1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年三月八日(木曜日)
午前十時四十六分開会
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本日の会議に付した事件
○国立学校設置法の一部を改正する法
律案(内閣送付)
○宗教法人法案(内閣送付)
○教科書の発行に関する臨時措置法の
一部を改正する法律案(衆議院送
付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/0
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001・堀越儀郎
○委員長(堀越儀郎君) これより本日の会議を開きます。
本日は本国会に提案になつております国立学校設置法の一部を改正する法律案、教科書の発行に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、宗教法人法案の三つについて提案理由を承わることにいたします。
先ず国立学校設置法の一部を改正する法律案の提案理由を承わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/1
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002・水谷昇
○政府委員(水谷昇君) 只今議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきましてその提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
この法律案は、国立大学の学部、附置研究所、学部附属の学校及び教育研究施設の新設、合併、国立短期大学の新設、並びに国立大学に包括された旧制の諸学校の廃止等につきまして所要の規定を設けると共に、国立学校に置かれる職員の定員を昭和二十六年度予算に定められた定員に合致させるため、国立学校設置法の一部を改正するものでございます。
次に、その内容の骨子を法案の順を追つて簡單に申し上げます。
改正の第一点は国立大学に包括されて、ただ旧制の生徒がまだ在学しているために、課程として残つていた旧制の学校のうち、募集停止によつて昭和二十五年度限り、職員及び生徒の定員がなくなるものを廃止いたしました。これによつて廃止される学校は、三年制の専門学校、師範学校等百六十四校であります。
なお、昭和二十六年度以降も存続するものは、旧制の大学、四年制の専門学校及び高等師範学校等五十五校であります。
改正の第二点は、国立大学の新設、その学部の新設、名称変更等に関するものでありまして、東京医科歯科大学が明年度から新制の医学部及び歯学部を持つ大学となつたこと、第二に千葉大学の工芸学部が工学部と名称及び組織を変更したこと、第三に静岡大学及び名古屋大学の農学部を新設したこと、第四に一橋大学の法学社会学部を法学部と社会学部の二学部としたこと、第五に大阪大学の歯学部及び徳島大学の薬学部を新設したことでありまして、いずれも大学設置審議会に諮つて、二十六年度からの開設を適当と認められたものであります。
改正の第三点は、名古屋工業大学短期大学部ほか三つの国立短期大学の新設に関するものであります。これはいずれも夜間に授業を行うものでありまして、勤労青年の進学の希望に応えようとするものであります。
改正の第四点は、大学附置研究所の新設、合併等に関するものでありまして、東京医科歯科大学歯科材料研究所及び東部大学防災研究所の新設その他の附置研究所について統合又は名称変更を行いました。
改正の第五点は、国立大学の学部附属の学校その他の教育研究施設の整備に関するものでありまして、その主なものは、従来旧制の師範学校、養成諾学校に置かれていた附属学校を師範学校廃止に伴いまして、国立大学の教員養成関係の学部の附属学校としたことであります。
改正の第六点は国立学校に置かれる職員の定員を昭和二十六年度予算に合わせて改正したことであります。改正後の定員は、国立学校を通じて六万二千六百名となり、前年当初より五百八十一人の増員となつております。これは、第九国会で成立した法律第二六九号によつて運輸省から五つの商船高等学校が移管されたことに伴う二百五十三名の定員増のほか、県立学校の合併、六つの医科大学の学年進行等による増員と昨年国立学校設置法の改正後に成立した行政機関職員定員法の改正による減員等を差引した結果、結局国立学校を通じて五百十一名の増加となつたものでございます。
最後に国立盲教育学校及び国立ろう教育学校を廃止して東京教育大学に特殊教育に関する講座としたことに伴い、第四章の規定を削除する等関係條文を整理いたしました。
