1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年五月十五日(木曜日)
午前十一時十九分開議
出席委員
委員長 佐藤 重遠君
理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君
理事 佐久間 徹君
大上 司君 島村 一郎君
苫米地英俊君 夏堀源三郎君
宮幡 靖君 宮原幸三郎君
早稻田柳右エ門君 深澤 義守君
中野 四郎君
出席政府委員
大蔵事務官
(銀行局長) 河野 通一君
大蔵事務官
(銀行局銀行課
長) 大月 高君
委員外の出席者
大蔵事務官
(管財局閉鎖機
関課長) 堀口 定義君
日本開発銀行理
事 中村 建城君
日本開発銀行調
査部事業調査課
長 網野 貞雄君
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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本日の会議に付した事件
長期信用銀行法案(内閣提出第一一三号)
日本開発銀行法の一部を改正する法律案(内閣
提出第一三八号)
閉鎖機関令の一部を改正する法律案(内閣提出
第一四三号)
貸付信託法案(内閣提出第一三〇号)(予)
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001・佐藤重遠
○佐藤委員長 これより会議を開きます。
前会に引続き、長期信用銀行法案、貸付信託法案、日本開発銀行法の一部を改正する法律案、閉鎖機関令の一部を改正する法律案の四法案を一括議題として、質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許可いたします。深澤義守君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/1
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002・深澤義守
○深澤委員 日本開発銀行法の一部を改正する法律案について、まず若干の質問をいたしたいと思います。日本開発銀行の創設以来、これの経済界に占める役割というものはまことに重大であると考えるのであります。この点については、現在経済界の悪条件のためにオーバー・ローンの状態がかなり深刻になつて、これを解決するために開発銀行が市中銀行の長期資金の肩がわりをするという仕事を、相当やつて来たと思うのでありますが、この業務はどの程度おやりになつているのか。今後この仕事は開発銀行の業務のうちにおいて、どの程度のウエートを持たせてやつて行かれるのか。この点を伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/2
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003・中村建城
○中村説明員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。開発銀行といたしましては、昨年二十六年度中に二回肩がわりをいたしました。第一回はいわゆる買船資金でございまして、これに対して約十億いたしました。第二回は第六次造船のあとの分を一部肩がわりいたしまして約二十億、合せて三十億実施いたしました。さらに本年度電力会社の設備資金のうち、市中金融機関の重荷になつている分約二十六億、これは全部手続が完了いたしておりませんが、大体今月中には全部肩がわりが完了すると思います。従いまして開設以来累計して、第一回は十億、第二回は二十億、その次は二十六億でありますから、五十六億ばかりやつております。さらに本年度の資金計画上は、五十億の肩がわりを期待しておりますが、これは今から五十億ときめてもいういろいろ情勢がかわりまから、まず資金の現実の量とにらみ合せ、また金融界の状況とにらみ合せまして、適当にやろうかと思つております。ただいまのところは二十七年度五十億ということを予定いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/3
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004・深澤義守
○深澤委員 オーバー・ローンの解消のために、この肩がわり融資ということが、開発銀行に課された相当大きな任務だというぐあいに考えているのでありますが、今後この問題について銀行局としてはどういう見通しを持つておられるのか。この点を銀行局長にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/4
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005・河野通一
○河野(通)政府委員 数字的には今中村さんから御説明申し上げた通りであります。お話のように、開発銀行が市中における長期の貸出しを肩がわつて行くことによつて、市中銀行の資産の構成を大体正常化して行くということのために寄与するところが、開発銀行に課せられた使命の一つであることは御承知の通りであります。しかしながら何分にも新規の開発資金と申しますか、設備資金と申しますか、そういつたものに対する需要も、御承知のようになかなか旺盛であるわけであります。一方で財政上の都合等もございまして、開発銀行の資力というものにもおのずから限度があるわけであります。もちろんこれは財政の許します限り、できるだけ多額の資金量を確保することが、現在の経済界の情勢から見ますると必要とはと思いますが、それにいたしましてもおのずから限度がある。やはり新規のものに対する需要をまず満たすということが、どうしても必要になつて参るわけであります。両々相まつて開発銀行というものは、その使命の達成に努めて参るわけでありますけれども、やはり新規の需要をまず満たし、そうしてさらに余力があればできるだけ、今中村さんから申し上げましたように、金融情勢を見て肩がわりということの活用をやつて参りたい、こういうことが私どものとつておる基本的な方針であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/5
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006・深澤義守
○深澤委員 そういたしますと、新規の開発資金ということになりますが、今国会で電源開発促進法が衆議院は通過をいたしまして、参議院もおそらく通過するでありましようが、これに厖大な資金が必要なんであります。開発銀行はこの電源開発の資金等について、何らかの準備を持つておられるのか。もしあるとするならば、この電源開発促進法による資金を、どの程度開発銀行がまかなつて行くという方針でありますか。その点をひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/6
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007・河野通一
