1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十九年五月十日(月曜日)
午前十一時十三分開会
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出席者は左の通り。
委員長 上條 愛一君
理事
大谷 瑩潤君
常岡 一郎君
竹中 勝男君
委員
榊原 亨君
高野 一夫君
谷口弥三郎君
西岡 ハル君
横山 フク君
廣瀬 久忠君
安部キミ子君
藤原 道子君
堂森 芳夫君
有馬 英二君
国務大臣
大 蔵 大 臣 小笠原三九郎君
厚 生 大 臣 草葉 隆圓君
政府委員
大蔵省理財局長 阪田 泰二君
厚生省保険局長 久下 勝次君
事務局側
常任委員会専門
員 草間 弘司君
常任委員会専門
員 多田 仁己君
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本日の会議に付した事件
○参考人の出頭に関する件
○厚生年金保険法案(内閣提出、衆議
院送付)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/0
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001・上條愛一
○委員長(上條愛一君) では只今から厚生委員会を開会いたします。
初めにお諮りいたします。社会保障制度に関する調査の一貫として、看護婦制度改正に関し参考に資するため、ナイチンゲール章受賞者を参考人として当委員会へ出席を求め意見を聴取することといたしまして、その人選手続その他については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/1
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002・上條愛一
○委員長(上條愛一君) 御異議ないと認めます。ナイチンゲール章受賞者を参考人として呼ぶことに決定いたしました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/2
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003・上條愛一
○委員長(上條愛一君) 次に厚生年金保険法案を議題といたします。御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/3
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004・常岡一郎
○常岡一郎君 大蔵大臣が御出席でありますからお尋ね申上げますが、資金運用部の資金運用審議会の名簿がここに配つてありますが、これに副会長として、大蔵大臣と郵政大臣と副会長になつておられます。これは郵政大臣が副会長としてお入りになつたというわけは、お尋ねするのは筋が違うかも知れませんが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/4
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005・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 郵政大臣は簡易保険とか郵便貯金とか、そういうような関係がございまして入つておられるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/5
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006・常岡一郎
○常岡一郎君 そういう意味でありますとすれば、この際更に厚生年金の積立金が非常に年々厖大な数になりますが、当然こういう場合に厚生大臣も副会長としてこの審議会に入られることが妥当だというふうに考えられますが、この点はどういうふうにお考えになつておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/6
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007・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) もう少し先へ参つて考えたいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/7
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008・常岡一郎
○常岡一郎君 運用部資金の貸付に当りまして、厚生関係のほうは割合に貸付の率が少いように思いますので、この点で貸付の方針といたしまして、何か特別に方針をお持ちになつておることがございましようか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/8
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009・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) まあその種の資金は申すまでもなく労資双方から出しているので、確実に運用することと、又これは将来必ずこれを年金として差上げなければならんものでございますので、確実な運用に最も重きを置いておる次第でございます。併し、できますだけいろいろ御指示もございまするので、年々まあ増額いたしておることは、これは数学的にあとから理財局長から答えましても結構と存じますが、数字的には年々増額いたしております。今後とも事情の許す限り年々増額いたしたいと思つております。これは常岡委員御承知のように日本の財政資金というものは、一体として考えましてそのときの国の実情に応じて配分する。併し如何なる場合でもこれは厚生年金であるということを忘れておりませんから、少額でありますが年々増額いたしております。併し少額出しておるものの、例えば地方財政等もやはり財政資金でございますので、そういう広い部面まで入れますと相当の額まで達するかと、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/9
