1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月二十四日(金曜日)
午前十時四十七分開議
出席委員
委員長 小島 徹三君
理事 青柳 一郎君 理事 中川源一郎君
理事 松永 佛骨君 理事 古屋 菊男君
理事 長谷川 保君
越智 茂君 田中 元君
山口六郎次君 山下 春江君
萩元たけ子君 柳田 秀一君
岡 良一君 堤 ツルヨ君
亘 四郎君
出席政府委員
厚生事務官
(保険局長) 久下 勝次君
厚 生 技 官
(医務局長) 曽田 長宗君
委員外の出席者
参議院議員 林 了君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 山本 正世君
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七月二十三日
委員杉山元治郎君辞任につき、その補欠として
中井徳次郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十四日
委員有田八郎君及び中井徳次郎君辞任につき、
その補欠として大橋忠一君及び伊瀬幸太郎君が
議長の指名で委員に選任された。
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七月二十三日
西山温泉を温泉地に指定の請願(鈴木正文君紹
介)(第五二九八号)
健康保険の療養期間延長等に関する請願(加藤
鐐造君紹介)(第五二九九号)
国立らい療養所職員の増員並びに待遇改善に関
する請願(長谷川保君紹介)(第五三〇〇号)
隼人保健所横川支所を本所に昇格の請願(池田
清志君紹介)(第五三〇一号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
日雇労働者健康保険法案(八木一男君外十名提
出、衆法第六号)
歯科医師法の一部を改正する法律案(林了君提
出、参法第三号)(予)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/0
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001・小島徹三
○小島委員長 これより会議を開きます。
まず現在予備審査のため付託になつております歯科医師法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。まず提案者より趣旨の説明を聴取したいと存じます。提案者参議院議員林了君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/1
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002・林了
○林参議院議員 ただいま議題となりました歯科医師法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
歯科医業の本質は、歯科領域の疾病の診療にあり、人体全体を対象としたものではないかといわれておりますが、歯科医業の一部門であるといわれる口腔外科におきましては、その治療中に大出血等のために死亡という事実がまれに生ずるのであります。かような場合に、現行法のごとく、歯科医師みずから死亡診断書を交付することができないことにしておきますと、口腔外科を担当する歯科医師の責任の所在の明確を欠くおそれがあるとともに、現代歯科医学がますます一般医学とともに進歩しつつある現状よりわが国歯科医学の発達を阻害しておることになるのであります。
さらに、歯科医師は、医師とともに国民医療の担当者として、解剖学、生理学及び病理学その他の一般基礎医学に対しても一定の学識を修得しておるのでありまして、みずから診療した者に対して死亡という現象が生じた場合にもその正確な判断を下す能力を十分有しておるのであります。従いまして死亡診断書の交付の能力を十分有しております歯科医師に対しましてもその交付を認めますことは、歯科医療の向上の点から見ましても重要な意義を有するものであると信じまして、ここに本改正案を提出した次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御可決くださるようお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/2
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003・小島徹三
○小島委員長 次に本案の質疑に入ります。柳田秀一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/3
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004・柳田秀一
○柳田委員 この歯科医師が死亡診断書を交付することが法的にできるできないというようなことは、従来の旧法の場合にはどうなつておりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/4
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005・林了
○林参議院議員 旧法では、医師も歯科医師も同じような条文になつておりまして、求めがありました場合には死亡診断書を交付できるというようになつておつたのであります。しかしこの問題がアメリカの進駐を見ましてから、特に日本人の口腔の状態が、前の方に金冠をか君たりしてぎらぎらするものを見まして、彼らはこういうような方面をまず歯科医学の点で検討すべきではないかというようないろいろの意見がございまして、この点をおそらく政府の方へ要請をされまして、こういうことをまず第一に取上ぐべきだ、だから死亡診断書というような問題についてはあまり考えない、こういう方面をよく検討してやつて行つたらどうだろうかというような意見があつたと私は信じておるのであります。従つて従来そういうものがありましたにかかわらず、さらに歯科医師は死亡診断書を交付してはならないというふうに、十九条の第三項でございましたか、それを入れてあるのでございます。これによりまして、全般的な歯科医ということよりも大学あるいは特に口腔外科のこれを専門的に業としておる人たちが、自分の責任という問題をよく考えてみましたときに、十分なる自信と責任を感じてやり得るようにしてもらいたいという意見がずいぶんございまして、今日この改正案を提出した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/5
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006・柳田秀一
