1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年三月九日(月曜日)
午後二時十二分開会
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出席者は左の通り。
委員長 竹下 豐次君
理事
上原 正吉君
松原 一彦君
委員
中川 幸平君
河井 彌八君
村上 義一君
吉田 法晴君
上條 愛一君
政府委員
行政管理庁統計
基準部長 美濃部亮吉君
法務政務次官 押谷 富三君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
常任委員会専門
員 藤田 友作君
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本日の会議に付した事件
○派遣議員の報告
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514889X01619530309/0
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001・竹下豐次
○委員長(竹下豐次君) これより内閣委員会を開会いたします。
先ず派遣議員松原、上條御両君から調査の要旨を御報告願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514889X01619530309/1
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002・上條愛一
○上條愛一君 昨年十二月、栗栖委員、成瀬委員と私の三名は、兵庫、広島の二県に出向きまして、行政管理庁の出先機関たる兵庫地方監察局、広島管区監察局を初め、神戸移住斡旋所及び呉調達局を視察し、なおついでを以て山口県岩国市における駐留軍飛行基地岩国飛行場を見学したのでありますが、今その概略について御報告をいたします。なお、今回の視察に際してそれぞれの機関より入手しました調査資料は一括して専門調査室のほうに備えておきますから、詳しい数字、内容等につきましてはそれを御参照願いたいと存じます。
先ず行政管理庁監察部の出先機関たる管区監察局及び地方監察局の業務実施状況について申述べます。昨年八月の行政機構改革に伴い、従来の経済調査庁が廃止され、行政管理庁の監察部が改組拡充されたわけでありまして、当時政府の原案としては、御承知のごとく監察部の出先機関としては、各地方ブロツクに管区監察局を置き、ブロツク内の各省出先機関の行政運営面を機動的に監察するという構想であつたのでありますが、当内閣委員会においてこれを審査検討の結果、監察部の出先機関は単に各地方ブロツクのみに置くこととせず、管区監察局を置かない各府県にもそれぞれ管区監察局の下部組織として地方監察局を置くことに修正を加えまして、現行の制度が実施されておるのでありまして、今回の視察においては、本委員会の修正が果して現実に適切であつたか否かという点については特に留意して視察を行なつて参つたのであります。
先ず第一に、監察行政に従事する出先機関の職員の執務振りについて一言しますと、おおむね監察行政の新たなる任務完遂のために、上下を挙げて相当気魄のこもつた熱意を帯びておることを看取し得たことは、管区監察局も地方監察局も同様でありました。これは一に監察行政事務の重大性を深く認識しての職場意識の高揚ということにあることは勿論でありますが、半面昨年の機構改革、定員法の改正に当つて当内閣委員会の総意による修正によつて相当数の職員が整理を免かれ、従来通りその任務に挺身し得ることができ得た感激もあずかつておるやに感じられたのであります。一体行政機構の問題は、もとより中央における省別構成、権限配分の問題を中心としてその行政権限が末端出先機関を通じて如何に運営実施されておるかを検討して、その当否を判断すべきであり、国家行政組織法第二條にも、「国の行政機関は、内閣の統轄のもとに、行政機関相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。」とあるように、これがために、中央、出先を通じて、各行政機関相互の連絡調整ということは行政能率を挙げる上において極めて重要なポイントであるにかかわらず、従来ややもすれば各省セクシヨナリズムの余弊として、とかくその機能を欠如しがちであることは厳に改善を要する点であり、行政運営面の盲点とも申すべきポイントでもあろうと思えるのでありまして、行政管理庁としては今後この方面に一段の努力を要すると思われます。幸いに兵庫地方監察局並びに広島管区監察局の実際を見るに、漸次各省所管官庁の理解と協力を得て、監察事務が円滑に遂行せられ、実績を挙げつつあるを見たのであります。
