1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年七月二十四日(木曜日)
午後四時三分開会
委員の異動
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七月二十三日委員木内キヤウ君及び小
串清一君辞任につき、その補欠として
前之園喜一郎君及び左藤義詮君を議長
において指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 梅原 眞隆君
理事
白波瀬米吉君
高田なほ子君
相馬 助治君
委員
木村 守江君
黒川 武雄君
草葉 隆圓君
左藤 義詮君
堀越 儀郎君
山本 勇造君
荒木正三郎君
前之園喜一郎君
矢嶋 三義君
岩間 正男君
衆議院議員
若林 義孝君
国務大臣
文 部 大 臣 天野 貞祐君
政府委員
地方財政委員会
財務部長 武岡 憲一君
地方自治政務次
官 藤野 繁雄君
地方自治庁財政
課長 奧野 誠亮君
文部省初等中等
教育局長 田中 義男君
事務局側
常任委員会専門
員 竹内 敏夫君
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本日の会議に付した事件
○義務教育費国庫負担法案(衆議院提
出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/0
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001・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) これより文部委員会を開きます。
義務教育費国庫負担法案を議題といたします。本案に対する御質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/1
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002・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 御異議ないものと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正の御意見もございましたら、この際お述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/2
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003・堀越儀郎
○堀越儀郎君 本法案に対して本員は次のような修正をいたしたいと存じます。
先ず修正案の全案を読上げます。
義務教育費国庫負担法案の一部を次のように修正する。
第二条第一項に次の但書を加える。
但し、特別の事情があるときつは、各都道府県ごとの国庫負担額の最高限度を政令で定めることができる。
第二条第二項を削る。
附則第一項を次のように改める。
1 この法律は、昭和二十八年四月一日から施行する。
簡単に趣旨を申上げまするが、原案によりますると教職員の給与費についてはその支給額の二分の一を負担するという第一項に並列してこの最高限度を政令で定めるということが第二項に設けられてありまするが、これは条例にも例はあるようではありまするが、第一項と第二項が対立しておりまして非常に比重が重いように思われまするので、将来この法律が悪用される場合に二項を重く用いられるようなことがあつてば非常に困ると思いますので、この比重をもつと軽くするのが当然ではないか。質疑応答の間で明らかになりましたところによりますると、提案者の側におきましてもこれは但書くらいな意味であつて、第一項を原則として使われて第二項というものはよくよくの場合でないと使われないのだと、こういうような意味の御答弁があつたのでありまするが、そういたしますると将来問題が起らないように、又間違いが起らないように第二項というものを削つてしまつて、但書にして、比重を軽くしたほうがいいのじやないか。更に又これを適用する場合に濫用されても困るのでありまするから、できるだけ絞つて特別の事情があるときはと、こういうふうに条件を入れたのであります。特別の事情があるということは各府県間の間の懸隔が非常に大きくなつて支障を来たすような場合も予想されまするし、又同じ府県内において、他の公務員との間の給与の懸隔が余りに隔りが大きいというような弊害の起ることも予想されますので、そういうようなことを特別の事情という意味に入れて、そういうような止むを得ないことがあつた場合にのみきめられるべきもので、原則としては第二項というようなものはこれは余り但書にして適用しないのだという意味をはつきりさせたいと思うのであります。
それから次の附則の場合でありまするが、原案では、原案と申しまするのは衆議院から回付された修正案でありますが、施行期日は政令で定めるという意味に漠然としておりまするので、これははつきりとこの施行期日を定めるべきものであります。この修正案が衆議院通過の場合においても全会一致で附帯決議をつけておりまするが、これも昭和二十八年度から施行するという強い希望を付して本案が衆議院を通過しておりまするのでございまして、この衆議院の意向竜我々尊重し、又その当時政令で定めるという漠然としたことしかできなかつた諸種の事情も大体解消できるようにも思いまするし、当然これははつきりと期日を定めるべきものであるという考えの下にかように修正をいたしたいと思うものであります。簡単でありまするが、修正の趣旨を説明いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/3
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004・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私はこの義務教育費国庫負担法案に対する修正案を提案いたします。
なおこの修正案は高田なほ子氏、相馬助治氏、棚橋小虎氏、矢嶋三義氏、岩間正男氏の共同提案にかかるものでございます。初めに修正案の全文を朗読いたします。
義務教育費国庫負担法案の全部を次のように修正する。
教育費国庫負担法
(目的)
第一条 この法律は、学校教育について、その妥当な規模と内容とを保障し、併せて義務教育の無償の実現を期するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。
(国の負担)
第二条 国は、毎年度、公立の小学校、中学校、高等学校、盲学校、ろう学校及び幼稚園(以下「学校」と総称する。)の教育に要する経費のうち、教職員給与費、教材費及び校舎(盲学校及びろう学校にあつて、寄宿舎を含む。以下同じ。)の建設事業費について、それぞれ、その総額の五分の四を下らない額を負担する。
2 国は、別に法律の定めるところにより、義務教育の課程に属する児童及び生徒の使用する教科用図書の購入並びにこれらの児童及び生徒のための学校給食に要する経費について、それぞれ、その全額を負担する。
(教職員給与の総額)
第三条 前条第一項の教職員給与費の総額は、第四条の規定により算出された教職員給与費の平均単価に、左の各号に定めるところによりそれぞれの学校ごとに算出された全国の公立の小学校の教員(校長(幼稚園にあつては、園長。以下同じ。)、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭及び講師をいう。以下同じ。)の数、中学校の教員の数、高等学校の教員の数、盲学校及びふろう学校の教員及び寮母の数、幼稚園の教員の数、小学校、中学校、盲学校、ろう学校及び幼稚園の事務職員の数並びに高等学校の事務職員(実習助手を含む。)の数のそれぞれの合計数を乗じた額の合算額とする。
一 校長の数は、一学校について一人とする。
二 教諭、助教諭又は講師の数は、小学校及び幼稚園にあつては理論学級数一について一・二五人とし、中学校にあつては理論学級数一について一・八人とし、盲学校及びろう学校の小学部にあつては理論学級数一について一・五人、中学部及び高等部にあつては理論学級数一について一・八人とし、高等学校にあつては別表第一又は別表第二に掲げるところにより算出された員数とする。
三 養護教諭又は養護助教諭の数は、一学校について一人とする。但し、小学校及び中学校にあつては児童数又は生徒数が千人をこえる場合は、千八までを加えるごとに一人を加算するものとし、盲学校及びろう学校にあつては小学部、中学部及び高等部の理論学級数の合計数が十二をこえる場合は、十二までを加えるごとにそれぞれ一人を加算するものとする。
四 寮母の数は、盲学校及びろう学校の寄宿舎に寄宿する児童及び生徒の数にそれぞれ五分の一を乗じた員数とする。