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010・常岡一郎
○常岡一郎君 例えば社会事業の面でお尋ねいたしますが、社会事業の面は非常に終戦後アメリカの占領政策の庇護もあつたと思いますが、随分施設も発達したわけであります。ところが最近に至りまして、非常に経済界の変動時代にこれが経営に、或いは拡張整備に、こういう問題で非常に悩んでおります。そのために特にこの金融の対象となるべき……まあ非常にこの社会の裏のほうを引受けておりますだけに、国家がやらねばならん問題を社会事業家が引受けておるような状態でありますだけに、事実利益という面まで対象にすれば非常に遅れて、この運用部の対象になりかねると思いますけれども、こういう場合に相当の高い利子で借りて、銀行が相手にしないために高い利子で借りた金を以ちまして拡充整備をいたしておりますので、現状は実に悲惨な状態が随分今見られます。この点から考えて社会福祉事業振興会などによりまして、これを大巾に貸付けてもらえるというようなことはできないものでしようか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/10
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011・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) ちよつとお答えします。数字的なことは又申上げます。実は今常岡さんのお話のごとくに、社会施設が非常にだんだんとこの経済界の変動に伴いましても重要になつて参ります。その際に国が力の及ばぬところ、若しくはやらんところを今の社会事業家のかたがたが御心配下さつたことに対しては、これは誠に感謝に堪えぬ次第でございまして、これらのかたがたが献身的におやり下さることについて全くこれはお礼を申上げるほかないと思います。それで社会福祉事業振興会も少し何しておると思いますが、ちよつと私数字的に存じませんが、まあ日本の社会施設に、まあ社会保障的な関係の費用も年々増額いたしておりまして、本二十九年度の予算配分でも、乏しいうちでございましたけれども若干増額しておりますることは御承知の通りであります。それで御趣意はよくわかるのでございますが、何分予算の乏しい場合でございまするので十分のことが行かん点は甚だ恐縮に存ずる次第でございます。数字的なことは……、今ちよつと調べましたところが、この福祉振興会のほうは融資の対象にはちよつとなりにくいということでございまして、それでまあ一般会計のほうから三千万円のものが出ておる、こういうことなんだそうでございます。従いまして、今丁度常岡さんのお話の中にもこれは儲かるものではないから融資のり対象には云々……、融資の対象には法律上なりかねるそうでございます。従つて何かもう少し一般の社会施設的な考え方でこの三千万円のものを更に増額するかどうかという問題があるのじやないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/11
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012・常岡一郎
○常岡一郎君 お答えではありますが、事実たくさんの芽生えましたうるわしい社会施設の、丁度春の日に実際芽生えたような状態でありましたものが、急に寒風を受けたような状態で非出精に困つておる点がありますために、現実において金を借りて相当の利子を払つてまでやつておるというのが実情であります。この点で僅か三千万円くらいのものをやられましても、それはもう殆んど問題にならないという状態でありますので、こういう際にこうした資金運用部のほうの対象に何とかなるように御斡旋願つて頂けないだろうかということを申上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/12
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013・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 御趣意の点はよくわかる、一応私どもも十分検討してみまして、何らかの結論に達したいと存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/13
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014・藤原道子
○藤原道子君 大蔵大臣にお伺いしたいのでございますが、この前資金運用部資金の運営委員ですか、それの機構について大臣は十分検討するというお答えでございましたが、これについてどういうふうに今後なさる御所存であるか、その点をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/14
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015・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) たしかあのときば藤原さんの御意味は、新らしいこういつたものを入れたらどうかというような意味での含みのあるたしか御質問に対して、私はそういうお答えをしたと記憶いたしております。その後まあいろいろ相談をしてみましたけれども、まあそういつた利害を代表されておるかたもあの中にもおられるしするから、特に加えるほどでもないじやないかというようなことで今日に及んでおる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/15
