1. 会議録本文
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000・会議録情報
公聴会
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昭和二十七年六月十六日(月曜日)
午前十一時十一分開会
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委員の異動
六月十三日委員清澤俊英君辞任につ
き、その補欠として小林孝平君を議
長において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 竹中 七郎君
理事
小林 英三君
松本 昇君
結城 安次君
栗山 良夫君
委員
重宗 雄三君
中川 以良君
山本 米治君
島 清君
小松 正雄君
境野 清雄君
西田 隆男君
石川 清一君
委員外議員
清澤 俊英君
事務局側
常任委員会専門
員 山本友太郎君
常任委員会専門
員 小田橋貞寿君
公述人
福岡県鉱害対策
組合連合会副会
長 栗田 数雄君
東京大学教授 青山秀三郎君
小野田市長 姫井 伊介君
東京大学教授 我妻 栄君
福岡県知事 杉本 勝次君
日本石炭協会副
会長 万仲余所治君
福岡県鉱山関係
市町村連盟副会
長 春 孝一君
日本石炭鉱業連
合会常任理事 国崎 真推君
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本日の会議に付した事件
○臨時石炭鉱害復旧法案(内閣送付)
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001・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 只今より臨時石炭鉱害復旧法案に関する通商産業委員会の公聴会を開会いたします。
午前中の公述は栗田、青山、姫井、国崎各公述人から御意見を徴し、午後は杉本、万仲、春、我妻の四公述人から御意見を承わる予定にしております。併しながら本会議の関係上時間が遅れましたので、或いは午前中都合四人のかたにお願いできないかもわかりませんが、この点御了承賜わりたいと思います。
次に公述人のかたがたに申上げます。御多忙のところ父御遠路のところ而もあいにく雨の中をわざわざ御出席下さいまして誠に有難く厚く御礼申上げます。公述して頂きまする問題は、只今申しました臨時石炭鉱害復旧法案全般についてであります。公述は時間の関係上大体十五分ぐらいでお願いいたしたいと思いますからさよう御了承願います。
では栗田公述人からお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/1
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002・栗田数雄
○公述人(栗田数雄君) 私は福岡県の鉱害被害者代表の栗田数雄であります。公述に先ちまして一言御挨拶申上げたいと思います。先般竹中委員長、島、清澤の諸先生がたは、会期余すところ少い御多忙の際にかかわりませず九州の遠路までおいで下さいまして、あいにくの雨の中早朝から暮夜に至るまで悪い道をお歩き願いまして、現状をつぶさに御踏査下さいましたことを厚く深く御礼を申上げます。さきに特別鉱害復旧臨時措置法並びに鉱業法の改正に当りまして、それぞれ本参議院におきまして公述をいたし、更に本日ここに公述人に御選定下さいまして意見の一端を述べ得る機会をお与え下さいましたことを、これ又深く御礼を申上げます。
石炭採掘の増強に伴いまして、鉱山業が発展いたしまするかげに刻々増大する土地の陥落と年々累積したこれらの深刻な被害に苦しむ私ども被害者の参怛たる窮状は、一昨年五月二日特別鉱害復旧臨時措置法成立に当りましての衆議院本会議の決議や、同年十二月七日衆議院通産委員会においてなされました鉱業法審議に際しての決議においても明らかなように、弱い被害者の救済と国土保全、民心安定のため鉱害地の原状回復を断行せよ、ために委員会を設置して必要な法律を立案すべきであるという決議がなされております。かかる過程を経てここに臨時石炭鉱害復旧法案が誕生いたしまして、諸先生がたの審議を煩わすことに相成りましたことは誠に感謝の至りでございます。この故を以ちまして本法案は飽くまでも被害民の窮状を救済するということを中心として、国土の保全、食糧の増産、民心の安定を図り、よつて鉱害による社会不安を除去すべき法案でなからねばならんことは申すまでもありません。
然るに今般政府当局が提案せられました法案は、加害炭鉱の利益擁護の方向に重きをおかれて、被害者が依然として犠牲を強要せらるる結果となる必然性があるかと考えられまするので、被害者の総意を代表いたしまして以下四項目に亘り修正の意見を述べさして頂きます。
第一が、復旧工事が完了して竣工の認定のあつたときにおいて、鉱業法第百九条の規定による鉱業権者の損害賠償の責任消滅の規定は削除せられるべきである。理由といたしましては、一定の工事が完了しても、麦や米が従来通りの収量を得るようになるには地方の旧復を要するのであります。耕作土壌が元通りの熟田になるには表土いわゆる上土返しをいたしましても三年や四年、又ボタや山土で埋立てたのでは十数年の歳月を経ましてもなお十分でない事実は、過去の復旧工事の歴史を見ても明らかであります。にもかかわらず法第五十一条により鉱業権者は一定金額の納付によつて補償が打切られて賠償の責任を免除されることは、被害者に将来の不安を抱かしめるのみならず、工事の完了認定に当つて相当の紛争を起す素因を作る結果となることは明らかで、断固この問題に対しては反対せざるを得ないのであります。昨年欧州の鉱害地視察をなされた報告の一部を拝聴いたしましても、ドイツの現行法の第百四十八条は、鉱山側があらゆる地表損害に対して責任を有する旨を規定して過失の有無を問わない、結果責任を明記しておる。この鉱山側に完全なる賠償義務のあることを明示しておる、この賠償義務は原状回復の責任であることを最高裁判所の判例が確認しておると報告せられております。私ども被害者は二三の例外を除いて大部分は炭坑の開設以来戦争が起るまでは、原状回復を炭坑になさしめておつたのでありまして、それは過去の歴史を見ますると、炭坑が先ず村に事業を始めようとしますと、炭坑の代表か又は相当信用ある人が附添つて参りまして、我々を集めて炭坑を開かして頂きます、どうか御協力を願いたい、併し将来皆さんがたには絶対御迷惑はかけませんと約束をしておられます。その結果今まで道や堤防、家屋、墓地は勿論のこと、耕地におきましても、福岡県では昭和十七年までに千三百余町歩の復旧が一応なされておる事実をもつていたしましても、業者が開坑当時の信義を尊重せられて、被害者も又炭坑を深く信頼して、両者間に余り大きい摩擦もなく今日に至つたのであります。
然るに戦争が始まりまして敗戦に至るまで先ず第一に復旧しようにも復旧の資材がないということと、かてて加えて炭坑の経営が非常に困難になりました。その重圧が被害民に転嫁されて惨怛たる結果を来したのであります。私どもは無謀な賠償を要求するものではありません。憲法の第二十九条に擁護せられたる財産権の侵害を主張するに過ぎません。これを私ども無学でありますからよく存じませんが、法的に考察いたしましても炭坑が無断で地下を採掘して地上権者に被害を与えておることは、採掘権者が被害の発生を予見せずとも過失による不法行為が成立する。ましてや現在のごとく採掘すれば当然被害を与えることを承知しながら石炭採掘を行うにおいては、故意による不法行為で民法上の不法行為による損害賠償の責任を免れることは得ないにもかかわりませず、今般の法案は鉱業法の不備を是正する法案でなくてはなあないのに、七十五条によつて鉱山に有利にして被害者の権益を無視する結果となるので、若し本法案の修正が行われないとすれば国家みずからが憲法違反の行為に出る結果とみなしてこの法案修正を主張するものであります。
第二は家屋、墓地等の非公共事業の復旧についても公共事業に劣らざる強力なる施策を立てて社会不安を除去して頂きたい。本法案を通読いたしますると、家屋、墓地等の復旧工事に関しては極めて冷淡でただ単に協議及び裁定によつてのみ解決を求められておりまするが、炭坑被害で社会問題として最も深刻悲惨なのはこれら家屋、墓地等であります。非公共であるといえども被害を受ける過程及び社会性は公共事業と何ら劣るものではありません。事業計画に取入れる等強力なる案に修正を願いたい。
第三に地方公共団体の負担を軽減又は免除をせられたい。鉱業被害地の県及び市町村は鉱害に伴うて種々の負担を間接に受けております。本法案においては農地及び農業用施設の復旧費の一部負担、事業団の事務経費の負担、鉱業権者不明又は負担能力のない鉱害地の復旧についてそれぞれ負担を課せられております。このことは後ほど県、市町村代表よりそれぞれ主張される事項でありまするが、地方税を負担する被害民としましても本案の修正を強く要望するものであります。
第四が復旧不適地の処理を第七十八条に規定せられてこれが認定を農林、通産省令で一方的に裁定せられ、鉱害賠償の責任の消滅を決定せられることは不当である。市町村長並びに被害者の同意を要するように修正をして頂きたい。理由といたしましては第五十一条の納付金には最高限度が示されておることと、鉱山地帯の殆んどが復旧する耕作土壌に乏しくて附近の山野は岩石又は赤粘土、赤土で復旧には多額の費用を要すると共に工事完了後効用の回復に至るまでの費用も又相当大きい金額を必要とすることは必然であります。従つて経費の面から本条文を濫用せられますると、被害者の生活基礎を根底から覆えして社会不安を来す結果と相成ります。よつて決定に当つては市町村長並びに被害者の同意を要するように修正を要望いたします。
以上の修正要望については先の衆議院通産委員会主催の公聴会においても私公述して諸先生がたの御賛同を得て修正成るものと確信いたしていましたところ、衆議院では本法案の審議を月余に亘つてなされておるにもかかわりませず、未だに結論に至らず会期も切迫して被害民は極めて不安の気持に焦つております。不幸にして本法案が本国会において審議未了等に終りましたときにおいては、その責任は衆議院にありと叫ぶ声もあるのであります。賢明なる参議院の諸先生がたにお願いをいたします。何とぞ私ども被害民の苦衷を御賢察下さいまして、修正の要望事項を御承認の上速かに本法案が成立いたしまするように切にお願いいたしまして私の公述を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/2
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003・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 次に東京大学教授青山秀三郎君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/3
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004・青山秀三郎
○公述人(青山秀三郎君) 私は只今御紹介頂きました東京大学の青山秀三郎であります。私はその専門といたしまして、大学におきまして鉱山、殊に採鉱学を受持つておりますのでその観点から主として申上げることになると思うのであります。さよう御了承願いたいのであります。
先ず冐頭にこの両三年来鉱業関係の幾つかの法案がこの国会で御審議に相成りました。その際公聴会におきまして公述人として述べて参つた機会もあるのでありますが、それが実際法律となつて公布されたのを見ましてよく御考慮頂いておるということをあとから見まして誠に感謝いたしておるものであります。この法案につきましても実は石炭鉱害地の復旧対策審議会におきまして、私も委員の一人として列席いたしましていろいろ意見を申述べて来たのでありますが、その間政府当局のいろいろ御意のあとはよく承知いたしておるのであります。それらを考慮いたしまして今回の法案には私も趣旨として先ず賛意を表するにやぶさかでないのであります。ただその内容につきまして二、三この際希望的な意見を申上げておきたいと思うのであります。
今年の一月下旬だつたと思うのでありますが、その要綱でいろいろ決定されたのであります。その後只今の法案と比較いたしまして考えさせられるのでありますが、その第一といたしまして、鉱害の復旧事業団の運営に関することであります。その中に評議員会の権限の問題があるのでありますが、評議員会が事業団の重要な業務全般に亘りまして議決をする性格が盛込まれておるのでありますが、これは而もその議決は過半数制をとつておるのであります。この種事業団はその業務が主管大臣の認可によるのであつて、理事者にも相当幅の権限を持たせればいいと思われるのであります。殊にその理事者選任には評議員会が関与することになつておりますので、評議員会としてはむしろ只今の法案の権限は多少過大に失するのではないかと思われるのであります。これは第二十三条の関係であります。
もう一つは事業団の経費の問題でありますが、これは第二十八条と思いますが、当初年度におきまして石炭のトン当り五円以内、又二年度以降におきまして鉱業権者の復旧費の七%以内ということになつておるのでありますが、この事業団の事務経費は必要な程度は当然調達しなければならないことは申すまでもないのでありますが、その事業経費の膨脹を避けたいというのでありまして、差当り九州と宇部地区に各一カ所となつておるのでありますが、その個所のこともさることながら、経費の増大を防ぐ一方、その負担はこれは国庫負担の性格を主とすべきではないかと思うのであります。なおその負担の公正を期して欲し心と考えられるのであります。殊にその相当な割合が鉱業権者の負担となることは、却つて弊害を伴うのじやないかと思うのであります。これが結局事業団に関する問題であります。
第二は鉱業権者又は租鉱権者の賠償責任ということであります。もうかねがねいろいろと話されおりますので、ここで申上げる必要もないかと思うのでありますが、石炭鉱業が持つ国家産業界の使命或いはその地位に鑑みまして、その経営の能、不能ということは国家に及ぼす影響は至大なるものがあるということは、今までの数年来の経過によりまして篤と御承知のことと思うのであります。この考えから我々は石炭鉱業だけを強く考えるということは国家の全般の政策としてとらないところでありますが、その経営を根底から困難ならしめるということは、今申します通り、国家全般を考えて適当でないと思われるのであります。従つて今回の鉱害による鉱業権者又は租鉱権者の負担、或いは賠償の義務も合理的な範囲にこれをとどめたいと思うのであります。それがいたずらに過大に失しましてその負担能力の限界を越えるということはどう考えても賛成できないのであります。この見解からいたしますれば、或いは農地に対する納付金として、土地の基準賃貸価格の「二千を下らず五千をこえない」というような範囲の問題もあろうかと思うのであります。
それからこれは今回の法案の相当問題の点であろうと思うのでありますが、灌漑用の排水施設ポンプでありますが、その完了後更にその維持管理をその賠償義務者に強制するというようなことは、只今申しました趣旨に対して私はどうも賛成できないと思われるのであります。又鉱業権者の賠償責任の消滅の時期でありますが、只今もお話がありましたが、鉱業権者が事業団に対して納付金を完納した場合でも、その工事が完了するまで賠償を続けなければならないとなつておりますが、この時期に対しても私は考慮すべき点が多いのではないかと思われるのであります。聞くところによりますると、復旧完了後の洪水であるとか、或いはその他の不測の天災による特別な措置ということも問題になつておるようでありますが、それらは前段の関係において同様に考えて頂きたいと思うのであります。そもそもこの鉱業法の制定の際に、その賠償の根本観念といたしまして、我々は強く金銭賠償主義を述べて来たのでありますが、それが今回の鉱害の復旧法案におきまして再び原状回復主義というものに逆戻りをするような感があるのでありますが、殊に農地及び農業用施設におきましては、この間いろいろ複雑な又深刻な問題のあろうことは勿論想像されるのでありますが、納付金を納めましてもなお相当期間効用の回復が十分認められるところまでその責任の一部を分担しなければならないということは、鉱業権者のために私はとらないところであります。