又監察行政実施面の具体的問題として、管区監察局一本建と管区監察局、地方監察局二本建と、いずれが是なるかの問題については、行政監察の対象たるべき各省出先機関は、兵庫地方監察局の管内だけにてもその数は二百数十カ所に及んでいる実情であるのに、数府県を一括する管区監察局が、その管内全般に亘り周到なる監察を遂行せんとすれば、各府県の実情にうとい嫌いがあるため、各地に出張して監察を行う場合、多くは表面的形式的監察に堕する弊があり、監察の徹底を欠くばかりでなく、経費の面から見ても徒に出張費、滞在費等が多額を要し、各府県ごとに地方監察局を常置する場合と比較して、形は簡素に似て実質はこれに伴わず、各般行政の全般に亘り監察を適正に徹底することは困難でありまして、経費と実績の点から見て、数県に亘るブロツク別の管区監察局の一本建によるよりも、各府県に地方監察局を常置する二本建の現行制度が遥かに有効なることが明らかでありました。併し地方監察局に配分せられている旅費、出張費が過少でありまして、昨年同期に比して三五%も減少しているために、職務に熱心な職員は一部の旅費を自弁して、辛うじてその職責を果している実例も二、三にとどまらない有様であります。
この点は今後の予算編成に当つては十分考慮すべきであると信じます。又経済調査庁時代には、職員に対し特別号俸が支給せられていたのでありますが、行政管理庁の所管となりましてから、この特別号俸が撤廃せられましたので、実際には四号俸減となつておる有様でありまして、これら職員の待遇問題は十分留意すべきであることを痛感いたしました。
次に監察方式について一言します。監察部は昨年八月の新機構発足と共に、同年九月乃至十二月の第一期監察業務計画を立て、爾後毎四半期ごとに順次監察業務計画を更新する方針をとつており、全国同一目標を監察の対象として、中央における五人の監察参事官がそれぞれ各省を分担し、その指揮下に管区監察局、地方監察局の担当部課が現物監察を実施しているという方式をとつているのでありますが、第一次監察計画といたしましては、(一)行政運営の適正化を目標とする監察、(二)国費の節減を目標とする監察、(三)公共事業の効率化を目標とする監察に大別し、第一の行政運営の適正化につきましては、一、定員外常勤職員の実態調査、二、戦傷病者、戦没者遺族等援護行政監察、三、アルコール専売事業監察、四、輸出振興外貨金制度監察、五、建設機械の運営状況監察。第二の国費の節減につきましては、一、大蔵省管財局特殊財産課の業務の監察。二、郵便物運送業務の監察。第三の公共事業の効率化につきましては、一、農林省関係農地用施設災害復旧公共事業監察等を取上げており、我々一行が管区及び地方監察局を視察した折には、いずれも監察結果を取りまとめ、一応部内報告の作成を了しておつたようであります。監察の結果が如何に行政運営の上に示唆を与えるか、同時に国費の節約の上に如何にプラスの面を招来するかは近く判明するものと思われるのであります。なお、右のほか行政管理庁は、各管区監察局長及び各地方監察局長に命じて、各管下における行政運営に関する重要事項について随時情報を収集しており、その目的とするところは、監察業務の適正且つ効率的運営を図るにあるものであります。
次に呉調達局の視察についてでありますが、御承知のごとく、調達庁は独立後の現在では、工事、役務、需品等の調達は米側の直接調達方式をとることになり、その結果として調達業務が大幅に縮小されるに至つたのでありますが、その半面行政協定第二條により、日本政府は駐留軍の必要とする施設区域等を提供する義務を負うこととなつたために、占領時代と異りまして、第一には施設区域の提供については当然国内法(土地収用法)に準拠してなさるべきものとなつた関係で、占領時代の接収と異り、その手続は著しく複雑化されるに至つたこと、第二は、占領時代の接収財産中、重要都市に存在する接収財産は、占領軍の郊外移駐と併行して大幅に使用解除されるに至つた結果、その解除に伴う財産の返還並びに損失の補償業務が著しく増大したこと、第三には、行政協定締結の結果、施設区域の提供は陸上についてのみならず、海上についても行われることとなつたが、海上における区域の提供の結果、漁民の受ける損失についての補償業務が新たに附加されたこと、第四には、労務提供については不動産と同様、