1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十五年十二月十六日(土曜日)
午前九時四十五分開会
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本日の会議に付した事件
○一般職の職員の給與に関する法律案
の一部を改正する法律案(内閣提出
衆議院送付)
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001・木下源吾
○委員長(木下源吾君) それではこれより委員会を開会いたします。
一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案の質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/1
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002・森崎隆
○森崎隆君 淺井総裁が参られておりますので、私からお尋ねしたいと思います。
その前に一言総裁に申上げたいことは、今度の給與の問題につきましては非常に本委員会におきましては重大な問題と思いまして、終始まじめにこれまで検討を加えて参つたのでありますが、前臨時国会におきまして総裁は一度しか出席されておりません。この問題は人事院に直接関係のあることでございますので、委員会がありますれば出席を我々から要望すると否とにかかわらず是非出席して頂きたかつた。並びに今回の本国会が開かれまして後にも数回こうして審議をして参つたのでありまして、総裁の御出席を終始熱望していたのでありますが、昨日までのところいろいろ公務御多端なこととは思いましたが、到頭御出席を頂けなかつたことは非常に私は残念に思つております。今朝初めてお目にかかりましたので、今後とも一つ我々も力一杯やりますが、こういう問題につきましては是非とも一つ委員会にはしばしば御出席なされまして、お互いに協力いたしまして何とか適正な公務員のための給與体系を作り上げて行きたい、こう我々も思つておりますので、よろしく一つ御出席をお願いいたしたい。
次にお尋ねいたしますが、私の総裁に特にお尋ねいたしますことは、極く短かい簡單なことでございますが、併しその内容といたしましては、私は非常に重要な性質のものであると思います。若しこの問題を本当に深く掘り下げまして御返答頂くならば、或いは人事院そのものの存在価値にまで私は触れなければいけない問題であろうかと思いまするが、これにつきましては一月以降におきまして篤とお互いに相諮りたいと思いまするが、今日は今度の一般職の職員の給與に関する法律の一部改正案、政府から出されましたこの法案につきまして、万一これが参議院を通過しましていよいよ正式の法律となつたときに、当然これを実施するのは総裁の指揮下にありまする人事院であると思いまするが、人事院におきまして果してこの法律のままで実施が円滑になされ得るかどうかということ。
もう一つは、根本的に人事院総裁といたしまして、又公務員の給與の最高の責任者というように、私といたしましては実質的にはそういうような気持を持つておりまするが、その責任ある総裁といたしましてこの政府案は果して妥当であるかどうか。又妥当でないといたしましても、この程度で忍び得るのかどうか。絶対にこれに承服できないという観点に立たれるのかどうか。こういう点につきまして忌憚ない総裁の御意見を承わりたいと思います。その総裁の御答弁を頂いた後におきまして、私はこれ以上二度と質問は繰返しません。これを以ちまして私は全部の質問を終了いたしたいと思いまするが、どうぞ一つ総裁から本当に責任の地位にあられる人事院総裁として、はつきりした良心的な御答弁をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/2
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003・淺井清
○説明員(淺井清君) お答え申上げます。人事院はその許されたる独自の立場から、御質疑に応じまして、この件案の審議の過程を通じまして、己憚なく且つ強くその所信を表明して参つたものでございす。その間たまたま政府案雄対しましても反対の見解を申述べたことも多かつたと存じます。併しながら法律を制定せられるものはもとより国会でございまして、一たび法律が成立いたしました以上は、そこにはもはや政府案とか人事院案とか申す筋合いのものではなくして、ただ日本の法律があるのみと存じております。憲法七十三條によりますれば、内閣は国会の制定した法律を誠実に履行しなければならない責任を持つておるものでございまするから、人事院といたしまして、その行政機関たる地位に鑑みまして、この法案が法律として制定されました以上は、万難を排してその実施に誠実に当りますることは申すまでもないことと存じます。ただすでに申述べたごとく、実施上種々の困難がございまするが、ただその困難は万難を排しまして、誠実に国会の制定せられた法律を実施するという決心でございます。
