1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月九日(木曜日)
午後二時五分開会
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委員の異動
七月八日委員湯山勇君辞任につき、そ
の補欠として高田なほ子君を議長にお
いて指名した。
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出席者は左の通り。
委員長 川村 松助君
理事
木村 守江君
高木 正夫君
荒木正三郎君
八木 秀次君
委員
大谷 贇雄君
剱木 亨弘君
谷口弥三郎君
吉田 萬次君
高橋 道男君
安部キミ子君
相馬 助治君
深川タマヱ君
長谷部ひろ君
国務大臣
文 部 大 臣 大達 茂雄君
政府委員
文部省初等中等
教育局長 田中 義男君
文部省大学学術
局長 稲田 清助君
事務局側
常任委員会専門
員 竹内 敏夫君
常任委員会専門
員 工楽 英司君
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本日の会議に付した事件
○教育、文化及び学術に関する一般調
査の件
(文部行政の基本方針に関する件)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/0
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001・川村松助
○委員長(川村松助君) 只今から文部委員会を開会いたします。
先般大運文部大臣から文教政策の基本方針について説明を伺いました。これに対する質疑を行うことといたします。質疑は理事会におきましては今明日の二回に亙つて行われることになりました。つきましては質疑をなさるかたは順次御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/1
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002・荒木正三郎
○荒木正三郎君 先日の文部委員会におきまして大達文相の教育政策についてその基本的な問題について我々お聞きしたのでありまするが、それに関連をいたしまして二、三この際御質問を申上げたいと思います。その一つは道徳教育の振興の問題でございます。文相は道徳教育の振興の根本は愛国心である。而もこの愛国心を要請するために歴史教育、地理教育を復活しなければならん。こういう趣旨のことを述べておられるのでございますが、愛国心のことにつきましては、文相が、かつて軍国主義、帝国主義の華やかな時代に、当時の指導的な立場におられたかたでございます。こういう文相の口からこの問題が出ることについては、私ども相当関心を持つておるところであります。従つて先ずこの問題についてお伺いしたいのでありまするが、申すまでもなく日本の国民として愛国心を否定するものは恐らく私はないと思います。私達の生まれた祖国を愛するということは八千四百万の国民がひとしく持つているところでございます。併しこの愛国心というものは端的に表現すれば私どもは自分の住んでいるこの国が憲法に規定してあるような事柄が実現されて、そうして平和な日本として、或いは文化の香りの高い日本として、或いは憲法に規定しているような個人的人権が守られているような、そういう日本にしたい。こういうところに私はあるのじやないかというふうに考えております。従つて私どもが愛国心という問題を考える場合には我が国の憲法というものは非常な重味を持つているのじやないか、そうしてこの愛国心は憲法から根ざして来なければ本当に明かるい健全な愛国心として成長して行かないんじやないか、こういうふうな考えを持つておるわけであります。ところが文部大臣は愛国心を要請した場合、そのためには歴史、地理の教育をやりたいということは少し視野が狭すぎるのじやないか、こういう感じを持つているわけであります。又この愛国心というのはこういう歴史、地理教育とも関係はないとは私は申しませんが、併しもつと広く憲法との関係を考えますとき、政治経済と深い関係があると思います。むしろ私どもは愛国心という問題は政治家としてはみずから顧みて政治をよくして行くという点から出発しなければならない問題だと思います。これを単に国民に強いるとか教職員に要請するとかいう問題じやなしに、みずから政治家としては政治のあり方についてもつともつと深く反省をして、その上に立つてこの問題を考えて行くべき性質のものではないかというふうに考えておるわけであります。そういう意味において教育だけにこの問題を求めるのではなくて、更に政治経済との関係において文相はどう考えておるかということが一つ。
それから我が国の憲法に調つてある個人的基本的人権、そういうものを実現して行くのに、この道義の高揚と言い愛国心の高揚というものが必然的に生まれて来ると考えておるのでありますが、こういう点についてどういう見解を持つておられるかお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/2
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003・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 社会を形造つておるそれぞれの人がその立場その職分を立派に行なつて行くという、これが結局国を、立派な国を運営し又健全な社会が実現するゆえんであろうと思います。従つて政治の面におきましても経済の面におきましても、それぞれ最善を尽くしてこの立派な国、立派な社会ができるように貢献することが愛国心の現われであろうと思います。七の点は今お述べになりました点と同感であります。それから憲法に調つてありますような、憲法が目標としておる立派な国を建設して行く、個人の尊敬が尊重され又高度の文化の栄える民主的社会というものは作り上げられる、こういうことに国民の愛国心の目標がばければならない、この点も同感です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/3
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004・荒木正三郎
○荒木正三郎君 そこで私はこの具体的な問題についてお伺いしたいのでありまするが、私たちはこの日本が明るくなるために個人的基本的人権が尊重されるということは非常に重要な問題であると思います。道義の高揚と申しましてもそういう点が根本的な問題になつて行くというふうに考えるわけでありまするが、最近教育界に現われておりまする問題の一つといたしまして、この教職員の思想調査の問題が起つております。これは私から申上げるまでもなく憲法第十九条に「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」こういうことがございますが、その問題に関連をいたしまして教員の思想調査が行われたということは、この憲法の精神からみて、これは由々しい問題であると考えておりまるが、その一例といたしまして、最近山口大学におきまして経済学部長の柴田敬氏が教授、助教授に出しました書簡の内容をみますと、これは明らかに思想調査を目的としておるということが窺えるのであります。この問題は文部大臣は御存じであるかどうかは知りませんが、こういう思想調査が行われておるということに対しまして文部大臣の考えをお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/4
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005・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 山口県の教授の思想調査が行われておる。この問題はこちらではわかつておりませんが、ただ今お話になりました学術の研究、或いは思想の自由、これを何らかの意味において干渉するとか、或いは抑圧するとかの意図の下に行われたとすれば、これは好ましからざる措置であると思います。ただ具体的の事実は文部省にわかつでおりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/5
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006・荒木正三郎
○荒木正三郎君 これはかなりの反響を呼んでおる問題であります。山口大学の柴田書簡としてかなり反響を呼んでおる問題でございまして、文部省が全然御存じないということは私はちよつと了解に苦しむところであります。今日は私はこの書簡の内容をここに持つて来ておりませんが、これは近く文相にもお見せしたいというふうに考えております。この内容をみると明らかに思想調査を目的として行われていることは明らかであります。従つてこの問題については早急に調査をせられまして、文部省の見解を当委員会において明らかにして頂きたいということを要望しておきます。この思想調査は単に山口大学に行われているだけでなしに、私はそのほかにも若干聞いておるのであります。この問題はこのまま放置いたしますと、思想の自由、良心の自由ということに大きな制圧が加えられておる、こういう危険なものであると考えますので、文部省としては十分善処して頂きたいということを、まあ要望もいたしておきます。それから文部大臣はこの教育のいろいろな政策について抱負を持つておられるのでございますが、これらの教育政策を実現してその効果を上げるためには、私は少くとも教育に当つている教職員に十分な理解を得て御協力を得るということが必要なことであると考えておるのであります。先般教職員組合の人々が文部文臣に面会を求めて、文部省で座り込みをやつた、こういう問題がございました。文部大臣室がそのために塞がれたというような事件もございましたが、その問題に関連して、文相はかなり教組の態度を非難せられるような発言をせられておると聞いておりますが、併し、私はもつと根本的に、本当に教育の効果を上げて行く、こういうためには、胸襟を開いて教職員の人々と話合いをする必要がある。文相は進んで面会を求めてでもやつていい問題ではないかと思うのです。で、それをなかなか面会を求めてもお会いにならない、こういう態度が私にはよく了解できないのでございます。私はこの間の事情については、詳細は知らないのでございますが、なぜ文相が教員組合のかたがたの面会に対してこれを拒絶すると、こういう態度をおとりになるか、そういう点についてこの際伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/6
