1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年四月十日(土曜日)
午後二時二十七分開議
出席委員
委員長 稻村 順三君
理事 江藤 夏雄君 理事 大村 清一君
理事 平井 義一君 理事 高瀬 傳君
理事 下川儀太郎君 理事 鈴木 義男君
大久保武雄君 永田 良吉君
長野 長廣君 船田 中君
八木 一郎君 山崎 巖君
粟山 博君 飛鳥田一雄君
田中 稔男君 中村 高一君
出席国務大臣
国 務 大 臣 緒方 竹虎君
出席政府委員
保安政務次官 前田 正男君
保安庁次長 増原 恵吉君
保安庁長官官房
長 上村健太郎君
保安庁局長
(人事局長) 加藤 陽三君
委員外の出席者
専 門 員 龜卦川 浩君
専 門 員 小關 紹夫君
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本日の会議に付した事件
公述人の選定に関する件
防衛庁設置法案(内閣提出第九四号)
自衛隊法案(内閣提出第九五号)
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001・稻村順三
○稻村委員長 これより開会いたします。
本日の議事に入ります前に、公述人選定の件についてお諮りいたします。来る十三日、十四日の公聴会に出席する公述人といたしまして、斎藤忠君、野村吉三郎君、田畑忍君、小林まり子君、佐瀬市太郎君及び一般公募中より反対一名を公述人として決定いたしたいと存じますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/1
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002・稻村順三
○稻村委員長 御異議なければさよう決定いたします。なお公述人に多少異動がありました場合には委員長に御一任願います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/2
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003・稻村順三
○稻村委員長 それではこれより昨日に引続きまして防衛庁設置法案、自衛隊法案の両案を一括議題となし、質疑を続行いたします。高瀬傳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/3
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004・高瀬傳
○高瀬委員 実は私はこの法案について、当然審議に入る前に吉田総理あるいは代理の緒方副総理が進んで当委員会に出席いたしまして、その政府の意のあるところを述べ、われわれの質疑に答えるのが当然の義務であると考えておりましたが、本日まで審議を続行すること十数回に及びましたが、いまだ吉田総理も出席せず、今回緒方副総理の出席を求めましたところ、二時間余もわれわれが待ちましてただいま出席を見たようなのははなはだ遺憾であります。私はちよつと緒方副総理に伺いたいのでありますが、非常に御多忙だということを伺つておりますが、どういう点が御多忙なのか、御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/4
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005・緒方竹虎
○緒方国務大臣 いろいろ多忙でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/5
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006・高瀬傳
○高瀬委員 そのいろいろの内容はどんなものでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/6
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007・緒方竹虎
○緒方国務大臣 国務に関することでございますから、それはいろいろございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/7
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008・高瀬傳
○高瀬委員 それではいわゆる巷間伝うるところの新党結成とか保守合同とか、そういう問題に関連がございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/8
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009・緒方竹虎
○緒方国務大臣 直接関連はございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/9
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010・高瀬傳
○高瀬委員 それではわれわれが出席を要求したならば、御出席に相なるのが院内におられる以上、これは当然国務大臣の責務だと思う。しかるに先ほどここにおられる内閣委員の江藤君があなたのところに迎えに行かれ、また大久保君も行かれた、ところがドアが締つていて中に入れない。そういうような官僚的な状態で本院においでになつておるということは、われわれ意外とするところでございますが、それは事実でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/10
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011・緒方竹虎
○緒方国務大臣 江藤君とは、私は直接お会いしてお話をしました。今二時間待つたというお話でありますが、私は実はきのうは、この委員会と参議院の決算委員会と両方から要求がありまして、参議院の決算委員会の方は議長の名前で、数日前から要求がありましたので、そつちの方に出て、とうとう四時間半ばかりその委員会におつて、散会したのが四時半か五時半で、こつちにまわる機会がなかつたのであります。きようは私が家を出たのは昼ごろです。そのころ私の秘書から聞いただけで、特に私がこの委員会を避けて出なかつたわけでもありませんし、どういう審議をやつておるということを——防衛庁法の審議は知つておりますけれども、どの程度に進んでいるということは私承知いたさないのであります。私が特別になまけて出なかつたわけではございませんから御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/11
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012・高瀬傳
