1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十七年十二月二十日(土曜日)
議事日程 第十六号
午後一時開議
第一 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第二 湿田単作地域農業改良促進法案(青木正君外七十七名提出)
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●本日の会議に付した事件
両院法規委員の辞任及びその補欠選挙
海外移民促進に関する決議案(今村忠助君外百三十一名提出)
日程第一 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第二 湿田単作地域農業改良促進法案(青木正君外七十七名提出)
農林漁業金融公庫法案(野原正勝君外五十六名提出)
農山漁村電気導入促進法案(松田鐵藏君外六十二名提出)
電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案(内閣提出)
電話設備費負担臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)
オホーツク海暴風浪及びカムチヤツカ沖地震による漁業災害の復旧資金の融通に関する特別措置法案(水産委員長提出)
保安庁法の一部を改正する法律案(栗山長次郎君外十一名提出)
午後四時三十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/0
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001・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) これより会議を開きます。
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002・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) お諮りいたします。両院法規委員川野芳滿君から委員辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/2
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003・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/3
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004・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) つきましては、この際両院法規委員の補欠選挙を行います。
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005・久野忠治
○久野忠治君 両院法規委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/5
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006・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) 久野君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/6
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007・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) 御異議なしと認めます。議長は両院法規委員に花村四郎君を指名いたします。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/7
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008・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) さきに議決いたしました海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会、公職選挙法改正に関する調査特別委員会及び行政監察特別委員会の三特別委員会の委員を指名いたします。委員の氏名は参事をして報告せしめます。
〔参事朗読〕
海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員
逢澤 寛君 青柳 一郎君
飯塚 定輔君 池田 清君
川野 芳滿君 木暮武太夫君
佐藤洋之助君 玉置 信一君
塚原 俊郎君 中山 マサ君
森 清君 森下 國雄君
亘 四郎君 石坂 繁君
臼井 莊一君 武部 英治君
平川 篤雄君 松野 孝一君
受田 新吉君 田原 春次君
堤 ツルヨ君 田中 稔男君
帆足 計君 柳田 秀一君
大橋 忠一君
公職選挙法改正に関する調査特別委員
大村 清一君 押谷 富三君
菅家 喜六君 木村 武雄君
綱島 正興君 中野 武雄君
濱田 幸雄君 原 健三郎君
福井 盛太君 牧野 良三君
松岡 松平君 山崎 岩男君
亘 四郎君 石田 一松君
菅 太郎君 河野 金昇君
古井 喜實君 山本 粂吉君
竹谷源太郎君 前田 種男君
三輪 壽壯君 伊藤 好道君
猪俣 浩三君 森 三樹二君
只野直三郎君
行政監察特別委員
荒舩清十郎君 菅家 喜六君
佐々木秀世君 篠田 弘作君
高木 松吉君 内藤 隆君
中田 政美君 中村 梅吉君
西村 直己君 丹羽喬四郎君
羽田武嗣郎君 明禮輝三郎君
山本 正一君 大森 玉木君
小畑虎之助君 高橋 長治君
中野 四郎君 山手 滿男君
田万 廣文君 前田榮之助君
矢尾喜三郎君 阿部 五郎君
久保田鶴松君 横路 節雄君
武知 勇記君
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海外移民促進に関する決議案(今村忠助君外百三十一名提出)
(委員会審査省略要求事件)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/8
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009・久野忠治
○久野忠治君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、今村忠助君外百三十一名提出、海外移民促進に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/9
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010・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) 久野君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/10
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011・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
海外移民促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。今村忠助君。
〔今村忠助君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/11
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012・今村忠助
○今村忠助君 ただいま議題となりました、自由党、改進党、両社会党、各派共同提案に基きます海外移民促進に関する決議について説明致します。
まず第一に案件を朗読いたします。
海外移民促進に関する決議案
平和的独立国家として国際社会に復帰したわが国は、今や再び海外移民の道がようやく開かれる段階に至つた。政府は、国民のし烈なる海外移住の要望に応え、すみやかに総合的海外移住対策を樹立して、工鉱業者・農漁業者その他産業技術者等の海外移民を促進し、世界各地の産業振興並びに未開発地域の開発に協力し、もつて人類の平和と幸福と繁栄とに貢献するよう努力すべきである。
右決議する。
この提案の理由につきまして、趣旨弁明をいたします。
御承知のように、敗戦によりまして、わが国は東亜地域を初め世界各地から約七百万の海外同胞が引揚げて参つたのであります。また、敗戦は国土の四〇%を失いまして、限られた四つの島に八千五百万以上の同胞を抱かなければならない状態となつて参りました。なお、昨年度においては自然増加百三十万を越えるという状態でありまして、今や日本民族は、小さな、この限られた島国に、窒息状態に置かれておると申しても過言でないと思うのであります。今国内的に産児制限のごとき消極政策もとられてはおりますが、これだけで人口問題は解決されるものとは思いません。ことに農村を見まするに、二、三男の青年が就職するのにも道がなく、いろいろ前途に暗い感じを与えておることも事実であります。