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007・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) この問題はなかなか世間で話題を賑わしたと申しますか、まあ、いろいろ人によつて批判がある問題でございます。あらかじめ申上げておきたいのでございますが、私は日教組の幹部と申しますか、執行に当つておられる諸君に対して偏つた先入感をもつてこれに接しておるという気持は毛頭ないのでございます。さればといつてこの日教組の行き方というものに対して無関心であるということではないのでありまして、これは五十万教職員、我が国の最も重要な教育の面を担当しておられる教職員諸君の動向を察する一つの重要なものとして関心は特に払つておるのであります。ただ申上げるように何らの偏見或いは先入感をもつてこれに臨んで、おる、そういう気持はないのであります。そこで先達つての問題でありますが、これはまあ細かいことを申上げる必要もないかと思うのでありますが、私は実際を申上げますと面会を謝絶したことはないのであります。こちらから面会に応ずるということを申入れる都度、日教組側においてむしろこれを何と言いますか、拒絶せられております。そうしてああいうことになつたのでありまして、初めから私は面会をしないとか、面会を拒絶するという態度を続けて来たわけではないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/7
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008・荒木正三郎
○荒木正三郎君 この問題につきましては私も若干事情を知つておる一人でありまして、細かしい問題をここで論議しようとは考えておりません。併し、根本には文相としては教育に従事している人たちと胸襟を開いて話をしようと、特に教員組合は多数の意見が集約された結論というものを持つております。従つて、これは他のほかの機関よりも多くの人たちの意見というものが結集されておると、こういう意見を十分に聞く、或いはこういう人たちに文部大臣の文教政策というものを話し、そうしてお互いに協力し合う、こういうふうな考え方というものを文相としてはとつて行きたいと考えておられるのか、そういう必要はないと考えておられるのか、その根本的な態度を私は伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/8
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009・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 私は無論日教組の諸君に対して今後十分話を聞き又こちらから言うことがあればそれも話をする。そういう意味において面会を避けるという気持はありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/9
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010・荒木正三郎
○荒木正三郎君 この間の話を聞きますと、代表五人で十分間会見すると、こう言うのです。私はそういうことでは本当にそういう気持があるとは思えません。併しこの点は、若し教職員と十分話合いをしてその協力を得て行こうと、こういう態度を肯定するならば、今後私はそういう考えで善処して頂きたいというふうに考えておるわけでございます。
それから文部大臣は、文教政策の中で教職員の生活安定の問題については触れておられないのでございますが、これは当然のこととしてお述べにならなかつたのじやないかと私も考えておるわけでございます。現在教職員の生活安定ということは、これは教育の復興に重大な関係があるということは私が申すまでもないと思うのです。併しこの生活安定の問題に関連して多くの問題を持つております。で、そういう問題についても若干お伺いしたいと思うのですが、それに関連する問題の一つといたしまして、政令百六号の問題がございます。これは昭和二十八年六月十五日に公布されたものでございますが、極く最近に公布されたものでありますが、この政令は、私は立法府の意思というものを無視して出しておるというふうにとるのであります。これに対しまして私は文部大臣の見解をお聞きしたいと思います。そのために若干、なぜそれでは立法府の、立法府と申しますか、国会の意思を蹂躪しておるかということについて、若干申上げますが、この義務教育費国庫負担法は、昨年の国会において成立をみたものでございますことは大臣も御承知の通りであります。この第二条に基いてこのたび政府は政令をお出しになつたのでございますが、この政令の問題につきましては、この法案が審議されたときに、最も重要な問題として論議されておるところであります。その結果衆議院においても参議院においても、その法律に附帯した決議が可決されておるのであります。その決議の内容は、国庫負担額の最高限度を政令で定める場合には、その限度の基礎は原案の趣旨を尊重し、各都道府県のその年度の実績を下らないようにする、こういうことであります。これは衆議院の決議であります。参議院も大体変らないのでありまするが、教職員給与費の最高限度を政令で定める場合、その限度の基準は、少くとも各都道府県の従来の実績を下廻らないように定める。ですから今度政令が適用される範囲は六都道府県であると伺つております。或いは七都道府県になるかも知れませんが、その場合には、衆参両院の決議は現在支給しているものよりは下廻らないようにすると、こういう決議を明確にいたしておるのであります。ところが、今度出された政令の内容を見ますと、現在支給しているものよりも下廻るような数字というものが出ておるわけなんであります。こういうことから考えますと、政令百六号は国会の意思を無視して公布されたものであるというふうに私は考えますが、文部大臣はこの点についてどういう判断をしておられるか、大臣の所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/10
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011・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 国庫負担法の趣旨に基きまして、大部分の府県につきましては、法律に掲げてありまする通り実際の支出額の二分の一を支出する、この原則は維持して行くものであります。ただ少数の府県でありますが、府県が第一の前提としましては、いわゆる富裕県は一応の枠を定めまして、そうしてそのうちで特に他の府県と比べて非常に教職員に対する給与が高いところがございます。著るしく高いところがありますので、それには大体国立学校の教職員の実際と、そして実際の学級数に合うような定員というものを規定しました。そうしてそれに一定の昇給率というものを見込みまして、それを一応富裕県については、何と言いますか、天井を張つたような基準にしたわけでございます。それを富裕府県でありましても、必ずしもその頭がそこにつかえない、それ以内の給与をしておるところがございます。それは無論実際支出額の二分の一という原則によつて国庫で負担するわけでありますが、そのうちに一応の基準というものを超えて給与を払うところがあります。その超えた部分については二分の一の負担をしない、無論超えて支給してはならないという趣旨では無論ありません。ただ超える部分について国庫の二分の一負担ということをしないということに定めましたのがいわゆる政令の趣旨でありまして、私どもといたしましては、法律の規定の趣旨に反するものではない、さように考えておるのでございます。この教職員の給与につきましては、それぞれの府県においてこれは勿論まちまちであります。平衡交付金の中において一応基準として考えられておる数字がありますけれども、これは無論各府県における実際とマッチしておるものではなく、そこで国で二分の一の負担をいたすということが、負担の本になる趣旨というものはこれは各府県でまちまちに行われておるのであります。いわば国は府県で給与するそのままあとへ付いて歩いて、高くても安くても半分ずつ負担をして行く、こういうことになつておりますので、特殊のこれも割合に貧弱な府県が特に教育のために重点を置いて、そして又僻陬な地方であつて、安い給料では適当な教員が得がたい、こういうような事情から相当高い給与を支出しておる県も絶無ではないけれども、これは富裕県でないのでありますから、それに対してはやはり実際支出額の二分の一を負担する、この原則を堅持しておるのでありますが、ただ富裕県でありますがために割合に財政上の余裕もあつて、そうして他の府県と比べて著るしく高い給与が支払われております。さような県について二分の一の支出を或る限度で打切る、こういうのが政令の趣旨でありまして、法律の規定は、但しというのでありますから、いずれ支出の二分の一というものを飽くまでも貫くというわけでもない、特別の事情があれはその最高額を定めることができる、こういうふうになつておりますので、その但書に基いてこの政令を出しまして、この但書の範囲で規定し得る事柄であると、かように考えた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/11
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012・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私のお尋ねしておるのはそういう意味でないわけなんです。勿論この法律の趣旨とするところは、半額を負担するというところにあるわけであります。但し特別な場合には最高限度をきめることができるというふうな但書があるわけなんであります。だから法的に言えば、この但書に基いて最高限度をきめるということを私は違法であるとか、そういうことを言つておるのではない。この最高限度をきめる場合に、国会の附帯決議を配慮せられたかどうかということです。附帯決議はその最高限度をどうしても叩きめなければならん場合には、その実績を下廻らないようにしてもらいたい、こういうようなのが国会の意思なんです。ところが今度の政令はそれが配慮されていないわけですね。下廻つておるわけです。そこで私は文部大臣に衆参両院のこの問題に対する附帯決議について政令を公布する際考慮せられたのかどうか、こういう点をお聞きしておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/12
