1. 会議録本文
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000・会議録情報
公聽会
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昭和二十六年十月二十七日(土曜日)
午前十時二十四分開会
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出席者は左の通り。
委員長 山縣 勝見君
理事
岡田 信次君
小泉 秀吉君
前田 穰君
委員
石原幹市郎君
内村 清次君
小酒井義男君
高木 正夫君
村上 義一君
事務局側
常任委員会專門
員 古谷 善亮君
常任委員会專門
員 岡本 忠雄君
公述人
日本労働組合総
評議会福祉対策
部長 矢田 勝士君
石灰石鉱業協会
会長 芳賀 茂内君
日本木材協会常
務理事 吉田 好彰君
鉄道貨物協会評
議員 高橋 秀雄君
日本石炭協会專
務理事 天日 光一君
日鉄汽船株式会
社社長 渡邊 一良君
北海道議会商工
委員長 宮坂壽美雄君
日本杭木協会專
務理事 七瀬 善吉君
高等学校教諭 梶原 房子君
鹿児島トラツク
株式会社專務取
締役 田中 正君
農 業 水谷 義正君
日本交通学会常
務理事高千穗商
科大学教授 細野日出男君
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本日の会議に付した事件
○国有鉄道運賃法の一部を改正する法
律案(内閣送付)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/0
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001・小泉秀吉
○理事(小泉秀吉君) それでは只今より運輸委員会を開会いたします。
今日は、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案につきまして、運輸委員会の公聽会を開会いたすことになりましたが、そういうようなわけでこれから公聽会を開会いたしますにつきましては、公述人のかたがたはいろいろ御多用のところを、特に御遠方のほうからも御出席下さいましたことを委員会として厚くお礼を申上げます。なおこの際御相談をいたしますが、公述人のかたがたはお一人の発言時間を約十分以内にして頂きたいと存じます。又公述人に対する各委員よりの質疑のかたがたも大体五分以内ということに御了承を願いたいと存じます。質疑は全部の公述人の公述が終了いたしました後に、各委員のかたがたから質疑をいたすことにいたしたいと存じまするが、この点あらかじめ御了承を願いします。それでは今申上げましたようなことを御了承の上で順次御発言をお願いいたします。先ず一番に日本労働組合総評議会福祉対策部長の矢田勝士君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/1
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002・矢田勝士
○公述人(矢田勝士君) 私矢田でございますが、私は日本労働組合総評議会に加盟するすべての民主的な労働組合と、右の総評を中心にして、農民団体、婦人団体、生活協同組合等、広汎な国民各層の団体で結成されている物価値上反対協議会を代表して、本日問題にされています国鉄運賃法の一部を改正する法律案に対しまして意見を申述べるものであります。
先ず総括的意見といたしまして、現在の経済政策なり物価料金政策に対して、労働者や家庭の主婦はどう感じ、実際に生活にどう影響しているかについて申上げ、経済政策に対する基本的建直しを要望申上げたいのであります。戰後の日本経済は、物資の不足と人口の増加、悪徳業者等のために恐ろしいインフレとなり、生産から消費に亘る経済は大混乱を極めて、国民生活は破壊の一途を辿つたにもかかわらず、政府の長い間の期間を自由党内閣において政権を取つておられたのでありますが、如何に申されましようとも、よくこれを再建なし得なかつたことは事実で、占領管理下、アメリカの力を背景にし、その権威の下にドツジラインを受入れ、インフレを資本の蓄積と、税金の大衆収奪によつて経済の建直しが計画されました日本経済は、アメリカのお金で安定期に行つたと申されます。併しそれは主として東京丸の内ビル街を以て象徴されている独占的金融資本とか、大企業のほんの一部の層において言えることではないでしようか。二十五年六月に朝鮮事変が起りますや、間もなくドツジ氏の妙薬もやがて特効薬たり得ずして、物価は徐徐に高騰して、再びインフレの再現を来しつつあります。この間、終始生活に追われ、最低限度のデマンドを得るために、労働者はかわいい妻子や子供にせめて腹を満してやりたいばかりに、又餓死からこれを守るための責任感から、どの産業も賃金闘争に追い廻わされなければならなかつたのであります。而も、こうした経済的困窮と混乱に乘じて、国民大衆の中に滲透しつつあつた共産党の破壊的暴力行為とも闘わなければならなかつたのであります。何と申しましても、戰前戰後一貫して変らなかつたのは、労働階級が圧迫され、貧乏に苦しめられ通したということでありまして、そうした重苦るしい生死の間にあつても、赤色勢力の魔手と闘い続けたのは我々民主的労働組合の力であります。自由党の彈圧政策が赤に勝つたのではないと思います。
然るに、政策は何と労働者国民大衆に冷たいのでありましよう。民主的政治とは名のみで、実は労働者は次々と基本的な権利は奪われ、生活水準は押下げられ、ただ資本家が儲かつて行つておるに過ぎないのではないでしようか。
今や和解と信頼との講和條約も国会で審議されております。若しそうであるならば、日本の完全独立と経済自立を前提とした真の平和が日本に訪れるはずであります。内閣が国民大衆の支持を得ているという今日の自由党政府ならば、その国民大衆の声と実態を十分に把握して頂き、日本の平和と国民生活の上に絶対多数の御威光をお示し願いたいのでありまして、この意味から、現在とられつつある物価政策、インフレ政策は、我々としてはすぐにも改めて欲しいのであります。運賃の問題も、こうした政府の無責任なやり方と関連なしには考えられないという点に遺憾の意を表明し、運賃の値上げに次の諸点から反対いたすものであります。
即ち、先に国鉄当局は三割五分の運賃値上げ案を発表し、全国民の反撃にあつて、十一月一日から、本日法律案として拜見さして頂きますと、旅客二割五分、貨物三割という値上げ案が示されておるわけでありますが、その間を通じて、私が一番大きく問題にしたいことは、現状において、もはや国鉄という日本国民全体に関係の深い高度の公共性を持つた企業が、アメリカからの支持であるかも知れませんが、コーポレイシヨンとなつたからといつて、又補給金は竹馬の足だと、いわれなき比喩の下に国庫からの繰入金を全くなくして完全な独立採算制をとらせ、それをすべて運賃で賄おうとする思いつきが果して妥当であるかどうかであります。私の考えを以てすれば、九年間に亘る戰争中の国鉄の酷使と資材不足から来る荒廃とが立派に復興したとは考えられません。その証拠に転覆脱線を初め、超満員電車の数多くの大椿事等のあとで代々黒星続きだと言われております。国鉄総裁の談話でも、車両、軌道の不完全を詫びられておるようであります。そうして、これは運賃を払つて、必要止むなく利用しておる乗客の一人々々の意思というのではないでしよう。でないとするならば、国は国鉄の復興に責任を持ち、国庫支出による財政措置か、或いは融資がなお必要とされるのではないかと思うのであります。事故で亡くなられた人々に少しのお見舞金で申訳がたつものではないと考えるのであります。資材の値上りを主とした運賃値上げの理由にされております政府は、この意味からも補正予算案で、先刻申した繰入措置とか、融資とかいうものを考えていないことは少しおかしいのではないかと思うのであります。
次に、総括意見でも申し述べましたように、最近のごとく、食糧とか、電力又は運賃といつたような国民生活にとつても、家計においても、基本的重要物資や動力源の値上りは、他の諸物価の釣り上げを誘発して、生活水準は一向上がらないのみか、ますます苦しくなつて、再び国民は筍生活に入ろうとしておるのであります。貨物運賃の値上げは、必然的にコストを高め、特にウエイトの大きい建築資材等は、今なお不足しておる住宅の建築に支障を来し、公共事業費も行詰りがひどくなるのではないでしようか。旅客運賃のほうは、直接乏しい私どもの家計に響くわけであります。特に今回の値上げで定期も同率に値上げされますことは、我々の人権をさえ無視して、毎日命がけで立錐の余地なく詰めこまれておるノーサービスと言つてもよいような通勤電車等のことを考え合せるならば、経営のためとはいえ、一貫した生産増強のために従事する勤労者を国の宝と思わない、単なる労働力供給源と認定されての上か存じませんが、上に厚く下に薄い自由主義とは申せ、余りつれないことではないでしようか。伺いますれば、一等とか、寝台車の中では殆んど上らないのみか、国鉄御自慢のサービスは、主としてこの方面に重点が置かれておるとのこと、学生定期に対しましても、そうして今日の国鉄のサービスと経営のためなら、次代の国民が通学費の故に学校に行けないとしてもいいというのでありましようか、ちよつと長距離になれば、一等、特別二等、僅か三等の二倍、三倍ぐらいで甚だしい差別待遇であります。三等から上る料金と、あの贅沢な一、二等から上る一車両ごとの原価計算でもしてみれば、私ども素人の感じでは、如何に不均衡なものであろうかと推測いたします。国鉄が経営が苦しく、運賃を上げるというのならば、能力に応じてか、或いは余力があつてか知れませんけれども、あのクラスの人々から考えて少し頂戴して、立つてまで長距離の旅を続ける大衆からは余り高く取つて頂きたくないのであります。それに新聞雑誌書籍等の運賃を倍にするということも憲法を無視する状態に等しいと思うので、これも抑えてほしいのであります。
勿論私どもは十分の経営分析もできるわけでありませんが、支出の中には、石炭費、被服費、その他尨大な資材費等の中で無駄なくやつて行く政府の一貫したインフレ抑制政策で今後の値上りを抑えるようにすれば、節約できる点も多々あると見受けられますし、国鉄職員の賃金アップも仲裁案のごとく、運賃値上げに求めずして可能であるとされておるわけであります。又運賃指数は、他の諸指数と比べて、必ずしも低いとは見受けられません。
以上時間の都合で、余り大した資料の裏付けもなく申述べましたので、本日資料を頂きましたので、或いは間違いもあるか存じませんが、すべからく政府においては、国鉄経営に対して今少し復興の責任を分担し、サービスもよいが、偏重にならず、生産に従事する労働者の定期等にもつと考えを及ぼして頂きたいのであります。と同時に、国民大衆の利用する三等とか、通勤の車両を殖やしてほしいと共に、この際特にひどいローカル線とか、通勤列車の改善を急ぐと共に、これらを対象とした運賃を四段階制とすることや、高い又少い石炭の代りに電化する方法等も早急に考えて頂きたいと思います。
以上私の意見に代えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/2
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003・小泉秀吉
○理事(小泉秀吉君) 次に石灰石鉱業協会会長芳賀茂内君にお願いいたします。
〔理事小泉秀吉君退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/3
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004・芳賀茂内
○公述人(芳賀茂内君) 今回鉄道運賃改正公聴会が開催されるに当りまして、全国石灰石鉱業を代表いたし、貨物運賃改正に関し、いささか卑見を述べ、併せて業会の要望を申上げたいと存じます。
先ず初めに結論から申上げますと、今次の改正案は国鉄の予想する平年度計算五百三十三億円という厖大な赤字を運賃の値上によつて補填せんとするにありますが、事ここに至るまでには国鉄においては勿論その経営を合理化して一切の冗費を切り捨てると共に、一方鉄道利用者の要請に応え、輸送力の増強によつて収入の増加を図る等万全の施策を講ぜられておることと思います。赤字が生ずれば運賃の値上をするというがごとき安易な考え方でなく、積極的な経営の合理化と、輸送増強による収入の増加を図り、なお且つ経理上余儀なくされた結果であれば、或る程度の値上も又止むを得ないところであると思考されます。
但し、石灰石鉱業としましては、昨年一月における値上に際して行われたような画一的な貨物運賃の値上には絶対反対であります。およそ貨物運賃はその貨物の運賃負担力の如何につき考慮が払わるべきであることは当然であり、又常識でもあると思います。然るに昨年一月の八割値上に際しましては、貨物等級の改正が行われることを前提として決定したところでありましたが、国鉄の不減収、不増収の原則とかによつて、一部特定貨物の等級のみが改正されたに過ぎませんでした。あらゆる面において不満足であつたことは周知の事実であります。国鉄の独占企業であることと、特にその公共性よりしまして、独善に陥ることなく、且つ又独占の力を振うことなく、飽くまで合理的な改正の行わるべきであることは論ずるまでもないことと考えます。
以下石灰石と国鉄貨物運賃との関係について、石灰石の如何に運賃の過重負担に悩んでいるかの実情を御説明いたし、諸先生の良識に訴えたいと存じます。
石灰石は、我が国唯一の国内重要自給資源でありまして鉄鋼、セメント、カーバイド、石灰窒素、ソーダ灰、肥料用石灰、ビニール繊維等のごとき重要物資製造の主原料として、緊要不可欠な鉱物であることは今更申上げるまでもないところであります。昨二十五年度における全国生産量は千百七十万トンで、そのうち国鉄輸送量は三百十八万トンでありました。本年度における生産量は千五百万トンと予想されますが、そのうち国鉄輸送量は四百十五万トンと推定されております。石灰石はかくのごとく重要原料品でありますが、反面御承知の通り極めて価格の低廉な鉱石でありますために、運賃の負担力は至つて微少であります。現行賃率においてさえすでに負担の限界点以上に達しており、鉄道貨物中他にその例を見ざる過重負担でありますことは、国鉄はもとより一般周知の事実でありまして、つとに問題となつておるところであります。現在、石灰石の価格と運賃の割合は次の通りであります。即ち石灰石の平均一トンあたりの発駅価格は二百五十円で、運賃の平均一トンあたりは百九十八円であります。ですから価格中に含める運賃の割合は四四・二%になります。これを昭和十一年に比較すれば、当時石灰石の一トン当り価格は平均二円八十四銭で、平均運賃は一円六銭でありましたから、その割合は二七・二%でありました。従つて昭和十一年と現在との割合の倍率は一・六三倍になり、現行賃率においてさえすでに六割強の負担増加となつておるわけであります。然るに石灰石以外の鉄道貨物を見ますと、価格と運賃との割合は殆んど例外なしに昭和十一年の割合と比較すれば減少しております。ひとり石灰石のみが負担増加となつておることは、他の貨物に比べて全く均衡を失しているところであります。このたび仮に現行賃率がそのまま画一的に三割値上されるとすれば、石灰石の負担する運賃は、平均一トン当り二百五十八円となりまして、価格と運賃との割合はまさに五〇・七%に達し、昭和十一年に比し実に二倍の負担増加となります。
然らば何故石灰石のみがこのように過重負担となつて来たかと申しますると、その原因の主なるものとして次の諸点を指摘できます。一は現行貨物等級制の不合理、二は前回における運賃改正の不均衡、三は現行最低運賃制の割高であります。
一の貨物等級制の不合理については、石灰石の価格が極めて低廉で運賃の負担力がかくのごとく微少であるにもかかわらず、貨物等級類別が上位に置かれている点を挙げねばなりません。現行等級類別においては鉱石類は七級品目扱いでありますが、石灰石と一般他物資との比較均衡はさておきまして、同じ七級鉱石だけの価格についてみますると、比較的低廉な石膏のごときものでも発駅価格は石灰石の価格の十倍で、亜鉛鉱のごときに至りましては実に三百倍以上であります。石灰石の運賃過重負担は等級類別上の不合理が最大の原因となつています。
二の前回における運賃改正の不均衡については、石灰石の運賃過重負担の是正は前々から要望されて来たところでありますが、前述いたしましたごとく昨年一月の値上に際しましてはその過重負担の実情については殆んど顧みられず、いわば画一的な改正が行われましたがため、その負担が一段と加重される結果となりました。今回の値上が万一前回と同様に画一的に行われるとすれば、石灰石の過重負担はいよいよ致命的段階となり、到底その負担に堪え得られないところであります。昭和十一年に比較して現行運賃率においてさえすでに六割強の増加となつており、更に今回の国鉄案によれば二倍の負担増加となりますことは、石灰石については当然特別な措置のとられることが要請されるゆえんであります。