次にこの法律案に対して不満の点、その他をお問いでございましたが、私はここに一つの事実として申上げたいと存じます。先ずそれはこの人事院の勧告が政府の案によつてどの点が容れられ、どの点が容れられなかつたかということを集約して申上げる外はございません。第一に政府の案に人事院の勧告が容れられておりますと見る点を申上げたいと存じます。その第一は、人事院の給與のきめ方の方式の最も根本といたしておりまするところは、成年男子の独立の生計費ということと、それから民間給與との権衡ということでございますが、この人事院の給與のきめ方の方式というものは政府案に取入れられております。即ち人事院は成年男子独立の生計費を三千三百四十円と計算いたし、内閣の案は三千三百五十円と計算いたし、人事院は民間給與の最高額を二万三千円と押え、政府は二万五千円と押えております。その間数字の相違はございまするけれども、人事院の給與の決定の方式の根本的なものは政府の案に容れられておるのでございます。これが人事院勧告が政府案に取入れられておりまする主なものの第一点でございます。第二点といたしましては、人事院の唱えておりまするベースと、政府の唱えましたべースとは全く同一のものであつて、ひとしく現行の給與法第一條によつたものでございます。人事院のベースは八千五十八円、政府のベースは人事院の推定によりますればおよそ八千円、大差はございません。即ち人事院の唱えましたベースはその数字においては政府案にそのまま取入れられておる。若干の数字の相違はありまするが、取入れられておるものと考えます。即ちこれが人事院の勧告案が政府に取入れられておる第二点でございます。次に第三点といたしまして人事院の唱えておりました勤務地手当及び地域給の改正でございます。これは政府案に人事院の勧告通り取入れられております。その間暫定措置が加わつておりまするが、法律の本分といたしましては人事院の案が取入れられております。以上申述べました三点は人事院の勧告が政府案に取入れられておる最も主な点でございます。
第二に人事院の勧告で唱えられました点で、政府案に取入れられなかつた点を申上げたいと存じます。これは二点でございまするが、主なものが、その第一点はいわゆる俸給表の曲線、カーヴの問題でございます。即ち人事院は三千三百四十円を二級一号に当て、政府は三千三百五十円を二級四号に当て、最高額を人事院は二万三千円と押え、政府は二万五千円と押えましたので、上下の差が人事院案は約七倍、政府案は八倍に余つておるのでございます。これは人事院の持つておりまする給與政策の非常に重要点でございまするが、この点は政府案に取入れられておりません。第二点は特別号俸の調整でございまして、これは人事院では反対をして参りました。この二点が政府案に取入れられていない点でございます。従いまして人事院といたしましては、この二点に対しまして率直に強く政府案に反対の見解を、御質疑に応じ申上げた次第でございますが、さて最前から繰返しますように、国会が法律として御制定になりました以上は、我々はもはやこれを批判すべき性質のものでなくして、先頃申しましたように万難を排して誠実にこの法律の履行に当りたいと思つております。
なお最後に附加えさして頂きたいと思いますが、この人事院案を政府案に入れなかつた主な点、二点に種々なる論議がございましたが、その主な点は主として財政上の問題即ち給與予算がこれ以上増額し得なかつたという財政上の問題であるやに存じます。然らば私は人事院といたしましては、国会及び内閣においてこの上とも御工夫を加えられまして、公務員の利益のために将来この法律を成るべく早く一層よきものにせられんことを切望いたすものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/3
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004・木下源吾
○委員長(木下源吾君) 別に御発言もございませんようですから、質疑は盡きたものと認めて御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/4
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005・木下源吾
○委員長(木下源吾君) 御異議ないものと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正意見がございましたら、討論中にお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/5
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006・千葉信
○千葉信君 私は只今上程の本案に対して反対をいたします。