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013・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 田中局長から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/13
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014・荒木正三郎
○荒木正三郎君 ちよつと待つて下さい、ちよつと。これは文部大臣に御答弁願いたい。これは私は文部大臣は細かいことはいいと思う、先ほど随分細かい話があつたが、そういう細かい話はいいので、こういう附帯決議があるのかないのか、御存じなかつたか知れませんが、一般の意思というものを配慮せられたかどうかという簡単なことですからね、お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/14
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015・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 私は院、いわゆる附帯決議というものを無視したという、そういう気持はありません。ただ従来の実績等につきまして数字のわからない点がありますから、その点を一つ田中局長から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/15
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016・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私は数字の問題を言つておるのではないのですよ。実績より下廻らないようにしようと考えられたのかどうかという問題なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/16
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017・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 実績を下廻らないようにということで政令をきめたつもりであります。ただ従来の……、政令には数字が書いてある、いわゆる最高額というものが、それが実績を下廻つておるかおらんかというその実際の点ですね、その点について局長から一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/17
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018・田中義男
○政府委員(田中義男君) 提案者の一人といたしましていろいろいきさつ等、私から御説明いたしたいと思うのでございます。
先ほどおつしやいましたように、確かに昨年附帯決議がございまして、その中に最高限を定める場合には原案の趣旨を酌んで実績を下廻らないようにということでございました。それで今いろいろ、全般的問題としては大臣もお話になりましたように、特別な事情が何であるかということが第一に問題でございましたが、併しその特別な事情とは、提案理由の説明にもございますように、給与の各府県の実態を考慮し、なお又各府県の財政事情等をも考慮をいたしまして、そうして各府県間の給与の著るしいアンバランスも現実にございますし、なお又財政状態におきましても好条件の所とそうでない所もございます。それらの事情を勘案して、国が負担をするというその負担公正の見地からいたしまして、この際最高限を定めることが適当であろうということに相成りました。そこでその最高限をそれではどこにおくかという問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/18
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019・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私の質問に答えてもらいたいと思います。政令できめた最高限度は実績より下廻つておるのか、実績と同じなのか、それだけで結構です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/19
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020・田中義男
○政府委員(田中義男君) これからすぐ申します。そこでこの最高限をどこに定めるかということでございまして、その最高限はお話のように原案の趣旨をも酌んでという、その当時の原案は何であつたかと申しますと、大体各府県それぞれの平均単価をとり、そうして平均人数をとりまして、そうしてそれを一つの実績としてこれを堅持しようとしたのが当時の原案であつたことは御承知の通りでございます。そこで今回のこの最高限をとりましたその標準は、国立学校の十一月における現在の人員並びに給与等の単価を以ていたします場合には、六都府県を除きましたその他の府県につきましては、これは決して最高限を割つておるものではございません。そういう関係もあり、なお、又全国的な総額から申しましても、あの政令で定めました最高限によれば、決して下廻つておるわけじやございませんで、人員におきましても、又金額におきましても上廻つている線なのでございまして従つてあの最高限によつては附帯決議の精神にも必ずしも反するものではない、かような解釈をいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/20
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021・荒木正三郎
○荒木正三郎君 どうもおかしいと思うのですが、数字が出ているのですからもつと明確にやつてもらいたい。ここで附帯決議をそらさないようにしてもらいたい、最高限度を政令で定める場合は、その都道府県の従来の実績を下廻らないように定めることと、こうある、私はその通り読んでいるのです。例えば東京都において最高限度をきめる場合は従来の実績です、それは幾らか私は知りませんが、東京が、一万五千円ベースであれば、それを下廻らないように政令できめるというのがこれが院の附帯決議の意思です。そこで今度きめられた政令は、私は明らかに下廻つておると思う。それはここにあなたから提出された書類にちやんと書いてあります。この政令によつて六都道府県だけでも十五億円金が余つて来る、この政令を出さなければ十五億円余計金を出さなければならん、これはちやんとあなたのほうから出された資料で数字が出ているのです、そうすれば今度の政令の最高限度をきめた数字は、明らかにその都道府県の実績を考慮しておらない、実績より下のものである、これははつきり出ているじやないですか。そうすれば私はさつき文部大臣にこの附帯決議を考慮せられたのかどうか、こういう質問に対して、文部大臣は十分考慮した、この決議に副うようにしたと、こういう答弁をなされておりまするが、これは私は間違いであると思う。従つて文部大臣に私は御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/21
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022・田中義男
○政府委員(田中義男君) なお附加えて御説明申上げますが、お話のように、文字通りの全都道府県についての最高限を定めるということと同時に、従来の実績を下廻らんということは実は非常にそこに只今としては矛盾を感ずるわけでございまして、お話のようなことなら政令も作るということが実はなくなる、こういうことなのでございます。それで私が先ほど申しましたのは、当時原案の趣旨を酌んでと、こうおつしやいましたので、確かにそういう意思も私どもは相当持つて、そうしてこの最高限を定める場合に相当苦心をいたしまして策定したものでございますので、従つて大体あの原案の趣旨には合致するものと、こう考えて参つたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/22
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023・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私は法案の趣旨の問題について聞いているわけではない。趣旨の問題からいつても議論はありますけれども、それはあとに譲りますが、附帯決議の趣旨に副つていないのじやないか、こういう質問であります。それから今局長が答弁せられたのは私は了解に苦しむのです。従来の実績を下廻らないようにするんだつたら政令を作る必要はない、そんなことはありません。或る特別な府県がどんどん給与の改善をやつて行く、将来もどれまで上るかわからんという段階においては、従来の実績でびしやつと規制することはできます。必要はありません。むしろ本来の趣旨はそういう点にあるんです。だから附帯決議で述べているのは、従来の実績は認めようじやないか、そうして政令を出そうじやないかというのがこれはみんなの意見であつたわけであります。それでなければこの附帯決議は削除される運命に私はあつたと思います。従つて政令を定める場合には、この両院の意思というものは十分に尊重されて然るべきではないか、又教員の待遇を少しでも改善しようという場合には、何も高きを低きに下げる必要は私はないと思う。そういう意味からも、これはこの政令の問題については私としては撤回をしてもらいたい。そのことが教育界にとつて仕合せであるというふうに考えております。そこでこれは最近非常に各都道県からいろいろ陳情のある問題であります。私どもも連日この問題については陳情を受けております。従つてこの際は両院の決議の趣旨を尊重して、政令を出すならば少くともこの実績を下廻らない数字を出す。それができなければこの際政令を撤回してもらいたい、こういう私は考え方であります。この点について文部大臣のお考えを伺つておきたいと思ひます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/23
