1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年六月二十三日(火曜日)
午前十一時八分開議
出席委員
委員長 田口 長治郎君
理事 川村善八郎君 理事 鈴木 善幸君
理事 田渕 光一君 理事 中村庸一郎君
理事 山中日露史君 理事 小高 熹郎君
高橋 英吉君 塚原 俊郎君
中村 清君 濱田 幸雄君
志賀健次郎君 白浜 仁吉君
赤路 友藏君 淡谷 悠藏君
辻 文雄君 松田 鐵藏君
中村 英男君
出席政府委員
総理府事務官
(調達庁不動産
部長) 山中 一朗君
委員外の出席者
総理府事務官
(調達庁不動産
部次長) 大石 孝章君
農 林 技 官
(水産庁漁政部
経理課長) 高橋 泰彦君
専 門 員 杉浦 保吉君
専 門 員 徳久 三種君
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六月二十二日
以東底びき網漁区拡張反対に関する陳情書
(第三七二号)
漁業災害共済制度確立に関する陳情書
(第四〇六号)
漁業権免許、許可料撤廃に関する陳情書
(第四〇七号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為に
よる特別損失の補償に関する法律案(内閣提出
第四二号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/0
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001・田口長治郎
○田口委員長 これより会議を開きます。
ただいまより日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律案を議題とし、質疑に入ります。中村庸一郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/1
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002・中村庸一郎
○中村(庸)委員 きようは政府委員はどなたが出ていらつしやいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/2
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003・田口長治郎
○田口委員長 調達庁山中不動産部長、大石不動産次長、それから水産庁は高橋経理課長、増田海洋第二課長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/3
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004・中村庸一郎
○中村(庸)委員 本法案は去る十五国会におきまして、衆議院を通過いたしまして、解散のために流れたのであります。従つてすみやかに本法案の成立を希望するのでありますが、二、三明らかにしたい点がありますので、政府委員より御答弁願いたいと思うのであります。
本法案によりますと、第一條本文に「政令で定めるその他の事業」ということが記載されておるのでありますが、政令で定める事業というのはいかなる事業をさすのでありましようか。また政令ができておるならばお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/4
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005・山中一朗
○山中政府委員 お答えいたします。ただいま中村委員からの御質問でございまするが、大体駐留軍によりますところのいろいろな行為が間接的に事業に障害を来す場合に、本法をもつて救済したいというのがわれわれの念願でございます。第一号、第二号につきましては、今までございました事象を確実に把握いたしておりますので、これを法律の中に取上げておるわけであります。第三のその他の政令によつて定めるというものにつきましては、現在はつきり確認できないもの、将来起り得べきものが多々あるわけでありますが、現在におきましても、大体われわれが事実を確認し、あるいは被害者の皆様方からこういう問題についての救済をどういうようにやるかというような問題で、ここで救いまして政令に予定するようなものが、農業におきまして十四件、漁業において八件、農業、漁業に関係するものが二件、林業が三件、こういうものを今一応われわれとしては頭に描いておるわけであります。その他運輸関係につきまして、自動車によりますところの障害が、今のところ五件、それから船舶関係につきまして一件、教育につきまして、音響によるところの授業障害、あるいは風俗関係というようなものにつきまして一件、こういうものを一応想定して、各省関係のそれぞれの係官とお打合せする予定でおります。ただいま御質問の政令案ができておるかということに対しましては、はなはだ申訳ないのでございますが、現在試案として皆様方にお示しするような案はまだつくつておらない状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/5
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006・中村庸一郎
○中村(庸)委員 昭和二十八年二月十日の水産農林連合審査会におきまして、川田前不動産部長は、この法案が通過した場合には、占領軍が駐留軍にかわつたときまで遡及して適用するという発言をしておられまして、速記に載つておるのであります。その通り間違いないでありましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/6
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007・山中一朗
○山中政府委員 お答え申します。前の不動産部長をやつておりました政府委員の川田君が、ただいま御質問のようなことを、速記録によりますと述べておるのでありますが、私この点につきまして具体的に本人の意向を確めてみたわけではありませんが、おそらくこれの意とするところは、今度の法案にも遡及は規定しておらないのであります。この前にもそうだつたと思うのであります。這般の気持を忖度いたしますのに、おそらく被害者の皆様方に講和発効後は法律の公布ということと大体同じような実質的な見舞によるところの補償ができる。それによつて被害者の皆さんに、その前後における損害の軽重がないようにいたそうという意味のことを申し上げたのじやないか、こういうように想像するわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/7
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008・中村庸一郎
○中村(庸)委員 前国会において遡及するということを明瞭に発言せられて速記録に残つておるのでありますが、ただいまの不動産部長の御答弁では、遡及しないというようにもとれるのであります。第二條による損失補償を受けます場合に、都道府県知事を経由して総理大臣に損失補償申請書を出すことになつており、遡及するということはどうしても読みとれないのであります。しかしながら前国会におきましては、不動産部長と主計局長と思いますが、ともに遡及するという御答弁があつたのであります。これは前国会の本委員会における、遡及するという答弁を取消されるのでありましようか。この点をはつきりしていただきたい。これは遡及するとしないとでは、占領軍が駐留軍にかわつたこの期間の問題におきまして、法律の適用期間の解釈に非常な相違を来して参りますので、この点を明確に願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/8
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009・大石孝章
○大石説明員 私から補足的に御説明さしていただきたいと思います。
