1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十六日(土曜日)
午前十時五十八分開議
出席委員
委員長 中村三之丞君
理事 大石 武一君 理事 中川 俊思君
理事 松岡 松平君 理事 大橋 武夫君
理事 山下 春江君 理事 山花 秀雄君
理事 吉川 兼光君
植村 武一君 臼井 莊一君
亀山 孝一君 草野一郎平君
小島 徹三君 床次 徳二君
越智 茂君 加藤鐐五郎君
倉石 忠雄君 小林 郁君
高橋 等君 野澤 清人君
八田 貞義君 滝井 義高君
中村 英男君 長谷川 保君
八木 一男君 柳田 秀一君
受田 新吉君 中原 健次君
出席政府委員
厚 生 技 官
(医務局長) 曽田 長宗君
厚生事務官
(医務局次長) 高田 浩運君
厚生事務官
(薬務局長) 高田 正巳君
厚生事務官
(児童局長) 太宰 博邦君
厚生事務官
(保険局長) 久下 勝次君
委員外の出席者
参議院議員 加藤 武徳君
参議院議員 榊原 亨君
大蔵事務官
(主計官) 大村 筆雄君
専 門 員 川井 章知君
専 門 員 引地亮太郎君
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七月十六日
委員佐々木更三君及び西尾末廣君辞任につき、
その補欠として柳田秀一君及び受田新吉君が議
長の指名で委員に選任された。
七月十五日
歯科衛生士法の一部を改正する法律案(内閣提
出第六八号)(参議院送付)
歯科技工法案(内閣提出第二二五号)(参議院
送付)
同月十六日
医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正す
る法律の一部を改正する法律案(三浦一雄君外
四十九名提出、衆法第五二号)
同月十五日
健康保険における医療給付費の二割国庫負担等
に関する請願(黒金泰美君紹介)(第四一七四
号)
同(大野市郎君紹介)(第四一七五号)
同(橋本龍伍君紹介)(第四一七六号)
同(石田宥全君紹介)(第四一七七号)
同(櫻井奎夫君紹介)(第四一七八号)
同(淡谷悠藏君紹介)(第四一七九号)
同(森島守人君紹介)(第四一八〇号)
同(田中稔男君紹介)(第四一八一号)
同(八木昇君紹介)(第四一八二号)
同(纐纈彌三君紹介)(第四一八三号)
同(石坂繁君紹介)(第四一八四号)
同(渡海元三郎君紹介)(第四一八五号)
同(原捨思君紹介)(第四一八六号)
同(小笠公韶君紹介)(第四一八七号)
同(川村継義君紹介)(第四一八八号)
同(野依秀市君紹介)(第四二四八号)
同(山口好一君紹介)(第四二四九号)
同(坂本泰良君紹介)(第四二五〇号)
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(久野
忠治君紹介)(第四一八九号)
歯科衛生士の名称存続に関する請願(中村英男
君紹介)(第四一九〇号)
クリーニング業法の一部改正に関する請願(久
野忠治君紹介)(第四一九一号)
健康保険法等の一部改正に関する請願(西村力
弥君紹介)(第四一九二号)
同(上林與市郎君紹介)(第四一九三号)
同(植村武一君紹介)(第四一九四号)
同(辻政信君紹介)(第四一九五号)
同(松澤雄藏君紹介)(第四一九六号)
同(穂田與吉郎君紹介)(第四一九七号)
同(前田正男君紹介)(第四一九八号)
同(仲川房次郎君紹介)(第四一九九号)
同(黒金泰美君紹介)(第四二〇〇号)
同(川野芳滿君紹介)(第四二〇一号)
同(佐々木良作君紹介)(第四二〇二号)
同(伊瀬幸太郎君紹介)(第四二〇三号)
同(川村継義君紹介)(第四二〇四号)
同(松前重義君紹介)(第四二〇五号)
同(福永一臣君紹介)(第四二〇六号)
同(吉田重延君紹介)(第四二〇七号)
同(坂本泰良君紹介)(第四二〇八号)
同(石坂繁君紹介)(第四二〇九号)
同(坂田道太君紹介)(第四二一〇号)
同(松野頼三君紹介)(第四二一一号)
国民健康保険助成費の法制化等に関する請願
(伊東岩男君紹介)(第四二四六号)
失業対策費国庫補助増額等に関する請願(伊東
岩男君紹介)(第四二四七号)
国立療養所の附添廃止反対に関する請願(山口
丈太郎君紹介)(第四二五一号)
理容師美容師法の一部改正反対に関する請願
(宇田耕一君紹介)(第四二五二号)
鶴田村の流行性肝炎に対する助成交付金増額に
関する請願(池田清志君紹介第四二五三号)
曾木滝自然公園建設事業費国庫補助に関する請
願(池田清志君紹介)(第四二五五号)
船員保険法の一部改正反対に関する請願(池田
清志君紹介)(第四二五九号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
小委員の補欠選任
医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正す
る法律の一部を改正する法律案(三浦一雄君外
四十九名提出、衆法第五二号)
右案の公聴会開会承認要求に関する件
歯科衛生士法の一部を改正する法律案(内閣提
出第六八号)(参議院送付)
歯科技工法案(内閣提出第二二五号)
(参議院送付)
駐留軍労務者の健康保険問題
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/0
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001・中村三之丞
○中村委員長 これより会議を開きます。
この際小委員の補欠選任につきお諮りいたします。去る四日受田新吉君が委員を辞任せられたのに伴い、医業類似行為に関する小委員に欠員を生じましたので、その補欠選任を行いたいと存じますが、再び同君が委員に選任されましたので、同君を委員長より小委員に指名するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/1
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002・中村三之丞
○中村委員長 御異議なしと認め、受田新吉君を医業類似行為に関する小委員に指名いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/2
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003・中村三之丞
○中村委員長 次に日程を追加しまして、三浦一雄君外四十九名提出の、医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題となし審査に入ります。
まず提出者より趣旨の説明を聴取することといたします。松岡松平君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/3
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004・松岡松平
○松岡(松)委員 ただいま上程されました医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、提案の趣旨並びに法案の内容について御説明を申し上げます。
医薬分業につきましては、昭和二十六年総司令部の示唆に基き、政府より改正法・案が提案され、国会においても慎重審議の結果、現在あるがごとき改正法の制度を見たのであります。その後、昨年に至ってこれが施行を一年三カ月延期することになりましたが、明年四月一日からは、これを実施しなければならぬことになっております。
しかるに、この医薬分業の実施の可否に関して、いまだ論議が絶えず、あるいは予定通り実施せよとか、あるいは現行制度を改めてはならぬとか、あるいは再び実施を延期せよとかの論が入り乱れておるのであります。しかし、この問題は、国民生活に重大な関係のある医療制度の根本に変更を生ずる事柄であり、かつ関係者諸君の完全な理解と協力とがなければ、実行は困難な事柄でありますから、これを事前に調整するということの大切なことは申すまでもないと考えますので、本案を提出した次第であります。
内容の第一は、医師、歯科医師の処方せん交付に関する点であります。改正法においては、治療上医師、歯科医師が直接投薬をする必要のある場合を省令できめて、この場合に限り処方せんを交付しないでよいことになっておりますが、今回は患者またはその看護者が、特にその医師、歯科医師から薬をもらいたいと申し出た場合には、処方せんを交付しなくてもよいこととし、また治療上直接投薬の必要のある場合を省令で規定することを要しないことにしようという趣旨であります。
第二点は、医師、歯科医師の処方せん交付に関する規定に違反した場合の制裁として定められておる刑事罰を廃しようということであります。
第三点は、薬事法において、調剤の権能を薬剤師だけに限っておりますが、これを医師、歯科医師にも認めようということであります。
何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成下さいますことを、提案者として特にお願いする次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/4
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005・中村三之丞
○中村委員長 以上で趣旨の説明は終りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/5
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006・中村三之丞
○中村委員長 この際、公聴会開会承認要求の件についてお諮りいたします。ただいま当委員会に付託になりました医師法、医科医師法及び薬事法の一部を改正する法律案の一部を改正する法律案につきましては、その重要性にかんがみ、昨日の理事会におきまして、来たる七月二十一日公聴会を開会いたしたい旨の御要望がありましたが、公聴会を開会するにつきましては、衆議院規則第七十八条によりまして、あらかじめ議長の承認を得ておかなければなりません。よって公聴会開会の承認要求をいたすこととし、文書の作成等手続に関しましては、すべて委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/6
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007・中村三之丞
○中村委員長 御異議ないと認め、そのように決します。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/7
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008・中村三之丞
○中村委員長 次に質疑に入ります。発言の通告がありますので順次これを許可いたします。野澤清人君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/8
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009・野澤清人
○野澤委員 ただいま提案理由の説明がありました医師法、歯科医師法及びに薬事法の一部改正に関する点でありますけれども、ただいまの提案理由の説明では、重要な点がはっきりいたしませんので、本日は、とりあえず提案者の代表の方に、この点について二、三御質問を申し上げたいと存じます。
この医薬分業という考え方が、そもそもわが国において取り上げられた歴史や経過等も、すでに提案者の方ではよくおわかりだと思うのでありますが、今度の改正案を提出されました動機というものは、わが国の医療制度の上において、医薬分業を実際に実施する意図でこうした改正案を出されたのか、あるいはまた医薬分業というものは、その理由にありますように、事前に調整する必要があるということから判断すれば、分業を是認しておるように感じられるし、改正案の内容を見ますと、否認しておるようにも感じられますが、この点、どちらからでもけっこうであります、はっきりした御答弁を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/9
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010・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 医薬分業の根本的思想に至りましては、これは医薬分業がよろしかろうと存じますが、実情に即していかなければならぬ。すなわち、これが調整の意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/10
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011・野澤清人
○野澤委員 質問とだいぶ離れておるようです。医薬分業を否認されておるのか、是認されておるのかという質問でありまして、実際問題をお尋ねするのはこれからでありますから、一つその改正案を出された基本的な考え方をお尋ねしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/11
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012・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 医薬分業は、世の中が進歩するに従いまして、だんだん分業になって参りますから、医薬分業も、いつかは分業にすべきものであると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/12
