1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十九年四月三十日(金曜日)
午前十一時三十一分開議
出席委員
委員長 辻 寛一君
理事 相川 勝六君 理事 竹尾 弌君
理事 田中 久雄君 理事 松平 忠久君
伊藤 郷一君 植木庚子郎君
木村 武雄君 岸田 正記君
坂田 道太君 世耕 弘一君
原田 憲君 山中 貞則君
町村 金五君 高津 正道君
松平 忠久君 前田榮之助君
小林 進君 小林 信一君
出席政府委員
文部政務次官 福井 勇君
文部事務官
(大臣官房会計
課長) 内藤誉三郎君
文部事務官
(大学学術局
長) 稻田 清助君
文部事務官
(調査局長) 小林 行雄君
文部財保護委員
会委員長 高橋誠一郎君
文化財保護委員
会事務局長 森田 孝君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主計官) 大村 筆雄君
文部事務官
(管理局復興課
長) 北岡 健二君
専 門 員 石井つとむ君
専 門 員 横田重左衞門君
—————————————
四月三十日
委員松浦周太郎君、戸叶里子君及び中村高一君
辞任につき、その補欠として田中久雄君、松平
忠久君及び小林進君が議長の指名で委員に選任
された。
同日
田中久雄君及び松平忠久君が理事に補欠当選し
た。
—————————————
同月二十八日
公立学校教職員の政治活動制限反対に関する請
願(櫻井奎夫君紹介)(第四六九一号)
元海軍工廠工員養成所補修科卒業生の文部省学
歴認定に関する請願(辻文雄君紹介)(第四七
三三号)
教職員免許法の一部改正に関する請願(中村梅
吉君紹介)(第四七三四号)
の審査を本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した事件
理事の互選
連合審査会開会に関する件
へき地教育振興法案(内閣提出第一三二号)
文化財保護法の一部を改正する法律案(内閣提
出第十七号)
私立学校職員共済組合の助成問題に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/0
-
001・辻寛一
○辻委員長 これより会議を開きます。
去る二十八日厚生委員会より、当委員会に付託中の学校給食法案に対し連合審査会を開会の申入れがありました。厚生委員会と連合審査会を開くに決するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/1
-
002・辻寛一
○辻委員長 御異議ないようでありますから、その日時は委員長に御一任願うこととし、連合審査会を開くことに決します。委員長
この際、小林進君より一身上に関する緊急質問の申出がありますから、これを許します。小林進君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/2
-
003・小林進
○小林(進)委員 私は委員長に緊急質問をいたしたいと思うのであります。実はこの問題は、期日を明確にいたしませんが、新聞紙上に伝うるところによれば、去る三月の二十八日ということであります、そのほんとうの期日は一、二日のずれがあるかもしれませんが、二十八日を前後とする両日の間において、衆議院文部委員長の辻寛一なる者が、同じく衆議院の文部委員である右派社会党の小林進、並びに文部委員。はないが、左派社会党の山田長司両君を懲罰に付すべしという申請を、衆議院議長に提出したということが報道せられているのであります。私はこの両名のうちの、いわゆる懲罰に付すべしという申請を受けた被害者の一人たる立場から、委員長に質問をいたしたいと思うのであります。
そもそもわが日本の国会が始まつて以来、委員会においてあらゆる騒乱、乱闘が起きた前例はなしとしないのであります。しかしわれわれの調査に基けば、往々委員会の議事が円滑に進捗せず、また騒乱あるいは乱闘等の事件が起きた大半の理由は、一に委員長がその議事の運営に当を得ないということが理由となつておるのであります。しかし、それはそれといたしましても、わが日本の憲政史上そうした委員会における乱闘事件あるいは暴行事件等について、委員長みずからが自己の所管をいたしております委員会の委員の懲罰の申請をしたというような前例は、かつてないのであります。私が詳しく調査した結果によりますれば、ややこれに類似の一つの例として、たしか昨年の二月の二十三日だと記憶をいたしておりますが、当時予算委員会において——委員長は太田正孝氏でありますが、昭和二十八年度の予算の通過を目途にいたしまして、そこでやはり太田委員長が議事の円滑を欠いたために相当の騒乱事件が起きた。その席上へ、たまたま委員にあらざる自由党の本間何がしという議員が闖入して来た。たしか酒を飲んでいたと記憶いたします。そして委員会で相当に抗議を申し続けておりました改進党の中曽根委員をつかまえて、中曽根委員のネクタイを持つて首を締めるようなかつこうでありますか、実際にしたか、どうか、その点の真偽は明らかではございませんが、そういう事件が起きたときに、ただちにその席上において、中曽根君を中心とする改進党、左右社会党の諸君が、委員長に対し、本間俊一君を懲罰に付すべしという強い要求を出し、太田正孝氏はその旨を議長に申し入れた——当時の議長は大野伴睦氏でありましたが、議長は外出して通じなかつたから、副議長の岩本信行氏にその旨を伝えて、そして副議長の方から事情調査の上何らかの処置をしたいという口頭のお答えがあつた、それだけをびとつ中曽根君以下の委員諸君に申し伝えておく、こういうような事案が一つ起つたことがある。これは委員諸君から大いに要求せられたから、両者の間をとつて、太田正孝氏が委員長としての実に巧みな手段をとられた、こういう例がある。それ以外に委員長が自己の所管する委員会の委員を懲罰に付すべしなどという申請をした例はかつて一つとしてない。にもかかわらず、わが文部委員会においては、辻寛一君は一体どういううらみがあるのか、何の含むところがあるのか、自己の所管する委員会のこの小林委員を懲罰に付すべしというようなことを、公然と書類をもつて議長に申請をした。これはまことにわが憲政史上かつて前例のない新しい例をつくり上げたものである。こうした新しい問題については、将来の例となることでありますから、そういう重大問題はすべての法案の審議に先だつて十分這般の事情を明らかにして、将来に禍根を残さないようにして行くのがわれわれ国会議員の重大なる責務であると思う。この意味において緊急質問をするに至つたのでありまして、もつともわれわれは、この問題はなおさかのぼつてただちに質問をしたがつたのでありますが、わが文部委員長は、教育二法案が上程されているときにはあれほどまで、昼夜兼行とまで言いたいくらい文部委員会を開いて、われわれをして非常に過酷なる労働に従事せしめた、八時間労働とか何とかどころではない、労基法違反のような、ああいう委員会を開いて精神的肉体的に過労なる労働をさせた、ところが一旦その教育二法案が本文部委員会を通過するや、委員会を開かず、わが国会議員の職務を遂行すること困難ならしめた。それで私はわが左右両派の理事を通じてしばしば督促して来たが、委員長は病気だとかあるいは疲れて寝ているとか、そういうことを一、二日にしたのでありますが、この国会の会期は何といつても百五十日、その間において重要なる文部行政を審議するという過程において、そんなに二週間、三週間を要する長期の病気であつたら、ただちに委員長は辞職して他に委員長の席を譲るべきであるにもかかわらず、病気で寝ておつて委員会も開かない、なおかつ委員長の職は失いたくないといつて、委員長の職にとどまりながら委員会を開かない、こういう言後道断なる行為をしておる。従つて私もついこの問題を今日まで提案するいとまがなかつた。前回の委員会でやろうとしたら、ビキニの水爆問題で参考人を呼んでやるからしばらく待つてもらいたいということで、今日辛うじてこの緊急質問をする時間を与えられたというわけであります。しかも今日は法案の審議を先にして、私の緊急質問はあとにせよというような、さまざまな卑怯なる言辞を弄している。いやしくも国会に前例のないような重大問題をみずから起しておいて、自分の所管する委員会の委員の一身上に関する重大問題を軽々に措脚をしておいて、しかもその緊急質問をあとまわしにするなんということは奇怪千万である。まさに文部委員長の資格ゼロといわなければならぬと私は思うのであります。
その問題は別にいたしまして、いやしくも国民の輿望をになう国会議員の末席を汚している覇を懲罰に付するなどというようなことに対しては、これは委員長の重大なる決意と、重大なる理由があつて、私はなされたものであると思う。一体いかなる理由で、この小林進を懲罰に付せられたか。懲罰という問題は、まさに世間一般から言えば、その人を刑事罰に付すると同じだ。前科者にすると同じなんだ。重大なる問題だ。これを懲罰に付するなどというからには、確かなる証拠と、確信、信念と、いろいろ私は理由とをもつておやりになつたと思うのでありますが、いかなる理由で、一体この小林進を懲罰に付せられたのか、私はわからぬのであります。私は文部委員長から懲罰に付せられた理由を遂に聞くに至らなかつた。わか党からも理事を出しております。わが嘘の理事な通じても、委員長はこのような理由で君を懲罰に付するという了解事項を聞いたというような話も私は承つていない。いやしくも文部委員会なら文部委員会を開いて、あるいは他の委員会を開いて、——これは委員長のみの委員会ではない。理事あり、委員あり、相助け、相協力し合つて、初めて国会の審議か円滑にできるのでありまして、私は野営、あなたは与党、立場は異にいたしますけれども、私は文部委員として一日といえども委員長に協力せざるときなし。このように私は大いに協力をし、大いに援助して来た。この委員会において、教育二法案を初め、諸多の法案が通過したのは、一にこの野党があつたからだ。与党だけでは、決して法案は通過しない。われわれ健全な野党がおつて、審議の妙を尽し、運営の妙を尽し、協力を尽したからこそ、この法案が国家百年の正しい言論と、正しい主張のもとに、批判解剖せられて、なおかつ多数決によつて衆議院を通過し、今参議院を通過せんとする空気ができ上つて来たのである。まさにこうした委員会における法案の審議の過程においては、われわれ野党、特に小林進の協力などというものは、委員長感謝するに足る重大問題だ。それを何か委員長は、与党だけあれば、法案の審議はできるかのごとく考えて、私に対する一言の感謝の辞なくして、私を懲罰に付するというからには、私は重大なる理由がなければならぬと思うのであります。しかもその懲罰に付するに際しては、今申し上げますように、一言の了解もなければ、一言の連絡もなく、まさに昔のスパイ、刑事と申しますか、おまわり、捕手役人、そういつた腐つた連中の腐つた根性と同じなんだ。人の虚をついて、人を陥れて、もつて満足するという、実に下劣な心情のやり方だ。そんなことで文部委員長の職責が全うせられると思つたら、これは大きく恥じてもらわなければならぬと思うのであります。そういうわけで、今日まで私が懲罰に付せられたその理由は明らかにされていない。何で一体懲罰に付したか、理由は明らかでないのでありますが、第一の緊急質問は、何で一体私を懲罰に付せられたか、その理由を承りたい。
ただ新聞紙上に報道するところによりますれば、あの教育二法案を審議をしておりまする過程においては、何でありますか、三月の二十日でありますか、国会内部において、文部委員会において、やや委員諸君が雑踏をした問題が一つあつた。それからいよいよ委員会において教育二法案が通過するという二十五日にも、文部委員会においてやや正常な状態でない形ができ上つた。聞けば——これはまあ新聞紙の報道するところでありますか、委員長が私を懲罰動議に申請をせられた理由として……。委員長、君に言つておるのだから聞いていたまえ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/3
-
004・辻寛一
○辻委員長 よく聞えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/4
-
005・小林進
○小林(進)委員 その二十五日、聞くところによれば、文部委員会の二法案の、審議にあたつて、何かぼくが暴れて、議事の進行を阻害したことをもつて私を懲罰に付されたというふうに漏れ承つておる。あの二十五日の深夜から二十六日の朝にかけて教育二法案が通過をしたのでありますが、あの場における乱闘事件に対して、もし私がその責任を負うて、私を懲罰に付するというのであるならば、まさにその理由たるや言語道断であるといわなくてはならぬ。これはまさに耳をおおうて鈴を盗むごとく、どろぼうは小林にあらずして委員長であり、委員長に味方する与党の諸君であるということを申し上げなければならない。(「どろぼうにも五分の利か」と呼ぶ者あり)委員長、しやべらせないようにしてくれ。そもそもあの二十五日の文部委員会においては、われわれはいやしくも法案の審議も最後に来た、いわば改進党、自由党の修正案も出ておるのであるから、その修正案に対する質問をわれわれにやらしめて、重要なる法案は重要なる法案なるがごとく、質問に万遺漏なきように、完全なる形においてこの法案を審議し採決をしたい、こういう意味においてあの常任委員長室において理事会を開いた。理事会を開いて、そうして二十五日の文部委員会の議事の運営をいかにすべきかというようなその相談をしたときに、いやしくも委員長を初め自由党の理事諸君は何と言つたか。この理事会で話がきまらなければ、委員会へ行つて採決をして議事の運営をきめようじやないか、こういう申入れをした。(「あたりまえのことじやないか」と呼ぶ者あり)そんなことはあたりまえじやないのだ。今までわれわれは各委員会で、委員会を開く前には必ず理事会を開いて、そうしてその日の日程に対する議事運営の相談をするのであります。この理事会の最もモデルとするのは議運でありますけれども、まあ議運は別といたしましても、ほかの委員会、予算においてしかり、農林においてしかり、通産においてしかり、あらゆる委員会において、少くとも理事会で議事運営の話がまとまらないで、そのまま委員会に入つて多数決で議事の運営をはかるという前例はありません。(「行政監察であつたじやないか」と呼ぶ者あり)これは行政監察でやりません。やろうと言つたけれども通らなかつた。それを文部委員会において初めて、理事会の議事の運営をぶちこわしておいて、多数決でものを言つて、委員会で採決で議事の運営をきめようという、これも国会運営上初めての前例をつくつた。わが辻文部委員長は、この文部委員長になつて何年か知らぬけれども、国会における悪例を、私の知る限りにおいては二つ残しておる。どうしても理事会というものは多数決による、しかも各党派の理事が納得の上で議事を運営するというのが、明治の中葉から今日に至るまでのわが国会運営の原則だつた。あなたはこの原則をこわして、理事会のルールを破壊して、そうして文部委員会は多数決でその日の議事日程をきめようとした。そこまであなた方がやろうというなら、われわれも正当防衛だ。そういう点でわれわれの言論を圧迫し、われわれの発表を押えるならば、われわれは何としても言論発表の機関を持たなくてはならぬ。こういうわけで結論をきめたわけであります。そもそも二十五日のあの乱闘の一番最初の原因は、あげて委員長の議事運営の不始末、国会におけるルールを破壊した非民主的なその行為にあつたと断じなければならないのであります。そういうわけで、この委員会が開かれた。開かれて、ああいつた修正案に対するわれわれの質問をやらせない。そういうような無能にして非民主的な、低能、低劣な、日本の国会において各委員長を持つといえども、こういう辻君のごとく低能にして低劣、無能にして実に民主政治々解せざる委員長はかつてなきものと判断する。そういう無能な、非民主的な委員長のやり方でありまするから、われわれは泣いて馬謖を切る、実にやむにやまれぬ気持で、左右社会党が中心になりまして委員長の不信任案を上程いたし即した。そうしたら当然委員長は席を離るべきであるのに、離れたくなさそうに恋々たる物腰だつた。これは国会のルールでしかたがない。あのときの顔というものは、いまだかつてないような下劣な顔をしておりましたが、これはしかたがない。それから委員長の席を立つて、竹尾委員が委員長の席にすわつた。そうしてわれわれは不信任案を出したのでありますが、そのときに竹尾委員長代理、これがその不信任案の趣旨弁明を十分以内にこれをとどめた。しかも討論採決を禁ずると言つたからそういうような例はかつてない。それは竹尾委員長代理やめてもらわなければならぬ。これは当然われわれは院内交渉の権利に基いて、委員はその権利があります。それで委員長席へ行つて議事の通常について、そういうようなことはいかぬから、このようにやつてくださいという申出をする権利があるので、われわれは……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/5
-
006・辻寛一
○辻委員長 簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/6