以上申し述べましたのが、本法案の提案理由及び内容の概要でございます。どうか、十分御審議の上、速か御可決下さいますようお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/2
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003・稻田清助
○政府委員(稻田清助君) 国立学校設置法の一部を改正いたしまする法律につきまして、只今内容の説明がありましたることで盡くされておりまするので、私はこの法案に、只今説明せられました内容が如何に配列されておるかという点だけを簡單に御説明申上げたいと存じます。
第二條の改正は、盲教育学校及びろう教育学校がこの三月限り廃止されまして、東京教育大学中に一課程として設けられるということに関しまする改正であります。
それから第三條に多くの専門学校、青年師範学校、師範学校の名前を配列しておりますのは、この三月限り廃止になる関係で削除しようとするものであります。同條の中頃から学部の名称変更、新設、廃止の規定がございます。即ち千葉大学の工薬学部を法学部に名称変更するということ、それから新たに東京医科歯科大学が新制大学の列に加わるということ、一橋大学の法学社会学部が分れて法学部、社会学部になること、靜岡大学に県立の農科大学を併せまして農学部を新設すること、名古屋大学に農学部を新設すること、大阪大学の医学部、歯科医学科を独立いたしまして歯学部となり、徳島大学の医学部、製薬学科を基本といたしまして、新たに薬学部ができる改正であります。
それから第三條の二は只今説明せられましたように四つの大学に夜間の短期大学が設けられるということであります。
それから第四條は、附置研究所の新設、名称変更でありまして、新設といたしましては東京医科歯科大学に歯科材料研究所、京都大学に防災研究所が新設せられます。それか一従来の大阪大学の産業科学研究所と音響科学研究所が合わさりまして産業科学研究所になり、九州大学の流体工学研究所と彈性工学研究所が合わさりまして応用力学研究所となり、岡山大学放射能線研究所を温泉研究所に変更するという改正であります。
それから第五條は、学部附置研究施設の規定でありますが、師範学校、青年師範学校がこの三月限り廃止せられますので、これに附属しておりました中学校、小学校を教育学部及び学芸学部の附属にするという改正、及び新設の研究施設としては群馬大学に内分泌研究施設、それから東京教育大学に特殊教育教員養成施設がございます。
それから名称変更としては、京都大学の火山温泉研究所が火山温泉研究施設に変更せられます。そのほか各医学部に置かれておりまする看護婦養成施設をすべて看護学校と名称変更すること、及び東京医科歯科大学に病院及び病院分院、岡山大学及び大阪大学に病院分院を新らたに置く改正であります。
それから第八條は、先般改正によりまして、他省から移管せられました高等商船学校をこの法律の規定の体裁に副うて順序を変えて規定いたしたわけでございます。
第四章の削除は、盲教育学校及びろう教育学校の廃止に伴う改正であります。
それから附則第七項は、「短期大学に置かれる職員の定員は、それぞれその国立短期大学を併設する国立大学の職員の定員に」包含せられるという旨が規定せられております。
それから附則八項に七つの教育学部に当分の間「附属の高等学校を置く。」ことといたしておりまするのは、これらの大学に包括せられておりました青年師範学校が定時制の高等学校を持つておりましたが、これは将来は廃止せられるのでありますけれども、なお在学生がありますので、大学在学生のある期間、仮に教育学部或いは学芸学部の附属として置くという規定でございます。
それから定員の変更は先ほどのその説明がありましたように五百八十一名の増加によりまして、六万二千六百名と総計がなる関係であります。
それから附則第一項といたしましてこの法律は明年度開始と共に実施しなければならん法律でありますので、四月一日から施行するという旨を規定いたしております。
第二項といたしましては、先ほど御説明申上げましたように、包括せられました専門学校、師範学校及び青年師範学校に在職いたしまする職員は、別に辞令を発せられないときは昭和二十六年三月三十一日限り職員の身分を失うということに規定いたした次第でございます。
以上概略御説明申上げました。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/3
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004・堀越儀郎