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024・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 決して附帯決議について今更かれこれ言うつもりはないのでありますが、ただ先ほど申上げましたように、実質的に非常に開きがありまして、それは国で基準を示しておるわけでもない。一例を挙げますると、鳥取県のような所では、実は若し富裕県であれば鳥取県はやはりあの枠に引つかかることに入るのであります。ただ非常に県の財政が比較的に余裕があるために、教員の給与が他と比べて著るしく高い、こういう所につきましては、それを無理のない基準で一応頭を抑えるということは、これは条理上然るべきことである、決して無理ではないというふうに私は考えておるのでありまして、これを府県がまちまちに給与される、それを一々その給与の妥当性と言いますか、決して不合理とは言えませんけれども、他の府県と並べて見て非常に違つておるものを、国が何も基準なしに二分の一を負担して行くということは、どうも実質的に見て不均衡な点がありはしないか、成るほど附帯決議の文字通りの解釈に従えばその点疑問があるかと思います。あるかと思いますけれども、私はこれが必ずしも附帯決議の趣旨までも没却して、これを擲つたものであるとまでは考えておらないのでありまして併しなおこれにつきましては十分この上考究いたしたいと思いますけれども、今のところこれを撤回するというつもりはありません。実は本年度の提出してありまする五百四十億の予算というものは、いわゆるこの政令を実は前提としておるのであります。従つて今直ちにこれを撤回するということは本席ではつきり申上げることはできないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/24
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025・荒木正三郎
○荒木正三郎君 昨日理事会でかなり質問時間をお互いに制限する話もありましたので、ほかの人に譲らなければなりませんので、簡単にとどめておきますが、いずれこの問題は半額国庫負担法に関する特例措置の法律がありますから、そのときに私は十分意見を述べたいと思いますが、そのほかに今やかましくいわれておる教職員の給与の三本建、二本建の問題、これも給与の問題としては重要な問題でございます。私は三本建、二本建という抽象的な言葉はどうも実はよくわからないのです。併し今の新学制を実施して行く場合に教職員の給与をきめるとき、どうしても守つて行かなければならん原則として私はまあ次のような問題を考えて参らなければならんと思うのであります。それは新制中学ができましたときに、この中学の教員を募集するために、現在の高等学校からと現在の小学校から教員を動員してそれを埋めたのであります。従つて新制中学には資格の面から申しますと、高等学校の教員の資格を持つておる者が現在相当数おるわけであります。で、そういう人たちに対する場待遇の問題でございますが、私は同一の学歴を持つて、同一の勤続年数を持つておる者に対しては同一の待遇をすべきじやないか、こういう見解を持つておる、これに対して文部大臣は違つた見解を持つておられるかどうか聞きたいのですが、例えば東京大学を卒業して、或る者は高等学校に勤めておる、或る者は中学校に勤めておる、同期の卒業であつて、同年数勤めておると、こういう場合に、待遇に差をつけたほうが正しいと考えておられるのか、そういう場合には同一の待遇を与えたほうがいいと考えておられるのか、この点を私は伺つておきたい。なぜかというと、これは新学制の実施の上において大きな影響のある問題であります。恐らく待遇に差をつけた場合、新制中学が軽視せられておるということは私は当然の結果こして起ると思う。そういう意味においてこの問題は重要な影響を与えると思いますので、同一学歴、同一勤続年数の者に対しては、高等学校とか、中学校とかいう学校種別による待遇差をつけたほうがいいのか、つけないほうがいいのか、大臣の所見を私は伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/25
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026・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) まあ中学校と高等学校に限定して申しますと、その教職員の待遇を同じ基礎に立たせるというのが現行の給与規定である。これを変えたほうがいいかどうか、変えるべきであるかどうか、これについては御承知の通りいろいろ論議があります。又何と申しますか、中等学校と高等学校との教育内容等から見て、これを変えなければならんという考え方も相当あるわけであります。実はこれにつきましては、文部省といたしましてはまだ結論に達していないのであります。従つて只今仰せになりました、例えば同一の学歴を持つて同じ勤続年数勤めて来たというような中学校の先生と高等学校の先生との間に、原則的にその給与の上に差別をしないというのが現状でありまして、これを差別するというところにまだ結論が達しておらんのであります。但しこれは世間でも問題でありますし、又いろいろ研究しなければならん点があるかと思います。併しながら又一面実情から見まして、多少補正といいますか、多少のそこに実情に合わせる意味で妥当な改正を加えたらどうか、こういういわば、これは根本的な解決は別にしての暫定的の問題でありますが、そういう点につきましては文部省としては一定の考えを持つておるのであります。実情に合わせる、これは実際と妥協するのでありますが、但しこれも御承知の通り、給与に関しましては人事院の勧告を待つて初めて政府としてはその勧告を基礎として政府の態度をきめるのでありますから、今ここでそれをどういうふうにして行くかということは、文部省としては或る考えを持つておりますけれども、今ここで申上げる段階ではありませんから、それは具体的には申上げられません。ただ私が今考えておりますのはさような考え方であり、又実情はそういうところにあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/26
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027・相馬助治
○相馬助治君 実は荒木委員の発言に対して、道徳教育の問題、それから義務教育費の国庫負担に関しての問題等が順に出ておりまして、それらに対して項目別に連関した質問をして一つ一つ片付けるほうがいいかなと思つたのですが、荒木委員から逐次問題が出て来てしまつたこの段階に来まして、私は道徳問題、義務教育費国旗負担問題に関して意見がありますけれども、只今の文相の発言は極めて重大であり、且つ一般の教育界といわず世間が注目しております問題なのでれもう一度繰返してお尋ねをして御所見を確かめておきたいと思います。
只今の文相の御見解は、結論的に申しまして敬意を表するに値すると存じます。かような批判がましいことを申しては誠に恐縮ですけれども、三本建の問題については、本年の一月文部省は或る見解を人事院に示しておるはずであります。人事院総裁に我々が尋ねた場合に、この問題は教職員に関連を持つ問題であるから、文部省の鷲見も参酌しなければ最終決定はできないと、長きに亙つて言い続けて来た問題であります。それで文部省としてはいろいろな経緯を経、研究をした結果、且つ又、政府与党であります自由党の政調会等の意見等も参酌して或る種の見解に達しておると、かように私どもは情報として聞かせられて承知しておるのであります。ところが今文相の御発言は、現実の解決しなければならない問題について解決をして行くことをしており、いわゆる三本建では最終的な結論を得ていない、かように申されたのでありますが、それが事実であるとするならば非常に結構なことと存ずるのであります。具体的に申しますと、今日全国高等学校教職員組合が三本建なるものを主張しておりますことについては、日教組を中心として根強い反撃がありますが、全高教の職員がこの主張をする理論的根拠も全然ないということを言つてきめつけるのは、これは当を失しております。理由はあると思うのです。その一つは例の恩給の加算率の問題が、現行法によりますと高等学校教育員にとつては不合理であり、非常に損の行くようにできておるのでございます。それから又現在の高等学校の教職員の学歴上から見、それから勤続年数から見た構成からして或る種の教員が俸給が陥没をしておる、いわば同一の状態の中学校に勤めておるよりも、むしろ高いのでなくて低いのであるというような特殊事情もあるやに我々聞いておるのであります。この二つの前提が若しも解決されないならば、三本建を主張するとする全高教の主張というものも一応耳をかさなければならない議論だと我々は承知しております。併し基本的に考えてみて、今さような一、二の欠陥に原因を発して三本建を強行するならば、全日本の体系的な教育を破ること甚だしいものがあつて将来非常に禍根を残すものであると我々考えまするが故に、いわゆる三本建には私は強力に反対し続けて今日に至つておるのであります。具体的に今文相の言つたことをかように了解してよろしいのかどうか、念を押しておきたいのであります。即ち、政府が自発的に恩給法を改正し、且つ又現行給与法によつて高等学校の一部陥没しておると伝えられたる教員の給与の不合理を是正し、このことのみ努力して、いわゆる三本建給与というものについては、将来反対して行く意思である、かように了解してよろしいかどうか、文相のおつしやつたことが、やや抽象的でありますので、私は具体的に以上のことを申上げて私の認識に誤りがあるかどうか、これをお尋ねしておきたいと、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/27
