1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月八日(金曜日)
午前十一時開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君
理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君
理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君
理事 吉川 兼光君
植村 武一君 亀山 孝一君
草野一郎平君 小島 徹三君
床次 徳二君 横井 太郎君
亘 四郎君 越智 茂君
小林 郁君 中山 マサ君
八田 貞義君 岡本 隆一君
多賀谷真稔君 滝井 義高君
中村 英男君 長谷川 保君
横錢 重吉君 井堀 繁雄君
神田 大作君 山口シヅエ君
中原 健次君
出席政府委員
労働事務官
(職業安定局
長) 江下 孝君
委員外の出席者
法制局参事官 山口 真弘君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
専 門 員 浜口金一郎君
専 門 員 山本 正世君
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七月七日
委員多賀谷真稔君及び渡邊惣藏君辞任につき、
その補欠として櫻井至夫君及び長谷川保君が議
長の指名で委員に選任された。
同月八日
委員櫻井奎夫君及び矢尾喜三郎君辞任につき、
その補欠として佐々木更三君及び受田新吉君が
議長の指名で委員に選任された。
同日
委員佐々木更三君辞任につき、多賀谷真稔君が
議長の指名で委員に選任された。
同日
委員多賀谷直稔君辞任につき、佐々木更三君が
議長の指名で委員に選任された。
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七月七日
医業類似療術行為の期限延長反対に関する陳情
書
(第三〇一号)
中国人ふ虜殉難者遺骨送還に関する陳情書外一
件
(第三〇二
号)
同
(第三三
三号)
健康保険における医療給付費の二割国庫負担等
に関する陳情書
(第三三四号)
昭和三十年度社会福祉予算増額に関する陳情書
外一件(第三三
五号)
季節保育所設置費国庫補助復活に関する陳情書
(第三三六号)
同
(第三七五号)
国立公園施設整備費国庫補助復活に関する陳情
書(第三三七号)
元満州開拓民及び満州開拓青年義勇隊員の処遇
に関する陳情書外一件
(第三四六
号)
生活保護法の教育扶助額増額に関する陳情書
(第三六六号)
失業対策確立に関する陳情書
(第三六九号)
岩手県に労災病院設置の陳情書
(第三七〇号)
農山漁村の失業対策確立に関する陳情書)
(第三七一号)
健康保険法の一部改正反対に関する陳情書外二
件
(第三七二号)
国立療養所の附添廃止反対等に関する陳情書
(第三七三号)
国民健康保険法の一部改正等に関する陳情書
(第三七四号)
国民健康保険制度拡充強化に関する陳情書
(第三七六
号)
医業類似療術行為の期限延長反対等に関する陳
情書外一件
(第三七七号)
国民健康保険法等の一部改正に関する陳情書
(第三七八号)
船員保険法の一部改正反対に関する陳情書外
三件
(第三九五号)
を本委員会に送付された。
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本日の会議に付した案件
小委員の補欠選任
失業保険法の一部を改正する法律案(内閣提出
第九四号)
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出第一一一号)
―――――――――――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/0
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001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
この際小委員の補欠選任についてお諮りいたします。特需関係労働対策小委員の井堀繁雄君が去る六月二十二日、山花秀雄君が去る六月二十九日、横錢重吉君が去る七月五日、医業類似行為に関する小委員の長谷川保君が去る七月四日、医療機関に関する小委員の長谷川保君が去る六月二十七日、岡本隆一君が去る七月七日にいずれも委員を辞任せられましたのに伴い、関係労働対策小委員会、医業類似行為に関する小委員会及び医療機関に関する小委員会にいずれも欠員を生じておりますが、以上の五君は再び委員に選任せられておりますので、それぞれ辞任前の小委員に委員長より指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/1
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002・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め
特需関係労働対策小委員に
山花 秀雄君 横錢 重吉君
井堀 繁雄君
医業類似行為に関する小委員に
長谷川 保君
医療機関に関する小委員に
岡本 隆一君 長谷川 保君
を指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/2
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003・中村三之丞
○中村委員長 次に、失業保険法の一部を改正する法律案及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の二法案を一括議題となし、質疑を継続いたします。中原健次君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/3
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004・中原健次
○中原委員 昨日最後の御答弁の中に、この失業保険法の一部改正についていいところもある、こういう意味から、局長から二点をあげられたと思います。その中の一つについて、私の納得いきがたい点がありますので、お尋ねいたします。
なるほど二十七条の二の社会福祉の施設を行うという件に関しましては、一応労働者の福祉のためになされる措置として、いいことには違いないと思いますが、この福祉施設のために必要とする費用の出場所が、どのようなところに求められるのであろうか、これを一つお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/4
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005・江下孝
○江下政府委員 この本条に基きます福祉施設は、これは失業保険法の中の規定でありますし、当然失業保険経済によって措置さるべきものであると考えておるのであります。現在考えておりますのは、保険料を政府におきまして一定のワク当然積み立てる義務もございます。現在は二百五十億程度の積立金がございますが、この積み立てました保険料の運用によりまして、運用の利子と申しますか、収入が年々十億をやや越える程度の金額に上っておるのであります。そこで、この運用収入を、従来どういうふうに使っておったかと申しますと、これは昨年度におきましては約十二億でありましたが、このうち四億程度を福祉施設に回しました。残りの金額につきましては、失業保険を行います行政事務の費用に充てておったのであります。私どもといたしましては、当然民間から集めました資金でありますので、これについては大蔵省とも折衝いたしまして、全額福祉施設に充ててもらいたいということを例年折衝をいたしております。本年度の予算におきましては、これを五億五千万円に増額をいたしまして、一般会計からの負担を多くいたしまして、特別に福祉施設の方にこの十二億の中から五億五千万円を支出いたしまして、職業補導等の労働者福祉施設に充てることにいたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/5
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006・中原健次
○中原委員 積立金の処理の問題につきましては、先般の当委員会で、私の意見を添えて御質問を申し上げたのでありますが、私は今回の改正措置の動機が、前年度の保険財政の赤字にその因を発しておるということを思いますときに、その赤字の処理を急ぐあまりの結果として、昨日も御指摘申し上げましたような数々の労働階級に対する不利益な条件を組み込まなければならなかったということから思いをいたしますならば、この社会福祉施設の一応の論といたしましては、積立金の中の利子をもってこれに充てるということも成り立たないことはございませんけれども、この緊急の段階としては、やはり一般会計からの繰り入れによって福祉施設の施行費をその中から生み出すという考え方の方が、本来妥当ではなかろうか、このように私は思うのです。従って、なるほど一応の建前としては、ただいま御説明のようなことになるかもしれませんが、赤字の克服処理をするために非合理的な条件を押しつける前に、やはりこのようなことも考えられなければならなかったのじゃなかろうか、そういうふうに思います。従って、一般会計からこの福祉施設を行うということを考えることが、なぜできなかったのだろうかという点について、局長の御見解をもう一度伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/6
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007・江下孝
○江下政府委員 御承知の通り、失業の予防あるいは就職の促進ということにつきましては、一般的には、一般会計予算で職業補導所の設置あるいはその他就職の促進というために、一般会計におきまして所要の経費を計上してやっておるわけであります。本法では、どういたしましても失業保険という一つのワクの中にはまった福祉施設ということに相なりますので、この書き方も一項にも二項にもありますように、被保険者及び被保険者であった者の福祉の増進をはかるということの一つの限定を置いておるのでございます。おっしゃるような一般的な失業対策の面は、一般会計の方で処理をして、一般会計においてその金を出してやる、こういうことだろうと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/7
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008・中原健次
○中原委員 第二項の後段で「これらの者以外の者に利用させることができる。」という一応の規定が置かれておるようでございます。もちろんわれわれは、失業保険会計の中から醸出された金でできた福祉施設を、他の労働者に使わせないというワクをはめる考えはありません。当然大いに利用されていいと思うのでありますが、しかし、それだけにこの問題は、一般会計の当然の協力がなされなければならぬ、こういうふうに思うわけです。従って、一般会計の協力を当然のこととしてこれに組み入れるという措置のお考えなり、あるいはそれに対する努力なり等について、さらに積極的なお考えがおありであるかどうか。あるいはわかり切ったことをお尋ねしておるかもしれませんけれども、しかしこの点は、ものの考え方として非常に大事だと思いますから、もう一度お尋ねしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/8
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009・江下孝
○江下政府委員 昨日御答弁いたしたと思うのでありますが、一般会計からの失業保険経済への負担は、失業保険金の三分の一、つまり失業保険金に支払う金の三分の一を政府が負担するというのが、現在の法律の建前であります。そこで、もちろん先生のように、それは政府が金を出して、こういうものにも一般会計で負担させていいじゃないか、これは法律を多少いじれば、できないことはない。ただ問題は、それだけ失業保険の方に対して政府がやらなくてはならぬかという点になりますと、これは昨日私申し上げましたように、失業保険金の三分の一を政府が負担するというのは、これは社会保険としては相当高度の政府負担であると私ども考えておりますので、直ちにこれを改正してやるということは、現状におきましては、ちょっと困難ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/9
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010・中原健次
