1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年八月五日(水曜日)
午前十時三十五分開会
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出席者は左の通り。
委員長 堂森 芳夫君
理事
大谷 瑩潤君
常岡 一郎君
委員
榊原 亨君
中山 壽彦君
西岡 ハル君
横山 フク君
湯山 勇君
山下 義信君
有馬 英二君
政府委員
厚生省保険局長 久下 勝次君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁已君
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本日の会議に付した事件
○日雇労働者健康保険法案(内閣提
出、衆議院送付)
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001・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 只今から厚生委員会を開会いたします。
先ず日雇労働者健康保険法案を議題といたしまして御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/1
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002・山下義信
○山下義信君 二、「三の点を伺いたいと思うのですが、第一点はこの保険料の問題なんです。局長の御説明によりますと、この保険料の額というものは健康保険と比べてみて健康保険よりは高くならないようにしてあるのだということなんですが、先ずこの保険料額の決定についてどういう計算でこういう保険料にきめられましたか、又他の保険料と比較して健康保険の保険料額と比較いたしましてどういう釣合いになつておるかという点について御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/2
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003・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) この制度を考えます際にいろいろな実は前提をきめて何を先にきめてかかるかということが問題であつたのでございますが、つまり具体的に申上げますると、給付の面を先に考えて行くかどうかというようなことになるのでございます。私どもとしては日雇労働者の生活の実情、或いは給与の実態などを考えまして、日雇労働者に対して不当に重い負担をかけないようにしたいというのが先ず第一の前提として考えたのでございます。それが具体的には保険料をどうするかということになつたのでございます。保険料を考えます場合に先ず前提におきました考え方は、健康保険の被保険者の負担をしておりまする料率以上の負担を要求することはいたさないようにしたいという考えでやつたのであります。具体的に申上げますると、御案内の通り健康保険の場合には千分の三十が被保険者の負担になつておりますが、一方日雇労働者の賃金の実態は私どもが調査いたしましたところでは、日額平均二百五十円乃至六十円、この辺多少あいまいな点があるのでございますが、その程度になるものと考えて二百六十円といたしますると、丁度十五円八十銭になりまして、二百五十円ですと丁度十五円になりますけれども……、これは失礼いたしました。二百五十円として千分の三十としての計算でございます。そういうふうになりますので、二百六十円というのが大体低額所得者を除きましては二百六十円と見ていいであろうということでありましたので、それでその千分の三十に当る八円弱でございますが、これを八円ということが、これを限度として保険料をきめたのでございます。これを基礎として給付の面、或いは国庫補助の面というようなことをその次に計算をいたしたような実情であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/3
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004・山下義信
○山下義信君 そうしますと、結局今の御答弁によりますと、千分の三十と大体同じように考えて二百六十円に千分の三十かけたもので四捨五入、いくらか低いほうをとつて八円、こういうことにきめられている、こういうことでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/4
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005・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/5
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006・山下義信
○山下義信君 そうすると大体において健康保険と同じ料金ということになるのですね。高くはないけれども大体同じだ、そういう渡し方になる。非常な簡単な割出し方をされたわけですね、この料金を。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/6
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007・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) 簡単といえば極めて簡単でございましてただ問題は日雇労働者を平均でとりました点は多少問題があるかと思います。一率に八円というのは、例えば二百円の日額の人にとつては比較的重くなる。その代り東京あたりの日雇労働者は二百九十円くらいに最近なつている、そういうものにとつては千分の三十以下になつている、こういうことになりますので、私どもとしては平均をとりましてこの程度であれば健康保険に比較してまずまず無理がないだろうというふうに考えたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/7
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008・山下義信
