1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十月二十二日(月曜日)
午前十時三十九分開議
出席委員
委員長代理 理事 大澤嘉平治君
理事 岡田 五郎君 理事 原 彪君
稻田 直道君 岡村利右衞門君
尾崎 末吉君 片岡伊三郎君
黒澤富次郎君 山崎 岩男君
木下 榮君 江崎 一治君
飯田 義茂君 石野 久男君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 山崎 猛君
出席政府委員
運輸政務次官 關谷 勝利君
運輸事務官
(鉄道監督局
長) 足羽 則之君
委員外の出席者
日本国有鉄道総
裁 長崎惣之助君
專 門 員 岩村 勝君
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十月二十二日
委員川島金次君辞任につき、その補欠として山
口シヅエ君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した事件
参考人招致に関する件
国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/0
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001・大澤嘉平治
○大澤委員長代理 これより会議を開きます。
委員長不在でありますので、私が委員長の職務を行います。
国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。片岡君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/1
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002・片岡伊三郎
○片岡委員 運賃の値上げに際しまして、一応私の考えていることを伺いたいと思います。今次の運賃の値上げは、あらゆる角度から検討して、ある程度の値上げはやむを得ないと思われるのであります。その大きな理由は、主として特需景気による物価の高騰、これらに関連して施設あるいは材料の騰貴等によつて行われるものと存じますが、なお物価の騰貴による賃金のベース・アツプ、これらも加味して、当然国鉄としては相当のゆとりを持たなければ、独立採算の意味合いにおいて経営が不可能に陥るということは、ある程度認め得られるのであります。しかしながら運賃の値上げは、ひいて国民の生活に大きな脅威を伴うのでありまして、これが国鉄として採算上不引合いだからただちに値上げを行う、また行わねばならぬということが一つの前例になりまして、一つの大きな企業のあり方から考えてみた場合に、大きな公共性という部面に対して、暗い一面を残すのではなかろうかということをわれわれは憂うるのであります。さもなくても国鉄今日のあり方は、国民のたくさんな犠牲のもとに営まれておるのであります。その予算面におきましても、国民の大きな負担の中で営まれておる。名目上は独立採算制を堅持してやるという建前にはなつておりますものの、いまだなかなか独立採算制だけでは背負い切れないで、国民一般が大きな負担をになつておる。その上先ほど申した通り国民の公益、福祉の増進という面にも大きな関係があり、かてて加えて国民の消費部面に対する負担の増加あるいは軽減にも、この値上げがびんと響く。こういうことを考えた場合に、国鉄は独立採算制を堅持する建前上、引合わないからただちにこれを引上げるという考えで今後進んでいいか悪いか、これが私の一つの大きな疑問であります。私個人としては、そういうふうに国鉄があるのでなく、国鉄は公益事業というところへ中心を置いて行きたい。もちろん国鉄が機構の改正によつて独立採算制を堅持し、完全に経営するということは望ましいことではありますものの、他方面に及ぼす影響から考えてみた場合における貨物、旅客等の運賃が、そう再再物価の高騰のあるたびごとに訂正されるということは、はなはだおもしろくない結果を招来するではなかろうかと思うのでありまして、運輸大臣として今後やりきれないからただちに上げるというような態度をとるかいなか、これが一つの質問であります。
なおまた国鉄の終戦後の経営方法を、われわれはつぶさに全国的にわたつて視察しております。あるいはその報告を持ち寄つております。ところが今日の国鉄の経営のあり方というものが、機構の改廃によりまして、ほとんど独自の立場において運営されておる。一例をあげますれば、まず国鉄としては公益性の機会の均等ということに重心を置かねばならぬにもかかわらず、中央の本線のみに主力を注ぐ。具体的な例をあげますと、まず東海道線に大体主力を注ぎ、地方線にはほとんど振り向けられない、考えられないというきらいが多分にあるのであります。先ごろも九州方面をくまなく視察して帰つて参りました。その結果はある時期にこまかく報告いたしますが、どうも今日の国鉄の運営が中央集権といいますか、中央だけ特に施設等の完備を急いで、中央から離れる北海道あるいは九州あるいは地方線、これらに至つては、多少とも改良されつつあるところもありますが、大体におきまして非常に不均衡な点がたくさんに見られるのであります。最近は旅客車の中で雨がさをさすというのは大分、少くなつたようでありますが、つい先ごろまでは旅客列車の中で、旅行中雨がさを用いなければいられないというボロ車も見受けられたのであります。これと関連して、旅客列車もさることながら、貨物列車におきましても、地方へ行くほどまことにみすぼらしい貨車を使つておる。生産地で最も必要なものが、重点的にその地方へ配車されない。たとえば有蓋車がほしいところを物蓋車で間に合せるとか、非常に矛盾した点が多々地方々々に見られるのであります。重点的な設備の上で、東海道線あるいは大きな幹線を主として電化するということはやむを得ないことではありますものの、公益性の平均に及ぶという建前から見ました場合においては、まことに不公平な部面が多々現われておるのでありまして、これらを考えてみた場合に、やむなく諸般の事情から運賃を値上げする、運賃は値上げするが、これに伴う負担の均衡、サービスの均衡という点におきましては、はなはだ不均衡な部面が全国的に行われる。これは非常におもしろくない行き方ではなかろうかということを考えるのであります。もしも旅客車の改造費その他の改造費に充てられる部門が、地方々々にはなはだ不均衡である場合においては、その地方の旅客あるいはこれを利用する消費者部面から、非常なる不平の声が起るのであります。われわれが地方を視察いたしましても、常にその声に触れるのであります。まあしばらくしんぼうしてくれ、何とかいたすからというような申訳をして、苦しい中をめぐつて来たことが多分にあるのでありまして、今後の国鉄の運営上、われわれは常にこれを打開しなければならぬと考えているのであります。もしも今まで通りに、何にしましても交通機関の整備というものは幹線に重点を置いて、地方線などはそのお余りでいいというような考えのもとに、今後これを運営するというならば、私は今度の値上げ問題に対しても、相当のかたい決意をしなければならぬと考えております。一例をあげますれば、やむなく運賃を値上げする、これはある程度やむを得ないと思いますが、このサービスの不均衡な点を是正する上において、たとえば東海道線の三等車と地方線の三等車とを比較してみますと、雲泥の違いがあるのであります。ところがその運賃においては同じであります。これは不均衡もはなはだしいのであつて、もしもこのままの制度で行くならば、私は機会均等、サービスの均霑という上から、この地方車の三等車を四等格あるいは五等格に引下げなければならぬではなかろうか。国鉄の財政が、急に新車をまわすことができないという立場にあるならば、地方のこのみすぼらしい旅客列車の運賃に対して制度を改めて、四等車あるいは五等車という新しい制度をもつて、この機会の均等、サービスの均霑に充てねばならぬと考えているのでありますが、これらに対して運輸大臣の所感を承りたい、こう考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/2
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003・山崎猛