その他或いは家屋であるとか土地の復旧についても裁定制度の申請等いろいろ法案の内容に亘りまして希望されるところもあるのでありますが、家屋等の復旧計画に対しては能う限り私はこれを或る線で限定したいと思うのであります。地方公共団体の負担の軽減に関して私は大した異議を持たないのでありますが、そのために鉱業権者の負担が増大するということは前段の趣旨に合せまして適当でないと考えるのであります。国の負担において行うべきものは従つて或る程度幅が増すかとも思われるのでありますが、さような措置を希望されるのであります。
元来石炭の鉱害の根本問題の対策といたしましては技術に関することが少くないと思うのであります。丁度最近でありますが、この四月から約三カ月間の予定でドイツからアーヘン大学の教授でありますフリツチエ教授が来朝いたしておりまして、只今九州地区の視察を終えて北海道に参つておるのでありますが、その間この七日に東京で一日過されましたので、私ども終日フリツチ博士に伴いましていろいろ意見を交換する機会を得たのでありますが、その際も実はこの問題が多少気にかかつておりましたので、僅かな時間ではありましたけれども、先方の事情又こちらの事情も話したのであります。フリツチエ教授はすでに今申しました通り九州地区は一応見て廻られたのであります。勿論この鉱害の問題について特に調べたというのではないのでありますが、当時は採鉱技術、鉱山技術ということもありますが、一般に鉱業の経営、鉱山のヴイルトシヤフトと申しますか、経営についての非常に造詣の深いかたであります。ドイツの例と日本の例を対照していろいろ意見を交換したのでありますが、いろいろこの鉱害について問題がある今日、事実今お話があつたような地表に対する影響を及ぼしておるということは技術者としても大いに責任を感ずるところではありますが、年々この問題については技術のほうにおきましても或いは採炭法において、或いは充填法におきまして技術の方針を立ててできるだけその鉱害を最小に食いとめたいという努力をいたしておるところであります。これは将来に亘ることであつて、私が今ここで鉱害は将来起らないのだというようなことを申すことは到底不可能でありますけれども、そういう線に沿つて非常に努力をいたしておるということは御了承願いたいと思います。つまり地表への影響を最小ならしめるための最大なる努力をしておるんだということを御考え願いたいと思うのであります。又地表におきましても、その陥落に関するいろいろな測量上の観測をいたしまして、適当な基準によつてその影響を精密に観測するということで、これはすでにドイツでかなり行われておることでありますが、我が国ではまだそこまでいろいろ地表の条件等がありまして、徹底しておらないうらみを持つのでありますが、私はこの線に副うて、技術者も更に一段の影響が少くなるように、そういう問題を軽減するように努力することを希望しておるのであります。こういう観点から私は只今の問題についてこれをすぐ考え得るものではないのでありますが、そういう点も御考慮願いたいと思うのであります。
以上私は大体において、この趣旨には、冐頭に申上げました通り、賛成をしたいのでありますが、今申しました点において採鉱学の専門の立場から思うままを申上げたのでありまして、本参議院におかれましてもどうぞ我々の意のあるところをお汲み頂きまして、速かな法案の進捗を御考慮仰ぎたいとお願い申上げる次第であります。甚だ失礼でありますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/4
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005・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 次に山口県小野田市長姫井伊介君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/5
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006・姫井伊介
○公述人(姫井伊介君) この法案の立法につきましては感謝いたします。併し関係政令の内容が不明でありまするし、又法の詳しい説明も聞くことができていませんので、若干の疑いを持ちながら希望意見を申述べます。従つて見当違いのものもあるかと存じますが、それは御容赦を願います。
第一は、復旧の原則についてであります。法案の提案理由を見ますると、国の負担において鉱害地の原状回復を断行せよということの国会における決議でありますが、これはこの法案を通して眺めましたときに非常に重大な意義と価値があるもので、この基本理念から立法されたといたしますならば、又更にそれに即応した法律の目的から考えましても、金銭賠償主義によらず原状回復主義でなければならないと存ずるのであります。
第二番目は公共施設の内容についてであります。法の第二条第六項十一号には学校とのみしか記載されておりません。一方鉱業法の六十四条、掘採の制限を見ますると、「鉄道、軌道、道路、水道、運河」等々、更にその最後には、「公園、墓地、学校、病院、図書館及びその他の公共の用に供する施設並びに建物」と書いてあります。やはりこの点から考えましても、公共施設には地方公共団体が維持管理するところの庁舎をはじめ警察、消防署、病院や公民館或いは図書館その他母子寮、保育所とか、社会的な福祉施設も当然入れられなければならないと考えるのであります。然るに、同条第七項には「家屋等」としてありまして、それには「(農業用施設又は公共施設たるものを除く。)」とありますが、これでは学校のほかの公共施設は一般家屋等のうちへ投げ込まれてしまつて、復旧について非常な差別的な措置を受けることになるので、これは適当でないと存ずるのであります。是非同条の六項には学校その他当然公共施設と認められますものを列記的に明記して頂きたいと思うのであります。
第三、地方公共団体の負担は除外して頂きたい。これも鉱業法の第一条の目的に「鉱業資源を合理的に開発することによつて公共の福祉の増進に寄与するため」云々とあります。やはりこの精神も、この法案には取入れられるべきでありまして、合理的開発ということは一つの手段で、目的は公共の福祉の増進に寄与するということでなければならん。その手段のために目的が阻害されるのがこの鉱害なんであります。この法案の目的で「国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定を図り、あわせて石炭鉱業」云々と書いてあります。即ちやはり主たる目的は前段にあることなんであります。鉱害の原因であるところの石炭の採掘は、全国産業振興のための重要な基礎産業でありまして、鉱害復旧は効用回復であつて効用の増加ではない。何ものも復旧以上に特別にプラスされるものがない。復旧以上の特別の受益がないのに、掘採地の公共団体が全国的に受益の犠牲になつて、復旧費の一部でも負担することは、理論上からいいましても、実情から申しましても、当らんことだと存ずるのであります。提案理由には「復旧費の不足分を補いつつ、鉱害復旧について指導及び援助をしようという建前」と書いてあります。前に申述べました国会の決議のごとく、国庫の負担においてというこの大きな基本的な考え方、これから申しまするならば、当然国がそうするべきことであつて、被害地の団体である市町村が負担すべきものではない。従つてこの公共団体は全部負担から除外されるべきものであると存ずるのであります。法の九十四条につきましても従つて事務経費の一部補助も地方公共団体が持つことは不合理である。一方そうした土地には鉱山税の収入があるじやないかといつたような考え方もあるかも存じませんが、例えば山口県の小都市、我が小野田市のごとき多数の炭坑の労務者がおりまして、それがためには特に労働行政を運営する上において労政の審議会を作り、労働会館を作り、更に労務課といつたようなものまでも特設いたしまして、なお一方これらの炭坑業の関係から生み出されました多数の失業者のために失業対策事業を行い、それの市の負担は莫大なもので、決して鉱山税などを以て補うことはできない。その点から申しますると鉱山税などはまさに九牛の一毛にも過ぎない状態にあるのであります。こういう点から繰返しまして私は絶対にこの費用の負担は地方公共団体に課せられるべきものでないということを強く主張いたしたいのであります。
第四、再検査の請求権、法の第七十四条でありますか、石炭の採掘は炭層の段階がありまして、立体的に掘られて行く、丁度「はす」と申しますか、あれを横に並べたようなもので幾つも穴が地下に掘られて行くわけなんであります。而もときには鉱業権者は人を変えてその仕事に携わるのであります。永年に亘つて数回に石炭の掘採は行われる、従つて鉱害は同じ箇所であつても永年に数回に亘つて繰返される、これは事実なのであります。それを法の七十四条では一回を限り而も検査後三年の経過で限定されてしまう、それまでしか権利を認めないということになる、これは実情に合わないのであります。従つてこれには特に但書を要しまして、請求権が三年を過ぎましてもなお且つ明らかに鉱害が原因となるものであるならば、同じ土地でありましても復旧が行われなければならない、この点を御考慮願いたいのであります。
第五は復旧不適地の処理についてでありますが、七十八条の関係で効用の回復が困難である原因はやはり鉱害にあるわけなんであります。今日の小規模営農の農民が命とする農地を失いますことは生活の悲惨事であり又国家的には農作物減収の重大事である。然るに復旧不適地の所有者に支払うところの補償金額は農林省令、通産省令で定める算定基準によるとありますが、誠に不明確であり、又大きな不安を投げかけられているのであります。而も同条の第二項にはこの金額を支払つたときはその鉱害は消滅とみなすとある、この不適地は即ち効用が回復されない、その土地は永年に続いて行つて効用回復はできない、無収穫の永続であります。農民はこれがために永久の犠牲にならなければならない、これが単にそうした金を払つたならば鉱害は消滅とみなすということは非常に私は事実に適しない、又冷酷な取扱ではないか。これにつきましては、金額にしましても農民の生活保障が適当にできるように考慮されなければならないと存ずるのであります。
第六は第三章と第四章との規定の不調整、これを調整してほしいということであります。七十九条、八十九条などを連関して考えまして、鉱害により家屋としての効用が著しく阻害されておる場合、鉱害を受けた弱い意味の被害者に、復旧のためには許可を受けよとか、或いは協議によれとか或いは裁定の申請をしろとか面倒な手続をとらせることは一体どうでしよう。又著しく阻害されていない場合でも被害は被害なんだ、これはどういうふうにするのか、それはほつておくのか。鉱害は決して天災地変ではないのであります。その原因と責任は一体どこにあるか、私は決して被害者にはないと思う、よしその被害が軽微でも被害は被害であつてその事実ははつきりと見ることができる、是非この家屋等の復旧につきましては第三章の規定にありまするように全体の基本計画の中に入れてほしいということであります。殊に八十六条の規定は、若し負担の金を払わないときにはその権利を放棄させろ、今日税金さえよう払えない困難なこの被害者に対しまして、これ又余りに無情冷酷な規定ではないか。これで果して民生安定という目的事項が達せられるのかどうか、更にこういうことでは第一条に鉱害を計画的に復旧するという目的がありますが、計画的に復旧じやないということになる、非常な矛盾をはらんでおるということであります。なお九十一条の一項には家屋等には国の補助もない、更にその二項には都道府県では公共施設にも家屋等にも補助はない。なおこれにつきまして提案理由を見ますると、個人所有の家屋の性質上国の補助金支出を期待することができない、私はこの意味がわからないのであります。なぜ個人所有の家屋の性質上国の補助が出せないか、一方では個人所得につきましては国税が徴収されているのであります、団体徴収じやないのであります。なお方法といたしましては、これができないとするならば被害者個人に直接補助はしないでも、そこに復旧事業団がありますから、復旧事業団に復旧資金として補助交付すれば、それでやれて行くのじやないでしようか。従いまして家屋等につきましても、民生の安定上是非基本計画に取入れまして、適正妥当な規定といたしまして第三章との調節を図つて立法精神の一貫と措置の公正を期して頂きたいと考えるのであります。
第七、事業団の解散、これは私の理解が足りないかも存じませんが、四十一条に破産ということがあるんでありますが、営利法人ではない事業団に破産の事象があり得るかどうかということであります。経理が正確に行われて事業は適正に而も監督が厳正であるならば破産の事実はあり得ないのじやないか、若し今のようにいろいろな適正な方法を講じてなお且つ資金が足りない、赤字になつたというときこそ、やはりこれも決議にありますように国庫の負担においてこれが最後処理をすべきものだ。従つて解散の事項の中に破産ということは私納得がちよつとしかねますので、これは疑問として申述べさせてもらいます。
第八、法律の施行期間でありますが、提案の理由を見ますると、国及び地方公共団体の補助が長く行われるものとは考えられないのでと書いてあります。これもどうも私わからない。石炭掘採は一体十年で終るものかどうか。又鉱害は十年で一応停止するものであろうかどうか。鉱害は申すまでもなく過去から将来へぐつと持ち越されて行く。御承知の通りに残柱掘と申しますか、採り残した石炭の柱がある、それもこの頃はだんだんとつて行きます。採炭のためには前の人たちが掘つたあと更に今度は次の人たちが引受けまして水をとりますと、排水とか、或いは渇水のような事実が起りまして、鉱害は掘採廃止後もどんどん続出しております。過去数十年からのものがまだ起りつつある。これは現に小野田における事実で、小野田は石炭の古い歴史を持つておりまして明治初年からやつておる。それらのものが新しい炭鉱が残り炭をとりますためにどんどん陥没の鉱害を起しつつある。そういう事実がある上に、更に第三章第四節におきまするところの再検査の請求権とか、或いは損害賠償請求権等の時間的な行使、あとに残つて行く幾多の仕事がある。並びにそれらに対する措置十年たつたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/6
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007・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) そういうことは知つておられますから簡単にして頂きます。結論をどうぞ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/7
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008・姫井伊介
○公述人(姫井伊介君) これは法律の終了後も続きますので、法の目的が法の廃止によつて中断されてはならないので、この法の廃止後の処理規定を要すると考えるのであります。要するに法の目的遂行のために国の責任と指導で原状回復主義で鉱害復旧の徹底を期し、この臨時法は恒久法化すべきであると思うのであります。
以上申しました希望を強くお願い申上げますが、本法案は何とぞ速かに可決成立せしめられるように御高配の点をお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/8