去る一日の衆議院における公聽会で、前の大蔵省給與局長今井一男君が次のように言われております。若しも人事院の勧告が民間賃金を標準としたものであるなら、一万二千円ぐらいが至当である。民間の賃金指数或いは本年八月におけるCPSの一二九という指数、食糧その他種々商品の異常な高騰を考えますならば、少くとも私は一万二千円というこの今井一男君の意見に全面的に賛意を表するものでございます。この観点からすれば、八千五十八円という人事院の勧告は、確かに低水準のものであつたということが言えると思うのでありますそうして又人事院が国家公務員法第三條によつて公務員を擁護すべき唯一の機関であるという事実を想起すれば、あらかじめ與えられた枠の中でかかる低水準の勧告を出したというその自主性の喪失が、結局は問題の同法に不利な影響を與えた点において、私は人事院の責任を追及せざるを得ないのでございます。それにもかかわらず、この人事院の勧告はその給與体系としての理論的構成、或いはその俸給表における昇進率において、少くとも政府案に比して百日の長あることは事実でございます。そのためにこそ私は人事院勧告を支持するのでございまして、耐え難い水準ではございますが、これが許され得る最後の一線であるという立場において私はこれを支持するものでございます。然るに政府はこれを尊重せず、成るほど政府は本法案第一條において「人事院が国会及び内閣に対し勧告した給與計画を原則的に尊重し、」と言つているが、正しくはこれは部分的に尊重したと改められるべきであると思うのであります。事実部分的にはこれを尊重しております。例えば地域給の暫定措置における五分引下げのごとき、最高最低の幅を更に拡大した俸給額の決定のごとき結局は自己に有利な部分だけにしかそのいわゆる尊重は行われておらない。然り而して最も憎むべき政府の態度は、この部分的尊重において人事院案に対して逆手をとつているということであります。これを具体的に言うならば、若しも政府が今次改訂において言うがごとく、予算上人事院案に沿うことが仮に不可能であるとするならば、上も下も同率にこれを減額してこそ初めて原則的に尊重したと言えるはずでございます。下級者に対しては思い切つて減額を行いながら、上級者に対してはこれを大幅に増額しているこの引上げ額の率は、実に二五・三%強でございます。これが我々の政府案に承服上得ない第一点でございます。
反対する第二の理由は、以上のようなやり方で六級、七級以下の下級者の増額が少ない上に、調整号俸引下げという苛酷な措置をとられ、更に地域級の引下げのために従来の六千三百七円ベースから一割も上らない公務員が相当数出るということでございます。その結果として政府は増額が一割に充たない者に対しては、少くとも一割だけは何とかするという附則第三項のいわゆる最低保障額確保の方法を行使しなければならなかつたのでございます。而も政府はその手段において明らかに誤謬を冒している。政府はこの場合、最低保障額に含まれる地域給を本俸に繰入れる結果として、如何なる事態が起るかと言えば、これらの人々が他の地域に転じた場合、本俸が他の人々より地域給の分だけ不当に高いという奇現象を生ずることでございます。これは該当人員云々の問題ではなく、金額の多寡の問題ではなく給與政策上不合理であり、愚劣至極だという点において我々は反対でございます。
理由の第三は、すでに御承知の調整号俸切下げの問題でございます。この号俸調整は二千九百二十円ベース改訂に際して税務、警察、船員或いはらい結核療養所の職員、郵政電通従業員に対して、時間差若しくは職務内容に応じて加算されたものでございます。従つて既得の云々の問題は別としても、若しこれらを減額又は引下げする場合に、危險の度合、責任等の職務内容に対する愼重な科学的検討が必要であり、且つ法の執行についても深甚なる考慮が必要であるということは論を待たないのであります。能うべくんばかかる措置は先に国会を通過した職階制の確立と、本格的給與体系としての給與準則の制定を待つて、初めて合理的の解決が期し得られると考えるのでございます。然るに政府は、單なる給與予算ふんだくりの必要から勤務時間の統一に籍口してかかる無謀をあえてしたのでございまして、それだけならまだしも見解の相違、意見の食い違いということがあるかも知れません。ところがここに問題がございます。今度の切下げ方を見ますと、各級ごとに切下げられるものがまちまちでございまして、その結果次のようなでたらめが随所に起つておるのであります。引例すれば三級一号の税務官吏は二級五号の下級同僚と同じく、現在四千二百二十三円である。それがこの切下げのために三級の者は三号下り、二級の者は一号だけ下る。三級だつたために下の者より二号俸下位に転落すること自体が問題であるばかりでなく、俸給額が実際上三百円少くなる。三級だつた者が四千九百円で、下の二級の者が五千二百円という珍現象がございます。これは單なる一例に過ぎず、該当する者は枚挙にいとまない。政府はこの問題に対する我々の追及に屈して、明らかに不合理なこれらの修正を言明いたしまして、政府はこの不合理の修正を、本法律案施行以前、本年十二月二十一日までの間に、その該当者に対して一齊昇給の方法をとると言明をしたのでございます。これは今までの政令にも規則にもない昇給でございまして、言い換えるならば、この法律の立案者である政府自身が、この法律を合理的なものにするためのインチキ手段を必要としたという噴飯すべき事実を我々は彈効せざるを得ないのであります。所詮この法律案はそのためにも修正は不可避だつたはずでございます。本法案に反対する理由として更にいろいろ申上げたい事実があるのでございますが、詳細は本会議に讓ることにいたしまして、以上を以て私の反対の討論といたす次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/6
