1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月三十一日(土曜日)
午後三時十七分開会
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本日の会議に付した事件
○計量法案(内閣送付)
○高圧ガス取締法案(内閣提出)
○熱管理法案(衆議院提出)
○派遣議員の報告
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001・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 只今から委員会を開会いたします。
つきましては参議院のほうに予備付託になつております計量法案の提案趣旨を大臣から説明があるそうでございますから、御説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/1
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002・横尾龍
○国務大臣(横尾龍君) 只今議題と相成りました計量法案について提案の理由を御説明申上げます。
計量に関しては、現在度量衡法がございますが、度量衡法は、明治四十二年法律第四号として制定されたものであつて、その後大正十年メートル法採用の大改正を初め数次に亘つて改正されましたが、なおその大綱については、制定当時と大した変化はなく、終戦後の諸制度の一新の情勢からとり残された観がありました。そのため学界、業界、計量器の使用者など各方面から現行度量衡法改正の要望が高まり、国会において同法の改正促進の建議案が提出されたことも一再でなかつたのであります。そこで通商産業省としては、昭和二十一年十一月よりこれが改正に着手し、種々検討を加えて来ました結果、今回計量法の成案を得た次第であります。
計量法案は、現行度量衡法を全面的に改正しようとするものでありますが、その改正の要点は左の通りであります。
第一に単位については、現行度量衡法が規定する長さ、面積、体積、質量、温度、密度、圧力、工率、力及び仕事の十単位の他に時間、速さ、加速度の大きさ、熱量、角度、流量、粘度、濃度、光度、光束、照度、周波数、騒音の大きさ、繊度、かたさ、衝撃値、引張強さ、圧縮強さ、粒度、屈折度、難度、比重及び耐火度を加え、電気関係のものを除き、最近経済界において取引又は証明に使用されている単位を網羅しました。
第二に現行度量衡法が、製作、修覆及び販売の営業に免許制度を採用しているのに対し、計量法案では製造及び修理の事業に許可制度を、販売の事業に登録制度を採用しました。
第三に検定についてはその構造、公差に幅を持たせて用途に応じた精度又は構造を有する計量器の検定ができるように組立て、且つ検定の主体としては精度の高低、検定の難易等により通商産業大臣と都道府県知事との間の所管を明確にすると共に、部品検査及び原型検査の制度を新たに設け、検定の簡素化の途を開きました。
第四に原器に比較してその器差を測定するための比較検査の制度を確立するとともに容器の容量検査の制度を新たに設けました。
第五に貨物の運送、寄託又は売買に関連して積込若しくは積下、倉入若しくは倉出又は引渡をする際にその貨物の計量単位による証明をする計量証明業者の使用する計量器について登録制度を設け、その精度保持の義務を定めました。
第六に計量に関する取締については、現行度量衡法では、主として都道府県知事の権限になつていますが、計量法案では、更に市町村長に対しても大幅にその権限を與えました。
第七に工場、事業場、店舗、官公署などにおける計量管理を促進するため指定事業場の制度及び計量士の制度を確立しました。
第八に現行度量衡法においては、検定又は取締の統一の保持が困難でありましたが、計量法案では、検定又は取締に新たに覆審制度を設け、その審査をするために計量調査官を置き、更に検定、取締用基準器その他につき基準器検査制度を設けてその統一に留意しました。
なお現行度量衡法の下においても、度量衡制度は、メートル法を基本とし、尺貫法、ヤードポンド法を昭和三十三年十二月末日まで併用することになつていますが、この点は計量法案においても、そのまま踏襲しました。現行度量衡法は、すでに半世紀を経たものでありまして、最近の経済及び文化の実状とは疎隔して来ているのでありまして、政府はここに計量法案を提出して、取引証明の安全を確保し経済及び文化の発展に資せしめようとするものであります。
何とぞ十分御審議の上御議決あらんことを希望いたします。
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003・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 次に昨日提案されました高圧ガス取締法案について、法案の骨子となつております点について政府側の御説明をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/3
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004・長村貞一
○政府委員(長村貞一君) 高圧ガス取締法案の内容につきましてその大体の要領を御説明申上げたいと存じます。
