1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十四日(木曜日)
午後一時五十二分開議
出席委員
委員長 原 健三郎君
理事 有田 喜一君 理事 今松 治郎君
理事 臼井 莊一君 理事 木村 俊夫君
理事 山本 友一君 理事 青野 武一君
理事 大西 正道君
岡崎 英城君 上林山榮吉君
中嶋 太郎君 濱野 清吾君
關谷 勝利君 徳安 實藏君
永山 忠則君 畠山 鶴吉君
井岡 大治君 下平 正一君
池田 禎治君 小山 亮君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 三木 武夫君
出席政府委員
運輸政務次官 河野 金昇君
運輸事務官
(自動車局長) 眞田 登君
運輸事務官
(自動車局業務
部長) 岡本 悟君
委員外の出席者
大蔵事務官
(銀行局保険課
長) 狩谷 亨一君
参 考 人
(警視庁警ら交
通部交通第二課
長) 木村 善隆君
専 門 員 志鎌 一之君
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七月十三日
東海道線電化を岡山まで延長の請願(亀山孝一
君紹介)(第四一三九号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
参考人招致の件
自動車損害賠償保障法案(内閣提出第八六号)
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001・原健三郎
○原委員長 これより運輸委員会を開会いたします。
自動車損害賠償保障法案を議題とし、昨日に引き続き質疑を続行いたします。
この際お諮りいたしますが、本案に関して参考人として警視庁警ら交通部第二課長木村善隆君より意見を聴取し、委員の質疑に答えていただきたいと存じますが、御異議はございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/1
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002・原健三郎
○原委員長 それではさよう決定いたしました。
質疑を許します。永山忠則君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/2
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003・永山忠則
○永山委員 事故防止に関して内閣の方で委員会を作ったのでありますが、その具体的な実行に関する問題をどういうように今実施いたしつつあるかという点、特に運輸省並びに警視庁の方で事故防止の計画を立てられましたその計画に向って、具体的にはどういうように進んでおるのであるか。なおこの事故防止の実施はどういうような工合に進めるのか。大体今日のような事故はどういうようになっているか、また今後の見通しがございますればお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/3
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004・木村善隆
○木村参考人 私からお答えいたします。事故防止につきましては人口問題、あるいは道路行政、その他いろいろ国家的の見地から施策を実施する必要がありますが、警視庁といたしましては現在発生しておる事故の実態というものをまず正確に把握いたしまして、その事故の発生する原因を抜本的に除去する、かような方針で現在あらゆる施策を立てております。
その前にそれでは現在東京都内におきましてはどういうような事故の発生状況となっておるか、この点につきまして簡単に申し上げます。一応昨年一年間の事故の状況を申し上げますと、東京都内におきまして一万六千七百五十一件発生しております。この事故のうち、死者七百四十三人、負傷者、重軽傷を含めまして一万三百五十二人、物件の破損評価価格が三億三千八十六万五千円になっております。これを一昨年に比べますと、件数におきまして七・九%増加しております。また死者におきましては八%、負傷者におきましては一三・五%、物件の損害におきましては一一・七%、それぞれ増加しております。かような事故につきましてその内容を分析検討いたしてみますと、まずこうした事故の当事者と申しますか、事故を起した関係者、これについて申し上げますと、全事故の八一・一%、数字にいたしますと一万三千五百八十二件、昨年一カ年でありますが、これが自動車側の過失に基きまして起った事故であります。結局両方に過失があっても自動車の側に過失が大きい場合、さらに自動車側に過失は少いが、自動車に関係した事故、これを合せますと、全事故の九四・三%が自動車に関係した事故である、かような数字を示しております。
しからばこの自動車の内容でありますが、まず用途別にこれを検討してみますと、乗用車が第一になっております。これは自動車事故の六五・三%を占めております。次は貨物、乗合、その他の車となっております。なおこの自動車の事故をいわゆる自家用と事業用とに分けてみますと、事業用四三%、自家用四二・六%、大体半々になっております。なおこれを車両千台当りに比較いたしますと、事業用は千台につき一八五・四件発生しております。その中でもハイヤー、タクシーになりますと、千台当り三七一・七件、群を抜いておる、かような状況になっております。従って事故の大半は自動車事故であり、しかもその自動車事故の相当数が乗用車であり、事業用である、かような結論が一応統計の分析から出てくるわけであります。
こうした事故がなぜ起るかという、事故の発生した場合におきまする原因を究明いたしますと、結局自動車事故の過半数は、前方注視義務違反というふうに私は呼んでおりますが、たとえば運転する場合に前の方は向いておりますが、上調子でしんから前方をはっきり見ておらぬ、かような運転による事故、それから追い越し不注意、ハンドルの操作不確実、これは運転技能の未熟もありますし、あるいは急場に当りましてうまくハンドルが切れなかった、かようなものを含んでおりますが、これが相当数あります。それから優先交通権無視、これは小さな道路から広い道路に出る場合は、まず一時停止するとか、あるいは徐行するとか、あるいは信号の行われておる交差点で、信号に従って歩行者が渡っているときは、左折する車は歩行者にまず道を譲らなければならぬ。警笛を鳴らして中に割り込むことは許されない。今申しましたような前方注視欠除、追い越し不注意、ハンドル操作不確実、優先交通権無視、かような原因が最も多い原因でございます。なお自動車事故のうちで、事故運転者十八人のうち一人は多かれ少かれ酒を飲んでおる。いわゆるめいてい運転もそれに次ぎまして多くなっております。また自動車事故十五件のうち一件はスピード違反であります。それぞれの原因もありますけれども、今申し上げましたような原因が特におもだった原因でございます。それから歩行者につきましては、横断する際の車に対する不注意、子供などにおきましては車道に飛び出す、あるいは子供の一人歩き、さらにまた歩行者のめいてい、酔っぱらい、かようなものが大きな原因となっております。
それから時間別にいたしますと、交通事故は大体朝の七、八時ごろから多くなりまして、十一時と十二時ごろの間が午前中で最高潮に達する。十二時から昼休みは相当減りまして、一時からまたふえる。夕方の五時から六時までが一日の最高潮に達します。それから次第に減りまして、深夜が最も少い。かような時間的な推移をたどっております。
事故の発生する場所につきましては、主要幹線道路、それから商業地域、たとえば池袋とか、渋谷とか、上野とか、新宿とか、かような方面に多発しておるという状況でございます。
今申し上げましたような点が、大体東京都内における昨年度一年間における事故の発生の概要でございますが、かような実態をまず正確に把握いたしまして、そうしてこうした事故の起る原因を一つ一つ取り上げまして、これを除去する方針としましては、かような考え方で対策を講じております。従って今申し上げましたように、まず事故対策の中心目標といたしましては、八一・一%を占めております自動車を第一原因とする事故、これに着眼いたしまして、対策の重点をまず自動車事故に置き、さらに用途別には乗用、使用主別には乗用事業用の自動車、こういう点にまず中心目標を置く、さらにあわせて歩行者、その他の車について対策を講ずる、これが中心目標でございます。
次に、しからば具体的に自動車についてはどういう方途を講じておるかと申しますと、結局指導取締りになるわけでありますが、これにつきましては、先ほど申し上げました事故の原因をまず除去するという意味におきまして、追い越しや優先交通権無視、あるいはスピード違反、めいてい運転、かような点に重点を置きまして、指導取締りを行う。歩行者につきましては、これまた先ほど申し上げましたような原因、すなわち横断する際の不適切、こういうものにつきましては適正な横断の指導、それからちょっと先ほど抜かしましたが、歩行者におきまして踏み切りにおいて相当事故を起しますが、踏み切りの安全の確認、それから対面交通、右側交通でございます。それから車道の立ち入り禁止、子供の一人歩き、横断、飛び出し、かようなことにつきまして家庭、学校等とも連絡いたしまして、事故防止の策を立てております。それからいま一つ顕著な事例といたしまして、原動機つき自転車であります。この原動機つき自転車の事故が一昨年に比べて昨年は相当ふえておる。倍加しておるという点もありますので、これにつきましては、一時停止の励行、あるいは原動機つき自転車が通行区分に反して道のまん中を走らないように、なるべく左側を通る、あるいは他の車の間に割り込むというようなことのないように、指導取締りを講じております。
大体指導取締りの上におきましては今申し上げた通りでありますが、さらに先ほど申し上げましたように、交通事故というものが、時間的にその発生状況が変化しておる。最も多発する時刻、すなわち昼間十一時から十二時、あるいは夕方の五時から六時、かような時間を中心といたしまして、重点的に警察官を配置して指導取締りを行う、あるいは主要街道等については、事故が起ると、その事故の結果が非常に重大でありまして、死亡率が多いというような関係がありますので、そういう主要街道については一斉取締りをするという方法をもちまして、事故の防止をはかっております。以上が指導取締りの問題であります。