○河野(通)政府委員 電源開発自体につつきましては、これはいろいろな形のやり方があるわけであります。御承知のように電力会社自体がやつておりますものもあります。それから地方の公共団体がこれを行います、いわゆる公営の電力の開発のための資金というものもあります。また各電力会社以外の事業会社が、自家用発電施設を持つというための資金もあります。そのほかに今お示しのような、電源開発促進法に基きましてできまする新しい機関の開発資金という問題がある。大ざつぱにわけますると、今申し上げましたような四つのカテゴリーと申しますか、形体があると思うのであります。これらの四つのカテゴリーに対しましては、それぞれ適当な方法で金融の道をつけて参るわけでありますが、市中銀行自体がこれに対して大きな寄与をいたしておることも、御承知の通りであります。これらの資金源は主として金融債等に仰いでおることも、御案内の通りであります。また自家発につきましても、開発銀行ももちろんこの方に相当多額の融資を予定いたしておりますが、これと相並びまして、市中銀行も相当程度出すことになつております。また公営電力の開発につきましては、資金運用部資金等の活用によりまして、いわゆる地方起債の資金運用部による引受という形を通して、これに対して相当な資金も出ております。また一部は公共事業費のうちから支出されておるわけであります。最後の、新しく今度できる予定になつておりまする開発機関の資金でありますが、これは今予定いたしておりますのは、大体本年度として百十億程度を予定いたしておるわけであります。そのうち五十億は開発銀行から出資という形で、開発銀行の資金のうちから出すことになつております。残りの六十億は、今御審議をいただいておりまする貯蓄債券法が通過いたしました場合には、貯蓄債券の発行によつて資金運用部に吸收されまする資金、大体これを本年度六十億とふんでおるのでありますが、この六十億を新しい開発機関の方へ資金として流して行く、こういう構想でおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/7
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008・深澤義守
○深澤委員 それから開発銀行は外国からの外資の借入れを予定いたしまして、今度の改正案に準備されておるのでありますが、従来開発銀行として外国からの外資の借入れということはなかつたようであります。今後外国からの外資の借入れということの見通しがどの程度おありになるのか。一応法案を改正いたしまして、そういう受入れ態勢をつくるといたしまするならば、やはりある程度の見通しがなくちやならぬと思うのでありますが、その点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/8
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009・河野通一
○河野(通)政府委員 この点は、先般の委員会でも開発銀行の方からお答えいたしたかと思うのでありますが、現在のところでは、具体的な計画があるというわけでは実はないのであります。先般輸出入銀行法の御審議をいただきました際にも、輸出入銀行法の改正の中で、外貨資金の借入れという条項を新しく挿入していただいたのでありますが、このときに御説明申し上げましたように、輸出入銀行につきましても、今すぐ外資を受入れるといつた具体的な計画は、まだできておらぬわけであります。開発銀行についてもやはり同じことであります。両々相まつて、いろいろ相手のあることでもありますので、今後日本の経済の開発あるいは貿易の促進のために、非常に役立つような形で外貨資金が借り入れられるようになつて参りました場合には、それを借り入れられるような道を開いておく、こういうのがこの改正の趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/9
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010・深澤義守
○深澤委員 外資の問題は吉田内閣としては非常に苦しんでおるようでありまして、見通しが今ないというのが事実だろうと思うのであります。そこで私はもつと根本的な問題についてお伺いしたいのでありますが、この日本開発銀行と申しますと、第一条の目的にもありますように「長期資金の供給を行うことにより経済の再建及び産業の開発を促進する」こういう目的が明確にされているのであります。ところが従来の開発銀行の運営の状態を見ますると、農業関係は日本の産業でないがごとくに実は扱われているのであります。融資をする場合において、まず農業関係にはほとんどないのであります。私は農業関係の問題に深く携わつておりますが、現在の日本の経済の再建あるいは産業の開発と申しましても、根本的な問題は食糧の自給自足態勢、従つて農業の開発ということが重大な日本の国是でなくちやならぬと考えるのです。そういうような機運に乘りまして、農地改革以後の日本の農民の諸君が農地造成、土地改良、こういう方面に非常な熱意を持つておるわけであります。ところがこの土地改良等の、ほんとうの基本的な開発というものについては、その資金が少いために非常に苦しんでおるのであります。この融資の問題については、農林中央金庫さえもなかなか融資しない。政府の補助金並びに農林漁業金融等にたよつてはおるのでありますが、これもはなはだ不十分である。一体日本開発銀行は、この農業を第一条の目的にある産業の開発の中には、含んでいないのかどうかという問題であります。この点はどういうぐあいに解釈し、どういうぐあいに日本開発銀行を運営されて行くのか。農業との関係についての御意見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/10
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011・河野通一
○河野(通)政府委員 お答え申し上げます。開発銀行法の第一条に書いてあります今お示しのような目的の中には、もちろん農業の復興、農業の振興ということも当然入つておるわけでございます。しかしながら現実にはただいまのところ、農業自体に開発銀行から資金を出すことは、御指摘のように行つておりません。私どもはこの農業開発等につきまして、別にこれを軽視しているわけではないのであります。農業というものの特殊の性質からいいまして、今ちよつとお示しがありましたように、農林漁業特別会計という制度ができております。この制度に対して相当大きな資金を、資金運用部なりあるいは一般会計からも放出をいたしております。本年度で約二百五十億でありましたか、ちよつとはつきり記憶いたしませんが、その程度の資金をこれに出しております。そしてこれによりまして——これは農業だけではなくて林漁業にももちろん含みますが、相当多額の資金を財政から出しておりますことは御案内の通りであります。農業というものの特殊性から見まして、この制度を十分に活用して行くことに主力を置いて進むのが適当であろうというふうに、私どもは考えるのであります。もちろん資金量がそれでは足らぬという点につきましては、いろいろ御意見があろうかと思います。私どもも財政が許す限り、これらの方面の資金もできるだけ多額に計上して行くことが望ましいと思います。資金量が足らぬという意味におきましては、開発銀行が本来やつておりまする鉱工業に対する融資の資金といたしましても、これは十分でないという意見もいろいろあるわけであります。この点につきましては財政全体の資金量をにらみ合せながら、その重要性に応じて適当なルートでこの資金を配分して行くことになるわけであります。ただいまのところでは、開発銀行が直接非常に多額のものを農業関係に支出することはむしろ適当でないので、それは農林漁業特別会計の運用によつて進めて参りたい、かようなことが私どもの考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/11
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012・深澤義守
