1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月二十三日(木曜日)
午前十時五十三分開議
出席委員
委員長 田中 角榮君
理事 首藤 新八君 理事 長谷川四郎君
理事 山手 滿男君 理事 内田 常雄君
理事 前田 正男君 理事 永井勝次郎君
理事 中崎 敏君
阿左美廣治君 秋田 大助君
大倉 三郎君 小笠 公韶君
菅野和太郎君 齋藤 憲三君
笹本 一雄君 鈴木周次郎君
田中 彰治君 野田 武夫君
淵上房太郎君 加藤 精三君
鹿野 彦吉君 神田 博君
小平 久雄君 堀川 恭平君
南 好雄君 村上 勇君
片島 港君 櫻井 奎夫君
多賀谷真稔君 田中 武夫君
帆足 計君 八木 昇君
伊藤卯四郎君 菊地養之輔君
佐々木良作君 田中 利勝君
出席国務大臣
通商産業大臣 石橋 湛山君
出席政府委員
経済審議政務次
官 田中 龍夫君
通商産業政務次
官 島村 一郎君
通商産業事務官
(大臣官房長) 岩武 照彦君
通商産業事務官
(石炭局長) 齋藤 正年君
労働政務次官 高瀬 傳博君
労働事務官
(職業安定局
長) 江下 孝君
委員外の出席者
議 員 加藤 清二君
議 員 松平 忠久君
通商産業事務官
(石炭局炭政課
長) 及川 逸平君
専 門 員 谷崎 明君
専 門 員 越田 清七君
専 門 員 圓地與四松君
専 門 員 菅田清治郎君
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六月二十三日
委員加藤清二君辞任につき、その補欠として多
賀谷真稔君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
石炭鉱業合理化臨時措置法案(内閣提出第一一
三号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/0
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001・田中角榮
○田中委員長 これより会議を開きます。
念のため申し上げますが、理事会の申し合せによりまして、石炭、重油を定例日交互に行うことに決定しましたから御了承を願います。
石炭鉱業合理化臨時措置法案を議題となし審議を進めます。質疑に入ります。本日は理事会の申し合せにより各派の質問時間をおのおの一時間となし、総括質問を行うことにいたしますから御了承願います。質疑の通告があります。順次これを許します。淵上房太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/1
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002・淵上房太郎
○淵上委員 本法案を審議する上からいいまして、いろいろ資料をいただいておるのでありますけれども、さらに私は資料の提出を要求いたし、これによってさらに深く突っ込んで検討したいと思うのであります。
第一は、政府資金の残高、この資料をいただいておりますが、現在三百五十一億残っております。この三百五十一億のうちに、大手十八社以外のいわゆる中小炭鉱の借入金が幾らあるか、それが第一。
第二には、二十九年五月現在の資料——これは政府提出ではなく、ほかからの資料ですが、これによると、炭鉱の滞納、未払いがかなりあるようであります。私の手元に持っておるこの資料によりますと、五十二億未払いがある、電力料金が二億とか、あるいは保険金は六億八千万円、あるいは租税公課が地方税を含めまして九億二千七百万円、あるいは労賃の未払いが五億五千万円、あるいは資材代——坑木とか火薬だと思うのですが、二十八億ある、昨年の五月現在で合計五十二億八千五百万円の炭鉱の未払いがあるようでありますが、この未払いはおそらく今度のこの法律の適用を受ける中小炭鉱が大部分だろうと思うのであります。大手未払いはあまり入ってないのじゃないかと想像するのでありますが、今申します五十二億八千万円の未払い滞納の、昨年の五月から今年の五月までの調べをいただきたい、それが第二。
第三に、お願いしたいのは水洗業者というのがありますが、この水洗業者の数及びわかれば従業員総数、これは新しいものの必要はないのであります。昭和二十八年の春くらいの調べをいただきたい。
第四番目にお願いしたいのは、石炭販売業者の数、これは昭和二十八年の春現在のもので、三十年度のものは今は必要ありません。
以上の四つの資料をできるだけ早く御提出を願いたいと思います。私はそれによってこの次の機会に質問させていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/2
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003・神田博
○神田(博)委員 関連して……。ただいま淵上君から資料の要求がございましたが、これは大へんけっこうなことであります。私もぜひお願いしたいと思います。
そのほかに、ちょうだいした資料のほかに、炭住が今日一体どういうような状態になっておるか、その利用状況と申しますか、どのような推移を経てこれが現存しておるか、利用されておるかということを明確に資料でいただきたい。
もう一つはここに借入金の借り先のケースがみな出ておるようでありまして、借入金の点はよくわかるのでありますが、さらに石炭鉱業の機械化進捗状況というのが出ておりまして、カッターを何台買ったとか、カッペをどうしたとか、二十六年以降のそういうようなものが出ておりますが、この石炭鉱業の合理化のために投資した金が幾らであるか。その効果が一体どの程度上っておるのか、ただ入った機械だけ羅列されても合理化のために投じた資金の効果というものがわからないのであります。機械化されても機械化されたものが、台数はそろったが、これは一体どの程度能率を上げておるか、稼働率はどうなっておるのか、二十九年末の石炭鉱業の借り入れ残額を見ても、もうすでに八百九十三億千九百万円というような数字になっております。これはもちろん金融公庫の金でありますが、少くとも二十六年度、できれば、二十五年度の方がいいのですが、二十六年度からでもけっこうであります。こういう合理化資金が出たことによってどの程度能率が上ったかということが具体的にわかるような、また上るべかりしものが争議であるとかあるいはその他の事情で上らなかったというならば、それも明瞭にわかるような表を一つつけ加えてもらいたい。どうもちょうだいした表からいきますと、一体付帯資料が非常に少いようでございますので、今後逐次要求していきたいと思いますが、とりあえず今の表を至急に出していただきたいと思います。これはいつごろまでにお願いできましょうか、御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/3
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004・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 淵上委員、神田委員よりの資料要求のお話でございますが、それにつきまして、大体ただいままでわれわれのところで事務的に調べてあります資料を中心として、この程度まで差し上げられるということをお答え申し上げます。淵上先生の炭鉱未払いの残高でございますが、これは本年五月末のものを集めるのは事務的に相当困難でございます。未払いの残高を集めますのがかなりおくれますので、おそらく昨年の十月末のものがございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/4
