1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年四月十四日(月曜日)
午前十時三十一分開会
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委員の異動
四月十四日委員堂森芳夫君辞任につ
き、その補欠として三木治朗君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 梅津 錦一君
理事
長島 銀藏君
井上なつゑ君
委員
草葉 隆圓君
中山 壽彦君
常岡 一郎君
藤森 眞治君
山下 義信君
谷口弥三郎君
松原 一彦君
衆議院議員
高橋 等君
国務大臣
労 働 大 臣
厚 生 大 臣 吉武 惠市君
政府委員
引揚援護庁長官 木村忠二郎君
引揚援護庁次長 田辺 繁雄君
事務局側
常任委員会專門
員 草間 弘司君
常任委員会專門
員 多田 仁己君
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本日の会議に付した事件
○戰傷病者戰没者遺族等援護法案(内
閣提出、衆議院送付)
○請願及び陳情の取扱いに関する件
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001・梅津錦一
○委員(梅津錦一君) これから本日の厚生委員会を開きます。
公報でお知らせしてありますように、戰傷病者戰没者遺族等援護法案の提案理由の説明を政府からお聞きすることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/1
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002・吉武恵市
○国務大臣(吉武惠市君) 只今議題となりました戰傷病者戰没者遺族等援護法案の提案理由について御説明申上げます。
御承知のように、戰傷病者、戰没者遺族等に対する国としての処遇は、扁用人たる軍属を除きまして、恩給法に基き、その公務上の負傷又は疾病に関しましては、増加恩給、傷病年金等が支給せられ、又その公務上の死亡に関しましては、扶助料等が支給せられていたのであります。然るに今次大戰の敗戰に伴いまして、昭和二十年連合国軍最高司令官の指令たる「恩給並二扶助料ノ件」が発せられ、これに基きまして、昭和二十一年ポツダム勅令第六十八号により、これらの恩給はその支給を停止され、僅かに戰傷病者等に対して少額の増加恩給のみが残されているに過ぎないのでございます。更に陸海軍部内の雇用人たる軍属の戰時災害による公務上の負傷又は疾病につきましては、内地勤務の者に限り、それぞれ陸軍軍属戰災救恤規程、海軍共済組合令等により処遇せられ、現在におきましては、旧令による共済組合等からの年金受給者のたあの特別措置法により、これらの雇用人に対しまして年金を支給いたしておりますが、雇用人たる軍属のうち戰地勤務の者につきましては、年金を支給すべく立案中に遂に終戰に至り、少額の一時金を支給したほか、今に至るまで何ら適切な処遇をいたしていないのであります。
これらの戰傷病者、戰没者遺族等は、過去における戰争において国に殉じた者でありまして、これらの者を国が手厚く処遇するのは、元来国としての当然の責務であります。敗戰による止むを得ざる事情に基き、国が当然になすべき責務を果し得なかつたのは、誠に遺憾の極みと申さなければなりません。併しながら、すでに平和條約は締結せられ、その効力発生の時期は目睫の間に追つているのてあります。この講和独立の機会に際しまして、これらの戰傷病者、戰没者遺族等に対し、国家補償の精神に立脚してこれらの者を援護することは、平和国家建設の遂にある我が国といたしまして、最も緊要事であることは言を待たないのであります。これがこの法律による戰傷病者、戰没者遺族等の援護を行おうとする根本的趣旨でございます。
次にこの法律案の大要について御説明申上げます。第一に対象でありますが、この法律による援護を受ける対象は大別して二つといたしました。その第一は、昭和二十一年勅令第六十八号により、恩給権を停止又は制限された旧軍人等及びその遺族であります。第二は、戰地勤務の有給の嘱託員、雇員、用人、工員又は鉱員たる軍属又はその遺族であります。恩給権を制限又は停止された旧軍人等及びその遺族については、今更説明を要しないところであり、又戰地勤務の雇用人及びその遺族につきましては、前に申上げました内地勤務の雇用人たる軍属及びその遺族との間に存する処遇の不均衡を是正いたそうとするものであります。
