣が一定の資格、内容を審査いたしました講習会を開催いたしまして、その開催する講習会を指定いたしまして、それを終了いたしました者、それを卒業いたしました者が主事の資格があるようにいたしております。おおむねそれで以て本年度と明年度、二カ年度におきまして養成をいたしました者で一応この職員は充実されるものというふうに考えております。なおこれらの職員の質の向上という点につきましては、厳格な訓練、指導、監督というものを以ちまして十分達成しますと同時に、なおその後におきますところの研修制度を十分運用いたしまして、遺憾ないようにいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/4
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005・石原幹市郎
○石原幹市郎君 今後人の訓練、人選その他について十分留意してもらいたいと思います。次は、やはりこの事業の裏付けとなりまする財政措置でありますが、こういう事業関係には平衡交付金、国庫補助、その他が中心になるようでありますが、こういう面について、例えば平衡交付金なら平衡交付金で出る場合、これが平衡交付金がこの事業に遺憾なくうまく廻るような話合いなり、仕組になつておるかどうか。そういう点について、今まで財政当局或いは地方自治庁等と折衝されたことについての主なるところをお話願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/5
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006・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 本法案の施行につきまして、直ちに要りまする費用は、社会福祉主事、この費用と、福祉主事に関する事務所の費用が勿論中心であると存じますが、これらにつきましては、大蔵当局並びに地方財政委員会と話合いをいたしまして、その両者の意見の一致した金額の範囲内で以て、明年度におきましては、これらの人員組織の整備ができるように話合いが付いておるわけであります。従いまして本法案の閣議上程をいたしまするにつきましては、大蔵省及び地方財政委員会の所管の大臣、これらが共同して整備いたしたということに相成つております。なお指導、監督、訓練の経費につきましては、国におきまして相当補助をいたすことにいたしております。又福祉主事に関する事務所につきましては、勿論重要な事務であります生活保護に関する事務につきましては、明年度よりそれに必要な事務費を地方に与えまして、その適正な運営をいたすように明年度から図つております。この金額が三億余円、国庫補助から三億円、合計して六億円ばかりの経費がこれに使われることになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/6
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007・石原幹市郎
○石原幹市郎君 福祉主事の待遇面なんかどういうふうになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/7
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008・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) この待遇につきましては、地方の事務吏員、技術吏員、各府県の事務吏員、技術吏員と同一でございまして、それらの中でそれぞれの教育程度、或いは事務の熟練度というものによりまして、定められましたところの、何んといいますか、職級によりまして、その待遇をいたすようにいたしてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/8
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009・石原幹市郎
○石原幹市郎君 この福祉主義はやはり相当の教育、教養を要するということになつておりますし、職掌柄からいいましても、これはやはり相当の待遇を与えまして、こういう人に間違いのないようにやはりして行かなければならないと思います。福祉主事の待遇というようなことにつきまして、今後も一段と留意を払つてもらいたいと思います。それから平衡交附金等で出て行きます費用が、ともすると地方においてこういう方面があと廻しになるきらいが従来はあつたのでありますが、今後はそういうことは少いと思います。そういう点につきまして、まあ地方自治庁なり地方庁のほうと十分話合いされておるかどうか、そういう点についてちよつと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/9
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010・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 技術専任の職員を指導されます上におきましては、地方自治体として最も経済的にやりますためには、この組織をとる以外には現在のところ方法がないということは、地方財政委員会並びに厚生省の間において、意見が一致いたしております。従いまして中央におきましては、各省関係庁の間の話合いは十分ついております。従いまして地方に対しましても、この面につきましては十分指導いたしまして、その点に遺憾のないようにいたしたいと思いまするし、又市及び府県におきましては逐次その方向に向いまして、すでにその整備をなしつつあるという状況でございます。大体昭和二十五年度におきまして一部分人の整備をいたしたのでございますが、現在におきましては大体所期の目的に近い状況に達しております。従いまして、二十六年度におきましては、この目標に達することは可能であると思いますし、なおこの組織を十分活かしませんと、生活保護費約二百五十億の経費が明年度考えられておるのでございますが、この経費が著しく濫費されるという虞れが多分にありますので、その点につきましては、地方といたしましてもこの組織を整備いたしまして、財政支出が放漫になるということは避けるようにいたすだろうと考えられますので、この職員の充実は十分いたすであろうというふうに我々も考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/10
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011・石原幹市郎
