1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年二月二十六日(木曜日)
議事日程 第三十二号
午後一時開議
一 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明
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第一 海上保安官に協力援助した者の災害給付に関する法律案(關谷勝利君外九名提出)
第二 航空業務に関する日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
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●本日の会議に付した事件
電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
日程第一 海上保安官に協力援助した者の災害給付に関する法律案(關谷勝利君外九名提出)
日程第二 航空業務に関する日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件
内閣から提出された警察法案、恩給法の一部を改正する法律案及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨説明を逐次聴取するの動議(山崎岩男君提出)
警察法案(内閣提出)の趣旨説明
恩給法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
午後二時二十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/0
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001・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) これより会議を開きます。
〔「定足数がない」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/1
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002・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) 定足数はあると存じます。定足数は十分あると思います。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/2
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003・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案の御趣旨を求めます。労働大臣戸塚九一郎君。
〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/3
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004・戸塚九一郎
○国務大臣(戸塚九一郎君) ただいま議題となりました電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案につきまして、その提案理由及び大体の構成を御説明申し上げます。
昨冬行われました電気事業及び石炭鉱業の両ストライキは、幸いにして最最の段階におきまして収拾されましたが、この二つのストライキが国民経済、国民生活に与えた脅威と損害とは実に甚大なるものがあつたのであります。労使関係の事項につきましては、法をもつてこれを抑制規律するよりは、労使の良識と健全な慣行の成熟にまつことが望ましいことは言うまでもないことでありますが、政府としても、基本原則のみを固執し、いたずらに手をこまねいて当面の緊急の問題に対して対策を怠ることは許されないのであります。かかる見地よりいたしまして、電気事業及び石炭鉱業の特殊性及び重要性並びに労使関係の現状にかんがみまして、争議権と公益の調和をはかり、もつて公共の福祉を擁護するために、両産業における争議行為の方法について必要な規制をなす必要があるのであります。公共的性質を有する産業は、ひとり電気事業及び石炭鉱業に限るものでないことは申すまでもないところでありますが、種々検討の結果、今回は、いわゆる基礎産業中最も基幹的な重要産業であり、しかも昨年問題となつた電気事業及び石炭鉱業につきまして規定いたすこととした次第であります。
以上の見地より今回本法案を提案いたしたのでありますが、本法律案の作成に先だつて、二月十四日、十六日の同日、東京、大阪及び福岡におきまして公聴会を開催し、労働者、使用者、学識経験者の意見はもちろん、電気事業及び石炭鉱業の公共性にかんがみまして、特に一般消費者の意見も聞き、検討の結果、成案を得まして今回提案の運びに至つた次第であります。
以下、本法律案の大要について御説明申し上げます。
本法案は三箇条からなるものでありますが、まず第一条におきましては、以上申し上げたことく、電気事業及び石炭鉱業の特殊性及び重要性にかんがみ、公共の福祉を擁護するため、争議行為の方法について必要の措置を定めるという本法案の趣旨をうたつたものであります。
次に第二条につきましては、電気事業について、いわゆる停電スト、電源スト、その他電気の正常な供給の停止ないし直接の障害を生ぜしめる争議行為の方法は禁ぜられるものであることを明らかにいたしたのであります。スイツチ・オフ等の行為は、従来とも政府として正当ならざるものと考えたのでありますが、さらに、これと同様の結果を生ずる行為であつて、昨年の経験にもかんがみ、社会通念上非とされるものについてもこの際これを明確にし、正当ならざる行為の範囲を明らかにしたものであります。けだし、停電スト、電源スト等は、これに携わる人員は全電気産業労働者中少数にすぎないと同時に、労働者の失う賃金及び使用者のこうむる損害は、これによつて重要者が不可避的にこうむる物質的、精神的損失に比較いたしますと、きわめてわずかなものであります。この点、他の争議行為の方法とまつたくその類を異にし、電気事業の公共性に矛盾することはなはだしき争議方法と言わなければならないのであります。よつて、六条は、かかる争議手段が行い得ざるものなることを明らかにしたものであります。
次に第三条につきましては、石炭鉱業についてい鉱山保安法に規定しております保安業務の正常な運営を停廃する行為でありまして、潅水、落盤、自然発火、有害ガス充満等を来して、人命に危害を及ぼしたり、石炭資源を滅失し、ないし炭鉱の破壊を招いたり、第三者に鉱害を与えるごとき保安放棄の行為は、争議行為として正当性を逸脱するものであることを規定いたしたのであります。このことは、昨年の炭労ストに対する政府声明におきましても明らかにいたしたところであり、きわめて明白の事柄でありますが、この際特にこの旨を明文をもつて明らかにしたものであります。
以上、本法律案の提案理由と大体の構成を御説明申し上げたのでありますが、本法律案は、決して不当に労働者の権利を抑圧いたすものではなく、電気事業及び石炭鉱業の特殊性並びに国民経済及び国民生活に対する重要性に基く両産業における争議行為の方法の制約を明らかにし、公共の福祉を擁護せんといたすものであります。何とぞ御審議の上、すみやかに可決せられんことを望みます。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/4
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005・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) これより、ただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。持永義夫君。
〔持永義夫君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/5
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006・持永義夫
○持永義夫君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となつておりまする電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案につきまして、若干質疑をいたしたいと思うのであります。
第一点といたしまして、まず私は本法案制定の理念についてお尋ねしたい。昨年の秋発生いたしました電気スト及び石炭ストは、その規模の広大なることにおいて、またその期間の長かつたことにおいて、さらに国内産業及び国民生活に与えた影響の甚大であつたということから見まして、わが国の労働運動史上まれに見る大争議であつたことは、皆様御承知の通りであります。かの昭和二十一年の二月、全国的に発生いたしましたいわゆる二・一ストと相並んで、終戦後わが国における二大ストと申さなければなりません。しかるに、二・一ストの場合におきましては、わが国がいまだ占領統治下にありましたので、占領軍総司令官の強力なる命令によりまして、幸い争議状態に入らずに、事前に停止されたのでありますが、これに反しまして、昨年の争議の場合は、日本がようやく独立いたしました後でありましたので、労使いずれもその立場を擁護するために互いに相譲らず、また中央働委員会のあつせん、仲裁等も容易に容認されるところとならず、右石炭ストは実に六十三日に及び、また電気ストは実に八十六日に及びまして、ようやく停止するに至つたのであります。その間における一般国民の不安、焦燥というものは、実に言語に絶するものがありました。また、その経済的の損害は、石炭鉱業について見ましても、一日について、労働者側の損害が一億円、事業主側の損害が三億円、合計いたしまして約四億円の減少を見ております。合計実に二百五十億円に上る厖大なる損害をこうむつておるのであります。その他、大中小企業及び一般国民の受けました有形無形の損害は実に莫大でありまして、ここに計数をもつて申し上げることのできないくらいな損害を受けております。
政府といたしましては、憲法によつて保障された労働者の団結権及びその交渉権を尊重しまして、でき得る限り解決を当事者の自主的交渉にまかせておりましたが、その間において、労使双方及び国民一般から、一体政府は何をしておるのかというような非難を受けながらも、あくまで隠忍自重し、いわゆる伝家の宝刀とも称すべき緊急調整権の発動は、抜くと見せて容易に抜かなかつたのであります。しかしながら、争議はいよいよ悪化しまして、遂に石炭ストにおきましては、保安全要員の引揚げというような準備指令が出まして、まさに争議は最悪の状態に立ち至りましたので、政府もやむなく最後の断を下して、いよいよ宝刀を抜かんとしましたが、その直前にこの争議は解決いたしました。また一方、電気ストは、御承知の通り、中央労働委員会のあつせんが功を奏しまして、自主的に解決するに至りましたが、その間における中央労働委員会の苦衷、努力というものは、まことに察するに余りがあるのでありまして、私は感謝にたえないところであります。
御承知の通り、電気及びガスに関する臨時措置に関する法律によりますると、その第八十五条におきまして、公益事業に従事する者が、電気またはガスの供給を、正当な事由がないのに取扱わず、または不当な取扱いをしたときには、一定の処罰を受けることになつております。また鉱山保安法の第五条及び第五十六条によりますると、鉱山労働者は、鉱山においては保安のため必要なる事項を守らなければならない、これに反した場合におきましては、一定の処罰を受けるということに相なつておりまするが、昨年のこの両ストが、最後の段階におきましては、これらの法律を無視した無秩序の状態に立ち至りましたこと、また立ち至らんとしておりましたことは、法治国家といたしまして、まことに驚くべき、かつ悲しむべき事態だと私は思うのであります。(拍手)
私どもは、憲法の認めておりまする労働者の団結権及び団体交渉権をあくまでも確認し、また今国会におきまして、ただいま政府が提案されておりまする、国際労働機関の総会で採択されました団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約外二件の批准についてこれを承認し、わが国労働法制の整備を希望するものであり、またわが国労働運動の健全なる発展には心から賛同するものでありまするけれども、しかしながら、昨年の両争議がかくのごとく不法にして最悪な状態に立ち至つた、あるいは立ち至らんとしたということにつきましては、労働組合のために真に遺憾の意を表せざるを得ないとともに、われわれは、不本意ながら、適正なる処置を講じまして、今後この種悪質不法なる争議方法の再発を断固として排除しなければならないと信ずるものであります。(拍手)のみならず、この考えは、現在におきましては、おそらく一部分の人を除いた大部分の国民の熱望であることは、先般労働省が各地で施行されました公聴会の模様によつても明白であります。従つて、政府今回の立法措置は、おそらくこの国民の熱意にこたえんとするものであろうと思いまするが、はたしてそうかということを聞きたい。また、今回の立法が、総理大臣の施政演説に言われた占領行政の行き過ぎの是正でなくして、むしろ昨年の労働争議に対する応急的の、やむを得ざる対策であるかどうかということについて、政府の所見を伺いたいのであります。
第二点として伺いたいことは、あえて新立法によらずとも、現行の労調法を活用すれば、それでよくはないかということであります。昨年起りました炭鉱ストは、労調法第三十五条の二に基きまして、緊急調整制度の発動の直前に争議が停止いたしましたことは前述の通りであります。御承知の通り、緊急調整の決定ある場合におきましては、ストは五十日間停止されます。また再びストを開始せんとする場合におきましては、十日間の予告期間を置くことになつておりまするから、前後合して六十日間は争議行為を行うことはできません。電気事業や石炭鉱業については、昨年末のごとき大規模な、かつ長期にわたるストはしばしば起らないでありましようし、また電気ストは、その発動なくとも、あるいは石炭ストは、その発動直前にすでに争議が解決いたしておりまするから、あえて新立法をつくらなくとも、昨年の七月改正されました現在の労調法の活用によつて公共の福祉を十分に守り得るではないか、特に新立法を必要とする理由はどこにあるのかということをお尋ねしたいのであります。
第三点は、保安要員の引揚げの禁止は鉱山保安法の運用で十分にできるのであつて、あえて新立法を要しないではないかということであります。鉱山保安法の第三条によりますると、鉱山における人に対する危害、鉱物資源の保護あるいは鉱山施設の保全は保安事項と相なつております。この保安事項は、同法第五条によりまして、鉱山労働者はこの保安事項を遵守する義務があります。もしこれに反する場合におきましては、一定の処罰があります。さらにまた、労調法の第三十六条を見ますると、「工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又はこれを妨げる行為は、争議行為としてでもこれをなすことはできない。」という規定があります。従つて、石炭鉱業における争議行為の規制は、右現行法律による制限で十分ではないか、何ゆえに新立法をするのかという質問であります。