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013・野澤清人
○野澤委員 二度質問してもポイントに触れないようですから、大石委員の方にお尋ねいたします。今度の改正案を出された骨子は、分業を否認されるのか、是認されるのかという問題であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/13
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014・大石武一
○大石委員 今度の法案を提出いたしました趣旨は、医薬分業を前提として、これを是認して出しました。ただ、これを今までのような形において来年四月から実施しますことは、今までの国民の考え方、慣習からいたしまして、多少医療制度に混乱を起すと考えて一おりますので、これを多少緩和しまして、一応医薬分業を前提といたしておりますが、その混乱を緩和するための修正をしたいという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/14
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015・野澤清人
○野澤委員 今度は、質問した以上に御解説を願ったのですが、質問しただけでけっこうです。
ところで、医薬分業を是認されて改正案を出されたということでありますが、医薬分業に対する基本的な解釈は、どういう解釈をお持ちなのか、それをお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/15
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016・大石武一
○大石委員 お答えいたします。本案を中心にしての考え方でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/16
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017・野澤清人
○野澤委員 先ほどお聞きしたことは、本案を提出されるのに、分業を是認するか否認するかという質問をして、お答えを願ったのです。今度は、それでは医薬分業というものはどういうものか、あなたの見解をお伺いしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/17
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018・大石武一
○大石委員 医薬分業はどういうものかと言われましても、これはどうお答えしていいか、ちょっと言葉に困るのでございまして、われわれが普通一般に考えております程度の概念でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/18
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019・野澤清人
○野澤委員 提案者として、きわめてふまじめな答弁だと思います。医薬分業という言葉を説明しながら、法案を提案しておいて、医薬分業の解説ができないはずはないと思うのです。はっきかした御解答を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/19
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020・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 医薬分業は、これは定義というものはございませんけれども、常識による定義によれば、医者は診察をして薬剤師が調剤をするというのが常識であり、これが医薬分業であろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/20
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021・野澤清人
○野澤委員 大石君もその通りでよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/21
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022・大石武一
○大石委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/22
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023・野澤清人
○野澤委員 しょっぱなから、非常にめんどうな応答が多いようでありますが、医薬分業を是認する建前で本法案を出されたということでありますが、その是認された個所というものは、この法文のどういうところに現われておりますか、御解説を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/23
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024・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 今度の提案の中に、処分せんを交付しなければならないということがある、これがそのことと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/24
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025・野澤清人
○野澤委員 法律二百四十四号では、医師法、歯科医師法、薬事法を改正いたしまして、昭和二十六年の国会で、すでにいわゆる分業法案というものが決定になっております。その法律が決定になってから後に、たまたま外郭における医師会等が、強制医薬分業ということを主張しております。この強制医薬分業は、法律によって規制されるから強制なのである、こういうことを言われたのでありますが、加藤先生は、その考え方をやはりお捨てにならないおつもりでございますか、この点お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/25
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026・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 もう一度意味を明確にしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/26
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027・野澤清人
○野澤委員 二百四十四号の医師法の改正直後から、強制医薬分業ということが一般に言われておった。特に医師会を中心にして、外邦団体がかなり地方に浸透しておった。あの事実は、法律で処方せんの義務発行をしいられたから、強制医薬分業だというように解説されたと思うのです。この点、やはりそうお考えになっているかどうかということであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/27
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028・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 御質問の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/28
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029・野澤清人
○野澤委員 それでは、今度の改正案は、強制医薬分業と解すべきですか、任意分業と解すべきですかポイントですから、御解説を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/29
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030・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 これはいろいろ解釈のしようによって、どちらでも解釈されることでありますが、原則としては、せなければならぬというのでありますがゆえに、いわゆる強制という言葉を、これは通俗語でございますが、そういう意味に取れば取れるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/30
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031・野澤清人
○野澤委員 非常にややこしい御回答ですが、取れば取れるのではなくて、やはりこの二百四十四号の法律の延長としてお考えになっておるのか、全然根底から考え方を変えて出発しているのか、その点をお尋ねしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/31
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032・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 考えは変えてありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/32
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033・野澤清人
○野澤委員 そうしますと、今度提案されました法律案が、たとえば国会を通過いたしたとしても、医師会その他では、強制医薬分業の叫びは絶えないと思うのですが、それに対する提案者の責任あるお考えを示していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/33
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034・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 強制という言葉を、どういう意味に取るか知りませんけれども、医師会でどういう議論があろうと、これは別でございまして、私どもは今度の提案のようにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/34
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035・野澤清人
○野澤委員 なお、提案理由の説明の中に、分業の可否に対し、いまだ論議が定まっておらない、こういう御説明があり、現行法をそのままにせよとか、改正せよとかという御意見があるように御解説されていますが、そういう意見は日本国のどういうところにあるのか、お示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/35
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036・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 本来は、直接の利害関係者というものは、国民の福祉、健康ということ、国民全体、一口に申しますれば病人、患者本位にいくべきものであるのでありまして、それがたまたまそういう方面より声が起きずして、ある業種の方から起きて、これに対応してまた一派の方から戦いをいどまれておるという実情でありまして、これは私は妙な現象であると思いますが、事実は事実でありますがゆえに、そのようにお答えいたしたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/36
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037・野澤清人
○野澤委員 非常に明快な答弁ですが、妙な事実に対して、それではこの法案を提出された理由というものは、どういう仕組みで、どういう意図で提案されたのでありますか、この点はっきりさせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/37
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038・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 これは患者本位の立場、その主義において提案いたしたのでありまして、このことが国民の現状の実情に沿うべきものである、こう考えたからであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/38
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039・野澤清人