三の現行最低運賃制の割高については、石灰石は元来鉱山と需要工場が近距離にあるのが一般の状態であります。現行最低運賃制においては石灰石の場合は十五トン車一車につき二千円でありますから、一トン当り百三十四円で、これを距離に換算すれば約四十キロに相当いたします。即ち石灰石においては四十キロ以内の輸送の場合は、一律に一トン当り百三十四円でありますから、最低運賃においても価格と運賃との割合は三四・九%という高率負担となつております。これを今回の値上案によれば、一車二千五百円でありますから、一トン当りは百六十七円となり、成るほど値上の率は二割五分ではありますが、価格と運賃との割合は又々過重せられて、四一%となります。石灰石の過重負担の原因の一つは、現行最低運賃制が従前に比し著しく割高な点と、負担力の如何を問わず一律一体な賃率であることにあります。昭和十七年においては最低運賃制の距離換算は約十キロでありました。石灰石については十キロ程度の距離換算に該当するよう最低運賃制の低減を要請いたします。石灰石の運賃負担が現行賃率において価格に対し最短輸送距離においては四〇%、最長輸送距離においては七一%となつており、平均四四・二%でありますことは、即ち換言すればすでに負担の限界点以上になつていますことは十分おわかりのことと思います。鉄道輸送貨物中の最も運賃過重負担の物資であるばかりでなく、価格と同額以上の運賃前払いを止むなくされている低利潤な石灰石鉱業におきましては、生産コストに対する運賃の原価的、或いは金融的圧迫は業界の死活問題でありまして、運賃の面におきまして如何に惡條件の下に喘いでいるかを示しているわけであります。従つて現在以上の高率負担は必然的に石灰石鉱業の経営を危殆に瀕せしめ、延いては重要基礎原料たる石灰石の供給に支障を来たすことは必至であります。勿論業界としましてはこの運賃過重負担による苦境を切り抜けるため経営の合理化、能率の増進、売価の引上等、あらゆる手段を盡して来ましたが、石灰石は他の貨物に比し、値上の足どり極めて鈍き特異性の物資でありますから、昨年の八割値上に更に今次の改正と、画一的な改正が行われるとすれば、到底及ぶべくもなく運賃過重負担の級数的増加はますます業界を圧迫することとなります。かくのごとく、石灰石の運賃負担は現行賃率においても他物資の負担割合に比べて不均衡極まりない次第であります。端的に申せば、石灰石鉱業としては却つて現行賃率の引下をお願いしたいところであります。
最後に特に申上げておきたいことは次の点であります。従前石灰石の需要工場と石灰石鉱山とは近距離にあるもののみでありましたが、その後各般の工業が振興せられて参りましたため、各地に関連工場の新設、或いは増設が行われ、中には立地條件よりして鉱山から相当距離に位するものも少くありません。一方産業界の要求に対応して新規に石灰石鉱山が開発されて来ておりますが、石灰石の採掘現場は輸送の容易な個所から漸次輸送の困難な場所に着手しなければならない現状でありまして、今後この傾向は一層顯著となつて来ることと思われます。従いまして運賃の如何が今後すべてを左右することとなります。なお昭和十一年度平均輸送距離四五・一キロに比して昭和二十六年度は七八・六キロと若干延びております。昭和十一年当時現在国鉄に合併せられておる私鉄線より大量出荷がありましたけれども、その年次の平均輸送キロは当時の省線のみの計数でありまして、実際上は四五・一キロを相当上廻つていたと推定されます。
以上申述べましたごとく、今回或る程度の貨物運賃の改正が止むを得ないところとしましても、石灰石としましては現在以上の過重負担は到底その負担に堪えられない次第であります。国鉄に対しては今回こそは合理的な貨物等級の改正をするよう強く要望してやまぬところであります。貨物等級の改正が早急に間に合わねば、それまで臨時措置として貨物運賃率の割引、最低運賃の低減等により、少くとも現行賃率以上の負担とならざるよう特別の措置を要請いたす次第であります。以上。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/4
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005・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 公述人に御注意をちよつと申上げますが、これは芳賀君だけではありませんのでありますが、本日はできるだけ賛否の数が余り偏頗にならないように、できるだけ各層、而も賛否ほぼ同数の公述人を選定いたして来て頂いておるのであります。従つて各業種についてのいろいろな御発言、御希望は当然でありまするけれども、本日公述人を要求しておるゆえんは、今回の運賃の値上げに対してどういうふうな、賛否をどういうふうに我々が了承いたしてよいかという点が重点であります。従つて等級の問題については御発言尤もでありますけれども、その御発言に忠実のために賛否いずれか了承しがたいようになりますると、委員会のほうにおいて判断に苦しむ点が多いのであります。従つてできるだけ賛否を明らかにして、只今芳賀君のお話を聞いておりますると、現在の運賃率よりも上らない程度において云々ということが最後にありましたが、そうすれば芳賀君は賛成として公述人に御出席を願つておるのでありますが、そうしますと果して賛成であるか、不賛成であるかいささかこの判断に苦む点があるのでありますが、本日は賛成という意味で御出席になつておるので、等級の点に対しての御希望を條件にして賛成というように了承はいたしてありますけれども、今後公述人の公述される際においては、できるだけ、單に当該の業種についての御発言は勿論自由でありまするけれども、できるだけ全体的に今回の運賃法の改正に対して公述人として大きな見地からどういうふうに、賛成するか、或いは不賛成であるかということにむしろ重点を置かれて、公述をお願いいたしたい。それからできますれば、できるだけ各公述人のかたに平等の発言の機会を与えたいと思うのでありますから、できれば先ほど申上げた大体十分内外、以内ということを守つて、そうして大体同じような機会を公述人のかたがたにこの委員会としては与えたい、こう思いますから、その点御了承願つて、以下公述を願いたい。日本木材協会常務理事吉田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/5
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006・吉田好彰
○公述人(吉田好彰君) 木材関係につきまして公述いたしたいと思います。
先ず結論から先に述べさして頂きたいと思いますが、国鉄貨物の利用者といたしましては、勿論この値上げがないことは望ましいのでありまして、殊に木材といたしまして、非常に木材は国鉄の貨車輸送に占める率が大きい大量貨物であるのでございます。価格中に占める運賃比率が非常に高いという点から申しまして運賃の値上げには反対いたしたいのであります。併し若し貨物運賃の値上げがどうしても行われる、そのような場合におきましては特に木材についての軽減方を要望するものであります。今回の運賃法改正に当りまして原則的には等級の改正は行われないという方針と伺つておりますが、その点につきまして木材につきましては現在行われておりまする等級の不均衡の是正、それから距離別の割引き、この適用だけは是非やつて頂かない限り、木材の貨物運賃の値上げについては絶対に反対せざるを得ない、そのように思うのであります。それでその理由を先ず申上げたいのでありまするが、その説明に当りまして前回も貨物運賃値上げの際論議せられました点に触れて御説明申上げたいと思います。前回の値上げが国会において審議されました場合に木材が運賃負担能力が極めて低い点、それから運賃値上げが森林の再造林を危くするという点につきましては、衆参両院におきまして十分の検討が行われまして、その結果木材については特に軽減すべきであるというような附帯條件の下に運賃法の改正法案が通過したと承知しております。その結果二十五年一月から三月まで私どもは今回お願いしようという特別割引率が適用になりました。それから四月以後の等級改正におきましてはこれも非常に国鉄当局との間に問題になつたのでありまするが、等級改正の場合に一般の下級材と申しますか、それのみ一級引下げが行われましてその半面極めて不合理な一部木材の引上げ、等級引上げ、若しくは据置きということが行われたのであります。これに対しましては業界といたしまして直ちに強く反対の意を表明したのであります。又自由党におかれましても幹事長名を以て国鉄当局に対して更に二等級引下げるべきである、そういう申入れをなすつて頂いたのでありまするが、国鉄の独立採算制の主張によりまして遂に実施を見ずに今日に至つたのであります。従つて我々はその当時主張いたしました木材の負担能力が低いという点、それからこれは治山治水、或いは国土保安という面に悪影響を及ぼすという事情は何ら変つておらないのでありまして今回も特にその面から貨物運賃の値上げということは業界としては反対するのであります。
その細かい点につきましては、木材貨物運賃軽減に関する請願を現在提出してございますのでそれを御参照願いたいと思うのでありまするが、私どもの調査によりますると、東京市場を中心といたしまして、価格中に占める運賃比率というものは丸太で一三・五四%、製材で七・六六%となつております。この木材の比率は国鉄調査によりましても、石灰石、砂利、硫化鉱に次ぐ高率のものでございます。而もその輸送量が非常に多いというだけに、業界に及ぼす影響は極めて深刻と言わねばならないのであります。特に鉱石類のような天然生産物を取るというものと違いまして、木材はこれを伐採した後に必ず再造林を行わねばならない。そういう法的の負担すら負わされているのでありまして、この森林の造成に当りましては、現在国庫が補助金まで出して造林をやらさなければその再造林はできん、そのような状態になつております。即ち林業というものは、木材薪炭の生産という経済的行為を行うと同時に、国土保安という面からいろいろの制約を受ける公益性の強い産業であるという点を是非考慮して頂きたい。そうしてこれを木材の商業部門から負担能力というものを考えて見ますると、国鉄運賃の値上額が東京市場まで持つて参ります場合に、三割の値上げが行われると仮定いたしますと、石当り四十五円というものが現在よりも加重されるわけであります。で現在の木材販売部門におきましては仕入原価に輸送引取賃を加えたものと、販売価格との間には百五十円の差額しかないのであります。その差額の範囲内においてすべての営業費、税金、賃金それらのものを支払つておる現状でありますので、この四十五円の消化というものは到底なし得ない。又一般木材需要の趨勢から見ましても、今後大きな望みは期待し得ないのでありまして、その結果勢い四十五円の幾分か或いは大部分それが立木価格に鞘寄せされる。そのようになるのでありまして、この再造林を危くするこの点は是非とも避けて頂かなければならないのであります。そうして現在の木材価格の状態をちよつと申上げたいと思いますのは、昨年も消費者転嫁ということができるのではないか、そういうことが国鉄との論議の的になりました。併し私たちは到底消費者転嫁ということはしにくいということを申上げておつたのでありましたが、これを裏書しますように、昨年木材貨物運賃の八割値上の行われたときにおきまして、その値上にもかかわらず一月から七月まで下降の一途を辿つております。七月から朝鮮事変の影響によりまして、多少の値上りを見たのでありますが、本年四月以降又下降、下落の状態にあります。これを二十四年末の公定価格と比較しますと、二八%の増加である。そのような状態でありまして、前回の値上の際二等級引下げて欲しいという要望、これは自由党もお認めになつた要望でありますが、この前から見まして二八%しか負担率は増していない。従つてここで三割増しをやられるということは私たちといたしましては、二等級引下げることを前提としての三割増でなければ到底承服し得ない、という結論に達せざるを得ないのであります。
そうして時間もございませんので、簡単にあと結論を申上げますが、この三割値上げが若しどうしても行われるという場合におきましては、取りあえず等級の不均衡を是正して頂きたい。それから負担能力の非常に低いことを考慮に入れまして、昨年一月から三月の間適用されました暫定割引率を適用して頂きたい、それと同時に近い将来におきまして、必ず各物資別の根本的な等級改正をやつて頂きたい、それから木材につきましては輸送量が大でありますのと、その輸送される場所が主に山間の僻地でございます。そういう場合におきまして、特に国鉄が新車等を作られます場合に、木材の適車を多数建造して頂いて、それを山間のどのような駅にも必要に応じて廻わして頂きたい、このようなことを希望いたします。原則としては反対であります。若し三割値上げが如何なる理由によつてか行われたといたしました場合に、只今申上げましたことは木材界の最小限度の要望といたしまして、是非お取上げ願いたいと、このように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/6
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007・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 鉄道貨物協会評議員高橋秀雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/7
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008・高橋秀雄
○公述人(高橋秀雄君) 高橋秀雄であります。委員長の御指名によりまして、所信を申上げますが、本日は社団法人鉄道貨物協会の評議員の立場からこの運賃値上げの問題につきまして意見を申上げます。鉄道の運賃値上げにつきましては、配付されました資料その他説明によりまして、一応その理由は止むを得ないものと考えられるのでありますが、その値上げの率をできるだけ低くして頂きたいのであります。貨物協会は約一万の会員を持つておりますが、そのうちで会員がどういう意向を持つておるかということを調査いたしましたところ、現在集りました調査表の数は約千二十五枚であります。この千二十五枚のうちで賛成を述べておられるものが五百三十件、それから反対のものが四百五十六件、不明のもの三十九件ということになつております。賛成五百三十件の内容を申上げますと、三割以上の値上げを止むを得ないものとするものが百六十三件でありまして、三割以上の値上げを止むを得ないと考えるが、その実施の條件として、等級の改正その他を要望するものが三十七件、その次に値上げは止むを得ないとするも二五%以下を希望する、という意見が三百三十件であります。こういう状態でありまして、一応この際運賃の値上げということは止むを得ないというふうに承知いたすのでありますが、その賃率は二割五分の値上げ程度以上にならんようにして頂きたいというのが最も多いのであります。
それから第二には、旅客運賃と貨物運賃のバランスの問題でありますが、国有鉄道の最初の原案は旅客貨物とも三五%値上げということでありましたが、今回の法案として出ておりまするところによりますれば、旅客を二五%に低減されましたのに対して貨物は三〇%にとどまつております。元来国鉄の原価計算によりますれば、旅客のほうは一七%増であり、貨物のほうは三四%、いわゆる旅客勘定におきましては収入よりも支出が一七%オーバーになり、貨物の場合においては三四%殖えるという計算が出ておるのでありますが、鉄道の運送原価は、申上げるまでもなくその中に相当部分の共通費が入つておるのでありまして、その部分は比較的分割可能なものの割合によつて直接に按分させるというような方法によることは必ずしも適当ではないのではないかと思うのであります。若しそういうような行き方をするとすれば、定期旅客のごときは、赤字を相当多く出しておるのでありまして、定期旅客の運賃は二割五分程度の値上げでは足らんということになるのでありまして、それも二割五分程度にとどまつておるということを見ましても、この共通費の分割は單に可分なものの割合だけでなく、各扱い通じて見ましてどの程度に納むべきかということを判断すべきものと考えるのであります。
それから又現在の運賃が過去に比べてどの程度の比率になつておるかということを旅客貨物別にその負担関係を見て見ますと、昭和十一年を基準といたしまして、旅客のほうは一般旅客が九十三倍、定期旅客は八十六倍になつております。それに対して貨物運賃のほうは百三十一倍でありまして、貨物のほうが今まですでに運賃の値上率は多くなつておるのであります。又昭和二十一年を基準として比較をいたして見ますと、現在は旅客は十九倍に対して貨物は四十五倍であります。今回旅客を二五%、貨物を三〇%の値上を実施いたしますとすれば、十一年度を基準として、旅客は百十九倍でありますし、貨物は百七十一倍になるのであります。又二十一年度を基準として計算いたしますと、旅客のほうは二十四倍に対して貨物は五十八倍となりまして、値上げの幅が非常に大きくなつて来るのであります。即ち貨物運賃のほうの値上げ率がいずれにしても非常に多くなつておるのでありますから、この点旅客貨物の均衡を考える場合に、重点を置いて考えて行かなければならんと思うのであります。
次に貨物運賃の値上げがどういう影響をもたらすかということでありますが、これにつきましては一般の意見にも出ておりますように、いわゆる物価騰貴に対して悪影響があるということは言うまでもないと思います。講和後の我が国の経済政策といたしましては、貿易上におきましても又国民生活の上から見ましても、物価の低減を必要とするということは言うを待たないところでありまして、三〇%の貨物の値上げをするということは、少し多いのではないかと考えるのであります。