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009・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) それでは引続き我妻先生がちよつと午後お差支えがありますので、杉本さんには誠に恐縮ですが東京大学教授の我妻さんにお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/9
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010・我妻栄
○公述人(我妻栄君) 私は東京大学で民法という法律を専攻しておるものでありますが、鉱業法の改正にも関係いたしましたし、石炭鉱害でも復旧対策審議会の委員でもありましたので、そんな関係でお呼出しを受けたのだろう患います。この法案のいろいろの点につきまして先ほど来他の公述人がお話になりましたように考慮すべき点があると思うのでありますが、私はこの法案全体の考え方というものについての私の意見を申述べまして御参考に供したいと思います。
この法案の根本的な態度には賛成するものであります。先ほど来お話にもありましたように、損害賠償が原状回復であるべきか、それとも金銭賠償であるべきかということが問題になりまして、それがこの法案の基礎にも横たわつておるかのように考えられます。ところがこの原状回復か金銭賠償かということは我々民法学者も議論する問題でありますが、実は資本主義経済の下においては両者は大体一致すべきなのであります。例えば自動車を壊したという場合を考えますと、その壊れた自動車を修理して元通りの自動車にしてやるということが原状回復であります。それと同じような自動車を買えるだけの金をやるというのが金銭賠償であります。従つて新しい自動車を買える金をやつて、そうして壊れた古い自動車を賠償者のほうで引取るということにいたしますればもう完全な賠償になる。ですから全価格を賠償することをすれば、そうした金銭賠償は原状回復と少しも違わないということを前提として話をしておるのであります。ただそのどつちが便宜であるか或いはどつちがやりいいかという点だけが問題にされるのでありまして、金銭賠償と原状回復とが、加害者及び被害者にとつてそれほど大きな違いがないという前提でこれを議論して行くわけなんであります。
ところが御承知の通りこの鉱害の問題、殊に農地の損害賠償という問題では、両者が非常に違うというので問題になるわけであります。なぜ農業の場合にそう違うかということを考えてみますると、これは只今私が例を上げました自動車の場合と違いまして、自動車なら幾らでも同じようなものを買つて来られる。ところが農地の場合は他にこれを求めることができないというところに金銭賠償或いは価格賠償と原状回復とが非常に違つて来る根本の理由があるだろうと思います。更に進んで考えますと、殊に我が国の農業では全く資本主義的には経営されておりません。その投下する労力というものは御承知の通り一家の者が一緒になつて働いておるのでありまして、あの農家の労力は到底賃金ベースでは計算できない、又収穫物も一般の価格によつて工業生産物のように計算することができない。要するに農家は先祖伝来の土地に一家の労働力を集中して投下して行かないと生きて行けない。それをやりさえすれば生きて行ける。そこを離れてほかに土地を求めることは到底できないという状態でありまして、農地というものは全く資本主義のそろばんには合わないということになつております。その上農家のかたは非常に土地に執着を持つておりまして、非常に先祖伝来の土地だという執着がありますので、その土地の執着ということになりますと、これはもはや金銭では計り得ないものである、そういう状態であるのであります。ところが他方鉱業は我が国の鉱業がまだまだ遅れおるとは思いますけれども、何と申しましてもやはり資本主義的に経営している。従つて毎年々々の収支をちやんとそろばんの上に計算して、長い年月に亘る計算ができなければ資本主義的な経営は不可能なわけであります。そのような鉱業は資本主義的であり、農業は非資本主義的であるというそのギヤツプが、原状回復か或いは金銭賠償かということが両当事者にとつて非常に意味の違つて来る根本的理由だと私は考えております。
そこで我が国の現状はどうかと申しますと、農業生産も地下資源の開発も共に至上命令であります。両者を自由競争に任せておいてどつちが経済的に力の強いほうが勝ちたろうといつて放つておくわけには行かない。どうしても農業生産もやらなくちやならない、地下資源の開発もしなければならん。私は先日宇部の鉱害のひどいところを見て参りましたが、あのような状態のときに若し資本主義的に考えるならば、あそこに若し農地を作るというのならば石炭を掘らないほうかいい、石炭を掘るのは無理だ、若し石炭を掘るというのならばそこに農地を経営することは無理だ、どつちか片方にするほうが話がわかるのだ、ところが日本の現状では両方やらなくちやならない、そこに困難がある。そうだとしますと結局鉱業者にとつての立場と、農業者にとつての立場の食い違いは国がこれを負担してやつて行くよりほかないのじやないか。先ほどから繰返しておりますように、鉱業者にとつては資本主義的な計算によつてできるだけの補償をするよりほかに途はない、併し農業者にとつてはできるだけ元の状態にしてやらなくちやならない、そのギヤツプを国が埋めるほかない、私はそう考えておるのであります。鉱業は私企業であつても企業なんだから、それに対して国家が補償してやるということはおかしいじやないかという議論もあるようでありますけれども、併し農業もやはり私企業でありまして、若しそういう議論をするならばすべてを国営にする、鉱業もすべてを国営にする農業も国営にする、それならば論理的に話は割切れるかも知れません、併しそうして倫理を割切つてみたところで我が国の現状に到底合わないということは何人も承認するととろだと考えております、要するに私は問題を正面からはつきり意識してこれは農業の立場と鉱業の立場の食い違いを国家が中に入つて調整するよりほかないのだ、従つてそのためには国家の費用を出すことはまさに正しいのだということをはつきり意識してこの法案を運営して行くべきだということを強く考えるものであります。
次に賠償義務の問題について一言いたしたいと思いますが、今申上げましたような立場から考えますと、鉱業者に対するいわゆる納付金、これは十分に考慮すべきである。併し他方十分な納付金を支払つた以上は賠償義務はなくなつたと考えて然るべきじやないか。遅くも復旧工事が完了したならば責任を免れるというふうにして行かなければ資本主義的な経営はできないのじやないか。金銭賠償といいますことは先ほども申上げましたように決して価格賠償ではない、生ずる損害を金で見積るというだけの話でありまして、それが先ほど申上げましたように価格の全体を金で払つたら十分だろうということを前提にしておるだけの話であります。従つて金銭賠償ということと価格賠償ということは必ずしも同じことではないのであります。従つて鉱業経営者のかたが金銭賠償が原則だ、だから価格さえ出せばいいじやないかということに余り固執なさるべきじやない。先ほども申上げておりますように農地の価格というものは我が国の農業の特殊性に基いてはつきり全損害を賠償させるような価格になつておりません。そのなつていないものをたてに取つて価格さえ賠償したら十分じやないかということを余り固執すべきではないと思うのであります。法案の中にも賃貸価格の三千円乃至五千円というのに対して五千円は多過ぎるという御議論もあるやに聞いておりますが、五千円は決して多過ぎはしない。賃貸価格は御承知のようにでこぼこでありますから場合によつて五千円になるのもいいじやないか、かように考えております。一方鉱業権者が賠償すべき金額は十分に考慮すべきだ。併し他方これを取つてそうして事業団体がその中に入つて復旧工事をやつて行くという段になりましたならば、それ以上いつまでもいわばあと腐りを残すべきではない。例えば排水施設の管理というような問題もできれば農民組合でもこしらえてそれに管理させる、或いは市町村が管理するというようなことにしてあと腐りを残さないようにして行く、そういうふうにやつて行くべきものじやないか。繰返して申しますと、農業と鉱業の立場の矛盾を調整することは国家の力を以てする以外に方法はない、そのことを考えているこの法案はその点で私は大いに賛成する。もつと予算措置なんかにおいてそうすることが国家の当面の責務であるということを十分意識して十分の予算措置を講ずべきではないか。そうした上で只今繰返して申上げましたように納付金を十分の額に計算すると共に、あと腐りのないように処理して行くという運営方法を講ずべきだと思うのであります。
細かな点については論ずることもありますけれども、時間の関係もありますのでこれだけにいたしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/10
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011・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 青山公述人は緊急用務のために退席されました。我妻公述人も午後の御出席ができないようでございますから、時間も大分遅れましたが、我妻公述人に対する御質問だけを只今からいたしたいと思いますから、御質問を我妻公述人にお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/11
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012・栗山良夫
○栗山良夫君 私簡単に御質問いたします。この法案の七十五条につきまして、只今教授は鉱業者に対しまして納付金は十分にとるべきであるが、併しいつまでも後追いをしてはいけないとおつしやつたのですが、この考え方と七十五条の精神とのお考え、七十五条の規定に盛られておる精神のお考えをちよつと承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/12
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013・我妻栄
○公述人(我妻栄君) 法案の細かなことは実はあまり厳密に検討しておりませんのではつきりしたことは申上げられませんが、まああと腐れがないようにと申しましても、先ほども申上げましたように、その納付金の額をはつきり決定するということも困難な事情があると思いますので、七十五条に掲げてあるくらいな点はいいのじやないか。ただこれに、聞くところによりますと、更にそのあとの災害についても責任を延ばそうというようなお考えもあるやに聞いておりますが、そこまてするのは少し私のいわゆるあと腐りが多過ぎるのではないか、この原案くらいならばまあまあいいのじやないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/13
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014・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 清澤議員から委員外発言を求められておりますが、発言をお許しいたしまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/14
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015・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 御異議ないものと認めまして清澤君に発言を許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/15
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016・清澤俊英
○委員外議員(清澤俊英君) 先生にちよつとお伺いしたいのですが、この金銭賠償で大体農地の場合賠償義務が完了したものと考えることが正当だという御意見でございますが、どうも割りきれん点がありますので一、二お伺いしたいと思いますが、大体金銭で現わします際に賠償の額の現わし方に二つの場合があると思います。一つは全然用をなさなくなつたときの現わし方、それからいま一つは或る程度壊しておる、その壊したものの上に何かの損害がずつと出ておる。こういう二つの場合が農地の場合あります。まだ作はつけられる、全然作がつけられない、こういう二つの場合があるそのときの賠償が、大体工場法の賠償の規定をよく調べておりませんのではつきりした把握はついておりませんけれども、大体そういつた場合において全然その耕地がもう使われないという場合の考え方から参りますると、賠償をして頂く土に、そういう場合地価の何倍という考え方が非常に無理なんじやないか。地価というものも大体いろいろに考えられる点もありましようけれども、地価と営農の実態というものは全然別になつております。又現実におきまして賃貸価格と収穫も現実は非常に不合理なものになつておる。そういう不合理なものを中心にして五千倍から三千倍、福岡県における大体地価の賃貸の平均は十七円くらいだというのです。それを五千倍としましても八万五千円くらいになる、これが最上だ。福岡県で私もこの間あの地区を見て参りましたが、殆んど営農ができないほど耕地を失つておる。そうしまするとその土地を中心にして家も作つておる、あなたがおつしやる通りであります。家族労働全体がそれに頼つておる、農機具もある、いろいろなものがある。自動車の例と人間の例は一つじやないと思う。一つの自動車が元の通り動けるということと同じ程度に人間が他に向つて動くためには転業問題がいろいろあると思う。新らしいことをやりますためには、いろいろの資金の問題も出て来る。現にそういうことを基本にして最近離作等をいたします場合には、我々の地方へ参りますれば全耕地を失うような場合には、大体一反歩で三十万円くらいであるがそれをもらつても問題が解決しない。少くとも半耕地を失います場合には二十万円くらいが通例の相場になつておる、そうでなければやつて行かれない。それが賃貸の最高五千倍から最低が二千倍、それを出したから事は終えたのだ、これでは問題にならないと思います。少しも問題は解決していない。先生はこれで差支えないとおつしやるけれども私は問題は解決しないと思う。
第二番目にはその間幾らか耕作ができますが始終水害が起つておる。あそこは大体今では陥没したのでありますから水害の問題は別としまして或いはそのために水路がとまつてしまつて水が来ない。すべてのものがそろいましても毒水が来てこれは耕作ができないというような所を現に直しておるのでありますが、そういうものを直したあとでも果してその土地の効用回復ということが非常に私はこれから先問題になるだろうと思いますが、果して直つたものが元通りの自動車になつて行くか、なつて行かないのじやないか、こういうことなのであります。今やつておりますがこれだけの金を出して仮に直してみましてもそれは元通りにならない、ならない場合でも打切る、それで済んだのだからよろしい、自動車は壊したがそれは直してやるのだ、これだけのきまつた金を出してそれで直してやるのだ。だからそれで直ろうと直るまいとそれは差支えないのだ、こういうことは私は成立たんと思うのでありますが、どういうことからそういう理窟が成立つて来るのですか。私は民法のことは何も知りません。だから法律上の見解はわかりませんが、少くともこんなことは常識でわかると思う。法律なんというものはとにかく常識の書き現わしでありますから、それがそのときの力関係でいろいろに書き現わされるだけでありますけれども、そういう問題は一応金銭賠償したのだからそれで差支えない、それで済んだものとすることが正しいというその見解が私にはどうしてもわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/16
