1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十七年三月三十一日(月曜日)
午後三時七分開議
出席委員
厚生委員会
委員長 大石 武一君
理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君
理事 亘 四郎君 理事 金子與重郎君
理事 岡 良一君
新井 京太君 高橋 等君
堀川 恭平君 松永 佛骨君
堤 ツルヨ君 苅田アサノ君
青野 武一君
海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別
委員会
委員長 小平 久雄君
理事 池見 茂隆君 理事 高橋 等君
理事 坂口 主税君 理事 受田 新吉君
青柳 一郎君 玉置 信一君
中山 マサ君 松永 佛骨君
丸山 直友君 亘 四郎君
金子與重郎君 堤 ツルヨ君
苅田アサノ君 高田 富之君
中野 四郎君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 吉武 惠市君
出席政府委員
引揚援護庁長官 木村忠二郎君
引揚援護庁次長 田邊 繁雄君
委員外の出席者
厚生委員会専門
員 川井 章知君
厚生委員会専門
員 引地亮太郎君
厚生委員会専門
員 山本 正世君
—————————————
本日の会議に付した事件
戦傷病者戦没者遺族等援護法案(内閣提出第六
六号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/0
-
001・青柳一郎
○青柳委員長代理 都合により厚生委員長が不在でございますので、協議の結果に基き、私が委員長の職を勤めます。
これより厚生委員会、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会を開会いたします。
先例により私が委員長の職を勤めます。
戦傷病者戦没者遺族等援護法案に関する質疑を順次許可いたしたいと存じますが、その前に御了承を得ておきたいことがあります。本案は厚生委員会に付託され、厚生委員会においては正式にこれについて審査を進めて参つたのでありまして、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員の方が一緒に質疑をされるようになりました以上、一応再び法案の要旨だけでも政府の説明を聞いてからとも考えられるのでありますが、聞くところによりますると、特別委員会の方でも本案の要旨の説明をお聞きになつたそうですし、また本案審査のための公聴会においても御参加願いましたし、該小委員会も特別委員会の方と一緒に御協議願つて参りましたので、特別委員会の方方も十分法案については御存じだと思いますので、説明を再び聞く必要はないと存じますが、ただちに質疑に入つて行つてもよろしゆうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/1
-
002・青柳一郎
○青柳委員長代理 御異議ないようでございますので、それでは順次質疑を許可いたします。通告順によりまして中山委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/2
-
003・中山マサ
○中山委員 私はこの前引揚げの方で御質問申し上げた船員の遺族に関する質問でありますが、そのときには、海員の保険によつてこれは処理されるものであるから、それでこれに入れてないのは当然だという御答弁でございました。しかし私が陳情を受けましたところによりますと、国家総動員法によつて、この人たちは使われておつたものであるがゆえに、当然軍属と同じに扱つてもらわなければならないのであるということを、力説しておるようでございます。大阪におきまして、その遺族が会合を持ちまして、軍人軍属は八百万人に上る、であるがゆえに、政党が直面しておるところの総選挙に利用価値がある。しかし海員の遺族は三万人しかないから、選挙に利用価値がないので、こうしてほつておかれるのだというような、非常にひがんだ意見まで持ち出して騒いでおるようでございますが、国家総動員法によつて使われている間に行方不明になり、今日まで帰つて来ないということになりますと、私がこの間質問いたしましたときにいただきました御答弁では、どうも私も満足しかねるのでございます。これに対してどういうお考えを持つていらつしやるか、聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/3
-
004・木村忠二郎
○木村(忠)政府委員 この前お答えいたしましたのは、当然そうすべきでないということでお答えいたしたのではないのでありまして、船員の遺族でございましても、同様に遺族に対しまする援護といたしまして、特別なる援護をする必要があるということは考えておるのでございますが、何を申しましても、予算のわくに制約されておりますので、どこでその線を引くかということについて、一応そこで線を引くようになつたのであるという御説明を申したつもりであつたのであります。当然それだからほつておいてもさしつかえないのだというつもりは、全然持つておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/4
-
005・中山マサ
○中山委員 ほつておいてはいけないのだとおつしやるのでございましたならば、もう少し人情味のある御処置が願いたいと私思うのであります。自分の政府に向つて言うのもおかしゆうございますけれども、せめてまた補正予算でもひとつ組んでいただきたい。こういう気の毒な人たちをほつておくということは、私は民生の安定に非常に害があると思います。こういう非常に危険な時代に、政府によつて一方的に援護され、自分らはのけられているのだというような感じを持たせることは、政治としては、まことによくない政治だと考えるのでございます。これに対して、今後いつ、いかなる御処置がいただけるか伺いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/5
-
006・木村忠二郎
○木村(忠)政府委員 今後いつ、いかなるときに、いかにするかと申しますことは、われわれ事務当局からお答えいたしますことはどうかと思うのでございますが、われわれといたしましては、今後国家財政が許すように相なりましたならば、その機会には全面的にこういう問題は均衡がとれるように考えなければならぬものであるというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/6
-
007・中山マサ
○中山委員 それでは、私は、厚生大臣がお見えになりましたら、いついかなる処置ということは伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/7
-
008・青柳一郎
○青柳委員長代理 承知いたしました。
次に玉置委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/8
-
009・玉置信一
