1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年五月二十一日(月曜日)
午前十時四十一分開議
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議事日程 第四十三号
昭和二十六年五月二十一日
午前十時開議
第一 港湾運送事業法案(本院提出、衆議院回付)
第二 利根川開発法案(石川榮一君外百十二名発議)(委員長報告)
第三 審議会等の整理のための総理府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第四 審議会の整理等のための農林省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第五 審議会等の整理のための建設省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第六 審議会の整理等のための経済安定本部設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第七 審議会の整理等のための厚生省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第八 審議会等の整理のための国立世論調査所設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第九 審議会等の整理のための地方自治庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第一〇 審議会等の整理のための大蔵省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第一一 審議会の整理等のための通商産業省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第一二 審議会の整理等のための運輸省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第一三 特別調達庁設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第一四 外務省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第一五 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第一六 国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/0
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001・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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002・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。
この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。議席第十三番、地方選出議員、大阪府選出、中山福藏君。
〔中山福藏君起立、拍手〕
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003・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 議席第五十四番、地方選出議員、大阪府選出、溝淵春次君。
〔溝淵春次君起立、拍手〕
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004・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 一昨十九日議決いたしました弔詞を、議長は衆議院議長と共に同日午後皇居に参内し、田島宮内庁長官を経て捧呈いたしましたところ、天皇陛下におかせられましては、衆参両議院において深厚なる弔意を表しましたことに対し深く感謝する旨、並びに両院議長へよろしく謝意を伝えるようにとの優渥なるお言葉を賜わりました由、宮内庁長官からお話がございました。
以上御報告を申上げます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/4
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005・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第一、港湾運送事業法案(本院提出、衆議院回付)を議題といたします。
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006・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これより本案の採決をいたします。本案の衆議院修正に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔起立者多数〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/6
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007・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は衆議院の修正に同意することに決定いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/7
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008・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第二、利根川開発法案(石川榮一君外百十二名発議)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。建設委員長小林英三君。
〔小林英三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/8
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009・小林英三
○小林英三君 只今議題となりました利根川開発法案につきまして、建設委員会の審議の経過並びに結果につきまして御報告申上げます。
本法案は、利根川流域が我が国において占める重要性に鑑み、積年莫大なる額に上る災害を防除し、その包蔵する未開発水資源の最大限の開発を図るため、総合的且つ基本的な開発計画を樹立いたしまして、これに基く事業を強力且つ迅速に実施することを目的とするものであります。建設委会員は、本案に対しまして提案者の説明を聴取すると共に、関係当局の意見を徴し、又内閣、経済安定、地方行政の三委員会と連合委員会を開きまして、愼重なる審議をいたした次第であります。
審議の詳細は速記録によつて御了承を願いたいと思うのでありまするが、本法案の内容につきましては、第一は利根川開発計画に関するもの、第二は利根川開発庁に関するもの、第三は利根川開発審議会に関するもの、第四は関係行政機関、地方公共団体に関するもの及び利根川開発のための特別法人に関するものなどであります。これに関しまして提案者からは、提案理由といたしまして、利根川流域の重要性、豊富なる未開発資源等について各種の資料によりまして説明すると共に、一方、利根川の逐年の災害状況と沿岸住民の深刻なる苦悩犠牲の実情が述べられ、現状のごとき行政機構及び事業の進行を以てしては、災害の根本的防除と資源の総合的開発は百年河清を待つがごときものである。よつてこれらに対処するため本法案を提出するに至つた理由と、本開発事業の概略及び経済的効果等が詳しく述べられたのであります。
質疑応答の主なるものといたしましては、先ず本法案と国土総合開発法との関係と、新たに利根川開発庁を設置するの可否に関するものであります。即ち一委員から、現在の国土総合開発法の運用によつて利根川の開発は図れるのではないか、又新たに開発庁を設けることは行政簡素化に背馳するものでないかという質問があつたのであります。これに対しまして提案者からは、国土総合開発法というものは全国を対象として單に総合開発計画だけの樹立を図るにとどまつておつて、同法施行の現状は未だ各都府県の計画作成の準備段階にあるに過ぎぬばかりでなく、国土総合開発審議会及びその事務局の機構を改め、拡充強化するといたしましても、緊急を要する利根川の現状は到底これが解決に期待することは至難である。又新たにこの開発庁を設置する理由は、今日の各関係機関の割拠主義に対処して、総合的な基本計画を樹立し、事業を強力に推進するためには、中央にこれを専管する機関を設置する必要があるのである。緊要なる部門に対して新たに最小限度の機関を設けることは、行政簡素化の趣旨に違反するものではないという答弁があつたのであります。次に他の委員より、本案の例に倣つて他の重要河川についても同じような問題が生ずるのではないかとの質問に対しまして、提案者の答弁といたしましては、それは予想されるところである。併しながら各河川にはそれぞれ重要度、緊要度乃至は事業の経済的効果の大小等、おのずから差異があり、又かかる問題が全国的に取上げられるようになるならば、行政の重点がこれに指向されるわけであつて、これに対応する行政機構の改革も必至となるものと考えるとの意見があつたのであります。このほか本法案の利根川開発に対する調査若しくは準備の状況、事業完成年限、従来の公共事業との関係、その予算計上の取扱、閣議による計画決定の程度等、多くの質疑応答があつたのであります。
更に連合委員会におきましては、経済安定本部長官、建設、農林、大蔵各大臣、地方自治庁長官等の出席を求めまして、重要なる質問と意見の開陳があつた次第であります。その要旨は、一委員より、本法案の目的とするところは国土総合開発法の運用によつて実現し得ると考えるが、政府の所見如何との質問に対しましては、経済安定本部長官は、同法施行以来地方ごとに計画を立てると共に、これを全国的に総合するために作業が進められており、都府県の計画が漸次提出されつつあり、又重要河川や未開発地域に対する総合開発も検討されつつある。古来重大問題である利根川水系の開発の必要はもとより認めるところであるが、それは国土総合開発法によつて進める考えであるとの答弁があつたのであります。次に一委員より、国土総合開発法の運用に関する諸問題のほか、本法案が成立する場合、河川行政が全国的の一元性を害されるがごときことはないだろうか、又仕事は建設省が担当するにかかわらず、計画は開発庁が決定することは、事業の円滑なる執行を害するのではないかという質問があつたのであります。これに対しまして建設大臣は、開発庁は企画官庁である、企画に当つては現業担当機関の意見を徴するので、必ずしも全国的調和が害されるとは思わない、セクシヨナリズムの打破、円滑なる事業の執行の点については、懸念がないでもないとの答弁があつたのであります。又、一委員より、開発庁は企画官庁としても、利根川流域だけを切離すことは全国的調和を破る虞れがあり、特に開発事業を十ケ年間に完成するという規定は重大である、所見如何との質問に対しまして、建設大臣といたしましては、第九條は訓令的規定であると考えるとの答弁があつたのであります。この点につきまして提案者に意見を求められたに対しまして、提案者は、事業完成の目途を定めることが必要である。我が国財政経済は今後十年間には飛躍的発展が期待されるに対し、一方、利根川流域の災害は過去において一カ年一千億円を超えるがごときことがあつた事実に徴しましても、事業費一千九百億円は決して厖大なるものでないと考える。又法案には利根川開発のために特別法人の成立を予定しており、従つて事業の性質によつては、財政支出のほか、民間資金、外資の投入も考えられるとの意見であつたのであります。次に一委員より、本案開発事業費に対する財政計画と、これに関連いたしました公共事業費、及び地方公共団体の起債の枠、そのほか本法案と地方団体の自主性及びその負担等について質問があつたのでありましたが、これにつきましては、大蔵大臣、地方自治庁長官から、我が国財政の現状は個々の事業に対して五年十年に亘る財政計画を定めることは困難であり、公共事業費及び起債の枠については、今後の我が国財政経済の状況から総合的に定めるほかはない旨、又本案は別に地方自治を害するとは考えぬが、特別法人の性格如何についてはその際十分検討を要する旨の答弁があつたのであります。
