1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十八年七月二十七日(月曜日)
午後一時五十分開会
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出席者は左の通り。
委員長 川村 松助君
理事
木村 守江君
荒木正三郎君
八木 秀次君
委員
大谷 贇雄君
剱木 亨弘君
谷口弥三郎君
横川 信夫君
吉田 萬次君
杉山 昌作君
高橋 道男君
相馬 助治君
長谷部ひろ君
須藤 五郎君
衆議院議員
中川源一郎君
国務大臣
文 部 大 臣 大達 茂雄君
政府委員
文部政務次官 福井 勇君
文部省初等中等
教育局長 田中 義男君
文部省社会教育
局長 寺中 作雄君
文部省管理局長 近藤 直人君
事務局側
常任委員会専門
員 工樂 英司君
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本日の会議に付した事件
○勤労青年教育振興法案(荒木正三郎
君外十七名発議)
○高等学校の定時制教育及び通信教育
振興法案(衆議院提出)
○学校教育法等の一部を改正する法律
案(内閣提出・衆議院送付)
○危険校舎 改築促進臨時措置法案
(内閣提出・衆議院送付)
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001・川村松助
○委員長(川村松助君) 只今から文部委員会を開会いたします。
勤労青年教育振興法案を議題といたします。発議者から提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/1
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002・荒木正三郎
○荒木正三郎君 只今勤労青年教育振興法案の御審議を願いますに当り、発議者を代表いたしまして、私から本法案の立案の趣旨を御説明いたしますと共に、その内容の概略について申上げたいと存じます。
憲法及び教育基本法は、教育の機会均等という大原則を掲げておりますが、わが国の勤労青年の大部分にとりましては、現在、遺憾ながらこの原則は殆んど実質的には保障されておりません。
試みに昭和二十七年三月の義務教育修了者について申上げますと、総数百七十二万余名のもののうち、高等学校の通常課程へ進学いたした者は、三八%にとどまり、更に高等学校の定時制課程に進みましたもの十一%、高等学校通信教育をうけるもの、〇・二%を加えましても全体の五一%、即ち過半数以上のものは、能力の如何を問わずそれ以上の学校教育を断念いたしておるわけであります。
更に又、高等学校課程を終了した者につきましても、その多数のものは、大学進学の途を阻まれておる実情であります。
さて、現在、わが国におきましては、勤労青年に対する学校教育施設といたしまして、定時制高校、高校通信教育大学夜間部、及び大学通信教育等を数えることができます。
そのうち、まず第一に、定時制高校と高校通信教育について、その現状を申し上げますと、定時制高校と高校通信教育は、農山漁村等の僻地にまで、高校教育の普及をはかる場合には、最も適当な方法であります。
殊に定時制高校は、その教育活動が夜間とか、特別の時間、時期において自由に行われるものでありまして、働きながら通常課程の学校と全く同等の教育を履修致しうるとともに、各自の好む教科を好きなだけ学べるという科月別履修の方法もありますし、また、その学校施設と教職員を活用致しますならば、社会教育講座や公民館の行う定期講座等を開設いたしまして社会教育の振興にも多大の貢献をなしうるわけであります。従つて、義務教育を終えた勤労青年教育の振興には、この定時制高校の普及拡充をはかることが最も有効適切な方法であると申さねばなりません。
ところが、現在、この定時制高校の設置者は市町村の場合が相当多数に上つておりますが、市町村はすべて定時制高校に非常な熱意をもちながら、義務教育の施設整備のために、その貧弱な財政の殆んどすべてを消耗いたしておる現状では、定時制高校には殆んど手の廻らないことは、やむを得ないところであり、都道府県もまた、全日制高校のため、その教育費の大部分を費消いたしておるため、定時制高校に対する補助や、高校通信教育を充実する余裕は持つておりません。地方財政のこのような窮状を具さに考えますと、定時制高校や、高校通信教育の維持運営や整備充実には、もはや国の援助をもとめる以外には途のないことを痛感致さないわけには参りません。
定時制高校の教職員給は、昭和二十三年度から施行されました市町村立学校職員給与負担法によりまして、義務教育諸学校の場合と同様に都道府県の負担となり、更に同じく昭和二十三年から、公立高校定時制課程職員費国庫補助法によりまして、この教職員給の四割を国庫で負担することになつたのであります、昭和二十五年、この教職員給の国庫負担が平衡交付金に移行いたします直前には、この負担額は年額六億円に達するに至りました。
その後、平衡交付金に移りましてからは、府県に対する国の財源保障は、自からきわめて不明確となりましたため、現在その教職員定数は暫定基準(乙号表)にも達しない地方が多く、そのためおのずから授業内容も不十分となり、生徒も向学の機会と意欲とを著しく減殺され、現場の教職員の苦労は名状しがたい現状であります。
第二に、大学夜間学部と大学通信教育との現状を見ますと、まず、大学夜間部は短期大学を別に致しますと、国立三校、公立三校、私立三十一校、計三七校にすぎないのでありまして、既に数年前から各地に夜間部増設の運動が盛り上つております。
国は、国立大学の夜間部につきましてその設置に要する経費は地元負担の立前を主張していますため、遂に今日までその増設の期待に応えるに至つていないことは、甚だ遺憾であると申さねばなりません。
次に、大学通信教育は、農村を初め、僻遠地等において勤労青年教育において果しております役割は、極めて重大でありますにも拘らず、今日、大学卒業課程の通信教育部をおく大学は、私立の六校だけでありまして、しかも所要経費の関係で、まだ完全に卒業資格を得るような通信教育とは殆んどなつてはいない実情であります。
しかも、これらの大学夜間部や、大学通信教育は、いずれも、その特殊性のため、教職員の負担過重の傾向がきわめて著しく、教職員給や、運営費等において、国の積極的な充実、助成の措置が是非とも必要なわけであります。勤労青年教育の施設の現状は、およそ以上の通りでございます。現在、勤労青年の就学が、きわめて困難でありますのは、只今、述べましたような教育施設の不足不備が重大な原因をなしておりますが、個人的原因と致しましては、勿論、経済的理由を挙げなければなりません。就学困難な者に対して、育英資金貸与の大幅適用や、授業料の減免或いは教科用図書等の補助等によつてそれぞれ、奨学の措置を講ずる必要がありますことは、言を俟たないところであります。併し、勤労青年の就学問題について更に注目いたさねばならないことは、最近、職場におきまして、職制強化や労働強化の影響を受け、定時制高校或は夜間大学に就学する勤労青年に対する圧迫が次第に激しくなつておる事実であります。勤労青年に対しまして、真に教育の機会均等を保障いたしますためには、奨学制度の確立と共に、更に進んで就学を保護する措置も又現在必要となつてきております。
およそ以上のような勤労青年教育の実状に鑑みまして、その振興のため、最も有効適切な法的措置を此の際、早急に講ぜねばならぬと存じ今回、本法案を発議いたした次第であります。
次ぎに、法案の骨子を申上げますと、本法案におきまして、勤労青年と申しますものは、義務教育を終了したのち、働きながら、学校教育法に規定された学校の教育を受けるものを指しております。
次ぎに、勤労青年教育と申しますものは、定時制高校の教育、高校通信教育、大学夜間学部教育、及び大学通信教育をさしております。
本法案は、まずこのような勤労青年教育につきまして、国が地方公共団体と協力して、その振興を図る任務を持つことを、明らかにいたしますと共に、充実した勤労青年教育を実施して行くためには、国及び地方公共団体において、何よりも、それに従事する教職員の員数及び待遇について、特別の考慮を払わねばならぬことを規定いたしました。
次ぎに、本法案が措置を講じました具体的な、勤労青年教育の振興方法について申し上げますと、
まず第一に、現在勤労青年教育において最も重要な役割を演じております定時制高校及び高校通信教育を普及充実いたすために各種の法的措置を定めました。
即ち、先ず、都道府県は定時制課程の高等学校を、できうる限り広汎に設置して、高等学校の勤労青年教育の普及充実に努めねばならないことを規定致しますとともに、公立の高等学校の勤労青年教育に従事する教職員の給与費等につきましては、地方公共団体等において要する経費の実支出額の二分の一を国が負担することといたしました。
次ぎに、国は公立の高等学校が、勤労青年教育を行うために必要な施設設備で、文部大臣の定める基準に達していないものを、その基準迄、引上げようとする場合等には、予算の範囲内において必要な経費の二分の一以内を負担することにいたしました。私立の高等学校が、勤労青年に対して教育を行います場合にも、教職員の給与費や施設設備費につきまして国は予算の範囲内において、その経費の二分の一以内を補助することができることになつております。
第二に、大学の勤労青年教育につきましては、国は国立大学の場合は、夜間学部の設置及び通信教育の実施、並びに勤労青年教育に必要な施設設備の整備充実に努めねばならないことを明らかにいたしますと共に、公立又は私立の大学については、予算の範囲内において、勤労青年教育の振興のため、特に必要と認められる経費の二分の一以内を補助することができるようにいたしました。
第三に、勤労青年の就学の奨励と保護につきましては、授業料の減免、学資の補助、及び教科用図書に関する特別の考慮や措置につきましてそれぞれ規定をおきますと共に、就学の保護に関しましては、使用者に一定の義務を定め、特に高等学校の定時制課程教育につきましては、罰則を設けて、就学の保護を更に適確に致すこととしました。
以上を以ちまして、法案の内容の説明を終りますが、本法案は附則におきまして従来、殆んど国の助成対象から除かれて参りました各種学校を取上げ、一定の場合、国はその行います勤労青年教育に類する教育に対して必要な経費を補助しうることに致しました。
なお、施行期日について一言申上げますと、本法案はその施行を昭和二十九年四月一日からと致しました。
以上が、この法律案の提案の趣旨及び内容の概略でございますが、勤労青年教育のまことに憂慮すべき現状にかんがみまして、慎重御審議の上速かに議決下さるよう、切に御願いを申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/2
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003・川村松助
○委員長(川村松助君) 次に高等学校の定時制教育及び通信教育振興法案を議題といたします。発議者から提案理由の説明を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/3
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004・中川源一郎
○衆議院議員(中川源一郎君) 今回中川源一郎外十八名から提出いたしました高等学校の定時制教育及び通信教育振興法案につきまして御説明を申上げます。
昭和二十三年度に旧制中等学校の制度が改革されまして新制高等学校の制度が生まれました際に、勤労青年のための教育制度といたしまして高等学校に定時制の課程と通信教育とが設けられましたことは御承知の通りであります。
この定時制の課程と通信教育とは全日制課程の教育とその内容において、全く同等のものを授けるものでありまして、教育基本法にいう教育の機会均等を実現することを目標とするものであります。
この二つの教育は『働きながら学ぶ恵まれない青年達』の向学心を振い起しまして、昭和二十三年度定時制課程の生徒数十七万であつたものが昭和二十八年におきましては、約五十八万に、通信教育においては昭和二十三年に九千でありましたものが、昭和二十八年におきましては約三万四千というように、生徒はこの五年間に著しく増加しているのであります。
このように増加いたしましたのは、定時制課程では、特に地方の実情に応じた教育の実施に重点をおいておるのでありますから、学校所在地域の産業を振興させ、産業においても文化においても真に村作りの中心となる青年の育成に寄与し、その成果が大いに認められた結果であります。又通信教育につきましては、通学距離の関係や勤務の都合その他経済上の事由によりまして定時制課程さえも通えない勤労青年の要求に合致したものであります。
従つて、達識の地方公共団体では大いに定時制課程を設置し充実いたしまして、一そう地元の産業・文化・教育の振興を図りたいと願い、勤労青年達も、定時制教育や通信教育によりまして将来国家社会のために有為な人間になるため大いに自分の力を伸ばしたいと考えておるのでありますが、定時制課程も通信教育も地方財政の困難によりまして、現在のところ、すこぶる貧弱なのでこれらの青年の熱意に到底応え得ない窮状なのであります。
例えば、定時制分校では理科設備などは全然なく黒板と白墨で授業しておるものも多く、家庭科教育に必要なミシンも僅か一台で数十人の女生徒が学習することなどは、珍らしい事例ではありません。
又、通信教育につきましては、昭和二十七年度まで実施していた科目は国語、漢文、解析I、II、幾何、地学、一般社会、世界史、日本史の九科目でありましたが、御承知のように通信教育では教科書の他に学習指導書がなければ授業ができないのでありますが、学習指導書の発行されたものは僅かに、国語、解析1、地学、の三科目に過ぎません。これは、学習指導書の需要部数が少いため、企業として成立たない、その発行を引受けるものがないという実状であります。
通信教育におきましては、本年度更に十二科目を増加しておるのでありますので、学習指導書が順調に発行されるよう、国庫補助を行う必要があるのでありまして、かように盛り上つて来ました勤労青年の向学心を満足させ、且つ、これら青年にとつて定時制課程及び通信教育が魅力のあるものとするためには、定時制及び通信教育の設備を充実すること、通信教育の学習指導書の発行を促進し、巡廻指導の旅費を確保し、受講生に対する直接指導の回数を増加することなど必要でありますが、地方財政の現状では急速にこの要求を満すことができないので、国庫補助金を交付して振興のための措置を講ずることが急務であると考えられます。
右の理由によりまして、ここに高等学校の定時制教育及び通信教育振興法案を提出する次第でございます。
次にこの法律案の骨子につきまして御説明申上げます。
第一に、この法律案は教育基本法の精神に基きまして多くの勤労青年に高等学校の教育を受ける機会を与え、働きながら学ぶことに誇りを持つことの信念を確立させ、一般教養と職業能力の向上に貢献するよう、定時制教育及び通信教育の振興を図ることを目的とするものであります。
第二に、右の目的を果すためにこれらの教育の実施上、困難に当面しておりますところの、公立高等学校の定時制課程及び通信教育の設備の充実と通信教育の運営に必要な経費に対しまして、又通信教育の学習指導書の編集に対しまして、予算の範囲内で補助を与えようとするものであります。
以上この法律案の提案理由とその内容の骨子につきまして御説明申上げました。なにとぞ慎重御審議の上速かに御賛同下さいますようお願い申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/4
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005・川村松助
○委員長(川村松助君) 次に学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。本法律案は去る七月三日に提案の理由の説明を聴き、質疑は本日が初めてでございます。御質疑のあるかたは御発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/5
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006・相馬助治
○相馬助治君 只今議題になつております学校教育法の一部を改正する法律案の内容を成しているものは、教育書の検定をどうするかという日本の文教政策にとつて基本的な極めて大きな問題を含んでいるのでありまして、私どもとしては、教科書検定についての従来のあり方、又その結果もたらされた影響、よかつた点、悪かつた点、そういうものを仔細に調べないことには、この法律に賛成するというわけに参らないわけです。この際、私はお聞きしたいのは、一部新聞に教科書は国定教科書に戻つたほうがよろしいのであるというような省内の一部には意見がある、かようにも聞いておりまするし、いや、むしろ最初からの筋途上、この際一挙に府県教育委員会にこれが検定権を持つて行くべきである、こういう議論もこれに対立してあるというようなことを聞いておるのでありますが、政府が現在教科書の検定について考えていることは、この法律案の形式によつて窺い知ることができるのですが、基本的な問題として、この教科書の検定の全般の問題に対してどのような将来方針を以て臨まんとするものであるか、このことについてこの際局長より篤と承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/6
