1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月二十六日(水曜日)
午前十一時三十九分開議
出席委員
委員長 辻 寛一君
理事 相川 勝六君 理事 竹尾 弌君
理事 長谷川 峻君 理事 田中 久雄君
理事 野原 覺君 理事 松平 忠久君
伊藤 郷一君 岸田 正記君
坂田 道太君 原田 憲君
今井 耕君 竹山祐太郎君
高津 正道君 山崎 始男君
小林 進君 前田榮之助君
出席国務大臣
文 部 大 臣 大達 茂雄君
出席政府委員
文部事務官
(管理局長) 近藤 直人君
委員外の出席者
文部事務官
(管理局学校給
食課長) 岩倉 武嗣君
専 門 員 石井つとむ君
専 門 員 横田重左衞門君
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五月二十四日
委員山中貞則君、町村金五君及び河野一郎君辞
任につき、その補欠として田渕光一君、加藤高
藏君及び松田竹千代君が議長の指名で委員に選
任された。
同月二十五日
委員川崎秀二君辞任につき、その補欠として今
井耕君が議長の指名で委員に選任された。
同月二十六日
委員加藤高藏君辞任につき、その補欠として竹
山祐太郎君が議長の指名で委員に選任された。
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同月二十五日
伊部南大窯趾を重要文化財に認定の請願(逢澤
寛君紹介)(第四九九五号)
公立学校事務職員の待遇改善に関する請願(小
泉純也君紹介)(第五〇三三号)
義務教育学校の屋内体操場整備地域に関する請
願(鈴木善幸君外七名紹介)(第五〇七六号)
福島中学校新築費国庫補助に関する請願(辻文
雄君紹介)(第五〇七七号)
の審査を本委員会に付託された。
同日
私立学校の理科教育等振興に関する陳情書
(第二二〇一号)
同外二件
(第二二〇二号)
同外一件
(第三一〇三号)
同外一件
(第三一〇四号)
同(第三一〇
五号)
同(
第三一〇六号)
同外七件
(第三一〇七号)
私立学校教職員共済組合の掛金率据置きに関す
る陳情書
(第三一〇八号)
私立学校の理科教育等振興に関する陳情書
(第三一二一号)
市町村学校合併促進法案立法化に関する陳情書
(第三一四四
号)
義務教育費の不足額に対する財政措置の陳情書
(第三一四五
号)
私立学校の理科教育等振興に関する陳情書
(第三一七一号)
同外二件
(第三一八〇号)
同外三件
(第三一九八号)
同
(第三一九九号)
群馬県草津町小学校の校合改築に関する陳情書
(第
三二〇〇号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した事件
小委員及び小委員長選任の件
学校給食法案(内閣提出第一四〇号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/0
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001・辻寛一
○辻委員長 これより会議を開きます。
学校給食法案(内閣提出第一四〇号)を議題といたします。本案に対する質疑は終了いたしたいと存じますが御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/1
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002・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認めます。よつて質疑は終了するに決定いたしました。
本案を討論に付します。討論の通告がありますから、順次これを許します。坂田道太君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/2
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003・坂田道太
○坂田(道)委員 私は自由党を代表いたしまして、本法案に賛成の意を表するものであります。
元来学校給食は、国民の食生活の改善の基礎要件でもございますし、また児童生徒の生活教育としても重要な意義を有するものでありますことは御承知の通りでございます。
学校給食が教育の場においていかなる意味を持つておるかということにつきまして、まず第一にあげられまするのは、心身の発煙する若い時代におきまして、保健衛生の見地から、終戦以来、この学校給食が相当の栄養、体位の向上に役立つていることを知つておるのでございます。また一面におきまして三食のうち一食を学校で、しかも同じ食物を先生も子供も一緒になつて食べるというところに非常な意味があると思うのでございます。それは一つには金持ちの子供もまた食しい家庭の子供も一緒にいただけるという意味もございますし、また同時に、その食事をいただくにつきましての子供の礼儀作法をわきまえさせるという意味もあるのではないかと思うのでございます。