○山崎国務大臣 お答えいたします。私も近いころまでは鉄道の利用者であつて、鉄道を主管する位地は夢にも思わず、この位地に立つたのであります。ただいまお尋ねの要点を承つていると、さもありなん、御同感の点が多々あるのであります。しかし一年余り運輸大臣として内部からその実情を見て参りますと、ああもこうもと思いながら、苦心さんたんしても、なおかつ手まわりかねるというような状態が現状であると、結論的には申し上げられると思うのであります。申し上げるまでもなく運賃を上げるということは、国民経済に及ぼす影響、復興経済の途上にある日本の現状において、できるだけこれを避けたい、そうして国鉄の経営ができるようにありたいと望む点においては、質問者とまつたく同じ意見なのであります。しかしながら今日の国鉄のふところぐあいは、どうしても最小限度の線で運賃を上げて行かなければ、内部事情がこれを許さないというような、せつぱ詰まつた段階に追い詰められてあつたわけなのであります。運賃を上げる場合にもそういう立場におりまするので、旅客の場合で申すならば、従来からもあつたことでありますが、遠距離逓減法を一層強化して、遠い距離の人を割安の運賃にして、遠いところからの交通に便益を与える、あるいはまた近距離の場合には、最も大衆的な俸給生活者あるいは小商工業者などに利用され、あるいは農民に利用される場合もある定期の旅客に対しては、運賃すえ置きということにして、大衆の社会的福祉をできるだけ守つて行こうという心づかいをしたわけであります。さらにまた二等車といえども、今日は決して特権階級ばかりが乗るのではないのでありまして、二等車の定期というようなものも設けて、中流社会の人にも同じような便益を与えて行こうというような考えをして、旅客運賃の場合には考慮いたしたわけであります。さらにまた貨物の場合におきましては、三割の値上げというと相当高い感じを与えるのでありますけれども、御指摘のように今日物価自体が値上りをしておるという、これに比較をいたして行きますと、長い間貨物運賃は安いままに足踏みをしておつたような形なのでありまして、物価の上における運賃の率は、昭和二十一年ごろの場合においては四%何がしというところを占めておつたのでありますが、現在は、昭和二十六年の八月、九月、十月ころの現状においては、その四%が二%何がしになつておるのであります。今度の三割値上げによつて、二%と四%の間をとつて三%何がしという程度まで値上げをしたことになつておるのであります。しかし物価の値上り、その他いろいろ破れ鉄道をできるだけ修繕をし、維持して行くという建前から要求される工事上の費用などを考えて行くと、もし運賃の値上げだけでまかなうということならば、三割を五割にしても満たされないのでありますけれども、それらは運賃の率を最低限にし、同時に合理化節約の面を十分に努力もし、さらにまた商売勉強によるかせぎ出しによつて埋め合せをするというようなことを、運賃を上げる前に、まず国鉄みずからが、みずからの姿でなし得る節約、合理化、かせぎ出しというようなことに全力を上げる手を打つて、それらの工事費その他にかかる費用も最低のところに押えて、運賃率の値上げを三割程度にとどめさせるという方針で、やむを得ず旅客の場合に二割五分、貨物運賃の場合に三割ということをきめて、おそらく国会にこれをかければ、上げ過ぎたという御意見も多々あるでしよう。小さくなつて遠慮をしながら、二割五分、三割というのを恐る恐る出してみたという心持でおるのでありますから、どうかひとつこういう心づかいのあつた点を、御審議の上に十分御考慮願つておきたいと思うのであります。
さらにまた中央の鉄道のよいところばかりをかわいがつて、地方の方はうつちやらかしだという御説であります。実は私もそう思うけれども、御承知のように一万九千何がしキロという約二万延長キロ、そのうち一万一千キロくらいになりましようか、六割というものが赤字で、四割だけが幸いにして黒字、これをうちまぜて経済を保つているわけなのでありました。二十五年度まではどうやら一ぱい一ぱいまでこぎ着けて参つたのでありますが、もう二十六年度に相なると、先ほど御指摘の通りに、特需関係は物価の値上りを誘い出して、国鉄の工事の面における経費が大きく膨脹する、これが大きな原因であり、また従業員の生活をも顧みなければならないような状態にあつて、一ぱい一ぱいの国鉄の経営が、二十六年度に入つては何百万の赤字を見て、補正予算を出さなければならないような状態に入つておるのであります。これは政治論でありますが、一体終戦に至るまで十年近くの間、全国の鉄道を使い放題、手を広げたまますり減してしまつて、至るところに修繕保守の急務が追つており、ほつておけば、窓のガラスの破れだのはなおしのぐべしとするも、事故の発生を心配しなければならない、それによつて人命の心配をしなけれげならないという差迫つた事態が、レールの面においても、貨車の面においても、客車の面においても、あらゆる面にそういうものが国鉄全線に出て来た。これに対してどういう手を打つかという方法、すなわち財源のないときに、一面においては独立採算制というものが打ち立てられてしまつた。そういうような大きなマイナスは、一応ある程度まで金を入れて修復をして、安全な状態、それから先は運営をすればいいという手前ぐらいまでは持つて来ておいて、それから独立採算制にするのでなければ、破れ汽車を十年も使いつぱなしにしておいて、谷の底からスタートを切るのに独立採算制で行くということはずいぶん——私は運輸大臣として言うのじやない、一政治家としてこれを広く批判して考えて行つた場合に、ずいぶん無理な注文で国鉄公社が歩き出したものじやないかと考えているのです。それでもどうやら人員の整理をしたり、合理化したり、節約をしたり、運賃もたくさんは上げませんで、二十五年度に赤字、黒字一ぱい一ぱいのところまでぎ着けたということは、内部の努力と、外部の経済界がだんだん復興、安定に向つて来て、内外の情勢が結びついて、まず二十五年度に一ぱい一ぱいのところまで来たのであります。ところがまたすぐ二十六年度からは赤字を出さざるを得ないような状態で、破れ障子を張るいとまもなしに、新たなる破れが障子にできて来たような現状であると思うのであります。これは御同様に委員諸君、政治家として、ただ単に国鉄だけをごらんにならずに、ぜひお考え願いたいのは、国有鉄道は私設鉄道ではないのであります。国有とはその字の示すごとく国の有であります。国の有すなわち国民の所有であると考えるのであります。これを運営するに線路によつて厚薄があつてはならぬ、一様でなくてはならぬはずのものである。運賃とか何とかいうと、賃金を払うような気がするが、言葉をかえて言えば、一種の国民の税金みたいな考え方で行くべきで、厚薄があつては相ならぬはずであると思うのでありますが、現状においては、六割の赤字線を四割の黒字線で抱いて行かねばならないような情勢であり、そうしてそれがどこでかせぐかといえば、御指摘になつたような東海道とか山陽とかいうような幹線でかせいで、これを地方支線に配分して維持して行く、こういう形であります。それとあわせてさらにまた、交通量の最も頻繁なところには事故も起りやすい。一ぺん起れば、多数の人命を危険にさらさしめるのでありますから、これらの線はできるだけ設備もよくしなければならぬ。頻繁なる交通と非常なスピードを出して走るだけ、一朝事故が起きれば大事故になるというような点がありますので、一段とそれらに対する設備は、平生からしておかなければならぬということも当然かと考えるのであります。それでは地方はどうでもいいかというと、決してそうではありませんが、幾らか地方の方が交通量もはげしくもなし、スピードも落されておりますから、そういう点においては比較にならない現状であろうかと思うのであります。でありますからできるだけ片寄らずに、東海道線も地方支線も同じサービスにせしむべく努力はいたしておりますが、前にも申し上げたように、現状は最善を尽しつつ手まわりかねておるのであります。今日私どもが一番おそれるのは、現在のような状況においては、サービスの厚薄よりも、事故を絶対起さないということに主眼点を置いて、無事故にして行くということが第一でなければならず、そうしてその上にサービスの改善をなし得るように、腰かけから窓に至るまで、また雨漏りのせざる汽車にするようにして行かなければならない。貨車の場合におきましても御説の通り、有蓋車でなければならない荷物を、無蓋車で間に合せておるというようなことは、これは決していいかげんにしておるのではなくて、配車の上からやむにやまれず、ないよりはがまんをしていただこうというようなことで、荷主側の納得、了解を懇請して、やむを得ず無蓋車で間に合せるという場合もあることと考えるのであります。質問者の御意見と私どもの考えは大体同じである。旅客といわず、荷物といわず、運賃の値上げはできるだけ最低限度にとどめたい。それからマイル当りの運賃は同じなんでありまして、荷物の場合でも、旅客の場合でも、中央と地方と差等のないような待遇におきたい。全然同じ気持でおります。運輸大臣としては、一面においてできるだけ赤字を内面的に克服するように、国有鉄道を督励して努力し、できるだけの余し得た資金をもつて、そういうふうな設備の改善、均等を期するように力を尽したいと思つておるのであります。しかしまた、これは委員諸君に政治家的立場からお考えを願いたいと思うが、どうしてもこれは資金を一応まとめて外部から供給を受けるのでなければ、いかに独立採算制といえども、運賃依存だけで今申し上げたような破れ鉄道を立て直し、将来の新しい施設に力を入れて行こということはできないのであります。それかといつて国家から直接補給金を受けるということも、これまた政治的に相当の意見のあることと考えられます。私が腹の中で考えておることは、民間の資金、たんす預金のようなものを何とか、ここに誘い出す方法をくふうして、そうして鉄道の運営の上にそれを利用する道があるべきはずであり、またあると考えております。鉄道の債券を持つというようなことは、現在利益を受けておる現代人が、ただちに利益を受けるばかりでなしに、さらにそれは子孫がこれを受けるのでありますから、受益者というのは現代人ばかりでなしに、後世子孫にも及ぶのでありますから、鉄道沿線の民間の資金などをも、何らかの方法でこれに集めて利用することができればいいのではないか。運賃はなるべく最低限度にとどめたい。中央、地方のサービスを同一のところに持つて行く、この破れ鉄道をそうするためには、どこからか違つた資金を入れて来なければならない。こういうことも考えて、今申し上げたようなことを運輸大臣としては今腹の中で練つておる次第であります。こういう心持ちで運賃に対しても、中央、地方の待遇に対しても考えているということを述べて、お答えといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/3
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004・片岡伊三郎