○野澤委員 患者本位に立案されたというお話でありますので、これは後ほど関連した問題で御質問いたしますが、第三点は、提案理由の説明の中に、国民生活に重大な関係があるという言葉をお使いになっております。その国民生活に重大な関係があるということはどういう個所なのか、この点をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/39
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040・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 これは概括して国民生活の安定という言葉が出たのであろうと思いますが、医療費が高くなるとか、安くなるとか、不安心であるとか、あるいは便宜であるとか、その他すべてを包含した意味において国民生活の全体に影響する、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/40
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041・野澤清人
○野澤委員 その国民生活に重大な関係があるという表現は、提案者の主観でありますか、客観情勢でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/41
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042・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 両者であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/42
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043・野澤清人
○野澤委員 非常にあいまいな答弁であります。それでは、この分業法案を是認しておるといいながら、しかも国民生活に重大な関係があるというもっともらしい解説をつけて、しかも特殊な現象であるという御見解のもとに——おそらくこれは医師会、薬剤師会等の対立を示すものだと思うのでありますが、そうした考え方の中に主観、客観織りまぜて国民生活に重大な関係がある、こういうことを言われておりますけれども、事前に調整されるという御意図は、どういうことを調整されるのでありますか、この点お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/43
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044・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 ただいまの調整の文字は、薬剤師会、医師会においていろいろなごたごたがございますがゆえに、これを工合よく調整したい、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/44
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045・野澤清人
○野澤委員 大加藤先生のお言葉としては、少し行き過ぎだと思うのでありますが、薬剤師会、医師会等にごたごたがあるという御認定は、どういう根拠からごたごたがおありになるのか、それを御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/45
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046・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 これは私が御説明いたさなくても、最も高邁なる常識をお持ちになる野澤君、よく御承知のことだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/46
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047・野澤清人
○野澤委員 提案者としては、きわめて不親切な答弁だと思いますので、大石君にお尋ねいたしますが、ごたごたがあるというのは、どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/47
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048・大石武一
○大石委員 今、大体私も同じように野澤委員の方が一番よく常識的に御存じかと思うのでございますけれども、いっか数日前に野澤委員からお話がありましたように、来たる二十一日には全国医師大会が開かれるが、この強制医薬分業に反対であるというようなお話を聞きましたし、去る今月の何日かには薬剤師大会があって、強制医薬分業を実施しろというようなことがあったようでありまして、このようなことを考え合せましても、多少ごたごたがあるという印象を受けてもやむを得ないのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/48
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049・野澤清人
○野澤委員 私がお尋ねしておるのは、昭和三十年の七月十六日以降のお尋ねをしておるのではありません。すでにごたごたがあると加藤先生が説明されたから、そういう事実はどういうことなんだといってお尋ねしておるのでありまして、二十一日の大会の有無について、お尋ねを申し上げたのではありません。どうか経過的に腹蔵なくお漏らし願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/49
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050・大石武一
○大石委員 二十一日に医師大会があるということは、野澤委員からお聞きしたのでありまして、これはやはり間違いのない既定の事実と考えたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/50
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051・野澤清人
○野澤委員 今日から以後のことを私はお尋ねしているのではなくて、今までのごたごたがあるという、その根拠を聞いておるのであります。どういう事実があったのか、それを聞いているのでありまして、二十一日の事柄を聞いているのではありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/51
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052・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 去る幾日でございましたか、日本医師会の代議員が寄って、このいわゆる二百四十四号に関する反対の意見を表示しておりましたし、それからまた、日は忘れましたが、薬剤師の諸君においても大会がありまして、いろいろ御議論があったことでございまして、これがすなわちごたごたの議論があった、こういう意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/52
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053・野澤清人
○野澤委員 どうも提案者お二人とも、きわめて不得要領ですが、この医薬分業問題は、野澤の方がよくごたごたの何を知っておるだろうというので、私の方から御解説いたします。全くその通りで、私の方が、あるいはお二人よりもよく知っているかもしれません。
これは、明治初年から今日までの歴史の流れをごらん願いますと、医師と薬剤師が対立的な抗争をしなければならぬという事実が幾多あります。しかし、そのつど、お互いに反省もし、また意識してきましたことは、医薬分業は、ほとんど大半が医師と薬剤師のあたかも業権争いのごとく論議されました、その間に、あるいは技術分業であるとか経済分業であるとか、いろいろな理屈をもって時代々々を画されてきましたけれども、その大きな論争の中心になる事柄をよくお拾い願いますれば、はっきりして参るわけであります。それはどういうことかと申しますならば、明治年間に医制が発布されてから以後、この医薬分業が叫ばれ出したのでありますけれども、その間にいつも相当の圧力を加え、また圧迫を加えてきたのは医師の立場からでありました。今日までの論争や対立の要因は、ほとんど医師側そのものに原因があったように考えられるのであります。そうして、いよいよこうした立法措置等をとる場合には、国民の立場、患者の立場ということを、美辞麗句をもってあなた方は迎えられておりますけれども、本質的には、医師の業権を守ること以外には何ものもないと私は考えておるのでございます。
そこで、野澤君の方がよくわかるだろうからというので、私は指摘するのでありますが、この過去の幾多の事実に対して、お二人のうちどちらでもけっこうですが、そういうことが絶対にないということが言い得るか、それからまた、これを認められるかという点であります。この点について、御答弁を願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/53
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054・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 医薬分業の問題は、ずっと何年間も継続されたことは事実でございまして、端的に申しますれば、私が申すまでもなく、野澤君御承知の通りでありまして、薬剤師の方の方々が、薬剤は自分たちがやって医師の手より放すべきものであるという御主張がございますし、片方といたしましては、それでは患者の治療の責任が負えないという立場において、これに対抗いたしておるのでございまして、これはいまだ解決をせざるところであります。それは、大体ただいま野澤君がお話しの通りであります。これは、今われわれ両者が、相対抗する議論をいたしておりましても、なかなか尽きがたい問題である、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/54
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055・野澤清人
○野澤委員 過去の問題に立ち至りましても、野澤君の方がよくわかっておると言われると、もういかんともいたし方がないのでありますが、私は四十有余年のこの分業の論争されました経過を見てみまして、この対立や抗争の起きた原因が、全く医師側の横暴にあるのだ、こういうことを指摘して申し上げているのでありまして、それがそうでないというならば、その論拠を示してもらいたい。いかなる時代を切って考えてみましても、医師側の横暴な操作によって今日までの対立抗争が生まれている。これは社会通念として、何人も認める立場でないかと思われますので、一応この点についての御見解を伺いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/55
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056・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 医者の方が横暴であるというような御見解は、私ほそういうことは少しも考えておりません。これはそういう批判は別といたしまして、事実について、どこが横暴である、こういう点は横暴でないか、こういう点はどうかという具体的な御指摘がございますれば、私も見解を表明すべきでございますが、ただいまの横暴であるか横暴でないか——私は横暴でないと確信いたしますが、抽象的な問題については、何ともお答えは申し上げられません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/56
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057・野澤清人
○野澤委員 具体的な例は、歴史的な経過、事実を指摘してもどうかと思いますので、手近な改正案について二、三御質問申し上げます。
今度の法案の重要な三点を示されまして、処方せん交付の、義務発行の規定に対して、交付しなくてもよろしいという省令を否認するところの修正案が出ております。それから、刑事罰を廃止するという提案が出ております。それから調剤権と申しますか、調剤の基本原則に対して、薬剤師の伝統的な基本権利というものを否認して、医師、歯科医師、薬剤師を同列に扱うという三つの改正点でありますが、この三つの改正点で、国家、国民の利益のため、患者の立場からという考えで立案されたという御解説でありますが、この三つの点は、いずれもさように解釈してよろしいのかどうか、この点、お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/57
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058・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 御指摘の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/58