これとあわせまして、技術的な問題と申しますと、たとえば信号機の設置とか、あるいはロータリー等が現在相当数ありますが、これが交通量が多くなるに従いまして、本来の用をなさない、かえって交通が渋滞して事故が起るというような場合におきましては、ロータリーを除去して、交通信号機に切りかえる。さような技術的な施設の問題、さらにまた交通の規制と申しますか、一方交通とか、タクシーの流し禁止とか、あるいは駐車禁止とか、かような交通技術の面において、具体的な交通実態に即応するような規制をいたしまして、交通の円滑と安全を期する、事故防止をはかる、かような方面におきまして、技術的、施設的な検討、対策を現在講じております。
なお一般の広報活動といたしましては、春秋二期にわたり交通安全運動はもちろん、平素におきましても、機会あるごとに事故防止につきましての広報活動を展開いたしまして、一般の都民の交通についての認識啓蒙、そういう方面につきまして努力をいたしております。
大体以上申し上げました点が、現在都下におきまする交通の実態、これについての私どものとりつつある考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/4
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005・永山忠則
○永山委員 私がお問いしようとすることは、自動車損害賠償責任保険が今法案として提案されておるのでございますが、それは加速度的に、不可避的に事故が増大しておる、ここで国家保障的ないしは社会保障的性格をもって、被害者を救済しようということが大目的なのでございまして、われわれはこれに敬意を払っておるのでございますけれども、今日経営が最も苦しい状態で、気息えんえんな弱い中小企業の業者だけの責任においてこの国家保障をやろうというところに、非常な本案の欠点があるということを今論議をいたしておるのでございます。そこでこれが本案を実行する上におきましては、すみやかに事故防止の対策を立て、交通秩序の維持をはかりまして、そうして需給の調整を重点とするところの業界の経済安定をはかるということが総合的に進んでいかなければ、本案だけを先行さすということでは、政府の施策が適当でないのではないかということで、政府の方では本案を実行する上において必要なる措置として、事故防止計画をされておるのでございます。これが根本的な問題についてはまた後に質問するといたしまして、せっかくおいでをいただきまして、御親切ないろいろの指導方面のお言葉をいただきましたことは敬意を表しますが、本案と関連を持つ点においてもっと根本的な、警視庁としての交通行政上から見る根本的な施策はないのでございますか。これは課長さんにお問いすることは無理かと存じますが、たとえば内閣の方で考えられております交通事故防止の中で、運転手の就業免許の問題、再教育の問題、さらに許可免許について公安委員に意見を聞くという問題でございますが、これらはすべてただ文章で終ってはいかぬと思っておるのでございまして、これらの具体的な実施方法があるかどうか。なお、いわゆる道路運送法によるところの違反関係でありますが、たとえて申しますと、エントツと称しまして、メーターを使用せずに料金を収受することについてのきつい取締り等は、どういう工合に将来持っていかれるかといったようなこれらの——第一不可避的という言葉が適当であるかどうか。警視庁の目から見れば、とうていいろいろな施策をしても、もう不可避的に増大するのだというお考えであるか、そういったような諸種の施策が伴うならば、今日のこの交通事故というものをある程度防止できるのだ、幾何級数的に増大しておるこれを押えることができるかどうかといったような点は、課長さんではちょっとと言っては済みませんが、直接この取締りをやっておることとは少し政治面が強く入っておりますからどうかと思いますので、これは課長さんの方が御都合が悪ければ、大臣もおられるわけでございますが、いわゆる事故防止ということと本案とが、ともに相関的に運営をされていくということでなくてはいけないということから、今論議いたしておるのでございますので、もしそれらの点についてお考えがあればお聞きしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/5
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006・木村善隆
○木村参考人 ただいま申されました点はまことにごもっともな点でありまして、私どもといたしましても、ただいまたとえばエントツ問題あるいは免許の問題、その他につきまして真剣に研究はいたしております。ただ遺憾ながら私は交通二課長といたしまして、取締りあるいはそういう問題につきましては直接所管いたしておりませんので、ここで意見を申し上げることはできないのでございます。ただ一つここで申し上げたいことは、先ほどのあらゆる施策がとられるならば、事故は防止できるかどうかという問題でありますが、これは先ほどちょっと落しましたけれども、統計的にはいわゆる事故の発生の増加率、一昨年と昨年との増加率は、先ほど申し上げましたように発生件数におきまして七・九%増加しておる。ところが一昨年とその前の年、二十七年と二十八年との増加率を拾ってみますと、その増加率は二八・二%、さらに二十六年と二十七年と比べますと四〇・九%、前年とその年との事故の発生の増加率が、二十七年まではウナギ登りに上っておるのでありますが、二十七年を頂といたしましてぐっと下っておる。昨年におきましては一昨年の四分の一に低下しておる。いま一息で結局増加率をゼロあるいはマイナスに持っていける、かような確信のもとに各般の施策を研究実施しておる、このことだけは申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/6
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007・永山忠則
○永山委員 事故防止に対して施策を十分やれば、増加率を適当に押え得るというお考えは、われわれもぜひそうありたいことを熱望いたしておるのであります。なお、今の根本問題は大臣がおられますからあとから聞くとしまして、せっかくでございますから事務的なことでお問いするのでありますが、最近において、対面交通であるとか、あるいはいわゆる一般歩行者の交通道義の問題等に対しましての警視庁の御指導が、ただいまお言葉をいただいたようでありますが、民間側の受ける印象は、どうも乱れてしまって、対面交通なんかはどこへいったやら、アメリカさんのおるときはやかましくて、歩道外を歩くような場合にはすぐ紙を渡して、警視庁に何日に出てこい。そこで一時間なり講義を聞くといったようなことをやられた時代があったのであります。ただいまのお言葉には非常に敬意を払いますが、歩行においては必ずしも進んでいないように考えておるのであります。これは私は警視庁に言っておるのではありません。こういう法案を出しながら政府当局が、事故防止ということに対する熱意を欠いておるのだ、ただいたずらに法律で縛って、業者の負担においてこの人命の尊重をやればいいのだというようなこの行政のあり方に対して、根本的にわれわれは今日論議を続けておるのでございまして、それらの点が一般大衆から見れば、歩行者の交通道徳高揚の問題あるいは運転手の再教育の問題、営業者の再教育の問題、教養の問題というようなものを、お説のようにこの法案と並行して当局が強く指導していないというところに、遺憾の意を表しておるものでございます。
そこでさらにお問い申し上げたいのでございますが、どうも取締りの上において、政府官庁の車あるいは市のバス、あるいは日通のトラック、こういったような方面の関係の交通違反に対してはきわめてゆるく、いたずらに業者の関係のみ、いわゆるタクシー、ハイヤー等の営業車を重点的に取り締っておるという情勢を見ておるのであります。もちろん交通事故の順位がそうなっておるのでありますが、交通事故は結局総合関係を持っておるのでありまして、取締りに手心があってはならぬと考えるのでありますが、さような状態はないかどうかという点をお聞きいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/7
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008・木村善隆
○木村参考人 実は取締りの問題につきましては、はなはだ申しわけないのですが、交通第一課長が所管いたしておりますので、私から責任ある回答を申し上げることはいたしかねる次第であります。特に交通道義の問題でございますが、これにつきましては、私どもといたしましても現在理想的なレベルに達しておるとは決して考えておりません。対面交通にいたしましても、まだまだ全員がその線に沿って歩くというところまでいっておりません。しかしながらかような事柄は、なぜ対面交通がいいのか。対面交通をすることによって事故が減っておる。対面交通をすれば事故にあわないのだ。なぜ対面交通がいいのかという点をも十分に示しまして、根強い啓蒙宣伝活動を展開していく必要があると思います。その結果といたしまして、統計の示すように対面交通の順守率は逐次上昇しつつある。こまかい数字は今手元にございませんけれども、その率は上りつつあるという点を御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/8
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009・永山忠則
○永山委員 第二課長の所管は、取締りの方でないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/9
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010・木村善隆
○木村参考人 実は本日は交通事故の状況を説明せよという趣旨を承わりまして参ったのでございますが、私の所管いたしておりますのは、交通統計の面でございます。それから交通制限、これは一方交通であるとか、銀座地区等において行なっておる駐車禁止、タクシー流制限、こういった交通制限でございます。それからひき逃げ関係の捜査であるとか、道路使用の許可、かような面を担当いたしております。交通第一課長の方は、取締り、教育活動、啓蒙宣伝、安全活動、さらに行政処分、かような問題を担当いたしております。従いまして私の所管しております限りにおきまして、御質疑にお答えいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/10