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007・重盛壽治
○重盛壽治君 私もこの案には反対をいたします。只今千葉委員から数学的にいろいろ指摘せられております。勿論数学的に種々不便な点があることは、今日までの委員会の席上で論議せられましたことで明瞭でございます。而も基本的には上に厚く下に薄く、又入れなくてもいいところの号俸の調整をやつておる矛盾極まる内容であることは明瞭でありまするが、その矛盾極まる内容のものがどうして政府案として、国家公務員に対する給與法案として上程せられたかということを考えて見ますならば、このよつて来たつた原因は極めて明瞭であります。この明瞭であるということは、本当の給與をどう改革しなければならんかという理念に立つておるものではありません。今度の案が人事院の勧告案を若しそのまま実施に移したといたしまするならば、一応数字の点では若干不満な点があるといたしましても、少くとも九十二万の官吏諸君はこれを受入れる態勢を持つておる。然るにこの給與を政府の官房長官の手許において、政府の関係官庁の給與関係に明瞭な見解を持つあらゆる有識者を集めて、これを作り上げるべきであつたにもかかわらず、官房長官の手許において作り上げられたということは、言い換えますならば給與をどうしてやろうか、如何に合法的なものを作り上げてやろうかということではなくして、給與と睨み合せて如何にして財源を作り出すか。どうして財源を搾つて行くかということにのみ重点が置かれておるのであります。前の国会におきまして、九日の日に我々がこの案を通過して頂かないようにやりましたことも、次の国会でこのような重要な給與ベースの問題は十分に考えて頂くというために、この前の国会では否決になるように我々は率直に言つて努力をして参つたのであります。然るにこの給與の前半に関しましては、この間において反省するというようなことはなくて、逆に又も国会が当然休会になつても差支えないようなときに、無理に引延ばしをやつて強引に押切つて行こうというような政府の考え方は、一体どこにあるか。ただただ国の政治を本当に運営するのではなくて、数字の、そろばん玉の政治に過ぎないのであります。私は国の政治というものは今更申上げる必要もありませんけれども、本当にその対象とする人たちが、いわゆる給與ベースの問題でありますならば、九十二万のこの人たちは一体どういうことを望んでおるかということを先ずつかむことが大切である。勿論今日の日本の経済状態から見まして、満足すべきものは支給できないでありましよう。併しながら少くとも一応理論体系の立つものでなければならんのに、この矛盾極まる内容のものを、力を以て、数を以て押切ろうとする政治は、民主的な政治の扱い方では断じてないと私は考えております。いわんや僅か五、六億程度の予算をこの際政府が、而も国の予算の枠の埓内で操作でき得ることならば、関係方面においても了承しよう。又人事腕が出したあの勧告の内容のほうが政府案より遥かに優つておるということは、その都度明瞭に言われておるのであります。そうして無理にこれをこのまま押し付けようとせずに、政府が誠意を以て九十二万の官吏の人たちの給與ベースを変えてやろうという熱意があるなら、五億や六億の金は微々たるものであります。若しこの五億、六億の僅かの組替えによつて全官吏が欣然と奮起いたしまして、勉励いたしまして日本の再建におのずからの與えられた職務に忠実であつたといたしますならば、これを政府が言うそろばん玉で彈いた数の何百倍、何千倍に価するであろうと私は考えるのであります。逆にこの不満を多数を以て決定し、政府の一方的な考え方によつてこれを飽くまで処理して行こうとするならば、この不満は九十二万の人たちが不満を持つて日夜その職務に当るといたしますならば、如何なる結果を生むでありましよう。みずからの生活権が確立せられないところに欣然として自分の任務につくことはでき得ないのであります。そこには不平があり不満があり、極めて險惡な空気の中でみずからの與えられた職務に従事いたしておるという場合においては、おのずと能率は低下するでありましようし、大きく言いますならば日本の再建に非常な支障を来たす。この損害をあなたがたが目前の五億や六億の僅かな金を惜んで、目に見えない損害が一体幾らになるか。これこそ何千億、何百億であるか、私は計るべくもない多数の数字になつて行くであろうと考えるのであります。こういう観点から行きましても当然この問題に関しましては、私共は反対をしなければならないのであります。