イギリスにおきましても、パブリック・スクールにおいては、寄宿舎制度になつておつて、子供たちはそのパブリック・スクールの期間中は親元を離れて同じ食物をいただくのでありますが、英国の小説等に表われて来ましたものを見ましても、その寄宿舎における食生活の苦しさと申しますか、いかに貧弱であつたかということが書かれてあるのでございます。私はこれを非常におもしろく見るのでございます。と申しまするのは、パブリック・スクールというならば、いわばイギリスの貴族の学校でございます。この貴族の学校において、非常に極端にひもじい思いをさせる、これはよく聞くことでありますけれども、どうしてこういうひもじい教育をするか、もちろん栄養その他については考えてあると思いますけれども、相当にひもじい思いをさせておることは事実のようでございます。この点に関しまして私は、一つには精力盛りの子供に対して、性欲を抑制するという一面もあるかとも思います。そうして学校教育それ自体に打込ませるという意味があるかと思いますが、もう一つは子供が貴族でありまするがゆえに、まずしい、ひもじい思いをさせられたならば、どのくらいつらいかということを教えられるのではなかろうか。そういう学校の児童、生徒が、将来世の中へ出て、そうして富強者になつた場合において、ひもじいということがいかに苦しいことであるか、そういう人たちのことを考えて政治をやりあるいは教育をやり、あるいは仕事をやるというところにおいて、おのずとそこに正しい一つの政治の運営ぶりなりあるいは仕事の働きぶりなりが出て来るの。はなかろうか、こう思うのであります。そういう意味合いも私は確かに含まれておると思うのでありまして、イギリスのこのパブリック・スクールの食生活が、いかにイギリスの教育の上において意義ある意味を持つておるかということを痛感しておる一人でございます。そういう意味合いから申しましても、私は日本の教育において、小学校において昼食だけでもパンを食べ牛乳を飲み、そうして金持の子供も貧しい子供も一つの食事をいただくというこのやり方というものが、教育的な意義を持つということで、保健衛生の低価と同時に、教育的意味からも非常にりつぱな仕事であると考えておるのでございます。
そういうような意味合いから申しまし、て、私は本法案にその趣旨において賛成をするのでございますが、何を申しましても、やはり私はこの範囲対象というものを、少くとも義務教育学校だけには及ぼしたいものだと考えておる一人であります。あるいはまたその国庫補助の対象として脱脂粉乳についても半額くらいは認めらるべきものであると考えておるのであります。あるいはもつと大きく申しますならば、日本の食生活の改善をやる物合においては、大人の人たちにパン食をやれと言つても、なかなかこれは困難であるというような事情からいたしまして、小さい小学校、中学校の生徒のうちからパン食になれさせるということが、国民の食生活を改善して行く一つの重要なポイントであると考えるのでございます。また外米依存の日本の食糧事情から考えましても、外米をなるたけ少く輸入してそれにかわるに小麦を入れる、あるいは畜産を奨励し、乳牛を農家に飼わせまして、国民の各階層において牛乳を飲ませるというような、基本的な国の政策を打立てるべき時期に来ておる。その第一歩に学校給食法が制定されたという意味においてこの法案に賛成をいたしておる次第でございます。日本の農業の立体化、また有畜農業の発展という観点からも、この学校給食法を押し進めて行かなければならない、対象にいたしましても、またその範囲にいたしましても、もう少し拡大して行かなければならない。しかしながら、御承知の通り、本年度の予算は一兆億円に抑制されておりますし、他の経済財政事情もございますので、われわれとしましてはただいまのところこの法案に満足せざるを得ないのでございますけれども、しかしながらわれわれは将来はおいてこれを国策として外米の輸入を節減し、有畜農業を確立し、日本の食生活を次第に改善して行くという方向に行かなければならないと考えておるような次第でございます。
そういうような意味合いから本法案に賛成の意を表する次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/3
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004・辻寛一
○辻委員長 田中久雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/4
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005・田中久雄
○田中(久)委員 学校給食の重要性につきましては、もはや申し上げる必要もないことでありまして、また各党委員諸君のすべてが学校給食法の制定については非常な熱意を持つておられることも当然なことでありました。昨年の十六国会におきまして議員立法としてこれが提出を見たのでありますが、当時特別国会でありますために、予算の相当部分を伴う法律を特別国会で通すことはいかがかということにもなりまして、通常国会において政府より提案せられるのを待ちまして、ここに審議をすることになつたのであります。