○片岡委員 地方のボロ鉄道の運営に苦心のあることはよく了解できます。また並々ならない努力と苦心の結果、どうやら今日まで持つて来られた御苦労に対しては感謝いたします。なお今後の経営に対する運輸大臣としての個人の方針等も承りまして、非常に心強く感じた次第でありまするしかしながら私の先ほどの質問に対しまして、要点から離れておるところがありますから、あらためて再質問する次第ですが、物価の騰貴に伴つて、そのたびごとに国鉄の運賃を変更するかという質問に対する御答弁がありません。御承知の通り戦争中は、単なる国内の経済ですべてが運営されたのでありますが、今後のわが国の経済部面、従つてこれに伴う物価の高低は、いわゆる世界の経済に支配され、当然これにマツチしなければならないという建前から、大きく物価の変動に伴うその影響が、ただちにわが国内のすべてに影響して来ることは当然であります。そうした場合において、世界の物価の水準が三割騰貴すると、ただちに国鉄の経営もこれに関連してさらに上げねばならぬというような問題が、必ずここに来ると考えるのであります。その都度国鉄は運賃をかえねばならぬという方針で行くのか、あるいはそうでないのか、それをひとつはつきりと伺つておきたい。
それから先ほど申し上げたサービスの均霑の上において、地方鉄道に対して機会の均等を与えるという意味において、もしも全線の六割に当る赤字を出すところの路線の車輌は悪くてもがまんせよというのであるか、それともなるべく国民の負担の上において、租税のようなものであるから、均等にしたいという大臣の御意思であられるようでありますから、そういう場合には同じく国民の一人として、地方も中央も同じ国鉄の施設の恵みに浴したい。また浴さしてやりたいという建前から、現在の地方のボロ汽車に対して運賃を引下げる御意思がありやいなや、これを明確にお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/4
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005・山崎猛
○山崎国務大臣 第一のお尋ねは、物価が上るたびごとに、運賃を値上げして行くのかというお尋ねでございます。これは私は詭弁を弄するわけじやありませんが、物価が上つても、今申上げたような方法によつて、他の面からでも資金が入つて、それを運転して埋め合せて行けるというような便利をはかつて行けるというようなことであれば、必ずしも運賃によらないでもいいのであります。そこは国鉄は国民の期待も、私鉄における場合と違うのでありますから、国民の期待に沿うように持つて行きたい、こう考えるのであります。ただ足りなくなつたら運賃値上げに依存するというような意味でなしに、運賃の問題を国民経済生活と絶えずにらみ合せて行くべきが原則であろうと私は考えます。あるいはまた物価は上らない場合でも、産業が非常に復興して来て、輸送量が非常に多くなつて来て、施設を拡張しなければならたいというような事態も、当然将来の新日本にはなければならないことであろうと考えますが、そういう場合には、物価は上らないでもそういう値上げの場合もあろうかと考えますが、これは想像でありますから、今私がそうだと言うのではないのであります。要するにできるだけ物の値段よりも——絶えず値段の値上りを刺激するようなことでない、国民の生活を苦しくする方の側でなしに、情勢を見つつ、運賃の問題は常に考慮して行くべきであろう、こう私は考えております。
さらにまた話はもどりますが、どうしても金が足りないときはどうするか。あるいは一般会計から補給を仰ぐということも、議論のあるないは別として、やらざるを得ない場合もあるかもしれません。もう一つは利用者、受益者が若干ずつこれを分担して行く、こういう考え方であると思うのでありますが、これは国鉄の建前から言い、すぐ政府にかけ込むというよりも、国民の理解のもとに、利益者の分担に若干ずつ転嫁して行くということは、審理の上から言つても、常識の上から言つても、筋が通ろうかと考えるのであります。
さらにまたもう一つの点は、赤字六割、黒字四割、中央、地方その経営の内容はわかるが、しからば今日地方の破れ汽車に乗る支線利用者に対して、さらに運賃を四等車、五等車に格下げをしてやつて行く計画はないか、考えはないかというお尋ねであります。なるほど満州では満鉄が苦力車と称して等外車を、三等以外の客車じやない、貨車をこれに充てて、満州苦力の季節的移動を代用車で運んでおつた例はあるのでありますが、今のお尋ねは、現在の三等車を格下げした賃金で運べというのであろうと私は考えますが、今のところではそういう考えを持たずにそれよりもひとつ努力をして、設備を平らにするという方に専念一意向つておるわけであります。もしそういう賃金の制度を新たに設けるというようなことであれば、もちろん国会の御審議を経なければならないのでありますから、われわれ運輸当局者だけでこのことを考えるわけには参らないと思うのであります。現在においてはさような格下げ待遇の新賃金を制定するよりも、現在の地方の破れ汽車を、できるだけ修復のできるものは修復し、新たにまた客車も建造してこれを補つて行くということで、現在地方三等はサービスの改善に努めるという方向で進んでおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/5
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006・岡田五郎
○岡田(五)委員 ちようど運一輪大臣及び国鉄総裁に御出席いただいておりますので、この機会に、大体基本的な問題につきまして、大臣及び総裁の御意見を承りたいと思うのであります。なおこまかな点は政府委員に詳細に承ることといたしまして、大臣にまず承りたいと思います一点は、国鉄が公共企業体の体制になりまして以来、すでに二年近くなつたのでございますが、この国鉄公共企業体に対する大臣の現在の立場からする所感を、まず承りたいと思うのであります。私つらつら国鉄のその後の公共企業体の運営の状態を静視いたしておりますると、何だか鉄道省時代、何だか元の特別会計時代の国鉄と、大してかわりがないように考えられてしようがないのであります。運輸大臣は、元の国鉄を直営直轄しておられた鉄道大臣のごとく、相かわらずいろいろな陳情をお受けになりまして、これを運輸大臣の監督命令によつて国鉄総裁に命令しておられまするか、示唆しておられまするか、よくわかりませんが、外部的な形は昔の鉄道大臣のごとき形であり、内容はさにあらず、しかもまた国鉄企業体の会計状態を見ましても、現在の規定からいたしますれば、多少はゆるやかにされましたが、手足はある程度縛られておる。昔の特別会計におきましても、国鉄の特別会計は、まつたく入るをはかつて出ずるを制する、こういうことで、完全といえば言つてもいい完全な特別会計であつたのであります。しかもその内容においては、現在はいわゆる独立採算制と、言葉はかわつておりまするが、ちつともかわつてないと思うのであります。しかも公共企業体になりまして、これの運営の衝に当つておられる方々は、これまた一人残らず昔の鉄道省時代の方々が運営されておるのであります。幸いにいたしましてこのたび長崎新総裁が来られましたが、六年間民間事業に携わられまして、むしろ民間人といつていい新総裁が国鉄の首脳部になられたのであります。この一人のみいわゆる民間人によつてされる、かような実態になつておるのでありますが、この国鉄企業体の現在の体制からする運輸大臣の所感を、まず承りたいと思うのであります。それに関連いたしまして、お答えの模様によりまして、運賃法の問題につきましての大臣の所感を承りたいと存じまするので、まずこの点についての大臣の所感を承らしていただきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/6
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007・山崎猛
○山崎国務大臣 私の答えがお尋ねの点の核心に触れるかどうか、実はお話の点が十分にくみとれなかつたために、一応私は探りでお答えをいたしますから、足りませんでしたらば重ねてお尋ねを願いたいと思います。国有鉄道公社、公共企業体の組織になつて、ここに二年間の活動を見たのであるが、どうもこれを見ると元の特別会計の鉄道省、鉄道大臣の姿と、あまりかわりがないじやないかというお尋ねであります。私も実はしろうとで運輸省に飛び込んで、鉄道のことを主管する大臣に相なつたわけでありますが、なるほど国有鉄道と看板はかわつた、監理委員会などという制度ができたり、総裁とか副総裁とか何とか、ちよつと会社のかつこうみたいなこともなきにあらずでありますが、前の国会でしたかその前の国会でしたか、うつかり漏らしたのでありますが、二階につかず一階につかず、すなわち鉄道省にもあらず株式会社にもあらず、中二階のような感じだということを私も申すし、委員諸君もお話になつたように記憶いたしております。感じはどうかというと、こういう感じが総体的に私の頭の中にあるのであります。それから実際の運営、営業の面を見て行くと、やはり国鉄は国鉄である。チンドン屋式に営業をはでにすればいいというわけのものではなくて、正確、安全、信頼するに足るきわめて地味な、分秒の差も手違いを許さない厳粛な仕事であるに相違ないのであります。これをもし扱い方をかえて経営するならば、営業成績は上るかもしれないが、同時にいろいろな今日想像し得ざる事態も相伴うて起つて来るであろうし、結局国民の大多数の考える国鉄というものと離れて来る、距離を生じて来るように考えて、営業の面はやはり建前はかわつても、かつての国有鉄道が正確で、国民信頼の的であつたような営業ぶりでなければなるまいかとも考えるのであります。さらにまた運営の任に当る、いわゆる経営者的立場に立つ高級幹部の考え方も、やはりここに基礎を置いて、その間において徐徐に商売気を働かして行くということでなければなるまいかとも思う、こういうふうに考えております。