1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年五月二十一日(水曜日)
午後一時五十三分開議
出席委員
委員長 佐瀬 昌三君
理事 鍛冶 良作君 理事 山口 好一君
理事 田万 廣文君 安部 俊吾君
押谷 富三君 北川 定務君
松木 弘君 眞鍋 勝君
大西 正男君 吉田 安君
梨木作次郎君 世耕 弘一君
出席政府委員
法務政務次官 龍野喜一郎君
検 事
(法制意見第四
局長) 野木 新一君
委員外の出席者
判 事
(最高裁判所事
務総局人事局長
兼民事局長事務
代理) 鈴木 忠一君
専 門 員 村 教三君
専 門 員 小林 貞一君
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本日の会議に付した事件
最高裁判所における民事上告事件の審判の特例
に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提
出第一一二号)
裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案(
内閣提出第一二五号)
下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の
一部を改正する法律案(内閣提出第一二〇号)
(参議院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/0
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001・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 これより会議を開きます。
最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。質疑を行います。質疑の通告がありますのでこれを許します。梨木作次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/1
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002・梨木作次郎
○梨木委員 裁判所職員定員法の一部改正の法案の中で看護婦を新しくふやすことになつておるのでありますが、どうも政府の説明では了解できないのでありますが、どういうことをさせるものでありますか、もう少しこれを具体的に説明してほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/2
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003・鈴木忠一
○鈴木最高裁判所説明員 裁判所と看護婦、こういうと確かにそれだけの言葉だといたしますと疑問に思われるのもごもつとものように感じます。これは同時に八十四名のうち十四人と七十人にわけて、その七十人がこの前問題になりました事務官、雇等でありまして、警備員に充てるためでありますが、残りの十四名のうち四名は裁判所技官でありますが、この裁判所技官というのはもつとはつきり申し上げますと医師でございます。医者なんです。御承知のように家庭裁判所において少年事件を取扱つておりますし、少年事件を的確に処理するためには少年の知能、精神という方面で非常な専門的な調査を必要としますので、そのために医師としての裁判所技官というのがぜひとも必要なわけなんです。それと同時に家庭裁判所におけるいわゆる家事事件につきましても、いろいろな家族的な紛争、ことに離婚というような問題になると当事者が気づかないで病気とかいろいろ身体の障害が原因になつておつて、しかも当事者がその対策をしないために離婚というような問題になつている事件が少からずあるわけなんです。そのためにも専門医が必要でありまして、医者の立場から裁判官にいろいろ助言を与えるということがぜひとも家庭事件、家事事件についても必要なわけであります。そうしますと医者がついた場合に、ある場合には婦女子に対する場合もございまするし、医者のさらに介添人といいますか助力者としての看護婦が必要である、こういう意味で看護婦十名を予定して、要求しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/3
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004・梨木作次郎
○梨木委員 医者を裁判所技官として恒常的に雇い入れる、これを勤務者として採用するということについては、今説明された家庭裁判所の家事事件についてそういう知識が裁判所を援助するために必要だということ、あるいは少年の知能、精神の判定に必要だということでありますが、これはそういう必要を満たすためならば、全国の家庭裁判所に少くとも一人程度の医師が必要じやないかということになりましようが、これが四名でどう需要が満たされるかということには非常に疑問があるし、ある程度のことは嘱託の医者によつて用が足りるじやないかということが考えられる、これが一つ。さらにこの医者を援助するといつても、これは今の説明では裁判官では不足しているいろいろな知識を補助し援助するためだということになれば、そのような知識、技能を持つているものでなければ、その用を満たし得ないということになる。