かようなときに、ようやく独立いたし得ましたわが日本は、好意あるアメリカによつて移民法が改正され、来年一月一日からは、久しく待望しておつたアメリカヘも、限られた数ではありますが、移民として渡ることができるようになつて参りました。また、この十二耳二十八日には、いわゆるブラジル移民が再開されまして、計画的移民として、十八家族、五十四名の人々が、神戸の港から、さんとす丸によつてブラジルに渡ることができるようになりました。かように考えて参りますと、実に敗戦によつて、まつたく移民問題というものは再出発しなければならない段階となつておるのでありまして、このときにあたつて、いわゆる戦前におけるごとき、各地の移民がいろいろの事情から排撃されたというがごときことが再び繰返されてはならぬと思うのであります。
われわれは、この移民再出発にあたつて、まず第一、政府当局においては、すみやかにこの問題を慎重に取扱うように、たとえば外務省の機構の中にも、この移民問題を専属に扱う局か部ぐらいは新たに設けてもらいたいと思うのであります。そうしてまた、この新しい移民問題の根本的施策をつくり上げるために、たとえば内閣に海外移民審議会のごときを設け、朝野の移民に関する権威を網羅いたして、いわゆる新移民国策とでもいうべきものを打立てる必要があるのではないかと考えるのであります。そうしてまた、移民問題は、幾つも小団体が分裂して取扱うがごときことがございますと、かつてブラジルにおいて、あるいはフィリピン、ダバオにおいて見た通り、いろいろの対立を見ることがあるのであります。そこで、この再出発にあたつては、海外に渡航するのに、ぜひとも一つの力強い団体の手によつて送り出されることが必要であると、こう考えるのであります。すなわち、政府と表裏一体となつて海外移民の問題を処理するがごとき民間の中央機関の設置が必要であると、かように考えるのであります。それとともに、いわゆる海外事業センターとも申すべき——海外に行く人たちを送り出すのにも、また久しく海外にあつて祖国に帰つた人を迎えるのにも、この海外事業センターともいうべきところから出発し、また母国訪問に際しては、ここに帰つて来るというがごとき施設も必要ではないかと考えるのであります。
また、海外に渡航する多くの人たちは、必ずしも金が十分あるというわけには参らぬと思うのであります。戦前におきましても、海外移民補助というようなものが政府から行われておつたのでありますが、新時代に適応するように、これらの海外移民の支度金でありますとか、渡航費であるとかいうものを、何かの制度によつて貸し与えるという道を開かなければならぬと思うのであります。これには、移民金融公庫のごときものを設置する要があるのではないかと思うのであります。また、ブラジルにおきましては、イタリアは、今次の戦争によつてブラジル政府から差押えられたところの金を、ブラジル政府と交渉いたしまして、ブラジルにおけるイタリア人の幸福のために、いわゆる厚生施設等の基金として、ブラジル政府から寄付を受けまして、一つの施設をいたしておると聞いております。わが国におきましても、正金銀行を初め、ブラジル政府から差押えられているところの資産があるのでありますから、イタリアの場合におけるごとく、ブラジル政府と折衝いたしまして、在伯同胞のために、この金が有用に使われるようにとりはからうことも必要ではないかと考えるのであります。
また、広く世界を見れば、未開発地域は世界にまだたくさんございます。これらのものが打捨てられているのでありますから、今日でありますれば、国際連合にこれを訴えまして、世界の未開発地開発と人口問題の解決とが国際連合の手によつて行われるようにして参つたらいかがかと思うのであります。これらのことも、政府はもとより、また民間のこれらの権威ある団体が、いろいろの形から折衝して実現を期する必要があるのではないかと、こう考えるのであります。また、できれば、年に一回海外同胞の代表者を日本に迎えまして、海外同胞の会議というがごときものをも開く必要があるのではないか、そうすることによつて、世界各地と常時意思の疎通が行われ、日本国民が世界を家として発展して行くことのできる日が来るのだ、こう思うのであります。また、移民使節のごときものを世界各地に送りまして、アメリカやブラジルのごとき好意を持つている国に対して感謝するとともに、新天地開拓の上に各国と折衝する必要があるのではないかと、考えるのであります。これには当然必要な予算措置も政府はしていただきたい、こう思うのであります。
敗戦によつて御破算になつたところのわが国の移民問題については、このブラジル移民渡航とアメリカ移民開始を契機といたしまして、政府は最善の努力をして再出発に十分の用意をしていただきたいと私は思うのであります。同時にまた、民間の各種団体の結集によりまして、移民問題を取扱うところの団体をなるべく一団体に統合し、政府はこれに補助を与えまして、十分活動のできるようにしていただきたいと思うのであります。かようにして、小さな島国の中に厖大な人口を抱いておるわが日本の多数の青年が、前途暗くして不安に陥つておる今日、世界を家として、平和に幸福に生活のできる光明を与えていただきたいと思うのであります。これが本決議をいたす趣旨でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/12
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013・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) これより討論に入ります。石坂繁君。
〔石坂繁君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/13
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014・石坂繁
○石坂繁君 私は、改進党を代表いたしまして、ただいま議題と相なつておりまする海外移民促進に関する決議案に対しまして賛成の意思を表明せんとするものでございます。(拍手)
ただいま提案者から趣旨弁明のうちにお述べになりましたことく、敗戦後の日本は、狭い領土に八千三百万人の国民が押し込められておる状況であります。しかも、毎年の自然増加は百七、八十万人ととなえられておるのでありまして、この勢いをもつて進みますれば、昭和四十年には約一億に達し、三十二年後には現人口の二倍に達すると言われておるのでございます。しかるに、今日におきまして、これを養う食糧は内地で自給できず、毎年約二千万石程度の米を外国より輸入しておる状況であります。今や、わが国の人口、食糧問題は、実に当面の深刻なる問題となつて参つたのであります。
この人口、食糧問題解決のためには、種々の方途が急速に講ぜられなければなりません。あるいは産児制限のごとき、あるいはまた開墾、干拓、土地改良等による総合的国土計画の推進による耕地の改良造成等、これらの方法があげられるのであります。現に、政府が食糧自給促進法案を立案し、十箇年間に食糧の自給を達成することを目安といたしまして、昭和二十八年から三十二年までの間の五箇年間に米麦合せて千七百五十五万石の増産をする計画を立てておりますというようなことは、まことに適当な措置でありまするけれども、しかし、おのずから限度があり、また種々の困難を伴つておるのであります。しかるにまた、海外より引揚げました三百余万人の一般の引揚者は、この狭隘なる国土に受入れられることができず、優秀なる技術、経験を生かすことができず、不遇の境地に置かれておるのであります。一方、農村の現状は、農地改革によつて、農地は一旦耕作農民の手に帰しましたけれども、相続法が均分相続の建前をとつておる等の原因によりまして、農地は再び零細化せんとし、耕すに土地なく、他に自立すべき職なき三百万以上の二、三男は暗い前途に悩んでおり、ここに日本農村の前途の困難なる問題が胚胎しつつあるのでございます。すなわち海外移民問題が真剣に取上げられるゆえんでございます。
翻つて、広い世界を見渡しますれば、未墾、未利用の広大なる土地が、今日なおそのまま放置せられておるのであります。これらの土地は、世界人類の幸福のために、世界人類の繁栄のために開発利用せらるべきであります。ここにおきましてか、海外移住促進の問題は、わが日本にとつての喫緊の要事であるばかりでなく、実に世界人類の繁栄のために不可欠の事業であるといわなければなりません。但し、この場合において受入れ国の事情と感情とを深く考慮すべきはもちろんであります。
また、今後の移民は、従来の移民と本質的に異なるものがなければなりません。それは、いわゆる出かせぎ根性の移民であつては相ならず、いわんや、帝国主義の手先、侵略主義の先駆であつては断じて相ならぬのであります。(拍手)それは、新しい日本よりの平和の使者であり、親善の使節というべきものでなければなりません。そうして、どこまでも現地に同化し、現地の繁栄に寄与いたしながら、みずからの幸福と繁栄とを求めて精進努力するものでなければなりません。かくて初めて、新しい日本人が世界の至るところで歓迎されるでありましよう。私は真にかくあるべきことをこいねがうものであります。今後の移住者にこの信念を堅持することを望むものであります。
最近、日本人の海外移民の道がようやく開けて参りましたことは、私のきわめて喜ぶところであります。来る十二月二十八日神戸発予定のさんとす丸でブラジル向け出帆いたします、アマゾン地方ジュート栽培、十八家族、五十四名の農業移民計画の発表がありまするや、国民の中には、あたかも南米の天地に新たなる希望を発見いたしましたことく、非常に応募者が多かつたと聞いております。私の熊本県のごときは、三家族の割当に対しまして三百家族の申込みがあつたのであります。これによつて見ましても、国民の進取の気象と熱情を知ることができると思います。政府はよろしく、かくのごとき国民を指導し、啓発し、また助成して、できるだけ多くの人を送り出して、私の言うところの新しい移民の理想と使命を達成せしむるに遺憾なきを期さなければならないと思います。(拍手)聞くところによりますれば、政府は、明二十八年度の移民送出計画におきまして、主として南米方面でありまするけれども、開拓移民として八千人、呼寄せ移民として二千人、そしてまた、これらの地域以外に一万人の送出計画ができておるそうであります。