○委員長(堀越儀郎君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/4
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005・堀越儀郎
○委員長(堀越儀郎君) 速記始めて。それでは次に宗教法人法案の提案理由を政府委員会から説明を承わることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/5
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006・水谷昇
○政府委員(水谷昇君) 只今上程になりました宗教法人法案について御説明申上げます。
現在、我が国における神社、書院、教会、教派、宗派、教団等の宗教団体の数は約二十万に上つております。これらの宗教団体は、全国の都市、農漁村、山間僻地に至るまであまねく存在し、おのおのその独自、特有の宗風と伝統の下に、道義、思想、文化等名般に亘つて国民の生活に深い繋がりを持ちつ活動しているのであります。この点に鑑みますとき、宗教団体の法的地位を如何に規定するかということは、現在置かれております我が国の地位、実情から申しまして誠に重大な問題と言わなければなりません。而も、日々刻々の国民の生活の基盤に関し直接に重大な関係があるだけに、宗教団体に対する正常且つ公明な位置付けは一日といえども忽せにできない問題であります。
現行の宗教法人令は昭和二十年十二月二十八日勅令第七百八十九号を以つて公布されたいわゆる「ポツダム勅令」でありまして、「政治的、社会的及び宗教的自由に対する制限除去の件」に関する連合国最高司令部覚書によつて廃止を命ぜられた旧宗教団体法に代つて、宗教団体の財産の保全のための善後措置として早々の間に制定ざれたものであります。
従つて、民主的立法の原則に則つて、宗教法人制度を法律を以て規定する必要が痛感されたのであります。又、一方におきまして、同令は現下の宗教界の実情に照らし、又過去五年有余の実施のあとを顧みましたとき、不備の点も少くなく、他方におきまして信教の自由の基盤の上に立つ新たな宗教法人制度の確立が各方面から要望される実情にあつたのであります。
ここにおきまして、政府は年来慎重な研究を続け、古い伝統を持つ我が国の複雑多岐な宗教事情に即応すると共に宗教法人の特殊性と自主性を重んずる新たな宗教法人制度について、その構想を得るに至りましたので、ここにこの法律案を提出することとした次第であります。次にこの法律案の骨子となつております主要な点について申上げます。
この法律の目的といたしますところは、宗教団体に法人格を與え、宗教法人が自由で且つ自主的な活動をするための物的基礎を獲得させることであります。これがためには、飽くまでも信教の自由と政教分離の原則を基本としなければならないと考えます。それと共に、宗教法人の責任を明確にし且つその公共性に配慮を拂うことも又忘れられてはならないのであります。このような趣旨から、この法律案は常に自由と自主性、責任と公共性、この二つの要請を骨子として全体系が組み立てられておるのであります。
この法律案は、以上のような考えに基きまして現行法令に比較し、かなりの制度的改正を試みているのであります。
第一に、宗教法人の規則の作成、規則の変更、合併等に関する認証制度を設けたことであります。現行宗教法人令におきましては、宗教法人の設立はいわゆる準則主義、登記主義によつておりまして、宗教法人はみずから規則を作成して登記をすれば成立するのでありまして公益法人の成立の手続としましては多分に考慮の余地があると考えられます。そこで、この法律案におきましては、信教の自由に対する慎重な配慮の下に、宗教法人の規則の作成等について所轄庁の認証を要することとし、これによつて、宗教団体でないものが宗教法人になつたり、法令に適合しないような規則の作成や設立の手続がなさることを防止いたしたのであります。
この認証は飽くまで宗教団体の立場を尊重いたしまして、所轄庁に認証すべき期限を設けるとか、再審査、訴願の途を講ずるとか、愼重な手続を定めております。更に往々にしてありがちな行き過ぎになるようなことがないように、又この法律の公正な運営ができるようにとの配慮からつ、文部大臣の諮問機関として文部省に宗教法人審議会を設け、所轄庁の認証拒否の場合や再審査や訴願の場合は同審議会の意見を求めなければならないことといたしておるのであります。