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011・永山忠則
○永山委員 それではその他の点はまた御質問するといたしまして、ただいま所管になっておられて、本案に関係のある点についてお聞きしておきたいと思います。ひき逃げの問題ですが、ひき逃げで殺された場合は届け出ないものはないと思いますが、いわゆる軽傷といいますか、そういうことで相手がわからぬという潜在のものが相当あると思うのです。死亡の分は検視その他でみな出ると思うのですが、軽傷並びに重傷の分で相手がわからずに、警察には言わぬという潜在のものが相当あると考えるのでありますが、それはどのような率になっておりましょうか、お聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/11
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012・木村善隆
○木村参考人 ただいまの問題でありますが、もちろん軽傷等でひき逃げされて、警察に届出のないものも潜在的にはあるかもしれません。そういうものは私どもの方でキャッチはできませんのでお答えいたしかねます。ただ私どもに届出のあった事案でありますが、たとえば去年一年をとってみますと、ひき逃げ事件は警視庁管下で千四百三十六件ありました。そのうち死亡は五十二件、重傷が二百六十件、軽傷が五百九件、物件損害だけのものが七百九十一件、こうしたひき逃げがありまして、しかも最近におきましては、その発生率が相当増加しつつあります。しかも内容的に見まして、相当悪質化しつつあるという状況にあります。私どもといたしましてはこの事案の悪質性、重大性にかんがみまして、また事案が発生した場合に検挙にならぬときは、結局被害者はそのまま経済的には何ら補填されないというような関係もありまして、いわゆる事案を一〇〇%まで検挙したい。かようなわけで全力をこれに上げておる状況でございます。その結果、検挙率の方も逐年相当向上いたしまして、たとえば昭和二十三年におきましては検挙率が三一%、これが二十七年におきましては六〇%、八年におきましては六三%、昨年二十九年におきましては六七%、さらに本年の六月末現在におきまして七〇%の検挙率を示しておる、かような状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/12
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013・永山忠則
○永山委員 われわれはあらゆる角度で事故防止をやることが、この保険経済を確立する原因になると思います。この法案こともに政府が十分な施策を施しつつあるやいなやを、今検討いたしておるのでありますが、遺憾ながら政府当局としては予防協議会を作ったというだけで、これに対する具体的な問題についての深い実施方が行われていないことを残念に思うのでございますが、これに関連をいたしておることは、おわかりになっておればお示し願いたいのですが、車両関係でどういう車が一番事故が多くて被害が大だ、また従ってどういう車は、ことにタクシーなんかには使ってならぬのだといったような考え方をもって、当局にそれを進言されたことがありますか。またそういう統計は車両別によるとどういうように出ておりますか。そのことは、今度業種別に対しての料金の差はつけるだろうと思うのでありますが、車両別、しかも同一事業に対する車両別、たとえばタクシーをやっている、そのタクシーの車両別に対する保険料というものの差をつける考えではないのでございますか。そこで事故率がはなはだしく大である、こういうものはとうてい帝都のタクシー、ハイヤーに使ってはいけない、ことにタクシーには使ってはいかぬというようなことをお考えになり、御進言されたことがございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/13
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014・木村善隆
○木村参考人 ただいまの問題ですが、車種別にどういう車が事故が多いかという点につきましては、従来そういう方面の統計が実はとってなかったのでございます。しかしながら私どもといたしましても、先ほど言われました点に思いをいたしまして、一応の傾向として、簡単ではありまするが統計をとるべきかどうかということを考えまして、この一月から四月まで各車種別に暫定的に調べてみた数字がございます。たとえばトヨペットならトヨペットが四カ月間において事故を何件起したか、それからトヨペットが一月から四月まで東京都内において何台走ったか、その関係において、いわゆるトヨペットならトヨペットの事故の惹起率も出てくるわけでありますが、遺憾ながら現在何台走っておるかという車種別の車両台数が、ちょっと現在キャッチされておりません。その惹起率は出ておりませんけれども、車種別の発生件数は一応私どもはとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/14
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015・永山忠則
○永山委員 車種別のはとっておられるのでありますが、どういう車が一番事故率が多いかということは、走っておる車両数で按分比を出さなければわからぬと思うのでございます。そこまではまだできていないということですが、運輸省等で調べますれば、一月から四月までの間の東京都内で走っておる関係が大体わかると思いますので、この点は委員長一つ運輸省の方へ、ただいま警視庁の持っておられる車種別の事故関係を、一月から四月までの間に運行している車が大体わかっておると思いますから、それで割りました事故比を一つ運輸省に出してもらうことを、この場合資料としてお願いいたしておきます。同時に課長にお聞きしたいことは、ある車は特に事故も多いが、しかもその事故を生じたならば、はなはだしい損害を与えているという特別なるものがありますかどうか、一つ聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/15
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016・木村善隆
○木村参考人 ただいまの問題ですが、事故が発生する原因と申しますのは、運転手の過失もありまするし、車両の欠陥もありまするし、そのときの道路状況その他諸般の状況がありまして、いわゆる千差万別でございます。従ってただいま申されましたような事案が、ある種の車に限って特別顕著にあるというようなことの資料を現在私ども握っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/16
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017・永山忠則
○永山委員 それはわれわれが保険料率をつくる場合におきまして、同一業種、すなわち営業関係でタクシー業とハイヤー業というものに対して、どういう事故率があるということをまず調べねばならぬと思うのであります。地域差はもちろん政府の方で考えるといいますし、営業種別、すなわちトラックであるとか、あるいは乗用自動車の営業という面についても差はつけるでございましょうが、しからば今度はまた乗用自動車の営業関係でタクシーとハイヤーというものに対しても、これが料率の差をつけねばならぬと思いますが、さらにそのタクシーの中において、特に事故率が強い車種というものに対しても、はなはだしい差があれば、これに料率をつけかえねばならぬと思います。そこで経済運転をしておっても——経済運転をすればどうしてもスピード違反を起して、そうして絶えず事故が他の車より多いというものがあるといわれておるのであります。すなわち普通の三十キロ内外の法定できめられた程度で運行しておれば、ノックしていけない。これが五十キロないし六十キロの経済運転をして、初めて燃料の節約となり、経済運行となるのだが、その車は絶えずスピード違反をいたしておるのだということであらねばならぬのですが、そういうものに対して統計が出ておりますか。統計が出ておるとすれば、そういうものを許していいかどうか。これらに対しては政府はこれらの法案を出しながら、目をおおうて見ないというような行き方であるのでございますが、非常に関連が深いのでお問いをいたしておるのでございます。そういうのはございませんか。統計的な何もできておらぬようです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/17
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018・木村善隆
○木村参考人 遺憾ながら資料は持ち合せておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/18
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019・永山忠則
○永山委員 それでは政府当局へその点はお問いを申し上げることにいたしたいと思います。
自家用自動車の関係の置場の問題が、所管だとおっしゃいますので、この自家用自動車は今日届出主義ですぐ許可されておるのでありますが、この置場の関係はどういうようにしておくことが、交通上事故防止という観点からみまして一番必要であるか。すなわち自家用車は車庫なくして路上へ置いておくのが、終戦後の今日非常に多いのでございまして、それが何ら車庫の必要を条件といたしておりません。そういうことがこの事故の防止上、何ら差しさわりないかどうか、お聞きしたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/19
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020・木村善隆