五 結核性疾患により休職中の教員及び寮母の数は、前各号の規定により算出された教員及び寮母の数(以下この条中「基準教員数」という。)に百分の二・七を乗じた員数とする。
六 産前産後の休暇中の教員及び寮母の数は、基準教員数に百分の一・三を乗じた員数とする。
七 事務職員の数は、小学校、中学校及び幼稚園にあつては、一学校について一人とし、小学校及び中学校の児童数又は生徒数が千人をこえる場合は、千人までを加えるごとに一人を加算するものとし、盲学校及びろう学校にあつては一学校について一人とし、小学部、中学部及び高等部の理論学級の合計数が十二をこえる場合は、十二までを加えるごとにそれぞれ一人を加算するものと上、高等学校にあつては生徒数百二十人までは四人とし、生徒数百二十人をこえる場合は、百八十人までを加えることに二人を加算するものとする。
2 前項の理論学級数は、左の各号に定めるところによる。
一 小学校及び中学校にあつては、各学年の児童数又は生徒数を四十五で除し、端数を一に切り上げた数の合計数とする。
二 盲学校及びろう学校にあつては、小学部については各学年の児童数を六で除し、端数を一に切り上げた数の合計数とし、中学部及び高等部については各学年の生徒数を十で除し、端数を一に切り上げた数のそれぞれの合計数とする。
三 幼稚園にあつては、幼児数を三十で除し、端数を「に切り上げた数とする。
3 前二項の規定の適用については、一分校は、一学校とみなし、第一項第一号の規定の適用については、盲学校及びろう学校の小学部、中学部及び高等部は、それぞれ、一学校とみなす。(教職員給与費の平均単価)
第四条 教職員給与費の平均単価は、毎年度、全国の公立の学校の教員、寮母及び事務職員(以下「教職員」という。)について、国立学校のこれらに相当する教職員の例に準じて算出した給料、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当、超過勤務手当、休日給、夜勤手当、日直及び宿直に関する手当、年末手当、寒冷地手当、石炭手当、退職手当、退職年金、退職一時金、死亡一時金及び公務災害補償並びに都道府県の負担に係る恩給負担金及び共済組合負担金のそれぞれの教職員一人当りの平均単価を合算した額に旅費の単価八千円を加算した額とする。この場合において、その算出された給料の平均単価の額が現に受けている給料の一人当りの平均単価の額を下るときは、現に受けている給料の平均単価の額を当該算出された給料の平均単価の額とする。
2 前項の教職員給与費の平均単価は、小学校の教員、中学校の教員、高等学校の教員、盲学校及びろう学校の教員(寮母を含む。)、幼稚園の教員、小学校、中学校、盲学校、ろう学校及び幼稚園の事務職員並びに高等学校の事務職員ごとに算出するものとする。(教材費の総額)
第五条 第二条第一項の教材費の総額は、第三条第一項の規定により算出された教職員給与費の総額に百分の十五を乗じた額とする。(建設事業費の総額)
第六条 第二条第一項の学校の校舎の建設事業費の総額は、毎年度、二万八千円に左の各号に定めるところにより算出された学校の校舎の総坪数の三十分の一に相当する坪数を乗じた額とする。
一 小学校の校舎については、一・一坪に全国の公立の小学校の児童数を乗じた坪数と〇・二坪に政令で定める積雪寒冷地帯にある公立の小学校の児童数を乗じた坪数との合計数とし、一坪未満の端数は、一坪に切り上げるものとする。
二 中学校の校舎については、一・六坪に全国の公立の中学校の生徒数を乗じた坪数と〇・二坪に政令で定める積雪寒冷地帯にある公立の中学校の生徒数を乗じた坪数との合計数とし、一坪未満の端数は、一坪に切り上げるものとする。
三 高等学校の校舎については、二・五坪に全国の公立の高等学校の生徒数を乗じた坪数と〇・二坪に政令で定める積雪寒冷地帯にある公立の高等学校の生徒数を乗じた坪数との合計数とし、一坪未満の端数は、一坪に切り上げるものとする。
四 盲学校及びろう学校の校舎については、八・一八坪に全国の公立の盲学校及びろう学校の小学部、中学部及び高等部の児童数及び生徒数の合計数を乗じた坪数とし、一坪未満の端数は、一坪に切り上げるものとする。
五 幼稚園の校舎については、一・五坪に全国の公立の幼稚園の幼児数を乗じた坪数とし、一坪未満の端数は、一坪に切り上げるものとする。(戦災復旧費及び災害復旧費の国の負担割合)
第七条 国は、地方公共団体に対し、その設置する学校の戦災復旧及び災害復旧に要する経費について、それぞれ、その五分の四を負担する。
附則
1 この法律は、公布の日から施行し、昭和二十七年四月一日から適用する。但し、第二条から第七条まで及び附則第七項の規定は、昭和二十八年四月一日から施行する。
2 昭和二十七年度に限り、地方財政平衡交付金法(昭和二十五年法律第二百十一号)の規定にかかわらず、各地方公共団体の負担に係る小学校、中学校、高等学校、盲学校、ろう学校及び幼稚園の教職員に係る教育費に関する基準財政需要額(以下「基準財政需要額」という。)の算定については、附則第三項から附則第五項までに定めるところによる。
3 各地方公共団体の基準財政需要額は、小学校にあつては十二万六百九十円中学校にあつては十四万二千三十二円、高等学校にあつては十六万三千九百八十円、盲学校及びろう学校にあつては十四万一千七十二円、幼稚園にあつては十一万二千九十二円に、勤務地手当、特殊勤務手当、寒冷地手当、石炭手当等を考慮して政令で定める地域別の補正係数を乗じた額に、政令で定める教職員一人当りの超過勤務手当、休日給、夜勤手当、日直及び宿直に関する手当、年末手当、退職手当、死亡一時金及び公務災害補償の額並びに旅費の単価八千円を加算してそれぞれの学校ごとに教職員一人当りの給与単価を算出し、その給与単価に、都道府県にあつては、当該都道府県の区域内にある公立の小学校及び中学校、市(特別区を含む。以下同じ。)町村の設置する学校教育法(昭和二十二年法律第百三十六号)第四十四条第一項に規定する定時制の課程(以下「定時制の課程」という。)のみを置く高等学校、当該都道府県の設置する高等学校並びに公立の盲学校、ろう学校及び幼稚園の附則第四項の規定により算出されたそれぞれの理論教職員数を乗じた額の台算額とし、市町村にあつては、当該市町村の設置する高等学校(定時制の課程のみを置く高等学校を除く。)の附則第四項の規定により算出された理論教職員数を乗じた額の合算額とする。
4 理論教職員数は、それぞれの学校ごとに、左の各号に定めるところにより算出された員数の合計数とする。
一 校長の数は、一学校について一人とする。
二 教諭、助教諭又は講師の数は、小学校及び幼稚園にあつてはそれぞれ学級数一について一・一人とし、中学校にあつては学級数一について一・五人とし、高等学校にあつては別表第二又は別表第四に掲げるところにより算出された員数とし、盲学校及びろう学校の小学部にあつてはそれぞれ第三条第二項第三号に規定する理論学級数(以下「理論学級数」という。)一について一・五人とし、盲学校及びろう学校の中学部及び高等部にあつてはそれぞれ理論学級数一について一・八人とする。
三 養護教諭又は養護助教諭の数は、一学校について一人とする。但し、盲学校及びろう学校にあつては、小学部、中学部及び高等部の理論学級数の合計数が十二をこえる場合は、十二までを加えるごとにそれぞれ一人を加算するものとする。
四 寮母の数は、盲学校及びろう学校の寄宿舎に寄宿する児童及び生徒の数にそれぞれ五分の一を乗じた員数とする。
五 結核性疾患により休職中の教員及び寮母の数は、前各号の規定により算出された教員及び寮母の数(以下「基準教職員数」こいう。)に百日分の二・七を乗じた員数とする。
六 産前産後の休暇中の教員及び寮母の数はり基準教職員数に百分の一・三を乗じた員数とする。
七 事務職員(高等学校にあつては 実習助手を含む。)の数は小学校、中学校及び幼稚園にあつては一学校について一人とし 高等学校にあつては、生徒数百二十人までは四人とし、生徒数百二十人をこえる場合は、百八十人までを加えるごとに二人を加算するものとし、盲学校及びろう学校にあつては一学校について一人とし、小学部、中学部及び高等部の理論学級数の合計数が十二をこえる場合は、十二までを加えるごとにそれぞれ一人を加算するものとする。
5 前項の規定の適用については、一分校は、一学校とみなし、前項第一号の規定の適用について、盲学校及びろう学校の小学部中学部及び高等部は、それぞれ、一学校とみなす。
6 市町村立学校職員給与負担法(昭和二十三年法律第百三十五号)の一部を次のように改正する。
第一条中「盲学校及びろう学校の校長」を「盲学校 ろう学校及び幼稚園の校長 園長」に改め、「特殊勤務手当、」の下に「超過勤務手当、休日給、夜勤手当、」を加える。
7 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。
第十条中第一号を第二号とし、以下順次一号ずつ繰り下げ、同条に第一号として次の一号を加える。
一 学校(大学を除く。この号中以下同じ。)における教育に従事する職員に要する経費及び教育の教材に要する経費並びに学校の校舎の建設事業費