〔議長退席、副議長着席〕
しかし、これはいわゆる当方の計画であつて、必ずしも受入れ側との間に十分の協議が熟しているとは言えない節があるようであります。ゆえに、政府は、この計画が実施できるように、すみやかに、十分に協議を遂げられたいのであります。
さらに申したいことは、単に前述の国ばかりではなく、また農業移民や雇用労働移民ばかりではありません。わが国は、すべからく東南アジア諸国との問にすみやかに親善友好を回復し、この地方の開発に十分に協力すべきでありまして、これがために必要な農業、漁業の技術者、鉱工業その他の優秀なる技術者は何ほどでも送ることができるのであります。政府はよろしく、この点におきましても十分に手段を尽すべきであります。すなわち、現下日本の当面せる人口、食糧問題解決のために、さらにまた新しい日本の理想実現の一助として、もつて人類の平和と幸福と繁栄とに寄与協力すべく、政府において、日本民族の海外移住促進のために、すみやかに有効適切なる方途を講ずるの必要を痛感いたすものでございます。
以上の理由によりまして、私はこの決議案に賛成するものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/14
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015・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 田原春次君。
〔田原春次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/15
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016・田原春次
○田原春次君 私は、日本社会党右派を代表し、次に述べる三つの理由に立ちまして、本案に賛成するものであります。
第一は、世界の未開発地帯を開拓する能力と実績あるは日本人のみであるということでございます。これは、ハワイ七十年、北アメリカ六十年、南アメリカ五十年の日本人移民史に見れば明瞭であります。北米では、フレスノやインペリアル・ヴアレーのような不毛の砂地にくわを入れて、マラリアと闘い、心なき白人の排日妨害の中に着々と開墾し、遂に見渡す限り青一色のレタス中心地となし、サンキスト・オレンジ畑としたのは、実に日本人の血と汗と涙であつたのであります。一方、南米でも、ブラジルの原始大森林におのを入れ、黴毒にも似たフエリーダプラボウに冒されつつ、コーヒー耕地をつくり、あるいはアマゾン川にジュート麻農園をつくり上げしものも、これまたイタリア人にあらず、ドイツ人にあらず、実に日本人であつたのであります。その他、アルゼンチンの綿作地、パラグアイの綿作地、ペルーの綿作地など、いずれも白色人種が投げ、あるいは逃げたあとを、わが日本人が引継ぎまして、遂に成功し、その国を富ませておる実情は、皆様も御承知の通りであります。
なお、ここに特に強調せねばならぬことは、この南米、北米六十万の日本人は、移住地において、よくその国の法律を守り、宗教心に厚く、また誇るべきことは、いまだかつてこれらの日本人の中に詐欺や強盗といつた破廉恥犯が出ていないということであります。ギャング専門のような南ヨーロツパからの移民に比べまして、実に誇るべき模範移民であるということは、日本人を好まざる外国人といえども、この実績を知つておるのであります。もつとも、ブラジルの日本人の中には、母国の勝利を信ずる者と、敗戦の実情を知つておる者との間に少しくごたごたがありましたが、これとても、まつたく日本人内部のことでありまして、一般ブラジル人には何らの損傷を与えていないのであります。アメリカのいわゆるポイント・フオア政策、あるいはイギリスのコロンボ計画等、資本は別といたしましても、技術や労力の点に至りますと、結局日本人以外には、勤勉、忠実、かつくふう改良の能力ある移民のないことを私ども信ずるのであります。世界は、今あらためてこの日本人を見直し、各自の国の未開発地域へ、腕を広げて日本人を大量に迎えるべきだと信ずるのであります。
第二は、海外移民の実現こそが人口、食糧問題解決のきめ手であるということであります。産児制限を悪いとは言いませんが、これを実行したものは都市の一部のインテリでありまして、全国津々浦々の熊さん、八さんは、年々ふた子などを産みまして、総人口はかえつて百五十万ずつふえておる状態でございます。あと十年もたてば、おそらく一億になるだろうといわれております。今でさえ主食の不足が二千万石といわれておる。十年後、一体どうして一億の国民に食わして行くでありましようか。吉田内閣はあすにも倒れるから、十年後のことは考えなくてもいいと、もし自由党の人が考えておるならば、国民全体としては、これは納得のできないことであります。よろしく十年の計画を立つべきものであると考えるのであります。
満州事変も、支那事変も、その原因は種々ありますが、この日本特有の人口、食糧問題が遠因の一つであつたことは、西洋人といえども肯定しておるのであります。戦争には負けましたが、戦争に負けたということと、人口、食糧問題の解決とは別でありまして、私どもは、勝つた国々に対して、あくまで日本民族の生存のために移住地を開放すべしという強い要求をすべきものであると思うのであります。吉田首相は、講和会議に際して、調印の交換条件に、何ゆえにこの日本人の海外移住についての約束を実行しなかつたか、私どもはいまだに納得することができない。
元来、外務省は、昔から移民の問題については非常に軽く扱う悪風がありまして、外交官の配置につきましても、フランスとか北米には重点を置きますが、中米、南米、東南アジア等を軽く扱つておるのであります。一体、今日の日本外交は、民族の自立経済から見まして、何よりも人口、食糧問題の解決を第一に考えるべきであると考えます。相手の国が日本人を大歓迎するというときになつては、もはや外交というものがないのでありまして、今日、日本人の受入れに難色を示しておるときにこそ外交というものがあると考えるのであります。(拍手)従つて、外務省は、今からあらゆる手を打ちまして、一万人はおろか、十万人でも二十万人でも、将来年々日本人が海外に出られるように、万般のくふうをすべきものであると私どもは考えております。
第三は、移民政策を中心に各省の横の連絡を強化すべきものであるという点でございます。明年度の移民計画を見ますと、南米では、上塚地区のアマゾンに三百五十戸、松原地区の中部ブラジルに二百戸、宮坂地区のパラグアイ共和国に百二十戸となつており、さらに南太平洋の仏領ニューカレドニアには二千人の金属鉱山労働者を約束しており、アチゼンチンその他への呼寄せ移民がおよそ二千人と想像され、合計一万人に上ると見られておりますが、これを輸送すべき船はありません。わずかに、さんとす丸一隻でありますが、これとても、キヤパシテイはわずかに五十余名であります。一年に三航海するといたしましても、二百人足らすの輸送量しか持つていないのでありますから、これはまたまた、せつかく一万人の移民契約をとりましても、オランダ船その他の外国船を雇わざるを得なくなり、惜しい外貨をこれらの外国船に支払わねばならない状態に陥るのではないかということを、私ども心配しておるのであります。従つて、政府はよろしく、移民輸送に関しましては、今より移民船の建造を奨励し、面また渡航旅費につきましては、今村君も話をしておりましたように、かりに移民金庫のようなものをつくりまして、政府が全額出資する、その十倍程度の債券の発行を認めまして、この債券は、現に海外各国におりまする、成功せる六十万の日本人諸君にも買わせる等の手を打つことによりまして、豊富なる資金をもつて急速大量の移住計画を立てなければならぬと考えるのであります。すなわち、移民協定は外務省がやり、輸送は運輸省で万般の対策を練り、農民は農林省、技術者は通商産業省、渡航費は大蔵省、あるいは衛生については厚生省、移民教養講習は文部省等、おのおの各省に大がかりの協力を必要とするのみならず、さらに内閣には学識経験者による移住国策審議会のごときものを設置すべきものであると思います。
以上の三点の実行を強く要望いたしまして、本案に賛成する次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/16
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017・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 福田昌子君。
〔福田昌子君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/17
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018・福田昌子
○福田昌子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました海外移民促進に関する決議案に賛意を表するものでございます。