○玉置(信)委員 ただいま中山委員から御質問のあつた点に関連してお伺いしようと思うのであります。援護庁長官の御答弁は、船員に対しても、基本的に援護すべきであるという御発言のようでありますから、きわめて内容が明確になつたので、この点は省略いたしますが、もう一度くどいようでありますけれども、船員に対しましても、やはり総動員法と申しますか、船員動員令に基いて徴用されたこれらの犠牲者に対しては、軍人軍属同様に援護しなせればならないという基本的な考えを持つておられることは、間違いありませんか、重ねてもう一度お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/9
-
010・木村忠二郎
○木村(忠)政府委員 国家の権力に基きまして、徴用その他の措置がとられまして、そういうことによりまして戦没いたしました人々に対しまして、国家としての援護の措置をとらなければならぬということは、当然であろうと思います。これにつきましては、今後の財政の許します限りにおきまして、均衡のとれた措置をとる必要があるというふうに考えております。ただ、今日の国家財政において許されました範囲におきましては、現在法案で考えておる程度にいたすよりしかたがないというふうに現在はなつておりますが、将来のこととしては、十分に考慮しなければならぬ問題だというふうに思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/10
-
011・青柳一郎
○青柳委員長代理 大臣が見えましたので、中山委員に発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/11
-
012・中山マサ
○中山委員 前の質問を、大臣に対して繰返させていただきます。国家総動員法によりまして、軍属と同じように働かされておりました輸送船団でございましようか、それの船員たちの遺族が、今、自分たちは六年の間苦しんで来たが、今度いよいよ遺族に対する援護の手が差延べられるというところで、ほつとしたとたんに、自分たちはオミツトされておつたということがわかつて、非常に暗い気持になつて、われわれもまた団結しなければならないというので、大阪におきましては会合を持ち、全国的に呼びかけて運動を展開して、そして自分たちは三万人しか数がないのだ、あとの軍人軍属は八百万人に及ぶから、政党は来るべき総選挙に対する利用価値の関係上、八百万に対しては手を尽し、われわれの三万はこうしてオミツトしたのだというようなひがみを起しておるのでございます。このことに対しまして、私はいわゆる海員の保険によつてこの人たちの問題は処理されるのだということを、いつか聞いたことがございましたが、総動員法で連れ出された人でございますならば、その名称は何であろうとも、やはり軍属と同じ立場に置かされておるのでございます。その数からいたしましても、わずかに三万人、これに対する手当も、そうたくさんの金高にはなるまいと私は判断いたすのでございますが、どういうわけでこの人たちがオミツトされたか。国家財政がそこまで来ていないからという援護庁の方の御答弁でございましたが、ほかの人と一緒に入れていただきまして、たといいただくお金の高は少くなつても、この人たちを同様にお取扱いくださいましたならば、私はみんな納得するのじやなかろうかと思いますが、なぜにこの人たちをオミツトしたか。そして今財政が許さないからとおつしやるならば、いついかなる処置によつて、こういう片手落ちの政治が是正されるのかということを、大臣に聞かせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/12
-
013・吉武恵市
○吉武国務大臣 お尋ねの戦時中に動員されました船員につきましては、当時南方その他に非常な危険な状態で動員されて行きまして、幾多の犠牲者を出し、その実情におきましては、まつたく軍と同じような状況であるということは、私も十分了承しておるわけであります。ただ御承知のように、総動員法で徴用を受けました者には、船員ばかりでなしに、工場に動員されて行つた徴用工もございます。これらにつきましては、総動員法で、船員については船舶運営会が主体になりまして、船舶運営会から給与が払われ、徴用工については管理工場から給与が払われておるわけであります。当時なくなられました方は、あとでみんな軍属にはされたのでありますが、しかしその犠牲者に対する待遇としては、船舶運営会所属の船員については、船舶運営会から一時金が出、そうして厚生年金から年金というものが現在も出ているわけであります。徴用工についても、当時一時金というものが出て、同時に厚生年金から年金も出ているわけであります。その額は必ずしも多くございませんから、私は決して十分だとは思わない。ところが、御承知のように軍人及び軍が直接使つておつた軍属については、軍人恩給というものがあつて、それで支給されるはずだつたのです。それから船員及び徴用工については、もしこういう敗戦の状態でないとするならば、それは総動員法に基く処遇として、それぞれ一時金なり年金という方法がとられているわけなのです。ところが、軍人の方は、それにちようどマツチする恩給法というものがあつて、軍人恩給の遺族扶助料等において行われる、それが、気の毒にも七年間ストツプを食つて、支払いがない。それをわれわれとしてはほつておくわけに行かない。少くとも独立するならば、いの一番にそれをやらなければならない。しかし、今ただちに恩給を復活してやるといつても、いろいろな軍人の恩給を、それじやどうするのだ、遺族の恩給だけ復活していいかという問題になりますから、この問題はすぐには解決がつかない。審議会等において十分御検討を願う。従つて、ほつておけない軍人の遺族については、援護ということによつて、まあ不十分な予算ではありますけれども、これでやつて行こう、こういうことなのです。ですから、決して船員の方は全然考えないというわけではなくて、一応そういうことで、不満足ではあるけれども建前ができているものだから、予算が十分にありますれば、それでは薄いから、さらにそのものにも同じようにと言つても、これは決して悪いことじやない、むしろやるべきです。実際の実情は、軍人の方が、軍艦でなくなられたのと船舶でなくなられたのと、どつちかといえば、それは区別がつかない状態なんですけれども、軍人の方は軍人恩給で行くべきものが、行かないでほつてあるから、この際取上げる。片一方の方は一時金なり厚生年金なりが出ているものですから、一応まあ予算も不十分なときですし、これをはずす、こういう実情なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/13
-
014・玉置信一
○玉置(信)委員 大臣にお伺いいたしますが、ただいま中山委員から御質問になりまして大体了承いたしましたが、ただ大臣の非常にあたたかみのある御答弁でありましたので、さらにそれを再確認したいので、一言お伺いします。船員に対しても、今後このままにしておくわけではない、審議会等ができたあかつきにおいて、審議会における審議の結果によつて考慮をするのだということには、間違いございませんでしようかどうか、その点をちよつと伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/14
-
015・吉武恵市