以上申述べたのが修正案の全貌でございますが、以下若干その骨子になる点を御説明申上げたいと思います。
先ず国庫負担の対象といたしましては、義務教育に限定をしないで、公立の幼稚園及び高等学校を含めておる点でございます。次に、負担額については大幅に負担をすると、こういう考えから負担額を八割といたしておるのでございます。次に第三点といたしましては、国庫負担の対象となる教育費の範囲を、給与費、それから維持運営費、それから建築費、それから義務教育無償の原則のための諸経費等を対象といたしておるのであります。
第四点といたしましては、平衡交付金制度より完全に切離しておる点でございます。それから、第五点といたしましては、災害、戰災等の復旧費を見込んでおるのでございまして、それは五分の四を国庫で負担をする。
以上五点が修正案の骨子でございまして、この修正案を作成するに当りまして、私どもの考えといたしましては、先に当参議院の文部委員会で小委員会が設けられまして、この教育費の国庫負担の問題について種々検討が重ねられたのでございます。そうして、この小委員会において慎重に考究をせられまして、そうして一応の成案を見た小委員会案がございますが、私ども修正に当りまして、この小委員会案を基礎にいたしまして、ここに考慮をいたしたものでございます。
今更申上げるまでもなく、六三制度という画期的な新学制が発足いたしておるのでございまするが、併しこれの裏付となる財政の確立の問題が不十分でございまして、そのために現在教育のいろいろな面に支障を来たしておることは、各位のすでに御了承の通りでございます。どうしてもこの支障を克服して、そうして教育を正常な状態に、更に力強い発展を図るためには、ここにどうしても大幅な国庫負担が必要であるというまあ見解に立つておるのでありまして、そういう見解に基きまして、ここに修正案を提案するに至つた次第でございます。どうか各位におかれましては、十分御審議を頂きましてこの修正案に御賛同を賜わりたい、かように考えておる次第でございます。
甚だ簡単でございますが、修正案を提案いたしました者を代表いたしまして、提案理由を御説明申上げた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/4
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005・相馬助治
○相馬助治君 私は社会党第二控室を代表して、只今議案と相成つておりまする義務教育費国庫負担法につきまして、衆議院回付にかかる原案に反対いたし、なお堀越儀郎君提案にかかる修正案に対し反対いたし、只今荒木君説明にかかる修正案に対し賛成の意思を表明するものであります。
先日私はフイヒテの書かれた「ドイツ国民に告ぐ」を敬虔な気持を以て読返して見ました。書かれておりますることは、戦いに敗れたドイツが、真により立派なドイツを建設するためには、他の民族に頼つてはならない。みずからの力によつて起上らなければならない。みずからの力によつて起上るということの具体的なことは、教育を尊重することである。即ち教育を尊重せずしてドイツの復興はあり得ないということを烈々と述べております。誠に我々はこのフイヒテの言葉に耳を傾くべき時代であろうということを、この際諸君と共に私は銘記したいと思うのでございます。日本が戦争に敗れて非常に財政的な不幸の中にあり、教育も又制度その他において変転極まりのない歴史を辿つて参りましたが、その間に処して、種々批評はありましようけれども、文部当局が善意を以てこれらの問題に対して対応せんとして来た努力を、私は一応称讃するにやぶさかでございません。併しながら、残念なことに、現政府によつてはそれらの考え方というものは実現し得なかつたことを、私は極めて遺憾に思うのでございます。若しそれ言うがごとく、日本が文化国家であるとするならば、又文化国家でなければならないとするならば、文化国家とは積極国家の意味でありまするが故に足らない金でありまするけれども、やりくりではありまするけれども、先ず教育の面にこそ財政の多くを注がなければならない。これは教育者の我田引水ではなくて、この道こそが私は日本民族を再興せしめる、日本を再建せしめる道であるということを確信して憚からないのであります。
先に衆議院において議員提出によつて義務教育費国庫負担法が上程されました。いろいろ問題はあろうと存じたのでありますけれども、与党である自由党の中の議員の中に、かかる法案を提案し、義務教育費国庫負担法の精神を僅かながら貫かんとする良識ある態度に対して、私は文句なしに敬虐な態度を以て称讃を送つていたのでありまするが、そのあと再び今度は議員提案によつてこの法案は修正された。修正されたというよりはむしろ変貌された。誠に提案した精神とは似ても似つかぬものがそこにでき上つて、衆議院において可決され、これが本院に回付されたことを私は極めて悲しむのでございます。従いまして、この原案について見るならば、第一条に掲げてありまする目的は、実に堂々としたものであります。当然として、第二条以下においでこの目的に到達するべき手段方法が明示されなければならないにもかかわりませず、それを満足せしめる何ものもないことを私は遺憾とするのでございます。勿論この法律案というものを成立せしめて、ベストではないがベターを狙つて、少しずつでも前進するために、この法律案を成立せしめるべきであるという議論のあることを知つております。又それには相当の理由のあることも知つております。勿論私は今の日本の国の置かれている財政的な現実に眼を覆うものではありませんけれども、併しながら、この第一条に示された目的に到達すべくは余りにもその内容が浅薄であり、余りにもその内容がいわゆる羊頭狗肉のものであるということを断ぜざるを得ないのであります。その他いろいろな点について触れたいと思うのでありまするが、ただ一点心配いたしますることは、本法案が成立いたし、文部大臣以下文部当局その他教育行政に当る者が本法律案によつて教育財政の確立を期さんとするときに、かかるあいまいな法律を以てして果してこれらの諸君が満足するようなこれが支えたり得るか、残念ながら私は否と答えざるを得ない。再びこの法案によつて、極めて勝手な日本の大蔵官僚によつて日本の教育が財政の面に歪められるのであろうことを私は甚だ恐れるものでございます。具体的な内容について或いは政令というような問題について種々の議論はございまするが、それは委員会において質疑のうちに尽きたのでここには触れません。
この原案に対しまして堀越儀郎君の提案された修正案というものは、その施行期日を明確ならしめたという点においてこれは敬意を表するに値いするものであると存じます。且つ又第二条一項におきましては、その政令の規定というものが将来多くのトラブルを生むであろうという観点に立ちまして、これらの点についてもよりよきものに改めんとする善意の努力が払われたことに対しましては、衷心敬意を表するにやぶさかでございません。併しながらその善意にもかかわりませず、修正案に現われたる文面それ自体が持つ内容、それ自体が及ぼす法的影響というものに至りますというと、恐らく将来発議者の意思を離れてこれ又あいまいなものであると第二条一項の問題においてはきめつけられる時代が来ること必定であろうと存ずるのであります。施行期日を明確ならしめるということについては、これは文句なしに我々は賛成でございます。併しながらこの部分の中のこれに賛成、これに反対というわけに参りませんので、その労を多としながら、その労に敬意を払いながら私は残念ながら堀越君提案にかかる修正案に対しまして反対の意思を表明するものであります。
次に只今荒木正三郎君説明にかかる修正案は、種々問題はあろうと存じます。併しながら現在置かれておる日本の位置、現在置かれている日本の財政的な現実、現在置かれている教育の現実、将来あらねばならぬ教育の姿、この諸般の事情を勘案いたしまするというと、その目的到達に対しましては、先の原案並びに修正案に対しましては甚だしく飛躍して、これは誠に妥当なる内容を持つものであろうと確信するものでございます。従いまして私はこれについても具体的な内容について見解の二、三を述べるべきであろうと存じまするが、いずれ本会議における時間を頂戴いたしまして論及せしむる自由をここに保留いたしますると共に、衆議院回付にかかる原案並びに堀越儀郎君にかかる修正案に対し反対し、荒木正三郎君修正にかかる修正案に対しまして我が会派は賛成の意思を表明する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/5
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006・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 他に御意見はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/6