すなわち、一つには、敗戦によりまして四割三分の領土を失い、さなきだに狭い国土、この乏しい資源に、外地からの引揚者も加えて、今日すでに八千四百万に及ぶ厖大な人口をかかえ、さらに年間二百六十万の出生があり、ことに最近は、公衆衛生の向上によりまして、日本人の寿命も戦前に比べて十数年延びるというような喜ばしい現象と相まちまして、非常なる労働人口の増加を来しておるのでございます。この現実の過剰人口に対しまする対策として、また食糧対策の一助といたしまして、二つには、世界の平和と諸国民の生活水準の向上のために——と申しますのは、すなわち、今日世界各国民の文化生活水準なるものはきわめて不均衡であり、ことに世界には労働力の不足と過剰とが同時に併存いたしております。このアンバランスを是正いたしまして、世界の各国の供給と需要を適合させますためには、ぜひ適度の国際移民というものが必要であると考えるのであります。この二点からいたしまして、私はこの海外移民促進に賛意を表するのでございます。
しかしながら、ここに私どもは、日本人の海外移民なるものが、今日この促進決議案をここに上程いたさねばならないほどに、なぜ困難であるかということを考えてみる必要がございましよう。それには、何と申しましても、一つには、日本の結びました講和がきわめて変則的な講和であり、従つて、歴史的、地理的に見まして最も友好的でなければならない中国など、今日なお講和のわく外に残し、東南アジアの諸国さえ、反省と自主性のない日本の外交政策のために、(拍手)日本及び日本人に対しまして、きわめて懐疑的であることでございます。従いまして、海外移民なるものは、日本国民のあげての熱望であるにもかかわりませず、終戦域来、わずかにアルゼンチン、ブラジルなど、先住在留邦人の呼寄せ移民といたしまして、ほんの少しばかりの移民が今日まで実現したのみでございまして、今年度になりまして、年末から初めてブラジルやパラグアイ、アルゼンチンその他の南米に向つて新しい開拓移民が実現できそうな状態に相なつたにすぎないのでございます。もちろん、最近まで日本は占領下に置かれており、移民問題は、それゆえに、むしろ今後にある大きな問題と言えましよう。しかしながら、イタリアなどは、講和を迎えました直後に、厖大な南米への移民政策に成功いたしましたことを考え合せますれば、日本の移民政策の不成績なるものは、一に日本の外交の自主性の欠如と、政府自体の移民政策に対しまする機敏性と熱意の欠如に責任があると言わなければならないのであります。(拍手)
さて、かりに政府の外交政策の英断によりまして、これらの条件が早急に改革され、各国の友好関係が回復いたしまして、移民が国民の熱望ほどに成功したといたしましても、移民に要しますところの当面の準備費、渡航費、その他財政支出の問題、船舶の問題等を考えますれば、さらにまた従来の移民の実績から考え合せますると、すなわち戦前最も移民の多かつた昭和十二年の実績を考えましても、満州への移住を含めて、わずかに年間二十二万にすぎなかつた。この実績を考えますると、今後の移民の実績も、決してこの数を上まわる成績には出ないであろうということが考えられるのでございます。さようにいたしますれば、自然増加百六十万もある日本の過剰人口に対する対策といたしましては、この移民政策なるものは、これのみにては、あまりにも多くの効果を期待することができない政策と言わなければならないのであります。(拍手)
私どもは、今日、日本の過乗人口に対しまする解決策にもなり、さらにまた日本の国民生活の向上と安定のために最も緊要な政策なるものは、移民政策よりも、むしろ諸対国との貿易の発展、東南アジアとの貿易の促進、さらにさらに大切なことは、隣邦中国との貿易の再開であらうと考えておるのであります。(拍手)今日、少くとも中国貿易だけでも戦前並に回復いたしたといたしますれば、これはまさに人口扶養力の非常なる増大となり、日本経済の発展と相まちまして、実質的にはまさに五百万から一千万の移民にも匹敵し得るような大きな成績を上げることができるのであります。(拍手)私は、かかる意味におきまして人口過剰に対する対策といたしまして、一応移民政策に賛成いたしまするが、それよりも、むしろ東南アジアの貿易の発展、中国との貿易の再開こそ先決問題であり、肝要であるということを政府に指摘いたしまして、この海外移民促進の決議案に賛意を表するものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/18
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019・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/19
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020・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
この際外務大臣から発言を求められております。これを許します。外務大臣岡崎勝男君。
〔国務大臣岡崎勝男君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/20
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021・岡崎勝男
○国務大臣(岡崎勝男君) 政府といたしましては、ただいま採択されました決議の趣旨に沿つて一層の努力をいたします。なお、政府としてできるだけ多くの移民を送出いたしたいことは申すまでもありませんが、それは、わが国人口問題の解決というような一方的目的のためばかりでなく、相手国の産業開発に貢献することによつて、われも利益を受けるというような、こういう趣旨を第一義として、相手国がわが移民を強く歓迎するようにいたしたいのであります。
当面の方針といたしましては、移住地のよき住民となるような、十分精選され、かつ教養を持つた優秀な移民を送り出すこととし、さしあたり呼寄せ移民の増大をはかるとともに、相手国の許可した計画移民を確実に具体化するよう努めております。現に、外務省は、神戸移住あつ旋所に関する法案を今国会に提出しておりまするが、今後も各種の実際的措置を進めるため必要の予算を計上し、御趣旨に沿うよういたす考えであります。
平和条約発効後、すでにアルゼンチンには約三千名、ブラジルには約一千名の移民が出ましたほか、昭和二十五年以来、南方アジア諸国には約一千名の技術者を出しております。今後、これら移民のための政府機関、民間機関、あるいは金融機関等の構想に対しましても十分考慮をいたします。なお、将来適当の機会を得まして、相手国との間の移民協定の締結や、国際機関に関する要請等の対外措置をも講じ、積極的に移民の増大をはかるよう努力いたす考えであります。(拍手)
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第一 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/21
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022・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第一、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員会理事谷川昇君。
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〔谷川昇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/22
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023・谷川昇
○谷川昇君 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案について、外務委員会における審議の経過並びに結果を簡単に報告申し上げます。
本法案は、去る十月二十四日内閣から国会に提出され、十二月三日参議院において可決され、次いで衆議院に送付、本委員会に付託されて参つたものであります。よつて、十二月十七日及び十九日に委員会を開き、審議をいたしました。
政府側の説明によりますれば、すでに第十三回国会において在外公館の名称及び位置を定める法律及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律が制定せられ、これに基いて在外公館が設置せられ、また給与額も定められたのでありますが、その後相手国との交渉により、七つの在外公館、すなわち在中華民国日本国大使館、在ジャカルタ、在ラングーン、在ヘルシンキ、在ロンドン、在プレトリアの各日本国総領事館及び在リマ日本国領事館を増置する必要が生じましたので、前述二法律の一部を改正せんとするものであるとのことでありました。
次いで、委員と政府当局との間に質疑応答が行われましたが、その間におきまして、田中稔男君外二名より、本改正案から在中華民国日本大使館の項を削除する修正案が提出せられました。
しかして、質疑応答を終了し、討論はこれを省略いたしまして、まず右修正案について採決を行いました結果、起立少数をもつて否決せられました。続いて原案について採決を行いました結果、起立多数をもつて本件を可決いたしたものでございます。
右報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/23