昨日大臣の提案理由の御説明にございましたように、今回提案いたしました高圧ガス取締法案は、現在ございます圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法、これは大正十一年に制定施行されておりまする古い法律でございます。これが現在行われておりまするこの法律の全面的の改正案でございます。結局大正十一年に現行法が施行されましてから相当時を経ておりますので、その間御承知のように新憲法も施行されまして、これに応じまして法体系を整備する必要もございましたし、或いは又当時所管しておりました内務省というものもすでになくなりました今日、この仕事を担当しておりまする行政機関も変つておりまするので、今日それに応じた担当機関の仕事或いは職責というものをはつきりさせる必要がございます。又根本には高圧ガス工業界というものが非常に進歩して参つておりますので、従いましてこれに即応した技術的の取締基準というものも変えて参らなければならないので、これらの点を中心といたしまして、所要の改正を加えたわりでございます。
先ずこの法体系の整備という問題でございますが、現在の圧縮瓦斯及液化瓦斯取締法は、法律といたしましては僅かに十二條の簡単なものでございます。この十二カ條の法律を基礎にいたしまして、施行令が四十五條あるわけでございます。即ち取締の実体をなしまするものは、殆んど全部この施行令の四十五條に讓られておるような状態でございます。言葉を換えて申しますると、非常に広い範囲の委任規定によつて法律が動いておるということになつておるのでございます。これはもとより今日の新憲法下の法体系としては甚だふさわしくないのでございまするので、この点から新法といたしましては章を六つ設けまして、総則、事業、保安、容器、機器及び原料ガス、雑則、罰則、こういう六章の章を設けましで、條文としても八十四カ條、これに加うるに附則を設ける、かように法律自体におきまして取締の対象、或いは各種の取締規定というものを法律自身にでき得る限り盛り込んで、その態勢を整備するということにいたしたのであります。これに加えまして最近の立法の例に従いまして、行政処分に対しまするいわゆる行政救済の方法をも法律に規定するということにいたしておるのでございます。内容は只今申しましたように相当広汎のものでございまするので、その各條に亘りまして詳細な規定があるのであります。殊にかなりの部分は技術的の内容を持つておりまするものでございますので、その一一について申上げることも煩瑣に過ぎるかと思いまするが、大体の法の組立なり内容を各章別に概略を申上げて行きたいと存じます。
第一に第一章の総則の章におきまして、法律の目的及び取締の対象であります高圧ガスの定義をはつきりといたすことにいたしております。現行法におきましてはすべての液化ガスということに適用範囲がなつておるわけでございますが、新法におきましてはこれをはつきりと実態に即しまして、特定の液化ガスに限りこの法律が適用されるというふうにはつきりいたしたのでございます。同時に又国に対しましてもやはりこの法律の適用のあることを明確にいたしておるのでございます。
それから第二章の事業の所でございますが、これは結局この法律が高圧ガスの製造、販売、貯蔵、移動、消費、つまり高圧ガスができましてから転々流通いたしまして最終消費者の手で消費されまするまでの各種の段階におきまする取締をこの章で規定いたしております。製造につきましては或る一定量以上の製造をいたします場合に許可制を布いております。一定の量以下のものは届出制になつておるのでございます。販売につきましては現行法通り許可制をとり、又ガスを貯蔵する場合の取締につきましては、現在は貯蔵営業を許可制にしておりまするが、これをやめましで、貯蔵所、貯蔵する場所を取締る規定を設けることにいたしておるのであります。移動、消費等は殆んど現状の通りであるのであります。
第三章の保安でございますが、これは高圧ガスの製造につきまして保安上の必要な規定を設けております。作業主任者の制度或いは各種の保安検査というような規定を設けておるのであります。特に一方におきましては、第七国会において御審議御決定を頂きました火薬類取締法に倣いまして危害予防規程というものを設けることにいたしました。これによりまして各工場、各事業場におきまして自主的に災害の防止が図られるようにいたしてあるわけでございます。
第四章に容器、つまり高圧ガスのいれもの、つまりボンベその他の容器でございます。これとか高圧ガスを専門に造ります機械類及び高圧ガスの原料となるガスの取締も特に規定したわけでございます。これらの点は高圧ガスの性質から参りまする特質としまして、これを流通しますためには、特にボンベその他の容器に入れてこれを流通させ、而もここに各種の災害なり危険が発生しがちなものでありますので、容器の取締上危険防止に遺憾なからしめるためにその所要の規定を設けてございます。又高圧ガス自身の危害防止を徹底いたしますために、最小必要限度の範囲におきまして、これを製造いたしまする機械類及び原料ガスの点まで取締の手を及ぼすために所要の改正をいたしておるわけでございます。
以上が大体この法律の骨格となつております内容でございまして、これに附属いたしまして第五章雑則には、各種の報告の徴收或いは帳簿の記載、必要に応じての関係官吏等の立入検査その他の規定を設けております。同時にこの法律は先ほど申しましたように非常に現在まで進歩しており、又将来も大いに進歩するであろうところの高圧ガス工業の実態に即して各種の取締を実行して参る必要もございますので、高圧ガス保安審議会という制度を設けまして、学識経験者のかたがたの相当数に御参加願いまして、業界の発達に即応しつつこれを運用して参るという制度も設けておるのでございます。その他当初申しました公聽会、不服の申立その他行政庁救済の條項も入れてあるのでございます。
最後にこれに対応いたしまして所要の義務規定の違反に対して罰則を他の立法令に倣つて規定しておるわけでございます。