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017・我妻栄
○公述人(我妻栄君) 私の申上げたことを十分に御理解願えなかつたように思うのですが、私が申上げましたのは、鉱業権者としてはそれだけの金を払つた以上それよりもつと鉱業権者からとるのは無理だろうと思うというような話であつて、その金を農業者にやつたときに農民はそれで満足すべきだとは少しも私は申上げていないつもりであります。この法案では、それでは患い、鉱業者からまさにとり得るものを農民に渡しただけではうまく行かんから、それに国家が入つて、事業団というもので元通りにしてやるということになる。その両方の要求の違うところを国家が入つて、国費でそれを賄つてやろうというのだから賛成だ。こう申上げておりますので、お話は復旧しない土地、復旧不適地とされる所は特にお話のことに適応するのだと思いますが、普通の復旧してもらう場合には、一方鉱業権者が金を出して、国家の金も出してそうして復旧してやる。ところが復旧してもらえない人は、鉱業権者が出した金をもらつてそれつきりだ、こういうお尋ねでしようか。若しそうだとすれば、あとのほうは大変不公平になるので、それはやはり国家が出しても十分してやることになるのだろう、こう思うのです。鉱業権者から一定の基準の納付金をとつたら、それ以上追求することは無理だと申しましたのは、私は繰返して申しますが、それをそのまま農民に与えただけでいいとは私は申しておりませんです。それが悪いからこそこの法案ができておるのだと私は理解しておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/17
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018・清澤俊英
○委員外議員(清澤俊英君) 誠に先生に対して失礼に当るかも知れませんが、どうもそこのところは私どもはわかりません。先生は農地を自動車かなんかと一緒に考えておられるようですが、土地を直したからつてこれは土地というものは問題にならんのです。土地は直しても問題にならない、土地はほうぼうにありますが、それを耕やして収穫がどう挙がるかが耕地というものの性格なのであります。年々直してもらつたものに農民が働いてそれから元通りの収穫が上つた場合に、初めて我我は納得する賠償ができたとこう考えます。ここで穴があいたから何を持つて来てもいいから埋めてしまう、埋めたら元通りじやないか、これじや決して賠償にならんのでありまして、そういうことをすること、それがもともと完全な形になれないから法律で一つ初めから炭鉱業者がそこまで全部持つということは無理だろう、我々もこう考える。考えるから或る限度をまあ一応これくらいにしてやれ、炭鉱業者もそれではのめつてしまうからそれではかなわんからという、こういうわけで賠償の基準というものを考えておるのであつて、人のものを壊して全部直すということはこれは別の話なんです。そういうことをやつたら炭鉱業者も成立たないから、これくらいのところがいいか悪いかということがこれが議論の焦点だろうと思います。頭からこれだけのものを払つてやるのだからこれで当り前という議論は私はどうしても納得できない。人のものを壊したら直してやらなければならんと思う、先生もおつしやつた通りです。元の通りに直せないから国が直してやるということは次の問題だと思う、別の問題だと思う。それを金銭賠償したからそれでいいのだ、而もそれが正しいのだというような言い方は私はどうも納得なりかねる。私はそうだと思う。それは民法上から見れば全部鉱業者が元通りにしてやるべきが正当であろうけれども、現実の鉱業者の経営の状態、或いは利潤の問題、それらから申すとこれくらいの額は一応してやらなければ鉱業者も成立たない、だからこれくらいのところに落ち着いて、あと足らんところを政府がしてくれる、こういう状態になつておるからこの法案には賛成だとおつしやることはわかります。そこを言わないで金銭賠償するのだからこれだけ出したらそれでいいじやないかと、元へも直らんものを持つて来てそれでいいじやないかというように先生のようにおつしやられては、どうも農民は納まらないと思う。この点を一つもう一度わかるように教えて頂きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/18
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019・我妻栄
○公述人(我妻栄君) どうも御理解願えなかつたのは大変残念でありますし、又いろいろ問題が複雑らしいのですが、ただ一応弁解しておきたいのは、自動車と同じように考えているようだとおつしやつた点でありまして、私は自動車と違うと申しましたので、自動車と同じなら何もこういう法律は要らない、民法の普通の規定でいいのだ。ところが自動車と違う複雑な事情を持つておるものだから国家が入つてこういう法律を作らなくちやならんと、こう申上げたので、よくお考え下さればその点おわかり下さるだろうと思う。重ねて申しますが、若し自動車と同じだと考えているのならこの法律全体に反対するはずと私は思うのであります。ただお言葉の御趣旨を考えますと、私が金銭賠償でいいと言つたのは甚だ農民に不満があるのだ、即ち本当は原状回復をすべきだがやむを得ず金銭賠償で我慢してやるのだと、こう原則をひつくり返えさないと農民は満足しないだろうという御趣旨だろうと思いますが、この点も先ほど申上げたと思いますけれども、金銭賠償ということは何も安く値切るということではないのでありまして、損害を全部金銭で払うということですから、金銭賠償ということだつて、その農民の生活に生ずるすべての損害を金に換算して払つてやる。御承知のように貞操蹂躙というようなものでもちやんと金銭に評価して払うのでありますから、いわんや農民が生活ができないというようなものには無論金に見積つて払うのであります。ですから、私も金銭賠償をおつしやることはいい、鉱業権者が金銭賠償をおつしやることはいい、併しそのことから価格さえ賠償すればいいとお考えになつては間違いだ、価格賠償ということには固執なさらないようにということを特に声を大きくして鉱業権者に申上げたつもりでありまして、その点を特に御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/19
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020・清澤俊英
○委員外議員(清澤俊英君) どうも有難うございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/20
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021・島清
○島清君 我妻公述人にちよつとお聞きしたいのですが、お説の通り鉱業権は資本主義的な経営が確立されておると、農業は非資本主義的である、そこにこの問題のギヤツプがあり、そこに国家が調整をしなければならない任務があるのだというような立論に対しては、私は異論を述べるわけではございません。
そこで問題はどちらのほうに重点をおいて考えるべきかというところにいわゆる国家政策といいましようか、社会政策的な本問題の扱い方の要点が要請されると思うのです。姫井公述人も指摘されました通り、第一条の「国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定」というものが真先に謳われていまして、そこにこの法律の要点がなければならないように思うのでありまするが、併し頁をめくつて参りますうちに何かしら後ろのほうの鉱業権者の側に立つてこの法律の立案をしておるかのごとき印象を受けるところに私は割り切れないものがあるのじやないか。そこで国家政策的にどこに重点をおいてこの法律は扱わなければならないかというところに我々国会議員に要請された任務があろうかと思いまするが、併しながら栗田公述人からも公述がありました通り、無過失の賠償責任を負うべきであるという議論も私は場合によつては成り立つと思いまするし、更に鉱害というものは予見できるのだ、予想されるのだという場合にはこれは故意である。従いましてこういうような場合におきましては、当然にこれは鉱業権者が十二分な賠償をなして然る後に足りないところを国家がこれを補つて行くというようなことにすることが私は社会政策的に要請されるところの問題でなければならぬと思うのです。鉱業権者はもうけほうだいにもうけて農民へ鉱害が起きて参りました場合に国家にこの責任が転嫁されるような形がとられたのでは私はいけないのではないかと思う。非常な偏ぱな扱い方と言われてもいたし方がないのではないか。こう思いまするが、公述人はこの法案については大体において賛成であるというふうな趣旨を述べられましたが、一方この法律に対しまして、第一条の国土保全というところに社会政策的な重点をおいて考えるべきであるか、又鉱業権者は故意と故意でないとにかかわらずその問題に対して責任を負うべきものであるとお考えになるかどうか、この三点について御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/21
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022・我妻栄
○公述人(我妻栄君) 三点とおつしやいましたが、はつきりいちいち御答弁できるかどうかわかりませんですが、全体として社会政策的に行くか、或いは鉱業権者の義務の全うと申しますか、という考えについては鉱業権者が僅かな金を出してそうして利益をたくさん得る、農民のほうは非常な苦境に陥るという結果になつては困るとおつしやることは誠にお説の通りだと私も思います。従つて先ほど法案の二千乃至五千とあるのにつきましても私はあれでいいと申上げたのではなくて、ただあれをもつと減らせという意見があるそうだがそうする必要はちつともないのじやないかと申しましたので、ここで更に具体的に御検討の上でもつと大きく、場合によつてはもつと多いこともあり得るようなふうにしていいじやないかとお考えになれば、それについても私は反対はいたしませんが、併し問題は恐らくもつと根本の農業と鉱業とが組成その他においてアンバランスになつていないかどうかという大きな問題が根本にあるのじやないか、単に賠償の問題だけでなく、そういう点にあるのじやないか。そうしてそうだとすれば組成の面で、それを調整するようなことはまさに国会で皆さんがおやりにならなければならない重要な任務だと私は考えておるものであります。それから無過失の賠償責任という問題でありますがこれは非常にむずかしい問題でありまして、私は土地調整委員会の委員長をいたしておりますが、これは御承知の通り、鉱業と他の産業との調節を図るという任務を課せられておるのであります。ところが例えば或る九州の地区に参りますと、何百年来附近の山から水を引いて来てそれが高原の実地に溜められて、そうしてそれがかんがい用水となつて広大な土地をかんがいしておる、それが何百年末その通り続けられておるという状態にある、農業経営としても恐らく非常にプリミチヴなものでもつと何か効率的なものができないものだろうかと考えられるようなかんがい用水の場所があるのであります。ところがその下で石炭脈が発見されてそれを掘るということになりますと、上のかんがい用水池がみんな陥没して行きます。そのときに農民の立場をどこまでも保護したければならん、そのかんがい用水に何千戸の農民の生命がかかつておるということを余り強く主張いたしますと鉱業地下資源の開発が不可能だと思います。そうした場合、私は無過失責任に当るか、過失責任に当るかというような抽象理論では問題が片付かないのじやないか、これはやはり国家が入つて一方において我が国のかんがい用水が何百年来の姿であるのを何とかして直して行くようにしなければならない、それを直して行くということは耕地を殖やすことになるだろうと思うのであります。それをやると同時に、今度は石炭も今までの用水溜の下になつて掘れなかつた所も掘れるというようにすべきではないか、この点に国家が非常な力こぶを入れられるならば農業生産も増して、そうして地下資源の開発もできるということになるのじやないかということを考えるのでありますけれども、併し土地調整委員会なんというものはそれほどの大きな力を持ちませんので、現状をそのまま是認いたしまして、現状が余りに大きな変更を受けるというようなときには鉱業権を差止めております。併し私はその場合に鉱業権を差止めましても、いつも腹の中ではもつと日本の国家が、農業が近代化してそうして鉱業との両立ということに力を入れるべきではないか。甚だ口幅つたいことを申すようでありますけれども、どうも農民のほうでは原状回復ということを一点張にお進めになり、そうして鉱業権者のほうはその金銭賠償ということを条件に立ち廻つております、そうして農林省は農民の尻押しをし、通産省は鉱業権者の尻押しをし、子供のけんかに親が出て来ておる有様で甚だ遺憾だと思いながら、私はいつでも事を解決しておるのでありますが、そのときにこうした法案が多年に亘る希望を満足させる意味で私は根本において非常に賛成だこう申上げておるのでありまして、個々の点については恐らく検討の余地があるだろうと思いますけれども、これを十分に運営して、そうして農林省、通産省と申さず国家すべてが力を一にして農業の近代化と鉱業との両立という大理想に向つて進む一歩として頂きたいと思うわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/22
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023・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) では午前中はこの程度で打切りまして、午後は一時半から再開いたしたいと思います。御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/23
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024・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) ではさよういたします。
午後零時四十四分休憩
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午後二時十五分開会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/24
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025・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 午前に引続きまして委員会を開きます。
公述人としまして福岡県知事杉本勝次君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/25
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026・杉本勝次
○公述人(杉本勝次君) 私は福岡県知事杉本であります。福岡県における石炭の年間の生産量は、戦時中二千四、五百万トンでありましたが現在では約千六、七百万トンに低下いたしておりますけれども、それでもなお我が国出炭量の約四〇%を占めております。この石炭採掘によつて国家国民の受ける利益の大きいのに対比して、炭鉱地区の住民のこうむるところの惨害は誠に甚大なるものがあります。この鉱害の問題がすでに深刻な社会問題となつておりますことは各位御承知の通りでありまして、福岡県といたしましては大正八年以来今日まで実に三十有余年の間これが救済対策について官民一体となつて努力いたしておりますが、この長年の要望が漸く取上げられて、先に戦争中の強行採炭によるいわゆる特別鉱害に対しましては特別鉱害復旧臨時措置法が制定せられまして、目下着々と復旧行事が進捗いたしております。私ども深く感謝いたしておるところであります。今回一般鉱害の復旧を目途として臨時石炭鉱害復旧法案が提案されましたことを深く拝んでおる次第であります。