それから現在の貨物における運賃負担関係について見まするに、各種の貨物が昨年の朝鮮事変以来平等の比率で値上げをして来ておるかというと、必ずしもそうでないのであります。又価格のうちに占めるところの運賃の割合、先ほど石灰石の例もありましたが、価格における運賃の割合というものも各貨物平等でないのであります。従つて運賃値上げということの影響も貨物の種類によりましては可なりいろいろ差があるのでありまして、それが中小企業者等におきましてはその影響が特に大きいのであります。従つて場合によつては経営も非常に苦しくなるということは説明するまでもないと考えるのであります。
なお貨物協会として調査いたしました先ほど申上げました三百八十七枚の反対意見の内容を簡單に御紹介申上げますと、その一は、一般物価の値上りとなるものが百三十六件、インフレの助長となるという意見が五十三件、鉄道の経営合理化を前提とするという意見が四十四件、生産者に対する打撃が甚しいという意見が三十六件、取引上に影響を及ぼして範囲が縮小するというのが十九件、価格内で運賃が占める割合が非常に高くなつて輸送ができなくなるというのが十五件、低物価政策に反するではないかという意見が十四件、経営が困難になるという意見が十一件、貨物運賃支払いが円滑を欠くという意見が四件、自動車に転換するほかはないというのが三件、その他五十二件でありまして、これらがこの反対意見の代表的なものであります。
その次に、最近の貨物輸送情勢について見ますと、今年の上半期は約八千万トンの輸送をしておりましたので、今後の情勢から見ましても、恐らく下半期におきましても相当の成績を上げることは想定できるのであります。従つて予算面に出ておるところの輸送量よりも収入そのものも相当上廻つて来ることが考えられますので、運賃値上げをいたしましたときに一般のこの平均的な二割五分程度の値上げをいたしましても、なおそのほかに多少の余裕は出て来ると思うのであります。この財源を考えて次に申上げるいろいろな施策をして頂きたいと思うのであります。
又運輸量が殖えて来ますれば、物価が上り、或いは給与改訂によつて原価が上るとしましても、輸送量の関係から輸送原価が低減するという傾向もあるのでありますから、それらの関係を併せ考えられまして、結論といたしましては、貨物協会といたしまして、旅客運賃と同じ率の値上げを希望いたすわけであります。貨物三割というふうに差別をしないで、旅客と同率の値上げを希望するわけであります。そうして国会で法律の通りましたあとで、特に先ほど申しましたようなアンバランスになつておるもの、或いは運賃負担に苦しむ特殊な貨物に対しまして貨物等級表の是正及び遠距離貨物、或いは特殊な貨物に対する割引措置を成るべく速く併せ講ぜられまして全体の調整を図られんことを希望する次第であります。
簡單でありますが貨物協会のほうの意見を申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/8
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009・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 日本石炭協会專務理事天日光一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/9
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010・天日光一
○公述人(天日光一君) 御指名によりまして石炭生産業者側の意見を申上げお聞き取りを願いたいと思います。
結論的に申上げますというと、貨物運賃三割値上げの原案に対しましては値上げ率を更に圧縮して頂きたい。もう少し低目にして頂きたいということに盡きるわけでありますが、その理由といたしましては事新らしく申上げるまでもないのでありますけれども、国内におきましてこのインフレの昂進を抑制し、外には輸出の伸張を図るということが当面の急務でありますが、これがためには物価の高騰を極力抑制しなければならんわけでありますが、石炭というものの性質上、あらゆる産業、又あらゆる運輸事業、又一般国民生活に基礎的に大きな役割を持つておるものでありまするし、又鉄道輸送貨物のうちにおきましてその数量におきましても総輸送量の約三〇%近い部分を占めるのでありまして、非常に大きな広き関係を持つておるものでありますからして、運賃値上げによりまして各種産業、又一般運送事業、又一般国民生活に非常に大きな物価面の影響を来たすということを虞れるわけであります。御承知の通り昨年朝鮮事変の勃発をいたしまする前におきましては石炭価格が高いということが相当大きな問題として取上げて論議されておつたのでありまして、石炭生産業者といたしましても極力石炭価格の高騰を抑制するように、又経営の合理化なり、能率の増進によりまして吸収いたすように努力はしておるのでありまするけれども、いろいろ資材の値上げなり、又電力料金でありますとか、或いは港湾荷役方面の賃率などの値上げなどによりまして、なかなか石炭鉱業自体の努力では吸収し得ない値上り要素が多分に相次いで出て参りますのでありまして、かような情勢の際に更に運賃が上りますことは、石炭の輸送運賃が上るのみならず、石炭生産に必要な資材の運賃の値上りによるはね返り、石炭生産コストの値上りも相当考えなければならんのであります。資材、取りわけ御承知の通り石炭生産におきましては坑木を多量に使うのでありますが、坑木のごときは年間に一千数百万石に及ぶ多量のものを使うのでありまして、今申上げたように、石炭自体の運賃の値上りのほかに、石炭生産に使う資材の運賃の値上りというものが相当強く響いて参るわけであります。今一例を石炭の運賃にとりまするというと、国鉄のほうの調べによりましても、九州の炭を例にとりますならば、伊田若松間で現在は百五十六円でありますけれども、これが三割上りまするというと、二百四円になりまするからして、あの短い区間でも四十八円の値上りを来たすわけであります。又北海道の石炭を例にとりますというと、夕張室蘭間でありまするが、現行運賃で三百四十円でありまするけれども、三割上りますると四百四十六円になりまするからして、百六円の値上りを来たすということであります。只今申上げたのは大部分九州なり、北海道の石炭が輸送されまする区間について申上げたのでありまするけれども、なお御承知の通り坑所から直送する場合もあるのでありますが、この例を国鉄の調べから拜借しますというと、例えば九州の炭が伊田から大阪まで輸送されまするというと、現行運賃では九百八十八円でありまするが、これが三割上りまするというと千三百七円になりましてこの間三百十九円の値上りを来たすわけであります。又北海道を例にとりますというと、夕張から川崎まで輸送されます場合には、現行運賃でありますというと二千百二十八円でありますが、三割上りまするというと、二千七百三十八円となりますからして、六百十円トンについて値上りを来たす。かようなことになるのであります。
なおその他仔細な例もありましようけれども省略さして頂きたいと思うのであります。
以上物価高騰を抑制するという見地と、それから石炭があらゆる方面に基礎的な関係を持つという点からしまして、運賃値上げは現在よりも更に圧縮を願いたいということなのでありますが、なおその他一言附加えさして頂きますれば、鉄道の独立採算制ということが要請されるに至りましたがために、輸送原価を償うということが本則とされておるのでありまするけれども、御承知の通り日本におきましては長い間貨物運賃につきましては政策運賃という方法をとられておりまして、これを一挙にしまして輸送コストを償うという見地からしまして運賃の値上げをいたしますことは、産業方面に、又一般民生上に非常に急激な打撃を与えると、かように考えるのでありまして、長い間日本がとつて参りました政策運賃というものはやはり日本の特殊事情からしまして必要があつたればこそ数十年に亘る長い間さような方式がとられて参つた、かように考えるのでありまして、これを一挙に改正されますことは十分御愼重にお取扱をお願いいたしたい、かように考えるのであります。
なお時間もございませんからしてこの程度にとどめさせて頂きまして、なお運賃値上げに伴いましてお取扱いを願いたい点を簡単に申し附加えさせて頂きたいと思うのでありますが、第一は車扱いの最低運賃の適用限界距離についてでありますが、現在三十キロ程度になつておるのでありますけれども、戦前は十キロがほぼ限度でありましたので三倍になつておるわけでありますが、これを賃率の値上げを一〇%程度に、この車扱いの最低運賃に関してでありますけれども、一〇%程度にとどめて頂きますというと、距離の関係はほぼ二〇キロ程度に相成るということになりますので、戦前と現在との丁度中間ぐらいになるわけであります。かようなお取扱いをお願いいたしたいと思います。
第二としましては、現在石炭のうちで無煙粉炭につきましては割引制度がとられておるのであります。これは都会地におきまする家庭燃料の負担を軽減するという趣旨から出ておるものと承知いたすのでありますが、家庭燃料の問題はこの冬あたりはなかなか窮迫いたすようでもございますので、又電力不足の際に電力の盗用擅用を防止するという効果も相当あるかと思うのでありますが、この無煙粉炭、これは煉豆炭の原料になるわけでありますが、これの割引制度を御存続願いたい。これが割引制度が外されまして三割仮に上りますというと非常に大きな運賃値上りを来すことになりますので、これは是非今お願いしたような割引制度の存続をお願いいたしたい、かように考えるわけであります。
それからなおもう一つの点は、第三としましては国鉄の輸送力、特に石炭については石炭輸送車の増備とそれから積出港の荷役設備の整備増強をお計り願いたいと思うのであります。数字的に申上げるのは省略いたしますけれども、一般に貨車不足が言われて貨車の増備を要請されておるのでありますが、とりわけ石炭の面におきましては石炭車の不足を非常に強く感じておりますので、かような情勢でありますというと明年四千七百五十万トン、更に明後年は五千万トンの出炭を要請されておりますけれども、いわゆるふんずまりの状態を来しまして石炭の輸送どころじやない、石炭の生産そのものが多くの支障を来すと思われるのであります。この点十分御考慮を願いたいと思うのであります。かように考えておるわけでございます。お尋ねがございましたらどうぞ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/10
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011・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 日鉄汽船株式会社社長渡邊一良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/11
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012・渡邊一良
○公述人(渡邊一良君) 渡邊であります。海運側から見た点を申上げます。
現行の鉄道運賃は一昨年の秋当時の物価並びに賃金等を基準として、これならば国鉄が勉強すれば赤字を出さずに済むであろうというところできめられた運賃であります。その当時ときを同じうして海上の汽船運賃も同様の趣旨の下に改訂せられたのでありますが、汽船におきましては二年後の今日、特に朝鮮事変勃発以後の物価の急騰によりまして運航費の中の大部分を占める焚料石炭は一トン約二千円の値上りとなりました。近く又四、五百円は高くなるような気配であります。その他修繕費の値上り、給与の改訂等で沿岸航路の汽船運賃は四〇%見当の値上げをしなければ引合わない状況になつて、内航の小型船はまさに瀕死の状態にあります。この点から推して考えますと、同じく二年前にきめられた運賃を実施しておる国鉄が収支の辻褄が合わずその補填の途を講じなければならん事態に立至つたことは当然と考えるのであります。従いましてその補填策として今回貨物運賃三〇%、旅客運賃二五%の値上げをしなければならんということは誠に止むを得ない措置であると考えるのであります。又この赤字補填の方法として借入金、或いは政府の補給金等も考えられるとは申しますが、私はこの際運賃の値上げによつて赤字を補うことが一番妥当な方法であると思います。と申しますることは、鉄道の資料によりますと、若し今年度において旅客及び貨物の大増送がなければ如何に一生懸命に経費の節減、人員の削減等経営の合理化に努めましても、今回の値上げ率では到底赤字の埋合せはできないのであります。旅客三億二千万人、貨物二千三百万トンの増送は近頃曾つてなかつた飛躍的数字であると思われますが、この空前とも言うべき大増送をやつても、なお且つ大きな赤字を出さなければならんということは、現行の運賃が努力とか、或いは経営の合理化だけではどうにもならんほど今日の時勢とかけ離れた無理な安い運賃になつておるからだと思います。又一方沿岸航路における海上貨物が一向に目立つた増加がございませんため、内航船が経営難に苦しんでおります際に、ひとり鉄道のみ莫大な増送を見込み得るということは、一面国鉄の努力にもよりましようが、その半面現行の海上運賃と鉄道運賃との調和がとれておらず、鉄道運賃が海上運賃より遙かに割安のため本来海上に出るべき荷物も鉄道に流れておるということができると思うのであります。かくのごとく現行の鉄道運賃は鉄道側から見ましても、海運側から見ましても、根本的に無理があり、鉄道の赤字もその無理な運賃に起因しておるのでありますから、借入金で一時的の穴埋めをいたしましても、根本を是正しない限り借入金は増加するばかりで返済のめどは立たないと思います。又政府の補給金によることは不当なる運賃を据え置いて国費の負担においてバス、トラツク、船等の民間企業を圧迫することに過ぎないと思われますから、この際運賃の改訂によつて国鉄の財政の健全化を図ることが最も妥当なやり方と思うのであります。値上率につきましては、鉄道の最初の案によりますと増送を織込んで旅客、貨物三五%値上を必要としておりました。海運側から見た勘ではそれくらいはやらなければなるまいと思うておりましたが、今度の修正案では旅客二五%、貨物三〇%となつております。その代り旅客一億三千万人、貨物二百万トン更に増送する計算になつておりますし、反対に諸経費の点で随分切り詰めてありますから、相当の努力目標が織込んであるような気がいたします。石炭の購入難とか、値上り等で増送にも今後いろいろの障害もあろうと思われますので、目的達成には非常な困難があろうと懸念せられるのであります。併しそれは国鉄の努力に待つことといたしまして、原案の値上率はこれ以上切り詰めることのできない最低であり、又この案は一日も早く実施さるべきものであると考えるのであります。
以上申述べましたような理由で私は今回の鉄道運賃値上に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/12
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013・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 北海道議会商工委員長宮坂壽美雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/13
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014・宮坂壽美雄
○公述人(宮坂壽美雄君) 先ず以て委員会におきまして北海道議会を代表して道民の声をお聞き賜りますることは誠に光栄と存じ、且つ又同時に道民の期待でき得まするよう委員会諸先生の特段なる御高配を願いたいと存ずるのであります。
すでに道議会におきましては全会一致を以て議決をいたし、政府のそれぞれの要路に対しまして、今回の改正案に対し反対をいたしておる次第であります。その理由を時間の許す限り申上げたいと存ずるのでありまするが、青凾航路の運賃についてであります。私は二つの観点から従来の特殊な取扱いを廃し、普通鉄道運賃と同様の取扱いにして頂きたいと、かように存ずる次第であります。その第一は政策的な考えからであります。御承知の通り、北海道は戰後我が国に残されたる唯一の未開発資源を持つ地域であります。即ち農林におきましては未だ八十万町歩の開拓地を持つております。水産におきましては三万貫の水揚をできる魚田を持つております。又地下資源におきましては、石炭が七十八億万トンを持つておるのであります。これが開発は、国策として取上げられて来たのであります。而も本州と海を隔てて気候その他の点からいたしまして、極めて不利な立地條件に置かれておる北海道の開発を促進する上には、先ず以て根本的の問題であるこれらの條件を改善する必要から、多額の国費をお投じ下さつておるのであります。然るに公共企業体である国鉄がこれに逆行して、青凾間だけに、即ち青森、凾館間だけに、貨物の場合は実距離数が百十三キロ、然るにこの四倍である四百五十キロの擬制距離を用いておるということ、又旅客の場合は同区間のみ打切計算をして、一種の関税のごとき高率運賃を課し、北海道並びに内地人に不利益な條件を附加しておることは、国の基本的政策に反する考えではないかと存ずるのであります。即ち公共性を持つものが、一方では不利な條件の改善に努め、一方では逆に不利な條件を附加しておりますることは矛盾も甚だしいと存ずるのであります。
第二は、純理的な考え方からであります。そもそも本州と北海道を繋ぐものは、青凾による連絡路以外にないのでありまして、これはあたかも九州と本州とを結ぶ関門隊道と何ら異るところがないのであります。要するに青凾は單なる鉄道の延長と考えて差支えないのではないかと存ずる次第であります。