かくいたしまして、四回に亘る連合委員会を終えた後、更に五月の十九日、本委員会を開きまして、質疑を終了、討論に入りましたところ、赤木委員と東委員より反対、岩崎委員と小川委員より賛成討論があり、採決の結果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/9
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010・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 本案に対し討論の通告がございます。発言を許します。赤木正雄君。
〔赤木正雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/10
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011・赤木正雄
○赤木正雄君 私はこの法案に反対するものであります。
この法案は、利根川流域の資源を総合的に開発し、利用し、及び保全して、災害の防除と産業の振興に資することを目的としていますが、第四條の基本計画に揚げておる事業の種類から見ても、又審議に際して発議者の説明からしても、主として利根川の治山治水の完遂を望むものであります。御承知の通りに、国土総合開発法がすでに制定されていて、このうち都府県総合開発計画に属するものがこの利根川開発法とも言えますが、都府県は国の方針とかけ離れた計画を立ててはならないので、このため国土総合開発審議会を設置するように法律に規定しております。発議者は、国土総合開発審議会の活動が不十分であること、又審議会はただ審議にとどまつて実行機関ではない。然るに利根川の荒廃の状況を見ては一日も放置することができぬから、あえてこの法律案を提出すると言われますが、審議会が十分の活動をせぬようなら、その不備の点を改めてよく審議会の目的を果すように改めるのが国会の責務であります。又、今日総合開発すべき事柄はたくさんありますが、我が国の経済の現状と総合開発の結果もたらす利益等、あらゆる視野から十分審議検討を加えて、いずれの総合開発から第一に着手すべきか、工事の内容と施工の順序を決定するのが国土総合開発審議会の重要な役目であり、この審議会の結果の公表によつて、全国民は初めて納得し、工事も容易にでき得るものと言わねばなりません。
又発議者は、本案の制定により完全なる利根川治水計画を立てると言われまするが、利根川は昭和十三年の水害によりまして増補計画ができましたが、その後昭和二十二年の大災害の結果、愼重な審議の結果、すでに利根川改訂大計画は完成しておるのでありまして、今では單にこれに投ずる工費の如何にかかつておるのであります。本法案によりますと、昭和二十八年から向う十カ年間に、この利根川開発を完成しなければならないとしておりますが、一体その費用は発電事業を除いて一千九百億円を要し、即ち年平均百九十億円を必要として、その主たるものは治山治水でありますが、昭和二十六年度の国全体の治山治水事業費は僅かに百十億六千二百三十二万円であります。なお詳細に国で直轄施行の河川費について見ますと、八十七億七千七二万九千円を以て利根川初め全国七十四河川に仕事をせねばならんという今日の状態であります。治山治水事業は、終戰後の今日においては各地方における連年の惨害から、いずれの地方におきましても、もはや放置を許さない状態でありまして、決して一地方に限つて大部分の国費を投入することはできないのであります。各河川の災害の多少と、これに要する治山治水費の総額と、又工事施行によつて受ける直接の利益等これらを十分吟味して国費の按分に当るのが今日のこの貧弱な財政におきまして公共事業費を公平に按分するゆえんであります。現に利根川流域の直轄河川改修費が他の河川に比較して多額の国費を投ぜられているのもそれがためと考えられます。私は治山治水の公共事業費を少しでも増額されるためには及ばずながら年々努力して参りました。又利根川についてもあらゆる方面をよく検討し、随分苦労しておる一人であります。大蔵大臣が言明されたごとく、我が国の経済の現状からしては利根川開発のみに継続費を計上してかかる巨額の費用を投ずることは到底不可能であるのみならず、万一この法案が通過すれば、少くとも現在施行中の七十数河川の直轄河川流域においてもこれと類似の法案が提出さるることは当然であります。この法案を、内閣、地方行政、経済安定及び建設の連合委員会において愼重に審議した席上におきましても、政府は本法案に反対の意思を明らかにされました。むしろ本法案の不成立を要望されたのであります。私は、政府の考えの如何にかかわらず、折角我々が制定したあの国土総合開発法、これを持ちながら、その法律を十分生かすことなく、その法律の意義を没却するようなこの法案を制定することは、参議院の使命として決して賛意を表し得ない。この意味から反対するものであります。(「うまいぞ」と呼ぶ者あり、拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/11
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012・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 岩崎正三郎君。
〔岩崎正三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/12
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013・岩崎正三郎
○岩崎正三郎君 私は本法案に対しまして賛成の意を表するものでございます。今日いろいろ国土総合開発の問題が論じられておりますが、これは日本の経済の自立を促進するためには最も基本的な問題であります。そこで私どもは、この国土総合開発の問題を本気でやるためには、今日の国土総合開発法のかような現実の状態においては断じて不可能であると思う。それはすでに衆議院の建設委員会の報告を見ましても、我々参議院の建設委員会の調査によりましても、今日の国土総合開発法の実態、その実施或いは調査の実情を見ましても、さようなことは明白にわかつておるのであります。それであればこそ今日各党派におかれましても、この国土総合開発というものに対しましては真剣に御研究になつておることは御案内の通りであります。特に昭和二十二年以来非常な災害によつてその困難な立場に置かれておるところの関東一部五県においては、その苦しみ或いは悩み、この問題に対する真剣な希望が一千五百万の住民から脈々として起つておることは、全国におけるところの総合開発という問題と関連しておりまして、これは重大なる問題であります。今、関東一部五県の諸君がこの問題を提げておるということは、單に関東一部五県の問題でなくして、全国におけるところの総合開発の問題というものを真剣に取上げねばならんう事実が起きておるということを、我我看取せざるを得ないのであります特にこの関東の地は昔から関東の力を以て当れば全国の力に当ると言われておる。今日関東一部五県の米の生産高は全国の二割に達し、麦においては四割二分を越すという。我々はこれを見ましても、今日荒廃しておるところのこの関東を本気になつて開発することが、日本のためには、全国のためには一群大切であろうということを申上げざるを得ないのであります。而も今日、今までの政府の計画を見まするならば、この利根川治水、単に建設関係、土木関係を見ましても、この利根川治水につきましては、今日の予算関係を以てするならば百年ぐらいたたなければ利根川流域は完全なるものにならぬ。百年河清を持つという言葉がありますけれども、百年待つておるならば、これは結局永久に利根川関係、関東関係の住民は塗炭の苦しみに悩まなければならんということは当然と申されるのであります。そこで私どもは、今この問題を、この切々たる要求を取上げて、今日利根川流域を本当に総合的に開発することが、利根川流域住民の希望ばかりでなく、全国民の希望でなければならんと私は考えるのであります。総合開発法の問題につきまして先ほど赤木議員が申されましたが、今日の総合開発法は先ほど申しましたごとくに誠に画に描いたぼた餅にもならぬような実情でございます。そういうものを便々として待つておるならば、多くの農民は、多くの国民は、いつになつてその生活の安定が希求せられましようか。私どもはこれを考えるときに、とにかく一歩前進させるためにこの法案を是非とも通さなければならんと、かように深く感じておる次第であります、今日利根川問題がかように皆さんに真剣に御研究を願つておることは、皆さんが如何に今日の治水治山というものがただ單に河川の土木的な災害の復旧のみによつて解決されないということを御承知であろうことと思うのであります。今日農林省関係或いは運輸省関係或いは通産省関係、さような関係が入り乱れておるためになかなか開発が進行しない。特に利根川のごとく大きな河川におきましては、その各省関係のいろいろの交錯のために、排水機の問題、干拓の問題、すべてが遅々として進まず、而も多くの国費が浪費されておる。これを見まするならば、私どもは何としましても総合的な計画を立て、而もそれと真剣に取組んで行かなければ、この問題は解決しないと思つておるのであります。あとからあとからいろいろな法案が出て来るだろうと言われておる。あとからあとから出て来ることは、これは今日の政府が十分にこの問題をやつておらないから、各河川を中心にしていろいろな法案が出て来るのは必然でありましよう。今からかような問題を一歩前進の形を以て解決をして行くということに、私は全国民の希望がここにあると私は深く信じております。どうか一つ、私どもは一千五百万の関東住民のこの心持は、恐らくこれは全国民の心持であろうと考えておるのであります。今いろいろな問題がありましようけれども、私どもはかような問題を一歩一歩解決するということ、一歩々々前進の姿に持つて行こうとする考えにおきまして本法案を提出しておられると思うのであります。幸いに賢明なる皆さんがたの御協賛に上りまして本法案が通過されるならば、恐らく私は今日の中途半端な国土総合開発法も必然に、完全なる、強力なる国土総合開発を振興するところの方向に持つて参れるであろうということを確信するのであります。
かような意味合いにおきまして、どうか賢明なる皆さんがたの心からなる御賛成をお願い申しまして、私の賛成演説に代える次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/13
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014・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 佐々木良作君。
〔佐々木良作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/14
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015・佐々木良作
