1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年三月十日(水曜日)
午前十時三十五分開議
出席委員
委員長 千葉 三郎君
理事 淺香 忠雄君 理事 黒金 泰美君
理事 坊 秀男君 理事 山本 勝市君
理事 内藤 友明君 理事 久保田鶴松君
理事 井上 良二君
宇都宮徳馬君 大平 正芳君
小西 寅松君 苫米地英俊君
福田 赳夫君 藤枝 泉介君
堀川 恭平君 池田 清志君
福田 繁芳君 加藤 清二君
柴田 義男君 春日 一幸君
平岡忠次郎君
出席政府委員
大蔵政務次官 植木庚子郎君
大蔵事務官
(主税局長) 渡辺喜久造君
大蔵事務官
(主税局税関部
長) 北島 武雄君
委員外の出席者
専 門 員 椎木 文也君
専 門 員 黒田 久太君
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三月九日
株式会社以外の法人の再評価積立金の資本組入
に関する法律案(内閣提出第九〇号)(予)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した事件
参考人招致に関する件
交付税及び譲与税配付金特別会計法案(内閣提
出第八五号)
株式会社以外の法人の再評価積立金の資本組入
に関する法律案(内閣提出第九〇号)(予)
所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一五号)
法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一六号)
相続税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一七号)
酒税法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
八号)
印紙税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
一九号)
砂糖消費税法の一部を改正する法律案(内閣提
出第二〇号)
骨牌税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二一号)
酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律の一
部を改正する法律案(内閣提出第二二号)
物品税法の一部を改正する法律案(内閣提出第
二九号)
入場税法案(内閣提出第三〇号)
しやし繊維品の課税に関する法律案(内閣提出
第三九号)
租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣
提出第五三号)
揮発油税法の一部を改正する法律案(内閣提出
第六一号)
関税法案(内閣提出第六五号)(予)
国税徴収法の一部を改正する法律案(内閣提出
第六七号)
関税定率法の一部を改正する法律案(内閣提出
第七一号)
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001・千葉三郎
○千葉委員長 これより会議を開きます。
まず、本日の日程にあります所得税法の一部を改正する法律案外十五税法改正法律案を一括議題として質疑を続行いたします。質疑は通告順によつてこれを許します。平岡忠次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/1
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002・平岡忠次郎
○平岡委員 ただいま議題となつておりまする税制諸法案のうち、関税定率法につきまして最初御質問申し上げます。このたび関税法案と関税定率法改正案の二つがここに議題となつておりますが、まず関税定率法のうちの重要機械類の暫定免税についてお伺いしたいのであります。
まず最初にこの免税規定の対象となつた機械類の年間免税額はどのくらいであつたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/2
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003・北島武雄
○北島政府委員 重要機械類の免税の規定は、昭和二十六年関税定率法の別表の輸入税表の全面改訂をいたしました際に、暫定的に附則におきまして一年限り免税するということになりまして、その後毎回一年ずつ延長せられてただいまに至つているわけであります。施行後ただいままでの免税額の概算を申し上げますと、昭和二十六年度におきまして免税いたしました額が三億七千六百万円、昭和二十七年度が九億三千五百万円、昭和二十八年度は四月から十二月までの実績でございますが、十億一千六百万円でございまして、施行後現在までに二十三億二千七百万円という数字に相なつておるわけであります。来年度も一年間延長する見込みになつておりますが、これにつきましては、まだ具体的に品目が決定いたしておりませんが、大体推算いたしますれば、毎月一億ぐらいずつ免税になろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/3
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004・平岡忠次郎
○平岡委員 そうすると、大体機械類の定率は二〇%ないし三〇%くらいですか。そうしますと、それから計算しまして輸入総額は幾らになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/4
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005・北島武雄
○北島政府委員 機械類の一般的な税率は、特殊なものを除きまして、一割五分でございます。輸入額を推算して申し上げますと、昭和二十六年度が免税の対象になりました機械の輸入額が二十四億四千百万円、二十七年度が六十二億三千四百万円、二十八年度の四月から十二月までが六十七億四千七百万円と相なります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/5
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006・平岡忠次郎
○平岡委員 そうすると、二十八年度の十二月までがそうですと、年度末で百億くらいになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/6
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007・北島武雄
○北島政府委員 百億にちよつと足りない数字になろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/7
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008・平岡忠次郎
○平岡委員 そうしますと、百億の機械類に対しまして、特に重要機械なるがゆえにこうしたフェーヴァを与えられておる。従いましてこのフェーヴァを与えるかどうかの基準というものが示されておるはずですね。日本経済自立のために、合理化用にして、しかも国産不可能なもの、こういうふうに漠然と規定されておるわけです。そこで手続上としまして、通産省を通じて業者が大蔵省に申し出る形式になつておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/8
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009・北島武雄
○北島政府委員 各省に連絡をとりまして、たとえば通産省所管におきましては、通産省の方から意見を付していただく、あるいは農林省所管におきましては、農林省から意見を付していただく、こういうふうにいたしておりまして、それに基きましてさらに私の方で、相当技術員がおりますので、動員いたしまして調査いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/9
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010・平岡忠次郎
○平岡委員 そうしますと、類別しましてどういう用途の機械類、あるいはプラントというようなものですか、どれが一番多いですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/10
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011・北島武雄
○北島政府委員 現在指定しております業種が三十九種類、先ほどお話がございましたように、本邦の経済の自立達成に資する産業ということにまず限定いたしまして、その用に供する機械であるということがありますので、まず一般の機械におきましては、業種を指定いたしまして、何業に用いるところのどの機械、こういうふうにいたしております。その指定いたしました業種が現在別表甲号におきまして三十九、それから別表乙号におきまして十七業、品目におきましては、別表甲号におきまして二百二十四品目、別表乙号におきまして五十七品目でありまして、定率法の附則に載つておりますが、相当広範囲な業種にわたつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/11
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012・平岡忠次郎
○平岡委員 大体こちらでちよつと調べたのですが、鉄鉱、石炭、鉱山、土木用、こういう機械が多いと思うのです。ただわれわれここで問題にしたいのは、省令によつて関税定率法の附則の別表の品目の追加がかつてにできる——かつてにというと語弊があるかもしれませんが、大体かつてにできるわけですね。この点につきまして、省令一本で特定業者にフェーヴァが与えられると弊害が多い。大体税法において、委員会あるいは本会議を経由して、濾過して、そこにきちんとしたものができるのですが、私どもはこの租税の具体的にきまる前に、それ以外に、上手の手から水が漏れるように、あるいは水を上手に漏らすようなそういう点がやはりこの委員会で検討されてもいいと思う。例を申しますと、この関税定率法におけるところのこうした特例、それからまた一応法人税とか所得税とかいうものがきまりながら、租税特別措置法というようなものができて来る、こういう点は大いに吟味する必要があると思う。ここで関税定率法を一応問題にしたのは、こういう点で業者が特典を得ようと思つて、いわゆる陳情行政的な弊害に陥つておる点があろうと思う。もし今の日本の経済自立のために不可欠な、しかも国産でできない機械類というような、そういう基準が示されておつたとしても、跡始末が一つもしてない。免税に対する義務規定がありますか、あとでたとえば合理化の実績を報告するとか、あるいは生産工場の実績等について報告の義務すらもないのが現状であろうと思う。こういうふうなやりつぱなしの点は、この特例の趣旨に対して画龍点睛を欠くと思う。こういうふうな問題について御所見を承りたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/12
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013・北島武雄
○北島政府委員 現在重要機械類につきましては、本邦の経済の自立達成に資する産業の用に供する機械であるということと、新式または高性能の産業用機械類で、本邦において製作が困難であるというこの二つの要件を具備するものにつきまして政令で規定いたしております。ただこの中の汎用機械につきましては、政令でもつて業種を指定いたしまして、大体の品目も指定いたしておりますが、こまかなものにつきましては大蔵省の告示に譲つております。そこでただいまお話のように、いろいろ業者の陳情によつてそれが左右されるではないかというような御懸念でございますが、その点につきましては、私の方でも十二分に慎重に検討いたしておりまして、一方陳情がございましても、他面におきまして、それがわが国において製作困難であるかどうか、その方面の機械メーカーの方の事情もよく調べていたしておりまして、両方勘案いたして閣議で御決定願つておるような次第でございます。またこの重要機械の免税になつたものにつきまして、後に他の用途に供しました場合においては、そのものから追徴する規定がございます。それからまた関税法におきましてこういう重要機械の免税を受けたものに対しましては、その物品、それから設備等について検査する権限を与えられております。ただその後の詳細な報告については、ただいま徴することはいたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/13
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014・平岡忠次郎