日本政府を通じて調達されることとなつているので、労務の提供方式は日米両国政府間に締結される労務提供に関する契約に基いて日本政府は労務者を雇用し、相手方に提供し、労務者に対しては政府が労務雇用に関する一切の責任を負うことになつたので、その給与、勤務條件等は生計費並びに国家公務員及び民間事業の従事員の給与、その他の勤務條件を考慮して調達庁長官が定めることとなつたために、賃金の科学的調査と労務者との賃金決定の交渉、労働紛議の防止、解決等複雑困難な問題が新らしい任務となつたこと、第五には、行政協定第十八條により、駐留軍の行為乃至施設に起因して日本国民に与えた損害は、駐留軍の行為が公務執行に関するものであるか否かにより、日本政府乃至米軍においてそれぞれ補償することになつているが、日本政府の補償は調達庁が担当し、又米軍の行う補償についても調達庁が米軍と被害者との間に立つて補償事案の解決に当ることとなつたこと、第六には、占領期間中占領軍の不法調達或いは不法行為等により国民が受けた損害を補償する業務が占領のあと始末業務として早期処理を迫られていること等、独立後における調達庁の業務はややその様相を変えて参つたのであります。
而して呉調達局は、昨年四月一日に呉特別調達局から呉調達局と名称を改め、更に昨年八月一日を以て三部十八課の現機構に縮小されて、現在は定員二百八十八名中現在員二百七十六名、欠員十二名であります。同局の管轄区域は中国及び四国の全域に及んでいるため、駐留軍の分布もかなり広範囲に亘るのでありますが、殊に同局の管内には駐留軍のほかに英連邦軍、カナダ、英本国、ニユージランド及び濠洲軍よりなる国連軍の一部が駐留しており、従つてこれら系統を異にする駐留軍に対する同局の渉外事務は複雑多岐に亘つているようであります。併し国連軍の駐屯に関する協定が未締結のため種々事件が起りつつあるが、これを処理する権限は調達庁にはないのであるが、実際には事件解決の斡旋に当らねばならん実情に置かれておるのでありますが、その人員の配分はない有様であります。いずれは行政協定の同主旨の協定が近く国連軍との間に締結されるものと思われ、その事務処理を迅速化するための準備手配を進めつつあるが、そうなれば勿論定員の不足を生ずるのであります。
なお、呉調達局は次の二点につき希望を申述べておりました。
一、條約を主体とする対外関係の折衝取極は外務省が行なつているが、末端の現実的事件処理の衝に当る役目は調達庁が負わされているという点を認識して欲しいということであります。二には、現在行政協定に基く合同委員会のメンバーに調達庁長官が加わつていないので、現地の事件処理に関する実情不連絡の欠陥があるので考慮せられたいとのことでありました。
なお、我々は呉及び広島方面の実地視察を行いましたが、広島地区においては、一般日本人住宅地区に弾薬庫が存在し、その移転を希望いたしておりました。
次に神戸移住斡旋所の視察であります。移民の斡旋に関する政府の最初の施設として、昭和三年三月、当時の内務省社会局が神戸に移民収容所を設立したのが初めで、昭和四年に拓務省が設置されると共に、移民事務は拓務省に移管されることとなり、昭和七年に神戸移住教養所と改称せられたのでありますが、その後昭和十八年、官制が廃止されると共に閉鎖されておりましたが、終戦後引揚援護会や兵庫県庁職員の独身寮や、入国管理庁や神港病院等に転用されていましたが、外務省においては新事態に即応するために、同省の附属機関として事務内容を充実すると共に改修及び設備費四千万円を投じて諸施設を完備して、昨年十月二十六日に神戸移住斡旋所として再開されたのであります。
移住斡旋所は、入所を希望する呼寄せ移民及び計画移民を出帆前一定期間ここに収容して、移住者に対して必要な現地事情の予備知識を与えると共に、健康診断や渡航手続等万端の斡旋を行うのでありますが、この移住斡旋所の施設は、神戸市生田区山本町三丁目にあり、本館五階建、別館四階建の鉄筋コンクリート造り、総建坪千五百坪、収容室六十二室、収容人員八百名で、診療室、治療室、レントゲン室、消毒室等の医療衛生に関する諸施設が行届いているばかりでなく、読書室、教室、放送室、映写室娯楽室等の教養娯楽設備も備わり、厨房、食堂、消火設備等も完備しており、所内極めて明朗、清潔な感じを与える好個の建造施設であります。