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059・野澤清人
○野澤委員 それでは第一点の、処方せん交付に関して、患者のためにおきめしたいという提案の理由でありますが、もう少し詳しく御説明願えませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/59
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060・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 処方を示しますことは、患者に対しましていろいろ不安、焦慮を催させることが、医者の立場においてきわめて明白であります。しかるを、従来のごとく省令によりますと、こういう場合のどこに自分は該当しておるであろうかということを、患者が非常に心配をいたしまして、この心理的、精神的な打撃というものは、患者の治療の上において、医師としては忍びがたいものがありますがゆえに、今回はそれを一、二に分けまして、省令などに規定しない方が、治療上効果的であって、患者のためにもよかろうという、こういう治療上の立場に立った意味でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/60
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061・野澤清人
○野澤委員 ちょっと聞きますと、ごもっともなように感ぜられるのですが、その処方せんを交付したために患者の治療上支障がある、あるいは内容がわかるためにショックを受ける、こういうような御解説のように受け取ったのでありますが、それを認定して、そういう結論をお出しになったのは、国民大衆がそういう結論を出されたのか、お医者さんの立場から出されているのですか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/61
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062・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 これは医者の立場から言うのでありまして、国民は医学に対しては、多くの方は、無知識とは言いませんが、無知識に近いものでありまして、専門的技術の上より、その方が治療上きわめて効果的であるという、専門な立場において言ったことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/62
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063・野澤清人
○野澤委員 非常に専門的なことでありますから、申し上げにくいのでありますけれども、よく世間で、秘密治療ということが言われているのですが、秘密治療と称するものは、どういうことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/63
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064・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 どういう意味のことを仰せになるかわかりませんが、そういう秘密治療などということは、私どもはよくわかりません。それはあなたがどこかでお使いになったことで、秘密治療ということはどういうことか、わかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/64
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065・野澤清人
○野澤委員 せっかくお暑い中を並んでいるのですから、大石君にお尋ねしますが、秘密治療という言葉が、よく新聞や雑誌にも出るのでありますが、その解釈をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/65
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066・大石武一
○大石委員 秘密治療というのは、私は初めて聞いたことでございます。どのようなことでございましょうか、御解説願えたらありがたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/66
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067・野澤清人
○野澤委員 秘密治療という言葉は、決して私が作った言葉でもなく、私が創案した字句でもないのです。世間一般にいわれますことは、医者に診断を受けても、どういう治療を受けているか治療内容もわからぬ、また病名もはっきりせぬ場合もある。そうして金だけはどんどん取られる。こういうケースがたまたまありますと、なぜ診療内容というものを公開しないのだろう、こういうふうなお話が出ますので、これらを称して私は秘密治療といわれておるのではないかという感じがするのですが、この点どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/67
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068・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 患者は医者に対して絶大なる信頼を払っておりますがゆえに、これに対して、治療上ある程度の説明はいたしますけれども、薬剤を盛る場合におきまして、これはどういう効果があるとか、どういう効能があるとかどうだとかいうことを説明すれば、かえってよくない場合が多くあるのでありますがゆえに、説明をしない場合もあるのでございます。説明をする場合もあるのでございます。そういうことを秘密治療と仰せられれば、これはおそらくは内科、小児科の何に対しましては、秘密治療ということであろうか、われわれはそういう意味のことを秘密治療とは申しておりません。医者が専門の技術をもってして、しろうとの人に一々説明することは、かえって害がある場合は説明いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/68
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069・大石武一
○大石委員 それでは、私も補足いたします。ただいま野澤委員の申されました意味のことならば、なるほどそれを秘密治療とおっしゃるならば、大体了解がつきます。その一、二の、言いわけではございません、その説明を申し上げたいと思いますが、医者が患者を見た場合に、いつでもその日に直ちに診断がつく場合は、必ずしも多くはございません。十日たっても半月たっても診断がつかない場合もございますし、死ぬまでの間に診断のつかない場合もございます。診断のつかないままに死んでしまう患者もございます。そのような場合には、医者はその病名を探すのに一生懸命努力するわけでございますが、ただ診断をするだけでは、患者が参ってしまいます。その間にも、やはり熱がある場合には、あるいは熱の対策もしなければならぬ、心臓が弱っている場合には、心臓の手当もしなければなりませんし、あるいはいわゆる対症療法と申しまして、必ずしも診断がっかなくてもいろいろな症状に適応した手当はしなければなりません。これが最も重大な一つの手当でございます。そのような場合には、患者は実際はあるいは納得がいかないかもしれない。診断がつかないということは、ある一部の患者にとっては、不思議な感じがするかもしれませんけれども、そのような場合におきましては、診断がわからないままに手当が行われることがあるわけでございます。それからまた私どもは、実際長いこと医者の経験をしておるのでありますが、どの患者にも一々全部病名のことから治療の方針から、必ずしも説明いたしておりません。なぜかと申しますと、その患者によってピンからキリまでございますから、その患者の知識の程度、常識の程度、あるいはいろいろな階級に応じまして、ここまで説明した方が患者によって治療しやすい、あるいは全部話した方がしやすい、あるいはできるだけ話さない方がしやすいといういろいろな場合があります。このような場合がありますから、今申しましたように十分に説明をする場合もありますし、十分に説明をしない場合もあります。あるいはまた一例を申しますと、神経衰弱的な患者がありまして、たとえば睡眠不足を訴える、どうしても夜眠られないということを訴えております。このような場合に、眠り薬をやると眠れますが、しょっちゅう眠り薬を与えますことは、治療上障害になるおそれがあるのであります。習慣性を与えることになるのであります。たとえばこのような場合にも、それが医者の判断によって、必ずしも強力な睡眠剤を与えなくても、あるいは重曹か、うどん粉を紙に包みまして、これは非常にきく薬だからこれを飲みなさいと言った場合には、次の日に、おかげさまで非常によく眠れましたという患者さんがよくございます。このような場合には、かえって薬の名前を教えない方がいい。いろいろな場合がありますので、そういうことを秘密治療と言いますならば、了解ができます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/69
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070・野澤清人
○野澤委員 よく、語るに落ちるという言葉があるのですが、ここに封建的な日本の医者の伝統的な悪質の温床があると思うのです。今もお話のありますように、どういう場合には処方せんが困るとか、どういう場合には処方せんを発行しなくてもよろしいというようなことは、医薬関係審議会等も、詳細に筋を立てて検討もされております。従って、大石君の言われることも、一応ごもっとものように聞かれますけれども、この内容が、たとえば催眠剤のかわりに重曹を与えても、あるいはまたうどん粉を与えても、医者の任意で治療方針をきめられた以上は、やむを得ないと思うのです。しかし、その場合に取られます医療費というものは、うどん粉だからただにしてやるとか、重曹だから安くしてやるという事実は、決して生まれてこないと思うのです。ここに新しい医療制度を確立しなければならぬという世界の風潮もあり、傾向もあるのじゃないか、こういうところに医薬分業をしなければならぬという本質的なものが隠れておるのではないかと思うのです。それを一般では、いろいろな表現で表わしておりますが、医師の治療技術を半ば公開せよという要求のところもありますし、また秘密治療を打破しなければならぬという要求もあります。こういう声に対して、単に医者の主観だけでもって、こういう場合には出さなくてもよろしいといって判定することについては、私は決して無理なことでないと思うのですが、医者の主観だけでこの方針がきまっていくというのでは、決して社会の善良な施策ということは言い得ない。どうしても第三者なり、あるいは他の医者なりが公正にこれを客観的な情勢から判断し得るような操作ができ得ないか、こういう感じがするのでありますが、この点について、大石君自身どうお考えになられますか、御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/70
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071・大石武一
○大石委員 ただいまの御議論でありますが、医者の治療方針というものは、百人医者があれば、全部違うのであります。同一患者に対しましても、どの薬を用いるか、同じ種類の薬であっても、どの会社の薬を使うか、どの量を使うか、どれだけの種類をこね合せるか、どうするかということは、百人の医者があれば、百人みな違うと思うのであります。それでありますから、これを画一的に省令できめるということは、非常に困難性があると思います。
もう一つは、半ば公開せよという議論があると言われる。どのようなことか、私どもにはわかりませんが、現在医者のほとんど大部分は、健康保険あるいは国民健康保険であります。この場合には、要するに報酬を請求する場合に、全部これを記載して参りますので、おそらくこれは公開されておると私は思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/71
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072・野澤清人