○平岡委員 その点が問題であろうと思うのです。やはりあとの報告義務とか、そうした実績を報告することを義務づける必要があろうと思うのです。こういう点につきまして、これは反対給付的に当然制約があつてしかるべきであろうと思います。この関税定率法のフェーヴァをめぐつて多少いろいろなうわさもないことはないので、こういう点をよくその衝にある方が明確にしておいてほしいことを特に要望しておきます。
次に、関税法案でございますが、このたび保税倉庫法、保税工場法を関税法に統合して総合法にしたということでありまするが、税関貨物取扱人法をなぜ除外したか、この理由をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/14
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015・北島武雄
○北島政府委員 税関貨物取扱人法は明治三十年代からございますが、これはいわば関税法規そのものではないのでございまして、関税法を実施されるところの外面におきまして、ある特定の業者を取締る規定でございます。こういう規定を関税法に盛ることがいいかどうかにつきましては、体系といたしまして大分検討いたしたのでございます。アメリカの関税法では、税関貨物取扱人法の規定を関税法の上に若干載せておりますが、他の国におきましては、やはり別な法令にいたしておるのでありまして、私の方としましても、関税法の方に税関貨物取扱人法を吸収して載せるということにつきましては、体系上いかがかと思いまして、今度は載せなかつたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/15
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016・平岡忠次郎
○平岡委員 それから今回の関税法案提案の理由としまして、保税制度の活用によりまして貿易振興に資する、こういつておりますが、実際には内国民待遇を受けておる第三国の商社、特にアメリカの例を引きますと、レミントンとか、あるいはシンガー等の外商に有利となる公算が多いと思う。国内資本による輸入振興にどれだけ役立ち得るか疑問なしとしません。政府はこのような点をあらかじめ調査したのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/16
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017・北島武雄
○北島政府委員 今度の関税法案におきましては、特に外国商社にフェーヴァを与えるというような改正にはなつておりません。保税倉庫あるいは保税工場等保税地域全般につきまして簡素化はいたしておりますが、特定の業者についてだけフェーヴァを与えるような制度にはなつていないと思います。これは関税法の全体を御検討願えば自然に解決する問題であろうと思うのであります。結局関税法におきましては、積極的に貿易振興をはかるということはなかなかむずかしいことでありまして、むしろ税関を通関する際に、それが消極的に貿易振興の阻害にならないようにという面がむしろ関税としては中心かと思います。できれば貿易振興に資するという意味合いも含めておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/17
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018・平岡忠次郎
○平岡委員 その点はいいのですが、なお石油保税工場、これは国内生産は大したことはないのですから、国内石油業との競合度は少い、こういうような点で特に外国商社などのフェーヴァになるというようなことはないと思います。ただこの石油の問題では、石油保税工場の所在地に関して、われわれ多少危惧しなければならぬ点があろうと思う。すでに御承知の通り、京浜地帯あるいは元海軍の石油プラントのあつた和歌山の下津、徳山、佐世保、舞鶴、新潟などは、アメリカの石油カルテルの保税工場所在地となつて、私どもに言わせると、従属再軍備の伏線区になつているような気がするのです。政府はこれをどういうふうにお考えになるか。それと、なおこれに関連して四日市の旧海軍燃料工廠は賠償が未着手地帯ですが、これを機会にして乗り出して来るおそれがあると思うが、こういう点に対する見通しはどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/18
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019・北島武雄
○北島政府委員 私の所管外にわたる事項が大分多いようでございますが、今度の関税法におきまして、特に特定の業者に利益を与えるというような見地からはできていないということだけは御了承願いたいと思います。また四日市の問題につきましては、私の所管外でありまして、今後いかなることになるか、私自身としてはまだ見通しをつけておりません。ただそれが保税工場としての申請がありますれば、その際に十分検討すべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/19
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020・平岡忠次郎
○平岡委員 主税局長はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/20
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021・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 私もちよつと不勉強でおしかりをこうむるかもしれませんが、その問題につきましては、今税関部長が申し上げた以上にはよく存じておりませんので、あしからず御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/21
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022・平岡忠次郎
○平岡委員 それでは租税特別措置法に関しまして主税局長にお尋ねします。
最初に利子所得一年以上の定期預金を分離課税として、課税率を百分の十から五に下げています。従来の十を五に下げておるのですが、これに対しましての御所見をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/22
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023・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 現在貯蓄が非常に必要であると同時に、それも短期の貯蓄でなくて、長期性の預金がぜひ必要であるということは考えられるわけでございます。従いましてそういうものにつきまして、その重要性を考えまして、税の上で何分の特別な措置をしたい、こういう考え方に基きまして、期限一年以上の個人の貯蓄だけに限定はいたしてございますが、そのカテゴリーに属するものをもちまして百分の五にした、かようなわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/23
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024・平岡忠次郎
○平岡委員 今の主税局長のお答えは資金を蓄積させる、こういう点では一応その御答弁はいいと思うのですけれども、いわゆる租税を負担するという問題におきまして、利子の源泉選択の規定というものがあつたはずです。それが結局死文化しておると思う。あの源泉選択税がおそらく百分の四十であつたと思います。それから去年いきなり恩典が与えられて、またここにいきなり五%にしてしまう、百分の四十はまさに百分の三十五を減額されている、こういう点が相当問題であろうと思う。というのは、この利子所得を受けた人が、ほかの所得との総合所得において累進課税の対象になるわけですけれども、これだけ分離されますと、累進課税の対象からこれがはずされるために、不当にその点が減税せられる、こういう点があろうと思う。その点につきましての御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/24
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025・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 税の負担の面から考えますと、確かにおつしやるような点があろうと思つております。ただ利子所得といいますのは、割合に金額的に見て参りますと、それ自体としてはそれほど大きくないような点もございまして、なかなか総合の点につきましても、ずつと総合の建前をとつて参りましたけれども、実効的にはいろいろ支障もあつたということは見のがせない事実だろうと思います。ただわれわれとしましては、一応税の理論からいいますれば、当然他の所得と合算されるべきものである。従つてこれを合算しない場合においては、源泉選択といつたような姿をとり、その場合においては、ある程度税率が高いということもがまんしていただかなければなるまい、こういう考え方でずつと参つたのでございますが、昨年の国会におきまして、御承知のように貯蓄の重要性を考えろという御趣旨で、百分の十分離という御修正が入つたわけでございまして、その線の考え方を進めて参りますと、さらに同じような貯蓄の中で、長期のものにつきましては百分の十を百分の五にするといつたような考え方が出て来るのも一つの考え方ではな、いか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/25
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026・平岡忠次郎
○平岡委員 それはまた話が堂々めぐりになる。これはある意味で去年保守三派の造船利子と同じような一連の陰謀なんです。だからこういう点がまたこれに輪をかけて五%引くというようなことになると、結局高額所得者に対して有利になる。私はどうしてその点を申し上げたいかというと、昨年暮れ勤労所得税において、これはもう税制調査会の答申でも特にアクセントを置いているくらいに、二十四万円くらいまでは当然免税しなければならぬ、そういうふうな点が現行法で満足でなかつたために、わが党の委員からせめてボーナスの問題を分離課税にして税率をゼロにしろ、こういう提案がなされたはずです。ですからこういう利子税において分離課税を認めるならば、勤労者の所得において、ボーナスといつてもよけいなものをもらうのではない、今までの借金の穴埋めに充てるような、当てにしておる金なんです。ですからそういう点において、勤労所得税の今の税率ははなはだもつて実情に沿わない、せめてボーナスを分離課税にすべしというような、そういう趣旨によつて提案された昨年末のボーナス分離課税、しかも税率ゼロ、この問題につきまして、主税局長は大きな観点から善処してもらいたい。今これらの法律案と一緒に審議されておりまする所得税も、政府がたいこをたたくほど少しも今の実情に沿うべく改訂はされておらぬ。大体どの国におきましても、日本の円価に換算しまして、東京に住んでおつて月収二万円、本人入れて家族五人、それで食つて行けるかというと、大体食つて行けない。地方から米を送つてもらうとか、何がしかの金を送つてもらうとか、そういうことでほんとうに生活の最低線にある実情であろうと思う。そういう層から税金をとつて来るというのは、大体イギリスにしてもどこにしても——私昨年の八月にヨーロッパを見て来たんですが、そういう点で関心を持ちましていろいろ調査してみたんですが、およそそういう層に税金をかけるというようなことをやつてない。ですから、今の勤労者の意思を代表して、われわれがもとから口をすつぱくして言つているように、勤労所得税の二十四万円までの無税の問題は、真剣に考えてもらわなければならぬ。その点でわれわれ非常に不満がある。ですから、もしこれはわれわれ少数党として、あなた方のいわゆる微々たる改正案というものが今度通るにしても、少くとも租税特別措置法において、今のそうしたボーナスの問題というものは、分離課税として何とか救済の道を講じてもらいたい。この点につきまして主税局長の御所見というか、ほんとうにあまりほかのことにとらわれざる所信をひとつ表明してもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/26