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007・木村守江
○木村守江君 私は自由党を代表いたしまして只今上程されました義務教育国庫負担法案につきまして堀越儀郎君の提出にかかる修正案に賛成いたし、なお同修正部分を除きました本案に賛成いたし、荒木正三郎君以下提出の修正案に反対するものであります。
御承知のように、敗戦後の日本の再建は、その根幹を教育に待たなければならないということは私が今更申上げる必要がないと存ずるのであります。ややもすれば戦争前の日本の教育が国民の教育にあらずして、いわゆる中央集権的な教育であつたことがあの敗戦に導いたところから、教育は民主的な教育に入らなければいけないということになつて参りまして、ここに民主的教育の確立を見るに至つたのであります。民主教育の確立に際しまして最も重要なことは、御承知のごとく教育財政の確立だと考えるのであります。かようなことを考えて参りましたときに、特に義務教育の重要性を考えてここに義務教育費の国庫負担法案なるものを上程されましたことは誠に時宜を得た処置であると考えまして私満腔の賛意を表するものであります。その法案の内容につきましては先般来の委員会おきましていろいろ論述されましたところでありまして、私はこれを承諾いたしまするが、この法案の足らざるところを堀越儀郎君の修正案によりましていわゆる明確化されましたことは、これ又賛意を表さなければならない点であります。
かような観点から、自由党といたしましては、この修正案並びに修正案を除いた本案に賛成いたすもので、衆議院送付の本案に賛成するものであります。なお荒木正三郎君ほかの提出されました修正案は誠に教育の理想を掲げられました立派な法案ではありまするが、義務教育費国庫負担法というようなこの法案と睨み合せまして、或いは幼稚園或いは高等学校等、あまねく教育の全般を網羅いたしました点につきまして、かような状態におきましては、国立大学を併せまして日本教育を全部国庫がこの掌中に入れるというような形態になつて来る虞れが十分にあると私は考えるのであります。勿論国家財政のあり余る状態におきましては、かような状態の再現も決して否定するものではないものでありまするが、現在の日本の状態におきまして、かような法案が本当に日本の実情に即応したかということを考えましたときに、私は残念ながらこれに反対せざるを得ないのであります。只今相馬君等から、衆議院送付の本案につきましては非常に物足りないようなことを申されましたが、教育は私は一日にしては成り得ないと考えるのであります。又教育は決して金額の多寡によつてはその成果を決定するものではないと考えるのでありまして、私は教育こそ順次にこれを積み上げまして、而してその成果を得なければならないと考えるのであります。
かようなことから私は今回の法案の第一条に示された精神に則りまして、漸次この法案の充実を期することを考えましてこの法案に賛成し、荒木君以下の修正案に反対する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/7
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008・高田なほ子
○高田なほ子君 私は社会党第四控室を代表いたしまして衆議院から回付されました原案並びに堀越儀郎委員修正案に対しまして反対をいたし、荒木正三郎委員提案の修正案に対しまして賛成をいたすものでございます。申上げるまでもなく憲法第二十六条において、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。「こうして義務教育が国家において無償でなされることが明確に規定されておりますが、これは一つの政治倫理であり、当面の政治に携わる者がこの政治倫理に対して忠実であることは申上げるまでもないのでございます。こうした一つの精神は、先頃衆議院十五名の議員によりまして、現今の児童を囲むあらゆる環境の悪さから非常な学力の低下、並びに不良化というような姿を来たしておることは一にかかつて日本の教育財政が確立しておらないという観点に立たれまして、先頃十五名のかたがたによつてこの教育財政確立のためのいわゆる案が出されたのでございますが、この義務教育費国庫負担法案なるものは、私どもの考え方からいたしますとやや不満足の点はありますにいたしましても、この憲法の示す教育の向う方向に一歩歩を進めたものであるという観点に立ちまして、この成行きについては非常に注目をすると共に、当面の若林議員たちの活躍に対しましても誠に敬意を実は表しておつたわけでありまするが、図らずも政府与党内のいろいろの事情からその折角の原案も全く骨抜きにされた形になつて今般衆議院から回付されて参つたいわゆる義務教育費国庫負担法の原案となつたのでございます。これは漏れ承わるところによりますれば、衆議院文部委員、わけて自由党のかたがたにおかれましても、さながらこの原案は卵の中の黄味と白味を抜いた殻のようなものであつて、この殻を埋めるためには今後非常に努力をしなければならないという慨歎の声を発せられたやに伺つておるのでございます。誠にこの原案の率直な良心的な歎息は宜なるかなでありまして、わけても最低の教育を確保するためのその微塵さえもが示されておらない。而もそれが将来どうなるかわからないというような一片の政令に託されておる。而も施行期日さえもがまるで白紙委任状のような形になつておつて、相馬委員からの反対理由にも述べられましたように、まさに羊頭狗肉の歎を持たざるを得ないというような始末で、ございまして、この点から考えましてもどうしてもこの原案に対して私どもは良心的に反対せざるを得なかつたわけであります。
更に堀越儀郎委員提案にかかわる低正案はこの原案の持つ欠陷を是正されるための非常な御努力がここに見えておるわけであります。わけて施行期日を政令において定めるというような古今未曾有の法案の欠陥を修正された占については最大の敬意を払うものでございますが、義務教育費国庫負担そのものを確立するための最も心臓部分であるところが修正され得なかつたという点において、これ又私どもとしては教育の機会均等という、これを実現するためには、どうしてもこれに良心的に賛成することができないので反対をするわけでございます。
荒木正三郎委員の提案による修正案は私の今主張いたしました原則に極めて忠実であるものでございます。木村委員はこれは理想案であつて、日本の実情に即し得ないという御批判がございましたが、これはまさに観点の相違でありまして、日本の実情の分析をここでつらつら申上げる時間もございませんけれども、この学力の低下を埋めるための最低教育費をどこで一体埋めて行くかということは、日本の現状にとつて緊急不可欠な極めて重大な問題でございます。而も予算的に財政的に日本の実情に即し得ないという御主張を若しなさるとするならば、この日本の総国家予算の四分の一を占める厖大な再軍備に廻わす費用があるとするならば、その一部分をでもこの義務教育に廻わすということは、私政治家としての当然の良心ではないかと深く考えるわけであります。私は日本の余りにも恵まれない子供たちのために、日本のこのみじめな現状を文化国家としての竿頭一歩を進める上においてもどうしてもこの修正案の通過を心から念願いたしまして、皆様がたの特段の深い御了解、御理解を得たいということを念願いたしまして討論を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/8
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009・岩間正男
