1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月十六日(木曜日)
午前十一時四分開議
出席委員
委員長 久野 忠治君
理事 瀬戸山三男君 理事 田中 角榮君
理事 中島 茂喜君 理事 安平 鹿一君
理事 山下 榮二君
逢澤 寛 君 岡村利右衞門君
高田 弥市君 仲川房次郎君
堀川 恭平君 山田 彌一君
村瀬 宣親君 三鍋 義三君
中井徳次郎君 高木 松吉君
出席国務大臣
建 設 大 臣 戸塚九一郎君
出席政府委員
建設政務次官 南 好雄君
建設事務官
(大臣官房長) 石破 二朗君
委員外の出席者
建設事務官
(大臣官房建設
業課長) 宮内 潤一君
専 門 員 西畑 正倫君
専 門 員 田中 義一君
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七月十五日
駐留軍施設による損害補償等に関する請願(松
岡俊三君紹介)(第三九六一号)
二級国道佐賀諌早線改修工事施行の請願(三池
信君紹介)(第三九八六号)
災害復旧事業の早期完成に関する請願(高津正
道君紹介)(第三九八七号)
北山崎村海岸地盤沈下対策確立に関する請願(
武知勇記君紹介)(第三九八八号)
三重県住宅組合に住宅資金融資の請願(山手滿
男君紹介)(第四〇三三号)
都市復興対策協議会設置の請願(鈴木茂三郎君
紹介)(第四〇三四号)
戦災復興再検討五箇年計画完遂に関する請願(
鈴木茂三郎君紹介)(第四〇三五号)
戦災復興再検討五箇年計画に伴う関連整備事業
促進に関する請願(鈴木茂三郎君紹介)(第四
〇三六号)
住宅建設促進に関する請願(鈴木茂三郎君紹
介)(第四〇三七号)
土地整理法制定に関する請願(鈴木茂三郎君紹
介)(第四〇三八号)
高速度自動車道路開設促進に関する請願(大上
司君紹介)(第四一〇〇号)
新旧北上川下流改修工事施行の請願(内海安吉
君紹介)(第四一一〇号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
耐火建築促進法における建築地帯の設定に関す
る陳情書
(第八三二号)
災害復旧促進に関する陳情書
(第八七二号)
同
(第八七三号)
災害復旧工事三箇年完遂等に関する陳情書
(
第八七四号)
工鉱業地帯整備促進法制定に関する陳情書
(第九二六号)
木曽川等災害対策に関する陳情書
(第九二七号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
建設業法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一五四号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/0
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001・久野忠治
○久野委員長 これより会議を開きます。
ただいまの理事会で、建築士法の一部を改正する法律案、建築基準法の一部改正案を提案することに決定をいたしました。ついてはこの法案提案について御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/1
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002・久野忠治
○久野委員長 御異議なしと認めます。よつてさよう決定いたしました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/2
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003・久野忠治
○久野委員長 次に、建設業法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引続き質疑を継続いたします。質疑の申出があります。よつてこれを許します。田中角榮君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/3
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004・田中角榮
○田中(角)委員 建設大臣がおいでになつておりますから、建設業法の改正案につきまして、根本的な問題に対して二・三ただしておきたいと思うのであります。
建設業法を制定いたします当時から、問題になつておつたわけでありますが、この法律は、国家予算面に非常に大きな地位を占めておるところの建設業に対して、当時準拠法がなかつたのでありまして、国家的な見地からこの法律を立法いたしたわけであります。当時は建設業者に対する一つの育成指導という面も大きく出されておつたのでありますが、業法の成立以来の状況を考えてみますと、審議当時も問題になつておつた穴と申しますか、多少この法律の不備の現象が随所に発見せられるような状態であります。その一つに、業法が登録制度でありますので、実際問題として知事登録業者等につきましては、この法律が公布せられない以前において業者として認められるものは、当時直接国税を幾ら納めるとか、いろいろな規定で制約があつたわけであります。現在は書類審査が終れば、届出によつて業者の営業が開始せられる状態でありますので、この法律ができた結果、非常に業者がたくさんできたという現象は、いなめないわけであります。