1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月十一日(土曜日)
午前十時四十四分開議
出席委員
委員長 小島 徹三君
理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
理事 松永 佛骨君 理事 古屋 菊男君
理事 長谷川 保君 理事 堤 ツルヨ君
理事 中川 俊思君
越智 茂君 加藤鐐五郎君
助川 良平君 田中 元君
寺島隆太郎君 安井 大吉君
山口六郎次君 山下 春江君
萩元たけ子君 柳田 秀一君
杉山元治郎君 亘 四郎君
有田 八郎君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 山縣 勝見君
出席政府委員
厚生事務官
(医務局次長) 高田 浩運君
厚生事務官
(社会局長) 安田 巖君
厚生事務官
(保険局長) 久下 勝次君
厚生事務官
(引揚援護庁次
長) 田辺 繁雄君
委員外の出席者
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 山本 正世君
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七月十日
医療機関整備費の国庫補助増額に関する陳情書
(第七五八号)
適正診療費の確立と入院料の是正に関する陳情
書
(第七五九号)
社会福祉事業金融公庫法制定に関する陳情書
(第七六
〇号)
同(第
七六一号)
同(第
七六二号)
同(第
七六三号)
生活保護費及び福祉事務所費の国庫負担等に関
する陳情書
(第七六四号)
清掃法制定に関する陳情書
(第七六五号)
清掃事業施設の財政措置に関する陳情書
(第七六六号)
都市清掃事業に対する国の研究機関設置に関す
る陳情書(第七六七
号)
社会保障制度の急速確立に関する陳情書
(第八〇四
号)
らい予防法案に関する陳情書
(第八〇五号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
社会保険審査官及び社会保険審査会法案(内閣
提出第一二七号)
医師等の免許及び試験の特例に関する法律案(
内閣提出第一四〇号)
厚生行政に関する件
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/0
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001・小島徹三
○小島委員長 これより会議を開きます。
社会保険審査官及び社会保険審査会法案、医師等の免許及び試験の特例に関する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。
まず社会保険審査官及び社会保険審査会法案の討論に入ります。田中元君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/1
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002・田中元
○田中(元)委員 社会保険審査官及び社会保険審査会法案に関する討論を、自由党を代表していたします。
社会保険のいろいろの問題等につきまして、いろいろと意に満たない、抗議を申し込むべきような問題というものは、社会保険が進展いたしますればいたしますだけ、そうした問題が起つて来ることは当然のことでございます。そこで各府県等においては審査官を置いて、中央においても労使並びに中立から出られておりまするところの十八名からなる審査官によつて、今日までもいろいろなるそうした不在の問題について解決をすべくやつて来ておるのでございます。ところが、これらの方々は、非常勤の方々でございますし、問題が多くなればなるだけ、なかなか非常勤の方々では解決できないのが、今日の現状でございます。相当多くの問題があるにもかかわらず、その審査の問題が、一年にも一年半にも延びておるということでは、社会保険の適正なる運用に事欠くようになることは当然でございます。ゆえに今回五名からなりまする常勤の委員を置いて、それら十八名の方々との間ともよく協議をして、そうしてこの問題を解決して行くという趣旨は、今日の問題として私は当然のことでなければならないと思うわけでございます。ゆえに自由党は、この問題に対して心から賛成を申し上げたいと思うのです。ただ厚生大臣は、その所轄に属しておりまするところの社会保険審査会の委員長及び委員の任命の手続をする場合には、あらかじめ本法律の第三十条の規定による利益代表者の意見を徴するということに対しては、私どもはこのことに一つの条件を付して、この法律に対して賛成をいたしたいと思うわけでございます。要は、いろいろと社会保険の上にありまする不平、不満の問題を一日も早く解決して行きたいと思うのです。この法律ができて、新しい委員が任命されたあかつきには、今日のように、いろいろと山のごとく未解決の問題がふえないように、厚生省も、その問題に対しては、十二分に心して、この解決に当つていただきたいと思うのであります。私は、この意味において小法案に対して、自由党を代表して賛成をいたします。ただ先ほど申し上げました通りに、その任命に関しては、本件を付したいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/2
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003・小島徹三
○小島委員長 古屋菊男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/3
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004・古屋菊男
○古屋(菊)委員 社会保険審査官及び社会保険審査会法案に対しまして、改進党を代表いたしまして賛成をいたします。
本法案の趣旨は、時宜を得たもので、適当なことだと思います。しかしながら本法案の審査に際しまして、最も問題となりました審査会の構成に関しましては、政府当局の御答弁を聞いておりましても、この構成を改めようとした趣旨を、完全に運営して行くという自信の持ち合せがないように思われます。はなはだ心もとないのでありまするが、従前の利益代表委員が果して参りましたところの弁護的機能を、新制度のもとにおいていかに存置して行くか、また定数五名という社会保険蚕議会の答申に反して、三人の委員とした趣旨をいかに実現して行くか、これらの点に関しましても、政府当局は、確固たる信念のもとにその運営に当るべきだと思うのであります。法案の趣旨の実現に遺憾ないように当局に要望いたしまして、本案に賛成する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/4
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005・小島徹三
○小島委員長 柳田秀一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/5
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006・柳田秀一
○柳田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、遺憾ながら本案には賛意と表するわけには参りません。現行社会保険審査会の三者構成の民主的制度を、官製化するというようなことは根本的にその趣旨において逆行しておる思います。ただ、請求事案が累積いたしまして、審査が非常に遅延しておるという理由をもつてして、このような官製的な、逆行的な法案を出されたことは、その意図を了解するに苦しむのでありまして、このねらいは、おそらくや、現在各省がねらつておりますところの、官僚の姥捨山的な特別職のはけ口をここに求められたといつても、これは決して言い過ぎではないと思うのであります。なおこの制度が実施されますと、さらに現行の失業保険、労災保険の三者構成の審査制度も、次次と官製化されて行くと思うのであります。あるいはまた船員保険法は、総合保険法でありまして、その中には失業保険も、労災保険も包含されておるのでありますが、社会保険審査会が官製化された場合には、船員は、その保険給付の不服について、自分の代表者を通じて、審査会において主張を述べ、あるいはその決定に参加する権利を失いまして、一般陸上労働者とは、はなはだしく不均衡、不利益な立場に置かれると思うのであります。現在の審査制度が開始されましてから、昨年の終りまでの三十三箇月間に開催された審査会が三十回へ処理された審査件数が百三十一件、一回の審査会に平均約五件であります。しかも審査会は、多くの場合に午後開催されますが、それも非常に遅れて開催され、会議が始まると、すぐに散会というようなやり方では、私は、どんな制度のもとでも、審議未了の件数がふえるのは当然であろうと思うのであります。従いまして、現在の制度においても、毎月少くとも二回以上開催するとか、時には、臨時にもう少し会議をふやすとか、午前から午後にかけてもつと慎重に審査を行う等等の、積極的の運営方法を行うならば、私は、現在以上の審査請求があつても処理できないことはないと思うのであります。また一つの審査会が決定いたしました事案というものは、これは先例になるわけでありまして、現在こそ、たとい審査の案件がたまつておりましても、これをはかしますならば、今後はその先例に従いまして、政府の言われるように、保険の範囲の拡充ということがありましても、もつとスピーデイに事務が処理されて行くと思うのであります。要は現在の制度においても、政府が運営を積極的におやりになる意思があるならば、まだまだ私は処理できると思うのであります。社会保険というものは、大部分が、事業主と被保険者の保険料によつて運営されておるのでありますから、そういう点からいつても、保険の運営については、事業主及び被保険者の発言は十分に尊重され、その発言は、十分に決定に参画さるべきものだと思うのであります。
こういう点から考えましても、今回の制度は、私が申すまでもなく、社会保障制度審議会からの答申案によつても、あるいは厚生大臣の諮問機関であるところの社会保険審議会の答申案においても、きわめて不満足の意を表しておるのであります。それをしも、なおかつこのような法案を出された意図は、先ほど申し上げましたような、多分に官庁のセクシヨナリズム的な、さらに特別職に対する制度の中に、各官庁が、自分の官庁を割込ますというような意図が見えると思うのであります。少くとも民主的な運営からいうならば、これは明らかに時代逆行でありまして、むしろ私は、厚生当局にその点強く反省を望みたいと思うのであります。ただ問題は、このような制度をつくりましても、おそらく政府は、国会において同意を求めるという点がありますので、そこからお逃げになると思うのでありますが、実情から申しますならば、いかに国会に同意を求められるといえども、実際は、ほとんど政府の出して来られる点を——国会の同意というのは、これは議決ではございませんので、同意という言葉と、議決という言葉は、そこが違うわけであります。そういう点から見ても、もとより政府によつて国会に同意を求められるのでありますから、運営によつては、委員三人を、いわゆる三者構成の線に沿うような運営もできるだろうとおつしやる。運営に妙を得るならば、私はそれだけはあり得ると思う。しかし、今の政府にそれを期待することはできないと思う。少くともわが党が政府をあずかつておるならば、わが党から国会に同意を求めるこの委員は、少くとも、社会保障制度審議会の意図に沿うような方を選任して、国会に同意を求めるのにやぶさかではありませんが、今の政府にそれを期待することは、むずかしいと思う。いろいろと申し上げましたが、以上申しまして、わが党の反対理由を表明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/6
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007・小島徹三
○小島委員長 次に杉山元治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/7
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008・杉山元治郎
○杉山委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、社会保険審査官及び社会保険審査会法案につきまして、遺憾ながら反対の意思を表明するものであります。