○吉武国務大臣 審議会については、今、別にどういう構想で審議会に案をかけるというあれはございませんが、いろいろな面がありますから議会において十分取上げる。それで審議会の言う通りに政府ができるかどうか、これも予算の関係がありますから、これは私何とも申せませんけれども、審議会で、その当時の船舶運営会の船員も、軍人の遺族扶助料のようなものと一緒にやるべきだということになれば、それはそうして一向さしつかえないのじやないか。しかし、従来の軍人恩給というものの中には、実はそれは入つていないのですから、今度の審議会がそれを取入れるかどうかということについては、私はここでは何とも言えないと思います。そのとき入れることについて、今からどうということは言えませんけれども、気の毒な実情については、私は十分了承しております。現在船舶の船員保険それから厚生年金で出ておりますけれども—御承知のように年金は若干上りましたが、貨幣価値がだんだん違つております。もし貨幣価値が違つていなければ、皆さんが御心配になるほどのことはないと私は思います。全然手当がなかつたわけじやないので、現在も制度としてはあるのです。ありますけれども、それがつまり額が少いために、私は気の毒じやないかと思つておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/15
-
016・堤ツルヨ
○堤委員 ただいまの大臣のお答えを拝聴いたしましたが、この間海員組合の代表が公述人として見えまして、公述があつたのでございます。この人たちの船員保険、それから年金の説明を聞いておりますと、御存じのように船員保険や年金は、われわれが金を醵出して当然もらうべき建前になつておるものだ。しかも人数なども厳密に検討して行くと、五万五千人ぐらいあるのに、そのうち三万ぐらいしか実際この手当をもらつておる者はないのだ、厚生年金と保険料を勘定しても、ということを言つておるわけなんです。そこで、ただいまの大臣の御認識では、一人漏れなく海員の犠牲者が手当や保険金をもらつて、遺族、軍人軍属に比べれば、一律に一応のものをもらつておるのだというような解釈をしておられるようでございますけれども、そこは実情が大部違つておるようでございます。昭和十七年、十八年、十九年、二十年と、ことに終戦前のどさくさまぎれに、個々の非常に調査不可能な、実際に手を施し得なかつた期間においては、相当数の犠牲者がそのままになつておるということを申しておりますから、そこを認識を持つていただきたいと思います。
それからもう一つは、ただいまちよつとお触れになりましたが、学徒、義勇隊、徴用工の問題であります。大臣はこれと軍属との関連をどういうふうにお考えになつておりますか、御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/16
-
017・吉武恵市
○吉武国務大臣 今の船員保険については、もし終戦のどさくさにもらつていない者があれば、その制度において当然支給すべきだと思います。しかし、私どもの方では、そういうものがあるとは思つておりません。おりませんが、もしそれがあるならば—軍人の方は、恩給が停止しておりましたから、支給はできませんけれども、片一方の方は停止になつていないのでございますから、もしそういう方があれば、当然もらうべきで、厚生年金といえども、船員保険といえども、払わないということはあり得ないわけであります。学徒につきましては—学徒についても調べましたが、そういう犠牲者には当時一時金で出ております。しかしその額が不十分だと言われれば私は決して十分だとは思つておりませんけれども、当時学徒で犠牲者になられた方には出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/17
-
018・堤ツルヨ
○堤委員 学徒の問題で、非常に御自信のあるようなお言葉でございますが、学徒の代表が公述の際に申し述べたところによりますと、一体学徒で犠牲になつた者がどれだけあるかということさえも、政府においてははつきりしていないのではないか。従つて、この数をまず調査するくらいな誠意はないかということを学生の代表が聞きましたら、そんなことをやつてみても大して効果はないし、金もないと言つて、文部大臣も厚生省の方においても、非常にすげない返事をされたというような公述を私は聞いておるのです。速記にもたしか残つておると思います。そういうことをおつしやつておる大臣や政府が、学徒に対しては、完全にやるべきものはやれたというようなことをおつしやるのは、少しつじつまが合わないのじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/18
-
019・吉武恵市
○吉武国務大臣 当時は、私の方で学徒について別にやつておるということではなしに、その部隊々々、地方々々で、学徒がいろいろな疎開の手伝いに行くとか、あるいは工場の手伝いに行くとかいつて、そこで処理しているものですから、国が命令を出して国の方で直接一々やつておつたものについては、それは記録を調べればわかると思いますけれども、その現場々々で学校と部隊とでやつているものですから、国に資料がないのです。それは調べられれば調べるべきでありましよう。決して私調べることを怠つたことはないと思うのですけれども、それは調べましても、なかなかむずかしい思うのです。昔の学校がそのまま残つておれば、学校に記録があるものとは思うのです。給与というものがどうなつておるかということについては、今度のこの援護をします上においては調べて行きます。しかして学徒は、そのときどきに一時金で犠牲者に払つておる、こういうことでありますから、私は一応学徒につきましてははずしておるわけであります。当時の爆撃その他でなくなられました学徒については、私どもの方の調べたところによりますと、大学の学生は当時の金で三千五百円、高等学校、專門学校は三千円、それから中等学校の生徒は二千五百円、国民学校の児童には二千円、こういうのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/19
-
020・苅田アサノ
○苅田委員 私は海員のことだけ一つ、ここでもう少し大臣にはつきりした御答弁を願いたいと思うのです。これはもうこの前の質問のときにも、相当申しましたのですけれども、大臣は、海員の方には船員保険で年金が渡つている、これはもらつていることだから、いまさら出すにも及ばないのだ、こういうふうな御答弁をしておいでになるのですけれども、それでは、大臣がこの提案理由にもおつしやり、御答弁のときにもちよいちよいおつしやつている、額は少なくとも、生活を援護するということはできないけれども、とにかく国家として償いをする意味で出しているんだということに対しまして、まつたくこれは関連のない逆な御答弁だと思うのです。やはり実質上は同じような死に方をしているんだということをお認めになる以上、保険の当然の掛金に対する報酬とは別に、やはりこの際戦争の犠牲者に対する一律な国としての償い、そういうふうなものは、いささかでもあるのが当然じやないかと思うのですけれども、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/20
-
021・吉武恵市