○木村参考人 自家用車の車庫の問題でありまするが、所管は運輸省関係だと私は思うのですけれども、ただ私の交通の立場から考えまして、いわゆる車庫がないために路上に放置するということが、一般の交通に相当支障を与えておる。できるなれば車庫もしくはあき地等を用意してそこへ格納していただければ、交通上きわめて好都合であるということは申し上げるまでもありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/20
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021・永山忠則
○永山委員 それでは、課長さんは主として統計を中心とする事務的なことでございますから、一応課長さんの方に対する質問は、いろいろの点が疑問上残されましたが、またそれらの点はお願いをするといたしまして、ただいまはこれで一応終りたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/21
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022・青野武一
○青野委員 警視庁の課長さんがおいでになっておりますので、一つ念のためにお伺いしておきたいと思います。
昨年あたりの統計を見ますると、大体七万二千五百人からの死傷者という数字が出ておりますが、東京あたりのこの事故に関する統計はどの程度になっておるかということを、ほかの委員の方がお伺いしたかもわかりませんが、それは私も一つ承わっておきたいと思います。それからいろいろな実例を申し上げても差しつかえないのですが、大体この交通は非常に煩雑になり、自動車の台数が増加いたしましてから、この交通関係の警察官がどちらかというと運転手に対する交通違反に対しては形式に流れはせぬか、私も大体経験があるのです。とにかく事故の起る前、あるいはその違反の起る前に注意するということよりも、違反の起るのを待っておって、そして取っつかまえてやる。ほとんど受身の立場にある自動車の運転手が交通巡査の方には、全部じゃないでしょうが、一部の人たちのために非常に困っておる。それは東京を流しておる自動車の流れに乗りまして一人々々に聞いてみてもわかるのですが、そういうことはどうもおもしろくないと思うのです。そういう点について、実際にどういう取締りの方針をとられておるかということをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/22
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023・木村善隆
○木村参考人 最初の点につきましては、私は最初に詳しく都内の状況を申し上げたのでありますが、件数だけ簡単に申し上げます。昨年一年間で東京都内で発生した事故の件数は一万六千七百五十一件でございます。そのうち死者が七百四十三名、重軽傷が一万三百五十二名、かような数字になっております。
それから第二番目の点でありまするが、間々そういう声を私ども聞いておるのでありまして、もしそういう事実があるといたしますれば、まことに遺憾なことであります。考え方といたしましては、もちろん違反があれば取り締らねばならないことはもちろんでありますが、いわゆる交通事故を起す状況下にあるならば、事前に注意するなり、措置をする。一つの例を申し上げますると、たとえば子供が路上で遊んでおれば、いつかは事故を起すだろうというふうな場合に、その子供を適当に指導する。あるいは酔っぱらいの歩行者を事故を起さぬように導いてやるというふうな、事前措置というふうな点につきましても十分留意いたしてやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/23
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024・青野武一
○青野委員 今は東京の自動車の運転手は、私どもが聞くところによれば大体二十四時間制になっておる。これはまあ運転にかかわらず、こういうような人命尊重、それから交通の絶体安全という立場からいけば、こういうことが大体事故の原因になっておるのじゃないか。肉体的な疲労、精神的にやはり弛緩している。これがまあ一週間に一ぺんとか、一カ月に三回とかいうのならともかく、二十四時間の交代制で一日越しでやっていくということになりますと、大へんです。自動車の台数も多くなっている。私は昨年欧米十四カ国を回って見ると——私は自動車の運転の経験はありません。オートバイとか自転車に乗った経験はありますが、ヨーロッパでは私が自動車を運転しても衝突はない。大体衝突なんか起らないような道路になっておる。東京あたりは有楽町の駅前とか、新橋あるいは新宿とか、繁華街を回って見ると、目の前で十件や二十件自動車の衝突事故が起るのが当りまえな混雑ぶりなんです。だからやはり取締り当局としても、相当骨の折れることだと思いますが、その原因はどこにあるか、それはやはり勤務時間の関係が大きく左右する。それは百人中何割かは、人間ですから酒に酔うて、泥酔をしながら運転して事故を起す場合もありますけれども、やはりそういうところに大体おもな原因があるのじゃなかろうかと私は考えておりますが、そういう点で、酒を飲んだり何かして運転の事故を起した。あるいは過労からきて事故を起す。そうするとやはり人を傷つけるか、ひき殺すかの問題になるので、これは普通の場合と違いまして、十分やはり取締り当局としても考えなければなりませんけれども、こういう点についてどういう程度の数字になっておるか、そこを大ざっぱでいいのですが、一つお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/24
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025・木村善隆
○木村参考人 ただいまの問題でありますが、一般の事故は先ほど申し上げたことでありますが、夕方の五時ないし六時が最も多いのであります。ところがハイヤー、タクシー等につきましては、他の自動車に比較いたしまして深夜の事故が相当多い。しかも事故が起れば必ず重大事故であるというふうなことが言えると思います。その原因は那辺にあるかということを推測いたしてみますると、先ほど言われました疲労ということも大きな原因じゃなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/25
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026・青野武一
○青野委員 この警視庁の取締りとしまして、具体的に私はちょっとお伺いしておきたいと思います。津田さんが警ら交通部長をしておるときに、地方行政委員会に出てきて御答弁になりましたのを私は記憶しておるのですが、昭和二十八年の中ごろのことであった。その当時は東京都内に非常に流しタクシーの数がふえたので、大体乗客が自動車をとめる、そうして乗る、そして走っていく、その間大体二分間ということで取締りをしておったが、一万台をはるかに越すような数になっては、二分間ではちょっと無理だ。あるいは前の方につかえておるとか、繁華街では困るというので、人の乗りおりについては六分間ぐらいは差しつかえないという方針で、取締りに直接当る交通巡査にはそういう指令を発しております、通牒を出しておりますということを、私は言われたことを記憶しております。ところが末端までそれが徹底しておりませんために、無用の取締り、無用の罰金、摩擦が起ったのを私は記憶しております。そういう関係で自動車が、一方交通の場合もありますが、ここでとまってお客を乗せることはできないときめられておるところは別ですが、当りまえのここで停車ができるといったところでも、往々にして交通巡査の諸君が一ぱいきげんでもってこれを注意する。そうすると、ここは差しつかえないと口答えをすると、いきなり難くせをつけて罰金にもっていくということが、私どもは体験上からそういうことを二、三経験があるのでございますが、今の東京都内はどういうようになっておるか。たとえば私が自動車をとめる。それは人間が横切るところとは違うのですが、とめる。そうして相棒が出てくるのをちょっと乗って待っておるといったような場合に、最大限度どれくらい許されておるか。規則は規則として、警視庁の取締り方針として何分間ぐらいは最大限度認められておるか、こういう点が非常にまだ徹底しておらないように私は思います。そういう点について一つどこまで差しつかえないかを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/26
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027・木村善隆
○木村参考人 都内の道路におきまして、停車禁止あるいは駐車禁止をしておらないフリーな場所におきましては、御自由でございます。駐車はもちろん自由でございます。ただ、今お説の点は、駐車禁止をしておる場所で客をおろして、その客が用を済まして帰ってくるのを待って乗せる。その場合に二、三分ならいい、五、六分たつとしかられるというふうな場合かとも思いますが、そういう場合でありますか。——もちろんその場合、停車禁止をしておる場所はこれは別でございます。駐車と申しますのは、ある一定時間引き続いて停車することになるのですが、果して何分ぐらいがいいかという点につきましては、これはここではっきり申し上げられません。やはり具体的、個別的にそのときの交通の状況その他を考慮いたしまして、実情に沿うような指導、取締りをやっておる。そういう点だけをここで申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/27
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028・青野武一