社会保険がふえて参りまして、またその加入人員も増加して参りましたので、いろいろと苦情が増加して来ることと存じまするが、これに対して審査が遅延いたしますることは、被保険者にとつては、はなはだ困つたことでありますから、これを迅速に解決しよう、こういう意図に対しては敬意を表するのでありますが、今柳田氏もお話になりましたように、今まで審査が遅れておつた点をよく考えてみますならば、いわゆる委員の運用の点において多少の誤りがあつたのではないか、運用をもし改善するならば、従前の方法によつても、もつともつと迅速にこれを解決することができるのではないか、こういうように考えておるのであります。今度、迅速に解決しようといたしましたこの法案が、先ほど柳田委員も御指摘になつておりましたように、社会保障制度審議会が要求いたしておりまする三者の利益代表が十分に現われておらない。特に審査官に至りましては、いわゆる任命であり、その任命が、今柳田君も仰せになりましたように、どうもほんとうの利益代表が選ばれるという点は少くて、むしろ役人の古い方がこれに入つて来るということになつて、ほんとうに被保険者の利益が代表されるかどうか、こういう点については、私は非常に危険を感ずる。また公平にやるとは申しまするけれども、私はむしろその点に不十分を感じます。こういうようないろいろな点から考えますときに、私は、柳田委員と同様な考え方をもつて、遺憾ながらこの法案に対して反対の意を表するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/8
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009・小島徹三
○小島委員長 亘四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/9
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010・亘四郎
○亘委員 私は、自由党を代表いたしまして、本法案に賛成の意を表するものであります。政府から提案になりましたこの法案の趣旨は、審査会の運営の能率があまりにも上らないから、その構成をかえて、そうして簡素化して能率を上げようというのが、その主たる目的であるという限りにおきまして、私は賛成するものであります。
むろん、あらゆるものにおきまして、その民主的な運営ということは、今日わが国におきまして最も重要視されなければならないものではありまするけれども、民主的な運営を尊重するあまり、能率が上らないということは、ひとり本問題だけでなく、多数の面に見られる今日の現象であります。私どもは、決して民主主義の発展、強化ということについて反対するものではないのでありまするけれども、民主的な運営の尊重とともに、能率化が、あらゆる事業の上において絶対必要なことでありまして、おのずとそこにおきまして、私どもは、能率を主として考えなければならない問題と、また民主化という点におきまして、少しぐらい能率が上らなくとも、しばらくがまんをして、それに対抗しなけりやならばい。こうした問題の区別をよく考えてみましたとき、本審査会の問題は、むしろ能率化の必要を強く感ずるということが、今日の現状ではなかろうかと思います。その点につきまして、政府が今回、こうした改正をなされるという趣旨に出られたことには、私は賛成をするものであります。そういう意味におきまして、わが自由党は、本案に賛成いたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/10
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011・小島徹三
○小島委員長 以上をもつて討論は終局いたしました。採決いたします。社会保険審査官及び社会保険審査会法案を、原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/11
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012・小島徹三
○小島委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたされました。
なお、ただいま可決いたしました本案に関する委員会の報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/12
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013・小島徹三
○小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/13
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014・小島徹三
○小島委員長 次に医師等の免許及び試験の特例に関する法律案の審議はあとまわしにして、前会に引続き、一般厚生行政に関して大臣に対する質疑を続行いたします。有田八郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/14
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015・有田八郎
○有田(八)委員 私は、今回提案されております未帰還者留守家族等援護法案について、政府の意見を承りたいと思いますが、大臣並びに政府委員諸君は、非常にお忙しい中でありまするからして、私の質問はきわめて簡単に述べるつもりであります。そのおつもりでお聞きとりを願いたいと思います。
第一は、この未帰還者留守家族等援護法の第一条についてでありまするが、留守家族等援護法と遺族等援護法とは、いろいろな点において同一ではあるのでありまするが、それにもかかわらず、この第一条におきましては遺族等援護法におきましては、「国家補償の精神に基き、」こういう言葉が現われておりますが、留守家族等援護法には、その文字がないのは、どういう理由でございますか。政府委員でけつこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/15
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016・山縣勝見
○山縣国務大臣 遺族等援護法と留守家族等援護法との間に、たとえば今お示しの第一条の差をお尋ねになりましたが、これは常識的にそうかわつたことはないようにも思われますが、しかし法律的には、あるいはまた国と被援護者との関係におきまして差があると考えられるのであります。たとえば援護法の対象になりまするのは軍人、軍属であります。しかもそれはポ勅によつて一応恩給が停止されております。その間の暫定措置といいまするか、そういう措置として、国と特別の権力関係にあつた公務員に対して、その公務による経済的な獲得能力の喪失に対して、国が使用者としての立場から、これに援護を及ぼすという特別の関係を持つておりまするため、従つて公務員に対して国が当然その損失補償をするという建前から、いわゆる恩給法の公務扶助料あるいは増加恩給があるのであります。しかし一方留守家族に対しましては、今回は特に、公務員以外の一般邦人にもその適用範囲を及ぼしておりまするので、これはソ連、中共との関係において、国として、それらの地域にある国民に対して日本国籍を持つておる国民等に対して、外交権を発動して、適当の措置をとることがなかなか困難である。従つてそれに国が一応責任を感じて援護をなすということであります。従つて気分的には同じようでありまするが、法律的、あるいはその他国と被援護者との関係においては差がございまするので、ただいま仰せのようなことに相なつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/16
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017・有田八郎
○有田(八)委員 それではお伺いいたしたいのは、この留守家族援護法の対象としておる中に、軍人、軍属がおるのでありますが、これに対しては、国家補償の責任ということについては、お認めにならないのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/17
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018・山縣勝見
○山縣国務大臣 お答え申し上げます。仰せの通り、留守家族の対象になりまするものにも、もちろん今回の留守家族援護法は、未復員者給与法、特別未帰還者給与法を合体したものであり、従つて軍人、軍属もおりまするが、法の建前としては、留守家族援護法の方は、いわゆる一般邦人も含んでおるのでありまするから、援護法とは、その立法の形式、あるいは内容等を異にするのは当然であろうと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/18
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019・有田八郎
○有田(八)委員 その点については、まだ少し疑問がありまするが、それに関連してお伺いいたしまするのは、この一般邦人についてであるのであります。主として満州におつた日本人、それから中共地区におつた日本人、これらの人は、もちろん軍人、軍属と違つて、国家の権力による関係であの地へやられたものではないのであります。しかし、戦争によつて帰還することができずにおるということは事実であつて、この点は政府でもお認めになつておられると思うのであります。それからもう一つは、戦争が終了してから、日本人が帰つて来るという場合に、たとえばその当時の状況やむを得なかつたと思いまするけれども、各省の次官通牒で、二十一年の何月でありましたか、満州等に残留しておる日本人に対して、現地で自活をしておるようにといつたふうな意味の通牒があつたことを聞いておりますが、これはおそらく戦争後の状態が、われわれが当初予期しておつたようなことでないので、しばらくあそこにおれば、そのまま定着しておるのではなかろうか。従つて日本将来の発展の点から考えれば、その方がよかろう、こういうふうな御意見であつたかもしれないと思うのでありまするが、そういうふうな政府からの通牒によつて在留しておつた日本人が、帰ろうと思つたのを思いとどまつたというふうなことがあると思うのであります。これに対して国家はいかなる責任をお持ちになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/19
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020・田辺繁雄
○田辺政府委員 お尋ねの在留邦人の保護の問題でございますが、これはむしろ外務省の御所管の問題だろうと思うのであります。ただお尋ねの点は、この法律の立法の趣旨に関連がある問題でございますので、その面から申し上げたいと思います。
先ほど大臣からお答えがございましたように、公務員が公務のために災害を受けた場合におきましては、国がこれを補償するということは、今日立法の原則になつております。たとえば国家公務員災害補償法というのがありまして、公務員が公務上災害を受けた場合におきましては、死亡した場合は一時金として、また疾患及び障害に対して補償することになつております。これは終戦後にできた制度でございまするが、その前におきましても、公務員の公務による災害に対しましては、恩給法によつて公務扶助料または増加恩給が支給されておつたのであります。従つてその暫定措置法としての援護法において、その精神を表わすために、国家補償の精神という言葉を用いて、これに挿入した。これは当委員会において立案せられて挿入せられたというふうに考えられるわけであります。