-
007・小林進
○小林(進)委員 いや、だまつて聞きなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/7
-
008・辻寛一
○辻委員長 質問の要旨はよくわかりました。今でもお答えできます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/8
-
009・小林進
○小林(進)委員 おれは聞いておる。聞きに行つた。われわれは暴力は振わない。委員長それはいけませんと言つて、竹尾委員長代理の席のところへ行つて、当然の委員会内の交渉を開始いたしましたら、とたんにあの衛視の連中がなだれを打つて入つて来て、この委員会内における正当な交渉を妨害して、われわれにやらせまいとした。われわれを押えた。もしあの行為が正しいものならば、委員長はあの衛視の出過ぎた行動を制止をして、委員連の正当なる交渉権を援助するのがあたりまえにもかかわらず、自由党の諸君はあの衛視を扇動教唆いたしました。そうしてわれわれを取締るがごとき行為を行わしめた。そこでわれわれは当然身を守るという形が出て来たのでありまして、いささかも私があの委員会において懲罰に付される理由はない。まず三等席あたりで言つておる話を聞けば、私が速記者の歯を折つたし絶対にそういうことはありません。そういうようなことを私は今日に至るまで、だれの頭を打つたことも、なぐつたことも、けつたこともありません。絶対ありません。ただ正当防衛でわが身を守るためにやつた、これは当然の話だ。そういうようなことに対して私を徴罰に付するなどというようなことは、実に委員長は自分の無能を知らずして人を責めるものであるといわなければならぬのでありまして、もしそういうような理由であるならば、同じく文部委員として私に一応話をしてくれ、これがいわゆる私は政治家の当然の筋である。その筋を通さずしてかつてにやる。なおそれ以外に私がもしなおかついま一つの理由といえば、今度はその修正案の説明のとき、いよいよわれわれの不信任案は敗れた、遺憾ながら無能な委員長のもとに、われわれはまた委員として審議しなければならぬという不幸な結果になつたのでありますが、また今度は君が委員長の席について、それから今度は修正案の審議をやつた。そのときにわれわれが質問をしたのに対しても、発言を許さない。当時坂田君あたりが政府委員席にすわつてわれわれと応答していたのでありますけれども、それに対する何ら回答になつておりませんから、われわれはいま少し正確な回答をしてもらいたい、こういうことなんだ。こういうことであの議場が混乱に陥つたのであります。しかもあの混乱の状態は、われわれだけではない。あのとき一体酒を飲んで来て、議場でふらふらしたのはだれだ。これは委員長、見ただろう。あなたの政党の小澤君が、小澤国会対策委員長がああやつて、委員でもないにもかかわらず、あの議場へ来て、そうして酒を飲んであばれた。われわれを懲罰動議に付するならば、なぜ一体小澤君を懲罰に付さぬか。しかもなおかつ——これは小林信一君もここにいて、どうか委員長質問を許してくれ、われわれは当然場内交渉権を持つておる、委員会内の交渉権を持つておる。それで委員長席へ行こうとしたら、このいすを、この重いいすをぴたつと押えて(「机だろう」と呼ぶ者あり)ぴたつと机を押えて、飛び込んで行くやつに、いま少しでからだを片輪にするような重大なる暴力を振つた。一瞬の間にあやうく野原君は身を全うすることができたのでありますけれども、あれはもう百分の一秒でも狂えば、彼はもう終生命にかかわる重大事件を起しただろうけれども、こういうことをやつた。これは自由党の諸君がやつた。そういう者に対する懲罰の動議な出さぬじやないか。酒飲んで来て、二十五日にあばれた連中に対する懲罰を出さぬで、文部委員として質問の動議を出してる小林進だけを懲罰に付するとは一体何事だ。不公平もはなはだしい。しかも私はここでなおかつ言いたいことは、われわれは委員長以下全部懲罰の動議を出したい。不当な連中は山ほどいたのであります。あの二十五日はいわゆる君の議事の運営のまずさのために、十時が十一時半となつたときこれは困ると言つたが休憩に入つた。入つたときに君たちの党の幹部、わが党の幹部、国会対策委員長、書記長、左派社会党の八百板国会対策委員長あるいは総務会長、こういう三派四派の幹部諸君、改進党しかり、そこで幹部会を開いて、一十五日から二十六日の朝に至るこの委員会の騒擾事件は、あばれた問題はだれ一人個人が悪いというのじやない、だれ一人悪いというのじやない。(「松沢病院に行け」と呼び、その他発言する者多し)委員長、出せよ、発言中だ、私は。出せよ、こんなの。発言中だ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/9
-
010・辻寛一
○辻委員長 御質問を進めてください。簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/10
-
011・小林進
○小林(進)委員 しやべつてるじやないか。君は自分の党に発言を許しておる。これは何事だ。そういうことで、二教育法案という重大な法案を通過させる意味において、きようのこの問題は水に流して、自由党にも懲罰に値する連中は山ほどある、改進党にも懲罰は山ほどいる、左右社会党にも……(「改進党にはおらぬ」「取消せ」と呼び、その他発言する者多し)文部委員会に来てあばれておる……。
〔「名前を言え」と呼び、発言する者、離席する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/11
-
012・辻寛一
○辻委員長 お静かに
〔「いい加減にせい」と呼び、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/12
-
013・辻寛一
○辻委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。あとで話をいたしましよう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/13
-
014・小林進
○小林(進)委員 改進党にも懲罰に値する者がおる、左右社会党にもおる。
〔「でたらめだ」と呼び、その他発言する者多し〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/14
-
015・辻寛一
○辻委員長 小林君、小林君、委員長に対しまする質問の要旨はもう把握いたしましたから、いつでもお答えいたしますから、大体にして御質問を終つてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/15
-
016・小林進
○小林(進)委員 そんなことあるもんか。自由党にも懲罰に値する者がおる、いるがその問題はお互いに水に流して、左右社会党からは自由党や改進党に対する懲罰はやらない、自由党も改進党も左右社会党に対する懲罰はやらない。そうしてこの問題はすべて水に流して、懲罰動議などという問題は出さないことにしようという申合せがあつた。(発言する者多し)そうしてもらいたい、こういうことでわれわれ自由党や改進党の諸君に対する懲罰の動議は出さなかつた。出さないでいたにもかかわらず唐突として君たちの方は幹部間の申合せを土足でけつて——さすがに君たちの方の小澤君なりあるいわ佐藤榮作君なりほかの諸君は、やれないものだからやらなかつた。やらなかつたが、あにはからんや文部委員長たる君が、そういう四党間の申合せを踏みにじつて、この小林進を懲罰動議に付することになつたのである。これは実に政党間の道義をなくした行為であるといわなければならぬのであつて、私はその理由を明らかにしていただきたい。委員長が、かつて前例のないような所属の委員を懲罰動議に付す、あるいは政党間の申合せを蹂躪して懲罰に付する、あるいは理事においてその委員会の運営の手続をするというような、そういう手続をも蹂躪するというような、出てますます奇々怪怪、めちやくちやな国会運営方式をせられるということは、われわれ委員のみならず国会議員としてはまことに了承できない重大問題である。しかも委員長は、了承を得ないのにかつてに新聞発表をするものだから、全国の人々は、小林代議士——懲罰動議というものはあらゆる人がかけられるものだから、これはふしぎとするに足らぬけれども、あなたは文部委員をやりながら、あなたの所属している委員長によつて懲罰の動議を受けるなどということは、これはどうもまことにふかしぎた、あなたはどういうことをやつたのだというように、私は至るところでその理由を問われるのでありますが、私はその理由を述べるのに苦しむ。だからそういうようなことは明確にしていただかなければならぬ。しかもだ、委員長たる者が、前例を破つて、自己の主管している委員の懲罰の申請をされるくらいでありますから、その申請が必ず通つて小林進は懲罰に付せられることは、これはもう確信を持つていられると思う。確信のないことをあなたはやつたのであるか、それをひとつ御答弁を願いたいのであります。おそらく懲罰に値すると一旦申請をしたからには、必ず小林進を懲罰に付してその目的な貫徹する、貫徹せざるならば、省みて委員長みずから責任をとつて文部委員長をやめる、私はこれくらいの深い決心でおやりになつたと思う。人に死刑を宣するようなこういう重大な行為をされます以上、単に申請のしつぱなしにしておいて、これはまあうまく行つてもよい、うまく行かぬでもよいなどというような、人をからかうような軽卒な考えでよもやおやりになつたとは思わないが、これが通らなければ、これは文部委員長の面目問題たから、欣然として文部委員長のいすを去つて責任をとる——いやしくも自己の委員を糾弾するのでありますから、糾弾通らぬ場合は文部委員長の席を去る、これくらいの決心は、私が言うまでもなくちやんと持つておるだろうと思う。私の懲罰は今通るか通らぬかわからぬ。通らぬ場合は——私が暴力を振つたという確証もなしに、当然私が委員の職責に基いてあなたに場内交渉をやつた、その行動がよからずして私を懲罰に付したということであるならば、これはあなたも責任をとつてもらいたい。(「ニユース映画を見て来い」と呼ぶ者あり)あなたはこの懲罰がやり過ぎであつて、小林委員まことに申訳ないと陳謝をされる意思があるかないか。意思がないならば、いやしくも自分が委員長としての議事の運営の不始末のためにこういう問題が起きた、長たる者は、その委員会においてどんな問題が起きておろうとも、帰するところは委員長の不明のしからむるところであるから、泣いて同僚委員を懲罰に付するとともに、委員長みずからも責任を持つてその席を去るというのが、古今東西、わが日本の責任のとり方なんでありますから、当然あなたは委員長をやめる決心でおられると思う。人を懲罰に付しておいて、やめないでのんべんだらりとして委員長席にとどまりなどという、辻寛一はそういうけちな男じやないと私は踏んでおるが、その点をひとつ明確にしていただきたい。明確にして、ひとつ委員長はおやめになつた方がよろしいと思うがどうか。いやしくも国会議員において、あなた方自由党の幹事長佐藤栄作君が、一千万円、三百万円、百万円という金をもらつて、形のかわつた国民の税金をもらつておるということが現われても、国会審議の過程上重大な問題であるから、いわゆる逮捕許諾に応ずるわけには行かない、改進党の荒木萬壽夫君も、若干の金をもらつたかもしれないが、これも国会の審議上逮捕許諾に応ずるわけには行かない、こういうようにいたしておきながら、われわれ社会党の代議士に対しては、こういうような委員会における重要法案の審議の過程において、われわれが汗水たらして質問をしたい重大なる法案でありますから、意を尽して疑問とするところはあくまでもただして、一片の疑点もないようにしてこの法案を通過せしめたいというわけで、質問時間を与えよと言うたにもかかわらず、委員長は質問時間を与えずに打切つた、こというようなことから二十五日のあの紛争が起つておる。あなたの言論の圧迫によつてあの二十五日の紛争が起つておる。国民大衆のために、真に国会議員としての審議権の十分な発動を行わんとするわれわれの行為をかくも圧迫して、懲罰動議というような国会議員の一身上の名誉、地位を剥奪するような行為をやつておいて、それで一体どちらが重大問題であると考えておるのであるか。佐藤君のいわゆる逮捕許諾の問題と、私の懲罰の問題と、その比重を比較対照いたしまして、お答えを願いたいのであります。同僚竹尾委員からもうやめろということでありますので、竹尾委員の顔を立てて一応これで打切りますが、委員長の答弁によつてはまた繰返して申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/16
-
017・辻寛一
○辻委員長 小林君の御質問にお答えいたします。小林君は懲罰動議、懲罰動議と言われますが、それは錯覚でありまして、懲罰恐怖症に襲われておるようなお言葉でありますが、私は議長に対して報告をいたしたのであります。それは御承知と思いますが、国会法第百二十一条の二項には、「委員会において懲罰事犯があるときは、委員長は、これを議長に報告し処分を求めなければならない。」という義務規定があるのであります。これは法文はありますが、こういうような法文を適用しなければならないということは、まことに悲しむべきことで、おそらく前例はなかつたと思います。そうした意味におきまして、こうした法文に基いて、私が委員長としての責務上報告をいたさなければならないということにつきましては、私もまことに遺憾に存じておるわけであります。
しからば一体懲罰事犯があつたかなかつたかという問題です。あつた場合には委員長は必ず報告しなければならないという法文になつておりますが、とにかく教育二法案通過直前の二十五、二十六日のあの大乱闘事件でございます。小林君はあの乱闘の渦中に大いに活躍しておられましたから、詳細を御存じないかと思いますが、とにかくあの乱闘の結果といたしまして、速記者が歯を折られました、速記が強奪されました、速記者が首を絞められ、なぐられた、さまざまなるところの事件がございまして、少くともこの乱闘のときにおきましては、自由党、日本自由党、改進党の方々はみな席にはつきりついておられましたから、あの御活躍をなさいましたのは、社会党の諸君の方が大部分であつたと私は考えております。しかしあの事件というものは、まさにあの中に懲罰事犯ありと実は私個人としても思い、こういうものを懲罰事犯といわずして何をいうべきかというふうに思いました。しかし、どなたが歯を折つたとか、だれが何したということは、私自身よく確認いたしませんでした。中にはわが党の諸君におきまして、小林君がどうとかこうとか言う人もいましたけれども、私自身はよく確認しませんでした。しかし、少くともあの大乱闘の中心人物としてその主役を、小林君並びにいまお一人委員外でありましたが山田長司君が演ぜられましたということは、これは当時あの席におりました社会党、それから小林信一君を除く文部委員ひとしくこれを目撃、確認をいたしておるところでございます。従いまして、私も確認いたしておる以上、放置しておくということは委員長の責任に相なりまするので、私はあの事態を報告いたしまして、その乱闘事件の中心人物たるものは小林進君であり、山田長司君であるということは、別項のごとく、これを目撃確認した委員の名前を列記いたしまして、かような状態であるからここに御報告を申し上げてその処分を求めますという報告をいたした次第でございます。従いまして、私は涙をのんで委員長としての責任を全うした、かように考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/17
-
018・小林進
○小林(進)委員 了承はできません。一体そういう乱闘事件の中心人物とは何事です。いやしくも中心人物の確認をしたというなら——あの文部委員会は、その当時すべての問題をやるときに理事会を開いて理事会で決定しておつたにもかかわらず、今承つたけれども、そういう文部委員会の中心人物であるということの確認については、いやしくも左右社会党、無所属の小林君という、この委員会において委員長に協力して、法案審議に対して最もまじめな諸君、一番勉強しておる諸君が、ひとつもそれを確認していないじやないか。委員会には出ておらぬで、わわつと出て来てわわつと騒ぐ連中、言つちや悪いけれども、そういう連中が確認したところで、へんぱな確認じやないか。いやしくも文部委員長は自由党、改進党だけの委員長ではないのでありまして、しかもあなたは左右社会党から無所属を含めて全部の連中が選び出した委員長なんだ。その委員長が単なる一方的な委員の諸君だけの確認に基いて私を乱闘の中心人物にするとは一体何事だ。私は決して中心人物ではない。その名誉を私は返上いたします。私は先ほども言うているように、文部委員会として議事の運営の仕方がよろしくないから、私は委員の当然の職権に基いて、議事を円滑にやつてもらいたいということを委員長席に申入れに行つただけの話だ。それを衛視の諸君が私の体を抱いたから、やめろやめろとそれを追い払つただけの話だ。これを払つたのは正当防衛だ。それ以外に私は速記者に手一本触れたことはありません。足一本触れたことはありません。絶対ありません。(「ニュースに出ているじやないか」と呼ぶ者あり)ニユースを見ろ。速記席を離れて、速記者が全部いないところで私はやつている。だからそういうようなことは、私はその問題の証拠の云々を問うのじやないのであつて、なぜ一体ほかの委員の諸君の意見も聞いてくれなかつたかというのだ。田中君、君も確認した委員の一人か。——それじや自由党、改進党だけの確認においてやつたのか。私はそれを伺いたい。委員長は手続において不備があるというのか。さもなければ、議長に対する報告において手続上の不備があるということを委員長は認めるか認めないか。なおかつ、自己の行動に対して陳謝をやつてくれなければ私は承知できない。いいですか、委員長、しからばいま一回その報告書をやり直し、もう一回修正し、ほんとうの報告書を出す気分があるかないか。あなたが議長に出された報告書類があくまでも完全なものであるというなら私は了承できません。いま一回承りたい。私が中心人物であるということの確認の仕方が私は気にいらない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/18