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007・田中義男
○政府委員(田中義男君) 教科書の検定制度は、御承知のように、終戦後教育の民主化の線に沿いましてとられました非常に重要な文教政策の一つでございます。只今文部省といたしましては、その趣旨に副いましてこの教科書検定制度を実施し、なお将来もその線に沿つてこれを運用して行く方針でございまして、お話のようにこれを国定制度に変改をするというような考えは只今文部省としては持つておらんのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/7
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008・相馬助治
○相馬助治君 その問題について突込んでお尋ねして二、三の疑点を明らかにしなければなりませんが、その前に、現在教科書の採用について世上いろいろ問題があることは、文部当局はお知りになつていると思うのです。現在の教科書の採用の方法について文部当局はどのような見解を持つているか、これについて何か改めんとするような意図があるかないか、あるとするならばどのような点について将来考慮して行こうとするものであるか、これらの点について総括的に一つお示しを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/8
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009・田中義男
○政府委量(田中義男君) 御承知のように、現在教科書の採択権は、これは教育委員会法でも明記いたしておりまするように、教育委員会が持つております。その教育委員会が採択をいたします場合におきまして、教科書は当然これはそれぞれの学校の教育課程に最も即したよい教科書を採択する必要がございますので、教育関係者の意見をも十分に聴取し、又それを元にして採択されることが適当であろうと考えておるのでございますが、その間実状におきましては間々問題があるようでございまして、これらにつきましては、文部省として、只今申しましたような線に沿つて指導助言をいたして参つておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/9
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010・相馬助治
○相馬助治君 教科書の採択については、そうしますと結論的には現行法通り府県の教育委員会に最終的な責任を負わせていることで足れりとするものですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/10
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011・田中義男
○政府委員(田中義男君) 採択の問題につきましては、教育委員会が現場の教育関係者の意見を十分に聴取し、それに基いて採択することが適当であると考えておるのでございまして、それ以上制度的に只今これに改変を加えるということは考えておりませんのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/11
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012・相馬助治
○相馬助治君 そのことについて私は意見を挟むことはこの際厳に戒めまして、ただ実情から推して文部省の意図を尋ねたいのです。と申しますのは、教科書の採用については、現行法によつて府県の教育委員会に最終的な責任を負わせ、世上いささかの批判は聞いておるけれどもこれでよろしい、これに指導助言をするだけでよろしいと、こういうふうに把握していると言つておりますが、そうするならば、当然この学校教育法の一部を改正する法律案は、むしろ府県の教育委員会というものの責任を倍加するようにその教科書の検定権を現在より改正するならば、府県の教育委員会にその実質的な力を与えるという方向に進んで行くことが筋から言うと民主的であると、こういうふうな議論が成立つと思うのです。私がこういう意見だというのじやないのですよ、そういう議論があり得ると思うのです。そういうものについては一体どういうふうにお考えになつておるのですか。首尾一貫した態度を私は文部省に要求いたしますが故に、あえてこのことをお尋ねしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/12
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013・田中義男
○政府委員(田中義男君) お話の検定と採択とは、これは別に考えておるのでございまして、採択は、これを実際にそれぞれの学校に使用する立場においてどれが適当であるか、殊にそれぞれ地方の実際の教育に最も適当なものを選定するという意味におきまして、これはそれぞれ地方において御決定になるのが適当だと考えますけれども、併し検定となりますと、これはともかく全国的な視野に立つたところの教育性というものがやはり中心となるべきものであると考えるのでございまして、さような意味におきまして検定権の問題についてこの改正案を出したような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/13
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014・相馬助治
○相馬助治君 検定とそれから教科書の採用とではもう本質的に違うというようなことは私もよく存じておるのです。私が今問題にしておるのは、適切なる指導助言をしなければならない文部省が、現在の教科書の採択に当つての幾つかのスキャンダル、或いは方法についての問題、或いは世の中の識者、父兄を含めてですね、こういう人たちの批判、こういうことを耳にしていると思うのです。にも拘わらず、やはり採択権については、明らかに地方の府県教育委員を指導助言すればそれでよろしいという態度を堅持している文部省が、この際本法律案の一部改正法律案を出して教科書の検定権を文部大臣の下に一手に掌握するということは、理窟の上から言うと批判を免れ得ないと思うのです私は。むしろそれならば、緩みのある、現行法のように文部大臣にも権限がある、併し地方の教育委員会においても、検定の能力を持つておるところにはそれが許されるという現行法のほうが妙昧があるということが理論上は言い得ると思うのです。にも拘わらず、今般こういうふうな一部を改正する法律案を提出した本当の文部省の肚というのは何なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/14
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015・田中義男
○政府委員(田中義男君) 教科書の採択を廻りまして、いろいろ世上批判のあることは承知いたしておりますし、又種々問題のあることも承知いたしておるのでございまして、そのためには業者の間におきましても当然そのことに関し相当な反省をいたし、なお特に本年の三月には業者を以つて社団法人の教科書協会を組織し、そうして出版倫理の推進のために非常に努力をいたして参つておるのでございまして、必ず将来その実績を上げることと期待をいたしておるのでございます。それからなお検定について、国と地方と両方でその権限を持つても差支えないのじやないかと、こういうお話でございますが、実際問題として、この検定をいたしますためには、相当な行政機構の問題、或いはそれに伴う経費の問題と、なかなか相当なこれは費用或いは人手を要することでございますので、これが国でもやり、地方でもやる、そうして而もそれが一方で合格したとか、又他方で不合格になつたとか、これは実際問題としてむしろ非常な混乱を来す虞れもございますので、従つて私どもはどちらかに一つにすることが適当であり、これを一つにするとして、国のほうに一本にすることが適当である、かような結論に達しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/15
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016・相馬助治
○相馬助治君 私はこれについていろいろ議論がありますが、それらは関係法規を参照して、又次の機会に重ねて質疑をいたします。基本的な問題として私は質疑を以上にとどめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/16
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017・荒木正三郎
○荒木正三郎君 教科書の検定については、現行法においては教育委員会がやるようになつておる。で、当分文部大臣がやるというのは現行法の建前であります。ところが今度は、教育委員会の検定権を否認して、そうして文部大臣一本で検定をするというふうに変えられたわけですね。その理由として挙げられているのは、教科用図書の内容の充実と教育水準の維持向上を図るためであると、こういう理由を挙げておられるわけなんです。そうすると、この理由から見れば、教育委員会に検定権を持たせれば詰らない教科書が出て来る、だからいい教科書を出すためにはどうしても文部大臣にしなければならないと、こういうことになると思うのですね、そうすると現行法ができたとき、これは教育委員会に検定権を持たすというときにも、若し今の見解が正しいとすれば、それは予知された問題だろうと思うのですが、現行法のときの文部省の考え方を一つ改めて説明して頂きたいと思うのです。教育委員会に検定権を持たせればどうもよくない教科書ができるのだと、だから文部大臣に持たせなければいかんという今度の改正ですね、当初そういう考え方がなかつたかどうか、一つお聞きしておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/17
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018・田中義男
○政府委員(田中義男君) 最初の、文部省が検定しないで地方の検定ではいい教科書ができないというようにこの提案理由ではなつておるがというお話でございますが、必ずしもそういう消極的な実は気持ではございませんで、やはり将来の充実、維持、向上と、こういう積極的な考え方から制度改善を考えておるのでございまして、決してさような極めて消極的な気持でもございません。
それからなお立法当時に一体どういう考え方であつたか、今考えておることは当然そのときに考えるべきじやなかつたかというお話でございますが、実は私当時のことを甚だ相済みませんけれどもよく存じませんのでございますが、併し当事の実情からいたしましても、ともかく法律としては一応教育委員会法にかような規定を設けて、而もこれも必ずしも直ちには施行いたしておりません。と同時に、又学校教育法におきましても監督庁と言つておつて、而もその監督庁をこれを当分文部大臣とすると、こういうふうな規定になつておることから考えまして、やはりここに数年の経過を辿りました今日におきまして、ここに私どもとして将来の検定制度の上から言つて、これを健全に育てて行きますためには、かような改正案を出しますことが最も適当である、かような結論に達しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/18
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019・相馬助治
○相馬助治君 関連して……。今の荒木さんの意見に対する田中局長の答弁は甚だ私不勉強だと思うのです。本法案が立法された当時の実情を詳しく知らないと言うけれども、それではこの委員会は通らない。それならば当時の事情を知つている人をここへ出して来なさいというような理窟が出て来るのです。私が申し上げちや恐縮ですが、この法律案ができたときには、府県の教育委員会に教科書の検定権は持たせることが正しいのだと文部省は言い切つているのです。ところが現実にはさようなることは出発当初の府県教育委員会に求めることができないから、経過年度をとつて、その間に地方の教育委員会が教科書検定をし得るまでの実力を作るように文部省は指導すると、こう言つておるのです。ですから経過を見てやるというならば、当然その文部大臣が権限を持つていた分をはずして府県へ任せるということのほうが筋から言うと正しいのです。私さつきなぜそれを言わなかつたかということは、理窟はそうだが、現実にはその理窟だけが正しいと本員は思えないから、私はその自分の意見を挾んで言わなかつたのですが、田中さんが当時のことを知らないというから、当時のことはこういうことだということを私はここで附加えて、そんならばその間文部省は何していたのですか。それから当然府県の教育委員会に任せるようにするのだという意図を以つてこの経過年度をきめたので、今日逆行するにはするだけの理由がなければならないのですから、それだけの見解を承わらなくちやならないということになるのです。これについて一つ御答弁を煩わしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/19
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020・田中義男
○政府委員(田中義男君) 私は只今申上げましたのでございますが、一応余りに想像的なことを申上げるのも如何かと思いまして率直に御答弁いたしたのでございます。文部省としては、お話のようにこの検定制度を育てて行くと、こういう考え方で、そうして文部省がやる場合と、時には教育委員会において府県がおやりになる場合と、この利害得失等について、指導しながらも相当実情を見て私は検討して参つておることと承知いたしておるのでございます。その利害得失、検定制度の将来というものを考えました結果、ここにあえて新たな結論としてかような法案を提出することになりました。かような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/20
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021・須藤五郎
○須藤五郎君 両委員の質問を聞いていますと、どうも率直に言えば、各府県の教育委員会の検定に対して信頼がおけない、過去の業績に照らして信頼がおけないから文部大臣一本の検定にするという意向らしいですが、具体的にどういう点が信頼できないのか、そうして又、文部大臣一本の検定にしたら、果してそれが信頼がおけるという確信がどこから生れ出るのか、それを聞かしてもらいたい、これは由々しい問題だと思うのです。あなたたち文部省として、各府県の教育委員会に対する不信任案と同じだと思う、だからもつと具体的に、不信任案を突付けるのならば具体的にこういう点だということを挙げなかつたら不信任案にならない、だからそこを具体的に述べてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/21
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022・田中義男
○政府委員(田中義男君) これはただ信、不信という実は問題ではないのでございまして、事柄の健全な発達、或いはその運営の点から申しまして提出案のようにしたほうがいいと、こういう考えなんでございます。そこでそれならどういうふうなことを具体的に考えているかということを申上げますなら、先ず第一には、先ほども申しましたように、これが府県で、府県毎に検定されるということになりますと、勢い教科書の府県版ができると、こういうふうに相成るかと思うのでございます。そういつたふうな場合に、ともかく教育、殊に高等学校、更には義務教育になりますと、これについては全国的なやはり視野に立つた教育性というものが薄れては困るわけでございまして、そういつたふうな点からその教育水準の維持向上を図つて行くと、こういう面、それは延いて教育の機会均等ということにも結び付いて来る事柄でございまして、従つてここにやはり府県版というようなことになる虞れのある府県検定よりも、全国一本にして、中央においてこれを検定する、そのことが又同時に結局地方における学力のアンバランスというようなことをも防ぎ得ることだと思うのでございます。それからなおこれは社会にいといろ御批判を受けておりますように、定価の問題でございます。この定価になりますと、これは申すまでもなく需要供給の原則で、従つて需要量が極限されて減りますということは、それぞれの教科書については非常に値上りを来たすわけでございまして、これを実際について調べて見ますと、各府県の児童の数は、平均大部分の県が一学年について四万以下でございます。十万を超えておるのは、東京と大阪、北海道しかございません、一番少いところになりますと、鳥取県でございまして、これは中学校が一万三千人、小学校において一万二千人という一学年の児童しか持つておりません。そうしますと、仮りに四万人の児童がおつたにいたしましても、それに使用させます教科書というものは、恐らく少くとも数種類のものが採択をされることになりましよう。そうすると一種類の教科書についてせいぜい一万というような需要数になりますと、これは非常に教科書としても高いものにつきますので、業者について聞きますと、大体黒の、いわゆる普通の活版刷りにいたしまして二倍、これを色刷し、平版でいたしますと三倍にもなるというようなことが予想されるそうでございます。のみならず、機構から申しましても、各府県四十六県でそれぞれ、ここに検定制度を布かれることになりますと、業者の立場になりますれば、従来一カ所に対して手続きその他をすれば済むものが、四十六都道府県に対しまして教科書検定のためにいろいろ経費をかけ、人手を要してやる、そうすれば費用から申しましても四十数倍の費用になつて来る、こういうふうなことになりますから、非常に高いものにつくのでございまして、従つて定価の点から申しましても、只今最も御批判を受けておる一つの事柄でございますが、これも非常に支障が来るのじやないか、こういうことがあるのでございます。