第二に、援護の内容について申上げます。先ず、戰傷病者等に対しましては、最高六万六千円から二万四千円までの障害年金を支給いたしまして、更に一定の症状の者に対しては、その職業能力を回復させ、その他その更正を図るために、更生医療の給付を行い、又補装具を支給し、加えて重度の身体障害者については、国立保養所を設置し、これに收容する方途を講じて、その援護の万全を期そうとしているのてあります。又遺族に対しましては、遺族年金及び遺族一時金を支給することにいたしました。即ち、不具廃疾の夫、十八才未満又は不具廃疾の子、六十才以上又は不具廃疾の父母、扶養する直系血族のない十八才未満又は不具廃疾の孫、扶養する直系血族のない六十才以上又は不具廃疾の祖父、祖母の範囲の遺族に対し、配偶者については一万円、その他の遺族については一人につき五千円の年金を支給し、その生活の援護の一助といたしているのてあります。又、昭和十六年十二月八日以後、即ち太平洋戰争開始以後戰没した者の遺族に対しましては、遺族一時金として、妻、不具廃疾の夫、十八才未満又は不具廃疾の子、父母、扶養する直系血族のない十八才未満又は不具廃疾の孫、祖父母の範囲及び順位によつて、遺族に対し戰没者一人につき五万円の記名国債を交付することといたしたのてあります。
これら各措置の施行に要する経費は全額国庫負担でありまして、障害年金の所要経費約十八億円、遺族年金の所要経費約百五十六億円、遺族一時金として交付される公債利子の所要経費約五十三億円、更生医療等に要する経費約七億円、その他事務費として約三億円、計約二百三十七億を計上いたしている次第であります。
以上がこの法律案の大要でございますが、本法律案に定められているもののほか、遺家族の子弟の育英を充実し、戰没者の霊を慰めるための合同慰霊式典に要する経費に対し補助し、身体障害者を一定の事務所に雇用させる等の措置をとるごとにいたしまして、これがため約二億円の予算を計上いたしている次第であります。併しながら、戰傷病者戰没者遺族等に対する処遇については、政府は今次の案を以て十全のものとは考えているわけではございません。併し、現下の我が国の財政力の下においては、止むを得ざるところと考えているものであります。なお政府は、別途恩給法特例制度審議会を設置して旧軍人等又はその遺族に対する恩給につき調査審議を行う所存でありまして、これがため必要な法的措置として恩給法の特例に関する件の措置に関する法律案を今国会に提案した次第であります。これら諸般の事情を了とせられ、愼重御審議の上、速かに御可決あらんことを切望する次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/2
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003・梅津錦一
○委員長(梅津錦一君) 以上で提案理由の説明の聽取は終りました。本日はこの程度でこの遺族援護の件は終つて、休憩したいと思いますが、如何でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/3
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004・山下義信
○山下義信君 ちよつと速記をとめて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/4
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005・梅津錦一
○委員長(梅津錦一君) 速記をとめて。
午前十時三十九分速記中止
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午前十時五十六分速記開始発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/5
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006・梅津錦一
○委員長(梅津錦一君) それでは速記を始めて下さい。
お諮りいたします。今日までに当委員会に付託せられた戰傷病者、戰没者遺族の援護に関する請願並びに陳情を一括いたしまして、引揚問題及び遺族援護に関する小委員会に付託したいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/6
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007・梅津錦一
○委員長(梅津錦一君) ではさよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/7
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008・梅津錦一
○委員長(梅津錦一君) 次に、戰傷病者戰没者遺族等援護法案の修正を衆議院におきまして決定して、本会議を通過して本院に廻つておりますが、本日は衆議院の小委員長の高橋さんから修正個所に対する御説明を伺いたいと思います。お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/8
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009・高橋等
○衆議院議員(高橋等君) 戰傷病者戰没者遺族等援護法案の衆議院におきまする修正点につきまして、概略御説明を申上げます。