看護婦ではこれはとうていそういう用には足りないと思う。そういう粗雑な——と言つては失礼かもしれませんが、とにかく専門的知識がそれほどあるとは思いません。看護婦の持つている程度の知識ならば、少し勉強すれば裁判官も習得できると思うのであります。どうも私はそういうところにこの医者と看護婦を裁判所に常置させるのが目的なのではなくて、ほかに目的があるのではないか。どうもここのところの説明は不十分である、以上の点。つまり四名では全国の家庭裁判所に常置できないのじやないか。これは嘱託で足りるのじやないか。しかもそういう特別の知識、技能を必要とする、知識、技能によつて裁判官を援助するのだ、それならば看護婦によつてはそれは不十分ではないか。しかも十四名ではどうにもならないのではないかというように思うのでありますが、この点の説明を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/4
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005・鈴木忠一
○鈴木最高裁判所説明員 全国で四名だけの医者を置くことはおかしいじやないかという御質問ですが、これは全国で四名だけの医者を置くということになれば確かにおかしいのですけれども、実はもう裁判所技官として医者を四十五名すでに定員上認められているわけです。そうしてそれに今回増員を四名加えますと、ただいま梨木委員から御発言のあつたように大体各裁判所少くとも一名はこれで振りわけができる計算になるのです。ですからこの四名は、全国の家庭裁判所に少くとも一名の裁判所技官としての医者を置くという計画を満たすためのその足りない部分の四名であります。そういうように御承知を願いたいわけであります。
それから看護婦は全国の裁判所にすべて一名ずつ置くというわけでなくて、特に大きい裁判所に看護婦を置くわけであります。従つて看護婦については医者の数ほどいらないわけです。これは医者がつきますと、そのこまごました仕事にはやはりどうしても看護婦が必要なんだという実際の要求上やむを得なくてつけるのでありまして、看護婦の知識を借りて裁判官が裁判の資料にするという意味ではなくて、技官をつけた場合、医者としておれば看護婦の仕事はどうしても必要なんだから、大きいところで仕事の多いところには看護婦を置こう、こういう計画であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/5
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006・梨木作次郎
○梨木委員 結局これは裁判所の裁判官や職員の何か健康保護のためにこれを付置しようというのじやありませんか、正直なところ。どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/6
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007・鈴木忠一
○鈴木最高裁判所説明員 裁判官並びに裁判所職員の医療施設のためにこういう技官を置いたり看護婦を置いたりするのじやないかという疑問なんですが、そうではないわけです。たとえば現在もうすでに東京におきましては法曹会というものがありまして、これが医療の設備を経営しておつて、それと裁判所職員の共済組合の方との契約があつて、それでまかなつているわけです。全国では共済組合で、御承知のように裁判所の職員はみな組合に加入しておりますから、その共済組合との特別な契約で、大きいところはかかりつけと言いますか、契約をしている医者がみんなおりますから、特に官費の医者を置いてそれの恩恵をこうむろうという意味はちつともないわけです。ただ梨木さんは民事が専門で少年事件というようなことにあまりタッチしておられなかつたように私存じますが、最近の少年事件というのは非常に医学及び心理学と密接な関係を持つて発達しりておりますから、ことにアメリカなどにおいてはそういうように存じますが、若干その影響があるかと存じますけれども、その医学及び心理学という方面と裁判との密接な関係上、やはり家庭事件及び少年事件については医学の専門的な知識がぜひとも必要なんだという意味で、特に従来お願いして四十五名の裁判所技官を設けるということになつて、その不足を満たすために今回の増員計画がされたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/7
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008・梨木作次郎
○梨木委員 この看護婦の十名というのは、新しく今度こういうものを採用するのですか。今の御説明で医師の分は四十五名の定員があつたことを今初めて聞いたのでありますが、この看護婦は今までも定員があるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/8
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009・鈴木忠一
○鈴木最高裁判所説明員 看護婦の定員は従来十名ございます。そしてこれに今回の十名が加わつて二十名、こういうことになるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/9