ただいま国有鉄道公社として発足してすでに二年を経たというお話でありますが、その通りであります。これだけ間口の広い事業であり、ことに先刻も申し上げたようにとんとんの経営ができたのはつかの間で、また再び大赤字に逆転するような現状において、これが二階から中二階におりたというような、商売人はだの形を出すいとまがまだなかなかないのが現状ではないか、安全確実を維持するだけに金力をあげて、なおかつ足りないような現状ではないか、こういうふうにも思うのであります。そうして日本の鉄道は、日本国有鉄道法という、相当アメリカ側の指導でできた法案、それを国会が議決して今日の法律ができておるわけでありましようが、それによつてできておる。これは私が申し上げるまでもなく委員諸君の御承知の通りで、アメリカの大きな私設鉄道の経営と国情と物資と人間、あらゆる条件が日本の場合とは違うのでありますから、国有鉄道法は二年使つてまだ相当あつちこつちに、日本の国状に適し、民情に適し、経済状況に適した方向に、修正、改訂を加えて行くべき点が多々あるように考える。これははたしてかえるべきであるか、あるいはこのままでもう少し習熟さしてみたらどうかというような研究途上にあると申してもさしつかえないと思うのであります。いずれにしても今日の中二階的存在は、元の二階にもどすか、しからざれば一階に引きおろして行く。いずれにしても日本の国情、民情、経済情勢、あらゆるものにぴつたり合つたものに仕上げなければならない。まだ荒削りの日本国有鉄道法であろうという感じを持つておるのであります。今御指摘になつたように、長崎新総裁が全力をあげてその局に当らしることになりました。前の加賀山総裁に対しても私はこういうことを申しており、ほんとうにそういうふうにありたいので、もう少し面したい点も多々あるということは、前の総裁も申しておりました。その方針で行こうじやないかということも、運輸大臣として前総裁にも話し、前総裁もそのつもりで行こうと考えておつたのでありますが、遂にああいうことで更迭せざるを得ないようなはめになつて辞任されたのであります。御指摘のように長崎総裁も、かつては純粋の鉄道人でありましたが、幸か不幸かしばらく民間人の数年を過して、いろいろ肩の凝りも解けたという評判であります。これからはあまり運輸大臣がはしのころんだことまでさしずをしないで、国有鉄道は独自でひとつ——ただいまの岡田君の御意見も結論は申されなかつたが、想像し得るのでありますが、どうぞそういうふうに進むことを私も望んでおります。私がいつまで運輸大臣をしておるかわかりませんが、この任にとどまる限りは、そういう方向で今日の国有鉄道法を日本にぴつたり合うように、形のとがつたところをまるくしたり、あまりまつすぐ過ぎるところは少しはカーヴさせてみたりして、いろいろやつて行きたい、こういう心持でおるとうことをお伝えいたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/7
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008・岡田五郎
○岡田(五)委員 大体公共企業体に対する大臣のお考えのほどがわかつたのでありますが、公共企業体が発足して二年間は、優秀な加賀山前総裁によつて運営され、また長崎新総裁によつて短時日でございますが運営されておるのであります。公共企業体の功罪、また公共企業体の今後のあるべき姿というものは、このとうとき二年の経験によつて、ほぼ察しがついておると思うのでありますが、こういう大きな企業体でありますので、できるだけ早く右するか左するかということをきめることが、国鉄運営の高能率化といいますか、効率化を一日もすみやかならしめるゆえんではないか。研究にいたずらに荏苒日を送つて、中途半端な企業体のままに過すことは、国鉄全体の能率化を伸ばすゆえんではないと考えるのであります。研究も非常にけつこうでございますが、あしきはできるだけ早くなくし、よきはできるだけ早くとつて、元へもとして、昔は鉄道院がございましたが、鉄道院のような形で、官営の形をとるか、あるいは完全な会社経営的な形をとるかということをおきめくださらんことを要望する、と言つては変でございますが、できるだけ早く研究の成果を得られまして、完全な姿で事業体の経営体である国鉄の経営組織をきめられるように要望いたすのであります。もし徹底的な会社経営的な行き方で行くといたしますと、会社経営の根本である、輸送の根本であります運賃の問題に触れるのであります。会社経営体の国鉄が輸送いたしまするものを、法律によつて、国会の審議によつてこれを左右することが、はたしていいかどうかという問題に考え及ぶのであります。例を電気料金についてみましても、あるいは専売のタバコ、あるいは塩についてみましても、その他の国民生活、経済活動に重要なものの料金、あるいはその他のものについて、ほとんどすべてが行政事項といたしまして、主務大臣の認可に基いてこれが実施をせられているのであります。しかるに鉄道の運賃につきまして、運賃法という立法的な措置を講ずる理由がいずこにあるかという点につきまして、運賃法を審議いたしまする上におきまする、これは気持の問題でございますが、この問題につきまして大臣の所見をまず承つておきたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/8
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009・山崎猛
○山崎国務大臣 先ほども申し上げた通りに、鉄道の貨物、旅客の運賃は、国民の経済生活に広くかつ深い影響を持つものでありますから、現在のあり方もこの点に深い考慮を払つて、国会の審議を経て、民意を十分その上に反映せしめて決するという手続方法をきめられたものと考えます。これは私が法律的でなく政治的に考えてみて、実際鉄道の運営の上から言えば、ずいぶんめんどうくさい、やつかいな制肘を受けるような形にはなりますけれども、新しい憲法の精神から持つて来て、民主的な政治であつて、ことに国民生活に重大微妙な影響を持つ運賃というようなものは、いずれの法制のあり方をとるにしても、公聴会、さらに進んで国会の議決を経て行くということは、手数はかかりますけれども、国民の納得を得しめて、運賃を心持よくその義務を果して行くという上においては、もつとよい便法はあるかもしれませんが、やはり民主主義は手数のかかる政治だという定論がある通りに、これだけの手数は経て行かなければなるまいと考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/9
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010・岡田五郎
○岡田(五)委員 この問題はこの程度にいたしまして、もう一つ承りたいことは、先ほど片岡委員の質問に対しまして大臣の御答弁の中にございましたが、たんす預金を引出すために、鉄道債券の発行というようなことも考えて、できるだけ赤字をそういうふうなもので埋めて、運賃値上げを避けて行きたい、こういうようなお話もあつたようでございますが、鉄道債券の発行につきましては、私新聞で拝見いたしたのでありますが、一昨日の閣議で、政令の公布についておきめになつたようでございます。ところがこの鉄道債券は、ことし中に発行せられまして、相当のたんす預金を引出すおつもりでいらつしやるのでございまするが、質問がこまかくなつてまことに恐縮でございますが、もしそういうおつもりであれば、このたびの補正予算に、大体幾らかの数字でも計上されなければならなかつたはずだと思うのでありますけれども、予算書を見ましても、鉄道債券で何億くらい獲得しようというような数字も、上つていないようでございます。そういたしますると、大体鉄道債券の発行は、来年の話ということになるのでございまするが、私たちの希望といたしましては、できるだけ早くこの鉄道債券を発行していただいて、何億でも何十億でもけつこうでございますから、できるだけ早く資金を獲得していただいて、この資金を、現在国内的に最も緊急を要しておりまする資源開発のためにする新線建設、あるいは石炭節約のためにする鉄道の電化というような積極的な面に使つていただきたい、かように希望をいたしておつたのでありますが、予算書を見ましてもかようなわくが出ていない。これにつきましての大臣の心組みは、どういうおつもりであるか。また現在預金部資金から百五十億の政府資金を得られて、国鉄の工事用資金を確保しておられるのでありますが、鉄道債券を発行せられまして、両てんびんをおかけになるおつもりでいらつしやるのでありますか。今後この工事資金は、鉄道債券によるのだ、一切政府資金によらないのだ、こういうようなおつもりであるのでございますか。簡単でけつこうでありますから、御答弁いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/10
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011・山崎猛