○柳田委員 医務局長にお尋ねしますが、従来の法律ではこの辺のことが少し不明確でなかつたか、別にこういうような禁止条項はなかつたが、特にこれに対しては何ら条文をうたつてなかつた。診断書を出してもよろしいが、別にそれを出すことができるとも書いてない、出してはならないとも書いてなかつたというふうに了解しておりますが、どうでございますか。今の御説明のように占領政策の間にならないという禁止条項ができたのはわかりましたが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/6
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007・曽田長宗
○曽田政府委員 旧法とおつしやいましたのはおそらく戦前のことであろうと私は了解いたすのでありますが、国民医療法におきましては、仰せの通り死亡診断書については出さなければならぬとか、出してはならぬとかいうことを明確に指示してはないのでございますが、この点につきまして指示照会が県から参つておるのがございまして、これに対する本省の回答といたしまして、歯科治療中に大出血をして死亡したというような場合には、死亡診断書を出してよろしいということを回答いたしております。こういう関係から歯科医師も死亡診断書を書けるというふうに了解できると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/7
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008・柳田秀一
○柳田委員 提案者あるいは医務局でもどちらからの御答弁でもけつこうですが、歯科医師が死亡診断書を交付してはならないというような禁止条項がほかの欧米各国にも立法上ございますかどうか。さらに歯科医師の死亡診断書交付に関するこれに類似の立法で、欧米各国の実情等私は寡聞にして存じませんので、その辺のところを御明示願えたらどうかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/8
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009・曽田長宗
○曽田政府委員 私どもの方で調査をいたしました限りにおきましては、明確に歯科医師は死亡診断書を書くことができないという禁止条項を設けておりますものは承知しておらないのでございます。アメリカ等におきましてもその辺がはつきりとは現われておりません。ただ実情といたしましては、歯科医師が作成いたしました死亡診断書というようなものはきわめて少い、ほとんどないといつてよろしい実情にあるというふうに心得ます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/9
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010・柳田秀一
○柳田委員 実際問題として今御説明のように、歯科に関する限りの死亡診断書というものは非常にその数が少いと思うのでありまするが、それでは過去をさかのぼつた何年でもよろしい、一年でも三年でもよろしいが、どれくらい完全に歯科の領域に関するもので死亡した、従つてこういうような法律の禁止条項がなければ、当然歯科医師の手によつて死亡診断書が交付せらるべきものと了承されるような実例が何例くらいありましたか、それが非常に少いということでありまするが、過去一年でその事例かなかつたとおつしやいますならば、過去五年でもよろしい、そういうようなデータをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/10
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011・林了
○林参議院議員 今の過去何例あつたかという調査は、私の方でははつきりとお答えはできません。しかし歯科疾患が原因でさようなことを起した例は何例かはありまするが、きわめてまれであります。おそらく一年に一つあるかないかじやなかろうかとも私は考えているくらいであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/11
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012・柳田秀一
○柳田委員 私は別にこの法案に反対するわけではございませんから、そのつもりでお聞き願いたいのですが、こういうような、事例がごくまれのまれであるというようなもののために特別に立法するということに、多少私は疑点もありますと同時に、そういう特例のもののためにまた禁止条項を設けることも、逆説的に疑問があると思うのであります。同じことであります。従いまして提案者においても、立法する以上はもう少し正確な数字あるいは資料等をおそろえになつておく必要があるのじやなかろうかと一応は考えます。さらに死亡診断書は、現在直接死因と間接死因とにわけて記載することになつておりますが、かりに歯科領域に関する限りのこういうような死亡診断書を出される場合に、直接死亡というものはどういうような病名になりますか、その辺のところもひとつ御明示を願いたい。間接原因はいろいろとあるわけでありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/12
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013・林了
○林参議院議員 先ほどの、今までに幾つくらいあつたかということでありまするが、それは大体において民間開業医のところには比較的少いのでありますが、大学あたりの歯科外科あるいは口腔外科をやつている人たちは、この問題に対してはどうしても深く慎重に取組まなければならない問題であります。同時に今御質問がありました直接と間接と申されましたが、たとえば抜歯をするというような場合に、出血性の疾患があるとかないとかいうことは、これはわからない場合がございます。そういう場合には非常に迅速に来るために、たとえば歯を抜く場合でも奥の場合と前の場合と違いますし、また非常に骨の中に埋つているような複雑なものを抜く場合と単純なものと違います。そういう場合におきまして、血管の損傷あるいはその他血液疾患によりまして、大出血が来るということはよくふだんに見る例でありますが、これは死亡を見た例もございます。そのほかに間接の問題が相当ございますが、かような場合には歯科医師といたしましても、当然その場合には普通の専門医師を呼びまして、その処置をお願いするということになつているのでありますが、大体出血性疾患の場合が多いのじやなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/13
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014・柳田秀一