第四点は、さらに新立法をしなくとも、既存法律の、すなわち現在の法律の改正で目的を達し得るじやないかということであります。すなわち、石炭鉱業の争議行為を制限するには鉱山保安法の改正をする、または電気事業の争議行為を制限するには電気及びガスに関する臨時措置法——これは公共事業令を改正いたしたものでありますが、その改正によつてできるのではないか、また、しいて労働立法として争議行為を制限したいと思うならば、現在の労調法第五章の争議行為の制限禁止の条文改正でよろしいのじやないかという質問であります。
第五点は、本法案の対象とする範囲の問題であります。本法案は、電気事業や石炭鉱業が、一は公益事業であり、一は国民経済及び国民生活に非常なる関係を持つているという意味から、この両事業のみを取上げておりますが、国民経済や国民生活に重大なる関係のある仕事は、単にこの二つの仕事に限りません。たとえばガス事業、これも電気事業と並んで重要なる仕事であります。また地方鉄道、軌道、これらの私鉄の事業のごときもそうである。さらにまた、全国的にわたつて組織されているところの日本通運事業のごときもそうでありまして、これらは、いずれも過失において国民生活に少からざる影響を与えた争議があつた例があるのであります。何ゆえに電気事業と石炭鉱業に限つて、これらの事業をその対象としないかということについての質問であります。
第六点といたしまして、本法律と並んで、すなわち、一方争議権の抑制をする反面において、何ゆえにこの救済方法を考えてないかという点であります。皆さん、わが国の労働立法が、わが国の国情から見まして比較的進歩しておる、いな、見方によりましては進歩し過ぎているのではないかということが言えるのであります。ある人は、日本の労働立法のあるものは、世界で一番金持のアメリカと、一番貧乏な日本にのみしかないということを言つたくらいであります。現に、憲法におきましては、労働者の団結権及び団体交渉権を確認しておることは御承知の通りでありますので、今回の法律案のごとく、争議権を抑制するには、公共企業体の場合のごとくに、何らかの救済方法を必要とするのじやないか。今回の法律案がいよいよ実施されることに相なりますると、両事業におきまする争議方法というものは非常に制限をされます。従つて、この制限に対する救済方法を考えることは、あたかも流るる水をとめた場合におきまして、これをはかす口を置くことが必要であるごとく、私は適当なる救済方法を考える必要があると思うのであります。この意味におきまして、たとえば労調法第三十条を改正いたしまして、本件の事業につきましても、当事者の一方からの申請によつて、労働委員会が仲裁をするというふうに改正をしたらどうか。また、たとえば、事業経営に関しまして諮問機関を設置して、この諮問機関に労働組合の代表を入れる、加入せしめるというようなことも考慮されるかと存じます。こういうことについて政府は何らかの考慮を払つておるのかどうかということをお聞きしたいのであります。
以上、私は六点にわたりまして質疑をいたしましたが、政府の明確なる御答弁をお願いいたしまして、私の質疑を終ります。(拍手)
〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/6
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007・戸塚九一郎
○国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申し上げます。
昨年の電産、炭労の両ストライキは、先ほども申し上げましたように、幸いにして最後の段階において収拾せられたのでありますが、この二つの争議が国民生活に甚大な脅威と損害を与えた苦い経験にかんがみまして、政府としては、ただいまお話もありましたように、従来とも鉱山保安法、電気ガス臨時措置法、公共事業令等で、規定に反し、正当ならざるものと考えておりましたスイッチ・オフや保安要員引揚げ等の行為とともに、これと同様な結果を生ずる行為であつて、国民の社会通念上非とされるものについても、この際あわせてこれを明確にしたいと考えまして、本法案を提案いたしたような次第でございます。
次に、昨年制定せられました緊急調整の活用によつて、この法案を出さなくてもよいではないかというような意味のお尋ねでございました。しかし、本法案の争議行為規制と緊急調整の制度とはその目的を異にいたしておるのでありまして、本法案は、本来争議行為として正当でないむのの範囲を明確にするものである。緊急調整の制度は、御承知のように、労使の紛争調整の一つの方法として、普通の争議行為が大規模になつたりして生ずる損害を防止せんとするものでありまして、そのため争議の調整解決を主眼とし、あわせて争議行為を禁止せんとするものであります。従つて、緊急調整と本法案とは重複するものではなくて、むしろ相補つて公共の福祉を擁護するものでございます。(拍手)
次に、すでに鉱山保案法第三条が保安事項を定め、あるいは第五条は鉱山労働者がこの保安事項を守るべき義務を定め、その罰則も規定している、従つて、この新第三条は必要でないじやないかというお説であります。お説のごとく、第三条の規定は、従来の法律の規定及び解釈によりまして、当然正当ならざる争議行為でありまして、このことは、昨年末炭労ストに関する政府声明におきましても明らかにされたところであります。しかしながら、昨年の経緯及びその後の実情にかんがみ、この点をさらに明文をもつて法律に定めることが公益擁護のために必要である、かように考えますので、念のためにかかる宣言的規定を設けて、誤解の余地なからしめんとしたものであります。
それから、単独立法にした理由、これについてのお尋ねでございました。この法案は、もつぱら公益擁護の見地から、電気、石炭両事業の争議行為の方法を規制せんとするものでありまして、鉱業法、電気ガス臨時措置法は主として事業の経営に関して規制する事業法でありますので、特に別個に立案をいたしたのであります。また労調法の関係におきましては、本法案は労使関係の調整の見地からの規定ではありません。またその内容は、ただいまも申し上げましたように、当然に正当性を逸脱する争議行為の方法の規制でありまして、従つて労使の対等の地位をくずすものではない。労働関係の調整には触れないで、労調法とは別個の単独法といたした理由であります。
なお、石炭と電気に限らず、そのほかガス、私鉄、日通のごときは過去においてもいろいろ問題があつた、こういうものについてはどう考えたかということでありました。公益事業ないし公共的性格を有する産業は、電気事業、石炭鉱業に限られないこと、またガス、私鉄、日通などが過去におきましてストライキによつて公衆に迷惑を及ぼしたことのあることもお説の通りであります。これら公益的事業全般について、その争議行為の規制措置を一般的に行うということも考えられるところでありますが、政府といたしましては、労働争議については、でき得る限り労使の自主的な良識にまつて、社会公共に対する損害の生ずることをみずから抑制することがきわめて好ましい、今後ともその方向に進むことを期待したいと考えておるのでありまして、従つて、講和後の情勢において、社会公共に耐えがたいような争議権の濫用の現実の経験があり、法をもつてこれを規制する以外に、とても自省に期待することが不可能なものに限つて、やむを得ず必要な立法を講ずることとして、今回の提案をいたした次第であります。
次に、仲裁制度を考えなかつたか、片手落ちのようであるという御意見でございました。本案によつて、一見労働者側が一方的に抑圧されて、労使の不均衡を来すやにも見られるのでありますが、政府といたしましては、かかる労使の不均衡の生ずるやいなやについては特に研究を加えたのであります。すなわち、電気については、第二条の規定に抵触するような争議行為に参加し得る職場にある労働者は、全電気労働者のうち少数の者でございます。しかも、従来の停電ストは、そのうちのさらにごく一小部分の者の行為によつて、御承知のごとき大なる被害を生ぜしめたのであります。いわんや、第二条の規定するところは、従来からも解釈上違法とされていた行為、ないしは昨年の経験にかんがみて、社会世論の上においてとうてい是認しがたいものとされる行為をここに明らかにしたのであります。また電気事業においては、これ以外にも他に幾多の有効なる争議手段が残されております。しかも、その中には、停電ストのように、もつぱら第三者に損害を与えるものだけのものと違つて、使用者に甚大なる経済的打撃を与える行為があるのであります。また石炭について言えば、全面的保安放棄というがごとき行為は、従来とも労調法第三十六条その他によつて、違法なること明確なるものと解されておりましたことは、先ほど申し上げた通り。現実にも、石炭労働者は、かかる違法を冒さずとも、経営者に対して十分対等の立場をもつて争議行為を行い来つたのであります。今、この違法なる行為について、従来の解釈をこの際明文化したからといいましても、それによつて特に労働者のみが不利益をこうむり、労使対等の立場がくずされるということはないのであります。従つて本法案によつて労働者が不当に不利益をこうむり、労使の均衡が失われるというようなことはないと考えておるのであります。もつぱら公益擁護の見地から争議権の正当性の限界を明らかにするためで、強制仲裁等の措置はとらなかつたのであります。
なお、御指摘の一方の申請による仲裁ないしは労働者の参加する諮問委員会等についての件でありますが、これは、今ただちに法律をもつてこれを規定するということについては種々問題もございましよう。将来とも研究いたして参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/7
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008・大野伴睦
○議長(大野伴睦君) 小川半次君。
〔小川半次君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/8
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009・小川半次
○小川半次君 私は、ただいま上程中の電気並びに石炭ストを規制せんとする本法案に関し、改進党を代表して、緒方副総理並びに関係閣僚諸君に以下質問を申し上げるものであります。
私は、まず、労働者の基本権に関する本法案のごときものが国会に上程されたことを、わが国の政治道徳のためにも、また労働運動のためにも、きわめて不幸な事態だと思うのであります。憲法第二十八条によつて、労働者の団結権及び団体交渉権その他の団体行動権は保障せられ、またこの団体行動権として、当然罷業や怠業を含む争議権が容認されているにもかかわらず、この法案によつて、特定産業における特定の罷業行為が禁止されるということは、憲法によつて保障された労働者の権利の一部が、新たなる実体法によつて制限ざれることを意味するものであつて、すでに今日までに、わが国は、罷業、怠業などに対して、国家公務員法、地方公務員法、公共企業体等労働関係法、労働関係調整法などの単行法によつてこれを制限し、あるいはその発生を延引させるなどの措置を講じているのでありますが、今回さらに特定産業の特定ストを禁止しようとするのであつて、こうした法律をつくることは、正直なところ、フエア・プレーではなく、ややもすれで権力をもつて経営者側に加担するかのごとき印象を与えるのであります。(拍手)
労働運動の自由は、日本の民主化にとつて最も大切なことであつて、法律によつてストを制限するようなことは、努めて避けなければならないことはもちろんであります。憲法第二十八条によつて労働者の基本的権利を保障したのも、この趣旨に基くものであります。しかしながら、この憲法の趣旨は、労働運動が革命の手段にさらされることを正当化するものでもなく、また争議権が他のすべてのものよりも優先的に尊重されることを保障するものでもないのであります。いかにその労働運動の自由が尊重されるべきであるといつても、それはあくまでも社会の民主的秩序の範囲にとどめるべきであり、それを破壊するような自由が認められるはずはないのであります。これと同様なことが争議権についても言えるのであつて、争議権の制限も、これを最小限度にとどめるべきであり、組合側も、争議権の行使については、自主的に公共の利益と調整をはかる良識があらねばならぬと思うのであります。争議権が法律的に保障されているからといつて、国民経済や社会生活に重大な脅威と損害を与えるような争議権の行使に際して、組合側がただ当面の争議戦術のみにとらわれて、公共の利益と調整をはかる反省がなかつたならば、そのような争議権の行使を制限し禁止せよとの声が国民の間に起るのも当然と言わねばならぬのであります。(拍手)
昨年来の総評指導のもとにおける電産、炭労等の争議行為が、ややもすれば政治的動機と目的を持つたものであると、国民からきびしい批判を受けたのでありますが、これは、吉田内閣のごとき反動的性格のもと、総理大臣みずからが労働者を目して不遇のやからと称したり、労働争議のごときは目下の国情においてはぜいたくな行動であると断定した、いわゆる労働者の基本的人権と労働運動の意義に対してそこばくの理解も同情も有しない政治に対して、これらの運動指導者が反発し、遂に政治的争議が激化され助長されたということもいなめない事実であつてその責任の大半は吉田内閣の労働政策の無為無策と反動性にあつたと言わねばならぬのであります。(拍手)
しかしながら、占領下七年、独立後一年未満の歳月を通算して、わが国労働運動の足跡を顧みますとき、遺憾ながら、共産党ないし極左的勢力の指導のもとにわが国の大争議は発生せしめられたのであつてそのほとんどが政治的目的ないし動機をもつて終始したと言えるのであります。いわく二・一ゼネスト、また昨年五月の、内乱に近いメーデー騒擾事件、さらに昨秋の電産、炭労スト等、この一貫せる流れは、これらの労働運動指導者が期待し熱望する政治権力をわが国に樹立し得る日までは、あらゆる労働争議の過程を通じて、法律を無視し、既存の社会秩序概念を蹂躪し、時の政権打倒のために、労働者を扇動し、動員し、利用せんとする一貫方針を捨てぬであろうことは、過去の実情から見て歴然たるものがあるのであります。(拍手)
最近、民主陣営の諸国において、争議行為の強制調停や禁止の法律が制定されつつあることは、いかなる根拠によるものであるかは別として、イタリア、フランス、西ドイツ、イギリス等、それぞれストに対する規制法がつくられ、イギリスのごときは、電源ストとともに、ガス、水道のストをも同じように禁止しておるのであります。また西ドイツにおいては、労働者はストができないことになつておるのでありまするが、そのかわりに、組合代表者が経営に参加できるということが規定されておるのであります。労使の関係に新しい道を開いたものであつて、注目すべき事例だと思うのであります。