○野澤委員 大分回りくどいところから質問していくので、お困りだと思いますが、そこで、第一点の処方せんの義務発行という条文を一応生かしておいて、しかも加藤先生の言われるように、強制医薬分業の延長であるという考えのもとにこの条文を改正しよう。そこで改正する骨子というものが、二つの場合を拾ってみましても、医者の主観だけで、認定だけで処方せんを交付しなくてもいい場合というものを特に特筆大書しております。それから、この改正案の前の改正で、いわゆる来年の四月一日から実施します法律というものは、いかなる場合でも処方せんは発行しなければならぬ、ただし、診療上支障があるという場合には、別に定めるこの審議会において個々のケースについて省令をもって示す、こういう法律になっておる。その場合には処方せんは発行しなくてよろしいという特例を設けようという精神で臨み、いわゆる分業法案と言われておるものがきめられておる。ところが、今度の法律を見ますと、全く広範囲にこれを採用いたしておりまして、ただ医者の認定によって、診療上支障のあるものは全部処方せんを出さなくてよいのだ、このままでいくと、従来よりも、むしろ逆行するような法律の行き方でありまして、どんな場合でも、医者の認定だけで、この患者も診療上支障がある、この患者も診療上支障があるということになると、処方せんは一つも出ない。原則論だけは立てておいて、空文にひとしいものができてしまう憂いがあるのじゃないか。さらにまた、患者またはその看護人から特に要求があった場合には、処方せんを発行しなくてよろしいという考え方であります。これは全面的に処方せん発行を拒否するような考え方と思うのですが、こうした考え方を立案者が持たれた根本的な理由は、どういうところにあるのか、この点お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/72
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073・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 いろいろ御説明すれば、長くなりますが、今なお、医薬分業は時期尚早であると思います。治療の全責任というものは、医者が負うべきものでありますがゆえに、処方せんを発行しなくてもいいという場合を、医者の自己の認定によって定めることが、私は適当であると思います。もしこれを一々省令に規定しておきますと、これは省令のどれに該当して、あなたは出さんでもよろしい、出しませんというようなことは、心理上、治療上いろいろ障害のありますことであるがゆえに、治療の全責任を持っている医者としては、初めに自己の責任において、これは交付せぬ方がいいと思いますれば、自己の認定によって交付せぬということが当然のことであると思う。また医者は、そのくらいの責任をとらなければ、重大なる生命を預かることはできないのでありまして、国家は医師にそれだけの重大使命を与えておることであると私は信じ、この立場より、こうすることが、事実においても、現状においても、一番適当であると信じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/73
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074・野澤清人
○野澤委員 そこで、医者の立場というものを、もう一度振り返ってみなければならないのですが、今の患者の心理状態を考えてということは、国民の立場からの議論ではないと思うのであります。単に医者の操作上の立場からの御見解であるように感じられるのですが、その点はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/74
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075・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 医薬分業について、まことに奇態なる現象は、だれがこの医薬分業を熱望しておるか、だれが反対しておるかということです。本来からいえば、患者自体が一番の当事者であり、一番の利害関係者でありますがゆえに、これが医薬分業にすべし、すべからずという議論をするのが当然でございます。別に統計を取ったわけではないので、正確には申し上げられませんが、果して百人のうち一人か二人——何人かわかりませんが、だれが医薬分業にせよという声を起すのでございましょう。すなわち、国民か患者が一番の利害関係者であるのでありまして、今の医薬分業論というものは、端的に申せば、薬剤師の諸君は自己の権利を伸張させんとし、医師は自分の立場において現状の権利を擁護せんとする争いにほかならぬと思うのでありまして、国民の大多数からは、医薬分業の声というものは、私は起きておらないと思うのであります。われわれの常識といたしまして、医薬分業は医者と薬剤師のけんかであるというように、私は了承いたしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/75
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076・野澤清人
○野澤委員 何べん繰り返しても同じでありますが、加藤先生に御質問したことは、医薬分業の判定について、私は今御議論申し上げておるのじゃないのであります。今度の法律の改正の第一点の、処方せんを発行することを拒否するような考え方はどういうところにあるのか、それは国民の立場から考えたものか、医者の主観できめたものかという質問をしているのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/76
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077・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 医者は、託された患者を全責任を持って治療したいという熱意に燃えておるのでございますがゆえに、こういうことを省令によって規定することは、治療の責任の上においていけない、欠陥があるという、医者の専門的立場より来ておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/77
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078・野澤清人
○野澤委員 押し問答をしてもしようがありませんから、もう一人の提案者の大石君に、新しい感覚で一つ御説明を願いたいのですが、法律二百四十四号の規定には、一応処方せんが発行されたものを患者が手にしてから、どこで調剤してもらおうが、医者に調剤してもらおうが、町の薬局へ行って調剤してもらおうとも、一応処方せんを手にしてから調剤所の選定をする、こういう建前で、きわめて新しい民主的な立法として二百四十四号が作られておるのであります。今度の法律は、患者を診察した直後において、患者または看護人から特に要求があった場合は、処方ぜんを発行しなくてよろしいのだ、こういう規定であります。もし患者の立場からこれを考えてできたとすれば、改正法であります二百四十四号の精神が、客観情勢として一番正しい行き方じゃないか。今度あなた方のお出しになりました改正案からいたしますと、多年の封建的な医者の伝統と申しますか、習慣と申しますか、一応患者を見た上で、薬をどうしますかと聞かれると、おそらくどの患者も、先生のところにおまかせしますと言う以外にはないのであります。そうしますと、基本的に処方せんの義務発行ということを第一項にうたっておきながら、その次には、義理にでも医者から薬をもらわなければならぬということになるのでありまして、しかも処方せんを発行しなくていいという考え方の基本が、お医者さんの専門的な立場から発案されたというのでありますと、これは大きな間違いではないか。国民の利益、患者の立場から考えていくならば、処方せんは一応発行すべきじゃないか。そうして、患者の認定によって、処方せんを手にしさえすれば、親戚に薬局があるとか、友人が薬局だからそこへ行ってもらいたいとか、あるいは薬局から遠いから、先生お願いしますと言って頼む、こういうことが新しい立法措置として国民に歓迎もされ、また患者の立場からしても当然だと思うのでありますが、これを逆行させるような考え方が織り込まれておりますので、一応お尋ねしたのであります。これでもやはり患者の立場を考えて、国民生活に重大な関係があるという理由でもって処方せんの交付義務を拒否するという態度に出たのでありますかどうか、これに対する大石君のお考えをお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/78
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079・大石武一
○大石委員 処方せんの発行義務を拒否するという考えは、全然ございません。この二百四十四号でございますが、これは薬事法の趣旨と大体同じだと私は考えております。ただ、明らかに処方せんを発行しなければなりませんけれども、患者がその医者から薬をもらいたいと希望した場合には、医者は薬をやって、別に処方せんはやらなくてもよいということでありまして、患者の自由意思にまかせたわけであります。決して処方せん発行義務の拒否ではないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/79
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080・野澤清人
○野澤委員 重ねて大石君にお尋ねしますが、それでは、今度の改正案の医師法の処方せんの義務発行に対する除外規定というものは、患者またはっき添い人が自由選択で特に要求するという条項であるから、従来の薬事法の規定とほとんど同じだと、あなたはお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/80
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081・大石武一
○大石委員 この点に関しましては、大した違いはないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/81
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082・野澤清人
○野澤委員 それでは、大した変りはなくて、ほとんど同じだということでありますれば、従来の薬事法だけでいっても差しつかえないと思います。そうしますと、今度の原案についても、それをおとりになっても差しつかえないというお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/82
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083・大石武一
○大石委員 これは薬事法の中に、同じような項目を置いてもかまわないとは思いましたけれども、医師法に移した方が格好がよかろうという考えで、このようにしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/83
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084・野澤清人
○野澤委員 薬事法に置いてもかまわないのではなくて、改正法というものが、薬事法に置かれておるのです。そうしてそれはきわめて合理的な行き方だというように、第十国会できめられている。しかも三志会も参画しまして、この点を話し合いの結果きめられておる。それをさらにうらはらだからというので、医師法に持っていくということは、煩瑣な手数でありますし、かえって誤解を招くもとでありますから、今度の提案の条文の中で、この点を削除しても差しつかえないかどうかということをお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/84
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085・大石武一
○大石委員 やはり私どもの考え方としましては、われわれの提案した形の方がよろしいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/85
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086・野澤清人
○野澤委員 あなたは形の問題を言うておりますが、実質的に変りがないなら、どっちでも差しつかえないのだということも御認定になったと思います。大石君、もう一ぺんお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/86
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087・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 ちょっと忌避されておりまして、まことに済みませんが、私からも一応申し上げてみたいと思います。今度の薬事法の改正案の二十二条におきまして「薬剤師、医師、歯科医師及び獣医師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。」——なぜ医師がこれに入ったかという質問であるかと思います。これは当然のことであると思うのでありまして、いやしくも医師たる……。
〔「違う、違う」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/87
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088・野澤清人