○岩間正男君 私は日本共産党を代表しまして、衆議院送付の原案並びに堀越君提出の修正案に反対いたします。そうして荒木君その他提案の修正案に賛成するものであります。言うまでもなく日本の教育改革期に当りまして教育財政を確立するということは、これは非常にいわばものの形に添うような必要によつて要求されて、長年の聞これが国民大衆の要望としてしばしば本国会にもいろいろな形であらゆる角度からこの意思が通達されたところであります。ところで今日このような全国民の而も深い民族的な意識に立ち、そうして子供を愛する親心から発しましたところの止むに止まれない念願が只今我々の手許にあるような原案という形でここに表現されるということは、実に日本の現在の政治そのものの体制がさながらに窺われることであつて、これは民族の立場に立ちまして非常に残念至極と言わなければならないと思うのであります。この法案によりますというと、この法律の目的としまして、第一条でいろいろ効能書きが述べられているのであります。先ず第一に「義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担する」ということが第一に、更にそれによつて「教育の機会均等とその水準の維持向上を図ること」を謳つておるのであります。この二つの目的は全く日本教育改革におけるところの根幹をなすものだと私は考えます。併しながらこのようなことが単に法案の目的として謳われておるのであつて、然らばその目的がどのようにこの法案の内容として果されおるかということをしばしば、これは予算の審議の過程におきましても我々は質問したのでありますけれども、殆んど何ら裏付されていない、こういう形でこの法案は成り立つているのであります。そうしますというと先ほども羊頭狗肉というような言葉があつたのでありますけれども、これは国民のできればこうしたいという希望をこの法案に誰つておつて、実はそのことは将来のことに属しておる。現実の内容としましては殆んどこれは言うに足りないところの問題にならない内容でこの法案が通過されるということは、羊頭狗肉なんという言葉よりもつと国民を欺瞞する内容としか言えないと思うのであります。我々がなぜこういう点を大きく声を大にして叫ばなければならないかというと、日本の教育改革は、戦争前の教育について見ますというと、これはやはり一種の精神主義であつた。教育というものは、先ほども木村君の説によりますと、金額の多寡によつてきまるものでない。こういうことをあなたは言われたのでありますが、これほど古い教育観というもの、これを現わしたものはないと思うのであります。なぜかというと、私は戦前の時代を分析して見ますというと、殆んど教育が日本において精神主義をとらなければならなかつたということは、これは裏付としての教育財政の裏付がなかつたから、そのために止むを得ずその足らないところを精神で埋めた。これは今日においても丁度天野さんが現在とられておるのと似ておる。いろいろ予算がとれない、仕方がないから国民実践要領、修身要領、漢文、こういう金のかからないほうに大変太鼓をお打ちになる。こういう内容的な予算をとるという面において余り実績を我々は期待して……大いに我我も天野文相に対して援助を惜しまないつもりでおるのでありますが、これは現在の政治情勢では殆んどとれない。こういう形で精神主義に落ちておる。これははつきり精神主義に直行する道を歩んでおるということは紛うかたない事実であります。このことでも明らかなように戦前の教育に落ちておるということは、財政との関連において教育の方向を見ることによつて見ておるのでありますが、戦前の教育は、言うまでもなく具体的に挙げますというと、例えば中学校に進んだ子供は全体のどれだけかということを統計的に見ますと、全体の小学校の生徒の約二〇%であります。二割に足りない子供が中学校、女学校に進んで、あとの八〇%の子供は実は一家の経済の負担から中学や女学校に進むことができなかつた。その中に人材がなかつたかというと、たくさんの人材が埋もれておつた。これらの人材を本当に富める者も貧しい者も均しなみに教育をする、いわゆる今度の憲法によつてきめられた義務教育無償の原則が十分に果されるならば、こういうことによつて今埋もれておつた人材をここで大いに啓培しまして、そうしてこれを新たなる日本の今後の発展のために、十分に使うことができるわけなんです。そういう点から考えますと、教育というものは、これはどうも現在消費というふうな、或いは余裕があればやるというような有閑階級の戯れのように考えられておりますけれども、実は一国の政治から考えますと、はつきりした生産である、次の時代を建設する最も時代的な人材を養成するところの生産である。従つて一国の財政の中で占める教育費は何であるかというと、生産費であるということを我々はここに確認しなければならないと思う。然るに今までの社会主義国家の体制の中におきましては、余裕があれば何とか廻す、(「資本主義だ」と呼ぶ者あり)間違い、資本主義体制におきましては、余裕があればやる、こういう形でまるでポケツトの金でも与えるような形で教育が営まれて来た。ここに教育のさかだちがありましたので、今日教育改革の問題を辿つて行きまして、我々もいささか終戦後五、六年この問題のために献身して来たつもりでありますが、問題を突きつめて行くと、全部教育財政に落ちるのであります。一学級の子供が先生の定員を切られると、今五十人が六十人になる、北海道では百人を超えておるというように見ました。個性的教育とか、民主的な人間を作るということは空念仏に過ぎない。どうしてもやり切れない大量生産的な教育になる。粗製濫造になる。粗製濫造になりますというと、人間の尊重ということがどうしてもできない。従つていざというときには肉弾の代りにこれを使うということ、一応は、実は一山三文で一銭五厘で肉弾に徴発したという過去の姿、帝国主義的侵略戦争と教育のこういう一つの組織体、こういうような姿を見ますと、全部教育財政の問題と深い関連があるのであります。従つてこの問題を解決するというところに根をおかなければ真の教育改革なんということは、言つたつて空念仏に過ぎないのであります。我々が少くとも終戦後再び戦争をしない、そうして飽くまでも平和憲法に徹する、そうしてその面におきまして何と言つても国家の先ほども申しました一つの大きな原動力になりますところの人間生産の面において教育費を確立するという念願は、国の次の時代というものを創造発展させ、そうしてあらゆる人材をそうしに集合して行くという大きな念願にかかつている。従つて当然そのためには国家は生産費をして積極的に教育費を支出するということが当然なければならない。若しそういうような考えを持つことのできない政権が教育を担当するときには、現在のような姿に落ちざるを得ない。残念ながら木村君の言葉尻に食下つたようで悪いのでありますけれども、(「そうじやないよ」と呼ぶ者あり)これはどうしてもはつきりした理論の示すところであります。こういう形でいつているのであります。もう一つ当然、従いまして義務教育無償の原則というものは最低限度大きく少くとも日本が再び戦争をしない新らしい、本当によく使われる言葉ですが、文化国家とか何とかいう建前を貫き通すためには少くとももつと大幅な教育費を豁然として積極的に出すと、こういう決意がなければこれは果されない。ところが殆んどこの法案では原行法を全くちよつと変えただけで平衡交付金でやつていたものを枠外で出して、そうしてこれを別に半額負担、実質の半額負担という形で出すに過ぎない。それにちよつと何か刺身のつまをつけないというとこれは料理の体裁をなさないというので、刺身のつまのように三十万を出して教材費、こういう形でありますから、全然これは、若林提案者はそこで笑つておられますけれども、これは私どもの言葉を了解されておること、だと思いますがそういう形で教育無償の原則というのは貫かれていない。
第二に教育の機会均等の問題でありますが、教育の機会均等の問題もやはり財政の問題、突き止めるところは財政の問題であります。GHQの日本教育改革に関する覚書、一九四五年の秋に出されました覚書によりますと、日本の教育地方財政はむらがある、このむらのあるところの地方財政にこれを任したのでは教育の機会均等は確立できない、従つてこれに対しては大幅な国庫負担をしなければならない、大幅なと特に断つておる、大幅な国庫負担によつてそうして貧しい地方も富める地方も同じような水準によつて教育をするということを謳つておる。これは非常に日本の教育の現状をよく見た一つの示唆だと思うのでありますが、これがどういうふうに実際守られたかというと、これは十分でありません、これは又木村君の言葉に引つかかるようで悪いようでありますが、我々の修正案が通るというと、どうも国家財政に大部分を、金額をこれは依存するようになるというと教育の地方化ということはまずい。こういうことを言われるのでありますが、これは明らかにいわゆるGHQの日本管理政策が変化した、これはシヤウプが第一に来、その前にドツジが参りました、ドツジによる財政経済それに伴うところのシヤウプの一税制改革、そういう改革によつてはつきり日本のこの税制並びに財政が性格を変えた。最初に一九四五年に出されましたところの意向とはまるで違つた方向に行かれた、そうして地方財政を重要視し、そうして地方分権化ということを言われて来た、こういう形の中でこれを妥協された形で進められているのでありますが、今後はこういう形では私は本当の教育の機会均等は確立されない。地方財政は非常にむらがあるのでありますからこれに対してはやはり大幅に少くとも全額に近い程度まで、これは出さなければ、これは国家財政によつて支出されなければ日本の教育改革はできない。そうすると、例えば文部省による中央偏重の傾向が出るのじやないかということですが、これに対しては十分打つ手があるのであります、時間がありませんからそう細かいことは申上げませんが、(「簡単」と呼ぶ者あり)そういうような点から見まして、この法案ではそれが果されているかというと全く果されていない。なぜそれならばこういうふうな形の法案になつたかというと、言うまでもなく、これは再軍備によつて日本の現在の政治体制が両条約並びに行政協定によつて再軍備費に非常にパーセンテージが殖えて来た、そうして厚生とか、文化面の支出はそれだけ勢い削減せられざるを得ない。