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010・梨木作次郎
○梨木委員 その質問はその程度にいたします。それから下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案でありますが、これは名称のかわつた点、それから市町村の合併になつた点、そういうことに基いて管轄区域をかえようとするものや、いろいろたくさん含んでいるわけなんでありますが、一体こういうたくさんの管轄区域の変更あるいは名称の変更につきまして、理由といたしましては「土地の状況及び交通の便否等にかんがみ、」云々とかようになつております。しかしこれは裁判所を利用し、また裁判に関係を持つ国民の側からいたしますならば、非常に重要な問題であります。利害関係を持つ問題であります。これに対しましてはわれわれはこういう厖大なものを出されて、この管轄区域の変更その他をすることが適切であるかどうかということについての判断の資料というものは——自分の知つているところくらいのことはわかりますが、ほとんど判断の資料というものが実際はないわけです。で、この管轄区域の変更につきまして、土地の状況、交通の便否という抽象的な理由だけでなくて、具体的にどのように交通あるいは土地の状況上この必要があつたかという説明を願わなければ、われわれは適切な判断を下すことはできないのであります。従つてこれに関する詳細な資料の提出を希望したいと思うのです。これが一つ。
もう一つは、一体こういう管轄区域を変更するについて地元民の意思、こういうものをどの程度に具体的に取入れてあるのか。それを反映させる方法、たとえば地元の弁護士会の意見を聞くとか、あるいは司法関係者の意見を聞くとか、あるいは土地から陳情があつたとか、かような資料をつけてもらわないことには、裁判所で官僚的にこういうように天くだり的にきめられて、われわれには資料が出されておらないということで、しかも短期間に態度を決定するということは無謀にひとしいやり方であると思うのであります。この点についての詳細な資料の提出と説明を求めたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/10
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011・野木新一
○野木政府委員 ただいまの御質問に対して、まず第二点の方から先にお答え申し上げます。ただいま問題になつている法案のうちの管轄区域の変更の点でございますが、これにつきましては、初めこの管轄区域を定めてから以後、たとえば自動車の交通の発達とかその他いろいろの事情によりまして、管轄を変更した方が便宜だというような事情が生じて来るわけでありますが、その点は国会あるいは法務府あるいは裁判所に請願なり陳情なりがあつてわかることが多いわけであります。そういう場合におきましては、この法律を主管しております法務府といたしましては、まず地元の検察庁にこういう請願があつたがどうだろうかということを問い合せまして、地元の検察庁では土地の弁護士会、町村、警察等にさらに問合せをいたしましてそれぞれの意見を聞きまして、それを付記して法務府の方へ送つて参ります。また他方裁判所事務局とも連絡をとりまして、裁判所側からも各その土地の地方裁判所に照会しまして、その裁判所からまた同じように各方面の意見を集めて、それが最高裁判所事務局に来まして、それが私の方に参つております。その両方を合せまして、それを資料といたしまして研究して、大体各方面とも異議ないところをとつて法案として出してあるわけでございます。今度の管轄区域の変更は大体十一箇所にわたりますが、これは各地え、町村警察、裁判所、検察庁、弁護士会とも異論のないところでありまして、従いまして私どもといたしましても、各方面の要望に沿つてこのように修正した方がよかろうと思いまして法案を出したわけであります。
なおそのほかの地名の変更等につきましては、私どもしよつちゆう新聞などで知つたり、あるいは地元の市町村から町村の名前の変更等についても通知を受けたり、いろいろの資料によりましてその事実を知りましたり、また前と同じように地元の検察庁に連絡してその意見を聞き、また裁判所事務局にも連絡してその意見を聞きまして、各方面の異議ないところをとつて、このような法案の形にいたしておるわけであります。大体この管轄区域に関する点につきましては、立案の経過はただいま申し上げたようなところでありまして、こちらが一つの頭で考えてそれを押しつけるというようなことはありません。大体下の方から自然発生的に土地の便不便というような点からいろいろの陳情、請願等がありまして、それがきつかけになつてこういう案になつて来るわけであります。
次に、それらの資料の点でございますが、これはただいま申し上げましたような手続で集めており、大体異議のないところでありまするから、しかも技術的なもので、管轄変更によつて地元局がどれだけ時間的あるいは金銭的に利益があるかというような点、及び管轄変更によつて原裁判所及び変更後の裁判所にどれだけの事件の変動があるかというような実際に集めた資料もありますが、従来の関係等から見まして、また今回の改正がそう大きな改正でありませんで、比較的こまかい技術的の点でありますので、一応そのこまかい資料は省略させていただいたのであります。変更の点の地図等も従つて用意はしておりませんが、御必要ならばこの関係点につきまして後日地図でも出してもけつこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/11