参議院通産委員会におかれましては、この法案の審議に貸せられるために、特に竹中委員長を初め、島、清澤、小松の各委員がつぶさに現地の御調査に当られたのでありますが、その節初めて鉱害地の実態を見られました竹中委員長及び清澤委員は、この鉱害というものが如何に深刻、ひどいものであるか、又この鉱害地の救済問題は決して九州の一角に限られた一地方の問題ではなく、まさに国家的な重大問題であるという実感をお持ちになつたようであります。私はそのことを直接承わつたのであります。余りにひどい被害の状況に驚かれたようでありますが、この状況を現実に見ない人々には、ともすればこれは一地方の問題に過ぎないと考えられがちであります。我々はどこまでも国家的立場、無私の立場に立つてこの問題を取扱いたいと申されておりましたあのときのお言葉を有難く存じておるのであります。
この法案が今国会に提案される運びになりましたことについては、私は次のように承知いたしております。即ち昭和二十五年第七回国会において特別鉱害復旧臨時措置法案を審議決定される際の国会における附帯決議として、一般鉱害の復旧についても特別鉱害と一体不可分の関係にあるものとして特別の関心を有すると共に、鉱害対策は総合的な国土計画の一環たる性質を有するものと認めるを以て、政府は速かにこれが対策を樹立されたき旨の決議がなされており、更に同年十二月、第九回臨時国会におきましては、新鉱業法の審議に当り、国会ではこの法案中、鉱害の賠償は原案の通り金銭賠償の制度を認めるが、鉱害地の原状回復に対する被害者の熱望に応えるとともに、食糧その他重要物資の生産を確保するためにも、原形に回復するか、少くともその効用を回復せしむることが必要であり、この費用を鉱業権者に負担せしむることは、鉱業を撃滅に導くこととなり、又この種経費を多少なりとも被害者に課することは、適正賠償の点からも断じて許されないところである、結局国庫の負担において遂行するほかないのである、政府は速かにこれを実現するために適当な法律を立案すべきであるという趣旨の決議がなされておるのであります。爾来本年三月までに政府においては鋭意周到なる検討が続けられまして、案を改めること実に六回に及ぶと聞いております。その間私どもは絶えず政府と折衝を重ねて参りましたが、我々の強い要望の重要なる部分がなおこの法案には入れられていないということを誠に遺憾に存ずるのであります。私どもが極めて重大なる関心を持つておるこの法案は、本国会において是非とも審議御決定を頂くことを念願しておりますけれども、併し、これが原案のまま国会を通過したならば、我我といたしましてはこの法律の実施に当つて種々困難な問題が起るのではないかということを憂慮するのであります。よつて以下私が公述いたします修正希望の諸点に関しまして、各位におかせられましては特に十分なる御検討をお願いする次第であります。
その第一は第七十五条に関するものであります。目下衆議院では本法案を月余に亘り慎重に御審議中でありますが、なかんずくこの第七十五条に規定する復旧工事竣工後における賠償責任の消滅問題が論議の核心をなしておるやに聞き及んでおります。現行の鉱業法に規定する損害賠償の責任制度は、対価相当額の金銭を支払うことによつて賠償責任は消滅することとなつております。従つて、この原則を基礎として法制化されました本法案の建前としては、著しく多額の工事費を投じてまで原状回復をするものではなく、農地が本来持つておつた効用を回復する程度の復旧工事を施行するに過ぎないのであります。従つて、鉱害農地は復旧工事の完成後も、なお被害前の状態に復帰しないのであります。このためには暫定期間の補償は考慮されておりますけれども、効用回復程度の復旧であることによつて、その後においても豪雨、出水等に起因して年によつては著しい減収を来すことが予測されるのであります。かかる場合における被害は現実の問題として補償の必要があるにもかかわらず、この法案ではそれが認められないのであります。鉱業権者の主張としては自己責任の金銭賠償以上に負担する理由なしということであり、一方被害者の立場としては、原状回復でなく、効用回復である以上賠償責任の打切りは納得ができない、損害を甘受せねばならない理由はないという主張であります。その開きをどうするか。国も鉱業権者も石炭産業のためには多少の犠牲が被害者にあつてもそれは止むを得ないとは申されないでありましようが、事実はまさにそうなつておると思うのであります。ここに問題点があると考えるのであります。鉱業法の建前から来る筋途は私も了解しないではありませんが、鉱業法の金銭賠償主義にそもそも問題が残つておると思うのであります。勿論今日のところは鉱業法が問題ではありませんが、この問題を被害者のために親切に取上げて頂きたいと、私が申すのはこの点が一番大きいのであります。願わくはこの七十五条は被害農民のためにもう一歩進んだ社会立法的性格の規定に御修正を願いたいのであります。
第二は九十一条に関するものであります。これは農地並びに農業用施設の復旧費の一部を都道府県に負担せしむる規定であります。そもそも鉱業権の設定又施業案の認可等一切の監督権は国にあつて都道府県には何の権限もありません。農地の鉱害による米麦の減収に対する年々の補償額は福岡県だけでも年間実に四億四、五千万円に達しておりまして県としては全く被害者の立場にあります。又財政的に見ても現在福岡県で負担しておる経費は年間四千九百八十余万円であるにもかかわらず、これら鉱業による鉱区税の収入は僅かに年間二千二百九十余万円に過ぎないのであります。従来農地及び農業用施設の災害復旧費に対しては都道府県はその復旧費の一割を負担することとなつておりましたのが、地方公共団体の財政事情に鑑み昭和二十六年度からはこれに関する法律はすでに廃止せられておる事例もあるのであります。鉱業権者が負担した復旧費を以てなお且つ不足する部分については、これは国が負担すべきであり、都道府県にその一部を負担せしむることはそこに何らの根拠なく、又負担する財源もないのであります。この点は地方財政委員会においても今私の述べるところと全く同一意見であります。
第三は第九十二条の規定に関するものであります。道路河川その他の公共施設の復旧につきましては一応国庫補助金は交付するが、その交付した補助金は工事完了後に当該鉱業権者から償還させる仕組みになつております。即ち鉱業権者の全額負担において原状回復をやれということでありますが、これも鉱業法の建前からそういうことになつておるようであります。それは道路とか或いは河川等の公共施設には対価賠償ということはありませんので、従つて金銭賠償即原状回復であります。従つてこの点も鉱業法で縛られてこれは鉱業権者が全額持つべしということになつておるのであります。併しながら従来鉱害による公共施設の復旧費に対しましては、現在出資されておる特別鉱害にいたしましても、その以前のプール資金制度のときの復旧のやり方におきましても、相当高率の国庫補助金を出しておる事例があります。ただこの一般鉱害の復旧に限つて国庫補助金を全く出さないということは曾つての国会における附帯決議の趣旨が没却されておるように考えられる。鉱業権者に過重の負担となり今後の復旧工事の実施に支障がないかを恐れますので、この種公共施設の復旧に対しては国が相当額の補助金を交付して復旧を促進するような御修正を願うことが妥当ではないかと思うのであります。
第四点は第六十六条に関するものであります。鉱業権者が不明、或いは賠償義務者が負担金を納付することが困難である場合の農地及び農業用施設並びに公共施設の復旧費は、国と地方公共団体とが負担して復旧することとなつておりますが、農業用施設並びに公共施設はその管理区分によつてそれぞれ地方公共団体が維持管理をいたしております。その維持管理者たる地方公共団体は全く被害者の立場であります。被害者が復旧費を多少なりとも負担するということは理論的にも成り立たないし、又現下の地方公共団体の財政事情から見ましてもその負担は不可能であると思うのであります。石炭鉱業の国家性から見てもこのような特殊な鉱害は勿論全額国庫の負担において復旧すべきものと確信するのであります。
第五は第七十九条及び第八十条に関するものであります。家屋等のいわゆる非公共施設の復旧工事に関しましては定められた条件に該当するものに限る、その物件を復旧することについて通商産業局長の許可を受け、加害者と被害者が協調して復旧するということが原則となつておりまして、若し両者の協議がまとまらなかつたときは、通商産業局長の裁定によつて鉱業権者の負担において復旧することとなつておるのであります。又家屋等の復旧は、現行の特別鉱害復旧臨時措置法によつて見ましても、復旧費の一部を受益者負担として被害者から徴収されつつある事例もあるにはありますけれども、被害者は自己の家屋が鉱害のために戸障子の開け閉めができなくなり、或いは雨洩りがするとか、或いは宅地が陥落しておるとか、雨の降るときは直ちに床の上まで浸水するなど、長い間有形無形の損失、迷惑をいたしておりますが、これらの点については何ら賠償を受けることなくただ黙々として復旧の実現を願つておるのであります。それであるのに、復旧費の一部を、単に耐用年数の更新といつたような理由によつて被害者から受益者負担金として徴収することは、何としても無理があると思うのでありますが、このことがこの法案におきましても規定されておることは遺憾に存じております。これは五十二条の関係であります。御修正を願いたい点であります。なお全般的に申してこれら家屋等の復旧につきましては今少しく強力な措置が規定せられて欲しいと考えるのであります。
第六は第九十四条であります。復旧事業団の事務経費の一部を地方公共団体及び復旧工事の施行者に負担せしむる規定がありますが、この復旧事業団の設置につきましては私どもは相当異論があつたのでありますが、その都度政府はこの経費は絶対に地方公共団体のものには負担せしめないと主張せられると共に、復旧事業団は通商産業大臣が厳正に監督すると言つておられたにもかかわらず、国会に提案されたこの法案によりますと事務経費の一部を地方公共団体に負担せしむることとなつております。これは国が当然出すべきもので地方団体に負担させる理由はないと考えます。このようなことになれば我々はむしろこれまで折衝しておりましたように特別鉱害の復旧にならつて政府の特別会計扱いとして頂きたいのであります。
第七にこれは第二条に返りますが、この法案によつて復旧の対象となる公共施設の定義におきまして学校というのがありますが、これを学校及びその他の公共建物というのに御修正願いたいのであります。この点は先ほど姫井氏からも詳細にお述べになりましたので、これ以上述べることを略します。
以上が本法案に対しまして修正を要望する主要な点でありますが、更に附則によりますとこの法律は昭和二十七年七月一日より施行するということになつておるにもかかわらず、今年度の国の予算を見ますればこれに伴う何らの予算措置が講ぜられていないように思うのであります。この法律の制定に必要な予算はこれまでのような一般公共事業費の予算中に包含せしめることなく、別個に区分した予算として速かに計上せられるように政府に御要求願いたいと存ずるのであります。
最後に一言いたしますが、この法案の対象となつておる鉱害だけでも現存するものは福岡県だけで大体二百億、そのほか佐賀、長崎、熊本、山口の諸県、その他亜炭の岐阜県その他を加えて総額二百五十億程度に達するものと私どもは思うのであります。国の現状としても国内の石炭は今後ますます増産の必要に迫られておりますので、今後における鉱害は累増こそすれ減少するものとは考えられません。従つて現存の鉱害の処理にのみ目を奪われて他面不断に進行して行くところの鉱害の発生を忘却してはならないと思うのであります。即ち石炭採掘と鉱害の復旧及び防止を合理的に計画的に解決して行かなければならんと思うのであります。この問題については専ら石炭鉱業の施業を監督する主務省は勿論他の関係機関との密接な連絡の下に万全の措置を講ずる必要のあることを確信するのであります。
以上をもちまして私の公述を終りますが、実在するこの悲惨なる鉱害を十分御認識頂きまして、社会問題化しておる現地の不安の除去のために、又新しき公共福祉のために、又国民経済の復興乃至国土保全のために、一般鉱害の早急なる解決を期待すべく極めて重要なこの法案に対して、以上私の申上げました修正意見を十分御検討願いまして、本法案の速かなる成立を熱望いたす次第でありますが、会期はすでに余すところ僅かになつておるこの場合、衆議院における審議が非常に暇どつており私どもは深く焦慮いたしております。参議院に回付されて参りましたときには、特別の計らいを以て早急の御決定を願つてやまない次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/26
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027・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 次に日本石炭協会副会長万仲余所治君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/27
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028・万仲余所治
○公述人(万仲余所治君) 日本石炭協会の副会長の万仲でございます。協会長が伺つて公述を申上ぐべきでありますが只今旅行をいたしておりますので、つい私が代りまして公述を申上げることになつたのでありますが、私顧みますると丁度一年半ばかり前特別鉱害賠償問題が論議されましたときに、当時北海道の石炭協会長をやつており更に夕張炭鉱夕張鉱業所長をやつておりましたので、北海道地区の意見を当通産委員会で公述申上げたことがございます。当時は誠に残念なことでございますが、被害者と申しますか鉱害を受けたかたがた、それから加害者という言葉は当りませんが鉱業権者といろいろ意見の喰違いがありましただけではなく、鉱業権者側におきましても意見の喰違いなどがありまして私もその一方の旗を持つたようなことで恐縮に存じておつたのでございますが、その問題が実を結びまして特別鉱害賠償の法規ができまして、更に二十五年の暮には根本的な鉱業法の改正が多年の研鑽の結果できまして、この二つの法制ができまする際にいずれも附帯決議が付けられたことは先刻杉本さんからお話の通りであります。その附帯決議に基いて今日この問題を具体的に御審議を願つておりますということは、私どももいろいろ変遷を顧みまして誠に愉快に思いますと同時に、ここへお持越しを頂きました関係のかたがたに敬意を表しますと同時にありがたく存じているところであります。