前国会で川田政府委員が遡及効を持つという趣旨のことを答弁したことは、私どももこの速記録を見て存じております。当時私は前の部長にも次長として一緒に仕事をやつたわけでありますが、そのときの趣旨は、実質効果といいますか、この法律を適用しまして、そういつたような損失を補償するという実質効果を、行政措置によつてやりたいという意味のように私承知しておつたのであります。従いまして、この法律が公布せられて適用される以降の事案の扱い方と、講和発効後この法律が成立するまでのその期間の扱い方とにおいては、全然差等がない、逕庭がないという実質上の扱いをしたいというのが趣旨だというふうに承知しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/9
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010・中村庸一郎
○中村(庸)委員 いやしくも本委員会におきましては、法案を審議しておるのであります。行政措置によつてどうこうできるだろうという御答弁には承服いたしかねます。その点をはつきりしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/10
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011・大石孝章
○大石説明員 御審議願う関係上、私どもの研究の結果をあけすけ中村委員にお答えいたしますが、私ども事務当局が内部でいろいろ研究いたしました際にも、この第一條の冒頭で、「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約に基き日本国内及びその附近に配備されたアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍」云々とありますので、当然講和発効後條約に基いておりますこれこれのアメリカ軍隊の行為によつて農業、林業あるいは漁業あるいは政令で定められた事業に被害を及ぼした場合に、その被害の内容は全部この法律で遡及して適用されるのであるという論のあつたことも事実であります。私どももいろいろその点を研究したわけであります。しかしこの條文の趣旨からは、当然遡及効が生れるというふうにはとれないという結論に到達いたしまして、やはりこの附則の一に「公布の日から施行する。」これ以降初めて適用されるものであるという結論が出たのであります。ただその間、御承知のように昨年の七月か八月の国会に提案せられ、それからあの国会でまた解散になつて、その後の特別国会に出され、そして前十五国会で引続き審議されておりまして、これが普通うまく行きましたならば、八月か九月には当然成立しておつたというような、あるいは七月か八月あたりに成立しておつたというような関係にあつただろうと思います。これがだんだん経過いたしまして、二月に本院において全員御賛同をいただきまして、本会議においても可決せられた次第でありますが、遺憾ながら参議院まで通らなかつたという次第であります。そういつたようなわけで、だんだん時間の経過がありましたので、いろいろその開議論のむし返しが行われたのですが、さつき申し上げましたように、結論的には、やはりこの法律の趣旨は公布の日から施行されるのであるということにおちついた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/11
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012・中村庸一郎
○中村(庸)委員 ただいま御答弁をいただいたのでありますが、その遡及する、せないということが非常な問題になつて参るのであります。もし前不動産部長のこの発言がほんとうに正しい、これを認められるとしますならば、昨年に支払われました一億一千九百万円の金額は、本法律案の適用期間内と解釈されますので、これは内金と見られるので、これがもし遡及されないとするならば、見舞金として処理せられたのかもしれない。そうしますと昨年出ました金額で打切りという問題も起つて来るのでありますが、この前不動産部長が本委員会において速記に残つた答弁をせられたのが誤りであるということは、まつたく遺憾千万であります。しかしながらこの問題は別としまして、行政的な措置でひとつ実際の損失を補償してやろうというような言葉にも今解釈できるのであります。この駐留軍の施設によりまして、まつたく漁民は極端なる窮乏に陥つておるのであります。しかして昨年末の支出金は内金である。従つて本法案の成立後において清算せらるべきものであるということを、本委員会において答弁をいただいております。また今年になつて、今年一月より三月に至る期間の計算もせよ、損害の額を算出せよという話合いにもなつておる。県の当局においては数字を集めておつた。従つてこの遡及する、せないという問題がまつたく大きな問題になる。あるいは行政的な処理をしようというお考えでありますならば、昨年度占領軍が駐留軍にかわつた以後の実際の損害額を算定して、それを政府において補償するという腹を持つておられるのかどうか、この点をひとつ明確なる御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/12
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013・山中一朗
○山中政府委員 ただいま中村委員からの御質問で、われわれも全不動産部長の言が形式的に追究されますと、非常にデリケートな問題だろうと思いますが、ただいま申し上げましたように、本人の気持としては、実際上の遡及効を持たすような行き方で行きたいという気持が、この表現で現われたのではないか、こういうふうに思考されるのであります。私もこの問題につきましては、就任早々でございましたが、相当重要な問題でありますので、一応財政当局、関係者に十分相談いたした、その結論から行きますと、法律的にははつきりと遡及効を持たすことは、こういう損失補償なんかについてはいろいろ悪例を残すおそれがあるのではなかろうかというような、内輪のそれぞれ話合いもあつたのであります。しからば占領後の実質的な損害に対する完全補償的な措置をとることが、われわれとしてもぜひ必要だと考えて、その点についての所見いかんということを申しましたところが、実損害についての保証金額は十分われわれとしても検討の用意がある、こういうように申しておるのであります。ただいま御質問の見舞金を内払い金と考えるか、あるいは見舞金として処置するのかという御質問に対しましては、形式的には見舞金は見舞金といたしまして、一応これを見舞金の形で支給したら……ということにおとり願いたいと思うのでありますが、その実損の計算の結果が非常に差のあるような場合、あるいはさ少の場合も、一月—三月間のただいまお話の関係につきましては、われわれはさらに十分精査いたしまして、この問題を完全補償の形に持つて行きたい、こういうように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/13
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014・中村庸一郎
○中村(庸)委員 ただいま御答弁で、遡及効を持たせるということは、立法上において悪例を残す、こういう御答弁があつた。しかしてまたこの委員会における政府委員の答弁がまつたく間違つておつた。これでもよろしいということは、なおさら大きな悪例を残すことであると私は思うのであります。この点は悪例を残さぬように、まつたくはつきりとしていただきたい。しかしながら今日、実際漁民は日々まつたく困窮のどん底に追い込まれて、生活に困る状態にありまするので、実際の効果をもたらすために、完全補償の建前で行政的な措置をとるという、かようにはつきりした御答弁をいただいたのですが、すなわち一月から三月までの分も実際損害を算定して、完全補償をすると御答弁になつた、この通り了承してよろしゆうございましようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/14
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015・山中一朗
○山中政府委員 ただいまの中村委員の御見解の通りで私たちも別に異存ないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/15