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024・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 討論の通告があります。これを許します。帆足計君。
〔帆足計君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/24
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025・帆足計
○帆足計君 私は、台湾への大使館設置反対の趣旨をもちまして、日本社会党を代表して、本修正案に反対の意を表明するものでございます。御承知のごとく、東洋の古い文化の国たる日本と中国とは、地理的にも歴史的にも、はたまた文化的にも経済的にも、宿命的に結びつけられておるのでございます。その宿命の深さは天の定めともいうべきものでありまして、人がほしいままに切離し得るものではないのでございます。今日、中国とは、四億七千万の人口を擁する中華人民共和国でございます。日本と中国とは、不幸なる長き戦いのあとを受けまして、いまだに正常な関係にありませんことは痛惜にたえないことでありますけれども、これは双方の努力と善意の交渉によつで解決できることでありまして、打ちかちがたき困難ではないのでございます。(拍手)現に、インドも、インドネシアも、ビルマも、パキスタンも、日本を除くほとんどすべてのアジア諸国は、新中国と友好善隣の関係を保つておることが、これを立証してあまりあるのでございます。これは同時に、中日友好の障害が必ずしもイデオロギーのみに起因するものではなくして、その一半は——米国政府の圧力と、平和外交についての日本政府の熱意の不足と、その保守的性格によることが少くともその一因でありますことは、否定すべくもない事実であります。(拍手)にもかかわらず、日本政府が目前の利害にとらわれ、焼きいもほどの台湾一つに目がくれて、渺たる一亡命政権を中国人民代表として承認し、中国四億七千万民衆の反感を買つておりますことは、まことに遺憾なことであるのみならず、論理学の初歩をもわきまえぬ不条理なことでありますのみならず、大局より見まして国運を誤るもはなはだしいものと思うものでございます。(拍手)
周知のごとく、日本と中国大陸との宿名的な経済的相互依存の関係だけを考えてみましても、国土狭小にして人口過剰なるこの国の活路は、隣邦中国との友好並びに経済提携なくしては絶対に見出し得ぬことが痛感されるのでございます。かかる意味におきまして、わが党は、かねて台湾政権承認という軽率なる行為に対しましては絶対に反対の立場をとり、イギリス、インドその他の諸国と同様に、中国四億七千万の人民を代表する中華人民共和国と正常なる平和外交、友好の関係を結ぶための努力の必要を強調するものでございまして、(拍手)かかる意味合いから見まして、この際台湾に大使館を設けますことには絶対に反対の意を表明するものでございます。(拍手)日本政府といたしましては、すでに台湾蒋政権を承認いたしましたあとでありますから、いたし方ないではないかというのでありましようけれども、そういう理由でありますならば、台湾に連絡事務所程度のものを置けばよいのでありまして、あえて大使館を置くまでのことはないのであります。みずから卑しめて人これを卑しむといいますけれども、日本が渺たる台湾に期待し得るものは、バナナと砂糖をおいて以外に何がありましようか。(拍手)祖国日本がアジアに求める平和と友好の道は、いかにイデオロギーの矛盾がそこにあり、歴史的発展段階の相違がそこにありましようとも、いかなる困難の課題がそこに横たわつておりましようとも、六千年の文化を持つこの偉大なるアジアの民族の子たる中国と語り合い、相互に理解の道を忍耐強く探し求めること以外に、いかなる道が残されておるでありましようか。(拍手)
過日、私は親しく北京、上海、漢口、広東等を訪れまして、つぶさに新中国の姿を見ましたけれども、ふるさとの皆様方に、私は声を上げて、これらの風景を申し上げたいと存じました。北京の町はすでに清潔になりまして、はえも、かも、一匹もおりません。諸君よ、驚くべきことでありますけれども、魔の都上海といわれたその上海に、一人の浮浪児もなく、一人の売笑婦もいないという姿を見たときに、私は粛然としてえりを正してこの問題の本質を見、世間で、敵を知りおのれを知つて百戦危うからずという言葉がありますけれども、あえて隣邦中国を敵と言わないにしても、事実を事実として国策を立てねばならぬことの必要を痛感したのであります。黄河、揚子江は、驚くべきことには治水の仕事が七割五分まで進み……(「うそを言え。」と呼ぶ者あり)うそではありません、事実であります。そうして三箇年間につくり上げた堤防は、高さ一メートル、幅一メートルに換算いたしますると、地球を二十四回まわるほどの治水の仕事をしております。実に四億七千万人民の動きというものは驚くべきものでございまして、粛然としてえりを正し、祖国の運命と外交の調整に対して心を深く用いねばならぬ必要を痛感したのでございます。
しかるがゆえに、私は、ここにアジアの永遠の平和と中日両国民族の友好のために、台湾亡命政権の承認が日本国民の心からの声でないことを明らかにし、日本国民の心からなる願いは中国四億七千万人民と平和と友好の関係を結ぶことにあるという事実を明らかにして、ここに日本国民大衆の圧倒的多数の中日友好の意思を、国の最高機関でありまするところの国会の速記録にとどめ、将来へのあかしと備えにいたしたいと思うのでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/25
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026・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/26
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027・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
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第二 湿田単作地域農業改良促進法案(青木正君外七十七名提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/27
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028・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第二、湿田単作地域農業改良促進法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員長坂田英一君。
〔坂田英一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/28
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029・坂田英一
○坂田英一君 ただいま議題と相なりました、青木正君外七十七名提出、湿田単作地域農業改良促進法案につきまして、農林委員会におきまする審議の経過並びに結果の大要を御報告いたします。
周知のごとく、わが国農業はいわゆる集約的零細耕作で、全国農家一戸当り平均耕作面積は八反歩にすぎないのでございます。従いまして、今後におきまする農業生産力を高め、農家経営の高度化を促進するには、既耕地の徹底的利用をはかりますことが最も肝要であります。しかるに、現在わが国の水田面積約三百万町歩のうち約六十九万町歩は、常時排水不良の湿田地域であつて、関東のほか、広く各地に分布していますが、これらの地域は、農地が湿潤のため生産力が低く、畜力導入はもちろん、農耕作業もきわめて困難で、病虫害もまた常に発生する等、低位生産の状態にありますことは、まことに遺憾にたえません。よつて、これらの湿田地域に対し、その特異性を考慮に入れた農業改良計画を強力に促進して農業生産条件を整備し、二毛作、三毛作化を推進いたし、裏作作物、工芸作物または有畜農業の導入等を可能にし、食糧の飛躍的な増産と農家経済の安定をはからんとするのが、本法案提出の理由であります。
次に本法案の要旨を申し上げますと、第一点、湿田地域に対し灌排水、区画整理等を計画的に施行するとともに、あわせて農業技術の改善を行う等、総合的計画を実施いたし、農業生産力の高揚を最も効率的に行い、もつて食糧その他農産物の急速な増進に寄与するという目的を明記いたしましたこと。第二点、湿田単作地域の指定、市町村長、都道府県知事及び農林大臣の定める農業改良計画並びにその改良計画の変更等の事項は、いずれも積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法に準じて規定いたしましたこと。第三点、湿田単作地域農業改良促進対策審議会を設置することといたしましたこと。第四点、農業改良計画の内容を規定いたしますとともに、その計画は立地条件、農業技術発達の程度、労働事情その他諸条件を総合的に勘案して、事業の経済的効果を最大限に発揮するようにいたしましたことでございます。
本法案は、去る十二月十二日、本委員会に付託と相なり、同日、提案者を代表して青木委員より提案理由の説明がございました。次いで十六日、十八日、十九日の三日間にわたり質疑を行いましたるところ、改進党金子、平川両委員、社会党井上、川俣委員並びに社会党足鹿、芳賀両委員の各委員から、本法案施行に要する予算の裏づけ、湿田の定義及び地域指定の基準、また第十六国会に提出を予想されている食糧増産促進法案並びに現行土地改良法との関係等に関して御発言がございましたが、詳細は速記録についてごらんを願いたいと思います。