○石原幹市郎君 次はこの第七十三条に関係する問題でありまするが、この第七十三条の第三号で、「当該共同募金の配分を受ける者が役員又は評議員に含まれないこと。」という一項があるのであります。これは立案された趣旨はいろいろある思うのでありまするが、実際問題として、この共同募金の配分を受けるいろいろの福祉事業をやつておる大きな団体とか法人その他から、この募金会に一人も役員が入れないと、こういうふうなことは実際問題として、私は今後募金会の運営その他に不都合が起るのじやないだろうかということについて考えられますので、この配分を受ける者が余りにたくさん役員になつて、この募金会の運営を支配してしまうということになつても、これは又弊害があるだろうと思いますが、何らかこの数の上で制限をするというようなことでもして、若干の者がやはりこの募金会運営に関係できるふうにしたほうが私はいいのじやないかと思うのです。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/11
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012・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) この点につきましては、いろいろ問題があるわけでございまして、共同募金の配分を受けます者が役員、評議員に含まれておるということによりまして、共同募金の配分についてとやかくの議論がされるということが従来多々ございましたような関係からいたしまして、一応そういう利害関係の非常に密接なものにつきましては、これから排除するほうが、共同募金の配分につきましての公正を期する上におきまして適当であろうというふうに考えまして、この条項を設けたのでございます。勿論これによりまして、社会事業界の意向が共同募金の配分に反映しないというようなことになりましては困るわけでございまするけれども、その点につきましては、又社会福祉協議会というものが十分この方面におきまする意向を総合いたしまして、各地方におきまする社、会福祉事業の計画及び今後どういうふうな点を直さなければならんか、どの点に金が足りないかということにつきまして検討いたしまして、この意見に従いまして共同募金会におきましては配分するということになりますので、社会事業全体が入つた社会福祉協議会というものがこの点に対しまして力を持つということになりまして、この点が社会事業界の実情を反映しないという非難を避け得るというふうに考えましたので、その両方をうまく使いまして、そうしてこれをうまく利用したいというふうに考えておる次第であります。勿論やりました結果、その点がうまく行かないという場合におきましては、又考慮することが必要じやなかろうかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/12
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013・石原幹市郎
○石原幹市郎君 この問題については、社会福祉事業関係者のほうでも、或いは地方でも相当意見があるようであります。只今社会局長から今後これをやつて見て、運営がうまく行かないようであれば、これを考慮してもよろしいという意味の御発言があつたのでありますが、これは十分その社会福祉事業団体関係者並びに地方輿論の声を聞かれまして、今後この点については更に検討を加えられまして、できれば適当の機会に改正されるような措置をとつて貰つたらどうかということを、私この際要望しておきます。
それからその次は、第七十八条の二項でありまするが、この寄附金の配分に国及び地方公共団体が干渉してはならないということがあるのですが、これはこの前の国会で共同募金のいろいろの論議がありましたときにも、この問題はあつたのでありまするが、この趣旨はまあ行政庁が不当な干渉をやつたらいかんというような意味であろうと思うのでありますが、国又は地方公共団体が関係してはどうも悪いというようなその考え方が、ちよつと私には、これまあ個人的の考え方でありますが、解せないのでありますが、この条項の考え方について一言説明を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/13
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014・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) 国、地方公共団体は、具体的な寄附金の配分につきまして干渉することは、共同募金の自主性と申しまするか、自主的な運営を阻害することになりまするので、この干渉を排除する、これは個々の配分についての干渉を排除することにいたしたのであります。勿論共同募金の配分の基礎となりまするものは、その地方におきまする社会福祉事業を如何にすべきかという一つの計画によつてなされるべきものであると考えられますので、それにつきましては、社会福祉協議会というものが、それらの点につきまして十分検討いたすことに相成りまするので、これにつきまして国、地方公共団体は、これに参加いたしておりまする関係上十分な意見を述べる機会はございまするし、なおその配分につきまして、不当なる配分であるというものは七十六条の配分の計画と、それから七十九条の配分後の措置と、両方を睨み併せまするとはつきりいたしますることに相成りまするので、これらの点は適当でないというものにつきましては、一般の社会福祉法人に対しまする監督権を発動いたしまして、適当な措置を講ずることになるわけであります。従いまして個々の配分につきまして従来干渉をいたしました結果、各種の非難がございましたこと等に鑑みまして、これにつきましては特に明白にいたしたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/14
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015・石原幹市郎
○石原幹市郎君 次は、第八十一条の募金の配分を受けた者は一年間寄附を募集してはならないという規定は、これは昨日山下委員からも非常に御論議があつたのでありますが、この規定は非常に厳格に解釈するものであるか。絶対に一年間は何らの寄附をしてもいかんという趣旨であるのか。それとも大規模なものをやつちやいかんという意味であつて、それほど厳格なものではないのだろうか、そこらの点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/15
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016・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) この第八十一条の規定は、これは共同募金に対する免疫条項でございまして、共同募金をいたしまして一般大衆が共同募金に応じました際に、更にもう一度同じような趣旨の寄附金が同じところから出て来ることを防止したいという趣旨にほかならんのでありまして、従いまして或る社会事業団体に対しまする特殊の、何と申しまするか、同情を持つた人々がこれに対しまして特定の寄附金をいたしますること、或いはその会員等が金を集めますること、これらにつきましては寄附金の募集とはならないというふうに考えられます。これにつきましては第八十一条では何ら制限されない、つまり積極的に募集をしないで集まつて来るものを受け入れることは一向差支えありませんし、それからそれに対する同情者が金を持つて来ますことは一向差支えないというふうに考えております次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/16