○吉武国務大臣 私が申し上げましたように、国家に対する犠牲者であるので、船員保険とは別に国家がやるべきだというお説ですけれども、実は先ほど申しましたように、当時の建前からいたしましても、軍人の犠牲者には軍人恩給で遺族扶助料を出しておる。当時の制度において船舶運営会の船員、あるいは徴用工が戦争で犠牲になつたときには、船員保険及び厚生年金でやつて行くという建前になつておるわけであります。その当時から、船員保険は船員保険でやる、そのほかにもまた国家が軍人恩給みたいなものを出す制度があつたということなら、私はそれは二重にやるべきだと思います。決して船員保険があるから国家が金を出していかぬということはございません。それは一般から言うならば、戦災のときに、ずいぶん爆撃を受けて、普通の方だつて戦争犠牲者はたくさんおられます。これだつて戦争犠牲者です。本人たちにとつてみれば、気の毒です。国家が何とかすべきじやないかといえば、それはそういう意見も立ちます。しかしそこまで行くということはたいへんなことですから、今まで国としてやるべき制度があつて、軍人のように軍人恩給で遺族扶助料を出すべき制度もありながら、それが停止されているじやないか、これはいかにも国家としてほつておけないじやないかということで、この援護法が出ておるわけであります。ですから、船員保険があつたつて、国家が別にやるべきじやないかという議論は、私は決してそうあるべきじやないとは申しませんけれども、戦争中の建前といたしましては、その当時の犠牲者になりましたときには—今日こういう状態になつたからですが、その当時の状態でありましても、その船員の犠牲者は船舶運営会の方から出ておる。しかも、それは本人の掛金というよりも、国が船員保険に金を入れて、そしてそこから金を出しておる。ですから、あなた方から考えると、何か船員保険というのは、社会保険であつて、それは本人が掛金を出しておるから、それは当然もらうべきものだ、だから別にまた国からも軍人恩給みたようなものをもらえるんだというようにお考えになつておると、それはちよつと建前が違います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/21
-
022・苅田アサノ
○苅田委員 一歩譲りまして、大臣が言われたように、これはその当時の建前では船員保険でやるといつたように、それが立法された当時はそうであつたかもしれないと思うのです。ところが、実質上はどうかと申しますと、戦いの状況によりまして、非戦闘員として船員が物を運んでおつたんじやなくて、あなたも御存じのように、船員は戦闘員と区別のないような状態でガダルカナルとか、フイリピンとかで船から上げられて、しかも上陸してから一緒に戦つておる。そうして死んだ上は、軍属になつて靖国神社にまつられて、金鵄勲章をもらつて、感状をもらつてというような状態に、戦いの末におきましては大多数の船員がなつておるのです。それからまた、公聴会における公述の際にも申しておられましたように、乗船を拒否することができないような状態で、それを拒否すると逃亡罪と同じような状態でもつて罰せられるような、そういう状態でもつて徴用されたという実情は、これはおそらく日本が今日このような状態であるから、あなたはあのときに船員保険でやるという建前だつたからとおつしやいますけれども、こういう状態でなくて、かりにもつと日本に余裕があつて、そうして敗戦というような状態でなくてこの問題を考えたときには、国家としてこういう人たちに対しては、お前は船員だつたから船員保険でいいじやないかということは、必ずおつしやらなかつたと思うのです。実情からいえば、そうは言えないと思うのです。だから、そういう点に対しまして、私は大臣がそういう当時の船員保険の建前一本でおつしやるということは、非常に実情を無視した言い方だということを、はつきり言わなければならないと思いますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/22
-
023・吉武恵市
○吉武国務大臣 その点は、先ほども申しましたように、戦争中に、船員が海軍の軍艦に乗り組まれて、軍人と同じような実情であつたことは、私了承しております。しかし国家の権力で行くということの制度は、船員ばかりじやございませんで、先ほど申しました徴用工にしても、学徒にしても同じなんです。もう爆撃を受けるという状態において、工場に徴用で行かれるということになれば、それは空襲下においても飛行機の製作をしなければならぬ。その点は、船員ばかりじやなくて、徴用工についても同様なんです。ですから、私はそれぞれの制度があるが、それの上にプラスして国がまた何かするということは、決していかぬとは言いません。けれども、建前としては、軍人は軍人恩給の建前があつたが、それが全然ない。片方は、船員保険なり、徴用工については厚生年金でもつて当時やるという制度が確立されていたわけです。片方ではそういう制度が残つて現在行われいおる。ただそれが不十分だ。片方は、制度がありながら全然なくなつたというところに、私どもはまずなくなつたところを取上ぐべきだという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/23
-
024・青柳一郎
○青柳委員長代理 関連ですから、簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/24
-
025・苅田アサノ
○苅田委員 これ以上申しましても、結局これは意見の相違ということであつて、政府としては、たかだか六千五百円ぐらいの年金を出しているから、これでもういいんだというお考えしかないということであれば、今まで私もこの問題ではしばしば大臣の御意見も伺つておるのですが、同様の御答弁しかいただけないので、これ以上は意見の相違ということにしか相なりませんから、本日これ以上質問をすることは、この問題につきましてはやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/25
-
026・青柳一郎
○青柳委員長代理 受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/26
-
027・受田新吉
○受田委員 先ほどから、いろいろ軍属の範囲等につきましての質疑があつたのでありますが、大臣の御答弁の中に、純粋な軍人としての恩給法の規定に該当する者のみを当面の対象とするというお言葉であります。ところが、動員学徒に例をとりましても、一時金を、その当時の額で、大学で三千五百円出しておる、従つてこれはそれでよろしいのだというしごくあつさりした御判断でありますが、動員学徒の遺族は、しからばどうなるのであるか。現に国家の学徒動員令によつて強制的に動員せられ、大切な一人むすこを失い、路頭に迷う親たちはほつておいてよいのだ、一時金を当時出しておるので、もうよいのだという御判定は、その御遺族の遺族年金にはいかなる関係を持つのであるか、お答えを願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/27
-
028・吉武恵市
○吉武国務大臣 この一時金というのは、学徒といつても、学徒の一時金は遺族に対する一時金であります。それが今日では貨幣価値がかわつて来て、私は御遺族はお気の毒だと思います。決してお気の毒ではないとは申しません。この一時金は、学徒本人にというのではなく、その御遺族に対してお気の毒だということで出た金です。この金が現在では当時の金と違つて、遺族が非常に困つておるという実情は、私はこれは十分考えなければならぬと思います。しかしこの一時金は、遺族に対するものでないというわけではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/28