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005・淵上房太郎
○淵上委員 それでいいです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/5
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006・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 従ってそれか、あるいはできますれば三月くらいのものを集めてお出ししたいと思います。それから水洗業者の数並びに従業員数でございますが、水洗業者につきましては、ほとんど実は今行政の対象になっていないような形になっておりますので、どの程度資料がございますか、帰ってよく調べまして、できるだけのものを差し上げたいと思います。それから販売業者の数は大体わかっておりますので、これはできるだけすぐに提出いたしたいと思っております。
それから神田先生の炭住の利用状況の問題でありますが、これも一通り調べてございますから、すぐ提出いたします。それから合理化措置の効果でございますが、総括的には、お出しいたしました資料にもございますように、昨年度の労働能率の上昇というものが効果ということになるわけでございますが、そういうお話でなしに、個々の縦坑とか、あるいは機械を入れたとかいうことによって、どの程度上ったかというふうに、個別のケースについて具体的な資料を出せというお話でございますか、それとも総括的な……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/6
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007・神田博
○神田(博)委員 これは両方ほしい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/7
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008・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 できるだけ早く出したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/8
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009・淵上房太郎
○淵上委員 ただいまのお話の中で、さっき要求しました第一の問題は、これは忘れぬようにお願いいたします。三百五十一億くらいの政府資金の残高がありますが、大手十八社以外の炭鉱がそのうちどれだけが借りているか、これは合理化法を適用するのにきわめて重大な問題でありますから、お調べを願います。設備資金、炭住資金、それから運転資金などを借りておるところがありますから、その調べもきょうでなくてもよろしいが、あしたでもよろしいですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/9
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010・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 ちょっと答弁を申し落しましたが、中小炭鉱の融資高につきましては、次の委員会までに必ず提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/10
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011・永井勝次郎
○永井委員 淵上委員、神田委員等から要求した資料は、これは委員全体のやはり要求しようとしている資料とダブっているものがありますから、これは個人でなしに、この委員会全体に一つ資料を配っていただきたいと思います。それから私が要求したいのは、六十八本の縦坑掘さくの、どこの山にどういうふうにするかという計画の具体的な内容、それから買い上げ対象の中小炭鉱、これは業者の方から要求があった場合買い上げるというので、必ずしもこれは確定した対象というものはないかもしれませんが、山の状態、コストの状態、いろいろな状態で、こういうのはこういうふうに合理化したいという一つの基準というものが大体あるだろうから、望ましい基準ではこうだ、しかし現実にはどうかわからないならば、それでもよろしいから、三百三十万トンが対象だという数字が上っているのですから、これは対象の山もおのずからわかると思いますので、地帯別にこれを一つ出していただきたい。
それから中小炭鉱の負債内容、これは向うから要求がありましたから、こちらの方にそれが配付になればけっこうだと思います。
それからこれは官房長か政務次官の方に要求しますが、重油消費規正の対象の業種別及び消費量の内訳を詳しく出していただきたい。
それから炭鉱負債の経過及び現況、この資料が不十分でありますから、どういう過程で、どういう仕組みで、どういう時期にどういうふうに出て、そうしてそれがどういうふうに負債となって残って、現在どういう状態になっておるかという、経営の経過及び現実を正確につかみたい関係で、そういうものができましたならば一つ出していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/11
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012・南好雄
○南委員 資料を一つついでにお願いいたします。戦前十カ年間の坑内夫、坑外夫の総数、それから一人当りの出炭量、それから戦後十カ年間の坑内、坑外の坑夫の総数及び一人当りの出炭量、それから実働時間があったら、それを一つ資料として要求いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/12
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013・田中角榮
○田中委員長 田中彰治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/13
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014・田中彰治
○田中(彰)委員 だいぶ資料の要求が出ておりますが、簡単に局長にお尋ねします。政府から見て、大炭鉱と小炭鉱は幾つあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/14
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015・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 大炭鉱、小炭鉱という点は、非常に相対的なものでございますが、慣習的に石炭協会所属の会社を大手会社と申しております。その大手会社に所属する炭鉱数は八十炭鉱であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/15
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016・田中彰治