-
019・辻寛一
○辻委員長 小林君にお答えをいたします。あの騒ぎはあの一回に限りません。文部委員長いかにも不手ぎわでありました結果何回もああいう騒動を起しておりますが、その都度、中心人物と言つては語弊がありますれば、その主要なる役目をなさつた方は小林君であることは私自身が確認いたしております。しかもあの場合におきましても小林君は先頭に立つておやりになりましたことは、私自身、委員長自身がよくこれを承知いたしております。しかもこの問題は委員会に諮つて決すべき問題ではございません。私自身はさように確認いたしておりますが、しかしそれだけでは十分でないと存じましたが、期せずして、他の委員諸君も一様に小林君がその主要人物の一人であるということを確認されましたので、ここでやむを得ず出さざるを得なかつたという結果になつておるのでありますが、手続におきましてはいささかの不備もないと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/19
-
020・小林進
○小林(進)委員 いささかも不備がないとおつしやるが、私を主領であると言われたことは重大なる発言である。いやしくも委員会は会議制で行くべきもので、一人の権力者がいて部下を統率してやるという性格のものではない。会議の上で、納得の上で事を運営して行くというのが委員会の建前であるにもかかわらず、あなたは自分自身に対するいささかの反省もない。しかもあの委員会において、委員外の議員の諸君が乗り込んでああした乱闘のちまたにした、そういうことに対する反省もない。そうして、文部委員会における法案審議の過程において、真剣にこの問題をいる私自身を懲罰に付していささかの手続上の行き過ぎもないというならば私は了承できません。しかし、この問題は他の諸君も言つているからきようはこれで質問を打切りますけれども、そういうような委員長に対して私は文部委員会で協力できない。来るべき委員会においては戦法をかえてまたこの問題に関して私は審議を継続いたします。きようはこの問題を留保いたしまして私の質問を打切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/20
-
021・辻寛一
○辻委員長 それでは、へき地教育振興法案に対する質疑に入ります。高津正道君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/21
-
022・高津正道
○高津委員 僻地教育振興のための経費の支出要求が累年盛んであつたのに、昨年度においてもそれは僅少な額にとどまつておるのであります、この法案においても何ら積極的な予算措置の裏づけが現われていないのでありますが、その最大の障害はいずこにあるかということを伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/22
-
023・稻田清助
○稻田政府委員 御指摘のように、僻地教育振興に関しまする費用は決して今日十分ではないのでありまするけれども、先般お答え申し上げましたように、前年度においてなかつた費用も、いささか本年度において新たに計上した跡もあるわけであります。すなわち、僻地教育施設整備費補助あるいは研究旅費支給その他もありまするし、勤務手当も多少増額いたしておるような次第でございます。どこに障害が横たわつておるかというような点の御質問でございまするけれども、私ども別にどれが障害というようなことは感じないのでありまするが、われわれといたしまして、最近すでに国会におきまして衆参両院で御要望もあつたような次第でございまするので、一層心強くこの問題について本年度においても努力いたしましたし、後年度においても努力いたすつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/23
-
024・高津正道
○高津委員 僻地教員の宿舎建設費の補助が非常に本年度においても少いようでありまするが、これは必要建築費のどれだけを満すことになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/24
-
025・稻田清助
○稻田政府委員 現状は御指摘のごとく何パーセントとか何分の一とまで申し得ないくらい少額なものでございます。新しい費用でございますので、年年十一箇所、補助率二分の一という程度で出発いたしておりまして、将来の点につきまして大幅に予算増額を考慮いたしますときに、御指摘のように全体についての計画を立てたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/25
-
026・高津正道
○高津委員 そうすると、この額で宿舎建設の完成見通しの年限ぐらいはわかるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/26
-
027・稻田清助
○稻田政府委員 根本的にどの程度宿舎建設をやるか、どの程度あつせんするか、どの程度地方の御協力を得るかというような点につきましては、この法案にありますように、僻地教育振興につきまして中央、地方を通じてこれから調査を十分いたすということに相下るわけでありまして、今そのめどがつきませんので、今日ただちに何年間をもつて充足する計画であるということを誓い得ないのをたいへん遺憾に考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/27
-
028・高津正道
○高津委員 この法案には、僻地の児童、生徒の通学の点で対策を講ずるように書いてありますが、それは、寄宿舎制度とかあるいはバスの料金を補助するとか、その他どういうことが考えられておるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/28
-
029・稻田清助
○稻田政府委員 第一は、季節的の分教場の問題だと思います。それから話によりましては船といつたような問題がこれに付随して考えられる手段だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/29
-
030・高津正道
○高津委員 僻地においては養護教員などがほとんど配置されてないのが実情でありますが、特に医療機知に遠い僻地の対策をどのように考えておられるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/30
-
031・稻田清助
○稻田政府委員 御承知のように、僻地におきましては医療施設また医者歯科医に非常に乏しい状況でございますので、現在地方におきましてもこの点非常に苦心せられまして、あるいは巡回診療というような班を組織するというような方法をとつておられるわけであります。この法案の企画いたしまする衛生保健施設の充実というような点につきましては、中央地方を通じて、こういうふうな巡回診療班とか、共同医療施設とかいうような点につきましては今後努力いたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/31
-
032・高津正道
○高津委員 文化環境に恵まれていない僻地の教育の施設について、どのような対策を持つておられるのでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/32
-
033・稻田清助
○稻田政府委員 僻地の児童あるいは生徒は環境上非常に経験領域が自然狭く、そういうような点からいたしまして、視覚、聴覚というような点についての教材を特別に充足する必要があろうかと思います。あるいはまた特別に修学旅行、見学というようなものも助成しなければならぬと考えております。これらにつきましては地方においても相当御努力になつておりますけれども、それらの教材その他につきましては法律案に基いて、今後中央地方を通じ十分密接な連絡をとつて参りたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/33
-
034・高津正道
○高津委員 修学旅行などに対して、僻地の関係のものに対しては特別の補助を政府委員も考えておるという点は非常にけつこうだと思いますが、法案の第二条に僻地の指定のことがうたつておりますけれども、具体的に指定する場合にどうするのであるか。すなわち文部省が一手にやるのか、都道府県にまかすのか、そうして市町村の文部委員会が都道府県の文部委員会に申請して、それをまた文部省の力で裁定するというか、きめるというか、そういうようにやるのか、その手続などのことを承つておきたいと思うのです。
なお単に全国的な標準からだけでなくて、都道府県内の総体的な関連から見なければならない点があろうかと思います。それで、文部省は指定基準に関してどのようなことを考えておられるのか、この点をひとつ承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/34
-
035・稻田清助
○稻田政府委員 この僻地の指定と申しますことは、結局僻地手当支給というような点から実際問題としていたすわけであります。従いましてその基準は都道府県条例で大綱をきめておるわけでありまして、それに基いて実際的の指定は教育委員会あるいは人事委員会等でいたす次第であります。そうしてこうした地方公務員の給与は国の教育公務員の例に準ずる性質のものでございますので、国の側におきましては、御承知のように、現在人事院におきまして、かつて大蔵省において用いておりました僻地所在官公署在勤職員の特殊勤務手当支給準則というような基準がございますが、実際問題といたしましては、各地方が前に申しましたように指定します場合に、全国的に画一というよりは、地方々々の事情に即応して指定をしている実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/35
-
036・高津正道
○高津委員 僻地の定義ですが、九州などには大体少いが、今度は離島という言葉も入つておりますし、以前から積雪寒冷地帯という言葉があるわけであります。その分はこの中に全部すつぽり入るんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/36
-
037・稻田清助
○稻田政府委員 いわゆる積雪寒冷地帯が全部この現実に僻地の指定を受けております地域に入るわけではありません。これはその地域において食い違いが現在ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/37
-
038・高津正道
○高津委員 第四条に都道府県の任務に関して規定がございますが、僻地教員の手当はたしか昭和二十三年、すなわち数年前の二千九百二十円べース以来、あのときちよつとやつて、今日に及んでいるのでありますが、地域給と同様な方式に改訂して、手当の増額をはかるような考えを持つておられるのかどうか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/38
-
039・稻田清助
○稻田政府委員 特殊勤務手当につきましては、昨年度と本年度と比較いたしますれば、およそ三分の一程度その単価を増しているわけでございます。お話の、これは地域給と同じように取扱うかという点でございますが、地域給はいろいろ論もあるわけでございます。今日全国的に物価の水準が平均化せられて来たという点からいたしまして、漸次これが本俸に繰入れられる傾向もあるように見受けられるのでありまするけれども、それとこの僻地に関する特殊勤務手当というものは、おそらく今後は別に考えられて、かりに地域給というものが本俸に繰入れられるといたしましても、これはこれとしてその特殊性ということで適正を期して行かなければならぬものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/39
-
040・高津正道
○高津委員 各都道府県は現在実情に応じて僻地手当の増額を行つているし、その改善に留意しているのでありますが、将来さらに改善を都道府県で行つた場合に、半額国庫負担法に基いて、実績の半額を支給されるのであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/40
-
041・稻田清助
○稻田政府委員 今日のところお話のように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/41
-
042・高津正道
○高津委員 僻地の教育養成施設についてお伺いします。僻地教員の確保は教育上実に重要な問題でありますが、従来僻地については正式に資格のない教員でもいたし方ないという考え方があつたのでありますが、この考え方はわれわれのとらないところであります。へき地教育振興法が出されたのはこの趣旨であるのであつて、僻地の教育を優遇することによつて、僻地こそ優秀な教員が行くというようなことを実現させたいと考えておる次第であります。そこで僻地教員の養成施設について現在どのように政府は考えているかということを明らかにしてもらいたい。
それで二点お伺いしますが、この法案による教員養成施設は二級の免許状を持つところの正式の資格を持つ教員養成をねらつておるのか、もう一つは特例としての特別資格の教員養成施設をねらつておるのか、そのどちらであるのか、これをまずお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/42
-
043・稻田清助
○稻田政府委員 この法律に基いて昨年、本年予算に計上しております僻地教員臨時要請施設でありますが、これはいわゆる現行法の仮免許状を与えまして教諭となる養成施設でありまして、一年間のものであります。これを目下御審議いただいております免許法改正案に関連して考えていただきますれば、当分の間その程度の養成を続けまして、将来これをさらに年限を二年に延長して、将来教諭として二級免許状を得しめるという計画になつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/43
-
044・辻寛一
○辻委員長 世耕弘一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/44
-
045・世耕弘一
○世耕委員 私は簡単に二点ばかりお尋ねいたしたいと思います。それは僻地教育の問題について図書の関係についてどういう方針を持つておるか。それから同時に文化施設として僻地において非常に適当と思われることはラジオの普及、それからそれに伴う蓄音機あるいは録音機の購入、こういうことが教員の待遇と相まつて必要な施設ではないか、こういう点に関して今後大いに文部省としても研究をなさる必要があるのではないか。それについて何か文部省に特別な機関を設けて徐々に解決をするのも一方法と思うのであります。具体的な問題としてどういうことを考慮されておるか、この点ちよつと伺つておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/45
-
046・福井勇
○福井政府委員 御質問の設備に対する補助については、教材費などにこれを含めて整備する目標を持つております。御提示のようなラジオだとか録音機というような名目をつけてそれにこの費用を充てるというほどまでまだ行つておりませんが、徐々に予算の許す限りそういうような御意向に沿いたいとは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/46
-
047・世耕弘一