-
029・受田新吉
○受田委員 今度のこの法律案によりますれば、遺族に対する一時金であるところの交付公債と遺族年金と二様あるわけです。私はあなたのお説を取入れて、遺族一時金の記名公債にこれを該当するものとして見ると、私はその程度以上の当時の一時金と見ることはできない。従つてそれから後非常に窮迫している遺族の日々の生活を維持するところの国家の援護がいるのではないか。この点について、当時一時金を出しているからそれでいいのだという御判定に対しては、軍人であつても、日華事変当時には、今度遺族年金をもらう人にいたしましても、公債はもらわないが年金はもらうという人もおるし、また太平洋戦争勃発以後の戦死者には、絶対に一時金を出していなかつたかどうか、こういうことも考え合せてみて、動員された学徒が一人むすこの場合、それが戦死して路頭に迷う遺族をそのまま放任するということは、これは非常に重大な問題だと思う。この点は、まつたく戦死者の遺族と同等に取扱うべきではないか、かように考えるのでありますが、いかがでございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/29
-
030・吉武恵市
○吉武国務大臣 学徒の方も、その遺族の方でお困りになつていることは、私はあるだろうと思います。それはお気の毒であつて、国の財政が許すならば、それはほつておくべきではない、こう思いますが、先ほど来申しましたように、何といつても、国が何とかしたいというものは、実に範囲がたくさんであります。そのうちに学徒にしても一応一時金が出、それから今の何といいますか、徴用工や船員については、金は少いけれども別の方途がある。軍人については方途があつて、軍人恩給で行くようになつていた、それがたまたま占領下においてとめられて行かない。それ何としてもわれわれとしてはほつておくわけには行かないというので、今度の援護というものが出て来たわけであります。ですから、軍人の問題はそうだろうけれども、新しい問題としてほかの問題も考えたらということは、これは別問題としてあり得ることであります。しかし、今の財政の状態では、恩給を支給すべきものが支給されないで、しかもその軍人軍属に対してさえ実は不十分、これで決して十分だとは言い得ない、それほど財政の限界があるわけであります。従つて今回の処置としてはやむを得ないのじやないか、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/30
-
031・受田新吉
○受田委員 太平洋戦争、すなわち昭和十八年十二月八日以後の戦死者に対しては、一時金を一切出しておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/31
-
032・吉武恵市
○吉武国務大臣 それは、初期には出ておつたようでありますが、終りになりましては、出なかつたようであります。そうすると、だれに出た、だれに出ないということは、あの太平洋戦争については、なかなかむずかしいのであります。そこで太平洋戦争の初期に一部出たものはあるだろうけれども、まあ少くとも太平洋戦争から支給したらどうだろうか、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/32
-
033・受田新吉
○受田委員 まことにずさんな政府の計画でありまして、太平洋戦争の始まつた当時には出してある、出してあるが、出したのも出さぬのもあるから、まあここで区切りをつけようというような漠然としたやり方であるならば、これは当然、動員学徒がちよつぴりの一時金をもらつた分は、まあそれで金を出してあるから、それは葬つてもいいのだという筋は成り立たないと思います。そういうところに、政府の計画がまことにずさんであつて、一線を画したのがどこに根拠があつたか明瞭でない。いやしくも出したものに対しては支給しないという原則をはつきりとるならば、筋が通ると思う。太平洋戦争において一時金をもらつた者は支給しないという態度をとるならばいいが、支給してもらつた者も、支給してもらわない者も一緒にしてやつているのだ。しからば、動員学徒も同様な処置をすべきものではないですか。この点実に漠然としておるのでありますが、一時金を支給した者には、当時支給したから出さないのであるというならば、太平洋戦争当初一時金を出した者もそれから除外するという筋も通るのである。私は、そういうことは絶対にしたくないけれども、理論的に言うならば、出した者には支給しないという大臣の御答弁のごときは、出した動員学徒には支給しないのだという以上は、最初に出した者にも支給しないという筋も通るではありませんか、これを御答弁願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/33
-
034・吉武恵市
○吉武国務大臣 今度の一時金が、太平洋戦争中の一時金そのものであるならば、お話の通りであります。ところが、それは、最初に申し上げましたように、この一時金というのは、つまり援護資金として出すべき金を一時金と年金とにわけて、最初の計画から言いますれば、父母、祖父母さんには一時金で済ませて、未亡人と遺児の方には気の毒であるから年金で行こう—各方面のいろいろな御意見もありましたので、年金と一時金が二重に軍なつて出るわけであります。ですから、未亡人は年金もいただけると同時に一時金もいただけるのでございます。だから、あなたがおつしやるように、これは学徒に対する一時金と同じような意味での一時金—太平洋戦争にも一時金があつたのですが、そのものであるというならば、お話のようなことになるだろうと思います。しかし、そういう意味ではなくて、援護全体として年金と一時金が出ておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/34
-
035・受田新吉
○受田委員 動員学徒に対して交付された一時金というものも、遺族に対する一時金というものも、私は太平洋戦争中は同じ趣旨のものではなかつたかと思うのでありますが、それには区別がありましたか。この点をお伺いしたいのであります。
それと、まつたくもう戦死者の遺族と同等の立場であるべき動員学徒—これは一例を動員学徒にとるのでありますが、動員学徒が除外されているということは、きわめてわずかな数字だと今言われておるし、きわめてわずかな数字のものに振り当てるところの援護資金というものは、きわめてわずかなんで、予算の差繰りは幾らでもつくのです。今そういう予算の差繰りがつきかねるという御言葉があつたのですが、きわめてわずかな動員学徒の数は何ぼあるか、それに対して援護資金を幾ら出すべきかという数字も用意されておると思うのでありますが、その数字も御答弁の中に入れてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/35
-
036・田邊繁雄
○田邊(繁)政府委員 お答え申し上げます。学徒動員で、工場等で空襲によつて死亡した者の数でございますが、文部省で御調査いただきましたところによりますと、学徒勤労援護会から当時の弔慰金の支給のありました数が一万余となつております。正確に申しますと、一万九百六十六名という数字が出ておりますが、実際にはもつと多かつたのではないかというふうにも考えられますので、その点を文部省の方にも調査をお願いしたのでございますが、その正確な調査が困難でありまして、まだその数はまとまつておりません。お手元に差上げました資料ではその倍を見ておりまして、約二万という数字にして差上げてございますが、これは推計でございます。一万九百六十六人につきましては、先ほどお話のありました弔慰金が現実に支給されておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/36