○田中(彰)委員 お尋ねいたしますが、大手炭鉱が昭和二十六年あたりから今神田委員の言われたように、相当いろいろな機械を入れたり、開発銀行からたくさんの金を入れたりして、そうして石炭を掘っておる。ところがこの大手炭鉱は昔の明治時代あたりから持っておるのですから、魚でいうならば、刺身になるような一番いいところを持っておる。中小炭鉱はその後大手炭鉱の要らない鉱区を分けてもらったり、あるいは端の方で石炭がないと思ったところにあるのを見つけて、それを自分の鉱区にしたというようなことで、いい炭鉱は持っておらない。しかも開発銀行から中小炭鉱が金を借りておる比率などを見ますと、これまた問題になっておりません。しかるに石炭の出る一人当りの差を見ますと、大手炭鉱では、昭和二十六年は一人当り約十一・四トンくらいしか出ておらない。それから二十七年には約十・二トンくらいしか出ておらない。二十八年には十一・二トンくらいしか出ていない。二十九年には十二・九トンくらい出ておる。そこで機械を持っておらない、開発銀行から金も借りておらない、あるいはまたいい鉱区を持っておらない、鉱員もあまりそう大したものを持っておらない、もちろん市中銀行から金融を受けておらないこの中小炭鉱が、昭和二十六年には十・二トン出している、二十七年には少いが九・五トン出している、二十八年には十・四トン出している、二十九年には十一・六トン出している。そうすると大手炭鉱と中小炭鉱との、石炭を出しておる一人に対するトン当りから見ると全く違いがないといってもいいくらいしか違っておらない。こういうことはあなた方のような当局者から見て、どういう結果で、いい機械を使いながら、いい鉱区を持ちながら、十分な資金を持ちながら大手はこのくらいしか出していないのに、中小炭鉱は金がない、いい機械を持っていない、いい鉱員を持っておらない、いい鉱区を持っておらないにかかわらず、これだけ出しておるという点をどうお考えになるか、一つその意見をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/16
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017・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 現在の状態では大手炭鉱と中小炭鉱とは能率が投資額その他に比べまして差が少いというお話でございますが、われわれもそういう考え方を持っております。その根本的な欠陥は、大手炭鉱——これは必ずしも全部というわけではございませんが、大観して申しますと、大手炭鉱は大体相当長期間継続して採掘をいたしておりますので、非常に採掘深度が深くなっていまして、そのために間接人員が非常にたくさんいる、特に坑内間接人員が非常に多いということ、それから坑外施設等も非常に完備しておりまして、そういう方面にたくさんの人員を使っておるという点、その点が一番大きな原因でございます。中小炭鉱は比較的浅い、近いところを掘っておりますので、機械その他採掘現場における条件は大手とだいぶ差があるのでございますが、坑内の間接夫あるいは坑外の間接夫がそういう関係から全労務者一人当りの採掘能率から申しますと、今お話のように非常にその差が狭まっておるわけでございます。われわれがこの合理化法案によりまして縦坑その他によって坑内構造の革新をはかると申しますのも、やはりそういった坑内の構造を簡易化いたしまして、間接人員をできるだけ減らす、それによって能率の急速な上昇をはかりたい、こういうような考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/17
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018・田中彰治
○田中(彰)委員 なるほどそうおっしゃいますが、しかしこういう考え方もできないですか。そういう縦坑を掘ってたくさんの政府資金をつぎ込んで、そしてたくさんの人を使って、あるいはまたいい機械を使っていろいろなことをやっても出炭の能率が上らないから、そういうものに金をかけて残すというよりも、むしろ中小炭鉱のような簡単に出せる鉱区にもっと開発銀行の金を出してやったら石炭が簡単に出るのではないか。こういうような点についてどうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/18
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019・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは田中先生も御存じのように、現在の大手炭鉱と中小炭鉱との出炭比率は大体七対三の割合になっております。そしてこの割合は好況時にも不況時にも実はほとんど変っておらない次第でございます。従って現在中小炭鉱に非常に大量の金をつぎ込みましても鉱区なりあるいは埋蔵、経済的に見ての可採炭量、そういう面から大手炭鉱にかわるほどの増産は期待が困難だ、もちろん中小炭鉱にはなお資金、資材をつぎ込むことによりまして合理的に増産し得る余地はあるのでございますが、それによって大手炭鉱の出炭分に大幅に振りかわるということは困難であるように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/19
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020・田中彰治
○田中(彰)委員 局長はそうおっしゃいますが、あなた方の言われる大手炭鉱の中で特に百万トン以上一年に出す炭鉱が昭和二十五年には四社、二十六年には五社、二十七年には三社、二十八年には七社、二十九年には六社となっております。この特に百万トン以上出す炭鉱の出炭数、それから五十万トン以上を出す炭鉱の出炭数、三十万トン以上を出す炭鉱の出炭数、十五万トン以上を出す炭鉱の出炭数、五万トン以上を出す炭鉱の出炭数を見ますと、五万トン以上一年に出す炭鉱が年間を通じて出炭の率が一番よく、石炭の量をたくさん出しておる。こういう点は実際上は今のあなたの御説明と違ったようなことになるのですが、これに対しては当局はどういう調べ方をしておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/20
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021・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは要するに大まかに申しまして今申し上げた事情でございまして、現在昨年の実績で申しますれば、大体千二百万トンが中小炭鉱、三千万トンが大手炭鉱分ということになっているわけでございます。従って千二百万トン分の生産を一挙に五割増加するとか、あるいは倍増加するとかいうことは非常に困難ということを申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/21
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022・田中彰治