○佐々木良作君 私はこの利根川開発法案に誠に遺憾でありますけれども反対をいたします。先ほど赤木君から反対の理由が述べられ、岩崎君から賛成の理由が述べられましたが、併し大体におきまして、この利根川開発法案をよく見ますと、赤木君が反対の理由を言われましたし、それから委員会の間でも相当いろいろなことを言われておりました。同時に又賛成者のほうの、提案者のほうの意向も大変ありましたけれども、併し今のところ大体私は両方ともナンセンスだと思います。大体におきまして、この利根川開発法ができても、利根川は今よりもこの数年のうちにはよくならぬと思う。それから又これをどうしても出さなければいかんと言われる地元民の関係だつて同じようなことだと思うのです。それから潰すほうとしましても、反対するほうの側に立つて見ましても、大体これは役所の連中は皆反対しておる。特に建設省その他中心の技術官僚が反対しておる。だもんだから、この反対のほう側に賛成すれば、役所のほうにあれは付いておると言われ、それから、この法案の賛成のほう側を一生懸命押せば、あれは実際にはできぬのにもかかわらず地元民の熱意に煽られてやつておるのだ、大体こういう殆んど内容的にナンセンスな法案自身に対して、この態度に対して、両方ともに遺憾である。そういう意味で私は反対するわけです。(笑声、「なかなかよろしい」と呼ぶ者あり)併しながら私非常に妙なことを申上げましたけれども、私は決して第一クラブを代表して言つておるのではありませんで、むしろ経済安定委員長としての立場から申上げたいと思います。(「ナンセンスだ」「いいぞ」と呼ぶ者あり)先ほど岩崎君が地元民或いは利根川云々と言われ、関東一帯と言われましたが、それならば、この開発法案によつて利根川開発がはつきりできるということを保証されますか。地元のかたがたがこの開発法のできることを非常に賛成され、或いは農民のかたがたが日照りの雨を待つごとくに待つておられるものはこの開発法の成立じやないと思います。この開発法の成立じやなくて、利根川の治水とそれから利水なんです。利根川を治めることと積極的に使うことを利根川の流域の人々は非常に望んでいるわけです。(「そればかりじやないよ」と呼ぶ者あり)利根川の開発と治水と利水とを望んでおらなくて利根川の開発法案を出すということはないでしようよ。そういう意味で私は話が非常にとんちんかんだと思うのです。(「もう少しはつきり言つてくれ」と呼ぶ者あり)それからこの法案の内容はいろんな意味がたくさんありますけれども、提案者のお話によりますと、これは計画法ではなくて実施法だと言われる。併しながら実施を促進するための内容は殆んどありません。そういう意味で、私は実施法と言われても、これはやはり実施法ではない。早い話が提案者自身もこれば総合的に計画を立てるのだと言われる。併しながら今の公共事業費を扱つている安本に対して、或いは建設省、或いは農林省その辺でやつている計画的なものは成るべくまとめろということが言われるけれども、実施は同じように公共事業費に基いて、農林省は農林省の分担により、建設省は建設省の分担により、これまで通りにやるのだというのです。これでは実施法ではない。前と何ら変りない。又予算をたくさん取ると言われますけれども、予算の問題は全然別の問題だと思う。予算の問題は今のままでも公共事業費を増せばよい。公共事業費を増してくれということを我々頻りにやつているのだが、なかなか予算のほうを出さぬで、それを私ども言つても、いつも出さぬから、これは自由党政府の責任だ。(笑声)どうも話がとんちんかんだ。(「国費だけじやない」と呼ぶ者あり)何ですか。(笑声、「やめろ」と呼ぶ者あり)それから今総合開発法の話が赤木君からなされましたが、総合開発法でも、ちつとも総合開発ができない仕組みになつている。或いは今岩崎が言つたように、本格的に総合開発をするためには、私ども実は一生懸命になつているのです。ところが出て来る法案出て来る法案が本格的な総合開発にちつともなつとりはせんで、本当の開発に力を誰も出さんでいる。早い話が、今の総合開発法の中のあれは、確かに提案者の石川君が言われたことはナンセンスで、何も仕事ができぬようになつている。一つの例を申上げましよう。例えば利根川開発をやるという場合、大体地方総合計画によつてやることになつておりますが、地方総合開発計画を立てるには次のような手続を要する。一番最初に関係都府県で協議して原案を先ず作成する。その作つた原案は県会の議決を経ます。議決を経て、それを今度は建設大臣を通じて総理大臣へ報告することになつておる。報告を受けた総理大臣が今度は一応総合開発審議会に一方は諮問する。そうして一方におきましては、関係の行政機関の各長官、建設大臣とか、農林大臣とか、これにおのおのその案を送付いたします。そうして、もらつたところのおのおのの行政機関の長は、自分の所で一応検討して、意見を安本長官に出すことになつておる。安本長官に意見を付して出す。そうして安本長官は今度それをまとめてもう一遍今度は審議会に送ることになつておる。そうして審議会に総理大臣から持つて来られた諮問と両方持ち寄つて、審議会で調査審議し、調査審議の結果に基いて報告又は勧告を関係都府県宛に総理大臣が行う。それできめておる。何も計画はこれでできはせんし、ぐるぐる廻つただけで何にもできておらぬことになつておる。これは今の総合開発法で何にもできない。これは火を見るよりも明らかです。さような意味におきまして、今の利根川開発法案も、計画は立てられましようけれども、実施が今言つたような意味と同じことになるわけです。両方ともそういう意味で私はナンセンスにならざるを得ない。だから大体今みたいな内閣、政府の機関では、総合開発は不可能です。やるならばもう少しまじめな、本格的な調査から始めなければならん。そうして、もつと地域的な一つ一つじやなくて、全国的な立場からの本格的な調査を始めて、そうして本当に総合開発をするならする立場を鮮明にしなければならん。こういう意味です。まあいろいろ申上げましたけれども、結論的に反対の理由をまとめて言つて置きます。(「いいよ」と呼ぶ者あり、笑声)本当に利根川開発をやるのならば、利根川の総合開発に、全国的の総合開発をするためにどれだけの位置付けをさす、位置をどれだけに持たせて、従つてこれだけの国全部の開発予算が例えば百億なら百億あるとすれば、そのうち十億が利根川に行く分であり、この金で土地をどれだけ、発電所をどれだけという計画に持つて行かなければならん。そういう意味におきまして、国土の総合開発は、利根川だとか、只見川とか、北上川とか、それを立てる前に、一応全国的なバランスを先ず考えて、バランスの上に各地区総合開発が立てられなければいかん。総合開発は飽くまでも全国土の総合開発が先ず最初に考えられで、その重要度に応じて位置付けが考えられなければいかん。そして当然にこれらは責任を持つた金の支出が完全に裏付けになつていなければならん。先ずそういう意味におきまして、この利根川総合開発は、趣旨は成るほど結構です。結構ですが、今申上げましたように、日本全国土の総合開発の基本的なものがないから、従つてこの利根川だけやろうと思つてもできない。国の力でできない。こういう意味で先ず反対である。総合開発は、当然にその土地だけでなくて、それは都市との関連における社会的、文化的或いは全経済的な立場から、全国的な視野から先ずプランが立てられなければならん。これが欠如している。(「待つておれないのだ」と呼ぶ者あり)待つていられなくてもできないでしよう、利根川は……。
それから第二番目には、これは実施法だと言われるが、実施法であるところの内容は一つもない。これが若しあるとするならば、第九條に「開発計画に基く事業は、昭和二十八年度から開始し、昭和三十七年度までに完成しなければならない。」という義務規定がある。併しながら先ほどの建設委員長でしたか、赤木君だつたかのお話にありましたように、これは出したところで、併し今の自由党内閣それ自身ではやる気がない。そして、これはやる気でなく、訓令的な規定であつて、やらなくても法律違反にはならんと思う。こういうふうに、はつきり言つておるから、とても駄目です。そして金の裏づけがない。それから更に二十條に、「関係行政機関及び関係地方公共団体は、開発計画に基く事業の促進及び完成に誠実に協力しなければならない。」と書いてある。内閣の中の機関が協力するのはこれは当然の話で、今協力してないとすれば、今の内閣自身がおかしい。だから内閣自身を潰すほうに本論を変えるのが本当だと思う。そういう意味におきまして協力しない、セクシヨナリズムであるからうまくできないというので、それを単なる道徳的規定であるところの協力義務によつても、現実に不可能である。そうしてこれを建設大臣、農林大臣、安本長官はやらないと言つている。現実に今のところ……。だからこれは精神訓話みたいな話です。これはナンセンスである。
若しこの法の中で実施法的な性格があるとすれば、これは二十二條だけです。二十二條に、公共事業費の地方公共団体負担の費用の割合を軽減することができるというのと、それから補助金を交付することができるという規定と、これだけが、二十二條だけが恐らく実施法的な性格を持つておる。ところが二十二條の実施法的な規定の内容は、これは都市建設法や温泉法で同じことが皆謳つてある。而もまだ都市建設法や温泉法で同じような金が少しでも役立つような恰好で出たためしがない。そうすれば、この費用の点もナンセンスであると言わざるを得ない。従つてこれは実施法だというものの、やり方が各省分立で実施するのであり、公共事業費という予算が同じことである限り、実施法としての性格を持たない。それが第二点の反対理由。
そうして私は最後に、こういう総合開発だけでなくても、もう少し法律をすつきりした恰好で私は考えたいと思う。岩崎君が言うように、それが賛成理由であるならば、私は潰れてもいいから、もう少し妥協しないところの、役人と妥協しないところの本格的立法で提案がしてもらいたかつた。それであるならば私は筋が非常にすつきり通ると思う。利根川開発のために、総合の…、一番最初作つた原案で出してもらいたい。そうでなくして、今のような、こういう看板だけで内容を持たない法律くらい私は腹の立つことはないのです。そういう意味におきまして、この法律自身が最近におけるあらゆる他の法律と、似たような法律と同じ観点に立ちまして、私はこれは立法の或る意味における混乱だと思う。もう少し本格的な立法がされなければならないと思います。
若し本当に今の段階で総合開発をやろうとするならば、先ず第一に法律を整理するという意味ならば、やはり第一には国土の総合開発法自身を全般的に最初に改正しなければなりません。ああいうくるくる廻るのでなくて、これを改正すること。二番目には、実施法を作ること。そうして実質的に実施官庁を作ること、利根川における開発庁、北海道の開発庁なり、そういう別別なものを二十も三十も作つてもナンセンスです。本格的な実施開発庁を作ること。総合開発法の改正と総合開発のための実施法と、実施官庁の整理と、これを行うことが総合開発のための本格的な筋であると思います。
そういう意味におきまして、私はこの内容に反対ではない。趣旨に反対ではない。実施には反対ではない。利根川を治めなければならないということは何よりも大事なことであるということを承知の助で、而もこの法律はできない法律だ。むしろ非常に悪い言葉で言えば、偽善立法であり、迎合立法である。そういうことに陷る危険性が非常に強い。一歩々々と言われますけれども、一歩々々ならば私は何遍でも本格的な法律を出して潰し潰し、本当を言えば潰され潰されて、本格的のものを作るのが私は本当だと思います。そういう意味において私は反対いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/15
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016・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終結したものと認めます。
これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案の表決は記名投票を以て行います。本案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。