昨十九日、質疑を終了、討論を省略、採決を行いましたるところ、全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。
次いで、社会党井上委員から、本法案に対し次のごとき附帯決議を付したいとの動議が提出されました。すなわち
政府は、食糧自給度の向上のため、現行土地改良法を再検討し、綜合的な農業計画のもとに土地改良事業の効率的な実施をはかるべきであるが、とりあえず、本法の施行に当つては、指定基準面積をできるだけ引下げて、湿田単作地域の指定範囲を最高限度に拡大すべきである。
これを採決いたしましたるところ、これまた全会一致をもつて可決いたしました。
以上御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/29
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030・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/30
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031・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
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農林漁業金融公庫法案(野原正勝君外五十六名提出)
農山漁村電気導入促進法案(松田鐵藏君外六十二名提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/31
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032・久野忠治
○久野忠治君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、野原正勝君外五十六名提出、農林漁業金融公庫法案、松田鐵藏君外六十二名提出、農山漁村電気導入促進法案、右両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/32
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033・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/33
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034・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
農林漁業金融公庫法案、農山漁村電気導入促進法案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員長坂田英一君。
〔坂田英一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/34
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035・坂田英一
○坂田英一君 ただいま議題となりました農林漁業金融公庫法案並びに農山漁村電気導入促進法案に関しまして、農林委員会におきまする審議の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。
まず、野原正勝君外五十六名提出、農林漁業金融公庫法案に関しまして御報告いたします。
現下における内外諸般の情勢よりいたしまして、農林漁業生産の基盤を拡充強化し、もつて食糧有給、経済自立の早急な達成をはかることが要請されておりまするが、これがために農林漁業に対しまする長期低利の資金の供給を目的として、昨年農林漁業資金融通特別会計が設置され、昭和二十六年度百二十億円、昭和二十七年度二百億円の資金をもつて、土地改良、造林、共同利用施設等に対しまして貸付業務を行つて来ておりますことは、すでに御承知の通りであります。しかして、今後食糧増産計画の積極的推進に伴いまして、資金の規模はますます拡大せられる趨勢にありまするが、このたび農林漁業の特質に関連して、この特別会計のあり方について再検討を加えられた結果、貸付業務と特別会計の機構、人員との関係、財政法との関係等よりいたしまして、この際この融資を目的とする恒久的な独自の政府機関として新たに農林漁業金融公庫を設置する必要があるとの結論に達し、ここに本法案を提出せられたのであります。
法案の内容を簡単に御説明いたしますと、公庫はいうまでもなく特殊法人でありまして、その資本金は全額政府出資とし、特別会計よりの承継資金をこれに充当することとされております。融資対象はおおむね従来通りでありますが、災害復旧に対しては、個人融資をも新たに取上げられておるのであります。貸付の事務については、これまた従来通り、貸付決定以外は農林中金その他の金融機関に委託し得るように相なつております。貸付利率、償還期限及びすえ置き期間の限度もまた、おおむね現行通りであります。
法案の内容は大体以上のごとくでありますが、去る十五日提案せられまして以来、数回に及んで会議を開き、提案者並びに政府委員に対して質疑を行い、また農林中金、組合金融協会より参考人を招致して意見を聞き、また大蔵委員会との連合審査会を開いて協議を行う等、本法の農林漁業金融に与える重大性にかんがみ、系統金融制度の根本問題から、公庫の組織、機能、農林中金との業務上の関連性、現下農業金融の梗塞打開方策等、万般の問題にわたり熱心な議論が続けられました。その間、連合審査の結果に基いて、大蔵委員会よりは、公庫の従たる事務所を置かないようにすること、災害復旧に対する融資の償還期限を五年から十五年に延長する等の修正意見が申し出られたのであります。
かくして、本日の委員会において、自由党の原健三郎君より、大蔵委員会の申出の趣旨に沿い、災害復旧に対する融資の償還期限を十年間延長する点を取上げた修正案、並びに社会党足鹿委員より次の附帯決議案が提出せられたのであります。すなわち
政府は、本法施行に際し、次の措置を講ずべきものと認める。
一、主務大臣は、事業内容の健全な信用農業協同組合連合会については、これを農林漁業金融公庫の受託金融機関となり得るよう、農林漁業金融公庫法第十九条第一項並びに農業協同組合法第十条第六項の規定に従い、必要の措置を講ずること。
二、第三条第二項の従たる事務所は、当分の間これを設置せざること。というのであります。
討論を省略いたしまして以上の修正案、修正部分を除く原案並びに附帯決議案を次に採決いたしましたところ、いずれも全員の賛成をもつて可決すべきものと決した次第であります。
次に、松田鐵藏君外六十二名提出、農山漁村電気導入促進法案について御報告申し上げます。
現代文明の恩恵に浴することのできない、いわゆる未点燈部落というものがいまだに二十万戸もあり、また動力線の引込みがないために農林漁業生産の増強に致命的な欠陥を有する農山漁家の数も全国的には少からず存在する等の事実にかんがみまして、この事態を改善する目的をもつて本法案を提出されたのであります。
法案に盛られておる主要なる内容は、第一点、都道府県知事並びに農林大臣に対し電気導入計画の策定を命じたこと。第二点、この計画に基いて、従来も農林漁業長期融資から融通して参つた小水力または小火力の発電施設に対する融資を一層積極的に推進し、さらに送配電施設並びに工事負担金に対しても今後融資すること。第三点、開拓農協に対する電気導入設備に対して補助金を交付すること。第四点、農林漁業団体が送配電施設ないしは発電施設を建設し利用する場合に、既存電力会社との間に電気の供給、託送、売買等に関連して発生する交渉を行わしめまするために協議裁定の道を設けたこと等であります。
本案は、十二月十五日、松田君より提案理由の説明を受け、本日質疑を行つたのでありますが、簡単な質問の後これを打切り、討論を省略して採決いたしましたところ、これまた全員の賛成をもつてこれを可決いたした次第であります。
以上をもつて二案に関する御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/35
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036・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 両案を一括して採決いたします。農林漁業金融公庫法案の委員長報告は修正でありまして、農山漁村電気導入促進法案の委員長報告は可決であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/36
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037・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り決しました。
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電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/37
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038・久野忠治