○世耕委員 教材費という漠然とした使い方によつて、かえつて弊害が生じて効果をあげていない。だからたとえば僻地におると、ラジオが非常な文化施設の一つになる。録音機があれば必要に応じてそのラジオの放送する項目の中でいいものを録音しておいて、それを生徒に聞かせる。あるいは中央においていい先生の講演なりお話を聞いてそれを録音しておいて、僻地へ行つてその録音を生徒に聞かせるということは、いわゆる今日の文化機械を活用する一番近い方法であり、一番経済的である。こういうことは当然文部省のもとに特殊な機関を設けて具体的に研究されてしかるべきだと思うが、こういう点についての御考慮があるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/47
-
048・福井勇
○福井政府委員 今回の第五条に「文部大臣は、へき地における教育について必要な調査、研究を行い、及び資料を整備し、並びに前二条に規定する地方公共団体の任務の遂行について、地方公共団体に対し、適切な指導、助言を行わなければならない。」というような項目をうたつておりますが、御趣旨については本年度もその御意思に沿いたい意向で進めております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/48
-
049・世耕弘一
○世耕委員 最後に申し上げたいことは、最近の教育改革並びに教育の普及等に関しまして、多くは先生の待遇、月給の値上げ、あるいは校舎の設備、あるいは寄宿舎というようなことのみに偏して、ほんとうに教育内容を充実する方法についていささか関心が薄らいでおるように思われるのであります。もちろん教員の優遇並びにその方針の確立は無視すべきものではありませんが、それ以外に今日あらゆる文化施設を利用して児童を啓蒙することができる、しかもそれがきわめて少額の金でりつぱに活用できる道が相当あると思うのであります。この点について今後十分の御考慮を払つていただきたい、必ずしも教員の充実のみが全部の教育事業ではないということに特別な考慮を払つていただきたいという希望を述べて、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/49
-
050・辻寛一
○辻委員長 小林信一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/50
-
051・小林信一
○小林(信)委員 時間がないそうですから簡単にお答え願いたいと思います。
まず第一番に、この振興法をもつてほんとうに僻地教育を振興するという考えはおそらく文部省当局にもないと思います。要するにこれを土台として今後順次予算を多くとつて充実して行かなければならぬというような考えでいることも、私たちうなずけるわけでございますが、しかし法案全体からうかがいまして私たちの最も残念に思うことは、町村長に訓戒をするような法律にとどまつておる傾向があるわけです。僻地の要望するところは、地方財政が非常に窮迫しておつて、しかも教育の機会均等がそのために行われておらぬから、何らかの措置をしてもらいたいというのが要望であるけれども、しかし町村がかくかくのことをしなければならぬということを強要するにとどまつておつて、何らこれに対する政府の配慮というものが今の法案ではないわけでございます。将来の文部省の構想というものをぜひともこの際承りたいのでございまして、そういう点詳しくお伺いしたいのでございます。あるという程度でもよろしゆうございますが、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/51
-
052・福井勇
○福井政府委員 小林委員の御指摘の、この法律案を実施すれば僻地教育振興策として十分であるかどうか、これはその土台として出したのだろうというような意味のお尋ねでありますが、お説の通りこの法案を実施すれば僻地教育振興策として十分とは実は毛頭考えておりません。むしろ僻地教育振興のために第一歩を踏み出したという考えでございます。今後速急に具体化しなければならない施策として目下研究を進めておりますのは、僻地学校についての教員の配当基準の設定、教員の研究旅費の支給、施設設備の整備充実、寄宿舎、冬季分校の整備、僻地在勤教員の指定、育英資金の支給、巡回診療の完全な実施、通学の困難の除去などでございますが、この法律案に規定された諸設備を国及び地方公共団体が着実に効果的に実施することによりまして、僻地教育振興のための礎を築き、この上にさらに新しいより力強い施策な積み上げて行きたいと考えております。僻地教育振興のための施策は、一方において僻地の諸条件の解消を他の行政領域の問題として解決するとともに、僻地の許す限り、教育上の施策をたゆまず実施しなければならないと考えますので、一層この点について努力する考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/52
-
053・小林信一
○小林(信)委員 たいへん長く伺つたのですが、私のお伺いするところは、町村はかくかくのことをしなければならぬというような法律の形にこだわるのではなくて、そういう町村に対しては政府は進んで予算を獲得して便宜をはかるというように、この法律が今組み立てられておるものに拘束されないかどうかをお伺いしたわけなのです。それで当初文部大臣にちよつと住宅の問題についてお伺いしたときに、われわれは相当な額を目標にしてたくらんだ、しかしそれは今度の財政圧縮のために不可能になつたけれども、ということを承つたわけなのです。そうすると文部省が構想しておられるところの僻地教育振興の予算というものはあるわけなのか。文部省で大体この程度にすれば教育の機会均等が保てるという予算は大体どれくらいであるかを、この際お示し願えれば非常にけつこうだと思うのでございます。それにつけ加え、ましてもう一つお伺いしたいのは、一番最後の条項でございますが、県が僻地の実情に即していろいろな補助金あるいはその他の配分をあんばいしなければならないということがありますが、県があんばいしようとしましても、下から出て来るものがそういう形で出て来なければ何もならないわけです。校舎の問題にしましてもあるいはその他の教材費、すべて僻地に対する配分率というものがいつも問題になつておるわけなのですが、生徒数が少いからといつて頭割で配分された坪数では校舎というものは建たないわけなのです。それで何とか一つの教室をつくろうとすれば、僻地の財政というものは非常に苦しいわけです。この配分というものをこの法律で何か基準を示して他の法律々拘束するような形が出て来ることを私たちは希望しておつたわけたのですが、この法案では県が配分しなければならないというだけなのですが、県に対して配分し得られるような措置を国としても、今はとにかく将来は持つか、あるいはもつとこの法律を丁寧に改正して、他の教材費の問題あるいは危険校舎の問題にしましても、それらに出ております一般的な基準というものをこういう法律で、僻地に対するような余分な配分をするような拘束な打つ内容をつくるかどうか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/53
-
054・福井勇
○福井政府委員 一番先のお尋ねの僻地に対する諸施策の総予算がどのくらいあれば目標が立てられるかどうかというお尋ねにつきましては、目下調べておりますので、早晩これができ上ると思います。
なお県が配分するといういわゆる補正率と申しますか、その点につきましては、適正な補正率を定めるべくこれも研究中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/54
-
055・小林信一
○小林(信)委員 その予算の問題も、いたずらに口外して将来に災いを残すことを御心配になつておるかもしれませんが、この前に申し上げましたように、その片鱗でも見せると文部省に対する信頼感が出るわけなのです。そうでなくてさえ最近文部省の信頼がなくなつておるのですから、この機会にこういう構想を持つておるのだということを国民全般に知らせるが一番大事だと思います。そういうことが将来予算を獲得する上にも重要なことだと思います。しかしお示しにならないということならしようがないのですが、ないことはないと思います。大臣もこの前住宅予算に対して九億くらいの予算を考えておるということを言われたのですから、次官にそういうことを文部省で示さないというならむしろ次官を無視しておるわけで、次官も相当憤慨してもいいと思います。しかし国の配分の問題も、考慮ということは非常に心配なのですが、将来やるかどうかということをもう一ぺん御答弁願います。
それから小さいことですが、三条の一項、これはどうしても国が心配してやらなければ意味がないのですが、何か考えがあつて国が心配しなくて、町村に一切まかしておるのかどうか、それだけお伺いして終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/55
-
056・福井勇
○福井政府委員 将来どういうふうにするかという点につきましては、先ほど申しましたように適正な補正率を定めるべく目下研究中であります。この点は先ほども申し上げた点と同様であります。
なお文部省におきましても大臣、政務次官まつたく一位一体でありまして、無視されないようにきわて慎重な注意をもつてやつておる次第でありま
第三条の一項につきましては、僻地教育の研究協議会とか、あるいはまた各種手引き、参考資料の作成とか、あるいは僻地教育の研究指定校を定める、以上の項目についてそれぞれ予算的にも考慮しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/56
-
057・辻寛一
○辻委員長 小林進君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/57
-
058・小林進
○小林(進)委員 私はこの法案について質問をする前に、一応委員長に申入れをしておきたいと思います。それはこの文部委員会が開かれてから、しばらく文部大臣の出席を得たことがない。われわれはいつも文部大臣に緊急重大なる質問を持つておるのでありますから、委員長は早急にねがわくはきようの午後からが一番よいのでありますが、文部大臣の出席のありますように、ひとつ特別のごあつせんを願いたい。きようはできないならしかたがないから、その次の最も可及的すみやかな機会に出席を得て質問したいと思います。文部大臣がおられませんし、政務次官では間に合わないので、その点は省略いたして、今の僻地教育の問題について御質問をいたします。
私はこの振興法のできるときにはいささか審議に携わつたものでありますが、われわれがつくるときにはこんななまぬるいお湯に入つたような法案ではなかつたと思うが、でき上つてみたらさつぱり効果がないのであります。ところがこのたび修正案が出て来た。反対する理由はないのであります。ないのだが、賛成にしてもあまりなまぬるいので、効果が少いということであります。私はそういうことでははなはだ不満であります。どうせやるならさばさばとした男らしい法案を出していただいて、いま少し大幅に予算を獲得してやるくらいな心構えを文部省は打つてもらわぬと困る。ということは、今も言うように教育の機会均等の建前から申しまして、こういう法案は教育に対する根本問題だと思う。これは決してそんな簡単に考えるべき問題ではない。これは教育の基本に関する重大問題だと私は思う。そういうりくつを言つたつてしようがありませんから、今はこの法律に基いてお尋ねします。どうせ採決して今日は通過するのだそうでありますから、しかたがない、賛成するのでありますけれども、それにしても、一体これだけの法案をつくつて、それに予定されている予算が幾らか、一億七千万だ。さいぜんも政務次官が言われたように、こういうことをやる、こういうこともやると、箇条だけは十も十二も美辞麗句を並べられたがついてまわるのは予算だ。幾らの予算があるかといえば一億七千万円だ。造船の一般会社のリベートにも劣るような零細な金である。こういうようなもので教育の機会均等とか、僻地教育の振興ができるかと私は思う。いささか実は嘆かわしい存在であると思う。やるのならば、一兆円予算の中なんたから、義務教育にひとつうんと取上げて、一万トンの船なら十億くらいかかるのですから、せめて船一艘分くらいは僻地教育にまわされるべきだ。それだけのことをやらぬで文部官僚と言えるか。こういうような法案をつくりますと、一億七千万円は、結局これはほんとうの誘いの水に終つて、全部しわ寄せば県下の町村に行つてしまう。町村にはありがたい僻地教育振興法案などという法律だが、実際は、町村に言わせれば、ありがた迷惑だ。法律はつくりつぱなしで、あとのしわ寄せはみんな町村に行く。それでなくても市町村の財政はもう破綻に瀕して、赤字に次ぐ赤字だ。それをまたこの法律で、新しいわずかの補助金をもらつて、あとは全部市町村負担というような形になつて、ありがたさ余つて迷惑しごくだということになる。そういうことのないように、町村に迷惑をかけないでこの法律を、しかもこの法律の通りに一体とこまで遂行できるか。そういう町村に対する思いやりが一体あるのかないのか、まずこの点を私は第一点としてお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/58
-
059・稻田清助
○稻田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、現在といたしましては、第一歩を踏み出したという程度でありますのを遺憾に考えておりますが、現在としては、御指摘のように約一億七千万円程度でありまして、大部分は特殊勤務手当と、それから僻地教育施設の整備費補助でありまして、そのほか金額は少うございますが、それぞれ研修、教育内容の充実、教員養成という面に一わたりいろいろな目的を考えておるような次第でございます。従いましてこれらは全部部分的補助でありまして、まつたく町村の財政負担なしにはできない性質のものであります。将来といたしましては、先ほど政務次官からお答えいたしましたように、総合的の調査のもとにおきまして、各般のことを考究いたしたいと思つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/59
-
060・小林進
○小林(進)委員 私も、結局こういう法律ができるというと、みんな町村へしわ寄せされて行くと思うのです。痛しかゆしです。この法律自体の持つ必要性というものは痛感するのでありますが、あわせて市町村がどうも痛めつけられるというので、非常に困つてるのでありますが、この点はひとつ今も言うように、出発しただけであるからとおつしやいますから、そういう点において了承しますけれども、どうか三十年度の予算を獲得するときは、私ども大いに御援助、御協力いたしますから、遠慮なしに、こんなものは一億だとか、五億だとか、十億だとか言わずに、これは教育の機会均等の基本に関する重大問題でありますから、せめて百億とか二百億とかいう思い切つた予算を出して闘う態勢をつくり上げてもらいたい。文部官僚も大蔵官僚も国家の官僚にかわりはない。何かというと文部官僚は、大蔵官僚に対してはふるえ上つておるが、予算をもらえなければ仕事をしないというくらいの決心をして、もう少しふんばつてやつてもらいたいと私は思う。
それからいま一つ申し上げておきますが、この僻地教育の中心は、やはり教育の機会均等という言葉で尽きるのでありますけれども、一体こういう例を御承知かどうか。たとえて言えば、今町村合併が方々ではやつておつて、父兄が、僻地もできれば町へ町へとつきたがつておる。一体その区域をそれほどまで広げて、実益がないにもかかわらず市の中へ合併したいとか、あるいは町へ合併したいとかいうが、どういう理由なんですかということを聞きますと、僻地が合併したがつておる根本の理由は、教育だという。何といつても町の学校の方の設備がいい、何といつても市の学校の方が設備がいい、上の学校への入学、あるいは教材、児童の知能から学校の設備からすべて問題にならぬ、われわれは各町村合併して、そうして三里の道、五里の道といえどもなお遠しとせずして市の学校へ入学させたい、これが根本の理由なんだ、こういうことをしばしば聞くのでありますが、その具体的な例として、私ども初めて遭遇したのでありますけれども、山の中のあるちつちやな学校でいわゆる定員外と称して、貧乏な僻村が一箇年にその村の予算を十万円なり八万円なり、一番ひどいのは三十万円組んで、定員外の教員を二人雇つておる。これは特殊な例外として、全部県や文部省の定員にないところの先生を雇つておる。子供がかわいいからというのでやりくりをして、特別の予算を十万円、十二万円組んで、そうして定員外の教員を雇つて教育をしておるそれらの学校があるのを一体御存じかどうか。なお承知しているとすれば、一体そういうものに対する救済策な文部省は考えておるかどうか。もし僻地教育などということをあなた方が論ぜられるならば、現実にそれまでやりくりをして困つている僻地の町村に対して、一体この法律による救済策があるかどうかということも私はお伺いをしておきたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/60
-
061・福井勇
○福井政府委員 御指摘のような非常に遺憾なことが行われておるということは、まだこちらの調査がそこまで行つておりませんので、今後その点は調べまして善処することにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/61