ただ、ここで問題となるのは、国鉄でとられておりまする独立採算制による赤字が云々されることと、又民間海運業者との運賃の均衡の問題でありまするが、独立採算制による赤字は果して現に現われておるか、これは別といたしましても、青凾を鉄道の延長と考えた場合には、鉄道路線の地域的に生じた赤字は、これを全国的にプールするのが至当でないかと感ずる次第であります。ひとり青凾のみ赤字を云々することは妥当でないとかように言い得るのであります。又民間海運業者との均衡についても、民営と、特権的地位にある公営とにはおのずから根本的な差異があるにかかわらず、單に運賃の均衡のみに重きを置き、一部の海運業者を利する結果となり、公共の福祉が没却される虞れがあるのでありまして、むしろ民営との調整は別個の対策が講ぜられるべきであると存ずるのであります。以上の点から申しまして私はさつき申上げました青凾航路の運賃は貨物、旅客共に実キロ数による鉄道運賃によつて行わるるのが当然であると考えるのであります。
然るに今回の値上案によりますると、旅客の場合は特に航路旅客運賃を設け、旅客運賃二割五分の値上率に対し、青凾は約五割五分の値上率となつているのであります。私どもの到底、道民としては容認できないところであります。この際何とぞ当委員会におきまして、諸先生の御高配によつて全国並みの率にされんことを懇請いたす次第であります。
なお、ここに附言して申上げたいことは、北海道は御案内の、原始生産物を本州に送つて加工生産物資を本州から仰いでおる関係から、自給度は甚だ低いのでありまして、これがために北海道内における消費物資のコストに占める運賃の比重は誠に高く、道民生活に少なからず影響のあることをお含みを願いたいと存ずるのであります。
なお私は、最後に申上げたいことは、北海道は御案内の通り半歳を雪に閉ざされております。現に私は一昨日参つたのでありまするが、零下数度下つておりまして、家庭にはストーブがなければ日常の生活ができない実情であります。而も下るときには三十有余の酷寒でございます。殆んど満洲と同じ状態でございます。北海道民は国家再建のため、経済復興のためには真劍に努力をいたしております。戰後残されましたる唯一の満洲に次ぐホープ北海道であります。中央のかたは口を揃えて北海道こそは我が国の戰後におけるホープであるとお叫びを賜つております。又、人口問題にいたしましても、今後年間二百万という増大すべき人口の収容は、ひとり北海道でないでありましようか。然るにこのような北海道でありながら、青凾連絡の青凾間に旅客にして五割五分の値上げをし、貨物におきましてすでに四倍の率を設定しておる際、私どもは誠に遺憾と存じまするやさき、貨物におきましてまたまた三割の値上げということは、道民として納得でき得ないことでございます。どうぞ委員会の皆様北海道が皆様方の申し下さるようなホープであるとお考え下さるならば、北海道内に住む四百三十万人の道民のために、温かき手をおのべ下さいまして、この運賃の改正は全国プールにせられんことを重ねてお願い申上げます。
甚だ簡単でありますがこれで終りといたします。なお、私詳細につきましては御質問に応じてお答え申上げたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/14
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015・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 午後も又続開いたしますからその節に譲ります。
日本杭木協会専務理事、七瀬善吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/15
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016・七瀬善吉
○公述人(七瀬善吉君) 七瀬でございます。先ほど来お話のありました通り、この法案の骨子は国鉄本年度の収支若干の不足を補てんするために、おおむね貨物三割旅客二割五分の値上げということでございますけれども、私は国鉄が独立採算制であり、他の公共事業と同じく十分な内部経営合理化によつて赤字吸収の余地ないということになれば、一部利用者の負担増加も又止むを得ないとこう存じ、値上げそのものについては私は異議を差し挾むものではございません。この故を以てかあたかも賛成というようにお受取りになつておるようでございますが、実はこれは重大な條件を附しております。今回の改正法案で貨物については、全般に亘り一律三割上げとなつており、昨年四月等級改正のときに、当時の貨物等級審議会の答申のうちに、貨物等級の不均衡を早急是正することという條項が織込まれてありましたにかかわらず、爾来一年有半の今日に至るまで誰が見ても理由明白な不均衡さえ何ら顧慮されなかつた点、先ほど来お話のありました通り誠に了解に苦しむ次第でございます。
申すまでもなく貨物運賃等級は貨物の価格並びにその需給両者の負担能力とその形状材質、還元しますれば貨車積載量とがその基本的な標準であり、これに国民生活又は産業政策を加味して決定されるものと思いまするが、そのいずれの観点からいたしましても、世間一般に甚しき不均衡を認められる場合、今日只今即座に是正されて然るべきものではないかと存ずるものであります。先ほど委員長より御注意を承わりましたが、私はこの国鉄運賃法一部改正法律案というような題目につきましては、単に三割上げるとか、四割上げるとかいうことを従来の慣習に捉われてやられるということよりも、先ずその源を正す、いわゆるこの物資の性質によつてその均衡を保つということが先決問題ではないかと思うのでございます。この点につきましてはいろいろ只今までお話を承わりましたが、私は最も明白であり、これは国鉄でも数千或いは数万の品物を今解決することはできんとおつしやるのでありますけれども、直ちにできるという極端な例といたしまして、同じ木材の中でもこういうものがあるという一つの例としてお聴き取りを願いたいと存じます。木材一般に亘りましては、先ほど日本協の吉田常務よりお話があつた通りであります。これは全面的に私は同調いたすのでございますけれども、その極端な例が坑木にあるのでございます。坑木はこれはよく木へんと土へんと誤りを受けますが、私の申しますのは土へんのほうでございます。
坑木は御承知の通り炭鉱、鉱山の坑道保持、採鉱並びに坑内労務者の人命保安上重要な資材でありまして、特に炭鉱においては年間使用高おおむね一千万石に上り、由来炭鉱資材の大宗といわれております。その長さは十五尺以下二尺五寸くらいまで、末口は八寸以下一寸までありますが、そのうち大多数は長さ五尺乃至八尺、末口一寸五分乃至五寸の短尺小径木で占めております。先ほど申しました年間所要およそ一千万石のうち約七割即ち七百万石程度が鉄道輸送に依存するものでございます。そうして生産地がだんだん炭鉱と遠ざかつて参ります。今日全国平均輸送距離二百六十キロに及んでおります。さてこの坑木の運賃等級は昨年四月改正に当り下級製材と製材原木と同列の七級ということに決定されて今日に至つておるのでございます。先刻申上げましたような短尺小径木であり、且つ価格において比較にならない坑木が下級製材又は原木と同級であることの不合理な点は数字を挙げて説明いたすまでもないのでありまして、昨年一月運賃値上、次いで四月等級改正の前後数次にわたり私どもは下級製材又は原木より二級引下げ方を懇請いたして、同様専門の林野庁当局並びに林業関係諸団体からも、少くとも一級は引下ぐべきであるという極めて理解深き応援陳情を重ねて頂いておる次第でございます。今回の運輸省鉄道運賃改正資料、主要貨物の価格に占める運賃割合の調表を拝見しますと、今年四月製材貨車一トン当り価格九千円、その運賃割合は六・二%、原木同じく価格四千七百二十五円、その運賃割合は八・四%でございます。坑木はこの表には載つておりません。
そこで坑木を製材又は原木と比較いたしますにつきましては、先ず貨車積載量の格差を究明する必要がございますけれども、後廻しにいたしまして、ひと先ず原木と同じく一トン三・五石といたし、簡略に価格の面だけで比較して見ますると、今年四月坑木の貨車一トン当り価格は二千三百五十三円であります。そうして運賃の占める割合は一七・八%となるのでありまして、原木の二倍強、製材の実に三倍という高率に相成るのであります。これに積載量の相違を加えなければなりませんが、同じ国鉄の資料で原木一トン三・三石、坑木は二・六石、即ち格差二割一分でございます。それと原木一トン三・三石、坑木二・九石、即ち格差一割二分というものとこの二つがございます。仮に一割と低目に見積つて計算いたしますると、坑木価格に占める運賃の割合は実に二割となるのであります。かような高率の運賃は先刻芳賀さんよりお話がありました石灰石、砂利、硫化鉱、このほか余り類例を見ないのでございます。
以上申述べました理由に基いて坑木価格に占める運賃の割合を下級製材又は原木のそれに近づけますにつきましては、計算上最下級、今の等級の最下級の十一級に引直しまして、七級から十一級に引下げましても、なお且つ二割四分の割引をして頂かなければならんという実情にあるのでありまするけれども、理窟はさておきまして、今日のところ林野庁はじめ林業団体、林業関係議員諸先生におかれまして折角一級格下げを認定し、同調しておられますので、取りあえず本改正法律案成立に先だち製材原木より一級引下げの実現を切に願望いたすのでございます。
あえて現下石炭産業の多事多端に藉口するわけではございませんが、新森林法の施行により坑木の大部分、八四%が各都道府県知事の許可を得なければ伐採することができないという御時世に相成つておるのでございまして、森林資源の枯渇した現状では果して所期の出炭に支障なからしめ得るかどうか、官民等しく憂慮されておりますとき、産業政策的な見地からいたしましても、以上のような坑木に対する甚しき苛酷な運賃等級を今直ちに是正して頂くよう全国数千の坑木業者と申しましても坑木給源林地の性質上幾分かの製材原木、パルプ材等も併せ採材いたすものであることは勿論でございます。この多数業者の総意を代表いたしまして、且つ又その顧客である全国炭鉱々山の要望に呼応いたしまして切に皆様運輸委員諸先生の御高配を仰ぎたいと存じます。以上。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/16
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017・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 梶原房子君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/17
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018・梶原房子
○公述人(梶原房子君) 私はこうした機会を得まして本当にささやかな意見を述べさして頂くということは、光栄であると同時に、何だかちよつと大それたといつたような感じを一方に今も持つているものでございますけれども、率直に現在の自分の立場から、主婦として、又教師としての立場から意見を述べることによりまして、世の中にはこんな考えを持つておるものがあるのだということや、又家庭では幾つかの問題を持つて本当に毎日解決に苦しんでおるのだということ、若い青年たちの求めておる理想的な生活というものはどの辺にあるかなどの具体的な生活の一端をお話申上げまして、いろいろとこの問題について御考慮願いたいと思うのであります。
先ず主題を本日の法律案の問題に求めて申上げることにしますと、結論的に私はこの案には不賛成を唱えるものでございます。運賃が上るということはただそれだけをすなおに受取つて了承することはできないのであります。目まぐるしい情勢の変転は家庭を、そうして職場を落着かせてくれません。例えば最近騒がれております米の統制撤廃の問題にしても、教育における六三制の問題にしましても、この運賃問題と同様にその波紋を大きく描いて、いつまでもいつまでも拡つて参りまして、やがてそれらは本当にその真意を理解して進む余裕も、時間も持たせないで、どんどんと人の生活の中へ入つて参ります。そこでただ脅迫的な、威圧的な、且つ何か反撥したいような空気がもやもやと充満して来るだけなのでございます。人々の生活の基盤が大きく搖らいで、安定感を持つた堅実な歩みなど、思いもよらなくなつてしまいます。やがてあちらこちらでわめき出す声が不穏な雰囲気の中に聞えて、昂じて来ますと、政府は例によつて貼り膏薬的なことで一時的に間に合せようと考えがちでございます。運賃が上ることそれ自体は、確かに今日の生活に影響がございますけれども、單にそれのみで済むならばまあまあ泣き寝入りの状態で納るかも知れません。併し現に実情を見て頂きたいと思います。国有鉄道運賃法一部改正の案が紙上で発表されたとたんにすべての物価は日日正確に騰貴しております。バスはいち早く値上げを実施しました。私鉄も三割二分の引上げを示しました。さあ値上げのしないうちにと旅行者が増加して来ました。計画性を持たない旅行で賑わつております。修学旅行も俄かに殖えて参りました。うつかりしていると当初の予算通りでは目的が達せられないので、計画の未熟などは第二次の問題になるわけであります。即ちこの改正案の発表は実施以前に社会の経済生活を混乱さして来ました。物質生活は勿論のこと、精神生活に希望というものを消してしまいました。ものの動きがいやが上にも偏在して活溌化しております。家計はどうしても予算をはみ出して、主婦の吐息は又長く続いております。終戰直後の醜い自暴自棄的な生活が又戻つて来そうな錯覚に襲われて参ります。又世間ではこんなこともこぼしています。せめて貨物運賃だけでも値上げはやめてもらいたいと言つております。学生たちは定期券を取出して眺めております。これからの就学年月と経費を胸算用しながら親のふところの心配をして、落着きません。何のために運賃法の一部を改正しなくてはならないのか、一般人にはさつぱりわからない状態なのです。こんなことが案外思想的にも混乱を起し易いのではないでしようか、或る程度は成るほどと納得の行く線まで一般人に知らせて欲しいと思います。人間の経済生活は総合的なものでありましよう。分化されますと運賃とか電気、ガス代とか、郵便料金などなどいろいろありますけれども、結局響いて来るところは同じ点に集中するわけであります。一つ一つの法律案をして上程されて審議されるとしても、末端の家庭生活、個人生活においては、まとまつた圧力としてかかつて来るわけであります。ベース・アップのかけ声よりも、物の豊かで安い経済生活を皆望んでおります。安心して働ける世の中に住みたいと思つております。貧しくとも希望の下に生活の方向へと、根本的な指導と実行を政府にお願いしております。誠に私的なことですけれども、私は北支に五カ年ほど住んでおりまして、終戰後引揚げて来るまで全く中国人の中で生活して、人情というものは国際的にも変りのない連りのあるものであることを体験し、彼らが常に定まらん国家の状態の中に、巧みな生き方をしていることにも感心していたものであります。中国人は為政者に対して、期待も持たなければ、従つて依頼もしない。自己的な生活に長い間訓練づけられているようでした。時の動きに機敏に行動を変化さしております。彼らのたまたま言う沒法子という言葉は、私たちにとつては絶望的な諦めですけれども、彼らにとつては何の感情も交えず、次の生活段階へのつぶやきとも考えられました。
そこで私は中国の状態を以てどうしようというわけではありません。ただ私たちはこうした訓練づけの生活をして来ておりません。ひたむきに政府を信頼して、その動向に期待を持つておるのです。民主主義というものは多数が本当に少数の立場をも認めて、これを合理的に自分の立場に包んで行く大きな統一があつてこそ、真の調和と統一が得られるのだということも聞いておりますけれども、これは法律案の改正にしましても、決定の運びに至りますまでには今日のごとく公聽会を持つとか、何らかの方法で成るべく多くの人々の声を聞かれたいと存じますが、或るレベル以上だけの納得を以てのみよしとしないで、そのレベル以下の啓蒙と大きな肯きを得られるようなあらゆる場を捉えて、惜しみなく指導性を発揮し、実行力を示して頂きたいと希望して、この意見を終りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/18
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019・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 鹿兒島トラック株式会社專務取締役田中正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/19
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020・田中正
○公述人(田中正君) 田中であります。国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対しましては私は全面的に賛成したいと思います。
賛成とする理由といたしましては、国鉄の現在の原価計算をいたしますというと、歴然としてこれはどうしても或る程度運賃を上げなければならないという数字が明瞭に出て参ります。又他の輸送機関と国鉄運賃とを比較いたしますというと、旧国鉄運賃のほうが低率であるという現状であります。これはここにもデータがたくさん出ておりますからして、そのデータを御覧になると大体わかると思います。