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028・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 現在の給与の規定におきまして、実情に合わない点がありますことは只今御指摘の通りであります。これは理窟というよりも、実情に合わすだけのことはしなければならん、少くとも現在同じような高等学校の教員と中等学校の教員とは、高等学校のほうでむしろいわゆる陥没といいますか、そういう現象があるのであります。これをすぐ一挙に元へ戻すことができるとは存じませんが、少くともそういうことが、将来そういう現象が出ないように実情に合わすことは勿論必要だと思います。先ほど私が申上げましたのは、その以外の点につきましても、現在の実際の実情というものに成るべく合うようにして行きたい、根本的に中学校の先生と高等学校の教員との給与体系が全く別個な観点から立つておるとしてこれは三本建という意味の、純粋な意味の三本建であります。これも先ほど申上げましたようにいろいろ議論があります。私は寡聞で知らんのでありますが、聞くところによるというと、世界各国いわゆる三本建によらざるものはないというような話も聞くのであります。これは併しなかなか今この問題に根本的な解決を与えるということは、私はなかなか困難で承ろうと思つておる、ただ今申上げますように、三本建ということになるかどうか知りませんが、実情に合うようにだけはしたい、こういう考え方でありまして、その結果多少中等学校の教職員の給与の規定と高等学校の教員の給与の規定に違いが出て来るかも知れない、これを三本建と言えば、そういうものは三本建であるとも言えるかも知れない、具体的な内容は只今申上げましたようにこれは人事院の勧告に基いて政府は取上げて行く筋合いのものでありますから、これには政府の意見としてこういうふうに考えておるということを申上げる段階ではないのであります。先ほど申上げますように、文部省としてはその意味において或る案に到達をして、そうしてそれを人事院のほうに文部省の意見として申上げておる、いわば人事院が給与について政府に勧告するその参考意見といいますか、文部省としてはこういうふうに考えておる、こういうことを実は申入れておるのであります。さように御承知願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/28
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029・相馬助治
○相馬助治君 もう一度繰返して文相に尋ねたいのですが、その前に事務当局に念を押しておきたいと思います。田中局長にお尋ねします。従来いわゆる三本建について文部省としての態度を審議し、或る種の決定をした事実があるかどうか、あるとすればそれはいつ頃で、どのような結論であるか、これが私の質問の第一。
第二は極く最近に至つて、人事院に文部省が或る種の見解をこの三本建について申入れた事実があるかどうか、この二点を伺いたいと思います。なおこの質問は私は無準備でわからないの尋ねるのではなくて私は私なりの資料を持つての土で念のためにお尋ねするのでありまするから、局長においてもその点をしかと頭にとめて御返答を給わりたい、余りその場限りの御返答の場合には、再質問をすることを附加えてお尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/29
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030・田中義男
○政府委員(田中義男君) この給与準則の問題として文部省として人事院と特に折衝を直接持ちますのは、国立学校関係が主となります関係から初中局といたしましては、面接の折衝に当つておりませんのでございまして、その関係で私細かい点について一々は責任を持つてお答えするほど存じておらないのでございますが、私の承知いたしておりますところでは、文部省としてこの問題について省議決定をしたというようなはつきりした結論を得たということには、私十分承知を無論いたしておりません。いろいろ検討の過程であることを承知いたしておるのでございます。それから従つて最近の問題についてどういうふうな具体的な人事院との間に折衝を持ちましたかも私ここで申上げるほど材料を的確には存じておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/30
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031・相馬助治
○相馬助治君 私はこれは文相にお尋ねするのですが、こういうことを文相に今、お帰りになつたらわかることで、尋ねてもどうかと思いますので、田中局長にお尋ねしますが、これについての責任のある答弁のできる局長は誰ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/31
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032・田中義男
○政府委員(田中義男君) 細かい技術上の折衝は実は人事課長がやつておりますので、具体的な詳細事項等については人事課長から申上げるのが適当だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/32
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033・相馬助治
○相馬助治君 省内のことを誠に知らないので愚問ですが、人事課長を所管しておる局長は誰ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/33
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034・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 私から、先ほどお尋ねになりました点について私が承知しておる範囲でお答えを申上げます。万一事務的に間違つたことを申上げておりますれば、のちほど又の機会に訂正いたします。私の承知しておるところでは、前文相の時であつたと思いますが、文相はこの問題について或る結論に到達をして、それがまあ省議という形式的なものであるということは、それは知りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/34
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035・相馬助治
○相馬助治君 それは一月ですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/35
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036・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 形式的にまあそういう結論に到達してそれを人事院にまあ参考意見といいますか、文部省の意見とし申上げた、こういうことはあつたというふうに私は承知しております。それからその後私が就任をいたしまして、人事院としてはまあ新らしい文部大臣の意見もあろうからというような、まあ気持もあつたようであります。別にその申入れを文部省からあれは大臣が迭つたから一応引込めて考え直して出す、こういうことを何も言つたのではありませんが、人事院側では、大臣も迭つたことだからというようなふうであつたそうです。そこで改めて前の申入れがそのまま今日においても文部省の意見として扱つてもらいたい、そういう申入れをいたしたはずであります。これは前に申入れてありました案と、私の考えといいますか、私のときになつてのとは、申入れの内容について多少の違いがあります。その点は特に書面でその点を申入れたかどうか知りませんけれども、併し、これは人事院に通じてあるのです。人事院のほうではそういうことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/36
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037・相馬助治
○相馬助治君 大達文相が御就任になつて何かの機会で三本建のことを尋ねられ、三本建のようなものはおかしいとおつしやつた。そうして、事務当局から、大臣さようなことを申されてはこちらが困りますというようなことで、ああそうか、というので何か思い直されたか、研究しようということになつたというような、嘘かまことか知りませぬが、そういう情報も流れているわけです。私たちはこういう現象を問題にしているわけではないのですが、この給与準則の問題は、人事院の総裁初め事務当局に尋ねますと、これは飽くまで文部当局の意思を無視するわけに行かないのだ、こう言うのです。文部省のほうに尋ねますと、最終的には人事院がやることなんで、我々のほうが参考意見程度なんですから、固い省議の決定ではありませんし、相馬さんなんかも来てプライベートに意見を言うのならと、こういうことですけれども、これはここのことにしておいて頂きたいと、こういうことになりますと、実はいつ幾日誰々局長に会つたが、こういうことを言つたじやないかとここで私も申上げるわけに行かない。そういうふうな経緯で、我々も大体の様子は聞いており、文部省もこれについての取扱いを苦慮していることは承知しているのです。併し、荒木君が尋ねたこの三本建の問題は、非常に今後連関するところが大きいので、私も関連質問でかように尋ねているのですが、どうも文相の良識通りには事務当局の動きが行つていないやに私は聞いておるので、そこで、私は質問をして文相の挙げ足をとるということをやめまして、この問題は次の機会にとつくりと納得行くように尋ねたいと、こういうふうに存じまするので、私はこの質問を一応ここで打切ると、こういうふうに申上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/37
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038・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) この次と仰せられますけれども、実は今でもこの次でも同じお答えをするのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/38
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039・川村松助
○委員長(川村松助君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/39
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040・川村松助