本日政府が国会に提出した本法案、すなわち電気事業、石炭鉱業の争議行為を規制する法律案の内容は、電気事業においては、ストライキとして、いわゆる事務ストだけを認め、他の電源スト、停電ストまたは給電指令所の職場放棄等を禁止し、石炭鉱業については、昨年秋のストの際に問題となつた保安要員の引揚げをはつきり禁止するものでありますが、何といつても、昨年秋の炭労、電産ストは、全国民に直接間接、または多かれ少かれ損害を与えているだけに、国民の多数は、この種争議を規制する法律の立法化を期待していることがうかがわれるのであります。しかしながら、政府では、昨年ストによる世論や社会感情に便乗して、現行制度の欠陥をも検討せずして、きわめて非民主的な考え方で本法案を立案したものではないのか。たとえば、本法案においては、経営者側の責任は何ら明らかにされておらないのであります。かかることが、公共の福祉に名をかる資本家擁護の立法ではないかとの疑問が起るのであります。もちろん、これは、立案者が資本家擁護の吉田内閣であるがゆえに、特にそうした疑問が起るのであろうと思うのであります。(拍手)特に労働者の憂うる点は、この法律によつて罷業権を奪い、すなわち手足を縛つて、その弱体化をねらつて、さらに第二、第三の鎖で縛つて行くのではないかという不安であります。この法律ができたからといつて、政府や経営者は、これ以上いわゆる追討ちをかけてはならないように慎むべきであつて、労使関係の安定は、法律によつてストを制限するのみでは得られないということを、政府当局者は忘れてはならないのであります。
この法案は、公共の福祉と社会秩序の維持上必要と認めて立案されたことは、一応了承するものでありまするが、単にそれだけの趣旨では、治安立法か労働立法か不明であつて、公共の福祉を主目的とするなれば、これは治安立法でなければならないはずであります。また労働立法の精神からすれば、あくまでも労働者の基本権を尊重しなければならないはずであります。してみれば、二の法案は、労働立法よりも、むしろ治安立法的性格を持つておるものではないか。この点の解釈をもつと明確にすべきであると思うのであります。
次に、組合側について言及したいのであります。労働者の基本権といえども、国民の生きる基本権を阻害していいことはないはずであります。国民の支持を失つた労働争議は、民主社会においては何ら意味がないのであります。保安要員引揚げのとき、外国には禁止立法がないということを組合指導者は言つておるのでありますが、こうしたことは、外国人にとつては良識外のことであり、従つて法律で禁止するまでもないのであります。炭鉱の保安要員引揚げがいかに破壊的な行為を持つものであるかは、昨年ストの際、国民すべてが認識を新たにしたことであり、炭鉱労働者自身も十分わかつておるはずであります。しかし、一旦争議になると、昨年のように、行きがかり上、そこに突き進む危険性があるのであります。従つて、あらかじめ法律によつてはつきり禁止しておくことが、むしろ炭鉱労働者自身のためにも必要となるのではないかと思うのであります。また電気事業においても、給電指令所の職場放棄禁止なども、大体これと同様でありまして、給電指令所の機能をとどめることは、それ自体破壊的な性質を持つものであつて、それゆえに、今回政府の出した立法措置は、決して喜ばしいものではないが、一応首肯できるのであります。
次に、罷業権の濫用について、特に犬養法務大臣にお尋ねしたいのであります。自己の権利を主張する者は、相手の権利をも認めねばならないのであつて、権利の濫用については、憲法第十二条において規制し、また公共の福祉に反してならないことも、憲法第十三条によつて明白にされておるのであります。これらの規定は、ひとり労働者の権利に対する特定の制限規定ではなく、国民すべての権利に対する一般的な制限であるために、きわめて表現が抽象的であつて、権利の濫用程度や、公共の福祉に反する範囲が具体的に明示されていないために、裁判所においてさえ、しばしば不当と目されるほどの罷業梅過剰擁護の判例を残しておるのであつて、こうしたことが罷業権の濫用にさらに拍車をかけることになるのであります。
〔議長退席、副議長着席〕
この点、従来の罷業に関する裁判所の判例は、はたして正当であつたと認められるか、お伺いしたいのであります。
今回の法案は、罷業権の濫用と公共の福祉に反する範囲とを規制したものでありますが、法律がいかに明文化されても、その運用にあたつて、国民がこの法律を遵守するという経済生活の裏づけがなければならぬのであつて、ただ弾圧するだけが政治ではないことを政府の諸君はよく考えておくべきであると思います。(拍手)そこで、私は、この機会に、今後の労働政策上、二、三の点を質問し、その所信をただしておきたいのであります。
第一に、吉田内閣は、何ゆえに、労働者側の、たとえば総評において、ほうはいとして盛り上りつつある内部批判の機会をとらえて、これとじつくり話合いをしようとしないのであるか、また、民主的労働組合の発展方向を力強く支持する態度をとらないのであるか、さらに、国際労働機構を通じて、労働問題の国際的提携を促進強化する方向へ、助成と補導の手を伸ばさないのであるか。思うに、戦争によつて長い年月を世界の動きから中断されたわが国労働界は、世界の進歩的な労働界の動きから遠ざかり、焦燥的な孤立社会に落ち込んでおる傾向があるのであります。こうした環境から、広い視野と良識とをかち得るために、わが労働界を国際的提携への広野に誘導するように努力することが、政府としての当然の責務であります。この点、今後労働組合に対してとられる政府の所信を伺いたいのであります。
第二点は、公益事業と重要な基幹産業に対する労使関係を安定させ、かつ一般国民の立場を擁護するためには、これらの経営のあり方に対して再検討を加うべきではないかと思うのであります。これらの産業における労働者の行き過ぎ行動から来る国民の被害者的地位は、この法案によつて最小限度回復されるかもしれないけれども、渇水を理由とする電気企業家の一方的停電、また米価と比例しない高価な肥料を供給する肥料企業家の一方的建値、こういうものから国民はいまだ解放されるところがないのであります。さらには、国鉄値上げに便乗して、十円区間を一躍十五円に値上げする私鉄、私バス等の公益事業、これらに対して、国民は、その経営内容の妥当性、非妥当性にタッチする自由が全然ないのであります。これら産業における労働者の権利を制限しようとするならば、資本家の権利もまた国民一般の福祉のために貢献せらるべきは当然であります。従つて、公共事業、公益事業、さらには一部基幹産業に対して、消費者代表や民主的な労働組合代表を何らかの方法で経営に参画させ、経理の公開と運営の公共性を実現させるような方途を講ずることが、公共事業の民主的にしてかつ進歩的なあり方であると考えるのでありまするが、この点、いかなる考えを持つておられるか、小笠原大臣にお伺いしたいのであります。
第三点は、公共企業体における仲裁裁定の尊重ということであります。すなわち、国鉄、電信電話、専売等の職員の労働条件、具体的には、賃金については仲裁裁定の制度があるのでありまするが、この制度があるために、職員はストを禁止されているのであります。ところが、政府は、予算の制約を理由として、しばしば使用者をしてこの仲裁裁定を覆行せしめないのであつて、争議権を奪われているこの種労働者は、決定的な対抗手段をとることができないという状態であります。労働関係を安定させるモデルとも言うべきこの公共企業体の仲裁裁定制度を尊重しない政府の態度は、民間企業に対して中労委の調停を尊重するなというモデルを示しているようなものであります。政府は、この公共企業体の仲裁裁定を今後も無視し続ける考えであるか。もし尊重するとするならば、いかなる法的措置を講ぜられるつもりであるか、政府の所見を伺つておきたいのであります。
第四点として、現在の段階におきまするわが国の国民経済の実力と、社会秩序の一環としての労働運動なり労使関係のあり方なりを、独立国家の立場から根本的に再検討して、占領下につくられたいろいろな労働法規を国情に合うように科学的に改善し、できるならば、社会公益の基礎に立つ労働政策の樹立のために、労使当事者、消費者、公益の各代表や学識経験者を網羅した労働関係審議会とも言うべき機関を設置する考えはないかどうか。
以上の諸点について、吉田総理の代理として緒方副総理並びに関係閣僚諸君の所信を伺いたいのであります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/9
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010・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) 小川君の質問にお答えを申し上げます。
質問を伺つておりますと、大体においてこの提案に御賛成くださつておるように見えるのでありますが、(拍手)一応御質問の要点につきましてお答えを申し上げたいと存じます。
今回の法案が労働者の基本権を無視しておるのではないかという御質問でありますが、本法案は、電気、石炭の特殊性、重要性にかんがみまして、かつまた昨年の苦い経験よりして、争議権と公益の調和をはかるため、必要最小限度において争議行為の方法の一部を規制するものであります。従いまして、争議権を不当に抑圧するものでは絶対にない。かつ、労働者には、他に労使対等の立場を維持するための有効な手段が残されておじますから、本案をもつて労働者の基本権を無視または軽視するものということは、毛頭考えられないのであります。
次に、この法案は、一方的な、非民主的な方法であるという御質問でありますが、本法案は、経営者及び労働者の双方につきまして、本来正当でない争議行為、ないしは昨年の経験にかんがみ、社会通念上非とされるごとき争議行為はなし得ないものであるということを、明文をもつて規定いたしたものでありまして、決して労働者を不当に一方的に抑圧するものではないのであります。
次にまた、公共の福祉を擁護するために名をかりて労働者を弾圧するという御非難でありますが、争議権といえども、公共の福祉に反してこれを用いてはならないことは、憲法に明らかに定めてあるところであります。本法案は、本来不当、違法とされております争議行為、ないしは昨冬の苦い経験にもかんがみまして社会通念上非とされるごとき争議行為につきましても、この際これを明確にし、これらの争議行為をなし得ないものであることを明文をもつて定めたのでありまして、決して労働者を弾圧するものではありません。
次に、本案の性質は、治安立法であるか、はたまた労働立法であるかという御質問であります。本法案は、この法案をごらんになつて明瞭でありますごとく、争議行為として正当性を逸脱するものを明らかにしたものでありまして、決していわゆる治安立法ではないと心得ております。
次に、労働組合の健全な発達をはかるために、労働者、経営者、消費者あるいは学識経験者等の代表者で審議会とでもいうようなものをつくつたらどうかという御意見でありましたが、労働組合の健全なあり方につきましては、御説のように、労働者、経営者、消費者あるいは学識経験者等をもつて研究するということについては、まことにけつこうであると考えますが、なお慎重に研究いたしたいと存じております。(拍手)
〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/10
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011・戸塚九一郎
○国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申し上げます。
この法律によつて罷業権を奪つて、さらに第二、第三の鎖で縛つて行くのではないかという御趣旨でありました。この法律案が不当に労働者の権利を抑圧するものではないことは、すでに申し上げた通りであります。本法律案は、特に昨年のストライキの経験にかんがみまして、当面火急に必要とされるものに限つてこれを規制して行くのでありまして、その他の産業については、御説にもございましたことく、労使当事者のおのおのの良識に期待いたしまして、さらにこれを規制するがごときことの発生せざらんことを期待いたしております。
総評の動き等について、じつくりと話合えというお話でございます。従来の労働運動のあり方については、いろいろ批判の余地もあつたとは思いますが、労働運動の健全な成長は、なかなか一朝一夕になるものではないことはもちろんでございます。いろいろな経験を経て次第に成長して行くもので、長い目でこれを見て行く必要があると存ずるのでありまして、これは御説の通りでございます。政府としては、労働組合の内部事情について、かれこれ口出しをすることは避けたいと考えております。労働組合の諸君とじつくり話合つて意思の疏通をはかり、その民主的な成長に資することは、今後とも機会あるごとに行つて行きたいと考えております。
なほ、国際労働機関との協力につきましては、政府としては従来とも努力をいたして参つたところでありまするが、また今国会において、労働者の基本権擁護を目的といたします団結椎及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約外二件の御承認をお願いいたしておりますことも、この意図にほかならないのであります。
公労法に基く仲裁裁定の件で、とかく従来無視するという御説でありましたが、政府といたしましては、公労法に基く仲裁委員会の裁定は、従来とも極力これを尊重いたして参つているのでございまして、今後ともその方針にかわりはありません。ただ、公労法を改正するかどうかという点につきましては、公労法を改正しなければ尊重できないという性質のものではないと思います。しかしながら、なおこの点につきましては十分研究をいたして参りたいと考えておるのでございます。(拍手)
〔国務大臣犬養健君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/11
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012・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 小川君にお答えを申し上げます。お話の通り、憲法二十八条においては、労働者の団結の権利が保障されております。しかし、この権利は、同じ憲法の第十二条、第十三条において一定の制約を受けているのでございます。すなわち、憲法に保障された国民の自由と権利とは、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うとしるされておりまして、あるいは公共の福祉に反せざる限りというふうにしるされてあるのでございまして、この意味におきまして、労働者の権利と自由も、一定の道徳目的のために制約を受けていると考えているのでございます。もちろん、裁判所も検察官も、この二つの重大な点のいずれにも価値判断を片寄らせてはならないのでございまして、要は、個々の場合における労働争議の違法行為かいなかに関する法律解釈の問題になるかと存じます。そこで、先ほど御指摘になりましたように、従来、下級裁判の判決におきまして、裁判所と検察官との法律上の見解が異なるような二、三の判決があつたことは、小川君の御指摘の通りでございますが、これらの事案を一つ一つ今しさいに検討してみますると、必ずしも裁判所が行き過ぎの争議行為を囲めたとは考えられませんので、ことさらに組合側にのみ有利な判決が多いというふうには私どもは考えておらないのであります。繰返して申し上げますが、これは個々の場合の争議行為の違法かいなかの法律解釈の問題であるように思つております。(拍手)
〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/12
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013・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) お答え申し上げます。
西ドイツのような経営協議会を設けたらどうかというような御意見をお示しのようでございましたが、この制度を設けることによりまして、労使双方の理解が生れまして、争議の防止及び解決に役立つなら、たいへん望ましいことであると存じまするので、至急検計いたしてみます。