-
037・受田新吉
○受田委員 政府は審議会に諮つて、この問題の解決をゆつくりやろうという御意思でありますが、問題はもう差迫つた問題であつて、遺族なども、こうして国会で長々と審議するよりは、すみやかに審議を終了して早く支給してもらいたいのだ。いわんや、交付公債にいたしましても、莫大な数量を、いかに役人が一生懸命になつてこれを書いたつて、十日や二十日ではできそうもない。従つて、それが末端に行くには非常に手間どるというようになつて、実際の支給が遅れるという現実もあるのであります。そういうときに、わずかな数字にしかすぎないところの、たとえば動員学徒のごときものを除外して、いずれ審議会であわせて考えようというゆつくりしたことを考えないで、もう当然この中にあわせて一緒に入れておいて、これは暫定措置で、来年はもつと強くやりたいという気もあるのだから、暫定措置なら暫定措置らしくさしあたり困つた人たちに、予算の差繰りは幾らでもやつて、絶対予算は追加もしない、補正もしないというようなけちなことを言わないで、少し数字がはみ出たぐらいのことは何とかして早急に補正するというくらいな誠意を示してもらつて、ごくわずかな予算であるなら、その予算を何とか細工してでも、できればさしあたり暫定措置としてのこの援護法案の中に入れようじやないかというあたたかい心を、なぜ持つていただけないのでありましようか。ゆうゆうと審議会にかけて決定するなどということをしておつたのでは、もはや飢えに泣いている遺族等を救うのには、あまりにも事うとき感があるのであります。願わくは、この点について何もかも審議会へ持ち込もうとする政府の逃避的態度を改めて、熱心に、この法案の修正をやつてでも、予算の少しの補正であるならば、すぐ補正をやるくらいの誠意をもつて、遺族の諸君のために、せめて戦争の犠牲となつたいたいたしい人々の範囲をできるだけ多く拡げて行こうじやないか。今、大臣は、空襲でやられた人もおるのだから、そういうふうになつたら際限がないというお話があつたのですが、空襲でやられた人々も、当然これに含まなければならぬと思うのでありますが、動員学徒とか徴用工とかいうものは、本人の意思でなくて、国家の意思によつて、法律や命令によつて動かしたのであります。そういう点においては、政府は一括した責任があると思うのであります。この点について、今さつきから、一時金が出たという言葉で、学徒動員をあつさり片づけようとされた態度に対しましては、私はこれは非常に問題があると思うのであります。一時金は、先ほど言うた通り、太平洋戦争の初期の戦死者にも出しているのだ、それと性質は同じものです。従つて一時金をもらつた同じ立場の遺族は、一時金では生活はその場しのぎであつて、それから後現在困つている生活を援護するためには、やはり年金をずつと続けてやらなければならぬのであります。その動員学徒が審議会にかけられて、ゆうゆうと来年、再来年ということになつたら、非常な差別待遇です。この点ももつと幅を広くしてそうして大いに慈愛深き政府の態度をお示しになる御用意はないでしようか。もうこれ以上はそういう誠意を示されないか、この線以上はぎりぎり一歩も出ないか、冷たい鬼の気持をもつて、これで区切りをつけるのだというお気持で、一切のわれわれの要望に対してお答えなさろうとせられないのかどうかのお話を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/37
-
038・吉武恵市
○吉武国務大臣 政府といたしましては、十分慎重に審議をいたしました結果、目下のところはやむを得ないという考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/38
-
039・受田新吉
○受田委員 政府の意図は、慎重審議したようでありますが、先ほど来お尋ねするごとく、動員学徒の数字もはつきりしないとか、そうしてそれが太平洋戦争の初期に支給された一時金ということに対して、どれぐらいあるかわからないとかいうが、そうした数字がわからないことはないと思う。太平洋戦争の初期には支給したようであるがというような、仮定を大臣がするということは、これは非常にいけないことであつて、太平洋戦争の初期には支給しているならいる、おらぬならおらぬという、はつきりした態度が大臣になければならぬと思う。それが、したようであるがというような、漠然とした、まことに用意不周到な答弁では、私は満足できません。この点について太平洋戦争の初期にどれだけの支給がしてあるのか、支給した人員が何名あるかぐらいのはつきりしたものを、厚生大臣として御答弁いただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/39
-
040・吉武恵市
○吉武国務大臣 一応資料としては、わかつている分はお手元に差上げてあるそうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/40
-
041・受田新吉
○受田委員 それともう一つ関連して、この援護法案は、政府は今のように非常に確固たる信念をもつて、一歩も譲歩まかりならぬという一線を画して提出されております。ところが、これと同じ條件にあるところの未復員者給与法によるところの留守家族援護は、まつたくこれと同じ性質でありますが、これを同じ性質なりと御説明をいただく筋があればお聞きしたいのであります。この未復員者給与法によるところの、たとえば本人の俸給の問題のごときであつても、第一線でまだ帰つて来ない人たちを非常に厳正に調べて、それを明らかにしていない。それからもう一つは、遺族問題の遺族年金を出す順位などについても、未復員者給与法の方においては、その長男、つまり相続をすべき立場にあつた人のものでなければ支給しないような形になつておるのであります。こういうような問題を、この戦傷病者、戦没者の遺族等の援護法案と同等の待遇がされるように、戦争犠牲者である未復員者は、漏れなくこの未復員者給与法の該当として含むように、政府はあわせて用意しておるかどうか、この点もお尋ねしたいと思いまするし、また、いま一つ、遺族の支給の扶養家族の範囲も、これとまつたく同様にしようとしておられるかどうか、その点お尋ねしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/41
-
042・木村忠二郎
○木村(忠)政府委員 御承知のように、未復員者給与法の方は、未復員者に対しまする給与という形をとつております。従いまして、未復員者給与法はその金額がきわめて少うございますけれども、これは未復員者という一つの身分に対しまするところの給与という形をとつておるのでございます。従いまして、今回の援護とは、その性質を異にしておるのでございますから、そういうことからこの両方の歩調と申しまするか、足並が一つになつていないというのは、やむを得ないことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/42