学校給食といたしましては、その最低限の私どもの要呈するところは、ただいま坂田委員からも申されたのとほとんど同様でありますが、第一は、その範囲は義務教育全体に及ぼすべきことはもちろんであつて、できればさら、に定時制高校もこれに加えてその恩恵に浴さしたい点が第一の問題であります。今回提案せられておりまするものは、義務教育学校のうち小学校のみになつておりますることはまことに遺憾なことでありますけれども、今日のわが国の財政状況から見ましてやむを得ない次第と存ずる次第でありますが、将来においてこの問題は、義務教育諸学校全体にぜひとも及ぼし、できれば定時制高校にも及ぼす道を当局において講ぜられたいことを熱望する次第であります。
第二点は、先般の委員会においても申し上げましたが、学校給食の重要な一つの意義としましては、日本の食生活改善ということに貢献するという非常に重大な国策につながるものがあるのであります。わが国におきましては米食一本ではおそらく半永久的にその解決は望めないのでありまして、パン食を用いるということは、日本の食生活の重要なる問題になつて来ておるのでありますが、どうしてもこれは子供のときからその習慣をつけなければ不可能なことであります。これにつきましては、少くともこの学校給食の持ちまず意義は非常に重大と言わなければなりません。同時に、子供の栄養健康上から見まして、パンと同時に粉乳をあわせ用いるという、これまた学校給食において不可分なことであります。しかしながら、現在あるいはまた新しく出されたこの法律案におきましても、粉乳の面におきましては何らの国の補助が考えられておりません。
単にその質入れの利子補給をするという程度でありまして、補助と申すべきほどのものでないことはまことに遺憾なことでありますが、この点につきましても少くとも小麦同様半額程度の国庫負担を実現さしたいと思うのであります。
第三には、これが最も重要なことでありまして、この問題が将来の学校給食をいかにするかというかぎを握る重要な問題であると思いますが、これはすなわち準要保護児童に対する給食費の支弁の問題であります。生活保護法によつて国家より補助を受けておりまする家庭の子供に対しては当然給食費は給付せられおりますが、かろうじて生活保護法の適用を受けないけれども、実際において給食費の支弁は不可能である、こういう家庭が全国に相当数存在をいたしております。全国平均を見ますと約四%前後というものは、実際において父兄がその金を払うことができないという貧困家庭であります。この問題につきましては、現在市町村においてこれが支弁をせられたり、またPTAにおいて一部これを持たれたり、中には学校の先生自身が、自分のクラスの子供に対して給食費を強く要求することを非常に憂えまして、自分の乏しい給料の中からこれを出しておるという実例もあろのであります。もしこの学校給食をこのままの状態において捨て置きますならば、給食費の問題から学校給食というものは下火になつて参る危険があるのであります。現に先年、二十七年度におきまして京都の大将軍小学校におきましては、わずかに一万円余りの給食費の滞納を理由といたしまして、二週間にわたつて学校給食を中止した、これにはもとより他に若干の理由もあつたのでありますけれども、こういう理由をつけさせて、そうして給食をやめるがごとき事態が起るという危険もあるのでございます。この点は特に国家において十分な措置を講じなければならぬものと考えるのであります。もしこの準要保護児童の給食費の問題が解決せられますならば、私は学校給食のいろいろな問題の大半は解決したものと考えるのであります。実は今回提案せられましたこの新しき政府提案の学校給食法に関しましても、この準要保護児童の給食費の問題につきましては、何とか国において三分の三程度の補助を出して、そうしてこの問題を解決したいといろいろ苦心をいたしました。この点につきましては、各党委員諸君も同様に御心配になつたことでありますけれども、今日のわが国の財政状態、特に一兆円を越えないという大原則を破る危険が起つて参りますために、残念ながら今回はこれをも犠牲といたしまして取上げないことにいたしたような次第であります。しからばこの程度の給食法ならば、別に法律をつくらなくても、すでに出されておつた小麦の補助のみでありますから、その必要がないようなふうに見えますけれども、しかし国が法律をもつて給食を重く見るという一点におきましても、なお精神的にこれに携つておる多くの方々が幾らかでも慰められ、満足せられるという点もあろうかと存じまして、この原案を賛成するに至つた次第であります。これを機会に、願わくはどうぞこの準要保護児童の問題につきましても、幸いに大臣もお越しになりましたが、来年度におきましては何とかこの道を特に講ぜられるように要望いたしまして、原案に賛成の意を表する次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/5
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006・辻寛一
○辻委員長 山崎始男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/6
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007・山崎始男