○深澤委員 従つて、今の御意見から申しますと、第一条の目的の産業の開発はもつぱら鉱工業、造船、電力等、こういうものが開発銀行の目的であるということになつているのであります。なぜそういうふうになつているか。それは開発銀行も一応コマーシヤル・ベースに乘つてやることを考える。ところがその場合農業はどうしてもコマーシヤル・ベースに乘らないというのが実態であります。それは一体どこに責任があるかといえば、私は政治に責任があると思う。終戦後日本経済のあの混乱期において、復興金融金庫が設立をされて、そして御承知のような貸出しをやつておりますが、これは全部大きなところへ貸し出している。三井鉱山とか三菱鉱業とか、こういうものが数十億の低利の金を借りまして復興をし、今日まだ十年間という年限によつて返済もせずにいる。その金がこれらの基幹産業の経営が非常に大きな利潤をあげて行く、一つのてこになつていると思う。まつたく政府資金によつて、彼らはみずからの利潤を拡大して、今日の大をなしているのであります。従つて政府の資金はまつたく大産業、基幹産業にはつきり集中されまして、その他の中小企業や農業においてきぼりになる。そこに資本の集中が非常に偏在をいたしまして、貧富の懸隔が非常にひどくなつて来ることのために、政府資金が使われているというところに、私は根本的な問題があると思うのであります。なるほどそれは開発銀行の業務方針から考えれば、農業はコマーシヤル・ベースに乘らないから、たとい要求があつても貸せないでしよう。それは私も十分承知いたしております。しかしそういうように、産業の開発といいながら農業は除外されるというところに、日本の食糧問題が解決されないで、依然として外国の食糧に依存しなければならぬという、ほんとうに自主独立のできない根源がありますので、これは開発銀行並びに政府資金全体を今後使う場合におきまして、農業自体は確かに他の産業に比べて利潤率はないものであるが、これに相当な努力をする必要があるのでございます。たとえば日本開発銀行の場合においても、それは貸せないものはわずかであつても、やはり農業にもある程度道を開いておく必要がある。日本の農民には、常に農業はまま子扱いをされているという機運があるのであります。今の銀行局長の、開発銀行は農業に道を開いてないのだということも、依然として日本の政府の金融財政政策は、鉱工業あるいは造船、電力等が中心であつて、農業等はほとんど無視されているということの具体的な現われでありまして、はなはだそういう点はわれわれは不満の念を持つているのであります。
第二に私は長期信用銀行の問題についてお伺いしたいのであります。この長期信用銀行の設立でありますが、政府の基本方針は、従来あるところの銀行を長期信用銀行として切りかえて行く方針をとられているのか、それとも新たに長期信用銀行というものを育成し、設立して行くというところに重点があるのか、その指導方針はどこにありますのか。その点をひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/12
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013・河野通一
○河野(通)政府委員 長期信用銀行法案についての御質問にお答え申し上げます前に、開発銀行法についての御質問にお答えいたしたいと思います。この問題はいろいろ御意見は十分拝聴はいたしたいと思うのでありますが、私が先ほど御説明申し上げましたところは、開発銀行の第—の目的は、農業の開発といつたようなことを除外いたしておりらぬのです。法律上は除外してはおらぬのであつて、それはそれが非常に必要になつて来れば、もちろんこの法律の中に入るのだということを申し上げたのでありまして、現にこれは農業自体ではございませんが、農林関係といつたようなもののうちで、漁業関係にはある程度資金は出ておるのであります。ちよつと私の答弁をお聞き違いになつておられるかと思いますので、訂正をさしていただきたいと思います。
それから長期信用銀行の今後の免許方針と申しますか、そういつた点につきましては、まだ法案も実は通過いたしておりませんし、施行もこの秋ごろになると思いますので、その間にできるだけ各当事者の御意見と御希望の点を十分伺つて、原則としては当事者の自主的な判断をできるだけ尊重して行くという方針をとつて参りたい。だから一部におきましては、既存の銀行がそのままなるのもありましよう。また新しく新設されるものが出て参ります場合もある。両者があるわけでありまして、私は既存の銀行を転換するということだけを考えておるわけではございません。ただそれでは何行ぐらいを免許するつもりかということでありますが、この点につきましてはたびたび他の委員の御質問にお答えいたしたのでありますが、長期信用銀行というものの特殊性から見まして、そうやたらに普通の預金銀行のように数多くはこれは認めがたいので、一行とは限りませんが、数行程度を認めて行くのが適当であろうというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/13
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014・深澤義守
○深澤委員 既存の銀行を認めた場合におきましては、既存の銀行の業務の短期資金に関する貸出しの制限が行われるのでありますから、既存の銀行を長期信用銀行に切りかえるということは、私ははなはだこれは困難な関係が生ずると思うのであります。従来短期資金の結びつきが相当ありますので、それをただちに制限をいたしまして、この長期信用業務だけをやつて行くということになると、非常に困難になると私は思うのであります。従つて勢い長期信用銀行としての性格を持つた、新しいものを設立して行かなければならないという結論に、私はなると思うのであります。そういう点についてどうも政府の指導方針は非常にあいまいであります。結局大蔵大臣が免許するのでありますから、大蔵省の方針というものが明確になつていなければ、準備期間をある程度認めましても、新たに設立をすることが政府の方針なのか、あるいは既存の銀行が一面において短期資金の業務を扱いながら、長期信用銀行として切りかえて行くということを考えているものも、私はあると思うのであります。その点を明確に私は政府自体が方針を持つておられる必要があると思うので、お伺いをしているのであります。今の銀行局長の方針ではまことにあいまいでありますから、重点を新設いたすという方向に持つて行くのか、それとも切りかえということでやつて行くのかどちらに重点が置かれているかという程度のことをひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/14
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015・河野通一
○河野(通)政府委員 先ほど申し上げましたところで、はつきりいたしておると思うのであります。既存の銀行の長期銀行へ転換するものもあり、新しくできるものもある。どちらに重点を置くということは今考えでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/15
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016・深澤義守
○深澤委員 まあそういうことになりますれば、当りさわりがなくて、まことにいいのでありますが、その点はその程度にしておきます。
そこでもう一つお伺いしたいのは、不動産担保の長期金融の問題でありますが、不動産担保という問題は、今非常に大きな問題になつていると私は思うのです。特に農地の関係につきましては、これは農地法によりまして、農地の担保金融はこれを禁止されているのであります。この農地の担保金融の禁止を解除する準備が政府にはおありになるのか。その点をひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/16
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017・河野通一
○河野(通)政府委員 私からお答え申し上げる資格はございませんので、別途責任者からお聞き願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/17
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018・深澤義守