○中原委員 今日の段階では、昨日も申し上げましたように、非常に特殊の段階なんです。というのは、これが常態では困る。とにかくどしどし失業者がふえるということは避けられない事柄でもあるかのようになっておる今日の状態であります。従って、こんなものがいつまでも継続されたのでは困りますが、そういう特殊段階にある。従って、そういう特別な失業不安の段階にありますだけに、それだけに、失業対策としては国があらゆる力を結集して、ここに私は対策を講ずるの責任があると思うのです。そういう見地から考えますと、福祉施設等のごときは、これは大いにどしどしやるべきであって、しかもそれを進めるための費用に関しましては、今の段階の特殊性からいいますと、すべてに優先する、こういう考え方があってもいいと思うのです。ということは、失業者がほんとうに自分の血をしぼるような思いをいたして生きておる人の立場から考えましたら、国がなぜもう少し積極的に責任を感じてこの問題を処理しないのであろうか、こういう不満を多分に持っておるわけなのであります。それだけに、せっかく零細な金を集めました失業保険負担金が、あるいはその集められました財政が、そういう方面へもどんどん使われるということも、一つの要因として赤字がふえておる。しかもそのふえておる赤字を、だから労働者の方へもさらに不利益な条件を作って追いかけていくという措置、こういうことは、どう考えましても、今日の特殊段階における失業事情に対する行政措置としては、物事の本質的なものをつかまないで、とにかくその場を糊塗しておるということになるように思えるのです。やはりこれはずばりと出されて、このような段階だから、当然かくあるべしという方針を出すだけの、少くとも立案者の方での基本的な構想があっていい、あるべきだと、こういうように私は思うのです。従って、あなたの方としては、ここまでの考え方があり、ここまでの努力をしたけれども、他のいろいろな障害のために、そのことが達成できなかったのである、従って残念ながらこの程度なのだということならば、まだ多少はゆとりがつきますけれども、頭からここに押しつけることが、理論的に正しいのであるか。しかも三分の一という負担に対して、非常に恩恵がましい表現が使われた。こういうことから考えますと、やはり失業保険の、あるいは失業諸政策の一番根本的なものの判断をされるはずのあなたの立場から考えて、どうもそれでは労働者に対するよき道が開けると期待することができなくなってくる、こういうふうに私は思うのです。しかしながら、依然としてこの措置が妥当であり、何らの疑問も起らないということであってみれば、そのつもりで私どもは考えるより仕方がないのであります。まさかそうであろうとも私は思わない。従って、今日のこの御提案の場合の心境と、さらにこれから先を展望されてのこういう問題に対するあなたの見解というものは、発展的に今私が申しましたような方向へいってもらわなければならぬ。このままでいくと、安心してそこに安座されて、今後ともその方針でやられるというのでは、これはちょっと心配です。そういう意味で、まことにしっこくお尋ねして、はなはだどうかと思いますけれども、今の考えで、もう私のいう発展はないものですか、そういうことはお考えになられませんかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/10
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011・江下孝
○江下政府委員 言葉が足りませんために、おそらく私の気持がわかっていただけないのかと思うのですが、私は政府の失業対策が、すべて十分であるということは申していないのであります。もちろん今後失業者の対策というものは、年を追ってやはり重要になりますので、私の仕事といたしましても、もっと力を入れなければならぬ根本的な問題を含んでおると私は考えております。実は失業者の救済というのは、失業保険法だけでなくして、あらゆる国の施策を総合して失業対策というものを考えていかなくてはならぬということじゃないかと考えております。そこで、失業保険といたしましては、先ほど来繰り返して申しますように、三分の一国庫負担をしております。他の社会保険に比べまして、決してこれは低率ではない、相当高い率である。この点については、失業対策としては相当私は進んだ政策ではないかと考えておりますが、それではこのままでいいかと言われますと、もちろん私どもとしては、将来の失業の情勢に応じては、また失業保険法の改正ということも当然考えていかなくてはならぬと思っております。先生のおっしゃった政府の施策が、失業保険経済に対して足りないという点は、もちろん政府の財政に今後相当ゆとりができまして、他の社会保険制度との均衡においてそうおかしくないという実情にあれば、当然もっと政府の負担をふやしていくということは、考えてしかるべきだと思うのでありますが、現在の情勢におきましては、相当困難な事情があるということをお話ししたのであります。
一般の失業対策としましては、昨日も申しましたように、これは決して私も十分とは申し上げませんが、一昨年から昨年への予算の増加の割合、昨年から本年への増加の割合とを見てみますと、相当予算的にも私ども考えました。しかし、これで決して十分とは考えておりません。来年度におきましては、もう少し踏んばりまして、先生のおっしゃるように、できるだけ失業対策に万全を期したいという考えは、もちろん私どもも持っておるという点を御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/11
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012・中原健次
○中原委員 さらに、第十条第二号中の「季節的に雇用さる者」を「季節的に四箇月以内の期間を定めて雇用される者」と、こういう御訂正があるようでございますが、この「季節的」という言葉の根本の意味は、どういうことなのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/12
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013・江下孝
○江下政府委員 「季節的に雇用される者」という定義自体が非常に不明確だということは、昨日来申し上げたのでございますが、実は季節的に雇用される者でありましても、他に本業を持っておりまして、ごく短期間出かけるという者については、その把握が割とやさしいのであります。ところが、他に本業らしいものがあるかないかわからない、しかし一年中きまって相当期間働きに出るという者は、今度ははっきりと失業保険法を適用することしよう。つまり、今までこの規定を文字通り読みますと、そういう人たちも除外されるのではないか、こういうことでございましたので、今度はそういう者を一応四カ月以上の者は全部強制的に適用しまして、そして失業保険の恩恵にあずからしめる、しかしながら四カ月未満の者といいますのは、ほとんど他に本業がありまして、保険料のかけ捨てになるのが大体常態でございますので、これらの人はむしろ除外してやった方が適当であろう、こういう考えで除外いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/13
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014・中原健次
○中原委員 季節ですから、四季節が常識でしょうが、そういうことを明確に言えるなら、三カ月というのが適切でございましょう。それはもちろんわかりますが、従来、期限を区切らずに一応その表現を使って参ったものが、ここで四カ月と期限をつけたことによって、何らか正確になったような感じがしながら、実はほんとうは何か別な意図があるのではないかという疑問が出てくるわけです。四カ月と特にわざわざ区切るということは、一体どういうことでしょうか。われわれとしましては、はなはだ失礼な言い方をしますけれども、政府が出されるあらゆる文書の中には、すなおに表だけを読めない文書が多い。これはほんとうにあるのです。何か意外なものが、いわゆるあいくちがありはしないかというふうにまず考えるのです。これはまことに悲しいくせがついているわけです。どうもすなおに受け取ると、大ていひっかかるので、すなおに受け取れないのです。やはり裏側に何かありはしないかという習性があると思うのです。これは悲しい性格ですが、そのように実はなっている。
ちょっと余談になりますけれども、先日農業視察団が中国に行ったのですが、そのみやげ話の中の一つに、新しい中国になったときに、食糧の割当をまず行なった。ところが今までのくせがついているから二、三割プラスしてうそを申告した。ところが、中国の新政府は、うその申告をそのままに配給した。次年度もそれをやったが、やはりその通り政府は配給をした、ちっともそれに対して疑問を持たない。そこで、偽わりの申告をした方の側が弱った、これはもう必要はない、正直に言って差しつかえない。正直に言えば自分の要求は満たされる、むしろ不正直を言ってたくさん要求しても、かえってむだになるという経験から、三年度からだんだん政府と人民の間のいろいろな受け継ぎが正直になった。偽わりを言う必要はない、こういうことを報告の中の一つとして聞きましたが、まことにこれは言いようのないうれしいことです。疑わなくてよろしい、また偽わらなくてよろしい、そういう状況になって、初めて私は正直であれということがそのままに通ると思うのです。ところが、日本のいろいろな組み合せを見ますと、正直な者がばかだということになりそうです。だから、文字が正確に規定されながらも、そのより正確に規定されたことに、何かねらいがあるのではないか、こういうことを考えざるを得ぬように、残念ながら今日の日本の段階ではなっているわけです。長い間の習性です。これは私がひねくれ者だということではないと思う、実情がそうなっていはしないか。そこで、せっかく季節的に四カ月以内の期間を定めて雇用される者はこれを適用外に置くということは、何だか正直そうに見えるけれども、季節労務というものの非常に不明確性からくる、一つの字句に対する疑問が出てくるわけです。と申しますのは、この改正法律案によって、とにかく大枚の黒字が出るということに問題がある。今までの赤字が整理されて黒字に転換できる、その要素がこの中にちゃんと入っておるというところに問題がある。これは失業保険法のねらっておる意味から考えましても、やはりわれわれとしては、そっくりこのままでけっこうでありますと申し上げられないゆえんがそこにあると思うのです。しかし、そのように私の所見を申し上げましても、今の場合、意味のないことでありましょうけれども、それだけに労働階級の立場から考えましたら、どうも政府のなされ方が、最近どんどん労働者を失業に追い込み、失業した労働者がせっかくのよりどころとして失業保険にすがりつけば、これをまたけ飛ばすという格好が、実はこの改正案の中に仕組まれておるということを、われわれは遺憾ながら気づくだけに、この問題もどうもすなおに受け取れない。従って、四ヵ月とわざわざ明記されましたために、しからば実数上の適用者の拡大は、大体どれくらいが予想されますか。それは全然そういうことではなくて、ただ字句上の正確を期するためになされたのか、それとも適用を拡大するためなのか、つまり被害を少くすることができるという御見解をお持ちのためのお取扱いであるのか。そうであってみれば、具体的にはどれだけの拡大が保証されるか、この点についてお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/14
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015・江下孝
○江下政府委員 先生のおっしゃるような悪意は、もちろん全然ございません。これは従来「季節的に雇用される者」と書いてあるために、一体それでは季節とは何であるかと申しますと、一カ月働くのも季節である、春夏働くのも季節である、春夏秋冬働くのも季節である、一年まるまる働かないで、毎年きまって一定の期間だけ働きに出かけて、あとは郷里に帰っておるというのが季節じゃないかということになりますと、本来この規定によりまして、現在失業保険をもらっておる十何万という人は、全部適用除外になるわけであります。これをこのまま置いておきますと、全部適用除外になるおそれがある。私どもとして、なぜそれではそういうふうに運用をしなかったかというおしかりを受けると思いますが、私が先ほど申し上げましたように、季節的に雇用される者という字句の通りにこれを解釈していいかどうかという問題がございましたので、従来からごく短期のものは除いて、ほかのものは実質的には適用させたわけでございます。しかしながら、この文句を読みますと、季節的に雇用される者は除外するということになっておりますので、もしこれをこのままに置いておきますと、昨日来問題になっております給付期間の調整のところが、全然無意味になります。これが除外されてしまうと、全然適用になりませんので、給付期間を縮める伸ばすの問題が全然起きないわけでございます。そこで、特に保険料のかけ捨てになるような、実際上保険を適用しても何にもならないようなごく短期の季節労務に働く人だけを除外して、そのほかの者は適用する、こういうことにいたしたのであります。それの方が、法律関係が現実よりははっきりとなりまして、大手を振って適用を受けるということになる。おっしゃるようなことは全然ございませんで、もっぱらそういう人たちの立場も考えて規定を置いておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/15
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016・中原健次