ただ現在同所の所長は外務省欧米局第二課長が兼務しており、本省から事務官が一名出張滞在しておつて、職員十五名、そのううち事務職員三名、看護婦一名、守衛四名、小使一名、賄婦二名、掃除婦二名、運転手一名、火夫一名はことごとく臨時職員であつて、外務省の定員外のものでありまして、今後実際に移民が多く行われる場合は考慮を要するものと思われます。例えば火夫のごときも一名であつて、交替をなし得ない実情であります。現在外務省で海外へ渡航しているのは、アルゼンチン、ブラジル等の呼寄せ移民であつて、アルゼンチンは終戦後間もなく、昭和二十二年から同国に居住する日本人がその近親者を呼寄せることを許可し、次いでブラジルも一定範囲の近親者の呼寄せを許可し、平和條約発効後はその許可範囲も逐次拡大されているが、右の渡航総数は、アルゼンチン約三千人、ブラジル約一千人で、最近はブラジルのほうが増加の趨勢にあり、今後はブラジルを主としてパラグアイ、アルゼンチン、メキシコ等の諸国を加えると、渡航移住者の総数は年間に二、三千人程度に増加するものと期待されています。
一方計画移民については、平和條約発効と共に先ずアマゾン移民についてブラジル政府との交渉が成立して、その第一陣として十八家族、五十四名の募集、詮衡を皮切りに、すでに昨年十二月中に右のほかアマゾン地区の呼寄せ移民約三十名をも送出しており、近来全国的に海外移住の希望が予想外に高まりつつあるとのことであります。
同斡旋所は、外国へ移住する者に対する国の保護施設であるから、入所者の宿泊、講習、健康診断等の費用は一切無料であり、ただ旅券発給手数料、移住国領事の査証料及び食費(主食は米又は外食券、副食費は一日五十円見当)を徴しており、入所期間は乗船日までの十四日以内とのことであります。昭和二十八年度は更に年間八千人程度の移民計画を立てているとのことでありますが、明年度予算面に容認されているところでは、年間二千名で、総予算三千百六十八万三千円となつているが、これでは著しく予算の不足をみるものとされております。
最後に、私どもが山口県岩国市にある駐留軍飛行基地たる岩国飛行場を視察しました後、岩国市役所に立寄つた際左のごとき陳情を受けました。
その一は、岩国市漁業協同組合外七カ町村の漁業協同組合の請願でありまして、請願の趣旨は、岩国市姫子島周辺は終戦後在日防衛軍の進駐に伴い立入禁止、航行禁止区域に指定され、加うるに姫子島を中心として砲爆撃演習を実施し来つたために、地元漁民は姫子島周辺の操業を全く禁止され、漁民の死活問題を現出しているということで、我が国が完全独立を見るに至つた今日、同地区漁民の生活安定のため早急に禁止区域を解除してもらいたい、なお既往の損害に対する速かなる国家補償を得たいというにあるのであります。
実際に姫子島は数年来防衛軍の砲爆撃の演習場と化した結果、全く島の原形を失つて、僅かに水上焼けただれた岩石の切り立つているのを見かけるばかりで、如何に砲爆撃が猛烈であり頻繁なものであつたかは察知せられるのであります。聞くところによれば、講和発効後は米駐留軍による船舶、漁船の航行禁止区域は漸次縮小されたようでありますが、昨今は主として国連軍による砲爆撃演習が引続き行われており、なお姫子島周辺は現在でも依然として航行禁止区域になつているのであります。又漁民の損害補償の問題は、先に第十三国会において成立し、昨年七月二十二日に公布された「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約に基き駐留する合衆国軍隊に水面を使用させるための漁船の操業制限等に関する法律」の適用により、対駐留軍関係の問題は、一応解決の途が明らかとなつているわけでありますが、対国連軍との問題は未解決のまま残つているわけであります。
その他次のごとき陳情を受けました。
一、岩国市より、防衛道路建設について。一、山口県玖珂郡町村会代表者よりルース台風災害復旧予算の追加計上に関する件。一、岩国市並びに岩国市開拓農業協同組合より、岩国飛行場拡張に伴う接収地買収促進に関する件。一、岩国市長よりの、岩国飛行場拡張に伴い鉄道引込線についての件。一、広島県小瀬川電源開発問題に関する下流水域住民の陳情等がありましたが、併しながら以上の陳情は、直接本委員会の所管事務と関係がありませんからここには省略いたします。
以上を経て報告を終ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514889X01619530309/2
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003・竹下豐次
○委員長(竹下豐次君) 松原君、お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514889X01619530309/3
