1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十六年十一月十六日(金曜日)
午後三時三十七分開会
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出席者は左の通り。
委員長 吉田 法晴君
理事
杉山 昌作君
千葉 信君
委員
加藤 武徳君
木下 源吾君
小野 哲君
紅露 みつ君
政府委員
人事院事務総局
給與局長 瀧本 忠男君
事務局側
常任委員会専門
員 川島 孝彦君
常任委員会専門
員 熊埜御堂定君
参考人
労働省職員組合
給與対策部長 岸野 守平君
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本日の会議に付した事件
○一般職の職員の給與に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214548X00919511116/0
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001・吉田法晴
○委員長(吉田法晴君) それでは委員会を開きます。
参考人の陳述を聞くことにいたします。労働省職員労働組合の給與対策部長岸野守平君に一つ御陳述を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214548X00919511116/1
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002・岸野守平
○参考人(岸野守平君) 労働省労働職員組合の岸野でございます。
我々公務員が非常に低い給與ベースに抑え付けられて今まで生活して来たということは各公述人のかたがたが申されましたので、私としては、では政府は今度の法案を如何なる科学的な算出によつて出したのか、又人事院の勧告のどういうところを参考にして政府案というものを作成したかということにつきまして私は甚だ疑問に思い、且つ政府案というものが非科学的な、又そういう根拠が全然ない、いわゆるこれは千五百円ベース・アップというような問題で片附けられているということは、公務員の実態というものを全然顧みられていないということであります。では一応人事院の勧告の内容を参考にしたと言いますが、その内容を参考にしたという人事院勧告の批判を先ず述べて見たいと思います。
今回人事院が一万一千二百六十三円という勧告を出したのでありますが、この勧告の内容におきまして、非常に非科学的な民間給與又は標準生計費というものを用いているのでありますが、先ず第一にこの結論といたしましては、この勧告は非常に低い生活水準の下に作られているということであります。その第一点といたしまして、食糧費におきましては、いわゆる安本で出されておりまする食糧需給計画に基いて作られたといつておりますが、一般のこうい数字に対してのいろいろな知識がなければ、こういうものは果してどういうところに使われるのかということすら一般の者は知らないと思うのであります。こういうような、いわゆる机の上で以て計算されたものによつて我々の一日の食費が幾らかかるというようなことを作つて、その上に立つて我々の公務員の生活というものはこれこれでいいというようなことが今度の人事院勧告の基礎となつているのであります。具体的に申しますと、第一に成年男子一人一日当りのカロリーというものは、実際に厚生省の国民栄養調査によつて現実に我々国民が一人当りとつているカロリーといいますのが、二千百三十五カロリーでありますから、これを成年男子に直しますと二千五百三十カロリーになります。そのときに人事院においてはこの成人換算率という、いわゆる厚生省の国民栄養調査の結果にのみ用いられるところの換算率をそのまま変動性に富んだ、いわゆる机の上で計算された安本需給計画の千九百三十七カロリーというものに当嵌めて作られたのが、この人事院勧告の基礎資料であります。
第二点におきましては、その食糧費の安本の需給計画に基いて作られたマーケツトバスケツト、いわゆる買物籠と我々は申しておるのでありますが、そのマーケツト・バスケツトそのものが非常におかしいもので、そのカロリーにおいて果して食べて行かれるかどうか。我々が実際に栄養対策審議会というのが厚生省、農林省、それから安本とか、そういうところが集まりまして作られました会議において、日本の国民は成人においては二千五百カロリーは最低限必要であるそいうことを言つておりながら、この計算においてはそれをずつと下廻つたものを出されているということであります。このマーケツト・バスケツトを作成した人が、果してこれでどういうふうにして生活して行かれるかということに対して我々は実際にやつてもらいたいと思うわけです。
次の点におきましては、食糧費以外の被服、光熱、住居、雑費の計算でございますが、これには東京都のCPSを使用して、そのCPSをマルチイプル計算、いわゆる最小自乗法によつて計算しているのでありますが、その最小自乗法を計算するに当つて、どういうものを用いたかと申しますと、並数値を用いているのであります。この並数値というのは一番高いところ、一番そこに集まるところですね、例えば何千円階級が何人いるというような場合に、その一番多くいる階級をとつているということであります。これはなぜそういうものをとつたかといいますと、それをとれば平均よりもずつと安くて済むということが立証されるのであります。又並数値をとつて作つたこのマルテイプル計算の係数でございますが、この係数につきましても甚だ疑問があるので、私人事院総裁に会いまして、この係数を公表してくれと申しましたところ、これは公表しないというようなことでありましたので、私たちの非現業の組合員が参りまして、その前で以て再三そのことを言いましたところ、これは後に本印刷によつて発表するということを言つておりましたが、本印刷がもうすでにできておるにもかかわらず、それがまだ発表されていないということであります。