それから、公益企業及び基幹産業等に対しまして、政府部内に消費者代表とか労働者代表の参加した審議会をつくつてはどうかとの御意見に対しましては、私ども、まことに御同感に存ずるのでございます。但し、電気及びガス関係法令改正審議会というのが現在開かれておりまするので、この電気及びガス関係法令改正審議会にもよく諮りました上で善処いたしたいと存じます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/13
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014・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 矢尾喜三郎君。
〔矢尾喜三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/14
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015・矢尾喜三郎
○矢尾喜三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、公共事業に対するスト禁止法案、すなわち電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案に対しまして、若干質問を行わんとするものであります。
敗戦以来、各方面において民主化が叫ばれ、着々その成果を上げつつあるとき、ひとり吉田内閣はその逆コースをたどりつつあることは、すでに世評が示すところであります。今回提案されましたるこの法案も、その一つの現われであります。常に起りつつある労働争議ないしストに対し、おのおのの立場においていろいろ批判されるでしよう。しかし、労働争議の起る原因を理解しようとせず、不逞のやからの行動と簡単に片づけ、その結果、一方的に押えつければ片づいてしまうと考えられるところに、かかる暴案が提出されたものであると私は思うのであります。(拍手)その見地に立ちまして、私は内閣総理大臣にお尋ねをいたしたいのでございまするけれども、お見えになりませんから、緒方副総理にお尋ねをいたしたいと思うのであります。
憲法第十八条には、奴隷的拘束労働を禁じ、さらに二十八条には、労働者の団体行動権ないし争議権を明確に保障しているのであります。今回政府の提案せるスト制限法は、労働者の基本権を剥奪し、資本家擁護のための立法で、まさに民主主義の逆コースを行くものであると思うのでありまするが、いかなる見解を持つておられるか。今、緒方官房長官は、決して憲法に違反するものではない、いわゆる労働者は資本家と対等の立場に立つて、労使対等の原則が打立てられておるから、これによつて擁護されておるように答弁されたのであります。しかし、私が第二にお尋ねしたいことは、労働法第一条にうたわれております労使対等の原理は、この法案により、まつこうから切りくだされようとしておるのであります。(拍手)労働者は裸にされて、とらの前に突き出されようとしておるのであります。現在の日本の社会情勢は、いまだ封建的色彩が強く、ストライキ即犯罪と考えられる傾向がぬぐい去られない状況であります。かかる際に、労働者の争議権を取上げることは、歴史的強圧法といわざるを得ないと同時に、電気の正常な供給を停止することか、重大な損壊とか、その他不当な行為をしてはならないというようなことは、いかようにも拡大解釈をすることができるのでございます。このことは、無制限なる干渉、強圧の理由となると思うのでありますが、官房長官はいかなる見解を持つておるのか、お聞きしたいのでございます。(拍手)
続いて、関係閣僚にお尋ねいたします。この法案提案の根拠は、御説明にもあります通り、昨年末起つた炭労、電産ストに基因して出されたものと思うのでありまするが、このストに対しても、各方面よりいろいろ批判されております。政府は、あの争議がなぜ起つたか、また、あのように長期化したことについていかなる見解を持つておるか、この際はつきり御答弁を願いたいのでございます。(拍手)炭労、電産ストに限らず、すべての労働争議の起る原因はいずこにあるか。要は、その産業の経営が健全かつ公正に運営されておるかどうかによるものでありまして、この見地に立つて、まず第一にお尋ねいたしたいのは、昨年の電産ストにこれを見まするに、今日までの電気事業そのものがはたして健全かつ公正に運営されて来たかどうかということであります。政府は、この目的を果すために、昭和二十五年十一月二十四日、政令三百四十三号をもつて公共事業令を制定されたのであります。その事業会は、九十五条の長きにわたる条文のもとに、至れり尽せりの、健全かつ公正に事業者、使用者、消費者の利益並びに公共の福祉をはかることを目的に制定されたにもかかわらず、あのような争議が起つたことは、その運営の拙劣さにあつたものであり、逆にその運営よろしきを得ていたならば、政府の言う消費者、いな、国民大衆に何ら迷惑を与えていなかつたものである。もしありとするならば、あの争議が公共の福祉を阻害した責任の大半は資本家並びに政府みずからが負わねばならぬにもかかわらず、そのすべての責任を労働者に負わしめ、基本的人権を無視する法案を提案するがごときことはもつてのほかで、政府はこれに対していかなる見解を持つてかかる法案を提案したのか、また公共事業令を完全に運営したか、どう思うかということを、はつきりと御答弁願いたいのであります。(拍手)
第二にお尋ねいたしたいことは、停電、休電により国民大衆に不安と迷惑を与え、時間的な犠牲と損失を与えることは、これを否定するものではありません。それは国民大衆の中からわき上る声であります。しかし、この国民の批判の声に便乗するものこそ電産資本家であり、吉田内閣であると断言することができるのであります。(拍手)昨年末の電産ストによりしばしば停電されたことは、これを認めるものでありますが、その停電たるや、ひとり争議による結果のみではなく、その大半は、いまなおしばしば行われつつある渇水を理由とする電力不足による停電、休電であります。この渇水を理由とする停電、休電たるや、やむを得ないものかどうか。これは火力発電や早急なる電源開発等により防止することができるのであります。しかるにかかわらず、それに対する処置は何ら講ずることなく、事業者の一方的な停電、休電により消費者に迷惑を与え、公共の福祉に反することを政府は何と見るか、この資本家側の長年にわたる無能、サボタージユに対し、いかなる処置を講ずるつもりか。この法案が一方的暴圧法案と言われる原因もここにあるのであります。(拍手)昨年の電産スト中においても、資本家の怠慢による停電、休電がしばしば行われ、現在そのすべてを労働者の責任に帰せしめられているが、政府は、昨年末の電産スト期間中における停電、休電の中に、事業者側の都合によるところの停電、休電が相当含まれているという事実、また、あのスト中に行われた停電の原因たる電源ストは全電源の二〇%にすぎないが、放電権のすべてを持つ資本家が、このストによる二〇%の電力不足をすべて消費者並びに中小工業者の犠牲に負わしめた事実は、政府発表の統計により、大口消費者の被害は僅少で、その被害の大部分を中小企業者並びに消費者に負わしめたこの事実に対して、政府はいかなる見解を持つているか、お伺いしたいのであります。(拍手)
次に、炭鉱労働者に対しても同様の法をもつてこれを暴圧せんとしておるが、昨年末の炭労ストを見るとき、その原因たるや、資本家側にあるか、労働者側にあるかは明白で、当時炭鉱に山と積まれた貯炭の山をながめ、炭価の下落を恐れた炭鉱資本家が、賃金の切下げ、労働強化の無謀をあえていたさんとしたところに大きな原因があるのであります。(拍手)これに対抗するためにとつた労働者の対策が遂にあの争議となつてしまつたのであつて、労働者がいかに合法的にやろうとしても、さきに述べた原因に基く資本家の陰謀は、遂に争議を悪化せしめたのであります。炭鉱労働者が山を愛する気持は、とうてい資本家などの及びもつかないものでありまして、炭坑を廃墟と化して何のおのれの生活があるかとの気持は、だれにも劣らない、山に愛着を持つておるものであります。資本家のごとく、炭坑を捨てても、他に求める道の幾らもある階級とは全然異なつておるのであります。(拍手)かかる愛着を持つて仕事に従つておる炭鉱労働者を、あれほどまでに追い込んだ責任は、資本家みずからがその大半を負わなければならないと思うが、その責任を労働者に負わさんとする理由はどこにあるか、政府の見解を問いたい。かかる無謀きわまれる法案をもつてせずとも、鉱山保安法によつてすでに完全に取締ることができるのである。政府は、昨年十二月十五日のあの炭労、電産ストライキに対して声明書を発表した。その声明書の一節にいわく、国家の重要資源たる炭坑を破壊するがごとき行為は、労調法第三十六条の争議行為の禁止事項であつて、違法なることを明らかにしておるのでございます。しかるに、今日になつて、かかる法案を新たに提案することは、屋上屋を重ねることになるが、政府はいかなる見解を持つておるか。また、昨年末の政府声明の、労調法第三十六条とこの法案の差異をいずれに置いておるかということを、はつきり御答弁願いたいと思うのであります。(拍手)
さらに、かつて全労働者の反対を押し切つて労働法を改悪してつくり上げた緊急調整の発動により、政府は今提案されている法案の中身のすべてを完全に解決し得る厖大なる権限を有しながら、これを一回発動したのみで、かかる法案をさらに提案することは、政府みずからの無能ぶりを天下に示す以外の何ものでもないと思うが、政府の見解はどうであるか。
次に、すべての労働争議の解決は、円満なる労使双方の協力によつて解決することが望ましいことであるが、対立せる労使双方は、いずれも交渉の過程において、拒否権の発動などによつて遂に悪化へとたどるものであるが、この瞭一方的な解決ないし方針をとるがごときことは、断じて許すことではありません。むしろ産業民主主義の立場においてこれを考えるならば、争議を防止することに重点が置かれなければならない。しかるにもかかわらず、かかる法案を提案し、一方的暴圧をはかるより、この際あらためて、さきにも小川君が質問申し上げましたが、労使双方はもとより、消費者の代表を加えて、経営協議会ないしこれに類する方策を打立て、円満なる事業の遂行をはかるという意思はないか。政府みずからが先頭に立つて事を未然に防ぐという誠意あらば、かかる法案は単なる枝葉末節にすぎないと思うのでありまするが、政府はいかなる見解を持つておられるか。
また、かかる基本的人権を無視するがごとき法案を提出するためには——さきに緒方官房長官は、今回提案したところのこの法案は、治安立法ではなく労働立法であるということをはつきり答弁されたのであります。しからば、かつて政府がつくり上げましたる労働法制審議委員会は、いかなる目的のために設立されたのでございましようか。いわゆる完全なる労働立法をなすために労働法制審議委員会がつくられておりながら、一回もその議に付さずして、形式的に二回、三回の公聴会を開催したのみでこの法案を出されたというところの意味を、私は疑うのであります。(拍手)なぜこの法制審議委員会を無視したか、この点につきまして、政府の明確な御答弁を願いたいと思うのでございます。
最後に、政府は、この規制法案のみならず、あらゆる法規の改悪にあたつて、公共の福祉のためといい、日本産業の発展のためといいながら、日本民主化の美名のもとに、民主主義諸法規の立法を打破り、逆コースを歩まんとしておることは、私があらためて申し上げるまでもなく、このスト規制法案もまた、公共事業のゆえをもつて争議権を剥奪せんとしておるのであります。しかし、公共の福祉と労働基本権とは決して背反するものではありません。争議権行使の理念もまた公共の福祉のためにやつているのであります。公共の福祉を越える場合には、労働争議に関しましては、前に述べましたように、緊急調整制度を設けて置きながら、特別に立法をする必要はないのであります。(拍手)まさに主客転倒と言うべきであります。
また、労働組合のストに対して、政府は今日まであまりにも傍観し過ぎ、解決に対する態度を怠つたことは、いなむことのできない事実であります。その結果は、このストに対し、中小企業者並びに一般の大衆の憤激反感を買つた事実は、私は見のがすことはできないと思うのであります。しかし、政府は、みずからの怠慢をたな上げにし、ストの責任を労働者に負わせ、中小企業者の反感を労働組合に振り向けている事実は、防衛組織を持たない中小企業の被害を前に、政府はストの解決を怠つたものであると思うのであります。これは政府の労働政策貧困の責任であります。
今スト規制法案を提案すべき理由は全然なく、この法案を撤回することをわれわれは要望するとともに、またその内容は、きわめて反動的であつて、この法案こそは、労働者の手を切り、足を切り、そして遂には心臓を射とめることによつて、吉田政府が現に行つている、なしくずしの再軍備のごとく、労働基本権をやがて剥奪する陰謀であつて、労働運動の健全なる発展は法律によつて規制すべきものではなく、労働者の自主的な反省にまつべきものであると思うのでございまするが、この点に対して政府はいかなる見解を持つておるかということをお尋ねいたしまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/15
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016・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをいたします。
政府は公共事業令の運用がまずいから、あのような争議を起したのではないかという御質問でありますが、本法案は、昨年のストの経験にかんがみまして、争議行為が国民経済、国民生活の上にいかに脅威と損害を多く与えるかということを考慮いたし、その脅威と損害を最小限にし、もつて公共の福祉を擁護するために、争議行為の方法につき当面必要な措置を規定するのが目的であります。従いまして、公共事業令の運用と本法案とはまつたく別個のものでありまして、本法案によつて労働者の基本権を抑圧するという意思は毛頭ございません。むしろ争議権と公益との調和をもたらすものであると考えてこの提案をいたしたような次第であります。
次に、労働争議の解決には、労使双方の協力によつて円満なる方法を考うべきではないかという御意見であります。労働争議は、労使の自主的な努力によつて解決をはかることがもとより最も望ましいことは、御説の通りであります。本法案は、当面必要最小限度の事項を規定したものでありますが、さらに労使当事者におきまして、労働協約その他によつて労使の協力態勢を樹立することは、もしできれば、きわめてけつこうなことであると考えておるのであります。
なお、法律をもつて経営協議会等を一律に調整することは、各企業、産業の特殊性もあることでありますし、日本の現在の実情よりいたしまして、軽軽には行えないと思いますが、それにつきましては慎重に研究をいたしたいと考えております。
〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/16
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017・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) お答え申し上げます。