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012・梨木作次郎
○梨木委員 地図でも出してもけつこうだというのでは、まことにそういう発言は国会の委員会をばかにした発言でありまして、われわれはそういうものがなくては審議できないのです。あなたは自由党が絶対多数だから、そういう自由党の絶対多数にあぐらをかいてまつたくかつてなことを言つている。裁判所の管轄を他のところにかえるということは、地元民にとつては重大な関係がある。それを必要とあらば出してもけつこうです——そういう政府委員の説明というものはあるものじやありません。そういうのなら、われわれその資料が出ない限りは審議は延期しなければならぬ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/12
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013・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 今の梨木委員の要望するところは、全委員のまた同じく要望するところでありますから、政府委員に至急に資料を御提出を求めておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/13
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014・野木新一
○野木政府委員 承知しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/14
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015・梨木作次郎
○梨木委員 それじや私は自分の知つている点について質問いたします。法案の七ページにあります石川県の輪島簡易裁判所の管轄区域の欄中、諸岡村を諸岡村町野町に改め、それから飯田簡易裁判所の管轄区域欄中の町野町を削る、つまり従来飯田簡易裁判所の管轄区域にあつた町野町を輪島簡易裁判所の管轄区域に変更しようというのでありますが、この点はどういうような交通、土地の状況からかような変更をするようになつたのかを説明してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/15
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016・野木新一
○野木政府委員 ただいまの金沢地方裁判所管内の石川飯田簡易裁判所管内石川県鳳至郡町野町を輪島簡易裁判所に管轄変更する件についてでありますが、この点は、現在の管轄区検察庁に至る交通の点につきましては、町野町から距離が二十一キロ、時間は一時間十分、交通機関としては乗合バスが一日三往復あります。転属区検察庁に至ります距離は、二〇・九キロ、乗合バスは一日六往復所要時間一時間二十分であります。運賃は現管轄区検察庁に至る方が七十円、転属の方は七十五円になつて、やや高くなつております。しかしこの点につきましては、私どもの調査によりますと、町野町は輪島簡易裁判所管内国警鳳至区警察署の管轄に属しまして、警察と簡易裁判所との管轄を異にしておるという点もあり、この管轄変更に町野町、金沢地方裁判所、金沢検察庁、金沢弁護士会及び所属警察署など全部が異議がない、そういう事情がわかりましたので、この際これを変更するのを適当と存じまして、この案に取上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/16
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017・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 他に御質疑はございませんか——他に御質疑がなければ、以上三案に対する質疑はこれをもつて終局いたします。
次に以上三案を一括して討論に付します。討論の通告がありますので、これを許します。梨木作次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/17
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018・梨木作次郎
○梨木委員 私はこの三案中の裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案について、日本共産党を代表いたしまして、反対の討論をいたしたいと思います。