○高瀬委員 審議の状態も知らないし、何が何だかわからぬで、一体こういうふうな重大な防衛庁設置法案であるとか、自衛隊法案などというものを内閣委員会に付議して通そうと思つておられるのかどうか。非常に私は政府の意のあるところを疑うわけであります。吉田総理大臣はよく国会を無視して、東京におつても出ない場合がある。副総理もそうだということになると、やはり副総理も吉田首相と同じ考えを持つておられるということになるので、われわれとしてはその点まことに遺憾とするところなんです。実際今まで野党の質問に対しましても、全然政府は積極的にこの自衛隊設置法案あるいはその他の保安庁設置法案について説明しようとする意思も持つておられない。木村長官も出て来ていない。それでは一体こんな重大な日本の国運を左右するような問題を審議するわけにわれわれ行かないのであります。今後必ずこの審議には総理か副総理が出るというお約束をしていただけますか。約束をしなくたつてわれわれは要求いたしますけれども、これは非常に問題だと思う。副総理のそれに対する御見解を伺つてから質問したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/12
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013・緒方竹虎
○緒方国務大臣 両院の議運のおきめに従つて要求があればもちろんいつでも出ます。ただ参議院の方にも議事が行われておりますので、その間どつちに先に出るべきかということについて決定いたしかねるときがあるのであります。先ほども申しましたように、昨日は参議院の決算委員会がもう討論採決に入ることになつておつて、最後の締めくくりにぜひ総理の代理として出ろということでありましたので、そうした場合には御要求に応じかねることもあることは御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/13
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014・高瀬傳
○高瀬委員 それではそういう趣旨に従つて、進んでこの法案の質疑応答に当り、政府の趣旨を宣明されんことを希望いたしまして、質疑に入りたいと思います。
大体私の考えておるところは、この防衛庁設置法案であるとか、自衛隊設置法案、こういう非常に重大な法案が非常に遅れて提出され、しかも予算審議に間に合わなかつた、これは非常に問題であろうと思う。その点副総理は一体どういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/14
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015・緒方竹虎
○緒方国務大臣 できるだけ早く、予算審議に間に合うように出すつもりでありましたが、いろいろ政府部内において案の協議に際して時間をとりまして、遅れたことははなはだ遺憾に存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/15
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016・高瀬傳
○高瀬委員 それでは副総理に伺いますが、自由党と改進党と日本自由党と三党の防衛折衝があつたということは御存じでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/16
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017・緒方竹虎
○緒方国務大臣 知つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/17
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018・高瀬傳
○高瀬委員 それでは保安庁の方に伺いますが、この三党折衝に政府側からだれか出席いたしましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/18
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019・前田正男
○前田政府委員 お答えいたします。この三党折衝に対しましてわれわれ政府側の方は参加いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/19
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020・高瀬傳
○高瀬委員 それではこの法案作成にあたつて、三党折衝の内容をこの法案の中でどういうふうに取扱つたか、これを伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/20
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021・前田正男
○前田政府委員 三党折衝で大体きまりました要綱を尊重して作成した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/21
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022・高瀬傳
○高瀬委員 尊重したというとどの程度に尊重いたしましたか、まるのみであるか、三分の一であるか、半分であるか、そういう点をちよつと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/22
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023・前田正男
○前田政府委員 要綱の大綱はほとんどこれを尊重いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/23
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024・高瀬傳
○高瀬委員 それではこれは全部尊重してでき上つたということでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/24
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025・前田正男
○前田政府委員 今お答えいたしました通り要綱の大綱でありまして、こまかい字句、あるいはその他の点についてはおきめにならなかつた点も幾分ありますので、そういう点を私どもの方でやつたものはたくさんございます。たとえば適用除外であるとか、罰則とか、そういう方面につきまして、三党折衝できまらなかつた点は、われわれの方でつくり上げたものが相当ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/25
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026・高瀬傳
○高瀬委員 それでは三党折衝に保安庁が関与していないということはわかりました。それから要綱の大要はこれを取上げたということもわかりました。そこで緒方副総理に伺いますが、これはどういうわけで三党提案としないで、政府提案としたのか、その理由をちよつと伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/26
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027・緒方竹虎
○緒方国務大臣 これは政府が三党折衝の結果を尊重いたしまして、政府の責任において提案いたしましたから政府提出となつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/27