○山下義信君 それは二百九十円もあるでしようが、二百四十円もあるわけですが、私は八円ということが、もとより保険料額ですから腰だめでやる余地はないのですが、やはり日雇労働者の一応の保険数理でこういう料額を割出されたのかと思つたのですが、この保険そのものの保険数理というような点から見ればどうなんでしようか、この料額では。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/8
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009・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) これは最初にも申上げましたように、保険として考えて行きます場合に、給付面を先に考える、つまり支出の面を先に考えて歳入を押えて行くという行き方もあると思うのでございます。おつしやる意味の保険数理というものは、むしろこういう健康保険制度から申しますと支出の面に重点を置いて歳入のほうを図つて行くという道をとるのが、私どもとしては本来であると考えているものでありますが、ただ併しながら先ほど申しましたように、少くとも健康保険並みの給付をいたしまするためには、現在この法案で予定されておりまするような保険料以上はるかにこれを高額のものをとりますか、或いは不足の部分を国庫の補助で賄うという二途以外に現在のところ考えられないわけでございますので、そこで結局給付も健康保険と同じように或いはこれを考えるということもこの日雇労働者の実情から申しますと無理な点があろう、こういうふうな考え方にだんだんなつて参りまして、結局それじや一体負担はどの程度にしたらいいかというので、健康保険の料率並みにというところで、先ずそのほうで枠を嵌めてみたのでございます。その結果整理の点と申しますか、その給付面におきましては三ヵ月の給付期間の制限でありますとか、或いは傷病手当金その他の給付をやめますとかいうふうな給付制限をせざるを得なかつたというのが実情でございまして本来の意味における、健康保険なんかで考えておりますような意味の保険数理というものは全面的にはこの制度の中には取入れられなかつたわけでございます。くどいようで恐縮でございますが、結局歳入面に一つの大きな制約がありまするために、普通の健康保険で考えられておりますような数理をそのまま取入れて行くことができないというような結果になりましたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/9
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010・山下義信
○山下義信君 保険料額が大体健康保険の料率から割出してこういう料額にされたということはわかつたのですが、従つてこの日雇労働者健康保険そのものの保険数理を割出した料率でないということもわかつたのです。従つてそういうことについての歳入面の不足が実際にはつきりしたものりをつかめないし、そういう一つの方式を合理的に出してみたところで一つの予想の数理になるかもわからんが、私は結局これは周知のごとくこの保険料額は高いというのですね。関係者も高いといつて非難する、高いということは結局給付の内容が非常に低いので、落ちているので、それで料率だけ同じにするのは高い、こういうことを言うのです。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/10
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011・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) その点につきましても私どもといたしては問題はその料率で考えましたのでありますから、健康保険と比較いたしますと、健康保険の被保険者の中にも御承知のように低額な所得者が相当ございます。二千円、三千円というものが相当あるのでございます。そういう人達もやはり現在法律に基きまして政府管掌の場合には千分の三十の被保険者負担分を負担しているわけでございます。従いまして日雇労働者につきましても料率を同じくするということでありますれば、私としてはそう無理な負担ではないと考えているのでございます。勿論先日も日雇労働者が多数全国から集まりまして私どもに対して強くこの保険料は高いということを申出ておりました。ただ保険料を下げれば又更にこの狭い給付制限を又狭くしなければならないというようなことにもつなりますものでありますから、この程度のことは一般健康保険の低額所得者も負担をしておることでありますので、なんとか忍んで頂きたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/11
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012・山下義信
○山下義信君 ちよつと私のお尋ねしたのは違うのです。この料率が千分の三十とこうきまつたら、その所得の多い少ないによつて負担の軽重ということを言つているのじやないのです。千分の三十ときまつたらそれが所得の一万円であるものに課するものも、それから三千円か二千円今局長の言われたように低額所得に課しても、それは一つの負担の不公平ではない、高い安いではないのです。私の言うのは同じ千分の三十をとつて健康保険がああいう給付内容を持つていて、そうして同じような料額を日雇労働者のほうは取つておつて、給付内容が非常に劣つているのに比べると、つまりこちらは品物が悪いのです。品物が悪くて同じ代金を払えというのは高いのじやないかということを言つているのです。その点はお認めになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/12