過般この法案についての私の質問に対しまして、裁判所側あるいは政府側の答弁によつて明らかになつたことは、この中の七十名は警備員であつて、しかもこの警備員というのは、最近の裁判の実情にかんがみて裁判所の秩序維持に寄与するためである、かように大体説明されたと思うのであります。私どもは裁判の権威、裁判所の秩序を維持するということの基本的なやり方は、裁判が国民の全体によつて支持されるということ、国民によつて信頼されるということ、これが裁判の権威と裁判の信頼性と、従つて法廷内の秩序が維持されることであると思うのであります。最近裁判所側では盛んに法廷の秩序の問題に頭を悩ましておるようであります。このよつて来るところは、現在最高裁判所の長官である田中耕太郎氏がしばしば裁判官に対する訓示、あるいは出版物を通して、現在の国際情勢において二つの対立がある。そして日本は、自由主義諸国——これは結局アメリカを先頭とする資本主義諸国家でありますが、この資本主義諸国家にくみしたのである。もうこの陣営に入つてしまつたのである。そしてこれと対立すると称しておるところの共産主義諸国家を国際ギャングであるというような極端な表現を使つて、この観点からこういう二つの国際的な対立の中の一方は国際ギャングである、戦争を挑発するものである。こういう前提の上に立つてすべて裁判をやつて行かなければならぬ。自分のこの考え方に従わない者は、裁判官としての地位にとどまることはできないのである。かように訓示しておる。つまり明らかに反共と、戦争を肯定し、憲法を否定するような言辞を弁し、これを裁判官に訓示しておることは明らかな事実であります。普通裁判官というものは、行政権から中立的な立場をとつて行かなければならぬのが常識であるにもかかわらず、彼は現在の吉田内閣総理大臣ですら言わないような狂暴な反共と戦争政策を宣伝いたしておるのであります。彼の言うことをそのまま日本の一国民が実行するならば、明らかに刑法の外患罪やその他の犯罪に触れるようなことを彼は公然と言つておるのであります。こういう裁判官を一番上にいただいて、そうして今の裁判が遂行されるように国民から受取られる。裁判所が問題にしている法廷の秩序維持、こういう問題の一番起つて来る事件は政治犯であります。政治的な、思想的な、また経済的なものを基盤として起つて来たところのいろいろな紛争、これが刑事事件として検挙され、これが法廷に現われておるのである。これをもう少し端的に言うならば、二つの国際的な対立——私どもはこれは單に資本主義と共産主義の対立ではなくして、戦争をしようとする勢力と、平和を守ろうとする二つの勢力である、かように考えておるのでありますが、これが法廷の中で、一方は自分では戦争を挑発し、戦争政策を遂行させながら、この戦争に反対し、平和を守ろうとする者を政令三百二十五号違反だとか、いや何だかんだといつて、これを犯罪としてでつち上げて、刑事被告人にし、投獄しようとする。最高裁判所の長官が、これを勇敢に弾圧しよう、これを犯罪視して投獄しようということを言つておる。だから、法廷に出された被告人の側からいえば、また戦争に反対し、再軍備に反対し、吉田政府に反対する者からいえば、法廷に引出されること自体が弾圧である、かように受取るのは当然であります。このような裁判それ自体が国民にとつては一つの大きな弾圧であるというように印象づけられて来ている、この問題を解決しないでおいて、かような、時の政府や検察庁が戦争政策やそのような司法フアツシヨ的なことをやることに対して、裁判所が独自な立場から憲法を守り、また平和を守ろうとするこの努力をやることによつて、国民のほんとうの信頼と裁判の権威というものが真に保たれるのであります。今日日本の裁判史上においてあの児島惟謙という裁判官がさん然として光つているのは、ロシアの皇太子に危害を加えようとした日本国民に対して、時の政府がこの国際的な問題に非常な卑屈な態度をとつて、刑法に規定のないような処罰を裁判所に要求したときに、この時の政治権力に毅然として抵抗いたしまして、裁判の独立、従つて法律を守り、国民の権利を守るという態度を貫徹したことの中に、この児島推謙裁判官に対する国民の信頼と、裁判に対する信頼性というものが今日打立てられて来たのではありませりんか。こういうようなことを見ましても、こういう先輩があつたからこそ日本の裁判所というものは、行政官僚の非常な腐敗にもかかわらず、裁判官の独立、裁判官の潔癖、またその権威が保たれて来たのではありませんか。ところが最近になりまして、この田中最高裁判所長官が裁判官になつて以来というものは、まつたく時の権力、アメリカの戦争政策、そしてこれに便乗する日本の吉田政府の政策に阿諛迎合して、ひたす平和を守り、法律を守り、憲法を守ろうとする人民大衆を弾圧しようとする裁判をやつている。この中にこそ、彼らが幾ら警備員をふやし、警察の援護を求めても、国民全体から排撃される。国民全体の信頼を受けていないところに、どんなに努力したつて裁判所の秩序を維持することはできないのであります。
この間わが党の林百郎議員に関して長野の地方裁判所における記事が新聞に何か出ましたが、その後私がいろいろ聞いてみますと、こうだ。林百郎君が当然その日あらかじめ裁判所へ出るということを通告してあつたにもかかわらず、弁護人としての立会いのこの林君が来ないにもかかわらず、つまり弁護人なくして無理やりに裁判を開こうとした。ここにまず法廷の紛糾が起きた。そしてとうとう裁判ができなくなつた。これは無理やりに弁護人を制限し、強行しようとするから裁判ができない。そしてとうとう裁判ができなくなつてしまつて、その日は開廷早々に閉廷になつた。そのあとに林君がかけつけて来た。ところが、裁判所は門を三重に締めて、この弁護人に面会しようとしない。林君はようやくかろうじて裁判所の中に入ることができた。そして裁判官を探してもどこにもいない。