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027・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 昨年御提案になりましたボーナスのあれは二万でしたか、免税するといつたようなことは、結局もう一つ立ち入つて考えてみますと、基礎控除を二万円上げるということと同じような結果になるわけでございます。それでお説のように月収二万円、五人家族ぐらいまでは所得税がかからないようにということは、われわれもその方向に全体を考えて行きたいと思つているわけでございますが、いろいろな税収の関係もございまして、なかなかそう思うように行かない。そこで今回におきましても減税の重点を——いろいろ御批判はあり、間接税の増税などについてもずいぶん御批判を受けておりますが、一応その財源と見合いまして、できるだけ直接税の減税、それも今平岡さんからのお話のありましたように、直接税の中で所得税、特に小額所得者の負担の軽減になるようにという方向で一応立案してございまして、二十四万円という数字にはちよつと及びませんが、今度改正になりますと、平年度におきましては二十一万八千円、二十二万円弱までは一応課税にならないようになる、こういうような措置になるわけでございまして、今後の問題がどういうふうになりますか私存じませんが、何らかさらに機会があれば、お話のようなところへ、将来の問題としては考えて行きたいとわれわれも思つておりますし、おそらく大蔵大臣もそう考えているんじやないかと思つております。ただ臨時措置法でもつて、たとえば今回の改正で賞与を何がしということになりますと、これはやはり相当大きな減収額になりますので、その減収の穴埋めをどういうふうに考えて行くかという問題が別途並行して参りませんと、そういうことはなかなかむずかしゆうございますし、われわれとしましても、現在としてそれに対する案を持つておりませんので、ちよつとむずかしいのじやないかと考えております。なお今の長期預金の関係等について、利子の方の減税と関連しての御質問でございましたが、こちらの方の関係は、減収額が比較的少うございますし、同時にこの面におけるそうした負担の面からといいますよりも、経済政策的な面から考えまして、比較的小さな犠牲で——犠牲といいますか、フェーヴァで大きな効果があれば、やはりそういう点を考えていいんじやないか、こういう観点で考えているわけでありまして、全体としての考え方としましては、一面においては税としての体系的な考え方を維持すると同時に、経済政策的な面におきましても、それが全体の体系を乱らぬ限りにおいて、同時に税収に大きく響かぬ限りにおいて、相当の効果が期待されるならば考えていい問題ではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/27
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028・平岡忠次郎
○平岡委員 主税局長は両頭のへびというか、経済政策の方と、それから租税負担の公平の原則とが両頭になつておる。私の質問に対して、今の経済政策の方にみな逃げ込む。しかし税制自身は、重点はやはり税の性格自身をきめて行くということが重点だろうと思う。で、今経済政策に逃げ込んで答弁されたのは、私はその点不満であります。それから先ほど税源の問題に触れまして、どうも不本意ながら、勤労所得税に対して、これ以上のフェーヴァは今考えられぬ、かような御趣旨の答弁でありますが、昨年ちよつと触れました交際費の問題です。法人の交際費が最低と見ましても八百億円はもう公知の事実とされております。あるいは説をなす者は千二百億、こういうふうに言われております。これが免税。交際費の制限規定がなかつたために、私はその点を昨年申し上げたわけですけれども、ことしはそうした私の主張もいれてくださいまして、交際費の制限規定を出していただきました。ところがつぶさにこの措置法の中における今の交際費制限規定を検討しますと、結局基準年度の七割相当領または当該事業年度の取引金額に一定の割合を乗じて計算した金額のいずれか多い金額を越えるときは、その越える金額の二分の一を損金に算入しないこととすること、こういうておるわけであります。要するに去年の実績の八割五分だけは認めておる。そうすると、今天下の耳目を聳道しておる中川とか、ああいうふうな赤坂あたりの料亭で、月に八百万円とか千何百万円というものを浪費する会社のいわゆる社用族の交際費、そのスキャンダルすらも内包されるようなこうした宴会というものを、公然と政府は八割五分認めるつもりだ。たとえば山下汽船の社長が芸者を一箇月百万円ずつ出して飼つておる。これも百万円はやれぬが、八十五万円まではやれということを政府は公認するのだ、こんなばかなことがありますか。(笑声)そういう金が積り積つて八百億円なんだ。八百億円というもうは、普通の、そういうふうな損金として落されずに、収益となつていた場合は、四二%の税率をかければ三百三十億です。ですから三百三十億の財源というものはあるのですよ。これを今言つたようなまじめな、しかも日本のほんとうの経済自立の下積みというのですか、縁の下の力持ちとなつている勤労大衆を飢餓戦線に追い込むような所得税のとり方というものはよくない。こういうふうな点は、やはり政府の指導者は大所高所から——あなたは経済政策が非常にお得意なんだから、特にこういう点は十分比較考量しなければならぬと思う。こういう点につきまして、特に今の交際費制限の問題に対して御所見を向いたいりであります。
〔委員長退席、淺香委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/28
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029・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 冒頭に私がいろいろ御答弁申し上げておることについて、税の本来の性格といいますか、税の本来の考え方と、経済政策との考え方を両刀使いしておるというような御批判があつたように思いますが、私は現実の税制というものであれば、おのずからそこに二つの考え方があつていいのじやないか、かように考えております。もちろん税本来の考え方がなくなるような姿に経済政策的な考え方が大きく表に出て参りますと、これはやはり何と申しましても、負担の均衡といつたような点が非常に重要なことでございますから、租税全体が相当大きく変革して参り、納税思想の上からいつてもおもしろくないと思いますが、しかし同時に、それを大きくこわさない限度におきまして、たとえば輸出所得の免税の問題が出て参りましたり、いろいろな点で経済政策的な考え方がやはりある程度入つて来るのはやむを得ないじやないか、こういうふうに思つております。
それから今の交際費の問題でございますが、いわゆる交際費といわれるものにつきましても、内容的に見ますといろいろなものがあるのじやないか。まあ赤坂の料亭で使うものがそれでどうかこうかという点になりますと、これはいろいろ御意見があろうと思いますが、われわれの考えているところでは、やはり会社が取引をする、それにある程度交際費というものが必要なのは、現在の取引の状況から見ますれば、どうしてもやはり必要なものじやないだろうか。ただ、それが過度になると、これは行き過ぎになり、あるいは社用族というような言葉が普通巷間に流布されるような姿になれば、これは行き過ぎじやないか。まあそういつたような意味からいたしまして、これもはたして現在税の上でこの問題を取扱うべきかどうかというような点につきましては、前回もずいぶん御批判があつたわけでございますが、税だけの見地から見ましても、資本蓄積のためにいろいろな措置を講じておる。その半面において、交際費という名前において相当の金が濫費されているのをそのままほうつておくのはおもしろくあるまい、こういつたような観点がわれわれの考え方として許され得ると思いますので、従いましてこの際としては、一応昨年の七割程度までにとどめていただく、それを越える場合におきましては、その半額は損金に算入しない、こういう観点でやつて行くべきじやないか。交際費を全面的に否定するということは、現在の取引の実情なりをあまりに無視した姿になるのじやないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/29
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030・平岡忠次郎
○平岡委員 この交際費制限規定をそうした論理において出してくださつたのはけつこうなんです。しかしむしろ国民のほんとうの批判から焦点をそらすに役立つ程度の、まあなまぬるいものであろうと思う。これをよく考えてみますと——私は意見を申し上げる前にこの点で少し質問します。ここで、当該事業年度の取引額に一定の割合を乗じたものという一定の割合とは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/30
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031・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 その点につきましては、今計数を整理しておりまして、近く参考に御提出申し上げたいと思つておりますが、大体考え方としましては、従来の実績に基きまして各業種を見て参りますと、交際費の多寡に相当の幅があるようでございます。従いまして現在考えておりますのは、そのある程度の業種の分類をしまして、そうしてそれの分類に従いまして、たとえば取引金額の千分の幾つといつたような割合もつくつて行きたい。なぜそういう考え方がここで出て来なければならぬかという気持といたしましては、会社によつては、過去において交際費をたくさん使つた会社もあるだろうし、片方は非常に切り詰めた交際費でもつてやつていた会社もあるだろう、切り詰めていた交際費で仕事をしていた会社におきまして、さらに三割切り詰めるというのもかなり無理な場合が出て来るかもしれぬ。従いまして、過去の実績の少くとも七割というものを中心とした一つの割合をつくつて参りますれば、従来平均以下の交際費でもつてやつていた会社におきましては、必ずしも過去の七割にまで削らなくてもそれで済む。こういう程度の緩衝地帯をやはり考える必要があるのじやないか、こういう考え方でもつて、その割合を算出してみたのであります。今計数を整理しておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/31
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032・平岡忠次郎
○平岡委員 今計数を整理しておるというのですが、そういう未熟な点に尺度を置いて法律案が出て来るのがおかしい。そうすると実際のあなた方の考え方は、過去の交際費の実績を認めるという立場に立つておるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/32
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033・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 その点は先ほど申しましたように、過去の交際費の平均割合に対してその七割、要するに平均割合の七割というところを一つの基準にとるべきではないか、従いまして、過去の平均割合より少く使つていた会社は平均割合の七割が出ますから、従いまして、過去の実績に比べて七割まで節約しなくても一応この規定にぶつつからない、こういうことに考えて行くべきではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/33
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034・平岡忠次郎
○平岡委員 そうすると、この基準年度による過去の実績というのは、業者の一つ一つの単位ではなしに、同種の業種のグループ、こういう意味ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/34
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035・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 今の措置法の規定にある基準が、先ほどあなたがお読みくださつたように二つになつております。その一つは、その当該会社の過去の実績の七割、もう一つは、その一定の割合、その一定割合という方は、同種の業態の平均の七割、これをとるべきではないか、従いまして、それによつて過去において比較的交際費が少くて済ましていたところは、まあこれ以上ちよつと切りようがないとか、それは大いに節約するが、七割までは切れない、こういう会社があつた場合には、それが割合の方でもつて無理が行かないで済むのではないか、こういう考え方をして行きたい、こう思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/35
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036・平岡忠次郎