甚だ大ざつぱでございますが、以上法案の大体の骨子を御説明申上げました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/4
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005・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 高圧ガス取締法案の審議はあと廻しにいたします。
次に熱管理法案を議題といたします。
昨日までの委員会で質疑は盡きておりますので、これより討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正意見のかたは修正意見をお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/5
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006・境野清雄
○境野清雄君 熱管理法案に対する修正案を私から提出したいと思います。
熱管理法案の一部を次のように修正します。第六條の第五項を削除する。即ち「指定工場の事業主は、当該指定工場における第三條第一項各号に掲げる事項を実施するについては、熱管理者の意見を尊重しなければならない。」、この一項を削るという修正案を提出するのであります。
〔「修正案に賛成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/6
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007・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 他に御発言ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/7
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008・栗山良夫
○栗山良夫君 私は只今提案になつておりまする熱管理法案に対しまして、修正案に反対をいたし、原案に賛成をいたしたいと存じます。
原案に賛成する理由並びに修正案に反対をいたしまする理由を申述べたいと存じます。原案は、その提案理由の説明並びに法案の審議の過程でも明らかになりましたように、我が国の産業振興に不可欠な石炭を中心といたしましたところの燃料資源を徴用いたしまして、これを高度に活用して産業の運営に当らせたいという意味を以ちまして、熱管理を実施せんとするところに目的があるようであります。御承知のように日本の石炭資源は極めて貧弱でございまして、これに代るに豊富なる電力を以てすべく、いわゆる石炭ベースより電力ベースヘの切替えが、口に叫ばれておりまするけれども、電力開発は意のごとく進まないのでありまして、かようなベースの切替えも、我が国の只今の経済力を以ていたしまするならば、又或いは見通しの付く近い将来の期待を以ていたしましても、なかなか至難のことであろうと存ずるのであります。従いまして先ず行うべきことは、この不足な石炭資源を一トンでも節約をする、而も産業に支障を與えないという意味からいたしまするならば、石炭の合理的な節約のためにはあらゆる努力を拂わなければならないのでありまして、こういう観点からも熱管理法案が企図しておりますところの熱源の有効利用を図りまするためのいろいろな指導法として、更に欠くるところを補いまして、高度の活用をされたいと思うのであります。更にこういうことを行いますことによりまして、工場内におきますところのいわゆる操業の合理化というものの一端が果されて行くのではないかと思うのであります。又説明にございましたように戦後熱管理を指導されるような工場の成績表を見ますると、石炭を二割以上節約することが可能であると認められました工場は、鉄鋼業におきましては八三%、陶磁器工業におきましては六五%、食料品工業におきましては七二%、繊維工業におきましては六〇%、ゴム工業において七二%、染色加工工業におきまして七六%、化学工業におきましては七五%の高率を占めているのであります。而も只今指摘されましたような工場は、それぞれ熱源として石炭等を有力なる資源として使われておる工場でありまして、こういうような観点からいたしましても、二十四年度の熱管理の工場石炭実績が百六十二万トンに及んでおるという報告がなされておりまするけれども、極めて重視しなければならないと思うのであります。これは法の立て方等に不備があることも質疑の際に同僚議員諸君から指摘をせられておるのでありますが、法の不備がありまするならば改めまして、そうして更に体系を整えられることが好ましいのでありますが、技術法といたしまして、今申上げました趣旨からして、この法案を可決されることは妥当であろうと思われるのであります。