それからなお先ほどもお話がございましたが、教科書の採択或いはその選定につきまして、いろいろ、弊害の起ることも心配されるのでございますが、これが府県の検定となりますと、勢い各業者におきましては非常に死活の問題であるということが、もつとこれは切実になつて参りまして、従つて公正なる競争を一層不公正なものに導く虞れがないでもないと考えられるのでございます。さようなわけからいたしまして、実際問題からいたしましても、又教育的な立場から考えてみましても、この際文部省提案にいたしておりまするこの検定制度の改革が適当であろうと、かように存じておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/22
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023・荒木正三郎
○荒木正三郎君 この問題につきましては、私は文部大臣に質疑をしたいと考えておりますので、御出席をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/23
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024・川村松助
○委員長(川村松助君) 文部大臣今参られます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/24
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025・荒木正三郎
○荒木正三郎君 ただそれ、お見えになつてから質問を続行いたしますが、もつと私は端的にお伺いしたいと思います。というのはですね、教育委員会法の第五十条の第二項「文部大臣の定める基準に従い、都道府県内のすべての学校の教科用図書の検定を行うこと。」これは明らかにすべての学校の教科用図書の検定は教育委員会がするとこれは明記されておるわけなんです。これは政府の提案になつて立法がされておるわけです。この法案を出したときは、政府は、教科用図書の検定は教育委員会がすべきであると、こういう考えに立つて行なつたものであります。ところが、今度の改正案では教育委員会にやらすことはいけない、文部大臣がしたほうがいいのだというふうに変つているわけなんですよ、そうすると文部省の考えは、根本的に変更を来しておるわけでありますが、なぜそういう変更を来したかということと、文部省の考えが、この現行法は誤りであつたと、こういうふうに考えているわけですか。それをはつきり端的におつしやつて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/25
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026・田中義男
○政府委員(田中義男君) 私どもは、この現行法が誤りであるというふうにはつきり考えておるわけではございませんが、併し我々がその後実際問題として運用して来、なお検討し、将来をも考えました場合に、ここに新たな改正を要する必要があると、こういうことなんでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/26
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027・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私は誤りでなければ変える必要はないと思うのですよ。検定権を教育委員会に渡してあつたのが、それではうまく行かない、だから変えるのだというのなら理由がわかります。併し教育委員会に持たしておつてもこれは誤りでない、いいのだということであれば、どうして変える理由がそこに生れて来るかということです。これはもう少し申上げますが、今まで教育委員会は教科書の検定を実際に行なつたことがあるのですか、少くとも私はないと思うのですよ、それは暫定措置として文部大臣がやるようになつていますから、で、今日まではすべての検定教科書、すべてと申しませんが、少くとも義務教育に関係するような教科書は文部大臣が全部やつて来たと思うのです。教育委員会は何もやつておられんですよ、それを過去のいろいろな経験に鑑みて変えて行くのだと、教育委員会がやつて変な教科書を検定されておるというのだというふうな事実があれば、それはそういう議論も立つて来ると思うのです。全然そういうことはやつておらない、文部大臣一本で検定をやつて来られた。そうして今変えるというからには、教育委員会でやらしてはいけないのだというはつきりした理由がなければ、こういう法案は出て来ないと私は思うのです、ですから、そういう点を明白に僕は説明してもらいたいと思うのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/27
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028・田中義男
○政府委員(田中義男君) 法律を作りました際にはそれぞれの理由があるのでございますが、併し我々として検討をいたしました結果において、これを新たな視野から改善をし、或いは改革をし、新たなここに改正案を提案するということもこれは理由のないことではないと思うのでございますが、お話のように、地方検定をやつたというこの事実はございません。併し現在の状況からいたしまして、それはよくないので、新らしい改正案によつたほうが適当である、かような実は結論に達しておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/28
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029・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私のお尋ねしておる点についての答弁にはならないと私は思うのですがね。私の考えは、今直ちに教育委員会に検定権を持たすということが今の教育委員会ではやりにくい、だから文部大臣の検定権をもう少し延すのだと、こういう見解ならこれは私は了承しないことはない。併し根本的に、教育委員会に検定権を渡したのを取上げてしまうとこういうことになれば、これははつきりとした理由がなければならん、府県単位でばらばらになるとか、金が上るとか、そういうことは初めからこの検定権をどこに移すかというときに十分論議されておるわけなんです。そういうことも考慮されて、そうして教科書検定は教育委員会がやるのが正しいとこういう結論が出たから、こういう今の法律になつておるわけなんです。それをもう今は教育委員会に渡して悪いのだと、文部大臣にもう取上げなければいかんのだと、こういう議論になれば根本的に方針が変つて来るのですからね、それだけの理由がなければならんと思う。而も先ほど、経験ということは全然ないわけです。教育委員会が教科書を検定しておらないのですから今までは。だから教育委員会がやつた決定はうまく行かなかつた、そういう理由は全然ないのですから、私は教育委員会に教科書検定をやらしてはいけないのだという新たなるはつきりした理由がなければ、これは困ると思うのですよ。そういう点について一説明を願いたい、こう言つているのですよ。もつと端的に言うならば、教育委員会に検定権を持たしたことは誤りであつたと認められるのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/29
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030・須藤五郎
○須藤五郎君 僕が質問したのもその点を質問しているのです。ところがこれまで教育委員会ですでに検定をやつたことあがつて、その結果がいろいろ府県版ができたり、いろいろどうのこうの、面白くないことがあつたからこれを変えるのだという答弁ですが、今荒木君のお話を聞いていると、教育委員会が検定したことはないという、ないものを仮定にしてそうしてそういう権限を大臣に一本に取上げてしまおうというのだつたら、これは以つての外だと思う。而も健全なる発達というのは、今まで大臣がやつておつて、それじや健全な発達がなされてなかつたのか、教育委員会がやつて健全な発達がうまく行かなかつたから大臣が一本にするというのならばまだ理由がわかるけれども、これまでの大臣一本にやつていて、そうして健全な発達が行かなかつたというなら、今後又大臣がやつても健全な発達がいかんということになるのだが、どうもそこらの答えがはつきりしない、だから荒木委員の答えに対すると同時に、その点をはつきり答えてもらわないと我々わからない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/30
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031・田中義男
○政府委員(田中義男君) 先ほど二、三実際問題としての支障の起ると予想されることについて申上げたのでありますが、現在採択の行われておるこの実際問題からいたしましても、この採択、選択については、無論先ほど申しましたような見解でおりますけれども、併しそれらから考えてみましても、車にここに検定権そのものの関係をこの採択権の所在とくつ付けるというようなことになりまますと、一層いろいろな事態において適当でない、かようなことをも実は予想いたすのでございまして、従いまして過去の法文が誤つたというわけではございませんけれども、併しその後の事情等によつて我々検討した結果、ここに新たな結論を以つて改正案を作つたと、かようなことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/31
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032・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私はこの問題についてはもう一点問題がある。併しこれは事務的な答弁を求める性質の問題でないと思うのですがね、どうも先ほどからいろいろ懇切に御説明は願つておるわけなんですが、どうも教育委員会に与えた検定権を今度は取上げるということについて、はつきりとした理由が私どもにはよくわがらない。もう一つ申上げますと、これは局長にお伺いするのですが、まあ文部省はよく教育の中立性ということをおつしやいます。私はこの文部省のおつしやる中立性ということはよくわからないのですが、まあ一遍ゆつくりお伺いしたいと思つておる問題でございますが、少くとも憲法や教育基本法の精神から言つて、教育が一党一派に偏してはならないということは、私は当然のことだと思うのです。そこで日本の政治を考えて見ると、これは政党政治です。いわゆる一党或いは数党による政治が行なわれるわけなんです。政党の責任政治、これが憲法の建前になつておると私は思うのです。そういうことから考えて、教育が政党政派に利用といいますか、そういうふうなものに禍いされない、そういう趣旨の下に教科書の検定権を私は教育委員会に渡したのだろうと思うのですがね、そういう大きなところから私は来ていると思うのですが、これは当初この検定権を教育委員会に渡したときの見解じやなかつたかと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/32
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033・田中義男
○政府委員(田中義男君) 教育委員会制度、これがお話のように、これはもう教育委員会法の第一条にはつきり明記されているところでございますから、申上げるまでもございませんので、お話のような趣旨において教育委員会制度がとられまして、やはりここに教科書検定という問題も従来特に無論国定でやつておつたわけでございますから、それをそれぞれ各府県の決定権を持たしたということは、やはりその線に沿つたものだろうと思います。併し他面それならば私ども今回企図いたしましたこの改正案によつて……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/33
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034・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私の質問だけで結構ですから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/34
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035・田中義男
○政府委員(田中義男君) まあそう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/35
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036・荒木正三郎
○荒木正三郎君 そうすれば教育というものが一党一派に左右されないとか、そういうことは原則は非常にいいものだと思うのです。そういう趣旨から教育委員会というものが生まれて来て、そうしてそういう同じ趣旨から教科書の検定制度というものも作られて来たと思うのです。それをまあ局長は肯定をされたわけなんですね。そうすると若しこれを変えるということになると、その根本趣旨を変えなければならんと思うのです。教育というものを政党政派に超越してやつて行こうという趣旨を今度は政党政派に利用されても、左右されても構わないと、こういう考えが出てこないと、私は文部大臣に移すという考えは出て来ないと思うのですがね。どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/36
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037・田中義男
○政府委員(田中義男君) お話は、中央にあれば政党政派の左右するところとなり、これを地方に持つて行くならそういうことがないのだ、こういうふうなお話にも受取れると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/37
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038・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私は誤解しないようにしてもらいたいと思います。私は初め言つたように政治は政党の責任政治でやつて運行されているのです。教育委員会は政党じやないですよ。これはだから教科書の検定制度が教育委員会に移されているのも、教育行政が教育委員会によつて運営されているのも政党政派に左右されないという原則の上に立つていると思うのです。そういう趣旨においてこの検定制度がきめられて来ていると思うのです。何も中央は政党に左右される、地方はされていない、そういうものじやなしに、内閣というものは政党の責任政治ですよ。教育委員会というのはそんなものじやないです、性格か違うのですから、そこで教育委員会に教科書の検定制度を任かしておるわけなんです。これを否定するということは、そうして文部大臣に移すということは、これは到底根本的な考え方に変更を来たすことになるのじやないかということを言つているわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/38
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039・田中義男