それから未帰還者の問題につきましては、実はわが国としても、前例のないことでありまして、どういう理念でこの法律の原則を立てるかということは、ずいぶんわれわれとしても苦心をいたしました。ことに占領下の無差別平等の原則があつた場合、生活保護法と一緒でいいんじやないか、こういう議論が強かつたのでありまして、これが留守家族援護法のような法律をつくることができなかつた原因であつたのであります。そのために未復員者給与法であるとか、あるいは特別未帰還者給与法というような、無理な法律の形式を借りながら、留守家族援護の措置をとつて来たのが、今日までの経過でございます。しかし、終戦後八年にもなりまして、俸給の形式をとつて留守家族を援護するということは、いろいろの点において無理があります。援護の実際面においても無理がありますし、りくつも立ちませんので、いろいろ考えました結果、留守家族援護を端的に表現する立法の方が妥当であろうと考えたわけであります。その際に、どういう精神でやるかということにつきましては、外務省ともいろいろ相談いたしましたが、これはやはり、ソ連、中共地区に対して、国が外交保護権を発動して帰還の状態に至らしめる、あるいは調査究明をして、その消息を明らかにする責任があると考えたのであります。しかしながら、それを今日果し得ないという状態のもとにおいて、未帰還の状態にある人及びその留守家族に対しましては、国が特別の関心と同情を持ち、国が特別の責任を感じて、その家族に特別な援護をするということをいたしましても、今日の国家国民の全体の感情から言いまして、あながち一般無差別平等の原則の例外をなしても、あえておかしくはないではないか、むしろ今日の国民感情に即応するものではないか、こういう考え方をもつて、留守家族援護法というものを提案するに至つたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/20
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021・有田八郎
○有田(八)委員 この国家の責任についての問題でありますが、これは厚生省とか、外務省とかを離れて、政府国家の問題であろうと思います。しかし私の質問に対しては、お答えになり得る程度でよろしいので、もし外務省の意見を聞かなければならないところがあれば、別に聞きたい。そこで満州等に当時在留いたしておつた日本人は、戦争のために帰れぬというような形になつたのであります。ところが平和が克復するようになつた。しかし、今日の特別な事情において、いわゆる全面講和というものができなくて、ソ連との間には、今日なお平和というものが成立していない。また中国は、御承知のように、国民政府は台湾にひつ込んでしまつて、その大部分は中共の権力下にあるのであります。これを承認するかいなかということは、非常に大きな問題でありますけれども、日本は、今日の国策として、これを承認することができずにおるわけであります。すなわち、これらの地方にある一般邦人は、戦争の結果、そこにとどまらざるを得ないことになり、戦争は済んだものの、日本の政策等によつて、国策の結果として、帰る機会を失つておる、こういうことであります。これに対しては、もちろん国家として何とかする責任を、すなわち私は、留守家族に対して正当な援護の手を延ばす必要があり、またこれらの人を一日も早く帰還せしめるように、政府は各般の努力をしなければならぬ責任があると思うのでありますが、この点についてはいかがお考えでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/21
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022・山縣勝見
○山縣国務大臣 ただいまお尋ねになりましたうちの一点、今お話のような地区におけるわれわれの同胞を、できるだけ早く帰すということについては、外務省の所管でありまするが、政府としては、これは最善の努力を払わなくちやいかぬと思います。ただ現在の外交関係が、仰せのようなことでありますから、なかなか困難がございましようけれども、あらゆる方法、あらゆる機会に、この実現に向つて政府が努力をすることは当然であり、また今後ともそうあるべきものと考えております。
なお、これらの地域において、本人の意思に反して在留を余儀なくされておる向きに対する留守家族の援護、これは実は、今回の留守家族援護法を制定するに際しましても、その点はずいぶん頭を痛めたのであります。なかなかわれわれの思うようには、法律の内容がなつておりませんことは、われわれも遺憾でありまするが、それに対しましては、今後とも、あらゆる機会に十分努力をして行きたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/22
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023・有田八郎
○有田(八)委員 この問題につきましては、今厚生大臣のお話のように、国家にも一応の責任というものはあると、私も思うのであります。そこで先ほど政府委員からのお話もあつたのでありますが、未帰還者に対しては、普通の生活保護法によつて一律にやればよろしいのではないかという議論があつたけれども、政府の責任、国家の責任ということを考えて、特殊な法律を制定するに至つた、こういう意味のお話であつたのであります。そういうふうな事情で、すなわち政府の責任ということを考えて、特殊の法律を制定するに至つたということでありまするならば、やはり、この遺家族援護法にあるような、政府の責任という言葉を、この法律の上に盛つてどういう弊害が生ずるとお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/23
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024・山縣勝見
○山縣国務大臣 先ほども申しました通り、遺族等援護法の法的構成と、それから留守家族援護法の法的構成とは、いわゆる前回の戦争によつて、国は多くの国民に対して、困難な境地に陥れたということの精神的の責任と言いますか、これはもう同様で、単にソ連あるいは中共地区に残つておる同胞に関してのみの問題ではないと思います。その他にも、たとえば現在法律の援護のもとにない、一般のいわゆる戦争災害による傷害あるいは死亡いたした者に対しても同様であろうと思います。しかしソ連地区あるいは中共地区に残つておる人々に対しましては、こういうふうな留守家族援護法まで設けておりますから、十分国として考えておるのでありますが、ただ法田の構成といたしましては、やはり国と特別の権力関係にあつて、その公務によつて、経済的の獲得能力を喪失したという者に対する国としての補償ということとは、法律論といたしましては、多少異なるところもあるのではないか。そういう意味で、法的の構成といたしては、一方においてはお話のような字句を入れ、一方には入れていないのであります。しかしこれは法律論でありまして、今後留守家族に対しましては、国として何かしなくてはならぬという精神においては、これは同様に考えておるのでありまするから、先ほど来申し上げておりますように、今後国としても最大の努力をしなくちやいかぬ。しかし、法文の構成あるいはその他においては、やはりそういうふうなことも、一応法律的には必要じやないかという意味で、文言の使用、法律的な文句の使用等におきまして、多少の差別をつけておることは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/24
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025・有田八郎
○有田(八)委員 先ほど政府委員のお話のうちに、一般無差別の原則からして、生活保護法の適用でよろしいのではないかという議論があつたということであります。なるほど、りくつからいえばそういうことがあり得るかとも思いますが、実際を申しますと、留守家族の子供などが、たとえば学校へ行つたとき、すぐうしろ指をさされて、生活保護法の援護の適用を受けるのだということを言われると、子供ながらに非常に肩身の狭さを感じておる。自分の過失等によつて生活保護法のやつかいにならなければならないような状況であるならば、これはやむを得ないとしても、自分らの働き手を取られ、て、そしてその働き手を何がゆえに取られたかといえば、戦争の結果であ、り、また戦争終結の際の手ぎわが悪かつた、よかつたということは別問題といたしまして、その結果、帰れないで今日に至つているというのでありま少す。従つて、そういうような状況にある自分らの子弟が、学校等において、りしろ指をさされるようなことになつてははなはだいやだ、こういうような気持もあるわけでありましてそれはまた同情すべき点であると思うのであります。しかしいずれにしても、今厚生大臣は、精神的の責任というふうな意味のことを言われたかと思いまするが、私は、それ以上のものがあると思うのであります。従いまして、こういうふうな非常にけつこうな法律ができました以上は、「国家補償の精神に基き」という言葉が、遺族等援護法にあるならば、これを移してここにはさんでいただいてどれだけ政府の御迷惑になるか。法律の体系とか何とかいうことは、私はよく存じませんけれども、そういうふうなことについての、何らかのお考えがあつてしかるべきではないかというふうに考えておる次第でございます。もう一つ関連しておりまするからお願い申し上げてみたいと思うのは、この最後にありまする二十九条であります。「国は、未帰還者の状況について調査究明に努めなければならない。」こうありまするが、これはやはり国家の責仕上から述べられたのだと思うのであります。これはひとり援護法の関係からばかりでなく、末帰還者の帰還を促達するという点からも、非常に大事だこ思います。この点についてどういうふうにお考えになるか、伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/25
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026・山縣勝見
○山縣国務大臣 最初の方は、私も事情をつまびらかにいたしません。おそらく当初、外務大臣か、あるいは外務官からの、そうふうな文書か、勧告小あつたのでありましよう。私は、これはつまびらかにいたしませんかつ、責任を持つて申しかねまするが、しかしかりにあつたとしても、それは国としての一応の勧告であつて、なおまたそれは主として満州地区であろうと思いまするが、今回の留守家族援護法の対象になる人々全部に対して、勧告がなされたものでもないと考えられます。しかし、これは事情をつまびらかにいたしませんから、あるいは外務大臣から聞いた上で、はつきりしたお答えを申すべきだと思いますが、いずれにしても全部でないということ、国として、法律の命令にあらずして、勧告だろうと思います。でありまするから、法律論といたしましては、やはり遺族援護法と留守家族援護法との間には、やはりそこに内容的に、あるいは法律的に、多少の差があることは、私は考えられると思うのであります。しかし、実際の援護に対する国の考え方というものは、先ほどからお話申し上げておる通りでありまして、それあるがゆえに、留守家族援護をおろそかにするということは、毛頭考えておらないのであります。なお第二十九条の点につきましては、これは事務的な点もございまするから、政府委員からお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/26
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027・田辺繁雄
○田辺政府委員 第二十九条に調査究明に関する規定を入れたのでありますが、実は、私ども留守家族のお世話をいたしておる者の立場から申しますると、消息の調査究明ということは、非常に大事な仕事であると感じております。今まで、これは外務省と厚生省にわかれてやつておりますが、中央、地方とも、非常に苦労をしてやつておりますが、法律上何の根拠規定もございませんので、これに従事しておる人たちも、その点について非常に物足りなく思つておるのでございます。それからもう一つは、調査究明をして、その消息をお知らせするということも、ある意味では、一つの大きな援護ではなかろうか。従つて留守家族等援護法ができまする際に、かようなことをはつきり入れておくことが、全般のこの仕事の推進に有効ではないかと考えまして、この規定を入れたのであります。それならば、なぜ帰還促進のことを入れないかというお話でございますが、これは当然のことでございまして、今日全国民あげての一つの生きた国策、国論にまでなつている問題を、いまさら法律の中にしらそれしく書くのはどうかという気がいたしましてこれは援護法でもございますし、帰還促進の問題を書くのは適当ではなかろうというので、特に調査究明だけを書いた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/27