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016・中村庸一郎
○中村(庸)委員 一月から三月までの分は完全補償という御答弁であります。また昨年度内払いの分におきましても清算すべき額があろうと私は考えます。この問題は昨年度講和発効後における損害に対しまして、ひとつ通算してお考え願いたいと思う。この委員会における政府委員の答弁の食い違いというものは他日に譲ることにいたして、これ以上追究しないことにいたします。
しかして本法案によつて補償せられます、本年度に予定せられまする金額でありますが、防衛支出金六百二十億円が本二十八年予算に組まれておりまするが、このうちの事故補償費はどのくらいの額を予定しておられまするか、本法案の成立によつて今年度に補償されるべき金額はどのくらいを予定しておりまするか、ひとつ明らかに示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/16
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017・山中一朗
○山中政府委員 お答え申し上げます。ただいま中村委員の御質問に対しまして、事故補償といたしまして、本法律案に関係しておるものをわれわれが一応これくらいであろうということで考えておる金額は、大体七億ないし八億だろう、こういう見通しで財政当局と折衝いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/17
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018・中村庸一郎
○中村(庸)委員 ただいま本法案によつて予定せらるべき額をお示し願つたのであります。私は重ねて申し上げておきたいのでありまするが、本委員会における前政府員の御答弁が食い違つた問題に対しましては、委員会の権威におきましてまつたく承服しがたいところでありますが、この法案の扱い、また実損害を受けておりまする補償に対しまする考え方、その他によりまして、私は昨年度における実際の損害というものを完全に補償せられるということで、この点を重ねてお願い申し上げておきたいのであります。
それからそれに関連いたしまして内灘等の補償算定の基礎でありますが、あるいは千葉県などの算定の方式によつておるのかどうか、もし違つておつた点があるとしまするならば、同一歩調で行きたい。ひとつ千葉県と内灘等における損失算定、これが同じ歩調で行つておるかどうかお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/18
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019・山中一朗
○山中政府委員 お答えいたします。ただいま内灘の漁業補償と千葉その他の漁業補償との算定に何か違つた基準、あるいは計算において異つたところがあるかという御質問のようでありますが、漁業補償に関係いたしましては、同じ基準において、同じ計算でやつておりまして、全然差違がないと申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/19
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020・小高熹郎
○小高委員 関連して……。去る二十日の当委員会におきまして特別調達庁の長官に向いまして、本日のこの委員会においてこの法案が通過した際に、補償すべき金額をお尋ねし、同時にその内容をいかに盛り込んでおるか、何箇所、何件、どこへ交付するつもりであるかということを答えてもらいたいということをあらかじめ予告いたしておつたのでございますが、中村委員の質問に対しての答弁は六億だか、七億だか、そういう点がはつきりしておらない。私が注文しておつたことに対して長官からあなた方に連絡があつたかどうか知らないのでありますが、この点非常に遺憾に思うのでございます。これらの点につきましては、早急に答えを出していただきたいのであります。先ほど答弁の中にありましたが、八件の漁業災害に関する内容はどことどこが八件になつておるか、その八件の内容の箇所をお知らせ願いたい。それからさらにつけ加えて申しますが、運輸関係が何件か言われておりましたが、その運輸関係はどことどこか、何件であるか、それも答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/20
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021・大石孝章
○大石説明員 漁業関係で八件とお答えした内容を申し上げます。防潜網の設置によりまして起きます損失補償は、東京湾沿岸、大村佐世保沿岸、それから博多湾の中央部の海面が飛行艇の発着に使用せられておりますために起きますところの漁業の損失、それから要約しますと、海面における艦船、舟艇の使用ということになるのでありまするが、静岡県の沼津沖合い海面におきまするところの演習における関係、それから水中におきます障害物の遺棄、青森県下北郡関根、これは射撃に使用いたしましたところの砲弾の不発弾が多数遺棄せられまして、その危険等のためにこんぶあるいはその他の漁撈ができないという関係、それから魚つけ林の損壊、これは広島県の江田島、それから水質の汚毒、悪水流入といつたような原因で起きておりますところの新潟県の松ケ崎飛行場周辺の海浜、現在私ども考えておりますのは漁業関係で申し上げました八箇所でございます。
それから運輸関係で現在私ども研究中のものは、陸上関係では自動車の使用関係でございますが、これは東武鉄道、駿豆鉄道、京浜急行、国土計画興業、富士山自動車等が専用の自動車道路を持つておるわけでありますが、それをアメリカ軍隊が料金を支払わないで使つておる、こういうことから起きております損失、それから海上関係では、防潜網設置のために東京湾の船舶が航行阻害といいますか、運行能率に非常な阻害を来して起きております損失関係といつたようなことを研究中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/21
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022・小高熹郎
○小高委員 なお防潜網と聴音機に関連してお尋ねいたしますが、本件につきましては、千葉、神奈川、東京都、一部二県に関係があるのでありますが、先般水産庁の方から、防潜網及び聴音機関係に対して、かような基礎算定によつて補償するというような一つの基礎資料がわれわれに配布されたのであります。その資料中東京関係の一本づりとかあるいは延なわとかが漏れておるのはどういうわけかという件でございますが、これについては一応水産庁当局から答弁を願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/22
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023・高橋泰彦
○高橋説明員 この防潜網関係につきましては、先日お手元に配付いたしました資料にありまするように、損害の性質につきましては、三つの事項について考えたのでございます。その第一点は、操業禁止区域において漁業の操業が制限されているということ、第二点は、防潜網によつて漁業の創業が制限されている。第三点は、防潜網によつて魚道が遮断される事例という三つに分類して損害を与えたのでございますが、ただいま御質問の事項の魚道遮断の事例については、私どもの考えといたしましては、つりその他のものも一括いたしまして算定しております。それから操業禁止区域については、これもお手元に差上げました資料をごらんになりましても書いてありますように、たとえば三枚目の千葉県分というところをごらん願いますとわかりますように、やはり一本づり、延なわにつきましても損害額を算定して計上してございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/23
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024・小高熹郎