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013・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) その点はおつしやる通りです。私の申上げかたも悪かつたのでありますが、健康保険の場合には低額所得者もおりますが、高額所得者の場合が非常にたくさんおりまして現在政府管掌でも九千円を超えた平均標準報酬になつております。その結果あれだけの給付ができるのでございます。日雇の場合には平均してもせいぜい四、五千円でありますので、結局五十万の被保険者を対象とした場合に給付内容は劣るのは止むを得ないのでありますが、それはこの範囲において止むを得ないのでありましておりしやる通り全般的な立場から申しますると、私どもこれでいいものとは考えておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/13
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014・山下義信
○山下義信君 この料額が給付の内容と比較して必ずしも妥当であると考えておいでにならんのでしたらそれでいいのです。将来これは検討してもらわなければならんと思います。私は当局もやはり合理的にちやんと検討してもらいたいのです。検討しておいでになると思うんですが、例えば今例にとつて示された日額二百五十円の日雇労働者の政府の提出した資料のごとく大体男子の場合において二十日間就労するというと月額五千円になる、五千円の月収の標準報酬と仮りに仮定して、そしてこの八円というものを割出して幾らになるか、それが健康保険の五千円の場合には幾ら出しているということを比較して、一方料金の比較の表を作つて見てそれから片方、健康保険のほうであれだけの給付に要する費用が幾らかかつてその中で傷病手当であるとか、或いは分娩費であるとか、分娩手当であるとか、被保険者本人の給付についても費用をこちらの保険内容と比べて見て、そしてこちらの保険内容が一体健康保険の給付内容のおよそ何%をこちらのほうが給付内容としているかということを双方比べてみる、数字で比べてみると、こちらの一律八円という保険料が一日二百五十円という日当の日雇労働者にとつて、この給付を受くるという場合、同じような月額五千円の標準報酬で保険料を課せられる健康保険の被保険者があの健康保険の給付を受くるという場合の利益ですね、被保険者の得るところの利益です、それと比べて見ると、数字でぴたつと日雇労働者の保険料が高いということがはつきり出て来るのです。私も計算して見たのですが、つ出て来るのです。これは当局も今必ずしも妥当とは思つていないということでありまますから、将来これはどうしても時期が来ましたら御検討願いたい。
それから第二は、第九条の受給要件です。私どもの質問も、もう世間で指摘している点を申上げるので、別に変つた質疑を申上げるわけじやない、同じところを申上げるわけなんですが、この受給要件も、これは苛酷じやないかと世間で言つている通りなんですね。これは昨日の局長の御説明では、失業保険の資格要件と同じ例をとつたと言われるのですが、私のほうで聞いて見なければならんのは、どういうわけで日雇労働者の失業保険の受給資格の要件とこの健康保険の受給資格の要件とをどうして同じようにせなければならんかという理由、それでそういう質問をすると大変むずかしくなりますから、私はそういう質問をしないで、これは少し酷じやないか、日雇労働者に全一カ月通算して二十八日分の保険料を納めるということは少し酷ではないかと、腰溜的の点を申上げてみたいと思うのですが、本当に少し酷じやないかと思うのですね、私の質問の要旨が。若し失業保険と同じような要件をとつたのだとおつしやつても、それは少し考え方がどうかと思うのです。それでこれは少し酷じやないかと考えておりますが、どうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/14
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015・久下勝次
○政府委員(久下勝次君) 非常に実はむずかしいのでございまして、一日でも保険料を納めたら、すぐに受給要件が出るのだという立て方をすることも考えられないわけじやございません。併しながら、一日でも保険料を納めたものに、すぐ受給資格を与えるということになりますると、結局は保険料を非常に高くしなければならない。少くとも健康保険の被保険者のように長く勤続するということが最初から予定されておりまする人と違いまして日々の契約によつて雇われることが建前の人々でありまするから、それだけの理論で申しますと、実は保険料の受給の面からいいますと、一日だけですぐに受給資格を与えるということは、保険の財政の面から申しまして非常に大きな負担になると思います。であるからこそ、又失業保険におきましても一定の受給要件を付けて資格の制限をしているのだと考えます。
そこでおつしやるように健康保険と失業保険とは全然性格が違うのであるから、別の考えをしたらいいのではないかということは、私ども自身も実は考えて見たのでありますが、さてそれでは具体的に何日にしたらいいか、どういうふうな制限を設けたらいいかつということになりますると、実は何も拠りどころがなかつたのが実情であります。そこで失業保険でそのような制度が設けられて保険財政の運営がなされておりますので、健康保険でも一応これをとつて財政上の運営を予定して見たらどうかというようなこともよく検討しました結果、先ず先ずこの程度ならば全然拠りどころがないわけじやなくて同じような社会保険で前例もあることでありますので、これをとつたというに過ぎないのでありまして酷と言えば酷でございましよう、その辺のところは私どもまだもう少し実施の結果によつて考えて行かなければならないものと考えております。これにこだわつて将来いつまでも固執するという考えで作つたものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/15
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016・堂森芳夫
○委員長(堂森芳夫君) 山下委員に申上げますが、只今本会議が始まりますので、議長命令を以て本会議中休憩という申出がございましたので、休憩いたします。
午前十時五十七分休憩
〔休憩後開会に至らなかつた〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101614237X02819530805/16
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