○中原委員 妙なことを申すようですが、そのままに一応受け取りまして考えますと、今まで、このような季節的に雇用される者は除くというようなきびしい除外規定があったにかかわらず、非常に大量の、二十二万一千でしたかの適用者があって、しかも、これは保険財政を食う虫のように、赤字を作る一番大きい根でもあるように、政府の方では考えられておるように思うのですが、それを今度四カ月以内にという今のような制約を課することによって、労働者の利益が守れるのだという考え方がもし妥当だと考えるならば、その被害がまたふえはしないか。正確を期することによって適用がふえることになるわけだから、被害が拡大することになりはしませんか。そうなると、赤字の一番根をなしたと政府のいわれている季節労務者の範囲が、そのために少し寛大になる、ゆるやかになる、こういうことにつながるのと違いますか。そうなると、どうも論理が一貫しない、むしろ矛盾したものがからみついてくるように考えられますが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/16
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017・江下孝
○江下政府委員 これも、言葉が足りませんからそういうことになるのだと思いますが、毎年繰り返して、きまって季節的に働いて、あとの働いていない間は保険をもらうということは、私どもとしては、これは保険の乱用ではないか。そういうことが最初からきまっておるものに対しては、本来ここに季節的に雇用される者という表現で除外しておるのはその趣旨である。つまり、なぜ季節的に雇用される者を除外したかというと、これは毎年きまって季節的に働いて、あとは保険をもらうおそれがある、これは困るというので、季節的に雇用される者をここで除外しておるのであります。そこで、本来失業保険法の建前からいいますと、一年のうち一定期間働いて、あとの残りを保険をもらうというように毎年繰り返す者は除外するという建前からいいますと、むしろ保険の期間を今度の改正案のように六カ月から九カ月ということでなくて、むしろ一年以上働かなければ困るというようにすれば、こういう弊害はなくなると思うのであります。しかしながら、先ほど来申し上げましたように、とにかく曲りなりにも従来、長期の季節的に雇用される者に対しては失業保険法を適用してきましたので、これらの人たちが急激にこの失業保険金の恩恵を受けられなくなると困りますので、特に私の考えましたのは、そういう面にあまり影響を来たさないようにということで、六カ月から九カ月という期間を一段階設けまして、そうしてそれらの人たちに対しても、全然保険をやらぬというのじゃない、九十日はあげますよ、こういうことで考えたのが今度の法律の趣旨であります。決して私どもとしては、ただいたずらに労働者の持っている権利を押えるというようなことは、今度の改正案では考えていないつもりでありますので、この点はぜひ御了承を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/17
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018・中原健次
○中原委員 本来短期の労務者に対する失業保険法の適用が考えられた最もおもな理由は、やはり今日の段階のように、労働者が継続的に長期にわたって保証されがたい、そういう現在の段階の特殊性から、寸断されていく労働時間、労働勤務の体制というものが、やはり社会不安を伴うおそれありとするとのおもんばかりから、こういうことも当然救済の対象として考えなければならぬということから発展したのだろうと思います。これは私の独自の見解です。学者の論でもないでしょう。しかし、おそらくそういう学者の見解もあると思うのです。従って、それだけに、短期労務者というものが、かりに六カ月働いて、六カ月保険の保証をされるということがあったにいたしましても、その見解からいえば、少しも無理じゃないだろうと思う。これは当然保証さるべきだということにもなるだろうと思います。ただそれを計画的に、目的的にやったとすれば、これははなはだ残念ながら悪いと思います。けれども、根本的にはやはりそういうところにあるのじゃないか。そうすると、季節労務者の中にそういう者がありとする認識からこういう措置をなさったことによって、何といいますか、巻き添えを食うたくさんの短期間の労働者があるということを、われわれはやはり思わなければならぬし、それを思うだけに、せっかくのこの改正措置が依然として労働者の権益を虫ばむ——虫ばむどころか、くつがえすような一つの要因になるのじゃないか、こう思うのです。これは何といたしましても、もうどのようにいい頭で、巧みな言葉で御説明になられても、この法の措置によって平年度は十二億ないし十三億の黒字への転換が予想されるのですから、これはもうどんなに巧妙な言葉で説明してみましても、それだけ労働者の権益を政治的に奪還する、取り返す、従ってそれだけ労働者の権益を破壊する、これはもう間違いないのです。これはどのように合理性を説明なさっても、その合理性のゆえに一応の納得をする人があったといたしましても、やがて気がつく点は、その裏側に隠されたそういう一つのトリックです。これはもう確かにある。これに気づかないとすれば、これは労働者としては大きな失敗です。これは大へんなことです。だから、労働者から考えますと、今度のこの失業保険法の改正案というものは、今のようなおそろしい失業段階で、労働者をいよいよ根こそぎ権益の部分に安定させない、保証させない、こういうことの一つのたくらみが現われておるものと認識しなければならぬ、こうなるのです。だから、現在の就労労働者それ自身といえども、これはつながってくる問題でありますから、組織されておる労働者は言うまでもありませんが、組織されておらない労働者も含めて、やはり全労働者が大きな注目を寄せるのも当然です。そういうことを実際にやってのけられたわけなんです。なるほど部分的には、お前はそう言うけれども、二百七十日、この非常に大きな保険給付の拡大が予定されておるじゃないかというふうに御説明になるかもしれませんけれども、そこにいわゆるトリックがあると見なければならぬことになるわけです。というのは、そういう長期の場合はようやく七%にすぎない。ようやく七%のものを対象として、二百七十日あるいは百十日分というようなものを出しで、だれもよく言うことですが、これこそ羊頭狗肉の策というのですか、看板と中身が違うということになるのであると私は思う。それだけに、この全文の一句々々について、もう少し掘り下げた吟味をしてみませんと、実はわからない。われわれは、こういう法案に対して、いわばしろうとなんです。どうも文字の解説さえむずかしいのです。一体何ということだろうか一これは何べん読んでみても、わからぬことがたくさんあります。何ということをいっておるのか、さっぱりわからぬ。日本語で書いてあるのでございましょうが、何だかわからないのであります。そこで、私はこの点について、日本の労働者も、なるほどそれでは仕方がない、われわれも不正はしたくないから、正しいことを求めるから、この改正でよろしいというような、納得のいくような結論を出すためにも、このままではいかぬと思います。私どももわからぬのですから、日本の労働者全般がわからぬに違いないのです。
そこで、これは委員長にお願いしたいのです。いずれ理事会の皆さんにもお願いしたいのですが、これはどうしても参考人を喚問していただきたい。やはり専門部会などに出られた委員諸君に出てもらって、委員諸君は一体なぜこれをのまれたのか、聞いてみたい。私どもわからない。だから、委員諸君のこれを御承認になられた腹がまえを一つ聞いてみたい。委員諸君の御説明が私どもを納得させるならば、私どもも下ります。やむを得ません、承認しますけれども、そういう意味で、本委員会で、一つ参考人の喚問のお運びをいただきたいと思うのです。でないと、これは了解できないのです。了解できないものを、われわれがただうやむやに反対だけして終ったのでは、意味がないと思います。やはり労働者も、なるほどそうであれば仕方がないという納得のいくような処理をいたしますためにも、参考人の御喚問をぜひともお取り計らいがいただきたいと思います。理事会の各位にも、あとでお願いしたいと思いますが、その意味で、このことを最後にお願いいたしまして、まことに長々と、聞く方からいえば、実につまらぬ質問を申し上げたかもしれませんけれども、私からいえば、そういう納得のいかないままに、実は少々念の入り過ぎた御質問を申し上げたかもしれないと存じます。何分よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/18
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019・中村三之丞
○中村委員長 ただいまの中原君の御要求は、理事会で御相談いたします。
なお政府に申し上げますが、昨日山花君から、議事進行の名において要求せられました本法案に関する解説を、午後お出しを願います。至急お出しになりませんと、審議に差しつかえますから、どうぞさよう御了承を願います。
横錢重吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/19
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020・横錢重吉
○横錢委員 今度の失業保険法の改正について、政府は一体どういうような目的をもってこれを改正しようとしておるのか。現在までの失保法の運営を見てみますと、二十二年に制定をして以来、二百六十億円からの備蓄をいたしまして、保険法としては、きわめて順調に発展をしておる。昨年において、わずかに十億の赤字を出したというたまたまの例はあったけれども、しかしながら長期にわたるところの全体のあれを見るならば、この短期間に二百六十億からの備蓄をしたということは、これはきわめて良好な運営のもとに発達をしてきたと、こう見るべきだと思うのであります。従って、こういうような時期において法の改正をしようとするならば、その考え方というものは、被保険者に取って有利な、給付の内容をよくするとか、あるいはまた適用範囲を広げて救っていくとか、そういうような考え方のもとに、これが行われるのが普通であろうと考えるのであります。ところが、出されておりますものを見ると、ややもすると短期のものに対する重大なる制限を加えて、長期にわたるものの特殊なものに対して、若干給付内容をよくしてこれを行おうとしておるのでございますが、一体どういう考え方から今度の改正案を出したのか、簡潔にその点についての御説明を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/20
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021・江下孝
○江下政府委員 お答えいたします。お話しの通り失業保険法の運営は、この法律が実施になりましてから、大体順調に参ったと思っております。一昨年までは、仰せのごとく給付の割に保険料の収入は比較的多うございましたので、むしろ保険料率の値下げというような点を実施してきたのであります。ところが、昨年度になりまして、保険法始まって初めて十億の赤字が出たのであります。現在積立金は、確かに二百五十億ございますが、法律にございますように、法定の積立金は給付額の六カ月なくてはならないのと、それからもう一つ法律に規定がございまして、毎年三月と九月に過去六カ月の保険の収支を見て、言葉を簡単に申し上げますが、それが赤字になった場合においては、一応中央職業安定審議会に諮問した上で、保険料率改訂の手続をとらなければならないという規定があるのであります。そこで私どもとしましては、最近失業の情勢が非常に深刻になってきたということは認めておりまして、それによって失業保険金の支出も相当ふえてきたということも認めざるを得ないと思うのであります。
ところが、今度の改正の一番主眼点であります給付期間の長短の是正の問題でございますが、現在どういう保険金の支給状況であるかと申しますと、昨日来お話し申し上げておりますように、ごく短期の被保険者期間を有する人の受給者が、非常にふえてきつつあるという実情でございます。なぜふえているかというと、東北地方を中心といたします季節的な出かせぎ等によって働きますものが、出かせぎ期間の切れたあと失業保険金をもらう、こういう人の数がうなぎ上りにふえて参っておるのでございます。一方におきまして、これとは若干趣きを異にするのでございますが、一般の会社、工場等におきましても、六カ月だけ雇えば、あとは失業保険がもらえるというので、六カ月だけの雇用をする。はなはだしきに至っては、六カ月ごとに切りかえて一部失業保険金をもらわせる、こういうような傾向が出て参っておるのでございます。私の承知しておりますのでは、これがほとんど全国的にこういう傾向が出て参っておる。そこで、ごく短期の、六カ月から九カ月程度の被保険者期間を有しますものの数が、全体の二七・七%あるという事実を、やはりわれわれは考えてみなくてはならないのでございます。昨日来申し上げておりますように、これが失業保険の正常な利用であるということであれば、もちろん保険料の値上げ等をしてこれらをカバーするということも必要と思うのでございますけれども、しかしながら、実際上といたしましては、失業保険制度の本来の趣旨に沿わない利用であると私どもは考えざるを得ないのでございます。失業保険の趣旨は、計画的に失業保険を利用するということではなくて、あくまでも思わざる失業に対してごく短期の、つまり百八十日の生活安定のかてを得しめるというのが失業保険の建前になって保険経済ができ上っておりますので、こういうように六カ月働いて六カ月保険をもらうというような傾向が一般的になりますと、とても失業保険としては成り立たないのでございまして、当然保険料の値上げの問題が出てくるのでございます。しかも、私が申し上げますように、これは明らかに失業保険法の乱用である。特に季節的または循環的に失業保険を利用するものは、私どもはこれはあくまでも失業保険法の乱用であるという考え方でございます。