○政府委員(田中義男君) 教育委員会法が制定されましたのは、確かに先ほど申上げましたように、教育民主化の線に沿つたものであることは、これは当然で、誰も否定するものがないと思います。ただ現実に今回のこの検定権に関しまする新たな措置が、それでは民主化の線に逆行するじやないか、こういうことになるかと申しますと、これは御承知のように検定そのものが、決して文部大臣が検定を行うとなりましても、文部大臣がこれを勝手にやつておるわけじやございませんで、それには御承知のように教科用図書検定調査審議会というものがございまして而もそれが二つの審議会に分れまして、双方根本問題を検討し、又具体的には検定そのものの事務をも行なつて、そうしてその答申をなしまして、その答申に基いて大臣が検定をする。而もその検定事務そのものは、御承知のように委員が各地方からそれぞれ選出されました教育委員なり、或いは学識経験のかたがたによつてその調査検定事務をなされておるのでございまして、決してその審議会の運用が適正である限り、お話のように必ずしもそれを以て民主化に反したものであると、かような結論を下されるのじやないかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/39
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040・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私は、この二つの問題はこれは大臣にお尋ねをしなきやならん問題だと思うのです。私はもうほかの問題を、余り細かい問題を尋ねようとは考えておりません。従つて今の質問内容はあらかじめ大臣にお話し願つて、十分答弁できるようにして頂きたいと思うのです。ただちよつと意外に感ずるのは、教科用図書の検定については、教科用図書検定審議会ですか、これがあつて、これが民主的にやられているのだということになると、大臣は大体盲判を捺しておる、これできまつたことをそのままやつているのだと、そういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/40
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041・田中義男
○政府委員(田中義男君) よほど重大なる事故のない限りその答申を尊重してやつておるのが実際でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/41
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042・荒木正三郎
○荒木正三郎君 やはり検定権は文部大臣が持つておるわけなんで、将来も持つということになれば、それは教科用図書審議会は、私は諮問機関に過ぎないと思うのですよ。諮問機関に過ぎない。現在も諮問機関であろうと思う。従つて私のさつきお尋ねした原則論については、何の影響も私はないと思うのです。そういう意味で、私は技術的なことをお聞きしても余り意味がないと思うので、大臣が見えてからこの点について質問したい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/42
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043・相馬助治
○相馬助治君 私がさつき質問したのは、文部省のこの案を私は否定して、その立場から聞いているのじやなくて、私はやはり現在の教科書の在り方ということは非常に重大な問題で、文部省自身がこういうことを考える経緯というものもわかるのです。私は併しこの委員会にこの法律案を諮るのならば、私は率直に言つて文部当局はもつと資料を与えてやらなけりやいかんと思うのです。従つてああいう質問が繰返されるのですね。荒木委員の質問の最後の項に行つて、田中局長はやつと審議会の話をされている。世上、文部大臣が今度は権限を持つという場合には、問題はそれらの審議会を廃して、文部当局それ自身の意思を以てきめるのかきめないのかということがむしろ問題なんです。むしろ今までの検定制度審議会というものは、文部省にある審議会のうちでは最も私は民主的にできていると思うのです。日教組の代表なんかも要求通り入れている、最も私は民主的にやつて来たと思うのです。そういう制度というものも、この委員会に資料として知らせて、そうしてこういうふうなものについては将来制度審議会はどう持つて行くのだという資料を我々に与えて、そうしてこの法律案の審議にかかれば、事態は又別なものになると思うのです。それがないから当然、さつき須藤さんが言うように、文部大臣がその権限を持つということをこの法律で規定するならば、あとは文部当局が勝手にものを処して行くのだつたらば、これは極めて問題は重大であるとして、この問題はいろいろ紛糾すると思うのです。従いましてここに当然教科書の検定課の課長もいると思うのですが、私はこの種法案を出すときには、もつと資料を出し、そうして荒木委員から質問のあつたことなんか当然予想されることなので、これに対しては整然と説明ができるようにしておいて頂きたいと思うのです。私もあと局長に聞くことはないのです。私も大臣にあとは聞かなければならん問題なので、一応この段階で文部省に御注意申上げるというのは筋じやないが、あえて私は御注意申上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/43
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044・川村松助
○委員長(川村松助君) 今大臣が来るそうですから、それまで休憩しましようか。御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/44
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045・川村松助
○委員長(川村松助君) 速記をやめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/45
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046・川村松助
○委員長(川村松助君) 速記を始めて。大臣が見えましたから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/46
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047・荒木正三郎
○荒木正三郎君 先ほどから田中局長にお尋ねをした点と重複するわけですが、教科需検定の問題について大臣にお伺いしたいと思うのです。その第一点は、教育の、何といいますか、在り方と申しますか、よく文部省は教育の中立性ということを主張されておるようであります。教育基本法の第一条か二条であつたと思うのですが、教育は一党一派に偏してはならんということがございます。私どもも教育の問題が一党一派に左右されるとか、利用されるということがあつてはならんと思うのです。そういう趣旨から、教育委員会の制度が生れて来たものと考えてるわけなんです。それでこの教育委員会の制度というのは、これは我が国にとつては戦後の新らしい行き方であつて、その考え方というものはそこから来ているのじやないかというふうに私は考えているわけなんです。その教育委員会に教科書の検定権を認めたということも、私はやはり教育の最も重要な材料である、教科書が、その内容においても政党政派に制肘されない、こういう趣旨からも、教育委員会にこの検定権を認めたものだと、こう思うのです。ただ暫定措置として当分文部大臣が検定を行うと、こういうふうになつておると思うのですが、この際文部大臣の所見を伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/47
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048・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) これは検定権でありますから、私は文部大臣が検定権を持つということが必ずしもいわゆる教育の中立性を脅かすというふうには考えておらんのであります。成るほど教育委員会に検定権を持たしたということは、或いはそういう意味も含まれているかも知れません。併し私どもは大体教育委員会が設置せられた本旨である地方のそれぞれの事情に即応して、そうして地方の民意に即した教育が行われるように、こういう趣旨から見まして、やはり教育委員会に検定権を持たして、それぞれの地方の実情に合うような教育をするために資する、こういう見地がむしろ強いのじやないか、こう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/48
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049・荒木正三郎
○荒木正三郎君 今大臣がおつしやつたような理由も、私も相当大きな理由だと思うのです。ところが今度教科書の検定については教育委員会からこれを文部大臣に移すということなんですが、教育委員会に検定権を持たしてどうも都合が悪かつたと、こういうことがあるならお聞かせを願いたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/49
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050・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 御承知の通り、まだ今日まで地方の教育委員会が検定権を行使してはおらんのであります。ただ恐らくは法律の上で教育委員会に検定権を持たしたという主な理由は、先ほど申上げたような意味ではなかつたかと思うのでありますが、併し実際を見ますると、教育委員会に検定権を与えるということがいろいろな意味で支障が予想される。この点は私丁度欠席をしておりましてよく存じませんが、恐らくは今まで御論議のあつたことであろうと思うのですが、とにかく教育委員会に検定権を持たせるということはいろいろ混雑を起して、むしろ実情に合わない、こう考えまするので、検定権に関する限り一元的に文部大臣がその権限を持つ、こういうことにするためにこの法律案を出した、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/50
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051・荒木正三郎
○荒木正三郎君 検定権が教育委員会にあるといろいろ混乱が予想されると、こういうことなんですが、これは予想される混乱を防止するという方法がないのですか。どういう私は混乱が予想されるのか、私も了解し得る点はあります。併し先ほど大臣もお話になつたように、教科書の検定を教育委員会がやると、こういうことを決定したのには、私は、私が申上げた理由と、更に地方の実情に即するような教育をやつて行きたいという理由があろと思うのですね。そういう立派な目標を捨てて、そうして中央で一本でやると、そこまで行かなくても、予想される混乱はできるだけ少くして、そうして当初の目的を生かす途はないのかということですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/51
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052・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 御承知の通り只今までは文部大臣が事実上検定を行つて来ておるのであります。ところがこの検定による教科書の種類、その他非常な多数に上つておることは御承知の通りであります。で、展示会を開いてその採択、その選択をするということも、これも実際は決してうまく運営されてはおらん。その間に各出版会社のいわゆる売込み競争といいますか、いろいろの問題か起つて、それでこれが社会的にも問題となり批判の的にもなつている、文部大臣が一元的に検定をいたしましても、今日の現状はさようなことになつておるのであります。それがそれぞれの、文部大臣も検定をする、それぞれの各都道府県の教育委員会も検定をする、こういうことになりますというと、例えば甲の県で検定に合格した。隣の県では不合格だというようないろいろの、又それぞれ教科書を作るほうでも何県向、何県向というようないわゆる教科書の一口に言うと地方版のようなものができて来る、これは只今お話になりましたような地方の実情に即するという点から見れば望ましい点もありまするけれども、併しそれは、何と申しますか、教材その他の採択取捨によつて地方に合うような教育をするということは不可能ではないことでありまして、今日では文部大臣が検定を一元的にやつておつても、いろいろの問題が起つて、世間では、こんなことならむしろ国定教科書にしたほうがいいのじやないかという、いわゆる逆コース的な議論まで出ておるというのが現状であります。これを四十何県の各都道府県で皆まちまちな検定をするということになり、従つて各府県に向くような教科書が非常に数多くできるというような場合を想像いたしますと、これを文部大臣が一元的に検定をすることにして、別にこれといつた障害もなし、又地方の実情に応ずるためには教材その他の取捨ということがあるのでありますから、そのほうが適当であろう、こう思つて法律案を提出した、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/52
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053・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私も今の現状において文部大臣の検定権をすつかり外して教育委員会一本でやれるかどうかというと、これ非常にいろいろな困難が予想されます。従つてこれは実際問題としてなかなか困難な問題であるというふうには考えております。併しながら、といつて教育委員会の現状がそういう事情だから、将来に亙つても教育委員会には全然検定権を与えないのだ、こういうことになることについては、かなりの私は疑義を持つているわけなんです。それから教科書の検定を一元化する、これは長所もありますし、又同時に欠点もあるわけなんです。それから一元化する方法として必ずしも文部大臣に持つて行かなくても、そういうまあ今は文部大臣の諮問機関ですか、そういう性格のものになつている教科用図書検定審議会ですか、こういう機関に委ねてもいいじやないかと思うのです。私どもは、やはり問題になる点は、現在の政治はやはり政党の責任政治です。文部大臣もやはり政党の政策を実行すべき立場にあるわけなんです。これは私は悪いとは言いません。当然その党の文教政策を遂行するということは当然なことであります。併しこれは自由党が正しいと考えている文教政策も、我々の側から見れば又反対の意見もあることもあるわけです。そういう点から言つて、やはりできるだけ文部大臣が一元化する場合でも文部大臣が検定権を持たなければならんと私は考えなくてもいいと思います。むしろそれに代るべき機関を作つてもいい、いろいろ方法があると思うのです。ですから、ここに教育委員会に検定権があつたのを全然なくしてしまうと、こういうのじやなしに、もう少しこれを指導援助するという機関を持つたらどうか。なお当分文部大臣が続けて行くというなら私はいいと思うのです。折角美しい合理的な趣旨に基いて持つている検定権をこの際完全に移してしまうということについては、私は疑義があるわけなんです。そういう点について文部大臣はこの際にどうしても取上げなければならん、こういうふうに考えておられるのは、非常に強い意思があるのは、どういう理由なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/53
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054・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 非常に力んでいるというわけではないのです。ただお話の通り、それのために特別な機関を作つて検定をするということも、
これは一つの考え方であろうと思います。ただ現在は御承知の通り文部大臣が一応検定に当つているのであります。そうして文部大臣の実際の検定機関としては、その方面の実際に当つて教職員の代表の職員であるとか、その他各方面を代表する人々によつて委員会を作つて、そうしてその審議によつて検定をしておる、こういう実状でありまして、これはまあ将来非常な乱暴な文部大臣でも出て、自由党なら自由党、改新党なら改進党、共産党なら共産党の主張を書いておる者だけを検定に合格させて、そうでない者を不合格にすると、そういう乱暴なことをすれば別問題でありますが、併し従来の実際の行き方から見て、その点の心配は一応ないのじやないか。私は、理論上どうしてもこれは文部大臣に検定権を、その権限を与えなければならん、理論的にそうでなければならんとは思いません。思いませんけれども、現在の実状におきましては、今日まで文部大臣がやつておるのですから、今のように各都道府県の教育委員会の検定の仕事を外すということになれば、一応文部大臣がやるというのが一番適当な方法ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/54
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055・相馬助治