お尋ねのうちに、この前の電産ストあるいは炭労スト等の二とについてお話がありましたが、電産ストの影響について見ますと、大口工場が最も多いのでありまして、中小企業その他は、金額その他から申しますれば、それほどではございません。しかしながら、その中小企業その他に及ぼした、個人的、またあるいは事業そのものから見ました影響は、最も大きかつたと存じます。なお時間数を、もし御参考に必要でありますならば申し上げますが、最も多い大口工場で三百二十五時間、中小企業で最も多いのは、北陸電力のごとく全然やつていないところもありますが、九時間というのがございまして、時間数ではたいへん差がございます。この点を御了承願つておきます。
それから石炭の問題につきまして、どうも炭労ストは貯炭があつたから、あるいは経営者側の方で炭価の下落を防ぐというつもりではなかつたかというお話がございましたが、貯炭があつたことは事実でございますけれども、実は炭価の下落を防ぐという意味から出たものではなかつたのであります。当時は賃金問題が中心となつて、まとまらずに、あの通り延びたのでありまして、政府といたしましては、衷心から一日も早く解決をこいねがつておつたことは、当時よく御了承願つたことと存ずるのでございます。
さらに渇水の問題についてのお話がございましたが、実は渇水につきましては、各電力会社におきまして、私どもは現在何も経営者側がサボタージユしているとは思いません。のみならず、省電力会社では火力発電を極度に運転しておるような実情等もございます。また電源開発も今強力に進めておるような事情もございますから、私どもは、なうも渇水は事情やむを得ぬと思つておるのでありますが、なおしかし、政府側におきましては、これを督励することにいたします。
さらに炭労争議における保安要員引揚げについて、今のお話では、鉱山保安法によつても今度提案されたスト禁止法は目的を達するのではないか、こういうお話がございましたが、炭労争議におきまする保安要員の引揚げは、人命に危害を及ぼし、資源及び施設を損壊し、労働者自身の職場復帰を不可能ならしむるものでもございますし、正当争議権の範囲を逸脱しておる違法行為でありますことは、当時政府がしばしば声明してこれを明らかにしたのでございます。今後におきましても、この点については解釈上誤解があつたり疑問があつてはいけない、解釈上疑問等の余地を残さぬように本法案が出された次第でございますので、さよう御了承をお願いいたします。
〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/17
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018・戸塚九一郎
○国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申し上げます。
緊急調整制度をただ一回発動しただけで、さらにこの法案を出したのはどうかということでございました。先ほどもちよつと申し上げたと思いますが、緊急調整制度は昨年一回発動しただけでありまして、今後はこれをそうたびたび活動することのないことを期期いたしておるわけであります。ただ、本法案の内容は、緊急調整は、本来通常の争儀だつたのが、その影響があまりに深刻重大になつたような場合に、これを一時停止して、争議の早急な解決をはかる趣旨であるのと異なりまして、本来争議行為として正当性の範囲を逸脱するものの範囲を明らかにせんとするものであります。これは、先ほども申し上げましたように、両々相まつて公共の福祉を擁護せんとするものであります。かくのごとき立法の必要になりましたことは、たびたび申しました通り、昨年の経験によつて明らかにせられたのであります。政府としては決して好むところではありませんが、まことにやむを得ないものと存ずるのであります。
なお、かかる重要法案を提出する場合には労働法規審議委員会の議に付してやるべきが正当である、かようなお説でございましたが、本法案は、もつぱら公共の福祉擁護の立場から争議権と公益の調和をはかるものでありまして、その内容も、ごらんいただけばわかります通り、きわめて簡明直截なものであります。従つて、労使関係の調整方法のごとく、当事者間の利害の調整をはかるものと異なりまして、労使、中立、三者構成の審議会の議に付するというようなことは必要はないと考えたのであります。よつて、政府といたしましては、公聴会を開催いたして労使のほか学識経験者及び消費者の意見を十分に伺いまして、世論に立脚してこの法案を立案したのでございます。
なお逆コース云々のお話がありましたが、たびたび申し上げます通り、不当に労働者を抑圧するものではなく、本法案は公益と争議権の調和をはかるものであります。昨年の経験にかんがみて、一般公衆、国民全般の福祉を擁護するために必要な措置をとらんとするのが本法案の趣旨であると御了解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/18
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019・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 多賀谷真稔君。
〔多賀谷真稔君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/19
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020・多賀谷真稔
○多賀谷真稔君 私は、電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案に対し、日本社会党を代表して質問するものであります。
第一に、政府は、本法案は昨年の炭労、電産の争議行為の実情にかんがみ提出したといわれるが、しからば昨年の炭労、電産の争議をいかに認識しておられるか、もう一度お尋ねいたしたいのであります。(拍手)この争議が長期化しました根本の原因は、経営者が、この争議をもつて講和後の日本の労使関係を一挙に規制しようとしたところにあるのであります。換言すれば、組合を御用化し、占領によつて失つたる労働者に対する一方的、専制的支配権を回復しようと企図しました日本経営者連盟が、総評の二大支柱である炭労、電産の組織を崩壊せしめようとしたところにあると思うのであります。(拍手)
電産について言えば、従来の統一交渉、統一賃金の方式を避け、交渉単位を九つに分断して企業別交渉を行い、電産争議を徹底的に敗北に陥れんとしたのであります。さらに、終戦後闘いとりました週三十八時間制の既得権を一挙に剥奪せんとしたのであります。また一方、経営者は、停電ストに対し国民の憤懣を労働者に向け、争議を有利に導かんとしたことは、前議員の指摘された通りであります。いな、むしろ経営者の真のねらいは、停電ストを誘発せしめ、一般家庭、中小企業の反感をあおり、停電ストに対する反対の輿論を形成し、停電スト禁止法を制定せしめ、争議権を徹底的に剥奪せんとするにあつたと考えざるを得ないのであります。(拍手)
炭労の場合についても同様でありまして、政府は保安要員引揚げという戦術だけを抽出して非難しておりますけれども、それだけでは論ずることはできないのであります。争議戦術の強弱は、生活の不安の度合いの強弱に正比例し、経営者の理解の程度にかかつておるものであります。賃金値下げ案を提示したまま、四十数日間全然交渉を放置し、組織の切りくずしに狂奔して交渉を顧みず、しかも四十数日目に再開されました交渉ですら、依然として賃下げ案を提示するごとき、冷酷無比な経営者の戦術に対処するために、やむを得ざる戦術であつたことを考究しなければならないと思います。(拍手)経理上ペース・アップが不可能というならばとにかく、三割から四割の配当を出し、株価は四百円を筆頭に百五十円程度であり、重役賞与は大手の最少クラスでさえ半期四百万円を組み、決算期には数億円の社内留保金を残しておつた状態において、ベース・アップができないことは断じてなかつたのであります。(拍手)中労委の中山会長ですら、最後案でも炭価の引上げは必要でないといわれたではありませんか。公務員を初め、他産業において二割ないし三割程度のベース・アップが行われておる現状において、地下数千尺の地底に、炭塵と騒音の中に生命の危険をさらして働く労働者に全然ベース・アップをしないという経営者の態度こそ非難されるべきであると思うのであります。
当初、中央労働委員会の介入は、ベース・アップ必至と見て、その介入すら排除し、緊急調整を忌避したのは、むしろ経営者であつたという事実をわれわれは指摘することができるのであります。政府は、自主的解決を要望するということを口実に争議を傍観し、無為無策、いな、消極的援助を経営者に与えたのであります。政府は、貯炭は十分あり、需給状態は逼迫しない、もし逼迫すれば輸入炭によつてまかなうであろうと豪語し、暗に組合のストは効果がないことく示唆し、その言葉の下から汽車が制限せられ、ガスが規制された事実があつたのであります。
さらに、私は、緊急調整制度そのものが事態を長引かせた要因をなしたと思うのであります。緊急調整制度は、経営者の資産及び経理の内容を検討し、ある程度の賃金改訂をしなければならないというので、経営者は常に全面的に喜ぶとは限らないのでありますが、緊急調整は、これが現実に発動する場合よりは、それがいつでも発動し得る状態において存在しておるということだけで、決定的に経営者に有利に作用するのであります。緊急調整制度は、経営者が争議をやめてもらいたい時期に政府が禁止する制度なのであります。この安堵感を経営者に与えたものが長期化の要因をなしておることを知らなければなりません。
これを要するに、この争議の長期化したゆえんは、経営者の強硬な無理解な態度と、政府の労働政策の欠除と、さらに緊急調整制度の存在にあつたと思うのでありますが、政府は本争議をいかに認識しておられるか、お尋ねいたしたいのであります。(拍手)本来、争議の責任は、労働者、経営者のほかに、政府にもあるといわれておるのであります。本法案は争議の責任を労働者のみに追究しておるが、経営者にはいかなる責任を追究されようとしておるのか、また政府自身ばいかなる責任をとろうとしておられるのか、その具体的内容を示していただきたいのであります。(拍手)これに対する政府の明快なる、責任ある答弁をお願いいたします。
第二に、本法案提出の手続についてお伺いいたします。政府は、公聴会を開いて十分意見を取入れているといわれますが、公聴会は従来労使各五名、公益五名というのが慣例であつて、このたびは直接利害関係を持つ消費者を加えて、第三者として十名を選んだというのは、いかなる理由に基くものであるか、お尋ねいたしたい。さらに、ふしぎなことには、労働法が改訂されるにもかかわらず、東京の公聴会において、東京都下の労働法担当の大学教授が一人も選ばれていないことは、一体どういう理由なのであるか。労働法学者は全部反対で、賛成の労働法学者を探すことが困難であつたためであるかどうか、お伺いいたしたいのであります。学者として、わずか一人、緊急調整制度の設定のときに賛成した経済教授を選んでいたにすぎなかつたのでありますが、その教授でさえ、皮肉にも政府の意図に反して、法案に反対された事実があるのであります。政府は、民主主義が十分に浸透せず、争議の十分な理解がなされていない今日において、消費者を多数選び、公益の公述人は自己に有利な者のみを選択し、本法案の賛成者を動員して、公聴会をして、あたかも本法案制定期成会にせんとする意図があつたものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)かかる一方的公聴会は、公聴会の精神を忘却し、国会を欺瞞する政府の野望と断ぜざるを得ないのであります。しかも、政府が公聴会の意見を十分考慮して、第三条の、その他の不当な行為を削除したというにおいては、まつたく噴飯ものであります。いやしくも基本的人権を制限する場合に、その他不当な行為というがごとき包括的な規定を入れるべきでないことは、法を学ぶ者の常識であります。この規定は、最初から削除することを予定し、譲歩したかの感を与える口実のために設けられていたものと断定せぜるを得ないのであります。この点に対する政府の答弁をお願いいたします。
第三に、本法案の内容についてお尋ねいたしたいのであります。まず第一点として、本法案は争議行為の方法の規制であるとしておるけれども、明らかに争議権そのものの制限であり、並びに剥奪であり、憲法違反の立法であると考えるのであります。(拍手)停電スト、電源ストを禁止された場合、電気産業の労働組合はまつたく争議権を剥奪されたも同様であります。さきに法務大臣が妥当な判決であると答弁されましたその判決要旨は、停電ストは比較的安全にして効果的な方法であり、電気事業の性質上機宜に適した処置であると述べておるのであります。(拍手)石炭産業におきましても、平常時の状態を規定した鉱山保安法所定の行為を要求することは、争議行為を著しく困難にするものであります。ことに、本法案によつて、電気技術労働者は完全に争議権を喪失するのであります。単なる方法の規制ではありません。もし電気産業において事務と技術の労働者が別々の組合をつくつた場合はどうなりますか。技術の労働者の組合は全然争議権がないことになるではありませんか。(拍手)何ら生活に対する保障の道を講ぜずして、完全に争議権を剥奪することは、明らかに憲法二十八条違反の違憲立法であり、電源、停電ストを全然一方的に禁止するごとき単行法は、世界にその類を見ないのであります。(拍手)これらの点に対する労働大臣、法務大臣の答弁をお願いいたします。
第二点、昨年われわれ及び労働者の反対の中に制定されました緊急調整制度があるにもかかわらず、屋上屋を架す立法を制定するのはいかなる理由によるものであるか、お尋ねいたしたい。前述したこと更改衆急調整制度は、経営者にも不利な点があるとお考えになり、経営者を全然不利に陥れることのないよう争議権そのものの制限を意図されることは、まつたく一方的なものであり、労使対等の精神に反するといわざるを得ないのであります。
第三点、憲法二十八条の労働者の権利の規定は、憲法二十九条の財産権の規定を同等またはそれ以上に位するものであります。しかるに、本法案は、炭鉱保安の場合において、私的財産権を擁護するため争議権を制限したものであり、争議権を財産権の下に隷属せしめるものであり、憲法並びに争議権の原理の重大なる変革といわざるを得ないのであります。(拍手)
そもそも労働者の権利は、その一つ一つが、あるいは争議の民事責任の免責がタツフ・ヴエール事件を通じ、あるいは労働組合の政治資金融金の自由がオスボーン事件を通じて、先進欧米諸国の労働者の血と汗によつてからとられたものであり、日本の労働組合法、労働関係調整法、労働基準法の一条一条が、まさにその闘争の歴史の記録の集積なのであります。もし、政府が、公共の福祉という言葉を権力行使を合理化するために使うならば、日本の労働法は再びドイツ・ナチスの国民労働秩序法に化すでありましよう。公益優先を唱えるならば、イタリア・フアツシヨの労働憲章になることは必至であります。(拍手)本法案は、世界の労働法の生成発展の歴史に一大汚点を残すものといわざるを得ないのであります。(拍手)これらの点に対する政府の答弁をお願いいたします。