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004・松原一彦
○松原一彦君 内閣委員会の御決定に基きまして、私は昭和二十八年一月二十日より一月二十四日までの五日間、長崎県及び福岡県下の行政機関を視察して参りました。竹下委員長も御視察になるはずでしたが、御病気で御参加ができなくなつたために私一人の視察となつたのであります。
視察いたしました箇所は長崎県庁及び福岡県庁、長崎海上保安部、福岡管区監察局及び長崎地方監察局、福岡調達局及び同局の佐世保出張所、法務省の所管する入国者収容所及び入国管理事務所、保安隊第四管区総監部、福岡通商産業局、以上であります。
調査の目的は、昨年の行政機構改革後における各行政庁の行政運営の実情を調査する点にあります。而して調査を主として次のような観点から行なつたのであります。
第一に、福岡管区監察局及び長崎地方監察局につきましては、昨年の行政機構改革によつて監察機構が整備されて以来、如何なる方針の下に管内の行政機関に対して行政事務の監察を実施したか、監察の具体的成果如何、又定員上予算上改善を要する点はないか、更には監察を受けた行政機関の態度、或いは監察実施の結果の処理方法等の問題について調査をいたしました。
第二に、福岡調達局につきましては、講和発効後における事務内容の変化に伴つて事務内容に如何なる変化が生じたか、又現在処理しておる調達事務中、特に対米駐留軍又は対国連軍関係において事務処理上困難なる事例はないか、或いは昨年実施された行政機関職員定員法の改正後の定員の整理状況如何、更には定員法改正の結果、事務処理上の支障はないか等の問題について調査をいたしました。
第三に、長崎海上保安部については、昨年の行政機構改革によつて従前の事務の一部を保安庁へ移行したため、事務運営上特に支障はないか、又現在の定員及び予算の上において、事務運営上不都合はないか、又保安庁警備隊との連絡状況如何、内部監察方法如何等の問題について調査をいたしました。
第四に、保安隊第四管区総監部については隊員の募集状況や演習地接収の状況等について調査をいたしたのであります。
第五に、長崎及び福岡両県庁においては内部行政監察機構とその運営方法について、又米駐留軍又は国連軍の不動産接収関係及び労務調達関係等において懸案となつておるものはないか、地方事務所の事務運営について改善を要すと認められるものはないか、更には国の出先機関との事務連絡上改善を要するものはないか等の問題について調査をいたしました。
最後に、福岡通商産業局でありますが、他の通産局に比し事務処理上特異のものありや否や、通商産業省の権限を地方の通商産業局へ移譲するを適当と認むるものありや否や、又現在の定員で事務処理上支障はないか等の問題について聴取をいたしたのであります。
なお、この機会を利用いたしまして、福岡調達局の佐世保出張所に参つて、過般呉において問題となつておつた国連軍関係の補償問題が佐世保においてはどうであるかを調査をいたしました。なお又朝鮮人の密入国者等を収容しておる法務省所管の大村入国者収容所の状況を視察いたしました。
大体以上のような問題点に基いて調査いたしましたが、極めて短期間に視察して参りましたので、十分委曲を尽し得なかつたのであります。従いましてそれぞれ問題について結論を下すまでには至つておりません。調査の詳細は各問題点についてそれぞれ説明資料が専門調査室に整備されてありますから、御必要に応じてそのほうを御覧頂くことといたしまして、御報告を省略させて頂きます。ここでは調査によつて大よそ私が受けた印象なり気付いた点なりを若干御報告申上げるにとどめたいと思います。
第一に管区監察局及び地方監察局であります。ここでは中央で決定された計画に従つて重点的に監察が進められておるのでありますが、例えば第三四半期の監察によると、営林局や地方建設局或いは農地事務局等について定員外の常勤職員の実態調査、戦傷病者、戦被者遺家族等の援護に関する行政監察、郵政省所管の郵便物運送業務の監察、農地及び農業用施設災害復旧事業の監察、或いは建設機械運営状況の監察等を実施しております。監察の結果によると、不正事件、違反事件又は事務処理上改善すべき点等少くなく、これら是正によつて国費の節減に相当寄与し得ることが指摘されております。これら事情をいろいろ聴取いたしました結果、今日におきましては監察業務の極めて必要なることを痛感した次第であります。