ただ一言私がこの運用に当つて意見を申上げまするならば、今日国の試験を以ちましていわゆる資格を與えておりますものは、弁護士とか、弁理士或いは会計士のような部面は一応別といたしましても、公衆衛生関係にいたしまするならば、理髪とか、助産婦或いは看護婦、医師等の資格、更に交通保安の問題からいたしましては自動車の運転手、災害防止の点からいたしまするならば、汽罐士とか或いは電気主任技術者というような資格が與えられておるのでありますが、こういうものとは又別個な性格を以ちまして、ここに熱管理士というものが設けられることになつておるのであります。従いまして熱管理士の養成ということは、又資格の附與ということにつきましては、この熱管理法が企図しておりまするところを完全に実施、指導し得るような人材を以て当てなければならないのでありまして、若し一歩誤りますると、形式的な熱管理士ができないとも限らないのでありまして、この点は運用上特に注意を要する点であろうと思うのであります。又質疑の途中に私申上げましたが、少くとも石炭等を中心にいたしまして熱源を多量に使いまする工場においては、大体汽罐士がおるのでありまして、従つて汽罐士と熱管理士との関係も微妙でありまするが、将来の運用といたしまして、折角この問題に最もふさわしい、近い仕事をしておりますところの汽罐上等を再教育をせられまして、そうして曾つてありました熱管理規則によつて設けられておる熱管理士と併せ行いまして、そうして無用の摩擦或いは名目的な熱管理士ができるというようなことのないように、飽くまでも熱管理法の完璧を期してその運営のできる士を選ぶように努力をせられたいと思うのであります。又この法律はその立て方が不備であると指摘せられておりまする点はいろいろありまするけれども、これによりまして国が熱管理の指導について、その所定の枠を超えて事業に干渉をし、或いは事業者に圧迫を加える等のことは嚴に戒めなければならんと思うのでありまして、飽くまでも事業場における自主的な形におきまして目的の達成されるように指導せらるべきものであると考えるので、以上のような観点からいたしまして、私は原案に賛成をいたすものでありますが、同時に修正案につきましては遺憾ながら賛成をいたしかねるのであります。
その理由は、法案にもありまするように第三條には第一項第一号から第五号まで、例えば、風化、自然発火、漏失等による燃料の損失の防止、燃料の燃燒、ガス化及び乾りゆうの合理化、加熱及び伝熱の合理化、ふく射、伝導、漏失等による熱の損失の防止、廃熱の回收、こういう問題につきまして指定工場の事業主が燃るべき改善を行わんといたしまするときには、熱管理者の意見を尊重しなければならんということになつておりまして、このことが熱管理法の最も中心的な狙いの点であると言わなければならないのでありまして、賛成の皆さんがたといたしましては、これは道徳的な規定であり、或いは又ここまでは行過ぎであるという御議論もありますけれども、第三條の、先ほど述べました具体的な事例というものは、勿論その時、場所によつて然るべき考慮を拂わなければなりませんけれども、工場自体の運営においても是非とも行わなければならんことである。而もそういうことを専門的な立場に立つて研究いたしました熱管理者が意見を述べるということになりますならば、当然尊重されて然るべきものであります。恐らく事業主といえどもその意見を尊重しないという気持はなかろうと思うのでありまして、曾つて石炭の国家管理法案が上程になりましたときにも、いわゆる従業員の代表のほうから、いろいろ経営参加的な意味における操業に対する意見を述べる機関が設けられたことがありますが、その成果も必ずしも万全であつたとは言えないけれども、相当の効果を收めたのであります。そういう意味からいたしまして、私は法律を以て熱管理者を設けます以上は、その意見はやはり法の一つの権威を以て事業主が尊重されるだけの襟度がなければならんと思うのであります。今後新らしい経営におきましては、やはりその工場の経営は資本家的観点のみではなくして、すべての問題が公益的な観点から行われて行かなければならないのでありまして、特に国家資源の最も重要な燃料を扱うがごとき場合におきましては、当然この精神か必要であろうと思うのであります。私は只今の修正案が不備と言われておりますこの熱管理法の中心をさらいまして、更に骨抜きにするような気持を持ちますので賛成をいたしかねるわけであります。
以上意見を申述べまして私の討論といたすわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/8
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009・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) ほかに御発言ございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/9
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010・西田隆男
○西田隆男君 私は修正案に賛成をするものであります。
只今栗山君から縷々原案賛成の御意見がございましたが、私は極めて簡單に修正案に賛成する要点を申述べたいと思います。第一に、この管理法案の狙いである第一條の目的に副うためにはこの法案ではその目的達成は私は望めないと思う。その理由は、今までこの法案提出後、政府当局並びに提案者の説明を聞いておりますと、現在ありまする熱管理規則によつてだんだん熱管理が促進せられてもう少しやりたいという、やつたら効果が上るだろうというような答弁を頂いております。従つて答弁のうち、或いは説明の中に熱管理士を置いてこの熱管理法案の狙いとしておるようなことをやらなければ熱管理が完全に行かないのだという、我々の了解するような答弁を頂いておりませんことが一つ、もう一つは現在すでにさつき栗山君が言われたように何十%かの熱管理が熱管理規則によつて促進されておるというような実情から考えまして、若しこれ以上熱管理の効果を上げるとするならば、少くともこの法律案の中には政府は、指導監督援助をするという建前から若し熱管理士を雇つておつて熱管理士の意見を用いないで、工場の経営者が熱管理を怠つた場合においては、少くとも政府は強権を以てこれに対する一定の命令権を持たなければならん。そうしなければ管理の本当の目的の達成はできない。