お手許に一枚刷りのものを差上げてありますが、その修正点の第一は、本法は援護法という名称を使つております。至るところ援護という名前で現わされておるのでありますが、その援護は飽くまでも国家補償の精神に基いたものである。そうして援護と言いましても、これは国家補償のやり方の一部分であるという思想を考えまして、一応法律はこのたびの法案が暫定措置で援護的分子が多いという関係で、法案の名称は援護法というものを受けておりますが、第一條の目的には、少くとも本援護は国家補償の精神に基いてやるのだという目的をはつきりとさすために第一條を修正いたしました。
それから次に遺族一時金についてでありますが、一時金と言いますと、将来の恩給の打切りその他を意味する虞れがありまするので、そうしたことがないようにということは、政府との間のたびたびの質疑によつて明らかになりましたので、一時金という名称は一応そのままにいたしますが、やはり三十四條で、その一時金の目的を弔慰のために一時金を出すのだということにはつきりと謳つて、性格を現わしたわけであります。
それから次に一時金につきましては配偶者、子、父母、祖父母、孫というような者に支給されることになつておりますが、これは弔慰の意味を含めたのでありますから、できるだけその範囲を拡げたい。一応どの程度まで拡げればいいかということも考えられたのでありますが、先ず兄弟姉妹までは少くとも拡げねばならないというので、その支給範囲を兄弟姉妹まで拡張をいたしました。
それからなおこれは三十五條関係ですが、戰没者と同居その他の條件が付いております。又子及び孫に年齢の制限がついております。夫については不具廃疾であることが條件になつておりますが、弔慰のための一時金という思想から行きますと、こうしたものも條件を付けることが間違いでありますので、全部一時金についてはこれを削除いたしました。
それから次に、この遺族一時金の受取人の順位についての調整をいたしたのでありましてこれはこの表の一番最後のところへ参考といたしまして、「遺族一時金の受取人の順位の調整について」というところを御覧願いたいのであります。ちよつと読みますと、常時戰死者の葬祭をなすものと推定せらるる者を優先をせしめる。その他のものにつきましても順位を繰下げて兄弟姉妹までの範囲においては支給を受け得ない者がないように、兄弟姉妹までおりますれば、誰かがこの弔慰金は受けるんだということにいたしたわけでありまして、従つてこの左の表に掲げてありまするものは一般の婚姻をしないところの妻、或いは子、父母というような者と同じ順位に置く必要がある。即ちこういう例えばこの遺族の中で兄弟姉妹と結婚をした配偶者というようなものにつきましては、婚姻をしない配偶者と同じような順位で待遇を與える必要がある。或いは又妻が婚姻によつて取得した氏のままで婚姻をした場合、その氏のままでよそから養子を迎えるというような者も同じように考えなければいかんだろうし、或いは遺族の養子となつたような人もやはり同じように考えなければいかん。これらは常時戰死者の葬祭をなす者と推定せられますので、普通の配偶者と同等な扱いをする。但し配偶者であつても他家へ、全然よその家へ養子に行つた、或いは婚姻をしたというような場合は、これは残つたところの子とか、或いは父母とかいう者よりも順位を下げましてここに挙げておりますが、兄弟姉妹までのところの資格がない、兄弟姉妹の人がおらんような場合にはそうした妻へ今度は弔慰金を出そう。こういうような考え方を織込んで実は調整をいたしております。條文が少し複雑のようでありますが、これはこの表を御覧下さいますと、配偶者の場合は遺族と婚姻せる者、同氏のまま婚姻せる者、遺族の養子となつた者、子及び孫では同氏のまま婚姻せる者、遺族の養子となつた者、母と共に実家に入籍した者、父母、祖父母、兄弟姉妹等につきましては、やはり同じような恰好のことでこれだけのケースをすくい上げたということになります。例えばなお同氏の点でいろいろ疑問があるようでありますが、これは子供というものを考えて来ますると、子供が同氏であると称しますのは親子関係によつてできましたところの氏のままでおる、こういうような考え方を條文に現わしておるようなわけでありまして、ちよつと複雑のようでありますが、これははつきりしたケースをきめたと考えております。
それからその次はごの(c)という條項です。「遺族一時金の利子が前拂いできる規定を捜入すること」この遺族一時金は一年据置主の十カ年年賦を原則といたしております。併し利子につきましては本年度の予算にも計上してあります。そうしてなお成るべく早くこの公債から金が拂つてもらえるようなことが理想であります。一応利子につきましては後拂いが原則でありますが、前拂いの原則をとりまして、今年度からこの利子だけは支拂う。来年度は元利を支拂つて行く。従つて今年度の公債は三千円の利子を現金として支拂う。こういうことになつているのであります。