原則的に申しますと、私どもは特別鉱害のときにも申しましたように、一般鉱害の極めて悲惨なる状態は国家として救済すべき相当の問題が残つている、それをお救い願いたい、そのためにこういう法規ができるということは非常に賛成でありまして、一日も早く御審議の上にこの法制が適正なる形においてできることを希望いたしております。ただ今回の問題につきましても、衆議院に上程されましてから私ども法案を拝見いたしますと中に二、三私どもが不満に存ずることがございます。だんだんそれがいろいろな面で御審議を煩わしておりますうちに、ともするといわゆる被害者側と鉱業権者側との間に非常な意見の喰違いがあり、非常な争いの種でもあるかのごとく思われるような情勢も出ているやに思われますのであります。これは非常な誤りでありまして、私ども被害者のかたがたと多くの点において同じ考えの下にこの法制の成立を望んでいるのであります。ただ考え方の一部に相違があります。これは争いでも何でもありません、相違がありますということはこれから申上げたいと存じます。この点は結論的に申しますと、先刻午前中に我妻さんがおつしやいましたことがその問題の核心でありますと同時に、杉本さんが第一点にお挙げになりました鉱害賠償責任ということも見きわめるということになるのであります。衆議院におきまして私どもの協会の会長の福永が申述べましたことは九点ございます。その九点のうちでも我々が最も重点を置きます点は四点ございます。それらの点につきましての意見は今以て変りはございません。併しながらその後のいろいろな情勢、衆議院における御審議の情勢も我我ほのかに承わつております、又地元のいろいろな動きも承知いたしおりまして、なかなかに難航を続けておられるやに承わつております。何とかしてこの法案を成立させたい、実を結びたいと存じまして、私どもはこの九つの意見、更に集約しましてそのうちの重点を置きます四つの意見、それを最後の一点に集約いたしております。この点も経過的に申上げます。
先ず以てお話を申上げます関係上、衆議院におきまして私どもの会長が公述いたしました点をただ箇条的に申上げますが、第一点は今申上げましたように、七十五条並びに七十七条という内容に盛られておりまする賠償責任というものは尾を引くべきか尾を引かざるべきか、金銭賠償或いは原状回復という事柄が我妻さんもおつしやいましたようないろいろ問題がありますが、我々は一昨年の暮にできまして昨年から実施されました鉱業法の根本精神というものは、あくまで今日といえどもこの特別法制ができましてもその根本方針が続けられて行つているのであり、行くべきである、固い言葉で申しますと、金銭賠償でありますが、金銭賠償という言葉を申上げますと、先ほど御質問があつたように鉱業権者は金を惜むのじやないかというふうにとられますけれども、金を惜む惜まぬという問題じやありません。日本の鉱業法の根本の建前は金銭賠償主義、効用回復主義ということになつているのであります。このなつているのを今度の法制で原案もやはりそれを支持して出しているのでありますが、今度のこの特別法制でその根本概念を変えようとなさることはちと無理であると考えるのでありますが、それが第一点であります。あとで又この点は特に私どもが主張する最後の一点でありますから詳しく申上げますが。
第二点は今申しましたことに附随いたしております。農地の復旧をやつた場合に灌漑施設を設けた、この灌漑施設の維持管理ということが原案では最後的にはどこも受継がなければ鉱業権者に行くべきであること、ということになつておりますか、これは我々は了解できない点であります。これは今申しました根本理念からしても、当然行くべきところが若しなければそれをなさつた事業団体がお持ちになるのは当り前だと考えております。これもあとで申上げます。
第三番目の点は納付金の基準になります点でありますが、これも先刻我妻さんがおつしやつたように二千倍乃至三千倍が多いとか少いとかいうことは、金銭賠償を少なくするのだ、これだけであとはかまわないのだということとは違うのでありますけれども、この点は我妻さんは学者でありますから経営という面にタツチなさつておらない。片方は金銭賠償主義ということが鉱業権者にあとを引かないように切るべきであるけれども、片方は金が余計要つたら幾ら取つてもいいじやないかとはおつしやいませんでしたが、そういうことも合点が行くような御議論でありましたけれども、この点は我々経営者としては、経営という面から考えなければならぬ、おのずからここに限度がある。一体賠償ということがむずかしいという根拠から出ているのでありますが、これに対してもいろいろ疑義があるのでありますが、この面で非常に問題があるのであります。これはあとで申上げますけれども私共は一応は賃貸価格の五千倍を限度とするという程度には行かない、現実の今の情勢におきましては三千倍くらいでよろしいじやないかと考えておりますが、これは法案の成立を本当に熱望いたしますがためにあとではここまで主張いたさないことになつておりますが。
第四番目は国庫補助の対象であります。九十一条でありますが、これを補償金とか、今の維持管理の費用とかいうものを含めた復旧費等という観念、四十八条のいわゆる観念にまで広めて確定して頂きたいということであります。
第五番目は、これは事務的な恰好になりますが、評議員会は議決機関になつておりますが、私ども今日までのいろいろな考え、近き将来のことを考えましても、自治庁があり、監督官庁が任命権を握つているというこの際に評議員会を議決機関にする必要があるかどうか、我々は少くとも今日の状態においては諮問機関であるのが順序じやなかろうかと考えております。
第六番目は評議員会の議決の方法でありますが、これは出席者の三分の二以上ということにいたしたい、これは今申しました、さつきの諮問機関ということとは矛盾いたします。若し仮に議決機関であるといたしましても、そういう場合には非常に重要な権限を持つと同時に、重要な審議をやつて頂きたいということから三分の二以上の決を以て進んで頂きたいと思うのであります。
第七番目は事業団体の事務経費、これは全額国家負担にして然るべし、これは杉本さんもおつしやつております。いろいろのかたも御賛成頂いておるやに考えます。
第八番目は国庫補助費償還の規定、これは削除して頂いて公共施設の復旧については災害復旧に準じた補助を頂きたい、これも先刻から皆さんおつしやつております。
第九番目は、これは事務的なことでありますが、報告規定、資料を出さなかつたということで罰則をつけるというようなことは、少くともこの法規の観念上からは行い得ない、そこまではやる必要はなかろう、百一条の三号の罰則を削除して然るべきである、こういうのが衆議院の公聴会で私どもの会長が石炭協会のメンバー会社を代表して申上げた意見であります。
そのうち特に初めに申しました四つ、根本的な理念の問題にからむ問題、納付金の倍率の問題、国庫補助の対象の問題というようなことに重点をおいて私どもは問題を速かに解決して頂くように努力いたして来たのでありますが、先刻も申しましたように、会期が切迫いたしておりますけれども法案の審議が非常に停滞いたしております、何とかこれを通過さして新らしい民生安定の境地を開かなくちやいかん、そのためには我々がただ徒らに主張を固持してはいかんということから考えまして、最近に至りましては私どもはこの根本理念ということが損われない限りにおいてはあとの点は我慢いたします、仕方がありません。同じ考えは持つておりますけれどもこの法案を通すためにはそこまで我々は考えて行かなくちやいかんということにたりまして、只今私どもは特に主張いたしております点は、この根本理念の問題、根本理念の問題がどこに現われておるかと申しますと、七十七条の灌漑施設というところに現われております。これはよく例を引かれるのでありますが、復旧団が復旧工事をやりますと、五尺下つたものを五尺上げれば問題ないけれども金が足りないから三尺上げる、あとの二尺足りないために雨が降ると水が溜る、その効用を回復するという見地からは灌漑のポンプをつけてそうしてそのポンプの維持管理の費用をくつつけておけば効用回復ができるのだという、そのポンプの維持管理の問題が一つ、我々のこの根本理念に反する状態の下にこの原案に出ておるのであります。ポンプの維持管理については、事業団か作りまして被害者、鉱業権者、それから地方の関係のこれらのところへお引取を願いたいということを申しまして誰もが引取らないというときには、鉱業権者にそれを落ち着かすんだということであります。なぜ鉱業権者に落ち着かせなければならんか。一つの理由は五尺のものを三尺しか上げないであとの二尺は代弁をするのだからまだ賠償責任が残つておるのだ、こういうのが一つの理由であります。今一つの理由は、この法規は十年間で消えるのだ、従つて事業団なるものが十年たつたらなくなる、なくなることのわかつている事業団にそれを任せておつたのでは十年たつたらどうなるかわからんというのも一つの理由のようであります。最初の理由は、我我が申しますように十分根本的には我我が鉱業を営みます際は、地下の石炭は国家のものであります、これはおしやかに説法申上げる必要ございません、国家の石炭を国家の許可を得て国家の指示する方法によつて採掘をするということになつておるのであります。監督官庁は始終我々を監督し現場を廻つておられるのであります。こういうことによつて我々が許可を得、監督を受けながらやつておる事柄でありまして、その上に起つて来る鉱害は、これは学者が起るのは止むを得んとおつしやつておりますから止むを得ませんが、その上に起つて来る鉱害というものは、これは過失責任じやありません、故意ではありません。この点が非常に明瞭なんでありますが、併し起つて来る鉱害は非常に面倒なことができるのだ、被害者は何も罪がない、何とかせねばならぬということになるのであります。そこで大きな事業をやつておりますというところから、無過失損害賠償の責任問題が論ぜられまして、当時の立案しておられたかたも当議会の議員、今やつていらつしやるかたがたもたくさんおられますが、皆さんがおつしやいますように、この無過失損害賠償理論を法規に盛り上げたのは現実に行われている姿をそのまま直したということでありますが、当時は、今でもそうは言えると思いますが、無過失損害賠償理論をどんどん法規に現わしたということには、非常に先覚的であつたと言いますか余りなかつたのであります。無過失損害賠償であるということは非常にはつきりいたしておるのであります。これを故意であり過失でありとおつしやるのは今の状態においては、少くとも近き将来においてはないであろう、特別な世界理念が変革する非常に遠い将来そういうことがあると考えただけでありますが、今若しくは近い将来においては無理なんであります。そうでありますから、無過失損害賠償である、而も炭鉱を経営する者が経営し得る限度において無過失損害賠償をやらねばならぬのであるということに盛り上げられて、その金銭賠償の限度をほんの僅か超えるようなときには、復旧を要求してもいいということが鉱業法に書いてある、そういう原則から来ておるのであります。従いまして特別鉱害賠償という問題が起りました際にも私は申したのでありますが、国家が一定の基準、一定の許可標準というものを離れて、国家の危急存亡のときであるからこれをやれという特別の命令をされた以上は、国家の責任においてなすべきであるということを私も当時強く申したのでありますが、その問題がこの問題に当然そのまま現われております。当時の鉱業法の改正附帯決議におきましても国庫の負担においてということが強く言われておるのであります。国庫の負担において責任、今我妻さんがおつしやつたようにこのギヤツプは防がれて然るべきであります。その防ぎ方であります。その防ぎ方につきましては国家の貧富と申しますか、文明の度合と申しますか、国家それ自体のそのときに置かれた世界における状態といいますか、社会的状態というものによつておのずから変化がなくてはならない。国家自体が非常に国家の各産業が、国民が非常に富んでおる状態であり、文化の水準がうんと高くなつている状態と、戦後のかくのごとき状態とはおのずからそこに差があると思う、又あつて然るべきと思います。その度合によつて違うと思います。従つてそこに非常に文句の起る余地があるのでありましようけれども、ここはその国全体の考え方から行かなければならぬと思うのであります。でありますから、経営者の能力において一応の負担は経営者に十分足りない面がある、国家が補填をできるかどうか、どの程度できるか、他の産業との関連においてどの程度できるかというような睨み合せによつて、ここに初めて問題が落着するということになるのであります。これはみんな鉱業権者が負担すべきものであるということは、すぐにも今日の状態においては私はあり得るものじやないと思うのであります。殊に一応の負担をしてもなお特別な状態、風水害が起つたとか或いは特別な状態が起つた場合のことを考えて賠償責任は消えないのだ、まだ消えてはいないのだという議論に至つては、これは根本法規である鉱業法を更に曲げよう、曲げるという言葉は悪いでありましようが変えようとすることになるのであります。これはむしろ若しそういうことがあれば、今日論ずべきであると仮に仮定いたしましても、これはつい最近できました鉱業法の際にすでにその問題が解決されて、そうして附帯決議になつて現われておるのであります。根本の問題は根本のときに根本法規を改正して然るべきものであると思うのであります。私は決して被害者側が復旧される限度が十分であるということを申したのではありません。我妻さんと同じでありますけれども、我妻さんは一方においては経理の面は別にお考えにならぬのですから、欲しかつたら幾らでもとつてもいいというような意味合いの議論をなさつたかも知れない、私はそこに度合がある、鉱業権者が鉱業を経営して行くことが妥当になし得る状態の下に復旧の賠償ということもなさるべきである。もともと故意や過失によるものではありませんということを強く申上げておきたいと存ずるのであります。
要しまするのに、私どもは本法案の成立を望むものであります。本法案が成立することによつて被害を受けたかたがただけではなく鉱業権者といえども非常に明るい将来の見通しができるのであります。私は金の問題を離れてこの法案が成立することを非常に望みますと同時に熱望いたしております。おりますけれども我々が最後の一点、我々が考えておりまするこの根本理念というものが若し損われるならば、これは重大問題であると思います。私は今回の鉱業法規をそれに附帯する決議に基く特別立法によつて変えるべきではないと考えておるのであります。以上申上げましたが、若し御質疑がございましたらばのちほどお答えいたします。一応終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/28
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029・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 次に福岡県鉱山関係市町村連盟副会長春孝一君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/29
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030・春孝一
○公述人(春孝一君) 私は只今委員長さんより御紹介を受けました春孝一でございます。参議院通産委員会の公聴会におきまして、私に意見開陳の機会を与えて頂きましたことに対しまして誠に光栄に存ずるものであります。
先ず最初に被害地住民を代表する一人といたしまして先生がたに御礼を申上げます。新鉱業法が昭和二十五年の第九国会において成立するに際しまして、政府当局は鉱害の賠償については、原案の金銭賠償主義を採用するのほかはないが、鉱害現地の惨状と被害者の痛切な要望に応えるため、原状復旧か乃至は効用回復の措置を講ずるという旨の声明を出されたのでありますが、政府当局は忠実にこの誓約を御実行になり、その手初めに先ず一般鉱害復旧対策審議会を組織せられまして、あらゆる角度より真剣に研究討議して頂きその成果として対策要綱なるものを作成せられました。今次法案を得るまでに構想を練らるること六度に及ぶということを聞き及びまして御研鑽の跡は誠に敬服のほかはございません。又政府要路のかたがたには海外における鉱害の状況とこれが対策の事例を視察調査して頂きましたこと、並びに法案作成の過程においてしばしば鉱害現地を御視察に相成り、数回に亘り私どもや炭鉱業者の意見を聴取せられましたことでございます。西尾鉱害課長の飛行機事故による殉職も本法案の生んだ悲劇でありまして誠に御同情に堪えません。かく各般に亘る周到細心な手を打つて頂きましたことに対しまして感謝の念を払うものでございます。