○深澤委員 銀行局長はお答えの資格がないというのですが、この長期信用銀行の業務の中に、不動産担保の長期金融という問題があるのであります。不動産と申しますれば、土地家屋等が大体中心になるのであります。ところが土地と申しましても、宅地と農地があるのであります。その農地が現在担保の対象になれないという法律の制限があるのであります。従つてこの不動産担保というものの長期金融を考える場合において、これは農村においては農地を担保として金を借りる以外に、資金融通の道がないのでありまして、その結果として私は非常に農民には不幸の結果にはなるといたしましても、当面の苦しい状態を切り抜ける意味において、農地の担保金融を禁止しているのを解除してもらいたいという要求が、相当あると思うのです。この点がやはり長期信用銀行の不動産担保という場合に、当然政府の中で問題になつただろうと私は思うのです。その点をもし問題となつたとして、一体農地をどうするかということの討議が行われ、あるいは農林省方面との打合せも行われているのじやないかと私は思うのですが、そういういきさつがございましたら、そのいきさつをお聞かせ願いたい、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/18
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019・河野通一
○河野(通)政府委員 お尋ねの点は、農地制度の根本的な問題にも触れる点でございまして、私ども事務当局といたしまして、これに対する見解を披瀝いたしまする段階にまだ来ておらぬ、こういうことを申し上げたわけであります。農地が担保力を持つようになりますれば、金融の立場からいいますれば、金融がつきやすくなるということは、御指摘の通り事実であろうと思います。しかしこの問題は、先ほど申し上げましたように、農地制度自体の根本の問題になるわけであります。この点については、まだ私から申し上げられる段階になつておらぬ、こういうことでお答え申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/19
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020・深澤義守
○深澤委員 この長期信用銀行法案の施行と同時に、農林中金並びに商工中央金庫等の債券発行の限度を、拡張することになつているのでありますが、そういたしますと、農林中央金庫、並びに商工組合中央金庫等が、長期信用銀行の性格を帶びるような方向へ持つて行こうとする意図によつて、この改正をされるのかどうか。その点をひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/20
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021・河野通一
○河野(通)政府委員 農林中金、商工中金も現在債券発行法によつて大体自己資本の二十倍、もちろんこれには預金も含めていいことになつておりますが、大体二十倍までは債券を発行できることになつているわけであります。これを債券発行法が廃止されるに伴いまして、長期信用銀行と大体同じ程度の限度まで、債券を発行できるようにしたのであります。農林中金及び商工中金が債券を発行して調達した資金は、農林中金なり商工中金の目的に沿うように運用されるわけであります。この点については従来とかわりない。ただその資金源を確保するためにこの改正をいたしたわけでありまして、長期信用銀行と同じことを農林中金なり商工中金がやるわけではありません。それぞれの目的に従つて運用がなされるものと、かように御承知願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/21
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022・深澤義守
○深澤委員 私はまだちよつと復金の問題についてお伺いしたいことがあるのであります。昨日開発銀行の理事の方から、償却資産の問題がちよつと御答弁にあつたのでありますが、われわれの聞くところによると、二十六年末に約五十八億ばかりの要償却資金があるというようなことが、ある雑誌に出ておるのであります。その点は開発銀行の当局者としては、どういうぐあいにお考えになつておりますか。そういう調査ができておりますかどうか。その点をひとつお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/22
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023・中村建城
○中村説明員 復興金融金庫の事務を引継ぎましたときに、不良債権がどれくらいあるかということは、事務引継ぎを受けておりませんので、復金自体はそれを調べて発表したことはないと思つております。しかしながら私どもといたしましては、やはりある程度債権の分類をいたしまして、問題なく元利ともに入るもの、多少遅れても入るものとか、あるいは多少担保の処分にまたなければならぬものとか、あるいは担保も十分ないから、場合によるととれぬかもしれないということの調べをいたしたいと思つております。いまだその緒についておりませんが、それを調べまして、大体見当がつきますれば——何分にも七千件、しかも直接貸しは一部でございますが、代理貸しといいまして、あるいは勧銀とか興銀とかを使つておるものがなかなか多いのでございまして、これをまとめますのはなかなかたいへんな仕事でございますが、漸次なるべく見通しをつけまして確定したいと思つております。一部雑誌に出ております五十億とかなんとかいう数字はどういうところから出たか知りませんが、公のものとして発表したことはないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/23
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024・深澤義守
○深澤委員 その点は現在整理の過程で非常に困難されていると思うのでありますが、先般国会に出されました会計検査院の昭和二十五年度の決算報告を見ますると、復金の債権の保全のために非常に不手ぎわをやつたというのが、二億何百万円あるということが指摘されているのであります。あれはおそらく終戦後のどさくさに、復金の金というものは借り得だというので借りた人々が多数ありまして、その返済がはなはだ困難な状態になつて、その整理が非常に困難な事態にあるということを、われわれは想像するのでありますが、あれはそういう困難な事情を表現する一つの資料ではないかと考えておるのであります。会計検査院は債権保全の手続を怠つておつたということを指摘しておるのでありますが、ああいう事態が他にもたくさんありますかどうか、その点をひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/24
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025・中村建城
○中村説明員 会計検査院の批難を受けました事態は、大体におきまして、担保の優先を市中銀行が先にとつたというのが多いと思つております。これはそれだけ考えますと、いかにも復興金融金庫が怠慢であつて、市中銀行がすばやかつたというように考えられますが、分解してみますと、復興金融金庫は主として設備資金を貸しまして、運転資金は市中に求める。ところが設備の方が先でありまして、復金の貸付が先でありまして、従つて第一次の抵当権をつけるべきでありますけれども、その設備ができてしまつた。設備ができれば運転資金の必要が起る。その運転資金を市中銀行に求める。市中銀行といたしましてはやはり第一順位を要求する。その場合に、復金と市中銀行とが互いに争う場合に、復金の方は、貸しますとあとは接近がなくなるのであります。ところが市中銀行は運転資金だから始終接触している。そうすればどうしても市中銀行の方へつけるというのが、人情のしからしむるところでありますが、それを批難されているのが多いのであります。その点は私は一概に復興金融金庫のやり方が悪いとも思つておりませんが、開発銀行になりましてから、必ず第一順位をつけるまでは全部の金は渡さぬというふうに、私はがつちりいたしております。しかしながらそれもそういうふうに徹底して運転資金の道がつかなければ、設備資金も行き悩むので、その辺のところは関係機関ともよく協調いたしまして、争いのないように処理いたして行くようにしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/25