○久野忠治君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、電気及びガスに関する時臨措置に関する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/38
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039・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼、か者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/39
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040・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。通商産業委員会理事小金義照君。
〔小金義照君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/40
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041・小金義照
○小金義照君 ただいま議題となりました電気及びガスに関する臨時措置に関する法律案につき、通商産業委員会の審議の経過並びに結果について概要を御報告申し上げます。電気及びガスに関しては、すでに御承知の通り、ポツダム政令によつて制定された公共事業令及び電気事業再編成令がありましたが、講和条約の発効により、去る十月二十四日限りで失効いたしております。従つて、現在は電気及びガスに関しこれを規制する法規が空白状態となつており、不測の混乱または無用の摩擦が起きても、何ら法的根拠に基く措置がとり得ない状態にあるのであります。ここにおいて、政府は、恒久法の成立に至るまでの暫定措置として、失効前の旧公共事業令の全部及び電気事業再編成令の必要部分と同一の内容を持つ法的規範を臨時に制定せんとするものであります。
本法案は、十一月七日当委員会に付託され、同月十一日政府委員より提案理由の説明を聴取し、以来数次にわたり委員会を開き、慎重なる質疑が行われたのであります。さらに、本法案に関連して、電産、炭労の両ストライキ問題、只見川水利権変更問題等、多岐にわたり熱心なる質疑応答が行われたのでありますが、詳細は会議録を御参照願いたいと存じます。
続いて、十二月二十日、質疑を打切り、ただちに討論に入り、自由党を代表して小金義照より、改進党を代表して山手滿男君より、日本社会党を代表して今澄勇君並びに永井勝次郎君より、また無所属倶楽部を代表して木下重範君より、それぞれ適切な希望を強く開陳せられて、いずれも本案に賛意を表せられました。
次いで採決に入りましたところ、本委員会としては全会一致をもつて原案の通り可決いたした次第であります。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/41
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042・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/42
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043・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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電話設備費負担臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/43
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044・久野忠治
○久野忠治君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、内閣提出、電話設備費負担臨時措置法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/44
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045・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/45
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046・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
電話設備費負担臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。電気通信委員会理事中村梅吉君。
〔中村梅吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/46
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047・中村梅吉
○中村梅吉君 ただいま議題となりました電話設備費負担臨時措置法の一部を改正する法律案に関しまして、電気通信委員会における審議経過及び結果の大要を御報告申し上げます。
本法律案は、去る十二月十一日内閣提出にかかるものでありまして、その提案理由といたしまするところは、電話に対する現下の熾烈な要望にこたえまして、電話拡張資金をでき得る限り増加し、急速に電話設備の拡張をはかるために、従来認められておりました拡張資金のほかに、臨時的措置として、新たに利用者負担の方法による電信電話債券の特殊引受の道を開くことといたしまして、電話設備費負担臨時措置法の一部を改正して、これがために必要なる規定を加えようとするものであります。
次に、本法律案につき主要の点を申し上げますれば、電話の加入申込者に対しまして電話取扱局の級別に従い、六万円以内において政令で定める額の債券を引受けさせること、また戦災電話の復旧工事を完了したときは、その加入者に対して、電話取扱局の級別に従い、四万円以内において政令で定める額の債券を引受けさせることといたしております。なお、公益上必要のある場合、その他郵政大臣が定める特別の事由がある場合には、この債券の引受を免除することができることといたしております。しかして、これが施行期日は、公布の日から一月以内において、政令をもつて定めることになつておるのであります。
電気通信委員会におきましては、去る十二月十一日、本法律案の付託を受けまして以来、数回にわたつて会議を開き、郵政大臣より提案理由の説明を聽取し、政府及び日本電信電話公社の当局に対して質疑を行い、慎重審議を遂げたのであります。質疑の内容といたしましては、電話需給の現状から、将来の拡充計画、未開通積滞数と加入電話の市価の問題、募債予定額の消化と電話級別の債券引受額との関係、電話拡張資金の財源としての資金運用部資金運用状況及び外資導入の見通し、債券引受免除の予定範囲等の諸点、その他広汎多岐にわたつたのでありますが、その詳細は速記録に譲りたいと存じます。
かくして、委員会は本日質疑を打切りまして、ただちに討論に入つたのでありますが、討論に際し、自由党を代表して不肖私、改進党を代表して有田喜一君、日本社会党両派を代表して松前重義君、原茂君の諸氏が討論を行い、いずれも本案に賛成の意見を述べられたのでありますが、各党委員の討論のうち、共通の意見として特に二、三あげておきたいと思いますのは、電話拡張が焦眉の急を告げる今日、建設資金の一部を利用者に負担せしむるということは、やむを得ない措置とは認められるのでありますが、電話建設資金の調達源としては資金運用部の資金を主たる財源とすべきものであつて、これを利用者引受に求めることは、あくまで変則的措置であるから、すみやかに常道に帰るよう努力すること、利用者の債券引受額は、法律の範囲内において、電話局の級別に従い政令の定めるところによることになつているが、地方の実情にかんがみ、五級局以下の局においては債券の引受を要しないこととすること、本法律案の実施に伴つて、公社の電話架設計画が都市偏重の弊に陥らないように注意すること、以上三点を強く要望されたのであります。
委員会は、次いで採決を行い、全員一致をもつて本法律案を可決いたした次第であります。
以上御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/47
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048・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/48
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049・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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オホーツク海暴風浪及びカムチヤツカ沖地震による漁業災害の復旧資金の融通に関する特別措置法案
(水産委員長提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/49
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050・久野忠治
