1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年三月六日(金曜日)
午前十一時三十一分開議
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議事日程 第三十号
昭和二十八年三月六日
午前十時開議
第一 医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案(藤原道子君外七名発議)(委員長報告)
第二 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)(委員長報告)
第三 輸出品取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/0
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001・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。
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002・三木治朗
○副議長(三木治朗君) これより本日の会議を開きます。
この際お諮りいたします。中共地域からの帰還者援護に関する特別委員長から、舞鶴における中共地域からの帰還者受入施設について実地調査のため、京都府に、大谷瑩潤君、常岡一郎君、藤原道子君、堂森芳夫君、紅露みつ君、飯島連次郎君、須藤五郎君を、本月十一日より三日間の日程を以て派遣されたい旨の要求書が提出されております。委員長要求の通り議員を派遣することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/2
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003・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求の通り議員を派遣することに決しました。
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004・三木治朗
○副議長(三木治朗君) この際、日程に追加して国家公安委員の任命に関する件を議題とすることに御異議、ございませんか。
[「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/4
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005・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。去る三日、内閣総理大臣から、警察法第五条の規定により、国家公安委員に金正米吉君を任命することについて、本院の同意を求めて参りました。本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/5
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006・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本件は全会一致を以て同意することに決しました。
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〔小林亦治君発言の許可を求む〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/6
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007・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 小林亦治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/7
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008・小林亦治
○小林亦治君 私はこの際、食糧増産計画達成に関する緊急質問の動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/8
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009・小笠原二三男
○小笠原二三男君 私は只今の小林君の動議に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/9
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010・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 小林君の動議に御異議、ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/10
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011・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。小林亦治君。
〔小林亦治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/11
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012・小林亦治
○小林亦治君 私は、第十二国会以来、本会議の壇上から、或いは委員会の席上において、国内食糧の自給度を完遂することが日本の独立への最大条件であることを強調し、その余地の十分に存することを唱えて参つたのであります。政府も又輿論化したこれらの主張に応えて昨年八月、食糧増産計画として今後十カ年を予定し、差当りその五カ年計画として内容を発表するに至つたのであります。併しこれは、当時私が指摘した通り、自由党のいわゆる選挙政策の一つでありまして、見せかけの看板に過ぎなかつたことを、今回の予算案の編成に当つて明かにその欺瞞性の正体が暴露せられたのであります。たそがれかかつてお先の見えて来たところの吉田内閣に対し、今更、国の恒久政策の抱負を質すことは、あたかも断末魔の病人、死にかかつておるところの患者から遺言を聞くようなものかも知れませんが、(笑声)ともかく当の吉田内閣が今日なお存在しており、而も二十八年度予算案が本院に上程されかかつておる現状から、政府の諸君が果してどの程度の御見識と良心を持つておられるか、委員会におけるところの私のしばしばの質問に対しては当を得ませんので、念のために、吉田内閣の最後に、当本会議においてこれを質しておきたいというのが、私の質問の趣意でございます。