そこで、なぜこういう事態になったかを考えますと、日本の失業保険制度ができましたときは、これは非常に理想的な形だと思うのでありますが、六カ月被保険者であれば、あとは、とにかくやめさえすれば給料の六割を六カ月間保証してやるという、まことに思い切った社会保障制度じゃないかと思うのであります。ところが、この制度がだんだん一般に知られて参りますと、むしろ弊害の方が強く出て参っておるというのが実情だと思います。反面から考えてみますと、保険料を何年納めましても、やめたあとはやはり百八十日で、六カ月保険料を納めた人と同じにしか保険金をもらえない。一面においては、こういう若干不公平な面もございます。そこで、私どもの考えましたのは、この際被保険者期間の長短によりまして、現状を著しく変更しない限度において、この建前を動かしてみたらどうかというのが、今度の失業保険法改正のねらいでございます。
そこで一最初に短かくいたしました方でございますが、それならば、季節的なものとか循環的なものだけを労働省は切ればいいじゃないか、こういう御反問もあるかと思いますが、何が季節的であるか、何が循環的であるかと申しましても、これは実際問題として、事務的に区別は不可能でございます。それから、昨日来申し上げておりますように、短期被保険者のうち、七割ないし八割のものが一応季節的な循環的な雇用である。しかもこれらの傾向が、今や放置いたしますならば全国的な風潮となりつつあるという事態におきまして、あれこれ考え合せまして、私どもとしては、短期の被保険者に対しましては、給付期間を若干減少するという措置に出たのであります。実はこの一年間に、一部の期間だけ働いて残りの期間は失業保険をもらえるという、こういう繰り返しは、先ほど来申し上げますように、失業保険法の本来の趣旨に沿った利用ではないと考えるのであります。それでは、資格期間を一年に延長するかという問題になりますが、そういたしますと、現在におきましては長期の季節労務者の利用者に対しまして、一応百八十日という保険金を支給しておりますので、これを全然支給しないということにいたしますと、また相当問題を起すのでございます。その点を考えまして、現状に著しき影響を与えないという趣旨におきまして、給付期間百八十日を、その半分の九十日に減じたのであります。季節的労務者の問題、その他一般短期被保険者の問題は、雇用期間、つまり被保険者期間の長さの調整によるほか、現在は方法がないと思うのでございます。
それから、先ほど申し上げました長期の被保険者期間を有するものでございますが、これは、先ほど申し上げましたような趣旨からいたしまして、やはり一面におきまして、これらの人々に対しましては、離職いたしました際の就職の困難さ、あるいは長期間失業保険経済に寄与したという点からいたしまして、これに対して若干のプレミアムをつけることが適当であるということから、五年以上には特に一月のプラス、十年以上には三月のプラス、こういうことをいたしたのであります。先ほど来、中原先生からの種々な御質問がありましたが、私どもの考えといたしましては、失業対策は、もちろん失業保険法も有力な失業対策の一つでありますけれども、失業保険のみによってこれをまかなうことは不可能でございます。他の一般の失業対策と相待って、この問題は解決しなければならぬと思っております。またこの失業保険の乱用、あるいは本旨に沿わない利用が行われておるということを、われわれは黙視することは、結局一般の善意な労働者なり使用者、あるいは国民の税金でありますので、これらのものが有効に使われていないということに相なりますので、この際こういう改正案を提案した次第でございます。
言葉が足りませんので、おそらく十分でないと思いますが、一応お答えいたしまして、あとまた御質問にお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/21
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022・横錢重吉
○横錢委員 短期の被保険者に対する削減という趣旨については、一応わかったのでありますが、ただ問題のとらえ方が、たとえば東北の場合においても、これは年中同一人が繰り返すというように政府の方では見ておるのであって、あるいはまた今日東北の農村地帯における者が北海道等に出かせぎに行く、これを毎年繰り返しておる、こういうふうに見ておるようでありますが、しからば、毎年々々保険金を同一人が受け取っておる、こういうような実情についての調査をされておるのかどうか、この点について伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/22
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023・江下孝
○江下政府委員 実は、正確に調査はいたしておりません。しかし、これは安定所の窓口で、毎年出かせぎに参りますときに、安定所に参りまして一応保険の加入をいたします。さらに帰りましてから保険金をもらいますので、大体その村の同一人が行っておるということは、安定所で把握しておるはずでございます。もちろん、毎年全部が全部同じ者ということではないと思いますが、私どもの承知しておりますのは、ほとんどの者が大体毎年同じように繰り返していっておるというふうに、地方からの報告は受けておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/23
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024・横錢重吉
○横錢委員 正確な把握をしていないということは、この立法を裏づけるのに、非常に不準備の感がするのであります。大体職安の窓口においては、保険金を渡すときに、果してこれが失業者であるか、あるいはまた不正受給ではないか、あるいは他に職業をかかえておるのではないか、この点は、必要以上と思われるほど窓口においてこれを聞きただしておるし、かつまた調査もしておるように、われわれは見受けておるのであります。また失業保険金を受給しておる者からの声も、あれほどまで言わなくてもよいではないかとまで聞いておるのでありますが、それほどまで念を押しておるにもかかわらず、東北地方において相当数の者が出ておるということは、東北地方におけるところの労働の環境が非常に困難を伴っておる。関東、関西その他の地方と違った面において、失業者が出ておるのであって、この点は季節的な繰り返しであるようにも見られるが、また一面においては完全な失業者であるということの認定が政府において行われているのではないか。従って、完全な失業者であるとしたならば、現在までの法の運営として、これは乱用したのではなくて、法の正当な適用を受けたものではないか、こう考えるのだが、この点に関しては、先ほど乱用という言葉を用いられておったが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/24
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025・江下孝
○江下政府委員 十条の第二号の「季節的に雇用される者」というのは、失業保険法の適用から、現行法では一応除外されておることになっておる。先ほどるる私が申し上げましたように、季節的に雇用される者というものの範囲が、ごく短期のものならばこれはわかるのでございますが、長期のものにつきましては、果してこれが季節的に雇用されるものであるかどうかということは、離職してみないとわからないのでございます。従ってこれが初めて就職しますときには、適用していいかどうかわからないのであります。従って安定所では、やむを得ずして、これらの人に対して実際上は適用せざるを得ない立場になってきておるのでございます。
なぜ季節的に雇用される者というものを置いたかということでございますが、私どもの解釈といたしましては、季節的に雇用される者が、毎年繰り返して一定の季節に行くということになりますと、毎年一定の期間以外は、失業保険をもらうということになりますので、これらのものに対しては除外しておるのではないかと考えておるのであります。若干失業保険法実施当時から社会情勢も変って参りましたので、この言葉がこのままで適当かどうかということは、検討しなければならないのでございますが、いずれにしましても、先般お手元にお配りしたと思いますが、これらの季節的な失業保険の受給者に対しまして、政府がいたずらにこれらのものに対して失業保険金を出しておるということは、むしろ勤労意欲の向上を押えることになる、健全なる就労意欲を起すためには適当でないということも、私ども再々耳にいたしておりますので、新聞紙上等でもこの点が再々載っておるのであります。そこで、今先生のおっしゃるように、失業者じゃないかということでございますが、その中にはもちろん失業者も私はあると思います。そこでそれらの人に対して、失業保険金を出すことがいいか、あるいは働かせて収入を得しめた方がいいかという問題になると思うのであります。私は、失業保険ということで毎年繰り返して金を出すよりは、やはり就労させて収入を得しめるという方向に持っていくべきである。そのための政府の対策は十分でないというおしかりはあるかもしれませんが、これに対しましては、私どもとしましては、とにかく乏しい予算ながら、それらの失業者に対しまして、できる限りある程度の失業対策を講じてやっていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/25
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026・横錢重吉
○横錢委員 六カ月程度働いて保険金を受給する者が非常にふえておるということは、今、東北地方が主たる問題であって、その他にも若干あるというような説明でありましたが、実際には、日本のデフレ政策が影響して、全般的に雇用状態が悪くなってきたのではないか。従って長期に採用するというよりも、これを短期に採用してはまた解雇をしていく。従って、その人々が行くところがなく、失業保険に食いついてくるという、こういうような現状が、今日の失業保険の、たとい一年間にせよ赤字を出した理由ではないか、こう見るのである。従って、こういうようなものを見るときに、たとえば保全経済会等のやみ金融にしても、これに従事しておった者がことごとく倒されて、その人数は約五万人から見込まれていると思う。あるいはまた十次造船の影響を受けて造船界が不況になり、このときに政府の方では一時帰休制をとって、この帰休制によった者に対しては失業保険金の適用を援助しておる、こういうようなことをしておりますし、あるいはまた炭鉱地帯が不況になって、これによるところの保険金の受給者がいる、こういうような全国的な雇用状態の悪化ということが、短期の雇用あるいは保険を利用するという、こういうようなことになって出てきたのが今日の問題ではないか。従って、これに対処するのに、短期のものは認めない、短期のものに対しては、六カ月から九カ月のものは三カ月しか認めない、こういうような方法でやることは、法の盲点をつくというか、法のいうところの乱用によるものだという考え方と、従ってこういうところに食いついてきたならば、これと切り離して保険経済を救うのだというような政府と被保険者との取り組みをしておったのでは、一体失業者というものは解決されない、雇用状態というものをどこに持っていこうとしておるのか。特にこれが他の関係の省であって、なかなかなわ張りがあるからして連絡がつかないというのならばともかくとして、失業保険と雇用の解決というものは、職業安定局が持っておるところの一つの任務なんです。従って、就労させるか、あるいは保険金を出すか、そのいずれか解決しなければならない。ところが、雇用状態の方は解決がつかない、保険金に来るものはこれを切り捨てるというような考え方では、日本の失業保険法あるいは失業の問題は解決できないのではないか、こう考えているが、この点に対してはどうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/26
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027・江下孝
○江下政府委員 お尋ね、ごもっともな点も私はあると思います。ただ、再再繰り返して申し上げておりますように、失業保険法と申しますのは、御承知の通り、一つのまとまった経済をなしておるものでございます。失業保険のみによって失業対策をやるということは、やはり困難であります。失業保険の金と申しますのは、これは労働者、使用者、政府が、おのおの三分の一ずつ負担しましてのこれは経費でございます。従いまして、私どもとしましては、この金ができるだけ必要な場合、必要な人に支出されるように考えていかなければならないと思っております。そういたしますと、もしこれらの毎年繰り返すような人が主体になっております短期労働者に保険が出るために保険金が赤字になり、行く行くは保険料率を値上げしなければならぬ、こういうようなことになっては、一般の善意の労働者の権利を阻害するのじゃないか。この際どうしても、今の保険経済の面から見ますれば、私はやはりこういう人たちの利益を擁護するという面からも、毎年繰り返すとか、あるいはごく短期の者——部非常に気の毒な人があることは御指摘の通りでございますが、これらの人に対しましては、先ほど来繰り返しておりますように、政府といたしましても、当然これは万全の努力をいたしまして、失業の憂苦をなめさせないように努めたいと思います。予算的にも、本年度におきまして特に百六十八億——昨年の百十九億五千万円から百六十八億二千万円という相当大きな増額を実はいたしておるのであります。もちろんこれで十分であると大手を振って歩けるということじゃございませんが、とにかく苦しい国家予算の中で、相当政府も考えておるという点は、わかっていただけるのじゃないかというふうに考えておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/27