-
043・受田新吉
○受田委員 予算案の説明の中には、未復員者給与法による給与の部分は援護費の中から差引いて—未復員者給与法でこれだけ支給しているから、それだけ差引いて予算を出すということを書いてある。そうすると、これは別別というわけに行かない、予算と関連することになるのでありますが、その点別個の法律であるからというように、予算の出所がかわつた法律に基いているという、こういうことは一つの言い訳であつて、まつたく同じ関係の予算に立たせようとして、政府としては考えて、本年二十七年度の予算は組んでおられる。この点をひとつ御説明いただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/43
-
044・田邊繁雄
○田邊(繁)政府委員 お答え申し上げます。当時予算を組みましたときは、この説明にも書いてありますように、留守家族援護というふうな建前で、こういう金を出したらという構想もあつたのであります。しかし、その後いろいろ研究いたしますと、今日未復員者給与法ないし特別未帰還者給与法を、この際留守家族援護法というふうに切りかえますことが、どうも留守家族援護上さしておもしろくない、留守家族援護の充実強化にならない、むしろかえつて遺族の援護が低くなつて、留守家族の方も足をひつぱられて安くなる、不利益になる面も考えられますので、この際は未復員者給与法、特別未帰還者給与法のものは現状のまま残しておいた方が得策ではないかと考えまして、そのまま現状通り残すことにいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/44
-
045・受田新吉
○受田委員 その辺の事情は一応了承いたしますが、別にその留守家族援護法をすぐやるということでなくても、未復員者給与法の規定をあわせて改正する用意はないか。つまり扶養家族の問題なども、これによると、次男、三男、四男であろうと、すべてこれがこの方では援護を受けるのであります。現在においては、それは六十才以上であつても、長男がおれば—次男、三男であれば、本人の給与しかくれていない。こういう差別をなくする用意はないかというのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/45
-
046・田邊繁雄
○田邊(繁)政府委員 最近のこういう立法におきましては、死亡当時主として本人の収入によつて生計を維持したということで遺族を押えるのが、普通でございます。年金によつて長く遺族を援護するという建前におきましては、社会保険におきましては、死んだ時を押えまして、その時の生計依存関係によつて遺族を押えるというのが普通でございます。未復員者給与法におきましては、それとまつたく偶然一緒になつておるわけでありますが、主として本人の収入によつて生計を維持したであろうと認められる者に対しまして、前渡しをやつておるわけであります。これは長男、次男というものに必ずしも拘泥いたしておりません。その家庭の実情に応じまして、本人がもし帰つて来たならば、本人の収入によつて生計を維持したであろうという者に対しまして、俸給の前渡しをいたしておるわけであります。今度の援護法におきましては、いろいろな関係から、ことに恩給法との関係、及び終戦後死んでからずいぶん日にちがたつておる関係から考慮いたしまして、主としてという制限をとつているわけであります。この点は、今日これを実施するということは、恩給法との関係を考えますと、これはやむを得ないことじやないかと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/46
-
047・受田新吉
○受田委員 未復員者給与法によつて、帰らざる留守家族というものは、戦死者の遺族とまつたく同じ犠牲になつているのです。従つて、主として本人の活動力によつて生計を営んでおつたところの親たちというものであろうとなかろうと、とにかく子供が帰らないということは、もう戦死した人と同じ大きな負担と犠牲を払い、精神的な苦痛をなめ、かつ経済的な圧迫を感じているのであつて、いつ帰るかわけもわからぬ子供やら夫を持つて、特に六十を越した両親が、かわいい二番目のむすこが帰つて来ないで、いつ棺おけへ足を入れるかわからぬ両親が、何らその帰らざる子供のための給与を受けておらぬということは、実に残酷ではありませんか。従つて、やはり戦死者の遺族と同じ線によつて、六十才以上の、たとい次男であろうと三男であろうと、生活の資料をその人によつて得た人であろうとなかろうと、そういう子の親に対して、その犠牲を国家が負担してあげるというやさしい気持を、どうか表わしていただけないものでしようか。その点において、数字はごくわずかだと私は思う。わずかなる数字によつて、多くの国民が安堵するのであります。こういう点において、政府はこの援護法案と同時に、未復員者給与法の規定を改めて、この親に対しては、今、次長のおつしやつたような線でなくても、親であるという点において、手当を差上げるような方法をとられたらどうか、また本人の俸給を、もどつたときに一ぺんに出すなどというけちなことをせぬで、もう留守家族へ渡してちやんちやん毎月やるというように、原則を改められてはどうか。こういうことは、政府はもつと慈愛深い態度をもつて、しやくし定規にものを考えぬように—社会保障というものを、一方であまり冷たい冷静な感じでやつておつたら、これはもうほんとうに血も涙もない結果になるのでありまして、こういう点について、当局の御反省をいただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/47
-
048・田邊繁雄
○田邊(繁)政府委員 未復員者給与法は、俸給支給という建前ではありますが、実態におきましては、留守家族援護の法律であります。われわれも過去の占領下において、いろいろな制約から、留守家族援護法というものができなかつた事情にありましたので、未復員者給与法及び特別未帰還者給与法というものを上手に運用いたしまして、困難であつた留守家族援護の役割を果して来るようにくふうして参つた次第であります。従いまして、もし本人との関係において生活に何ら支障のないという方には、援護という観点から、渡す必要がないという考え方に立つたわけであります。これは公務のために倒れた方に対する国の給与といたしましての恩給法の考え方と、もう一つは、留守家族援護という問題の考え方とは、多少そこに原則が違つていいのじやないか。公務のために倒れたという人に対して国が報いるという根本の考え方と、それからまだ未帰還という状態のもとにある方に対する国の考え方とは、どうしても違つた考え方があるわけであります。ただ援護という言葉であるから、みな同じだということには参りませんで、そこにはいろいろまた検討を要する問題がずいぶんたくさんあると思います。まだお帰りにならない方であつて、次男であるから、三男であるからということの形式で区別しないように、最近ではわれわれの方では運用上取扱つております。当初におきましては、そういう画一的な標準でやつた場合があるかもしれませんが、最近では、家庭の実情に応じまして、もし本人がもどつたならば、ずつと本人によつて生計を維持せられるであろうと認められる家庭に対しまして、俸給の前渡しをする、こういうようにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/48