第二は、結局物価に鉄道運賃の影響がどういうふうに影響して来るかということが、最も重要な最も根本的な問題になるのじやないかと思います。ところで、この物価に与える鉄道運賃の影響でありますが、これは一般人としては、大体完成品というものを使用しておるわけであります。即ち完全にでき上つたもの、即ち素材ではなくして完全な品物というものを、大体完成品というものを使用しておるということが言えるわけでありまして、その完成品というものの中に、運賃がどの程度影響するかと考えますというと、これは現在商取引の上におけるマージンというものの中からこの運賃の程度のものは出て来るのじやないか。即ちマージンの中に運賃が或る程度十分に出される程度の値上りだと考えるわけであります。その第二は素材でございますが、この素材の値上りによつて物価に与える影響としましては、生産の合理化、いわゆる素材から完成品までの工程、この工程をば極めて合理化し、より一層努力することによつて、或る程度はこれをば押さえることができるのではないかと思います。
それから第三は、この貨物運賃というものをばほかの物価指数と比較しますと、この改正されることは極めて当然だということが頷けるわけであります。
第四としましては、私は南九州全般のことを申しますというと、南九州としましては、何といつても経済の中心地から最も遠距離になつて、この鉄道運賃の値上りというものが最も重要に響くのでありますけれども、これをばあらゆるものの統計にとつて見ますというと、そう強烈な値上りをしなくとも済むという程度に考えられるわけであります。即ち前に述べました素材としては、生産の合理化、いわゆる生産過程の合理化と、それから完成品としてはマージンの中から幾分なりとも犠牲にすれば、この値上がりというものをば或る程度にとどめることができる、即ちインフレーシヨンとかその他のほかの物価に対する悪影響というものが、及ぼさなくても済むのじやないかという気持と、それから物価自体は需給のバランスというものが非常に大きな影響を及ぼすのだ、運賃の高低よりももつと重要なフアクターが別にあるのであつて、需給のバランスによつてその物価の変動は大きな影響を与えるのでありますからして、運賃のみを以て物価変動の唯一の基礎に置くということに対しては飽くまでも反対したいと思います。
それから第五でありますが、国家経済全般から見ましても国有鉄道が非常に大きな赤字を出す、それをばプールの形で持つて来るということは、これは独立採算制の立場からも極めてこれは不合理なことでありまして、当然それを利用するものが負担しなければならないのではないかと、こういうふうに考えるという点であります。この点を強調して私賛成であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/20
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021・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 水谷義正君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/21
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022・水谷義正
○公述人(水谷義正君) 私は今回三重県の片田舎から出て参りました何もわけのわからない、文字通り浅学菲才の一農民でございます。従いまして私の意見は何も農民団体とか、その役員とか、業界、そういうものの代表ではありません。水谷個人として幼稚な考えを披瀝して皆様の御一考を促したいと存じます。
農村の経営は一時の闇取引盛んなりし頃、その頃を槿花一朝の夢と化せしめ、今やインフレのしわ寄せが小規模農民を押し包んで来ております。次々と統制は撤廃されます。統制の撤廃になりますと同時に品物は豊富となり、我々の生産物は販売価格を割るような事態が頻々として起りつつあります。大農は知らず、経営面積一町歩未満の農民経済は破綻一歩手前にあります。農業用資材、肥料等相次いで高騰し、今又運賃の値上げが実施されますときは、一般物価の価格に撥ね返つて更に一層我々の生活を脅かすものであります。極端に申上げますならば、我々の貧農の生活は餓死寸前に追い込まれております。
さて只今頂きましたところの資料を拝見いたしておりますと、非常によくできておりまして、元来私は反対の立場でありますが、これを見てはどうも賛成したくなるように工合よくできております。殊に各種料金の値上げ一覧表、これなどを拝見いたしまするときには特にその感が深くなるものでございます。併しながら、何もかも上る、だから国鉄の運賃も上げる、この論法は正当化されてはおりましようけれども、私はここに一層の経営合理化を図られまして、国鉄だけは値上げをしない、そうして国民に一服の清涼剤を盛つて頂きたいと存じます。併し値上げをすべき段階にあるとしますならば、ただこの値上率を最小限度にとどめますために、何らか他に財源は求め得られないか、経営合理化の余地はないか、これをもう一度国鉄当局のかたがたに御検討を願いたいと思います。それにつきまして、私は幼稚な私案でございまするが、一、二申上げたいと思います。
先ず第一にベースアップの問題でございます。我々農民の実態から申上げますと、我々の周囲から多くの国鉄通勤者を見ます。その職員には我々は羨望の的を以て見ております。而もそれは勿論現在のベースにおいての話なのであります。皆様の御承知のごとく、国鉄職員は大部分と言つてもいいくらい地方在住者が多く、家族はそれぞれ分相応の農耕その他の家業を兼営し、給料による生計費の依存度は、他の一般公務員に比較すると非常に軽いものであります。ベース・アツプの率は予算面より或る程度圧縮して頂きたい。なおこれは少し脱線するようでありますが、私が常々の持論を申上げます。ベース・アツプと人員整理の関連性であります。人員は可及的少く、ベースは可及的高く、これが理想論でありましよう。これに誰しも原則的に異論はありますまい。併しながら、現実面よりこれを見て見ます。私自身のことで非常に恐縮でございますが、私は一昨年のあの行政整理が強行されました際、一被整理者としてその後の悲惨な生活を回顧しまして、為政者の一考を煩わすや切なるものがあります。現在の行政整理の段階におきまして、その後の生活の保障、これが万全を期せられない現状であります。整理者は一応可及的少くして、自然減員を待ちつつ新規採用を嚴重に戒め、ベース・アツプの率を低くして頂きたいと存じます。生活の苦しいのはひとり国鉄職員のみではありません。限られた耕地に汗と泥まみれになつて過重な労働に報いれること少き貧農の苦しさも皆さんお考え下さい。
次に家族パスの問題であります。一昨年でしたか猛烈に全国的に挙りました家族パス廃止の輿論に抑えられまして、一時は国鉄のほうですつかり断念したようでありました。喉元過ぎれば熱さを忘るの譬えのごとく、今や半ば公然として復活しておるようであります。これをやめてしまえというのも、長い伝統に立つ国鉄としては、一時はやめても又ぞろ輿論の忘却を待つて復活することは明々白々の事実であります。で私はここに一つの提案をいたします。家族パスは発行してもよい。但し、職員家族なるが故に無料では困ります。これを半額程度の料金を徴収しますと、国鉄職員四十数万の一カ年の家族の利用度は相当に高くなると思いますから、運賃収入にプラスするところも又多いことは勿論であります。ただこれを行政監察制度のようなものを確立して、確実に実施さすように施策を要望いたします。
その他一般の消耗品費等の使用につきましても、一農民の目から見ますと、官庁のすべてのそういう面におきまする冗費が非常に多いことを残念に思います。この際一層の自粛をお願いいたしたいと思います。
私は簡單でございますがこれを以て終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/22
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023・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 細野日出男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/23
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024・細野日出男
○公述人(細野日出男君) 細野でございます。私は交通学者、それから公益事業学者の一人といたしまして、交通事業、公益事業の健全なる発展ということが国利民福、いわゆる一般公衆並びに産業の大局的利益と合致するものであるという見地から、全般的な見方に立つて意見を申上げたいと思います。個々の数字による個々の意見もなくはございませんが、時間の関係から大まかな基本的な点からこの原案に対する賛成の意見を申上げたいと思います。
先ず第一に、自由経済政策の展開によりまして一般産業は繁栄しておる、これに関連するところの公衆の収入も増加しておるという事実を見なければならないと思います。政府並びに自由党は自由経済政策を去年の春から強く推し進められ、来年は最後の統制品目であるところの主食の統制さえも撤廃しようとしておられるくらいであります。即ち、経済の基調は自由経済に復帰しつつあります。価格が自由になつて、需要供給の原則によつて大抵の物の価格が皆自由に動いておる状況でございます。朝鮮事変、世界軍拡の影響によりまして、この需要供給原則が、需要のほうが増大して供給が足らないというところから、非常に上りまして、物価が大巾に高騰しておるのであります。糸へん、金へんの景気ということが言われておりますが、繊維、パルプ、鉄鋼、非鉄金属、化学工業、こういつた方面の収益振りは最近は非常なものであります。これに関連する産業からいたしまして、一般にやはり他の産業部門にもこの好況ということは浸透しつつあるのであります。本年七月の東京証券取引所上場の会社の数が五百七十二社ございます。そのうちで以て配当しておる会社が四百五十二あるのであります。去年の七月には、これは三百六十七社しかなかつた。百社以上配当する会社が殖えたのであります。その平均配当率がどうなつておるかと申しますと、一四・一%、去年一四・一%でありましたものが、今年の七月には二一・一%、二割一分一厘というような配当振りであります。払込資本に対するところの平均率というものを見ますと、紡績業の十社の平均が実に七六〇%、七十六割の利益を挙げております。去年の下期季には、これは二十六割、二六〇%であつたのであります。人絹会社は八〇〇%。人絹五社八〇〇%の収益を挙げております。鉄鋼会社は六〇〇乃至八〇〇%という利益を挙げております。これらは実に驚くべき、数字の上では大きな収益率でありますが、このうち、こういう大きな利益のうちから配当しております。五割配当と言えば随分大きな配当でありますが、その五割配当しておるのが利益のたつた二十分の一であるというような化学繊維会社の例もある。こういうようなわけでありまして、いわゆる糸へん金へん系統の繁栄というものは、実に驚くべきものがあるのであります。これらの会社はその益金をどう処分しておるか、これはよく使つておるほうでは、社内留保をやつて拡張、増産に対して手を打つております。いわゆる設備の合理化、近代化をやつておる。設備の合理化をしなければ、人間だけの合理化をいたしましても、或いは企業体系だけの合理化をいたしましても、設備の合理化まで行かなければ、なかなか本当の合理化はできないものでありますが、よく使つておるところでは、社内留保を設備の合理化に使つております。それからそういう利益が上つておるということは、これは信用の増大でありますからして、市場金利が非常に上つておるわけでありますが、一割以上の金利を払つて借入金をしておる。或いは二割から五割といつたような配当で以て増資するというようなわけで、非常に資本の増加をやつております。その結果、言うまでもなくこれは増産であります。増産の結果は輸送量が激増するということになるのであります。又これらの繁栄しておりますところの産業に従事いたしております従業員というものは、必然に収入の増大を来たしております。で、この影響を直接間接受けるところの他の産業や銀行は、やはり漸次収益、収入を好転しつつあるのであります。これらのことは貨物輸送が大巾に殖えるということであります。又旅客輸送も大巾に殖えるという現象になつて現われて来ておるのであります。ところが第二に、国有鉄道或いは電気通信だとか、電力だとかいうような公益事業群というものは、公益性が非常に大きい。その故を以て、公益性強大なるの故を以て、運賃や料金というものを大巾に低く抑えられておる。且つそのインフレ昂進につれて値上げしなければならない時期を非常に遅らされておるのであります。その結果赤字、それから赤字が出る、或いは益金が他の産業に比べて非常に不足だというような状況で苦しんでおるのであります。国民生活、一般産業の基礎的な日常、普段必需品のサービス、若しくは物資を提供するというような公益事業というものは、その公益性ということが非常に強く強調されておる。その結果いつでも、国策的に運賃或いは電力料金、電信電話料金というようなものは安くしておけということが、これが国民の声となりまして、政府の政策となつて最近までずつと推し進められて来ておるわけであります。このためにインフレの昂進に対しまして常に値上率を低く低く抑えて行つておる。一般物価指数は戦争前昭和十一年に比べまして、去年の春二百倍くらいになつておるのであります。ところが去年値上げいたしました貨物運賃、一昨年値上げいたしました旅客運賃というものが、最近まで旅客が大体戦争前に比べまして九十二、三倍、貨物が百三十倍ということで、二百倍以上の一般物価に対しまして、鉄道運賃というものはその半分以下、旅客が半分以下であり、貨物は約三分の二というようなところに抑えられておるわけであります。それが更に一般物価は朝鮮事変、世界軍拡の影響によりまして非常に上りまして、小売指数が大体三百倍になつております。今年は最近三百倍くらいになつておる、或いは三百倍強になつております。今度の法律案によりますと、この値上げによりまして、旅客運賃は大体百十五倍くらいになる、貨物運賃は百六十九倍くらいになる、やはり三百倍の物価昂進に対しまして、改正案といえども非常にこれは割が低いのであります。去年の状況では併しながら久々で国有鉄道は黒字を出したようであります。併しながらその黒字の原因は、これは旅客にあります。旅客は営業費を償つて、貨物はやはり赤字である、旅客が営業費を償つておるということが、こんな低い九十二倍という値上倍率で以て原価を償つておるということは、ちよつと不思議なのでありますが、これは実は高能率の結果であります。高能率ということは実はおかしいのですが、それは主として客車に大勢旅客を詰め込むということであります。即ち混雑、立ちんぼう、サービスの内容の低下ということの形によりまして能率が上つておる、悲しむべき能率の向上状況なのであります。それからその倍率が低い、抑えられておるということのほかに、いつでも物価がどんどん上つて行くことに対しまして、公益事業というものは統制されておる、自由経済下においてもこれは必然統制をされる産業であります。統制をされまして料金が勝手には上げられない。政府機関の認可を得なければ上げられないということになつておる。国鉄の場合などは殊にその重要性というところからか、非常に政府機関の取締機関というものは厳重でありまして、運輸省に運輸審議会というものがある、国会の上下両院で承認されたところの委員がおつて、そこで審議する、そこで公聴会をすでにやつておる。それから運輸大臣が原案をこしらえて国会に出されて、改めて国会で以て法律で決定される。国会も公聴会を開かれる。こういうわけでありまして、電気通信も似たような、郵便料金も似たような條件でありますが、この認可手続というものが非常に複雑でありますために、これが緩慢、遅延の原因になるわけであります。遅れて上るということは、これは大衆の立場から見ますと、現実にはほかのものが皆上つてしまつておりますから、すでにふところがさびしくなつております。さびしくなつておるところで以て値上げということになりますからして、もう払う金はない、反対だということになつて来るのは、これは必然であります。産業でもすでに他の原価がきまつてしまう、相当経つたところでぽかつと鉄道運賃の値上げということが参りますからして、やはりそれは原価を高めるもので、インフレを昂進するもので反対だというような声が出るわけでありまして、これは遅れて上るということの必然の心理的な結果になります。国有鉄道は二十年度から二十四年度まで非常に大きな赤字の連続であつたようでありますが、二十五年度は初めて黒字を出した。併しながらその黒字を出したということの原因は、運賃が適正であつたということの結果とは到底考えられないのであります。それは資材のストツクがあつた、或いは資材購入の時期を早くやつた、契約を早くやつたというような手柄に主として帰せられるものであります。その証拠には、そのストツクがなくなつた。契約期限が切れました今年になると、去年は三十億から五十億の黒字を出したと言いながら、今年は一挙に五百何十億というような大きな赤字が出るということになつて来ましたが、決してこれは能率向上で去年黒字が出たというようなことであるよりは、資材ストツクがあつた、或いは購入契約が早く手を打たれたということの功に帰すべきだと見たいのであります。これは国有鉄道、或いは電力や電気通信も同じものであります。