-
062・小林進
○小林(進)委員 私は今も、言うように、教職員の定員定額制などという問題には、すでにそういうものを全部市町村へしわ寄せされて、僻地にはそういう悲しむべき問題がある。その現実にまたこの法律が出て来る。そうした定員外の教員を養つておるうちに、またこの振興法でもつて町村財政は余分な経費を出して行かなくてはならぬということで、だんだん僻地へ僻地へと新しいしわ寄せが入つて来ておる。いやしくもあなた方教育に携わる者は、そういう実情に即して、何といつても僻村には経費の負担をかけないで、なおかつその子弟なりをりつぱに教育するという考え方でこの法律をつくつてもらわなければ困る。苦しみに増す苦しみをするだけじやない。その一例として私はそういう定員外のもぐりの話をしたのでありますが、どうか将来、われわれも努力しますが、あなた方の方もそういうようなもぐりの定員をちやんと公認の定員に載せて、そうして教育がりつぱにできるようにということを、この法律の成立にあたつて私は十分考えていただかなければならないということを申し上げておきます。
それから次にいま一つお伺いしたいと思うことは、今は父兄の立場あるいは児童の立場から申し上げたのでありますが、第三番目には、赴任しておる教師の立場についてです。この先生の立場も、私が申し上げるまでもなく、十分ここで審議し尽されたことであろうとは思いますが、その教師の待遇の問題についてお尋ねをしたいのであります。現在全国の教職員がもらつている地域給の予算の総額は幾らか。またこれから新しく教員に支給される僻地の特殊手当といいますか、僻地手当として支給されるものの予算は一体幾品であるか、その総計をここでひとつ私はお尋ねしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/62
-
063・稻田清助
○稻田政府委員 現在特殊勤務手当を支給いたしております額は一億五千二百余万円でありますから、それの半額を負担いたすとして七千六百余万円国庫から出しておるわけでございます。
ただいま御質問がありました地域給につきましては、五分から二割というようなめどで考えてみますと、大体総額として二十五億程度と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/63
-
064・小林進
○小林(進)委員 私はここにまた一つの重大な問題があると思つている。さつきも稻田政府委員がおつしやつたように、何か地域給も本給に陥没しそうだとおつしやいましたが、そんなことはございません。今まで五級地にわかれておりましたのが、一級地だけは確かに本給に陥没いたしましたが、あとの四級の段階は残つておる。あなた方はみんな一番最高の地域給をもらつておる組なんですから、これをもらつてうれしくてしようがないでしようけれども、あなた方が都会において最高二割か二割五分の地域給もらつている陰には、そういう僻地の山の中で、鳥も通わぬようなところで、たつた四百円、三百円差をつけられて教育に任じている教員がいる。一体これで、その支給の仕方が妥当であるかどうか、これをひとつ考えてもらいたい。大蔵省の役人はともかく、文部省の教育に携わつておるあなた方としては、こういう問題を考えてもらいたいと私は思う。もちろん各県で半分あるいは半分以上出しますが、九百円もらつているところもあるし八百円もらつているところもあります。しかし最高を見たところで、その僻地の特殊手当というものはおそらく千円とは出ておりません。地域的な、いわゆる地域給からながめれば私はまことに微々たるものだと思う。こんなことでへき地教育振興法でございますの、山の中へいい教員をやつて、機会均等で山の中の子供も都会の子供も平等に教育させますと言つたところで、それは実は法文の体裁だけで、おかしくてそんなこと聞いていられないということも私は言いたくなるのでありまして、まず教員は何といつても人でありますから、いま少しこういう僻地手当などというものも、これもあなたは出発せられたばかりとおつしやいますけれども、いま少し差をつけて、せめては地域給ぐらいの程度を僻地手当として支給するという心構えを、私は政府が提案なさるについてはまず腹をきめてもらわなくちやいかぬと思います。先ほどのあなたのお話のように、もう物資の交流もでき上つて、都会もいなかもそういう方面の差はないとおつしやる。私もその通りだと思う。むしろ地域給というものの必要性はそれほど痛感しておりませんけれども、各地区から非常に猛烈な運動が来るものでありますから、人事院総裁もこの国会の終末を待つて——国会の開会中は予算もないから、うつかり勧告を出すと政府が窮地に陥るというので、花月八日に国会が閉会すれば九月八日に勧告するし、一箇月延びれば、延びた国会の最終日に地域給の勧告をして、大幅の地域給引上げをはかるということに人事院の腹はきまつているらしい。あれほどまでに地域給に対しては熱を入れてかかつているけれども、僻地というものはほんのお体裁だけで終つている。この点は、われわれも今後大いに僻地教員の手当の充実のために闘いたいと思いますが、文部省も十分努力をするという熱意があるかないか、今の地僻手当で満足するかどうか、ひとつ腹のはつきりした御返答をお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/64
-
065・福井勇
○福井政府委員 御指摘の点につきましては、将来予算の許す限り、目標に向つて進みたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/65
-
066・辻寛一
○辻委員長 他に御質疑はありませんか。——なければこれにて本案に対する質疑は終了いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/66
-
067・辻寛一
○辻委員長 御異議なきものと認めます。
本案に対する修正案が伊藤郷一君より委員、長の手元に提出されております。その趣旨説明を求めます。伊藤郷一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/67
-
068・伊藤郷一
○伊藤(郷)委員 私は提案者を代表いたしまして、ただいま議題になりましたへき地教育振興法案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
まず初めに修正案文を朗読いたします。
へき地教育振興法案に対する修正案
へき地教育復興法案の一部を次のように修正する。
第二条中「交通至難」を「交通困難」に改める。
第四条に次の一項を加える。
4 都道府県は、市町村の行うべき地学校に勤務する教員及び職員の定員の決定について特別の考慮を払い、並びにこれらの者の採用について必要な指導、助言及びあつ旋をしなければならない。
第五条中「対し、適切な指導、助言を行わなければならない」を「対し適切な指導、助言を行い、又は必要なあつ旋をしなければならない」に改める。
第六条中「補助することができる」を「補助するものとする」に改める
次に、この修正の趣旨を申し上げます。
その第一点は、第二条の定義の「交通至難」を「交通困難」に改める点であります。もともと僻地とはどういう地域をさしていうのかということを明確に規定することは相当にむずかしい条件を含んでいるのであります。すなわち国全体の観点に立つときは、北海道、東北、あるいは長崎県、鹿児島県のようにたくさんの離島を持つ県等は、その道、県が国の僻地であります、さらに道府県の中にも僻地があつて、その僻地性には相当の幅がございます。また季節的にも冬季積雪のために僻地となるところもあり、距離は近いが地形に妨げられている場合、あるいは経済価値に乏しいために交通機関に恵まれないというように、相対的には非常に幅が広く、それに自然的、経済的、文化的な諸要素の上に交通事情がからみ合つておりますので、その基準を定義つけんことはなかなかむずかしいのであります、しかし概括いたしますときは、交通条件に比例していると考えられますので、この条件をあまり厳格に規定するときは、僻地の範囲が狭められることとなりまして、この法律の目的に沿わないことになりますので、できるだけ幅と弾力性を持たせるため、言葉は簡単でありますが、この意味を強く含ませましてこの効率を上げる趣意に出ているのであります。
次に第二点といたしまして、第四条に新たに第四項を起した点であります。この理由は、市町村立学校職員の定数につきましては、都道府県がその条例をもつて定める範囲内で、市町村の教育委員会が、都道府県の教育委員会と協議して定めることになつておりますが、その定数を、市町村内の各学校の定員として決定するにあたりましては、僻地学校については、その特殊事情を十分に考慮に入れて、決定する方、その一体については、都道府県の教育委員会が必要な指導、助言、あつせんをいたし、もつて地方教育委員会と都道府県教育委員会との緊密かつ積極的な協力によつて僻地学校の教育内容の充実をはからせようというねらいであります。
次に第三点といたしまして、僻地学校の教育事情の改善を促進させるため、第五条の文部大臣の任務に対し、市町村及び都道府県を指導、助言するだけではなく、さらに積極的に僻地学校の通学条件の改善のため、たとえば通学用バスとかボート等の購入のため起債、あるいは児童の健康管理に伴いまする巡回診療、または医薬の供給等の場合、つとめてあつせんの労をとつてもらいますように修正するものであります。
次の第四点は、第六条の国の補助につきましては、政府に確実な補助を行わせるため、義務規定に修正したのであります。
以上、この法案に対する修正の趣旨を明らかにいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/68
-
069・辻寛一
○辻委員長 ただいま説明がありました修正案に対して御質疑はございませんか。——ないようでありますので、本案並びに修正案に対する質疑は終了いたしました。
本案並びに伊藤郷一君提出の修正案を一括して討論に付します。高津正道君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/69
-
070・高津正道
○高津委員 私は日本社公党を代表して、これよりへき地教育振興法案に対する討論を行わんとするものでありますが、具体的に申しますと、本委員会全会一致による修正案並びにその部分を除いた残余の部分に対する賛成意見の開陳ということに相なるわけであります。
この討論を行うにあたりまして、本日本委員会がこの重要な法案の討論を行い、採決せんとしているにあたり、いまだに大達文相が欠席していることは、政府の僻地教育に対する熱意に疑問を持つものがあるかをおそれ、これを遺憾とするものであります。
さて、政府を代表した本法案の提案理由の説明を承つた場合、「現下わが国の教育におきまして、全国的に見て、一般の場合と異なつた特殊な事情によつてその発展を阻害されておりますのが僻地における教育であります。」とあり、その僻地教育の実情を認めていられますが、このことは近年、教育者また広く識者によつて指摘されて来たところであります。そして昨年の第十六国会のこの文部委員会において、私たちが同僚諸君とともに僻地教育復興の重要性を認め、僻地教育振興に関する決議を全会一致で決議いたしましたのも、この認識から出発したものであり、一つには僻地のあらゆる悪条件のもとで、たつとい教育愛に燃えて日夜奮闘を続けている教員諸君の熱情にこたえるためでありました。これはまた教育の機会均等という近代国家の教育政策の基本を生かす立場から、またわが国の教育の発展向上という立場から、また都鄙の差等な見ざる文化国家の建設を志してという立場から、さらに多量の林産資源、地下資源、水産資源の包蔵されている地域に対する国土開発という立場からというがごとき種々な観点から、私たちの熱情を込めて行つたものがあの僻地教育復興に関する決議でありました。従いまして、この第十九国会においてこのへき地教育振興法案が提案されるに至りましたことは、まず私たちの欣快とするところであります。
私たちは御同様に広く各地の農山村、漁村、離島等にまたがつている僻地を歩いて、他に比べてその交通の困難なこと、経済の貧困なこと、さらに文化的な後進性、沈滞性を現実にながめ、あまつさえ現場の教師諸君を初め、当該学校のPTA及び当該自治団体の役職員から、あるいは口頭で、あるいは通信文書で熱心な訴えを承つております関係上、かかる環境のもとにある学校、教職員、児童生徒およそ僻地教育一般に対し、政治が何らかの積極的な手を打たねばならないことをいやが上にも痛感しておりました。それだけに、本法案に対する私の期待は大きかつたにのであります。
しかしながら法案について見ますと、必ずしも私たちの期待通りというものではありません。それゆえにこそ、この伊藤郷一君説明にかかる全会一致の修正案を見たわけでありますが、この大小四点の修正が加えられたとて、大といつたとてきわめて小さい改善にとどまるので、私たちは依然として満足この上もなしと申すことはできません。すなわちわが党は完全なものを要求しますけれども、その完璧のものが不可能なときは、次善のものの実現をはかつて、国家国民の現在及び将来の利益にいささかでも貢献することが政党の任務であり、責任であると考えていますので、修正を加えたるところの本案に賛成する次第であります。
国及び地方公共団体が、教育の機会均等の趣旨に基き、僻地における教育を振興するために実施しなければならない諸施策を明らかにし、もつて僻地における教育水準の向上をはかることを目的としたところのこの法律は、全文九箇条よりなつておりますが、規定するところのその諸施策の実施は、例によつて政令で定めるとなつている部分が多く、当局者の責任のきわめて重かつ大なることを思わざるを得ません。願わくば政府、文部大臣、文部当局、都道府県当局、市町村当局並びに各級の教育委員会が、当文部委員会の質疑応答のうちに表記されている僻地教育振興の意図をくみとられ、学制布かれて八十年間、最近年までほとんど忘れられた存在であつたかのごとき僻地教育に対し、大なる同情、理解を持たれ、あらゆる努力を傾注されんことを希望いたします。
特に優秀教師の確保方策としては、教師の生活の安定をはかるため、僻地教員の定員増を初めとして、教員給与諸手当の平和なる大増額、教員住宅の大幅な増設、教員の研究意欲を高め、僻地教育振興のための研修の機会とその経費を気前よく提供すること、僻地教職員の子弟に対する育英資金の補助ないし優先貸付など、ほとんど何人も到達している常識的結論でありまして、万遺漏なきを期せられたい。本法に伴う予算は、本日も稲田政府委員より聞き及んだのでありますが、そのうち一億円は予算修正によつて追加されたもので、僻地に今後建てられて行くことになる集会室の建設費の国庫半額負担となつており、これだけでも若干僻地教育に対する貢献となることを私は認めます、とにかく、私は一にも予算、二にも予算と叫び続けましよう。そして本法の通過実施を見るに至りたる後も、私は委員各位とともに、各級当局のなすところを見守るとともに、私に着想や所感がある場合には、これを進言するだけの熱意を持つていることを申し添え、大いなる希望を本法案に託し、ここに私の賛成討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/70
-
071・辻寛一
○辻委員長 討論はこれにて終局いたしました。
これよりへき地教育振興法案並びに伊藤郷一君提出の修正案の採決に入ります。まず伊藤郷一君提出の修正案の採決を行います、この修正案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/71
-
072・辻寛一
○辻委員長 起立総員。よつて伊藤郷一君提出の修正案は可決いたしました。
次に、ただいまの修正部分を除いた原案について採決いたします。伊藤郷一君提出の修正部分を除いた原案に賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/72
-
073・辻寛一
○辻委員長 起立総員。よつて本案は修正議決いたしました。
この際田中久雄君より、ただいま修正議決されましたへき地教育振興法案に対し、附帯決議を付する旨の動議が提出されております。田中久雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/73
-
074・田中久雄
○田中(久)委員 ただいま議決せられましたへき地教育振興法案に対し、同僚諸君の同意を得まして附帯決議を付する動議を提出いたします。
まずその案文を朗読いたします
へき地教育振興法案に対する附帯決議案
一、中央教育審議会に、へき地の教育事情を正確に反映させ、これが対策に資し得るような措置を速やかに講ずること。
二、へき地学校に勤務する教員及び職員の特殊勤務手当を、速かに大幅に増額して支給し得るように必要な措置を講ずること。
三、へき地の小規模学校を本校等に統合して、教育効果の向上を図ろうとするときは、その施設について、これを国庫補助の対象とする途を開くように措置すること