○山崎国務大臣 鉄道債券とはつきり名ざしてお話でありますから、事ここに至つてはその通りにお答えいたしますが、実は鉄道債券を発行して、民間資金を集めて鉄道に有効に働かしめるという案は、運輸当局としては案を具て閣議に提出はいたしておるのでありますが、まだ閣議決定になつておらない段階にあるのであります。従つて今お尋ねのような、このたびの補正予算に数字を計上するという段階には進んでおらないのであります。しかし今日の階段では、政治的あるいは経済的、国家内外の情勢が許すときに、いつでも発動し得るような法的整備をするという建前から、関係方面等の理解と賛成を得て、法の準備をようやく済まして、閣議に提出する段階に進んだわけなのであります。前に申し上げたように、ぜひこれは鉄道が赤字になつたらすぐ政府にかけ込むというような形でなしに、国の鉄道、国民の鉄道という心持から、利用者がたんす預金のようなものをここにつぎ込んで行つてくれれば、資金の効率も上りますから、そういう方向に利用したいと考えておるのであります。もちろんどれくらいの金額を何年度にどういうふうに公募するかというようなことは、今申し上げたようなわけでありますから、まだ計画は立てておりません。しかし法が整備し、内外の情勢がこれを許すようになつたならば、できるだけ早く利用者たる国民をして、鉄道投資の機会のあり得るように取進めたいと考えている次第であります。こういう資金も、先ほど片岡君のお尋ねになつたような地方支線の改良、改善の上にも、あるいは電化の促進の上においても、これによつて全額をまかなうことはできませんが、何ほどかの資金の余裕をそこに入れることができるのではないか、こういうふうに考えておつて、望みを残して実行を期したいと考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/11
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012・岡田五郎
○岡田(五)委員 それではもう一つお尋ねいたしたいと思います。最近貨物の滞貨が二百十数万トンになつておりまして、国鉄の沿線には貨物の山が築かれておるのであります。しかもこれからだんだん季節物の出荷が、非常に旺盛になる時期に逢着いたしておるのであります。私はこの十二月末には、数百万トンの滞貨が駅頭に積まれるのではないかと憂えております。このときにあたりまして、はなはだ不幸にも、この貨物運賃を三割値上げしなければならないという窮地に、国鉄経営の面から追い込められたのであります。しかも一面、ある新聞で拝見いたしておるのでありますが、石炭不足のために、国鉄の貨物運転用の石炭が二十数万トン不足する、しかも十一月からのサービス向上、貨物輸送力の伸長のためにする列車の増発も思い切らざるを得ない、こういうようなはなはだジレンマな状態に、国鉄経営の現状が追い込まれていると私は考えるのであります。産業の復興は、一にかかつて原料の確保と動力及び輸送力の確保が基盤であると考えるのであります。ここに大きな隘路があつたならば、産業の復興はから念仏に終ることを信じて疑わないのであります。この国鉄の陸上輸送の大宗をなす貨物輸送力が、非常に不足しているこの現状に処し、またこの貨物列車運転用の石炭が二十数万トン不足するという現状に処して、運輸大臣は、どういうような政治的、行政的措置を講ぜられましたか、また講ぜられんとする御意図がありますか、ひとつ承りたいと思うのであります。なおこの問題につきましては、引続いて国鉄総裁の御決心のほども承りたいと存じますので、まず運輸大臣からの御説明を承りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/12
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013・山崎猛
○山崎国務大臣 滞貨の問題と石炭事情の問題とは、今日国鉄の上に振りかかつておる幾つもの問題の中の、おもなる二つであろうと考えます。
〔大澤委員長代理退席、岡田(五)
委員長代理着席〕
滞貨は、専門家の岡田委員にお答え申し上げるまでもなく、まずもつて貨車を整備すること、さらにまたその貨車の配車、運転、連絡等を能率的に運営すること、それらいろいろあろうかと考えます。今日におきましては、こまかい数字は今私から申し上げるまでもありませんが、新しい貨車をつくる上においては、予算上許す最善の努力によつて新しい車を補充し、さらにまた修繕等の工程もできるだけ能率化し、迅速にして、停滞せざるよう改めるとか、その他できるだけの能率増進の方法を講じて、滞貨の一掃に努力するという方針でおる次第であります。滞貨が多いということは、国鉄としてはまことに困つたことでありますが、国の産業としては、経済、産業復興のしるしであつて、まことに喜ぶべき前兆であると思うのであります。どうかこの喜ぶべき前兆を悲しむべき結果に陥らしめざるように、国鉄当局者の勉励と奮発によつてこれを解決し得るように努力いたしたい。運輸大臣としては予算上その他できるだけの手配をすることは、またしたことは、いまさら私が申し上げるまでもないのであります。ただ微力はなはだ不十分であつて、なお重ねて季節的出荷の結果、滞貨が増しつつある傾向にあることを、何とかして切抜けたいという一心で今日やつておるような次第であります。
石炭事情の現状については、専門家である岡田委員の御指摘の通りであるのであります。この点は私が講釈をすれば釈迦に説法のようなことで、逆になつてしまうのでありますが、国鉄の石炭を充足するためには、外に向つては手の尽し得る限り、資金の許す限り活動をいたした結果が、御指摘のような実情に相なつておるのであります。内部においてはこれと相応じて石炭の消費の面において、利用の面において、できるだけむだを省き、必要なるものをもある程度切詰めて予算を出して、その不足の一端を補うということで、今全力をあげておるような次第であります。今朝の新聞にもありましたが、一時有望視されたインド炭も、なかなか思うように参らざるのみならず、もつとひどく差迫つておる電力用炭の方にまわさなければならぬような点もある。いずれが重大であるかは意見のわかれるところではありますけれども、いずれにしても最近のような関西方面の電力不足が、国民生活の上に及ぼした影響、産業、生産の上に及ぼしたあの状況を見ては、鉄道の方が国家の大局から見ていくらか譲歩した形になるのでありますけれども、これもひとつ高所大所から御了察、御判断を願わなければならないと考えます。もしいやしくも今後において、輸入炭等の望みがある場合においては、大局的見地から、また国鉄も敢然立つて、その石炭を獲得することに努力しなければならぬようなこともあるかもしれないのでありますが、何とかして煎じ詰めて、結局のところ十数万トンの不足まで圧縮して来たわけなのでありますから、もし今日のような状態が続けば、一月からは運転列車の数を減らさなければならぬようなことも、数字の上では出て来るのであります。これももしやむを得ずとしても、その運転回数を減らすということを最小限度にとどめることに、国鉄側の努力を期待しておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/13
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014・岡田五郎
○岡田(五)委員長代理 国鉄総裁に伺います。これは新聞で拝見したのでありますが、サービス第一主義、こういうようなことを国鉄総裁御就任の第一声として、新総裁は御声明になつたのでございますが、このサービス第一主義と現在の駅頭における滞貨、この駅頭滞貨ということは、要するに輸送士不足が基因でございますが、滞貨は結局貨物に対するサービスのあまりよろしからざる現象であると私は考えるのでありますが、そのような滞貨の現状に処しての、国鉄総裁のサービス第一主義というものについてのお話を、この際お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/14
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015・長崎惣之助
○長崎説明員 昨今滞貨が非常にふえまして、今後貨物の荷増し期に向いますと、ますますふえるであろう。それに加えて石炭もなかなか思うように入らない。われわれはこの下半期に大体三百万トンの石炭を要請したのでありますが、これに対してまだ五、六パーセントの石炭しか入つておらない。御承知のように石炭がなければ列車は走らない、増発はできないというのが建前でございますが、これは旅客列車の増発と貨物列車の増発と両方あるのでございます。そこで貨物列車と旅客列車のいずれをとるべきかということが、考慮に値する一番大きな根本問題であろうと思います。岡田委員御承知の通りでありますが、旅客列車はダイヤにはつきり線を書いて、定期的に運転しなければならないのでございますけれども、貨物列車の方は臨時的に貨物があつて、現在は滞貨が非常に多いのでありますからどうにもなりませんが、まず私は旅客列車の増発については多少考慮を加えるにいたしましても、貨物だけは全力をあげて増発をはかるということを考えております。次にはいろいろ手がございましようが、貨車運用効率の問題であるとか、あるいは積みおろしその他の時間の短縮等、こまかいことを申し上げますといろいろございますけれども、それらの手段をでき得る限り講じまして、滞貨の一掃をはかりたい。同時にまた貨物列車は臨時でありますから、今うんと増発しておいて、閑散期になつたら減して行くということも考えられると思います。それら各種の手段を講じて、滞貨の一掃とまでは行かないでしようが、漸減をはかるということを目下の状態では考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/15
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016・江崎一治
○江崎(一)委員 この際山崎運輸大臣に主として政治的な問題についてお伺いをしたいと思う。こまかいことは別の当局にお伺いします。