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028・横錢重吉
○横錢委員 東北地方における季節的な問題がいわれておるのでありますが、ただこれを年間の保険の収支状況から見た場合に、実際には東北の問題が影響して、昨年度の十億の赤字が出たのではないか。東北の場合においては、六県合せても収支差引赤字が十二億一千万円であった。ところが九州の七県においては、これが十九億五千万円の赤字である。従って、赤字の度合いからいったならば、はるかに九州の方が出ておる。しかもまた、これを府県別に見たならば、保険金をよけい納めているものが十三ほどの県であって、よけい取っておるところが三十三の府県である。東京、大阪等を初め工業都市地帯のものが保険金を納めて、農山村地帯のものが保険金を受給しておるという様相を全般的に示しておる。このことは、同時にまた農山漁村地帯における雇用状態が悪いということを示しておるのである。従って、このような政府の干渉によって、法律のもとに強制加入を命じて運営をしている建前からしましたならば、当然就職をしておる者の負担において失業者を救っておるという格好を示しておる。従って失職をしておる人々に対して、その条件が一定の基準に当てはまるものであったならば、これは当然就職者の肩にかかってくることは、初めから立法の精神となっておるものでなければならないと思う。ところが、今のように、こういう人々があったのでは、負担が就職者にかかってくるというような考え方をしておられたのでは、この問題は解決がつかないのではないか。従って、短期の人々に対する雇用状態の改善をすることが一つであるし、それが解決できない間は、この人人をこの保険法において救っていくということが問題であって、これを今回のように三カ月に切り捨ててあとは知らぬ顔するというようなことでは、今日の失業保険法を制定している趣旨、目的が達成されないのではないかと思うのだが、この点さらに念を押してお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/28
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029・江下孝
○江下政府委員 昨日も御答弁いたしましたように、短期の被保険者の平均受給期間は百十日でございます。百八十日が限度でございますが、平均受給期間は百十日でございます。従って、これを九十日に減らしましても、半分になるというのではなくて、相当緩和された響き方をする、つまりそう大きな雇用面に対する影響もないということも、私ども考えてこの改正案を作ったのでございます。なお、差し引きまして二十日ばかりの問題がもちろんございますけれども、これに対しましては、先ほど来申し上げておりますように、できるだけ政府の失業対策の諸施設を実施いたしまして、これらの人の生活安定に資したいというふうに考えておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/29
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030・横錢重吉
○横錢委員 今、短期の者の受給期間が百五日平均であるというふうに言われたが一これは短期の者でなくて、全保険の受給者の平均が百五日ではございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/30
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031・江下孝
○江下政府委員 全被保険者の受給期間の平均は百三十三日でございます。短期の者は百十日でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/31
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032・横錢重吉
○横錢委員 それならば、次に伺いますが、政府がこの案を出したのでは、保険金をかけるのが少い者に対しては受給もまた少くする、多い者に対しては受給金額もまた多くする、こういうような線でこれを貫いておると見るのでありますが、失業保険法の考え方として一こういうような精神をとって今後運営されていくのであるかどうか、この点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/32
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033・江下孝
○江下政府委員 これは、実は非常にむずかしい御質問でございます。私といたしましても、将来この保険法をどういうふうに運営するかということにつきましては、実はまだ確信を持っていないのでございます。今後の失業情勢の動きを見ながら考えていかなければならぬ問題でございますので、一がいに今どういう方針でやるということについてのお話は、遠慮させていただきたいと存じます。ただ現段階におきまして、私はこの程度の措置は適当でないか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/33
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034・横錢重吉
○横錢委員 現在の保険法においては、これを強制適用にし、それから一部任意適用にして、できるだけこの保険金を取る方だけは網を広げてたくさん取るようにしておる。いざ給付となると、いろいろな制限条件を設けて給付をしない、これによって保険経済を立てておる。このためにこの七年あまりの間に二百六十億からの備蓄もできた、こう見るのでありますが、今のような精神をもって貫くか貫かないか。これを立てずして、今日のような短期の者に対しては少く、長期被保険者であった者に対しては多くするというような改正案を出すことは、根本を出さずして改正案を出しておるということになりはしないかと、こう考えるのであります。特にこの問題は、短期の者を犠牲にするから、長期の者に対して多少の甘いものをつけてやろう、こういうふうに見えるのであります。しかも、ここにはきわめて問題となるような引き続き同一事業主に五年以上あるいは十年以上というような条件をつけておるのであります。これは被保険者としての資格において同一の状態ではない、いわゆる事業主を変えたが五年、十年被保険者として完全に納付の義務を果した者と、同一事業主のもとに五年、十年被保険者としての納付の義務を果した者との間に、さていざ離職となったときに、百八十日しか取れない者と、二百十日あるいは二百七十日の受給資格を持つ者というように分れてくる。こういうような矛盾をあえて御承知の上で出した理由は一体どこにあるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/34
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035・江下孝
○江下政府委員 御指摘の点は、確かに理由があると私は思います。ただこれは御承知の通り、特に一定期間以上働きました者に対しまして特別な給付期間の延長を行うわけでございますので、五年以上失業保険の被保険者であったという点を明確にいたしませんで軽々にいたしますと、これはまた乱に陥るおそれがあるのでございます。そこで、五年以上同一事業主ということを書きましたのは、これはもっぱら事務的に考えまして、実際問題といたしまして五年なり十年同一事業主のもとに働きました場合におきましては、非常に明確でございますが、転々といたしました場合におきましては、特に終戦後の会社の興亡のはなはだしかった時期におきましては、実際これはつかむことが不可能だと思います。そこで、今回十三条の二の規定を置きまして、各事業場ごとに被保険者資格の取得、喪失の規定を置きまして、これによって相当今後は明確に雇用状態が把握できますので、一定の期間経過いたしますれば、同一事業主ということでなくて、引き続き五年以上雇用されたというふうに私は訂正さるべきだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/35
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036・横錢重吉
○横錢委員 政府はこの案を出すに当って、現在八百万の被保険者のうち、五年以上引き続き同一事業に雇われておる者が一体どの程度あるか、あるいは事業主を変えたものがどのくらいの数あるか、この点についての基礎調査をされておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/36
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037・江下孝
○江下政府委員 二十九年度の調査でございますが、一応五年以上継続いたしまして同一事業主に働いたという人の実際の受給の数が、全体の受給者のうち七…四%という一応の調査がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/37
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038・横錢重吉
○横錢委員 今の数字を聞くならば、驚くべき低い数である。従ってこの法を見るならば、五年以上二百十日、十年以上二百七十日保険金の受給資格があるというふうに錯覚を起すのでありますが、さらにこれを詳細に見たならば、引き続き同一事業主であるという制限がついておる。その実際の数はと見たならば、全体の七・四%しか今までの実績においてない。従って他の者のほとんどが、この事業主を変えておるというのである。こういうようにわずか七・四%の人のために特例を開いて、その他の人々に対してはこれを適用させない。こういうことがこの失業保険法の改正の精神となり、あるいはまた改正のものとして使われるということは、おそるべき問題であると考えるが、なぜこういうように少数のためにだけ道を開こうとしたのか。これは保険金を納付させる場合には、できるだけ多くの人から取ろうとして網を広げて、渡す場合においては、できるだけこれをしぼって渡すまいとするところの精神ではないか。先ほど私がこの問題について、保険金を納めるのが少かった者が受給もまた少い、多い者が多いという精神を大きく一本貫いて今度の改正の方法としておるのかどうかということを問うたところが、これに対してはあいまいでありました。従ってこういう問題が出てきたときに、これは八百万の被保険者が同一の考え方のもとに置かれていない、きわめて大へんな改正案であるといわなければならないと見るのですが、この点いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/38
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039・江下孝
○江下政府委員 短期の者と長期の者との比較においてのお話でございますが、そうではなくて、私の再々申し上げておりますのは、この短期の者のうちには、全体のうち七割から八割という本来失業保険制度の本旨に沿わない利用があるのであります。従って、これと一緒に合せてこれをお考えになりますと、まさしくどうもつり合いがとれないということになりますが、こういう本旨に沿わない利用につきましては、私どもは、ほんとうならばこれらの人は保険のらち外に置くべき人たちであります。しかしながら、今まで特に支給もいたしておりますので、特別な措置といたしまして九十日だけは支給する、こういうことでございますので、私は決してこれとこれとを天びんにかけて差し引きプラスになるから、この法案はインチキだという仰せでございますが、これには承服できないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/39
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040・横錢重吉
○横錢委員 今七・四%という数字を示されたのは、私が誤解したように言われておりますが、もう一度、しからば七・四%というのはどういうものの中から出てきた数字だか、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/40
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041・江下孝
○江下政府委員 安定所の窓口に、二十九年度に失業保険をもらいに来ました者のうちから調べましたものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/41
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042・横錢重吉