四、へき地における教育の特殊事情並びにへき地学校の所在する地方公共団体の財政事情にかんがみ、集会室の建設だけではなくへき地の事情に即応するように校舎、寄宿舎の施設、設備についても、速かにその内容を整備するため、特別な基準を設け、及び国庫補助、起債等についても特別な措置を講ずること。
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/74
-
075・辻寛一
○辻委員長 田中久雄君の附帯決議動議について採決いたします。賛成の諸君の御起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/75
-
076・辻寛一
○辻委員長 起立総員。よつて田中久雄君の動議は可決されました。よつて本案は附帯決議を付して修正議決されました。
なお本案修正議決に伴う委員会報告書の作成等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/76
-
077・辻寛一
○辻委員長 御異議がなければ、さように決します。
暫時休憩いたしまして、午後二時半より再開をいたします。
午後一時二十三分休憩
————◇—————
午後三時十四分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/77
-
078・辻寛一
○辻委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
理事の補欠選挙を行います。田中久雄君、松平忠久君の両君は一時委員を辞任せられ、本日再び委員に選任されました。先例により委員長において両君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議がないようでありますからさように決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/78
-
079・辻寛一
○辻委員長 原田憲君より緊急質問の申出があります。これを許します。原田憲君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/79
-
080・原田憲
○原田委員 私は私立学校教職員共済組合関係につきまして、四、五点質問をいたしたいと思うのでございます。
昨年第十六国会におきましてこの委員会で総員賛成のもとに制定されまして、本年一月一日から実施せられました私立学校教職員共済組合は、全国四千数百の私立学校、七万教職員とその家族に重大な関係がございまして、ひいてはこれら私立学校に学ぶ百六十余万の被教育者にも影響を持つわが国私立学校振興上の問題でございます。この組合の目的とするところは、すでに明らかなごとく、教育基本法第六条の精神にのつとつて、公の奉仕者であり、その待遇の適正を期する方法の一つとして、国立学校の教職員と均衡を保つような共済制度を実施することであり、特に政府提出の原案に対して、第三十五条において、「都道府県は、当該都道府県の予算の範囲内において、組合品の業務に要する経費について補助することができる。」ということと、及び附則におきまして、私立学校振興会法の一部を改めて、私立学校の職員の研修、福利厚生等の事業を行う者に対し、その施設、事業等について必要な資金を貸し付け、または助成することと改めておるのでございまして、私立学校振興会からの私学共済組合に対しての貸付と助成の道を明らかにいたしておりますが、また本法制定の際、特に役員、運営審議会の委員の任命、掛金率、国及び都道府県の助成金について附帯決議をいたしております。以上の、経過にかんがみまして、実施後四箇月を経過しております現在、私学共済組合の現状と運営等が法律制定の趣旨に沿い健全かつ公正妥当に行われておるかどうかということを質問し、もし未解決の点があるならば、その解決をはかりたいと思いまして、本日政府、特に文部省、大蔵省の担当官に質問をいたそうといたすものでございます。
まずその第一点は、現在私学共済組合に加盟しておる学校と教職員数はどのくらいであるか、また附則二十二項により適用除外を申請して厚生年金または健康保険に残つた学校数及び教職員の数がどのくらいあるか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/80
-
081・北岡健二
○北岡説明員 第一の、適用除外になつております学校数及び教職員数を申し上げます。大学におきましては三十八校で一万一千二百五十二名、短期大学におきまして十六校六百八十九人、高等学校、中学校、小学校等において四十一校の二千八十六名、幼稚園が四十五園で二百六十八人、各種学校が六校で三百二十二人、合計しまして一万四千六百十七人、百四十六校でございます。
それから、ただいま申し上げましたのは適用除外の学校でありますが、加盟いたして手続を終つておりますものが、大学七十校八千二十三名、短期大学九十一校千二百七十三名、それから高等学校、中学校等が八百七十校、二万七千二百十六名、各種学校が二百六十四校で、三千五百十六名、幼稚園が二千二百十一で、一万二百二十三名でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/81
-
082・原田憲
○原田委員 この私学共済組合ができましてから、なおかつ適用除外を申請して厚生年金または健康保険に残つておる学校が相当数まだございますが、これはおそらく私学共済組合に比べて厚生年金や健康保険の有利な点があるからであると思います。質問を簡単にいたすために、その点についてこちらから申し上げますが、厚生年金に対する国の補助率は、今度の改正で百分の十五である。ところが私学共済の方は百分の十である。掛金率は千分の三十で、私学共済の千分の七十八に比べると著しく低い。また六箇月以上二十年未満であつても、組合員が死亡したときは遺族の給付が行われるが、私学共済にはそのことがないというような点がありまして、私学共済の方が不利であるというようなところから残つておると私は推察いたします。そこで私学教職員の掛金率は発足当時どうなつていたのか、定款ではどうなつておるかということをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/82
-
083・北岡健二
○北岡説明員 私学共済の掛金率は、短期給付におきましては千分の五十八で、折半負担であります。それから長期給付は千分の七十八という計算になりまして、これの折半で千分の三十九ずつでございます。但し組合発足の当時におきまして、この掛金率でそのまま実施いたすことを、暫定的に別の措置をとりまして、昭和二十九年一月から三月までの掛金につきまして、短期給付の方は規定の通り千分の五十八にいたしましたが、長期給付の力におきましては千分の六十二に下げました。そういう実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/83
-
084・原田憲
○原田委員 その一月から三月まで長期給付の掛金率を引下げた理由はどういう理由でございますか。またその中に国の補助、都道府県の補助、私立学校振興会の助成はどれほど見込まれておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/84
-
085・北岡健二
○北岡説明員 お答えいたします。長期給付を千分の六十二に下げましたのは、共済組合の掛金を担当する私立学校の教職員及び折半負担をいたします学校法人が財政的その他の状況から非常に窮迫をいたしておりますので、従つて一挙に千分の百三十六というような負担をいたしますことは、非常に負担過重になつて困るというふうな状況がございました。もう一つは、掛金率を算定いたしますにつきまして、先ほど申し上げたような適用除外等の制度がございまして、組合員の実際の状況等の把握について、発足前においては正確な期しがたい点がございましたので、そういうような点を考慮いたしまして、長期について千分の六十二という考えをとりました。短期につきましては、これは他の共済組合の実例等からして、最低どれほどいるかということは一応想像がつきますので、そういう制度をとつて、負担軽減というふうな気持の方は長期の方においてのみいたしました。そうしてその千分の百二十にいたすについては、国の補助の増額とか、あるいは振興会の特別の助成とかいう点につきましては、特別の考慮を払わずに、一応未確定の要素に対するものとして暫定的にそういう措置をとつた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/85
-
086・原田憲
○原田委員 その未確定の分のために暫定的にそういうことをしたということでございます。最近全国の私立学校あるいは私学総連というような団体から、掛金の暫定措置の延長、また都道府県からの補助金の未確定のものの確定、それから私立学校振興会からの助成金の確定を要望して来ております。本法の制定の趣旨、法律の内容から見ても当然のことと思いますが、文部省あるいは大蔵省ではこれらのことについてどのような努力を払つておられるか。また学校法人と紹介員の掛金率については、長期、短期と合せて千分の百二十とするよう国と都道府県の助成を大幅に要望することをわれわれは決議しておりますが、これについて大蔵省、文部省はどのような努力をされておるか。さらに厚生年金保険法の改正によりまして、国庫の補助が百分の十から百分の十五に引上げられております。私学共済に対する国の補助率を引上げることが必要であると思いますが、文部省はこれについてどういう準備を行つておられるか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/86
-
087・北岡健二
○北岡説明員 未確定な要素につきましては、共済組合を督励いたしまして、組合員に実際になつた者について今その資料の整備をいたしております。これによつて財源その他の計算をいたして、正確なものにいたしたいという考えでございます。都道府県の助成につきましては、文部省としても都道府県が助成して補助をしてくれますように依願をいたしておりますが、昨年中においてはごくわずかな助成の確定がありましただけで、現在のところ補助がはつきりいたしましたものはまだわずかでございます。私立学校振興会からの助成につきましては、年度末において現実に剰余金という形で残りましたものが、二十七年度の剰余金として一千三百万くらいの金額がございましたが、このうち組合の発足の事務のために百万円の助成をいたしました。そのあとについては、それだけでは特にそれをもつて充てるだけの助成対象というものがはつきりいたしません。一応積み立てたまま残しております。
厚生年金の国庫補助率が十五になりました点については、厚生年金と他の社会保障制度との間に多少の性格的な開きがありまして、私立学校共済組合としては、公立学校教職員の共済組合、あるいは国家公務員の共済組合等との関連もございますので、まだただちに十五の線を出すところまで考えておりませんが、何とかそういう方法が可能であるならは実現いたしたいという考えでございます。
掛金率の百二十を目途といたします点については、共済組合の掛金は、これが主たる財源になつて共済組合の給付が行われるわけでございまして、その給付に相当するだけの財源が必要であることは明瞭でございます。従つて掛金は給付に相応じて掛金率がきまつて参るわけでございますが、一方では先ほど申し上げたような再計算の必要といいますか、そういう点がございますし、他方には国の助成、あるいは私立学校振興会からの助成、都道府県の補助というふうなものにつきましても、財源の目途がついてそれで引下げるように運んで参るのが適当かと考えます。ただいま申し上げましたような都道府県の補助、あるいは振興会の助成等について、何とかそういう道を拡張する線を進めたいという気持で努力をいたしておるような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/87
-
088・原田憲
○原田委員 努力しているというが、具体的に都道府県でこのようにこの助成をやつておるかということについて、どのように努力を払われて来て、具体的にどのように現われて来ているかということを私は聞いておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/88
-
089・北岡健二
○北岡説明員 都道府県の補助につきましては、前年度中に都道府県で議決いたしましたものが金額にして八十二万円程度でございました。大部分の都道府県においては、昨年度中にそこまでの意志決定ができませんでした。それで本年度になりまして、補正等においてそれを考慮するというふうな約束といいますか、意思表示のありました県等が相当ございますが、まだ本年度に入つての議会というものが開かれておりませんので、今正確に財源として数え上げるというふうなところまでは参つておりません。今のところ未確定な状態のままであるというふうに御了解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/89
-
090・原田憲
○原田委員 私の調査したところでは、今言われたように未確定ではあるけれども、大体補正できめようということについて、すでに千分の八程度を助成する見込みがあるものは、岩手、秋田、栃木、茨城、埼玉、岐阜、福井、兵庫、福島、大分、愛媛、香川、それから補助の意思があつて企画中のものが東京、静岡、愛知、京都、大阪、山口、福岡、鹿児島、それらのところまで至つておらないものがわずかにあと十八県ということになつております。そこで大体私は、これは各府県ともこの私学共済組合について助成する意思があるものと判断いたしておりますので、文部省としてなおせつかくできたこの共済組合法を確立するために努力を続けていただきたいと思います。
それから大蔵省にちよつとお聞きいたしたいのでございますが、われわれはこの振興会の方から幾分助成をできるようにということをうたつておるのでありますけれども、聞くところによると大蔵省では、振興会からこの共済組合に対してそういうものをしてはいけないというような見解を持つておるように漏れ承るのでありますけれども、そういう事実はございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/90
-
091・大村筆雄
○大村説明員 私学振興会の助成についてどういう考えかという御質問でございますが、その前に私ども共済組合の掛金をどうきめるべきかということについて考えを申し上げますと、実は社会保障制度につきましては、これは各制度にそれぞれの差異がございます。いまだにある程度の差異がございまして、先ほど御質問がございましたように、厚生年金保険に対しては一割五分、あるいは共済組合に一割というふうに違いがございます。従いまして社会保障制度を進めて参りますにつきましては、できるだけ充実した給付でもつて、なるべく安い保険率が好ましいのでありますけれども、その差額の国庫補助という点になりますと、ある程度これは国家財政の負担の限度というものがあります。従いまして、共済組合の掛金につきましては、ある程度横の社会保障制度との均衡というものを考えまして、なるべく均衡をとりながら制度自体も推進して行きたい、かように考えております。従いまして、振興会から助成するにつきましても、常に共済組合に入つております組合員、あるいは私学の経営者の負担というものをあくまで頭に置きながら、かつ類似のほかの制度との均衡を考えつつこの助成という問題を考えて行かなければならぬのではないか、こういう点につきましては、こういう見地から私ども考えておるのでございます。従いまして、私学共済組合が発足してから今まで約三箇月たつておるのでございますが、当初は七万人入る予定でありましたものが五万人に減つておりまして、この実績を基礎といたしますと、この掛金率がどのくらいになるであろうか、この実績を私ども早急にお出し願うことをお願いしておるわけでございますが、この実績を見まして、その実績と他の各制度との間のバランスを考えて振興会からの助成金を願う、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/91
-
092・原田憲
○原田委員 それでは助成することはいけないということではなしに、いろいろ調べてみた上でやれるものならやるがいい、そういうふうに了解していいわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/92
-
093・大村筆雄
○大村説明員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/93
-
094・原田憲
○原田委員 私学振興会に現在相当な資本金がございますが、これらの戦災貸付金とか、あるいは剰余金が一体どのくらいあるのか、それから私学共済組合の方からは、剰余金が相当あるからこれを助成してもらいたいと言つている声が相当あるのでございますけれども、今大村主計官に聞きますと、それをしいて行わないという理由はないわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/94