○委員長(川村松助君) 速記をつけて下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/40
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041・荒木正三郎
○荒木正三郎君 先ほど私の質問に対して、文部大臣は二つのことを述べておられるわけであります。
一つは同一学歴の者に同一待遇をするかどうかは結論を得ておらない、こういうことが一つ。
それから教職員の給与については、実情に即するように考えたい、こういうことを言つております。その根本的な同一学歴、同一勤続年数の者については同一待遇を与えるかどうか。この原則的な問題は、私は重要であろうと思います。実情に即するという言葉は抽象的で、なかなかわかりにくい。相馬君が質問したような、実情に即するから私は当然すべきことである、こういうことは反対する理由は何もないと思う。併し、文相の考えられている実情に即するという内容はどういうことかよくわからないのですが、疑問があるのですが、相馬君が述べられたような問題であればむしろこういうことがあるのが不思議である。これはもつと早く是正されなければならん私は問題だろうと思う。従つて、この問題は残ります。実情に即するということはどういうことなのか。文相が考えておられる内容はどういうことなのかということは、もつとお聞きしなければならないのですが、根本的な問題については、文相の見識といいますか、そういうものから考えて、文相のお考えは私はあると思うのですがね。私は、歴代の文部大臣に私ども直接会いましてこの点については見解を質しました。そうして明確に私どもは聞いております、原則論としてはですよ。これはやはり文部行政の最高責任者である文部大臣は、私は見識を持つておいでになると思います。結論も持つておいでになつておると思います。基本的な問題については。それをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/41
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042・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 私の先ほど申上げたことは、少し言い方が不十分であつたかと思うのでありますが、同一学歴を以て同一年数勤務した教職員を同一の待遇にするということ、こういうのが御承知の通り現行の給与の基本的な考え方であります。で、これに対しては、まあ学校の種別と申しましようか、そういういろいろな専門的な点もありましようが、そういう見地から別に体系を立てなければならない、こういう議論がある。で、この問題についてはまあ今後とも研究をいたしたいが、現在その問題に触れての根本的な考え方についてはまだ結論に達しておらんということは、現状の同一学歴同一年数の勤務であれば原則として同じだという、まあ現在をそのまま踏襲すると、こういう意味であります。ただそれは原則であつて、その原則は原則として立てるけれども、実情に応ずる意味でそれに若干の手直しといいますか、修正といいますか、そういうものが考えられると、こういう意味なんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/42
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043・荒木正三郎
○荒木正三郎君 原則を認めて実情に合うようにしたいと、こういうことで、あれば私どもは何ら異議がないわけです。併し、その実情に合うという内容は残つておるのでございますが、ただ先ほど文部大臣は世界各国の実情は三本建になつておる、こういうお話でございました。私もまあ十分研究しておるというわけではありませんが、併しイギリスとかアメリカについては若干調べたこともございます。それは当然日本の免許法とは違います。同一学歴ではございません。従つて、私はそれをもつて直ちに日本にとつて来るということは当を得た措置ではないと思います。少くとも同一学歴の場合はイギリスにおいてもアメリカにおいても私は差等はつけておらない。ただイギリスやアメリカにおいては学歴において違いがある。そうすれば当然それは差が出て来るのは当然なんです。従つて、日本の現在の免許法から言えば直ちに適用できない性質のものであるということだけはお考え願いたいと思うのです。まあこの問題についてはなお機会があるかと思いますが、私は要望しておきたいと思いますが、これは恐らくこの問題がどういう結論が出るかによつては中学校と高等学校との教員交流はできなくなるのです。そういう事態が起る。又現在中学校に勤めておる高等学校の有資格者ですね。こういう人たちが高等学校に帰るためにいろいろ問題が起こつて来る。そこからいわゆる新制中学の質的低下、教職員の質の低下というふうな問題も起つて参りまして、相当考慮しなければならん重要な問題であるというふうに考えております。そういう点から十分慎重にお考えを願いたいと思います。聞くところによると、これは単なる私の誤解かも知れません。ただ或る政策的な考えから日教組対全高教ですか、こういうふうな問題が介入してこれを不明朗にしておるというふうなことも若干聞きます。併し、これは私の杞憂であるかも知れません。少くともこの問題についてはそういう現象的な問題にこだわることなく、これは虚心坦懐にやつて頂きたいということをまあ要望して私は一応これで質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/43
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044・深川タマヱ
○深川タマヱ君 大臣はまだ御就任後日が浅うございますので何かとお仕事の上で御不便も少くなかろうかと存じますけれども、それにいたしましても開闢以来と言われるほど今日の日本の道義の頽廃いたしておりますときに文相をお引受けになられましたので、やはり御抱負も大変おありだと心強く存じております。御承知の通り今日非常に性道徳が頽廃しております。殊に青少年において憂うべきものがございますけれども、やはりその原因は私、闇の女のあの御乱行と申しますか、あれに一つの大きな原因があるだろうと思いまして、ここ数年以来吉田総理には毎年お願いしておりますけれども、いつになりましてもこの問題が片がつきません。失礼ですけれども、どうやら自由党内閣の性格であるのではないかと思うようになつておりますけれども、(笑声)新らしく御就任になりました大臣は、やはり変つた御見解をお持ちだろうかと思いますので、この問題をどういうふうにして解決されるお考えか、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/44
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045・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) これは只今お話のありました通り、非常な現在の我が国の社会情勢のうちで最も関心を持たなければならん問題の一つであると思つております。これは戦後社会的にも又思想的にも非常な混乱があるということにも原因がありましよう。又いわゆる進駐軍、よその国の軍隊が多数日本に駐留をしておるというような関係もあろうと思います。これはなかなか一朝一夕に、どうすればそれが根絶する、世の中がきれいになるというように、むずかしく、言うことができない、非常にむずかしい問題であると思います。無論文部省といたしましては、社会教育面におきましても重大な関心を払わざるを得ないわけでありますが、少くとも学校教育の面におきまして、今後性道徳の面につきましても十分な関心を持つて生徒児童のそういうことに対する自覚と申しますか、いいことと悪いことの区別をはつきり分明することのできるような方法を講じて参りたいと思います。近頃ではどうも戦後の義務教育におきまして、先生と生徒が非常に親しみ深くなつておるということは、これは一つのいい面であろうと思いますが、同時に又非常に押れまする関係でありますか、先生に対する尊敬、或いは信頼の考え方、こういうことは或いは旧式かもしれませんが、そういう点ではまだ少し何と言いますか、だらしがないというか、規律がなさ過ぎるというふうにも私は思うのでありまして、こういう点も徒らに旧式の、三尺下つて師の影を踏まんとか、そういう形式的なことでなしに、生徒児童と教員との関係がもう少し教育的に規律が保たれるようにして行きたい、これがなければ先生が子供の躾をいたしましてもなかなか実効を挙げることができないのであります。やはり先生も人間でありますから、そう完全無欠な人ばかりじやない、少くとも生徒に接する場合にはその教員たる職責といいますか、使命を自覚して、やはり身を慎しみ、行動を慎しみ、そうして生徒児童の信頼と尊敬を集め得るようなことにしてもらいたい。まあその点から申しますと、これは決して皮肉ではないのでありますが、今日の学校の先生は必ずしも行儀がよくない。まあ戦争中のことを引合いに出すわけではありませんが、私は行儀がよくないと思つておるのであります。もう少し先生自身が自分の身を慎しみ、少くとも教壇に立つて生徒に対する場合は、立派な態度をとつて行くようにして欲しい。随分修学旅行その他におきましても、どうもだらしがないとか放縦であるというような非難がときどき世間でもあるのでありますが、この点はこれは急には参らんかと思いますけれども、先生方のこの点についての自覚反省を促して、もう少し規律のある行動をとつてもらうようにしたい。こういうことがやはりその子供が大きくなつて社会に立つていいことと悪いことの区別をはつきり自分で自覚するようなことになると思うのでありましてそういう点について今後とも十分努力をして行きたいと思います。先生方の指導助言についてもせいぜい努力して行きたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/45
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046・深川タマヱ