○青野委員 私はまだいろいろお聞きしたいこともございますが、大体自動車損害賠償保障法が最後の段階にきておりまして、各党が調節をし、意見を持ち寄って、大体の目鼻をつけなければならぬ重大な委員会でありますので、また別の機会に御質問したいこともあると思いますが、ただこの際特に警視庁の課長さんに希望しておきますることは、具体的な実例はたくさん持っております。とにかく交通巡査の諸君の行き過ぎは目に余ります。最近は、たとえばそれがわれわれのように身分をあかすと、明らかに交通違反を犯しておっても大目に見る場合もあります。けれどもどうかすると、ちょっと人間が横切るところの道路にほんの一尺ほど出る、あるいはしりがちょっと出ておる、そういう関係で結局また何千円かの罰金を、何と言いわけをしても納めさせられる。そうして警視庁に対して、あるいは署の署長に対する報告などを読んで見ると、それがために大混乱を起したとか、非常に交通を妨害したとか、架空の事実が書き込んである。弱い運転手は、そういう事実はない、ほんの一分間ばかり注意を受けまして、そうして住所、氏名を聞かれて、そのまま行って、二、三日して呼び出されたのであるけれども、とにかく五十台、六十台もの自動車が停車をして、そうして交通が一時途絶したなどということは絶対にないのだが、結局その報告書の中に書き込まれていく。抗議の申しようがない。私どもはまるでがんじがらめに縛られた罪人のように、言っても正しいことをしておると認めてくれない、こういうことを言う運転手が相当あるのです。また言っても参ります。そういう点については、これは明らかにその事例を調べてみると、交通巡査の行き過ぎである。こういう点は一つ自動車の運転手あたりの意見もあなた方が取り上げて、そうして行き過ぎにならないように、私は取締り方針をやっていってもらいたい。いやしくも泥酔をしてハンドルを握っておる、あるいは無理なスピードを出しておる、こういう点については人命尊重の立場から、あくまでも厳正なる取締りをすることは、これは言葉を待つまでもありません。けれども取締りもある程度伸縮自在に温情を持ってやっていただく、こういうような方針でやっていただきたいということを、私は御質問をいたしましたついでに希望しておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/28
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029・原健三郎
○原委員長 永山君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/29
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030・永山忠則
○永山委員 お尋ねをいたそうとする点は、人命を尊重する社会保障的な本案でございますので、われわれはこの本案の趣旨に沿うようにいかなくてはならぬと思うのでありますが、弱い業者の犠牲においてのみやるという結果にならないということに、重点を置いて考えなければならぬのでございますので、そこでいかにこの相互扶助の精神にのっとって、危険を分散して、相携えてこの法案の目的を達するかということに、議論を集中しなければならぬと思います。もっとも付加保険といいますか、純保険料外の保険を安くするということを考えなければならないのでございますが、それは保険経済のあり方といたしましては、強い者ができる限り多く入るということが互いに助け合う共助精神であり、保険経済をよくするものであるという観点から、本法案が政府も見ておる、府県も見ておる、また自家保障を見てもらっておる。こうやって強い者だけは自家保障の範疇へ逃避して、弱い者だけが相互的にいっておるというこの法案の根本が、保険経済を健全化する上において遺憾であるということを昨日来論議を続けておるのでございますが、これとさらに関連をいたしまして御質問したいことは、できる限り付加保険を安くするということから考えましたときにおいては、もちろん国も県も並びに自家保険で認められようとするものも、全部統合するということであるのでございますが、同時にまた相互保険制度を作るということでございます。たとえて申しますと、百台以上の会社が寄りまして保険者となる。すなわち相互保険をやるということに持っていくことになりましたならば、非常に付加保険が、いわゆる事務費が安くつくであろう、常識的には一〇%で済むだろうということがいわれておるのでございますが、現在政府が考えておるところのこの法案では、付加保険は二〇%内外である。しかしこれに対してはさらに代理店の手数料というものを見ていないのであります。かりに代理店で五分の手数料を出す、現在普通代理店に一割五分出しておりますが、これの半分の七分五厘ないし五分を出すといたしましても、二割五分ないし三割というものが付加保険料として加算をされるであろうということは、常識のものでございますが、それの半分くらいでもって相互保険でいけばできる。われわれはこの自家保障を撤廃いたしまして全部が入る、そうしてその中で千台以上のものが相互保険をやるということへいくことによりまして、いろいろの冗費を節約をいたして、本法の目的を達するものであるというように深く信じておるのでございますが、これこそが運輸省の最初の案に近いものでございまして、それを大藏当局がこれに猛然反撃をいたして、既存の保険業者の存在というものに強く意を用いまして反対をいたしたのでございますが、社会保障をやり、無過失の線に持ってくるということになるならば、保険業者ということを中心に考えるべきではなくして、実に結核患者の死亡数よりもまだ多くの事故数を持っておるというくらいに政府が言われるものであり、これが社会保障をやろうという状態であるならば、しかも業界はこの料率を加えたる料金を上げることはできない。料金のダンピングをいたして、労務を食い、車を食い、この苦しい状態で気息えんえんたる状態にあるときでございますので、この場合において自家保障の制度をやめて、そうして自家保険のいわゆる相互保険制を確立するということへ持っていき、すなわちもちろん保険会社と契約することは何ら差しさわりございませんが、その中で相互保険でやるというものに対してはこれを認めるということになって、初めてここに事務費の節減をし、いわゆる付加保険料を低下するというように考えられるのでございますが、この点に対して御意見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/30
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031・三木武夫
○三木国務大臣 永山委員のお話の相互保険、これは将来の研究をすべき課題だと思います。しかし現在の自動車業界の状態、いろいろな点から勘案いたしました、今相互保険という形においてこの賠償法が円滑にはいかないのだという判断のもとに、こういう法案を提案をいたしたわけであります。いろいろな点からいたしまして、たとえば付加保険料の問題にしても、今新しくいろいろ人を雇い、建物を借り——業界も必ずしも業界自体が一本になっておるわけでもございませんし、いろいろな点から考えてそれがこの保険の目的を十分に達するものでもないし、必ずしも保険金もそんなに安くならぬではないかというような判断で、この法案を提案いたしましたが、御指摘の相互保険という問題は、これは将来検討をすべき課題ではあると思いますので、検討を加えたいと思いますが、今すぐにこれをそういうことに変えていくという考え方ではないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/31
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032・永山忠則
○永山委員 私が質問いたしていることは、全面的相互保険制度を運輸省が第一回の立案に取り入れろという意味ではないのでございまして、この法文にあります自家保障をいわゆる相互保険にしたらどうか。すなわちそのことによって保険経済が一元化するわけでございまして、現在の保険経済の範疇から逸脱しておる政府も府県もあるいは大会社もこれを逃がさずに、そうして保険経済の中で、しかも希望のあるものは相互保険を千台以上で認めるのだということをやるべきであるということを申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/32
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033・三木武夫
○三木国務大臣 その場合も同じでありまして、それを自家保険のような形にすることは、専門家でもありませんし、人もそういう業務のために雇わなければならぬであろうし、いろいろな建物もいるでしょうし、それで保険料が安くつくとは必ずしも言い切れないのではないか。かえって複雑にするのではないかということで、最初の出発はこういう形にいたしまして、今後検討してこの賠償法をよりよいものに作り上げていきたい、こういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/33
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034・永山忠則
○永山委員 私が言うのは、選択主義でございますから、これで費用が多くかかるといえばやらないのでございます。いわゆる自家保障を相互保険に持っていきたいというものがあればこれを持っていかす。それによって諸経費が節減するということは、何と理屈を言いましてもこれは事実ございます。今日農村の共済組合は、すべて保険会社よりは非常に安いのであります。保険会社はこの共済組合制をもって自家保険的性格を進めるということに、断然反対をいたしておるのであります。しかし農村側においては共済組合制を認めておる。ことに町村におきましてはやはり火災保険をやっておるのであります。町村側がこの相互保険をやっておるというところから見ましても、非常に費用が安く済むのでございます。これに刺激されまして保険会社は、どうしても諸費用を安くしなければならぬ情勢に置かれておる。今日保険会社の独善を許すべきものではない。この時代において費用が多くかかるであろうから、これらのものは認めがたいのだというような、全く子供のような議論が行われるということは遺憾でございまして、いわゆる今日の独善的な保険業者に対してメスを入れるときがきておる。いわゆる共済組合制を確立、強化いたしていくということは世論化されておる。ただ大蔵省の方でこれを全面的に反対をいたして、金融資本主義の絶対擁護の立場に立って、きぜんとしてこれに反対なさっておるから、どうすることもできぬという事務当局の行き方であるが、われわれはどうしてもこれにメスを入れるときがきておると思うのであります。しかも今日この社会保障制度をやろうというときにおいて、業者が塗炭の苦しい経営をやっており、料金さえも上げることができない経営状態にあるときに、これをやらせようという場合に一は、——しかも結核患者の死亡率よりは大きい損害を自動車事故によって与えているという場合に、こういう大きな社会保障を業者だけの負担においてやらせるというようなことは、とうてい許されぬことでございますので、この点に関しては十分一つ当局においても御研究願いまして、自家保障制を排除して、相互保険制を選択によって認めるということに本案が進むことこそが、ほんとうに保険経済を確立いたし、相互扶助の精神に一致するものであるということを私はここに深く信じて申し上げておるのでございます。