○野澤委員 暑いから抜けてしまうと因りますから、しっかり聞いてください。大石君の説明によると、従来の法律二百四十四号の薬事法の中には、患者または看護人から特に要求せられた場合には、医師が調剤してもよろしいという規定がある。それから今度の大石さんの出された改正案の医師法の中には、今度は処方せんの義務発行を拒否する条文が載っている。そうすると、前の薬事法に載っておったものと、今度の医師法に載せたものと、あなたは本質的に同じだ、こういう御解釈、ただ形の上において医師法に置いた方がいいから、医師法に持ってきたのだ、われわれはそういう形がいいと思ってやったのだ、こういうことです。だから、そのことについて、それでは医師法に置こうと薬事法に置こうと、一向差しつかえないじゃないか。従って今度の改正案について、医師法にありますこの条文は、削除しても差しつかえないじゃないかということをお尋ねしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/88
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089・大石武一
○大石委員 私どもは、私どもの案につきましては、決して処方せん発行を拒否しておるものではございません。発行をしなくてもよい場合をわれわれは規定しておるのでありまして、拒否ではございません。その考えは違いませんので、われわれはこれがよいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/89
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090・野澤清人
○野澤委員 またピントがはずれてきたのですが、そういうことを聞いているのではないのです。いい悪いというのではなくて、同じ内容ならば、薬事法であろうとも医師法であろうとも、差しつかえないじゃありませんかと、こう聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/90
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091・大石武一
○大石委員 お答えいたします。大体趣旨は同じであると思います。ただ薬事法に入れましたのは、まず処方せんを先に発行して、そうして処方せんをもらってから、この処方せんは要らないから、先生からお薬をもらいます、こう言った場合に、医者が薬をやり得るという形だろうと思います。われわれはこのような場合、違いまして、初めから医者が処方せんを書きましょうねと言った場合に、患者がいいえ、先生からいただきます、こう言った場合には、処方せんは書かなくともいいというようなことでございますから、大体実質的には同じでありますが、ちょっとした形が違うので、医師法に入れたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/91
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092・野澤清人
○野澤委員 どうもはっきりしません。
そこで、もう一点お伺いしますが、それでは、患者の立場から考えて、あなたがたまたま患者であったという立場からお医者にかかった場合、その診察が終ったときに、あなたの処方せんがあなた自身に渡される。渡されたものを手にしてから、自分のうちは遠いし、途中に薬局があるから、薬局で調剤したいと考える。それからまた、隣が自分の住まいだから、この医者からもらった方がいいと思ったら、医者の方で調剤する、これは改正法の二百四十四号の精神なのであります。今度のあなたの方では、実質的に何ら変らないと表明されておりますが、あなたの言われるのは、患者が診察を終った際に、お医者さんから、お薬をどうしますか、こう聞かれたときに、先生からいただきますと言うか、あるいは外部に取りに行きますから処方せんを書いて下さいと言うか、これはわかりませんが、今度の除外例の医師法の改正案というものは、患者を診察した直後において、もう外部で調剤しないということであれば、処方せんは発行しなくていい、こういう考え方なんです。これは本質的に非常に差があるのです。あなたは同じだという考え方です。そこで私は、引っ込めてもいいじゃないかという意味は、あなた方のこの法律を出される根本的な考え方が、単に医師の条件を守るための医師の主観によってこれを立案されたのか、国民大衆の立場において立案されたのかということを、しょっぱなに私はお尋ねいたしました。そうしてだんだんしぼってみますと、加藤先生も大石先生も、医者の主観で一応患者の立場を考えて、この法案を立案した、こういうことでございます。しかし、提案の理由の説明には、患者本位の提案をしたのだ、そうして医薬分業の事前調整をするのだということを述べておられます。ここに大きな矛盾があると思います。少くとも国民の立場で処方せんを発行する、発行しないということをきめますならば、フリーな立場で、患者が処方せんを一応手にしてから、薬局に行こうと、その病院の薬室で薬をもらおうと、これは全く患者の自由意思で決定ができるのであります。それを、もしも処方せんを発行しないでいいということになってきますと、これは医薬関係審議会でも相当論議の中心になりましたけれども、薬をもらう相手を医者が教唆した場合に、罪になるかならぬかという議論が三日も四日も続いた。どういうことが教唆かという問題でありますが、ただ患者の方で、処方せんを渡すと、先生のところで薬がいただけますかと言うならば、これは教唆でもなんでもない。ところが、診察直後に医者の方から患者に対して、あなたは薬屋は遠いが、薬ほどこでもらいますかと言われると、これは徳義上、どうしてもその医者からもらわざるを得ない、これでは分業の精神に相反するのじゃないかというので、相当患者を教唆するという問題が論議されてきた。その事柄はなるべく慎重に扱おうというので、これは医薬関係審議会においても、専門委員の方々がずいぶん論議を尽されたものであります。それを、さらに法律二百四十四号よりも逆行するような法案を出されるということは、思想的に、あくまでも医者の立場からこれを主張しているのであって、国民や患者本位の主張をされておらないのではないかという疑問を持ったのであります。この矛盾に対して、どう御解決をされるつもりか、提案者としてのはっきりした御見解をお尋ねするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/92
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093・大石武一
○大石委員 お断わり申し上げておきますが、先ほど、医者の立場から医者の主観によってこの法改正案を出されたのだというお話がございましたが、これは御理解の間違いかと考えております。私どもは一片でもこの法律案を提案した気持は医師の立場からではなくて、国会議員として、国民の立場から提案したと信じております。それはお間違いのないように御理解いただきたいと思います。それでなるほど野澤委員のお説は、非常にごもっともなところがございます。確かにわれわれのこの改正案ができまして、かりに通りました場合には、おっしゃるような、いわゆる薬剤を患者に強制するような場合もあり得ると思います。しかし、これは例外とか、あるいはいろいろな場合というものは、どんな場合でもあるのでございまして、その少数の場合だけを取っては、私は議論ができないと考えております。また逆に、必ず医者が無理々々処方せんを発行して患者に渡した場合には、その処方せんをもらって、薬剤師からもらわなければならぬという観念を患者に与えまして、医者から薬をもらいたいが、薬剤師からもらわなければならぬだろうと思う場合があるだろう。私たちの子供の記憶では、私は特に例外か知りませんが、私は少年時代、青年時代の記憶からいっても、そんなようなことがご、ざいまして、やはりそのような半面もあるかと思います。それはどちらにしても一利一害でありまして、私はこの方が患者に都合がいいという気持でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/93
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094・野澤清人
○野澤委員 これは非常に重要なポイントです。大石君としては、どちらでも大した違いがないというておきめになりますが、一番最初に私は、今度の改正案というものは、分業の精神を体して立案されたかどうかということを第一に念を押しております。第二には、国民の立場、患者の立場から立案されたかということをお尋ねしておじます。この問題については、当然分業の精神を織り込んで立案され、患者本位の立案の基本的な考え方から出発した、こういうことでやって参りました。たまたま処方せんを発行しない場合ということは、加藤先生も先ほど申されたように、医師の主観によってきめるべきだ。また大石君も医者というものはいろいろな操作をしなければならぬから、処方せんを発行しなくてよい場合というのは、もう百人おれば百人の医者の治療方針が違うのだから、当然出さなくてもよろしいのだ、こういうふうなお話があったように聞いておるのであります。それを誤解だからお前直せというても、速記録をゆっくり見てみないと、こいつはわかりませんから、いずれ来週でもゆっくりお尋ねいたします。
そこで整理したいのですが、あなたのお考えとしては、患者が処方せんを渡されてしまってから、医者からもらうか、薬局からもらうかという考え方と、それからもらう前にお医者さんに、お薬はいただけるのですかということを尋ねる場合と、これがほとんど違っていないという説明ですが、私は大いに違うと思うのです。これを国民の立場として、あなたは医者でありますから、医者の立場ではこれは解釈がつきません。実際に医者にはならなかった時代のことや何かのことを考えてみて、どっちが民主的であり、合理的な内容であるかということについて、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/94
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095・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 私は今の患者は、診察したあとに医者が、よしんば積極的に処方せんを出しますか、どうしますか、こう言えば、遠慮するようなものはないと思います。先刻教唆とかいうようなお話がございましたが、これは病人であるがゆえに、そういうことを言うのは教唆とかなんとかいう、いろいろ法律論は別といたしまして、今の権利を主張するところの患者の諸君が、医者のところへ行って、医者がどうしましょうかといって積極的に医者から聞きました場合に、遠慮するような人は、それはあるかもしれませんが、私はどこそこで処方をいただきたいと思います、ああそうですがと言って、今現実の事実はみな快く出しておるのでありまして、それが脅迫とか威圧するとかなんとかいうことは、私は実際問題としてなかろうと思います。議論とすれば、いろいろ議論はあるでありましょう、実際論として、どうしますかと尋ねたならば、私は一つ処方せんをいただきたいと言うと思う。その場合に、医者が薬を出すことを支障ありとした場合でございますな、一つは黙ってやることもあり得ると思いますが、そう遠慮する人は、事実においていまだかつて遭遇したこともなし、また医者が拒否したようなことは、私なかろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/95
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096・野澤清人
○野澤委員 大分時間がたちましたので月曜日にというお話でありますので、快く月曜日まで保留いたしたいと思います。そこでただ一点だけ、今、加藤先生のおっしゃられた中に、処方せんをくれというのに遠慮する者もないだろうというお話であります。それは、加藤先生のお考えとしては、どんな場合でも一応処方せんを渡しておいても差しつかえないじゃないかという議論が生まれると思うのですが、それをことさらに医者の認定で処方せんを拒否しなければならぬという理由は、立たぬと思います。その点の御見解はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/96
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097・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 それは患者に見せては悪いという場合があるのと、もう一つは、こういうことにもなりはすまいかと思います。負担の問題で、一応処方せんを書きますと、処方せんの代価ということを要求することに相なるのではなかろうか、すなわち、それだけ患者の負担を増すことはなかろうかと思うのであります。そして、それは二重の手間だけでありまして、この法律の精神、分業の趣意を徹底さすという名のもとに、煩雑なる手数と、患者にそれだけの手数料と申しますか、無用の経費を使わせる負担を軽減する意味から申しましても、ただそういう形式に流れてさようなことをすることは、いかがなものかと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/97
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098・野澤清人