なお、現在におきましても、この法律がありますために業者は幾らでもたくさんできるわけであります。そればかりではなく、破産したもの、政府支出の工事等を請負つた業者が倒産したような場合、第二会社的な整理の方法をとらず、同じ陣容でもつて別な会社が、前の会社の経歴やその他の施設を、法律によらずしてただちに受継いだ形式をもつて届け出たもりさえも許可せられているのが現状であります。もちろん業者の数が非常に多いのでありますから、これが実情の把握に困難を伴うことは十分承知をしておりますが、現在の段階を続けて行くときには、まさに業者の氾濫というようなことにもなりますし、悪く展開すると、昔あつたように二枚看板というような業者の続出も考えられる状況。ありますので、私たちも、当時からこの登録制度を、相当な線を引いた許可制度にしなければならぬのではないかという考えを持つておつたわけでありますが、主管大臣であるところの建設大臣は、この問題に対していかなる所見をお持ちになつているか、まず第一にただしておきたいと考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/4
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005・戸塚九一郎
○戸塚国務大臣 現在の社会の実情から見て行つて、ただいまお話があつたように、業者の氾濫というような状態が確かに認められると思います。ことに破産、倒産をしたようなものが、名前をかえ、ちよつと形をかえただけでというようなものも、ずいぶん例があることは、寡聞であつても承知をいたしております。そういう点から、業者に対する扱い方については、まだ考えられなければならぬ点がたくさんあると思います。また登録制がよいか、あるいは許可制まで進まなければならないかというような点についても、これは考えなければならぬと思うのでありますが、ひとしく登録制といたしましても、登録の内容について、十分研究を重ねて行くやり方もあるかもしれない。また許可制ということになれば、特に基準について、いろいろ研究をしなければならぬことがあるのではないかと思うのであります。業者の取締りというような扱い方については、もつと今後考えなければならぬ点があること、また現在の実情でよろしいというふうに考えるのは間違いだということは、確にそう思いますが、建設当局としても、この問題については、常に研究はいたしておるところであります。もう少し慎重に考えさしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/5
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006・田中角榮
○田中(角)委員 もちろんこの問題は、大臣が言われるように、及ぼすところが非常に大きい問題でありますので、早急には、解決点は見出せないと思うのでありますが、ただいま申し上げたような現象がありますので、十分慎重なる御研究を重ねられんことを、要望しておく次第であります。
第二の問題は、この間新聞にもありました通り、九州災害の処理に関して、特別委員会がつくられておるのであります。もちろん私たちは、衆参両院にあのような特別委員会をつくるべきではなく、本質的に建設委員会で行うべきであるということを、多年主張はしておつたわけでありますが、急を要する特別な事態に対して、あの種の特別委員会がつくられたことに対しては、やむを得ないと考えておるわけでありますが、こういう委員会において、会許検査院が、水害の起きた原因は、工事が九〇%も不正工事であつたというようなことを発言しておるように、新聞は報道しております。私たち建設委員会としては、このような証言に対しては、非常に重大な関心を持つておるのでありまして、災害が起きるということは、抜本的な治水、利水計画が完備しておらないという問題と、戦後の新しい視野に立つた治水計画が立案せられなければならないのであります。にもかかわらず、長い間の習慣として、古いデータに基いて建設工事が行われておるという現状と、もう一つは今まで占領軍治下において、予算区分が非常にうるさかつたのと、認証制度その他によつて、治水工事を行うのに大きな盲点がたくさんあつたために、工事が円満に遂行できなかつたというような問題、特に今年のように暫定予算を七月まで組まなければならなかつたような予算的措置の問題、もう一つは治水政策に一貫性のないこと、いわゆる継続的な事業は、ようやく昨年度あたりから本格的に考えられたのでありますが、総体的な国家予算のうちで、治水事業に対するわくが少いために、このような洪水が起きると、われわれ委員会は常に叫んで来ておるのであります。その上になお、行政機構の不完備のために、九割も不正工事があるというような非常に大げさな発言に対して、私たちはそのようには考えておりません。しかし治水の大事業を進めて行くためには、大衆に対して非常な悪影響があることを、私たちは非常に遺憾に考えております。そういうふうな事情もありますし、特に私たちは二十二年、二十三年に行われた直接工事の幽霊人夫の問題等を考え合せて、暫定予算の現在においては、特に直営工事等に対しては万全の処置を講じられたいという警告も、すでに前国会において発しておるわけであります。