○平岡委員 今主税局長は、少い方の会社の例を私に答えたのでありますが、多い方の会社の点に対しまして、あなたは内心忸怩たるものがありはしないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/36
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037・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 まあ、七割がいいか何割がいいかという問題だろうと思いますが、会社にもいろいろな業態がありますし、とにかく昨年に比べて七割、三割減らしていただくということならば、一応税でもつてやる限りにおいては、まあこの辺が適当ではないかと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/37
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038・平岡忠次郎
○平岡委員 そうした勧善懲悪的な今の経済政策の動機からこれを出した。それならば、今まで過去に不当に交際費を使つた会社を締め上げるところの実際上の規定がなされなければならない。たとえば造船会社というのは、これは天下が顰蹙するほどのえらいことをやつておる。そんなものも実質上この規定から行けば八割五分だけは公認する、こういう点がどうも渡辺さんの経済政策とおよそ違う一つのコースなんですが、この点お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/38
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039・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 八割五分公認というつもりも別にないわけでございまして、結局七割、七割の中でそれでは全額損金に算入するかというような議論もあろうかと思いますが、全額損金に算入するというのも少し行き過ぎではなかろうか、前回御提案申し上げまして大分御議論もありましたが、半額だけを損金に算入しないという規定でできておりましたので、一応今回におきましても、その前回と同じような考え方を踏襲した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/39
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040・平岡忠次郎
○平岡委員 このプリントは間違つているのじやありませんか。一定割合を乗じた金額のいずれか多い金額というのではなしに、いずれか少いというのじやないですか。その方が妥当なのじやありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/40
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041・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 それはいずれか多いというふうにわれわれは現在考えております。考え方としては、先ほどもちよつと触れましたように、とにかく相当多く使つていた会社としましても、この際三割節減してほしい。節減の余地がもうないというようなところについては、やはり平均割合を使うことによりまして、それを無理が行かないように考えて行きたい。こういう考え方でできておりますので、やはり多いという考え方がそこに入つて行くべきだと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/41
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042・平岡忠次郎
○平岡委員 いつまで問答を繰返しても同じような答弁より得られない。だけれども、これは確かに金額のいずれか少いが正しい、そうあるべきだ。そうでないと、今まで新聞紙上をにぎわしたああいうスキャンダル、行動は、交際費を公然と過去の実績の八割五分——赤坂へ十回行つたのが八回半だけ行つてもいいと容認するようなものです。あなたがこの制限規定を出して来た動機と、実際に出て来たこの法案とは大分違うと思う。あなたがそうした動機で出されたならば、少くともこの金額のいずれか多いはやめて、いずれか少い方にすべきだ。それからもう一つは、その越える金額の二分の一は、なぜ二分の一にしなければならぬのですか。そんな二分の一などという制限をする必要は少しもない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/42
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043・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 交際費の基準というようなものにつきましては、いろいろ議論のあるところでございまして、交際費を一体どの範囲に限定すべきかといつたことにつきましても、実際問題として相当むずかしい点もあろうと思います。従いまして全額損金に算入しないということにして、すぐに法律の上だけでいいましても四割二分の課税という問題になりますと、かなり具体的な事例につきましての争いも多いのじやないだろうか。そういうような点から考えまして、とにかくこの際としては、二分の一程度損金に算入しないという措置が妥当な措置じやないだろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/43
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044・平岡忠次郎
○平岡委員 争いが多く出て来るだろうことを心配なすつているけれども、中小企業者とか、そういうものに対して今の徴税陣がいろいろな論争をするようなことをやめて——こういう点は私はいくら争つてもかまわん、こういう点は大いにやりなさい。この制限規定というのは、ただいやいやながら消極的に出したとしか受取ることはできない。それで渡辺さんの感覚をちよつと疑うのだけれども、この点に対しては、われわれはまだ大いに文句を言うつもりでありますが、一応私としてはここで打ちどめにしておきます。このあと関連しまして、同僚が深刻に、ものすごい攻撃の矢を向けますから、どうぞそのおつもりで……。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/44
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045・淺香忠雄
○淺香委員長代理 次に一昨八日、当委員会に審査を付託されました交付税及び譲与税配付金特別会計法案及び去る九日付託されました株式会社以外の法人の再評価積立金の資本組入に関する法律案の両案を一括議題として、政府当局より趣旨の説明を聴取いたします。植木大蔵政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/45
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046・植木庚子郎
○植木政府委員 ただいま議題となりました交付税及び譲与税配付金特別会計法案について提案の理由を御説明申し上げます。
政府におきましては、今般地方公共団体の財政運営の自律性及び安定性を強化し、地方財源の偏在の是正をはかるため、従来の地方財政平衡交付金制度にかえ、新たに地方交付税及び入場譲与税に関する制度を設けるとともに、昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する特別措置を講ずることといたしまして、本国会に、地方財政平衡交付金法の一部を改正する法律案、入場譲与税法案及び昭和二十九年度の揮発油譲与税に関する法律案を提案いたしているのでありますが、これらの法律に基く交付税及び譲与税の配付に関する経理を明確にするため、特別会計を設置し、一般会計と区分して経理することが適当であると考えられますので、ここに交付税及び譲与税配付金特別会計法案を提案いたした次第であります。
以下この法案の内容についてその大要を御説明いたしますと、この会計は、内閣総理大臣及び大蔵大臣が共同管理をいたすこととし、地方交付税相当額の一般会計からの繰入金、入場税収入及び付属雑収入を歳入とし、地方交付税交付金、入場譲与税譲与金、入場税収入の一割相当額の一般会計への繰入金及び付属諸費を歳出とし、その他毎会計年度の決算上の剰余は、翌年度の歳入に繰入れ、毎会計年度の歳出予算支出残額は、翌年度に繰越して使用することができることとする等交付税及び譲与税の配付に関して必要とされる会計運営の制度を規定するとともに、昭和二十九年度の揮発油譲与税の配付に関する経理につき、所要の規定を設けることといたしているのであります。
以上が、この法律案を提案いたしました理由であります。
次に、ただいま議題となりました株式会社以外の法人の再評価積立金の資本組入に関する法律案につきまして、提案の理由を説明いたします。
資産再評価法第百九条の規定による再評価積立金の資本組入れにつきましては、従来株式会社についてのみ認められていたのでありますが、株式会社以外の法人につきましても、この際資本組入れを認めることが適当であると考えられますので、ここにこの法律案を提出することとしたのであります。
次に、本法律案につき、その大要を申し上げます。
まず第一に、再評価積立金を資本に組入れるには、定款変更の場合と同様の決議を要することといたしております。
第二に、出資について口数の定めがある法人が資本組入れを行つた場合には、組入額の総額に対応して出資の総口数が増加するものとし、出資者各人の出資口数は、それぞれの出資者が現に有している出資口数に応じて増加することといたしております。
第三に、資本組入れの場合においては、原則として無償で出資口数が増加するのでありますが、株式会社の場合と同様、出資一口の金額の一部を出資者に払い込ませることを認めるとともに、端数または払込みのなかつた出資の口数が生じた場合における売却または出資者の募集及びこれによつて得た金額の分配について必要な規定を設けることといたしております。第四に、資本組入れを行つた結果、出資者の口数が法令に規定する保有限度を越える場合の特例を設けるとともに、出資者に対して分配すべき金銭の額について、法人の所得の計算上所要の特例措置を講じております。
第五に、本法律案の附則によりまして、株式会社の資本組入れの場合において、失権株または端株を公募する際の発行価額について、商法の特例を設けました。
以上、本法律案の大要を申し上げた次第でありますが、何とぞ御審議の上、すみやかに賛成せられるようお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/46
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047・淺香忠雄
○淺香委員長代理 井上良二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/47
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048・井上良二
○井上委員 租税特別措置法の一部改正法律案について、二、三質問をいたしますが、さきに平岡君からもいろいろな角度から質問がございましたが、第一に、この所得税関係の長期定期預金利子及び配当所得の税率の引下げについてでありますが、この税率を引下げることによつて、一年以上の信託または預貯金が一体どれだけふえるという見通しを持つておりますか、それを明らかに願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/48
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049・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 将来の問題でございますので、的確にどのくらいふえるかということにつきましては、われわれもちよつと数字的に申し上げかねますが、一応こういう措置によりまして、こういうものの奨励になり、従つてそこにこういうものの増加が期待できるということは申し上げ得ると思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/49
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050・井上良二
○井上委員 将来はいざ知らず、この法律は過去から適用されて来ておりますので、今までどういうことになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/50