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028・高瀬傳
○高瀬委員 それでは副総理に伺いますが、初めから政府提案とするならば大体原案を一応本委員会に提出しておいて、その審議の途上において、意見が相違した場合に初めて各党の折衝を開始すべきであつたと思うのです。こういう点について、一体副総理はどういうふうにお考えになつて三党折衝などという下らぬものをおやりになつたのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/28
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029・緒方竹虎
○緒方国務大臣 三党折衝は政府がやつたのではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/29
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030・高瀬傳
○高瀬委員 しかし少くともその要綱の大要を採用したということについては政府は全然責任がないとはいえないと私は思うが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/30
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031・緒方竹虎
○緒方国務大臣 もちろん政府として責任があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/31
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032・高瀬傳
○高瀬委員 それでは伺いますが、本法案の要点は、三党折衝によつて政府が作成したものであつて、われわれは独自の立場でこれを審議するほかないと思うのであります。従つてわれわれはもちろん三党折衝とか、そういうものにはとらわれずに、内閣委員会独自の立場に立つて審議するつもりでありますから、さよう御承知を願います。
そこで緒方副総理に伺いますが、これはたびたび聞かれておることで一決してむづかしいことではありません。一体自衛隊と平和との関係についてでありますが、よく社会党の諸君のごときは、原爆が発明され、あるいは原子兵器が非常に発達した現在のような段階で、軍備などはいらぬというような説をなす方もありますが、これを政府はどういうふうに考えておりますか。これはいろいろな点で、これから質問をして行く上において、改進党の立場からこれを再確認しておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/32
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033・緒方竹虎
○緒方国務大臣 今日の世界の現実におきましては国に防衛力というものはなくてはならないというふうに考えております。国が独立しました以上、これについて固有の自衛権というものがあるわけであります。国力の許す限り、国民生活とにらみ合せまして、その自衛権の裏づけをする、その意味の自衛力を持つということは当然であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/33
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034・高瀬傳
○高瀬委員 それでは伺いますが、この自衛隊と独立の関係についてであります。大体現在のわが国の安全は、日米安全保障条約によつて米国軍隊の手によつて保持されていると私は考えております。保安隊は国内の治安維持に当るものと今までされておつたわけであります。しかし独立した国家が一国の安全をあげて外国の軍隊にゆだねるということはきわめて不自然であつて、現在のような日本では完全な独立国とは言えないと思うのであります。この点は緒方副総理ももちろん御同感だろう、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/34
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035・緒方竹虎
○緒方国務大臣 違います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/35
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036・高瀬傳
○高瀬委員 それでは違う点を……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/36
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037・緒方竹虎
○緒方国務大臣 日米安全保障条約によつて米国軍が駐留しておりまするけれども、それは国が自主的にきめたことでありまして、今日本の国力が十分でないから、そういう外国軍の駐留を認めておりまするけれども、日本が独立国であるということに違いはないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/37
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038・高瀬傳
○高瀬委員 それでは緒方副総理の御答弁によりますと、完全なる独立国になるためには、一刻も早く自衛の軍隊を整備して、米国の軍隊の撤退をはかるべきである、かように考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/38
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039・緒方竹虎
○緒方国務大臣 できるだけ国力とにらみ合せましてそういう段階に参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/39
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040・高瀬傳
○高瀬委員 それではもしそうであるならば、一部の人々の主張するように自衛軍備をつくることをしなければ米国軍隊はいつまでも撤退することはできない、従つて日本の真の独立を達することはできない、こういうように政府も考えておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/40
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041・緒方竹虎
○緒方国務大臣 それには国力の問題もありまするし、憲法の制約もありまするし、いわゆる軍備というものにただちに立ち至り得るかどうかということにはここに一つの問題があります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/41
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042・高瀬傳