更にもう一つ申上げるならば、衆議院において野党が反対をして……、これを通過させ、それを参議院が本当にいわゆる政党政派を抜きにして、二院制の重要な意義からこれを十分に審議して、政治的に多数の人の意見のみで押し出すということでなくて、本当に対象とする人たちがどういう考えを持つておるかという角度に立つて検討せられたとするならば、当然この問題はこの国会において直ちに決定すべき問題ではないはずであります。官吏の諸君は、給與法案が一ケ月や二ケ月遅れても筋の通つた、而も自分らが希望するものに近いものを作つてもらうことを要望いたしておるのであります。繰返して申上げますけれども、賃金体系のみではありません。すべての政治がその対象たる人たちの気持を把握することなくして作り上げたとするならば、そこに机上論的な、砂上樓閣的な法案よりでき上らないのであります。今、申上げますように二院制といたしまして、参議院が衆議院の通過せしめた議案を十分に審議して、これのよしあしをきめる権限が若しあるとしまするならば、私はあると解釈いたしますが……、これは政党政派を超越いたしまして、そうしてこの内容に十分にメスを入れ、本当に正しいものにし、更にそこに若し関係方面の障害があると仮定いたしますならば、これの了解には全力を盡して当る。而も時日をかせば、この方面の了解も当然得られるという確信を私は持つておる。何が故にかように急遽この問題を通過せしめなければならないかということの私は了解に苦しむのであります。私はこの二院制の意義からも恐らく緑風会の皆様も、或いは民主党の皆様も、この案に心から私は双手を挙げて賛成なさつておるかたはないと思うのであります。機械的に、一日も早く、明日までにはこの議案を上げてしまわなければならないということをなさらなくても、再びここでこの問題を審議未了にいたしまして、通常国会で十分に練り直して、そうして正しい方向付けをするということを全官吏は望んでおりまするし、全国民も私はこの点に注目いたしておるだろうと思います。かような意味合いから考えまして、私は内容はもはや論議する必要はないのであります。どうか二院制の重要な意義から考えましても、そうして又、私共が今日までいろいろと論議して来て内容の明瞭になつておるところの不備なり、欠陥等を十分考慮せられて、この問題を処理して頂きたいと存じます。なお且つ今度の法案が仮に通過いたしたとしまする場合に、官房長官は、政府に関係しておるところの職員並びにこれに準ずる者に対しても、全部この給與ベースを適用するのであると言明せられたのであります。大蔵省の一部の局長の言によりますれば、今日極めて困難なるところの仕事に携つておるところの、大蔵省に関係する四機関、閉鎖機関等を中心とする機関に対しては現在の給與が高過ぎるので、これに当てはめて行くことができない。これは上げなくてよろしいというような矛盾極まることを放言いたしておるのであります。勿論今度の案には私共は全面的に賛成はできません。全部を反対するのでありますが、若し仮にこれがこういう方法。通過したとしまするならば、飽くまで政府関係者と同等な資格のある者に対しては全部一率にこれを実施するという基本的方針を変えてはならないと考えます。こういうように内容の不備であり、而も本当にそれらの人たちの気持を把握することなくして作り上げたところの本案に対しましては、私は全面的に反対をいたしまして、そうして特に先ほど来申しましたように、号俸の調整問題、それから上に厚く、下に薄いというこういう方法、これらに対しましては徹底的に反対すると同時に、でき得るならば極めて近いうちにこの法案の改正をせられまして、人事院の出されましたところの案に最も近いものに修正せられんことを希望して、反対の意見とする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/7
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008・紅露みつ
○紅露みつ君 私も本改正案に反対をいたすものでございます。簡單に理由を申上げますると、もうすでに言い盡されておると思うのでございまするが、私共は当初から人事院の勧告を支持して参つたのでございます。それは人事院という機関が特に設けられておるという意義を尊重するゆえんでもあります。而も本案の審議が進むに連れまして明らかになりましたことは、只今淺井人事院総裁からもお話がありましたように、政府と人事院の間にこの給與法を改正するに当りましての根本理念が全く対立をいたしまして、政府は人事院の考えておりますところを全く無視されて、反対の方向を取られたということでございます。即ち給與のカーヴでありまするが、これにも一応うなずける点がないではありません。併しながら私共はやはり人事院が申されまするように、現在の段階におきましては、まだ不幸なことに一般職の給與は生活給の域を脱しておらない実情にあると、かように考えまするので、今暫らくのところは上下を通じまして共に苦難を忍んで行かなければならない、かような考えに立つておりまするので、これが第一の反対の理由でございます。第二の理由は、只今もだんだん申上げましたように、号俸調整の切替えによつて生ずるところの不合理な点であります。政府の御答弁とか、御説明を伺つておりますると、それは法の実施に際して不公平のできないように考慮し行くと、かようにたびたび伺つたのでございまするが、それにつきまして思い付きではなかろうかと思われるようなあいまいなものか、この審議に当りまして終始一貫流れておると、かように考えるものでございますり。