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016・藤原道子
○藤原道子君 あの中にもそういう代表した委員の人もいるとおつしやるのは誰のことでございましようか。私たちの見たところでは全然いないのでございますが、資本家代表はいるけれども、労働者代表というようなものは一人もいないと私は思うのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/16
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017・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) それは例えば小汀利得さんなんというのは新聞をやつてられて、これは相当そういつたほうの利害も代表せられるのじやないか。それから又河上さんにしても石坂さんにしても、それはいわゆる藤原さんの仰せだとまあ資本家にはなりますが、併しまあこれらのかたがたもそういうほうは相当わかる。いわゆる資本家の中にに入るかも知れませんが、わかるほうでありまするので、そういつたことが言えるのじやないか。それから又事務的に申せば厚生省の事務官も入られておるし、まあ郵政関係も入つておられるのでというようなことで、特に仰せになるかたをお入れするかどうかということは、そのときにはまあそういうことでしたが、併しこれは更に考えさせて頂きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/17
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018・藤原道子
○藤原道子君 私は大蔵大臣を御信頼しているのでございますが、そういうことでは誠に甚だ心許ないのでございます。資本家代表と労働者代表は全然利害は相反するわけでございまするし、幾ら理解があると言つても限度がある。やはり労働者が半分掛金をしているわけでございますから、これは一方的にこういう運営をするということは妥当でない。私はこう考えるのでございますが、大臣はどうお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/18
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019・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) まあ現在の制度ではやはりいわゆる資本家とか何とかいうようなふうにこう階級的にものを見る、そういうお考えが出るのじやないかと思うが、やはり国としてはこういうような特に運用部の資金は相当重要でもございまするので、それらの資金に余りそういうふうな思想を強く織込まんほうがよいじやないかと思います。まあ併しこういう点が不都合があるじやないかというようなことは御遠慮なくおつしやつて頂く、こういうことで行つたほうがいいような私は感じがいたしますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/19
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020・藤原道子
○藤原道子君 いや、階級的にものを見ないですむような制度でございましたらば、私たちは階級的にものを見なくてもよろしい。ところが今のところあらゆる面において労働者の福祉施設とか、労働者の利益とかいうものが殆んど顧みられていないという日本の現状は大臣といえども否定できないと思うのです。
そこで更にお伺いいたしますが、今この利率の位上げであるとか、年齢の引上げであるとかいうようなことからからんで、そのたびに保険経済が云々というようなことが言われますために、労働者の中にはもうこの厚生年金保険不用論さえ起りつつあるのです。これは私非常に危険だと思うのです。ですからこれをそういうふうな間違つた方向へ行かないようにするためにはやはり労働者の納得をする、即ち労働者は大きな株主なんでございます。この運用部資金におけるこの株主の言うこともやはり相当取入れなければ却つて危険になるではないか、私はそう思うのです。更にこれは別途会計と申しまするか、別途機関というようなものを設けてこの大きな厚生年金保険でございますから、将来二兆にも達しようというような計算も出ているやに聞いておりますので、これを別個の枠で運営して適正を期する、運営の妥当を期する、このほうが正しいというふうにお考えにならないでしようか。私はむしろそうやるべきだと考えておりますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/20
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021・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 私どもはやはりこういうような資金につきましては、資金の原資の性質はよくわかりますが、やはり併し国の財政経済というものは一体的なものでございまするので、やはり特に各種のいろいろなものを作つて、それに目的を強く持たすというと、国としての政策の一貫性を欠くようにもなりまするから、やはり資金世用部で一元的にこれを取扱うほうがよいじやないか。それから又これは私はやはり甚だ失礼な言葉を申してお許しを願わなきやいけませんが、よくそういうふうなものを作ると、いろいろ関係者を入れることができて、もつと活溌にできるとかいうような衆議院でのお話もありましたが、それが実は私ども非常にどちらかというと避けたいのでございまして、やはり餅は餅屋がやるほうが間違いがない。