第二に、宗教法人の管理運営面において民主化を図つたことであります。現行宗教法人令におきましては宗教法人の執行機関として主管者を置き、これを補助する氏子、崇敬者、檀徒、教徒及び信徒の総代三人以上を置くことを定めておりますが、この法律案におきましては、責任役員制と公告制とを設けておるのであります。宗教法人の事務決定機関として責任役員は三人以上を置き、その中の一人を代表役員とし、宗教法人を代表する者といたしたのであります。併しながら、これらの代表役員及び責任役員の資格、任免、職務権限等は宗教法人の特性に応じて自由にその規則で規定できでるのであります。又これらの役員の業務執行の公明適正を図る一方、不動産の処分等の財産管理上の重要な行為や、合併、解散等の宗教法人にとつて重大な身の振りかたに関する行為は、あらかじめ信者その他の利害関係人に周知させる公告の制度を定めて、宗教法人の公明な運営と自主性の発揮を期待すると共に、その公共性を重んじているのであります。
第三に、宗教法人の合併を認めたことであります。現行宗教法人令におきましては、宗教法人の合併に関する規定がないため、宗教法人がこうむつていた不便も少くなかつたのであります。この際宗教界の要望に応えて合併の制度を設けたわけであります。
最後に、経過的措置であります。先ず宗教法人令による宗教法人はこの法律施行後一年半以内にこの法律の規定に基いて作成した規則について所轄庁の認証を申請し、新しい宗教法人となる途を開いたのであります。それと共に長い宗風と伝統を尊重する意図の下に宗教界に急激な変化を招来することを避けるため、現行の宗教法人は、原則としてこの法律の規定による認証を受けるまでは現行の宗教法人令による宗教法人として存続しうるように配慮いたしているのであります。その他、登記簿の手続規定や民法等の準用規定や解釈規定をできるだけこの法律の中にとり入れてこの法律の趣旨を明確にし、宗教団体の便宜を図ると共に宗教行政事務の円滑な運営に資していることもこの法律案の特色の一つと言えるのであります。
以上、この法律案の趣旨及び大要について申し述べたのでありますが、この法律案が成立施行せられますならば、宗教法人の社会性を明確にすると共に、その特殊性を確認することによりまして、宗教界の要望に応え、国民の福祉に寄與するところが極めて大きいことを確信するものであります。何とぞ、愼重御審議の上、速かに議決下さるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/6
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007・篠原義雄
○説明員(篠原義雄君) 只今宗教法人法案の提案理由の説明がありましたが、私は、その補充の意味で、この法案の大綱について御説明申上げたいと存じます。
この法案の目的といたしますところは、第一條において明らかでありますように、宗教団体が憲法で保障されております信教自由の基盤の上に、その独自、特有の宗風と伝統を存続しつつ、自由かつ自主的な活動をするための物的基礎を確保することにあります。即ち家教団体の財産権の主体性を明らかにすることであります。これがためには、飽くまでも信教自由の原則、延いてはそれが国政との関係において生ずる政教分離の原則を十分に考慮しなければならないと考えます。このことは、自由の尊重と共に、責任の明確化と公共性の配慮ということが必要となつて参るのであります。以上の趣旨から、この法案は常に自由と自主性、責任と公共性を主眼とし骨子として全体系が組立てられておるのであります。
以下、本案の大綱について、やや詳しく章を追つて御説明申上げます。
第一條におきまして、この法律の目的は、宗教団体に法律上の能力を與えること、即ち、宗教団体が法人となり得る道を開くことにあることを明らかにしております。そして、宗教団体は、法人となることによつて、その宗教団体の名において、財産を所有し、これを運用することもでき、その他宗教団体の目的を達成するための業務や事業を運営する上に役立つこととなり、宗教団体自体の目的達成を容易にすることともなるのであります。この法律の目的は飽くまで憲法の保障する信教の自由を尊重する点に立脚し、決して宗教上の行為にまで触れるものではないことを明らかにしておるのであります。
第二條は、この法律で「宗教団体」と申しますのは、宗教の教義を広めること、儀式行事を行うこと、信者を教化育成すること、この三つを主たる目的とする団体を指しておりまして、神社、寺院、教会のような、いわゆる單位団体では礼拝の施設を具備していることを予想しておりますし、又教派、宗派、教団のような、いわゆる包括団体では、右の單位団体を二つ以上包括していることを予想しておるのであります。
只今、礼拝の施設ということを申しましたが、本殿、拝殿、本堂、会堂などの礼拝の施設のほかにも、宗教法人の主たる目的のために必要な固有の建物や工作物や土地がありますが、これらを、この法律では「境内建物」または「境内地」と呼ぶことにしております。