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028・有田八郎
○有田(八)委員 二十九条の問題は、あとでまた政府委員にお尋ねいたしますけれども、厚生大臣のおいでのうちに、第一条の点について、もう一言お願いしたいと思いまするのは、法的の構成といいますか、何といいますか、少し差があるから、何とか差をつけねばならぬじやないかという御意見のようでありますけれども、先ほど申しましたような留守家族の気持をおくみくださつたならば、ここに国家の責任という言葉をお入れくださつて、どれだけ御迷惑がかかるものかという点を先ほどもちよつとお話があつたようでありますが、もう一度承つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/28
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029・山縣勝見
○山縣国務大臣 有田先生のお気持に、私もまつたく同感であります。しかし国が、そういうふうな未帰還同胞に対して、何らかの責任を感じ、何とかしなくちやいかぬということを考えればこそ、特別にかような立法をいたしておるのであります。しかし、法律論的にいいますと、いわゆる恩給法の暫定措置である援護法と、一般未帰還者も含めた留守家族援護法とは、やはり従来の援護をするものと被援護者との法律関係は、多少違つておるとも思われますので、一応一方においては、国の補償という意味が入り、一方には入つておりません。しかし、入つておらない方でも、国がさような意味の責任を感じておれば二そ、かような特別立法をいたしておるのですから、この間は、結局観念論であり、形式論であると思うのであります。入れましても、そう実際にどうこうということはございませんから、今後考えてみてもよろしいと思いますが、入れないからどうこうということもなかろうと思います。要は法の内容いかんであると思います。その内容については、今後とも努力をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/29
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030・有田八郎
○有田(八)委員 大体その点はわかつたような気持がいたしまするが、ただこれだけはなお申し上げておきたいと思うのであります。この未帰還者のうちには、軍人、軍属がおるのであります。軍人、軍属がかりに向うにおるときに死んだということになりますれば、これは遺家族援護法の適用を受けることになると思います。そうすると、その意味においては、国家の責任という言葉のある法律の適用を受けるのであります。すなわち未帰還の軍人、軍属を含んだ法律でありまするからして、それで私どもは、できるならば今の国家の責任においてという言葉を挿入してもらいたいという気持であつたわけであります。その点は御答弁を要求しませんから、お含みおきを願いたいと思うのであります。
さらに第七条でありまするが、七条に「留守家族手当は、未帰還者が帰還しているとすれば、留守家族が主としてその者の収入によつて生計を維持していると認められる場合であつて、」と、こうあります。しかし、遺族等援護法の建前でいいますと、そのほかに「又はその者と生計をともにしていたもの」云々とあるのであります。留守家族の場合に、主計司一の原則と申しますか、これの適用がなかつたのは、どういう理由によりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/30
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031・田辺繁雄
○田辺政府委員 恩給法の規定を見ますと、公務扶助料の支給要件としての遺族の範囲は、死亡の当時同一生計を営んでおつたという言葉がございます。昔は、同一戸籍内という言葉がありましたが、新民法になりましたときに、同一生計というふうに改められたのでございます。従いまして暫定措置法としての援護法におきましても、それと歩調を合せることが適当であろうと考えまして、実はそういうふうにいたしたのであります。援護という観点からいたしまするならば、画一的にそうするよりは、むしろ生計維持ないしは生計依存という要件をつける方が妥当であろうと考えるのでありますが、何分にも、終戦後相当年数を経過しておりまするし、また数も厖大であり、短期間にこれを片づけるという点、また恩給法の暫定措置法ということから考えましても、恩給法に合せた方が妥当であろうと考えまして、恩給法の例を踏襲したのであります。留守家族援護法の方は、最初申し上げました通り、国の責任から出発しまして家族の帰るまでの経済的な生活を援助しようということを目的にしております。そういう理念から申しまして、画一的にすべての者に手当を出すというよりは、やはり生計依存という要件をつける方が適当じやないかと思います。従来未復員者給与法、特別未帰還者給与法によつて、俸給及び扶養手当を前渡しすることによつて、家族の援護をしておつたが、その際にも、生計同一かつ収入依存という非常に厳重な要件がついておつたのでありますか、今度は生計依存という要件さえあるならば、生計同一ということはいらないじやないかと考えまして、それをこつたのであります。運用の点につきましては、従来とかくの御不満があるようでございますか、これはどこまでも、この法律の精神に即応して運用すべきものである。長男だからどう、次男だからどうという画一的なやりかた、われわれの方では考えておらないのでございまして、この点は、この新しい法律ができましたならば、さらに趣旨を徹底いたさせまして、実情に適応した措置をとりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/31
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032・小島徹三
○小島委員長 打出委員に申しますか、政府委員に対する質問でしたら、あとまわしに願いまして大臣に対する質問を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/32
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033・有田八郎
○有田(八)委員 大臣に対する質問はありませんから、ほかの方にお譲りいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/33
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034・小島徹三
○小島委員長 杉山元治郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/34
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035・杉山元治郎
○杉山委員 私は、医師等の免許及び試験の特例に関する問題について、ちよつとお伺いいたしたいのであります。実は、私どもの国会対策の集会のために、ちよつと遅れたために、この法案の質疑は打切りになつたということでありましたが、特別にお許しを得て、条文のことは避けて、ただ概括的にお伺いいたしたいと思うのであります。
外地におきますいわゆる現地開業の医師、歯科医師、看護婦、それらの人人が内地に帰つて来まして、内地の医師として、あるいは歯科医師として、看護婦としての免許を受ける特別の試験制度を設けられたというこの政府の御配慮の点は、非常にありがたいと思うのでありますが、この特例と同一のものが、以前にもなされておつた。昭和二十三年でございましたか、成立して、ちようど今年の十月二十六日に、それが終了になるものがあるように聞いておりまして、それらの人は、十月二十六日が来ると、もう試験を受けることができない。それが約三百人余りあると聞いておるのであります。この人たちを救済するという意味でやられましたこの特例は、五箇年の相当長い年月があるから、その間に受験が十分にできるはずじやないか、こういうことが言われるのでありますが、試験はわずかに二回であつた。毎年一回でもありますればともかくも、二回であつた。しかも引揚者でもあるので、いろいろな生活環境等のために、受験をいたしたいと思つても、どうしても受験ができなかつたという人たちが、多数あるやに聞き及んでおるのであります。こういうようなことのために、せつかく特例として受験する道は開いていただきましたが、遺憾ながらそれを受けることもできなかつた者が半ば以上ある。こういうことでございまするので、これらの人たちが、この十月には期限が切れてしまいまするが、それらの人たちも、この中に入れて受験さしていただけることができるかどうかということ。
なお、もう一つお伺いいたしたいことは、この法案が、従前と同じように、やはり五箇年間で二回しか受けさせないのかどうか、この点をお伺いしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/35
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036・高田浩運
○高田(浩)政府委員 便宜、私からお答え申し上げます。
きのう柳田先生から御質問がありましたときにお答え申し上げましたが、前回までに受験いたしました総数が六百二十二人、うち合格いたしました者が三百四十八人、それから二回受けて失格いたしました者が百十一人、あと一回受験できる者百六十三人、今申し上げました数字は医師でございますが、歯科医師につきましては、受験しました実数が、二百二十八人、うち合格いたしました者が百九十一人、失格いたしました著が四名、あと一回受験できます者が三十三名、そういうような数字になつておるわけでありまする。
御承知のように、引揚の医師の方々のうちには、朝鮮なり、あるいは満州なり、全土を通じます免許の方と、それからいわゆる現地開業と申しますか、これは全土に通じますものよりも、相当程度は低いと一応見なければなりませんが、そういつたものを全部含めて、受験資格は与えられておるのであります。医師、歯科医師の特質から申しまして、やはりある程度の水準は維持しなければならないと考えられます。そういう意味から申し上げまして、今申し上げました数字から御判断願いますと、この試験それ自体は、相当実情に合致した試験の実施の仕方であるということも、一応御専門家であるだけに御推察いただけるのじやないかと思うのであります。今お話の点は、そういう御意見も、一応確かに成り立ち得ると思いまするけれども、やはり引揚げ医師の特例の試験という本質にかんがみまして、回数なり、期限というものを考えることが、むしろいいんじやないか。
なお十月までに、私どもの方としては、すでにこの春試験をやつたのでありますが、さらに特に今後二回やりたいと思つております。さらにその試験を落ちましても、一般の予備試験を受ける資格は、当然留保されておる次第でありますので、かたかたこれは試験であります関係上、相当数の者が及第できないという事態も当然考えられますが、この特例の性質にかんがみまして、やはりある程度の期限なり回数なりというものによつて、当面においては、やはり医師のある程度の水準を維持するとともに、一面においてはきりをつけるということも考えなくちやならぬことだと思います。そういう意味におきまして、一応今の試験というものは、必ずしも不適当とはいえないじやないか、かように考えておる次第であります。今度出ました分は、今までとは関係なく、いわゆる今次の中共からの引揚げて来る者を対象にしたものでございます。この点御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/36
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037・杉山元治郎
○杉山委員 そういたしますと、以前の人たちで、この十月に期限が切れる人は、期限が切れましても、予備試験というものだけは受ける資格がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/37
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038・高田浩運
○高田(浩)政府委員 さようでございます発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/38