又前に戻りますが、こういうような人事院勧告が大蔵当局にはどのくらいに評価されるのかということにつきまして、私大蔵当局に尋ねましたところ、大蔵当局におきましては、ただチエツクするのみに使うのだと、人事院勧告というものは参考程度に見るだけであるということを言つております。こういうようにして非常に欺瞞に満ちた計算によつて、如何にしたらば公務員の給與は安く、而も科学的に見せる計算ができて発表し、国民の納得が行き、公務員これこれこうであるということを発表することができるかということで計算されているのが今度の勧告であります。そのうちの、次にはそういうような計算の元となつた統計表の中には非常に大きなミスがあるのでございます。それは何かといいますと、満十五歳から十七歳の公務員のうちで課長のクラスが二人もいるということを公然と統計表に載せて人事院は発表しているのであります。この十七歳といえば、中学校を卒業した青年であります。それがいきなり公務員に採用されて課長クラスになるという者は、恐らく日本の国始まつて以来ないだろらと思うのであります。地方においては課長であります。又中央におきましては係長クラスであります。又次の点におきましては、民間給與の実態調査でありますが、この民間給與の実態調査には、前の公述人のかたが縷々申されましたが、百人以下の人員を扱つているところの事業場の大部分をとつております。これはいわゆる基本給というものが少いオーバー・タイム、それから奨励手当、増産手当というようなもので殆んど賄つておる、それのうちの給與額の七〇%以上を賄つているところの事業場大部分を調査対象にとつていると、そうしてその総額において公務員の給與と比較したのであれば一応肯けるのでありますが、その非常に基本給の少いところの基本給のみを出して、それに公務員を当嵌めて、我々の基本給を出しているというのが今回の民間給與実態調査であります。
第三点、次の点におきましては、給與体系でございますが、この給與体系はいわゆる前回去年の勧告がありました八千五十八円ベースと比べますと、一層職階制の色彩というものが濃くなつているのであります。それはお手許に配つてあります我々の要求という中の一番最後の表を見て頂ければ一番よくわかるのでございますが、非常にそのカーヴというものが、甚だ上と下の差が大きく擴がつている、そうしていて或る一部の上役の人に聞きますというと、これはまだ戦前には戻つていない、戦前にはもつと凄かつたのだというようなことを言つておるわけであります。又年末手当にしましても、民間の事業場におきましては、〇・五カ月とか、一ヶ月というような給與の特別支拂というようなことをしているところは恐らくありません。我々の公務員だけが民間給與より下廻つた生活をしていればいいということは絶対あり得ないと思うのであります。ここに我々が非現業官庁十五万の職員が切実な要求として、ここに掲げております八千七百円は何も我々が戦前の愉楽生活を夢みて作つておるものでもありません。これは現実的に人事院と全く同じ調査の資料を用いて、同じマルチプル計算をして、同じマーケツト・バスケットを作つて実効価格その他をごま化さないでやつた資料によれば、当然八千七百円になるのであります。この調査の価格も昭和二十六年の五月でありますので、当然それから物価も上つておりますし、いろいろな点で以て上昇を見ております。C・P・Iを使いますれば、ますますその差はひどくなつて行くものだと思うのであります。ましてやそれに比べまして、政府の批判をして見ますと、その政府はただ唯一の人事院勧告をそのまま用いたというのはカーヴの差でありまして、上下の差のひどいそういうカーヴそのままを下に降ろして作つたというのが今度の政府案であります。千五百円アツプといいますと、一応一般の国民は、公務員はマタ給與が上つた、千五百円上れば相当上るというようなことで思つておられるのが今の一般的な考え方じやないかと思うのであります。ところが最低におきましては六百円であり、最高におきましては一万三千円という莫大な金額が上るのであります。この大きな開きというものは、なぜ我々のこの声というものは一般にはわからないかと言いますと、こういうような一応科学的なようにして出されれば、普通のこういう数字に明るい者でなかつたらば大低の者はわからないというのが現実ではないかと、私はこう思うのであります。そうしてこれにおいては、最低は六百円増してあつて人事院勧告よりは二百円よりしが少くない、これだけ下を見てあるのだということを言つておるのでありますが、併し最低の一級職という職員は全体の何パーセントにも当らない僅かな人であります。それに比べまして、四級、五級、六級職におきましては、大部分の職員が占めておるのであります。その職員が占めておるところの比率というものも何ら最低の職員と変らない金額で七百五十円か八十円の増額としかなつておらないのであります。それを当局におきましては、今度は税の負担が軽くなつたから相当に金額が実質的には殖えるのだと言いますが、実質的にはむしろ下つておる、なぜならば国鉄の運賃が上つたり、又米麦の価格が引上げられたり、それに伴うところの物価のはね返りによつて諸物価に対する影響というものは莫大であります。この点の資料は私の手許にありますので、何かあとで御質問でもあれば私お答えいたしますが、この物価のはね返りというのは非常に大きなもので、例えば米は三百円上ればそれに伴つてほかの運賃とか、そういうものが非常に上つて来るということを、これを当局は隠しておるのであります。こういう点につきまして、私たちがここに切実な要求として八千七百円という額を出したのでありますが、この八千七百円という額は税込でありますので、現実的には、実質的には手取りとして六千七百円程度の額であります。こういう点におきましても私たちが如何に苦しい生活をしておるか、一般の消費者の支出金額を毎月総理府統計局で発表しておりますが、その数字と比べて頂いても結構であります。如何に我々の数字というものが妥当性があり、又科学的にやつたかということを皆さんに訴えまして、是非今回の本法案に対しましては反対をして頂き、我々の生活を保障されるところの給與体系を確立されて頂きたいと思います。簡単でありますが、これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214548X00919511116/2
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003・吉田法晴
○委員長(吉田法晴君) 御質問ございますか……じやどうも有難うございました。
なお参議院の秘書のかたで公述したいという御希望、申出でがありましたが、それは私で聴取をいたしたいと考えております。御了承を願います。
それでは今日の委員会はこれを以て散会いたします。
午後三時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101214548X00919511116/3
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