第五條は、所轄庁に関し規定しておりまして、神社、寺院、教会などの單位団体の所轄庁は、都道府県知事として、教派、宗派、教団などの包括団体の所轄庁は原則として文部大臣としております。
第六條は、公益事業又はその他の事業に関する規定でありまして後者の事業に伴う收益は宗教法人の目的にそつて使用されなければならない趣旨で、若しこれに違反すれば第七十九條の規定により、所轄庁からその事業の停止を命ぜられることが規定されておるのであります。
第七から第十一條までにおきましては、宗教法人の住所、能力、責任などにつき民法の規定をとり入れ、又、登記の効力、登記の場合の届出に関して規定しております。
第二章におきましては、宗教法人の設立に関する事項を規定しております。第十二條には、設立に関する内部的手続として、民法法人の定款に該当する宗教法人の規則を作成して、その規則について所轄庁の認証を受けるべき旨を規定しております。
宗教法人の規則の記載事項に公告の方法がありますが、この公告は、宗教法人の設立、財産処分、被包括関係の設定廃止、合併、解散等の場合に信者その他の利害関係人に対して行うもので、宗教法人の公明適正な運営と自主性を考慮した制度でありまして公告の方法は登記事項としております。
宗教法人設立の旨を公告いたしましてから、所轄庁に規則の認証を申請し、その認証を受けた後、設立の登記をいたしまして、ここに宗教法人が成立するのでありまして、第十三條から第十五條までにその旨が規定してあります。
所轄庁は、認証の申請を受理いたしますと、三カ月以内にその規則を認証する旨の決定か、又は認証することができない旨の決定することになつております。この場合、文部大臣が認証することができない旨の決定をしようとするときは、宗教法人審議会に諮問しなければならないことになつております。
現行法におきましては、設立の登記後に所轄庁に届け出ることになつておりますが、本法におきましては登記前に所轄庁から認証を受ける制度をとつているのであります。これによりまして自由を濫用して宗教団体でないものが宗教法人となつたり、甚だしく不備で法令に違反するような規則を持つ宗教法人ができて一般取引の安全を害したりするような虞れを防止することが期待されるのであります。本法で認証と申しておりますことは、第十四條にもありますように、当該団体が第二條に規定されているような宗教団体であり、又、規則や手続が法令の規定に適合しているものであることを所轄庁において確認する行為でありまして事実について認定して公の権威を以て宣言するにとどまり、それから如何なる効果が生ずるかは、專ら法律の定めるところによるのでありまして、その行為をした所轄庁の意思によるものではありません。この点、第三者の法律行為を補充してその効力を完成させる認可とは性質上の差違があると存ずるのであります。又、認証には、宗教そのものの正邪曲直、新旧大小の価値判断に亘るようなことは決して伴わないものであることはいうまでもありません。
認証につきましては、飽くまで愼重を期し、宗教団体の正当な利益が保護されるよう、宗教法人審議会の諮問その他慎重な手続に関する定めをするほか、再審査と訴願が第十六條及び第十七條規定せられておるのであります。
第三章は、宗教法人の管理に関する規定でありまして、宗教法人の役員として本法で定めておりますものは、代表役員、責任役員、代務者、仮代表役員、仮責任役員及び清算人であります。
現行法では宗教法人には総代三人以上を置くべしという規定がありますが、この総代の規定は廃止いたしまして、責任役員を三人以上置かなければならないことになつております。この責任役員は必ずしも総代の代りではありませんから、その資格、任免、職務等はその宗教法人の特性に応じてみずから定めることにおります。規則に別段の定めがなければ、宗教法人の事務を、責任役員の定数の過半数で決し、その議決権はおのおの平等ります。代表役員も責任代表役員も責任役員の一人としてその責に任じますが、宗教法人の事務の総理の権限及び代表権は代表役員にあるのでありまして、この点、現行法の主管者に相当するものであります。第十八條から第二十條までの規定におきましては、責任役員及び代表役員並びに責任役員及び代表役員の代務者に関する定をいたしております。第二十一條は、民法第五十七條の特別代理人に相当する仮代表役員及び仮責任役員の規定であります。