〔議場閉鎖〕
〔参事氏名を点呼〕
〔投票執行〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/16
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017・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか。……投票漏れはないと認めます。これより開票をいたします。投票を参事に計算いたさせます。議場の開銀を命じます。
〔議場開鎖〕
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/17
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018・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。
投票総数百三十八票。
白色票即ち本案を可とするもの百十八票。
青色票即ち本案を否とするもの二十票。
よつて本案は可決せられました。(拍手)
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賛成者(白色票)氏名 百十八名
結城 安次君 藤野 繁雄君
高橋龍太郎君 高良 とみ君
加賀 操君 梅原 眞隆君
溝淵 春次君 木村 守江君
宮本 邦彦君 秋山俊一郎君
高橋進太郎君 上原 正吉君
石川 榮一君 大谷 瑩潤君
九鬼紋十郎君 加納 金助君
平沼彌太郎君 大矢半次郎君
植竹 春彦君 小野 義夫君
鈴木 安孝君 寺尾 豊君
黒田 英雄君 北村 一男君
中川 幸平君 徳川 頼貞君
中川 以良君 飯島連次郎君
廣瀬與兵衞君 野田 卯一君
重宗 雄三君 大野木秀次郎君
加藤 武徳君 松平 勇雄君
古池 信三君 平井 太郎君
白波瀬米吉君 山縣 勝見君
安井 謙君 山本 米治君
岡田 信次君 愛知 揆一君
石村 幸作君 池田宇右衞門君
入交 太藏君 島津 忠彦君
石原幹市郎君 紅露 みつ君
深川タマヱ君 木内キヤウ君
鈴木 恭一君 大島 定吉君
川村 松助君 谷口弥三郎君
油井賢太郎君 山田 佐一君
西山 龜七君 鈴木 強平君
櫻内 義雄君 西田 隆男君
大屋 晋三君 泉山 三六君
平岡 市三君 左藤 義詮君
小林 英三君 栗栖 赳夫君
林屋亀次郎君 櫻内 辰郎君
一松 定吉君 鬼丸 義齊君
中田 吉雄君 青山 正一君
金子 洋文君 清澤 俊英君
カニエ邦彦君 島 清君
野溝 勝君 加藤シヅエ君
若木 勝藏君 永井純一郎君
三橋八次郎君 原 虎一君
齋武 雄君 高田なほ子君
片岡 文重君 小林 孝平君
菊川 孝夫君 深川榮左エ門君
菊田 七平君 山田 節男君
田中 一君 松永 義雄君
小泉 秀吉君 大隈 信幸君
前之園喜一郎君 岩男 仁藏君
波多野 鼎君 駒井 藤平君
小川 久義君 境野 清雄君
木内 四郎君 大野 幸一君
梅津 錦一君 重盛 壽治君
森 八三一君 小林 亦治君
岩崎正三郎君 千田 正君
小松 正雄君 内村 清次君
栗山 良夫君 山下 義信君
木下 源吾君 棚橋 小虎君
和田 博雄君 三木 治朗君
上條 愛一君 森崎 隆君
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反対者(青色票)氏名 二十名
山川 良一君 溝口 三郎君
波多野林一君 徳川 宗敬君
新谷寅三郎君 河井 彌八君
工藤 鐵男君 赤木 正雄君
細川 嘉六君 須藤 五郎君
岩間 正男君 兼岩 傳一君
千葉 信君 木村禧八郎君
堀 眞琴君 東 隆君
松浦 定義君 堀木 鎌三君
矢嶋 三義君 佐々木良作君
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/18
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019・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) この際、日程第三、審議会等の整理のための総理府設置法の一部を改正する法律案、日程第四、審議会の整理等のための農林省設置法等の一部を改正する法律案、日程第五、審議会等の整理のための建設省設置法等の一部を改正する法律案、日程第六、審議会の整理等のための経済安定本部設置法等の一部を改正する法律案、日程第七、審議会の整理等のための厚生省設置法等の一部を改正する法律案、日程第八、審議会等の整理のための国立世論調査所設置法の一部を改正する法律案、日程第九、審議会等の整理のための地方自治庁設置法の一部を改正する法律案、日程第十、審議会等の整理のための大蔵省設置法等の一部を改正する法律案、日程第十一、審議会の整理等のための通商産業省設置法等の一部を改正する法律案、日程第十二、審議会の整理等のための運輸省設置法の一部を改正する法律案、日程第十三、特別調達庁設置法の一部を改正する法律案、日程第十四、外務省設置法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出)、以上十二案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/19
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020・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。
〔河井彌八君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/20
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021・河井彌八
○河井彌八君 只今議題に供せられました日程第三から日程第十四までの各法律案の内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申上げます。先ずこの各案につきまして全体に共通することを申上げまして、それから日程第三から日程第十二までの法律案につきまして順次簡單にその内容と経過を申述べるつもりであります。而して更に第十三及び第十四の日程に掲げてありますものはそれぞれ続いて説明を申上げるつもりであります。
これらの共通の点について申上げますれば、これらの法律案、特に日程第三より十二までの十件の法律案は、いずれも総理府を初めといたしまして各省庁等の各行政機関に置かれております審議会の整理を主としたものであります。そこで、その整理に関する問題を報告いたします。内閣委員会におきましては、今日まで行政機構の整備に関して調査の歩を進めて参つたのでありまして、審議会等の整理ということをその調査項目の一つとして重きを置いて参つたものであります。審議会、協議会等につきましては、国家行政組織法第八條によりまして、これらの審議会又は協議会を府省庁等の行政機関に特に必要があつて置く場合には、必ず法律で以て規定しなければならないという明文があるのであります。然るに従来この法律の明文がありまするにかかわらず、政府が法律の手続によらずして、或いは閣議決定であるとか或いは省議決定であるとかいう形を以ちま出して、審議会又は協議会を置いておるものが次々と現われておるのであります。その数のごときも最近三十ばかりあるということになつております。内閣委員会におきましては、かねてこの政府の措置を行政組織法の観点から誠に遺憾であるということに考えておりまして、そしてこれらの法律に基かない審議会、協議会をば速かに整備すべきことを政府に要望いたしたのであります。去る三月二十九日の内閣委員会におきましては、廣川国務大臣は、従来閣議決定等の形で設置されておる審議会等は法律の規定に牴触するものであるから、これらのものは速かに整理をする。而して将来内外の情勢に基いて審議会を設けなければならないような事態が生じたる場合には、而もそれが国会の閉会中であるような場合であつても、単なる閣議決定のような形ではこれを作らない。必ず立法手続によつて設置するという方針を言明いたしたのであります。内閣委員会は一応この言明によりまして政府の意の存するところを了承いたしたのであります。又他方におきましては、本年一月総司令部から政府に対して審議会の整備に関する指令がありましたので、政府におきましてはこれに基いて本年二月十六日に審議会等の設立基準等に関して閣議決定をいたしたのであります。この閣議決定のうちで只今議題となつておりまする法律案に関係する部分を一応ここに御報告申上げて置くことが必要であると考えまするので、これを申述べます。
その第一の項目といたしましては、審議会等の設置に関するものでありまして、審議会、審査会、いろいろ名称はあるのでありまするが、これらのものは、これが附置せられる行政機関の所掌事務に関して一般的政策、方針等について、当該行政官庁の職員のみからは得られない参考的乃至勧告的な意見を聴取するために置かれるものとするのであります。従つて審議会等は原則といたしましては個々の特定の事項について審議することができない。又審議会等を設ける場合は法律によらなければならない。これが第一の項目であります。第二の項目といたしましては、審議会の委員に関するものでありまして、特に委員の任期に関するものであります。即ち経済関係審議会等の委員の任期は原則として六カ月を超えない期間といたし、そうして必要によつては更に一回を限つて更新することができるものとするのであります。第三の項目は審議会の運営に関するものでありまして、経済関係審議会等の勧告、意見、或いは助言は、政府を公的に拘束する効果を持つものではない。又経済関係審議会等は個々の特定事項について審議してはならない。こういう運営に関するものであります。第四の項目といたしましては、現在あるところの審議会をどう措置するかというものでありまして、これらの現存の各種審議会等につきましては、行政簡素化及び経費節減の見地から大幅にこれを縮減すると共に、只今申述べた基準に従つて所要の改組を行うということになるのであります。それは今期の国会に提出するということになつておるのであります。かような閣議決定に基きまして、本年三月二十七日の閣議において、現存の審議会二百三十六、この中に法律の規定に基かないものが三十ある。これを個々別々にそれぞれ検討いたしました結果、整理することに決定いたしたものが七十あるのであります。そこで只今議題となつておりまする法律案十件につきましては、この閣議決定の趣旨に基きまして各行政機関に置かれておるところの審議会を整理せんとするものであります。
そこで只今の日程の順序に従いまして、各法律案について最も簡単にその内容を説明申上げるつもりであります。
第一は審議会等の整理のための総理府設置法の一部を改正する法律案、この法律案は只今説明申上げました審議会等の整理基準に基きまして、従来総理府に設置されておつたところの身体障害者製作品購買審議会をば廃止し、又従来閣議決定で内閣に設置されておつた失業対策審議会をば法制化することといたしたのであります。身体障害者製作品購買審議会は、身体障害者福祉法に基いて、身体障害者の製作品の購買の事務について調査審議する審議会でありまするけれども、身体障害者の福祉に関する事項の調査審議のための機会といたしましては、別に同じく身体障害者福祉法に基く中央身体障害者福祉審議会が厚生省の附属機関として設置されておりまするので、この際、行政機構簡素化の見地から、身体障害者製作品購買審議会の権限を中央身体障害者福祉審議会の権限に含ましめて、そうしてこれを廃止することといたしたのであります。又、失業対策審議会は、昭和二十四年三月に、その当時の急迫した失業事情に対処するために、失業対策閣僚会議に代えて急いで設置したものであります。我が国の失業問題の解決は、その根本対策たる雇用量の増大という見地から、財政、金融、産業、貿易等、各分野に亘る総合的の施策を樹立する必要があるばかりでなく、失業者の救済対策につきましても一般社会保障的各種政策との総合的な調整を必要とする状況にありまするので、これらの事項について調査審議の任に当るべき本審議会は、今後当分の間存置することがどうしても必要であると認めましたので、その設置につきましては行政組織法の第八條に基きまして法律的根拠を與えようとするものであります。