○柳田委員 そうすると大体この提案理由に書いてありますように、出血による死亡とか、そういうものが主にあろうかと思うのでありますが、たとえば下顎にがん腫ができる、このがん腫の摘出手術は相当大がかりな手術になりますが、こういうようなことは現在口腔外科専門の歯科医師の手でおやりになつてもよろしい。普通の一般外科医の手でやつてもよろしい。こういうふうになつておりますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/14
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015・曽田長宗
○曽田政府委員 下顎あるいは上顎のがん腫の例をお引きになりましたが、かような場合には、それが上顎、下顎に限局しております場合に限つて歯科医師の治療を認めるということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/15
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016・柳田秀一
○柳田委員 下顎、上顎にがん腫が限局するという判断は、これはがんの性質上おそらく不可能と思いますが、そういう場合に、かりに大部分が上顎、下顎の場合においては、当然私は歯科医師がおやりになつているのじやなかろうかと思いますが、別にそれは立法的な禁止措置をとられておらぬわけですね。そういうふうに理解してよろしいか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/16
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017・曽田長宗
○曽田政府委員 私今申し上げましたように今日解釈をされているのでありますが、実際問題といたしましては、仰せの通り、相当な苦痛の訴えを患者が持つているというような場合には、上顎、下顎に限局せずして、他の淋巴腺等に転位を生じているというような場合もあろうかと思うのでありまして、これはもちろんその患者の個々の状況によつて違いますけれども、相当のものでありますれば歯科医師だけでやらずして、他の外科医に御相談あつてしかるべきものだと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/17
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018・林了
○林参議院議員 それから先ほどの点でちよつと補足さしていただきたいのですが、出血ばかりではありませんで、たとえば歯底腫瘍の治療手術をするというような場合に、あるいはまた普通の単純な注射抜歯をいたしますときに、心臓麻痺といいますか、精神的障害によるシヨツクによりまして亡くなつた場合もございます。そういう場合も想像されます。
もう一つただいま口腔がんをどうするかという問題について御質問がございまして、政府委員から回答がございましたが、この問題はあとのことを考えなければならぬということが、歯科の医療では非常に重大でございまして、外科の方がおやりいただきますと、あとの咀嚼の機能を回復するのにはどうしたらいいか、あるいは骨をとりましたあとに、われわれは支柱をつくりまして、骨を入れますが、入れたあとに義歯をつくつてどういうふうにして咀嚼を回復するかということになりますと、外科医だけがおやりになりましても、あとの措置が非常に困ることがございます。そういう場合に歯科医の方が立ち会つてやるという場合もありますし、また歯牙疾患から来ました歯底腫瘍とか、たとえばアダマンチノームのようなものがレントゲン診察によつてありました場合には、まず歯科でやつている。これは特に大学の方面でやつている事実でございます。さような理由で、死亡ということはわれわれの方は起きておりません。それから先ほど今までの例をとおつしやいましたが、ちようど二十三年にこの法律が出まして、改正になりましてからというものは、われわれは死亡診断書を書いておりませんので、おそらくそういうことがあつたかとも思いますけれども、一般の医師によつて書かれているのではなかろうかと私は考えている次第であります。この提案をいたしました理由は、先ほども申しましたように、かような口腔外科というものは、日本の医科医学の由来が米国から来たものと、それから欧州ことにドイツを中心にしたものとございますが、ドイツから来たものは、基礎医学が非常に盛んなために、歯科医学におきましても、口腔外科、特に歯科外科ということに関しましてはかなり日本は進歩を見つつあつたのでありますが、たまたまアメリカの歯科医学の影響を受けたと申しますか、アメリカ歯科医学の場合にはさようなことはあまり好みませんので、この法律が改正になりまして、従来われわれがそういうものを明確にうたつていなかつたものが加えられた、こういうのが事実でございます。さような点をひとつ御了解いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/18
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019・小島徹三
○小島委員長 他に本案についての御質疑はございませんか。——質疑もないようですから、本案の質疑はこれで終了したものと認めるに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/19
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020・小島徹三
○小島委員長 御異議もないようでありますから、本案の質疑は終了したものと認めます。本案に関する討論及び採決は後日に譲ります。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/20
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021・小島徹三
○小島委員長 次に日雇労働者健康保険法案を議題とし、質疑を続行いたします。——本案については他に質疑もないようでありますから、本案についての質疑は終了したものと認めてよろしゆうございますか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/21
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022・小島徹三
○小島委員長 御異議ないようでございますから、本案の質疑は終了したものと認めます。本案に関する討論及び採決は後日に譲ります。
本日はこれをもつて散会いたします。
午前十一時十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604237X02519530724/22
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