第二十三條は、宗教法人のうち、單位団体が、重要財産について法律上の処分をしたり、境内建物や境内地について事実上の処分をしたりする場合には、原則として、あらかじめ規則で定めるところによるほか、公告をしなければならないという規定であります。現行法では、重要財産として不動産のほかに、神社寺院教会財産登記簿に登記されている宝物と基本財産たる有価証券とが掲げられておりますが、この財産登記制度は従来殆ど利用されないので廃止いたしました。この宝物と、境内建物、境内地たる不動産につきましては、規則で定めるところによらなかつたり、又は公告をしなかつたりして、これを処分し又は担保に供しますと、その行為は無効になることになつております。このことは、従来の方針を尊重し、宗教法人の重要な財産である宗教財産の流出を防ぐ趣旨でありますが、一方、取引安全の趣旨から、善意の相手かたや第三者に対しては、その無効を以つて対抗できないことといたしました。
第四章は規則の変更に関する規定でありまして、宗教法人が規則を変更しようとするときは、先ず内部的手続として規則所定の手続を済まし、対外的手続として所轄庁の認証を受けなければならないことになつております。第二十六條から第二十八條までには右の手続を規定しております。第二十九條は、規定の変更について認証できない旨の決定があつた場合の再審査及び訴願に関する規定であります。規則の変更は、設立の場合のように登記によつて効力を生ずるのではなく、規則の変更に関する認証書の交付によつて効力を生ずることになつております。ここに規則の変更の手続として注意すべきことは、第二十六條第一項後段と同條第二項から第四項までに規定しておりますところの包括団体との被包括関係の設定、廃止にかかわる規則の変更に関する規定であります。現行法ではこの点が必ずしも明確ではありませんので、本法におきましてはこれを明らかにし、当該宗教法人の規則中に、包括団体からの脱退について、包括団体が一定の権限を有する旨の規定があつても、その権限に関する規定にようなくてもよい旨を規定し、認証申請前に、信者その他の利害関係に対して脱退又は加入の旨を公告し、脱退の場合には現在の包括団体に対してその旨を通知し、加入の場合には加入先の承認を受けなければならないことになつております。
脱退、加入に関する根本的自由を認める考えは現在と変りませんが、單に主管者と数人の総代との意思によつて決定されているのと比べて、より公明であり、より民主的であるということが言い得るのでありまして、従来往々見られたような紛議の防止に役立つものと期待されるのであります。
第五章は合併に関する規定でありまして、これは現行法にはない規定であります。この合併に関する規定を設けましたことによつて、現在の解散をして清算手続を経なければ合併と同じような結果が得られないという不便を取除き、清算手続を経ないで権利義務の包括的承継ができることになるのでありまして、教化力を強化するための合併要望の傾向が地方に見受けられる事情から見まして特に必要な措置と考えます。
合併は、信者その他の利害関係人に対する公告、財産目録等の作成、債権者に対する催告と、所轄庁の認証とが必要とされております。第三十三條及び第三十四條の規定がこれで、第三十五條には、吸收合併の場合における規則の変更のための手続、新設合併の場合における規則の作成と設立の旨の公告、又第三十六條には、合併に伴う被包括関係の設定、廃止の場合における公告、承認、通知について規定されております。
第三十八條及び第三十九條は合併に関する認証の申請と認証の決定などの規定でありまして、第四十條には、合併に関する認証についての再審査と訴願の道を規定しております。合併の効力は、設立の場合と同様登記によつて生ずることになつております。
第六章は解散に関する規定でありまして、第四十三條に、解散の事由として任意解散と六種の法定解散を規定しております。
任意解散の手続といたしましては、合併の場合と同様、規則所定の手続、信者その他の利害関係人に対する意見を申述べる旨の公告、それから所轄庁の認証が必要でありまして、解散の認証に関する再審査と訴願につきましても規定しておるのであります。
解散の効力は、任意解散の場合は解散に関する認証書の交付によつて生じ、法定解散の場合はその事由の発生によつて生ずることになつております。
第四十九條は清算人に関する規定でありまして、所轄庁の認証の取消と裁判所の解散命令に因る解散の場合の清算人は裁判所が選任する点が現行法と異なつております。
第七章は登記に関する規定でありまして第一節の法人登記の規定は、現行の宗教法人令施行規則の定めるところと大差なく、合併に関する登記が新たに加わつた点が異なる程度であります。
第二節の礼拝用建物及び敷地の登記も現行法と殆んど同じでありますが、第六十九條第一項後段の規定に、礼拝の用に供する建物の敷地として登記した土地が、分筆や移築によつて礼拝の用に供する建物の敷地でなくなつた場合は、登記の抹消しなければならないという規定などが加わつております。