次は最近に至り参議院竹中通産委員長殿を初め島、清澤、小松の三先生が国会開会中わざわざ福岡県に御来県に相成り、鉱害地特有の悪道をつき、雨中を日没時まで熱心に現地を御踏査になり、被害住民の訴えに耳を傾けて頂き、身近にその認識を深めて頂きましたことはこれ又感謝に堪えないところでありまして、その御労苦に対し敬意を表するものであります。
その三は本法案と姉妹関係にある特別鉱害復旧臨時措置法も昨年頃より本格的施行の段階に入りまして、おかげさまで水没田にも何年ぶりかに田植ができて農家は喜び、道路の修復も成り又小学校校舎の復旧が実現して児童も教授も父兄も喜んでおります。又戦後絶えて出なかつた水道の水も出るようになつて主婦も喜んでおります。かくして荒廃した鉱害地にも少しずつ生色がよみがえりつつあるのであります。以上の三点につきまして厚く御礼を申上ぐる次第でございます。
私は法案修正に関する具体的なお願いをする前に少しく被害者としての考えと立場を述べさして頂きます。私は筑豊炭田の負中に生れ朝夕鉱害地を目のあたりに見て育つて参つたものでございます。そもそも福岡県の石炭が炭鉱の形態によつて掘り始められましてから五十四年の歴史を持つております。而してその五十年の長い年月の間に掘採されました石炭の総数量はおびただしいものでありますが、私の計算では約九億トンと推定されます。但しこれは全部が全部良質の石炭というのではなく、石炭に附随して掘り出すところのボタ、土等を含めての勘定でありまするが、要するにこれに相当する量が地下に空洞を生ぜしめておるということは否めないところの事実であります。その結果地面が沈下する、傾斜する、陥没するために農地は池沼同様の不毛地になつております。一方ボタのほうは積り積つて筑豊炭田特有の風景でありまするところの例のピラミツド型のボタ山となつております。而してこの九億トンという総数量をわかり易く申しますると、仮に地表のどこもが一メートル平均に沈降するといたしましてその面積は実に近江の琵琶湖をしのぐ宏大な地積になつております。国として県として放置できない由々しい問題であるということに思いをいたされまして一層の関心を鉱害問題に寄せて頂きたいと考えておる次第でございます。
次は石炭産業の特異性について申上げます。福岡県の場合を例にとりましても、北九州地方の重工業は鉄を中心とする製造、加工、運輸、等の産業でありまして、時に経済界の消長は免れないにいたしましても、これらの産業は永久性、持続性を持つて年々に栄えております。福岡県の南部の筑後平野の農産物も一望の沃野に年々歳々生産されて悠久の生命を湛えております。これらに比し筑豊地帯の石炭産業は、地下資源たる石炭を日夜を分たず掘り続ける、殊に戦時中、戦前はそうであります、掘り出した石炭をほかに運びますので、筑豊の石炭産業はあたかも自身の骨を削り肉を分けて行くのであります。筑豊の炭命が今後仮に五十年あるといたしまして半世紀後には筑豊地方は肉は細り色はあせて地表は醜くなります。遂には私どもの郷土は消え失せて行くのではないかという憂いを持つておるものであります。而も石炭は過去五十年間明治、大正、昭和の近世日本の基礎産業といたしまして生産を育成し経済を培養いたし国力の推進に力をいたしましたことは、これは絶大なるものがあるのであります。かく国家性の高い石炭を産出して国の経済の伸長に貢献いたしました福岡県が逆に今では犠牲者となつて沈んで行くことは、私ども郷土を守る町村長としても耐えがたいところでございます。私は又こうも考えます。国に台風が吹く、或いは津波が海岸を洗う、激甚な被害を加えました場合は、政府は急ぎその災害対策に手を打たれます。そして一県に何億というような莫大な災害復旧資金を交付されることもあるわけであります。勿論国土保全、民生の安定のためにこれは必要でありまするが、鉱害の場合は徐々に緩慢に朝に夕ベに現われて来るところの現象でありますので人目につきません。災害はあたかも病気にたとえますると急性疾患でありまして、ペニシリン注射をするとか切開手術で治るのでありますが、鉱害の場合は長期慢性疾患であります、常に治療が遅れがちになるのうらみがあります。勿論石炭産業の場合には相手に鉱害権者という相手があるにはありますが、そもそも石炭採掘の許可、施業案の認可その他石炭産業に関する監督指導等はすべて政府の手に握られておるのでございます。災害と鉱害と両者ひとしく国土の禍いである以上、両者対等に政府としては措置をして頂きまするように希望いたすのでございます。すべて以上の前提に立つて以下農地、家屋及び公共団体の負担の問題について修正要望の個所を指摘しつつ先生がたの御審議の参考に資して頂きたいと考えます。
農地は申すまでもなく農業経営の基盤でありましてこれを失うことは農家にとつては生命線であります。沈降した農地を被害発生前の美田に返し生産を復活させることは最もこれは願わしい望ましいことでありまするが、これが根本的な又徹底的な解決策といたしましては、どうしても鉱業法の金銭賠償主義を改めることに帰着いたします。これにつきましては私も一つの卑見を持つておりまするが、これは本法案の領域を逸脱した論議に亘りますので私はあえてここでは申上げません。法案では農地回復の方法として、盛土と灌漑、排水ポンプ施設が取上げられておりますが、盛土復旧の場合即ち工事完成後五年を経過いたしますれば一応熟田化したものと認め、賠償の対象から外しまして賠償の責任義務消滅とされておりまするが、これは現地の認識と実情を無視したものであります。如何に農家が精励いたしましてもこの短期間のうちに土地の生産条件を元に戻すことは、これは不可能事であります。而も回復が僅かに効用回復を限度といたしておりまする限り、不可抗力な天災等を受けて収穫が減少する、時に収穫が皆無に帰することが当然予想されるのであります。かかる場合農産物のみに依存しておりまする農家は賠償から見離されておりまするので生活の手段を失うことは必至であります。私ども被害者といたしまして、第七十五条の修正を特に懇請いたしておりまするゆえんのものはここにございます。灌漑、排水について申しますと、年々耕地が低下沈降して筑豊地方を貫流いたしております遠賀川の川底よりも農地の標高が低いために、洪水等の場合は本川の水が逆流浸水して参りまして一面の農地を水浸しにいたします。すると本川の水が減水いたしまして水量が平常に復した後でないと農地は水面に浮んで参りません。水没一週間に及ぶと苗は枯死いたします、農家の惨状は目も当てられません。こういうことでは農業という産業自体がまるで賭博にひとしく、これによつて農民の生産意欲は減退いたします。殊に筑豊地方の炭層は厄介な数層に及ぶ累層を特徴といたしておりますのでこれが解決は困難であります。私どもとしては将来ポンプ排水の強化充実に特に期待いたしておりまする次第であります。それも鉱業権者が現に経営を持続しておられまして賠償の責任をとつておられます場合はいいといたしまして、曾つての権者今はなく地方は荒廃し被害はいよいよ深刻を極めているものがありますが、かかる町村は手のつけようがございません。政府はよろしく国土計画の大局に立つて救済の手を差延べて欲しいと念願いたします。本案原文によりますると、これらの恵まれない町村にも負担を課しておられますがこれには同意いたしかねます。
次は不適農地の問題でありますが、私はこの問題はよほど慎重を期さないと炭鉱側に若し良心的な経営者を得なかつた場合は、一定の対価で不適農地の枠に送り込むことができまするので、煩わしい賠償から解放されたいというところから、無責任な石炭の採掘方法、安易な方法に流れないとも限らない、その結果は不適農地が随時随所に続出増加いたしまして、本法案の劈頭に誰つてありますところの国十の回復、生産力の維持とはおよそ反対の結果に陥りまして、筑豊の山野は壊滅の危機に瀕するの虞れなしとしない、取返しのつかぬ失敗を起さぬよう当局にこれを善処方を特に御願い申す次第であります。
次は家屋の問題であります。家屋は個人の所有に属する物件であるという理由の下に一般公共施設とは区別せられ、その取扱を異にせられておるのであります。勿論公益優先ということは社会の通念でありまするが、家屋は被害者にとつても生活の本拠であります。特に農家の場合を例にとりますると収納舎、或いは堆肥小屋、養蚕室というようなものは耕地に次ぐ生産の必須物件であります。商人の場合の店舗も一家を支える職場であります。炭坑鉱区の上に立つ家屋に早晩大小の鉱害の現われるのは当り前のことでありまするから、公共施設に準ずる計画をなさらんとこれは私権を侵すことになるのではないかと、かように考えます。家屋の場合も農地と同じく、被害者といたしましては当然年々賠償を受け得る法制上の建前になつておるのでありまするが実際は受けておりません。今次法案の制定に際して私ども市町村長が声を大にして叫んでおりまするのは、日夜倒壊の危険にさらされ非衛生この上もない民生福祉上放置できないと考えました結果でありまして、その苦痛の程度は鉱害地に住む者でなくては到底味わうことのできない悲惨なものであります。私は多数被害者が黙々として忍んでおりまするがそれも或る限界に達すると社会問題を惹起するのではないかと憂うるものであります。ついては通産局長におかれましては炭鉱側の復旧計画案を御検討になると同様に、これと並行して所在市町村長が責任を持つて要望いたしまする復旧計画も御同様に御検討になるような制度を打立てて頂きますように希望いたすものであります。
地方公共団体の負担問題について簡単に申上げます。負担金は一般農地の場合、権者不明の場合、事業団の事務経費の三つに区分されておりまするが、むしろ被害者の立場にある県市町村がこれを負担するのは筋違いの話であつて、前に申述べましたように石炭産業の重要性、石炭の共通性から見て国の負担において復旧されることを希望いたします。昭和二十五年の第九国会においては政府はこの点に言及されまして、経費を鉱業権者に負担せしむることは鉱業を壊滅に導く、被害者に課することは適正賠償の観点から断じて許されない、結局は国庫の負担において遂行するのほかはないと声明せられております。今日の地方へ公共団体は財政窮乏して活発な自治活動さえもできかねておるような実情で、これ以上の負担は自治体に重圧を加えるものでありますのでお情あるお取計らいを懇請します。その他は省略いたします。
最後に総括して申しますと、折角政府の御好意に基く立法でありますので、郷里では大旱の慈雨を望むごとく非常な期待と希望を持つて本法案の成行きを案じております。鉱害地百年の宿願を救うて下されば現地はどんなに感謝いたすことでございましよう。朝に一畝歩の田を失い夕に一戸の家の傾くを見ております。耕地は減り、生産は衰え、民心は動揺して前途に希望を持つておりません。海外における鉱害復旧対策の実情は、視察官の復命報告を読みますると、原状回復主義を探つて周密な計算の上に立つ被害の予知、迅速な手当、鉱害防止手段の徹底等、あらゆる方法が採用されておるようでありまして、我が国もさような方面に研究し施策を進められるように希望いたします。
何とぞ県下百三十万を数える被害者の衷情をお汲取り下さいまして、鉱害復旧の力強い線を出して頂きますようにくれぐも御願い申上げまして私の公述を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/30
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031・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 有難うございました。次に日本石炭鉱業連合会常任理事国崎真推君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/31
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032・国崎真推
○公述人(国崎真推君) 日本石炭鉱業連合会常任理事国崎真推であります。私は鉱業権者、特に中小炭鉱の立場から本法案につきまして意見を申述べたいと思います。
臨時石炭鉱害復旧法案は過般国会に上程せられ以来衆議院においては慎重審議せられておりまするところ、今回参議院の御審議に当りここに公聴会を開かれ、関係者の意見を徴せられますことにつきましては衷心より感謝いたします。鉱害は我々鉱業権者の未然防止の努力にかかわらず、現在においては石炭採掘に不可避的に発生し、地下資源開発に随伴する問題とは申しながら由つて来たる影響は極めて甚大でありまして、特にその関係当事者の一方でありまする被害者各位に対しましては心からなる御同情をいたしますと共に、被害地復旧の一日も速かならんことをひたすら念願するものであります。今度臨時石炭鉱害復旧法案が、国土の有効利用並びに保全と、石炭鉱業の健全経営に資するため、いわゆる一般鉱害を計画的に復旧する目的の下に国会に上程を見ましたことは、先に制定せられました特別鉱害復旧臨時措置法と共に、鉱害問題に対する国会並びに政府の積極的熱意の結果であり、これに対しまして深甚なる謝意を表する次第であります。本法案は、昭和二十五年第七国会において特別鉱害復旧臨時措置法を審議決定される際の附帯決議として、一般鉱害の復旧についても総合的な国土計画の一環として政府において速かに対策を樹立せられたき旨決議せられ、更に同年十二月第九臨時国会において、新鉱業法の審議に際し、鉱害地の原状回復は国庫の負担において行うため政府は必要な法律を立案すべきである旨決議せられ、これら国会の決議に基きまして政府において立案せられましたものと承わつております。従いまして鉱業法の金銭賠償主義の原則はこれを改変する趣旨のものではなく、飽くまで国土計画と国家の責任による積極的介入によりまして被害地の復旧を実施しなければならんとするものと思料いたしております。鉱害問題の解決の方策といたしましては被害地の原状復旧を行うことが最も望ましいことは今更申上げるまでもございません。本法案が右申上げました通り国庫の負担において原状回復を行う画期的措置でありますることは誠に時宜に適したものと申すべく、我々鉱業権者といたしましてはこの法案の趣旨に賛成を表するものであります。併しながら本法案を仔細に検討いたしますると、国庫の負担において原状回復を行うとの立法の精神が完全に貫かれておるものとは了解しがたい面もあります。本法案の規定の如何によりましては鉱業権者に過重な負担を課する結果となることが甚だ懸念せられるものでございます。申すまでもなく我が国の経済の現状と将来を思いまするとき、経済自立の確立が最も急務であり、これがため各産業の母体でありまする石炭の低廉豊富なる供給が必要でございまして、ここに石炭鉱業の健全化が強く要請される次第であります。現在鉱業権者は鉱業法に基く年々相当額の鉱害賠償を行なつており、このときにおいて更に現行以上の負担を増大させることは炭鉱経営上極めて困難でありまして、石炭鉱業の健全化に逆行し、特に中小炭鉱といたしましてはこれがために経営を破綻に導く虞れがあるように思われます次の諸点につきまして原案の修正を要望する次第でございます。
その第一は復旧事業団の経営は全額国庫負担をされたいことであります。法案第二十八条に事業団の諸経費に充てるため、鉱業樺者に賦課金を課することになつております。鉱業権者は事業団に対し賠償の限度を納付金として付するものでありまするから、これに加えて裏業団の経費を鉱業権者に負担せしむることは妥当ではなく、且つ又事業団は国策上の施策実施機関として設立されたる法的性格を有する法人でありまするが故に、その性格に鑑みましても事業団の経費は当然国庫において全額を負担すべきものと思います。