今回の国鉄運賃の値上げの理由として、当局の説明を聞きますと、二十六年度の国鉄予算は昨年の八月に立てたものである、そのために朝鮮動乱の影響を考慮しておらなかつたから、こういう値上げをしなければならぬはめになつたのだ、こういうような説明であります。ところがこの一年有半をずつと見てみますると、日本政府は国連協力と称しまして、朝鮮事変にみずから好んでその一端をかつぎ、まずその結果として重要資材の欠乏、その暴騰を招来して、そのために特に平和産業、中小企業が破滅的な大打撃を受けた。その後日本経済はずつと悪性インフレの傾向をたどりまして、そのために一般の貧困な国民生活はますます、圧迫をしいられて来た、そういう結果になつております。われわれの調査によりましても、また官庁調査によつても裏書きはできるのでありますが、全国において半失業者を入れて失業者の数は、一千万をとつくにオーバーしてしまつておるような状態であります。従つて日本政府は、憲法で戦争を放棄しておる。それにもかかわらず実質的に朝鮮戦争に日本政府が参加したという結果として、われわれは国鉄の値上げを見ておるわけです。この朝鮮戦争の実質的な参加が、今回の国鉄の運賃の値上げ、電信電話、郵便料の値上げ、電力料金の値上げ、さては肥料の値上げ、主食の値上げを来したものだとわれわれは考えておるのであります。そこで今回の運賃の値上げ問題は、パブリツク・コーポレーシヨンであるところの国鉄一個のわく内の問題ではないのでありまして、これは大きな政治の問題であります。そこで今回の値上げに関しまして、直接責任のある政治家の一人である山崎運輸大臣に対しまして、政治的な責任についてどうお考えであろうかということについて、お伺いを申し上げる次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/16
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017・山崎猛
○山崎国務大臣 今お尋ねの点でありますが、あなたと私とはどうしても政治的イデオロギーが違つておりますから、これはいつまで議論をしても平行しません。私が今あなたのおつしやつたことを反駁しても、世界が二つの陣営にわかれておる議論でありまして、短い時間に、あなたと二人で川中島の決戦みたいで、相済まざる問題であると思いますから、もつと広い天下でお互いに話合うことにして、避けたいと考えます。
それから私は政治家として申しますが、朝鮮事変で物が上つた、物が上つたといいますが、政府側が何もかも朝鮮事変で物が上つたというように言うのは、私は間違つておると思います。物が上つたのは朝鮮事変で上つたのではなくて、終戦後だんだん経済復興をして、国際的の経済影響を直接感ずるようになつている日本としては、世界の物が上つて来れば、やはり日本の物が上つて行くのであります。朝鮮事変だけで世界の物価が上るわけではないのであります。戦争が済んだ後には、恐ろしい勢いでインフレになつて物価が止るのは、いつの戦争の後を見てもわかるはずであります。今日の程度に日本が悪性インフレを押えて、徐々にインフレが来ておるのは、これは為政よろしきを得たものと私どもは考えておるのであります。でありますから、朝鮮事変のために物が上つた上つたと言う政府者も間違つております。私はそうは思わない。ほつておいても戦争の後には物は上るのです。朝鮮事変という小さなこぶが腰にぶらさがつただけで、大局を支配するほどの影響は私はあるまいと思う。朝鮮事変で物が上つたというけれども、日本の産業のうちどれだけ響いたでしようか。私はわずかなものだとしか考えておりません。それで朝鮮事変で物価の値上げの影響を受けないものの方が、はるかに多いと考えておるのであります。それでありますから、朝鮮事変に参加して値上げをして、その本人が今度国鉄の値上げをしたのではないか、こういうようにものをうまくつぼへ追い込んで行こうとしても、それは通用しない。この議論をあなたと二人でしていると、何日やつてもマルクスのもとにもどるまで議論を進めない限り、解決のつかない議論でありますから、これはこの委員会の議題としては、一升ますで大海の水をはかるようなものでありますから、ひとつ話題を転じてお尋ねを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/17
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018・江崎一治
○江崎(一)委員 ただいま山崎運輸大臣のお話によりますと、川中島の決戦だということでありますが、これは政治家の言うことではないと思います。しかしこれは追究いたしません。
そこでもう一点伺いたいのでありますが、この前の行政整理と、それに伴つての民間の企業の合理化によつて、大体四十万人の人が失職しております。首になつております。これに対して当時の大蔵大臣は、平和産業の復興によつて、必ずこの失職者を全部吸収するということを、本会議で明言している。ところがその後二箇年間、うそばつかりである。今度も聞くところによりますと、国鉄の行政整理で、大体この賃上げに伴つてやります企業の合理化によつて、二万人の首を切るということであります。そのほか官庁の行政整理、それから今度また第二次の行政整理があるそうでありますが、こういう問題を政治家としてどう考えておるか。また二枚舌を使うつもりか、その点を明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/18
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019・山崎猛
○山崎国務大臣 お答えいたします。これも政治家としてという条件付でありますから、その見地からお答えいたしますが、一体日本人はせつかち過ぎると思うのです。あれだけの戦争をして、家もなくなり、食う物もなくなり、この敗戦のどん底に落ちたのが、五年や六年で常態に近いところにもどそうということは、人間わざでは及ばないことなんです。人間が集まつて戦後の処理をして行くのです。一生懸命あつちを押えればこつちが漏る。こつちを押えれば向うがくずれる。八方に手を配つて奔命に疲れるような姿でおるのが、今日の日本のあり方であると思うのであります。それは四つの島に八千三百万、ちようど一千方近い人間がほかでかせいでおつたものが、外地からもどつて来てしまつた。人間はあふれる。いろいろな波瀾がここに起ることは当然であります。しかしながら昭和二十年の終戦以来、今日二十六年に至るこの一年々々の経過をごらんになれば、お互いに納得は行くと思う。よけいな説明はいりません。われわれの衣食住にしても、一年々々面目を改めて来ておる事実は、偽りのない事実であるのであります。むろんこれだけの人数で、これだけの国で、いもを洗うように八千三百万が押し合つているのだから、何十万くらいの困つた人ができたりいろいろするということは、これはやむを得ない。やむを得ないといつてほつておくのではありません。全力をあげてやりつつ、なおかつ漏れるというようなことができ上る。けれども今申したように、この数年間に年年とわれわれの生活がとりもどされつつあるということは、これはだれが何といつても現実の事実であると私どもは考えておるのであります。その過程において人員の整理というようなことも、これまたやむを得ざる事柄であります。われわれ政府者としては、八千三百万の国民から国の政治を預かつている。預かつている以上は、できるだけ経費を減らし、行政を簡素化し、能率を上げて、国民の負担を軽くして行くという方向に政治を向けて行くということは、当然なすべき為政者の義務であるとかたく信じておるのでありますから、そういうものを徐々に、大きな庭を掃除するがごとく、それを整理して行くということが当然で、一ぺんにはできない、各方面からやつて行く、そしてそれらに対しては手を切つて行くということでなければなるまいと思うのであります。大蔵大臣がどういうことを言つたか、私は知りません。ただいまここで承るのでありますが、行政整理をしても、平和産業の復興によつてそれらの人はまた吸収さて行くであろうと言われたことは、それは一つの意見として決して間違つた意見ではない、常識であると私どもは考えます。朝鮮事変の結果であろうが、国際的の情勢であろうが、いずれにしても日本の産業が復興して来たことは事実であり、産業が復興すれば人間の手がいることは当然であり、どこへだれが入つたかはわかりませんが、それらの人はそれぞれ不満足ながらも、復興途上における地位をかち得て今日あるであろうと思うのであります。もちろんフル・エンプロイメントというようなわけで、日本国民一人の漏れなく職を得るということは、敗戦後まだ数年の日本に何人が政治をしても、まつたく不平の声なき政治ということは期待し得ない。し得ないけれども、最善を尽してその声をできるだけ少くして行くという方に進めておるという事実は、手前みそではありません。私は冷静、公平に見て言い得ることであり、国民もその事情は納得しておることであると、かように信じております。ただ先ほども申したように、江崎君と政治的イデオロギーの全然一致し得ざる平行線の立場に立つておりますから、私の今申した考えなり説明では、江崎君が納得されないことは私は承知の上です。けれども私と同じイデオロギーに立つ者は、今私の言つたことを納得してくれる、こう信じておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/19
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020・石野久男