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039・杉山元治郎
○杉山委員 それから今度のは、以前と違つて、そういうような年限は別に切らないか、回数も別に切らないわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/39
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040・高田浩運
○高田(浩)政府委員 今回の措置も、従前のやり方、従前の措置を、いわば引継いだかつこうでございまして、従いまして年数も切つてあります。それから回数も従前通り切つてあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/40
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041・杉山元治郎
○杉山委員 大臣はお急ぎかと思いますから、私は日雇い労働者の保険の問題について一点だけ大臣にお伺いしたいと思います。日雇い労働者は、すでに御承知のように、一歩を誤れば生活保護を要する範囲に入る人たちである。こういう人たちにいわゆる社会保険の手を伸ばすことは当然で、それが今日までなかつたということは、非常に手遅れであつたという感じがいたすのであります。そういうような特別に社会保険の手を伸ばさなければならない階層の人たちの保険が、他の保険に比較して非常に悪い。いわゆる国家補償もないような点、あるいはいろいろな範囲の点などにおきましても、一般の社会保険と非常に違います。この保険こそ、私は他の保険にまさつたよい保険をつくつてやらなければならないという考えを持つておるのであります。ただ日雇いであり、いろいろな点においての難点があるというようなことから考えてでありましようけれども、こういうようにされた根本的な理念について伺いたい。なぜ日雇い労働者の保険を他の社会保険に比して非常に程度も内容も悪いものにしたか、こういう点を私はお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/41
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042・山縣勝見
○山縣国務大臣 御説のように、日雇い労働者の健康保険につきましても、今後この健康保険が適当な内容を持ち、医療社会保険の面において、国がこれらの人々のめんどうをよく見るようにいたしたいという点については御同感であります。ただ日雇い労働者の健康保険につきましては、その保険のテクニツクら申しましても、たとえば業態その他から見て、被保険者の把握あるいはその他の点について問題もございますので、とりあえずこれで発足した次第であります。この給付内容等は他に比して一応は劣つておりますけれども、他の社会保険におきましてもいろいろ発展の過程をたどつて来ておりまするので、この日雇い労働者の保険給付につきましても、最初から給付内容あるいはその他についても完璧を期した案を一応構想して、案もつくつてみたのでございますが、種々の事情で、一応今回は短期間であり、また給付内容も完全でございませんが、まずもつて発足をいたして、その経過を見て今後これを完璧なものにするよう、さらに努力いたして参りたい。それについては、実はそれらの日雇い労剛者の代表の人にも、実はこういうふりな事情であり、われわれとしても一応不満であるけれども、しかしこの際とにかく発足いたした方がいいのであるか、それとももつと完全になつて、たとえば来年あたり、あるいはその後へおいて発足した方がいいのか、どうであろうかということで、代表の人たちと率直に話し合つたことがあります。その際に、そういうイエスかノーかということになれば、とにかくやつたらどうかということもあつたのでございまして、これは仰せのように完全なものとは言えませんけれども、まず発足したわけでございます。御承知の通り今回もこうして予算もだんだん延びて参つたことでありますし、本年度内のいわゆる保険の運用もごく簡単でございますから、一応これで発足いたして、今後努力いたして完璧を期そう、こういうような心構えでおる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/42
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043・杉山元治郎
○杉山委員 今大臣のお答えをいただきまして、よくわかりましたが、私どもが聞いた範囲内におきましては、遺憾ながら現状のような保険ならばなくてもいい。こういう日雇い労働者の意見を多数聞いております。しかし大臣の、これは、こく手初めであり、だんだんにこれを改善して完璧なものにするというお言葉をいただきまして、私は大臣の考え方を了承いたします。これにて質疑は打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/43
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044・長谷川保
○長谷川(保)委員 国立病院の地方移譲が前々国会において決定したということで、その方向へ政府は進められておるようでありますが、どうもその後の事情を見ておりますと、秋田、山形等の移譲ができ、なおまた福島、岐阜、飯坂、下呂、和歌山等が近く移譲の予定であると申しますが、全体から申しますと、まことに遅々として進まぬ現状であると思います。地方におきましても、これを受けていることを必ずしもよしとしないという面が非常に多いようでありまするし、医療従業者の関係の方でもこれに反対をずいぶんしておるようであります。このように遅々として進まないのでありますならば、この際根本的に考え直すことが必要ではないか、こう思うのでありますが、現状に関し、また今後の方針に対し、大臣の御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/44
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045・山縣勝見
○山縣国務大臣 国立病院の地方移譲の問題については、かねて当委員会において私の考えを申し上げておりますのと現状はそうかわつてはいないのであります。現状という仰せでありますから簡単に申し上げますと、二十七年度当初九十九箇所あり、子のうち十五箇所が療養所に転換をいたし、それから二十七年度中に二箇所、これは山形、秋田が移譲になりました。本年度初頭、すなわち昭和二十八年度初頭には八十二の国立病院がございました。そのうち三十二は一応残すということに相なつておることは御承知の通りであります。その後若松と、たしか飯坂でございましたか、その二つが完了いたして、あと徳島、岐阜、下呂、これが大体四月中に完了いたしたのであります。現在七十七箇所残つております。その七十七箇所のうち、三十二箇所は大体国立病院として存置する方針でありまするから、結局四十五箇所を今後どうするかという問題に相なると思います。なお現在話合いをいたしておりまするのが、たとえば富山でありますとか、あるいは大分でありますとか、あるいは兵庫でありますとか、五箇所ほどあります。これも案外順調に行くのではないかと思います。ただしかしお尋ねの点は、それにしてもなおあと相当のものが残る。これに対してはこの際当初から相当無理なことのようでもあるから、むしろ抜本的に考え直したらどうかというお尋ねであろうと思います。私も実は国立病院移譲の問題は、引継ぎを受けましたもののうちでいささか困難な問題の一つであります。なかなか地方の財政も悪いし、その後私も地方に参りまして国立病院を見ましたが、たいていは明治初年、中年の陸軍病院等を国立病院にいたしたのが多いのであります。従つてなかなか地方がおいそれと受引けない。しかもそれに対する整備費の問題等、いろいろありましようし、またその後府県の知事なんかが参つて話を聞き、また現地へ行つて話を聞きますると、希望も相当あるようであります。私としては、この四十箇所を昭和二十八年度中に全部移譲をして、無理にでも強制的にやるとか、あるいはもしも引受けなければ云々というようなことは一切いたさぬつもりでありまして、今後私が当初考えておりました以上に地方の希望もあり、なおまたこれに対して従来の方針で行く面もありますから、順調に行きまするものは移譲をいたす。しかしどこまでもこの四十箇所というものを無理じいに、面子等にかけてもというようことは絶対に考えないで、もう少し模様を見て行く。ことに昭和二十七年度中に二箇所移譲しました が、それから昭和二十八年の初頭になつて二箇所、さらに三箇所、なおまた現在五箇所ありますから、これももう少し模様を見て、どうしても根本的に行かないとなれば、方針をかえるに決してやぶさかでありません。しばらく模様を見たいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/45
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046・長谷川保
○長谷川(保)委員 国立病院の移譲の問題で、なるほどぼつく希望者もあるということは事実であります。しかしその実際を聞いてみますと、これをなくされては困るが、さればといつて、これを地方でかぶつてしまつたんでは、なお大きな負担を地方がかぶつてしまうことになるので、それも非常に困るということです。大臣がまわつてごらんになりまして、希望者がぼつぼつあるということも事実あると思うのです。今日の日本の医療機関、医療体系というものは決して整備しておらない。まだ十分な努力を要するわけであります。そしてこれらの中途半端になつておりますもの、あるいはほとんど希望がないもの、希望があつてもごくわずかしかないもの等を地方に移譲すること自体にやはり無理がありますから、この際この残りのものについては、根本的に考え直すべきだと思うのであります。ことに今日これらの病院につきましての持参金といわれるものが眠つておる。それでぼつぼつこの病院の処置を考えて行くのはけつこうでありますけれども、事実はこれらの病院は実に荒廃をしておりまして、国立病院として言うをはばかるほどの存在が大部分である。またその点が地方でも受取りがたい点でありまして、この金を何もしまつておかないで、屋根は雨が漏り、荒廃し切つておりまするこれらの病院にすぐ出してやることによりまして、整備をしたらどうか。その上でなお地方移譲の問題をぼつぼつ考えるならよろしいけれども、今日ひどく荒発し、雨が漏り、設備は不完全である。このままにしてぼつぼつ、出して行てということは、実に残念なことであります。もちろん六億四千万円ばかりでこの整備が全部できるとは思いませんけれども、その点につきましてはさらに一段の努力をいたしまして、十分に整備したものでありますれば、地方では必ずしも受けないものでもなかろうと思うのであります。今日のままで地方に押しつけるということになりますと、これはごめんだということになる。地方移譲はやるといたしましても、その六億四千万円のうちからどの程度使いましたか存じませんが、そういうものを早急に地方のこれらの国立病院に出しまして、整備するようにしたらどうか、こういうふうに考えるか、大臣の御意見はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/46
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047・山縣勝見
○山縣国務大臣 先ほども申し上げましたが、地方の国立病院のうちには、近代的な病院を見ました目から見ますれば、ずいぶん古色蒼然としたものもめつて、国立病院としての内容、形式を整えていないものも多いのであります。しかし雨漏り等のことはないように、応急処理費は予算にも組んでおりますので、そういう点の憂いはありませんが、しかし新たにその内容を充実さすとか何とかいうことは、移譲等の問題があつていたしておりません。お話の六億数千万円でありますが、そのうちわずか使つて、あと六億ちよつと残つております。これはやはり移譲に価しての整備費でございまして、一応予算上きまつたものでございますから、これを流用するわけには参りませんし、現に相当数の希望があることでありますから、これが移譲に際し、地方自治体が整備をはかるときに、その六億の金も含めて整備をいたす。それでどうしてもいかぬときには根本的に考え直す、こういうことでしばらく進んで参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/47