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051・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 この規定の適用を受けますものは、やはり一番金額的に大きいのは定期預金だと思つております。定期預金は現在におきまして、これは過去の数字でございますが、二十八年の九月末に定期預金となつておりますものの総額が九千四百七十三億ございますが、この中で一年定期のものは千六百六十億、こういう数字になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/51
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052・井上良二
○井上委員 ふえた分は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/52
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053・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 ふえた分と申しましても、今度御提案申し上げておりますのは、今後の契約にかかる分について一応百分の五にして行こう、こういう考え方でございますので、まだその措置が立法化されておるわけでもございませんので、これによつてふえたということはちよつと申し上げかねると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/53
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054・井上良二
○井上委員 定期預金を一年以上もいたし、かつ長期の信託をいたしまして利子を収得する階級というのは、一体どういう階級ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/54
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055・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 その点につきましては、われわれの方にも資料がございませんで、どういう階層だということはちよつと申し上げかねますが、まあ割合にそう所得の多くない階層にありましても、他はたとえば相続財産とか、そういうものを中心に食べているといつたような方には、こういう方があるのではないかと思います。それよりも相当大きな財産がある人は、あるいはむしろ株を持つというような方向に向うと思いますし、抽象論でいろいろ考えられますが、数字的にどうこうということは、ちよつと私の方で今資料がございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/55
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056・井上良二
○井上委員 減税措置によつて相当利まわりがよくなる。だから長期定期預金を一年以上もしようという人は相当裕福な人であります。従つて、今政府が物価を引下げなければならぬという大きな題目にぶち当つているときに、単に予算を緊縮する、あるいは金融を引締めるということによるやり方も必要でありましようが、一つは低金利の問題が大きな問題になつており、また一つは税額を引下げるということが大きな問題になつている。そういう総合的な全体の政策が推進されない限りは、物価は下らぬと思つております。そういう点から考えましたときに、全体の郵便貯金の利率をもう少しよくするとかということを考えるというのならば、多少われわれも全体の大衆の利益ということは考えられるけれども、この政策は特定の人のように見られてしかたがないのです。そしてあなた方が資本蓄積という美しい名前でいろいろな減税措置を講ぜられているが、その蓄積された資本は一体どこへ行つているのかということをわれわれが考えたときに、減税によつて少数の裕福な階級が非常に高率の利益を得、またその金を低利にまわしてもらうことによつて利益を得ている、こういうはつきりした、金融的な大きな支配の権力を維持しようとする露骨な現われがここに出て来ているじやないかと、われわれは見抜かざるを得ない。そういうように一応の見通しを立てます場合、資本蓄積という美しい名前のもとに、少数の裕福な階級を助けて行くという行き方はいそれははなはだ時局便乗の功妙な彼らに対する援護政策でないかということにより私は言えない。特に証券投資の場合を見ましても、従来すでにそれぞれ必要な措置が講ぜられて来ている。ところが今度はまた三分の一を免税にして、残つた三分の二を対象にして、さらに課税を一〇%にする、こういうことで、証券投資にどんどん金を注ぎ込むという人は一体どういう階級の人です。そういう特殊の政策を政府がそれほど熱心におやりになろうとするならば、何ゆえに低額者の減税にもつと勇気を出さぬかということを私どもは言いたい。低額者の減税の問題に触れると言を左右にして、ああじやない、こうじやないと逃げようとする。そしてこれらの人々の減税についてはきわめて至れり尽せりの資料を集め、至れり尽せりの答弁をされる。もつてのほかだ。さきに平岡君も申しておりました通り、実際これらの税率を引下げる何らの根拠を私は見出すわけに参りません。これらの人々の減税をすることが大切か、小額所得者の減税をすることが大切か、どちらが一体大切とあなたはお考えになつていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/56
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057・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 大体長期の定期預金を持つような方々は、私は大体中産階級の方じやないかというふうに考えております。一年定期で利子が税込みで六分になつておるのでございまして、もつとまとまつたお金を持つていらつしやる方は、むしろ直接株式投資というような方向に進まれるのじやないか。それから、証券投資信託の改正についてお触れになりましたが、今度この分についての改正で考えておりますのは、現在のやり方は、当初におきましては、利益を全部配当と見て課税して参つた。ところが証券投資信託の利益の中には、御承知のように、配当に相当する分と利子に相当する分と、譲渡所得に相当する分と、三つあるわけでございます。現在の法律におきましても、最後の解約あるいは終了の時期におきましては、これを清算いたしまして、そして過去において納めている税金は差引いて、納め足りない分があれば最後のときにとるというやり方をとつているのでございますが、現在のやり方で参りますと、どうも最後の清算の機会におきまして納め過ぎになる傾向にあるものでございますから、従つて、その辺を考慮いたしまして、譲渡所得の分が三分の一程度あるものとして、百分の十でとつて行く。しかし最後に至りまして清算するということにおきましては、今度の改正のあとにおきましても同じことでございまして、いわば、先にとる分をどう考えるか、あとにとる分をどう考えるかということの改正でございまして、特にこれによつて全体として負担が軽減されるということを考えているわけではございません。証券投資信託につきましても、どういう階層の人が証券投資信託をやつているかというと、御承知のように、自分で直接株を持つというのには、まだ株もよくわからぬし、不安もある。そこで専門家である証券会社にその運用をまかせようという方々がここでお持ちになるわけでございまして、これも、どちらかといえば中産階層が大体この範疇に入るのじやないかと考えております。それで、こういう面で減税するのをやめて、なぜ低額所得者の所得税の負担を軽減しないか、こういう御意見に伺いましたが、われわれとしましては、重点的にはやはり低額所得者の減税に重点を置いているということは、はつきり申し上げ得ると思つております。その点は、結局数字の上に一応出て来るわけでございまして、今度の直接税の減税の三百十二億の中におきましても、基礎控除の引上げが百六十億、扶養控除の引上げが八十九億でございますが、金額的に見まして、こうした分が大部分を占めているわけでございまして、この面につきましてこれ以上の減税をするということにつきましては、どうも現在の財政の上からいいましてちよつと許されないというので、先ほど来申し上げておりますが、この程度にとどめざるを得なかつたというわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/57
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058・井上良二
○井上委員 それと同じ考え方に立つて、さきに交際費の問題が問題になりましたが、政府の方では五百万円以上の会社の年間の交際費はどのくらいあると見積つておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/58
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059・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 結局交際費という範疇をどうとるかという問題で大分問題はかわつて来ると思つております。われわれの方で現在そこへ提案しておりますのは、考え方によりますと、狭い交際費よりも多少広くなつているのじやないかと思います。たとえば、会社の社長が工場へ行つて工場の幹部などと一緒に一席飯を食べたというのは、会社として交際費かどうか、あるいはいろいろ議論はあろうと思いますが、一応今度の交際費等の中にはこれを入れて考えておるわけでございますが、金額的にいいましてどの程度のものかというのは、なかなかまだはつきりつかみがたいのでございます。けれども、まあ七、八百億くらいの金がそこにあるのではないかというふうには考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/59
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060・井上良二
○井上委員 問題は、七割に交際費を押えて、それを越える部分の二分の一を損金に落す、こういうことになりまするから、それを落して、結局この分で増収になる分が三十億という推定を立てている。この三十億増収にこの部分が入るということになりますと、そのもとになる交際費というものが大体どのくらい年間に使われておるということがはつきり押えられなければ、この三十億の増収分は出て来ないじやありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/60
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061・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 今七、八百億とか申しました数字は、これは年間の数字でございます。そこで、ここに三十億と書いてございますが、交際費の分としましては大体これの半分程度実は考えております。御承知のように、二十九年度の関係としましては初年度になりますので、従いまして、大体平年度の半分という程度のものが二十九年度の歳入に関係して来る。徴収率とかいろいろこまかい点はございますが、これはそう大きな額でございませんから議論の外にしていいと思いますが、一応二十九年度は初年度でごぜいますから、平年度大体三十億程度、それの計算の基礎になつておりますものは七百億くらいの数字を基礎にして、おります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/61
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062・井上良二
○井上委員 さきにも議論がありましたように、これを七割は認める、その上さらにあと半分を認めるから、八割五分まで認める、こういうことに実際はなるわけですが、どういうわけでそうことを認めなければならぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/62