-
095・大村筆雄
○大村説明員 さようでございますが、先ほども申し上げました通りに、私学振興会の剰余金と申しましても、私学振興会の目的は、これは御承知の通り、私学の戦災等によつて荒廃しております施設なり設備を充実させることが目的でございます。従いまして、昨年度は十五億、今年度は五億の出資をしておりますが、なおかつ私学の方としては、これをもつと充実してほしいという要望もある状況でございまして、これは剰余金と申しましても、私学振興会の本来の目的から言えば、施設なり設備の充実をはかるべきではないかという意見もございますし、かたがた他の類似の社会保障制度との均衡もございまして、そういう点を勘案しながら私学振興会の運営というものをやらなければいけないのじやないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/95
-
096・原田憲
○原田委員 あなたの言われることもわからないわけではありませんが、この前この法律をつくつたときに、それがわざわざできるように附則で——先ほども私申し上げましたが、振興会法の一部を改正したのはそのために改正したのだ。それで現在剰余金がおそらく年二億円くらいあるのではないかと思われますので、そのうちの六千万円から七千万円程度ならば十分できると思うのですが、大蔵省、文部省はどういうぐあいにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/96
-
097・大村筆雄
○大村説明員 私学振興会から共済組合に助成することはいけないのだ、あるいはできないのだと申し上げておるわけではないのでございまして、これは当然法律上もやれるようになつておりますし、ある人はやつてさしつかえないと思うのでございますけれども、先ほど申しました通りに、私学振興会の本来の目的、それから共済組合に対する助成をいたします場合に、その掛金率はほかの社会保障制度との均衡というものを考えてやらなければいけないのではないか、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/97
-
098・原田憲
○原田委員 大体私の質問の要旨は終つておるのでございますが、問題は三箇月にわたつてこの掛金の率を下げて現在まで至つておるということは、私学共済組合をこしらえて、そうしてこれをりつぱに育て上げようという趣旨からそういう暫定的な措置がとられたのであろうと思います。そうしたならば、やはり千分の百二十ということが理想としてはもつともであるということについては、大蔵省も文部省も異論はないと思うのでございますが、その点についてはいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/98
-
099・北岡健二
○北岡説明員 千分の百二十という点につきましては、正確に申しますと、先ほど申し上げましたように、組合員の実態によつて計算をいたした上で検討いたさなければならない。但し掛金が低くなつて、そして教職員及び学校法人がそれぞれ共済組合によつて与えられるりつぱな給付をふところの心配なしに授かれるような線に持つて行きたいということは、文部省といたしましても十分考えております。従いまして当面の目標が百二十というふうに掲けられておりますことについて、やはり低いところをというねらいから、百二十に含めて、そういう線にできれば持つて行きたい、それには財源その他についてさらに努力いたし、先ほど申し上げましたように、せつかくできました私立学校の共済組合制度がふところの心配なしに、その恩典にあずかれるようなふうに持つて行きたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/99
-
100・原田憲
○原田委員 結局はあなたの言つておられるところも、やはりうまく行つたら千分の百二十で、なるべく掛金が少くてこの制度が生かされたらよいということになるのだと思います。現在の私学の先生たちの給料を見ましても、公立の先生たちの給料と比べたら、平均一万五千円と一万二千円というふうに三千円の相違がある。なおかつ公立の先生たちには、そのほか家族手当とか地域給とか、そういうものがありまして、一万八十円近くにまでなるというふうに、相当な開きがある中で、これだけの掛金をして行かなければならないということは相当つらいことであると思います。一方公務員は、自分がかけた以外のものは国によつて、あるいは府県によつて補助されるが、私学の方は、結局私学自体が行うということも私学にとつては相当つらいことであります。私学振興の意味からいうならば、国がこの法律をつくつて実施した以上、国の方が努力するということは当然であると私は思うのであります。先ほど大村さんもおつしやいましたが、掛金の状態などを見て、そうして振興会からの助成についても考えたいということでございますが、この際三月間行つて来た千分の百二十を一年間延長するということについていかがお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/100
-
101・北岡健二
○北岡説明員 千分の百二十といいますか、現在暫定措置をとつておりますその率を一年間延長することにつきましては、すでに前からそういうことを考えまして、いろいろ検討いたしておりますが、何しろ共済組合におきましては財源という問題がございまして、経営に穴が明くというふうなことになる面も一面では考えざるを得ないと思います。従いまして現行の措置を引延はして負担の軽減をはかり、その間にほんとうに計算をしてやるということ、あるいはその計算の結果、非常に高いものが出て来るというふうなことになつて参りますことを考慮して、暫定的に、段階的に低いところから事を運んで行くというふうなことにつきまして、いろいろ方法も考えられると思いますし、また考慮しなければならない点も多々あるわけでございます。そういうふうな点から、先ほどからおつしやる通りの百二十そのものずばりに行くかどうかまではまだ検討の余地がございます。実質的にそういうことになる場合も考えられますし、形の上ではつきりそういう線が定款に載せられる場合もありますし、いろいろ方法がありまして、まだ実は暫定措置につきましても未検討な点があるわけでありまして、大蔵省の協力を得まして、その点について今いろいろ骨を折つて、少くとも御期待に近い線で、しかも監督といいますか、共済組合自体の経営の大よその点について何ら疑点のないようなところに規定いたしたいという気持で、組合の発足以来ずつと実はいろいろの方法を検討し、方策を研究してやつて来ておるような状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/101
-
102・大村筆雄
○大村説明員 私ども一応三百十六という掛金率をつくりましたときには、これは公立の共済組合員の負担との均衡というものを考えまして、相当無理をして、努力をして、公立共済組合員と同じ程度の負担という意味で百三十六というものをつくつたのであります。そこで私ども先ほどから実績を出して来るのを待つておると申しましたのは、実は百三十六よりはある程度上まわるという見込みを持つておるわけでありまして、それを考えますと、ある程度府県の補助も期待できましようし、私学振興会の補助も期待できると思いますが、百二十というものはどうしても上まわるのではないか。そういう点から、今ここで急に百三十六に上げられるのも困るとおつしやる私学側のお気持もわかります。従いまして、そこらの中間の辺で暫定的にひとつやつたらどうであろうか、かようなふうに今のところ考えて、文部当局とも御相談申し上げて来たようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/102
-
103・原田憲
○原田委員 大蔵省、文部省のお気持は大体よくわかりました。私たちこの法律をつくつたものの考えといたしましては、やはり私学振興の意味から、掛金は少くして、そうして十分な給付も受けられ、それが働く教員たちの身分の上に非常な安心感を与えるということが目的だつたのでありますから、この趣旨に沿つて共済組合を生かして行くことが望ましいのでございます。今の千分の百三十六とかいうものは公立学校との均衡もあるということでありますが、国の方は恩給法などの適用も受けておつて、これも掛金の率などは非常に少い。私学の力は全部自分たちがやらなければならない。もちろんそこに私学と公立学校との違いがあるのでありますけれども、今日私学の占める地位、教育上に果しておる力というものを考えるときに、われわれはできるだけその要望に応じて私学振興のために尽さなければならないと考えるのでございます。結局私学側の要望、またわれわれの要望のように、掛金率を暫定的にこうしておいて、そうして府県の補助あるいは振興会からの助成の確立を見て、これで行けるとなつたらこうしろというのと、大蔵省的な考え方からして、はつきりするものははつきりした上で、下げられるものなら下げたい。助成するものなら助成したいという物の見方と一つの見方があると思います。私は私たちの考え方から、どうしてもこれを生かして行く第一歩といたしまして、今暫定的にきめておるものを延長させて、その上に充実して行つてから正確な率を出す。それがあるいは十分の百三十六になるなら、そのときはやむを得ない。しかし現在の千分の百二十で置いておくことによつて、必らずそれで行けるという見通しがついており、そのために私学振興会からの補助もいただきたいということでございますので、文部省、また大蔵省の方でもこの際期間延長のことについて十分な考慮を払われることを要望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/103
-
104・辻寛一
○辻委員長 次に、文化財保護法の一部を改正する法律案を議題として質疑に入ります。高津正道君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/104
-
105・高津正道
○高津委員 本日は文化財保護委員会の高橋誠一郎委員長が御出席になつておりますので、この法案の審議にあたつて、三、四点御答弁をいただきたいと存じます。
敗戦したとはいえ、わが国の持つ重要文化財たる仏像等の彫刻品、刀剣、あるいは絵画、あるいは典籍その他多くの貴重なる美術品が、終戦以来、累年太平洋を渡つて外国へ流れていることは多くの人の知るところの常識かと存じます。それらがすでに多く太平洋を渡つたし、かつ渡りつつあるものに、国宝、準国宝的文化財が多いことは、新聞雑誌等にしばしば愛国的筆致で報道されているところであります。文化財保護委員会委員長は、それらの事実なしと考えていられるか。これが第一の質問であり、第二点は、海外に流出するものありと認められるならば、従来それに対して何らかの防止措置をとられたかいなか。またそのとられたる処置はいかなるものであつたかをまず質問いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/105
-
106・高橋誠一郎
○高橋(誠)政府委員 お答えいたします。終戦後特に国宝級の文化財でありまして海外に出てしまいましたものは刀剣でございます。これは終戦後警察当局の不注意と申しますか、大よそ四十五本の刀剣が所在不明になつたのであります。まことに遺憾なことでありまして、ただちに文部大臣から関係方面に交渉いたしまして、その返還を求めておるのでございますが、なかなか返つて参りません。これは文化財保護委員会設立以前のことでございます。文化財保護委員会設立後におきましては、重要な文化財、ことに国宝などに関しまして、海外に流出したものはまずなかろうと申してよかろうと存じます。常に注意を払つておるのでございまするが、どうもほんとうに出てしまつたというものを聞かないのであります。しかしながらなおわれわれは流出をでき得る限りとどめたいという考えで、あらゆる手段を尽しておりまして、税関そのほか他の関係官庁とも連絡をとつておりますので、ただいまのところでは、まずその危険はないように存じまするが、なお十分の注意を払つて参りたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/106
-
107・高津正道
○高津委員 文化財保護法の一部を改正する法律案は、四六倍判六十七ページの厖大なものでありまして、当文部委員会で扱つた法案中、まさに量において最大のものであります。これを調べて参りますと、文化財専門審議会を規定してあるところの第二十一条第二項のうちに「四 重要文化財の現状変更又は輸出の許可」というものが入つておりますが、審議会は、重要文化財の現状変更または輸出の許可について調査審議し、その結果を文化財保護委員会に建議することになつております。これは現行の文化財保護法になかつたものを新たに加えて、私が最初に質問した文化財の海外流出なと士阻止する目的を果そうとされるものであるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/107
-
108・森田孝
○森田(孝)政府委員 ただいまお示しの条文は、条文の整理で専門審議会の諮問事項を全部改正法案に列挙いたしましたので、従来あつた規定でありますけれども、改正法案にも載つたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/108
-
109・高津正道
○高津委員 現行法をこの改正案によつて改正した場合どのような利点があるのでしようか。私は提案理由説明も、その補足説明もともに読んでみました、しかし頭の疲れでしようか、どうもつかみにくくて困つておりますが、そこでこの改正による利点を一つあげれば何か、三つあげれば何か、二通りその御答弁をいただけば、この厖大なもののどこに重点があるかがわかつて便利でありますから、どうぞその点をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/109
-
110・森田孝
○森田(孝)政府委員 一つあげればどれだということはちよつと申し上げにくいかもしれませんが、一番大きい点は、過去四箇年の文化財保護法施行の実績に照して、実情に齟齬なしに今後行い得るという点であります。それで個別的に例をあげれば、第一番は、従来史跡名勝天然記念物の条文は比較的条文がそろつておりますが、国宝、重要文化財にあつては保護の条文があまりそろつていなかつたので、これをそろえたのであります。
第二番は、史跡名勝天然記念物と鉱業権その他の財産権との調整が十分できていなかつた。これを私権の尊重を十分にはかるような措置を講じたことであります。
それから第三番目は、民俗資料というものが法文にありながら、条文の整理が十分でなかつたために、これを文化財保護委員会において十分に保護し得る体制を整えたことであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/110
-
111・高津正道
○高津委員 私はしろうとで、専門的用語なしにお尋ねいたしますが、一般に軽く思つており、政府においても手抜かりをしておることが往々見受けられることは遺憾のきわみであります。政治の盲点といいますか、文化財保護の行政の面を見るに、たとえば深川の芭蕉の遺跡が実に荒廃しておつて、かつその存在するところの周囲といいますか、環境といいますか、あまりにもひどいので、心ある外国人が東京都庁や署名なる新聞社を訪れて、この芭蕉の古跡の案内を頼んで、その現場に行つて、その状態に非常に驚くのが常であるということを私は聞いておるのであります。この文化財保護法二部改正法律案は、この芭蕉の古跡のごときものを、もつと尊重し得るように措置し得る規定がどこかに入つておるのでしようかどうかということが一点。また保護委員会当局は、この芭蕉の古跡を近い将来に何とかもつと重大視して、何らかの措置を講ずる用意がおありであるかどうか。この二点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/111
-
112・高橋誠一郎
○高橋(誠)政府委員 今回の法律改正のおもなる点の一つといたしまして、この管理団体というものが指定せられておるのでございます。これは先ほどお話のありましたように、国宝もしくは重要文化財の所有者でありまして、あるいは貧困とか、あるいは文化財の所在地から遠く離れて生活しておるとかいうような事情によりまして十分その管理の責めを果すことができないというものが相当ありますので、それによつて荒廃を一層はなはだしくしているものがあるのであります。たとえば海龍王寺のごとき、あるいは唐招提寺のごときものであります。唐招提寺などは住職が兼務しておりますので、わきへ行つてしまつておるというようなことでありまして、その管理の責めを果すことのできない場合が多いのであります。そういうひとつの盲点とでも申しますか、そういう点から見まして地方公共団体そのほかの法人が管理する、あるいは修理する、公開を行う、こういう規定を設けたのでありまして、これによつてただいま御質問のありましたような御懸念は、一部分除き去られることと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/112