○田中(彰)委員 そうおっしゃいますけれども、あなたの方で大手として百万トン以上出している炭鉱の出炭率をずっと見ているのですが、そんなにいい機械をどんどん入れるのだったら、実績が上りそうなものだが、ちっとも上っていない。昭和二十五年から二十九年までを調べてみると上っていないのですが、五万トン以上出す炭鉱は昭和二十九年度で八十四鉱あって、これが七百四十九万七千トンばかり出している。ところが百万トン以上出す炭鉱が全部そろって六百万トンくらいしか出ておらない。こう比べると、あなた方が大手、大手といって国民の納めた税金の開発銀行の資金となっているものをどんどん貸し与えたり、あるいは政府が非常に特殊な援助をしたり、いろいろなことをしてやっておられますが、この大手なるものは、国家が石炭を要るとしたならば、その要る石炭の要求を満たすためにやっている仕事の功績というものは少しも認められない。認めてやらなければならないのは、年に五万トン以上出すところである、こういうことを考えたときに、あなたの今言われた通り、この五万トン以上出す炭鉱に資金をかけたところで増産をしないとおっしゃるけれども、こういうところは事実上そう開発銀行の金も借りておらぬはずである。また市中銀行の金もそう使っていないはずである。そうして政府が擁護してきている大炭鉱と称するところの六社及びそのほかまぜたところで、あなたが今おっしゃった八十社というものは、そういういい鉱区、機械、金を持ちながら、成績は依然として上っておらない。しかも今度は五万トン以上出炭する炭鉱のトン当り数を見ると、たった〇・五しか使っておらない。こういうような食い違った数字がはっきり出てくるところを見ると、あなた方が今日まで炭鉱をお取り扱いになったその取扱い方、あるいはあなた方の炭鉱に対する考え方を一変されなければならないのか、あるいは何か大きな誤差があるのか、この点についてきょうは局長もなかなか答弁はむずかしいでしょうから、一つ資料で示されるようにしていただきたい。同時にこれは委員会の皆さん方に対しても、こういう点を検討してもらうことが、この石炭合理化法を通すには一番いい資料になる。この点を一つお願いしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/22
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023・南好雄
○南委員 私おくれて来たので、あるいは同僚委員の方からすでに資料を要求になったかもしれませんが、もしなっていなかったら、今申し上げます資料をお願いします。戦前十年ほどの炭価、平均炭価でけっこうです。炭価と賃金の毎年の比率を見たい。一年々々の平均でけっこうですから、炭価に占める労働賃金の割合、それから戦後九カ年の割合、もしできますならば賃金と一般物価、鉱工業平均指数でもけっこうですから、その後における石炭賃金のあり方の工合がどういうふうに変っておるか、最近十年でも十五年でも長いほどいいのですが、それの指数でけっこうですし、価格でもけっこうです。毎年の比率を一ぺん見てみたいと思います。わかりますね、できますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/23
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024・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 はあ、できるだけ早く作りまして、提出いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/24
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025・田中角榮
○田中委員長 午前の会議はこの程度とし、午後一時より再開いたします。
午前十一時二十三分休憩
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午後一時二十三分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/25
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026・田中角榮
○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
石炭鉱業合理化臨時措置法案について質疑を続行いたします。神田博君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/26
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027・神田博
○神田(博)委員 議題となりました石炭鉱業合理化臨時措置法案を一覧いたしまして、先般も本会議で御質問をいたしたのでありまするが、納得のいくような御答弁は得られなかったのであります。実際にわが国の石炭鉱業のことごとくが、経済的にも社会的にも行き詰まりの状態になっておる、そこで自力ではこれはもうどうしても立っていかない。そこで政府がこれを救済しなければならないというのがこの法案の骨子のようであります。そこで私はこの法案を検討いたしてみたのでありまするが、この法案は一体政府はこれが最良の案とお考えになられてお出しになったのであるか、あるいはもっともっと突っ込んだ案があったのであるが、当分この辺でがまんをしたい、こういうようなことでこのような案に落ちついたのか、すなわち政府が真に責任をお持ちになって、良心的にこれ以外にないという確信のもとにお出しになったのか、これをまず私最初にお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/27
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028・石橋湛山
○石橋国務大臣 この案はお話のように、ある意味の見方によりますと、石炭鉱業の救済案とも見えます。これは確かに救済にもなるのであります。しかしほんとうのねらいは石炭鉱業を合理化して、石炭の価格を合理的に原価を引き下げて、そして日本の産業に供給する燃料を合理的なものにして、それで全産業の立ち直りに寄与したいというところが一番のねらいであります。
それからもう一つ御質問の、これを最善の案と考えておるかということは、最善の案と考えております。これはむろんそのときどきによって違いますから、現段階においては最善の案、いろいろの点から考究いたしました結果、今日においてはこれが一番いい、こういう確信を持って提案をいたして御審議をわずらわしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/28
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029・神田博
○神田(博)委員 通産大臣はこの合理化臨時措置法案をもって今日の段階においては最善の案だ、こういう確信を持ってお出しになったというのでありまするが、私はそれならばその意味において一つ質疑を進めてみたいと思います。