第二は、納付金の額は現在鉱業法に基き賠償を実施しておりまする限度、これを越えないようにされたいことであります。法案五十一条には、鉱業権者の納付すべき納付金の額として、不毛田について「基準賃貸価格に、二千を下らず五千をこえない範囲内において、都道府県別に政令で定める倍数を乗じて得た金額」と規定せられておりまするが、納付金の基準は鉱業法の原則に基く賠償の限度である土地の対価を中心に敢行すべきであつて、実際に鉱業法に基き行なつている賠償額、その他公共事業のために潰地だとか、炭住敷地の買収だとか、農地売買の一般取引例等を基準に賠償を定むべきものと私は思います。昭和二十五、六年度におきまして打切り補償、或いは鉱害農地の買収で実際に支払いました金額は九州におきましては反当りおおむね三万乃至五万円、山口におきましてはおおむね二万乃至三万円であると調査されております。農地売買の一般取引例もこれ上大差ないもののように思います。従いまして納付金も右の金額の限度において定むべきものであると思います。然るに本法案による二千乃至五千倍で納付金を推算いたしますると右の実際に支払つた額の約二倍にも相当いたします。且つ余りにもその幅が広過ぎてこれをこのまま政令に委ねますることは、鉱業権者に対し現在にやや倍加する負担を課する結果を招来することにおいて極めて不安を有するものであります。且つ又鉱業法の賠償の原則を越えて鉱業権者に過大の犠牲を強いることともなる慮れがあるのであります。かくては本法案の趣旨に相反するのにでなく、国の基礎産業たる石炭鉱業、特に中小炭鉱の経営を破綻に導く虞れたしとしないのであります。征つて納付金につきましては、現在鉱業法に基き行われておりまする現在の賠償限度を越えない範囲内で賠償をきめますために、その最高限度を三千を越えない範囲ときめられることが最も適当ではないかと考えます。第三は、鉱業法の賠償責任は鉱業権者が事業団に納付金を納付したときに免除されたいということであります。この法案によりますれば、鉱害賠償責任の消滅は第七十五条において工事が完了して検査の結果により三年を経過して、その間事業団より効用回復不十分等によります補償の支払があつて初めて消滅することになつておりますが、政府の施策として特殊な機能法人である事業団が設立せられたものであり、鉱業権者はその事業団に賠償の限度である納付金を賠償に替えて納付するものでありますから、鉱業法上の賠償責任はその納付のときにおいて完全に免除せられ、その後は事業団が鉱業権者に代つて賠償の責に任ずべきが当然であると思慮いたします。然るに衆議院におきましてはその一部に、原案を遥かに越えて原案による鉱害責任の消滅後においても、天災等による特別な被害に対し永久に鉱業権者に賠償責任を課さんとするがごとき意見があるやに仄聞いたしておりますが、かくのごときは鉱害賠償の性質上甚だ了解に苦しむと申さなければなりません。即ち鉱業権者は鉱業法による賠償限度一ぱいを負担しておるものであり、第三者の行いまする復旧工事の如何による賠償責任が永久に存続するというようなことは鉱業法の金銭賠償の原則を逸脱し、且つこの法案の趣旨にもとるものであり絶対に承認できないのであります。
なお賠償責任の消滅に関連いたしまして、農地復旧に代えましてポンプ等の施設を新設いたしたような場合においてもその鉱業権者にその維持管理を強制するようなことは不当でありまして、前に申述べました理由によりこれは事業団が当然維持管理を行うべきものであると思います。この点につきましては衆議院においても大方の御意見は事業団が維持管理に当るべきものであるということになつておるやに聞き及んでおる。当然のこととは申しながらその良識に対しましては敬意を表する次第であります、
第四は、公共施設の復旧に対しましても一般災害並の国庫補助金を交付して、その復旧費を賠償せしめないことにされたいということであります。一般鉱害を国家的見地より復旧せんとしまする本法案の趣旨に則りまして、公共の施設については少くとも一般災害並の国庫補助金を行い、これを賠償せしめないことが適当であると考えます。
以上主な点につきまして申述べました。これらの点につきまして御審議に当り何とぞ原案御修正の上速かに本法案の成立を希望する次第であります。
以上をもちまして私の公述を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/32
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033・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) これをもちまして公述人のかたがたの御陳述を終りました。各委員のかたより公述人のかたに対しまして御質疑を頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/33
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034・小松正雄
○小松正雄君 私は日本石炭協会の万仲さんに一言お尋ねいたしたいと思います。御承知のように本法案は十年と規定してあることはあなたもさつきおつしやつたのでありますが、十年後に鉱害があると思われておりますか、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/34
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035・万仲余所治
○公述人(万仲余所治君) 実は十年ということを申上げてあとでその内容を申上げるのを私忘れましたが、御質問がありましたので大変結構であります。法律案は十年ということになつております。従いまして十年たてばなくなる者に灌漑施設を管理させるのは年限が来たらあとはどうなるかわからんからおかしいじやないかというようなことが、一つその理由になつておるんじやないかと言いながらその内容を申上げるのを忘れたのでありますが、これは法律そのものが十年たてば全部なくなつてしまう。全部なくなつてしまいますので、事業もなくなつてしまいますればこの中にあるいろいろな事柄は全部御破算になりますから、必ずその際には或いはそれを継続すべきであるか、乃至はそれに代るものがなくちやならんと思います。私どもは継続されて然るべきものと思いますけれども、そうなるかどうかわかりませんけれども、鉱害がそれで終るということを考える必要はないのでありまして、この法律自体がもうすつかりなくなつてしまうのです。なくなつてしまつてゼロになつていいかというとゼロになつて悪いのであります。これは私どもも考えとしてはこれに代るべきものがなければならん、代るべき施設がやはり同じような恰好でなさるべきであるという想定の上に申上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/35
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036・小松正雄
○小松正雄君 そこで私はいやしくも石炭鉱業或いは石炭全体の協会の代表としてここに公述される上におきましては、少くとも先の知事のお説の中にもありましたように、今後石炭の情勢に鑑みて国内資源を開発する以上次から次にこの被害が起つて来るであろうということを言われたのに対しては私も同感であり、又あなたも今おつしやるように同感だと思われるのですね。然らばこの法案が、少くともあなたがこの代表される人として十年後にこの法案もなくなるだろう、十年後にはこの事業団もなくなるだろう、こういつたことを考えられるときに、少くともいま少し進んだ観点に立つてこの法案の上に私はあなたとしてもう少し強く、なくなるということでなくて折角できるこの法案が永続性があるようにという意味において根本理念のことをあなたはおつしやつた、そういう観点に立つてその趣旨からしてもあなたはこの法案の継続性ということを言つてほしかつたということを私は述べておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/36
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037・万仲余所治
○公述人(万仲余所治君) その点申訳ございません。実は余り気負い込んで申しましたので、原稿を離れて申上げましたので申訳ございません。只今謹んでお言葉を拝聴いたしまして又訂正いたしますが、今申しましたようなわけで被害がいつまでも継続して起るであろうということにつきましては、これは私は同じような被害がどんどん継続して起るというふうに考えておりませんので、これは被害を防止する技術的な面その他の面が漸次鉱業の発達に従つてこれから進んで参りますので、恐らく今後における被害というものは相当に度合が違つて参りますであろう、少くなつて参りますであろうということは考えられますが、これが絶無になるということはちよつと私どもも考えられておりません。それで私はこの十年という事柄が書いてありますが、私どもとしては十年がもつと継続ざれることを希望いたしますけれども、一応十年となつておりますことが、十年たつたら鉱業権者に持つて行かんとどこにも持つて行くところがないという議論には私どもは賛成できないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/37
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038・小松正雄
○小松正雄君 そこで私の今申上げておることは、この法案を通じて被害者側から言われることは石炭鉱業権者を加害者としての建前にとつて、この法案自体に対するいろいろな諸問題が出ておるために私は申上げておるわけであります。あなたがいやしくもこの石炭鉱業を掌るところの協会の副会長とするならば、それでありまするからして、こういう不安をこの際切除する、要するにこの法案を以て将来こういうことの起らないようにするようにしてほしいということぐらいは私言うべきだと思う。
なお又今あなたのおつしやつたように、それは今後採掘する上におきましてはそれは技術的に陥落も漸次防ぐ方法も出て来るんでしよう。併しながら中小炭鉱はそんな技術的な石炭の採掘方法をやるかどうかということはなかなか僕はむずかしいものだと、かように考えるのです。石炭を掘る以上は終始陥落が起ることは間違いないのです。その意味から申しまして私はあなたのおつしやることは当らない。要するに十年ということは、十年来たら鉱業権者としてはそう負担しなくなつてもいいことになるであろうという臆測的なものでなくして、折角生れたこの法案に対するあなたの意見としてはもつと突つ込んで要望してほしかつたと思うのです。
なお終りに委員長にお願い申上げておきたいと思いますが、お聞きの通りに公述人のかたがたもどうも法案が衆議院で遅れておるというようなことを言われたのでありますが、私たちはもう少くとも長くこの法案の予備審査に入つておることは委員長も御承知の通りであります。できますならば何も衆議院の審議の過程の中に入つていろいろ申上げるわけではございませんが、一つ御連絡を願いまして早急に上つて来るように一つお取計らい願いたいことを、すでに期日も切迫しておることでありますし、いろいろ御心配されることを勘案いたしましてここにお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/38
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039・島清
○島清君 これは杉本知事からお答え頂いたほうがいいかと思いますが、大体まあ福岡が鉱害の主な土地でございまして、金銭に見積りますると二百何十億の鉱害がある、こう言われておりますが、面積は私はちよつと忘れましたが、一体この法案が皆様がたの御希望なさるような大体四点に集約できたと思いまするが、こういうものが修正可決決定されるといたしまして、十年間の年限を切つておりまするが、この法律の趣旨とするところを十分にこれが活用されるとして、それで福岡の大体鉱害というものの全部は回復できないと思いまするが、大体十年後には福岡の鉱害の何%くらいは回復できると思いますか。それから又収穫の面におきまして大体どの程度まで効用が回復されるとお思いでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/39
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040・杉本勝次
○公述人(杉本勝次君) まあ福岡県においての鉱害農地で申上げますれば、その面積は大体一万一千町歩です。この前の特別鉱害復旧臨時措置法によつて実施される対象面積は大体二千七百町歩程度であります。今回の法案の対象となる農地面積は大体五千町歩と見ております。従つて福岡県の被害農地の面積のうちの大体半分程度がこの前の特別鉱害並びに今回の一般鉱害の復旧法によつて或る程度効用回復が期待されるということになります。どの程度この収穫がこれによつて期待されるかというと、これは特別鉱害の復旧事業がまあこれは五カ年間の計画でございますが、今日まで大体三〇%程度が福岡県内の実績であります、五カ年でそこまで予定通り行くかどうかが問題点でありますが、先ほど栗田さんからもお話がありましたように、一応埋立て盛土ができましても、直ちにそれが完全に効用を発揮するというわけではございませんから、収穫がどの程度ということは今ちよつとここでお答えするだけのものを持ちませんが、まあ仮に全体を百とするならば、十カ年を通じてこれは極めて私の概算的な言い方でありますが三〇%乃至四〇%ではないか、かように私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/40
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041・中川以良
○中川以良君 今の面につきまして、山口県地方におきまする状態、殊に山口地方は中小炭坑が多いのでございまして、九州地区とはおのずから異なつた面が非常に多いと思います。只今特別鉱害の復旧状況、大体今後の一般鉱害等に対しまして特にいろいろなお考え方もあると思いまするが、そういうような点につきまして姫井市長から承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/41
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042・姫井伊介
○公述人(姫井伊介君) 山口県内における被害状況を数字的に調査しておりません。ただ地元の小野田市といたしましては殆んど三分の一近い、例えば九百町歩のうち三百町歩の被害面積を持つております。宇部市のほうは若干少いと思いますが、その他美禰郡、船木、厚狭とかいうふうなものをかけますると少くとも六百町歩ぐらいの被害面積があると思いますが、的確なる数字は私ただ地元関係よりほかにはよく存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/42
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043・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 別に御質疑がなければこれをもちまして公聴会を終りたいと思います。
本日は誠に御遠方のところ御多用のところをわざわざ本委員会のために御出席下さいました公述人のかたがたに対して厚くお礼を申上げます。皆様がたの御意見に対しまして各委員のかたがいろいろそれを参考にいたされましてお考えになりまして、本法律案に対する審査の資とせられることと思います。誠に有難うございました。お礼申上げます。本日はこの程度をもちまして散会いたしまして御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/43
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044・竹中七郎
○委員長(竹中七郎君) 御異議ないものと認めまして散会いたします。
午後三時五十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101314793X05019520616/44
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