-
113・辻寛一
○辻委員長 他に御質疑はございませんか。世耕弘一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/113
-
114・世耕弘一
○世耕委員 ちよつと簡単にお尋ねしておきます。文化財保存に熱中して公開ということを忘れるようなことがあつては、私はほんとうの文化財保護の趣旨が徹底しないことになるのではないか。こういう点について、新しい構想を何かお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/114
-
115・森田孝
○森田(孝)政府委員 公開が必要であるということは、文化財保護法の第一条の目的に保存及び活用となつておりまして、文化財保護委員会の活動といたしましても、公開は保護と同様に重点を置いて参つておるのであります。ただこれは所有者の所有権との関係で、従来は所有者がやる場合においては無条件であつたのでありますが、非常に専門的な技術を必要とするために、これが指導並びに助言を行い得る道を開きまして、これらをますます盛んにすると同時に、保護の万全を期するような道を今度の改正法で行つたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/115
-
116・世耕弘一
○世耕委員 もう一点お尋ねしておきたいのは、無形文化財というようなものは、公開、普及というようなところにその目的があるのじやないか。その点についてどういう構想をお持ちになつておるか。たとえば録音にするなら録音にした場合に、録音をどの程度において普及せしめる方法を講ずるか、これは一例でありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/116
-
117・森田孝
○森田(孝)政府委員 無形文化財につきましては、御承知の通り人によつて身につけられたところの技術なり芸術でありますので、これらにつきましては、その人々の持つておるところのすぐれた技術なり芸術というものを、ただいま仰せになりましたように映画なりレコードなり、あるいはまた文書なり、工芸美術につきましてはその製作過程の工程見本をとりまして、これらを公開するような方法を考えております。また公開交付金として、若干ではありますが予算を計上しておりまして、こちらの指定したような優秀なる芸能の公開につきまして交付金をいたすことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/117
-
118・世耕弘一
○世耕委員 そういう工芸芸術のようなものの後継者を養成するということも、文化財保護の一つの方法であると思います。そういう点について何か考えを及ぼしておられるかどうか。
もう一つは、フイルムに収めたものをできるだけ大衆に公開するということでないと、保存ばかり中心になつてしまつて意味をなさぬ。どうもその点が少し欠陥じやないかと思われるのですが、それについて何か御構想がおありになるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/118
-
119・森田孝
○森田(孝)政府委員 第一番の後継者の養成でありますけれども、後継者の養成につきましては、文化財保護委員会においても非常に力をいたしておりまして、現在大がかりにやつておりますのは、仏像の修理技術者の養成をいたしておりますが、その他香川県の蒟醤存清とか、あるいはまた三重県の型紙などにつきましては、それぞれ研究所並びに後継者養成所をつくつて参りまして、これに対して補助金を出す等を本年度に計画しておるわけであります。
それから公開の点につきましては、まつたく仰せの通りでございまして、われわれの方といたしましては、つくりましたところの映画について随時貸出しの規定を設けて、各地方の要望に応じて貸出しをいたすことになつております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/119
-
120・世耕弘一
○世耕委員 もう一点、芸術品や何かの問題では、たとえば今仰せられた技術者養成の方面でも、後継者をつくるということはできますけれども、たとえばお芝居とか、そういうような芸能方面、何かお考えがありますか。この点も十分考えておかなければならぬと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/120
-
121・森田孝
○森田(孝)政府委員 ただいま、昨年からいたしておりますのは、文楽の後継者の養成でありまして、それは浄瑠璃、三味線、人形つかいの三つにわけまして、それぞれ国と大阪府と大阪市の三者共同で後継者の養成を行つております。歌舞伎につきましても、目下同様なこと々計画いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/121
-
122・世耕弘一
○世耕委員 予算を政府の費用にまつばかりでなしに、そういう公開の方法を講じて、その結末収入を得て、さらに文化財保護の真義を徹底する意味において新しい計画を持つべきだと思いますが、そういう点について何かお考えがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/122
-
123・森田孝
○森田(孝)政府委員 今の点、一つの例だけあげて申し上げますと、ほかにもいろいろ同じようなことをやつておりますが、たとえば文楽につきましては、東京で公演になる場合におきましては、必ず一日をさいて学生生徒の観覧日を設けまして、それに対して講師によつて詳細な解説をしていただく、なお解説書を配付するというようなことをいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/123
-
124・竹尾弌
○竹尾委員 無形文化財についてのお尋ねですが、特に歌舞伎その他についてお尋ね申し上げますが、委員長さんば経済学者であると同時に、浮世絵方面の大家でもありますし、特に御関心が深いと存じております。ところで無形文化財の芸能方面につきましては、たとえばどの時代のものをどの程度で保護するとか、そういう基準があるのでございましようか。大分古い時代のものはいろいろやつておられるようですし、先年平家琵琶の保存などやつておられるようですが、どの時代からどういうぐあいに保護をして行こうというような、何かわくと申しますか、そういう一つの線が出ているのでございましようか、その点につきまして伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/124
-
125・高橋誠一郎
○高橋(誠)政府委員 選定基準が設けられているのでございますが、お手元にありますかどうですか、音楽、舞踊、演劇その他のうち、たとえば雅楽、舞楽、声明、能楽、狂言、こういうことに相なつておるのでありまして、その一例としておあげになりました平家琵琶でございますが、この平家琵琶は、私ども聞いておるところによりますと、声明並びに論議——天台、真言などの論議の脈を伝えるものと聞いております。これらのものにつきましては、録音が国際文化振興会あたりでこしらえたものなどもできております。ところが平家琵琶になりますると、これがございません。ところが平家琵琶の流れをさらに伝えましたものになりますると、これはまた記録がございますので、ちようど間がとだえているというところから、特に平家琵琶の記録をつくりますことに力を尽したのでございますが、でき得る限りさかのぼり得られますものはさかのぼつてこれを保存いたしたいと存じております。そうしてまた後のものに対して特に影響の深いものはこの点をも明らかにいたしたいと考えて、保存に力をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/125
-
126・竹尾弌
○竹尾委員 今委員長があげられた中で歌舞伎は入つておりませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/126
-
127・森田孝
○森田(孝)政府委員 ただいま委員長の御説明になりました無形文化財の選定基準、これが今度は改正法律で指定基準を別につくることになりますが、従来ありました選定基準の中には、芸能関係と工芸美術関係と大別してできております。その芸能関係の中に歌舞伎は入つております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/127
-
128・竹尾弌
○竹尾委員 われわれ日本人の生活感情と申しましようか、その中には、江戸時代の、大きくいつて芸術ですね、そういうものの影響が非常に強いので、特にだんだん観客の数が少くなつておるようですが、歌舞伎なども何かの方法で保存しなければ滅びるような傾向にあろうかと思う。これは大体非常に代金が高いので、なかなか私ども毎日見るというわけにも行きませんので、行きませんが、ああいうものを何かの方法で保存して、安く見させるというようなことが、委員会としての一つの仕事ではないか、こう思います。し、最近の役者も、今では技能の点からしても——私はよく存じませんが、だんだん低下しているような傾きすらあると思う。中村吉右衛門など、ああいう人はほとんど出ないというような見方もありますので、そこで人の要請と、安く見られるという二つの方法を考えなくてはいかぬと思う。私はこの間文部大臣にもお尋ねしたのですが、安い劇場で大衆的に見させるということも必要なので、そこで国立劇場の設置というようなことも問題になろうかと思いますが、これは先生の方の委員会の所管ではないかもしれませんが、そういう点についてどういうお考えを持つておられるか、お尋ねしたいと思います。今歌舞伎が、ややともすると、特殊階級の芸者その他の観客ばかり多くて、一般にはだんだん見る人が少くなるということも、ある意味においては非常に嘆かわしいことなので、これを一般の大衆に見させるということが必要だと思う。そういう点につきましてひとつお答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/128
-
129・高橋誠一郎
○高橋(誠)政府委員 歌舞伎は、たびたびなくなつてしまうのではないかという心配の念をわれわれも持つたのでありますが、今日のところではさような様子も見えませんで、ますます盛んになりつつあるように存じております。ただいまお話のありましたように、芸者などのようなものの観賞が主たるものになつて、一般大衆はこれを見る機会がだんだん減るというお話のようでございましたが、私の見ますところでは、芸者などの見物こそ著しく減少いたしまして、一般大衆が演劇に興味を持ち出した傾向が特に見えるようでございます。芝居などに参りましても、いい席は昔は芸者などに占領されておつたのでございますが、今はこういう種類のものを見かけますことがはなはだ少くなつております。若い学生などが非常に興味を持つて古い芝居を見ております。こういうようなところを見ますと、演劇滅びずというような考えを持たされるのであります。それからまた最近におきまして財団法人として発足いたしたのでありますが、演劇研究会というものがございまして、文化財保護委員会と松竹とが力を尽くまして、歌舞伎座の一室を借りましてこの研究会を催しております。これらによりまして、この演劇の保存はよほど効果がありはしないかと存じております。
〔委員長限席、竹尾委員長代理着席〕
それから国立劇場でございますが、これはただいまお話のありましたように、直接文化財保護委員会とは関係のないものでございますが、片山内閣の際に、この話が総理の口から出ましたことを聞いております。文部省では、一昨年であつたかと記憶いたしますが、われわれ招集せられまして、国立劇場案を立てて行きたいという御相談を受けたのでございまして、まことにけつこうなことと存じまして、私どもできる限りのことをいたしたいと考えておりますが、いろいろ困難な点が、ございましてまだ一向はかどつておらぬのでありますが、何とかしてこれも実現させたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/129
-
130・竹尾弌
○竹尾委員長代理 この席からたいへん恐縮でありますが、ただいま私の質問がちよつと言葉が足りなかつたと思いますけれども、芸者だからどうというようなことではないので、やはり日本の国民ですから、芸者が見るのも一向さしつかえございませんが、私は芝居を見る機会が最近ほとんどなかつたのですけれども、私は佐倉宗吾の特別信者でございまして、この間歌舞伎で、これは特に吉右衛門がやるから、ぜひ義務として見てくれというので、千秋楽の日に一時間ばかり行きましたのですが、吉右衛門は、前に昭和五年かに明治座でやつたときは非常に元気がよかつたけれども、芸は確かにいいのでしようが、非常に元気がないように私は思いましたが、その席上私の周囲に、ほとんどと申してもよいくらい芸者の諸君がいたように——ちよつと見ると、芸者か、しろうとか、大体わかりますが、そういうふうに思われたので、これはやはりそういう方面の観客で非常に多い。多くてもけつこうなんですけれども、そういうような感がいたされたわけでございます。そこで繰返すようですが、やはりああいう歌舞伎座あたり高うございますから、私らもとても見られないのです。そういう関係で見せてもらつたのですが、高くてなかなか普通の人は見られないということで、その点に問題があるのですが、国立劇場のようなものをできるだけ早くつくつていただきまして、何と申してもこれは伝統があるのですから——伝統を重んじない国民は滅びますので、やはりよき伝統はよき方法で保存して行かなければならぬというような意味合いからも、ぜひ委員会としても御努力を願いたい、こういうことを希望いたしまして私の質問を終ります。
ほかにございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/130
-
131・世耕弘一
○世耕委員 関連して——歌舞伎座は金がかかるというのなら、野外劇場でもいいじやないですか。そうして幾幕も見せなくても、一幕でも見せるというような方法があるんじやないか。必ずしも国立劇場、いわゆる歌舞伎座のような大きな舞台で公式にやらなくても、民衆を楽しませる方法は、熱意さえあればできると思う。そういう点はどうですか。
〔竹尾委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/131
-
132・森田孝
○森田(孝)政府委員 ただいまちよつと私御説明いたしましたが、一般的には、指定された文化財の公開については、入場税が免除になるような措置を講じておりまして、できるだけ安い金で見られるように考えておる次第であります。なお仰せのように、一幕でも見せるような措置を講ずるということにつきましても、これが一般文化の振興に非常に寄与すると考えられるものについては、将来十分考えて行きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/132
-
133・辻寛一
○辻委員長 他に御質疑はございませんか。——他に御質疑もないようでありますから、本案に対する質疑はこれにて終了いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/133
-
134・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認めます。
これより討論に入ります。本案に対する討論の御通告はないようでありますので、討論を省略するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/134
-
135・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認めます。よつて討論は省略されました。
採決を行います。文化財保護法の一部を改正する法律案を原案通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/135
-
136・辻寛一
○辻委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。
ただいま可決されました法律案の委員会報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/136
-
137・辻寛一
○辻委員長 御異議ありませんから、さように決します。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X02919540430/137
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。