○小高委員 これらの点につきましては、十分遺憾のないようにとりはからいを願いたいのであります。
さらに、最後に一点お尋ねいたしたいのは、私どもはすみやかにこの特別損失補償法を通過させまして、一刻も早く漁民にこの補償金を手渡したいというのが念願でございますが、それにつきまして、今までの事例を見ますと、この法律が成立後においては違うかもしれないのでありますが、今までの見舞金のときの書類の取扱い方が、本省へ届くのは何通であるかは知りませんが、漁民の手元において一人当りの書類は実に二十四枚に達しているのであります。越後の毒消売りみたいに一しよい背負わなければ役所へ来られない。こういうばかな煩雑を何ゆえにさせるのか。見舞金をもらうのはありがたいけれども、書類をつくるために、複写でとれる程度の枚数ならばいいのでありますが、二十何枚もとられたのでは手数がかかつてやりきれないというのが実情でございます、これらの点につきまして、この法律が通つたならば何通くらいで間に合うか、もしこの数が多いとするならば、せつかくのありがたみが大いに割引されますので、このために何十回となく、また会合だ、また会合だ、また何枚足りない、また何枚足りないといつて、この問題で二箇月も三箇月もあなた方の御存じない苦労をして、うき身をやつしているのでありますが、いかに書類の簡素化をこの法律に添えて施行する考えであるか、特に特別調達庁の山中不動産部長からお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/24
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025・山中一朗
○山中政府委員 お答えいたします。ただいまのお話で、本法案を一日も早く成立させてやろうというありがたいお言葉で、われわれも非常にそれをこいねがつておるわけであります。何分よろしくすみやかに御審議願いたいと思います。
それに関連いたしまして、ただいま非常に手続が煩瑣で、お前らの知らないような苦労を相手方はしているのだという御叱責でありますが、われわれといたしましても、手続を簡素にして、しかも精密な仕事をいたしたい、そういう方式はどういうふうにしたらいいかということにつきまして、ただいま関係各省とその手続書類の簡素化の問題と並行して検討いたしております。おそらくこの法案が御審議願つて通過する時分には、手続上相当簡素化された書類で迅速に仕事ができるのではないかと、われわれも内心期待しているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/25
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026・小高熹郎
○小高委員 ただいまの山中不動産部長の答弁によりますと、簡素化されるのではなかろうかとわれわれも期待しておる、さようなことでは了承できません。必ず簡素化するということに決定してもらいたいことを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/26
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027・淡谷悠藏
○淡谷委員 ただいまの質問に関連いたしますが、今までの補償関係は暫定的なものであつて、この後の遡及効果があるとか、あるいはまた行政的措置によつて完全補償まで持つて行かれるということでありますが、今までの各演習地並びに基地の補償につきまして、すべてが大体平等に行われておりますかどうか、お伺いしたいのでございます。同じ基準で、同じ條件でこの補償が行われて来たかという問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/27
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028・山中一朗
○山中政府委員 ただいまの淡谷委員の御質問でございますが、われわれが作業している補償問題につきましては、私は同じ基準で、同じ計算で平等にできておるものと確信いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/28
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029・淡谷悠藏
○淡谷委員 その御答弁は私は非常に受取れないのでございます。たとえばさつきの内灘の問題に関しましても、漁業補償というのが、昭和二十八年の六月十六日に日銀からそれぞれの地元民に対して、一千四百四十九万九千四百九十円支払われておるわけでございますが、これは間違いないでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/29
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030・山中一朗
○山中政府委員 間違いございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/30
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031・淡谷悠藏
○淡谷委員 この金額というのは、例の昭和二十八年の一月から四月までの一時使用に関する補償と了解してかまいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/31
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032・山中一朗
○山中政府委員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/32
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033・淡谷悠藏
○淡谷委員 ただいま平等に取扱われておるというお話でございましたが、青森県の關根及び六三澤の問題は、二十七年度分がまだ全然払われておりません。ただいま前委員の御発言にもございましたが、手続が煩瑣である、手続に追われまして支払いが延びるのがはなはだ困るのであります。これは大蔵省あるいはその他の関係、調査の関係で延びたと申されるかもしれませんけれども、零細漁民にとりましては、毎日々々の生計が困る、二十七年度あたりの補償がいまだもつて支払われていないという現状では、決して公平な処置であつたとは申されません。こういう点は一体どこに原因があるのか、お考えを願いたい。
それから内灘に関しまして、例の問題になつております一戸五万円の五千五百万円の見舞金でございますが、漁業補償が一千四百四十九万九千四百九十円で、その他の見舞金というのが五千五百万円その他いろいろ支払われておりまするが、これがこの後に起る行政的措置によつて生ずる例でありますかどうか。それから前金の形で支払われましたこの見舞金というのは、一体どこの関係で支払われたのか、この点も伺いたいのでございます。
それから、この二十七年度の支払いがまだできていないのに、さらに三倍ないし二倍の各演習地の拡張が見られまして、その演習地の條件さえきまらないままに実際に使用されているという状態が、ただいまお話のございました關根地方にもございますが、これに対して外務省からあなた方の方には、何か了解が求められておりますかどうか、ひとつお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/33
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034・大石孝章
○大石説明員 關根地区のこんぶの補償が、昨年の九月に漁期が終了しておるのにいまだ払われておらぬというおしかりでございますが、実はこれは今まで各種の事情を慎重審議いたしましていろいろ打合せした結果、時間もかかつたのでありますが、昨日予算の示達を全部完了いたしました。おそらくきようか、あるいはおそくても——いろいろの手続がございますから、その点で若干の時間はかかりますが、そう長い時間でなくして払われるのではないかと思つております。