それから次は遺族年金の関係であります。遺族年金につきましては、一万円、五千円という金を分割拂いをしないで、原則として一時拂いにする。「遺族年金は金額を一時に支拂うこと。」従つて従来恩給等によりましては全部後拂いになつておりますが、これは前拂いできるようにこれをいたします。それから年度の途中で権利を獲得した人、即ち年度の途中で年齢が六十才になつたような人、こういう人だけには月割計算で支拂うことにするが、年度の途中て権利を喪失した人、この年度の途中で十八才になつたというようなかたは、今まで六年八カ月にも亘る長い間そのままにして置かれた人々でありますので、今度権利を喪失したからといつてすぐ月割でその金を戻せということは酷に失すると考えられますので、今年二十七年度限りはこれを返還をする義務を免除する、こういうことであります。
それから傷害年金及び遺族年金につきましては、三年以上の懲役或いは禁錮というようなものに処せられました場合には権利が消滅することになつておりますが、これも終戰後非常な社会の変遷、経済或いは道徳の変遷の下におきまして、いろいろな犯罪犯した人も出ておるのでありましようし、これを懲役に処せられたというだけを以て受給権の消滅條件とすることは酷に失するのではないか、従つてこの際は、これは恩給法は消滅條件にいたしておりまするので、今後の一般の恩給の場合との権衡は今後審議会等において研究をいたさねばならない点があるのでありますが、少くとも本法によりましてはこれを消滅とささないで、これらの懲役等から出ました場合には傷害年金、遺族年金は受取れるように停止條件にしよう、こういうことで訂正をいたしております。
なお、この場合にこれに書いておりませんが、遺族一時金につきましても、こうしたかたがたについてはこれは消滅條件になつております。併し今年の四月一日までにこれらの服役を終つた人に対しましては、これは一応停正條件という観念を考えまして、やはり一時金の受取権があるということに條文は改正になつております。
それからここでちよつとこの三のところで四十三條というのがありますのはお削り願いたいのであります。附則の第十号だけが変つております。
それから次はこの障害年金を受取つておりました人が亡くなりました場合には、本法によりますと十分の六の遺族年金がもらえる、即ち一般の場合は一万円ですが、妻の場合は六千円の遺族年金がもらえる、こうなつております。ところがその合計が二万四千円ということに押えてあります。これは六項症の場合で押えておるのでありますが、六項症で押えないで各項症ごとに死亡前にもらつておつた金額を越すことができないということに実は改めました。
それからその他字句の修正でありますが、その中の字句というよりも、或いは見習士官等につきましても、亡くなりましたときはこれを軍人とみなすというような項目が入つております。或いはこの支拂いにおきまして、郵便官署の取扱うところの規定等その他いろいろありますが、大体本法の骨子となるところのものの修正は以上の諸点でございます。
なおここに衆議院では本法を通過せしめます上におきまして、附帶決議を附けております。戰傷病者、戰没者遺族等援護法案は暫定的措置であるから、速やかに遺族に対する国家補償制度を確立せよという意味の附帶決議を附けております。
以上簡單ですが、御説明申上げまして、あとは御質問にお答えいたしたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/9
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010・梅津錦一
○委員長(梅津錦一君) 以上で修正個所の御説明をして頂きましたが、何か御質疑がございましたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/10
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011・山下義信
○山下義信君 この衆議院の修正案につきましては、十分詳細に承わりたいと存じますので、それは小委員会に讓らして頂きたいと思うのです。厚生委員会は本日はこの程度で散会を願つて如何でしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/11
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012・梅津錦一
○委員長(梅津錦一君) 只今山下さんからの御発議で、小委員会のほうに修正個所に対する詳細の事項は讓つて、本日はこれを以て散会するという動議がございますが、御意見ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/12
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013・梅津錦一
○委員長(梅津錦一君) なければ本日はこれを以て散会いたします。
午前十一時十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314237X01519520414/13
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