こういう公益事業群が赤字乃至非常な益金不足に苦しんでおるということの結果がどうなるかと申しますと、それは補修の不十分ということになつて参ります。取替えができない、取替えの不十分は鉄道の場合ならば、これは安全性が低下いたします。桜木町事件のような非常に不幸な事件が起つておりますが、あれにいろいろ責任を問われまして、総裁以下がああいう事件で辞職をするというようなことにまで進んでおりますが、あれなんぞもやはり国鉄の財政を預かるところの当局から見れば、したくても金がない、そこまではとてもやれないというような財政難から来るところの心理的な原因が相当あつたものだと私は考えたいのであります。国有鉄道の場合、設備合理化をやる必要がある。例えば電化のごときは最もその必要なものであります。ところがその電化は曾つて五カ年計画というものを立てられたようでありますが、殆んど手がつけられない。高崎線だけは漸く電化する、米原までの電化は今年はとてもできないというようなわけでありまして、全然と言つてもいいくらい、これは進んでおりません。設備の合理化を行わない、他の面の人間の合理化、機構の合理化というような程度のことでは、到底長期自給の大きな能率を上げるということはできないのであります。又赤字ということは或いは益金不足ということの結果、従業員に対しましても大きな影響が参ります。待遇が悪化する、首切りが起る、或いは減員不補充ということをとる。これは結局輸送量のほうは殖えておるのでありまするから、労働の過重ということになつて来る、休暇取消し、或いは超過勤務というようなことになつて参ります。全体としてこういうことではサービスの向上が不可能である。輸送力に対する需要は大いに増加する形勢にあるのに、国有鉄道においては、その需要を充たすだけの能力を持ち得ない。従つて至るところに旅客列車が再び非常に混雑を呈するようになつて来た。貨物の滞貨の山は駅頭至るところに見るというような事情で、先ほどいろいろのお話のありました、石炭だとか、或いは他の方面におきまして設備を増加してもらわなければ困るということは出ておりますが、そういうものを増備すべきところの資金がないというような結果になつておるのであります。このことは一方におきまして自由経済下において一般統制のない産業というものは非常に栄えて来ておる。従つて輸送に対する需要は殖えておる。然るにこれを輸送すべき国有鉄道は、輸送力を増強することができないという重大な跛行、不均衡、びつこを惹き起しておるのであります。
今日いろいろ伺いますこの反対意見のうちにも、又一般の世論のうちにも消費者の立場から言えば鉄道運賃などは安ければ安いほどよろしい。勿論鉄道運賃に限らず、あらゆるものは消費者の立場から見れば安ければ安いほどよろしいわけであります。併しながらそれは正当なコストを償う限りという重大な條件が付いているということをこれを皆さん国民一般は考えられる必要があると思うのであります。コストは償わなくても安くしろ、コストを割つても安くしろということは、これは誰かが損をしろということであります。誰が損をするかと言いますと、運賃機構の内部で以て損をさせるということであるならば、これは実際行われておることでありますが、普通の切符を買つて乘るところの乘客が一番損をしておる。その損を一般の定期券旅客は得をし、コストを割るという定期券輸送が行われ、或いは貨物も、普通の乘車券を買つて乘るところの旅客の負担において運送されておるというような、そういう結果になつております。国鉄がそれでも黒字であるならば旅客だけの負担、普通の切符を買つて乘る旅客だけの負担で以て償われるということになりますが、大きな赤字が出るということになりますと、この赤字は外部に響いて来るわけであります。国鉄の利用者以外の人に響いて来るわけであります。それは国有鉄道の場合直ちに出て来ますのは、これは国庫補給金というものであります。国庫補給金ということになりますというと、これは一般納税者の負担であります。納税者が損をして鉄道を利用させるということになる、国庫補給金ということになれば勿論独立採算ではなくなります。独立採算ということは国営事業であるところの国有鉄道が民間企業と一応同じ立場に立つてやれということに近いものでありまして、自由経済の原則であります。この自由経済の原則を破つて国庫補給をやれということは、これは経済政策の全面的な転換を意味するものでありまして、今日の現内閣、自由党が推進しておるところの自由経済政策とは甚だしく背馳する方向に行くものであります。又国庫補給金をもらわない場合には借入金をしなければならない。その借入金というものは結局どうなるかといえば、従来の利用者の負担であります。従来の利用者の負担において現在の利用者が得をする、鉄道に乘らせてもらう、或いは貨物を運んでもらうというのが、これがコストを割つてもいいからまけてくれ、運賃は安くしておいてくれということの結果であります。これが国有でありますけれども、私営の場合ならばどうなるかと申しますというと、株主が損をいたします。債権者も損をする危險性がある。従業員も損をする、国有鉄道の場合は、従業員は確かに損をしております。併しながら従業員は民間企業ならばストライキができます。ストライキをやるということによつてその損失を取り返し、何とか一般の労銀レベルに戻すということができますが、国有鉄道の場合におきましては、公共企業体労働関係法によりまして、ストライキは禁止されております。従つてこれはできない。これは労働組合にとりましては、非常に内攻することになつて参りまして、これは労働意欲の低下というような方向に響いて来るということになるわけであります。で民間企業の場合に、株主や債権者が損をするというような危險があれば、これは資本が集まつて来るわけはない。株式も、社債券にも応募して来るものはないのであります。国有鉄道の場合には株式は募集いたしませんけれども利益がない。これは自分の益金を自己資本として投下することができない。国家から資金を出してくれればよろしい。ところが国庫は御承知の通り非常に資金難でありまして、なかなか出してくれない。そういう事情でありますからして、輸送力不足、サービス低下ということはずつと続くということになりまして、このことは結局産業と一般公衆、鉄道を利用しているところの人々の損失に帰するということになるのであります。ですから民間におきましては、株式の相場が夕刊、朝刊に出ておりますが、これを見ればすぐわかることでありますが、公益事業群は非常に株式相場が悪い。他の一般産業のほうは払込をずつと上廻つておるというような状況でありますが、私鉄、或いは電力、こういつたような、不当に安く取締られておるところの産業というものは、株式相場が非常に悪い。従つて投資してくれる者がいないということは、これは発展させなければならないところの公益事業を発展させないという結果になつて来るのであります。現在の電力不足のごときも非常にいい例だと思うのであります。
併しながらこれらの公益事業群といえども戰後の困難期、経済上国民生活が非常に苦しいというような困難期におきましては、或る程度犠牲になるということは、これは止むを得ない場合があります。過去の即ち公益事業というものは非常に大きな固定資産を運用してやつて行くところの仕事であります。過去において投下いたしました固定資本というものを運用いたしまするからして、いわば国有鉄道といえば、敗戰前に投下いたしましたところの資本、八十億前後のものがあつたかと思いますが、そのうち半分以上が自己資本である。自己資本には何ら配当も要らなければ元金償還も要らないのであります。併しながらあとの半分の四十億ぐらいはこれは国債でありまして、国債はせいぜい三分五厘から五分ぐらいの利子であつたのでありまして、現在も国有鉄道の財産の九〇%以上が恐らくこの敗戰前に投下されたところの資本によつて作られたものであります。これらの過去の固定資本を投下しておつたところの国債の投資者というものは、金銭債券の所有者というものは、インフレの状態におきましては、必然に直接の被害者になるのでありますから、これらの人たちの損害によつて実は国有鉄道というものは戰後相当安い程度の、つまり利子負担を少くして経営ができるというような状態にあつたわけであります。昨年の国有鉄道の利子負担は三十二億円強になつておりますが、そのうち旧国鉄のために投下された国債の利子というものは恐らく二億円そこそこだろうと思います。後の三十億円くらいは戰後投下された資本、或いは借入れた赤字の穴埋めといつたような、借入金に対する利子でありますが、それらは国鉄財産には何ほども寄与はしてないのであります。つまり依然十億円ぐらいの運輸収入があつたその場合に国債に払うところの利子が二億円……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/24
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025・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) もう二十分も超過しましたからできるだけ要点だけを言つて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/25
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026・細野日出男
○公述人(細野日出男君) そういう状況でありますので、国有鉄道の今日千五百億円の収入で以て三十二億円の利子というようなことは利子の負担が非常に軽いのでありますから、その点から国有鉄道のようなものは安い運賃でいいということは確かにそうであります。併しながらそれはいつまでも続かない、そういう固定資本というものはいつまでも続かないものでありまして、だんだん壊れて取替えなければならなくなつて来ます。そうなつて参りますというと、新しい資本を投下しなければならない、新しい資本の負担というものはやはりだんだんかかつて来ることになるのであります。自由経済の原則というものは、いわゆる持ちつ持たれつペイするということでありまして、利用するものが得をし、経営するものも得をするというところで以てこれは成立する。片方損し続けておつてはこれは到底続かないのであります。そういう立場からみましても、国有鉄道というものは損をしないようなところへ行かなければ、自由経済の本則から離れるということになるのであります。
なお運賃値上げはインフレを助長するということがしばしば言われる、これは世界的にそういつたような意見がありますけれども、併しこれは事実の認識を誤つたいわゆる俗論なのでありますが、鉄道運賃というものは、これは先ほども申しました通り、いつでも非常に遅れて上つている。インフレの結果止むなく遅れて上り、而もいつも低位に据置かれるというようなことになつております。即ちインフレの犠牲者でありまして被害者である。決して原因でもなければ加害者でもないのであります。然らばそのインフレを抑えるにどうしたらいいかと申しますと、運賃値上げを吸収すべきものはインフレ・レベルよりも非常に高くなつているところ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/26
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027・小泉秀吉
○小泉秀吉君 どうです、その程度でいいじやないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/27
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028・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 細野君、結論を急いで下さい。(「そんな講義を聞きに来たのじやないぞ」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/28
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029・細野日出男
○公述人(細野日出男君) それでは結論を申上げます。自由経済の下では公益事業の統制ということは必然でありますけれども、それは決して国策的な立場から、いわゆる全体主義的国策的立場からやるものではない、独占の横暴を取締るという立場からやるべきだと思うのであります。ですから正当なコスト、これを償う、何が正当なコストであるかということを看取する、これが公益事業における料金取締の原則でなければならないのであります。その正当なコストというものは実は資本の拡長、資本を吸収するにたるところの資本報酬を含むものであるということであります。(「そんな講義は聞かんでもわかつている」と呼ぶ者あり)それから今一つは、鉄道は文字通り公僕である、利用者が主人である。主人であるものは、これはかかつただけは払うというだけの雅量が必要であるということであります。かかつただけのものは払うのであります。いわゆる主人が召使を酷使する……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/29
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030・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 細野さん賛否をどうするか、それから意見も同時間でやるということにいたしたいと思います。あなたの御趣旨は大体わかりましたから、最後の結論だけを言われることを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/30
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031・細野日出男
○公述人(細野日出男君) 結論といたしましては、私は今度の原案はまだ少し足らない、営業経費の七五%乃至八〇%ぐらいに行くことがこれがノーマルな状態だと思つております。それに至る道程といたしましては、いわゆる安定基金というものを或る程度得るということが一番望ましいのでありまして、そこまでは今度のでは到底参りませんけれども、それに至る道程として今度の原案に賛成いたしたいと思うのであります。大変におしまいだつたものですから長くなりまして申訳ありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/31
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032・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/32
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033・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 速記を始めて。それでは公述人のかたがたの公述を一応終りましたので、これより公述人に対する質疑を行います。公述人に対する質疑のおありのかたは御質疑を願いたいと思いまするが、それに関しましては、当初議長から申上げた時間等をできるだけ嚴守して頂いて、そうしてやつて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/33
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034・村上義一
○村上義一君 矢田さんその他全面的に反対の意見をお述べになつたかたにちよつとお尋ねしたいのでありますが、矢田さんのお話中にも、現在の国鉄は設備の復興、復旧ができておらん、又保安度も非常に不完全だ、サービスも低劣だというような御見解でありました。それは私も正に同感であります。そういう状態でありまするが、なお且つ五百三十三億の赤字が出ておることは御承知の通りであります。あなたのお説の通りにこういう赤字は経営の合理化なり企業努力なりによつて、最善を盡してこの赤字克服に努力すべきものである、ということは勿論当然でありまするが、とにかく五百数十億の赤字が出ておるのであります。こういう状態のまま放任しておけば、設備の補修もいよいよ低下いたしましようし、又従業員の賃金のベース・アツプ、その他待遇の経費も生まれ出て来ないということに相成るのであります。何かの方法でこの赤字を埋めなくちやならんと思うのであります。そうして今の設備もよくしサービスもよくし、又従業員の待遇もできる限り向上せしめなければいかんというふうに私は考えるのでありますが、そういう赤字を然らば埋めるということにつきましては、補給金で一般財政から補給をするということか、或いは借入金によるか、然らずんば運賃値上げによつて収益を増加せしめるか、この三者以外には方法がないと考えるのであります。一般財政から補給をするということでありますれば、只今細野さんの御意見中にもありましたごとく、これは国民全般が税の形で負担して行く、又借入金で進むという場合には、細野さんは将来の乗客に負担をせしめるものだという御意見でありましたが、これは考え得ることでありますけれども、事実できないことだと思うのであります。結局破産をもたらすか、或いは今の溜めておいて補給をするか、いずれかになる。で結局言い換えますると、国民全体の税で負担して行くか、運賃値上げの方式によつて利用者が負担して行くかといういずれかに帰着すると考えるのであります、でこの点について御意見を一応伺つておきたいと思うのであります。つまり税で負担するのがいいというお考えであるか、又は利用しない一般国民に負担せしめるということは、コーポレーシヨンとしての本質上間違つておると、これは利用者が負担して行くべきであるということになるのか、その辺伺つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/34