次に、審議会の整理等のための農林省設置法等の一部を改正する法律案について申上げます。本案の内容を簡單に申上げますれば、第一点は審議会等の整理に関するものでありまして、農林本省において農林金融改善特別融通損失審査会、中央農業調整審議会、中央農地委員会議及び作況報告審議会を廃止いたして、又林野庁関係におきまして社寺保管林処分審査会を本年十月一日から廃止せんとするものであります。第二点は、農事改良実験所及び農業機械指導所を廃止せんとするものでありまして、農事改良実験所の廃止につきましては、すでに昨年来試験研究機関の整理統合に伴う既定の計画によるものであります。それで今回農事改良実験所の一部の事務を国立の地域農業試験場に移し、残余の事務をば都道府県農業試験場に移管するものでありまして、又農業機械指導所の廃止は專ら機構の簡素化と経費節約の見地からするものであります。第三点は輸出品検査所の統合でありまして、従来輸出食料品検査所と輸出農林水産物検査所の二本建になつて運営されて参つたのでありますが、今回これを統合して、輸出品検査を総合統一せんとするものであります。第四点は林野庁内の内部部門の所掌事務の整理でありまして、昨年薪炭の政府買上げを廃止いたしましてから以来、本年三月一ぱいを以てその清算事務も大かた終了を見るに至りましたので、庁内部門の所掌事務の必要な調整を行わんとするものであります。第五点は公団の解散等に伴う関係規定の整理でありまして、昨年七月には肥料配給公団が解散せられ、本年三月一ぱいを以て食糧配給公団及び油糧砂糖配給公団が解散となり、すでに清算段階にありまするので、この際、公団に関する関係規定を削除せんとするものであります。その他漁港審議会の委員の任期を三年から二年に短縮する等の規定もあるのであります。
次に日程の第五の審議会等の整理のための建設省設置法等の一部を改正する法律案について申上げます。第一点は、建設省設置法の一部を改正いたしまして、土本審議会を廃止し、測量審議会は明年三月三十一日限りで廃止せんとするものであります。第二点は、建設業法の一部を改正いたして、建設審議会の権限を整理し、且つ委員の任期四年を短縮して六カ月といたし、委員は引続いて二回以上再任されることができないことといたしたのであります。第三点は、建築士法の一部を改正して、建築士審議会の委員の任期三年を二年に短縮したこと等であります。なお附則を以ちまして、現に建設業審議会の委員である者に対する委員の任期計算につきましては、この法律施行の日から起算することとしておるのであります。
次に経済安定本部関係の法律について申述べます。この内容を要約して申上げますると、経済安定本部設置法並びに企業再建整備法、金融機関再建整備法及び企業再建整備法の一部を改正する法律の一部を改正して、経済安定本部の附属機関として置かれておるところの審議会のうちで、経済再建整備審議会、国民食糧及び栄養対策審議会並びに河川総合開発調査協議会を廃止して、一方新たに物価庁の附属機関として米価審議会を設けることとしたのであります。米価審議会は、従来單に閣議決定に基いて運営せられて参つておるのでありまするが、今回これを法制化いたしまして、国家行政組織法に基く審議会として存置しようとするのであります。この審議会は、物価庁長官及び農林大臣の諮問に応じて、米価その他主要食糧の価格決定の基本事項を調査審議することを目的とするものであります。なお各種公団が本年三月一ぱいを以て全面的に廃止せられたことに伴いまして、経済安定本部設置法及び国家行政組織法の一部を改正せんとするものであります。
次に国立世論調査所設置法の一部を改正する法律案について申述べます。この法律案の要点は、審議会等の整理基準に従いまして、従来総理府に置かれておつた世論調査審議会が従来持つておりました一般的決定機関たる性格を改めようとするものであります。即ち国立世論調査所が昭和二十四年六月に総理府の附属機関として置かれて参りましてから今日に至るまで、世論調査審議会は、調査研究の方針、調査の実施計画及び調査の結果の発表方法等について決定権を持つており、なお且つその決定権は調査所の一般事業方針及び調査所の分野にも及んでいたのでありまするが、今回の改正によりまして、その権限を諮問的なものにするということに改めたのであります。そうして、これによつて調査研究の独立性を保障いたしまして、その固有の機能を強く発揮させようという目的に出ているものであります。
次に審議会等の整理のための地方自治庁設置法の一部を改正する法律案について申述べます。この整理は、やはり前に申述べました原則、基準に従いまして、従来地方自治庁に置かれておつた地方自治委員会議の委員に二年の任期を設けんとするものであります。即ち地方自治委員会議は、地方自治庁設置法第七條の規定に基いて地方自治庁に設けられている諮問機関でありまして、全国知事会、全国市長会、全国町村会、都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会がおのおのその代表者として推薦した者六名並びに学識経験者二名を加えて、内閣総理大臣が任命した八人の委員から構成されておるのであります。委員の任期につきましては従来別段の定めがなかつたのでありますが、これを一般的に任期のない審議会の委員に任期を付するという政府の方針に基きまして、且つ又地方自治委員会議の性格、権限、委員の選出方法などを勘案いたしますると共に、他の審議会の委員の任期との関係を考慮いたしまして、二年の任期を付するということにしたのであります。なお現に在任中の委員の任期につきましては、この法律施行の日から起算するのが適当であると考えられますので、これに関する所要の措置をとつたのであります。
次に審議会の整理等のための厚生省設置法等の一部を改正する法律案について申上げます。第一点は、医師歯科医師実地修練審議会、日本医療団清算監理協議会及び地方食品衛生調査会を廃止することになつた点であります。第二点は、薬事審議会が委員会のごとき性格のものとして一定の行政的権限を持つていたのをば今回改めまして、純然たる諮問機関にいたす点であります。最後に第三点は、審議会の委員数並びに任期等について適宜減少或いは短縮するために、厚生省設置法その他関係法律について所要の改正を行うことにしたのであります。その関係法律と申しまするのは、社会保険審議会、社会保険医療協議会、社会保険審査官及び社会保険審査会の設置に関する法律、昭和二十五年の法律第四十七号でありますが、これらにつきまして所要の改正をするのであります。
次に日程第十にありまする審議会等の整理のための大蔵省設置法等の一部を改正する法律案であります。先ず審議会等の廃止につきましては、特別融通損失審査会、産業設備営団損失審査会、国民更生金庫損失審査会、復興金融審議会、地方特定契約審査会、財産審査会及び財産調査会は、この法律の施行の日から廃止することになつております。又社寺境内地処分中央審査会及び社寺境内地処分地方審査会は昭和二十六年度末限りで廃止することになつておるのであります。次に廃止しないものにつきましても、專売事業審議会の委員の任期を三年から二年に短縮し、又資産再評価審議会の委員の定数を四十人以内から三十人以内に減少し、更に財政制度審議会、資産再評価審議会、全国資産再評価調査会及び地方資産再評価調査会の委員の任期を新たに二年と定めたのであります。
次に通商産業省設置法等の一部を改正する法律案について申述べます。これには三つの点があるのでありまして、第一点は通商産業省設置法の改正についての規定であり、第二点は工業技術庁設置法の改正についての規定でありまして、第三点は鉱山保安法を初め六つの法令について審議会に関する部分の改正規定であります。第一の通商産業省設置法の改正に関しましては、本省、資源庁、工業技術庁及び特許庁に置かれておる審議会等について整理統合を行なつたほか、従来通商企業局において所掌しておつた特需関係の事務を通商振興局に移管すると同時に、すでに清算段階に入つておる貿易公団及び産業復興公団について、国家行政組織法上の機関としての機能を失つておりますとの見地から、これらの公団に関する根拠規定を削除するの措置を規定しておるのであります。次に第二点の工業技術庁設置法の改正においては、工業技術運営審議会を工業技術協議会に統合したのであります。第三点の鉱山保安法を初め六つの法令の改正につきましては、鉱山保安法及び工業標準化法の改正においては、委員の任期又は定数についての改正であり、又臨時鉄くず資源回收法、輸出信用保険法、商品取引所法及び連合国人工業所有権戦後措置令の改正につきましては、審議会の所掌事務等について整備をいたすと同時に、関係條文の整理を行なつたのであります。なお、このほか本則における法令改正に伴いまして、国家行政組織法の改正及び商品取引所法に関する経過規定を必要といたすので、附則においてこれらに関して規定をしたのであります。なお電気事業主任技術者検定審議会に関する規定がこれまでは省令によつて設けられておつたのでありまするが、これを立法化して、ここに改正として現われておるのでありますが、電気自動車充電技術者資格検定審議会となすことに関しましては、いろいろ異論がありましたけれども、結局原案を認めることといたしたのであります。
次に運輸省設置法の一部を改正する法律案につきまして、これについて改正点が二つあるのであります。第一点は先の臨時物資需要調整法の改正に伴う整理であります。即ち従来臨時物資需給調整法に基く臨時の権限といたしまして、物資の輸送命令及びこれに伴う工事の施行に関する命令をなし得ることとなつておつたのでありますが、今回この法律の改正によつてこの権限規定が削除せられましたので、これに伴つて運輸省の権限及び所掌事務の規定中、当該條文を整理いたす必要が生じたのであります。第二点は審議会の整理に関する事項でありますが、先に政府において存続することと決定した造船業合理化審議会及び廃止することと決定したホテル審議会について、国家行政組織法第八條の規定に基いて、附属機関の規定中前者即ち造船業合理化審議会を追加し、後者即ちホテル審議会を削除する必要が生じたのでありまして、この改正を行なつておるのであります。
以上説明を申上げましたが、これらの法律案十件につきましては、委員会は三度開会いたしまして、各法律案について愼重に審議いたしたのであります。その結果明らかになりましたことは、政府が今回各種審議会等の整理を断行いたしました結果、七十の審議会が廃止となりましたが、又政府職員の数の異動につきましては、これは何ら増減がないのであります。なお経費の関係におきましては、これから次に二つの法律案について報告申上げますが、即ち特別調達庁設置法の一部を改正する法律と、それから外務省設置法の一部を改正する法律と、これをも引つくるめまして、そうして全体予算上は、これらの整理によりまして、およそ千五百万円、年額千五百万円の節約となるということであります。結局内閣委員会といたしましては、審議会等の行政機構を簡素化すると共に、従来ややもすれば乱脈に流れんとした審議会の濫設、これをば、この際、国家行政組織法第八條の明文によつて整備するという、この政府の意のあるところを諒といたしたのであります。
討論に入りまして、各委員はことごとくこれに賛成いたしましたが、併し政府は折角この整理を実行しようとしておる以上は、今後もどうかその趣意を十分に徹底して嚴守してもらいたいということ、特に最近総理大臣の諮問機関でありますか、名義ははつきりいたしません、又名前もくつ付けておらんようでありますが、法制上の整理のために有力者の一つの何と申しますか審議会のごときものができておるということなどもありまするので、それらの性格につきまして相当鋭い質問を各方面からいたしたのでありますが、これはこの法律とは全く違つた自由なものであるという意味の説明を得たのであります。併しこういうことによつて、この国家行政組織法の第八條の精神が崩れて行くということは甚だよろしくないという考えを以て、そういう意見が出たのであります。そうしてこの十件の法律案は、採決に入りましたところが、全会一致を以て可決すべきものと議決せられたのであります。