それから二十七年度の一般漁業の補償でございますが、確かにこれはいまだに支払いは実施いたしておりません。しかし近く全部片づけるつもりで、私ども大いに各方面と折衝も遂げ、内部作業も急いでおります。確かに二十七年度はすでに終つており、二十八年度ももう六月にもなつておるのに、各種の事情から支払いが完了しておらぬという点については、私どもも非常に残念に思つておりますが、二十日の本委員会におきましても、私どもの方の根道長官が、大いに係を督励して急いでやらせるということをお答え申し上げたわけでありますが、私ども百長官からも督励を受けまして、大いにがんばつておる次第であります。御了承をいただきたいと思います。
それから内灘関係につきまして一千四百四十九万九千四百九十円という金額を六月三日に支払つたわけであります。なぜそういつたものが非常に早く出て、他のものは遅れておるか、こういつた御質問の趣旨であつたように存じますが、内灘関係はこの四箇月の期間全然段落なくずつと継続して使用しておりました関係上、漁撈の制限も全面的に継続制限なのでございます。ところが他のいわゆる基地と申される関係は、使用條件が個々のケースでいろいろ違いますので、それを吟味いたします場合に、私どもたいへんな作業を要するのであります。そういつたような関係もございますので、片方の方が早くできたという関係があるわけであります。
それから五千五百万円の金は漁業の補償とどういう関係があるかという御質問のようでございます。これは御承知でもありましようが、全部の村の経済があすこの海浜にかかつておるというか、あの施設区域になつた地帯に依存しておるわけであります。それが全面制限を受けたというような関係で、普通の基準以外にああいつたような措置が講ぜられたというふうに御了承いただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/34
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035・淡谷悠藏
○淡谷委員 私の質同趣旨は、この五千五百万円はあなた方の方の関係かどうかということをお伺いしたいのであります。と申しますのは、所管の官庁がどこにあつたのかという問題が一つであります。
それからなおついでに質問をつけ加えておきますが、内灘のような例は今後のいわゆる完全補償という場合にやはり政令の中に盛つて認めらるべきものかどうかということが一つ、つまり村全体が演習地のために全然だめだという場合には、二戸当り五万円程度の見舞金が政令の中に盛られるかどうかということが一つ、それから支払いがさまざまな事務上の手続で極端に遅れました場合には、地元の零細漁民が高利の金を借りて生活を維持しておるのが実情であります。これらもやはり間接被害としてお認めくださるかどうか。だから、それで政令案ができていないとすればなおさら、仕合せでありますが、支払い期日に対する制約などもみずからおつくりくださるかどうか、こういう点なども、はつきりお答えを願いたいのであります。申すまでもなく、補償は額だけではなく、支払期がいつになるかということが非常に大きな問題でございます。
それから關根と関連しまして、六三澤の補償の状態なども、はつきりお見通しを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/35
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036・大石孝章
○大石説明員 玉千五百万円の支出官庁は調達丘であります。それに関連しまして、ちよつと御説明申し上げておきますが、施設、区域が合同委員会にアメリカ側から要求がありますと、関係各省が合同委員会の分科会として、たとえば海上演習場、陸上演習場といつたふうに、各種分科会がございます。それには関係各省が全部委員を出しまして、共同踏査あるいは協議ということで研究を遂げまして、結論を出しまして、それを合同委員会に出します。合同委員会で妥結を見たものが、国内的に閣議決定せられまして、閣議決定せられたあとは、大体において調達庁の所管業務でございます。これを細別しますと、そういつたような演習場等のアメリカ側に対する受渡しの問題、それから海面の使用制限の問題、それからそれに伴いますところの補償あるいは賃貸借契約、あるいは買収といつたような一連の業務が、所管でございます。
それから一品に申し上げまして、支払い遅延関係が起きた場合に、それを扱うような事項を本法案の中に盛つてあるかという御趣旨のようでございますが、政令案にもそのことは盛つておりません。これは一般的な政府支払いの問題と同様な扱いになるはずでございまして、特別にこの関係で研究いたされておりません。
それから、先ほどの關根等の演習場関係でもつて、国内的に完全に條件等が定まらないうちに使つておるのではないかといつたような問題につきまして、その点に関して、外務省から調達庁に連絡があるのかという御質問のようでございます。申し上げましたように、米軍側は、合同委員会にその演習場等の使用の要求をいたすとともに、向う側としては、できるだけ早く使わしてもらいたいという気持を持つておるわけであります。ところが、こちらは、申し上げましたように、関係各省で十分研究を遂げますので、若干の時間を要するわけであります。それから国内的に閣議決定を見ても、土地の使用者あるいは関係人等の方の同意を見ないことには、これは完全に施設、区域として米軍側に引渡しができないわけであります。問題は所有者あるいは関係人との間に完全合意というか、そういう線が出ないうちに使うからいろいろなトラブルが起きておるのでありまして、その間につきましては、合同委員会においても、その財産の受渡し等を所管いたします私どもといたしましても、十分そういう事態のないようにいたしたいというので、いろいろ研究いたし、また合同委員会を通じまして、アメリカ側にもいろいろな申入れをいたしておるのであります。原則は、完全にアメリカ側に引渡しが終らないうちは、使用なり、あるいはその土地を使つてその上に工作物等の工事、工作物の建設というようなことはお断りするということは、はつきりと上の方では——上と申しますか中央では日本側とアメリカ側と完全了解を遂げておるはずでありますが、現地の実際使用する部隊になりますと、末端においてはなかなか徹底しない向きがありますので、その点の受渡し方については大いに、合同委員会を通しても、それから現地においても関係各省みな努力いたしておる次第であります。
それから六三澤の漁業補償はどうなつておるかという御質問でございますが、これは先ほど申し上げました二十七年度全般の問題の一環でございまして、私どもできるだけ早く支払われますように、目下鋭意作業中の事案でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/36
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037・淡谷悠藏
○淡谷委員 太三澤の事例のように、二十七年度の分がまだ未払いになつております演習地関係は、どこどこでありますか。それからただいまの御説明でたいへん了解が行きましたが、外務省で現地に接収要求しました場合、現地の同意というものがこれまでどういう形でなされたか、形式的に何かありましたかどうか。それから現地の同意関係あるなしは、外務省の管轄であるか、それともあなた方の方に移るかどうか。現在トラブルの起きておりますのは、現地が同意したかどうかで一番多く起つておるわけであります。現地の同意がはつきり確認のないままに、具体的にはもう演習が起りまして、そのためにとんでもない被害をこうむつておるという問題が現に起つておりますので、こういう接収関係についてはつきりした基準を伺いたい。これは外務大臣、農林大臣の御出席があるものと考えておりましたが、御出席がありませんので、もしもそういう点をお答え願えなければ、あらためて大臣に質問いたします。以上三点について御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/37
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038・大石孝章