一体今までの石炭鉱業について政府はすでに八百九十数億の金を投じております。投じた金はもっと多い。今日残額として残っておるのが八百九十数億だ。そこで一体今までの合理化に投じた効果というものが現われておるかどうか。これは私午前中の委員会においてこれに関する資料の要求をしておりますので、資料が出ましてから詳細お尋ねいたしたいのでありまするが、その前に私の聞いておる、あるいは見ておることから申しまするならば、いつも設備の改善によって能率が上ったように聞いておるのであります。ところが能率が一時は上るのでありまするが、炭価が引き下げにならない、どうして炭価が引き下げにならないかといえば、大部分は賃上げ闘争のために組合側に流れていく気配がある。私はこの合理化のために、さらに生じ来たったところの過剰人員の整理というようなことは必ずあると思う。ところが過剰人員の整理の際の対策というものがいつも不十分である。そこで組合側から真向に反対を受ける。だから合理化のために資金を投じても真の能率というものは上ってこない。私はこういうようなことを繰り返しておるのが今日の石炭鉱業の実情じゃないかと思う。そういうことを重ねて参りまするならば、これは経営が困難を重ねていくことは私が申し上げるまでもないと思います。今度の石炭鉱業の合理化臨時措置法案を見ましても、今度のこの措置法については、何らか政府の貸付金の利息を負けてやり、そうしてさらに業者から一定の出炭量に応じた金を、事業団体というようなものを作って徴収して、能率の悪い不良炭鉱の閉鎖をやる、そこで価格カルテルをやって石炭鉱業の育成をしょう、こういうようでありまするが、これを今申し上げたようにほんとうにおやりになるとするならば、少くとも戦後十年になんなんとする今日、他の産業においてもいろいろこれは基幹産業として悩みは持っておりまするが、石炭鉱業のようにこういうような苦難に陥っている産業は私はないと思う。そうだとするならば、この石炭鉱業の真の合理化をして、そうして炭価の引き下げをし、同時に炭鉱の経営が十分よくなる、労働者もまた十分働いた賃金が上昇して、それに見合うようにしていくということになるならば私はけっこうでありまするが、どうも今までおやりになってきた点から見ますると、そういうような効果が現われておらない。だから、先ほど私が申し上げたように、一体この法案は政府がベターとして考えたのかどうか、最良としてお考えになったのかどうかということをお尋ねしたわけでありまするが、大臣は今日の段階においてはこれが最良唯一のものであるというお答えがあったのでありまするが、私が今申し上げたように、一体労働対策を離れて石炭鉱業の合理化というものは考えられないのではないかと私は思う。そこで私は、これはひとり通産省の主管だけではこの問題が解決できないのでありまして、どうしてもこれは労働省というか、内閣一体としてほんとうに取り組んで解決しなければならないと思います。そういう意味において、通産大臣が最良の案なんだ、こうおっしゃられても私は納得できない。私が今お尋ね申し上げたこの点について、通産大臣のこれらに対するお考え方、またはどういう手をお打ちになるようにお考えになっておられるのか。労働対策の基本的なことについては、これは労働大臣がどうしても出られないということでありますが高瀬政務次官がお見えになっておられるし、高瀬君も労働行政の現場から出てきた男なんだから、これはよくこの法案については御研究になっておられると私は思う。おそらく石炭鉱業の合理化案をお考えになって、労働省とほんとうに腹を打ち明けて御相談なしにこの法案をお出しになったのではないと私は思う。これはほんとうに一つ石炭鉱業の合理化をおやりになる、日本経済の立ち上りのためにほんとうにやるんだというならば、私は労働省は十分お考えになっておられる点があると思う。政務次官でありまするが、これはもう大臣以上の——こう言うとおかしいが、大臣にしても決して遜色のない政務次官でありますから、これらの点についてはわれわれが納得のできる、ほんとうに腹を打ち明けておやりになったものならば、納得できる心からのお話を私は聞かせていただけると思います。これは私は重要法案だと考えております。日本経済にとって重要法案でありますから、おそらく政府も腹を据えての御提案だと思う。ただ業者に頼まれたんだ、労働者の生活を見ておられないというような、そういうようなお考えでお出しになったのじゃないと思う。そこでまず最初に、これがベターだというならば、今までいろいろやって参ったのだが、今私が申し上げたような事情もございまして、成果を上げることができなかった、まずこの根本的なことについて、どういう御対策をお考えになってこれを立案し、これを御提案になったか、それを一つ十分お伺いをいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/29
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030・石橋湛山
○石橋国務大臣 労働政務次官からもお答えを願いますが、私から最初に申し上げます。今まで炭鉱に対して政府関係の資金が相当多量にいっていることはお話の通りでありますが、しかしこれは全部が合理化資金に回っているわけではありません。御承知のように、終戦後急激に石炭の減産を来たしまして悩んだときに、これをとにかく増産しなければならないということで種々なる形で資金を出しました。それが積み重なって数百億円になっております。ただし、その中で多少はすでに合理化資金として出したものもあると思います。そうして、ある炭鉱がいわゆる縦坑を掘るというようなことでもって合理化を企てたが、その結果が必ずしも芳ばしくないということも私は承知をいたしております。これは大体合理化をして一人当りの出炭高がふえれば、それだけ労務者の数が減るわけでありますが、その労務者の数を思うように減らし得ないというようなことからさような結果を来たしておると聞いておりますが、しかしこれはもう神田君のお話の通り、労働面の対策が十分でなかったということは過去においては確かに言えると思うのであります。しかし労務者もそこで要りもしないのに無理にそこにぶら下っているということはないのでありまして、結局生活の問題であり、職業の問題でありますから、ほかに行くべき職場があれば、無用にそこにがんばっているということはないと思う。なかなか当人もがんばっていることが苦痛であろうと思いますし、また労働組合その他においても、今日は相当日本は炭鉱業が行き詰まっており、このままでいけば労務者の方も非常な惨害を受けるのでありますから、そこで合理化をする場合に、職業がほかにあり得れば、私は労働組合の協力も得て労務者はわきへ転換してくれるものと信じております。その処置は十分にとろう、こういうことで労働省ないし労働大臣とも十分打ち合せてこの案を作ったわけであります。職業の転換をこの裏づけとしていきたい、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/30
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031・高瀬傳
○高瀬政府委員 ただいま神田君の御質問でありますが、この今回提案されました石炭鉱業合理化臨時措置法案が通過するという前提に立って申し上げまするならば、これに伴う離職者というのは、大体昭和三十一年度と三十二年度に大量に発生する、かようにわれわれは考えております、従って本年度においては第四・四半期において約四千七百名程度の失業者が出る、かようにわれわれは考えておるわけであります。従って石炭鉱業の合理化に伴うこの法案の実施に伴って発生する離職者の失業対策につきましては、政府は去る五月二十四日閣議決定を行いまして、失業対策の根本方針をきめてこれに対処することとしておるのでありますが、炭鉱の整備に伴う離職者に対しましては、炭鉱地帯において河川の改修、道路、水道、鉄道建設あるいはその改良等の各種の建設的事業を実施いたしまして、これに離職者の積極的な配置転換をはかろうという考えを持っております。
またその第二として、住宅の建設あるいは電源の開発等、国家の全部の施策に見合いまして、これらの事業に対して計画的に配置転換を失業者に対して行うことといたしまして、これがために必要な職業補導事業を実施いたしたい、かように考えております。