○山崎(始)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま御提案の学校給食法案に対し賛成の意を表する次第であります(拍手)但し私は賛成の意を表すると申しますが、非常に不満の気持を持つて実は賛成の意を表するのであります。先ほどから坂田委員、田中委員、皆さんから学校給食の重要性難しきているくお話がございましたので、いまさらこの学校給食の必要性に対しまして私は申し上げる必要を認めません。当委員会におきましても、昨年の十六国会から引続きましてこの問題はもう論議し尽されてしまつたことだと思います。ただ私はぎようこうやつて初めて国民待望の学校給食法が通過いたしますにつきまして、かなり感無量なるものを感ずるのでございます。と申しますことは、昨年の夏の十六国会でわれわれ野党が議員立法といたしまして二十六、七億の内容を持ちました法律案を提出いたしました。爾来ほとんど十箇月近くになりますが、今度政府が御提案になりましたこの法律案の内容というものが非常に貧弱である、いわば申訳的な法律案ではないか、かように実は思える点でございます。前のことを私がいろいろ申し上げることはどうかと存じまするが、十六国会においてわれわれ議員立法をひつ込めました。その話合いの経過においては、次の通常国会にはこの内容よりはよりよきものを政府は責任を持つて出さすように必ずするからというのが、そのときのわれわれ議員立法をひつ込めましたときのお約束であつたのであります。この点は私はこの委員会でも前に申し上げたことがございます。ところが今回の政府提案を見ますると、何だか申訳的な、前のお約束とは違つて、わずか中身は十八億前後のものにしかすぎません。なぜ私がこの法律案が不満足かと言いますると、ちようど昨年の夏と申しますると、御承知の外航船舶利子補給法案が十三億で政府原案として出ておりました。それがわずか二日か三日の間に、ほとんど審議もされずに議員立法で百六十七億というような十何倍にもふやされたような修正案となつて通過しておる事実でございます。この学校給食法案が持つ意義は、国の政治の上からいかに重大であるか、外航船舶の利子補給法案の持つ重要性と決して私は甲乙のあるものではない、かように思つておるものでございまするが、十箇月もたつて、相当こういういわく因縁のある、しかもお約束まであるものが出て来てみるとわれわれ出しました二十六、七億の原案から約九億も少いようなものになつている。私はこういう点を見ますると、この日本の政治というものがあまりにも地味なもの、特にこういう教育的な法律案というのは、非常にいろいろな点から軽視されておるのではないか。片方は十三億の原案がほとんど論議もなしに、ただいまも申しますように十四倍からに修正される。こういうばかな政治というものは——ときがちようど昨年の十六国会の最中でありましたので、学校給食法案と比較いたしまして、うたた感慨無量なものが実はあるのであります。本委員会におきましても、最初に大臣から十八億ばかりの内容の御説明があつたときに、私はせめて準要生活保護者だけでも政府としては修正増額される御恩恵はないかということもお尋ねした記憶がございます。今日の学校給食が崩壊するおそれがもしありとするなれは、結局生活保護者、準要保護者、この面の欠点というものが、ちようど人間の虫歯のごとく、この学校給食をはばむ最も大きな、原因に今後なつて行くのではないか。特に最近のいわゆる経済あるいは産業の実態を見ておりますと、不渡り手形その他もたくさん出ておりますが、こういう面から見て行きますと、今後ますます国民生活は苦しくなつて行く。そうなりますと、ますますこういう金を払うにも払えないような生徒が今後たくさん出て来るのではないか。こういうような傾向を見ておりますと、非常に私はこの点を心配するものでございます。従つてこの委員会の最初に、私はこの点を一番に心配して、前年度の約束をわれわれはたてにとつて云々するのではございませんが、どうかこの点は御考慮願いたいと申し上げた記憶がございましたが、遺憾ながらこの点も解決をされていない。私はただいま賛成の討論を申し上げておるのありますが、決して私は心から喜んでこの賛成の討論をしておるのではないという意味は、そういうところにあるのでございます。
またこの法律案を皆様と御一緒に党として賛成をいたしますにつきましては、御承知のようにわれわれの党は、左右両派でもつて、参議院の方から非常にりつぱな議員立法を出しております。参議院のカでは自由党その他の皆さん方も超党派的に非常に御熱心に、何とかこの法律案は生かそうじやないかというような気運すらあるやに聞いております。そういうような関係で、衆議院におけるこの政府提案の法律案をわれわれの党で賛成するかしないかということは、これは内輪の話になるわけでございますが、非常に不満であつたのでございます。しかし私たちは、国民の傍さん方の長い間の一つの懸案であるこの学校給食法案が、不満足ながらここで船出をしたのだから、これをわれわれが通過させないようなことをするということはおもしろくない、皆さん方と一緒にこの法律案に賛成の意を表したい。実はわれわれ衆議院の文部委員は党内で非常な苦境に立つたのでございます。