これが最も弱いところの教育の面に対してしわ寄せされて来た、そういう形で以てあのような衆議院の自由党の諸君が努力されましたあのような線、原案さえもこういうような形で殆んど形がないまでに切られて、そしてここでこの池田財政の生費という形で以て示されざるを得ない。こういう形で提案されているのでありますが、ここにどうしても我々はこの法律案の意味する内容について触れざるを得ないと思うのであります。先ず原案の欠陥とするところは先ほど目的の点でも申述べたのでありますが、先ず何と言つても財政的にこれを検討して見ますというと、義務教育費の給与費の部面として九百億、その中の半額四百五十億程度の従来の負担額をこれを何とか支出するに過ぎない。そしてそれに三十億の教材費、この三十億の教材費ということでありますが、その三十億の教材費は一人当り二百円ということになります。二百円ということはとても現在の小学校や中学校の父兄負担から考えますと、何十分の一にも当らない。少くとも小学校生徒、まあいろいろ給食費から旅行費、それから入学のときの費用、そういう教科書費、毎日支出するいろいろの学用品の費用、こういうものを考えますと、少くとも毎日小学校の生徒は月千円くらい出しておる。中学校はもつと多いと思います。そういうときに年間二百円、こういうような負担でありますからこれは当然誠に問題にならない形で支出されている。これが中身から言いますと約四百七、八十億、五百億足らずのものが実現されるに過言ぎないのでありまして、我々が今度荒木君の修正案として出されました点で、強く要求しましたところの教員給与費のもつと科学的な根拠に立つ支出、並びに学校の維持運営費の問題、それから学校の建築費の問題、寒冷積雪濕潤地帯の屋内体操場の問題、災害復旧費の問題、それから義務教育費無償、殊に学校の維持運営費並びに義務教育費無償という面は大衆負担になつておるのでありますが、こういう負担面におきましては文部省のこれまでの調査によりまして相当厖大なものに上つているのであります。維持運営費が三百四十八億、少くともこれは一つの現状において必要、でき得れば出したいという形、それから学用品費が三百四十九億、それから通学費が三百六十三億、それに教科書費が百七億、それから給食費が五百三億というのですから相当厖大なものになつているのですが、こういうような点から考えますと、二十億というのは全く何と言つたらいいか、九牛の一毛とか何とかいう言葉があるが、非常にこれが当てはまらないくらいであります。こういうような形で出されています。更にこの法案で最も私は警戒せざるを得ないのは二条二項の問題でありますが、この二条二項ではこれは水準がまちまちであるから低いほうを高いほうに上げるために応設けたんだというような説明をされていますが、これは一応の説明としてはこれは聞かれるのでありますが、併し私はこれが非常に、最低じやなくて最高を抑えたということ、この最高を抑えるというのはこの法案の性格から見て、当然この法案は再軍備費に食われるものに対して保護する、保護的な性格を持つているということは現状の中でこの法案が出されるのであるから考えればはつきりしていると思う。そういうような保護的な性格を持つ法案に最高を抑えるということはあり得ないと思う。これはしばしば我々も審議の機会を通じて申上げたのでありますが、そういうことをしておきますというと、現在の日本の財政面の態勢、日本の置かれている立場を見ますというと、どうしても再軍備費は今よりももつと増大せざるを得ない。或いは今年中に警察予備隊が十二万から十八万になる、或いは来年までには二十万になる。そしてフリゲート艦八隻その他で六十隻、アメリカの武器貸与法によつて借りられる、又これらの損害の補償も考えなければならん。それから海上保安庁の増強の問題もある。そういうことを考えますと、北大西洋条約で要求されております武器貸与を受けるその保障としては国民所得の約一〇%を支出するということが条件になつておりますが、日本の場合は現在ではこういうような軍備費に二千億余りでありますが、少くともこれが五兆三百億の今年度の国民所得から考えますと、五千億余りがこれはどうしても要求される時代が来るのではないか。こういうことを考えますと、教育費は今後こういう法案を突破口として拡大して行くのだということを言われますが、その希望はわかるが、少くとも現実に即さない、少くとも現実把握して、そしてその動向の中でそういうような危険に対して我々がはつきり今から考えておくというのが、少くともこの法案を作る趣旨だと思うのでありますが、そういう点から考えますと現状の分析と把握が非常に足りないと思う。当然むしろこれは教育費は相対的に絞られなければならないが、来年度は再軍備の関係で必ずもつと多く絞られて来る。こういうことになりますと、当然現在の法案に対しまして現在持つているところの予算内容というものが低下せざるを得ないところに追い込められる、そういうところに最高制限というものはどういうふうに働くか。これは言うまでもなくいつも制限法案、或いは弾圧的な性格を持たざるを得ない。そういうものを濫用しないように努力される、こういうことを言われるのですが、そんならこれをどういうふうにして努力されて来たかというと、これは今までの努力の経過を見ますというと、もつと政治に対して強い権限を持つている場合でありますが、残念ながらそういうふうに教育は今日日本の中心課題にはなつていない。国会の片隅の問題として論議されている。多くの人の関心事であるにもかかわらず、実際はそうなつている。而も政治力は弱い。そういうときにますます軍備に追い込められる危険を考えるのでありまして、第二項のごときは私は当然これは削除すべきだと思うのであります。これは堀越君の修正案によりますと、これについて「特別の事情があるときは、」という修正がされておるのでありますが、併し特別の事情があるときはという特別の事情が恐らくあつたからこういうような私は修正がなされたと思う。ただ表面に語われないだけです。恐らく適用する必要があつたから衆議院の自由党の支部委員の諸君が努力されたにもかかわらず、これは地財委並びに大蔵省との関係においてこういうような修正がなされたと思う。それをこのような言葉たけ変えるということで、現実の政治の力から考えますと、何ほど救われるかということを考えますと、これは一つの気休めにならなければ仕合せであろうと思います。こういうような形でこの法案の欠陥を私は指摘し並びにこれに対する堀越君の修正案も同時に私は論じたつもりであります。又ここで施行時期を決定したという点は先ほどから述べたように一歩前進とも言われるのでありますが、大体この法案は来年の四月一日から施行されるという場合に、而も三年七カ月前に選ばれた政権によつて絶対多数という形で、そうしてこの法案が今日ここで一体解散を前にして行われる必要があるかどうかという結論にぶつかる。而もその前に考えて見ると、これはいつ施行するかわからないという形で作られておる。何のために一体この法案をそんなに急いで自由党の諸君が努力されたかという点において実は疑いたくないのでありますが、これは選挙を前にしてやはり何とか意味を持たせるということではなかつたか、これは残念ではありますが、そういうふうに考えざるを得ない。若し何んでしたらやはり多くの大衆の意見を聞き、解散後にはつきり、時間があるのでありますから堂々とこれは大衆の意見、日本国民大衆の本当の真意を聞いてその上に立つてこのような法案を再軍備との関連においてどうするかということを決定することこそが、私は本当の民主主義的な政治だと思うのでありますが、それにもかかわらずどうも随分前のことを今のうちから作つておいて、そうしてこれは来年から実施するのだということであいまいな線が含まれております。こういう点は非常に私は賛成することができないのであります。
これに対しまして、荒木君の修正案の線でありますが、これは我々が教育小委員会といたしまして何日かかかりまして、各会派が超党派的な立場から問題を検討して一応得られた案でありますから、参議院としてはこれを実現するためにあらゆるやはり努力を先にするのが、我々議員の当然の今までの政治的なこれは一貫した審議方針じやないか、審議方針というものが一貫されたところのものじやないかというふうに私は思う。然るに現実はどうにもならんからというので一つのそういう小委員会まで設けられまして決定されたものが、殆んどこれは顧みられることなて行つてしまうということは、大変我々としては残念でありまして、これについてはどこの会派も一応賛成されてできたものでありますから、この線によつて当然このような修正案が出されて、無論我々共産党といたしましては、その法案については無論過渡的なものだと思うのであります、我々はもつともつと高い一つの要求を持つでおるのでありますが、併し現状において少くともいろいろな点から、角度から計算しまして、義務教育無償ということを調い、教育の機会均等というようなことを少くとも口にするならば、最低線としてこれだけのものは通しておかなければ、これは少くとも口はばつたく義務教育費国庫負担法などという堂々たる銘を打つて出す法案にはなり得ない。そうして又何ら問題の、先ほど申しましたいろいろな点議決する鍵になり得ないのだというふうに考えるのでありまして、そういう点で我々はこの最低の要求を出しまして、少くともこの線を通過するために今後とも、仮にこの法案はどういうふうに決定を見るかわかりませんけれども、我我としては飽くまでこの線を貫くために努力したい、こういうふうに考えるものであります。以上なかなが申述ベましたが、私の原案並びに堀越君の修正案反対、並びに荒木君の提案の修正案に対して賛成意見を申上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/9