次に保険経済を確立するという点で、今社会保険、ことに健康保険で問題になって、この国会を通過するかしないかという岐路に立っておる状態でございますが、その赤字の出る原因はどこにあるか。これに対して政府が給付の補助金を出さぬからである。事務の補助は全部出しておる、付加保険料は出しておるのです。実質保険料、純保険料だけをかけておるのでありますが、それでも赤字が出ておる。そこでこれを救済する方途としては、三割の自己負担を——短期療養一カ月以内の病気の場合においては、自分の方で三分の一の金は持っていくということにすることが、赤字を解消する一番早い道だということが、今日論議の中心になっておる。社会保障の後退にはわれわれは反対をいたしておりますけれども、政府が金を出すことができなければ、それ以外に道はないのでございまして、今日社会保険というものを研究しておれば、必ずそこは考えられねばならぬ点である。従ってこの保険の問題に関連することは何であるかといえば、全部支払うという行き方でなくして、今日保険会社がやっておりますように、四分の一は事故のあった会社が負担する。すなわち一部負担を認めるということこそが保険経済を——政府が金を出さずにというならば、これを認めることに、よって、初めて事故に対して強く責任を感じ、その事故の査定に関して強い発言をなし得ることになるのでありまして、これがまた保険経済を確立するところの要素であります。長い間経験に経験を積みました保険会社が、四分の一は事故があった場合には、その事故を起した会社に持たせるということをやってきているということは、保険経済の確立上やむを得なかったものである。すなわち新種保険である自動車保険は、非常に赤字が出ておる。どの保険会社でもみな赤字に悩んでおるのであります。しかしこれ以上の料率の引き上げは困難である。ゆえにできる限り事故を防止させて、そうして危険を分散するという考え方に立ちまして、四分の一は事故を起した会社がこれを負担するということにいたして、今日の苦しい自動車保険経済を切り抜けておるのでありますが、この点を政府は考えなければならぬと思うのであります。これに対する所見を承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/34
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035・三木武夫
○三木国務大臣 この賠償法案というものが、事故による被害者の保護をこの立法は目的としておりますから、四分の一は加害者に払わした方がいいのじゃないかというお話でありますが、被害者の立場からいえば、全部払ってもらった方が安心である。四分の一加害者が払ってくれない場合もなきにしもあらず、そういう点で立法の精神が被害者の保護ということでございますために、全部そうする方が立法の精神にはかなうということで、こういうことになったのでございますが、永山さんの御心配になっておるのは、中小企業の自動車業者がこの保険金の負担によって、非常に業界が致命的な打撃を受けるのではないかという、前途を心配されて、御質問になっておると思いますが、われわれとしては、そういうことに陥れましては、運輸行政の円滑なる運営にならないのございますから、この保険の実施の経験に徴して、もしこの保険金の負担というものが致命的な打撃を与えるとするならば、この保険料率の問題もございましょうし、あるいはまた需給の調整、運賃の調整、こういうものを通じて、自動車業者に致命的な打撃をこの法律案の実施によって与えないだけの処置はとりたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/35
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036・永山忠則
○永山委員 保険料の補助は、一文も出さぬのだという観点においてこの立法が行われておるというところに、根本的な間違いがあるということは、昨日来論議を続けたところでありますが、われわれは来年の四月一日からこれを実施して、政府が社会保険料を出すというところに持ってくるならば、あえて論議する必要はございません。しかしこのままで通過させようということになれば、本案の目的を達して被害者に迷惑をかけないように、そうして業者もまた立ち行くような考え方、すべていずれも、被害者も国民であり、業者も国民である。相互的に生きるという道を考えるべきだと思って、そして特に強く言っておるのであります。ただいまお説のように、いわゆる社会保障の性格であるから、全部すぐ業者に四分の一を持たすということなしにやるということは、いいにきまっております。しかし政府が保険料の補助を出さないという観点で、しかも弱小企業者が経営上成り立つという観点においてやろうとするならば、ここに四分の一は事故を起した会社にこれを負担せしめるということで持っていって、保険料率も少くなるし、同時にまたことに問題となる点は、どういうわけでそういうことを言うかというと、四分の一会社が出すことになりますれば、この損害査定に対してきわめて真剣になるのであります。
私は今基本論に入ろうとすることは、三十万円過失ありとして査定を受けた場合においては、もう三十万円ではきかないのであります。過失があって三十万円ときめてしまわれれば、どうしても政府の、運輸省の出しておるところの人命損害の金額に近いものまで、必ず追い込まれるのであります。私は昨日来あらためて法務省を呼んでもらいたいということを言っておることは、そこなんであります。過失がある、しかもこれは挙証責任ですから、挙証ができる。そこにおいて三十万円を認めるということにおいて認めたならば、しからば直ちに人命に対するところの損害補償がこれに加わってくるのであります。ここにおきまして問題の焦点は、三十万円で認めるときに、挙証をもうやらないのだ、これでよろしゅうございます、三十万円は保険料でもらうが、もう二十万円でよろしいという損害査定というものが、これが中心になるのであります。この損害査定に対するところの基本的な方針は何らきまっていない。無過失で、そして人をひき殺して、これはお前の責任だというところに持っていこうという法の本質であってはいけない。そこで自分の方で四分の一出すということになれば、会社も熱心にこれに対しまして、自己が過失がなかったという点に対して、あるいはあらゆる角度で立証をするのであります。その観点から見ましても、四分の一は自分の会社で自己負担をするということが必要であると同時に、いま一つ重大な問題としてお問いいたしたいのは、三十万円では人命に対するところの、死亡に対しては軽過ぎるのであります。妥協になりません。すなわちそのときに相互過失であるならば、二十万円、十万円と今のように民法七百九条によりまして、互いに過失を争っていくということで、挙証責任が被害者の方にあるならば話はつきますけれども、挙証責任は被害者にない、運行者にあるということがきまっておって、そして三十万円で話がつくはずはない。話がつかなければ、保険会社は話がつかぬから、払ったということに君の方で挙証することができるのじゃないか。払ったといえば、莫大な人命に対する損害額を要求されてくるのでありますから、どうしても三十万円は、これを払う場合においては訴訟に至らないという話し合いでなければ、払うということは困難でございます。そこでわれわれは三十万円という額を、五十万円にはどうしても引き上げねばならぬという議論になる。そのことは被害者もいいが、また業者もいいのです。互いに話し合いをして、まとまるところの線というものの五十万円というものを標準にしておかれる。すなわち一人当りの事故費を三十万円を五十万円に引き上げるということをやると同時に、四分の一の自己負担を出せ、こういうことこそが絶えず和解に持ってきまして、この政令で定めるところの、被害支払い限度こそが最高であり、最低であるというところに持っていき得るとも考えられるのでありますが、この三十万円の限度におまきしては論争は続けられます。従って話し合いの結果で支払うということの率が、非常に薄くなるのでございます。その結果としては、訴訟へ追い込められ、被害者の方も四割の十二万円をもらって、訴訟費用の一部として訴訟まで持っていこうという腹になります。すなわち挙証責任がないのだからすぐやろうという腹になる。また運行者の方から申しますれば、これで過失があるという認定を受けたならば、三十万円ではきかない。少くとも百万円に近いものを出さねばならぬということでございますから、最後までがんばる。ここにおきまして絶えず訴訟へ訴訟へと話は紛淆してくるのでございますから、どうしても三十万円という金額を五十万円に引き上げて、そして四分の一は事故を起した会社が自己負担をする。これこそ現在の政府が金を出さずに、補助金を出さずに、保険経済を確立しようとする、これは鉄則ではございましょうが、すでに今厚生大臣は健康保険が通過しないとかいうので非常に悩んでおるということは、政府は健康保険に対して一割の給付補助をせずに、保険料だけを上げていくというところに悩みがあるのであります。ここで三十万円を五十万円に引き上げるとということと関連をして、この点は強く考えられなければならぬと思うのでありますが、大臣の意見をお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/36
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037・三木武夫