そこで資金運用部で総合的にものを見て判断するほうが間違いない、こういうふうに私どもは実は見ておるのでございます。尤も今の藤原さんのお尋ねで言うと、ここへ特別のものを作つておいて、この特別のものがその中で運用することにすればもつと実際的じやないかというお話だろうと存じますけれども、私どもはやはり国の財政上こういつた資金を全体的に見て国がそのときにどういうふうにこれを必要とするか、勿論その運用その他については議会の御審議を経る次第でございまするのでこの各種の問題についてはそのほうがよいじやないかと実は私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/21
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022・藤原道子
○藤原道子君 それではお伺いしますが、餅は餅屋というのは誠に都合のいいお言葉でございまして、資金運用部資金にいたしましても、厚生年金保険だけでなく郵便年金保険とか、或いは郵便貯金というようなものが六千億の中の四千何億を占めておると思うのです。ということになると、これは殆んど大衆の積立てたお金であるということには大臣も御異議ないと思うのです。ところがその国民大衆のための福利的な方面へ流れておるお金は利子もあがらない、この莫大な四十億減上に達している現金の利子にも達しないくらいしか流れていないのです。今のところ資本主義の社会でございますから、それはもう餅は餅屋ということになれば御都合のいいほうへだけ使われて、それで一方においてそれならそれを必要としないかということになると、過日でも政府が調査されました上におきましても、結核患者は二百九十二万もいる。入院をさせなければ危険だという人が百十三万人もいる。近く結核ベツドは今年でき上りましても十七万二千にしか相成らないのでございます。ということになると結核ベツドも必要でございましよう。と同時に家族感染等の危険を考えまするときに国民住宅、これが急速に私は確立されなければは危険であると思いますけれども、そういう方面へは一向にお金が流れていないのです。ということになると、餅は餅屋ということはどういう方面に対してお考えになつておられるか、それを私は大臣にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/22
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023・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) まあ厚生年金が特に労使双方の出たもので、その運用が確実であることが一番必要でありまする点から、主として長期の郵便貯金になつておることは御承知の通りで、従つて五分数厘に廻るものに、主として五年以上のものに向けております。ただこの資金の性質上、これは私どもはやはりこういうものを、この金はこういうふうに持つて行くのだという考え方じやなくして、今藤原さんもお話の通りに多数のかたがたからお預りしている金であるから誤りがあつてはいけない。と同時にその金がやはり日本の財政経済なり、大きく育てて行くものに使われるのが私は国家的要請として当然のことではないかとこう思うのであります。ただ配分が少いのじやないかということでございますと、この配分をできるだけ年々多くして参りたい、この点については私は藤原さんの御意見には配分を多くしろというなら賛成でございます。これはできるだけしたいと存じておりますけれども、併しどうも成るべくこの金はそういつたほうへ振り向けるべきじやないか。更に言葉が少し悪いかも知れませんが、目的税的に、税でもなんでもございませんが、ものをお考え下さることは日本の全体としては私はどうもにわかに賛成することに参りかねるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/23
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024・竹中勝男
○竹中勝男君 ちよつと関連して。今大蔵大臣のお言葉大変財政経済の大家としての権威のあるお言葉だと思いますが、私はそれに対して結局日本経済の上から大きな資金を産業、現在の資本主義生産の、或いは資本主義経済の上に流して行くということが、結局労働者に、例えば労働の雇用量を増大するとか或いは雇用の条件をよくするということに流れるから、それも一つの社会政策だというふうに言われることについては私も原則的に賛成なんです。同時にいわゆる社会政策という面、労働政策という画から見ると、やはり直接的に労働力を培養して行く或いは強化して行く政策、即ち一方に労働者の、国民大衆の健康を守つて行く、或いは住宅を建設して行く、そういう福利厚生と言いますか、そういう面をやはり強化して行くことが日本経済の重要な生産要素である労働力を確保して行く、或いは強化して行くというそういう面から循環して日本経済を強化して行くという点、そういう立場からもつと直接的に大きな積立てたところの資金を運営されることが必要じやないかと思うのです。そういう意味におきまして、やはりこの運営委員にただ経営者の立場或いは資本家の立場だけを持つておるというだけでなくて、実際労働事情或いは労働者の利害、どこに労働者の要求があるか、必要があるかということを代表する者を委員に加えられることが必要だろうと私も考えますし、そうして又直接住宅の面、或いは病院の面、或いは社会事業、先ほど常岡委員の申されたこの社会事業金庫に対する準備、こういうような面に流されることが結局即ち最善の社会政策は生産政策なんですから、そういう考えをお持ちですかどうですか、伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/24