○高瀬委員 しかしこの防衛庁設置法案、自衛隊法案などの趣旨から考えまして、この点が非常に大切であります。従つて一刻も早く日本が真の独立国家の形態を整えるためには、こういうような法案をつくり、自衛隊法をつくりあるいは防衛庁設置法をつくつて真の日本の独立を達成するところの自衛隊をつくる、こういう政府の所見でこの法案を提出されたと思うのでありますが、一体それはどうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/42
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043・緒方竹虎
○緒方国務大臣 国力の許す範囲において逐次自衛力を増強して行く、その過租にあるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/43
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044・高瀬傳
○高瀬委員 それでは次に別の自衛権というものについて伺いたい。これはすこぶる常識的な問題でありますから、副総理においては簡単なものと思いますが、元来独立国家というものは、本質上当然自分の国を守るという自衛権を持つておると思います。これを行使するために戦力を持ち軍備を持つことは独立国として当然の権利であると考えますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/44
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045・緒方竹虎
○緒方国務大臣 自衛権というものは国が独立してその領土を持ち、人民を持つている以上、ちようど個人の自己防衛と同じように、おのずから生ずる固有のものであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/45
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046・高瀬傳
○高瀬委員 それでは現行憲法の前文の世界平和の理想あるいは第九条の侵略戦争禁止のための条章、これらの条章は自衛軍備の保持を禁止するものではないと思われますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/46
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047・緒方竹虎
○緒方国務大臣 自衛権あるいは自衛力を否定しておるのではないと思いますが、軍備という言葉は多少分析しないと、はつきり軍備を持つことを認めておるとは言えないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/47
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048・高瀬傳
○高瀬委員 それではたとえば刑法の第三十六条ですか、これにも「急迫不正ノ侵害二対シ自己又ハ他人ノ権利ヲ防衛スル為メ己ムコトヲ得サルニ出テタル行為ハ之ヲ罰セス」としてありますからこの精神は国家にも当然当てはまる。従つて自衛権が国家にあるということは、ただいま副総理も言われた通りです。従つてこの自衛軍備の保持を憲法は決して禁じておるものではないと私はかたく信じますが、重ねて所見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/48
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049・緒方竹虎
○緒方国務大臣 憲法を正式解釈しまして、自衛の行為は禁じていないと用いますけれども、いわゆる軍備を持つことは第九条二項によつて禁じておる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/49
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050・高瀬傳
○高瀬委員 政府の言われる軍備というものに対する解釈はそれでわかりました。それでは話をかえまして、軍備と警察の区別について私は伺いたい。木村長官は軍隊の定義についていろいろの説明をされております。いろいろ言い方は違います。しかしながらたびたびこれは各委員によつて言われたことでありますが、外敵と戦う力は軍隊である。国内の治安の維持に当るものは警察である。これもだれも異論はないと思う。従つてこの軍隊と警察の区別について一体緒方副総理はどういうふうに考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/50
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051・緒方竹虎
○緒方国務大臣 大体同じだと思います。主として外国の侵略に備えるものが軍備であり、主として国内の治安と平和に任ずるものが警察である。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/51
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052・高瀬傳
○高瀬委員 そうすると外敵と戦う力は軍隊であるということについては御異議はないわけでありますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/52
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053・緒方竹虎
○緒方国務大臣 外敵と戦うものが——軍隊という意味がはつきりしませんが、侵略された場合にそれを防ぐ、それは防衛であります。それから主としてそうすべく備えるものは軍備でありますが、日本の場合は特殊の形でありまして、戦力に至らざる防衛力であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/53
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054・高瀬傳
○高瀬委員 そういたしますと、たびたび木村長官とも話しておりますが、一体今度できるところの自衛隊というものは軍隊であるかどうかということに対して、男であるか女であるかわからぬ。そのとき自由党の平井委員の質問に対しては、自衛隊は男でござると言つた。この間軍隊的であるとも言つた。そこで私は非常に疑問に思う。男でも女でもないけれどもやや男味が勝つているというようなものが一体、たとえば人間に例をとつて見ましてもそんなものがありましようか。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/54
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055・緒方竹虎
○緒方国務大臣 保安隊、自衛隊という特殊なものがある。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/55
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056・高瀬傳