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048・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 関連して、私は時をあらためて、国立病院地方移譲の問題について大臣に尋ねようと思つておりましたけれども、ただいま長谷川委員から重要な質問がございましたので、さらに突込んでお伺いいたします。国立病院の実情は御存じの通りでございます。従つて今長谷川委員がおつしやいましたように、六億何千万かの金を今日の状態のもとに寝かせておかないで、お使いになつたらどうかということは前国会からるる申し上げておいた。ところが寝かしたままで、これを大臣は流用することはできないとおつしやいました。これはまつたく現実を無視した官僚主義だと私は思うのであります。しかも雨が漏り、床が落ち、看護婦の手がない今日の現状において、地方移譲に反対しておるところの従業員が、もはや病院はぼろぼろになつて来た、このまま捨てておかれては立つて行かないといつて、手を上げて反対運動さえもできないというところまで待とうというのが私は厚生省の意図だとにらんでいる。よく聞いてください。しかもモデル・ホスピタルとして、地方移譲をしないと腹をきめたものには、大阪の国立病院のごとき、金を二億もつぎ込んで非常に御寵愛になつておる。かたや近畿の同じ地区でも、私の滋賀県の国立病院のごときは、蚊やたぬきの出る患者の寄りつかないところに捨ておいたまま、今日なおほおつておかれる。御存じの通り今日の政治はまことに情ない政治で、市町村長は地方の情勢をにらみ、また皆さん中央の方は地方町村に圧力をかけて、実際に即ざない政治をやつていらつしやる。従つて地方病院にいたしましても、国立病院にいたしましても、今長谷川委員が指摘された通り、あのボロ病院をもらつて、赤字の市町村財政、地方財政を食われてどうするのかという議員の発言が、今日地方移譲なり、県側への移譲なりをはばんでおる。どこだつて赤字のふところをはたいてまでしてぼろ病院をもらつて、これを引受ける自信のある市町村というものはないはずだ。しからば六億数千万円の金を寝かさずに、これである程度修理し、売れの悪い娘なら手入れをして、さらに持参金をつけて、筋の通つた地方移譲をしようというのなら話はわかるけれども、お前たち地方移譲に反対するならば、これはもう立つて行かなくなるまで、腐るまでほつといてやるといつたやり方で、二年も三年も金を寝かしておる。国の赤字はないと言つて、貴重な国民の税金を二年も三年も寝かしながら、従業員をボロの中で働かして、しかも引受けを遅らせている。そのうちに様子を見ようという行き万は、私はまつたく怠慢であり、悪政と思うのであります。大臣の一片のかかる答弁長つて、われわれは今日のこの国立病院地方移譲の問題を見逃すことはできない。なぜ金を入れて現実に即した政治をおやりになら一ないか。物わかりのいい厚生大臣は、一わずかしか地方移譲ができないこの現実を率直に御反省になつて、さしずめ六億数千万円の金を生かして国立病院に手入れをし、しかる後に地方移譲をしようということをお考えになるなら話はわかるけれども、地方移譲のがんになつておるところのボロ病院の修理さえもしないで、手をこまねいて、金を寝かして、おもむろに考えるとは、無責任もはなはだしい。この国立病院地方移譲の問題の法律が本院を通過いたしますとき、血の叫びをあげて野党各派は本案に反対をし、政府の善処を求めましたけれども、当時は自由党は絶対多数でありました。良識ある議員は幾多の声を聞きながら、絶対多数の力をもつてこの法律をお通しになつて、その結果たるや、まさに足かけ二年も経ようとしておるのに、この地方移譲の状態ではあまりに醜態ではありませんか。政府が医療体系に対するところの根本施策の上に立たないところの、大蔵省から圧力を受けてのこの地方移譲策が間違つたものであり、しかも今日のままに放置しておくべきものでないということを率直にお認めになつて、われわれに答弁をなさるのならば私は誠意を認めますけれども、大臣の一片の欺瞞答弁でこの問題は片づくものではございません。私は関連質問で立ちましたけれども、政府の誠意と、地に即した施策がここに打出されるまでは、この質問でひとつ大臣に私は対決いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/48
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049・山縣勝見
○山縣国務大臣 私は決して欺瞞をいたしておるつもりはないのであります。私も地方に参つて、その地方の国立病院は努めて見ております。滋賀にはまだ参つておりませんが、相当ひどいと言われた国立病院の一、二も見たつもりであります。この国立病院をどうするかという問題は、これは仰せの通り、私が先ほど長谷川先生のお尋ねに対して、私の引継ぎました困難な問題のうちの一つだということを率直に申し上げた通りであります。一片の欺瞞でもつて、一片の答弁でもつて、これをおおうというつもりはないということは、その答弁で御承知の通りで、今後この問題は私も誠意をもつて検討いたして行きたいと思います。但しこの六億を今ただちに使えと仰せられても、これは予算の関係上、一般経費と特別経費とは流用できませんから、ただいまただちにはできませんが、今後私もこの問題は検討を要する重要な問題と考えておりまするから、誠意をもつて検討いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/49
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050・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 委員長、もう一点だけ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/50
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051・小島徹三
○小島委員長 簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/51
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052・堤ツルヨ
○堤(ツ)委員 私は、政府が今日地方移譲をお考えになつた根本理念が、現在の日本の医療施策というものの盲点をついて、そして医療体系をいかにすべきかということをお考えになつて、われわれが納得の行く医療体系の上に立つて、国立病院地方移譲を御計画なさつたというならば話がわかる。しかし今日の政府の医療体系をごらんなさい。何らの施策もないのであります。しかもこの間もある開業医の会合に出ましたが、開業医と共立の診療所だとか、病院とかいうものは、今百地方で正直なところまつたく背中合わせで、大猿の仲であります。公共立のものを強化し、これを地元民の利益に供せんとすれば、地元の開業医が喧々ごうごうたる非難をする。ものの二丁離れない所に、私立のものと公共立のものとか相争うというような現状が起つてお6。そうすると、現在の開業医というものを生かして、いかに医療体系を今出の、新しい感覚を盛つたものに整えて行くかというので、体系をお考えになつて、国立病院というものの地方移譲はやむを得ないというならば納得が行くのでありますけれども、政府が金を入れて、よいものだけは残しておいて、できの悪い子供だけはほかしてしまう。こういつたやり方が見られるのであります。しかも地方の人々の心理はまことにふしぎでございまして、いかに啓蒙いたしましても、やはり国立病院の方が格が上であつて、市町村立になれば患者も寄りつかないという存えが市町村長や議員の頭からも離れないのであります。そういう現状においては、地方移譲が成功しそうなはずかない。ましてやボロ病院である。大出はここでひとつ根本的に国立病院地か移譲問題を白紙にもどして、考えなおすというところの一言を私はいただきたいと思うのでありますが、厚生大出いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/52
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053・山縣勝見
○山縣国務大臣 先ほど来、るる私の考え方を申し上げておりまする通り、今すぐにこの委員会で、この金を使つてということは申し上げかねます。但し先ほど来申し上げておりますような趣旨でもつて、この問題は誠意をもつて検討いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/53
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054・長谷川保
○長谷川(保)委員 今の堤委員の御発言はごもつともだと思います。私は厚生大臣の誠意を信頼いたしまして、私はこの問題を日本国民全体のために、ぜひとも誠意をもつて、すみやかに解決に向つて進んでいただきたいと思います。どうも地方に参りますと、どうしても官僚的な支配の空気がなお非常へ強うございます。それがあらゆる意味で国民の幸福を阻害するというようなことができがちであります。ことにこの問題につきましては、そういう影を見ないではありません。徳島の当局に直接聞いたのでありますが、徳島の諸君にいたしましても、やはりこれをほしいと言つているが、ほんとうはやめられたら困るということの方が非常に強い。それで、何とかしてこれはとつてておかなければならぬというところから、移譲をお願いしているようであります。事実は国立でやつてもらいたいという考え方が強いようであります。こういうような、ここに載つております徳島の問題ですらそうでございますから、どうか大臣は誠意をもつて、厚生省を督励なさつてこの問題の解決をすみやかにせられるように、ことに六億円の金を寝かしておかないで、これを国民のためにぜひともただちに誠意ある御使用をなさるように、切にお願いする次第であります。私どもその点につきまして、もし当局が誠意をもつて進もうとなされますならば、あらゆる協力を惜しまないものであります。ぜひともこの問題を解決せられるようにお願いする次第であります。
次に、時間がございませんようですから、簡単に質問をしてみたいと思うのでありますが、日本遺族会に対しまする旧軍人会館の無償貸与の問題であります。この点について、私どもは暗い話を聞かないではありません。ことに先般遺族会諸君とも会つたのであります。それから旧軍人の諸君、ことに在郷軍人会というものが、これを在郷軍人会に返還せよというようなことを言つて来ておるようでありますけれども、この在郷軍人会なるものが何ものであるか、私は知りません。こういうものが今なおあるということは、実に変なことであると思いますけれども、いずれにいたしましても、遺族会の幹部諸君の話を聞きますと、旧軍人諸君の団体の方からいろいろな実れがあり、要求があるので、その方と適当に協調してやつて行くというようなことを申しております。私はそういうことであれば、これは重大な問題だと思います。われわれはこの旧軍人会館を遺族諸君に無償貸与せんとする法案に賛成したいと思つておりますが、その意図は、この遺族たる同胞に対しましての国家の十分な保護が行われておらないから、どこからでもいい、少しでもこれらの諸君に対しまする保護を与え、その国家のために受けました大きな損害に対して、保護せんとするということにあるわけでありますけれども、それを横から在郷軍人会なるもの、その他の旧軍人団体が、何らかの制約を加え、これに対しまして自分たちの権力を振つて、何らかの権利をここに得んとする意図があるとすれば、これは断じて許すことができません。こういうことについて大臣の御意見を承つておきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/54
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055・山縣勝見