第四点、政府は本法案には刑罰は規定しないとしておりますけれども、本法違反の争議に対して、経営者は当然就業規則違反として解雇することは明らかであります。それに便乗して、大量に労働運動者を解雇するでありましよう。第二のレッド・パージを惹起するでありましよう。さらに、電気及びガス臨時措置法、鉱山保安法あるいは刑事法に該当するときは、それぞれ処罰されるでありましよう。われわれは、十二月十七日の前夜、各炭鉱において武装警官の動員集合した経験を持つているのであります。この法案は、今後争議行為に対する検察庁あるいは警察の官憲の介入を助長さすものであると考えるのであります。これは組合の自主性の確立に対する最大なる侵害であると考えるのでありますが、この点に対する労働大臣、法務大臣の答弁をお願いいたします。その点、なお重要なることは、本法案に罰則規定がないため、逆に刑事法が直接適用され、個人罰を科せられるということであります。いやしくも争議は団体の意思によつて決定され、行動されるのに、団体罰を科さずして、単なる幹部だけでなく、行為者たる一般組合員も含めて個人罰が科されることは、団体行動権による行為の処罰として不当なるものであり、団体法理論の原理に反するものであります。(拍手)これに対する労働大臣の答弁をお願いいたします。
第五点、本法案が電気事業、石炭鉱業のみを対象とした単行法である点についてお伺いいたしたいのであります。ワイマール憲法が、その第百五十七条において「国は統一労働法を定む」とうたつて以来、世界の労働法は統一労働法の方向に進んでいるのであります。しかるに、わが国においては、労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、職業安定法等にわかれており、しかも政府は逐次国家公務員法、公共企業体等労働関係法、地方公務員法、地方公営企業労働関係法等の単行法を制定し、国鉄、全逓等の官公労を労働戦線の第一線から離脱せしめることに成功して来たのであります。本法案は、現行法上当然労働関係調整法の改正として行われるべきものであり、その点、法体系を乱すものであると考えるのであります。(拍手)この点に対する政府の答弁をお願いいたします。
次に、本法案は電気事業、石炭鉱業のみを対象としているのでありますが、労調法第八条は公衆事業の種類を列挙しており、運輸、水道、ガス、医療等の事業があげられているのであります。同じ日常生活に影響のある公益事業の中で、電気のみを規定しているのは、いかなる意図によるものであるか。また鉱山保安法はメタル・マインにも適用があるのに、石炭のみを対象とし、また人に対する危害、重要なる施設の荒廃を来すおそれのある企業は、鉄鋼を初め多くの産業にもあるにかかわらず、石炭鉱業のみを対象としているのは、いかなる理由によるものであるか、御説明願いたいのであります。
われわれは、これは政府が今次の炭労、電産の争議の報復手段として行つたものであり、しかも単行法をもつて法案反対闘争を孤立化し、本法案の制定によつて、総評の二大支柱である電産、炭労の民間産業の労働組合を弾圧し、日本の労働運動を壊滅せんとする政府の意図を十分推察することができるのであります。私は、かかる特定な団体に対して、それを弾圧するために立法化することは、憲法第十四条の精神に違反し、国家の労働組合に対する不当労働行為と断ぜざるを得ないのであります。この点に対する政府の答弁をお願いいたします。
第六点、欧州においては電気及び石炭の産業において争議行為の少いということを言う人があるのでありますが、それは、英国における国有化、西ドイツにおける炭鉱業及び鉄鋼業における経営共同決定権並びに経営組織性による完全な経営参加権を獲得しているということを忘れてはならないのであります。石炭においても臨時石炭国家管理法ができ、生産協議会等が設けられ、若干でも経営参加の方向に進んでいたにもかかわらず、それが吉田内閣によつて廃止され、電気産業も分断せられて、完全な私的企業になつているのであります。政府が争議権を剥奪し、制限するような公共事業であり、重要なる資源であるならば、それを私企業にゆだねるということは、まつたく時代逆行といわなければなりません。(拍手)、しかも、電源開発、縦抗開発のために巨額なる財政投資を行わんとすることは、すでに私企業の範囲を越えているものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)石炭及び電気事業の国有化について、政府はいかに考えておるか、この点に対する通産大臣の答弁をお願いいたします。
第七点、本法案制定の国際的影響について質問いたします。政府は、今次国会に国際労働条約の批准について承認を求めているのであります。すなわち、第二次世界大戦後にILO総会できまつた団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約外二条約を提出しておるのであります。この批准は、一昨年わが国がILOに復帰する際、ILOより記念批准として要望されたものでありますが、かように、わが国の労働立法や労働条件は世界各国の注視のもとに置かれているのであります。各国は、わが国がかつて労働の権利を不当に剥奪し、低賃金、長時間労働、ソーシャル・ダンピングによつて日本の資本主義を発達せしめたその歴史を再び繰返すのではないかと危惧しておるのであります。かかる世界環視の中に、しかも硫安輸出のごとき、すでにダンピングのきざしが現われているとき、本法案のごとき不当なる立法を提案するがごときは、いかなる国際上の影響があると考えておられるのか、国際貿易に支障がないと考えておられるのか、この点に対する政府の答弁を求めるものであります。(拍手)
最後に、私は、欧州に争議行為の少いということは、生活程度、なかんずく社会保障制度の完備にも原因があると思うのであります。社会保障制度の完備は、民主主義推進の結果であると思うのであります。真の民主主義のにない手はだれであるか、それは労働組合であります。現在、電産、炭労のストについて迷惑をこうむられた公衆の心の中には、嫌悪の情がくすぶつておることは否定できない事実であります。第三者は、当事者に比べて公平冷静な判断を下す立場にあることも確かであります。また一方、冷酷で無責任な批判者になりかねないのであります。大所高所からこれを見、冷静にして公平にあるべき政府が、この無責任な批判者の声を悪用し、稀代の悪法を制定せんとしているのであります。口に民主主義を唱えながらも、いまだ社会には民主的精神がきわめて稀薄であるといわざるを得ない今日の日本において、はたして民主化の推進ができるかどうかは、為政者の最も重大なる関心事であり、日本の最も大きなる課題であります。(拍手)民主化の途上にある今日において、民主化の源動力たる労働組合を弾圧することは、歴史を既往に返すものであり、角をためて牛を殺すの愚を演ずるものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)悔いを千載に残すことのないように警告をし、この点に対する総理大臣の代理としての緒方官房長官の答弁を求め、私の質問を終ります。(拍手)
〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/20
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021・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案、これが労働法の精神を蹂躪するものであるという御質問でありましたが、これに対しましては、先ほど来たびたび同じことを繰返すのでありますが、争議権と申しましても、公共の福祉に反してこれを用いてならないことは憲法に明らかに定めてある通りでありまして、本法案は、本来不当、違法だとされておる争議行為ないしは昨年の苦い経験にかんがみて社会通念上非とされる争議行為について必要最小限度の規制を行い、争議権と公益との調和をはかろうとするものであります。従いまして、本法案によつて労働者の基本権を抑圧するというような意思は、政府には毛頭ございません。むしろ民主社会の健全な発展に資したいという考えでおります。ただ、先ほど来三人の質問者から同じような御意見が出た、すなわち労使の問題を別の角度から解決することを考えるべきではないかということにつきましては、日本再建の上に、ようやくその時期に達しで参つたのではないかという気がいたしまして、政府といたしましては、今までの階級的な考えでなしに、違う角度からこの問題を慎重に検討すべきであるというふうに考えておるのであります。(拍手)
〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/21
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022・戸塚九一郎
○国務大臣(戸塚九一郎君) お答え申し上げます。
緊急調整制度の欠陥というような点についての御指摘でございましたが、昨年の電産、炭労ストにつきましては、最終段階におきまして、石炭について緊急調整を発動し、幸いに事態を収拾し得たのであります。緊急調整の制度が決して不当に労働者の権利を抑圧するものでないことは、これによつても立証されたと思います。また、緊急調整制度のために両ストライキが著しく長引いたというなうな御意見がございましたが、ストライキが長引いたのは、それ自体にまたそれぞれの理由があつたのでありまして、一概に緊急調整の制度があつたために長引いたというようなものではなかつたと考えます。
次に、公聴会のやり方について人選を誤つている、不公平であるというような意味のお話がございましたが、これはきわめて公平にいたしたつもりであります。まつたく事務的に考えてやつております。それは公述人の顔ぶれをごらんいただいてもわかりますし、また公述の内容を見てもよく御了解が願えるところと確信をいたしております。
また、憲法違反の点で、私にもということでございましたが、本法案は、電気事業及び石炭鉱業における争議権と公益の調和とをはかつて、公共の福祉擁護のため争議行為の方法について必要な規制をしよう、こういうのでありまして、決して争議権を抑圧するものではありません。憲法第十二条及び第十三条の規定にも明らかなるごとく、争議権も公共の福祉との調和をはからるべきものであることは当然でありまして、本法律案は決して憲法に抵触するものではないと考えております。
それから刑罰規定の問題でありますが、本法案は、もつぱら争議行為の正当性の限界について必要な事項を定めるものであります。本法違反の行為があれば、刑事上の免責を受けることができなくなる結果、その行為が刑法その他の刑罰法規に触れることになれば、処罰を免れ得ないことは当然であります。いかなる処罰を何人が受けるかは、それぞれの法規の保護法益に応じて定められるものでありまして、本法案とは直接に関係はありません。
次に、緊急調整で十分であるべきところに、さらに単独立法をしたという点でございますが、これは先ほどからたびたび申上げております通り、むしろこの両制度が相補つて公共の福祉を擁護するものである、かように考えておるのであります。なお単独立法といたしました点も、さきに申しました通り、本法案は、労使関係の調整とは別個に、もつぱら公益擁護のためのものである、それにかんがみまして、労使 関係の調整を扱う労働関係調整法とは別個の単独法の形をとつたのであります。なお、それがために統一労働法への方向に逆行するというお話でありましたが、労働関係法規につきましても、一方において総合的なものもあり、他方に一般労働関係に特有なものもあるのであります。それぞれの必要に応じて別個の法律になることはあるのであります。これは別に法体系を乱すものとは考えません。本法を石炭と電気のみに限つた点については、これもしばしば申し上げた通りでありまして、さきの経験にかんがみて最小限度に必要な措置を講ずるという趣旨にほかならないのでございます。
次に、本法の効果についてのお話のうち、本法案と国際的影響という意味の御意見がございました。本法案は、争議権と公益の調和をはかつて公共の福祉を擁護せんとするものでありまして、別に正当なる争議行為について云云するものではございません。これによつて国際的に悪影響を与えることは全然ないと考えております。(拍手)
〔国務大臣小笠原三九郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/22
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023・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 石炭鉱業も、電気事業も、久しきにわたつた管理体制が解除せられまして、自由企業として再発足してからまだ日の浅い今日、その功罪について云々すべき時期ではなく、各種監督規定のもとに自由企業としての発展を期待すべきであつて、政府としては、現在のところ、国家管理ないし国営等については考えておりません。
〔国務大臣犬養健君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/23
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024・犬養健
○国務大臣(犬養健君) お答えいたします。法務省といたしましては、労働争議はでき得る限り中労委のあつせんによるのがよいと考えておりまして、労使双方の協議と反省による解決を今もなお期待し、希望しておる次第でございます。この協議と反省ということを今後とも非常に価値多く評価しておる次第でございます。そういうわけでございますから、検事をことさらに争議に介入させる気は毛頭ございません。従つていわゆるストライキに伴う例の威力妨害についての判断の際も、できるだけ冷静、公正にやつているつもりでございます。ただ、労働争議における合法性のぎりぎりの限界を示すものとして、本案を妥当と考えている次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/24
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025・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 館俊三君。
〔館俊三君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/25
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026・館俊三
○館俊三君 ただいま上程になりました、いわゆる電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律案に対し、私は労働者良民党を代表して、強硬にこれに反対している全日本の労働者階級及び日本国民の立場から、内閣総理大臣、労働大臣及び関係各大臣に質問をいたさんとするものであります。
まず第一に、本法律案の持つ内容についてであります。本法律案の内容を詳細に検討いたしますと、これは炭鉱と電気の労働者のストライキを完全に禁止しようというものであることは明らかであります。法律案の第二条及び第三条には、それぞれ争議行為として禁止すべき行為と規定いたしておるのでありまするが、これほたとえば電気の正常なる供給を停止する行為、その他電気の正常なる供給に直接に障害を生ぜしめる行為というように、きわめて包括的な内容を持たせたやり方をとつておるのであります。結局、これでは、労働者はストライキをやれない、労働者にストライキをやらせないということと少しもかわりはないのであります。(拍手)電気労働者は、このような規定のもとでは、事務スト、集金スト、検針ストさえ、電気の正常な供給の直接障害の原因になるという解釈を押しつけられて、やれなくなるのであります。このような規定は、争議権を労働者の基本的権利として認めた憲法に違反することはもちろん、労働関係調整法の第七条とも、またまつこうから矛盾するものであります。労調法第七条には、「労働関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であつて、業務の正常な運営を阻害するものをいふ。」と明確に規定しているのであります。本法律案は、きわめてあたりまえのことをあたりまえにきめている労調法第七条を、事実上死文化しておるのである。憲法を侵し、それをすることによつて独占資本家をストライキと一切の争議行為の脅威から防衛しようとするものであります。すなわち、労働者に対する独占資本家の独裁制を確立しようというものであります。