第八章は宗教法人審議会に関する規定でありまして、これは文部大臣の諮問機関として、文部省に設置され、認証その他この法律によりその権限に属せしめられた事項について調査審議する機関であります。委員は十人以上十五人以内とし、宗教家及び宗教に関し学識経験がある者について文部大臣が任命することになつております。この審議会の設置によりまして、所轄庁によるこの法律の適正な運営が期待されるのであります。
第七十九條は被包括関係の廃止を防ぐことを目的としたり、これを企てたことを理由として、当該宗教法人の役員に対して、不利益な取扱をしてはならないとし、その役員の身分を保障する一方、被包括関係を廃止した宗教法人も従前の債務履行の義務は免かれないという規定であります。
第七十九條は、事業から生じた收益を所定の使途に使用しない場合は一年以内の期間を限つて、所轄庁がその事業の停止を金ずることができる規定であります。
第八十條は認証の取消に関する規定でありまして、所轄庁は、設立又は合併の認証をした場合に当該団体が宗教法人の前提である宗教団体でないことが判明したときは、認証書交付の日から一年以内に限り、その認証を取消すことができるという規定であります。この事業の停止と認証の取消は宗教法人審議会の意見を聞いた上でなければできません。又、この停止と取消のいずれの処分に対しても訴願をすることができることになつております。
裁判所が解散を金ずることができる事由は五つ規定されておりまして、(1)法令に違反して公共の福祉を明らかに害する行為があつたこと。(2)宗教団体の目的を著しく逸脱し又は一年以上その目的のための行為をしないこと。(3)礼拝の施設を二年以上備えないこと。(4)一年以上代表役員も代務者も欠いていること。(5)認証書交付の日から一年以上を経過した後において、所轄庁の認証の取消の事由に該当することが判明したことの五つであります。
裁判所による解散命令は、職権と検察官の請求によるほか、更に所轄庁や利害関係人の請求によつてもできるようになつた点が、現行法と違つております。
第八十三條におきましては、礼拝用建物及び敷地に対する差押禁止の規定で現行法の精神を踏襲しております。
第十章は罰則の規定でありまして、認証申請の添附書類に不実の記録があつた場合、その地法が要求しております公告、届出、登記等一定の手続を履行していないような場合に、一万円以下の行政罰たる過料を科することになつております。
最後に附則について申し上げます。この法律は公布の日から施行され、その施行の日から宗教法人令とその施行規則を廃止することこなつておりますが、この法律施行の際、現に存する宗教法人令による旧宗教法人につきましてはこの法律による新宗教法人となるまでは、旧宗教法人として存続することができることになつております。
従つて、宗教法人令とその施行規則は、旧宗教法人が存続する限り、本法施行後もなお効力があるのであります。
旧宗教法人が新宗教法人となるのには、本法中宗教法人の設立に関する規定に従わなければならないのでありまして、第五項にその旨を規定しております。又宗教法人令では合併に関する規定がありませんので、二つ以上の旧宗教法人が合併しようとする場合は、新宗教法人の設立に関する規定に従つて一つの新宗教法人となることができる道を第六項において開いております。
旧宗教法人が新宗教法人となる場合は、合併の場合も本法の設立の登記によるのでありまして第六十一條第二項に掲げる「宗教法人登記簿」に記載されるのであります。これに反し、宗教法人令によつてなされた公衆礼拝用建物及び敷地の登記は本法による登記とみなされます。
旧宗教法人が若し被包括関係を廃止しようとする場合は、新宗教法人どなることに伴う場合に限りこれをすることができることとし、公告と同時に通知の手続をとらねばならないことを第十三項及び第十四項に規定しております。
旧宗教法人が新宗教法人になるには、本法施行後、一年六カ月以内に認証の申請をしなければなりません。所轄庁は認証の申請を受理してから一年六カ月以内に認証に関する決定をしなければならないことになつております。若し、本法施行後一年六カ月以内に認証の申請をしなかつた場合はその旧宗教法人は解散するのであります。
第二十二項では旧宗教法人のうち教派、宗派又は教団で新宗教法人となつたものの所轄庁は文部大臣とする旨を定めております。
第二十三項以下は、本法の施行に伴う関係法規の改廃に関する規定であります。