昨年の八月、農林当局が食糧増産計画を発表するに当つて「戦後の食糧危機は、供出の強化と、莫大なる輸入補給金と外貨を使い、農家経済と財政及び国際バランスに大きな負担をかけて漸く切抜けて参つたが、而も戦後の険悪な国際情勢を背景に考えるときに、食糧の国内自給度を急速に強化する必要があり、而も土地条件において増産の余地は十分に存するが故に、この可能性を現実のものとするがためには、確固とした計画の必要を感ずる」と述べられて、漸く百年の大計に目覚めた発表をいたしたのでありまして、即ち、将来の食糧不足見込量が、人口増加による消費増を加算して、二十八年度の二千四百二十八万石、二十九年度の二千六百六十四万石、三十年度の二千八百九十七万石、三十一年度、即ち五カ年後は三千百二十七万石不足する。これに対し、農地の改良、開墾、干拓等により、対象事業量十三万三千町歩、増産量の集計が昭和三十一年度においては千十五万石の供給増加が得らるるものとして、これに要する経費、財政支出額五カ年間の累計二千五百億円、融資約一千億円、なお、地方財政負担の四百億円を加え、総計三千九百億円を見積つたのであるが、農林省のこの案の欠陥は、農民課税の軽減、農産物価格の保障、開拓に対する大幅な助成、農村金融の拡大、山林地主の土地開放等の根本策に触れず、或いはこれを見落しておる点にあるが、ともかく、言うところの百年の大計とはおよそ縁遠いものがあるのであります。それにしても、従来のお情け的な農業政策を切替えるためには、第一次的施策といたしまして少くとも政府はこの政策を断行して、国民の要望に応え、公約を果すべきであります。然るに、昭和二十八年度農林予算の要求額二千六百億円の半分、千三百億円に削つてしまい、積極的なる政策を全部潰してしまつて、昨年の千四百七億円よりも下廻つたところの千三百八十三億という、けちなところに落ちつけようとしておるのであります。もはや、かくなつては自由党農政も頭打ちであります。農政の恒久的根本策など求めるほうが無理かも知れません。農林予算は当面の国政の基本政策であり、いずれの行政部に比較しても、より重要なものでありまするが、大幅に予算を削つたところの当の大蔵大臣は、食糧政策が国策全体に対して占めておるところの重要性を如何ように見積つておられるか、折角の増産五ヶ年計画を潰して顧みなかつた理由をここに明かにせられたい。大蔵大臣はおられないようでありまするが、おられないならば、書面でなり、目を改めて本会議においてなり、釈明を願いたい。
更に新農林大臣に伺いたいのでありまするが、国際関係がかようにだんだんと悪化して参る傾向にあるときに、僅か五万石の輸入をするといたしましても、それに払うところの犠牲は莫大であるのに、今日、年間二千万石、三百万トン不足しておる。これに二百六十億円という莫大な補給金を払つて輸入に仰いで参つたのでありまするが、今後は、アメリカ或いはタイ、これらを主といたしましても、たかだか百万トン以上の輸入はむずかしい。吉田内閣は麦を食えというのでありまするが、麦すら食えないような状態になつたら一体どうするか。財政支出の上から困難であるなどというしばしばの当局の言葉は、食糧自給の重要性に鈍感であり、増産余地の存する現状に対しては色盲であると同時に、政治的には無能無策であると申さなければなりません。(拍手)殊に山林地主をそのままにしておいて、農地改革が終つたかのごとき説明をなすに至つては、その不見識と無良心はともかくとして、そらぞらしい限りと申さなければならないのであります。
以上に関して政府の諸君の責任のある答弁を要求いたしまして、再質問を留保いたします。(拍手)
〔国務大臣田子一民君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/12
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013・田子一民
○国務大臣(田子一民君) 只今の御質疑にお答えいたします。我が国の食糧増産の極めて重大でありますることは、只今小林議員もお述べになりました通りであります。政府においても全然同感であります。今、予算面につきましてその少額なるがごときお話がありました。この政府の増産五ヶ年計画なるものは、必ずしも二十八年度と限つたものでないのでありまして、この五年間、次の五年間、合せて十年間に所期の目的を達成せんとするものでありますから、年度限りの財政事情をいろいろ勘案をいたしまして、かような結果になることを御承認を得たいと思うのであります。なお本年は、米産の増産につきましては、昨年度より僅かでありますけれども百億の増加を見ておるのであります。なお、財政と食糧の増産計画についての大蔵大臣の御意見は更にあろうと思います。
次に輸入米の問題について御指摘がありました。二十八年度の輸入計画量は一応三百三十五万トンでありましてそのうち米九十六万トンであります。本年度の計画よりは若干下廻つておるのでありまするが、これは、国内の食糧の生産量、持越量、輸入量の持越量等の、供給面と消費見込とを勘案いたしまして算出したのでありまして、計画上、数字上の齟齬はないことを信じておるものであります。(拍手)
〔政府委員愛知揆一君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/13
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014・愛知揆一
○政府委員(愛知揆一君) お答えいたします。
食糧の自給度の向上を図るということが基本的に最も大切な政策でありますることは、申上げるまでもございません。二十八年度予算におきましては、食糧増産対策費として計上いたしました予算は四百九十二億二千六百万円でございます。これは二十七年度の食糧増産対策費の四百二億七千六百万円に比較いたしますれば八十九億五千万円の増額でございます。二二%強の増額になつておるのでありまして、一般会計歳出の平均の増加率が三%弱と比較をいたしますれば、食糧増産対策に重点を置きましたことは明白でございます。又、農林漁業金融公庫に対しまする財政投融資は、二十七年度の二百五億円より二百三十億円に増額をいたしております。土地改良事業関係への融資の割当は、二十七年度百億円に対しまして百十二億円に増額をいたしております。耕種改善事業等その他に対する融資も相当額の増額をいたしております。先ほど御指摘の農林省の食糧増産五カ年計画と申しますものは、お話の通りその総財政支出は融資を除きまして三千二百八十二億円を所要するという計画でございます。この計画に基きまして二十八年度にできれば九百六十二億円を計上いたしたいというのが、この五カ年計画の農林省案であつたわけでございますが、これに対しまして大蔵省といたしましては、全般の財政事情を勘考いたしましてなお且つこれに重点を置いて、今申しましたような予算を組んだわけでございます。併しながら、これは単純に今申上げましただけで事足りると思うものではないのでありまして即ち、積極的に増産も無論必要でありまするが、河川の氾濫等によりまして荒廃して参りまする耕地を守ることも、先ずそれに先んじても必要とも考えられるのでございまして、かくのごとき観点から、治水、砂防、河川改修等の事業につきましても十分の予算を組みました次第でございますから、御了承願いたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/14