炭鉱労働者の争議の場合において、本法律案は、その第三条で、鉱山保安法所定の平常保安業務を押しつけようとしているのであります。鉱山保安法は、もともと平常時における鉱山の保安について規定したものであり、争議中の保安を対象にしたものではないのであります。一般に、争議にあつては、労組法により刑法並びに民法上の責めは阻却されるのである。保安法の場合においてもまつたく同じであつて労働者の争議行為は免責となるのが当然なのであります。実際におきましても、従来この考え方が行われて来たのであります。重大なことは、この法律案は、第三条において「鉱山保安法に規定する保安の業務の正常な運営を停廃する行為であつて、」云々と規定して、単に労組法の一般原則を踏みにじるばかりではなく、とりわけ、従来労働者側の譲歩によつて結ばれていた、スト中における会社と組合との保安要員の差出しという、いわゆる紳士協定すらもこれを無用として、一方的に会社の業務命令に肩がわりさせようとしているのであります。従つて、独占資本家がそれを必要として要求するならば、争議中においても、いわゆる平常経営をさえ、これを確保することができるのでありまして、そもそも相手に打撃を与えることにほかならないところの争議行為は、本法律案の規制のもとにおいては、その争議行為たるの本質をまつたく失つてしまうことになるのであります。(拍手)
本法律案は、以上述べたように、炭鉱と電気事業におけるストライキの完全な禁止を目途としているものでありますが、単にそれのみではなくて、全産業のストライキの禁止をもさらに意図しているのであります。労調法第三十六条は、周知のごとく、ストライキ中の保安保持について規定をしております。しかしながら、この法律案によつて、一般的にストライキ中の保安保持の新しい解釈が示され、これが拡大適用されることになることは明らかであります。現に、総評を中心とする私鉄、鉄鋼などの争議に対しまして、資本家、自由党の一部には、本法律案を適用せしめんとするの動きがあるのでありますが、これは何よりも、本法律案が、石炭、電気をねらい撃ちにして、これを公益事業からさらに全産業に及ぼすものであることの本質をはつきり露呈しているのであります。この法律案の内容は、以上のごとく、保安の名のもとに徹底的なストライキの禁止を意図しているものでありますが、同じ目的をもつて個々の企業内容において直接活動しております、いわゆる職場防衛運動との関連を明らかにしておかねばならないと考えるのであります。今日、日経連の積極的な指導のもとに、各産業において、いわゆる職場防衛隊の組織と運動が行われているのであります。これは、資本家の命令を受けた職制と、労働者内部の裏切り腐敗分子とによつてなされているのでありますが、言うまでもなく一種の暴力組織である。この私設暴力組織としての資本家側の職場防衛隊は、今日、労働者の正当な争議活動に対し、暴力をもつてこれを圧迫し、攻撃するために活動しているのであります。最近では、たとえば昨年末、愛知県の岡崎市における日清紡績美合工場の首切りに対する労働者の当然の反対闘争に対して、この職場防衛隊が、まつたく聞くにたえない残虐な暴力を振つたことは、一部新聞紙などにも報道されたところであります。現在、労働者階級は、みずからを暴力から守るため立ち上らざるを得なくなつており、この職場防衛隊に対する反対と批判は、一般市民の間にも、きわめて大きくなつているのであります。しかるに、この法律案は、この職場防衛隊運動をますます助長することをねらいとしておるのであります。すなわち、職場防衛運動が特に企業の中で組合活動の弾圧を行つているのを、さらに量的にも質的にも拡大し、強化して、全労働者の組織の中にこれを発展せしめる、すなわち、これは労働運動の徹底的な弾圧と、労働組合の産業報国会化、御用化をはかろうというにあるのであります。この点について、労働大臣の御見解を承りたいのであります。
しかも、現在の職場防衛運動の理論と実践活動は、排外的日本民族自立論ないしは反ソ反共のデマゴギーと結びついて、軍国主義復活、買弁的日本帝国主義再建の運動へとさらに発展させられようといたしているのであります。諸君は、かつての東条軍閥とナチスが、いかにして労働組合の組織を破壊し、解体させて行つたかは、十分御承知のはずであります。しかし、それは昔のできごとではありません。今、よそおいも新しく、ここに上程されている本法律案の本質と真のねらいは、まさに労働組合を産報化し、東条内閣時代の産業報国会をつくり上げて、戦争準備のために、軍需産業にすなおに働くところの労働者を仕立て上げるのが、提案の根本の理由であろうと私は考える。この点について、総理大臣がいらつしやらないのであるから、緒方官房長官にお尋ねしたい。
緒方官房長官は、すでに昨年暮れの国会において、情報部を設置して、日本におけるスパイ政策をやろうとしたではないか。さらに今国会におきましては、義務教育に関する法律を出しておる。この法律の目的とするところは、やがては、東条内閣時代におけるように、国定教科書までに発展し、日本の思想を一方的な方向に持ち来そうとする一つの端緒であると私は見ておる。さらに、中央集権化されようとして、国民あげて反対しておるところのあの警察法の改正、これがいかなる将来を築き上げるかということ、これを考えていただきたい。これらのことが、そろつて、日本の全民衆をして、再びあの戦争に突入し得るところの精神的な、組織的な立場を盛り上げようとする一つの方途を持つておるものであると、私は認識する。そういう意味において、慎重に考えなければ、この重大なる法律案を提出した意図というものを察知することができないのである。
アイゼンハウアーの方針、あるいはダレスの考え方——四月に池田前大蔵大臣をアメリカに送るということであるが、そのころまでには、日本は軍備はできましたが、国民がその大砲、鉄砲をかつぐ意思がなくてはいけないので、その準備としてこの警察法を出し、ストライキ禁止法を出し、さらに義務教育法を出して、ダレスさんが見えたときに、この通りの準備ができましたと言わざるを得ない現在の政府の立場を、私は情ないことだと考える。そういうことであるかないか、十分に返事をしていただきたい。そういう意図のもとに立つて、この法律の提出、義務教育に関する法律の提出、警察制度に対する法律の提出、さらに情報部の設置の問題を、十分に心をひそめて考えるのが、われわれ国民代表としての務めでなければならない。(拍手)
第二に明らかにしておかなければならないことは、何ゆえにこのような内容を持つ法律が必要であるかということについてであります。電気及び石炭鉱業の特殊性並びに国民経済と国民生活に対する重要性にかんがみ、公共の福祉を擁護するため云々と、提案理由で政府は言つております。少くとも以上のような重大な内容を持つこの法律案の提案理由としては、これはあまりにもおそまつであり、一般的であると私は考える。(「治安の確保や公共の福祉が何でおそまつだ」と呼ぶ者あり)今言うて聞かせる。——提案理由のこの抽象性は、実は理由がある。すなわち、労働者階級と広汎な国民大衆を納得させるだけのものではないということである。もう少し正確に言うならば、具体的な理由、すなわち、ほんとうの理由を公然と言うことができないからである。こういうやり方は、常に反国民的な政策を行つておる吉田政府のいつも得意とするところであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/26
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027・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 館君に申し上げます。申合せの時間が参りましたから簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/27
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028・館俊三
○館俊三君(続) さきの労働法改悪にあたりましても、また、あのいわゆる破壊活動防止法の制定の場合でも、まつたく同様であります。今日、労働者と広汎な国民大衆は、右法案の真のねらいを十分に見抜いておるのである。政府のいわゆる提案理由なるものが、何人の目にも実に不可解な、片手落ちなものであることもわかつておる。政府は、昨年の炭労、電産のストライキが、国民経済と国民生活に重大な影響を与えたという意味の説明をやり、そこから本法案の必要性を強調しているのでありますが、どういうものか、独占資本家のやり方についてはまつたく語りもしないし、それに触れないのである。緊急調整が発動されて、炭労の諸君がただちにこれを引受けたにもかかわらず、資本家側においては、炭労が引受けてから一週間くらいは返事をしないという奇怪なことがあつたではないか。懲らしめなければならない独占資本家、炭労、電産の経営者はどうなつておるか。これを制肘しないで、炭労、電産のストライキにのみ法律を集中的にやつておる。こういうのが現在の政府の立場であると、はつきりと国民は覚えておるのである。片手落ちであるというのは、こういうことを言うのである。
時間になつたというから、これで終りますが、本質的に考えてもらいたいことは、義務教育法、それからこのスト禁止法、警察法、情報機関、破壊活動防止法、これによつて、もう一ぺん国民を、東条内閣時代のごとく、唯々諾々、羊のごとく動かす、そういうものをこしらえようとする意図ここにありと言つて、私の演説を結んでおきます。
〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/28
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029・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) 同じような答弁を操返すのでありますが、これを要しまするに、本案の提案は、昨年の電産、炭労両大ストの経験にかんがみまして、今後起り得べきストの場合に、公共の福祉を最小限度に擁護する意図以外に何ものもありません。労働者の基本的人権を蹂躪し、無視し、軽視するというような意図のないことは申すまでもありません。
なお、これが日本の再軍備の地ならしであるかのごときお説は、全無根拠のないことであります。(拍手)
〔国務大臣戸塚九一郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/29
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030・戸塚九一郎
○国務大臣(戸塚九一郎君) お答えいたします。
お尋ねのうちに、職場防衛という問題がありましたが、各企業体におきまして、労使が協力して、職場あるいは企業に対する破壊的活動に対して職場を防衛するということは、まことにけつこうなことだと考えております。
なお、今回の法案が産報化するとか、あるいは再軍備にどうというようなお話がございましが、前々申し述べました通り、本法案は、そういうふうな関係のものではございません。また、警察法とか義務教育学校職員法などとはまつたく関係のない、別箇の問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/30
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031・岩本信行
○副議長(岩本信行君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/31
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032・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第一、海上保安官に協力援助した者の災害給付に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員長逢澤寛君
〔逢澤寛君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/32
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033・逢澤寛
○逢澤寛君 ただいま議題となりました海上保安官に協力援助した者の災害給付に関する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を報告申し上げます。
まず本法案の趣旨を簡単に説明申し上げます。海上保安官が、犯人の逮捕または人命、財産の救助等の職務執行にあたりまして、たまたま現場の海上保安官の手が足りず、付近の人または船舶の応援を求めまして臨機の処置を講じなければならない事態がしばしば起るのであります。かような場合に、職務によらないで海上保安官に協力援助した者が不幸にも災害を受けたときは、国が療養等必要な措置を講じようとするのが、この法律案の目的であります。
次に、その内容のおもなる点をあげますると、第一点は給付の種類でありまするが、給付は、療養給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付及び打切り給付の五種としております。特に必要のあるときは休業給付をもいたそうとするのであります。
第二点は、給付の範囲、金額、支給方法などは、国家公務員災害補償法の規定を参酌いたしまして政令で定めようとするのであります。
第三点は、損害賠償の免責に関する規定その他所要の規定は、警察官等に協力援助した者の災害給付に関する法律中の規定を準用いたそうとするのであります。
本法案は、去る二月十七日、本委員会に付託され、十九日、提出者の代表關谷勝利君より提案理由の説明を聴取し、二十三日、本法案は趣旨並びに内容ともきわめて明瞭かつ妥当でありますので、質疑、討論を省略し、ただちに採決の結果、起立総員をもつて原案の通り可決すべきものと議決した次第であります。
以上報告を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/33
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034・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/34
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035・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/35