しかし参議院から出ております議員立法について、皆さん方とお話合いをして、できることなら次期国会でもつて継続審議に持つて行つてもらうことを条件として、今回はひとつこの政府案に対して賛成をさしてくれ。これは内輪話を申し上げるようでございますが、こういうふうな事情もあつたようなぐあいで、この法律案対してわれわれが賛成をいたします気持の中には、非常に複雑な気持を含んで実はこの賛成討論をしなければならないというまことに妙な立場にわれわれはおるわけなのでございます。申し上げたいことはいろいろございまするが、先ほど自由、改進のお二人からもお述べになつておられましたように、この法律案はここで一応船出はいたしまするが、政府とされましては、この及ばざる足らざるところをぜひ次期国会において改善をしてくださるよう強く私はお願いをいたしまして、賛成の討論を終りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/7
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008・辻寛一
○辻委員長 松平忠久君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/8
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009・松平忠久
○松平委員 ただいま上程になりました学校給食法案について、私は日本社会党を代表しまして若干の意見を申し上げたいと存じます。
この学校給食という制度は、ほとんど先進各国にある制度であります。児童、生徒に対して学校で昼食を給食してやるということは、大体よその国においては学校の生徒の健康上の理由ということが一つ、それから団体訓練を与えるということが一つの理由になつておるのであります。健康上の理由として、その児童が一方の食物に偏食するという癖が長い間つくということは健康上よろしくない、こういう立場から児童に普通の主食とは違つたものを学校で食べさせるということをやることが必要なんであります。アメリカにおいては、かつて学校給食に米を食わせるという提案を、かつての大統領のフーバーがいたしておりまして、これが多大の反響を呼んだのでありますけれども、当時小麦の集散地である南部地方の選出議員が反対して、この米を学校の生徒にに食わせるという給食法案は頓挫をしたことがあります。アメリカにおいても、子供にパンばかり食わせることはいけない、やはり米も一食は食わせて胃を丈夫にしてやるということが当時フーバーの提案した理由になつております。日本においても、終戦後この給食の制度が実施されたのですが、当時やはり一つは学校の児童の健康ということが理由になつたように私どもは了解をしておるのであります。ところが今日のわが国の学校給食というものは、当初の児童生徒の健康という面から、もつと広い日本人全体の食生活改善という方面にまでこの問題が取上げられなければならない段階に平だのでありまして、従つてこのことは去る十二月十五日の衆議院の決議においても、その内容にこれを盛つておるのであります。大臣もおそらく御存じであろうと思うのでありますが、当時わが党の三宅正一議員の提唱によつて、自由、改進の各派の有志の懇談会において、日本の食糧問題の解決を学校、給食ということから始めることが必要ではないか、そしてこれは長きにわたつて日本人の習慣というものをかえるのであるから、どうしても文部省に責任を持つてやつてもらわなければならぬということでありまして、当時各派の懇談会を十一月の終りから十二月の初めにかけて開いたのであります。私もそのメンバーの一人として数回この会合には参加したのでありますが、その当時の考え方として、当時農林省においてことし外米を百六十万トン買う計画を立てておつた、それを百万トンくらいに減らして小麦に切りかえて行く、それによつて日本は約四百億円くらい節約できるのであります。この節約した四百億をもつて学校給食に充て、小学校、中学校はこれを全額無償で学校給食をしてやる、残りの金が若干あるのでありますが、これをもつて酪農の振興に充てて行く、こういう意見が、実は当時自由党の厚生委員長も出て来ておりましたが、いずれも賛成で、これを決議に持つて行こうというので、その日にちもそこできまりまして、十二月十五日にこの決議をしたのであります。それで議長より政府に対してこれを要望して、本年度の予算においては、この決議の趣旨を参考として予算案を組みかえるという要望を当時したのであります。しかし予算案が出て来たのを呈すと、われわれ衆議院の院議において決定した議決というものを全然無視されておつて、現在のはなはだ煙少な約十七億という予算が通つた。これは、おそらく大臣もその当時のいきさつは御存じであろうと思うのであります。従つて、どういうわけでこういうふうになつたか。ただ単に一兆円予算のわくに縛られたというような御説明が今までは繰返されておつたのでありますが、これは何かはかに理由があつたのではなかろうかというので、農林大臣の出席を求めて、政府の十二月十五日の決議に対する取扱いについてのいきさつを問いただすということになつて、委員外発言によつてこの質問をすることにして、委員長までそのことは通告しておつたのでありますけれども、今日までその機会ができなかつたということは、きわめて私ども遺憾と存じておるのであるます。