以上、この法案の上人綱について御説明申し上げましたが、この法律におきまして、特に留意いたしました点は、宗教の自由と平等、宗教法人の特性と自主性の尊重に最大の注意を拂いつつ、現行法の長所をとり入れ、その短所を補い、その運営が宗教団体及び一般国民の福祉の増進に積極的に寄與するよう苦心したということであります。この法案の成立につきましては宗教界から大きな期待がかけられておる次第でありまして何とぞ、愼重御審議の上、速かに議決下さるようお願いいたします。
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/7
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008・堀越儀郎
○委員長(堀越儀郎君) それでは次に教科書の発行に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の提案理由の説明を伺うことにいたします。発議者、衆議院議員佐藤重遠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/8
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009・佐藤重遠
○衆議院議員(佐藤重遠君) 提案者を代表いたしまして理由を御説明申上げます。私は佐藤重遠でございます。
新しい教科書検定制度実施以来、民間企業による教科書の出版は盛んに行なわれ、現在では小、中、高等学校の教科書を発行する者が七十五社、教科書の点数一千六百六十八点、発行部数約二億五千万冊を算えるに至り、我が国の教科書は質、量ともに非常に向上いたしたのであります。
ただ教科書の定価は、教科書の持つ教育的な性格に鑑み、でき得る限り廉価で供給するため、嚴格な定価算定方式によつて抑制されております。そこで教科書発行者の経営は相当に苦しく、教科書製造資金の調達には多大の困難を感じておるのであります。従いましてこのような教科書発行者の経営上の困難を、成るべく定価の高騰を来すことなく、軽減することができ得るような措置をとることか必要なのであります。教科書の発行に関する臨時措置法は、教科書の需要供給の調整を図り、発行を迅速確実にし、適正な価格を維持することを主たる目的とする法律であまりするが、同條中に、教科書の供給を完全にするため、教科書発行者から定価の三分にあたる保証金を徴するという規定が設けられております。併し先にも申上げましたように、教科書の発行部数が法律制定当時に比べて激増し、又資材の値上り、色刷教科書及び営業費の増加等によりまして、教科書の定価が高騰したため、保証金の金額は多額となり、莫大な教科書製造資金の調達に苦しむ教科書発行者に、過重な負担となつているのであります。併し一面このように保証金の金額が多額になつているということは、保証金の率を減少しても、保証金として十分な金額が徴收できることを意味するものと考えられるのでございます。そこでこの保証金の率を減ずることによつこ、教科書の定価に影響なく、教科書発行者の経営上の困難を軽減し、併せて教科書の製造供給を一層円滑にしたいと存じまして分回本法案を提出いたしましたような次第でございます。
詳細の点は説明員から説明申上げますが、何とぞ愼重御審議下さいまして、速かに法案が成立いたしまするように特段の御配慮をお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/9
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010・堀越儀郎
○委員長(堀越儀郎君) それではいずれ資疑を始めましたときに更に詳細な説明を承わることにいたしまして今日はこれでとめることにいたします。
明日は更に提案されておりまする国立大学管理法案、公立大学管理法案、国立大学管理法及び公立大学管理法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案の提案理由を承わることにいたします。
本日はこれで散会をいたします。
午前十一時四十一分散会
出席者は左の通り。
委員長 堀越 儀郎君
理事
加納 金助君
若木 勝藏君
委員
川村 松助君
荒木正三郎君
梅原 眞隆君
高橋 道男君
大隈 信幸君
矢嶋 三義君
岩間 正男君
衆議院議員
佐藤 重遠君
政府委員
文部政務次官 水谷 昇君
文部省大学学術
局長 稻田 清助君
文部省調査普及
局長 關口 隆克君
事務局側
常任委員会專門
員 石丸 敬次君
常任委員会專門
員 竹内 敏夫君発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015115X01619510308/10
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