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025・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 竹中さんおつしやる意味もよくわかります。私どももさつき申した通り十分とは申せないことはこれは申すまでもございませんが、とにかく住宅のほうとか、病院のほうへこの資金を向けておることは、数字は決して十分じやございませんけれども、年々而もそれを増額いたしおることも御承知の通りだと存じます。ただ私の考え、竹中さんおつしやつて頂いたようなものでございますけれども、例えば造船というようなものをお考えになると、何だ資本家が船を造るからこの聞の汚職も起つたではないかとおつしやいますけれども、この間の第十次造船が行き悩んでおりますと、阪神方面の造船関係、その下請のかたが苦しんでおられて、労働者その他のかたがお困りになつておることは御承知の通りであります。従いまして、私どもは造船というのは船ができて外貨を稼ぐとか、そういつた国際収支の面からのみではなく、やはりその面からも現在の日本の経済構造として見なければいかんじやないかと、かように私は考えておるのでございまして、これはお立場上私どもとしてはもつとこのほうを殖やせというお言葉はよくわかるのでございますが、併しそれにはまあ私どもとしてできるだけのことをいたしたいと考えております。でき得るだけのことをするのが非常にお立場上御不満の点があることは、これは避けがたいかと思うのでありますが、私どもとしてはそういう心持で年年増額いたしておるのでございます。ただやはり国全体として産業というもののあり方がら見ますると、例えば電源の開発とか、或いは今の外国向けの各種の船舶、外航船の造船というようなことは必要になつて参りまして、関もそれはやはり労働者のかたの福祉に強く結びついておるものであると私は考えておる。この点についてもう少し直接的なものを殖やすようにという御趣意はよく承わつておきまして、私ども今後できるだけのことはいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/25
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026・竹中勝男
○竹中勝男君 よく今の点を私は理解しておるつもりでありますが、それにしても余りに社会保障費というものが国家財政の上から過少だと私は考えるのです。七分程度です、国家財政支出の中で。こういう国は戦後の建設期にある国としては余り少な過ぎる。西ドイツは三割五分、どの国よりも建設期にある国で戦火を蒙つた国で低い国は日本なんです。国家財政支出の面から言い、殊に再軍備との比率から言つても、これはアメリカとフランスは別です。その次は日本が低いのです。軍備費に対して社会保障費というものが非常に過少だ。経済機構を再生産するためには労働力を再生産しなければならないとの理論は、私は通ると思うのですが、併しながら結局こういう状態に社会保障費が非常に過少であれば、国民の健康の状態は一層悪くなるのだし、犯罪その他年少者の道徳的或いは健康的な廃頽現象が出ておりますし、或いは生活保護法の対象になる者が無限にこれは蓄積され増大して来るものであつて、やはり国家財政の負担というものはそういう点から大きくなると思います。むしろそういう救済よりも、そういうものがそういう生活保護法の対象になり、或いは刑法の対象になるものが少なくなるような予防的な手段というものが本当の意味の社会政策だと思いますが、そういう意味におきましても、例えば今住宅の不足は三百万戸です。これはもう絶対に不足している数字なんですが、こういう住宅費にしても、医療費にしても、絶対的な不足量というものが目の前にあるのです。そういうものに対するもつと積極的な対策を国家が促進して行くということが急務だろうと私どもは考えておるのです。これに関連しまして、今の厚生年金保険の老齢年金の受領期間を、私ども参議院の厚生委員会としてはできるだけ執行法預り五十五才にしたい。今度は六十才に修正されて来ているのです。これも結局保険経済の面では千分の十二か十匹の増加になるわけですけれども、保険経済としても成立するという数字だろうと私は見ておりますが、日本の産業の雇用状態から見ると、こういう一千万近くの潜在失業者かおりますときに、そうして年々百二十万の新らしい労働力かそれに附加えられているときに、年齢を徒らに六十才まで引上げておくということが決して労働政策にならないと思う。又企業の面から言うてもこれは不得策だと思います。労働力の弱つたものを六十才まで雇用する。これに放るべく早く日本のような縮小された産業、そして過剰な労働力というものを持つている国では引下げるほうが、そして若い者を雇用するほうか、産業の画からも有利だと思います。日本の現実にも合う政策だと思いますが、これも大蔵大臣はそういうようにお考えじやないかと思うのですけれども、こういう点も併せてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/26