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026・深澤義守
○深澤委員 復金の金を借り入れました当時は、会社が存続をいたしておつたのでありますが、その後においてその会社が消滅をしてしまつたという問題で、債権確保がはなはだ困難であるというような事情のものが、私は相当あると思うのであります。そういうものはどの程度ございますか、お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/26
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027・中村建城
○中村説明員 数字的に申し上げる用意はございませんが、相当ございます。正確に何万件ということは申し上げられませんが、相当そういう実態もあるものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/27
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028・深澤義守
○深澤委員 これは数字的に明確にお答えは困難だろうと思うのでありますが、復金の金というものは、例の昭電事件がございまして天下の耳目を聳動いたしまして、相当に整理の問題について、回收不能のものが出るであろうというような予想をわれわれが持つているし、またわれわれも具体的に、まつたく返済の能力のない事情にあるものも知つておるのでありますが、先般からの御答弁によりますと、大したことなくやれるというふうな非常に楽観的な答弁を得ておるのであります。一体復興金融金庫の融資というものが全部回收できるのかどうか、どの程度結局回收できないというような事情にあるのか、大体その見通しを、大ざつぱなことでよろしいのでありますから、この際お伺いいたしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/28
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029・中村建城
○中村説明員 市中銀行につきまして、ただいま税法上期末残高の千分の七、それから利益金の三五%というのが、債権償却の認容限度となつておりますので、おそらく復金の場合は、この限度よりよほど内輪に納まるのではないかというくらいのことは考えておりますが、何%ということは、ただいま申し上げたように調べておりませんので、はつきりこれは申し上げられないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/29
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030・佐藤重遠
○佐藤委員長 夏堀源三郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/30
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031・夏堀源三郎
○夏堀委員 開発銀行と長期信用銀行と両方に関連した事項について二、三質問いたします。過般の新聞に長期信用銀行の運営及び財産の上において大丈夫だ、見通しがついた、こういう記事がちよつと見えておりました。そこで大丈夫だということはたいへんけつこうな話だがどの程度大丈夫だか。私どもの考えるところでは開発銀行の業務目的と、長期信用銀行のそれと、大体同一な点はある。そこで一方は税の面において免税ということになつている。そうしてなお一方は政府の資金を借りている。一方は七分五厘程度の、一般銀行としての相当な利回りの証券でもつて金を確保しなければならない。そうなりますと、競争の立場において非常に不利ではないか。但し開発銀行は、開発銀行の運営の場合、政府がこれを強く監督するという立場に置かれてあるだろうと私は思います。そうなりますと、その運営の上においてそうかつてにはさせぬぞ、こうなれば政府が大体の方針をきめて、銀行当局にその運営の方法はまかせるというようなことを、この前大蔵大臣が答弁したことも記憶しております。競争の立場においてやらせるということになれば、今申し上げたような事情によつて、自主性とまでは行かなくても、積極性にこれを持つて行つたならば、信用銀行は太刀打ちはできないのじやないか、こう常識的に考えられるわけであります。そこで開発銀行が貸出しをする場合に、政府がこれに対してこれを何か閣議で決定するというようなことであるが、その内容はどの程度のものであるか、それをまずお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/31
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032・河野通一
○河野(通)政府委員 開発銀行と長期信用銀行とは、お互いに性格を異にいたしておりますので、両者が競争するということにはならぬと思います。またそうあつてはならない。開発銀行法の何条でしたかちよつと記憶いたしませんが、開発銀行自体は政府機関としてできたのでありまして、長期資金に対する市中の金融機関が、十分その需要に応じ得ないというところを補完して行くというのが、開発銀行の目的であります。従いまして市中の銀行で資金のつくものは貸すべきものではないし、また現にそれは貸しておりません。しかしながら現在のところでは、開発銀行の資金も含めて長期資金の源というものは、非常に実は需要に対して少いのでありますから、競争して両者が貸出しを争うといつたようなことは現実の問題としても起りませんし、逆の場合がむしろ起るのであつてどつちかといえば両方へ押しつける。むしろ市中銀行はできるだけ開発銀行の方でやつてもらうようにというようなことがむしろ現実の事態でございます。
それから資金のコストが開発銀行は運用部出資とか、あるいは見返り資金から借りるといつたような場合に、出資につきましてはもちろん利息はありませんし、見返り資金から出します場合につも、相当安い金利でこれを出しておるのでありますから、資金コストとしては、御案内のように長期信用銀行の方が高いと思います。しかしながら開発銀行は税もかかりませんかわりに利益金は全部国庫に納付するという制度にこの新しい改正案でなるわけであります。そういたしますと、非常に資金コストが安いから、その点で非常に有利になるといつたようなことではないのでありまして、利益はすべて国庫に納付せしめるという制度によりまして、政府機関たる長期信用銀行の性格をはつきりしておるわけであります。その面からいたしましても、税法上の特別な優遇があるといつたような結果にはならぬと思います。