○深川タマヱ君 これほど重大なる問題をお尋ねいたしますのに、あらかじめ質問の要旨をお届けいたして御用意をして頂かなかつたことは私の落度であつたと思います。(「いや落度でない」と呼ぶ者あり)又質問のいたし方も、私はこれは質問の言葉が足りなかつたと思いますので、お答えが主に学校の生徒と先生というようなところに比重を置いてお答え下さつたようでありますが、私が主に聞きたいと心の中で思つておりましたのは、いわゆる社会教育の問題で、闇の女の対策であつたのであります。私たち聞くところによりますと、あの連中は生活のためのように言つておりましたけれども、よく調査いたしますと、七割までがどうもそうじやないということを聞かされるに及びまして、ますますやはり先生の仕事の領域のように思うのであります。やはり生活のためでもございましよう、未亡人が子育てをいたしながら、その子育てのためにああいうことをいたしておる、政治の貧困に原因があるのもございましようが、そうじやないといたしますと考え直さなくちやいけません。そこでいろいろ対策はございましよう。併しこれは一番大きなのは失業救済の方法が足りない、淫売を失業対策の、何というのですか、一つに数えているような政治の仕方が実際において行われているということは、これは改めてもらわなくちやいけませんが、もう一つ私は民主主義の行過ぎではないかと思うのであります。というのは、ああいう行為に対しましても、現場を押えなければやはり警察のほうでも手が届かないらしい、刑事訴訟法の欠点と申しますか、若しそういうところに原因がありといたしますならば、大臣は閣議でいろいろな大臣がたと十分御協議されまして、まあ内閣の責任におきまして、もう五年間も内閣をとつていらつしやるのですから、もうここらあたりで内閣の責任においてこれくらいの問題を根本的に解釈してもらいたいと思いますので、この質問は後ほど又大臣がよくお考え下さいまして御答弁下さるのを待つことにいたしまして、今日はこの程度にとどめてほかの問題に移らしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/46
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047・相馬助治
○相馬助治君 それに関連してそのことについて伺いたい。私もその具体的な売春婦の問題について聞こうとしたんじやないのですが、いわゆる文相の教育方針の表明に対して、特にこの道徳教育を強調したということについては誠に時宜を得たものとして私は賛成でございます。その場合に文相の言う道徳教育の構想というものはどういうものであるかどうなつて来ると問題が分れて参ります。従つて私は具体的にお尋ねしたいことは、青少年のための新道徳の中軸というものを差当り何に求めるか、こういうことでございます。先ほど深川委員の質問に対してそれは今の学校の先生にしつかりやつてもらわなくちやならないということに結論付けられましたが、これも私はさようの通りだと申上げます。併しそれが全部であると考えることは、これは非常な間違いであつてむしろ先生方がしつかりしてくれなければ困るなどということを、ほかの者が言うならば別として、先生がしつかりすればそういうものはそれで解決するのであるなんという前提に立つて言つているのだとするならば、これはもうとんでもないといつて私たちは反対せざるを得ないわけです、と申しまするのは、そういうこのパンパンの問題は、現在の教員がしつかりするとかしないとかというんじやなくて大きな社会悪として現在の政治機構、社会機構、そういうもろもろの連関においてのみこれは解決される問題であると、かように存じているから、従いまして青少年のための新道徳の中枢というものを何に求めるか、そして又先ほど深川委員の質問に対して、もうちよつと具体的に何か構想があつたらお尋ねしたい、こう存ずるのです。併しあとのことについては深川委員がこの次とつくり大臣に尋ねるとおつしやいますから、今ここでおつしやつて頂かなくてもよろしいのですけれども、私はその場合に又念を押しますが、差当り青少年のための新道徳の中軸というものを文相は何に求めようとされるか、曾つては教育勅語に求めておりましたが、それらについて一つ御見解を承わつて置きたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/47
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048・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 私は今深川先生の質問にお答えの場合に、少ししやべり過ぎたかも知れませんが、私は只今申上げたように、先生も一つ自覚して、先生としての天職に目覚めて子供に接してもらいたい、併しこれを以て私がいわゆる道徳教育の全部であるということを申上げたつもりではないのでありまして、(「その点は了解」と呼ぶ者あり)今日における新道徳と申しますか、独り青少年ということに限定せず、一般の我が国の道徳のあり方というものは、これはどうしても新憲法と言いますか、戦後改めて国際社会に文化国家を目指し、平和国家を目指して、そうしていわゆる民主的社会の建設ということを旗印としておる、それにふさわしいそういう社会において要求せられるであろうところの道徳、こういうものがどうしても中心にならなければならん。端的に申しますれば教育基本法の第一条であります。教育の目的ということで掲げられておりますことは、これは私は教育基末法ができたためにそういう新道徳が日本に生れたという意味ではないのでありまして、教育基本法の第一条に掲げてありますような事柄が今日の我が国における新道徳の中心でなければならん、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/48
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049・深川タマヱ
○深川タマヱ君 相馬先生は何だか通し眼のように私が質問しようと思つていることと同じことを先に質問されたようでありますが、そこで私も今度の新らしい徳育の基礎についてお尋ねいたそうと思つていたところでございます。曾つては天野文相が国民道徳要領ですか、そういうものを発表されましたときに各方面から非常に論議されました。けれども、勿論あの天野さんが天降り的と申しますか、ああいう方法によつて発表されたことに落度があつたかとは存じますけれども、その非難が殆んど皆破壊的理論でございまして、建設的な意見が少なかつたということは非常に残念に思うのでございます。そこで今新らしく大達文相がおつしやいました徳育の基礎に大体平和或いは文化、民主主義というようなものをお掲げになつたようでありますけれども、どうやら真理の探究ということと平和ということとが新教育の基礎のように私も早くから聞いておりましたけれども、真理の探究というのは、これは知育です。徳育の基礎というと、これは平和ということだけでは私はなかなか日常生活の複雑なる問題を解釈しにくいと存じますので、もう少し具体的に砕いたものでなければならないと思つております。教育勅語は今日直ちに応用できないことはわかり切つておりますけれども、やはりあれに代るもう少し砕いたものでなければ実際に応用がしにくい。又現に学校の先生が徳育をなさるにも少なからず不便があるだろうと考えておるところでございまして、この前総理大臣に対しまして、天野さんのあの発表に対して非難が多いが、近い将来日本の各界の擁威者を集めて、一つ今日の日本の国民道徳としては何が一番基礎になるかというようなことを大体おきめになつたらどうでしようか、勿論これは児童のことでございますから、いろいろな事情によりまして変化をするでしようけれども、幾ら変化をするものにいたしましても、今日この段階におきまして、日本で誰がどう考えましても、大体日本の国民道徳としてはこういうことが大切だという、やはり妥当性と申しますか、必然性、そういうものを成るべく多く備えた徳目がやはり出て来なければならない段階だと存じますのに、それを総理大臣に頼みますのに未だ何の解決もつけられません。これはやつぱり学校の先生を責めても仕方がないと思いますので、幸い新らしく文相が就任されましたので、一つ文相の手によりまして各方面の権威者を集めて、尤もらしいものをこの際織り出してもらいたいと思うのですが、これに対してどうお考えでございましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/49
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050・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 私は先ほど相馬委員のお尋ねに対してお答えしましたのは、平和、民主、或いは文化、これが直ぐ道徳だという意味で申上げたのではないのでございまして、かような平和国家、文化国家、民主国家、これを我が国の新しい出発として考えられる目標でありますから、そういういい社会を、そういう輝かしい国家を作り出すために、そういう社会において必要とせられるところの道徳、こういうことを抽象的に申上げたのでありまして、無論具体的にはこれは各種の徳目となつて現われることであろうと思いますが、無論教育勅語に掲げられてあります事柄も、その徳目そのままにおいて、若しくはその徳目の基礎になつている精神において、今日の社会において大切であることはたくさんあると思うわけであります。ただ併しながら今日の時代において要求せられるところの徳目というものはこれこれかくかくのごときものである、これをまあ仮に各方面の権威者と申しますか、そういう人々を集めて評定をしてきめてみましても、いわゆる文部省が官製の徳目、役所がこしらえた徳目として、これを以て天降り式に国民に臨む、そうして新時代における道徳はかくのごときものである、徳目はかくのごときものでなければならん、国民はそれによるべし、若しくはわそれによることを希望する、こういう形をとることがいいか悪いかということは、これは私は非常に疑問があると考えておる次第でありまして、良識のある社会においては、その徳目というものはおのずから定められる、その時代々々に即応して定まるものと思つておるのであります。これをこうでなければならん、ああでなければならんというふうに、少くともそういう形をとるということが、或いは場合によれば民主的でないということになりまして、或いは人の自由に対して何らかの意味のインターフエアーをするということになるかも知れません。でありますから、その形式について今そういうものを出すとか出さんとか、そうしたほうがいいとか悪いとか、そういうことは私はお答えを差控えたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/50
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051・深川タマヱ