○相馬助治君 文部大臣にお尋ねいたしますが、日本の教科書の検定の制度というのは、やはり終戦後現行法というものは暫定的な意味合いを含めて作られていたと思うのです。従つて今日こういう法律案が出てくることが、その内容と時間とについて問題があろうとしても、必然的な一つの運命を持つていたと私は考えているのです。そこで質問が甚だ先走つて恐縮ですが、仮に本法律案が成立して文部大臣のみが検定権を持つた場合に、従前の検定の審議委員会、これらのものに対してはどのように考えているか。というのは、最初検定委員会もかなり問題があつたのですが、ここ一、二年は概括して評判よくやつて来たと思うのです。かなり民主的な考慮が払われて来たと私は承知しているのです。そこでこの法律案の改正を基礎として、そういう検定制度の審議会なんかについても何か一つの新たなる構想を持つているとするならば、それを私どもは承わらなくちやならない。従つて大体今までの方法を守つてやつて行く考えか、それとも将来この問題は文部大臣が、より権限を把握できるように、そういう審議会式のものは廃止の方向にでも持つて行く考えがあるかどうか、よもないとは思うのだが、念を入れておかなければならんと思うので、それらの点についての見解を承わつておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/55
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056・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) この法律案は、申上げます通りに、現在の状態を一応法制的に検定させるということであります。従つて現在の検定のための組織、機構、そういうものを今この機会に変えてどうこうという考えは持つておりません。要するに現在の状態が、法律上あつちこつちに規定もありますし、その点非常にあいまいな点もあります。で、ありますからして、一応現状のままを法制の上で明らかにして行きたい、こういう趣旨にとどまるのでありまして、この機会に何か特殊の検定のやり方等について変えて行く、そういうことは考えておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/56
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057・須藤五郎
○須藤五郎君 現在でも教科書の検定諮問審議会というものですか、それは存続しているわけなんですか、そうして機能を発揮しているわけなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/57
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058・田中義男
○政府委員(田中義男君) 先ほど申上げましたように、現在教科用図書検定調査審議会というものが政令によつて設置されております。で、その中に、更に先ほど申しましたように、二つの分科会に別れまして、そうして教科用図書の検定に関する大きい方針の問題を討議いたします分科会と、更に具体的な検定をいたしますための審議会と、二つあるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/58
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059・須藤五郎
○須藤五郎君 その審議会のメンバーというものは、どういう手続で選ばれておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/59
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060・田中義男
○政府委員(田中義男君) これは政令によりますと、形式の上では文部大臣が任命する、こうなつておりますが、併しその内訳におきまして教科書図書検定審議会の委員は一部学術或いは学識経験者、更に現場の教育職員、こういうふうなものを以て構成することになつておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/60
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061・須藤五郎
○須藤五郎君 私もこの法案の審議に先立つて、この前文部大臣に一般文教政策について質問いたしましたのは、それであります。文部大臣、要するに大達さんが文教に対してどういう考えを持つていらつしやるかということを先ず伺つておかないと、これから出て来る法案がはつきりして来ないので伺つたのでありますが、大達さんは、この前に要するに私が君が代と憲法の主権在民とをお尋ねしましたときに、君が代という字句は主憲在民の憲法と抵触するから好ましくない言葉だが、君が代の持つておる言葉が愛国的精神、この愛国は非常に疑問のある愛国ですが、だから憲法に抵触している字句のある歌を学校で歌うことが好ましいという気持を持つていらつしやるそういう文部大臣が、教科書の検定権を持つということは非常に私は疑いを持つのです。ですから、こういう文部大臣が検定権を持つて今後処置して行くということには、私は大きな疑いを持ちますから、むしろこれは民主的に選ばれたる人たちによつてこの教科書の検定というものは、若しも一本にしなくちやならん実情があるならば、そのほうがいいということは又検討をしなくちや言えないことでありますか、なればそういう機構を作つて、機関を作つて、そこによつてなされるということが私は一番いいのではないか。その一つの例といたしまして、兵庫県の尼崎におきましては、尼崎の小学校、中学校において使う教科書は、尼崎の日教組の人たち、又他の労働組合の人たち、勿論教育委員も入りますが、それにPTAの人たち、そういう人たちが集まつて、そうしてそこでいろいろ検討して、そうしてそれを教育委員の諮問機関のような形になつて、そういう人たちが審議して、それを教育委員に伝えて、そうして教育委員が教科書を決定しているというふうにして、あそこでは非常にそういう建前でいい例を作つてるように思うのでありますが、(「採用でしよう」と呼ぶ者あり)採用ですか、そういう例もありますから、検定に際しましてもそういう民主的な団体によつて検定をするという方向に持つて行くのが一番いいのではないか、国民的なそういう審議会を民主的に作つてやる方法が一番いいのではないか、そういうふうに考えます。それに対しまして文部大臣の意見をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/61
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062・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 今相馬君からの問題で、私も採択の問題であろうと思います尼崎の事例は。これは採択はそれぞれの学校で採択し、その学校ではこうした教科書を使え、その学校ではこの教科書によるべし、こういう指定は文部大臣は全然しないのであります。それぞれの学校においてそれぞれ採択をして、それぞれのために展示会を設けて各種の刊行されている、つまり検定済みの各種の教科書を見せて、それで自分の学校に一番ふさわしいと思うものを採択する、こういう建前になつております。それで検定ということはどういうことになりますか、県の教育委員会でやることであれば、これは一つの方法であります。併し中央で検定をするということになれば、どうしてもそれがための民主的な組織といいますか、その検定委員というものを公選をするとか何とかいうことにならなければならんと思います。ただそこの団体に、この団体とこの団体の代表者でやれ、そういうことはできない。これを仮りに文部大臣がその団体をきめるということになれば、結局今の、文部大臣の任命をする検定機関が検定するのと同じことになりますから、どうしてもそれは、さらばと言つてこれを民間の団体に政府としてやるということを言わない限り民間の団体がやるのだ、これはまあ国の行政権ですから検定は。従つてどうしてもその国として持つておる文教上の行政権を行使する組織ということになれば、文部大臣が任命しないということになれば、どうしても公選するとか何とかいう制度を作るより仕方がない。これもまあ一つのお考えと思いますけれども、現状におきましてはそこまでの必要は私はないと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/62
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063・須藤五郎
○須藤五郎君 それならば便法として、全国で公選された府県の教育委員会の中からですね、そういう人たちを選ぶということも一つの方法ではないかと思う。ただ単なる文部大臣の意思によつて審議会のメンバーが選ばれるということにも危険がありますし、勿論文部大臣一人で検定権を持つということにはもつと大きな危険を伴うことと思いますから、何かほかの方法を考え得ると思うのです私は。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/63
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064・田中義男
○政府委員(田中義男君) 教科用図書検定調査審議会の委員の任命方法でございますが、これは単に文部大臣が勝手に個人的に任命するというあれじやございませんで、実は五十四人が定員でございます。そのうち十六人が教科用図書検定調査分科審議会のほうの委員でありますが、これもそのうちの十人が、これはそれぞれ教育職員及び学識経験者の中からこれを選任いたします。それから他の三十八人のうち更に二十八人の人はそれぞれ各地方の教育委員会から選任をいたします。その選任をされた者の中から、更にブロツク別に選任を少数いたしまして、そうしてそのブロツクから二名乃至三名の者が中央の審議会の委員になる、こういうのでございまして、過半数のかたがたはすべて地方からの選任された者をそのまま文部大臣において任命する、かように民主的な考慮を払われているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/64
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065・須藤五郎
○須藤五郎君 それだけのやり方で果して民主的なものが反映できるかどうかということは非常に私は疑問を持ちます。私たちが若しもその方法を考えるならばまだ別の方法があるのでありますが、今それをここで申上げる余裕がありませんから、その問題には触れませんが、私は今日文部大臣に特に御出席をお願いしておきました問題につきまして数点質したいと思いますが、今回の水害対策に対しまして、とにかく文教関係にも大きな関連問題がありますので、文教関係等に限らないでもよろしいと思いますが、政府は水害に対して何回くらい閣議を開いて熱意を示しておるか、伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/65
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066・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 北九州の災害は非常な水害で、近来私どもの殆んど例を知らないくらいの大水害であります。又続いて起つた和歌山の災害、これも死者、行方不明の点ではこれ又殆んど今までにない大災害であります。この災害が起りまして以後の閣議の席におきましては、常に災害の状況報告があり、それぞれの所管の大臣から報告があり、又それに対する対策が講ぜられておるのであります。相談もされているのであります。殆んど毎回その問題は閣議には出ております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/66
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067・須藤五郎
○須藤五郎君 それでは文部当局といたしましては、今度の水害に対しまして何を決定し、何を閣議に要求したかという点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/67
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068・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 文部当局といたしましては、北九州の災害の場合におきましても、それからこの度の和歌山の災害の場合におきましても、直ちに係官を派遣をいたしまして、現地の教育関係についての災害の状況を調査いたしました。なお罹災児童についての世話をする、例えばいろいろ教育用品であるとか、或いは教科書であるとか、そういうものを現地に、急送いたしまして、速かに学校が開かれるように、これはやはり学校が早く開かれるということが現地の一般人心の安定の上からいつても、いわゆる親心と申しますか、非常に関心が持たれておるようであります。そういう点で現在災害救助法の範囲においては無論できるだけのことをしております。それからそのほかの恒久対策と申しますか、或いは教育施設の被害についての復旧の問題であるとか、そういう点につきましては中央において御承知の通り水害対策協議会というものが副総理を主にして各関係省一緒の協議会ができております。これは、無論大蔵省も入つているのでありますが、それぞれ所要の計画を持ち寄りまして、そうしてそこで災害対策のための予算措置その他の方法を協議して参つておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/68
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069・須藤五郎
○須藤五郎君 それじや今度の水害対策として文部省としてはどれだけの予算を請求なさいましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/69
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070・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) 私から代りまして御報告申上げます。今度の西日本の水害に対しまして、文教関係の災害復旧費所要経費の総額は、被害総額が四十六億八千六百万円、それを査定をいたしまして、三十七億九千万円を被害総額といたしまして、それに対して例えば公立学校の施設復旧につきましては三分の二の補助を要求する、或いは社会教育施設につきましては二分の一の補助を要求するという形式をとりまして、昭和二十八年度分といたしましては十八億、昭和二十九年度分といたしましては九億という額に上つております。なおこのほかに、先ほど御質問ございました罹災学生の援護とか或いは罹災学生に対する教科書の支給とか、そういつた面につきましてもいろいろ考慮いたしまして、それぞれ災害対策委員会におきまして数度打合せをいたしまして、只今申上げましたような数字がほぼ最終額でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/70
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071・須藤五郎
○須藤五郎君 今の学生の教科書とか何とかの災害補助の問題が出ましたのですが、それはなんですか、義務教育を受ける学生だけに関してですか、大学……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/71
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072・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) これは大学生でございます。それから教科書その他につきましては学用品の支給につきましては、これは義務教育費関係でございます。併しながら高等学校の生徒に関する教科書につきましても考慮をしなければならん点で、これは別途予算を要求いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/72
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073・川村松助
○委員長(川村松助君) 大臣に先に質問をお願いいたします。迎えに来ておりますから。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/73
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074・須藤五郎
○須藤五郎君 それじやこの問題に関しましてはまだ質問したいことがありますが、あと廻しにします。それじや今の文部省の熱意の程を私は知りたいのですが、地方及び中央の災害対策本部に文教関係として何人くらい文部省から出しておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/74