次に日程第十三に掲げてありまする特別調達庁設置法の一部を改正する法律案について報告をいたします。
本案につきましては委員会を開くこと二回、一昨日全会一致を以て可決すべきものと議決いたしたのであります。この本案に規定してあります改正点が四つあります。第一は、連合国軍に対する施設その他不動産の提供、その使用を解除せられた財産の管理、返還並びにこれらの業務に附帯する補償及び求償等、以上申しましたごとき、いわゆる不動産業務が講和を控えて極めて重要となつて参りましたのに鑑みまして、このような業務に関する機構を一段と強化いたしたことであります。即ち従来不動産業務と連合国軍に対する労務者提供の業務を併せて所掌しておりました労務管財部を、労務部と管財部に分割いたし、そしてこの新設の管理部においては、不動産業務のほかに、広く調達に伴う補償、求償並びに解除物件の処理に関する事務を掌ることにしておるのであります。第二の点は、従来、工事、役務及び需品の調達に関する契約、技術、促進及び監督の事務を分掌しておつた契約部をば、技術監督部と統合いたしまして業務部を新設いたしたのであります。そしてこれで以て事務の的確と迅速を期すると共に、機構の簡素化を図つた点であります。この二つの点は内部部局の改正であります。次に第三点といたしましては、この巨額な終戦処理費の執行を担当する特別調達庁といたしましては、予算執行の適正であり且つ万全であることを期さなければなりません。これがために監察官を設けまして、業務の監督に関する事務を分掌せしむることとしたのであります。第四点といたしましては、本庁の附属機関である調達役務審議会、調達芸能審議会及び中央調達不動産審議会の三つの審議会のうちで、調達役務審議会と調達芸能審議会の両審議会を統合して、行政機構簡素化の趣旨に副うことにいたした点であります。これが本改正案の概要であります。委員会におきましては、この案について質疑応答を重ねました結果、只今申しましたこの特別調達庁の現状においては適切なるものと認めたのでありまして、一昨日の委員会におきまして討論を省略して採決いたしまして、全会一致を以て可決すべきものと議決したのであります。
最後に外務省設置法の一部を改正する法律案について報告をいたします。
この法律案につきましては、外務委員会と連合委員会を一回、内閣委員会を二回開きまして慎重に審議を重ねまして、一昨日全会一致を以て可決すべきものと議決したのであります。主なる改正の点を説明いたしますれば、第一には外務省に新たに国際経済局を設置すること、第二には外務省の地方支分部局として従来置かれておつた京都連絡調整事務局を廃止すること、第三には従来連絡調整事務局に置かれておつた地方連絡協議会を廃止すること、この三点であります。
第一に、外務省に新たに国際経済局を設置する理由につきましては、日本政府在外事務所はすでに十七ケ所に開設せられておるのでありまするが、このほかにラングーン、リマ、メキシコ、ワシントン、オタワ、ロンドン、ジヤカルタ、スラバヤ等の開設が目下進捗中であります。リマ以下七カ所の新設については、この次の第十五の日程に日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案として委員長報告があるのでありまするが、更に引続いてその他の国にも在外事務所が開設せられる見込であるのであります。従つてこれに対応する外務省の経済関係事務は今後ますます複雑となり、且つこれらは最も早く充実する必要があるということになつておるのであります。そういう説明であります。一方、関税及び貿易の一般協定への加入、平和條約、講和條約成立後の通商航海條約の締結、国際経済機構及び條約への加入等のための諸準備をなす必要が非常に急速に増大しておるのであります。これらの事態に対処するために、現在の政務局経済第一課及び経済第二課と、なお別に新たに二課を増設いたしまして、合せて四つの課からなるところの国際経済局を設置せんとするのであります。新設される国際経済局の所管事務は、現在政務局の所掌事務とされておるもののうちで経済関係のものでありまして、特に従来の外務省の権限に変更を加えるものではなく、又他省の権限との関係におきましても問題を生ずることがないという説明であります。なお、国際経済局の定員につきましては、予算その他の関係上、当分の間従来の外務省の定員内で賄うことといたし、京都連絡調整事務局の廃止による剰員及び他局部からの人員の移し替えをいたすことによりまして、この事務に支障を招くことのないようにするという説明であります。第二に、京都連絡調整事務局の廃止の理由といたしましては、現在十二カ所に連絡調整事務局が設置されてあるのでありますが、この中で京都連絡調整事務局は、従来主として現地駐屯部隊との連絡事務の処理に当つておりましたが、行政機構の簡素化の趣旨に基きましてこれを廃止し、その所掌事務を近畿連絡調整事務局に引継ぐこととせんとするものであります。第三に地方連絡協議会の廃止についてでありますが、これは先ほど説明いたしました審議会等の整理に関する政府の方針に基きまして、行政機構の簡素化と経費の節減を図るために、地方連絡協議会を廃止せんとするものであります。なお、附則におきまして行政機関職員定員法を改正いたしまして、外務省本省に八十人の定員増を規定しているのでありますが、これは近い将来に設置を予想されるところの在外事務所、近い将来と申しましても、多分本日法律案が通過すると考えますが、在外事務所の派遣要員に充てんとするものであります。
委員会におきましては、この法律案の審査に当りましては熱心な質疑応答が行われたのであります。その要点を申しますと、第一に、従来政務局と通商産業省の通商局とは緊密な事務連絡をとつて来て、幸い今日まで円滑に事務が運んで来たのであるが、この際、国際経済局が新設された曉においても、その点は何ら変るとにろがないという説明であつたのであります。第二に、講和が成立した曉においては、講和に即応する必要から外務省の機構も全面的に改革する必要があるのであるから、このような国際経済局の新設はそのときまで見送るのが適当ではないかという意見も出たのでありまするが、この際、国際経済局の新設の狙いは、最近増大して来ておるところの国際経済関係の事務を処理するために、差当り講和の態勢に応じ得る準備的の局を新設する必要があるということでありました。第三には、国際経済局の要員は九十八名であるが、これは現在の外務省の定員の配置転換によつて賄う方針であり、従つて国際経済局の新設によつては人件費の増加はないという説明でありました。第四に、目下この最近できるであろうところの日本政府在外事務所の開設に伴いまして、その事務所の要員に充てるため行政機関職員定員法を改正して、本省の定員を八十名増加することとしたのでありますが、これらの在外事務所の増設に伴う経費は、これらの在外事務所の増設を見越しまして大蔵省に保留されているところの予備費二十億円の中から支出されることになるのでありまして、別に改めて予算的の措置をとらないということが明瞭となつたのであります。かような経過を辿りまして、一昨日の委員会におきましては、これらの機構改正は現在の事情の下においては止むを得ないものと認めまして、討論を省略して、全会一致を以て可決すべきものと議決いたした次第であります。
これを以て報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/21
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022・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより十二案の採決をいたします。十二案全部を問題に供します。十二案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/22
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023・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて十二案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/23
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024・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) この際、日程第十五、日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案(内閣提出)、日程第十六、国際達台教育科学文化機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件(衆議院送付)を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/24
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025・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長櫻内辰郎君。
〔櫻内辰郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/25
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026・櫻内辰郎
○櫻内辰郎君 只今議題となりました日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案の外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます政府の説明によりますと、改正の要点は二点でございます。
第一は、今回新たにワシントン、ロンドン、オタワ、メキシコ、リマ、ジヤカルタ及びスラバヤの七カ所に在外事務所の設置が認められたので、これらを既設のものと併せて設置法第二條に列記したこと、第二は、在外事務所の職員に支給する在勤手当及び住居手当の支給額の範囲及び支給額の決定方法を変更したこと、即ち支給手当の年額は別表の額の九割から十二割までの範囲とし、米国在勤の職員については当該職員の職に相応した額、その他の国に在勤する職員については、その職員の職と所在地の物価水準及び当該国の通貨の対米為替相場を基準として、実地に即するよう外務大臣がこれを定めるというのであります。
本委員会は、五月十六日、委員会において愼重審議を行い、討論を経て採決いたしましたところ、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
次に国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件につき、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
国際連合教育科学文化機関即ちユネスコは国際連合の専門機関の一つでありまして、ユネスコ憲章の前文及び第一條に書いてあります通り、戰争は人の心の中に生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。従つて永続性のある平和は、政府間の政治的、経済的取りきめに基くだけでは十分でなく、人類全体の知的、精神的連帯の上に築かなければならないという考え方の上に立つて、教育、科学、文化を通じて諸国民の間の協力を促進し、世界の平和及び安全に貢献することを目的とするものであります。この機関の基本文書たるユネスコ憲章は、昭和二十年十一月十六日ロンドンで四十四カ国によつて作成され、昭和二十一年十一月四日に効力を生じましたが、現在ユネスコ加盟国総数は五十九カ国に達しております。