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063・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 その半分だとか八割だとか、いろいろ計算が違うじやないかというお話がちよつとございましたが、税の性格によつてそれぞれ違うのは、正直のところあたりまえの話でありまして、法人税におきましては、決算が二十九年度分に入つて参りますのは、大きく言えば、今年の三月決算と九月決算でありまして、来年の三月決算の分は三十年度の税収に入つて来るのでございまして、従いまして、ほかの、たとえば奢侈繊維品の場合にはその税収の割合が違つて来る。これはそれぞれの納期の関係から当然出て来る結論でありまして、その辺ごらん願いますれば、別にそうふしぎはないと思つております。それで、今井上委員の御質問のございました、七割で押え、それ以上をさらに半額だけ損金にする、それがいいのか、あるいは八掛で押えるのがいいのか六掛で押えるのがいいのか、これは私はいろいろ見る見方によつて御議論はあろうと思いますが、われわれがこの案を出しました考え方としましては、会社としてもやはり相当の交際費がいることは、これは仕事の性格からいつてやむを得まい。ただ現在の姿におきましては、社用族とかいろいろ議論もありますし、とにかく相当の節約はしていただきたい。ではどの程度の節約をすべきかというので検討してみたのですが、まあ七割くらいでどうだろう。前回一応御議論願いますときには、八割といつたような数字も実は出たことがあるのでございますが、その当時よりはどうも少し強くものを考えた方がいいのじやないだろうかという感覚が出ましたものですから、七割という数字を出した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/63
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064・井上良二
○井上委員 七割というものは、別に根拠なしに、ただこちらが手ごろだろうというつまみ食い式にお考えになつたのであつて、私に政務次官に伺いたいが、総理初め政府は、今日の国際収支のアンバランスを何とか直したい、そのために国民に耐乏を要求する決意を示しておるわけです。しかるに税制の上では、片一方においては資本蓄積という美しい名前で、少数の人には減税措置で非常にかわいがつてやつて、そうしてほんとうに汗水たらして働かなければならぬ大衆には、案外減税の恩典は少く、逆に間接税でしぼり上げて行く、そういうやり方をとつて、そして資本金五百万円もの大きな会社の交際費は、八割五分までは実質上認めておる。どうぞ飲んで歌うて芸者も抱いてくれ、そういうべらぼうなことを税制で認めて、これが一体妥当な耐乏生活を国民に要求する税制改革のあり方ですか。これは政務次官どうお考えになりますか、国民が納得するように答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/64
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065・植木庚子郎
○植木政府委員 法人の交際費の問題につきまして、先刻来の御熱心なる御意見でございます。渡辺政府委員からも申し上げておりますように、七割がいいか、あるいは六割がいいか、あるいはさらにこれを八割にするのがいいか、いろいろそこには問題があろうと思います。七割ときめられたことにつきましても、ただいま渡辺政府委員の申し上げましたように、一応の見通しとして、この程度でひとつやつて行こうという立案になつております。耐乏生活を国民にできるだけやつてもらいたい際に、こうした限度をきめることについては、できるだけ厳格にきめるのがいいと私も思います。しかしながら経済界あるいは会社の実情に応じて、あまり急激な変化を与えることはいかがかという点も考えられまするし、かたがたこうした程度にして政府の案を出しておる次第であります。むしろ政府当局の希望としましては、この法律によつて初めて七割あるいは八割五分までは認められるかどうかというような問題よりも、各会社当局がまたお互いに自粛をして、この法律に関係なく、むしろ従来十使つておつたものなら五にする、あるいは六にするというようなことを期待したいと思うのであります。何でもかんでも税制の上で無理にこれを縛つて行くのもどうか。と申しまするのは、やはり会社の運営の実情によつては、相当交際費のいる場合もあろうかと考えられますので、その点やはり漸進的に直して行くということを法律の上では目ざしております。さように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/65
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066・井上良二
○井上委員 問題は今まで交際費を損金に落しておつたというところから、これら大きな会社は、正常な利益にいたしました場合は、法人税でとられてしまいますから、あらゆる名目を設けて交際費につけ足して行く。交際費の完全な受取りさえあれば、税務署はこれを認めるということから、交際費が非常にふくれて来たということをあなた自身御存じのことと思います。現にまた主税局長みずからが御答弁をされますように、年間七、八百億の金が正常に見積られた交際費として、これはまつたく飲み食いに使われておるということで、こういうことがそのまま認められるということはどうかという点にあろう思う。だからわれわれとしましては、あなた方の政策がよろしきを得ないといいますか、今度の物価引下げの大きなねらいは、さきにも申しましたように、国の財政投資と金融引締め、これらをやることによつて物価を下げよう、こうしておるが、特に金融の引締めというものは、露骨にいえば、物を持つておる人が経済活動を行うのを非常に困難な事態に追い込む政策であります。資金が不足いたしますために、持つておる物をやむなく安く売らなければならぬという窮地に追い込む政策をとられておるのです。その結果は、そこに働く勤労者に大きな犠牲が要求されて参ります。そういうわけで金融引締めというものが、弱い中小企業に大きな圧迫としてかかつて行き、しかもそれに従つておる従業員が直接この犠牲の対象になつておるときに、相当大きな資本を持つて政府の保護を受けて、しかも一方減税その他によつて十分な保護を受ける少数のものが従来平気で使つておつた交際費がそのまま八割五分まで認められる、そういうことが一体常識上許されるかということです。問題は道義上の責任だけではありません、政治上の責任がここにかかつて来ておる。そういう点で、交際費の制限というものに対してもう少し圧力を加えるべきじやないか。特に造船を中心にした疑獄問題が国民あげての指弾の的になつているときに、毎日のように赤坂へ行つて湯水のように金が使われておる。先般も私は地方へ参りまして、私どもが一生汗水をたらして働いてもためることのでき得ない大きな金が一晩のうちに使われておるじやありませんかということを言われたときに、私どもは実にはずかしい思いをしたんです。それほどあの事件は地方の人には大きな刺激と打撃を与えておるのです。しかるに、このことをそのままあなた方が認めて行く考え方というものは、何としてもわれわれはそのまま見のがすわけには行きません。だから、そこをあなた方がもう少し総理の意をほんとうに体するならば、ほんとうに国民にまじめに耐乏を要求するならば、この面に思い切つたメスを加えるべきではありませんか。一方において小額所得者に減税をしたといいながら、片一方には間接的に大衆課税をやつているじやありませんか。そういうごまかしのことを一方においてやつておいて、片一方においてはぬくぬくとふといものを依然として守つて行こうという、そういう税制のやり方が一体どこにありますか。もう少しまじめに、少くとも日本が今立つておるこの経済の中において、どうして日本の経済を再建するかということが国会にかけられた大きな責任になつて来ておる。われわれは、単に与党、野党の対立的な感情ではありません。真に日本の経済を再建する場合、ほんとうに国民の協力を求めなければならぬ、国民を納得得心させて政治に協力さすことが必要であります。そういうまじめな真剣味のこもつた対策が立てられずに、一方においてはごまかしの税制によつて、いかにも減税したかのごとく装い、一方においてはぬくぬくと大きいものを助けて行く、そうしてこれらの人々のぜいたくはそのまま見のがして行くという行き方が、一体妥当な税制とお思いになりますか。私はあなたが良心的立場に立つた政治家ならば、この不合理は何としても是正していただかなければどうにもなりませんぞ。そうお思いになりませんか、もう一度お伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/66
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067・植木庚子郎
○植木政府委員 ただいまの井上委員の御意見なり、あるいは御感懐なり、まことに共鳴し得るところがたくさんございます。従いまして政府といたしましては、そのラインに向つて、漸進的にこの改正案の上に盛つてあるわけであります。なるほど仰せの通り、思い切つた政策をとることも可能でございましようが、税制の上におきましては、やはりそう急激なることをやることはいかがかと考えましたので、この際としては、原案に盛りました程度で一歩々々進んで参る。またただいま井上委員は、従来の不当な交際費の使い方をそのまま認めておると誇張して仰せになりましたが、そうではなくして、それは原案にもすでに盛りましたように、政府もそのラインに向つての努力をしておるということを、ひとつぜひ御了承願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/67
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068・井上良二
○井上委員 他に質問者もあることですから、簡単に二、三点質問しておいてやめますが、次に、法人税関係の価格変動準備金の積立金についての減税の措置が、今度はちよつとかわつて参りまして、従来は時価を大体中心にしておりましたが、今度は帳簿価格と時価とどちらか低い方の九〇%、こういうことに改めておりますが、この価格変動準備金の二十八年度において積み立てられましたところの推定はどのくらいになつておりますか、これが一点。それからここで問題になりますのは、この準備金を積み立てれば、結局損金に見てくれるのでありますから、準備金を積み立てるためのたなおろしの場合の時価をどう一体押えるか、この時価評価をだれが一体押えるかという問題であります。これが非常に私はむずかしいことではないかと考えますが、これは単なる申告によつてやるのか、それともその会社のたなおろしの帳簿を一々検討して、現品と引合せの上で、時価が正当に見積られておるかどうかという帳簿価格と時価との関係を一体何を標準にして押えるというのか、これを明確にしてもらいたい。この二点について伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/68
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069・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 二十八年度分について申しますと、価格変動準備金の積み立てられました金額は二百七十六億でございます。ただこれは、あらためて申し上げるまでもございませんが、毎年、前に積み立てましたものをくずしまして、その年に新しくまた積み立てる、そういうことになつておりますので、結局二十八年度に一応積み立てられますが、同時にその前年度に積み立てられたものは、これからくずされて行くわけでございますので、この年にこれだけ積み立てられました分が、それだけすぐにその年の税金に影響があるというわけのものでないということは、これはあらためて申し上げるまでもありませんが、ちよつとつけ加えさしていただきます。
それから時価との関係でありますが、御承知のように現在申告納税の制度になつておりますので、一応会社の方でもつて時価を算定しまして、それによりまして申告して参つたものを、税務署あるいは国税局が調査して、それが妥当であるかいなかを調べております。その場合の基準になりますものはいろいろございますが、たとえて申しますれば、最近に同じような品物が仕入れられておるとした場合には、その仕入れられた値段に引寄せて物を考えて行くというのが、ごく一般的な例じやないかというふうに思つております。大体その会社におきまして、どういう品物を扱つておるか、いろいろ種類がございますから、いろいろ一々について時価を調べることは相当むずかしい仕事でございますが、たとえば鉄の会社であれば、石炭とかなんとか、相当仕入れておる在庫品のあれはわかつておりますので、ずつと最近仕入れがない場合は別でございますが、最近に仕入れがあれば、その値段が一応時価の基準になる、こういうようなところを一応の手がかりとしまして、時価を調べて行く、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/69
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070・井上良二