かような不完全にして不合理な法案が通りました場合に、政つ府の言われまするような考慮を以てして、この非科学的な行き方を以てして、果してその調整がうまく行くであろうかどうかということを甚だ懸念するものでございます。又一面におきましては法の制定に当りましては、これはすべからく一目瞭然その内容がはつきりわかるように成文化されなければならないのであろうという考えを持ちまするところから、本案にはどうしても同意できかねるのでございます。最後に政府に、又人事院に希望を申述べて置きたいことは、かようなことになりましたのは、これは全くその連絡が悪かつたということが考えらつれるのでありまして、今後におきましてもこうした問題はあとを断たないことでございましようし、この案にいたしましてからがこれがもう少し完全なものになるように今後いたさなければならないと皆考えておるのでございまするからして、今後その連絡を密にして頂くということを切に希望として申述べて置きたいと存じます。以上簡単でございまするが、反対の理由を申上げざるを得ない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/8
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009・木下源吾
○委員長(木下源吾君) 他に御発言ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/9
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010・加藤武徳
○加藤武徳君 私は自由党を代表いたしまして本案に賛成をいたすものでございます。なお賛成の詳細な理由につきまして川は本会議におきまする討論に讓りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/10
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011・木下源吾
○委員長(木下源吾君) 他に御発言ございませんか。……別に御意見もないようでございますから、討論は終局をしたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/11
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012・木下源吾
○委員長(木下源吾君) 御異議ないものと認めます。それではこれより採決に入ります。一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成のかたの挙手をお願いいたします。
〔挙手者多数〕
〔「笑われるぞ」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/12
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013・木下源吾
○委員長(木下源吾君) 多数でございます。よつて本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。なお、本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認を願うことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/13
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014・木下源吾
○委員長(木下源吾君) 御異議ないものと認めます。それから本院規則第七十二條によつて、委員長が議院に提出する報告書について、多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可とされたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
加藤 武徳 早川 愼一
石原幹市郎 瀧井治三郎
平岡 市三 岡部 常
小野 哲発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/14
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015・木下源吾
○委員長(木下源吾君) 署名漏れはございませんか。……署名漏れはないと認めます。それでは本日はこれを以て散会いたします。
午前十時二十九分散会
出席者は左の通り。
委員長 木下 源吾君
理事
加藤 武徳君
早川 愼一君
千葉 信君
委員
石原幹市郎君
瀧井治三郎君
平岡 市三君
重盛 壽治君
森崎 隆君
岡部 常君
小野 哲君
大隈 信幸君
紅露 みつ君
政府委員
内閣官房副長官 菅野 義丸君
人事院給與局次
長 慶徳 庄意君
説明員
人事院総裁 淺井 清君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014548X00419501216/15
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