それから第三に、近来石炭鉱業の合理化の一環として各炭鉱地帯にいろいろ計画が進められておりますが、製塩事業、これは私の友だちなどもやっておりますが、製塩事業その他離職者の吸収に適切な事業を計画して、これを育成助長する等のいろいろな施策を離職者発生の実情に応じて講ずる考えであります。その実施上必要な資金につきましては、所要の適切なる処置を講ずる考えであります。また炭鉱から一般に発生する失業者に対しましても、従来の鉱害復旧事業、失業対策事業を、炭鉱地帯における失業情勢に応じて重点的にかつ計画的に実施することにいたしまして、これが吸収をはかり、失業対策について万全を期する方針であります。なお、以上の対策のほか、炭鉱整備による離職者に対しましては事業団より一定の離職金を支給するように政府は考えておりますし、またその際未払いの賃金がある場合には、事業団が事業主にかわって弁済する等の処置を講じまして、離職者の保護に資することといたしております。
以上、大体さよう考えておりますから、御了承のほどをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/31
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032・神田博
○神田(博)委員 ただいま通産大臣並びに高瀬労働政務次官からお答えがあったのでありますが、どうも私、これは議論をするのではありませんが、何だか作文をお読みになったような感じを受けるのであります。これは事柄自体が重大なのでございまして、私は作文を読んでいただこうと思ってお尋ねしたのではないのであります。しかしそれは作文ではないとおっしゃればそれまでのことでありますが、今までの石炭鉱業に対する諸般の政府の施策というものがどうも甘いのではないか、石炭は掘れば出るのだ、金をつぎ込めば出るのだというような非常に甘い考えをお持ちになっておるのではないかということを私はおそれるのであります。石炭鉱業の合理化については、これはきめ手が一つでございませんから、いろいろ総合的な施策を樹立して、これを計画通りにタイムリーに進めていかなければほんとうの合理化の成果の上らないことは申すまでもないのでありますが、私が一番心配いたしておりますことは、先ほども申し上げましたように、今日の石炭鉱業のあり方を見ておりますと、これはどの産業にも共通の点はありますが、特に労働問題が石炭鉱業の大半を占めているということであります。現在のような労働対策の延長のもとに石炭鉱業を合理化するというその考え方について私には納得がいかないのです。
そこで一体この内閣が労働対策についてどういうような基本的な考えをお持ちになって政治をおやりになろうとするのか。特にこの特別の事情に置かれている石炭鉱業について、労働対策というものをどういうようにお考えになってこの合理化を進めていくのか、そこを私はお聞きしたい。合理化をやれば失業者が出る、失業者が出れば適時適切な方法によって失業救済をやっていくのだ、これは私は理屈だと思う。これは予算もお取りになって多少金もお出しになるのだから、全部が全部ということを申しておるのではありませんが、石炭鉱業の労働者は一般労働者と違うのだ、しかも失業対策として行う工事の現場というものは、石炭労務者のようにすぐ身近において長く行われるものではないと私は思う。そういうようないろいろの条件をお考えになった場合に——それはおやりになっておられる、またもっとおやりになろうという気持はよくわかるのだが、まずその根本、政府の労働対策、鳩山内閣のこの労働問題に対するお考え方というものは一体どういうものなのか、ことにこの石炭鉱業の合理化そのものについてどういうようなお考えを持ってお進みなさろうとするのか、そこをまず私はお聞きしたい。これはまじめな話なんです。そこが納得いかなければ、あと法律の内容に入ったって、金がこうだということをおっしゃっても私はむずかしいのではないかと思うのです。金をかけただけまあ食い延ばしたというようなことであってはならないと私は思うのです。これは非常に重要な問題だと思う。ことにこれはひとり炭鉱だけとは限りませんが、この法案が炭鉱になっておりますし、そういうような今まで条件下にあったので、通産大臣並びに政務次官に、私が今申し上げたことについてどういう御信念であるのか、政府の方針をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/32
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033・石橋湛山
○石橋国務大臣 お話のように、労働問題が大切なことは石炭だけの問題ではございませんが、これは根本的に申せば、現在すでに各方面に起っている失業者とか、あるいは潜在失業者というものまでが吸収されるように日本全体の経済が復興繁栄をいたしまして、職場が十分にあることが根本策だと思うのです。ですから、鳩山内閣としてはその方向に強力に進めるつもりでおります。ただこういう石炭なら石炭という特殊の地帯に、ある限られた時間の間に急激に起りまする離職者に対しては特別の手当をしてあげないと、いろいろ長い目で見た労働対策というものだけでは間に合いませんので、そこで今高瀬政務次官から言われたような——これはああいうふうに申しますと、作文といえば作文にも聞えましょうが、これは決して作文のつもりではないのでありまして、これは必ず実行する——実行しなければできないのですし、また日本全体のために強力に、どんなことをしてもやらなければならぬことでありますから、計画を読み上げれば作文にも聞えましょうけれども、そうでなく、まじめに実行していくという決意を持って労働大臣とも絶えず連絡をして計画を進めている次第であります。ですから、その点は政府の今後の処置に信頼を願うほかには私はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/33
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034・高瀬傳
○高瀬政府委員 ただいまの神田委員からの御質問に対してお答えいたしますが、政府は日本の失業状態の非常な重要性にかんがみまして、本年は特に失業対策に重点を置き、失業対策の事業費を増加いたしまして、百六十八億という総額を計上いたしております。なお失業保険の負担金も百十七億、その他政府職員の失業者に対しても手当三億六千万円、合計二百八十八億という失業対策費を計上しております。特に炭鉱の失業者の救済については、三十一年度の具体策について申し上げますが、この炭鉱の失業者に対しましては、昨年の秋以来鉱害復旧事業であるとか、河川の改修事業等の公共事業を重点的に実施をして参りました。それ以外に失業対策事業を機動的に行いまして、失業者の吸収に努めて参ったのでありますが、本年度におきましてもさらに失業者の増加が予想されますので、前年度に引き続き、先ほど申し上げましたような鉱害復旧事業であるとか、河川の改修事業、道路の建設事業、失業対策事業等を拡充強化するとともに、これらの事業を炭鉱地帯における失業情勢に応じて重点的に、かつ計画的に実施するつもりであります。これによって失業者の救済に万全を期したいと考えているわけであります。特に先ほど申し上げましたように、炭鉱合理化臨時措置法案施行によって失業する人たちは、昭和三十一年度と三十二年度にたくさん発生する見込みでありますが、本年度はこの第四・四半期においてこれが実施されれば、約四千七百名程度の失業者が出るというふうにわれわれは予想しておりましたので、この間自由党との予算の共同修正の際に、本年度分として二億一千万円程度の追加経費を政府に要求いたしました。