とうとう探し当てたところは、驚くなかれ検察官の部屋で、そのすみつこに小さくなつて、ぶるぶるふるえておつた。もちろん本人に言わせると、私はふるえておらなかつたと言うのだそうでありますが、しかもこの事を構えて林百郎君を警察で逮捕した。ろとこが、警察の方では何か犯罪の容疑があつて逮捕したのかと思うと、逮捕しておいて、すぐ、いや官庁の時間が終りますれば、つまり五時が済めば必ず釈放します。これは体のいい、弁護人を監禁しておるのではありませんか。そういうように、裁判官というものが検察官のそでの下に隠れて、そして恐れおののかなければならないような、これはまつたく検察官の傀儡に裁判官がなつているのではありませんか。全国民の信頼を受け得る裁判を自分はなしておるという自信がありますならば、一検察庁の検察官の部屋のすみにぶるぶるふるえていなければならないようなこの醜態、ここにこそ植民地における裁判の腐敗堕落というものがまつたく露呈されている。このことを解決することなくしては、とうてい裁判の権威の維持と、それから法廷の秩序の維持というものは期待することができないのであります。ところが、こういうように七十名の警備員をふやす——さらに私の質問によつて明らかになつたところによりますれば、かつてGHQに勤めておつたという法律関係の相当の責任ある地位におつたマコーミツクという人、これは名前は法律顧問でないそうでありますが、これが図書館の仕事をしたり、それから司法関係の卵を養成するところの司法研修所の教官になるというような——しかもこういうことを向うから頼まれた。おれはもう司令部が解散になつたので失業したという、そこでこの失業救済のために、外国のこういう人間をわざわざ四万五千円の月給で雇つて——そればかりじやない。大体アメリカは二十万円くらいなければたしか生活できないはずでありますから、私はほかの手当もたくさんあると思うのでありますが、こういう連中を雇い入れてやつて行こうとする、そして最高裁判所の説明によれば、こういうような外国人を雇い入れても、決して日本の裁判がアメリカによつて圧迫を受けたり、支配をされたりするようなことはないと言われますが、しかしこの間までわれわれはアメリカに占領されておつた。現にアメリカは武力によつて支配しておる。そのときにおいて、かつて日本の裁判所の法務関係に非常な権力を持つて臨んでおつたその同じ人が最高裁判所に入り込んでいるということになりますと。ここからアメリカの支配を受けないとたれが保証できますか。こういうことを考えて来た場合におきまして、裁判の秩序維持のために警備員をふやすというようなその考え方そのものが、まつたく武力によつて、こういう警察的な力によつて裁判の権威と秩序を維持しようとすることの中に、すでに司法フアツシヨの現われがあると私は思う。そうではなくして、人民にほんとうに奉仕するような、人民の信頼を受けるような、法律と憲法を守るような、人民の生活をほんとうに守るような裁判をする、その方向にこそ日本の一切の司法機構をかえて行かなければならぬというこの考え方の上に立たなければならぬ。これを無視して、七十名くらいの警備員をふやして、そして秩序を維持しようとするかような法案には絶対に私は賛成することができない。反対いたします。その他の法案についても、わが党は反対であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/18
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019・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 これにて討論は終局いたしました。
次に以上三案を一括して表決に付します。最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の一部を改正する法律案、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案及び裁判所職員定員法等の一部を改正する法律案、以上三案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/19
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020・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 起立多数。よつて以上三案はいずれも可決すべきものと決しました。
この際お諮りいたします。本日議決せられました各法律案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/20
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021・佐瀬昌三
○佐瀬委員長 御異議なければ、さようにとりはからいます。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時三十六分散会
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101305206X05519520521/21
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