○石野委員 大臣にお尋ねいたします。先ほど岡田委員に対する御答弁の中に、石炭事情から、年末のころには相当程度車輌を減らさなければならないような事情もできて来るかもしれないというお話もございました。それほどに滞貨問題についての今後の見通しは明るくはなく、かえつてわれわれとしては憂慮しなければならない点があるように思われるのであります。たまたまその答弁と同じときに、滞貨が多いということは、非常に日本の経済界が復興して来ておる喜ぶべき前兆であるのだ、その前兆をなるべく悪くしないようにして行きたいという大臣の心構えを申された。しかし私はこの場合、山崎大臣にお尋ねしたいのですが、今日起きておる滞貨というものが、はたして日本経済界のよりよき事情を意味するものとしての滞貨であるか、それとも現在の滞貨そのものが、何らかの形において運輸行政上における欠陥として出て来たものでないかという点に、問題があると思うのであります。幸いにして山崎大臣の言うように、現在国有鉄道が持つておる運輸諸設備をフルに動かして、なおかつ滞貨があるような事情にまで、経済界が上昇の傾向をたどつておるとは、私ども必ずしも思わない。やはりこの問題は昨年の朝鮮事変の発端以来、一箇年にわたる運輸事情のいろいろな変化に伴つて起きて来ておるものだと思うのであります。従つて先ほど来私どもは国鉄当局に対しても、運輸事情の中における朝鮮事変の影響を、相当重要な問題であると考えて質問をして参りました。けれどもこの朝鮮事変に関連する幾多の問題については、資料等の提供がなかなか十分に行き渡つておりませんので、やむを得ずわれわれはそれを正確に把握することはできない。けれども最近になりますと、安本等の情報から行きますと、下期における日本の生産は、電力事情等から約二割ないし三割がた軒並に減産されるだろう、こういうことがいわれておる。そういうことをあらかじめ大臣としては承知の上で、なおかつ今日の滞貨の一掃ができないという事情は、非常に私は憂うべきものだと思うのであります。大臣は先ほど来この問題について、滞貨が多くなつて来ておることは、日本経済復興のよき前兆であるというようなお話でありましたけれども、しかし私はそのままに聞き取れないのでありますが、いま一度その意味を説明していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/20
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021・山崎猛
○山崎国務大臣 私の考えは、言葉が足らないかもしれないが、間違つていないとかたく信じております。ということは、なるほど電力がなかつたから、生産が減つたというようなこともあり得るでしよう。しかしそれは、かぜを引いたからお前のからだは不健康だというのと同じで、これはとんぷくを飲んで熱が下りさえすれば健康体である。ちよつとかぜを引いて一日、二日寝たから、お前は病身であるという断定にはならないのであります。からだ全体——日本の産業全体は、やはり振々として経済的復興をし、生産を増加しつつあるということには、関係はないと私は考えるのであります。それで荷物がよけい出て来たから、自然滞貨にもなるということは、これは常識だろうと私は思います。石野さんはおそらくこういうことをおつしやりたいと思つたのだろうと、私は邪推でなく、想像するのです。ということは、下山事件のときにも十何万減らしたではないか、今度もまた二万ばかり減らすというが、人減らしをするから滞貨ができるのだ、こう私は想像するのであります。しかしどうぞそれは御心配なく願いたいのであります。仕事をマイナスにしてまでも、首を切るのが目的ではないのであります。なるたけ国民の負担を少くして、経費を縮少して、現場の場合においても同じように、能率は現状を維持するばかりでなしに、なお将来に向つては一段の努力によつて増し得るというようなねらいをつけて、今日八分働いているものを八分五厘にし、八分八厘にし、九分にする。そうして百パーセントの力をお互いに維持して奉仕して行こう、こういう気持を目標において整理というようなものも行われるわけなのであります。滞貨ができてもかまわない、人員整理はやるのだ、そういう乱暴な無責任な気持で、人員整理というようなものはやらない。一面においては国民に対する義務として、できるだけ経費を縮少し、事務を簡素化して行く。もちろんそれは鉄道の会計が黒字になるばかりでなしに、先ほど総裁のサービス第一主義といつたような点にも万遺漏なきことを期しつつ、縮少もして行くのであつて、こういう気持であるということをあらためてひとつ御理解を願いたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/21
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022・石野久男
○石野委員 賢明な山崎大臣の私の気持をごそんたくなさつたことは、まつたく的がはずれている。もちろんそれも一部の中にはありますが、そういうことじやない。それよりももつと大きな点は、むしろ輸送構成の中に問題があるということを私は聞きたかつた。その輸送構成の変化が人員の上に及ぼす影響も、もちろん大臣の言う通りでございます。けれども私どもは実を言うと、ただ数字をつかまないでそんたくしただけで言つたのでは政治にならない。再三当局に対して資料を要求するけれども、その資料が出て来ない。そういうところにこの滞貨の問題を十分に究明する正確なものを持てないのでありまして、これを私はここではいろいろと論議する時間もないようで、先ほどから政府委員席や何か委員会の方からも催促もありますので、それをここで長々と尋ねることはできませんが、私どもの見通しでは、日本の経済復興は、現在滞貨をしているものの運送が、幾らフルに運送してもしきれない程度に、生産が上昇しているものだと思わない。むしろそれに対する輸送の手が伸びれば、十分滞貨ははける。ところが問題はそういうものに手の届かないようなほかの輸送物資が、多く日本の鉄道路線の上を走つているということにあるので、それが朝鮮事変と十分に関係があるし、この一年間の経験がそういうことを私たちに示している、こういうふうに言いたい。だから山崎さんは、先ほどから朝鮮事変の影響というものは、日本の経済界にあまり大きい影響はないと言つておりますけれども、政府当局の出しているようないろいろな統計資料というものは、朝鮮事変以降において日本の物価を、少くとも総平均において五〇%以上げているし、生産材のごときは約二〇〇%上げているものもあるし、消費材においては少くとも四十数パーセント上げているわけです。これは山崎さんの勘で言う意見とは違う。自由党はよくワンマンワンマンと言われますけれども、山崎大臣はそんな方だとは思つていなかつた。しかしきようの論を聞きますと、非常に独善が多いように思います。先ほど江崎さんとのお話を聞いておりますと、非常な独善観に立たれて、日本の経済界というものの判断をしておられるようでございます。私はそれは政治を非常に誤ると思う。少くとも日本においてはいろいろな統計資料も、占領後においては十分充実して来ているということを政府当局も言つているし、その統計の示しているところが、朝鮮事変以降非常に大きな影響を経済界に与えているわけであります。私はここで国鉄が今運賃の値上げをしなければならないような事情に来ているのも、朝鮮事変に伴う諸物価の高騰によつて、予定されたところの予算が遂行できない、その結果として出て来ているのだという、そのしりは一応認めなければならない程度にまで、朝鮮事変の影響が大きく出ている。もし山崎大臣が言うように、朝鮮事変の影響というものが日本の経済界にないとすれば、この運賃値上げの問題も、おのずから提案される理由の大半をなくするものだと思うのでありますが、それでもなおかつ山崎大臣は、先ほど江崎氏に対するような答弁の考え方を、あやまつているとはお思いになつていないのでしようか。いま一度お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/22
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023・山崎猛
○山崎国務大臣 私は別段独善的にワンマンで意見を述べているわけではありません。私の感じがそこにあるのでありますが、申し上げるまでもなく朝鮮事変の影響がないとは、私は申したつもりはないのです。言葉が足りなかつたかもしれません。むろん何もかにも日本が朝鮮事変のための影響ばかりを受けて、上つたり下つたりしておるものじやない、こういう意味であることはどうぞ御了承願います。言葉は足りなくても、これはお察しを願わなければ、話のつじつまが合いません。しかし朝鮮事変のあるないにかかわらず、農工業といわず、生産の、上昇は非常な勢いであることは、申し上げるまでもないのであります。それはやはり荷物となつて停車場に出て来るということも、お察しを願えることじやなかろうかと思うのであります。あるいは統計上などでは、こういう事業がこうなつたという場合には、五〇%も八〇%も上つたものもあるかもしれませんけれども、日本全体の国富というか、国全体の経済という面から行けば、何もかにも朝鮮事変に影響されて、日本がそんなに上り下りしていない、私どもはこういうふうな考えを持つておることを申し上げたわけであります。もちろん朝鮮事変の関係を真正面に風よけのように受ける場所だけは、そうなつたところがあるであろうというようなわけであるのでありまして、別段私の独善的なものの考え方ではない、こういうふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/23
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024・石野久男