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017・石原幹市郎
○石原幹市郎君 最後に福祉に関する事務所と地方事務所との関係でありますが、附則の第七項によつて、当分の間、相兼ねたような事務を行うことができるという規定があるのでありまするが、私はできるだけ地方事務所と福祉の事務所を相兼ねて行つたほうがいいような感じを持つのでありますが、この当分の間というのは、まあ成るべく私はこういう組織であることを希望するのでありまするが、当局のお考えを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/17
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018・木村忠二郎
○政府委員(木村忠二郎君) この辺につきましては、実際の地方の実情によりました運営ができまするようにいたしたいと考えまして、地方におきまする都道府県知事が最も適切な運営ができるようなふうにやつて参つたらよかろうと考えております。従いましてこの第七項によりまするか、七項によりませんかということは、一に地方に任せたいと思つております。従いましてこの地方の実情等によりまして分けたほうがいいというような全体的な事情がありましたならば、これは分けるようにいたすということとなると考えるのでありまして、それまでの間は当分の間兼ねるというふうに考えていいのではないかと、我々は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/18
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019・石原幹市郎
○石原幹市郎君 以上で質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/19
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020・小杉繁安
○小杉繁安君 この際休憩いたしまして懇談にしたいと思いますが、その動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/20
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021・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 小杉委員の動議が出ておりますが、皆さん御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/21
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022・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) それでは暫く休憩いたしまして懇談いたしたいと思います。
午前十時十七分懇談会に移る
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午前十一時十六分懇談会を終る発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/22
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023・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) これより引続きまして厚生委員会を開会いたします。
審議の都合上、結核予防法案を議題といたします。提案理由の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/23
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024・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 只今上程されました結核予防法案の提案理由について説明いたします。
結核が我国の国民病と言われるほどに蔓延し、その害が各個人のみならず社会全般に及んでおり、延いては国民経済にまで悪影響を与えていることは周知の事実であります。今これを数字的に見ますならば、結核の死亡者は昭和二十二年十四万六千二百十四人、同二十三年十四万五千二百五十九人、同二十四年十三万八千七百六十五人であり、人口一万に対する死亡率は、昭和二十四年一六・九でデンマークの二・八、アメリカの三・〇等に比して五倍以上に上つており、結核による直接間接の損失は極めて大きく推定して一千億円に上るとも言われているような次第であります。
この結核の予防を図るために、すでに大正八年に現行結核予防法が制定され、今日までこの法律によつて予防対策が行われていたのでありますが、この法律は何分にも三十年以前に制定されたものであり、専ら伝染の防止に重点が置かれており、医学の進歩がもたらしましたBCGの接種による発病防止、ツベルクリン反応検査、エツクス線検査による患者の早期発見及び外科手術、人工気胸術、ストレプトマイシンその他の新薬の使用等による早期治療については何ら触れていない憾みがあるのであります。政府といたしましては、現行法のこの欠点を改め、現代医学の長所を行政の面に十二分に活用すると共に、社会保障制度の一環として患者の医療費の負担を軽減し、以て結核の予防と患者に対する適正医療の普及を図り、我国の結核撲滅を期したいという意図の下に、この法案を提出いたした次第であります。
次にこの法案の内容と致しましては、第一に、最も結核にかかり易い状態にある一定範囲の国民に対して、毎年定期の健康診断を行うべきことを規定しております。この健康診断の実施義務者は、事業場、学校、児童福祉施設等集団生活をなすものについては、それぞれその集団の責任者、それ以外の一般住民のうち結核の蔓延している地区に居住する者については市町村長であります。而してこの集団のうち労働基準法、学校教育法等によつて健康診断の義務を課せられているものについては、これとの調整をはかると共に、結核対策の実体的な一元化をなし得るよう規定しております。なお、都道府県知事及び保健所を設置する市の市長に対して結核に感染しやすい職業の者、患者と同居する者等特に感染の廃れの多い対象について定期外の健康診断を随時実施する権限を与え、以て患者発見の完璧を期しております。