○高瀬委員 特殊なものがあるということで、今度は次に質問が移りますが、それじや自衛隊の性格について私は伺つてみたい。今度できる自衛隊というものは、この第三条で直接及び間接侵略に対してわが国土を防衛することを主たる任務にするとはつきりきめてあります。ですからこれは無条件に軍隊たる性格を持つていると私は思う。従来の警察的任務を主とした保安隊とはまつたくその性格を異にするに至つたと思うのですが、これについては緒方副総理の所見はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/56
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057・緒方竹虎
○緒方国務大臣 政府としては戦力を持たないものは軍備でないと解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/57
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058・高瀬傳
○高瀬委員 いわゆる特殊なものだというわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/58
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059・緒方竹虎
○緒方国務大臣 そうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/59
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060・高瀬傳
○高瀬委員 それでは次に交戦権と自衛隊について伺いたい。政府はしばしば自衛隊は憲法第九条によつて交戦権を持たないから完全な軍隊ではないと言つているが、交戦権なしにどうして外国の武力侵略に対して防衛することができますか。これは大切ですからちよつと伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/60
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061・増原恵吉
○増原政府委員 お答えいたします。交戦権というのは政府の解釈では交戦国としての権利、こういう意味に解釈しているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/61
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062・高瀬傳
○高瀬委員 交戦国の権利ということは交戦することも含まれているわけですな。それからもう一つ、交戦した場合に、国際法規に従つて捕虜の待遇を受ける、あるいは赤十字社の救護を受ける、こういう二つの意味を持つておるのでありますか。それを伺つておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/62
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063・増原恵吉
○増原政府委員 交戦権というものについての政府の考え方はいわゆる戦いを交える権利という意味ではありませんで、交戦者として戦時国際法上持つ権利というふうに政府は解釈をいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/63
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064・高瀬傳
○高瀬委員 それは国際法上交戦者としてのいわゆる待遇を受ける権利、これもそれでよろしゆうございます。そでは伺いますが、憲法第九条によつて自衛のための交戦権はあるということを政府は認めておるようでありますが、それはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/64
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065・増原恵吉
○増原政府委員 自衛のための交戦権というふうに政府の方で申したことはないように記憶をいたしますが、外部から不当な武力攻撃があつた場合に自衛のためにこれに対する措置をとるという権利がある。すなわち自衛権があるというふうに申しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/65
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066・高瀬傳
○高瀬委員 これはやはり憲法九条によつて自衛のための交戦権はある、侵略を受けた場合に戦う力、いわゆる交戦権、そういうものはあると解しなければ、いわゆる直接侵略を受けた場合に鉄砲を持つことができない、大砲をぶつぱなすこともできない。非常に変なものになりますが、それはどうなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/66
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067・増原恵吉
○増原政府委員 高瀬委員の仰せになります交戦権は、どうもいわゆる戦う権利というふうに御解釈になつておるようでありまして、交戦者として持つ国際法上の権利というふうに政府は解釈をいたしておるのであります。不当侵略がありました場合にいわゆる戦いますのは、自衛権の発動という意味であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/67
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068・高瀬傳
○高瀬委員 そういたしますと今のこの自衛隊というものは、たとえば直接侵略があつて、戦争が望まざるのに起きた、交戦状態になつた、そうすると捕虜になつても、虐殺されても、何されても日本は一言もない。そういう前提のもとに立つて、このいわゆる自衛隊をつくつたということになりますが、それでよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/68
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069・増原恵吉
○増原政府委員 俘虜に関しましては、通常今まではいわゆる交戦者の権利ということで包括されて考えておりましたが、俘虜に関するジユネーヴ条約によつて、これはいわゆる戦争の場合のみでなく、相当の武力闘争といいますか、そういうものがあつた場合に、ある場合のいろいろな事態に当てはめるようになつておりまして、これは相当の組織的武力抗争のあつた場合には適用されますので、わが国で現在の憲法下においても自衛権を発動した場合には俘虜条約は適用があり、俘虜として待遇を受けるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/69
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070・高瀬傳