○井上委員 もう一点、次にプラント輸出の問題について、従来三%を控除しておりましたのを、今度五%を控除することにした、こういうことになつておりますが、このブラント輸出の二十九年度の輸出見込額というものはどのくらいを見込んでおりますか。それからさらにこのプラント輸出につきましては、御存じの通り輸出入銀行から相当な金を貸しております。しかもこれに対してはいろいろな保護政策がとられております。その上にさらに減税をしなければならぬという理由はどういうことから来ておるか。それからこの収入額の三%がその取引による事業所得の五%を越えるときは、五%を限度として控除される、こういう規定になつておりますが、一体このプラント輸出による事業所得というようなものをどう区分して押えようというのか。輸出会社はあらゆるものを輸出をしておりまして、その中で特にプラント輸出だけの収益というものをどう一体押えようというのか。現にプラント輸出の利益なんというものは、ほとんど問題にならぬ利益でないかと思うが、そういう場合に、一体この法律をこのまま適用した場合、これは死文になりはせぬかということもいわれておりますが、そういう点について一体どうお考えになつておるか、それを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/70
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071・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 今度プラント輸出として——プラント輸出という名前が実はなかなかむずかしいものでございますから、一応別途そこに御提案申し上げておりますように、設備とかそういうものを一応あげまして、同時に輸出契約の金額が千万円を越える、そういうまとまつたものをもつてプラント輸出と考えるというふうにしておるわけでございますが、御質問のございました過去の実績をちよつと申し上げますと、これは機械類全体でございまして、このプラント輸出という、今われわれが御提案申し上げておるものよりも範囲は広いものと思つておりますが、それの金額は、昭和二十六年で一億六百万ドル、二十七年で一億一千万ドル、二十八年の数字は今手元にございませんが、二十九年度におきましては、ちよつと確かでございませんが、たしか一億三千万ドルくらいを考えているというふうに聞いております。
それから今第二の問題としまして、プラント輸出についてだけ何でこういうふうな特別な率を適用する必要ありや、こういう御質問でございますが、御承知のようになかなかこういう機械類の輸出というのは、非常に現在日本としましてはやりにくい立場に立つております。そこでプラントはこういう輸出が一度できて参りますと、あとは部分品でございますとか、いろいろな意味におきまして、そうした輸出の市場が開拓されますと、あとからあとから輸出が行き得る可能性もあるんじやないかというのが一つと、それから従つて同時に現在日本としては、将来重工業製品を輸出の相当大きなものに持つて行かざるを得ない、しかも現在としては条件が非常に悪い、こういうような点を考えまして、やはりこうした種類のものにつきましては、相当大きなフェーヴァを与える必要があるのではないだろうか。もちろん輸出入銀行等で一応金融的にもかなりめんどうを見ておりますが、なかなかこの輸出が伸びておりませんので、少しこの辺は考える必要があろうと思つております。
それから輸出所得との関係でございますが、これはおつしやるように、なかなかこまかい計算によりまして輸出所得だけを特に抜き出して計算するということが、非常に困難でございますので、現在におきましても、収入金額に按分しました金額をもつて一応輸出所得という計算にしております。これではどうも法律的な根拠がはつきりいたしませんので、今度の改正によりましては、これを命令に委任さしていただきまして、委任命令の形でもつてその間の関係をはつきり明定しよう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/71
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072・加藤清二
○加藤(清)委員 関連して一点だけ御質問いたします。
ただいま私のささやきに対して御丁重な御答弁がございましたが、これについてどうも矛盾があるような気がいたしますので、お尋ねするわけでございますが、会社の方の交際費は決算期が年二回になつているから、これを半分に認めたのだ、こういうお話でございましたが、繊維の方は八割に認めているのではないか、いやそれは決算が違うからだ、こういうお話でございましたけれども、これは私にはわからないことが多いのです。決算が二期にわかれているという建前のもとにそのようなことが行われるとするならば、いわゆるこの繊維消費税の第十二条には、妙ちきりんなことが書いてある。納税の期間は商売が行われた翌々月末にはすでにどんぴしやり納めなければならぬ、こういうふうになつている。ところで翌々月と申しますと、これは大分期間があるようでございますけれども、今月の末日に商売をしたものは、翌々月でございますから、六十日たつやたたずにもうすでに納めなければならぬ、こういう勘定でございます。ところでこの決済ほどのように行われているかといえば、今日糸へん業界の決済状況が九〇マルやら一五〇マルくらいになつているくらいのことは、政府当局としてはよく御承知のはずです。それが決済ができないから手形交換所で不渡り不渡りということになつて倒産商社が続出している。横山町へ行つてみても、芳町、蠣殻町でも、何も遠くへ行く必要はない、大阪の心斎橋まで出張ずる必要はない、もう幾らでも倒れている。ところでそういう状況を知りつつも、片や翌々月つまり六十日たつやたたずでぴしやと取上げておきながら、しかもこの決算はどうかというと、やはり同じように年に二回なんです。会社の決算期というのはやはり年に二回です。糸へんだから再々行われて、ほかの会社や料理屋だから半年にしか行われない、そんなことはない。一体これはどういうことでございますか。
それからもう一つ、もつとおかしいことに、これはいずれ逐条的に私質問するつもりでございますが、その次を見ますと、もつとひどいのに、保税地域から引取るものはその引取るときにどんぴしやり取上げる、こういうことになつている。ところがこれは季節ものでありまして、季節がはずれたら、ちようど今ごろ春先になれば、冬ものはどんどん値下りが来る。これは一体どうするつもりなんですか。その次の条を見るというと、納期に取り過ぎたものはあとの月の税においてさつ引くということになつていますけれども、これは実におかし、話なんです。冬ものが切れたあとは、これはずつと翌年まわしになつちやう。この点、この相違をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/72
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073・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 私が先ほど申しましたのは、二十九年度の歳入にどういうふうに計上するかという意味のことを申し上げたのです。そこで御承知だと思いますが、法人税は、現在の建前でございますと、決算期が過ぎまして、そうして三月の決算でございますと五月末日までに申告をしていただいて、そうして同時に納めていただく、こういう制度になつているわけであります。従いまして、交際費の問題が論議されますのは、結局所得いかんに関係するものですから、一月々々でもつて所得は計算しておりませんから、決算期が来て、そこでこの交際費の問題が出て来るわけです。そうしますと、この法案に今考えておりますのは、この法律が施行になつたとき以後に、この法律が施行になつてから開始する事業年度について今の問題が出て来るのです。そうしますと、結局二十九年の歳入に出て来ますのは、大きく言えば三月と九月が会社の決算だとすれば、ことしの三月の決算のものについては問題にならない。従つてその分は五月に入つて参りますが、ここで問題になつて来るのは九月の決算でもつて十一月に入つて来る分です。来年の三月に入つて来る決算の分は、これは三十年の歳入になるのです。従いまして、大きく言いますと増税で税負担がふえましても、平年度としては、たとえば三十億ふえても、二十九年度に増収になつて顔を出す分は半分だ。これは今言つたような法人税の納期がそうきまつているからそういう数字になるということを申し上げたわけであります。
それからその次の問題として、今の繊維奢侈品ですが、それは初年度においてどのくらい顔を出すかというのは、納期のきめ方によるのであります。結局納期を現在の法律のようにきめてあれば、平年度はともかくとして、初年度においては、大体半分、正確に言えば六割何分ですが、それだけ顔を出すというようなことは当然出て来るわけですから、それを申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/73
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074・加藤清二
○加藤(清)委員 私の質問している点はこういうことなんです。片や法人税だけは実情によく即して親切にしてやりながら、こちらの税だけは実情に即せずに、実情に即せぬどころか、苛酷に決済のできないうちから取ろうとしているのはどういうわけか。こういうことを聞いている。首尾一貫してないから聞いている。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/74
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075・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 法人税は実情に即して親切になつている、これはしかし考え方ですが、決算もまだできない間に税金を納めろ、これは現在中間申告である程度やつておりますが、一年決算の分についてある程度お願いしておりますが、やはり半年決算の普通の場合には、決算が終らぬうちには所得はわからぬわけですから、従つてその分について同時に決算を二回——これを親切と言われるとわれわれはずかしくなるくらいでして、どちらかというと当然のことじやないかと思います。それでは繊維品消費税の方はどうなのかという点でありますが、これは、結局現在の繊維品消費税の創設が実情に即しておるか即していないか、いろいろ議論があると思いますが、間接税全体についていえば、物品税につきましても、他の税にしましても、一応そういう方向にできているわけでございまして、なおその点につきましては、担保提供の姿によりまして、さらに一月延納ということも考えておるわけであります。これはその間の権衡等の上において検討さるべきもので、法人税とはちよつと性格が違うのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/75
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076・柴田義男
○柴田委員 今政務次官もお見えになつておりますので、所得税、法人税、物品税というものを簡単に外郭だけ伺いたいと思います。そういたします前提として、こういう税制改革をなさるために、物価指数をどういうような指数で政府当局はお考えになつておるのか。私が伺いたいことは、たとえば戦前と申しましても、昭和十六年の十二月七日までは戦前でございますが、大体経済的な常道といたしまして、昭和十四、五年を戦前と称しておりますが、昭和十五年を基準といたしました物価指数を政府当局はどういうようにお考えになつておるか承りたい。それによつて次の問題を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/76
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077・渡辺喜久造
○渡辺政府委員 今お話になりました昭和十五年という基準は、実はわれわれあまり使つておりませんものですから、今ここには数字を持つておりませんが、われわれが普通使つておりますのは戦前九年—十一年であります。これは日本銀行で調べた数字でございますが、昭和二十八年の十一月で、総平均で三六〇であります。なお将来の見通しとしましては、大体二十九年度末で一割程度、現状といいますか、昨年の暮れより下るという一応の見通しでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/77
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078・柴田義男