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027・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 先ほど社会保障費は直接のものは非常に少ない。予算の七分ぐらいだと仰せられた。私ども調べて見ると七分九厘、約八分になつておりますが、これはいずれにしても大差ないことでございます。ただ直接とは申しにくいのでございますけれども、御承知のように例えば食糧関係とかで出しておるものもありまするし、或いは今度恩給で、この間も軍人恩給軍人恩給と言われますが、あれは実は九割まてが遺族扶助なんでございまして、これもむしろ社会保障的な意味のほうが非常に強いのでございます。そういうものまで合せますと、この間或る人は千九百何億あると言つていましたが、その数字なら仮にそういうふうに見てよいかどうか、その点は存じません。いろいろな見方があろうと存じますが、併しまあ日本では直接のもの以外にいろいろそう見得る、まあ見得ると一応考えられるものを若干含めていることも、まあ竹中さんがよく御承知だと存ずるのであります。併しいずれにいたしましても、仰せになりましたように住宅対策など、これは朗らかに足らんことは明瞭なのでございますので、今後ともこれに対して努めて参らなければならんと考えております。ただ今の受領年限の問題になりますると、これはちよつと私ども直接の関係者でもございませんので、よく関係省とも相談をして見ますが、これはただ料金の改訂等いろいろありまして、いわゆる資本家側を納得せしむる上からも、掛金の関係などからこういつた必要が起つたように私は承知いたしておるのでございます。併しまあ労働さるるかたのほうから言えば、これはできるだけ年限を低く持つて行くということが望ましいことは、この点は私竹中さんの御意見に全く御同感でございます。ただやはりそのときの事情が許すかどうかということで御判断を願うほかないのじやないか。こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/27
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028・上條愛一
○委員長(上條愛一君) ちよつと皆さんがたにお願いですが、大蔵大臣に今大蔵委員会から是非来て頂きたいというあれがありましたので、大蔵大臣に対する質問は簡潔に一つお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/28
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029・藤原道子
○藤原道子君 そのときどきの事情でと言われるのでございますけれども、大臣抽象的なんですよ。はつきりお伺いしたいのは、できるだけ多く出そうと言われるけれども、そのできるだけというのはどの程度に考えておいでになるか、はつきり聞きたい。それからいま一つは年齢の点でございますが、今の会社は御承知のようこ五十五才が定年なんです。この頃は定年より早く首切る傾向が非常に多いのでございます。そうするとその人たちがどこへ就職するか、もうすでに労働年限が尽きているんです。もう役に立たないから首になる、その人がほかに就職するということは、失業者の巷に満ちている今日なかなか困難なんです。ところがこの受給年齢が六十才に今回引上げられるということになると、この間をどうして食つて行つたらいいかということが大きな問題になつて来る。更に恩給等においては五十五才、肉体労働をする労働力の尽きている人たちが六十才でなければもらえない。ところが官公吏のほうは五十五才でもらえるというような点にも矛盾があると思います。そこで大臣は資本家を納得させる上でいろいろ困難であつたということでございますけれども、国家負担が今一割五分、今度五分引上げたのでございます。国家負担が一割五分というのは私は無理だと思う。いろんな理由から申しましても当然我々は三割国家が負担して妥当である。ただそれを労働者の掛金、資本家の掛金だけで賄つて行こうというそういう立場をおとりになるからそういうことになると思いますが、大臣は、この際我々は三割を要求しておりますが、国家の負担額をもつと高めるお考えはないのか。社会保障制度等の考え方から参りましても、私はそれは妥当だと考えるのでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/29
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030・竹中勝男
○竹中勝男君 それにもう少し私は敷衍して……。やはり日本の個別資本にそういう負担をかけるということよりも、総資本の立場で国家がこれを三割なら三割までは負担するといつたほうが、日本経済の私は強化になると思うのですが、その点も併せてお答えを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/30
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031・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 最初のできるだけじやわからんから、一体幾ら殖やすのか。こういう藤原さんのお尋ねですが、実はまだ漸く二九年度予算を終りましたばかりで、三十年度予算も着手いたしておりません。予算の全体から見てどういうふうにするかということをそれぞれ決定しなければなりませんので、これは私どもが逃げる言葉でも何でもございません。これはできるだけと申す以外はやりようがないのでございまして、それで御了承願う以外には、本年の予算はもうきまつてしまつて来年の予算でございますから、それで御了承願うほかないと存じます。
それから今の年令の問題でございますが、これは関係各省とも十分打合せて見たいと存じておりまして、私はここでちよつと御返事を申上げることはどうかと思いまするから、差し控えさせて頂きたいと思います。