-
049・受田新吉
○受田委員 そうしますと、田邊さんのお説によるならば、留守家族援護法案というものは、戦没者の遺族の援護法案とは性格を異にした、今の未復員者給与法よりにあまり前進しない法案となるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/49
-
050・田邊繁雄
○田邊(繁)政府委員 過去におきまして、未復員者給与法の運用は、留守家族の援護という観点からこれを運用して参りました。ただ、額等については、将来国家財政の許す限り相当考慮したいと思いますが、その内容においては、むしろいろいろと検討を要する問題があるのじやないか。必ずしも未復員者給与法の方が、今度出ている遺族援護法よりも全部悪いとは限りません。いい面もあるのであります。その点、もし合せるということになれば、不利な面も出て来ることになるわけであります。たとえば、六十歳未満の老人に対しましても、未復員者給与法においては、千円の俸給の前渡しをやつております。また兄弟、姉妹に対しましても、ある場合においては扶養手当も出る建前になつております。これは俸給であるから、そういうふうになるのでありますが、もし援護という観点から、留守家族も戦死者の遺家族も同じだということになつて、その点も歩調を合せるということになれば、同じようにしなければならぬということになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/50
-
051・受田新吉
○受田委員 いま一つ最後にお尋ね申し上げたいことは、遺族の中には、兄弟、姉妹、おじ、おば等のごとく、その戦死した人の英霊とか位牌をずつと守りをして、祭祀を行つて行くところの主体となる遺族があるはずであります。この遺族に対しては、その故人の祭祀をつかさどり、お祭りをしてあげるところのお燈明料というものは—これこそほんとうに政府がいつも言うお燈明料でありますが、その中に入つていない人にも、なくなつた犠牲者の魂を長く弔つてあげるという祭りを行つている人に対して、それをだれか一番近い人を指定して、政府が何かの道をとる用意はないのでありますか、それをそのままでほつておいていいのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/51
-
052・吉武恵市
○吉武国務大臣 今回の遺族援護法は、先ほど来申し上げましたように、本来ならば軍人恩給によつて遺族扶助料を受くべきはずのものが、占領下においてとめられて払えない、そこで、それではすぐ恩給を復活してということもむずかしいし、ほつてはおけないから、さしあたり予算の範囲内において援護というものが出ておるのであります。従つて、その範囲なりあるいは額についても十分ではない。そこでこの遺家族援護の範囲というものは、恩給法が復活したならばもらえる範囲というものをよつたわけであります。でありますから、恩給法がそのまま適用になつても、恩給法の遺族扶助料の範囲というものは、未亡人と未成年の子供、そして父母、祖父母だけであります。兄弟、姉妹はごく例外の場合にしか一時金が行つておりません。兄弟、姉妹は、それが未成年であつて、しかも身寄りが何もない、そして生活に困るという者だけが例外的に行つておる程度であります。軍人恩給の扶助料のときでさえも、おじ、おばには行つていない。今度の遺族援護というものは、皆さんがお考えになつているように、予算から言つても十分ではない。そのときに、生活について、軍人恩給も考えなかつた範囲以上にということは、これは現在のところ非常に無理であるということで、原案といたしましては、何といつても一番お気の毒である未亡人と遺児、そして父母、祖父母というふうにしたわけであります。
〔青柳委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/52
-
053・受田新吉
○受田委員 この問題は、私はこの法律の原則としてそれを取上げろという意味ではなくて、そういう恩給法の対象にならないところの遺族、特に故人となつた人の祭紀をいつまでも続けて行く人を指定して、それに一時的に何らかの祭祀料を交付しておく。こういうことは、故人となつた人の英霊を慰める上において、きわゆて大切なことであります。もう直接の縁故者のない人で、自分の魂、位牌をどこに葬つたかわからないというようなむだ死にで、この世から没して、位牌をだれも見手がないというような、そういう戦死者に対しては、まことに遺憾ではありませんか。この点において、何とかこの恩給法の対象になるわく以外に、何かそうした位牌を守つてやる、祭りを行つてやる人に、ごくわずかでもいいから—、そうたくさん数があるわけでもありませんから、特別な措置をとるということは、筋として通つておるか、またこういうことを講じて、法的に、あるいは予算的に、ごくわずかではあるが、何とか考える道はないか、それを今お尋ねしているのでありまして、原則論ではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/53
-
054・吉武恵市
○吉武国務大臣 もちろん国の財政が許すならば、私はけつこうだと思いますが、現在は旧恩給の軍人の遺族扶助料さえできない状態でございますから、今回の遺族援護の範囲は、私はやむを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/54
-
055・受田新吉
○受田委員 もう一つ、この法案が、たとえば四月一日に通つたとして、最高度に政府がせいぜい努力をして、この法案に盛られた公債の交付と年金の支給証書を出す等、いろいろな調査をやつた末に、交付が完了するであろう予定は、いつでありますか。これは政府も十分用意するところであろうと思いますので、遺族に一刻も早く喜びをわかつという意味で、四月一日に法律が通つたとして、その実際末端に渡る時期の見通しを御答弁願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/55
-
056・吉武恵市
○吉武国務大臣 これは厚生委員会でもしばしば御質問になつたところでありまして、私どもとしては、通過のあかつきは、予算も通つたことでありますから、一刻も早く支給したいという念願であります。ただ、今までいろいろ検討いたしました結果によりますと、公債を印刷するだけに、普通だつたら六箇月かかる。そんなことではどうにもならないじやないかということで、目下紙やらその他の準備も進めさせておりますが、どんなに急いでも三箇月ぐらいかかるそうです。ですから、今何日ごろにということは、私どももここで申し上げかねますけれども、大蔵当局の話によりますと、どんなに急いでも、公債に三箇月ぐらいの印刷期間がかかるという状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/56
-
057・大石武一
○大石委員長 それでは、本日はこれにて散会いたします。
明日の連合審査会は午前十時からいたします。
午後四時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304243X00119520331/57
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。