○柴田委員 私どもは常識的に四百倍と称しておりますが、日銀等が調べましたものは、一切の表面的な公定価格というものを基準とした調査であろうと思います。それでもけつこうでありますが、三百六十倍、そういたしますと、所得税の問題に入りますが、今われわれの手元に提案されております所得税の問題は、年収三十万を越える金額に対しまして百分の二十の課税が計画されております。そうすると、戦前の三百六十倍という諸物価の表示がここに表われたわけでありますが、昭和十一年当時年収千円の俸給生活者に対しまして、税金はかかつておらなかつたはずであります。この物価指数から仮定いたしましても、少くとも年収四十万円くらいまでは所得税は賦課すべきでないという根本的な理由がそこに存在するわけであります。それにもかかわらず、われわれ両派社会党は、現在の租税状況を考え、あるいは国の財政を考えた上に立つて、年収二十四万までは所得税の免除を常に主張しておるのであります。そういう主張を正しく、しかも物価指数の上からお考えなしに、常にそれには耳をおおいましてこういう立案をされたということは、物価指数を考えない、現在の勤労階級の収入の状況等をさらに考慮しないという結果になるでありましよう。そういうことがまず一つ。もう一つは、今度は物品税の例証をとりますならば、マッチ千本について一円という課税が計画されております。マッチの軸千本に一円という課税でありますならば、小さな小箱のマッチに五十銭の税金がかかるという結果になるのであります。こういう非常な悪税が随所に見られるのであります。サッカリンにも、ズルチンにも、あるいは子供らが飲んでおるラムネに至るまで税金の計画が立てられておる。奢侈税や時計の税金というものは、その次に大きな問題になるでありましようが、こまかい点を拾つてみましても、そういうものに対して課税が非常に残酷であるということを言わざるを得ないのであります。もう一つ申しまするならば、たとえば今の法人税の問題であります。政府機関と密接な関係のある、たとえば製糖会社等の一つ、二つの例を申してみたいと思いますが、芝浦精糖株式会社が資本金三億で、一期六箇月で純益八千四百万円を上げている。あるいはまた東洋精糖が資本金二億五千万円で九千万円の利益を上げておる。日新製糖が資本金一億で七千万円の利益を上げておる。名古屋精糖は六億の資本金で一億三千八百万円、こういうものをずつと例証にとりまして、最も代表的なものは大阪製糖が五億の資本金で一億二百万円の利益を上げております。こういう十数社の諸会社の例をとつてみますと、いずれも七割、十割という利益を上げておる会社が並んでおるのであります。こういう製糖会社というものは、みな外貨の割当をもらい、あるいはまた粗糖を輸入し、精糖にしてこれを販売すれば、どんな製糖会社でも必ずみな莫大な利益を収めておる。その反面、中小企業は毎日倒れておる。不渡り手形は一日に一千数百枚という状況を呈しておるのであります。こういう状況を私ども見ました場合に、政府の金融引締めであろうと、税制の改革でございましようと、すべてが中小企業者、勤労大衆にのみしお寄せがなされているということを言わざるを得ない。こういうことに関しまして、税制の根本的なお考え方、その立案の根本的なお考え方を承りたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/78
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079・植木庚子郎
○植木政府委員 いろいろと御意見でございましたが、政府当局といたしましては、財政全体の現在の需要の状況、それに対する歳入をいかに調達すべきかという問題につきましては、いつも非常に苦慮いたしておるのであります。敗戦の結果、わが国においては諸般の歳出事項が、あれもやりたい、これももつとやりたいということでたくさんございます。しかしながら財源の方にもおのずから限度がございますし、また財源調達の方法につきましても、ただいま御指摘のごとくいろいろな考え方もございます。政府も十分そうしたことにも意を用いまして、そうして直接税と間接税との割合等々につきましても研究を重ねた結果、今回の税制改正としては、まずこの程度でやむを得ないというところで提出をいたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/79
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080・柴田義男
○柴田委員 どうもやむを得ないという非常に不満な御答弁でございまするけれども、次官も決算委員会等で私どもと十分御審議を願いまして御承知のはずでございますが、たとえば昭和二十八年度の使い残しの分、繰越しの分が千百八十億もございます。また予備費の五百数十億の中からも、四百億も余つた金があるのであります。この昨年度の状況から判断いたしましても、今私が追究いたしましたように、これほど勤労階級、あるいは一般大衆から徴税しなくても、政府財政というものは十分やつて行けるとわれわれは考えるのであります。そういう観点から、やむを得ないということでなしに、もう少し熱意を持つて税制に対する根本的なお考え方を立ててもらいたい。どうもわれわれ考えますのに、どこまでも中央集権化を意図しておられるようである。たとえば入場税の問題一つとつてみましても、地方税から国税に移管をはかつておる。そうして反面九〇%と平衡交付金としてやるからいいではないか、こういうお考えのようでありまするが、シャウプ勧告によつて地方税制度の根本的な改革をおやりになつたのは昭和二十五年だと記憶しております。これは地方財政の基礎を強固ならしめるという目標のもとに、シャウプ勧告をお受けになつたはずなんです。シャウプ勧告そのものは、全面的にわれわれは賛成するものではありませんが、地方財政の確立のためには、あれは非常にけつこうな勧告であつた。それをまた今年になつてさらりとお捨てになつて、入場税を国税に移管しなければならないという提案をされておる。政府の意図するところのすべてが、たとえば教育法案をつくり、あるいは警察法の改正をやり、そうしてまた税制の面におきましては、国にこれを移して行く、こういう一貫した中央集権化をねらう。次に来るものは、戦争があればたいへんだから防備しなければならぬというので、国民大衆とはまつたく逆な考え方をもつて、軍備のために大わらわになつておる。こういうところを見ますると、どうしても国民大衆は納得できないではないか、こう考えるのでありまするが、もう一度次官から明快な御所見を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/80
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081・植木庚子郎
○植木政府委員 ただいまの御発言の中に、予備費が四百数十億も残つておるのじやないかというようなお言葉がございましたが、その四百数十億と申します数字は、これは各特別会計の予備費を通じて合計いたしまして、そのうち使われなかつたのがどれだけかということの決算の数字でございます。この点御了承の通りでございますが、特別会計の予備費と申しますものは、一般会計におきましての場合とは趣を異にしておりまして、それぞれ予備費に対応する予備収入というようなものが計上されておつて、しかもその予備収入がないと予備費の使用ができないというような場合もたくさんございます。従つてそれは単なる予備費の、予算の上において認められた最高金額でございまして、現実にそこに四百数十億の金が残つたというのとは趣を異にするのでございます。なおただいまいろいろの理由をおあげになりまして、そうして今日の財政状況にかんがみて、もつともつと一般大衆その他の税金を安くすべきではないかという御意見でございますが、その点はわれわれも同感なんでありまして、でき得る限り低額所得者の税金は安くして、そうして大衆課税も極力避けて行きたい、かように考えておるのでございますが、今日いろいろ政府といたしまして、歳出事項で施策をしなければならぬ問題、たとえば今もお話の自衛体制の強化というような問題については、御意見を異にする点がございます。従いまして政府としては、政府の見るところによつて、今日必要な自衛体制確立の経費をぜひとも計上したい、あるいは食糧増産のため、あるいはその他社会施設のためにも、皆様のお考えからすればなお足りないというふうに御批判を受けることとは思いますが、政府としてはでき得る限りこうした経費にも乏しい中から重点的に配分をいたして参りたい、かように努めておるつもりでございます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/81
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082・春日一幸
○春日委員 金融事情調査のために動議を提出いたします。動議の目的は、現在金融事情が非常に窮迫いたしておりまするし、わけても中小企業金融が特に危局にさらされておることは、先般本委員会において私が述べた通りであります。そこでこれの実情を調査のために、金融機関の代表を参考人として、本委員会においてそれぞれその実情について意見を述べていただく事柄についてでございます。
その理由をごく簡単に申し述べますれば、現在政府は、日銀の政策と相まつて、金融を引締めるいろいろの施策を講じておるわけでありまするが、その結果現在どういう数字が現われておるかと申しますると、政府の指定預金は、政府の方針によつて一方的に著しく削減されておるのでございまして、昨年こういう方針が政府によつて唱えられましてから本日まで、次のような計数をたどつております。すなわち十月当時四百三十一億の政府指定預金が、その後逐次減つて参りまして、一月には百六十八億、二月には百三十四億、三月においては九十九億、しかもこれがやがては逐次なくされてしまうという状況にある趣であります。ところが一方日銀貸出しの残高はどうなつておるかと申しますと、政府並びに一万田総裁は、金融引締めのために貸出し制限を行うのだと言つてはおりながら、昨年の十月には三千四百九十五億の貸出しがあり、その後逐次ふえて参りまして、本年一月には三千五百四十四億、二月には三千八百六十億、三月ただいま現在において四千八十七億、すなわち昨年の十月ころから比べますると、六百億の貸出し増を見ておるわけであります。日銀の貸出し対象となるものは、市中銀行中大銀行が主たるものでございまして、従つてこの六百億の貸出しによつて恩典を受けておるものは、これは常識的に見て大企業ではないかと思われるわけであります。しかしながら政府の指定預金によつてその対象となるものは、中小企業金融であろうと思うのであります。そうすると、一方中小企業に対しては、この五箇月間に三百億の指定預金の引揚げが行われて、その結果が今日の中小企業金融の危機になつて来ておる。数日前の新聞報道によりますると、一日の手形の不渡りが、東京手形交換所において三千件を越えておるといつておるのだが、こういうような形になつて口を割つて来たものと思うのであります。従いまして、国会はこれに対して検討を加えて、何らかの適切な施策に出なければならぬと思うのでありまするが、そのためには、全国銀行協会代表、あるいはまた信用金庫の代表、信用協同組合代表、さらには中金、国民金融公庫、こういうような庶民金融、中小企業金融の実務に携わつておる諸君の意見聞いて、そうしてわれわれはその対策のために資料をまとめなければならぬと考えますので、すみやかにこれら金融機関の代表を本委員会に参考人としてお呼びをいただきまして、委員会において、その実情について詳細な陳述を願いたいと思うわけでございます。お諮りを願いまして、そのようなおとりはからいを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/82
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083・福田繁芳
○福田(繁)委員 ただいまの春日君の動議は非常にごもつともと存ずるので、おそらく満場一致できまるものと思います。ただ問題は、本委員会の運営方法に関して、かねて理事者間においてある程度の申合せがありますので、そういう点を勘案する意味合いにおいて、ただいまの春日君の意図しておられるところを完全に実現するために、この動議の運営方法を明日の理事会で適当に御相談なさつて、そうしてかねての理事会の申合せに完全にマッチするように格別のおとりはからいをしてもらう前提条件で賛成いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/83
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084・淺香忠雄
○淺香委員長代理 ただいまの春日君の動議のごとく決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/84
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085・淺香忠雄
○淺香委員長代理 御異議なしと認めます。よつてさように決します。
なお福田繁芳君の御意見のように、参考人の選定等につきましては、委員長並びに理事会に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/85
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086・淺香忠雄
○淺香委員長代理 御異議なしと認めます。よつて御一任を願うことに決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904629X01919540310/86
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