○深川タマヱ君 これはますます迷うのでございます。お言葉によりますと、官製の徳目で国民に臨む、そうして国民はこれによることを希望するというような形をとることはどうかと思う、良識のある社会ではおのずからその社会の事情によつて定まつて行くものだというお言葉でございましたが、これはまあ大人の人に対しましてならばこれもいいでしようけれども、初等教育に当る学校の先生が、それでは一体徳育して行くのに何によつて徳育なさるのか、学校の先生のいわゆる良識に任せ切りなのでしようか。関連をしておるのですが、この頃学校の教育は、何と言いますか、教育委員とかPTAとか、或いは学校の先生の自由な考えだけによつて各府県で別々に教育の基礎が定められて実際の教育が行われているのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/51
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052・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 私は只今申し上げましたのは、新時代における道徳の中心が何であるかということから関連して申し上げたのでありまして、学校における道徳教育、殊に義務教育の学校においての道徳教育を、今申述べたような意味で何も示さないのだというふうに申上げたつもりではないわけであります。学校におきましては、勿論極く小さい子供、これがだんだん大きくなつて、その段階々々で知能が発達して参るのでありますから、これはどういうふうな方法、どういうやり方で子供に道徳教育をしたほうが一番効率的であり、効果が挙がるか、いわば教育の方法の問題でありますが、まあ常識的に考えましても、極く小さい低学年の児童に対しては、先ほど申上げましたように、実際の実践の両において、いい習慣をつける、いわゆる躾と申しますか、そういう実行面においてこれはしていいことと悪いこととを自然に体得させる、だんだん知能が発達して参りますれば、その発育の段階において知識として道徳的な知識を注入して行く、更に進んで、高等学校も上のほうになりますれば、進んで倫理学であるとか、或いは哲学であるとか、そういうところまでも進んで行くことが必要であるかも知れません。これは現に教育課程審議会というものがありまして、それらの具体的なやり方につきましては近いうちに答申が出るはずになつております。そういう答申等にも基きまして、学校教育の面において道徳教育が浸透をいたしまするようにいたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/52
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053・深川タマヱ
○深川タマヱ君 この問題をもう一つで締め括りいたしたいと存じますが、成るほど大臣のおつ上やる通り、小さい時には直接知識の注入という方法をとらないで、実践の面下習慣、いわゆる躾を通して実践さして行く、だんだん知識の発達するに従つて知識として注入する、大学にでも行つたら倫理学とか哲学、そういうものでだんだん教え込むというんですから、それはそれでよろしいんです。幼い時に朕によつて実践で導くということは私も賛成でございます。更に大学へ進みましたときに倫理学とか哲学とかいうもので導くことも、これも私は賛成です。ただその二つの真中のところです、ここらでは躾だけでは役に立たんし、かといつて余りむずかしい教育もできんので、ここのところがぼやかされておつたんですけれども、やはり幾らか知識の方面からも徳育をして行かなければならんときに、その知識の拠り所がはつきりいたしません。それに対しまして今文相は近いうちに教育課程審議会の答申を待つて、それを参考にして押出すとのことでありましたから、それが出まして、それに基いて大臣がどういうふうに押出しておいでになりますか、それを拝見いたしまして更に又質疑をいたしたいと存じます。これはこのままにいたしてその次に変つた質問に移らしてもらいましよう。
学校の教育者が、殊に初等教育の教育者が教室という職場においてどういう教育をしておるかというのは、一体誰が監督をしていらつしやるのか、校長さん、教育委員及びPTAはそれぞれこれに対しましてどの程度の役割を持つておるのかということが一つと、もう一つは、二十七年度におきまして好ましからない教育をしていたという廉で何か罷免にでもなつたような教育者があるのかないのか、それだけちよつと。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/53
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054・田中義男
○政府委員(田中義男君) 私からお答え申上げますが、小学校の先生について直接これを指導する責任を持ちますのは、御承知のように第一次には学校長でございましよう。身分その他の関係でこの身分を預つておりますのは御承知のようにそれぞれの教育委員会でございます。それでまあPTAの立場でございますけれども、これは学校の教育がうまく参りますように、学校とそうして家庭との間の結び付く団体なのでございますから、先生がたの身分等について関与するものではないと存ずるのでございます。それから二十七年度に処罰を受けたような先生がたが何人あるかというお話でございますが、これは只今実はその統計を持合せておりませんし、或いは又地方からも一々そういつた場合に報告をするようにも実はなつておりませんので、只今すぐには資料を以つてお答えはいたしかねるのでございますが、若し御必要がございますれば更に時をかして頂きまして、調製いたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/54
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055・深川タマヱ
○深川タマヱ君 じや今の問題は時間が後になつてもよろしうございますから、実情をお調べ下さいませ。
その次は日本の初等教育はやはり義務教育の年限に示されておりますように、九年間で大体間に合うということになつているのであると存じますが、それならばその次の高等学校はやはり上の学校へ行く人の準備ばかりでなく、やはり職業教育の学校がもつと殖えなくちや今日の国民生活の実情に副わないのではないかと思います。それについてどういうふうにお考えになるかということが一つと、それから又似通つておりますのでもう一つ申しますが、女子の高等学校の教育でございますが、私この頃二人の姪を預つていてひどくびつくりいたしたのです。何でも上の学校へ行くクラスにおつたようですが、簡単な洋服も縫えない、御飯も炊けない、又折角上の学校に女の子をやりましても、大学を出てから花嫁学校に行かなければ実際間に合わんのじやないか。余り行き過ぎだと思うので、やはり簡単でもいいから、高等学校になりましたら、女子にもたとえ上の学校に行く子供にも少々ご飯を炊けたり簡単な着物を縫える教育を施すのが、今日の国民生活の実状に副うのじやないかと思うのでございますが、これに対してどういうお考えをお持ちですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/55
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056・田中義男
○政府委員(田中義男君) 私からお答え申上げます。高等学校のあり方についてのお話でございますが、建前からいたしますれば、決して大学の準備学校でも何でもございませんで、高等学校自体が普通教育を受けるための学校としてこれは完成教育になつているのでございます。ただ実際問題として次の大学に進むものも相当ございますので、勢い大学入試を目標に教育を進めて行くということも相当ございまして子の点の調整が私どもも常に心を解いているのでございます。特にそれによりまして職業科或いは実業教育関係の課目等の充実については、相当これは従来非常に弱い点とされておりますが、その改善充実を図りましてそうして高校を終えましても、実社会に出て役立つようなものにしなければならん、こういうふうに考えまして、特に最近産業教育等においてもその振興法ができましてその充実を期しているようなわけでございまして、さような方面に向つて将来なお努力を続けて行きたいと考えている次第でございます。
それから女子高校の生徒が一向女でありながら女としての特別なたしなみも経ないで学校を出て行くのは面白くないというお話でございます。これは確かに各方面から非常に強い要望と又批判もあるのでございまして、具体的には家庭科の問題、それを必修にすべきではないかというような声が非常に強いのでございます。この問題については、只今教育課程審議会において高等学校の教育課程全般について実は根本的な検討を加えておるのでございます。只今私が聞いておりますところでは、可なり相当にウエイトを女子については家庭科についてもしたいという傾向に伺つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/56
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057・相馬助治
○相馬助治君 議事進行について。文相の基本的なお考えについてのいろいろの質問はあるかと存じますが、義務教育費の問題については関係法が出ておりますし、又教科書等についても関係法案が出ておりますので、これに連関してお尋ねする機会があり得る。従いまして今日の委員会はこの辺を以て散会せられんことの動議を提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/57
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058・川村松助
○委員長(川村松助君) 只今の相馬君の動議に御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/58
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059・川村松助
○委員長(川村松助君) 御異議がなければ本日はこれを以て散会いたします。
午後三時五十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X00519530709/59
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