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075・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) お答えいたします。西日本の水害地に対しましては、田中教育施設部長を初めといたしまして、関係各局から、数字ははつきりいたしておりませんが、四名随行で参つたはずでございます。それから和歌山の水害地につきましては指導課長を中心といたしまして関係官が三名参つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/75
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076・須藤五郎
○須藤五郎君 そうしてその派遣した人たちは、単に被害地を歩いて調査しておるだけですか、何か具体的にいろいろな仕事をしていらつしやるのですか、どういうことを主にやつてらつしやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/76
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077・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) 勿論県当局に参りましてお見舞を兼ねまして現地をつぶさに視察いたしました。中には飛行機に乗りまして参つているのもございます。現地に参りましてそれぞれ被害の状況を調査したわけでございますが、報告によりますと何分まだ交通が回復しておりませんので、十分なことはできないのでございますが、併しながら概略の報告は参つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/77
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078・須藤五郎
○須藤五郎君 もう一点。私も九州も視察し、和歌山も行つて今朝帰つたわけなんでありますが、いろいろ現地状況を見て非常に心配に堪えない点がたくさんあるのですが、文部省から出しておる人たちが、現地からどういう要求を文部省に対して出しておるか、又どういう報告を派遣委員が寄越しておるか、概略を、重要な点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/78
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079・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) 現地に参りまして、概略の報告を受取つております。併しながらまだ数字その他につきましては推定もございますので、明確な点を申上げかねるのでございますが、概略の報告書は受取つております。只今私手許に持ち合せておりませんが、この次の機会に皆様にご配布いたしまして御説明申上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/79
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080・剱木亨弘
○剱木亨弘君 議事進行。今、須藤委員から水害の問題で質問があるようですが、特別委員会を作つて、大体水害関係はそこに院議を以て一任するということになつておると思いますので、今日は大臣が予算委員会に呼ばれているということですが、一つ大臣に対する質問をやつて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/80
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081・須藤五郎
○須藤五郎君 大臣に対しての質問は簡単にして大臣を解放するということには私も同意はしておりますが、水害に関する問題は水害対策委員会に任してほかの委員会では審議しないということは承服できない。なぜならば、私は水害対策特別委員会に参加していない、それじや議員の一人としてこの重要な水害問題に対して発言の機会がないという。そんな馬鹿なことにはないと思う。剱木委員の発言に対しては私反対します。飽くまでこの水害についてもこの委員会において発言をいたしたいと思います。まだまだ私は尋ねたいことがあるのです。要するにこれは危険校舎の問題と関連して来ると思うのです。ですから私はこれを聞いてるわけです。危険校舎の法案を審議する前に一応伺つておきたいと思うから質問しているのです。それに対して現地からの要求、それから派遣委員の報告などが、具体的にここで育つてもらえないのでは、非常に困るのです。若し今日言えなかつたら次の機会において、改めて次の機会に私はしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/81
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082・川村松助
○委員長(川村松助君) ほかに御質疑ありませんか。他に御質問がなければ質疑は打切りと決定して御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/82
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083・川村松助
○委員長(川村松助君) それでは学校教育法案の一部を改正する法律案に対する質疑は終了したものと認めて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/83
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084・川村松助
○委員長(川村松助君) ちよつと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/84
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085・川村松助
○委員長(川村松助君) 速記をつけて。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/85
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086・川村松助
○委員長(川村松助君) それでは次に危険校舎改築促進臨時措置法案を議題にいたします。
この法律案は去る七月十四日に提案理由の説明を聞いております。質疑は本日が初めてでございます。質疑に入ります前にお諮りいたしますが、逐条審議に入りますか、総括質問と一緒に御質疑に入りますか。要するに総括、逐条の差別なしに御質疑を承わることで御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/86
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087・川村松助
○委員長(川村松助君) それではそういうことに決定いたします。御質疑のあるかたは御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/87
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088・相馬助治
○相馬助治君 これは衆議院で改正になつていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/88
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089・川村松助
○委員長(川村松助君) 衆議院のほうでは附帯決議があるということは聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/89
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090・相馬助治
○相馬助治君 附帯決議があるだけですか。この費用負担区分の数字が変つておりませんか。おりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/90
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091・川村松助
○委員長(川村松助君) 危険校舎のほうは政府原案通り可決になつておるそうであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/91
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092・相馬助治
○相馬助治君 全会一致……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/92
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093・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私は文部省の危険校舎の改築に対する方針を伺つておきたいと思うのです。私の考えでは、従来から三カ年計画とか或いは五カ年計画とか、そういう計画で危険校舎を解消して行くのだ、こういうふうな説明をしばく聞いておるわけなんです。併しどうも私に言わせれば了解できないわけなんです。それで公立学校の校舎は大部分が木造校舎ではないかと思うのですよ。で、これは三カ年や五カ年で解消する性質のものでなしに、今度の予算では十億増額されて二十二億になつてるわけなんですが、これだけの予算では解消しないよりも、危険校舎は殖えるじやないか、数字的に言つて。そういう私には結論が出るのですがね。従つて従来から説明されたような三カ年計画とか、五カ年計画では対処できない性質の問題だ、こういうふうに了解しているのですが、文部大臣としてはこの改築の計画についてどういうお考えを持つておられるのか、この際承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/93
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094・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 只今お話の通り、現状はすでに危険な状態でありますから、これを三年計画とか五年計画ということでやるということは甚だ手ぬるいと申しますか、実際に合わない、こういう御意見は御尤もであるとは思います。ただこれに幾分でも補助をして促進をするということにしなければ、地方の財政事情によりましてなかなかこれは危険校舎というものを解消することはできないのが実情でありまして、従つて補助金の支出をするにつきましても、これを一時に補助金を出すということになれば非常に結構なのでありますが、これも国の財政の事情でそう一時に出すというわけにも行かない。仮に三分の一の補助を只今危険校舎と考えられるもの全部に行き渡るように国の予算措置を活かしてみましても、いわゆる中央は中央の財政事情がありますから、これに即応して全部の危険校舎を一、二年のうちに解消する、全部改築をするということは、これは事実上はできないという事情であります。殊に補助いたしましたあとのことにつきましても、起債の枠がそれだけ取れなければ、自己資金でそれだけのことをするということは、地方の財政が許さないのでありまして、その点から、甚だ遺憾でありますけれども或る程度の年次計画によらざるを得ない、こういうのが実状であります。で、政府で提出しました十二億円という算出の基礎は、現在危険なりとして使用を禁止し又は制限をされておる校舎、建物というものが四十八万坪に達している、これを年々十二億円として四カ年のうちに改築をしたい、こういう案であつたのでありますが、これは勿論多々益々弁ずるでありまして、多ければ多いほど結構です。今度衆議院のほうで更に十億円をこれに附加えて二十二億という予算になりましたから、その点は著しく初めの案よりは進捗することになるわけであります。四十八万坪と言いましても、これはいわゆる危険であるという極印の打たれた建物でありますが、そのほかにも事実上これと同等と見ても差支ないような老朽危険の校舎というものがまだ百数十万坪を残しておるのであります。今後できるだけ速かに老朽校舎の改築を進めて参りたい、こう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/94
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095・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私は、この法案の趣旨ですね、これは非常に賛成をしておるものであります。併し今の危険校舎を改築するために年次計画を立てて、そうして遂行せられるということも、これは当然なことだと思うのです。併し問題はそれだけでお終いになる性質のものではないと私は思います。まあ文部省側のいろいろの説明によると、五十年以上経つて危険なものが四十八万坪ですか、ある。一般に危険校舎は、百六十万坪ある。併しこれは固定したものじやないのです。これをどんどん改築して八年か十年かかつて改築した頃には、更に次の危険校舎が相当出ておる。従つて危険校舎の改築は年次計画でおやりになるのは非常に結構ですが、永久的な性質を持つておるものじやないかと思うのです。そういうことについて文部省も十分お考えになつてこの法案を出しておられるのか。或いは今当面しているものを年次計画でやつて終ろうとしておられるのか、そういう点をお伺いしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/95
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096・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) お言葉の通り、年々老朽校舎というものが殖える理窟であります。ただ御承知のように戦時中随分学校を軍需工場に転用して国が使つておつた、そういうようなこともあります。又戦後におきましても木材の統制というような事情もあつて、なんと申しますか、危険校舎は、今日校舎を危険に陥れた一つの責任が国のほうにもあるということは、これは否定できないのであります。それで、そういう戦前戦後を通じての特殊の事情によつて今日は非常に危険老朽校舎というものが溜つておるというか、非常に殖えている、それをこの際対象として早く解消いたしたい、こういうのが大体この法律案の趣旨であり、従つてこれは臨時措置法という字が使つてありますが、まあとにかく今まで非常に危険校舎は溜つているし、そのことについては国としても一部の責任を負わなければならんような事情もあるし、とにかくこれを差当りの対象として早く危険を解消したい、こういうのが当面の法律案の趣旨であります。その後に年々危険校舎というものが殖えるわけでありますが、これを解消されれば、これは戦前戦後を通じての異常な状態というものが一応解消されるのでありまして、普通の状態に戻つて来る。まあそれはそれとして、今日の特殊な状態に即応して、御承知の通り国庫補助の途も開かれましたのが二十八年の予算から初めてであります、今までは国庫補助がなかつた。で、とにかくこれは相済まんこともあるからして、とにかく急いで、これを対象として極力やつて行きたい、こういう趣旨であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/96
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097・荒木正三郎
○荒木正三郎君 この法案は、名前の示す通り臨時的な措置であるということは、今の説明でよくわかりました。そうすると、臨時的な措置としての今改築しようとしておる建物の坪数ですね、それは四十八万坪を予定しているのか、百六十五万坪ですか、これを予定しているのか、この臨時措置法で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/97
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098・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) これは百六十五万坪を対象として行きたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/98
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099・荒木正三郎
○荒木正三郎君 そうすると、百六十五万坪を大体何年ぐらいでやりたい、こういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/99