それからこの法案が提案されましたときに、石橋通産大臣がその提案理由で失業対策について触れておられますが、その際に道路あるいは鉄道建設等と、特に鉄道建設等ということを言われましたが、その炭鉱地帯の輸送を増強し、あるいはことに鉄道の建設によってコストも下り、失業対策にもなるという意味合いにおきまして——伊藤君も御存じでありますが、ちょうど筑豊炭田のまん中にあります川崎線の建設、これは五年くらいの計画で約二十四億かかりますが、本年度とりあえずの建設の経費として一億四千八百万円、都合五億ばかり要求いたしました。ところがこれが通らないで、新線建設五億というちょうどわれわれの要求したものが計上されましたので、当然石炭合理化臨時措置法案通過に伴う処置としても、この費用をある程度まで新線建設に向けて失業対策に資すべきであるということを私は強く主張して今日に至っております。これも皆さんの御協力でやはり解決したい、かように考えておるようなわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/34
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035・神田博
○神田(博)委員 私は労働対策の根本のお考え方をお尋ねいたしたのでありまして、その根本のお考え方についての御答弁をいただいたとはどうも考えられないのであります。はなはだ残念であります。私がほんとうに聞きたいということは、鳩山内閣は経済六カ年計画というようなものをお出しになっておられます。そこでこの経済六カ年計画を完成するという立場から考えても、労働対策というものを政府において十分御検討なされたと私は思うのです。もっと突っ込んで聞きまするならば、今の労働対策の根本ということは、労働三法も十分再検討してみなければならないという根本をどう考えておるかということです。ところがその点に触れないで、労働対策は十分考えているのだということをおっしゃっておる。おそらくお考えになっておると私は思いますが、この根本の対策を再検討して、初めて日本経済の再建というものができ上ると思う。経審の関係においても、六カ年計画を立てるについて、一体労働条件をどういうように考えておるか、政府のお出しになった資料の九の炭鉱採掘条件の推移というものを見ましても、戦前昭和九年の就業時間は十一時間十六分であった。これが二十四年には八時間八分、それから二十八年の十二月現在では八時間十五分になっております。これは就業時間に比して往復に要する時間が延びたことも原因でありましょうが、実働時間になりますと、昭和九年は八時間三十五分、それから昭和二十四年には六時間一分、昭和二十八年には五時間四十二分というふうなことになっておる。私は決して労働強化をしいるという意味でお話しているのではない。日本の今の国情からして、今の労働三法が一体真に国情に沿うておるかどうか、これらの根本的な問題を掘り下げて御研究になって、何かそこで結論を得たかどうか知りませんが、どういうようなお考えを持っておるか、そこから出発した労働対策でなければならないと私は思う。今日のわが国の国情において、労働者の立場であっても働く時間が少なければ収入が少いわけである。私は決して高能率高賃金——これは一番けっこうな理想でありますが、今日の国情では、それは比較的の高能率高賃金ということは言えるかもしれませんが、ほんとうの労働条件を考えた場合に、この労働三法については再検討をする段階に入っておるのではないかと思う。そういうことをそのままにしておいて、継ぎ足しの政治をやっていこう、そこで諸般の産業の合理化をやろう、これでは私はほんとうの国の再建はむずかしいのではないか。最初にお聞きいたしましたように、実働時間が少くて争議が起きておる。これでは幾ら政府が金をつぎ込んで合理化をやってもから念仏である。ことに資料をずっと見て参りますと、この合理化によって千数百円のトン当りの炭価の値下げをお考えになっておるようですが、その基本的な数字を見ると、労働賃金は据え置きにして計算されております。こういうようにほんとうにまじめの案かどうかということを考えると、どうも私ども納得がいかない。だから労働対策をもっとほんとうに、言葉だけではなく具体的にそういうところまでお考えになっておられるのか、おられないのか、あるいは今のままでいいとお考えになっておられるのか、そういう根本のことを私はお聞きいたしたいのです。そうでないと、結局金はかけた、そうして合理化したから人が余る計算だから失業救済をやる、こうおっしゃっても、炭鉱から離職してくる人は、なかなかないのではないか。そうするとやはり金をかけただけ炭価が高騰して、人件費が節約できない。あるいは合理化された分だけが賃金の方へ多く回っていく。それではいつまでたっても生産費の低下ということは考えられないのではないか。そういうことについて、政府は一体どういうようにお考えになっておられるのか、その根本のことをお聞きしておるのです。一つ腹を割って御答弁を願いたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/35
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036・石橋湛山
○石橋国務大臣 労働三法の中にも種々な欠点があり、実情に沿わない部分があるとは思いますが、しかし現在の日本の状況で、いきなり労働三法をいじくって、ややもすればいわゆる労働強化というふうになることは許されないと思う。これは現にいかなる内閣でもそういうことはやれないと思う。でありますから、私どもは労働強化にならないように、しかもそのためには生産性を向上しなければならない。この石炭鉱業の合理化も、生産性向上の一つの手段であります。今お話のように、炭鉱従業者の労働時間が短くなったことは、八時間けっこうであります。ただし実働時間が非常に短くなったということは、坑道の関係等によってそういうことが起っておるのでありますから、そこで縦坑道の方法によって実働時間がもっとふえるようにするということが合理化法案のねらいでありまして、私は労働三法に手をつけなければ合理化法案がうまく実施ができないというものではないと思う。むろん必要があれば、この労働三法にも手をつける時期があるだろうと思いますが、しかしこれは言うまでもなくそれより先に労働者あるいは労働組合等が日本の産業をどうするかという観点から、十分に協力をしてもらうようにすることが第一に必要だと思っておる。合理化法案もむろん労働者方面からの協力がなければ何をやってもできることじゃありませんから、前から申しておりますように、こういうふうにして炭鉱を立て直すということは、何も炭鉱主のためというわけじゃない。同時に従業する全般の者の将来の生活の安定をもたらすゆえんなんでありますから、これに対して私は労働階級が反対する理由はない、十分協力してくれるものと信じておるわけであります。そのくらいのことをしてくれる労働階級でなければ、日本の労働階級と言えないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/36
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037・高瀬傳