○横錢委員 全員ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/42
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043・江下孝
○江下政府委員 さようであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/43
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044・横錢重吉
○横錢委員 それならば、私が解釈違いをしているとは思わないのでありまして、従って考えるに、これは公平でなければならないと思う。たとえば、事業所は変えたけれども、五年間被保険者としての義務を一日も怠らなかった、こういう者と、事業所を変えずに怠らなかった者との間には何らの差もない。ところが、一たん失業して保険金を受給しようとした場合には、百八十日と二百十日との差ができてくる。このことは公平でない、公平の原則からはずれている。こういうように見るのであって、なぜこういう特例を開こうとするのかという点について……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/44
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045・江下孝
○江下政府委員 その点は、先ほど申し上げましたように、引き続かないで五年以上勤務したということは、実際問題としては、事務的に調査が困難でございます。果してこの人が五年間あるいは十年間どこで働いたかということにつきましては、安定所に何ら帳簿がございませんので、一々一人々々につきまして安定所が出かけて回って調べなければわからない問題でございます。ところが、今度の十三条の二の規定によりまして、この点をはっきりつかむことにいたしますので、ここしばらくたちますと、ある程度書類の整備ができると思います。そうすれば、この点については引き続き同一事業主という点ではなくて、引き続き五年以上被保険者として雇用されたというふうに訂正が可能でございます。現在におきましては、過去五年も十年もさかのぼって、この人はどこでいつまで雇われたということは、安定所が足を棒にして探して回っても、なかなかつかみにくいというような実情でございます。そこで、やむを得ずして一応こういう措置にいたしているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/45
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046・横錢重吉
○横錢委員 それでは法制局の方に質問いたします。今度の失業保険法の改正案につきまして、こういう点が出ているのですが、おそらくこの法案は、法制局として十分審議されているとは思うのですが、どういう解釈のもとにこれをどうされているか、承わりたいのであります。その点は、第六条において被保険者は強制加入となっている、こういう事業に従事している者は被保険者とするというように、明瞭に一点疑義のないところの資格取得に関する規定があるわけでございます。これに対しまして今度の案は、であるけれども、確認の条項を作って、確認された者でなければならないというようになってきているわけであります。従って十三条の二を作りまして、ここで労働大臣の確認によってその効力を生ずるということになるわけでありますから、従って確認されるまでは、被保険者としての資格を持たないということになる。ところが六条においては、この者は当然の被保険者であるという解釈が立つわけでありまして、資格の取得をめぐって、同一の者が第六条と十三条の二との間に食い違いを生ずるおそれがあるわけであります。特にこれがそのまま確認されたならばよいのでありますが、今日のような雇用の悪化している状態からして、当然これを作った趣旨からいっても、お前のところは被保険者としては認めないというような点が、相当数出てくる可能性があろうと思うのであります。従って、こちらの方においては、おれの方は当然被保険者である、被保険者としての権利を持つのだ、こういう解釈の上に立つ者と、こちらの方では、確認によって効力を生ずるのだから、これは認められないというような論争等が起る可能性があると思うのですが、この点に関しては、どういう見解を持っていらっしゃるか、お尋ねしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/46
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047・山口真弘
○山口説明員 お答えいたします。ただいまの問題は、今回の失業保険法の改正の中の、非常に重要な法律的なポイントでございまして、現行法におきましては、被保険者の資格の得喪が、法律の規定によりまして何らの確認的な行為等を必要といたしませず、効果を発生することになっております。ところが、これが先般来から、労働省の方から申し上げましたように、失業保険行政を施行していきます上にきわめて不安定である、あるいは不当なことが行われるというような御見解から、この際確認の制度を設けてそれをはっきりさせたいという趣旨でございます。従いまして、今の御質問の点でございますが、この点は、第六条において当然に被保険者とするということを言いましたのは、いわば宣言的に当然被保険者の範囲はこれこれであるということを申した。そういたしまして、その宣言的にといいますか、潜在的に被保険者であるところのものを具体的に顕在化させるために、ここで確認という制度を設けまして、そこで具体的に保険関係を成立させる、こういう趣旨でございます。それでは、確認というものは何らの法律的な効果を持っていないじゃないかという当然の御質疑がございますと思いますが、その点は、第六条の規定によります当然被保険者であるという者が、確認を受けることによりまして当然にその被保険者として失業保険法に乗っていく。裏から申しますと、行政庁は第六条の当然被保険者につきましては、その確認を行うことを覊束されているということになります。従いまして、先ほど先生の御質疑の中にございました確認が渋られるというようなことは、それが法律的に覊束されておりますから、ないことだというふうに考えてよいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/47
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048・横錢重吉
○横錢委員 今の点では、法制局の見解は六条の方が優先をしているというふうに見るのでありますが、現在までの法の運営は、六条によるところの資格の当然取得でもって全部運用されてきている。しかも、この点は何ら改正がされない。従ってこの解釈というものは、当然被保険者として権利を持ったものだと解釈するのであって、従って宣言というか、あるいは資格を取得する一つの段階というふうには見られないのではないかと思うのであります。そうして、確認の場合におきまして、確認をどうこうすることはあり得ないだろう、こういうふうに言いますけれども、しかしながら、ここで一つの段階は取ったけれども、確認をされない限りにおいては被保険者となることができないということになっている。従って今度の場合においては、当然すべてのものが確認届を出して、その届が済んだものが被保険者となる、こういうような制度をとっておる限りにおいては、これは六条の場合においては改正をされて、被保険者としての一つの資格条件ということに変ってくるのではないか。従ってこういうような資格条件を持った者が申請をして、しかも、そこで資格の確認を得て初めて被保険者となるというように改められるのが、普通ではないかと考えるのだが、この点さらにお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/48
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049・山口真弘
○山口説明員 ただいまの点はごもっともでございまして、今回の改正によりまして、第六条の解釈というものが、従前の現行法の解釈とは多少違ってきたということになると思います。従いまして現行法におきましては、第六条の規定によりまして法律上の効果が当然発生する。にもかかわらず、今回の改正によりまして、第六条は単にそれを潜在的に、あるいは宣言的に当然被保険者になるというふうにいっておりますだけでありまして、いわば段階的といいますか、資格といいますか、そういうふうな性格のものになったというふうに解釈すべきだと思います。しかしながら、それが単なる段階的あるいは資格というものでないということは、その宣言的なり、潜在的にいいました第六条の規定というものが本体となりまして、それに合致するものが当然十三条の二による確認を受ける、また行政庁としては、なすべく拘束されているということになるものと思います。なお、この点につきましては、二十九年の改正によりまして健康保険法、それから厚生年金保険法、船員保険法等も、大体今回の失業保険法と同様の趣旨におきまして確認の制度を置いておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/49
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050・横錢重吉
○横錢委員 もう一点伺いますが、第二十条の二において「引き続き五年以上同一事業主に被保険者として雇用された者」こういうような条文が入るわけでございます。この条文に対して「同一事業主」という見解が、たとえば何のたれべえであったとか、何々会社であるとかいうようなものの名称が変更された場合等、いろいろ出てきますが、この法文の解釈というものは幅を持つものでありますか、あるいは幅を持たずに、名義通りのものでありますか、この点に関しては、どういうような見解を持っておいでになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/50
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051・山口真弘
○山口説明員 同一事業主といいますのは、法文には、ただ単に同一事業主とのみ規定してございまして、特に説明を加えておりません。従いまして、社会通念上同一事業主と考えられる程度のものということになると思います。たとえば事業の包括的な承継というような場合、あるいは当該会社が合併があったような場合、あるいは事業主が死にましてその子供さんが相続をして事業を営む場合などは、やはり同一事業主というように解釈していいのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/51
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052・横錢重吉
○横錢委員 それでは親会社と子会社に転任等の関係が出てくる、この場合が一つ、それから今度労働組合の方に専従者になっていく場合が出てくる、この場合には、当然労働組合の委員長が事業主になって、その他の者が被保険者となる可能性が方々に出ておる、従ってこの場合には事業主が変ったと見られる点がある。それから今日の中小企業等の段階においては、被保険者は変らないけれども、事業がどんどん事業主から事業主へ売られていきまして、Aという事業主が売ってBという事業主が買う、それからまたCという事業主が買うというように、工場、事業場そのものは変らない、工員そのものも変らない、しかし事業主だけがどんどん売り買いして変っていってしまう、こういうようなものが随所にあるわけですが、こういうようなものの解釈については、どう考えるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/52
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053・山口真弘
○山口説明員 第一の親会社と子会社の間におきまして、職員が転任をするという場合は、これは同一事業主であるとは言い得ないのではないかというふうに思います。それから第二番目の労働組合の専従者になるという場合には、事業者との雇用関係が依然として継続されておるというのが通常でございますから、その場合には同一事業主といってよいのではないかと思います。それから第三番目の、事業が包括的に承継されるような場合でございますが、この場合には、程度の差はございましょうが、一般的に見れば同一事業主と考えてしかるべきだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/53
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054・横錢重吉
○横錢委員 今の点は了承しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/54
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055・多賀谷真稔
○多賀谷委員 関連して、今の同一事業主の場合でありますが、包括的に承継される場合と、たとえば吸収合併する会社がある。その吸収する方はよいでしょうが、吸収される方の側、こういうものは当然包括承継になると思いますが、そういう場合は含まれるかどうか、新設合併の場合はどうか、こういう場合についてお聞かせを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/55