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010・矢嶋三義
○矢嶋三義君 私は第一クラブ代表いたしまして、堀越君発議にかかる修正案並びにその修正部分を除く原案、そのいずれにも反対いたし、荒木君提案にかかる修正案に賛成の意を表すものであります。私はやがて提案されるであろう本会議において討論をいたしたいと思いますので、ここでは極く簡単に申上げておきます。
その名こそ異れ、或いは標準義務教育費法案というような名前におきまして、天野文部大臣の前任文部大臣時代から全国民的な要望に応えて国会において種々審議され、更に政府において研究されました、要するに義務教育費の国民負担を少しでも軽くいたしたい、こういう念願の下に発足しました法律案が、現段階になりまして一部のかたと意見を異にする立場において一応の終止符を打たなければならなかつた事柄を非常に悲しく思うものでございます。私はこの法律案の審議の過程において吉田総理が一度も本委員会に出席されなかつたことに対しまして、深く遺憾の意を表します。本国会に幾多の法律案が提案されまして、殊に重要法律案はかくかくと言われておりますけれども、先般当参議院においてその審議に非常に重大な過程を辿りました破防法案、かくのごときはまあ消極的法案でありまして、建設的積極的法律案という立場から考えまするならば、私は破防法案にも増してこの法律案は大事なものだと考えておるのであります。独立の門をくぐつて独立の庭に入つた我々が、今後如何なる方向を迫るかということをまさに決定付けるところの私は性格を持つた極めて重要法律案であるとこういうふうに考えまして、この法律案審議の過程におきまして、一度も首相の出席を得られなかつたことは非常に遺憾に思います。この教育関係法律案をよりよく成立させ、如何に国民の血税をこれに振向けても私は如何なる人も文句を言う人はないと思います。と申しますのは、教育に関する法律案の国民への影響性というものは、都市と山間僻地とを問わず、更に老若男女を問わず、更にこの貧しきと富める者とを問わず、私はすべての階層に亙つて等しく影響性を持つものは、私は教育関係の法律案に右するものはないと思うのでございます。そういう角度から、我が国の現状から如何に遊離したところの理想的なものだという一部の批判がありましても、私はそういう法律案が国会において成立することは、国民の大多数が希望こそすれ、決して私はそれに対して不満を表明する国民はないと思う。そういう立場から私たちはこういう法律案の審議に当つてはもう少し抜本的に自分の基本的態度の再検討を要するのではないか、こういうふうに私は考えるのでございます。よく世間で言われておりますが、教育のことが余りにも軽視されている。これは私は否定できないと思います。而も我々立法府におる者は、私こそ無産階級でございますが、大部分のかたはこれは有産階級に属するかたがたが多いのでございまして、この勤労大衆、無産階級の国民がそのかわいい子弟の教育に如何ほどその胸を痛めているかという心情を察する点においては、私は現在の国会というものは私は不十分な点があると思います。その点に胸に手を当てて考えるならば、若干の国家財政の支出が伴いましても、私は又この法律案審議に対する基本的態度というものが考えられるのじやないか、こういうふうに考えるものでございます。更に私は現在の我が国の教育こそ危機にあるときはない、こういうふうに私は考えております。と申しますのは、敗戦後新教育が発足して以来、いわゆる教育の危機というものが折々叫ばれ、そのときに教育財政の貧困というものがその最も大きな原因である、従つて教育財政の確立をやらなければならないということがよく叫ばれているのでありますが、現段階におきましてはその財政的立場のみならず、いわば六・三・三・四の学制の制度そのものにつきましても、或いは教育行政制度そのものにつきましても、非常に安定感がない。これほど日本が独立して、自主教育を推進しなければならない段階に、而も日本の将来の礎になる教育の面が現状にあるということは、私は非常に悲しむべきことだと思う、ここにおいて我々が決心すべきことは、やはりこの義務教育費国庫負担法の審議に当つては基本的にもう少し飛躍したものを要請されて然るべきだ。更にもう一つの角度から考えますならば、教育の振興を図ると同時に、やはり我々が敗戦後民主国家の建設と言つている、その基盤が地方自治の確立にあり、その裏付は地方財政の確立でなければならない、その地方財政の確立とこの教育財政というものが不可分の関係にあり、これらを総合的によく検討して結論が出されなければ、私は地方自治の確立、日本の民主政治の確立というものも期し得られないし、更に教育の民主化、教育の振興というものも考えられない。そういう角度から私は考えておるものでございますが、ここに衆議院から回付された案並びに若干非常な御努力は見られるのでございますが、緑風会の堀越委員から出されました修正案、この程度では私は国民の要望に応えるゆえんではない、こういうふうに私は考える次第でございます。荒木委員から提案されましたところのこの修正案は、我が国の国情を以てしても本当に政治家が教育の重大性、日本の将来に及ぼす影響性、更に子供に対するところの愛情、それから日本の勤労大衆が如何にかわいい自分の子供の教育のために苦渋しているか、その生活の戦いというものを実際に見聞されて、私は対照されるならば、この荒木委員の修正案といえども私は理想に過ぎて妥当でないという意見は出て来ないんじやないか、こういうように私は考えるものでございます。
最後に私は一言申上げますが、それはやはり国家財政的な立場でございますが、ともかく如何に言おうとも、現在戴いておる憲法はやはり平和憲法であり、文化的な民主的な憲法なのでございます。その基本線に沿つて六・三・三・四というような新学制が布かれて、その中核をなすところの義務教育の振興に当りまして、いわゆる六・三補助というものが六カ年の長きに亙つて全国民的な要望で叫ばれたにもかかわりませず、御承知のごとく六カ年全国民的な要望を政府当局にぶつつけて、而も二百六億八千万円程度しか確保できていない現在、教育施設が不十分であるということは各位の御承知の通りでございます。これに反しまして国際情勢が如何にともかくあろうとも、憲法は平和憲法であり、或いは戦力とか或いは自衛力の定義を如何に吉田総理以下が述べられましようとも、ともかく戦車とか、或いはバズーヵ砲を持つているところの警察予備隊が生まれて、僅か三カ年間にすでに千五十億円の予算が国会で承認されておる。更に五百六十億からなるところの安全保障諸費の「部が、国会の承認を得ることなくしてそれに流用さ、れるかも知れないという。こういう私は事態を考えるときに、本当に私はさつき申上げましたような基本的な立場から考慮するならば、荒木委員の修正案といえども我が国の向うべき方向、更に我が国の財政という立場から不可能事であると言つて一笑するには当らない。私は飽くまでも原案並びに緑風会の修正案はこれへの第一歩を踏み出しているということは是認いたしますけれども、先ほど私が申上げましたように、独立後新らしく門出をしようというお互いは、少くとも荒木委員の提案にかかる修正案程度は国会において審議成立すべきものである。而も各位の御賛成を得ら、れるであろうという確信の下に、私は堀越君の提案にかかる修正部分並びにそれを除くところの原案に反対して、荒木委員の提案する修正案に賛成の意を表明するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/10
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011・堀越儀郎
○堀越儀郎君 簡単に私は緑風会を代表いたしまして本案に賛成をいたす次第であります。というてこの程度の案では決して双手を挙げて賛成はできないのであります。片手も挙げられない。恐らく小指一本挙げて賛成するくらいのものだと、提案者なり、政府当局も十分肝に銘じて御記憶を願いたいと思うのであります。憲法に謳われた義務教育無償の原則に則り、又教育を尊重すべき現在の日本から考えて、教育財政の確立ということは重大であります。せめて衆議院で練られました原案に近いものであるならば、非常に満足すべきものであると思うのでありまするが、現在の財政状態から考えて、諸種の事情から止むなくここに立至つたことに対して我々は遺憾とするのでありますが、ただ教育財政の確保の上から橋頭堡を築いたと、一歩前進したという点からこの原案に対して賛成をし、将来提案者も政府ももつと前進したものを再びこの委員会に提出されることを希望するのであります。