政府委員の答弁によりますというと、民主的、自主的にやらせるのだ、だからこの法案の中にはそういう規定は設けていないのだ、こういう御答弁を頂いておりますけれども、その程度であるならば現在の熱管理規則によつて十分その目的の達成はできる。少くとも管理法という一つの国家権力を活用する法律を作る以上、この法律の中にはさつき申上げましたように指示命令権を監督官庁の主務大臣が持つという規定がなければならない。もう一つの理由は熱管理士の行うべき業務の範囲その他は経営者が適当に範囲をきめればよろしいとこう言いながら、経営者には第三号によつて帳簿の記載の事項、或いは虚偽の申告に対する罰則等々がきめられておりまするけれども、法律によつてきめられた熱管理士そのものが責任に違背した場合における罰則は何ら設けられておりません。少くとも民間の事業経営形態の中において雇用主が被用者の意見を尊重しなければならないというがごとき規定が、仮に道徳規定でありましても設けられておるということは、即ち政府が説明されるように、或いは提案者が説明されるように企業の経営を自主的にやらせるという目的に私は反しておる。終戰後五年以上を経過した今日においてなお日本の各種産業が、こういうふうな経営者が被用者の意見を尊重しないという段階にあるとは私は考えておりません。又熱管理規則によつて或る程度の目的を達しておる現実から考えましても、少くとも経営者はその経営を最も妥当にするために、合理化するために、熱源を少く使用するために熱管理士である人の意見を尊重することは当然のことである。法案の中に何らこういう特別な規定を設けなくても私は差支えない、こういうふうな考え方を持つております。こういうふうな観点がら私はこの修正案のほうに賛成をしまして、原案のほうには反対をするのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/10
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011・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) ほかに御発言はございませんか。ほかに御意見もないようでございますから討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/11
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012・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 御異議ないと認めます。それではこれより熱管理法案について採決いたします。先ず討論中にありました境野君の修正案を議題に供します。境野君提出の修正案に賛成のかたの挙手をお願いいたします。
〔挙手者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/12
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013・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 多数でございます。よつて境野君提出の修正案は可決されました。
次に只今採決されました境野君の修正にかかる部分を除いて衆議院提出にかかる熱管理法案の全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成のかたの挙手をお願いいたします。
〔総員挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/13
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014・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 全会一致と認めます。よつて熱管理法案は多数を以て修正議決されました。
それから本院規則七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書には、多数意見者の署名を付することになつておりますから、本案を可とせられたかたは順次署名をお願いいたします。
なお本会議における口頭報告の内容は、本院規則第百四條によつて、あらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりまするが、これは委員長において本案の内容の説明並びに本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願いたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/14
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015・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 御異議ないと認めます。それではそのように取計らいます。
多数意見者署名
廣瀬與兵衞 古池 信三
結城 安次 小野 義夫
上原 正吉 加藤 正人
駒井 藤平 西田 隆男
境野 清雄
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/15
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016・境野清雄