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056・山口真弘
○山口説明員 ただいまの御質問のうちの吸収合併の場合は、これは包括的承継であることはほぼ明らかであろうと思います。それから、問題は新設合併でありますが、これは場合々々によって、一がいには言いがたいのではないか。吸収合併的な性格のものであれば、同一事業主というふうに解釈されるであろう。その点は、場合々々によって社会通念に従って解釈する以外にはない、こういうふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/56
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057・多賀谷真稔
○多賀谷委員 その社会通念というのが、きわめて実際問題としては問題になると思うのです。この点は、この法律でもきわめて重要な点であり、これは実際の運用としても、もらうか、もらわないか、三カ月ふえるか、あるいは従来通り六カ月しか支給されないかという点ですから、これは私は本委員会では、その点明確にしておく必要があるのではないかと思う。それでお尋ねいたしたいのですが、先ほどからも転々と事業主が変るというお話がありましたが、炭鉱のような場合には、鉱業権の譲渡によって、実際の今までの債権債務を引き継ぐという形がほとんどでございます。そういたしますと、これは一体同一事業主と考えられるかどうか、法制局並びに局長はどういうようにお考えになっておるか。この点については、政令で今後十分詳細にお定めになるおつもりであるかどうか、その点も、一つ法制局並びに労働省から承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/57
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058・江下孝
○江下政府委員 特に同一事業主というのを、注釈を法律でつけませんでしたのは、いろいろ書き始めると切りがないものでございますから、実は法制局とも相談して書かなかったのであります。当然施行規則等で、これは詳細に規定をするつもりでおります。考え方としましては、先ほど申し上げましたように、実質的に権利義務の承継というような場合には、これは法律の規定を曲げるということはできませんが、できるだけ幅広く運用上措置したいと私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/58
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059・山口真弘
○山口説明員 同一事業主の解釈につきましては、結局は社会通念に待つわけでありまして、ただいま御質疑がありましたようなボーダー・ラインの問題につきましては、第一次的には、行政逆用の問題として解決さるべき問題であろうと思います。最終的には、それが裁判等によって決定さるべきものであろうと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/59
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060・多賀谷真稔
○多賀谷委員 社会通念といいましても、これは商法その他の理論からする場合は、同一事業主であるかどうか、きわめて明確です。ただ、労働関係として——労働関係でも、一般的に同一事業主のように取り扱っておるという労使関係の実態から見れば、これはかなり大きな幅があると思うのですが、これは普通の市民法からいいますと、きわめて簡単な事例です。もう同一事業主であるかないかということは、きわめて簡単ですから、裁判なんかにかけると言われますけれども、裁判所なんかでも、地方裁判所あたりには、かなりいろいろな見解が出てくると思うのです。ですから、これはやはり法律的に何らか解決をしておかなければ、単に行政運用でやりますということだけでは、私はきわめて困難な事態が起りはしないかと思うのです。
それで、これは私が後ほどまた質問いたしたいと思いますが、占領軍、ことに国連軍の場合、御存じのように、国連軍の場合は直接雇用をしております。それが昨年、たしか国連協定ができて間接雇用になった。これは労働者側からいうならば、政府の都合によって、外交の問題によって事業主が変ったのだ、そして自分たちは依然として同じ事業主に勤めておる。ところが、これは退職金を支給しておる。ですから、私はこれはなかなか困難な問題であろうと思いますが、今政府ではどういうようにお考えであるか、これをお聞かせ願いたい。もう五年の者が出てくるわけですから、政府としては当然この際見解をはっきりしておかなければならぬと思いますので、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/60
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061・江下孝
○江下政府委員 大体の私どもの行政的な解釈といたしましては、先ほど申し上げましたように、実は同一事業主という言葉の概念があいまいでございますので、むしろこれをはっきりさせるという意味で、解釈規定を書くのも一つかと思いましたが、書いていきますと、実は相当こまかく規定しなければならないのであります。書きました精神は——精神を私は申し上げておる、精神は、全然違った事業主を転々として動いたという場合には、これは把握が非常に困難でございます。しかしながら、そうでなくして、幅広い限度において、実体的に同一事業主と思われる場合には、これは当然この規定の運用によって同一事業主として扱ってもいいじゃないか。権利義務が全部承継されまして、ただ名前だけが変ったというような場合には、私は、一応原則としては、この規定によって同一事業主ということで解釈して差しつかえないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/61
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062・多賀谷真稔
○多賀谷委員 今の国連の問題……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/62
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063・江下孝
○江下政府委員 直接雇用から間接雇用に切りかわった場合の問題ですか——これは実際切りかわった実態が、あれは退職手当等は、みなもらうわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/63
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064・多賀谷真稔
○多賀谷委員 しかし一日も休むひまなく引き継ぐのです。政府の外交問題からですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/64
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065・江下孝
○江下政府委員 これは一応雇用期間が、退職手当をもらったということになりますと、それで切れる。そうしますと、切れて、また全然新しい使用者に使われる——これは権利義務の承継というのとは、ちょっと違うということになりませんでしょうか。私もちょっと今考えあぐねておりますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/65
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066・中村三之丞
○中村委員長 それでは午前中はこの程度にとどめまして、午後二時半まで休憩いたします。
午後零時五十四分休憩
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午後二時五十七分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/66
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067・中村三之丞
○中村委員長 休憩前に引き続きまして、会議を再開いたします。
失業保険法の一部を改正する法律案、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案の二法案を一括して議題となし、質疑を継続いたします。横錢重吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/67
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068・横錢重吉
○横錢委員 先ほどに引き続いて御質問をいたします。
この引き続き同一事業主に五年以上あるいは十年以上、こういうような制度を作る結果、どういうような副作用が出るかという点については、政府は一体考えられたのかどうか。これは、当然起ってくる問題は、労働者に対するところの勤続を強制する結果になるだろうと考えるわけであります。その事業所が低賃金である、あるいはまた悪労働条件である、従って何とか早くここを変えなければならぬ、変えようといたしますと、もう少しここにおるならば、お前のところには失業保険は五年の分が適用される、あるいはまた事業主さえ変えなかったならば、十年の分が適用されるのだ、従ってここは動かぬ方が得だろう、こういうふうな勤続を強制する結果になりはしないかと考えるのでありますが一この点に関しまして、政府はどういうように考えられたか、お尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/68
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069・江下孝
○江下政府委員 お尋ねの点でございますが、私の方といたしましては、この制度によって、結果的にどういうことになるかということにつきましては、今、先生のおっしゃったような、むしろ逆の効果は全然考えていないのでございます。これは比較的長期間失業保険経済にも寄与し、しかも、これが離職しました場合には、配置転換等が相当困難でございますので、許容できる限度の期間を延長いたしましたのにすぎないのでございます。あるいは仰せのようなことが、結果としては一部に起るかもしれませんけれども、むしろねらいは、そういう長期間働いた人に対して保険経済からのできるだけの恩恵を与えることがやはり適当である、こういう考え方があくまでも基本でございまして、そういう不当に定着を強要するというようなことは、この法案の立案に当りまして、私どもは全然考えたことはないのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/69
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070・横錢重吉
○横錢委員 百八十日あるいは二百十日、二百七十日、こういうような区分での受給が出てくる一方において、運営をしていく場合に、失業保険金が支払いに非常に苦しくなってくるような段階のことも考えられる。その場合に、同一の条件にある者が、職安の窓口に行って職業のあっせんを求めた場合に、職安の係員として、一体どういうような心理状態になってくるのか、このことは当然、なるべく受給期間の長い者に早く就職のあっせんをさせて、保険金の経済をはかろうというように考えてこないとは限らないと思うのであります。これは当然三カ月の受給資格しかないものは、ほうっておいてもそう大した受給金額にはならない。しかしながら、二百七十日の受給資格のある者に職業のあっせんをしなかった場合には、相当の保険金を出さなければならない。こういうような点が判断になりますと、職安としての職業のあっせんが、各人の能力や技術等に応じて、公平に行われなければならないあっせん業務というものが、こういうものを通じて、なるべく高いものを早く就職させるというような考え方から、職業のあっせんが不公平な結果になってきはしたいかということを考えますが、この点に関してはどういうような見解を持っていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/70
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071・江下孝
○江下政府委員 結論から申し上げますと、私はさようなことにはならぬと考えております。安定所といたしましては、窓口に参ります人が長期の人であれ、短期の人であれ、やはり本人の能力に応じまして、適当な職業にできるだけ早くあっせんをするという考え方が、安定法もその方針を示しておりますので、そういう保険受給期間の長短によって差別することは、絶対にしてはいけないことでございますし、また現在においても、しておるという傾向は見られませんので、かりにこの法律が改正されましても、そういうことは私はないというふうに申し上げることができます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/71