なお、附加えて申上げますと、只今読上げましたような各項目は、先方からの依頼もあり、独立することによつて能率を高めることができるか等の調査をも兼ねてやつておりますので、相当効果が挙つたという報告をも受けたのであります。
第二に、調達局でありますが、福岡管区では、飛行場、演習場、射撃場等土地関係や住宅施設等の建物関係、或いは海面等の問題で現地住民との間に数々の紛争が生じております。言うまでもなく、当局の仕事の多くは駐留軍の必要とする諸施設や区域の提供と、これらの使用解除に伴う損失補償等の仕事であります。従いまして調達局は、駐留軍に対する協力の履行と国民の損失被害の救済、言い換えれば、軍の要求と国民の利益との調整という極めて苦しい立場にあるということ、又加うるに事柄の性質上、業務内容もおのずから複雑且つ困難であるということ等、その間の事情が十分窺えたのであります。これらの点から考えまして、間接調達が直接調達に変つたから業務の分量も減少しておるとは直ちに断定できないのではないか、むしろ定員が削減された今日では相当苦労を重ねておるというのが現状ではないかと感ぜられたのであります。なお、日米合同委員会と外務省、農林省及び調達局との間において、これら業務の処理上すつきりしたルールがないため取扱上頗る困難を来しておるから、この点日米合同委員会の話し合いの中心は調達局であるように是正をしてもらいたい旨が強調されました。又調達業務の永続性がないかも知れんということのため、職員の身分保障という点で根本的不安が終始職員の念頭を去らない点について訴えられたのであります。なお、又附加えますが、佐世保に参つて、呉におけると同様の国連軍関係の補償問題の有無を確めたのでありますが、ここには国連軍は駐留しておらないので、かような問題は生じていなかつたのであります。
第三に、長崎海上保安部であります。ここは只今のところでは取り立てて問題もないようですが、ただ海上公安局法の設置の問題、つまり海上保安庁の業務のうち海難救助、海上犯罪の取締を行う部門を海上公安局として保安庁の附属機関とする問題、これは先般の国会において施行延期となつておるのでありますが、この問題について、保安庁の性格上或いは海事行政の一貫性の点、その他いろいろ理由はありまするが、これらの点から海上公安局を設けることは極めて問題である旨が述べられたのであります。これは当委員会においては将来の問題でありますが、今日より慎重に研究すべき課題であると思います。なお附加えまして、長崎の海上保安部については、韓国の沿岸に近い所まで乏しい船舶を割いて漁船の保護に廻つておりますので、これが一週間以上の航海を経て帰つて参りますが、非常な困難を冒しでやつておる。船が乏しいところに人も乏しく、而も労務が烈しい、誠に同情すべき点を見て参つたのであります。
第四に、保安隊第四管区総監部であります。本年は内容的に充実強化したいとの意図の下に車輌、通信機械の装備に力を注いでおり、又現地部隊も一途に訓練によつて鍛えたいとの方針をとつておるとのことであります。訓練の現場や宿舎、その他諸施設を拝見しましたが、相当の成果を挙げておる模様が看取されました。割合にすべての状況が明るく朗らかに取運ばれておるようであります。なお又今日ではパーヂ解除の旧正規将校の幹部が相当数おり、全体数の約一割を占めているということ、募集状況は、第一次募集以来全国第一位の成績であるということ、演習地は米軍使用のものを借りており、独自の演習場がないので困つており、これが確保に努めておるということ等いろいろと困難な状況を聴取いたしました。
第五に大村入国者収容所であります。この収容所には終戦前から日本におる朝鮮人で旧登録令の手続を違反しておる者及び朝鮮人の不法入国者が現在全部合せて四百九十人収容されております。これまでに朝鮮へ送還された者は五千四百二十七人でありますが、手続違反者は韓国政府においては国籍がきまらぬとの理由で受入れを拒否しておるため、収容者数は増加の一途を辿つておるとのことであります。従つてここに収容せられておりまする五百人に近い者は、不当拘束を理由とする釈放要求や待遇改善要求等のために騒動がこれまでたびたび起つておるのでありますが、当局としては速かに日韓関係の整備、施設改善等を要望しておることを見て参りました。この収容所は大村の湾に近い、元の飛行場の建物を利用しております。そうして収容者を入れております所は、丁度刑務所と同じように、非常に厳重な囲いがしてありますにもかかわらず、数カ月前に暴動が起つて、建物を叩きこわした、塀をこわしたというようなことから、今度はその外廻りに見上げるような高いコンクリートの塀をこしらえ、四隅に高い監視所を設け、刑務所以上ともいうべき手厳しい監視をいたしております。