○石野委員 朝鮮事変の影響はどうあるかという問題については、どうもイデオロギーの差で、平行線をたどるということになるのかどうかしれませんけれども、とにかく昨年の朝鮮事変以降における日本の経済界は、非常に事変そのものの影響を受けておる。この事変が織りなしておる世界経済の動向を、またまともに受けておるわけだと私どもは信じておる。あとまだ問題がいろいろあるのでありますけれども、時間も大分たつておりますので簡単にいたします。
いま一つお尋ねしたいのですが、国鉄の中には賃金問題で先ごろ調停の問題がありまして、今労働組合の方からは裁定がまわつておるはずであります。この裁定の期限を延ばすということが、当局と組合との間に話合いがついて、延びるのだそうだことをちよつと情報に入れております。そこでちよつと当局にお尋ねしますが、国鉄の裁定の問題については、しばしば裁定委員会が裁定をしておるけれども、それがいろいろな点で公労法の十六條の問題がからみ合いまして、財政上の理由でこれが容易にその裁定通りの実施ができなかつたのでございます。今回の運賃値上げの問題とからみ合せになりますこの裁定の問題は、おのずから裁定が出ました後におけるところの諸事情についても、またわれわれとしては心配を持つわけでございまして、ここで大臣の方でも、大体裁定の内容等についてのことなども、うすうすとは情報も入れておることと思いますし、またそういうことを全然考えなしに裁定がされるとは思いませんが、もし裁定が行われます場合においては、今回のその裁定に対しては、当局はできる限り裁定の実施ということについて、財政上の理由等からそれをまたけるようなことがないように、われわれは望みたいのであります。今大臣の気持としては、どういうふうにこの裁定を見ておるかどうかということをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/24
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025・山崎猛
○山崎国務大臣 国鉄の賃金ベースの問題におきましては、休会中に参議院の労働委員会であつたかと思いますが、そのときに調停委員長、国鉄の組合委員長などが質問に応じて陳述される機会に、私も同じ委員会に列したのでありますが、労使両方の側が応諾した形になつておつて、しかも労使両方の間に協定が成り立たない姿に置かれてあつたのであります。両方が応諾しておりながら、それで協定ができないということは、まことにおかしな話なんですが、そのときに私はこう述べたのであります。両方ともそれぞれの側において応諾はしている。ちようど壁の両面のようなわけでい違つたサイドでそれぞれ応諾している。違つたサイドとはどういうことかというと、両方ともそれぞれの条件を付して応諾している。応諾という言葉は同じだけれども、壁の側が違つている。労組の方の条件は三箇条ばかりあつて、自分の希望がいれられなければ、こうこうこうという条件を付して応諾だというのです。だから百パーセントの応諾ではない、条件付応諾なんであります。それから国鉄の方は、万全の策を講じて、予算上、資金上これができる場合には、調停に応ずるために誠心誠意これに当るということで応諾する。これもやはり一つの条件付であります。予算上、資金上万全の策を講じて、それができるようならば応ずるというのですから、これも条件付です。壁の両側みたいなものです。だから両方とも応諾と言いながら、条件付応諾だから、両方で協定ができない。この押問答をしているうちに、御承知のように調停委員会ではさじを投げたというのでありましよう。それでぐずぐずしてもおれないというので、仲裁委員会にまわされて、今日仲裁裁定を仰ぎつつある現状であります。そこで私が申すまでもなく、石野委員も御承知の通り、国鉄労組の方の役員が今伊東で会議をしておられます。その席上でどういう話合いになるか、内容は知りません。国鉄当局者の方で申入れがあり、組合当局者もこれに応じて、仲裁委員会から仲裁の裁定の下るのを相談の結果、十日間とか一週間とか延ばしてくれという話合いになつたという報告を受けております。今石野委員のお尋ねは、仲裁裁定が下つたらば、それに対してどういう判断をするのかということをお尋ねになつたように聞き取つたのでありますが、まだ仲裁裁定が下らないのでありますから、下る前にとかくの意見を述べたり、批評することは、仲裁裁定を牽制する結果と相なりますから、運輸大臣としても、国鉄総裁としても、慎むべきことであろうかと私どもは考えます。裁定が出た後において善処しなければならないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/25
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026・石野久男
○石野委員 裁定の問題がまだ出ていないから、意見を述べられない、これは一応大臣の立場から無理がないと思うのであります。私の聞きたかつたのは、再三再四にわたつて裁定というものがちつとも実施されていないので、今回の裁定が出た場合には、どういう心構えで行くのかということを聞いたわけでございます。答弁がちよつと違つているように思いますので、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/26
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027・山崎猛
○山崎国務大臣 いたちごつこみたいなことを話し合うわけではありませんが、予算上、資金上可能であれば、もともと仲裁も調停も何もいらないことですが、争いの起るのは、そこに不如意の点があればこそ主張する、そうも行かないということが起るのであります。今日の実情は、国鉄当局者には最善を尽させるという心持で私はおります。それが百パーセント満たすことになるやら、最善を得ずして次善に終るやら、三善に終るやらは、仲裁裁定の下つた後でなければ申し上げかねる、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/27
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028・石野久男
○石野委員 先ほど山崎大臣から、人員の問題について石野はこういうようなことを心配しているのだろうといえお話がありました。もちろん私もそういう心配を持つているのでございまして、この人員の問題について、最近非常に国鉄の輸送量が多くなり、人員が少くなつているために、労働が強化されている。そしてほかの職場に比較して、鉄道の方では非常に過重労働の結果としての病人、長期欠勤者なども多いように聞いているのでございます。このときにまた人員の整理が行われて、今回の人員整理は長欠者をわく内にするか、わく外にするかという問題等もいろいろあるようでございますが、これからあとの輸送量の増強の傾向と、ここで行う人員の整理との関係について、大臣は、国鉄輸送業務の運営上に非常に支障を来すという考え方は持つていないかどうかという点を、一応確かめておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/28
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029・山崎猛
○山崎国務大臣 人間は裕福に満ち足りるということは、けつこうなことに相違ないのであります。しかし貧乏世帯をやりくりして行く上においては、やはり経営者もそこに働く人も、ともに心持を合せて、協力して行くのでなければ、事業は成り立たないことであり、同時に八千万国民の期待にとたえるゆえんでもないのであります。しかしいやしくも高所大所から人員整理をするという以上は、目の前にはつきりした支障を見つつ整理をするというような非常識なことは、国鉄当局においては応諾しないにきまつているのであります。人も減らす、同時にみんなも一緒に心を合せて勉強するという心構えで、再建日本を打立てる、そういう建前から、整理というようなことにも涙をのんで応じてくれていることと思うのでありますが、これは各界、各層、全国民がこの心持でなければ、新日本の建設はできない、こういうように私は思うのであります。決して喜んで手柄顔に整理をするのではありません。やむにやまれざるところを忍んで、高所大所から涙を振つて気の毒な思いをさせるというのが整理である、これは申すまでもないことであると思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/29
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030・岡田五郎
○岡田(五)委員長代理 この際お諮りいたします。本案の審議の参考の資に供するため、各界より本案に対する意見を聴取いたしたいと存じまするが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/30
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031・岡田五郎
○岡田(五)委員長代理 御異議がなければさように決します。
なお参考人を招致いたします日時、その氏名等につきましては、委員長及び理事に御一任願います。
本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。
午後零時四十九分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101203830X00419511022/31
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