国家の負担を少くとも三〇%ぐらいに上けるべきものだ、更にこれを竹中さんから御敷衍になりましていろいろ御説明がございました。これも実は日本の国家財政かどういう立場に置かれているかということで判断をするほかないのでございまして、例えば非常に国庫が余裕を生ずるような場合がございますれば、こういうことも十分考え得るのでございまするけれども、併し一番私、とも今財政当局として見ますると、二十九年度はこれは一兆円にとどめましたが、三十年度も日本の国際貸借の改善をする上ではやはり同じく歩調を続けなければならんじやないかと実は私も思つております。若しそれより早く何らかのきつかけができて回復しますれば、これは本当に望ましいことでございますけれども、現在の見通しではさように考えられます。そうしますと、御承知のように自然的に年年殖えて行くものかございますところへ、大体予算が同じような一兆円の予算の枠で行こうという際には、よほどどこかに切詰め得るものがないとその増額をお約束することはむずかしいのではないか、私どもは現在のところでは御趣意の点はいろいろございまして、これも何ら逃げ口上でなくてできるだけのことはやつてみたいと思つておりまするけれども、併し只今のところそれじや三割に行かなければ二割五分、二割にするということをお約束することは、ちよつと今の場合私としては冒険過ぎるのではないかと思いますので、これはお言葉はよく承わつておきますが、御返事は差控えさせて頂きたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/31
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032・藤原道子
○藤原道子君 お時間がないので私もいろいろ聞きたいことがございますが、省略いたしますが、本年度が八百億、そうすると二十九年度末になると千百億ぐらいになるというようなお言葉でございましたが、そうなるのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/32
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033・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) そうなります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/33
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034・藤原道子
○藤原道子君 そういうことになると、こういう点からも勘案して、再軍備のほうばかりに出すことが国を守るゆえんではないのです。労働者が満足し、喜んで働き、喜んで労働に従事することができる態勢にすることが国家産業の上から非常に大切なことだと考えますので、大臣は必ずこの国家負担を増額することによつて、資本家と労働者の負担ばかりによつて解決しようというお考えをお捨てになつて一つ十分にお考え願いたい。来年度予算の編成前にこのことを大臣にとくと私は要望いたしておきます。とにかく利子の面もございます。その利十の一部は国家の一般会計に入れておるというような点もあるのでございますから、やろうと思えばできる。とにかく恩給法も五十五才である。軍人恩給も五十五才である。それであるのに労働年限がもう消耗して、いる人たちを六十まで置くということは何としても妥当でない。こういうことも十分にお考えになつて、何といつてもあなたは財布の紐を握つておられるのですから、厚生大臣はどうしたいと思つてもできないのですから、あなたのほうがお考え願わなければできないことは明らかですから、特にこの点は私は強く要望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/34
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035・安部キミ子
○安部キミ子君 先ほどから大蔵大臣のお話を承わつておりまして、私率直にこれは要望でございますので、意見を添えて申したいのでございますが、先ほどからの資金運用部の審議委員の名簿の委員の構成についての皆さんの要望、それから年金の国家保障、そのほか資金の運用の扱い方など、総じて先ほどの発言を通して感じましたことは、やはり大臣は資本家を擁護するという強い意志がはつきり出ている、余りに露骨に出ていると私は思います。これでは日本の国は、而も労働者は喜んで働くことができないと思うのです。成るほど今日の機構が資本主義の機構で、而も自由党政府は資本家擁護の代表の政府だと私は率直に思つておりまするけれども、余りに露骨にこういう考えを強くお出しになりますと、このような保障制度というようなことも、厚生委員会というような性格そのものからこの委員会は成り立たないと思うのです。それでもう少し労働者の働く人の立場の味方にも時にはなつてもらいたい。そういう意味で私にこれからしばしば大臣と御同席することになりまりが、今後のこの厚生委員会に対すす大臣の態度を、そういつたものを私は反省を促して、もう少し資本家一方の味方にならんような大蔵大臣は責任を果たしてもらいたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/35
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036・小笠原三九郎
○国務大臣(小笠原三九郎君) 御要望はよく承わつておきますが、私自身何も資本家一方を擁護するという考えは勿論ない。むしろあなたのほうが率直に申上げれば資本家を睨んだようなお言葉をお発しになるように私は率直に感じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/36
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037・上條愛一
○委員長(上條愛一君) では厚生大臣、厚生当局に対する御質疑を願います。
御質疑がなければちよつと休憩いたしたいと思います。
午前十一時五十五分休憩
〔休憩後開会に至らなかつた。〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/101914237X03719540510/37
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