○野澤委員 経費の問題といいますが、新医療費体系の立て方は、御承知の通り処方せん料はなしということになっております。政府の方の考え方は、今後の問題でありますから、仮説の前の議論は私も避けたいと思います。そこで、処方せん料がなしということと分業に習熟させる、国民にそういう習慣を与えていくという建前から、処方せんを義務的に発行させようというのが、このいわゆる分業法の一貫した考え方であります。そこで、なぜにそう医師の主観あるいは認定によって処方せんを発行しなくてよろしい場合を強く主張されるのか、その原因がわからないのであります。この意味において、先ほどお尋ねいたしましたことは、あなた方が、国民の立場から、もしも自由選択権を与えられるとするならば、処方せんは一応与えてもらってから、医師なり薬剤師なりを選定する方が、自由選択としては合理的じゃないか。それを、医者にかかった、その後処方せんももらえないで、しかも親戚に薬屋があっても医者の薬を飲まなければならぬという長い国民の習慣、生活状態から逸脱するためには、どうしても処方せんを義務的に発行させなければならぬというのが分業法の骨子だと思うのです。それに対して、ことさらに医者の主観だけでもって、こういう処方せんを免除するような行き方は、経済的な論拠は、まだ新医療費体系が出ておりませんからわかりません。わかりませんが、今後の問題として、そうした議論は再度御議論になることになると思うのでありますけれども、国民の立場としては、一応処方せんをもらってから、医師あるいは薬剤師を選定する方が合理的じゃないか、こういうお尋ねをしておるのであります。
以上をもって本日の私の質疑は終りたいと思います。月曜日から継続いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/98
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099・加藤鐐五郎
○加藤(鐐)委員 ただいまのお話を聞いておりますと、新医療費体系というものが万能薬で、これが金科玉条のようにお考えでありますが、実際問題といたしましては、処方せんを出してその処方せんは無料であるというようなことは、これは理論は別といたしましても、さようなことはあり得べからざることなのであります。ことに処方せんを出して患者が選択するという煩雑と、料金を多くかけることをしなくても、初めからどうしますかといって聞けばいいのであります。現実の問題といたしまして、私どもは長くやっておりますが、遠慮する人はありません。薬剤師の方が私のうちにおりますと言えば、ああそうですが、それではそうしなさい、こういうことでありまして、処方せんを出し惜しむということはありません。ただ、日本中何十万の医者の中には、昔から君子国でも監獄があるように、医者の中にも悪い者がありますがゆえに、そういうきわめて破格、例外のことをもって原則論のように御質問、御吹聴なさることは、私どもまことに遺憾であります。患者は十分選択いたします。たとえば、卑俗な一例でありますが、東京に出て、大学で見てもらって先生に処方せんを書いてもらう。先生薬も下さい、一週間以上は要らぬ、国に帰れば村の医者に見せるから処方せんを出して下さいと言われれば、喜んで書く。これは一般開業医でも同様であります。私はあなたの御質問は、故意にそういう仮想的な議論を押っかぶせることになるのではあるまいか。あるいは何万人かの医者の中に、そういう者があるかもしれませんが、それは相当の処罰もあることでございますがゆえに、これは杞憂ではあるまいかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/99
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100・野澤清人
○野澤委員 いよいよ本性を暴露してきたわけでありまして、高邁な御高説を拝聴して一応納得せざるを得ない状態であると思うのです。ここに私は医薬分業をめぐる医師と薬剤師の抗争の原因があると思います。今までの議論を聞いておりますと、医者はこうしているじゃないか、ああしているじゃないかと言いますが、条文を動かしますについても、単なる医者の主観だけで動かそうとしておる。しかも処方せんを書くのがめんどうだというようなことを議論しておる。また大学の一例を引いておられるが、これは局部的な問題であります。こうした古典的な議論をされておったのでは、戦後の独立日本の形態を、進歩的な形に持っていこうという社会保障制度の発展ということも、とうてい私はできないと思う。私は今日までの七十有余年来、この医師と薬剤師が対立した要因というものは、ほとんど医者の独断できまってきておるのだと思う。今度の法律改正の骨子というものは、全くあなた方の主観で、あなた方の認定で、処方せんをめんどうだから出したくない、処方せん料は当然取るのだ、また処方せんを要求しても、大学の先生は喜んで書いてくれるじゃないか、こういう特例で、要するに一般国民を愚弄するようなやり方が、今日までとられてきたのでありまして、ここに今度の法律改正というような問題に対しても、相当の議論の余地があると思います。これらについては、徹底的に究明しなければならぬと思いますので、御苦労でもありましょうが、提案者の方々には、十分納得のいくような御解説を今後とも願いたいと存じます。
以上をもって本日の私の質疑を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/100
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101・中村三之丞
○中村委員長 次に参議院より送付されました歯科衛生士法の一部を改正する法律案及び歯科技工法案の二法案を一括して議題とし審査を進めます。
両案はいずれも参議院におきまして修正されましたので、修正案の提出者参議院議員榊原亨君及び加藤武徳君より説明を聴取することといたします。榊原亨君。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/101
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102・榊原亨
○榊原参議院議員 歯科衛生士法の一部を改正する法律案につきまして、政府から御提案になりましたこの法律案を見ますると、歯科衛生士が、当然に歯科診療の補助に関する業務を行うということに、その業務内容を拡充すること、並びに歯科衛生士の試験に関する規定を整備する等の必要なる改正についてのことにつきましては、適当なる措置であると私どもも認めたのでありますが、ただこの歯科衛生士の免許は女子与えるの適当ある——この点も私どもは賛成でございますが、さて女子に与えるならば、歯科衛生士の名称を歯科衛生婦に改むべきだという政府の御提案につきましては、すでに数年来この歯科衛生士という名前をつけられて参りまして、国民になじましい習慣をつけました点から申しましても、また歯科衛生士ということを要望するという当事者の御要望からいたしましても、これはむしろ歯科衛生士という名前をそのまま存続いたすべきものであるということの意見でありまして、従いまして歯科衛生婦といたしますことにつきましての改正の点につきましては、私どもは、もとの通り歯科衛生士とすべきであると考えたのであります。また男子である歯科衛生婦に準ずる仕事をされるものを歯科衛生手とするということにつきましても、その名称はあまり適当でないと考えましたので、この点につきましても私どもの修正意見を盛ったのであります。
お手元にお回しいたしました修正案によりますと、その題名を改正いたしますこと、以下教条にわたりますこの修正案は、結局歯科衛生士を歯科衛生婦に改めることをしないで、歯科衛生士といたしますことによりますところの修正の操作であるのであります。また男子である歯科衛生手を、私どもは「第二条に規定する業務を行う男子」ということに改めることによりまして、先ほど私が申しました趣旨を適そうという考えであります。
それらのことにつきましての経過規定あるいはそのほかの条文の整理につきましては、お手元に御提出いたしておりますところの修正案をお読み願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/102
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103・中村三之丞
○中村委員長 加藤武徳君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/103
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104・加藤武徳
○加藤参議院議員 政府提案にかかります歯科技工法案につきまして、参議院は、全会一致をもちまして修正をいたしておりますので、修正点につきまして、簡単に御説明を申し上げます。
修正のおもな点は三点でございますが、その第一点は、歯科技工士の養成に関する問題でございます。原案におきましては、歯科技工士の養成は、文部省の指定いたしまする学校と厚生省の指定いたしまする養成所との二本建になっておるのでありますが、歯科技工士という職業は、歯科医師のみを対象といたしまする職業でありますので、常に歯科医師の数との関連において養成をいたす必要があると考えられるのであります。原案のごとく文部、厚生両省の二元的な機関で養成いたします場合には、この目的が十分に達せられないということも予想いたされますので、技工士の養成は一元的な行政下に置こう、かような立場から、第十二条を中心にいたします修正を行なったのであります。
修正の第二点は、指示書に関する問題でございます。原案におきましては、いかなる場合も、指示書なくしては歯科技工士は歯科技工を行なってはならない、かような建前になっているのでありますが、しかし、同一病院、同一診療所におきまして、直接歯科医師が歯科技工士を指揮監督できまする場合には、必ずしも指示書を必要としない、かような立場から第十八条を修正いたしたのであります。
修正の第三点は、広告制限についてでございます。原案には、歯科技工または歯科技工所の広告については、何らの制限規定がなかったのでありますが、従来、歯科技工士または歯科技工所が、一般大衆に対しまして新聞の折り込みあるいは広告チラシ等によりまして、一般国民に対して直接診療に応ずるような感を与えた場合がなかったでもないのでありますが、かかることのないように第二十六条を新たに加えまして、広告制限を行なった次第でございます。
以上の三点が、参議院におきまして全会一致で修正されましたおもな点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/104
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105・中村三之丞
○中村委員長 以上で、両法案に対する参議院における修正の説明を終りました。
なお、両法案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/105
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106・中村三之丞
○中村委員長 次に、駐留軍労務者の健康保険問題について、発言を求められております。これを許可いたします。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/106
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107・滝井義高
○滝井委員 懸案になっております駐留軍要員の健康保険組合の料率適用に関する問題について、一、二質問いたしたいと思います。
先日、当委員会におきまして、厚生大臣より、十四日の日米合同委員会で最終的な結論が出ない場合には、厚生大臣は監督官庁として、独自の立場をもって駐留軍健康保険料率引き上げに認可を与えるという御発言があったと聞いております。すでに十四日も過ぎたのでございますが、その結果の御報告を、保険局よりいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/107
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108・久下勝次
○久下政府委員 駐留軍健康保険組合の保険料率の引き上げにつきましては、ただいま御指摘のように、厚生省の方針につきましては、再三にわたりまして、厚生大臣から直接当委員会にその方針を明らかにいたしている次第でございます。ただいまのお尋ねは、十四日の合同委員会の結果がどうであるかということと、その結果に基く厚生省としての措置をどうするかというようなお尋ねであったと存じますが、まず合同委員会におきましては、日本側の委員から、保険料率の引き上げの必要性を強く述べまして、駐留軍側の善処を要望いたしたのでありますけれども、駐留軍側の委員は、その問題につきましては、現在鋭意実地調査、検査等によりまして検討を進めているので、若干の猶予をしてくれという話であったそうであります。従いまして、料率引き上げにつきまして、米軍当局側の同意を得るという段階には、十四日の合同委員会では立ち至っておらないのであります。しかしながら、すでに厚生大臣が再三この委員会において方針を言明いたしております通り、厚生省といたしましては、すでに御承知の通り、法律上正当な手続を経まして認可の申請がありましたものでもありますし、しかも、これを放置しておくことによりまして、月々約二千四百万円程度の赤字が累増して参りますような実情でもありますので、いつまでもこの問題を放置しておくわけには参らないというふうな考え方を加味いたしまして、ただいま保険料率の引き上げにつきましては、七月分からこれを適用するように認可をする方針で手続を進めているわけでございます。