にもかかわらず、あのようなことを言われることは、どうも当委員会としては、はなはだ心外に考えておるのでありまして、これが処置に対しても、建設業法の改正案に対しては、根本的な策を考えなければならぬと考えておるわけであります。これに対しては、建設業法があるにもかかわらず、各省は各個ばらばらの内規によつて、請負業者を指名したり選定しております。農林省におきましては、農林関係技術者何名以上とか、国鉄においては国鉄に関する技術者何名以上とかいう、ある意味においては法律よりも強い習慣をもつて、現実的には縛つておるのであります。私は建設業法という準拠法がある以上は、この法律で認定するもの以上のものは、政府及び公共団体等で扱う業者としては、当然入札資格が与えられなければならぬし、またこれで処罰を受けたようなものは、当然各省の内規等よりも優先して処置せられなければならないというのでありますが、どうも建設業法は、先ほども申し上げた通り、業者をふやすためにだけあるようでありまして、国家支出が適正に使用せられるためなどには、ほとんど使われておらないというふうに見るのが正当のように考えております。その意味においては、建設業法を廃止してしまつた方がいいのじやないかというような極論も出るわけであります。そういう意味におきまして、私はこの法律が公布後すでに何年間も過ぎておるのでありますから、この法律によらなければ国費支弁の工事の業者は選定できない、またいろいろな事件の対象になるようなものはこの建設業法でもつて処罰して行く、処理をして行くというふうなところまで行かなければ、この法律の存在価値はないと考えておるのです。この法律を執行しておられる建設大臣は、もちろんこの問題に対して深い関心を持つておられると思うのでありますが、将来どういうふうにしてこの間の調整をとつて行かれるか、お気持をひとつ官房長でも課長でもけつこうですから、技術的な面から伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/6
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007・石破二朗
○石破政府委員 ただいまの田中委員の御発言、まことにごもつともでありまして、われわれといたしましても、ぜひもう少し建設業法を骨のあるものとして、しつかりした工事ができるようにやつて行きたいとは考えておりますが、ただいまのお話の中にありました業者の指名の基準の問題にいたしましても、御承知の通り、中央建設業審議会の議を経まして、入札合理化対策の一環として、各業者の点数を計算して発注者側にお示しして、できればこれによつてやつていただきたい、こういうふうにしているわけでありますか、何分にもまだ制度を制定いたしましてから日も浅いことでありますし、私の方の手が十分でない——能力がないといえばそれまででございますけれども、要するに業者指名の基準一つをとつてみましても、一応つくつて発注石側には示しておりますけれども、必ずこれによれと言うだけの確信のある基準が、実はまだできていない状態でございまして、ただいまの御趣旨の点は、われわれもまつたく賛成でございますが、やはりいましばらく時日をかしていただきまして、だんだんにその理想に向つて行く以外には、われわれといたしましては、目下のところないわけでありまして、その間は不十分ながらも工事の監督を厳正にいたしますとかなんとかして行かざるを得ぬのじやなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/7
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008・田中角榮
○田中(角)委員 そういう答弁をする以外に道はないということも、質問しながら、私自身も認めておるわけでありますが、先ほども申した通り、国民は九割も不正工事があるなどという記事に対して、非常に不快の念を持つておると考えると同時に、閣内においてさえも、こういう専門的な問題を究明せずして、行政監察を強くすればいいのだというふうな議論があつたのでありまして、当委員会としては、そういう建設的ならざる意見に対しては、強い反対をして来たわけであります。これは普通の委員会を考えますと、行政監察を強くし、監察制度を拡充することに反対をするような行動や発言は、遺憾じやないかということを言つておりますが、この委員会としては、もとをきわめずして、このような処置を講ずることは、まつたく本末転倒の論であるということを技術的に解明しておるわけであります。今まで公共事業が不円滑に行われたということの一つを取上げてみましても、監察制度が複雑に過ぎた。国庫補助の工事一つを取上げてみましても、建設省河川局の監督があり、総理府の監察部の監督があり、大蔵省財務関係の監督があり、会計検査院の監督がする。こういつたすのが六つも七つもあつたから、それを処理するだけでもつて事務系統が非常はふえて来たというのは、直轄事務所——いわゆる内務省土木出張所の当時とは、事業量はかわつておりますが、今の地方建設局を見ますと、事務系統との比率は何倍に上つておるか、これは私が言うまでもありません。この原因は何でもなく、監察がひど過ぎるから、本末転倒の状態を続けて行かなければならぬのであります。