○境野清雄君 動議を提出いたしたいと思います。先般本委員会から大阪、神戸地区の競輪状況並びに自転車工業に関する視察をやりましたので、同時に視察をしました新潟地区のもは報告になりましたので、大阪、関西地区におけるものを御報告したいと思いますが、お諮り願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/16
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017・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 只今境野君から大阪、関西方面における競輪のことについて視察されましたところの報告をいたさせたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/17
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018・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 御異議ないと認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/18
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019・結城安次
○結城安次君 それじや境野君の動議によつて競輪に関する調査報告をいたします。簡単に筋だけ申上げたいと存じます。
今度参りましたのは、境野委員、椿委員と私、専門員として山本君が参りました。前後五日間に亘つて調査いたしましたが、第一、調査地域は大阪と兵庫県、その調査の目標は競輪法の企図するつまり健全娯楽に適当するや否や、自転車工業を育成助長しておるかどうか、又地方財政への寄與の状況如何という、この三点を主として調査いたしました。
第一の健全娯楽ということにつきましては、至る所満足な御答弁は得られません。中にはこれはギヤンブリング・スポーツというようなかたもありまして、地方の思想的に何がしかの悪影響を及ぼすことは避けられないだろうという結論に達したかと思います。それから第二の自転車工業の育成助長に寄與しておるかどうか。これは大阪、兵庫県共に寄與しておる。大阪も各工場を仔細に調べ、又自転車工業会、振興会等に参りまして調査いたしましたが、寄與しておることは確かですが、逆に自転車工業は殆んど小さな工業でありますので、資金的に行き悩んでおる。殊に材料がこの頃は前渡金でも出さなければ買えないというような状況の下においては、特に資金の逼迫がひどいのだから、是非自転車競技によつて得た利益をもつと自転車工業に廻してくれ、或いは甚だしいのは全額廻すべきだというような議論もございました。それから地方の財政に寄與する。これは殆んど所期の目的は完全に達したかと思われます。学校を建てる、或いは庶民住宅を建てる等それぞれ多大の貢献はいたしております。この点は自転車競技法の目的は完全に達成されたものと存じます。併し調査中にいろいろ、即ち廃止法案も出ております。同時に又改正すべき点もあるということでありまするから、それらを二つを基準として調査いたしましたが、開催回数並びに開催地というようなことについては、なお相当研究の余地があるのではないか。大体大阪方面は開催地についてはそう非常な不都合はなかつたかのように思うのでありますが、兵庫県については相当に開催地の問題が出ております。尼崎を中心として芦屋、西宮あたりがいろいろとこの間に面白くない事実も伏在しておるかのように窺われた点もあります。競輪場の設備、去年の鳴尾の事件を契機として通産省が非常に熱心に設備の改良ということを奨励いたしましたが、これは我々の見た限りにおいては殆んど役所の意図しておるところは完成しておるというように見受けられました、ですから競輪の改良すべき点は十分あるので、競輪は改良しなくちやならんが、今廃止ということもこれ又相当困難な事柄だというように見受けて帰りました。
詳しいことはここに長い報告書がございますから、これを速記録に載せて貰いますので、それを御覧願いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/19
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020・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) それでは只今の結城委員の報告は書類によつて後刻提出されるそうでございますから、それを速記録に記載することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/20
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021・深川榮左エ門
○委員長(深川榮左エ門君) 御異議ないと認めます。
それじや本日の委員会はこれで閉会いたします。
午後四時十二分散会
出席者は左の通り。
委員長 深川榮左エ門君
理事
古池 信三君
廣瀬與兵衞君
栗山 良夫君
結城 安次君
委員
上原 正吉君
小野 義夫君
加藤 正人君
駒井 藤平君
境野 清雄君
西田 隆男君
衆議院議員
中村 純一君
国務大臣
通商産業大臣 横尾 龍君
政府委員
通商産業省通商
化学局長 長村 貞一君
工業技術庁長官 井上 春成君
事務局側
常任委員会専門
員 山本友太郎君
常任委員会専門
員 小田橋貞壽君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101014793X02119510331/21
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