ただ、念のために申し上げておきますけれども、この手続につきましては、いろいろ政府部内の関係省の意見もあることでありますので、次官会議、閣議等所要の手続を経た上で方針を決定する所存で、そのように手続を進める考えでございます。
ただし、政府部内には、事外交問題に関連をすることでありますし、また一面におきまして、先ほど申し上げたように、米軍当局側におきましても、本来ならば土曜日などは休みの日でありますにかかわらず、実際に組合経費の実情検査につきましても努力して、せめて中間的にでも来週早々くらいには結論を出そうという努力も続けている実情でもありますので、いろいろな関係を考慮して、若干の猶予をするのが至当ではないかという意見もあることはある現状でございます。その辺につきましては、しかしながら厚生大臣の方針もございますので、私どもとしましては、その指示に基きまして、ただいま申し上げたような手続を進めるように、現在とり進めている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/108
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109・滝井義高
○滝井委員 現在この駐留軍の健康保険組合は、四月、五月、六月と三カ月の暫定予算を、厚生省等の御意見もあって組んでいることは、先般来はっきりしてきているわけです。そうしますと、すでに今日は七月半ばを過ぎようといたしているわけですから、これは保険経済の運営の上から考えても、急速に何らかの措置を講じてやらなければならぬことは当然であります。そこで、今、保険局長が言われましたように、厚生省としては、当委員会で大臣の言明等もあるので、組合の経理の検査等も、土曜日にもかかわらずやった、こういうことで、大体厚生省としての基本的な方針というものははっきりいたしたようでございます。そうしますと、これは大村さんがおいでですからお尋ねしたいのですが、今後こういう形で、駐留軍との間に話し合いがつかずに進んでいくということになれば、千分の五十が千分の五十八になって、その差額である千分の八の半分に当る千分の四は、事業主——現在調達庁が名目上事業主の形になっておりますが、当然日本政府の方で負担をしなければならないことになるわけです。おそらく、聞くところによりますと、その差額は一億四千万円だと言われているわけです。これは何らかの形で少くとも、もう暫定予算は六月までで、七月から新しく料率の引き上げを認可するとすれば、七月一日から実施されることになって、その間保険の運営というものがうまくいくためには、急速に大蔵省の態度が、厚生省の認可とともに決定されてこなければならないと思いますが、大蔵省はどういう方針で行かれる所存であるか、これを一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/109
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110・大村筆雄
○大村説明員 お答え申し上げます。駐留軍の要員の健康保険の問題につきましては、その方針につきましては、ただいま久下局長から御説明のあったと同一の方針でやっておりますが、ただ相手が駐留軍の関係でございまして、これの同意を得られませんと、保険料の事業主の負担分を払ってもらえません。従ってその了解なしにやりますと、これは当然日本側の負担になりかねない。そういう点になりますので、慎重に相手方の了解を得なければいかぬという立場で、保険局長が先ほどるる御説明申し上げました通り、鋭意今駐留軍の了解を得つつある次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/110
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111・滝井義高
○滝井委員 そうなりますと、大蔵省の方針と厚生省の方針が違うわけです。川崎厚生大臣は本委員会において、わざわざみずから発言を求められて、十四日までに駐留軍の意向が出ないときには、日本政府独自の立場で、厚生大臣の権限においてこれは七月一日から許可をいたします、こう言われておる。許可をするということになれば、当然これは駐留軍と話がつかない間においては、日本政府が事業主負担分の千分の四については負担してもらわなければ、これは駐留軍健康保険組合自体が困ることなんです。今局長が言われるように、月々二千四百万円の赤字が出ておるのです。一番困るのは組合員の患者諸君なんです。だから、これは今始まった問題ではないので、もうすでに何回も大蔵省との間に話があっているはずだと思う。今の大村さんのお話では、どうも厚生省と大蔵省との間に、明らかに見解の相違がある。大臣は認可すると言ったからには、それは日本政府の責任においてやるわけです。従ってその差額の保険料についても、当然日本政府が責任を持たなければ、アメリカと話ができるまでは日本政府は知らないということになれば、その認可をした大臣の責任を追及しなければならぬことになる。この点、大蔵省の立場をもっと明白にしてもらわなければ、これは大蔵大臣と厚生大臣とにここへ来てもらわなければならぬことになる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/111
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112・久下勝次
○久下政府委員 この問題につきましては、私の方で直接大臣から承知をいたしております点もありますので、若干まず申し上げておきたいと思います。先ほど申し上げましたように、法律上の手続といたしましては、料率引き上げの認可申請は、何ら瑕疵がないのであります。その以外におきまして、当然認可をしてしかるべきものと私どもは考えておったのでございますけれども、しかしながら、他の健康保険組合と違う特殊な事情がございまして、実質的な事業主と申しますか、実質的な保険事業主負担分を負担するのは、形式上な事業主でないという点に問題があるわけであります。そこで、今日米軍の了解を得るまでの問認可を延ばしてもらいたいという調達庁の要望を受けまして、了解を得ることに努めているわけでございます。この辺のことは、すでに御承知の通りでありますが、これを前提といたしまして、厚生大臣といたしましてはそういう考え方で、この問題につきましては、既定の方針の通り認可の手続を進めるべきであるというので、手続は進めておるわけでございます。問題は、御指摘のように、その裏づけとなるべき財源の問題でございます。大蔵省からの説明もありました通り、最終的にはそういうことになりかねないと思うのであります。大蔵省の方で、日本側で負担をしなければならないということになりかねない懸念はないとは申し上げませんけれども、しかしながら、私どもの考え方といたしましては、それよりも、まず本質的に、これは行政協定の規定から申しましても、米軍側の当然の負担になる性質のものであります。しかも、聞くところによりますと、これは拒否するという意向は、少くともないように聞いてもおりますので、ただそれを十分納得するために、現実の会計経理の検査などをいたしておるというのが現状でありまして、問題は七月からこれを適用するということが終局的にできさえすれば、私どもは問題はないのではないかというふうに考えております。従いまして、認可はいたしましても、その裏づけとなる財政的な問題につきましては、引き続き検討を重ねるというようなことになるのではないかと思うのでございます。従いまして、今、滝井先生が、すぐに大蔵省の方針をお問い詰めになりましても、私の考えを率直に申し上げますと、今申し上げたような段階が若干まだ残っております。この辺につきましては、認可は認可、財政的な裏づけは裏づけということで、結果はとにかく、終局的には七月分からこれが実現できる、認可できるように、認可することについては、私ども責任を持ってやらなければなるまいという考え方で、各省話し合いをいたしておるような実情でございます。従って、その辺の事情も御了承いただきまして、政府全体として何か食い違いがあるような御印象を与えましたけれども、今日ただいまの段階におきましては、先ほども私がちょっと抽象的に触れました通り、政府部内においても、対米関係、外交関係の影響も考えて、若干慎重にやっていきたいという要望があるということを申し上げたのでございますが、そういうような事情もありますことを御了察願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/112
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113・滝井義高
○滝井委員 この問題は、今の御答弁で、どうも振り出しに戻った感じがするのです。今まで大がい山花さんや野澤さんたちが論議を尽されておって、明らかにこれは行政協定にようなければならぬということははっきりしておったわけです。しかも、今の御答弁の中には、認可というものは価値のないものだということもありました。認可が価値のないものであるならば、何も一生懸命になってやる必要はないし、しかも形式的に政府が事業主で、実質は米軍がやるところに矛盾がある。この矛盾は行政協定から来ておる。こういうことは、お互いに知り尽した上で論議に論議を重ねて、そうして今日まで、いわゆる三月以来論議を重ねて七月になってきておるわけです。それが今のようなお話では、振り出しに戻ってしまって、また行政協定の問題に返ってしまう。外交上の問題だ、そういうことになる。一切そういうものを乗り越えて、川崎厚生大臣がわざわざ発言を求め、これは私が認可をしたら、断じて実行いたしますという強い発言があったわけです。それは閣議にも了解を得て決定をいたしたということを自分で御発言があった。ところが、今のような局長さんの御答弁では、また振り出しに戻って、何かもやもやしなければならぬ。問題は、七月以降の組合の財政をどうやりくりするかということにかかってくるということになって、全く日本政府は責任がないような形になってしまった。ところが、そうではなくて、やはり日本政府というものが、少くとも認可をしたならば責任を持つから、私は認可をするのだと思う。またそういう方針を、大臣はここで御言明になっておるのです。そこで、これは今のような逃げの答弁ではなくして、やはり明白にどうするのだということをはっきり言っていただかないと困る。これは一カ月も二カ月も話が進まなければ、ずるずる引っぱられていくばかりです。だから十四日という期限をわざわざ大臣は切っておるのだと思う。十四日が来ても向うが言わないものだから、認可する方針が出た。また認可する方針が出たならば、認可した責任というものは日本政府が負って、千分の四については、これは最悪の場合には負担をいたします、こういう明白な線がそこに出てきての認可だ、こう今までは理解していたと思うのです。ところが今の話は、どうもそこまでは考えていない。一つ大蔵省の方ではっきりしてもらいたいと思うのですが、認可したからには、最終的には大蔵省は責任を持ちますか。持ってもらえば、それから先の七月以降のやりくりについては、その健康保険の組合なり、あるいは政府なりと話し合ってやったらよいと思うのです。そこを一つもう少しはっきりしてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/113
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114・大村筆雄
○大村説明員 駐留軍関係の問題は、もうよく御承知の通り、外交折衝の問題もございますし、それから相手が、大体そうちゃらんぽらんにやっておるのではなくて、分科会なども設けまして、鋭意検討しておる段階でございますし、しかもまたその結論が近々に出るという段階でございますので、できるだけそこの結果を待ちまして、その上で認可なり何なりやった方が穏当じゃないか、こういう考え方で進んでおるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/114
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115・滝井義高
○滝井委員 そうすると、今のように全く違うのです。いわゆる日米合同委員会の中のサブ・コミティがまだまだ進行中で、従ってその結論が出てから認可なんかやるべきだという御答弁です。大臣の方は、これは明らかに、十四日が来たら、どんな返事があってもやります、こうなっておる。だからこれは——委員長、これはもう昼からやらぬですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/115
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116・中村三之丞
○中村委員長 ちょっと速記をとめて下さい。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/116
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117・中村三之丞
○中村委員長 速記を始めて下さい。
次会は明後十八日午前十時より理事会、十時半より委員会を開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204410X04319550716/117
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