こういう事態にもかかわらず、なおこの上監察制度を行うと言われておるのでありますが、過般新聞の報道するところによると、今度の総理府の機構縮小案に対しては、今までの監察部を会計検査院に移すという当委員会、多年の主張に合流して来たことは、非常な進歩だと考えておる。こういうように、しろうとから考えると、監察さえすればいいんだということが言われておるときに、私はくどいようでありますが、いわゆる建設業法というものを早急に改正をして、この業法でもつて縛つてしまう。そしてこの業法によらなければ、国費支弁の工事は行えない。そのかわり国費支弁の工事に対する、そのような輻輳に対する一切の責任は、この業法を、主管しておられる方々が負つてもいいというようにすれば——この業法に、ただいま官房長が言われたように、相当骨を入れなければならぬということだけは、これは非常にむずかしい問題でありますから、もう少し考えますというふうな事態ではない。このようなことを考えておると、当然また行政監察制度が二重にも三重にもなり、八千三百万の国民のうち四千百五十万は警官にしなければならぬというようなばかな状態が私は来ると思います。しかも九州災害の直後でありますので、国民のこの種の問題に対する関心は非常に強いわけでありますから、私たちは協力をあえて惜しむわけではありませんが、こういう法律の改正案を提案する場合には、その根本まで勇敢に断ち割るというところまで、熱意を示されることを希望したい。
第三の問題として、俗にようビッドの問題、いわゆる入札価格に対して、最低限制度を設けてはどうか、こういう根本的な問題に対して大臣の意見をただしたいと思います。この業法を改正しなくても、大蔵省所管の法律等をいじることによつて、十分その効果をあげることもできるわけでありますし、実際においては、各省及び直轄工事は別でありますが、その他の工事は、大体最低線というものを適用しておるわけであります。特に特別市のある市においては、予定価格がいわゆる最低限界線が入札ごとにかわつて行くというような問題は、これはもう業者が非常に多いので、やむを得ず不良業者を一時指名しなければならないのですが、優秀業者に工事を施行せしめたいという場合に適宜とられた手であつて、やむを得ないとい思いますが、こういうように予定線を始終かえて行くというようなことをして行くと、国民から見ると非常に不愉快な、しかも暗い影がつきまとつておるように見られることは当然であります。だから、この際最後の線を引く、支出官に個人的なつながりのあるものが、五分前に引かれた線ぎりぎり一ぱいに入札する、こういうふうなことが大きく問題になつておるのでありますし、そういうふうな実情を繰返しておるから、工事が粗雑になり、不正工事だといわれるのだというように、こういう三段論法で言われて来ますと、これは政治的な立場から大きな問題であると考えておるのであります。そういう意味で、私はここでいろいろな問題はあるけれども、やはり法律でもつて基準をきめて、地方公共団体もこれにならわなければならぬという基準線を打出す時期であると考えております。いろいろむずかしい問題はあります。しかし、大蔵当局が言つておりますように連合軍が調達工事を行つておつた当時の最低線に落すのがいいじやないか、こういうことはしろうと論であります。あなた方がおつくりになつた予定価格というものが、ずさんであつて、絶対に信用が置けないものならば、これは何をか言わんやであります。にもかかわらず、昔は談合問題とか、いろいろ問題があつたときがありましたが、地元の業者等になりますと、面子のために、ただでもいいということがあつたわけであります。ただでやろうという理論は、どこから申しても出ないのでありまして、三分の二もしくは三分の一というような現実的な処置をしなければ、これら不良業者の処置ができないということでもつて、今までのように、現実的には最低線を引いておるというのが現在の実情でありますが、法律によると基準がありませんので、各個ばらばらにその都度々々最低線を引かなければならないということは、われわれ委員会と建設当局とが非常に力を合せて改正を行つた道路法の改正によりましても、各都道府県が各個別別に財源を獲得するために、道路損傷負担金をとつて行くというようなことはいかぬから、これは法律において廃すべきものは廃し、基準を設けて一律にこれを行うべきだというのは当然であります。現状が、私が今言つたような状況でありながら、大蔵省当局の考えのように、安くやる人があるならばそれにやらせばいいじやないか、自分がこの価格でできるといつて請負つた以上は、不正工事などやろうはずはない、やらせるためには行政監察を完全に行えばいい、そして不正工事を行えば処罰をすればいい。これは官僚の考える机上の空論であります。さようなことで祖国の再建ができるはずはありません。私はこのような事務官僚の意見を続けて行くところに、日本の政治の貧困があると率直に認めざるを得ない。だから、私は現在の段階においては、国費支弁の工事に対しては、実際問題として、これを適切に行つて国家目的に合致せしめるためには、最低線を引くことが正しい感覚ではないかと考えておるのですが、これに対して建設大臣のお考えを、まだ時期が早いので今般だけはこの法律案でというようなお考えではなく、この次の国会に出すというのであればまた別ですが、おざなりのお話ではなく、ひとつ御答弁を願いたい。というのは、建設大臣は御承知ないでしようが、私たちの目から見ておりますと、直轄工事は、まず多目的ダムにしろ、建設省の前の合同庁舎にしろ、こういう大きな工事に対しては、たたき合いという、建設省提示価格の三分の一くらいでたたいておるのであります。