今までは外での運動も許し洗濯等も行われておつたそうでありますが、最近にそういうことがありましてから全部家の中に閉じ籠めておりますために非常に不平が多い。陽の目を全く見ないのだというので、運動も外に出さないというところから非常な不満を訴えております。これは誠に気の毒なのでありますが、併し今日の法規の上から何ともいたし方がない、強制送還もできない、向うで受取らないというのであります。で、私はこれら朝鮮人の収容状況を監察し、彼らからいろいろな訴えも聞きました直後に、佐世保に参りましたところが、町中で前方から来る多数の、丁度元の日本の海軍水兵のごとき一団に出会つたのであります。その顔色から見ても、服装から見てもどうしても日本の海軍水兵のような感じがしましたので、立ちとまつて聞いてみますというと、これは韓国の水兵であります。一方には鉄筋コンクリートの高塀の中に密入国者或いは被送還者として収容せられておるにもかかわらず、佐世保の市内では何ら関係のない韓国の軍艦が入港し、韓国の水兵が市内を横行濶歩しておるという、誠に矛盾した現状を目撃して参つたのであります。私はこの間に大きな矛盾を感ずると同時に奇異の念を抱くことを禁じ得なかつたのであります。なおついでに私は市役所の船を出してもらいまして、佐世保湾口の防潜網を見て参りましたが、相当大規模のもので、これじや魚も入つて来ないのであろうと素人目に見て参りました。
なお通産局につきましては特に申上げることもありませんから、省略いたします。
第六に、県庁であります。福岡県は知事独自の構想として、内部行政監察機構を設置しております。これは地方自治法の規定による監察委員制度とは別個のものであつて、人事課、税務課及び土木部管理課にそれぞれ監察業務担当の係又は専門機構を設けて監察を実施しておるとのことであります。又長崎県においても同様に内部行政監察制度を設けて近く実施せんとしておるとのことであります。これは最近における目立つた一現象と見ることができましよう。あらゆる公けの機関の内部が非常にいろいろな問題を起し、不祥事を続出いたしますので、お目附役の上に更にお目附役がいる、全く日本の中央でも地方でも公務員制度の上における疑惑がたび重つて、屋上屋を架するような人を積重ねなければならないということは遺憾であることを見て参つたのであります。
次に、県が国から委託されて行なつておりまする駐留軍に対する労務調達関係における問題でありますが、駐留軍がその使用しておる日本の労務者を一方的に不当解雇をするという点について労務者側から極めて強い抗議が出ておるということであります。即ち現在使用主は軍側であり、これに対し雇用主は日本政府となつて、いわゆる間接雇用の形式がとられておるが、実際には現在軍が雇用主的立場で使用権を行使しておるため、身分関係のすべてが軍の指示方針により一方的に処理されておるのが現状であるというのであります。この問題につきましては福岡、長崎両県とも完全なる労務管理が実施でき得る実質的雇用主としての責任分野を判然とした日米労務契約の速かなる締結を望んでおるのであります。
最後に総括して各行政庁の定員、予算等について申上げますと、各庁を通じて相当窮屈な模様でありますが、特に調達局及び監察局におきましては人手が不足しておる点、旅費が極めて削減されておる点、又監察局におきましては今後職員の研修が特に必要と思われるのにかかわらず、この研修に関する予算が極めて僅少である点等が強く訴えられました。
なお、要望事項についてはこのほかいろいろと詳細に亘つて聞いて参つておりまするが、これらにつきましては別に専門調査室において記録が整備されておりまするから、御必要の場合にはそのほうで御覧を願いたいと思います。
以上簡単に御報告申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514889X01619530309/4
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005・竹下豐次
○委員長(竹下豐次君) この問題につきましてはあとの機会に譲ることにいたしまして、本日はこれで散会いたしたいと思います。
午後三時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101514889X01619530309/5
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