なお最後のお尋ねの、政府が閣議でもつてきめておりますのは、政府資金全体として日本の産業、交通、そういつたことを復興発展させますために、政府資金の運用としてどうしても政府資金をつけて行かなければならぬ、その資金をつけても、その資金を確保してやらなければならぬといつたような業種の中で、さらに具体的な設備を列挙してあるものを閣議でつくつております。これは具体的な閣議の了解ということでできておるのであります。事務的には原案は経済安定本部でこれをつくつております。総合官庁たる経済安定本部でつくつておりますが、もちろんそれに大蔵省その他の各関係省も関係いたしております。その原案に基いて閣議の了解ができておるものがあります。その中には相当広汎な業種、しかもその業種の中に具体的な設備、たとえば鉄鋼業なら鉄鋼業の中で圧延施設とか、そういつたことを列挙いたしております。但し金額については別にこれを書いてないのであります。これらの政府の重点を置いております基本的の施設を開発銀行に参考として渡しまして、開発銀行はこの政府の基本的な計画に順応して金融をして行く。具体的にはそのリストの中に載つておりますものであつてもどの程度の金額をその方へ出すかということは、これは開発銀行自体が自三的に判断をして行く、こういうふうな建前になつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/32
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033・夏堀源三郎
○夏堀委員 ところが、全然両銀行の性格がかわつておると、こうおつしやるけれども、たとえば一番大きな肩がわりという問題、これも両方同じだ、長期資金を出すということも両方同じです。この二つの問題をとらえてみても、全然性格が違つておるということはないと思います。これはしかし別に議論をするわけではありませんから、これだけにしておきますが、ただ長期信用銀行に対する趣旨には私は賛成である。ただその運営の上において、昨日小山氏からも御質問があつたようですが、いろいろなまだ未定な問題をとらえて、御答弁になつたようでありましたけれども、未定は現実の問題としてそのようになればよろしいのですが、ともに未定の問題ですから、こうした問題も相当検討しなければならぬだろう、こう思うのであります。せつかく大蔵省で立案して、こうした長期資金をつくる面において、地方銀行はなるたけ商業銀行としてのあり方であつてほしいということは、たいへんけつこうな話である。その通り行けばたいへんよろしいが、その通り行かぬおそれもあるじやないかということで、こう申し上げておる次第であります。
そこで開発銀行は、この前に私委員長をやつておるときに、これはまだ開発銀行のことが話題になつておらぬときですが、GHQのアリソン氏の方から開発銀行のことで話があつたことがある。これが今深澤さんの質問と関連を持つて参るのですが、開発銀行はぜひあつてほしいのだが、今のところでは重点産業に片寄つておるという運営の方法である。これもやむを得ないことでありましよう。その当時私の考えたことは、開発銀行は北海道とか東北とか、あるいはその他の未開発の地区の開発的な使命を持つて生れることがたいへん望ましい、こういうことを申し上げ、また考えたこともあつたのであります。その後開発銀行が発足するということになつたので、たいへんけつこうな話だ。あの当時は占領治下ですから、アリソン氏といろいろ話合いの上で、未開発の地を開発するという使命をもつて発足するだろうな、こういう期待を持つておつたのであります。ところがあけてみるとそうじやなくして、けつこうな話ですけれども資金量がないから、それは出ないのだというお話なんで、やむを得ないことでありますけれども、大体重点産業に重点的にやるという運営方法をとらざるを得ないのだ。そうすると深澤君の今申された食糧自給の問題において、いつまでもこのままにしておくことはいかぬと思いますので、できるだけ未開発の地方を開発しなければならぬ。特に農林関係においてしかり、農林ばかりではなく、未開発は全体においての未開発なんで、交通面においてもそうですが、よつて生ずるすべての経済は不振である。それをほんとうは財政面から積極的に持つて行くことは望ましいのでありますけれども、なかなか財政といつたところで、思うようにも行かぬだろうと思います。そこで金融面においても積極的にこれを助成する意味において、何かしら考えそうなものだ。けれども農業方面においては常に置去りになつておることは、これは国民周知のことであつて、知つておつてやらぬということは一体どういうことか。いつも私申し上げるので、あまりこういうことは言いたくはないのですけれども、憲法の上にはつきりうたつてあるように、はなはだしく経済面に不平等な地区に対しては、やはり国政の上でこれを考えなければならぬ、こうはつきりうたつてありまするので、あえてそれをもつてどうこうと論ずるわけじやありませんけれども、少くも憲法にうたつており、そうして未開発の地域を開発することによつて、日本の自立態勢が非常に軌道に乘るということは、これは今私が申し上げるまでもないのであります。今の開発銀行を重点産業にのみお考えになることであれば、これは今私が申し上げたような未開発の地区に対しての産業開発的なそれを重点に置いて、別にそういうような意味の開発銀行のようなものを設置することは当然であろう。それが日本の自立経済を達成する意味において絶対必要であろうと、こう私は考えております。私は大蔵大臣に御質問申し上げて、はつきりした御答弁を承りたい、こう存じておりますけれども、きのうは早くお帰りになつたので、その機会がありませんので、またあとでお伺いいたしますが、またその機会はあるかどうかわかりませんので、きようは銀行局長にこのことを強く要望いたしておきたいと思います。なぜ私はそういうことを言うか。特に東北の経済の不振、そうして農業者の経済的に不遇な面を私は実際見たり聞いたりしておりますし、新聞でもちよいちよい見えておりまするが、経済的に成り立たないために、娘の身売りが、非常に近ごろ多くなつた。娘の身売りを、やむを得ないじやないか、経済的にその方がもうかるじやないかという人も、あるいはあるかもしれませんけれども、何も好んで娘を身売りして、そうして生活して行かなければならぬということは、それを考えること自体が変な話です。困るからそういうことになるので、そこでこうしたような人道問題を政府の手において何の手も下さぬということは、これは大変な問題になるだろう。特に独立国家として立ち上つた現在において、そういつた面は特に重大な問題でありますので、特段の御考慮を払う必要があるじやなかろうか、こう考えておるのであります。開発銀行の問題でも、先ほどの御答弁のうちにも、農業が含んであるということ、そうして水産業は何か特にたいへん優遇しておるかのような口調があつたが、一体水産業に対して開発銀行はどの程度考えておるか。それは復金からの債権債務の譲渡、それには大会社の分は含んでありましようけれども、ほんとうの中堅の漁業者の面に対しては、ほとんどそういう数字は見当らないだろうと私は考えております。それはそれとして、以上申し上げたようなことは絶対必要であると私は信じて、今ここで大臣にかわるあなたに御質問申し上げておることであつて、あなたがどういうようなお考えを持つておるのか、それをまずお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/33
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034・河野通一