政府側の説明によりますと、政府は先にユネスコ事務局長宛この機関への加盟申請をなし、その申請書はすでに受理された旨の通知があり、一方加盟のために必要な国連経済社会理事会の過半数の支持も得ており、今後本年六月開かれるユネスコ執行委員会と総会との承認があれば、我が国は国際連合教育科学文化機関憲章を受諾して、ユネスコの加盟国となり得る状態となりますので、その場合は同憲章を受諾したい。よつて、この案件について国会の承認を求めるというのが本案の趣旨であります。なお、この機関の目的、事業その他の詳細については、お手許に配布の文書につき御承知願います。本委員会は、本案審議のため先ず五月十四日文部委員会との連合委員会を開き、主として文部委員より質疑を行いました。次いで五月十六日の外務委員会においては更に政府側と質疑を続行いたしましたが、詳細は議事録に譲ることといたしたいと存じます。次いで討論を経て採決を行いましたところ、全会一致を以て本件は承認を與うべきものと決定いたした次第であります。
以上御報告申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/26
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027・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
先ず日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/27
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028・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/28
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029・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 次に国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについで承認を求めるの件を問題に供します。委員長報告の通り本件に承認を與えることに賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/29
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030・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本件は全会一致を以て承認を與えることに決定いたしました。
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〔小林孝平君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/30
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031・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 小林孝平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/31
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032・小林孝平
○小林孝平君 私はこの際、米価問題について緊急質問をすることの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/32
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033・小川久義
○小川久義君 只今この小林君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/33
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034・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 小林君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/34
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035・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。小林孝平君。
〔小林孝平君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/35
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036・小林孝平
○小林孝平君 私は日本社会党を代表いたしまして、最近の経済情勢に関連して二十六年度の予算をめぐつての米麦の価格決定につきまして政府の所見を承わりたいと存ずるのであります。
先に我が党は、二十六年度の予算の審議に際しまして、政府の予算編成の基礎的諸條件に関する認識の不足を強く指摘いたしたのであります。即ち政府が今後の国際情勢特に朝鮮動乱の見通しと更にこれに関する日本の対外関係の推移について全く認識を欠いていたということであります。それにもかかわらず、政府は遂にこの極めて不十分なる予算を全野党の反対を押切つて通過せしめたのであります。然るにその後日本をめぐる国際諸情勢の変化は著しく、特に最近アメリカを中心とする軍拡の影響は、朝鮮動乱等々をも含めて国内に特需景気として現われておるのであります。この中にあつて、ドツジ政策の下に、低米価、低賃金で苦しんで来た労働者農民と重税にあえぐ中小企業者の生活は、より一層危機に追込まれて行くことはこれ又明らかであります。こうした請情勢を前にして、すでに二十六年産の麦の供出方針も最後的な決定を見、近く全国各地に供出が行われるのでありますが、最近のパリテイ指数の著しい変動によつて、二十六年度の予算の範囲内ではその価格の決定は到底困難ではないかと考えるのであります。私はこの米麦の価格をめぐる諸問題に関し、以下十項目につきまして政府当局の所信を質したいと存じます。
先ず質問の第一点は、二十六年度産米麦の価格決定に関する政府の基本的態度についてであります。政府は二十六年度の予算編成に当り、本年産の生産者米価は想定パリテイ一九五として六千百六円とし、麦価はこれを基礎として、はじいているのであります。ところが現実のパリテイ指数は朝鮮動乱の激化に伴う国際物価を反映して急上昇を辿り、すでに三月は二三四になつて、予算開始の四月は一九五を遥かに突破し、麦価決定の基礎となる五月末には政府みずから行なつた推定によつても二四〇、米価の基礎となる九月末には二五〇になると言われておるのであります。これら政府の米麦の価格算定方針は、その基礎として麦類の自由販売の実施を條件といたしたのでありますが、これは昨年十一月ドツジ博士が来日し、二十六年度予算編成に当り、政府が特に大蔵、安本、農林、三省会談の結果、結論としてドツジ氏に提出したものだと聞いております。然るに今や情勢が一変し、国会が下した結論は手放しの放任政策の是正であります。麦の自由販売という前提條件が崩れ去つた今日、政府は如何なる方針で麦価を決定しようとするのか。その基本的態度についてお伺いいたしたいのであります。
第二点は、特に供出制度が続けられる場合、予算編成の都合から引下げられた対米価比率、小麦、裸麦六四、大麦五四の政府原案をそのまま生産者に押付けられるものであるかどうかをお尋ねいたしたいのであります。
質問の第三点は特別加算額の件であります。麦価の決定の遅れる情勢を見越して、数日前農林省は各県知事に対して新麦の正式価格がきまるまでの間暫定価格を指示しました。これによると一五%の特別加算額は無視されてありますが、今後新価格に対してもこの方針をそのまま持込むものであるかどうか。政府の明確なる御答弁をお願いいたします。更にこの点に関し廣川農林大臣は農林省の記者団との公式会談において、若し一五%の加算を認めないならば池田蔵相は辞職すべきであると言明されております。蔵相の辞職問題は別といたしまして、一五%の特別加算額を削減する考えであるかどうかをこの際特に池田大蔵大臣にお尋ねいたしたいのであります。
更に第四点といたしましては米麦のバツク・ペイの問題であります。物価当局の説明によりますと、自由販売下の麦価の府府買入価格は一種の支持価格であると言つております。併し供出制度が継続された以上は、従来通り二十五年度は勿論二十六年度産の米と麦の価格には、当然基礎條件が昨年と同じであるとの理由から、パリテイの差額だけはバツク・ペイを行うのが当然であると考えるのでありますが、この点について政府の所見を承わりたいと存じます。
第五点として、私は特に米価審議会の結論の取扱に関してお尋ねいたしたいのであります。今日米麦の価格の決定は、国民経済の立場から極めて重要なる意味を持つておることは今更言うまでもありません。そのために政府は広く国民の意見を米価の決定に反映せしめる目的を以て米価審議会を構成したのであります。審議会は爾来国民経済安定の見地から極めて適切な結論をしばしば政府に答申して参つたのでありますが、昭和二十五年産の米価の決定に当つて、政府は米価審議会の存在を無視するがごとき態度をとられたのであります。この点につきましては、政府は今後かかることのなきことをしばしば言明せられているのであります。そこで本年も審議会は目下愼重に検討を進めておりますが、私がお尋ねいたしたいのは、この審議会の結論と政府の財政上の方針とが食い違つた場合、政府は今年も又昨年と同様審議会の結論を無視して一方的に予算価格を押付けられるかどうか。今、全国民はこの点に関し重大なる関心を持つているのであります。これについて当局の卒直なる所見を承わりたいと存じます。
質問の第六点は米麦の消費者価格についてであります。特に今までの質問の過程において明らかになつた通り、米麦ともに生産者価格の著しい値上りはもはや避けがたい情勢となつております。仮に消費者価格を現状のままに据置いたとしたならば、農林当局の計算によりますと、食管特別会計は明年三月までに一千百八十億円の赤字が見込まれておるのであります。この食管特別会計の赤字を消すために全額を消費者負担といたしますれば、一石当り九千四百円以上、一升当りにして消費者は七十三円から九十四円以上の高い米を買うことになるわけであります。このような大幅値上りでは、国民大衆にとりまして、現在の賃金水準の下にあつて由々しい問題であると言わねばなりません。而も消費米価の値上げはインフレ促進の有力な要素となる虞れがあると思われます。若しも現在の低賃金体系を維持せんがために、賃金政策から米価が政治的に逆算されるようなことがありましたとしたら、それこそ邪道も甚だしいと言わなければなりません。それで私は、主食の消費者価格の改訂が必至であるならば、その改訂の時期はいつ頃になるかをお尋ねいたすと同時に、全額消費者負担の方法をとるのかどうかという点を、周東安本長官と池田大蔵大臣から明らかにして頂きたいのであります。
第七点として二重価格制の問題についてお尋ねいたします。生産者価格の値上げが必至であり、且つ消費者価格も賃金体系との関連から大幅引上げを行いがたいとすれば、いわゆる二重価格制をとるよりほかに方法はないと考えます。二重価格制度は言うまでもなく、生産費を補償する一方、消費者価格を安くするものであります。これは社会政策上極めて妥当なる方式だと思われるのでありますが、最近の新聞雑誌の論評によりますと、池田蔵相は、減税と給與ベースの引上げを行うために、二重価格制の実施をやりたくともできないのだと報じております。私はこの際、あえて本年度農産物価格政策にこの二重価格制度を採用するの意思があるかどうかということをお伺いいたしたいのであります。