とにかく二十億、三十億、五十億という工事が、いかに建設省の予算がずさんであつても、三分の一とか半分で上ろうはずはない。もし上るとしたならば、不正工事であります。そういうことは不可能です。必然的に随意契約を行わなければならない、こういうことになるわけであります。私はそういう意味では、非常に無理な工事を行つても、仮設工事等の関係を顧慮しながら随契を行うというような制度は、ほんとうに大蔵省当局の言われるように、最低線を引かなくとも、国費支弁の工事が完全に行われるということが事実であるならば、継続工事に対しては公入札を行つて行けばいい。こんなことが事実上できようはずはありません。そういう現実問題を一つ取上げてみても、最低線を適当なところに引かなければならぬということは、当然な問題だと考えておるのでありますが、諸般の事情を勘案せられて、将来的なお考えでもいいですから大臣の答弁を煩わしたい、こう考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/8
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009・戸塚九一郎
○戸塚国務大臣 ごく平たく申すと、私はこの案を見たときに、むしろどこか最低線を引く条項があるだろうと思つていたくらいであります。これは常識的といいますか、私が外部におつて感じておつたことが、そのまま現われたというわけで、ただいよいよ最低線を引くとなると、八割にする、七割にする、あるいは七割五分がいいのかということになつて来ると、しろうとの悲しさに、確信がつかない。そこで、せめて政府部内の話をまとめる努力をいたしたのでありますが、まだそこまで参つておりません。今田中委員が非難せられたように、安くやるというなら幾らでもいいだろうという——いくら官僚でも、まさかそれだけの考えじやないと思う。もう少し従来の実例などもいろいろ考えて、そうにわかにきめがたい点もあるということも考慮せられましたので、しいて政府部内の意見の一致も見ないものを無理にやるということもおもしろくない。私が弱いという意味ばかりでもない。この案を出すときには、これがないのなら、むしろやめた方がいいというくらいの気持も、私はに率直に言えばあつた。しかし、ほかの点でとりあえず早く改正したい点が、二、三点あるというので、それではせめてこの次までにこの間の問題を大蔵当局とも話し合つて、はつきりきめようじやないかという程度で、この案が出で来たわけであります。これが露骨に申し上げたところなのであります。そういう意味でありますから、もう少しと言うと、またおざなりになるかもしれませんか、なるべく早い機会にこの問題を解決するようにいたしたい、こういうように思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/9
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010・田中角榮
○田中(角)委員 さすがに建設大臣は、長いこと内務省系統からこの種の問題に携わつておられただけに、率直な御意見を述べられて、了承いたすわけでありますが、一言だけ伺つておきたいのは、まさに建設大臣の言われる通り、この法律は銘を入れてない法律でありますので、もし事務的な処理だけやるならば、この忙しいごたごたした国会に出さぬでもいいじやないかという程度の法律であるということは、私も認めておるわけであります。この法律を事務当局で早く通してくれというようなお話もあるようでありますから、われわれも、建設大臣が今言われたような御趣旨であるならば、通すことにあえて不賛成ではないわけであります。ただ一つ最後に申し上げたいのは、時期が間に合つて、しかも——建設省当局と大蔵省当局との意見がまとまらないというのでありますが、衆参両院おいていろいろな手を尽して、大体国家意思の決定として、この程度の線がいいじやないかということでうまくまとまつて、しかもこの会期中にこの法律案が上るというような見通しがついた場合、私たちが修正をやることに、御賛成であるかどうかという点を、ちよつとお聞きしておきたい。但し、但書をつけておきますが、何も無理をして本国会に出されておる法律の改正にあたつて、ただちにこれを行おうという強い意思表示をしておるのではありませんが、間に合えばやろうと考えておるこの私たちの考えに対して、いや、国会意思できめたのであるならばまことに幸甚であるというふうな御答弁が得られますか、そのところをひとつお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/10
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011・戸塚九一郎
○戸塚国務大臣 ただいま申し上げましたように、私自身確信の持てないことを、皆さんの方へお願いするということは、私としても、まさか言われないのであります。ことに今お話のように、話がまとまるということは、どういう程度のことかわかりませんが、こちらがまた確信を打つておらぬのに、まとまればけつこうだということは、ちよつと私からは申し上げかねます。なるべく早く政府部内の意思の統一をはかるように努力いたしたい、これだけ申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/11