○大石説明員 お答えいたします。今の御質問の、要点は、外務大臣あるいは農林大臣にお尋ねいただきたいと思います。ただ実務的に私ども調達庁が所管いたしております関係を申し上げますと、私どもの場合は、国内的に閣議決定を終つた後、在日米軍に引渡す実務でございます。その場合に、引渡すまでには、所有者あるいは関係人等と賃貸借契約あるいは売渡し契約が完全に終つたときやつております。その他の問題に関しましては、外務省でどういうことをやつておるか、あるいは他の省がどういうことをやつておるかということは、私どもお答え申し上げることはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/38
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039・淡谷悠藏
○淡谷委員 そういたしますと、なお外務大臣並びに農林大臣に対する質問は保留いたしますが、ただいまの御答弁で、具体的な使用契約ができるまでは使用し得ないという一点は確認してよろしいのでございましようか。具体的に契約がとりかわされるまでは、演習地はまだ使つてはいけないという、これを確認したいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/39
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040・大石孝章
○大石説明員 原則的には淡谷委員の御見解の通りでございますが、ただ実際問題としましては、たとえば佐渡の金北山に目下通信施設の建築工事中でございますが、その場合は完全にそういう所有権の移転なり、あるいは賃貸借契約の成立が行われなくても、土地の所有者あるいは関係人との間に、使わせましようという合意を見ております。そういう事例は実は九州から北海道に至るまで、各地にあるのでありまして、私ども実は完全引渡しを終了する前に、アメリカ側の方では各種の事情から早くそれを使いたいとか、あるいは工事をしたいというような向きもありますので、その場合は地元の町村長さんあるいはその他の関係の方と十分懇談を遂げ、また土地の所有者、関係人とも十分協議を遂げて、その合意のもとに、そういう様式行為が完成しない前でも使わせていただいております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/40
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041・淡谷悠藏
○淡谷委員 ただいまの御答弁で私なおさら不安を深めたのでございますが、正式に契約がなくとも地元の合意を得ればという御説明の中に、たとえば地元の村長さんであるとか、関係人云々とかございましたが、これがおよそ紛擾の原因でございます。地元の村長さんの関係というものは、具体的な被害の関係と薄いことがたびたびございます。その場合にまとめることを急ぐあまりに、一般の実際に被害を受けました漁民、農民の了解を待たないで、ただ村長と個人的に了解を得た得ないで、各地にいろいろ紛擾しているのでございます。これはやはりはつきりした成文をもつて、関係人とはだれを意味するか、利害関係をはつきり明らかにし、はつきりした契約をした上でお使いにならなければ、この種の紛擾は絶え間がないと思うのでございます。これは成案をつくる上においては非常に大きな一点だろうと思います。この合意の内容がはつきりしていないのでございます。これはどこまでも原則というものを忠実にやつて、それ以上のトラブルは、これはあなたの方ではないかもしれませんが、日本政府で十分引受けるという毅然たる態度を示していただかなければ、演習場等は結論がつかぬと思います。この点は外務大臣にも質問いたしますから、これ以上追求いたしません。なお六三澤のようなケースが何件あるかという御返事をいただいておりませんので、この点だけお答えいただけば今日は私の質問はやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/41
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042・山中日露史
○山中(日)委員 この法案は前回の国会におきまして一応無修正で通過いたしたのでありますが、しさいにこの法案の條文を検討いたしてみますと、重大なる点について欠陥があるのではないかという点が発見せられましたので、場合によつては修正の必要もあろうかと存じますので、この点についてお尋ねしてみたいと思うのであります。
それは損失補償の手続、ことに異議の申立に関する点でありますが、この恥法律によりますと、損失を受けたものがその損失の補償を受ける場合においては結局総理大臣の決定にまつわけであります。そうして総理大臣は損失の有無と損失を補償すべき場合においては、その補償の額を決定して、申請人にその通知を交付するわけであります。それでその通知を受けた申請人が、その損失の有無及び補償額の決定に不服がある場合においてはさらに総理大臣に対して異議の申立ができるということになつておる。そこでこの法律の第五條を見ますと、増額請求の訴えについて規定しております。「この法律により決定された補償金の額に不服がある者は、その決定の通知を受けた日から九十日以内に、訴えをもつてその増額を請求することができる。」こういうふうに規定しておりまして、結局補償額が決定せられて、その額に不服で増額の請求をした場合に総理大臣がその増額の請求をもし認めなかつたときに国を被告として訴えが提起できるということは規定してありまするけれども、その損失の有無について総理大臣が決定した場合、つまり損失を認めないとか、損失がないとかいうふうに総理大臣が決定した場合における申請人に対する救済の道、すなわち国を被告として訴えを提起することができるという道が開かれておらないのであります。この法律案は御承知のように直接間接の損害が非常に因果関係の広汎に解決される法律案でありまして、それが通常生ずる損害であるかどうか、あるいは因果関係がそこまで解釈できるかどうかということについていろいろ問題が起るだろう患います。そういう場合に、総理大臣が最初それは損失と認めない、因果関係はそこまで認められないというようなことで決定して、それが不服でさらにまた異議を申立てた場合に、総理大臣がその異議の申立てを却下したという場合においては、その申請人は国を相手として訴える道がないのであります。そういたしますときわめて不公平でありまして、ただ補償額を決定した場合に、その増額の請求に対してのみ国を被告とする訴えの規定があるのに対して、その損失を認めないという場合においては、何ら請求する道がないということは、法の非常な不備欠陥ではないかと思いますので、この点について調達庁の見解を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/42
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043・大石孝章
○大石説明員 お答えいたします。第二條の第三項の補償すべき損失の有無、それから補償の額、これを第五條でもつて国を相手方として訴えをもつてやるという場合に、額の方だけを取上げて第三條の趣旨を五條で全部受けてないという意味の御質問のようでございます。私どもの見解では、この法律によりましていわゆる特別損失を補償いたす場合には、いろいろここ規定してありますような手続を踏んで、そのほかに調達庁の設置法の改正によりまして地方調達不動産審議会、中央調達不動産審議会、そういうような審議会の意見も徴するわけであります。それによりまして、その損失の有無について決定を見たその場合に、総理大臣まで異議の申立てがあつた場合には、また完全に審議を遂げまして、そうしてとりきめるという関係です。ですから五條の関係では特別に損失があつた場合に、なおそういう手続を踏んでも額について承服できない方は五條でもつて訴えを提起できるという規定にいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/43
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044・山中日露史