○高瀬委員 それではやはり国際法上非常におかしな話で、いわゆる交戦権があつて初めて国際法規によるところの俘虜の待遇、あるいは赤十字条約の待遇を受けるのであつて、それが全然ないところに重大な国際法規の適用なんか受けない。だからどうも虐殺されようが、どうされようが、日本は一言もない、そういう危険きわまりない自衛隊をつくろうとしておるとわれわれは解釈するほかはないのです。今のは非常におかしな話だ。これは国際法上の通念からいつてもてんでお話にならぬ変な軍隊であつて、こういう無責任な状態で自衛隊をつくつたのでは非常に隊員も不安だし、われわれもこんな問題をおろそかにしておつて、とうていこんなものは相手にならぬと私は思う、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/70
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071・増原恵吉
○増原政府委員 俘虜に関する条約はいわゆる交戦権という形で規定しておるのではなくて、一定の武力抗争といいますか、そういう事態についてこの条約を適用するというふうになつておるのでありまして、自衛権の発動の際にも適用があるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/71
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072・高瀬傳
○高瀬委員 ここのところは非常に問題であります。政府の答弁によると日本の自衛隊というものは国際法規の保護を受けないいわゆる軍隊であつて、問題にならぬ。政府がそういう見解をとつておれば、私どもはこの自衛隊法案の審議についてまたあらたまつた、違う見解で審議せざるを得ないと思う。
そこで次に自衛隊の性格について伺いますが、一体三党折衝でも、私は内容を知りませんが、巷間伝うるところによりますと自由党も自衛隊は軍隊であることを認めた上に立つて改進党と折衝を始めたということを聞いておるのです。(「だれに聞いたのだ」と呼ぶ者あり)いや、巷間伝うるところによれば……。一体副総理はどう考えられるか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/72
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073・緒方竹虎
○緒方国務大臣 そういうふうなことは聞いておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/73
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074・高瀬傳
○高瀬委員 それでは伺いますが。政府は現在でも自衛隊は軍隊と呼ばれてもさしつかえがない。こういうことをおつしやつておりますが、そうですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/74
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075・緒方竹虎
○緒方国務大臣 軍隊という言葉は俗語で、これはいろいろ解釈があろうと思いますが、政府の解釈しておる軍隊という意味ならばさしつかえない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/75
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076・高瀬傳
○高瀬委員 それは軍隊的性格を持つておるということもこの間木村さんは言つておりますが、それもさしつかえありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/76
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077・緒方竹虎
○緒方国務大臣 軍隊的性格の分量でありますが、ある分量を持つておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/77
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078・高瀬傳
○高瀬委員 これは非常に重大な問題です。積極的に軍隊ということを避けようと、故意にしているとしかわれわれには考えられない。これは非常に重大な問題であつて、たとえば直接侵略を受けても、俘虜の待遇も受けなければ、虐殺されても、日本国は相手国に一言の抗議もできない。これは政府の解釈ではできない。非常に大問題で隊員の士気にも関する問題であり、またわれわれは本格的な軍隊でも何でもないものに、アメリカのMSAの援助を受けようなどと毛頭思つておらぬ。全然そういう世界の国際法の保護も本質的に受ける資格もない軍隊に対して、何もMSAを受けようとも思わないし、また貴重なる国民の血税もそんなものに使おうとは全然思つておらない。これに対して一体緒方副総理はどういうように考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/78
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079・緒方竹虎
○緒方国務大臣 MSAは、日本の防衛力につきましてアメリカが援助をしようということでいろいろ受けるのでありまして、これが憲法上の軍隊であるかないかということとは別であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/79
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080・高瀬傳
○高瀬委員 これは非常に重大な問題であつて、そういうふうに政府がだらしのない考えでこれをおやりになるのであつたならば、われわれはこの審議についてほんとうにまじめに考えざるを得ないと思う。
それでは自衛隊と憲法の関係について伺いますが、これは本法案の審議上最も重大な点だと思うのです。先日木村長官は、一体軍隊というものは何だということを聞いたところが、今のは軍隊的性格があるけれども、軍隊ではない。従つてほんとうの軍隊になるには戦力を具備しなければならぬ。いわゆる他国を侵略する程度の戦力があれば、これは軍隊と言えるだろうけれども、そうでなければ軍隊ではないのだということを、先日の本委員会において多分中村高一君の質問について言われたと思う。一体これはどういうふうにお考えになつていますか伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/80
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081・前田正男
○前田政府委員 ちよつと今のお話の中で長官が戦力を備えなければ軍隊でないというふうに述べられたようでありますが、私らが今まで言つておりましたのは、そういうことを長官は言われたことはないと思います。いわゆる軍隊の定義によつては軍隊的性格を持つておると言われてもさしつかえないけれども、交戦権であるとか、あるいはその他軍隊的属性がないから軍隊ということはできない、こういうふうに答弁をしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/81
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082・高瀬傳