かようにわれわれ衆議院全体の意両とは非常に遠いところの現在の学校給食の予算が出、並びに今日の学校給食法案というものが出て来たと思うのであります。これは私どもは長い日で見て、将来の日本というものを考えてみるのに、どうしてもこれは米だけではいけないということはわかり切つているのであります。今日麦の増産の余地はありますけれども、米の増産の余地というものはきわめて限られているというところから見ても、また世界の食糧事情から見ても、米の生産地は非常に少いが、麦の生産地は非常に多いのであります。従つて麦を買うことはきわめて楽であるが、外米を買うということは、ちよつとよけい買うとすぐ相場が上るということで、非常に困難をきわめている。そういうのが世界の食糧事情であります。従つて日本としては、どうしても世界並の食糧生活に国民が即応して行くということをしなければならない。大東亜戦争当時において、日本が非常に困つたことは、私はこの米に依存しておつたということがやはり困つたのではないか、こういうふうに思います。同時に米による習慣がついているので、その習慣と麦生活の習慣と違うのであります。そこから来るところの誤解というものが非常にあつた。そこで往々にして日本人は、中国や南洋その他に行きました場合、相当誤解を受ける種をまいたのではないか。これも米食編重というところにあつた。どうしてもこれを直して行きたい。そこで日本人を教育するという立場にある文部省としては、将来の日本人をつくつて行くためにはどうしたらいいかということを、やはり食糧の面からも取上げて、これを教育の場において実行して行く、そうして将来の日本人というものをつくつて行く、こういう遠いおもんばかりを持たなければならないのではないか。私は今後文部省の一つの方針としてこれを強く取上げられることを要望したいのであります。従つてわれわれのこの考え方は、先ほど山崎君からも出ましたが、両派社会党からほとんどわれわれの希望に近いものを参議院の提案として出しているのであります。幸いこれは参議院の方では継続審議にするという予定になつているそうでありますので、やがて台われわれがここで討論しております政府原案が法律で通つた場合においても、参議院で継続審議になつている理想的な法案を参酌して、できるだけ近い機会にこれを修正して、理想的なものにして行くということを、あわせて私は要望したいのであります。もう七月、八月、九月ともなると、政府においても来年度の予算にとりかかることと思います。大省省との折衝も八月から九月にかけては行われるのではないかと思うのでありますが、非常に遠い将来日本人をどういうふうにつくつて行くかということを考えると同時に、この大豊な立場で食糧問題を解決して行く、同時に児童生徒の健康状態も増進して行く、こういう建前から、もうそろそろ始まる来年度の予算については、どうしてもこの法案の欠陥を補つて行く考え方で予算の折衝に当られることを希晒するのであります。すなわち第一としては、何としてもこれは小学校だけではいかぬ。中学校も含めたところの学校給食にして行くということが第一に私どもは要望しなければならぬことであります。同時にできればこれは全額国庫負担にしてもらいたい。と申しますのは、これは予算上の措置でありましようけれども、飯はみな食つておるのであります。家庭で出そうが政府で出そうがこれは同じで、やりくりによつてできないことはない。ということから考えるならば、これはできるだけ全額負担の方向に行くべきが理想ではないかと思います。これによつて団体訓練もできるだろうし、あるいは先ほど坂田君も言つたところの児童生徒に対する平等感を与え、その間において彼らに一つの社会としての訓練も与えて行く。これによつて、われわれが外国等から誤解を受けておつたところの日本独特の食生活、独特の習慣、そういうものも打破されて行くことができるのではないか。つまり日本人の生活そのものがユニヴアーサルになることが、今後の日本にとつて必要であります。この日本人がユニヴアーサルになつて行くような習慣を、学校給食を通じてつけて行くことが理想である、かように考えるのであります。同時に副食物等についても、全額国庫負担もしくは予算の許す限りにおいて多くの国庫負担を予定してこれが予算折衝に当られんことを希望して、ことに不本意ながら本案に賛成せざるを得ないものであります。このことを御了承願つて、教育二法案だけではなく、根本的な問題の解決に向つて大臣の一段の御勉強を願い、同時に今まで示した熱意を今度はこつちに示してもらいたいたいうのが私の最後の要望であります。ひとつよく聞いていただきたいと思います。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/9
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010・辻寛一
○辻委員長 討論はこれにて終局いたしました。
採決を行います。学校給食法案(内閣提出第一四〇号)に賛成の諸君の御起立を願います。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/10