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035・矢田勝士
○公述人(矢田勝士君) お答え申上げます。国家財政の詳しいこと、又国鉄経営の分析の十分なことは及びもつかないことでございますが、私の考えでは結論といたしまして、その赤字分の負担部分をどうせいということを申上げなかつたわけでありますが、第一に私はコーポレーシヨンになつた経緯というものはつまびらかにいたしませんけれども、日本の鉄道の実情によりますれば、現情勢において企業体に切換えたこと自体が少し無理があつたのではないか。従つて戰争中から戰後を通じてのいろいろな輸送の状況等を、又復興の状態等から勘案いたしまして、国の経営で行うということがまだ必要なのではないかと考えます。従いまして若し結果として企業体になつたといたしますならば、すべてこれらの国の財政措置によるものを切るのでなくて考えて頂きたいということでありまして、それでは税金に転嫁されるではないかということでございますが、私は乘つた、或いは貨物が運ばれたということ、そのことのみを見ますると、それは利用したもののみによつて負担するというのが理論上正当であるか存じませんが、それらの行為によりまして、国民全体はやはり経済活動を営んでおるということも事実でありまして、そういう意味から国有鉄道の高度の公共性ということが考えられ、国民全体のこれは所有であると、こういうように考えて来たのでありまして、又税金の場合には私は当然累進税等の形によつて皆均等割でないというような意味から、国民生活の最低を保障し、又国民の福祉を増進するという建前からは税金の制度そのものは勿論、一応お考えを願いたいというような意味で、国民負担の公平化ということは、税金のほうが画一的均等割の賃金よりも可能であると考えたわけでありまして、若し四百三十三億の赤字がすべて国の財政で持ち得ないと仮にいたしましても、この程度の、或いはそのうちの大多数の財政からの考慮は、近頃の自然税の増収等から洩れ聞いておりまする数字と勘案いたしますれば、可能ではないか。国家の政策自体において不急不要と思われるようなことにおいて、多くの支出が廻わされておるのではないか、こういうような総合的な判断の下に、私はさような意見を申上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/35
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036・村上義一
○村上義一君 なおもう一言ここは討論ではありませんから、ただあなたの御意見を伺えたら伺つておきたいと思うのでありますが、結局、この赤字は税を以て補うべきものとこういう御見解なんですな。
なお、もう一言宮坂さんにお尋ね申上げたいのでありますが、青凾航路について理論上から、又政策上からの御意見はよく拜承いたしましたが、ただそのお話中に民間経営でありまする汽船の航路運賃との均衡問題、関連調整問題については別に考慮したらいい、こういう御意見のように拜承いたしたのであります。この別に考慮する措置という何か具体的御意見をお持ちでしたら伺つておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/36
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037・宮坂壽美雄
○公述人(宮坂壽美雄君) 実は北海道は御案内の通り道議会におきましては、この北海道と離れた島が相当ありますのですが、そういう方面には皆定期航路というものを設けまして、それには道として助成をいたしてこの離島のかたがたの便宜を図つておる次第であります。従いまして、この青森と凾館の間には定期航路というものはないのでありまするから、仮に鮮魚であるとか野菜であるとかいうようなものを運ぶ場合には、この鉄道運賃によつて輸送のしきれないものは個人の船をチヤーターいたしまして、それには鮮魚だとか果物は時期の物でありますから、値段をいとわないで輸送をしておるこういうような現実であるが、そこに定期航路というものはないのでありますから、そういうものを設定して国がこれに助成をして国鉄の補いをすべきものではないか、このように考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/37
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038・村上義一
○村上義一君 重ねてお尋ねしますが、国が助成をしてとおつしやるのは、民間船会社に助成してその船運賃を安くする、こういう御見解なんでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/38
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039・宮坂壽美雄
○公述人(宮坂壽美雄君) そうではございません。定期航路というものを設けて、それに助成すべきであるとこう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/39
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040・村上義一
○村上義一君 定期航路とおつしやいますのは、これは国が、或いは又国鉄が定期航路を持つてそれに助成をするとこういう御見解ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/40
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041・宮坂壽美雄
○公述人(宮坂壽美雄君) これは国鉄とは切離しまして、国鉄は独立採算制になつておりますから困難だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/41
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042・村上義一
○村上義一君 結局国鉄の他の定期航路を設けて、それに助成すべきだとこういうまあお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/42
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043・宮坂壽美雄
○公述人(宮坂壽美雄君) さようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/43
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044・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/44
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045・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/45
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046・内村清次
○内村清次君 時間の関係がありますから、私は田中さんと細野さんに一括して質問申上げたいと思いますが、現在の国鉄が一方においては独立採算制を強行され、それから一方においては産業の動脈としての公共性、或いは又国民の福祉文化の発達の要素としての公共性、この公共性の二つの枠に只今悩んでおる状態だろうと思うのでありますが、田中さんの御意見によりますると原価計算でコストが償わないところの現在の状態であるから、運賃値上げも止むを得ないという御意見のように拜承いたしました。原価計算の中には勿論減価償却の問題や、それから輸送実費の問題、輸送実費の中には石炭或いは客貨車の補修、それから又施設の補修というものを含めてのいわゆる原価計算のコストになるのでありますが、そのうちに今回の国鉄が出しておりまするこの物件費の三百三十三億というような大きな物価の値上り、この値上りをそのまま田中さんはこれをお認めになりまして、これに対してはどういうお考えを持たれるかは知りませんが、若しもそのお考えがあるとするならば、こういうことで直ちにこの原価だけで物事を解決して行くほうが国鉄としては止むを得ないじやないかということが正しいのであるのかどうか。この点に関する御答弁と、それからいま一つはこの家計へはね返つて来るいわゆる荷物がこういう輸送実費が上つて参りますると、家計へはね返つて来る部分に対する御統計をとられたようなことがあるかどうか。或いは又統計をとられないならば、どれくらいの家計へのはね返りがあるであろうかということをお考えになつたことがあるかどうか。
それから細野さんは自由経済下においては……、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/46
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047・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 内村委員、それでは先にどうですか、田中公述人の答弁を求めますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/47
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048・内村清次
○内村清次君 同じことですから……自由経済下の現実で非常に企業が収益が大きくなつて、そうして株の配当が増大しておるという御説明でございますが、この株の増配の関係からしてその従業員の受ける収入も増大しておるのだ。こう断定せられておりまするが、それでは従業員の実質賃金が果して増大しておるかどうかということについての御統計をとつておられますかどうか。それからいま一つは、株の配当を受けておるところの何と申しまするか、そういうかたがたが国民全体のどれくらいであつて、俸給生活者や農民のかたがた、或いは又要保護の国民のかたがたの数がどれくらいであつて、そうして総合的にこの国鉄を利用しようとする人たちがこれを公平に利用しやすからしむようなことができるかどうかというようなことに対するお考えが一つ。
それから細野さんには、特に今国鉄が悩んでおります二つの独立採算制の問題と公共性の問題をあなたはどちらのほうを優先として今復興の過程にありますこの日本の状態をどちらを先にとろうとしておられるかどうか。この三つの点につきまして。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/48
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049・田中正
○公述人(田中正君) 最初原価計算の中に物件費云々ということでございますけれども三百三十三億という物件費を節約するという意味ですか。それを原価計算に入れていないという意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/49
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050・内村清次
○内村清次君 それを入れるのが妥当だと私は思います。これはいわゆる原価計算というものが、そういう大きな物件費の値上りというものをそのままさせておいてから何も施策がないかどうかということに対してのお考えはどうであるかということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/50
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051・田中正
○公述人(田中正君) その点についてはもつと総合的な見地から、そういうものは国家経済全体からデイスカツシヨンすべき性質のものではないかと思います。單に国鉄の採算というだけを見ては、僕は原価計算に入れてもよいと思います。それをどういうふうにすべきかという点については、もう少し高い見地からそれを考えて行くべき性質のものではないかと思います。フアクターが余り多過ぎてその原価計算の輸送原価の主体はどういうものであるか、それがわかりかねます。もう一つ家計経済へどういうふうにはね返りをして来るかという問題でありますが、これは例えば生鮮……フレツシユな魚、鮮魚とか、野菜とか、そういう日常生活に欠くべからざるものは、これは大体近距離輸送でありまして、現在のところ殆んど鉄道による輸送というものはよほどの場合でないと考えられていないのが現状でないか。こちらではどうか存じませんが、南九州のほうでは大体トラツクによる輸送というのが主体でありまして、そういう日常の食生活の主体はそういう状態でありますからして、鉄道運賃の値上りはそう大して影響しないのではないか。食品に対してはフレツシユな鮮魚とか、或いは野菜とかいうようなもの、それからほかの食品というものは鉄道運賃というものの値上りが或る程度商人のマージンから出て来るのではないか。そのマージンを犠牲にすれば鉄道運賃の値上りくらいは何とかなるのではないかと思いますが、どんなものでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/51
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052・内村清次
○内村清次君 マージンを犠牲にせられるということが可能ならば、余り大きくは響かないとは思いますが……わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/52
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053・細野日出男
○公述人(細野日出男君) 高配当を受けているものが国民の数のどれだけを占めておるかということは、確実な数は存じません。国民の何%というような数字はちよつとつかめておらないのであります。併しいわば一般の産業がやはり特に景気のいい産業の影響を受けて、いわゆる漸次滲透して行くという状態は、例えば商店の売上げが殖えるといつたような形で以て出て来るというような、そういう形での滲透は相当広くして来ておるのではないかと思うのであります。それからそれらの従業員が給与が上つておるかどうかということは、これは実はストライキといつたようなものの存在が、やはり統制を受けておるというような形態のほうの公益事業といつたようなものの系統のほうに多いということで、やはり収益が上れば従業員は默つていない。経営者のほうでも上げるということで以て、現実にはやはり相当上げておるのではないかと、はつきりした統計はつかんでおりませんけれども、そういうふうに見ております。
それから公共性と独立採算制との関係でありますが、これは自由経済の原則をもつと突つ張るということになりますと、国有鉄道といえどもやはり独立採算制ということを建前にして行くべきであつて、そのために、殊にこれはアメリカの影響が多分にあるわけでありまして、アメリカは自由経済の国でありますが、アメリカ経済に直結する日本というようなことから、自由経済というものは特に推進されると思いますが、アメリカのほうからは、儲らない線路はやめてしまえばいいじやないかというような意見が非常に強く出ている、これは自由経済の原則を突ぱればそういうようになつて来るわけであります。併し日本の今の段階において果してそれがいいかどうかということになりますというと、私個人としてはまだ或る程度の何といいますか、経済政策、社会政策によつてそういう好景気と申しましても実際は跛行景気であります。非常に景気のいいところと全然景気がよくなつていないという産業があり、或いは給料取りがたくさんいるということは事実なんであります。こういつたような人たちを如何に調整するかということはこれは経済政策、社会政策の問題でありますけれども、鉄道運賃の枠内で以てそれをやれというのは少し行過ぎではないかとそう思うわけであります。もつと大きな範囲内の経済政策、社会政策で以てやるべきものだとこう思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/53
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054・小酒井義男