質問の第八点は、去る五月十六日に総司令部渉外局から発表されましたマーカツト経済科学局長の日米経済協力に関する声明に関連した問題であります。このマーカツト声明の具体化に当り、我が国の農業に與える影響に関して、この際、次の三点をお尋ねいたしたいと存じます。先ず第一に、マーカツト声明によれば、国内特需関係の物価は国際価格によつて調整されるべきであると指摘されております。その結果、特需部門では国内価格の引下げが一般の予想となつております。特需部門はともかくといたしまして、国内価格が国際価格よりも下廻つております我が農産物価格は調整の対象になるかどうか。若しなるといたしますれば、国際価格の水準まで引上げる方針であるかどうか。その取扱について政府の基本的方針を承わりたいのであります。次に第二として、マーカツト声明によれば、今後の日本経済はインフレーシヨンを努めて防止すべきであると政府に警告を発しているようであります。インフレ防止のためには、今までの経験によりますと、低米価と低賃金の強行が大前提とされて来たのであります。そこで政府はインフレ防止のために、米価と賃金政策について如何なる方針をとらつれるかをこの際お開きしたいのであります。第三は、米価政策の根本問題である国民生活に重大な関連を持つためにあえてお尋ねいたしたいのであります。大蔵大臣は曾つて車中談で、減税と給與ベースを引上げるという、新らしい財政方針の一端を明らかにされましたが、今度のマーカツト声明の趣旨を忠実に実践するといたしますならば、外貨の手持が減少し、輸出振興策を強力に推進しなければならない我が国経済の現状から見まして、蔵相の車中談は当然大幅の修正を余儀なくされざるを得ないと考えられるのであります。大蔵大臣は、この点、飽くまでも前の言明を固執されるかどうか。マーカツト声明に関連いたしました以上の三点々特にお尋ねいたしたいのであります。
最後に、私は本問題の結論といたしまして政府の方針を質したいと思います。米麦の価格決定の問題は日本経済全体の問題であり、且つ又問題の複雑な様相は、取りも直さず日本資本主義の現段階における悩みと矛盾の実体を余すところなく露呈したものであると考えるのであります。即ち池田大蔵大臣が立派な予算だと本議場で自讃された二十六年度予算は、その実施後僅か一、二カ月にして、早くも米価問題を契機に大修正を必要とするに至つたという事実は、吉田自由党内閣の財政政策の破綻を如実に示したものと言わざるを得ないのであります。(拍手)従つて政府は、朝鮮動乱の我が国経済に及ぼす見通しについて我々の警告を退け、甘く考えていたという点を、この際よろしく是正され、直ちに補正予算を編成すべきであるのではないか。この点についで政府当局の意見を承わりたいと存じます。
以上を以ちまして私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣廣川弘禪君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/36
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037・廣川弘禪
○国務大臣(廣川弘禪君) 小林さんからのお尋ねでございますが、米価問題についてのいろいろの御説がございましたが、米麦の価格決定につきましては、成るほど予算の想定額におきましては、パリテイ指数は一九五でやつておつたのでありますが、現在二四〇乃至二五〇で想定されることは事実でありますので、この点につきましては、政府といたしまして愼重に目下検討いたしておるようなわけであります。又対米比価につきましても、これ又我々といたしましては、大麦、裸麦等につきましては十分考えたいと思つておるようなわけであります。それから特別加算額につきましては、これは我々といたしましては、十分この点、今まで農民に與えておつたこの特権を主張し、又実現いたしたい考えでおるわけであります。バツク・ペイにつきましては、お話の起り現在の状態においてはさようになるのが当然だろうと思つております。それから審議会の問題についてのことで、国民の意見を尊重するかしないかということでありますが、これは十分尊重いたしたいと思つておるようなわけであります。それから消費者価格につきましてのお話でございますが、これは御承知のように決して農民だけ高く買わして、それを直接消費者のほうに高く売るという考えは持つておりませんので、そうやることは單に事務でありまして、そこに政治のうま味があると思うのでありまして、二重価格、三重価格、四重価格、いろいろなことを考えて、消費者に迷惑をかけないようにいたしたいと思います。(「ふざけるな」「真剣に答弁しろ」と呼ぶ者あり)それから社会政策の問題でありますが、これは今申上げました通り、決して生産者価格そのまま消費者にかけるようにしないように、十分我々といたしましては検討いたしたいと思つているような次第であります。(「答弁になつていないぞ」と呼ぶ者あり)
〔国務大臣周東英雄君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/37
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038・周東英雄
○国務大臣(周東英雄君) 小林君の御質問にお答えいたします。
第一に米価決定の態度ということについてでありますが、予算編成当時は、当時の資料に基いて一九五のパリテイについて計算をいたしたことについては間違いがないと思います。小林君も農政に携わつていらつしやつたかたでありますから、わかりましようが、徒らに先のことを大きく、その当時の資料から出て来ない数字を以て予算の編成のできないことは御承知だと思います。その後における変化においては、只今農林大臣からお答えいたしましたように、パリテイの指数が上つたということに対しては今後適当に処置をいたしたいと思います。第二の米麦の比価の問題については、これは米麦だけの問題について直ぐに決定できにくいものでございまして、只今お話のありましたように、パテイ指数に応じての米価の改訂に伴い、実質的には麦価も上りましようが、同時に前議会のときから問題である比価については只今愼重に考究をいたしております。第三の特別価格問題については、加算価格の問題については一これは曾つて米についての加算額を決定したときの理由、即ち過去における農民の所得を減じないということの意味においてできた加算問題については、今後もやはり考えられて行くべき問題だと思いますが、ただこれは常に率というものが確定不動のものでないということだけは御承知を願いたいと思います。それからバツク・ペイの問題につきましては、米価算定の方式がパリテイ方式をとつておる以上は、やはりバツク・ペイの問題は当然行われて行くべきものと考えております。又米価審議会の問題でありますが、これは御意見尤もであります。併しあなたはよく御研究を願いたいと思うが、去年の米価審議会に現われた意見というものはそれぞれ根拠が違つております。生産の算定の方式について或いは生産費計算の方式をとり、或いはパリテイの方式をとらんとする、或いは又所得パリテイ方式をとらんとする、いろいろ基準の根拠の違う所から来る計算の相違ということがよくおわかりになろうと思う。同じスタンド・ポイントに立つての価格の違いということであるならば、これはいろいろ違いがありますが、私はその意味において、スタンド・ポイントを同じにして、米価算定方式をできるなら世論に聞いて、一つのまとめた形において計算をするということになれば、余り多くの違いが生じないのじやないかということから、今年の春から米価審議会の小委員会を作つて米価算定方式に関する具体案を今研究してもらつております。これができますれば、十分にその方式に従つて計算をすれば、世論は尊重されると思います。そういう方式に進みたい。
それからマーカツト声明に関達しての二、三のお尋ねであります。まだデテールについては、これからの相談でありますから、よくわかりませんが、ただこの中に現われておる日本の輸出というものの価格が高ければ如何に特需関係において注文がありましても売れない。そこで或る程度その価格を下げるということが出ております。国際価格より高いというものについて下げるということは言われております。ではその声明に関連して、あなたは直ちに農産物を上げるかということであります。これはまあ大体一般論といたしまして、国内農産物価格は国際価格よりも低いというのが現状であります。これはすぐに農産物を上げるかという御質問に対して、上げますということを申上げるわけには行かんのですが、むしろ私どもは、あなたの御心配の、農産物の価格と、又農業者が必要とするものの価格のその間におけるシエーレの幅を少くすることについて今後は努力して行きたいと、かように考えております。又同時にマーカツト声明に関連して、あなたはいろいろ今後の生産を高める上において、米価並びに賃金政策については、低米価、低賃金政策をとるのじやないかというお尋ねであります。インフレを抑えるためにそうやるのじやないかというお話でありますが、政府はさように考えておりません。勿論、根本には船賃等の値下げ、自国船による政策を遂行する。今日の価格の高いということの大きな原因の一つは、船運賃の高いということであります。これを政策としては自国船により運ぶということをするということは、一つのコストの引下げであり、又機械の合理化、今のような非能率な機械で作つておるところに日本のコストの高いという、こういう問題は根本においては大きく考えなければならぬ点でありますが、直ちに低賃金、低米価政策をとるかというお尋ねに対しては、さようなことは別に考えておらんということを申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/38
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039・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 大蔵大臣の答弁は他日に留保されました。
次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時五十分散会
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○本日の会議に付した事件
一、新議員の紹介
一、弔詞捧呈に関する議長の報告
一、日程第一 港湾運送事業法案
一、日程第二 利根川開発法案
一、日程第三 審議会等の整理のための総理府設置法の一部を改正する法律案
一、日程第四 審議会の整理等のための農林省設置法等の一部を改正する法律案
一、日程第五 審議会等の整理のための建設省設置法等の一部を改正する法律案
一、日程第六 審議会の整理等のための経済安定本部設置法等の一部を改正する法律案
一、日程第七 審議会の整理等のための厚生省設置法等の一部を改正する法律案
一、日程第八 審議会等の整理のための国立世論調査所設置法の一部を改正する法律案
一、日程第九 審議会等の整理のための地方自治庁設置法の一部を改正する法律案
一、日程第十 審議会等の整理のための大蔵省設置法等の一部を改正する法律案
一、日程第十一 審議会の整理等のための通商産業省設置法等の一部を改正する法律案
一、日程第十二 審議会の整理等のための運輸省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第十三 特別調達庁設置法の一部を改正する法律案
一、日程第十四 外務省設置法の一部を改正する法律案
一、日程第十五 日本政府在外事務所設置法の一部を改正する法律案
一、日程第十六 国際連合教育科学文化機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件
一、米価問題に関する緊急質問発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101015254X04419510521/39
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