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100・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) これは予算措置を伴うものでありますから、ここではつきりしたことは無論責任を持つては申上げられないのでありますが、私どもの気持としては五年か七年ぐらいの間に解消したい、こう思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/100
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101・荒木正三郎
○荒木正三郎君 併しそれは僕は少し了解に苦しむのですが、当面臨時措置として危険校舎の改築をやろう、こういうことを決定なさつて、そうしてその目標を百六十五万坪だということになれば、これは大体何年ぐらいの計画でやろうということは当然その次に上つて来る問題だと思うのですが、それが外されて本年度の予算が組まれるということは、恐らく私は考えられない問題だと思つているのですが、そういう点はどうでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/101
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102・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) これは先ほど申上げましたように、初めの予算を組んだときの計画では、百六十五万坪のうちで現にこれはもう危険で使つちやいけない、こういうことになつてるものが四十八万坪あるから、先ずそれを目標に四カ年計画で一坪一万円、コンクリート建てと木造建築を両ほう合せまして平均して、無論コンクリート建築のほうは非常にパーセンテージが少ないのでありますが、平均して坪当り三万円、それに対する三分の一補助として一万円で一坪が改築ができる。補助としては一万円で、そこで十二億円でありますから十二万坪、これを四カ年として、四十八万坪、こういう計算であつたのです。併しそれで無論十分ではないのでありまして、先ほど申上げますように、百六十五万坪というものがとにかく老朽、危険な状態にある、それを衆議院のほうで今度十億円更に追加計上して修正されたわけであります。でありますから、四十八万坪だけを対象とすれば先ず二カ年でやれるかも知れない。けれどもまあ欲が出たというわけじやありませんが、私どもとしては四十八万坪というものは応急第一期の話でありまして、百六十五万坪を改築したいということを考えておりますから、そこで二十二億円に増額して頂いた、これが参議院を通過してその予算が成立すれば、まあそれに便乗するというわけじやありませんけれども、とにかく増したということになれば、今後も引続いてそれと同額若しくは同額以上の予算を、大蔵省と折衝して予算を計上することによつて是非とも百六十五万坪というものを五年なり七年なりの間には直して行きたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/102
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103・相馬助治
○相馬助治君 文部大臣にお尋ねしますが、具体的なことですから事務局から答えさせて下さつても結構です。第二条の二項の政令を定める場合に文部省としては校舎の建築後の経過年数のみによつてきめられる予定ですか。それとも老朽校舎でなくて若朽校舎が大分ありますから、こういうものも含めて実際上の危険校舎の総坪数を基礎としてやられるのですか、先ずこれを承わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/103
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104・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) お答えいたします。政令で定める場合の、まあ計画でございますが、只今私どもの考えておりますのは、実際に出ておりまする数字でございます。これは府県から報告をとりましたその数字を基礎にいたしまして、危険度につきまして具体的に判定する。例えば垂直荷重とか鉛直荷重とか、そういつた技術的な見地からこういつた校舎の危険度というものを判定しまして、必ずしも年齢には拘泥しないで実際の危険度ということを中心に置いて物差を拵えるわけでございます。その場合に年齢を全然心の外に置くといたしますと、又非常にその点混乱が起きるわけです。現実には年齢でとつておりますので。ですから必ずしも年齢を度外視するということでなしに、年齢も参考にし、且つ又技術的な危険度を考慮いたしまして一つの物差を置くということに、これはなかなかむずかしい作業だと思うのですが、今それを折角計画しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/104
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105・相馬助治
○相馬助治君 極めて結構なことで、それはその通りに行くように期待して了解します。
次に当然国庫補助金を出す場合には、鉄筋のものですね、これは防火地区内においては差支なくもらえると思うのですが、防火地区以外の場所で鉄筋の立派なものを建てる、そういう場合には、防火地区以外であるからとして国庫補助の枠から外されるということを一部で心配している向きもありますが、これについてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/105
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106・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) 私はその通りに行くように、この予算の配分の基準が鉄筋の場合が大体八五%、間違いました木造の場合が八五%、鉄筋の場合が一五%ということで予算ができておりますので、と申しますのは、一応従来の実際の統計から防火地区の耐火建築を調べました結果、このパーセンテージが出ておりますので、これは決していい加減な数字じやございません。その数字によりまして一応予算ができておりますので、従いまして防火地区から鉄筋の申請があつた場合には、これは一五%のうちから優先的に考慮するというのが、これは当然であると思います。而して大体防火地区を全部一五%で満配してしまつてあとに残らないということになりますと、防火地区以外には全然考慮できないという結果になるわけでございますが、併しながら場合によつてはいろいろ府県によつていろいろ事情は違いますので、鉄筋の分で多少余裕ができた、従つて防火地区のみならず準防火地区までも鉄筋ができるという面がなきにしもあらず、そういつた面につきましては鉄筋の予算を配分する。原則におきましてはすべて木造で配分するのでございます。木造で全部一応配分いたしまして、それから防火地区は幾らだ、準防火地区は幾らだという申請をとりまして、それに更に加配をする、つまり木造の場合は二万四千でございます。それから鉄筋の場合は五万七千、従つて二万四千で一応配分いたしまして、そうして鉄筋の申請がありました場合に更に加配するというやり方をしております。従いまして防火地区以外は全然鉄筋の配分がないということには必ずしもならないと思いますが、原則といたしましては、やはり先ほど申しましたように、防火地区を優先的に考えるということになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/106
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107・相馬助治
○相馬助治君 今おつしやつたような気持で取扱われることを期待いたします。
そこで最後に私、文部大臣にお尋ねしたいのですが、この危険校舎は、小中学校だけでなくて、高等学校も各府県であるわけです。従いまして文部大臣は、高等学校の危険校舎の問題に関しては地方公共団体の財政的な現状を考慮して、閣議その他においてもその地方公共団体に起債の枠を拡げてやるとか、或いは又時期的には繋ぎ融資を出してやる、財政的考慮をするとか、文部大臣自身の積極的意思によつて高等学校の危険校舎解消のためにお働き願えるものと私は確信しています。従いまして本法案の審議において、全国の高等学校のために一言私はこの際文部大臣のこれらに関する御所見を承わつておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/107
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108・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) これは文部省の説明によりますと、高等学校の危険校舎と認められるものの坪数が四十八万坪に達しておつたのであります。これは只今のところでは補助の途がないのでありますが、これもできるだけ努力をするということになりますけれども、先ほどお話がありましたように、義務小中学校のほうが非常に一日も早くやらなければならんという状態でありますから、補助を持つて行くということはなかなかむずかしい、あと廻しにせざるを得ないということであります。従つてこれは単独起債でやるより仕方がない。この起債の枠が今七十億というものが単独事業の中にあるのでありますが、これは義務教育だけでありますから、高等学校のほうもできるだけ起債の枠をとりたい。これが実際上はなかなか金がないとかいうことでむずかしいそうでありますが、今後は努力したいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/108
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109・相馬助治
○相馬助治君 それらの事情は、むずかしいということを承知しております。から。こういう立派な法律案を出して行きまする文部省は、当然高等学校の分についても御考慮されるものと、こういう予想の下に、まあすべてむずかしいということは私も承知しておりますが、格段の努力をこの際一つ要請しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/109
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110・須藤五郎
○須藤五郎君 先ほど、又水害に入るようでありますが、決して水害に限つたことではないのでありますが、西日本の水害三十七億、そのうち十八億を二十八年度、十九億を二十九年度とお答えになつたと思うのですが、ところが倒れてしまつたり、潰れてしまつているのに、こんなに遅れて、二十九年度なんということを言つておつて済むことでしようか、どうでしようか。私は和歌山へ行つて来て見まするに、全壊或いは流失が十五校、それから半壊が三十何校というふうに和歌山でもなつておりますが、学校の授業ですから休むことはできない。それをどういうふうにされるつもりなのか、それに対する対策を只今伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/110
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111・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) お答えいたします。先ほど申上げました昭和二十八年度十八億、昭和二十九年度九億という割振りは、これは事業量を考えた上の割振りでございまして、決して何も二十八年度は十八億で、それ以外は手を着けないという趣旨のものではございません。事業量から勘案いたしましてかような割振りをいたしたわけでございます。なおこのほかに応急的に資金を要するものがございますのでこれは例の繋ぎ融資ともうしますか、繋ぎ資金をこれは現に通知を出しまして、それからすでに災害地の府県は応急の資金を用いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/111
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112・須藤五郎
○須藤五郎君 学校の授業に支障を来さないという確信を以つてこれだけでちやんとやつて行けるという見通しが立つているわけなんですが、和歌山の水害対策に対してはそれじやどういうふうな対策を立てられましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/112
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113・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) 私申上げましたのは西日本の水害の対策を申上げましたので、これにつきましては御承知の水害対策特別委員会がございまして、それで決定を見たわけでございますが、和歌山のほうにつきましてはまだ私はその具体的な対策につきまして結論が出ておらないと思つております。これにつきまして目下連絡を取つておりますが、報告を集めつつありますが、まだ具体的な対策はできておらないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/113
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114・須藤五郎
○須藤五郎君 今すぐ夏休みがもう近いですから、八月一ぱいくらい夏休みが続くとしても、九月から授業を始めなくちやならん。そのときに今頃まだ対策が立つていないということで九月からの授業がやつて行けるのですか、どういう方法でやろうとするのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/114
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115・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) 勿論お話の通り九月の新学期までには必ず学校を開いて教育に支障のないようにするということは当局といたしましても十分考えておるところでございまして、繋ぎ融資の通牒を出しました場合にもそういう旨を県の教育委員会の委員長さん宛、或いは県知事宛に通知をいたしております。和歌山の場合におきましても勿論それと同じことでございまして、九月の新学期には是非教育の支障のないように開校するという趣旨で対策を進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/115
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116・須藤五郎
○須藤五郎君 それでは対策を立てる以上、緊急対策費を計上しなくちやならんと思うのですが、政府はどれだけの緊急対策費をとにかく出されたのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/116
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117・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) 先ほど私は和歌山に関する水害報告は手許にまだ資料は持合せておりませんと申上げましたが、極く簡単な報告、七月二十二日現在の簡単な報告は参つておりますので、それについて申上げますと、校舎の被害は和歌山は九億一千百五十九万一千円、九億一千万、これは校舎、校地、設備を全部含めてございますが、九億一千万という報告が参つております。これは小学校、中学校、高等学校全部合わせまして。それから奈良県が一億四千万。合計いたしまして十億五千万という報告が参つております。これは七月二十二日現在でございますので、その後なお報告が来つつあると思つております。それを本にいたしまして至急西日本の水害の場合と同様な対策が立てられなけりやならんと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/117
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118・須藤五郎
○須藤五郎君 私は今度の災害が非常に大きかつたことは、建設省の災害復旧が今年度に入つてやつと二十三年度の災害復旧がなされておるような状態ですね、それですからだんだん四年間か五年間かずれて来ておる、そのために災害が非常に大きく今度来ていると思うのです。危険校舎なども百六十万坪というものを七年もかかつてやるようなことでは、次々と災害のほうがあとから追いかけて来て、とにかく追いつかんことになつてしまつて、そして大きな災害が前途に待ち受けているような感じがして非常に心許ないのです。ですから今度のこの危険校舎改築促進臨時措置法は、私は決して反対はしないのです。反対はしないけれども、非常にまだ内容が不十分だということを考えるのですが、どうぞ先ほども相馬議員もおつしやつたように、もつともつと積極的に考えないと、大きな災害が前途に待ち受けているような非常な不吉な予感がしますから、この点大いに努力してもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/118