○高瀬委員 今までは木村さんは、自衛隊は戦力に至らざるものである、こういうことを言われた。従つてまた政府も自衛隊が増強して行つて戦力になつたときには憲法を改正すると言われた、これは間違いありませんな。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/82
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083・緒方竹虎
○緒方国務大臣 政府がそれを戦力と認めた場合にはそういたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/83
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084・高瀬傳
○高瀬委員 それでは一体政府の考えておられる戦力というものはどういうものでありますか、ひとつ伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/84
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085・増原恵吉
○増原政府委員 戦力と申しますものは、いろいろな場合において総理やあるいは木村長官から申し込べられておりますが、そのときの国際情勢、国家の地理的状態その他いろいろなものを考え合せまして、近代戦を遂行し得る総合的な力というふうに解釈をいたしております。
それからちよつとつけ加えさせていただきますが、俘虜条約は適用がなくて、自衛隊はとつつかまつたら虐殺されるのだとおつしやいましたが、たびたび申し上げましたように、俘虜条約は適用があるのでありまして、俘虜としての待遇の要求ができるものと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/85
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086・平井義一
○平井委員 先般外務大臣、木村保安庁長官に質問をいたしました折に、やはり憲法問題に触れたのであります。ただいまの高瀬委員の質問も、要は日本の自衛隊が非常にはんぱな立場である、憲法を改正して軍隊にせぬかという意味に私は解釈しておるわけでありますが、御承知のごとくMSAの援助にいたしましても軍事援助で、しかし軍隊は日本にはない。そこで特例で援助しておるということを木村長官は述べたのであります。だれが見ましても実は軍隊と言おうか言うまいか、日本国民全部がなかなかむずかしい立場ということは了承しておると思うのであります。従つて今日の自衛隊をほんとうの筋金を入れた国防軍に仕立てて行くのか、それとも今日世界で戦争をし得る力のある国はソ連とアメリカの二国しかない。ほかの国はばたばたしても戦争をする力はありません。そこで日本国は独立国としての体裁で防衛力をつくるのか、将来本気で日本を守つて行くところの軍隊を仕立てるのか、そうなれば勢い憲法を改正なければならぬのであります。しかしその時期ももうだんだん近づいておる。緒方副総理は高瀬改進党議員の言うごとく、国民の要望にこたえるならば、憲法を改正する用意があるか。しかもその時期は非常に切迫しておると私は考えておる。この点を明確にするならばただいまのはんぱな質問は私は出ぬと思いますが、これをほんとうにどういうふうに考えておるか、この点を伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/86
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087・緒方竹虎
○緒方国務大臣 お答えいたしますが、国民の要望が憲法を改正すべしという時期に達しましたならば憲法を改正すべきであると考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/87
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088・大久保武雄
○大久保委員 先ほどの増原次長の御答弁に関してちよつと質問いたします。私が先日国際交戦権について御質問いたしましたときに、俘虜の待遇については要求はできない、待遇を期待する、こういうような長官の御答弁があつたように私は記憶しておりますが、ただいまは権利がある、要求できる、こういう御答弁でありました。いささか食い違つておるようでありますが、間違いはございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/88
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089・増原恵吉
○増原政府委員 俘虜の取扱いに関するジユネーヴ条約の加盟国に対しては、要求ができます。日本も加盟国でございます。加盟国でないところに対しては条約上の権利としての要求はできませんが、おそらく国際慣例に従つてやはり要求をして、向うもこれに応ずるということになるだろうというふうに解釈をいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/89
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090・高瀬傳
○高瀬委員 先ほど増原次長の説明によりますと、どうもジェット機を持つたり原子爆弾を持つたり近代装備を持つたりしていないのは戦力ではない、こういうことなんです。この間木村さんは、一例として他国を侵略する力、こんなふうに行けば戦力だ、ところが今度の自衛隊はジェット機も持つておりますよ。明らかにジェット機も持つているのだし、原子兵器だつてあるかもわからぬ。近代装備を持つているのだから、従つてそういうものを持つているからこそ、秘密保護法だなんて変なものをおつくりになる。だからこれは結局戦力でなければ一体何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/90
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091・増原恵吉
○増原政府委員 近代戦を遂行する総合的な力ということでは概念がはつきりしないという意味において木村長官はこれを裏の方から説明をされまして、そもそも憲法第九条においていわゆる戦力を禁止した理由は、いやしくも攻撃的脅威になるとか、他国を侵略するというふうなおそれのあるものであつてはならぬから、そういう戦力を禁止するということであるから、他国を侵略し得るおそれのあるようなものであると戦力になるおそれがあるというふうに、裏を返した御説明があつたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/91
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092・高瀬傳
○高瀬委員 そうしますと、日本の自衛隊がそういうふうな状態になればそれは戦力ということになるわけですね。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/92
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093・増原恵吉
○増原政府委員 他国を侵略し得るような力になりますと、これは戦力と解すべき疑いが大分出て参ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/93