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015・三木治朗
○副議長(三木治朗君) 日程第一、医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案(藤原道子君外七名発議)を議題といたしましす。
先ず委員長の報告を求めます。厚生委員会理事藤原道子君。
〔藤原道子君登壇、拍手〕
〔「厚生大臣どうしたんだ、政府委員誰もいないのか」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/15
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016・藤原道子
○藤原道子君 只今議題となりました医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案の委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。
先ず、本案は藤原道子議員ほか七名の提案でありまして、三月四日の厚生委員会におきまして藤原議員より提案理由の説明がなされたのであります。その概要を申上げますと、医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律は、医師法第十二条に対する特例でありまして、従来大陸向けの医師の養成を目的としていた医学校の卒業者や、朝鮮総督の行なつた医師試験の第一部試験に合格した者、満州国の行なつた医師考試に合格した者等に対しまして、医師になる途を開くため制定されましたものであります。併しながら、これらの人たちと比較して、医学に関しましては同筆以上の知識及び技能を有しながら、
〔副議長退席、議長着席〕
終戦後の医学教育制度の改革によりまして医師になる途が全く閉ざされている人たちが、現在まだ約四十人くらいおるのであります。それは、昭和二十二年三月、関係方面より発せられました医学専門学校の整備に関する勧奨に基きまして、卒業を目前にして廃校となりました元福岡県立医学歯学専門学校の第四学年を終了した人たちなのであります。この人たちに対しましては、他の医学専門学校、大学予科、又は高等学校へ転入学が許され、医師となり得る措置がとられたのでありますが、地理的、経済的条件その他の理由のため、他校への転入学は断念しなければならなかつたのでございます。併しながら、この人たちは、歯科医師としての免許はすでに有し、更に医学の過程をも終了しており、専門知識技能の点においては現在の特例の対象者と比較しても何ら劣らない実力を有しておりながら、受験資格を認められていないため医師になる途が閉ざされておるのであります。そこで、この人たちに現在の対象者と同様に医師国家試験予備試験の受験資格を認めて、折角身に付けた医学に関する知識と技能を発揮させる途を開いてやりたいという趣旨であります。
次いで質疑に入りましたところ、政府委員より本案に対しまして希望意見が述べられ、又委員より質疑がなされたのでありますが、その詳細は速記録に譲りたいと存じます。かくして質疑を終了いたしまして、討論を省略し、採決に入りましたところ、全会一致を以て本法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました次第でございます。
右御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/16
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017・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/17
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018・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
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019・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第二、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。法務委員長中山福藏君。
〔中山福藏君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/19
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020・中山福藏
○中山福藏君 只今上程されました下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案の委員会における審議の経過とその結果について御報告いたします。
この法律案は、牛窓簡易裁判所ほか七簡易裁判所の管轄区域の変更及び大湊簡易裁判所等、簡易裁判所の名称或いは所在地の変更をなさんとするもので、主として行政区画の変更に伴うものであります。委員会におきましては慎重に審議をいたしまして、先に審議した大湊簡易裁判所の移転に関する請願について質疑がなされました。討論に入りましては別に発言なく、採決いたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定いたした次第であります。
簡単ながら御報告申上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/20
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021・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/21
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022・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/22