○山中(日)委員 それは私の質問の答弁になつておらないのでありまして、私の言うのは、その損失がないというふうに決定された場合に、そういう人をどうして救済してやるのですかということです。この規定によりますと、損失は補償する額はこれこれだといつてきめます。その額では不足だという場合において、それを総理大臣が不足だといつて文句を言つて来た人に対して、その通り認めてやれば問題はない。ところがその額では不満だという場合、国を相手に取つて増額を要求する道が開けておる。ところがその損失をこうむつたといつて主張した人に対して、総理大臣が損失は認めない、というと誤弊がありますが、因果関係はないというふうに総理大臣が一方的にきめたときには、それに対して救済の道が全然ないのは片手落ちじやないか。そのための道が全然開けてないということは欠陥じやないか、どうしてそういう道を開かないかということを聞いておる。その点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/44
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045・大石孝章
○大石説明員 本法においては、申し上げましたように、本人がこの有無について、あるという主張があり、側においてないという判定を下した場合に、なおかつ主張されるという場合でありますが、その有無までの問題については私ども慎重に扱い、かつ単なる行政機関だけではなくして、いろいろそういうような法律によりますところの審議会の意見も徴するのでありまして、そういう手数をかけて扱う次第であります。それから特に損失ありという御主張の向きであつて、私ども考えますような手続でなおかつ国の判定に不服のある方については、私どもその場合は一般司法関係において訴えを提起されることは、一向さまたげない趣旨と解しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/45
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046・山中日露史
○山中(日)委員 一般の手続によつて訴えるというのはどういうことをおつしやるのか、それを承りたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/46
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047・大石孝章
○大石説明員 私個人の現在の本法に対する研究の範囲におきましては、本法は大体一種の不法行為に基くところの、そういうような法の範疇に入る損失補填というような観点に立つものと思つております。それからこの法案の第二條では、他の法律によりまして、国が損害補償または賠償の責めに任ずるというものについては適用しないということになつておるのでありますが、大体民法の規定によりましてできるものと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/47
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048・山中日露史
○山中(日)委員 それはたいへんなお考え違いだと私は思うのです。大体今までは駐留軍の行為によつて一般国民が損害をこうむつた場合においては、法律がなかつた。そのために見舞金というような形で今までやつて来たわけです。それで行政協定では、駐留軍のそういつた行為によつて漁民とか農民とかが損害をこうむつた場合に国がそれを賠償するという特別の法律があつた場合においてのみ、それを日米の合同委員会の決議によつて、半分を負担するという道が開かれるわけです。従つて駐留軍の行為によつて損害をこうむつたようた場合には、今までの一般の法律ではそれを救済する道はないのであります。あなたは特別法の規定でもつてそういう場合には救済されるというお考えを持つておるかしりませんが、これは日本国の行政官庁がその国の行為として不当なる行政処分をしたとか、そういつた場合において、それによつてこうむつた国民の損害を賠償するというのが特例法の趣旨であるわけであります。けれどもこの法律案はアメリカ駐留軍の演習その他の行為によつて生じた損害を補償するために特別につくつた法律案なので、従つてそういつた損害の有無、それからそれの救済の道は、やはりこの法律案で規定しなければ、一般の民事特例法では、放済されないのであります。従つて先ほど申しましたように、この法律案は因果関係が広く解釈される。たとえば砲弾の音によつて牛が乳を出さなくなつたとか、鶏が卵を、生まなくなつたとか、いろんなことが出ておりますが、一体、そういうところまで因果関係を広めて損害を補償するのかしないのかというようなことがいろいろ問題になつて来ると思うのです。そのときに総理大臣が、それは補償しないとかするとかということを決定する。そういう場合に総理大臣の方で損失は補償しないというように決定してしまつた場合に、それは不都合である。補償すべきであるという解釈が出て来たとき、それを救う道がこの法律案にはない。損害額の増額については、国を被告として訴えができるが、そういつたように損失は補償しないと総理大臣が決定した場合には、もはやこれを救済する道はない。他の法律でもできない。従つてそれは片手落ちではないか。そういう場合には、国を被告として相手取ることができるように法律案をかえなければできないのではないかと私は思う。その点は不備ではないかと私は考えるので、その点を聞いておるのです。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/48
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049・田口長治郎
○田口委員長 どうですか、その点はよく御研究になつて、後日答弁されては……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/49
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050・大石孝章
○大石説明員 ただいまの御趣旨のことにつきましては、私個人の見解を申し上げたのですが、はつきりしたことを研究いたしまして、国内的にも統一化しまして、御回答申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/50
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051・山中日露史
○山中(日)委員 そういうことにぜひお願いいたしたいし、もしもどうしても法律案を修正しないというなら、私の方で各位とも相談して、修正する必要を認めなければならないと思つております。それはそれとして、先ほど小高委員の演習地の予定箇所について八箇所あると御答弁になつたのですが、七箇所しかお話にならなかつた。一箇所落ちておるのですが、これはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/51
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052・大石孝章
○大石説明員 たいへん申訳ないことをいたしました。横須賀湾の沿岸関係が一つあります。それで八箇所になるわけであります。それから今申し上げましたそのほかに私ども現在全国の漁業補償の事務を進めておりますのは、地先漁業におきますところの漁業権あるいは入漁権等の制限消滅によりますところの損失の補償の場合と、それから法律二百四十三号の漁船の操業制限法によつて起きますところの損失と、こういう二面からの、これは自由漁業あるいは許可漁業の場合ですが、そういうような場合は、いわゆる基地々々といわれますところの関係では、ずいぶんあるのでありまして、申し上げてもけつこうですが、それ以外に救済のできないといつたようなものを、御審議いただいております法律案によつて救済しようというのが趣旨なんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/52
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053・山中日露史