○山縣国務大臣 遺族会に対し旧軍人会館を貸与いたすことにつきまして、法律案を今提出しております。仰せのような軍人というものは、今ないのでありますが、軍人関係の団体から何らかの制約を受けておるということは、少くとも政府に関します限りは何らございません。遺族会に対して旧軍人会館を貸与いたしますのは、仰せのような趣旨によつて、遺族の人々に対して何らかの形を異にした援護をしたいという趣旨でなすものであります。ただこの法律案の第二条の2にありまする通り、遺族会以外の者が同様の目的を達するために、旧軍へ会館の使用を必要するに際しましては、適当に厚生省令で認め、また厚生大臣の承認を受けて、その程度のものは認めてよろしいであろうということでいたすわけであります。仰せのようなことによつて、政府が動かされておる事実もなければ、その他のことも承知いたしません。ただいかにして遺族の人々がこの会館を有効適切に利用して遺族の援護に資したらいいかということだけを考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/55
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056・長谷川保
○長谷川(保)委員 法案の第二条第一項の六及び第二項等の実際の適用、運営のあり方でありますけれども、そういうような実際の運用において、今申し上げましたような旧軍人団体等が、一方におきましてこの法律の本旨を横へ持つて行く、ずらかして行くというようなおそれがあり、また一方におきましては、以前堤委員からも御心配があつたように、これが遺族会のボスたちによつて、真に遺族たるへ々の利益のためではなくて、何らかの利権的なものとされるというおそれが多分にあると思うのであります。もちろんこの法案全体につきましては、それについての十分な関心を示しておるようでございまするけれども、私が今日大臣に特に言質を得ておきたいことは、すでに遺族会の幹部が私どもに漏らしておりまするが、旧軍人団体等の利益のためには決して使わせない。その遺族の利益のためならば、むろん法律の趣旨にかないますけれども、それ以外の目的に、ことにすでに手を伸ばしておりまする軍人団体のためには、これを使わせないということで、その言質を本日いただいておきたいと思います。それをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/56
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057・山縣勝見
○山縣国務大臣 私は、この法律案を提出いたしておりまして、法律の条項に従つて今後善処いたすつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/57
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058・長谷川保
○長谷川(保)委員 ことに私どもの聞くところでは、日本遺族会どいうのは、あらゆる遺族の団体を一つにしたものであるということでありますけれども、とかくこういうような大きな団体になりますると、不幸にいたしまして、今日の政治のもとにおきましては、特定の政党に利用されるおそれがに多分ございます。この大きな国有財産を使わすことに、少しでもそういう影がさすようでありますと、実に残念なことであると思います。これについても、すでにそういう方面から私どもにも陳情がございますから、大臣におかれましては、十分な御監督をしていただくことをお願いいたしまして次の問題に移りたいと思います。
次に、大臣の御所見を承りたいのでありますが、今日の日本の社会福祉行政におきまして、公的の社会福祉施設と、私設社会福祉施設との関係をどういうようにお考えになつておられるか、承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/58
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059・山縣勝見
○山縣国務大臣 公的の福祉施設と、それから私的の福祉施設との間についての1今ちよつと私は聞きもらしましたのですが、その間に、たとえば何か差別を考えておるかどうかということでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/59
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060・長谷川保
○長谷川(保)委員 どういうふうにウエイトを置いておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/60
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061・山縣勝見
○山縣国務大臣 それはすでに御承知の通り、一へ当りの生活保護費につきましても、あるいは施設の分につきましても、何ら差別を設けておりません。これは一様に、両々相まつて、日本の社会福祉の増進に寄与せしむる意味において、何ら特別の差別は設けておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/61
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062・長谷川保
○長谷川(保)委員 憲法におきまして、国民の基本人権を守り、その福祉を守るということが国の責任だということからいたしまして、戦後の傾向といたしまして、ことに最近はげしくそういう傾向が出て来たと思うのでありますが、あらゆる点で、とかく公的な社会福祉施設、あるいはこれに準ずるものに重点が置かれている。たとえば民営で公有のような、建物だけは県のものであるけれども、経営を社会福祉法人に委託しておるというような、公的社会福祉施設に準ずるものにとかく特別に国の施策の重点が置かれまして、とかく私設社会事業に対しましてはこれをおろそかにして行く傾向が、事実において相当はげしいと思うのであります。大臣のこれに対する御意見を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/62
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063・山縣勝見
○山縣国務大臣 私としては、単に社会福祉事業のみでありませんが、私的事業というものに対しましては、由来相当これを高く評価しております一人であります。ただいま厚生大臣の職にありますから、今お尋ねの点について申し上げまするが、私は私的の社会事来というものは相当高く評価してしかるべきだと思います。私のこの信念は相当固いのであります。しからばその情念と現在の国の施策との間に懸隔があるじやないかというお尋ねがあるかもしれませんが、少くとも私はプライべート・インステイチユートというものを相当高く評価しております。話がそれてはなはだ恐縮でありますが、たとえば図書館にいたしましても、私はプライベート・ライブラリーの方を高く買つております。そこで社会福祉品のいろいろの施設につきまして、母子寮にいたしましても、保育所におきましても、それはいわゆる建物の管理のみではなく、それを行う保姆とかあるいは寮長の、その事業に対する熱意と認識のいかんだと私は思う。その意味から申しますれば、私は一片の辞令によつて、たまたま寮長に、あるいは保姻になつた人よりも、一生をその保姆あるいは寮長としてそういう施設に捧げている人に対して、私は敬意を払い、高く評価しておるのであります。これが現状であり、最近視察をいたした際においてもそれを同様に感じておりますから、今後民間の施設に対しては、相当育成すべきものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/63
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064・長谷川保
○長谷川(保)委員 私は大臣の御答弁を深く喜ぶのでありますが、しかし事実はなかなかそうなつておらない。今日の社会事業施設の財政の困難なところ、あるいは施設の貧弱なところは、これを盛り上げなければならないのでありますが、われわれは全体として、公有民営という形において社会事業を営むことが非常にいいと思い、そういう立場で、施設は公有に、経営は民間の情熱ある方に、真に愛に満ちた、そういう方面に深く使命を感ずる人々に経営してもらうことによつて、ほんとうの社会福祉の仕事ができるという考え方から、そういう立場を強く主張して参りました。しかしその後の事情を見て参りますと、必ずしもそれがうまくいかないという悲しい事情に立ち至つておることは、先ほども私が指摘いたしました。厚生当局及び地方の都道府県におかれましても、その方面を担当いたしまするものが、とかく公的なものに傾き過ぎまして、私設の社会福祉事業のよさ、そこに働く人々のその熱情の深さというものに対しまする深い考え方が足りないと思うのであります。しかし私は今大臣のおつしやいましたことをよしといたします。しかしながら不幸にして私は幾つもの事例を持つておりますが、時間がありませんから、ただ一つだけ実例を申し上げ、当局の考え方、大臣のお考え方を伺いたいのであります。今年の三月十日付で、全国に今起りつつありまする結核の後保護施設に関しまする通牒を、厚生省は都道府県に出された。その通牒を見ますと、ただいまの大臣のお言葉にもかかわらず、この後保護施設の私設のものが十ばかりあるのに、今後は後保護施設については都道府県立のものにするということ、それからその運営につきましては平衡交付金でするというようなことが通牒されております。私は自分の経験から申しましても、結核の後保護施設というものは、実に経営の困難な仕事でありまして、これこそむしろ民営の仕事として深い忍耐と情熱を持つた社会事業の従事君たち、経営者たちがこれに当らなければならないと考えております。また戦後、国立の病院等にありましたアフター・ケアの仕事が全部うまく行かなかつた。みなつぶれてしまつたというような実情もこれを実証しておりますが、こういうような通牒が現実に出されておりますけれども、これを大臣はどういうふうにお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/64
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065・山縣勝見
○山縣国務大臣 この点は、実は先ほど私から申したのとは別に背反いたしていないと思います。と申しますのは、本年度の予算で初めてアフターケアに対する予算をとりました。そのアフター・ケアは、大体二箇所ないし三箇所を予定しております。私も実は二月五日でございましたか、通牒を後に見ましたが、率直に申しますれば、この通牒の文言は、いかにも仰せのような誤解を招くよりな文言に私自身解釈いたしたのであります。これを見ますと、本施設とありますから、本施設とはアフター・ケアのことである。本施設は公的以外のものを設けることは認められないというようなことですから、これは私も事情を知らなければ、長谷川君と同じような気持を持つたかもしれません。しかしこれはそういう意味ではありませんので、今年はアフター・ケアを置くが、これは多年要望されたものであつて、しかも結核対策としては一番大事なことである。しかしこれはテスト・ケースである。もちろん従来もアフター・ケアの施設が、そういう国家の補助をまたずしてございまするが、少くとも国の施設としてやるのは今回が初めてである。しかも予算は最初のテスト・ケースとして大蔵省がなかなか認めないから、約二箇所か三箇所分をとり、今またお話の通り、なかなか私設と申しましても困難なものであり、相当の規模を持つていたしませんことにはできないものであるから、今回は予算の額からも、またテスト・ケースという面から見ても、公的の補助の対象になるものにそれをつぎ込んで一応やつてみようということで、この通牒と申しますか、要綱と申しますか、出したわけであります。公的なものに対する補助ということを目標にした、一応補助を与えるものについての要綱でありまして、私的のアフター・ケアというものは一応ネグレクトして認めない。あるいはそういうものは今後国としては何ら重きを置かないのだという趣旨は毛頭ないのであります。でありまするから、今後予算がたくさんとれまして、またプライベートなものを育成することが必要なときには、同様にして参りたいと考えております。私も同様な疑問を持ちましたが、そういう趣旨でございますから、御了解願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/65
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066・長谷川保