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036・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 日程第二、航空業務に関する日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長栗山長次郎君。
〔栗山長次郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/36
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037・栗山長次郎
○栗山長次郎君 航空業務に関する日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定の締結について承認を求めるの件を審議いたしました外務委員会の御報告をいたします。
もしこの協定が成立いたしませんと、英国側は日本において一方的に航空業務を営む権利を持つておるわけでありますが、これが成立いたしますと、日英両国が対等の立場になつて、日本側も足を伸ばして向うで航空業務を営むことができるようになるのであります。先般国会を通過いたしました日米の航空協定と同じ趣のものであります。
本件は、昨二十五日、質疑を打切り、討論にあたりまして、社会党左派の田中稔男君が条件付で賛成の討論をいたしました。採決の結果は、全員一致をもつて本件を承認すべきものと議決いたした次第であります。
右御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/37
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038・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/38
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039・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて本件は委員長報告の通り承認することに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/39
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040・山崎岩男
○山崎岩男君 この際、内閣から提出された警察法案、恩給法の一部を改正する法律案及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の三案の趣旨説明を逐次聴取するの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/40
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041・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 山崎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/41
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042・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。
まず警察法案の趣旨説明を求めます。国務大臣犬養健君。
〔国務大臣犬養健君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/42
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043・犬養健
○国務大臣(犬養健君) 今回提出いたしました警察法案につきまして、その提案の理由及びその要点を御説明いたします。
現在の警察制度は、占領下の初期におきまして、警察民主化の方策として急激に改革が行われた結果生れたものでありまして、確かに従前の警察に見られなかつた民主的な美点を有してはおりますが、他面において、現下のわが国の実情に適合しない部分のあるのは、いなめない事実であります。すなわち、現在の制度は、国家地方警察と自治体警察の二本建となつており、その組織はおのおの管轄区域を異にしておりますが、前者は国家的性格に過ぎて自治的要素を欠除し、後者は完全自治に過ぎて国家的性格を欠除し、両者それぞれ長短を兼ね有しているのであります。ゆえに、忌憚なく申せば、この制度自身が警察本来の性格と運営にとつて必ずしも適合せざるものを内蔵している次第であります。かつ、これまでも、自治体警察においても、国家地方警察においても、相互間の連絡調整のためには、おのおのよく努め参つたのではありますが、何と申しても、その管轄区域の相違より生ずる盲点の存在は、世人のすでに指摘するところでありました。かつ、中小自治体警察は、その単位が小さきに失し、ために効率的運営に欠くるとろのあつたことも、これまた認めざるを得なかつのであります。さらに、国の治安の責任の所在につきましては、現制度下においてはきわめて不明確でありまして、この点に関する限り、現下の警察組織は、かの民主主義の所産である責任内閣制度の精神から見て徹底せざるものがあるのであります。それゆえ、これらの点につきましては、現行制度実施後、過去五箇年有余の間にも、数度にわたつて警察法の一部改正が行われたのでありますが、その後におけるわが国治安情勢は、これらの弱点を内蔵する警察制度の根本的改正が要請せられるに至つているのでありまして、政府におきましては、過般来慎重に検討を重ねました結果、民主警察の美点を保持しつつ、上述の不備を是正し、もつて治安の確保と行政責任の明確化をはかるため、ここにこの法律案を提出し、御審議を願う次第であります。
この法律案のおもな点を申し上げますと、次の通りであります。
すなわち、第一には、警察による治安確保についての政府の責任を明らかにするため、国務大臣をもつて充てるところの警察長官を置きましたが、この長官の権限がともすれば過大に陥らぬよう、その所掌する職務はこれを法律に明記して制限を加えたのみならず、長官の責務はあくまで不偏不党、かつ公平中正を旨とすべきことを規定して、かりにも政治警察の弊害の生ぜざるよう、厳格なる保障の措置を講じたのであります。かつ、他方において、現在の国家公安委員会にかわるところの国家公安監理会は、警察が時の政治的勢力に左右せらるることのなきよう、常時監視助言の機関としてその職責を果すこととなつております。
第二には、先ほど申し述べまとた自治体警察、国家地方警察の二本建の弊を除去し、両者それぞれの組織に内包する欠陥を是正せんがために、国家地方警察、自治体警察はともにこれを廃止して、新たに都道府県単位の都道府県警察を設け、これによつて従来に比して一層効率的な民主警察の運営をはかることといたしました。なお、この場合、人口七十万以上の大都市については、それが実質上府県と同様の規模を有しております点にかんがみまして、もしもこれらの市が希望いたします場合には、都道府県警察と同一の性格を有する市警察を置き得る道を開いたのであります。
第三に、都道府県警察については、その民主的な運営を保障するため、その管理を都道府県公安委員会にゆだねましたが、一方公安委員は、常時警察長の考課をしるして、これを中央に具申し、かつ警察長並びに警察官に対しして罷免、懲戒の勧告権を有することとなつたのであります。かつ、この公安委員の構成には変更を加えて、地方自治の機関との連繋を一層緊密にしましたが、警察署等の設置その他都道府県警察に関する地方的事項は、あげてこれを都道府県条例にゆだねるものといたしました。
しこうして、その職員の大多数は地方公務員とし、警察に要する経費は、国家的な警察事務を除いて、すべて都道府県の負担とする等、あとう限り自治体警察の特長と美点とを具備せしめることといたしました。この精神よりいたしまして、個々の犯罪捜査の指揮のごときは、中央の警察庁はこれを都道府県警察の職務に一切をゆだねるべきものでありまして、政府は、今般、この点につき、特にその意の存するところを明らかに示したのであります。
以上の諸点が改正案の骨子でありますが、この制度が実施される結果となりますれば、警察官の数において約一別三分程度を減少し、しかも機構の単一化によつて、従前に比してはるかに効率を上ぐべきことは論をまちません。なお、この改正が実施されます場合には、国家地方警察、自治体警察ともにその職員の身分に変更を生ずる結果となりますが、この場合にも、努めて新しい警察機構への受入れを円滑にし、俸給その他の給与、恩給等についても、特に従来の自治体警察の職員であつた者の既得の立場を尊重し、少しでも不利益な結果を招来せぬよう万全の配慮を払う所存であります。しこうして従来の国家地方警察、市町村の自治体警察がその用に供しておりました財産、物品等につきましても、このたびの切りかえに伴う円滑な処理が行われて新しい都道府県警察の仕事に支障を来すことのないよう、十分の措置を講ずる考えであります。
しこうして本法案は、幸いに成立いたしましたあかつきは、十月一日を目途として施行の日を政令で定めたいと存じますが、上述のごとく円満たる引継ぎの万全を期したるため、二十八年度中は、都道府県警察に要する経費は、従前通りの負担区分に従つて、すなわち、従前の国家地方警察の組織に属するものについては国が、市町村警察の組織に属するものについては市町村が従前通り支弁することとし、二十八年度中は、この法律施行によつて、国、都道府県、市町村間に負担の変更を来さないことといたしたのであります。
以上、本法律案提出の理由及びその内容の概要を申し上げた次第であります。何とぞ御審議あらんことをお願いいたします。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/43
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044・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 次に、恩給法の一部を改正する法律案及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案の両案の趣旨説明を求めます。国務大臣緒方竹虎君。
〔国務大臣緒方竹虎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/44
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045・緒方竹虎
○国務大臣(緒方竹虎君) ただいま議題となりました恩給法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を説明申し上げます。
政府が今回この法律案を提案いたしました主たる理由は、昭和二十一年勅令第六十八号恩給法の特例に関する件によつて恩給を廃止または制限された旧軍人、軍属及びその遺族の方々に対しまして、国家財政その他諸般の事情を勘案して恩給を給することとし、あわせて一般公務員及びその遺族の恩給につきまして適当な改正を加えることといたそうとするのであります。これらの旧軍人、軍属及びその遺族の方々は、一般文官及びその遺族の方々と同様に恩給を給せられていたのでありますが、昭和二十年十一月二十四日付の連合国最高司令官からの覚書により恩給を廃止または制限され、現在に至つているのであります。
ところで、平和条約が成立し、わが国の独立を見ました現在においても、なおこれら旧軍人、軍属及びその遺族の方々の恩給をこのような状態に放任し、戦争の責任をひとりこれらの人々のみに負わせているかのような状態にしておくことは好ましくないことと考えられましたので、政府は、さきに、恩給法の特例に関する件の措置に関する法律により恩給法特例審議会を設置し、これらの人々に対する恩給の重要事項に関し調査審議を煩わしたのでありますが、昨秋十一月二十二日、右審議会から、調査審議の結果を政府に対し建議されたのであります。
この建議は、これらの旧軍人、軍属及びその遺族に相当の恩給を給すべきものと認め、特に遺族、重傷病者及び老齢者に重点を置いて、給すべき恩給の内容等を決定しているのでありますが、政府におきましては、この建議の趣旨を尊重し、国家財政の許す範囲内において、これら旧軍人、軍属及びその遺族に対し恩給を給することとし、これに伴い、一般文官の恩給に対しましてもまた若干の改正を加える等のため、恩給法の一部を改正することといたそうとするのであります。
何とぞ慎重御審議の上、御賛成あらんことを願いいたします。(拍手)
ただいま上程されました私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由を説明いたします。
昭和二十二年七月に独占禁止法が施行されましてから、早くも約五箇年半を経過いたしたのでありますが、その施行の経験に徴しまして、本法の諸規定のうちには、わが国の経済の特質と実態に沿わないものがあり、これがため経済の発展にかえつて支障を来すおそれがあることが感ぜられたのであります。もとより、国民経済の民主的で健全な発達を促進するため、私企業による市場独占のもたらす諸弊害を除去し、公正かつ自由な競争を促進しようとする独占禁止法の根本精神はあくまで尊重すべきものでありますが、この際、内外諸情勢の推移にかんがみて、独占禁止法に適当な調整を加える必要があると考え、本法律案を提出するに至つた次第であります。
本法案の改正の項目は多岐にわたつておりますが、その主要なものは、特定の場合、すなわち不況に対処するため必要がある場合及び合理化の遂行上特に必要がある場合における事業者の共同行為を一定の条件のもとに認容したこと、企業の健全な結合に資するため、株式の保有、役員の兼任等の制限を緩和したこと、不公正かつ不健全な競争ないし取引方法を抑制するため、不公正競争方法に関する現行法の規定を整備したこと、事業者団体法を廃止して必要な事項を独占禁止法中に収めたこと等であります。
以上が本法律案提案の目的及び要旨であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/45
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046・山崎岩男
○山崎岩男君 内閣提出、警察法案外二件の趣旨説明に対する質疑は延期し、明後二十八日定刻より本会議を開き、これを行うこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/46
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047・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 山崎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/47
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048・岩本信行
○副議長(岩本信行君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後五時二十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101505254X03319530226/48
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