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072・横錢重吉
○横錢委員 今の場合、ないと言っても、必ず運用の過程においては生じてくるだろうし、かつまた、生ずるところの危険が多分にあるということを警戒しなければならないと思うのであります。そこで、今政府の答弁を聞いておりますと、よけいな保険金を納めた者にはよけいの恩典を与えていくのだというような趣旨に出ておるわけでありますが、そうすると、この点は被保険者としての資格の問題で論じてきておる。どこまでも被保険者の資格として論ずるならば、趣旨が通っておるのだが、内容を見るとそうでなくて、同一事業、同一ならざる事業という区分をされておる。この点は、どう見ても法案としての趣旨が整備されていないと、こう考えるわけであります。これに対しては、政府の方として引き続き同一事業ということを作ったことは、いかにも被保険者の当然の資格に対する重大な制限を加え、同一事業に引き続いた者に対しては恩典を与えるが、そうでない者には恩典がない。こういうようなことは、今後の失業保険法の運営に、きわめてまずい結果を及ぼすと考えるわけでありまして、この点反省を願わなければならないのではないかと考えておるわけであります。同時に、これらの問題について見ますときに、法の趣旨がいろいろ、なお盲点のあることを考えるのであります。現在の法からいきますと、失業が、労働の意志及び能力のあるものが失業した場合に、失業の状態にあることをいうというような第三条の規定がありますが、この失業には、いろいろな条件がある。たとえば、整理によるところの失業もあれば、企業が不振に陥っての場合もあるし、あるいはまた病気によるところの失業もあるし、失業の条件というものは千差万別でございます。そのうち最も多くかかってくるのは、病気による失業ではないか。ところが、病気によって失業した場合には、第三条の能力及び意思という問題に触れてきて、病気による失業者に対しましては保険金の支払いがされない。この者が一年以内に病気がなおった場合において、かりにこれが八カ月でもってなおった場合には、百八十日の受給資格ある者でも、あとは四カ月しか受給することができないというようなことになるわけでありまして、今後展開されます二百十日、二百七十日の資格の者に対しましても当然でありまして、これが一年以内の受給資格であるから、病気により失職をした場合には、何らの恩典となってこない。ところが病気により失業して、その場合に直ちに何らかの他の法律等によって収入あるいは失業中の生活の保障等がされるのであるならば、これは別でありますが、現在においてはそういうようなことが簡単にされていない現状である。このことに対する何らの給付のないということは、被保険者に対するただいまの見解等を聞いておりますときに、一つの盲点となっているように考えているのでありますが、この点政府はどう考えておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/72
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073・江下孝
○江下政府委員 仰せの通り、失業保険は、失業の状態にある者に対して支給されるのでございます。失業の状態とは、働く意思と能力を持ちながら仕事につけないということであるのでございます。そこで、病人であります場合には、これは失業保険金は支給されない建前に相なっている。それでは、その人たちはどうして生活するかということになると思いますが、非常にお気の毒ではございますが、この場合は失業保険としてはめんどうが見れないので、生活保護法あるいは国民健康保険法等によりまして、一応日本の社会保障制度がその人たちの生活を見るというのが建前に相なっているのでございます。そこで、実はこの一年の間に病気をしたという人は気の毒じゃないかといわれる、まことに私もそう思います。ただしかし、失業保険というのは、あくまでも離職後の短期間の失業の状態におきまする生活の安定に資するというのが建前でございます。病気をしておるからといって、ずっと給付が将来に長引くというようなことは、失業保険法としては、建前としてとらないのでございます。そういう本来の建前に相なっておりますので、そういう人は、仰せの通り確かに気の毒な実情ではございますけれども、今の保険法の建前からいたしますと、困難な事情があることを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/73
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074・横錢重吉
○横錢委員 困難だということは、問題の考え方だと思うのであります。また短期の失業を目ざしての保険法の制定であるとかいうような趣旨に聞いておったのでありますが、失業保険法が政府の干渉で、しかもほとんどが強制適用にされて実施をされておる、こういう状況においては、保険に入る、入らないの選択というものは、現在許されていないわけであります。任意包括の場合は別でありますが、強制加入の場合には、強制的に入らせられている。しかも、その中において各人就職をしているが、最もおそるべきものは失業の問題である。従って、失業をした場合に失業保険金制度があるということは、これは暗夜に光明を認めたようなものでありまして、ここに相当の期待を抱いていることは疑いをいれないわけであります。ところが、そのものが、しからばどういうように運用されておるかといいますと、失業の重大な要因の一つである病気による失業が何ら顧みられない。しかも今の場合においては、健康保険がある、あるいは生活保護があるというように答えられておりますが、健康保険における療養給付には、おのずから限度があるし、大ていはそれらが終った後に解雇になっておる。あるいはまた生活保護というものは、今日の段階においては、簡単にこれを受けることはでき得ない現状である。従って、もしこの場合に、たとえば生活保護を受けておるから保険の該当はしないのだというようであるならば別でありますが、他の法規とは全然関係なく、これらの者に一顧も与えないということは、果してどういうものであるか。われわれが抱いている失業の危機に対する考え方と政府の考え方とが、非常にかけ離れておるようにも思うのであります。かつまた、前からも申し上げたように、保険料を取る場合には、きわめて広範囲から無差別にこれを取ってくる制度を作りまして、一たんこの保険金を渡すという段階になると、いろいろな条件を作って給付に制限を加えておる。なるべくこの保険金を渡すまいというふうに考えておるのが、今日の法運営の精神ではないか、こういうように見るのであります。そうすると、これはきわめて適当ならざる今日の失業保険法であり、また運営であるというようにしか考えられないわけであります。これらの点に関して、なお政府の方として、今度の改正を機会に改正していく意思、あるいはまたそういうような部内における討論、こういうようなものが行われていないのかどうか、伺いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/74
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075・江下孝
○江下政府委員 先ほどお答えいたしましたように、非常にむずかしい問題でございますが、私の考えを申し上げさせていただければ、根本的には、失業保険というものは三者の醸出による資金による一つの保険であるのでございます。この点は、この法律の運営に当りましては、私どもとして十分考えていかなければならぬと思います。かりに非常に気の毒な、あるいは必要な場合があると申しましても、この保険の一つのからくりの中に、それが入ってこなければならないのでございまして、この三者の負担による一つの保険経済というものを運営していきます上におきまして、これによって相当大幅に雇用面への救済に乗り出すということになりますと、またこの保険経済の破綻を来たすというおそれもあるのでございます。先ほどお話のうちに、取るものはできるだけ幅広く取って、やる場合には制限をしておるように見えるというお話でございましたが、これは決してそうじゃないと私は思うので、これは保険経済からきます必然的な制約が出てきておるというふうに、私は御理解を願いたいと思うのであります。
そこで、将来この保険法をどうするかという問題でございます。雇用情勢の動きに応じまして、失業保険法といえども当然固定化すべきではなくて、いろいろな点、たとえば政府負担の割合とか、あるいは保険料の多寡とかにつきまして、もちろん今後も検討は十分加えていかなくてはならぬし、また政府の予算が相当潤沢になりましたような場合には、先生の仰せのように政府負担をたくさんふやしまして、そうしてもう少し幅広く救済の手を伸ばすということもできる時期が来ることを望むのでございますが、現在は、御承知のように三者同一負担で、今の日本の社会保障制度では、三分の一負担というのは相当高率でございます。これ以上この負担を増すということも困難な事情にありますので、現在におきましてはこういうことでございます。将来の問題としては、もちろん先生のおっしゃるような方向に考えなくてはならぬと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/75
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076・横錢重吉
○横錢委員 次に、先ほど資格の確認問題について、法制的な面から法制局に伺ったのでありますが、これをさらに労働省の方に伺いたいのであります。この資格確認をやる意図というものは、一体どこにあるのか。今日の加入の段階から見て、強制加入の方法をとっているので、おそらくそのような点に問題はないと思うのですが、この資格確認をやろうというように考えたのは、政府としては、先ほどいろいろと答弁の中に現われた、六カ月納めて六カ月支給を受けるというような者、あるいはまた不正受給の者、こういうようなものの防止を目的としてこの資格確認制度を作ろうとしているのかどうか、その真意についてお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/76
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077・江下孝
○江下政府委員 およそ制度を運用いたします場合には、私どもといたしましては、この制度ができるだけ制度本来の目的に沿うように運用をしなくてはならぬと考えておるのでございます。ところで、現在の保険法の建前によりますと、強制適用になったという一つの事実が、どこか空に観念的にあるだけでございまして、それでは果してだれが被保険者になったのか、その被保険者がどれだけの賃金をもらって、どれだけの期間働いているかということが、一切わからないままに保険関係というものが続けられる。しかも離職をいたしましたときに、初めて何の何がしは、やっとおれは保険の資格があるのだぞということで安定所に出頭して、安定所の方でそれをいろいろな調査をしなければならない、こういうことでは、その間にいろいろな問題が派生するのでございます。たとえば、自分は被保険者であると思っていた人が、全然事業主が被保険者の保険料を納めていなかったというようなこともわからない、あるいは被保険者であるかどうかも自分で知らなかったという問題もございます。また保険料を徴収いたすにいたしましても、一体賃金を幾らもらう人が何人おるということを正確に押えておきませんと、事業主が一方的に、保険料の納期になりまして、これだけ実は賃金を払ったから、これを信用しろというような形になりますと、これは保険料の徴収面でまた非常に悪い結果が出て参るのでございます。それから、最後に給付の面におきましても、被保険者が当初からはっきりいたしませんと、その給付の際に架空の被保険者を作るとか、あるいは当初から被保険者であったかなかったかというようなことが争われまして、いたずらに問題を紛糾させるだけでございます。そこで、あれこれ考え合せまして、多少手続はめんどうにはなりますけれども、以上三点を十分考えまして、この際この確認制度をとるということでございまして、ただいたずらに被保険者になるのをしぼるとかというようなことは、全然考えていないのでございます。被保険者は、第六条で当然被保険者とするとなっておりますから、この事実はいかんともしがたいので、ただ被保険者個々について、その事実を労働大臣が確認するという、これは確認という言葉を使っておりますのは、それを事実と認めるということでございますので、この点は御了承を願えると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/77
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078・中村三之丞
○中村委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/78
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079・中村三之丞
○中村委員長 速記を始めて下さい。
次会は明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時二十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X03719550708/79
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