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012・逢澤寛
○逢澤委員 私は先般の委員会で、大体の所信は伺つておいたのですが、大臣はおいでにならなかつたのであります。これは記録を見ていただけばわかります。今田中委員からお話のあつたようなことなので、重複は避けますが、今田中委員からお話になりましたように、現行建設業法の中の認可制度は、あまりにも手ぬるい。いろいろな面からいつて、許可制度というのは行き過ぎのような点もあるが、しかしながら社会の実情は、どうもそこまで行かなければならぬのではないかというようなことが、しばしば行われておるという一、二の例を、この機会に申し上げておきます。これは将来の参考にしていただきたいと思います。これはあまりにも醜怪でありますので、時と所とは一切省略いたしますが、私の責任においてはつきり聞いており、処理した問題なのであります。私は許可制度がよいのだという論拠に基いて申し上げるのですが、終戦のどさくさで道義が非常に廃頽しておつた。そこで、そのときに、建設業が今のような形態で、届け出たものはまるきり許可するというようなことが頻発しておつた。多数の業者は善良な業者である。ところが中には、しろうとの飛び込んで来てやつておるものがある。従つて、ある独立市の事業をやるのにあたつて、市長を呼んで、この工事はおれの方に指名しろと言う。そこで市長は恐れをなして、それに指名をすれば、何ぼででもやる。四千万円ほどの仕事だつたのですが、二千万円でもやる、千万円でもやるという。そこで、もしそれが事業をやるということになると、市が成り立つて行かぬということになる。そこである人に話をして、その人に辞退してもらうような方法を講ずるとすれば、そのあとを引受けてやるという者がないのです。そこで強い者が出て、その者がそれに代行して、その事業を命がけで無事に遂行したという実例があるのです。これはきわめて例の少い実例でありますが、こういう実例を考えてみましたときに、この事業がいかに許可制度の必要であるかということが考えられる。しかし、これを全般的に当てはめるということは、私どももにわかに賛成しにくい。しかし、こういうような実例があるということだけは知つていただきたい。こういうような認可制度によつて遂行するということになると、先ほど田中委員からも説明がありましたように、あるいは不渡り手形がここに濫発されるというような時代におきましては、今後第二、第三の今申し上げた事例のようなものが出て来ることをおそれるのです。そうして善良な注文者に対して恐怖を与えるようなことになると、ゆゆしい問題だと思いますので、今後の改正にあたつては、そういうようなことも世の中にはあるのだということを、一応参考にしていただきたいと思います。
いま一点、幸いに大臣がおいでになつておりますから申し上げたいが、今田中委員の、もしそれ本国会中において参議院の方面や、各方面の国策的の妥協ができた場合は、大臣はどういうふうにお考えになるかという質問に対して、大臣は確信がないから今それは云々というお話だつたが、私もそれはそう思う。最低線、最位価格のことについて、どの線がいいか、どういうふうにしたらいいかということをすぐ断定する、即決するということに対しては、私も躊躇しております。しかしながら、私ちよつとこの間お話申し上げた折りの、その反対議論として、こういうような意見があつたのです。それは最低でやろう、安くやろうというのを、何も拒む必要はないじやないか。もしそれ最低線を引いてやるということになれば、ボスがおつて、その最低価格を知つて——今田中委員も御指摘になつたように、五分間前にでもそれを知つて、それと同一にやるようなことになるおそれがある、こういうことを指摘された人があつた。私はそれを聞いて、その席で申し上げようと思つたのですが、議論になるから、議論を避けるために申し上げなかつたのでありますが、もしそういうことがあるとすれば、それは善良な仕事ができるであろうか。田中委員からも御指摘になつたように、今日建設省の有力な、しかもこれに専門にかかつてやるところの技術屋の方々が予算を編成するのだから、その予算の半分や三分の二でできるというような、ずさんな予算は立てないと私は思う。もしその三分の二や半分でその事業を遂行するというような者が出ますならば、それはそこに何かの欠陥がなければならぬということになる。そこにボスがおつて、その八割なら八割という線を知つて、それでいい仕事をやつてくれたらなお幸福だと私は思う。予算価格の一〇〇%でなくちやいかぬという制度をつくるのは、別の問題であります。私どもの主張するのは、そうではない、予算の九〇%がいいか、八〇%がいいか、あるいは七五%がいいかということは、これから後の問題である。そこで八〇%か九〇%かで、もしりつぱな仕事を遂行してくれる者があれば、そこに弊害の生ずることはありますけれども、百歩譲つてそれを聞いてやるということかあつてもいいと私は思う。それは決して国家の損失じやない。だからその議論によつて、この最低線を制定するのは不可であるという理論は成り立たぬと思う。ともあれ、私は即時断行せいとは申し上げませんが、実際の問題において、私ども若干この方面に関係あり、事情を知つている者の立場から言いますと、国家の貴重な財政を投資、るのに、そう安くてりつぱなものができるわけはないと思う。その陰にはとうしても犠牲を払つてやつているものがある。自分の犠牲によつて責任を遂行するものは、大部分そうやつてくれるでしようけれども、それは一回や二回はできるが、永久に続くものではない。それに対しては、注文者としてはそこに適正な方途を講ずる必要があると思う。この点につきましては、すみやかに実現するようぜひ慎重な御研究を願いたいということを附加いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/12