○三木国務大臣 永山さんのお話の前段は、三十万円でなく四分の一を加害者に負担をさせれば、損害の査定も厳格になって、賠償の金額が今のような金額よりももっと安くなるのではないかという意味のお話であったと思うのですが、従来日本の交通事故の被害者は、私は非常に気の毒な状態に置かれておったと思います。これを救済すべき制度もございませんし、まあ泣き寝入りのような状態に置かれたことが非常に多かったという点で、やはりこういう立法があって保護することが必要で、これは一つの被害者の立場を保護する立法だと思います。ただそういう場合に永山さんの御心配になっておる自動車業界が、この保険料を納めることによって非常に打撃を受けるのではないかということは、これは私は別の運輸行政の面だと思うのです。それだからといって、こういうものをなくした方がいいかというと、やはりこういう法律が要るということは国民全般の声だと私は思うのです。そこでこの保険料を払うことによって受ける業界の打撃は、別の角度からわれわれ運輸行政として、業界が不健全な状態にいくことは防がなければならぬことでありますから、日本の自動車業界の健全な発展を促進するような方法を考えていく。これが即自動車業界が立つか立たないかといって、ここでこの法律案と業界が立つか立たぬかということをすぐに結びつけて考える立場には政府はないわけであります。これは別の運輸行政の面で考えていくべきじゃないかということでございます。そういう点で御心配の趣きは重々わかっておるのであります。われわれとしても自動車業界を破滅に陥れるようなことをいたしましては、交通行政を円滑にできないのでございますから、決して自動車業界を破滅に陥れるようなことはいたしませんから、これはこれとして、これで自動車業者を保護するという直接のものではないので、交通事故の被害を受けて今まで泣き寝入りになった国民に対して、これを守っていこうというのでありますから、業者の今後の利害と直接に結びつきはしますけれども、また角度を変えてこの立法もお考え願いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/37
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038・原健三郎
○原委員長 暑いときですから、答弁も質問も両方なるべく簡単明瞭によろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/38
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039・永山忠則
○永山委員 大体一問一答で深くやらねばならぬのでありますが、大体簡潔に要領よくやるというのでこのようにやっておるわけでございます。ことに観点は被害者をいかによく救済するか、また業者の負担をできるだけ少くして、また税負担をいかに少くして、そうして本案の目的を達するかという点に集約しての質問をいたしているのでありまして、本案をつぶそうとかいったような考え方で、いたずらに時間かせぎをいたしおるのではないのであります。この言い方が冗長であるとするならば、こちらの頭が悪いとお考えになるか、しからざれば当局の方がどうも受け取り方が悪くて、どうしてもこちらの意見が通らぬということで、しばしば論議をしなければならぬということでございますから、委員長にも一つ御了承をいただきたい。暑いときでありますが、これは画期的なものでございまして、すでに外国には五十年前からあるといわれております。この損害賠償保険の範疇にほんとうに入っておるのは、ドイツ、オーストリア、スイス等でありまして、あとはこれにありますごとく、まだ当局も調査してないというような状態でございます。何といっても無過失損害賠償ということは、これは社会保障である、損害保障である、この重大なる法案でございますので、一つ御了承願いたい。ことに私も他の委員会を持っておるのでありますから、そっちへも行かなければならぬのであります。
そこで大臣に特にただいまの点について申し上げるのでありますが、われわれは業界が経営の安定を得て、本法の精神に沿うていく面においては、他の幾多の困難があると思う。問題は多年重要なる陸運行政に対する施策の不備ということが、今日の業界の経済を困難に陥れておるのでありますから、それらと総合してこれが進められねばならぬ。本法が先行して、その根本的な問題が着手されぬということを、非常に憂慮いたすのであります。これは後ほど質問を続けるとして、ただいまの件でございますが、三十万円が五十万円に上るのでございますから、これは被害者のためになる。そうしてまた業者は自己負担をするだけは、事故を起したとき負担は増すようでございますけれども、それでもって話し合いがついたならば、訴訟行為へ移行することが防止できる。問題は保険料の問題もさることながら、ここに訴訟行為が頻発をいたして、三十万円は最小限度であって、絶えず最高の人命保障の損害金を払わなければならぬということにこれがなるようであれば、それこそほんとうに業界は立ち上ることのできぬような、この法案によって致命的な打撃を受けますので、それを防止しなければいけない。被害者も三十万円が五十万円になり、業者は負担が上るけれども、話し合いでこれが済むということになるのでございますから、三十万円を五十万円に引き上げて、そして四分の一は自己負担をやるということに、一段の御考慮を願うべきであると思うのであります。従って本法の最も中心となるものは、損害を受けた場合においてどういうように査定をするかということでございます。その査定のやり方によりまして、絶えず責任者であるということで、自己の責任を認めて三十万円を払うということに追い込められた場合においては、相次ぐ訴訟問題のために、全く苦境に追い込まれるのでございますが、これに対する損害査定の行き方はどういうようにしようとするのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/39
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040・三木武夫
○三木国務大臣 三十万円よりも五十万円にした方がいいというお話、それ自体としてしてはそうだと思います。人命を尊重する上において、金銭的な賠償もやはりもう少し上げていくことが、今世界の状態だと思いますけれども、しかし永山さんのおっしゃる通りにしますと、保険金額がやはり上ってくるわけであります。あなたのおっしゃるように四分の一にしましても、業界自体が相当負担をしなければならぬわけです。従って保険金の支払いを五十万円にしなければ訴訟が頻発するじゃないかという御懸念でありますが、これは話がつかなければ四割だけを払って、話のついた場合にその金額を払うわけですから、もう三十万円は話がついてもつかなくても払って、それからまた今度はその上へプラス・アルファがつくのだという建前にはなっていないわけです。しかしこれの実施に当っては、これが円滑にいくように、いろいろな点でもっと検討する必要があろうと思うのでありますが、しかしあなたの言う案ならば、これは保険料の問題もございますが、できれば次第々々に金額を上げていくことが理想でしょうけれども、一まず三十万円程度が妥当じゃないかという判断で、こういうことを提案いたしたわけでございます。
それから永山さんの質問の中に査定についてお話がありましたが、これはお話のように厄介ですから、保険金の支払いにこまかい基準を設けたいと思うのです。できる限りその詳細な基準を設けて、機械的に査定のできるようにしたいと考えておるのでございます。しかし機械的といっても、全部それを当てはめるということはなかなかむずかしいけれども、できる限り詳細な基準を設けたい、そして査定を簡便にしたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/40
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041・永山忠則
○永山委員 大臣は法案のほんとうの精神をまだ十分御理解になっていないので、局長の言い分を聞いては言われるので、ちょっとピントがはずれるのですが、どうしても同じことではないのですよ。結局五十万円にすれば、業界も負担がふえてきますけれども、話し合いがつくから、それからさらに五十万円の上の人命に対する損害金が、訴訟へ移行せずに済むということが非常に大きな利益であり、また被害者の方もそれが利益だというのであります。これは議論でありますからこれ以上申し上げませんが、ただいま査定ということを申し上げましたのは、労災のようにどれだけのけがをしたらどれだけをやるという、こまかい基準はお作りになると思います。これを大体どういう基準でどうやるかというようなことも聞きたいのでございますけれども、非常に大きな、致命的な問題は、死亡した場合においてこれを査定をするのであります。死亡でなくても、いわゆる重大なる事故に対しましての査定をやる。これを正しくやりませんと、無過失損害賠償という範疇に入りかけておるのでありますから、そこで相互過失相殺というような点は度外視されて決定をするということになりますなれば、それを決定されたならば、直ちに続いての人命に対する損害を受けなければならぬのでありますから、ここでその査定ということが絶対に必要になってくるのであります。その査定の際においては、どういう人が立ち会って、どういうようにしてやるのだ、またどういう権威を持っているかということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/41
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042・眞田登
○眞田政府委員 現在賠償額を決定いたしますのには、保険会社が立ち会って決定しているのでありまして、最初の出発の際にはそういうふうにしていきたいと思います。
なお先ほど、第二のお話にございましたように、何かよりどころがある基準というものを作っておきますれば、具体的な事故の際の査定について争いが少くなるのではないか、こういう意味で何かそういったものができればけっこうだ、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/42
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043・永山忠則