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011・辻寛一
○辻委員長 起立総員。よつて本案は可決いたしました。
長谷川峻君より本案に対し附帯決議を付するの動機が提出されております。本動機を議題といたします。長谷川峻君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/11
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012・長谷川峻
○長谷川(峻)委員 各党の委員の賛成討論に盛られております意見を総合して、左の附帯決議を提出したいと思うのであります。賛成可決をお願いするものであります。
学校給食法に対する附帯決議(案)
学校給食の教育上の重要性にかんがみ政府は速かに左の事項の実現を講ず可きである。
一、学校給食費の負担に困難を感ずる保護者(準要保護者に)対して適当な援助の措置をなすこと
一、学校給食法の適用を義務教育諸学校の全体に及ぼすこと
一、脱脂粉乳に就ても国庫補助の措置をなすこと
以上であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/12
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013・辻寛一
○辻委員長 長谷川君の動議について採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔総員起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/13
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014・辻寛一
○辻委員長 起立総員。よつて長谷川俊君の動議は可決いたしました。よつて本案は附帯決議を付して原案の通り可決いたしました。
なお厚生委員会から、栄養及び衛生についての必要の措置を講ずべき旨の申入れがありましたが、そのうち
一、学校給食は、児童の成長発育に影響するところがきわめて大きいので、その栄養補給の充実をはかるため、給食内容の基準を設け、栄養士の設置を規定すること。
二、学校給食に起因する伝染病、食中毒等の事故を防止するため、必要な衛生施設を設け、調理にもつばら従事する者に対し健康診断を行うよう規定すること。
右二項はその趣旨を了とし、委員長より政府に善処方を要望したいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/14
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015・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、さように決します。
なおその他委員会報告書等の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/15
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016・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、さように決します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/16
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017・辻寛一
○辻委員長 この際お諮りいたします。今会期中も請願審査小委員会を設け、請願の審査に当りたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/17
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018・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、さように決します。
なお小委員長及び小委員の選任は、先例により、私より御指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/18
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019・辻寛一
○辻委員長 御異議なしと認め、次の通り指名いたします。
小委員に
相川 勝六君 長谷川 峻君
田中 久雄君 野原 覺君
前田榮之助君を、小委員長に相川勝六君を指名いたします。
本日はこれにて散会いたします。
〔午後零時二十五分散会〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101905115X03419540526/19
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