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013・田中角榮
○田中(角)委員 簡単に事務当局にただしておきたい。総括請負禁止の条項に対して、これも今度逆の面から少し問題があると思うのです。実際の施工状況を見ますと、この法律が適用せられてから、各地方においては一括下請をやつておられるものがありますが、これも法律が弱体でありますので、なかなか取締りができないということになつているから、ますますこの法律はいらぬのじやないかということになつて来るわけであります。私はこの一括下請という問題は、ある部門に対しては、認めることがある面から言うと相当また必要とも思えるのです。すなわち、小さな部門別に下請をしなければならないというようなことよりも、いわゆる職業安定法やその他の方面で、公共事業の遂行に非常ながんになつていると言うと、少し問題はありますが、いろいろな問題があることは御承知の通りです。だから、建設省の直轄工事などという名義でやつておつても、実際は三つか四つに区切つて請負工事をしいてる。こういうふうなことは、だれしも否定できない事実なんですが、そういう一括請負以外の部分的な分割請負というものも、法徒で認めた方がいいじやないかという考えも、また別の面から考えられるが、この問題についてどうかというのと、もう一つは、これは何も建設省所管の工事だけでなく、ほかの工事でもありますが、今農地改良その他に対しては、村請負とかいう問題がある——組合請負という問題もあるけれども、私はここまで追究したくないですが、こういう問題を全部解決しないと建設業法はだめなんです。そこで、それだからむずかしいんですという答弁がまた成り立つわけでありまして、これは私も自縄自縛で困つているのですが、こういう問題に対してどういう見解を持つているか——これはどうもむずかしい質問ですから、真剣に研究していただきたいということに置きかえておきます。
もう一つの問題は、実際問題として国費支弁の工事であつて、ことに大きなもの、たとえば電源門発工事にして高度の技術を要するもの、鉄道工事にして高度の技術を要する墜道工事、建設省の工事にして非常に大きな災害の一かど五億も十億もかかるような大きなものに対して、実際線を引いておられるのですから、法律で請負業者の格付ということを考えてはどうか。これは一級河川、二級河川、三級河川ということを考えると同じように、一級業者、二級業者、三級業者——それは少しひどいですよという感覚は時代遅れです。一級建築士、二級建築士、法律はみなそういうふうになつております。あなた方の職階制にも、昔ほどじやありませんが、あるのですから、この程度の大きな国家事法を遂行するには、そういう線を打出さなければ、大衆のこういう官庁また議会に対するような大きな責任を追究する行為に対する一つの処置にはならぬと思う。そこまで言えば、これは許可制にしなければならぬ、その次に格付をするということになるのです。実際どこの官庁でも、格付をやつているではありませんか。二百万以上の工事はこの業者でなければいけないとか、三百万以上の工事はこの業者でなければならぬということをやつているのだから、これをたただ法律化するだけの話で、これは今すぐやれないということでありましようが、特に第一の部分的な分割請負は下請負も認めるということは、この法律の改正でできるのです。あとの村請負及び格付の問題は、将来の問題として御研究願わなければならぬだろうと思つておりますが、もし第一の問題だけに修正してもよろしいというような御意見があるならば、参考意見として聴取しておきたい。
〔委員長退席、瀬戸山委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/13
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014・石破二朗
○石破政府委員 第一の一括下請負の禁止の問題でありますが、ただいまお話の通り、今回の収修案では、これを強化する趣旨にいたしております。従来と違います点は、従来は無登録業者に一括下請負させるのはさしつかえないというのを、無登録業者といえども、そういう人に一括請負させてはいかぬといたしております。さらに、従来は下請負した方を処罰する規定はなかつたのでありますが、それも処罰するという規定にいたしておる。その意味におきまして、強化にはなつております。ただ一括請負をさせた方がいいということを発注者側でお考えになります際には、現行法におきましても、発注者が書面で承諾すれば、一括下請負をさせてもよろしいという規定になつております。