○小酒井義男君 日本石炭協会の天日さんにお尋ねしたいのですが、御公述の中で運賃の値上りをできるだけ抑制して行けということと同時に設備をもう少し改善をして行けという御意見があつたのでありますが、矢田さんのような立場からすれば、ああいうふうに運賃によつて国鉄の経営が赤字を出す場合にはこれは政策的な面でカバーして行けばいいという御意見であるようなんですが、あなたのような場合に、それでは国鉄の現在の公共企業体の形の中において、そうしたことが可能であるという、つまり運賃の値上げをもうちよつと抑制して、而もいろいろな諸設備の改善をして行くことが可能であるという御見解になつておるのか。そうでなしにやはり運賃が国民生活或いは経済に及ぼすすべての影響を考えた場合にやはり政策的にそうしたことを行なつて行くべきであるというふうにお考えになつておるのか。例えばやはり運賃といわず電力特に石炭も含めて基礎的な産業はすべてこれは経済にすぐ影響を持つて来ると思うのです。これがそうした政策的な面から押進めて行くということになりました場合には、やはり国鉄の運賃にも石炭の値上り、電力料金の値上りというような問題が相当これはフアクターを占めて、影響をして来ているわけですから、やはり石炭も私は別のものじやないと思うのです。経済の全体の上から考えて行く場合には、私はやはり石炭とか電力、国鉄というようなものが、こうした基幹的な重要産業が国営国管というような形でやられて行きませんと、鉄道だけがそうであつて、石炭とか電力は自由経済の下においてやられて行くということが果して可能かどうかということについて経済的な立場から非常に疑問を持ちますので、あなたのおつしやつた意味はどういうところに論拠があるかということについてお尋ねしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/54
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055・天日光一
○公述人(天日光一君) お尋ねの点、お答え申上げます。私先刻急ぎましたので言葉を省略したためにさような御質問を受けたと思います。私が値上げ賃率をもう少し圧縮して頂きたいと申しますのは、然らばその現に生じている損失、赤字を何によつてカバーするかということに帰着するわけであります。私の考えておりますのは圧縮された赤字のうち一部分は各方面から言われておりまするように、国鉄自体の経営の合理化によつて吸収さるべき分もあります。又一部分は政府の貸付金或いは補給金、そういうものによつてカバーして行ける、かようにして分けて行つた残りのものを運賃値上げに持つて行きたいというので、必ずしも單一の事項のみによつて解決せんでもいいのじやないかということであります。と申しますのは現に本年度の国鉄の予算を拜見しましても政府貸付金はたしか二十億か計上されておるのであります。独立採算制とか何とか申しますけれども、決して單一の姿では私はないと思います。それが現実でありますからして、現に政府から貸付金二十億計上されておるならば、他のやり繰りといいますか、経理が許せばもう少し貸付金を入れたつていいわけです。又これが他の関係等考えて見ますと一時の借入金はずつと長期に亘つて吸収なり、償却なりして行けばいいのでありまして、国鉄そのものは長い生命を持つている事業でありますから、單に一時点を抑えてそのときの損失、赤字をどうこうするということじやなしに、長きに亘つて解決して行つていいのじやないか、それは産業なりに急激な変動を与えることの弊害よりも、長期に亘つて償却なり何なりしたほうがより弊害が少いというような見地から申上げておるわけなんですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/55
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056・小酒井義男
○小酒井義男君 それから北海道の宮坂さんにお尋ねしたいのですが、非常に特殊な遠隔の地にありますので林産物或いは地下資源の今後開発に伴つて輸送の運賃コストというものがいろいろ問題があると思うのです。あの青凾航路等が非常にやはり問題になつて来ると思うのですが、この運賃のあれがあるために、非常に、特にこういう点が不利益だというような具体的な御意見がありましたらちよつと承わつておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/56
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057・宮坂壽美雄
○公述人(宮坂壽美雄君) 青凾監理局の収支の内容については詳細に知ることはできないのでありまするが、私どもの知つている範囲内では、巷間言われておる青凾管内で非常な赤字を出しておるというのは嘘なんであります。これは決して青凾は赤字を出しているのじやないのであります。若し仮に赤字であるとするならば、青凾監理局の管轄区域が森というところから凾館間、それからあすこに江差線というのがございます。これを所管しているからであろうと私は考えるのであります。大体私どもの調査しておるところでは二十五年度におきましては貨物の収入が約二十億七千万円、それから旅客の収入が八億八千万円、これだけ収入があります。支出のほうでは貨物が十五億七千万円、旅客が七億七千万円、差引あの青凾航路は七億円の黒字を出しておるのでありまして、これを陸路のほうの、只今申上げました森から函館、江差線、こういつたようなものの欠損に埋め合わせをしておる、こういう結果に相成つておるのでありまして、決してあの間の赤字ではないのであります。この陸路におきましてはおよそ十六億円の赤字を出しておることはこれは事実だそうでございまするが、結局青凾の七億円を補給いたしまして九億ぐらいの赤字だと承わつておるのであります。それから運賃にいたしましても今天日さんの陳述のうちにもありまして非常に高いというのが、けだし私はあの間の運賃が非常に高いのであります。大体トン当り陸路から見ますと三百四、五十円から四百五十円程度高いのでございます。それで私どもは今回の値上げになりまするとこのトン当りがなお増大いたしまして四百五十円から六百円程度の値上りになるのでありまするから、すべての産業に及ぼす影響は実に大きなものだと、かように考えまして道民といたしましては今回の値上に御賛成がいたしかねるわけなんでございます。以上。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/57
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058・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/58
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059・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) それでは速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/59
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060・高木正夫
○高木正夫君 極く簡単にお尋ね申上げたいと思います。大体の空気からいたしまして、根本的に反対なかたは矢田さんと、それから梶原さんでございましたか、社会政策の見地から又家庭生活の見地からこれははつきりいたしておるようであります。それから御賛成は、渡邊さんと田中さん、細野さん、これも線がはつきりしているように思います。あとのかたが賛成のかたと反対のかたがおありのようですが、芳賀さん、高橋さん、七瀬さんは御賛成のようですが、併しこれは條件がついておるようである。特に貨物あたりで特別の処置を講じてもらいたいというような御希望であるようであります。それから反対のほうで私のお尋ね申上げたいのは、吉田さんなり、天日さん、それから宮坂さんですが、これも先ほどの賛成のかたと殆んど同じようなことでありまして、根本がはつきりしないようでありますが、その三人のかたは、いろいろお話になつたような條件が、特別措置なんかが講じられますと、根本的には不賛成じやないというお話ですか、それともどこまでも純理論的に反対だというお考えであるか、そこのところを念のために伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/60
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061・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/61
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062・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) それじや速記を始めて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/62
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063・宮坂壽美雄
○公述人(宮坂壽美雄君) 大体私が陳述申上げました点が全国プールになるならば、今回のいわゆる値上げもこれはまあやむを得ないと、こう存じてはおるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/63
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064・高木正夫
○高木正夫君 つまり航路運賃の問題が主でございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/64
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065・宮坂壽美雄
○公述人(宮坂壽美雄君) これを解決して頂くことができますれば、道といたしましても御賛成申上げるのであります。ただ特殊に、今申上げましたように、あの間だけがひどうございますので、これはどうしても道民のために御高配を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/65
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066・高木正夫
○高木正夫君 吉田さんは如何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/66
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067・吉田好彰
○公述人(吉田好彰君) お答え申上げます。私も国鉄がどうしても赤字補填のためにやつて行けない、そういうときにおきまして或る程度の値上りが来るということにつきましては、これはやむを得ないと思います。但し、その場合において特に木材の事情をお酌み願つて、先ほど申上げました等級の不合理、それから距離別の割引、そういうものを前提としてやつて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/67
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068・高木正夫
○高木正夫君 天日さん、同様でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/68
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069・天日光一
○公述人(天日光一君) 私が申上げましたのも、国鉄の運賃を全然値上げせずにすむとは思つておりません。ただ値上の率を、産業全般の見地なり、輸出増進というような見地からいたしまして、できるだけ低きにおとどめを願うようにいたされたい。そのためには、値上とか補給金とか一つのことだけではなかなか分散できませんから、可能な各科目に亘つて、危険分散といいますか、いたしまして、値上の率は成るべく低きにおとどめ願いたいということに帰着するわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/69
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070・高木正夫
○高木正夫君 有難うございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/70
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071・前田穰
○前田穰君 皆さんの御意見と同僚諸君の質問で大体私は皆さんの御意見は了解いたしたのでございますが、極く簡単なことをついでに一つ二つお伺いしておきたいのですが、先ず高橋さんにお伺いしたいのは、貨物協会でいろいろ多分利用者に質問をされたのだと思いますが、どういう標準で回答者を御選択になりましたかということを一つ伺つておきたいと思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/71
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072・高橋秀雄
○公述人(高橋秀雄君) お答えいたします。貨物協会の会員の大部分に照会いたしまして、そのうちの回答の集りましたのが千二十何件であります。それでそのうちの賛成が幾ら反対が幾ら、賛成が五百三十三票で過半数であつたということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/72
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073・前田穰
○前田穰君 なお回答された会員諸君の商売の種類でございますが、大体各方面に行き渡つておるような形になつておりますか、或いは片寄つておりますか、片寄つておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/73
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074・高橋秀雄
○公述人(高橋秀雄君) 分散しておるようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/74
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075・前田穰
○前田穰君 それからもう一つ、今度天日さんにお伺いしたいのですが、これは質問じやないのですが、最後にあなたが無煙粉炭の割引とそれから輸送増強、もう一つ何か言われたのですが私ちよつと聞きとれなかつたのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/75
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076・天日光一
○公述人(天日光一君) お答え申上げますが、御指摘の通り、付随してお願いしましたことの一つは、無煙粉炭の割引、これはちよつと申上げますが、今三百一キロ以上が一割五分、五百キロ以上が二割というような割引が行われておるのでありますが、これは先刻申上げましたように、都会の家庭燃料の原料になるものでございます。家庭生計費の高騰を防ぐという社会的な意味からいたしまして、やはり煉炭、豆炭の原料になるわけでございまして、割引制度を存続を願いたい。若しこれが外れますと、今まで割引が行われておつたのにそれがなくなり三割上るとなると非常に家計面に大きな影響を与えるというふうに考えております。それからもう一つ輸送力の点を申上げましたのは、こういう意味合なんでありますが、国鉄で輸送力を増強されれば、非常に出荷要請も殖えておるわけでございまして、自然にこれが輸送が殖えれば増収にもなつて行くことでもあります。なお石炭だけの事情をちよつと申上げましたのは、御承知の通り、今年四千五百万トン、来年四千七百五十万トン、更にそれから先五千万トンというような出炭要情が出ておる。どうも石炭の輸送が、專門的にセキとか何とか言つておりますけれども、石炭輸送車が、これが大体足りない勘定が数字的に出るわけであります。石炭がああいう性質のものでありますからして、輸送が停滞いたしますとできたものがただとまつておるというだけでなしに、いわゆる山元が、坑口が詰まりまして生産ができなくなるという特殊の性質を持つておるのであります。
それから一方又小樽でありますとか、若松あたりの積込み設備がもう少し能率なり、能力なりを増大して頂きませんというと、生産の増強にマツチして行かないというふうなことがありますのでかたがたお願いしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/76
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077・山縣勝見
○委員長(山縣勝見君) 他に御質疑等ございませんか……御質疑がないようでありますからこれを以て公聽会を閉会いたします。長時間公述人のかたには有難うございました。
午後一時三十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101213830X00619511027/77
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