第二に、生後三十歳までの全国民及び集団生活を営む者に対して、毎年定期に結核の予防接種を行うべきことを規定しております。即ち定期の健康診断を行なつた場合、ツベルクリン反応が陰性又は疑陽性であつた者に対しては、同時に予防接種を行い、又健康診断の対象者以外の一般国民に対しては、市町村長が予防接種を行うことにしております。又感染の虞れの多い対象に対して定期外に予防接種がなされることも健康診断の場合と同様であります。なお、結核の予防接種の制度は、すでに現行の予防接種法で規定せられているものでありますが、これを更に実施に便ならしめるため健康診断と関連を持たせて本法案中に規定せんとするものであります。
第三に、現在現行結核予防法及び伝染病届出規則によつてなされる医師の届出の結果が、結核対策上十分に活用されていない弊を改め、居住地の保健所において患者を登録し、必要に応じて家庭訪問指導を行わせることとしております。
第四に、医療費負担の制度について申し上げます。すでに御承知のごとく、結核の治療は相当長期に亘り、従つて多大の経費を要する上に、初期においてはさしたる自覚症状がないために、とかく早期に治療することを怠り、その災禍を増大せしめる憾みがあるのであります。この対象として、結核の医療に最も著効のあるとされている医療数種を選んで、その適応症の患者に対しては公費を以て医療費の半額を負担することとし、結核の適正医療の普及を図かると共に、患者の負担軽減を行おうとするものであります。医療の種類として、差当り、胸部外科手術、人工気胸、ストレプトマイシン及びパスの投与を考えております。
第五に、結核治療対策の根幹をなす結核病床については、国の設置するもの以外についても補助を与えて、積極的に増床を行うため、厚生大臣が地方公共団体に対して結核療養所の新床及び拡充を勧告し、これに対しては国庫から二分の一の補助をすることとし、又営利を目的としない法人に対しても補助し得るように規定いたしたのであります。
本法案は以上の五点を骨子とするものでありまして、その他に、現行結核予防法と同じく医師の患家に対する指示義務、都道府県知事の行う予防措置の指示、結核を伝染させる虞れのある患者の従業禁止、入所命令の規定、これらの患者に対する医療費の公費負担等の規定を設け、又結核対策全般に関する厚生大臣の諮問機関として結核予防審議会を置くことといたしております。而してこの法律の施行について地方公共団体の支出する費用については、一定率の国庫補助を出すよう規定しております。
何とぞ愼重御審議の上、速かに、可決せられんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/24
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025・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 本法案の審議につきましては次に讓ることにいたしまして、本日は提案理由を聴取する程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんでしようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/25
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026・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御異議ないものと認めます。
次に、予防接種法の一部を改正する法律案を議題といたします。提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/26
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027・黒川武雄
○国務大臣(黒川武雄君) 只今上程されました予防接種法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を説明いたします。
予防接種法が昭和二十三年六月に制定されましてから今日に至るまで伝染病予防対策上重要な一環としてその機能を果して来たのでありますが、ただ現行法の下におきましては、定期の予防接種は必ず市町村長の行うものを受けなければならないこととなつているのであります。これは当時新らしい制度として予防接種を確実に行うため、すべて市町村長の行うものだけに限定し、体系を複雑にしない建前で規定されたものであります。併し予防接種の普及に伴いまして、市町村長のみにとどまらず、一般医師の接種をも法律上有効なものと認める改正を行い国民の便宜を図る必要があると考えられますので、この際予防接種法を改正し、従来の市町村長の行う接種のほか、新たに一般医師の予防接種を認め、その事実を証する証明書等の授受手続を規定しようとするものであります。
何とぞ愼重御審議の上、速かに可決されんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/27
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028・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 本法案も審議は次回に廻しまして、本日は提案理由を伺うだけにとどめたいと存じますが、御異議ございませんでしようか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/28
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029・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 御異議ないものと認めます。ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/29
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030・河崎ナツ
○委員長(河崎ナツ君) 速記を始めて下さい。それでは本日はこれにて散会をいたします。
午前十一時三十七分散会
出席者は左の通り
委員長 河崎 ナツ君
理事
小杉 繁安君
有馬 英二君
委員
石原幹市郎君
川村 松助君
中山 壽彦君
長島 銀藏君
藤原 道子君
山下 義信君
谷口弥三郎君
松原 一彦君
国務大臣
厚 生 大 臣 黒川 武雄君
政府委員
厚生省公衆衛生
局長 山口 正義君
厚生省社会局長 木村忠二郎君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁已君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014237X01619510320/30
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