○山中(日)委員 私は日高門別のことをお伺いしようと思つておつたのですが、北海道の日高門別は、昭和二十六年の年に高射砲の演習地並びに連絡飛行場としてあの海岸を含めた一帯の土地七十三町歩というものが接収せられたわけであります。この演習のために、昭和二十六年度においては約五十八日間漁民が操業できなかつたのでありますが、当時はまだ講和條約の発効前でありましたので、見舞金というので八十万円ばかりの金が漁民に渡されたわけです。一戸当りにしますと、たつた二千円であります。これが昭和二十六年度における五十八日間の操業不能によるところの損害補償の見舞金だつたのです。ところが、昭和二十七年度におきましては、演習日数ははつきり覚えておりませんけれども、大体約半年近いものがそういつた演習に使われたために、漁民が操業できなかつた、日数も非常に多かつたわけで、門別地方といたしましては、その損害を計算いたしまして、調達庁の方にも書類が出ておると思うのでありまするが、その二十七年度のそういつた損害に対して、いまだ一銭も払われていないのみならず、その金額の査定すらついていないという状態なのであります。これは非常な怠慢ではないかというふうに考えまするので、その点一体どうなつておるか、この機会にひとつお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/53
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054・大石孝章
○大石説明員 今お尋ねの日高門別のようなものにつきましては、先ほど私から御説明申し上げましたように、私どもの業務からいたしましては、いわゆる正規の業務と申しますか、本法以外のことで補償のできる関係でございます。但し占領期間中につきましては、ただいまお話のありましたように、見舞金として全国の例にならつて調達庁が予算を管理し、水産庁の方で調査を遂げ、見舞金額をきめて、そして各都道府県を経由いたしまして支給されたのであります。それから講和発効後二十七年度の問題については、全然作業を進めておらぬのではないかということでありますが、これは前にもお答えいたしましたように、私どもの方で目下鋭意努力中でございまして、何とか早く支出ができるようにしたいと考えておる次第であります。ですからお話の線は、多分本法の制定を待たずして普通に正規にやるところのそういうような漁業権あるいは入漁権の関係あるいは漁船の操業制限法に基いて損失を受けた、それの損失補償の関係ではないかと私存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/54
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055・川村善八郎
○川村委員 山中委員が先ほど、国がないと見た場合、それから相手があるからといつて請求した場合の補償の道が開かれないのではないかと條文的に質問をしておりますが、その結論がなく、研究の上いずれ本決定して申すということであります。具体的な事実の問題について実は私も質問しようと思つておつたので、例をあげて申しましよう。北海道で駐留軍が海の演習をした場合、御承知の通り北海道と青森県とは一つの狭い海峡を隔てて漁場が入会をしております。青森県の海岸に北海道の海岸があり、北海道の海岸に青森県の海岸もあるといつたようなぐあいで、行政区域としては北海道で演習したのであるけれども、行政区域外、すなわち青森県から出漁した場合これを補償するかどうかという問題であります。地元の漁業者の漁業権に対しては大体補償を認めておりますが、こうした入会関係におる漁業者については、北海道の演習であるから青森県には関係ないとか、あるいは青森県の地先でやつたのであるから北海道に関係ないというようにみなされるおそれが多分にあると思います。これは北海道、青森ばかりでなく、あるいは九州、四国の間にもやはりあるでありましようし、本州と九州との関係もあるでありましよう。こうしたような関係があつた場合、これは入漁権云々とはうたつてありますけれども、おそらく政府の方で、青森県の方は北海道での演習に対して何ら関係がないじやないか、従つて横書がないとみなされるおそれがありますので、例を一つあげて御質問いたしますが、お答えを願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/55
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056・山中一朗
○山中政府委員 ただいま川村委員から御質問でございますが、建前といたしましては、さような場合には、おそらく昨年法律化されました三百四十三号の漁業操業制限で救済できるというように考えております。ただそういう場合に関係者のお知恵も借りなくてはならぬ、われわれの方もまた調査いたさねばならぬ。相当広範囲な調査が各方面から行われて、結果が出るまでには相当時日がかかる場合もあると存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/56
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057・川村善八郎
○川村委員 そうしますと、そういう入会の場合、自由漁業の場合等はとかく入会という関係になつておりますので、やはり北海道の海で演習した場合、青森県の船等が、つまり自由漁業として行つて損害をこうむつたというような場合補償するという解釈はよるしいかどうか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/57
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058・山中一朗
○山中政府委員 ただいま川村委員の御解釈の通りで、われわれの方はさような場合にも補償できると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/58
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059・中村庸一郎
○中村(庸)委員 私は、先ほどの質問に関連して一つの意見を申し上げておきたいのであります。この委員会におきまして、政府委員が答弁したことを同僚が出て来てこれを取消すということは、事いかにも重大であります。この理由は、遡及効を法文の中に盛り込むということは悪例を残すという理由のもとに認めない、こういうことであります。しこうして一方、行政的に完全補償をするのだ、こういうことを言われましたが、ただ、ただいまの不動産部長さんの御答弁だけでは私はまつたく納得がいかぬのであります。またわが国がいやしくも独立国家となつた以後は、損害をこうむつたら補償金を防衛支出金からもらうのが——これは漁民になつてみたときに、わが国の国民として、いやしくも独立国となつて見舞金がほしいということは言いにくかろうと思う。これは防衛支出金の中から当然支払わるべきものであります。かような状態でありまするので、国民精神高揚の上におきましても重大なる影響を及ぼすものと私は思い、事あまりにも重大でありますので、この委員会の権威の上におきましても、遡及効を本文の中に盛り込んで堂々完全補償をすべきであると私は考える。近く農林、水産合同の審査会が開かれることになつておりますので、そのときにはどうか農林大臣にも御出席願つて、漁民の損害は防衛支出金の中から完全補償をしてもらうのである、こういう気持を持つてすべて処理されんことを願います。従つて本日はこれ以上もう質問はいたさぬことにいたし、来る合同審査会におきまして、農林大臣に御出席を願つて、そうして重ねてこの点を御審議願いたい。そうしてすみやかな本法案の成立を祈つておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/59
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060・田口長治郎
○田口委員長 委員長からも申し上げます。ただいまの問題はきわめて重大と思いますから、長官とよく御相談の上、次回の委員会に弁明していただきます。
次会を公報をもつて御通知申し上げることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101604562X00419530623/60
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