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094・高瀬傳
○高瀬委員 それは疑いでなくて、戦力となることは明らかだと思う。そこで伺いたいのは、将来二年か五年先に日本が憲法を改正するときは——結局今政府は改正しないで、将来改正するということになると、これは侵略国家になり、侵略軍備を持つということになつてしまう。これは非常に重大な問題だと思うのですが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/94
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095・増原恵吉
○増原政府委員 そういう趣旨は毛頭ございません。憲法の持つております平和を確保するという思想に、政府としては何ら反対なり変更の意思はないのであります。そういう意味で、侵略戦争をなし得るようなものを持とうという意味で戦力というものを解釈いたしておるのでは毛頭ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/95
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096・高瀬傳
○高瀬委員 しかしながら、結果においてはそう相なる。これは非常に重大な問題だと私は思う。そこで憲法第九条は、真に自衛のためならば現行憲法のもとにおいて戦力を持つことを禁止していない、こういうふうにわが改進党は解釈しております。従つて現行法のもとで戦力であるところの自衛隊を持てるという解釈をしておるのです。またもし、政府が自衛隊を持つということは憲法違反でないということを主張するためには、われわれの解釈に従うほかはないのです。だからもしそれに反対ならば、憲法を政府は改正するほかはないでしよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/96
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097・緒方竹虎
○緒方国務大臣 違います。お答えしますが、政府としましては、自衛の目的であつても戦力は持ち得ない。憲法第九条第二項の禁止は自術の場合にも禁止されておると解釈しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/97
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098・高瀬傳
○高瀬委員 もし政府がどうしてもわれわれの解釈に同調でないというならば政府は少くとも近い将来において憲法の改正を実行するということを国民の前に明らかにして、それまでの矛盾はしんぼうしてくれということを国民に頼まなければならない。一体この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/98
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099・緒方竹虎
○緒方国務大臣 国民の要望で憲法を改正すべしということになれば、改正をいたします。
それから戦力の問題につきましては、これはすでに戦力の域に達しておるからと政府で判断をして、従つて憲法を改正しなければならぬという判断をいたしました場合には、政府は憲法改正の意思を持ちます。それを改正すべきであるかどうかということは、国会の意思、御決定にまつ、こういうことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/99
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100・高瀬傳
○高瀬委員 これは大切なことです。少くともこういうような重大な問題について、政府が自分たちの考えは間違つておる。だから近い将来に必ず憲法を改正するから、しばらくの間この矛盾はがまんしてくれというならば、私どもはこの法案の審議をまじめにやるけれども、こんなことがはつきりしておらないで、戦力というものはだれがきめるのだかわからない、憲法改正というのは政府がやるのだか国民がやるのだか何がやるのだかわからないで、うやむやのうちにこういう重要法案を審議するということは非常にむずかしい。だからこの点はまことにわれわれのみならず各党とも、この二法案を審議して通過させるということについては、重大な難関があると思うのです。だから政府は真にこの法案の通過をはかろうと思うならば、やはり政府としては近い将来に憲法改正をする意思がある、その間の多少の矛盾はがまんしてくれと率直に言つたらどうですか。それを言う御意思はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/100
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101・緒方竹虎
○緒方国務大臣 政府が防衛力を増強いたしまして、それが戦力に達した場合には憲法を改正するのだということは、たびたび予算委員会その他の席におきまして総理大臣から明言しておるところでございまして、従いましてこの場合の御質問に対しましても、防衛力を増強しまして戦力に達したと政府が判断する場合に、憲法の改正を考えると思います。そのほかの場合におきましても、国民が憲法改正をすべしという、そういう民意が盛り上りました場合には改正をするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/101
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102・高瀬傳
○高瀬委員 そうするとやはり戦力ということがどうしても問題になります。戦力というものは先ほど言つたように近代戦に耐え得るところの装備、たとえばジェット機、火炎放射器——火炎放射器は日本の自衛隊にある。それからジェット機もある、あるいは原子爆弾等もあるかもわからない。そういうことがあるのだから結局これは戦力なんだから、戦力という範囲が非常に問題になるわけであります。従つてこれらの問題について、どうしても政府が憲法改正に対する所見を明らかにしないでうやむやのうちにやつて、こういう法案を審議するということはとても改進党としてもできませんから、これは政府としても一考していただきたい。ですから私どもはこの問題についてまだ質問はたくさんあります。MSAの問題その他たくさんありますから、いずれまた日をあらためて副総理に所見を伺うことにいたしまして、本日はこれでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/102
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103・稻村順三
○稻村委員長 本会議を開会いたしましたので、高瀬君の質疑は次会に続行することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101904889X02319540410/103
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