○久野忠治君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、水産委員長提出、オホーツク海暴風浪及びカムチヤツカ沖地震による漁業災害の復旧資金の融通に関する特別措置法案は、委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんごとを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/50
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051・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/51
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052・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
オホーツク海暴風浪及びカムチヤツカ沖地震による漁業災害の復旧資金の融通に関する特別措置法案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。水産委員長福永一臣君。
〔福永一臣君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/52
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053・福永一臣
○福永一臣君 ただいま議題となりましたオホーツク海暴風浪及びカムチャツカ沖地震による漁業災害の復旧資金の融通に関する特別措置法案について、提案理由を御説明申し上げます。
まず、本案の要旨を簡単に御説明いたします。去る十月二十三日のオホーツク海における暴風浪及び十一月五日カムチヤツカ沖に発生した地震により起きた津波によつて、漁船、漁具、養殖施設及び共同利用施設が受けた損害の復旧を円滑にするため、損失補償及び利子補給を行うことを目的としたものでありまして、農林中央金庫その他融資機関が漁業者にこの復旧資金を融通するときは、たとい償還期限を経過してもなお返済されない場合にあつては、政府が損失補償をすると同時に、融資について利子補給をするという契約を金融機関と結ぶことができるようにしたものであります。すなわち、昭和二十九年三月三十一日までに融資契約がなされ、その後五箇年以内の償還期限のものについては、融資総額十三億円を限度として、五分の利子補給及び融資総額の三割の損失補償を政府が行うこととするものであります。なお、都道府県においても、損失補償の道を設け、融資総額の三割を下らない額を限度として補償する契約をしたときは、特に政府は五割の損失補償をすることになつております。
御承知の通り、今回災害を受けた地方の漁民は、本年三月に十勝沖の地震によつて非常なる損害を受け、今回と同様の措置によつ場てその復旧をはかつて参つた次第でありますが、その途上において、再度この被害をこうむつたわけであります。このように一年間に二度の災害を受け、その復旧には一層困難が伴う関係上、あるいは前回における融資状況等を勘案して、今回は損失補償においては三割を五割とする道を開き、利子補給にあつては、四分を五分にそれぞれ引上げ、これによつて災害復旧を促進して漁業者の生活の安定に資したいと考える次第であります。
本案の起草については、去る十一月十一日の委員会において、災害補償の小委員会で検討を進めることに決定し、その後同小委員会においては数回にわたつて小委員会を開き、鋭意検討し、熱心に協議を重ねて参つたのでありますが、本日の小委員会において、以上御説明いたしました通りの結論に達したので、これが委員会に報告があり、その後引続き開かれた委員会においても、全会一致をもつて小委員会案の通りの成案の決定を見たのであります。よつて本案は委員会提出の法律案として議院に提出することに全員の賛成を得て決定した次第であります。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/53
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054・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/54
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055・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は可決いたしました。
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保安庁法の一部を改正する法律案
(栗山長次郎君外十一名提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/55
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056・久野忠治
○久野忠治君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、栗山長次郎君外十一名提出、保安庁法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/56
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057・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 久野君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/57
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058・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
保安庁法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長船田中君。
〔船田中君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/58
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059・船田中
○船田中君 ただいま議題となりました保安庁法の一部を改正する法律案について内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
本案の要旨を簡単に申し上げますと、保安庁法においては船舶安全法並びに電波法の一部の適用を除外しているのでありますが、今回日本国とアメリカ合衆国との間の船舶貸借協定の審議にあたつて、この適用除外が海上における人命のための国際条約及び国際電気通信条約、同附属無線通信規則に違反するのではないかということが論議されたのであります。これについての政府の見解は、人命安全条約は原則として国際航海に従事する船舶に適用されるものであり、また船舶安全法はこの条約に定める以外の事項をも規定しており、警備隊の船舶のごとく、国家機関に所属し、沿岸及び近海における海上警備に従事する船舶に対しては、船舶安全法をそのまま適用することは不適当であるので、その適用を除外することとし、同条約のうち、警備隊の船舶にも適用ある航海の安全に関する部分については、これを履行するため必要な行政的措置を講じ、条約遵守上遺憾なきを期するものであり、また移動無線局について電波法の一部を適用除外しているのも同様の趣旨であるというのであります。しかし、船舶貸借協定の審議にあたつて前述のような疑義を生ずるに至りましたので、この疑義を一掃するため、本案は保安庁法の関係規定を改正し、これに関する必要な規定を整備しようとするものであります。すなわち、船舶安全法中、船舶の衝突予防及び航行上の危険防止に関する規定は警備隊の船舶にも適用するとともに、船舶及び移動無線局について長官が必要な基準を定めなければならないことといたしているのであります。
本案は、十二月十五日、本委員会に付託され、提案者の説明を聞き、質疑を行い、借受け船舶の性格、用途その他について種々論議されましたが、その詳細は会議録に譲りたいと存じます。
かくて、本日討論採決の結果、多数をもつて原案の通り可決いたした次第であります。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/59
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060・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/60
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061・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
明後二十二日は定刻より本会議を開きます。
本日はこれにて散会いたします。
午後六時六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X01719521220/61
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