○河野(通)政府委員 るる御意見を拝聴いたしたのでございます。ごもつともなところが非常に多いのであります。しかし何分にも日本の経済がまだ十分に回復いたしておりません。特にその中でも資本が不足いたしておるということが、一番大きな難点だろうと思います。資本と申しますれば、財政的な資本も民間にある資本も含めて申し上げておるわけでありますが、そのために私どもはいろいろな形で資本の蓄積を促進するための方途につき、及ばずながら全力をあげて努力をいたしておるつもりであります。しかし現状は何と申しましても資本が十分でない。そういうふうな状態のもとにおきましてはどうしてもやはり経済の力をつけてから、そういつたような問題を解決しなければならぬといつたような部面も相当にあると思います。今お示しになりました未開発地域、北海道その他の地域に対する開発のための特別の機関をつくるというお話であります。これは結局そういうふうな機関をつくるということになりますれば、それは当然財政資金ということにその資金の源を仰がざるを得ない。そういたしますと、一体財政資金としてそういうものが出せる余地があるかないかということも、十分に検討しなければならぬわけであります。一方で減税もやらなければならぬ。その他の財政の需要も非常に大きい現在でありますので、そういうふうな観点から、財政資金の余裕がどの程度出て来るかということも考えなければならぬ。問題は結局重点先後の関係をどこに置くかという問題だと思います。しかしながら現在ありまする日本開発銀行というものも、その目的に書いてありますように、必ずしも大企業だけにその融資の対象を限ることが適当であるとは考えておらぬのであります。今お示しのような北海道等におきます資源の開発等のために、非常にそれが国のためになるといつたようなものにつきましては、現在でも開発銀行は融資活動をいたしております。今後におきましても、そういつた方面へはできるだけ努力をいたして参りますことは、当然であると思うのであります。
なお農業漁業等につきましては、まことにこの点もごもつともな御指摘であろうと思うのでありますけれども、資金全体がたいへんきゆうくつな現在の中から、できるだけ例の農林漁業資金融通特別会計の方へ、政府から資金を捻出しておるわけで、もちろんそれはそんな程度では足りないということのおしかりを受けることと思うのでありますけれども、資金全体の中からその重点に従つて配分をいたしておるわけであります。これらも財政が許します限り極力多額に組んで、農業の開発復興に対しても、できるだけそういつた金融面からの、資金面からの助力をして行くことが望ましいことは、御指摘の通りであります。望ましいことであることはまつたく疑問の余地はないのでありますが、なかなか経済自体がまだ十分に回復をいたしておりませんので、やはりその必要なものを十分に満たすということは、現在の段階ではなかなかむずかしい思うのであります。今後ともそういう方面には努力をいたして参りたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/34
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035・夏堀源三郎
○夏堀委員 望ましいという程度の御答弁で私は満足することはできません。その目的の中に入つておるということは、はつきりしておりますが、特にそういう未開発の地区に新しい開発的な銀行を設けることは、それは不可能である。このように伺いましたので、それはそれでよろしい。もしそうであつたならば、その目的の中に含んであるから、開発銀行の何か支店のようなものでもそういう地区に設けて、開発的な役割を果すということが当然ではないだろうか。それもなお不可能である、すべてが不可能であつたならば、それは結局原始産業、最も日本国民の食糧の自給態勢の上において大きく取上げておるこの問題を軽視するのであるかということを、私は反問せざるを得ないのでありまして、軽視はしないと、こうおつしやるでしよう。軽視はしないとおつしやつたところで、やらなければ軽視しているのだ、こう私は考えておるのであります。そこで開発銀行の方にお伺いいたします。目的のうちに含んでおるけれども、あなたの方で農業及び漁業に、復金から継承したものでなく、新規にどの程度の金額を貸出しになつておりますか、お伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/35
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036・中村建城
○中村説明員 四月末の現在におきまして、農林水産のうちに整理されましたものが、貸付残高が七億六千五百万円ということになつております。これはパーセンテージにすれば、全体の新規資金の貸付が百八十七億でありますから、ごく少いのでありますが、それはつまりいわゆる原始生産部門は、もともと政府も、特に農林省も、これは開発銀行にすることは無理だということを言つております。でございますから、うちで対象といたしますものは、主として食品加工という部門であります。農林水産関係でお貸ししましたものは酪農関係でございますが、酪農関係といいましても、バターをつくるとかミルクを精製するとかいう方にはお貸ししております。あとは水産関係では御承知の通りに南氷洋の漁業船にお貸ししたのと、冷蔵、冷凍設備にお貸ししたということになつております。そのほかにごく小さいものは食品加工等はございますけれども、これは言うに足りないものでありまして、大きいものは南氷洋の漁業、それから冷凍設備が多いのであります。それからさらに本年度は政府の計画のうちに、もう少し小さい漁船の方も、資金の都合がつけばめんどうを見てほしいという御意向もあります。ですから農林水産は全然やつていないということではありませんが、原始生産部門の方は貸付の対象に適しないということは、政府も考えておりますし、またわれわれの方も考えております。これは主として組合金融でありまして、農林中金の金融の対象になるのが筋だと政府も考えておりますし、私どもも考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/36
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037・夏堀源三郎
○夏堀委員 日本全体に対して七億六千五百万という二階から目薬的な融資によつて、ごまかすわけではないでしようが、ないからしようがないと言われればそれまでですが、やればやれると私は思います。ただそれを軽視するか、重要視するかが問題なのであつて、私はどこまでも食糧という問題は一番重要視しなければならぬと考えております。ただ農業関係、水産関係はどちらかといえば幾らか水産方面に出しておるが、いわゆる大会社、有力なる水産会社だろうと思います。農業者及び多数の漁業者は、政治力がないといいましようか、そういうようなことで、苦しい立場を政治的に表現すべきその方法と機会を得ないのである。どちらかといえばもうあきらめておるのである。あきらめておることは必要がないということではない。あきらめておるから軽視するのだということは当らない。あきらめておればこそ、はつきりと憲法にうたつております通り、国政の上においてこれを何とかめんどうを見てやらなければならぬということが政治であると思う。私どもが事務当局にこのようなことを申し上げたところで、名答弁せよといつたところで、なかなか無理であろう思いますが、私はこれは非常に大きな問題であると存じます。そこで私が考えたことは、あとで何かの法案の関連において申し上げたいと存じますが、食糧の自給態勢の確立のために一つの方法も考えております。これは若干の財政からの援助も必要であるかもしれません。考え方によつては農業、水産の企業の上において——これはほらを吹くわけでもありませんが、私の今考えておることだけでも、大体四、五百万程度の増産ができるのではないか。しかも大して金がいるわけではないのです。ただ農業なるがゆえに、あるいは水産なるがために、石炭とか船とかいうこととは違つて、そういうことは困るとおつしやるだろうと存じます。ただそれは、政府の方針が重点産業にこれを出さなければならないというために、開発銀行は、今おつしやつたような七億六千五百万円で、まずどうにもならぬ状態であるということを表明したのであるが、しかしそれではならぬと思います。やはりこれは食糧問題を重点的に取上げなければならない。そこでこういう問題について政府と開発銀行の間で、何かもつと積極的に、私が今申し上げたようなことをお話合いになつておることがありますか。それとも政府の最初の方針は、それは重点産業であるのだ、農業及び漁業は、軽視せよとは言わなくても、まずそれは第二、第三、第四にまわしてもいいのだということを、ただそのままうのみにして運営に当つておるのであるかどうか。これは考えようによつてはどうにもなるのであります。絶対必要であつたならば財政面から何らかの考えもできましようし、金融措置において何とかできると私は思う。けれどもこれは不可能であるということを前提にしてやらぬということはどうかと思う。そこで大体話合いをしたことがあるかどうか。これを聞いておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/37