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023・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 日程第三、輸出品取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
先ず委員長の報告を求めます。通商産業委員長結城安次君。
〔結城安次君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/23
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024・結城安次
○結城安次君 只今議題となりました輸出品取締法の一部を改正する法律案につきまして、通商産業委員会における審議の経過と結果について御報告いたします。
御承知の通り、輸出品取締法は輸出品検査に関する基本法でありまして昭和二十三年の制定以来、二回に亘り改正を加えられたものでありまするが、念のために現行検査制度の要旨を申上げますると、先ず主務大臣が輸出品目を指定いたしまして、そのおのおのにつき、等級、輸出の最低標準、又は包装条件を公示しております。そこで、一般の検査品目に関しましては、輸出業者又はメーカーが、公示された標準又は包装条件に基きまして自家検査を行い、一定の様式に従つてその輸出品に検査の結果を表示すれば自由に輸出品ができることになつております。
次に、四種類の特定検査品目に関しましては、当局の登録を受けたもの又は政府機関のみが表示できる制度であります。なお民間の表示を的確に実行せしめるため検査官による臨時検査も行なつております。ところで、現在の制度は、かくのごとく業者の自家検査を主体とし、いわば一面において進歩的なものでありまするが、他面におきましては我が国の貿易の実情に必ずしも即応したものとは称しがたい点がございます。殊に最近の我が輸出品に対する諸外国の批判は厳しく、事実、輸出品に関するクレームの半数は品質不良に起因することを考慮いたしますると、いよいよ競争激化化を予想せられまする国際市場においてこの制度を輸出振興の一助たらしめるには、如何にしても、特に品質の確保向上を期待し得るように現行の取締法を改正して検査制度を確立する必要が生じたのでございます。
改正の要点の第一といたしましては、品質に関する最低標準を定め、それ以下の品質の商品は輸出を禁止するというところの範囲を拡充できるようにいたしたのであります。第二といたしましては、仕向地の特殊事情に応じまして、特定地向けの輸出品に関しては、一般と異なる最低標準及び包装条件を定むることができるようにいたしたのであります。第三といたしましては、右のように厳格にする必要のないもの、例えば本邦にある外国公館が発送する貨物及び救恤品などのように、それが輸出品の声価を害する虞れがないと認めた範囲につきましては、この適用を除外するごとにいたしたのであります。第四といたしましては、検査機関の充実を期するために、被登録者の登録基準を引上げ、必要な設備と十分な検査人及び事務所を有し、公正な表示業務が可能なものにつきまして登録することといたしました。且つその数も著しく過剰にならぬように制限することといたしております。第五といたしましては、検査機関たる被登録者の業務規程について主務大臣の認可を要することといたしまして、被登録者に対する監督を十分に強化いたしております。第六といたしましては、行政庁のみでなく、被登録者の行なつた処分に対して不服ある者にも聴聞会開催の請求を認めるなど、不服申立の途を開いていることであります。
以上のごとく、本改正は、現行法が主として自家検査に任せていた転出品検査を第三者による公正なる検査を主とするものに切替え、検査機関の充実を期待すると共に、これに対する監督を厳重にするものでありまして本委員会におきましては各方面の実情などをも聴取し慎重に審議を重ねました。その間、各委員より質疑が行われましたが、その主なるものは次の通りであります。即ち、「もつと検査を強化するような根本的改正が必要ではないか」という御質疑がありましたのに対し、政府当局より、「漸進主義で行きたい」という答弁でありました。又「検査機関の検査をパスした輸出品にクレームが生じた場合の責任や補償はどうか」という質問には、「立証が困難な場合もあるが、輸出信用保険を活用するなど、何らかの形で救済する必要を認める」という答弁で、ございました。それから「事業協同組合が、その事業の一部として検査を行うとか、或いは専門に検査のみを行う組合として登録を願い出た場合、その登録者はどう取扱われるか」という質問に対しましては、「検査員の身分が保証されており、公正な検査を行い得る場合には、登録するようにしたい」との答弁がありました。その他、検査員の素質向上策や国際商事仲裁委員会及び軽目羽二重の問題などにつき質疑が行われました。
かくして質疑を終り、討論を省略いたしまして、採決に入りましたところ、全会一致を以て本改正法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
以上を以て御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/24
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025・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/25
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026・佐藤尚武
○議長(佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。
本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時五分散会
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○本日の会議に付した事件
一、議員派遣の件
一、国家公安委員の任命に関する件
一、食糧増産計画達成に関する緊急質問
一、日程第一 医師国家試験予備試験の受験資格の特例に関する法律の一部を改正する法律案
一、日程第二 下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案
一、日程第三 輸出品取締法の一部を改正する法律案発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101515254X03119530306/26
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