○長谷川(保)委員 この点につきましては、地方におきましても、都道府県におきましても、誤解をしておりますから、どうか誤解のありませんように御尽力をいただきたいと思います。今後、私設社会事業の運営は相当困難な事情にございます。これも大臣御承知の通りであります。つきましては本国会の議員提案といたしまして、社会福祉事業公庫法案、あるいはそれに類するものを一応出すことを準備しております。それについても十分な御了解を得たいと思うのでありますが、これは他日に譲ります。
次に、先日もちよつとお話のありました例の日本銀行の地下にありまする、戦時中一般国民から集めました金、銀、あるいはダイヤモンド等についてであります。昨日日本銀行に監査に参りまして伺いますと、数千億円でろうということであります。中川委員は三百億円くらいだというようにダイヤモンドを考えておられたようでありますが、そのほかの金、銀を合せますと、数千億円であろうと言うておられるのであります。これは戦時中に、御承知のように一般国民から国家のために献納させたものである、しかも今日毛利家だとか、あるいはその他の大きなものから出されましたものにつきましては、それぞれ毛利氏とか、あるいは何々氏とかいうような名前がついて保管されておるそうでありますが、一般国民から出しました金歯だとか、あるいは金の眼鏡のふちだとかいうようなものにつきましては、これは全部鋳つぶしまして金の延棒になつておる。今返還する道は全然ありません。これは戦争のために犠牲になておられまする一般の遺族の方々や、あるいはそのほかこの戦争という大きな禍いと、その後の大きな革命とを経まして、まつたく生活がくずれてしまいましたような万々にもそれを供出いたした方々がたくさんあるので、そういう方々のためになされておりまする公的及び私的な社会福祉施設、ことに私的社会福祉施設の整備、運営等の資金に当てましてこれらの施設をさらに拡張前進させ、これらの保護を要しまする方々を歌う道に使うことが適当であるように石えるのであります。大臣におきまし、は、そういうお考えはありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/66
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067・山縣勝見
○山縣国務大臣 この問題は、昨日も中川委員からお話がありました。このダイヤモンドの処理の問題は、所管外でございますから、今私がどうこうと申し上げかねるのでありまするが、もしもさようなものが出て来て、それを社会福祉事業に使つていいというふうはことに相なりますれば、もとより日本の社会福祉事業の増進は焦眉の急でございますから、われわれといたしましてもその間の事情が許し、またさようなことに相なりますれば、もちろんその方針には双手を上げて賛成でございます。しかし何分にも、そのもとの処理そのものが所管外でございますから、今ただちにどうこうということは申し上げかねまするが、今申したような場合においては、もちろん私はけつ
こうなことだと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/67
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068・長谷川保
○長谷川(保)委員 ただいまの問題は、おそらく早急に処分するような傾向になつて来るだろうと思いますが、ただいま申し上げたことは、先ほどの六億四千万円の残りと同様に、眠らしておく必要はどこにもないので、これを国民全体のために生かして使うことについて、閣議に持ち出して御尽力をいただきたいと思います。
なおお伺いするものがございますけれども、たいん遅くなりましたので、今日はこれでやめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/68
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069・安井大吉
○安井委員 時間が迫りましたから、きわめて簡単に大臣にお伺いいたした
いと思います。
過般来、この委員会における論議の中心は、主として疾病社会保障対策でありましたが、まことにけつこうな問題であります。一方その疾病を未然に防ぐ、あるいは健全な生活環境を建てる、そうして勤労の意欲を向上せしめ、文化国家の基礎を確立するというような点に対して、幾多の政策があると思うのであります。厚生大臣の所管に関する点につきまして、大臣のこれらの問題に対するお考えを承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/69
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070・山縣勝見
○山縣国務大臣 仰せのように、清掃事業は、公衆衛生の見地からしましても
一番基本的なものである。たとえば上水道、下水道、あるいはその他の清掃、これはすべての疾病等を防ぎます最初の段階において一番大事なものである。しかもこれが従来予算措置において等閑に付せられて参つたのは事実でございます。私も非常に遺憾に考えまして、本年度予算の編成に当りましては、清掃事業というものの認識をまずもつて深めることが大事であると申したのであります。これは余談になりまして、はなはだ恐縮でありまするが、従来この清掃事業に関しまする限り、大てい事務折衝に終りまして、予算閣議において清掃のせの字もおそらく話したことはなかろうと思うのであります。しかし私は、この予算の額をとるということも必要でありまするが、たとえば国民健康保険に対して、今回ああいうふうな措置ができましたのも、やはり社会保険のうちの医療に関する社会保険の必要性が痛感せられたからであろうと思います。その点政府の当路者や本省関係者が認識を深めぬことには、無理に予算をとりましても、それは当座の花見に終るのでありますから、まずもつてその必要性の認識が必要であるというので、この前の閣議におきましては、私は清掃事業に関しては二回ほど発言した。私はこういうことに対してはしろうとでわかりませんが、いささか勉強をして、たとえば消化槽の問題、あるいは簡易水道、あるいは上下水道、これらの問題に対しても総理初めその他の閣僚に相当の時間を費して説明いたしたような経験もございます。そうして清掃事業の認識を深め、今後これに対する予算の編成にあたつて、可能な範囲において予算がとれるように持つて行つて、公衆衛生事業の一番基本的な問題の解決に資したいと考えて参つたのであります。現に上下水道におきましても、人口単位の普及率というものがきわめて僅少である。ことに農山漁村におきましては、きわめて僅少でありまするから、今後こういうような問題に対しましては十分に注意をいたして参りたい。本年度予算におきましては消化槽に対するものが載つております。あるいは簡易水道も昨年から実施いたしておりますようなことですし、なおまた清掃場の増設等につきましても、なお今後考慮をいたしたい。なお平衡交付金との関係につきましても、そういう点も考慮いたしたい。さようなことを考えておりまするので、予算の総額から見ますと、あるいは御不満があろうかと思いますが、昭和二十八年度の予算の編成上においては、いささかさような面において、従来と違つた行き方を考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/70
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071・安井大吉
○安井委員 大臣のお考えの存するところはわかりましたが、日本の政治の発達したものは、何を見ても、国家がそれを予算化するか、あるいはそれを法制化して、実際にやつた結果現われたものによつて発達しております。今清掃事業の法律を見ると、汚物掃除法のごときものは、明治三十三年に制定して以来、旧態依然として何らの改正を見ておりません。これはむしろ厚生省がこれに力を入れていなかつた。大臣のお話のような点に対して具体的でなかつたということを如実に物語つておると思うのであります。今日本の中小都市、ことに大都市においては、この問題が非常に生活を暗くし、都市のがんになつておる。これに対して予算を見れば、予算書のすみにわずかに五千万円の金が計上してあるだけであります。平衡交付金を見れば、わずかに七億幾らのものがそれに含まれておるというような実情で、これでは」ういう根本的な問題に対して、まことに手ぬるい感がするのであります。大臣はこの清掃事業に対して、単なる法律の改正だけでなく、もつと具体的に、厚生省の中に清掃事業対策に対する何かを組織するお考えがございますかどうか、伺つてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/71
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072・山縣勝見
○山縣国務大臣 お話のように、汚物掃除法というのは相当古い法律でありまするから、その改正等に対しては国会においてもお考えになつておるようでありまするが、政府の方も、適正な改正に対しましては努力をいたしたいと思つております。
なお、厚生省の中に清掃事業に関しての何か新たなる一つの機関を設けるかとのお話でございまするが、それもけつこうではございましようけれども、何分にも行政上の節約とか、行政整理をやつておる際でありますし、要は今後かような清掃事業が、公衆衛生上あるいは国民生活上、基本的な重要な問題であるということをよく認識いたして、予算上、その他において遺憾なきを期するということが、まずもつて当面の急務であろうと思うのであります。ただいま特別の機関を設けますような意図は持つていません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/72
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073・安井大吉
○安井委員 まだたくさんあるのでありますが、大臣はお忙しいようですから、大臣に対するものは打切つて政府委員に後ほど質問することにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/73
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074・小島徹三
○小島委員長 他に大臣に対する質疑はございませんか。ないようですから、大臣に対する質疑はこの程度で打切ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/74
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075・小島徹三
○小島委員長 次に、医師等の免許及び試験の特例に関する法律案の討論に入ります。
本案の討論につきましては、別に通告もありませんので、討論はこれを省略し、ただちに採決いたすことに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/75
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076・小島徹三
○小島委員長 御異議なしと認めます。よつて本案の討論を省略し、採決いたします。
本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/76
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077・小島徹三
○小島委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたされました。なお、ただいま可決いたしました法案に関する委員会の報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/77
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078・小島徹三
○小島委員長 御異議なしと認め、そのように決します。本日はこれをもつて散会いたします。次会は公報をもつて御通知いたします。なお、明後十三日月曜日は、恩給法の一部を改正する法律案に関して、内閣委会と連合審査会を開く予定であります。
午後零時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X01819530711/78
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