なお高田なほ子君ほか五名の提出されました修正案に対しては私は涙をふるつて反対をするのであります。当文部委員会においても義務教育並びに一般の教育費の国庫負担というもの、それに対して小委員会を設けて特に熱心にしばしば会合を開いて審議をいたしまして一応の我々はまとまつた案を得たのであります。現在の日本の教育の姿はかくあるべしという一つの我々は案を得たのでありますが、現在の段階においてその案をこの中に盛り込むことができないということは甚だ遺憾でありまするが、近い将来において高田なほ子君ほか五名のかたが提出された修正案が実現する機会のあることを心から所念して止むなく本日はこの現段階においては反対をする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/11
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012・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 他に御意見はございませんか。……別に御意見もないようでございますから、討論は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/12
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013・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。
それではこれより採決に入ります。義務教育費国庫負担法案について採決をいたします。
先ず討論中にありました荒木正三郎君ほか五角提出の修正案を議題に供します。荒木君ほか五名提出の修正案に賛成のかたは御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/13
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014・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 少数でございます。荒木君ほか五名提出の修正案は否決されました。
次に堀越君提出の修正案を議題に供します。堀越君提出の修正案に賛成のかたは御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/14
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015・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 多数でございます。堀越君提出の修正案は可決されました。
次に修正の部分を除いた原案を議題に供します。修正の部分を除いた原案に賛成のかたの御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/15
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016・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 多数でござい肇す。よつて義務教育費国庫負担法案は多数を以て修正議決されました。
なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則百四条によりましてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならんことになつておりますが、これは委員長において、本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとしまして御承認を願うことに御異議ございませんか、
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/16
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017・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。
それから本院規則第七十二条によりまして委員長が議院に提出する報告書につき多数意見者の署名を附することになつておりますから、本案を可決することに賛成されたかたは順次御署名を願います。
多数意見者署名
草葉 隆圓 黒川 武雄
白波瀬米吉 木村 守江
前之園喜一郎 左藤 義詮
堀越 儀郎 山本 勇造発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/17
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018・木村守江
○木村守江君 私は只今修正可決されました堀越君提案の義務教育費国庫負担法案の修正案につきまして次の附帯決議をつけるの動議を提出いたします。
一、教職員給与費の国庫負担額の最高限度を政令で定める場合には、その限度の基準は、少なくとも各都道府県の従来の実績を下まわらないように定めること。
二、速かに地方財政法第五条を改正して、地方の財政能力の如何にかかわらず老朽危険校舎の改築費を常に起債の対象として確保できるよう化すること。
三、戦災その他の災害を被つた校舎に対しては、地方財政法の規定に基き、速かに国庫の負担区分を明確にし、かつその復旧を促進するよう特別の措置を講ずること。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/18
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019・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 只今木村君提出の通り附帯決議を付することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/19
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020・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 多数でございます。よつて木村君提出の義務教育費国庫負担法案に附帯決議を付することに決定いたしました。
ちよつと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/20
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021・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) 速記を始めて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/21
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022・木村守江
○木村守江君 只今の動議は堀越儀郎君提出の修正案に対して附帯決議を付するという動議でありますからしてお諮り下さいまして、委員長報告の際にこの報告をせられるように希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/22
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023・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) それでは只今木村君の御提出になりました御意見の通り、委員長の報告にこれを付することにして御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/23
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024・梅原眞隆
○委員長(梅原眞隆君) それではさように取計らいます。
それでは本日はこれで散会いたします。
午後五時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101315115X05219520724/24
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