○永山委員 私の査定というのは、保険会社にまかしておいて、そして過失ありとして三十万円を支払われた場合においては、すなわち四分の一は自己負担がないのでありますから、そこで保険会社は三十万円をすぐ払う、過失ありとして払われたならば、それが基礎となって続いて人命に対する損害要求を受ける。この点、すなわち不測の損害を業界が受けて立つことができない状態になるのではないかということで、そこで三十万円を五十万円に引き上げなさい、そして話し合いをつけてこれを解決するということになれば、保険料はこれに対して事故を起した保険会社は四分の一を別に負担しなければならぬということになるかもしらぬけれども、それでも話し合いがついた方が、業者も利益ではないかということを申し上げるのでありますから、その基本となるべき査定を保険会社にまかしておくということは、四分の一の自己負担もないのだから、無過失という方の性格をもあわせて考えたときにおいて、ここで不測の損害を受けるような結果になる。この損害査定を保険会社にまかしておくことではいけないということを申し上げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/43
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044・眞田登
○眞田政府委員 先ほど言葉が足りませんでしたが、保険会社が査定するというわけではございませんので、当事者間の話し合いの際に、保険会社が立ち会ってそこで話をつけるということでございます。それから先ほど来お話ございましたが、責任あるときまりますことと、それから賠償額を幾らにするということとは、別途の問題でございます。責任があるということを一応認定されました際に、それでは賠償額を幾ら支払うかという問題は、その当事者間のお話し合いで一応きまるべき問題でありますが、それが五十万円ときまるか、あるいは十万円ときまりますか、それはわかりませんが、しかしただ五十万円ときまりました場合には、保険会社は三十万円払い、その加害者が二十万円払うということでございます。しかしながらそんなに高い賠償は払えないという話になってお話がつかなければ、十二万円だけ支払ったあとは訴訟ということになる場合もあると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/44
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045・永山忠則
○永山委員 そこで問題は責任あるという基礎ができることによりまして、一切の問題が付随してくるのでありますから、その責任あるやいなやということの決定が、重大な要素を持つものでございます。それで自己負担も入れたいということを申し上げ、保険会社の査定資料をさらに十分業者及び被害者間の意見を取り入れて、そしてこれが査定においては、事故のあった関係省もまたこれに立会をせしめて、その査定に万全を期するような行政的処置をお願いをしなければならぬと思うのであります。
さらに続いて政府の方の保険事業の関係でございます。これはひき逃げの方の費用を払うというのである、あるいは官庁の車を、何でもない人が運行して損害をかけたという場合の保険事業に対しては、政府は八十円を一車に対して取る。これこそが真に事故に全然関係のないひき逃げ等に対する社会保障をいわゆる業者が負担するわけでございますが、この金額は八十円、一億五、六千万円ということが計算上出てくるのでございますけれども、これまでひき逃げ等の関係においては、十分申し出ることができず、死亡の場合あるいは事故の場合には申し出ておりますけれども、小さい傷害については申し出がないし、また申し出たところで相手がわからぬのでございますから、潜在の事故というものが相当量あるだろうということが想像できるのであります。これはどうしても政府がこの方の費用は、いわゆる政府の保険事業の費用は当然出さねばならぬと考えるのでございますが、これに対する考えを聞きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/45
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046・三木武夫
○三木国務大臣 最初の予算折衝の場合にも、そういう場合は政府から出すことが好ましいと思いました。そういうことで予算折衝もいたしたのでございますが、なかなか全体の財政のワクもございまして、思うようにならなかったのでございます。だから二千六百万円の中には八百万円くらいはそういう費用が入っているのでしょうが、これは不徹底だと思います。将来においてこの問題は解決をしなければならないと、私も永山さんのお考えのようにこの問題を考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/46
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047・永山忠則
○永山委員 八百万円の算定基準は何から出るのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/47
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048・眞田登
○眞田政府委員 国の保有しております車両で、これが適用除外になりますので、その適用除外いたします車の両数に、先ほどお話も出ました一両当り約八十円というものの掛け合せましたのがこの七百九十万円ほどの金でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/48
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049・永山忠則
○永山委員 この点はどうしても予算的措置を強力に要望をいたしたいのでございます。
関連して聞きますが、酔いどれの運転手で事故を起した場合は保険会社の方で払うのですか。それともこの保険事業の方の費用で払うのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/49
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050・眞田登
○眞田政府委員 ただいまのお話、一般の車のお話でございますと、もちろん保険に入っているはずでございますから、保険会社で支払います。それから官庁の車の運転手が酔っぱらっていたというような場合には、これは官庁で支払うべきものだと思います。なお官庁の車を他の人が運転した場合には、これは権限のない人の運転でございますので、保障事業の方でまず支払う、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/50
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051・永山忠則
○永山委員 外国関係の方で、進駐軍の行政協定による分の被害はどの項目でお払いになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/51
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052・眞田登
○眞田政府委員 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う民事特別法というのがございます。その一条に国が支払う、日本の国が払うということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/52
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053・永山忠則
○永山委員 それでは結局保険事業の方で支払うということでございままか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/53
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054・眞田登
○眞田政府委員 日本としての、国が支払うわけでございます。保障事業という一つの基準の方でございます。別の会計でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/54
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055・原健三郎
○原委員長 ちょっと永山さん、今議長の方から注意があって、本会議が開会したから早く委員会を閉じて出席するように注意がありました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/55
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056・永山忠則
○永山委員 それはいわゆる基本の問題としてあるのですが、もし次にでも時間を与えて下さればやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/56
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057・原健三郎
○原委員長 もう少しですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/57
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058・永山忠則
○永山委員 まだ大問題がありますから、大臣が言われたように基本的な需給の調整、交通秩序の確立並びに危険防止、いわゆる業界の経済の確立ということが並行されて、初めて本法が施行されるのにふさわしい状況でございますので、この問題を十分検討を続けなければなりませんので、すぐここでということではいけないのであります。大臣自身も言われているのでございますから、この基本問題を解決することが本法以上に大切ではないかということでございますので、一つ大問題としてあすの機会にでも発言を許していただくことを期待いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/58
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059・原健三郎
○原委員長 本日はこの程度にいたして、次会は公報をもってお知らせいたします。
午後四時一分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102203830X02919550714/59
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