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119・近藤直人
○政府委員(近藤直人君) 老朽危険校舎は災害の場合に一番先にやられるということは、もうまさに御指摘の通りで、従来まあジエーン台風とかキジア台風なんかの例によりましても、大体、老朽校舎がまつ先に倒れておるような現状でございますので、この際老朽危険校舎の改築促進の法律によりまして是非老朽校舎の改築を進めまして、併せて災害の場合の対策にするということは、これは必要であろうと思つております。なおそういつた点につきまして今後とも我々は大いに推進いたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/119
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120・高橋道男
○高橋道男君 二十八年度の本予算の提出される前の本委員会におきまして、そのときは事務次官が出ておられたときでありましたが、危険校舎四十八万坪ということが基本になつての予算ができておるらしいが、我々はそれを基礎にせずに百六十六万坪に直して計上されるのが妥当じやないかというような意見を出したことがあつたのであります。そのとき事務次官は、従来四十八万坪ということを主張しておつたので、今百六十六万坪に主張を変えることが困難だという話をされたことがあるのでありますが、今日は大臣は危険校舎は百六十六万坪だということを仰せられておりますのでこれはまあ二十九年度の予算になりましようから、或いはまあ調査が違うとか、別の状況判断によつたとかいうような見解を別にすることはできると思いますが、大臣のお考えとしては無論百六十六万坪というものを現状において危険校舎と認めて進むというようなお考えであるということに了解してよろしうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/120
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121・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/121
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122・高橋道男
○高橋道男君 それからもう一点お尋ねしたいのは、第一条の目的に「臨時に、」という言葉が入つておりますが、これはその百六十六万坪が完成するまでという意味に解していいんでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/122
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123・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/123
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124・高橋道男
○高橋道男君 それからもう一点、これは相馬委員のお尋ねになつたことに関連がありますが、この危険校舎を改築する場合に鉄筋に直すということについて、管理局長から、二十八年度の予算は従来鉄筋と木造とできるその比率に応じて厳格な比率において予算を計上したという御答弁がありましたが、若し鉄筋にすることを積極的に認めるというような御方針がはつきりいたしますならば、木造でやるよりはむしろ鉄筋でやつたほうがいいというようなことで、そういう希望なり実際上の措置が殖えるだろうと私はまあ思うのです。又これは奨励しても遠い将来のことを考えるならばそのほうがいいとも思うのでありますが、そういうことをもつと強力に積極的に鉄筋にしたほうがいいというような方針を明示されろようなお考えはないでしようか。それをお尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/124
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125・大達茂雄
○国務大臣(大達茂雄君) 鉄筋にすることは非常に結構であることはもう問題ないのでありますが、ただ鉄筋と木造の場合は経費が非常に違うのでありますから、今与えられておる予算の範囲におきましては特に鉄筋にするようにという奨励をするということも余り積極的にやることは困難で、又地方の側におきましても鉄筋でやることが非常にいいということはこれは問題ないのでありますが、これもやはり地方の財政の事情で、やはり木造で我慢しなきやならんという場合が非常に多いかと思うのであります。この辺はそれぞれの実際の情勢に鑑みましてできるだけ鉄筋が多くなることは無論希望しておることでありますから、事情の許す限りそういう方向に持つて行きたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/125
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126・吉田萬次
○吉田萬次君 机上の論というものと実際というものとは非常にそこに差があるものであります。九州の今度の水害というものに対して、建設省の方面から見ましても、従来のこの風水害による費用が約束をせられておる額が一千億と言われておるのであります。それがまだ今日でき上つておらないところへ、今度又あの水害によりまして約五百億の費用が要るということであると、一千五百億の費用が通計して必要になつて参ります。併しそれに対する対策などということも容易なことではありませんし、曾つてあの九州の水害につきましては野田卯太郎大臣が国費のいわゆる予算の五分の一を投じて大改築と言いまするか、計画の下にあれをやつておいたのが一朝にしてああいうふうに壊れてしまつたというようなことから考えますると、建設省が一千五百億の建築費が必要である、従来一千億からのこの繰越になつておるものができておらないというようなことから考えますると、風水害に対することだけでも危険校舎に対する改築というものが非常にむずかしいものだと思うのであります。殊にすべての人は目につくものを早急にやろうといたしまして実際問題としての教育の方面に関心を持つ人は少かろうと思うのです。又一番かような方面が遅れがちのようになるのでありまするによつて、この風水害にかかわらず、危険校舎の方面につきましては最善の努力を一つして頂きたいという希望を私は述べておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/126
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127・川村松助
○委員長(川村松助君) ほかに御質疑ございませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/127
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128・川村松助
○委員長(川村松助君) 本案に対する御質疑は終了したものと認めて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/128
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129・川村松助
○委員長(川村松助君) 御異議がないと認めます。
それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/129
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130・相馬助治
○相馬助治君 只今議題となつておりまする危険校舎改築促進臨時措置法案の討論、採決の段階に入つたわけですが、私はこの際各委員の御賛同を給わることができまするならば、次の附帯決議を本法案に付したいと思うのでございます。それはこの際この法律案につきまして質疑の段階において明らかにされたことでありまするが、本来ならばこの法案を一部修正すべき意見をも持つのでございまするが、質疑の段階において大達文部大臣を初め政府委員の説明を我々は多く了とするものでございます。従いましてこの際この法律案の成立に当つて国会の意思を明らかにするために附帯決議を付したいと存ずるのでございます。以下案文を読上げまして各位の御賛同を給わりたいと存じます。
危険校舎改築促進臨時措置法案に関する決議
本委員会は、危険校舎改築促進臨時措置法案について、次の附帯決議を附して賛成する。
一、第二条第二項の政令を定めるに当つては、校舎の建築後の経過年数にかかわることなく、実態に基く危険校舎の総坪数を基礎とするよう措置すること。
二、危険校舎改築費国庫補助金の予算については、防火地区外にても鉄筋造(鉄骨造を含む)が建築できるよう措置すること。
三、危険校舎改築については、その緊急性に鑑み、合理的な年次計画をたてて、速かに完了するよう予算措置すること。
四、高等学校の危険校舎についても、その実情に鑑み、改築に必要な経費について国庫補助の方途を講ずること。
以上でございますが、どうかこれをこの法案の案文とともに付して審議の対象とされて各位の御賛同を給わりたいと存ずるのであります。
なお私は本法案に対して以上の附帯決議を付して賛成でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/130
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131・須藤五郎
○須藤五郎君 私はこの法案に対しまして反対を表明するものであります。なぜかと申しますると、この危険校舎をこの法案によつて早く解消するようにしようというその趣旨に対しましては、私は反対するわけではないのです。賛成なのでありますが、百六十万坪の危険校舎を五年、七年かかつてやろうというその方法に対しまして、その内容に対しまして私は賛成することはできないのであります。なぜかというと、金がないないと言いながら、保安隊費には莫大な金を使つている。その一食分を割いてもこの百六十万坪の危険校舎はたちどころに立派な学校にすることができる。この危険な状態で七年間も放置するというような、こういうことでは重大な教育上大きな支障を来たすことになると思いますから、こういう不十分な法案に対しまして私は積極的に賛成を述べることはできないのであります。ですから、この法案の方向というよりもむしろ内容が非常に不十分だという点で、私はこの法案に反対の意思を表明したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/131
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132・川村松助
○委員長(川村松助君) 念のために申上げますが、先に相馬君の発言に基いたところの附帯決議を含んで討論をして頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/132
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133・荒木正三郎
○荒木正三郎君 私は先ほど相馬委員から述べられた危険校舎改築促進臨時措置法案に関する附帯決議を併せまして本法案に賛成したいと存じます。特に第二項の危険校舎の改築については防火地区以外にも鉄筋造の建築でやるように措置すること、この点は特に私は要望したいと思います。今次の水害等の経験から見ましても、多数の学童を預る校舎がやはり堅牢でありたいという非常に強い念願を持つております。そういう意味においてこの条項を特に強く要望いたしまして、附帯決議に併せて賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/133
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134・高橋道男
○高橋道男君 私も先ほど相馬委員から提案された決議を含んで本法案に賛成するものであります。危険校舎ということが年来問題にされながら今日に至るもなお百六十六万坪という大量な危険校舎を残して問題が解決されずにおることは、我が国の現状として誠に遺憾至極でございますが、今回のこの法的措置によつてその危険が一日も早く解消されるような基礎がはつきりと立てられることは、誠に喜ばしいことでございます。ただ危険校舎があり、それが天災などに罹つた場合に現実の災害を受けてそのために将来ある少年少女の命が奪われるというようなことが若しあるといたしまするならば、それこそ取返しのつかないことが起るのであつて、そのときになつて初めてあれは危険校舎であつたんだ、手当をすればよかつたんだというような言葉が出るのでは、時すでに遅いと言わなければならんのであります。私は保安隊のできる当時から、あの費用の半分でもこの校舎改築のほうに投ぜられるならば五年を待たずして二年或いは三年で以つてこういう危険が一切除去されるという上から、勿論保安隊自身は必要だと思いまするけれども、同時に或いはそれ以上にこの危険校舎の解消は将来の我が国を守る上に最も重要な施策でなければならんと思うのであります。そういうような上から考えましても、この法を本として更に強化して一日も早くこの危険が解消することを期待して、本法案に附帯決議を含めて賛成するものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/134
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135・吉田萬次
○吉田萬次君 私は事柄につきまして実際問題と議論というものとは相当隔りがあるということを先ほど申しましたが、非常にこれはむずかしい問題でありまするので、いろいろなことを附加えずして、先ほどの相馬議員の修正意見を加えた案に賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/135
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136・川村松助
○委員長(川村松助君) 別に御意見もなければ、討論は終結したものと認めて御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/136
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137・川村松助
○委員長(川村松助君) 御異議はないと認めます。
それではこれより採決に入ります。危険校舎改築促進臨時措置法案を議題に供します。本案を可決することに賛成の方の御起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/137
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138・川村松助
○委員長(川村松助君) 多数でございます。危険校舎改築促進臨時措置法案は多数を以つて可決することに決定いたしました。
なお只今討論中にありました相馬委員の附帯決議を付する動議を議題といたします。本附帯決議を付することについて賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/138
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139・川村松助
○委員長(川村松助君) 多数でございます。よつて相馬君提出の附帯決議は可決せられました。
以下慣例に従いまして事務的処理をなすことを御承認願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/139
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140・川村松助
○委員長(川村松助君) 御異議がないようでありますから、そういうことに決定いたします。賛成の方の署名を願います。
多数意見者署名
相馬 助治 大谷 贇雄
長谷部ひろ 荒木正三郎
杉山 昌作 高橋 道男
剱木 亨弘 吉田 萬次発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/140
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141・川村松助
○委員長(川村松助君) それでは本日はこれを以つて散会いたします。
午後四時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101615115X01319530727/141
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