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038・中村建城
○中村説明員 農業、水産につきましては、先ほど申しましたように、製造工程に入りますると開発銀行の対象になりますが、原始生産部門におきましては、開発銀行の業務の規定を見ましても、要するに経済再建に必要なる設備の新設あるいは補修ということを対象にしておるのでありまして、そういうカテゴリーに入らぬ分が非常に多いのであります。それに対しましては、他方に政府資金による金融の道がついているように存ずるのでありますが、これは私の説明の範囲外になりますから、ただ私の受持ち範囲だけを申し上げておきますと、開発銀行の融資対象につきましては、監督の大蔵省、あるいは全部私の方にまとめて指示してくださいますところの安本とは、絶えず連絡して意見の交換をしておりますが、原始生産部門の農業あるいは水産業につい金融をどうするかという問題にはいまだ触れておらぬ、こういうように私は承知しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/38
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039・夏堀源三郎
○夏堀委員 その通りお話合いをしたことはないのである。話合いをしたことがないくらいならその意思がないのだ。これははつきりしておる。私が申し上げたことは非常に重要な問題であるということを知つておりながら、これを話題にしたことさえないのだということは、もう全然政策的に取上げていないのだと解釈してもいいと思います。これはあとで大蔵大臣にまたお尋ねいたしますけれども、そういうことがあつてはいかぬと思う。開発銀行は何か政府の言うがままに、ただぼんやりしておるということもどうかと思うので、食糧自給態勢のために必要であつたならば、政府のこれに対する財政面及び金融措置によつて、この程度あれば何とかかつこうがつく——具体的に申し上げますと、たとえば北海道でも東北でも、何か支店のようなものを設けて、特にこういうような場面を考慮して、運営のうちにお考えになつたらどうかと私は思つておる次第でありまするが、長期信用銀行の発足によつて、勧業銀行あるいは北拓などの運営の状態も若干かわつて来ると思います。そういう方面に幾らかでも志しておる銀行が、長期信用銀行の発足によつて、どの程度の積極性を持つて来るかということは、これは先ほど申し上げたように、発券銀行としてその債券の消化がはたしてできるかどうか、未定の問題として御答弁になつておりますけれども、私どもはこれに対して不安を感ずる次第であります。片方は、何か今までやつた業務に対して、たとえば勧業銀行、北拓銀行に対しては遠慮するような御方針をとり、片方は積極性を持たないということになつたならば、何のためにやつたかわけがわからぬ。そうなりますると、政府がこれに対してほんとうの責任をもつてやるということの、何かの方法を明示してもらわなければならないと存じます。与党のわれわれがあなた方に対してあまりこういう苦情がましいことを言うことは、非常に心苦しいのですけれども、銀行運営の上にもつと積極的にお考えになれば、結末がつくと私は考えております。ただそれは財政面において、あるいは現在の経済の面においてどうにもならぬということは、ならぬということを前提としてお考えになるからならぬということであるが、それはそうじやなく、絶対必要であつたならばやろうじやないかということによつてやらなければならない、こう私は考えております。もし私の今申し上げたことが、なるほどその通りだ、こういうことになつたならば、今までの御方針をかえて、何かこれに対して特段の御考慮をしていただきたいということを特に私から申し上げて、もしこの長期信用銀行、開発銀行、この法案が通らぬ前に大蔵大臣がお見えになれば、その機会にこのことを申し上げたいとは存じておりますけれども、事務当局としてのあなたからも、私からこういう意見の発表があつたということをお申し伝え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/39
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040・河野通一
○河野(通)政府委員 お示しの点は大蔵大臣に逐一申し伝えておきます。
それから今の開発銀行の支店を、たとえば北海道であるとかあるいは東北であるとか、そういつた地域にどんどん置いて、十分なる活動をさせてはどうかという御意見であります。この点はさように私どもも考えております。とりあえず第一着として、北海道におそらく開発銀行の支店が置かれることになると思います。今準備を急いでいるような状態であります。なお新しくできます長期信用銀行につきましても、これが運営は、その目的の達成に遺憾のないように、十分私どもも行政上の指導はして参りたいと思います。またその一番大切な資金源の確保の方法につきましては、昨日来小山さんの御質問にもお答え申し上げてあるのでありますが、具体的に数字を申し上げる段階には至つておりませんけれども、極力資金運用部において、これら債券の消化に努めるということを、はつきり私はここでお約束できると思います。数字をまだ申し上げる段階に至つておりませんのは、はなはだ残念でありますが、こういうことで努力をいたして行きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/40
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041・夏堀源三郎
○夏堀委員 北海道に支店を設置する。それはたいへんけつこうであります。私もそう思つておりましたから質問申し上げたので、どうも私東北の出身で自分の方のことを申し上げるのは苦しいのですけれども、東北の不振のために、東北振興というものが戦前にあつたわけです。それが敗戦によつて、あちらの指令があつたことでしよう。これに対しては国策会社というようなあり方は、再検討を要するなんという変なことを言い出して、これはしようがないということで、運営の上においてほとんど停止されているような状態になつております。もともとないことじやなく、東北振興のために東北振興局というものまで政府が設けて積極的にやつたことがあつたのが、それが今度は停止になつたので、今申し上げたように娘の身売りもたくさんできたのであるから、北海道もさることながら、さつき私が言つたのは北海道及び東北、あるいは必要があればその他、その意味ですが、経済的にあるいはまた産業的に未開発的な地方にはどんどん支店を設置すべし、そうしてこれに対する資金面は、国会においても大いに協力しなければならない、こう私は思うのであります。北海道ばかりでなく、東北及びその他の地区、こういうことでお忘れないように御計画を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/41
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042・佐藤重遠
○佐藤委員長 本日は午後一時から本会議が開かれることになつておりますので、これにて散会いたします。次会は明十六日午前十時から開会いたします。
午後零時三十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101304629X06719520515/42
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