なお、建設省の直轄直営工事を部分請負する点でありますが、建設省といたしましても、非常に必要な場合が多いことは、ただいまお話の通りでありまして、職業案定法の改正までも根本的には触れる問題でありますが、現在におきましては、労働省の省令などの解釈とその運用によりまして、さしあたりの必要には事欠かない程度に、部分請負に出すことができるようになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/14
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015・田中角榮
○田中(角)委員 時間がありませんから、一点だけ申し上げておきますが、実際この法律によつて、いわゆる無登録業者の下請に対して処罰をするということを改正されようとするには、村請負等をどうするかという問題を解決しておきませんと、ちようど脱税のように、流れだまに当つたような現象が起きて来まして、政治がなかなかやりにくくなる。こういうふうになりますので、まだいろいろ問題がありますが、次会に御質問申し上げますから、次会にはもう少しうまい答弁ができるように御勉強を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/15
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016・石破二朗
○石破政府委員 ただいまの御意見でありますが、私の先ほどの答弁が不十分であつたと思いますけれども、下請した方を処罰する規定は、従来全然なかつたのを今回は入れましたが、ただ下請業者は、ただいまお話のように無登録業者は処罰しないことになつております。登録業者で一括下請したものだけを処罰することになつておりますから、村請負などが、法律を知らないために処罰されるという現象は起らぬことになります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/16
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017・田中角榮
○田中(角)委員 どうもやめようと思うとまた御答弁されるので——これはあとから懇談でけつこうですが、そういう御答弁ですと問題があるのです。そうすると、無登録業者の方が税金も納めないでよし、処罰もされないということなら、ますます登録などしない。それはそうじやないと思いますが、もう少し御勉強を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/17
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018・逢澤寛
○逢澤委員 さきに、強いお話ではなかつたのでありますが、田中委員からお話になりました業者の格付をしたらいいという問題について、当局に一言申し上げ、当局の御意見も拝承しておきたいと存ずるのであります。
実際問題としてはやむを得ない、当然のことだと思います。注文をするのに、業者の信頼の程度は、おのおの違つておるのでありますから、官庁といたしまして、おのおの所を得せしめるという注文方法をとることは妥当であると思います。しかしながら、大業者もある、中業者もある、小業者もある。従いまして、大業者にはなるたけ大きい注文をする、中業者にはそれに適当な注文をする、小業者にはまた小業者に適当な注文をする。その範囲を逸脱してはならぬと思う。大業者だから、これは信用度が大きいから、何十億のものも何万のものもやるということは、これは小業者を圧迫することになる。もし御研究を賜わるのでありましたら、その辺は十分のお考えを願いたい。かつても私は申し上げておいたのでありますが、もしそうしたことをきめるとすれば、その要は従来の実績だと思います。一番たつといものは従来の実績、従来どれだけの実績を持つておつたかということが、その選定の基準にならねばならぬという。いかに雄弁にものを言いましても、従来の実績を中心にしておきませんと、そこに非常な錯覚が出て来るのであります。今までの事例におきましても、大きな錯覚が出て、建設省が内定というか内示というか、そういうことをいたしたために、従来の実績からいつても、現行の価格にして二億くらいの実行力のあるものが、その二十分の一の千万円くらいなところの資格に限定されたというような実例もある。だから、もしそれらの御研究を賜わる機会がありましたならば、従来の実績というものを中心にして御研究を賜わることが一番必要だと思います。参考までに申し上げておきます。私も階級制を否定するものではありません、階級制はよいと思いますが、それを選定するのには、その必要があるということだけは、御研究を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/18
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019・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長代理 それでは本日はこの程度にとどめておきます。次会は公報をもつてお知らせいたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604149X01219530716/19
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