○高瀬政府委員 ただいまの神田君の御質問でありますが、石橋通産大臣から根本方針は申し述べられたようでありますが、この労働三法につきましては一長一短ございまして、非常にいいところもありますし、多少どうかと思われる点もございましょうが、われわれとしては現段階ではこれを改正しようという意思は持っておりません。この基礎の上に立って日本の産業を振興しよう、かように考えております。ただしこの労働基準法の問題につきましては、いろいろ各方面において議論もございますので、一体労働基準法のどういうところが、たとえば日本の中小企業の振興に対して害があるか、あるいは非常に役立っておるかどうか、こういう点を具体的に研究したいとわれわれは考えておるわけであります。従ってその目的をもちまして、労働保護法制審議会のようなものを作るために、本年度、軽少ではありますが、予算を計上いたしまして、労働保護法制の具体的な検討をいたしたい、かように考えておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/37
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038・田中彰治
○田中(彰)委員 大臣に私はきょうお尋ねしても御返答にいろいろなあれもありましょう。石炭というものは非常に複雑怪奇というくらいで、むずかしい地下の仕事なものですから、この法案をやられる前によく局長と大臣の間に打ち合せをして御研究されておらないと、私は非常に困ることができると思います。第一に先ほど局長に聞いたところが、日本には大炭鉱と称するものが約八十ある。これは昭和二十八年の十二月に調べたものです。ところがそのときは中小炭鉱が七百二十八あった。大炭鉱と称するものが八十。これが昭和二十九年の十二月末にきまして大炭鉱は一つも減っておらない。やはり八十依然としてある。中小炭鉱が白四十八鉱減っている。今度は昭和二十九年の十二月からまた今まで減っておりますが、なお減っておると思う。こういう減ったのは一体どういう炭鉱か、どういう状態でこんなにたくさん倣ったのかということを一つ局長と大臣と御相談されて、この次に私お聞きするときにお答え下さるようにお願いいたします。
いま一つ、この百四十八鉱減った、これに伴うて相当労働者が減っておる。石炭が約六十三万トン減っておる。一人当り一カ月約十トンと押えましても、五千人くらいやはり人が減っておる。この失業者は一体どこへ行ったのか、どう処置されたのか。これは労働省の方からでも、一応こういう工合に減ったこの中小炭鉱の失業者がどこへ行ったか伺いたい。
もう一つここにお考え願いたいことは、中小炭鉱は争議はあまりしておりません。そこで中小炭鉱は非常に大炭鉱から見ると努力しておるはずです。こういう人たちがどうしてこんなに炭鉱がつぶれて減らなければならないか、そうしてこういうような争議もしないような労働者が一体どこへ行って何をしておるかというような点をお調べ願いたいのであります。
もう一つ先ほど局長が私に答弁されたのですが、政府が大炭鉱と見、国家が大炭鉱と見ておる、それが約八鉱あるのです。ところがこの八鉱が出している石炭数量、この大炭鉱というものは一年に百万トン以上出している。それから一年に五万トン以上出しているものが七十四ないし七十五あるのですが、これで出している石炭とちょうど同じです。そうしますと、このこの八鉱の炭鉱に政府の開発銀行の資金がだいぶいっております。そうして五万トン以上の方にはほとんど政府の開発銀行の資金はいっておりません。金もいかなくて、鉱区が悪くて、いい機械を持たないで同じく出しておるということになると、この合理化法案に対しては私相当考えなければならぬと思う。そこでこの八鉱に出しておる開発銀行及び政府資金がどのくらいあるのか。それから五万トン以上の約七十五・六鉱に出ている開発銀行の資金が一体どのくらいあるか、この点を今度おいでになるときお調べ願いたい。
もう一つ今の一人当りを見ますと、北海道は、昭和二十六年には大炭鉱も中小炭鉱も入れまして十三・五トン出ておる。二十七年には一人当り十二・四トン出ております。二十八年には十三・五トン出ております。二十九年には十五トン出ております。ところが常磐に行きますと、二十六年には十一・七トン、二十七年十・九トン、二十八年には十一・二トン、二十九年には十一・三トン。それから西部の方の炭鉱に行きますと、これまた二十六年には十二・七トン、二十七年には十・八トン、二十八年には十二・五トン、二十九年には十四・四トン。それから九州に行きますると、うんとこれが減りまして、二十六年には九・七トン、二十七年には八・八トン、二十八年には九・八トン、二十九年十一・四トンです。どういう工合でこういうふうに違うのか、鉱区が古いために違うのか、機械設備がないために違うのか、労働者の素質が違うのか、炭鉱の炭層その他で違うのかという点の資料をこの次までに一つ出してもらいたい。この点について大臣は局長ともう少し打ち合せていただきまして、大臣からも相当考えていただきたい。労働省の方も、どうしてこういうぐあいに同じ機械を使って、同じ炭鉱を経営しながら、こういうふうに違ってくるのか、そういう点が労働問題、労働者にあるのか、機械設備の悪いところにあるのか、あるいはまた炭層の悪いところにあるのか、炭鉱が古いという点にあるのか、この点を一つこの次までによくお調べ願いたい、これだけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/38
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039・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 この際資料を少し要求いたしておきます。先ほど来同僚各位から資料の要求がなされておりまするから、あわせて要求いたしておきたいと思います。一月ほど前に私がこういう資料を要求しておいたけれども、また提出されておりません。だからこの際これを至急お出しになるように要求いたします。先日私が要求いたしましたのは、エネルギーの増産と拡張の計画、数字は発表されて私の手元に来ております。この結果、日本のおもなる産業と家庭生活にどのように寄与しておるかという資料がございませんので、これを要求しておるのでございます。これが一つ、それからどのエネルギーを拡張増産した方が今後エネルギーが安くなるか、これに必要なる資金はどのくらいかということを要求しておるのでございます。これがいまだ提出をされて参りません。この間の各種エネルギーの供給見通しの裏づけとして、以上二つの資料を要求いたします。
それからさらに、この石炭鉱業合理化法案の資料として御提出になっておりますが、それを検討いたしてみますと、六項の方にあります石炭産業原価の資料は大まかに過ぎますので、もっと詳しい内容のものを提出してもらいたい。すなわち生産原価中に税金、たとえば法人税、鉱産税、鉱区税と、減価償却、鉱害復旧費、配当積立金等がどのように見込まれておるかということが出ておりませんから、この点をあわせて御提出願います。
さらに販売価格等の見通しについても具体的になっておりませんから、この見通しを御提出願います。
さらに次に十三項目の個所にある長期資金の計画の資料についても、もっと詳しいものを作って出していただきたい。さらに起業費の内容、縦坑工事、開発工事、合理化工事等への投下資金は幾らであるか、この点が具体的になっておりませんから、この点を具体的にお出しを願いたい。それから設備返済資金の項目をもっと詳しい内容を出していただきたい。その他借入金の返済計画についても具体的になっておりませんから、これももっと詳しくして御提出願います。
十五項目の資料、機械化准捗状況の資料中、将来の見通しが何ら資料として出されていないから、この点に対してもこの見通しについての資料を十分添えてお出しを願います。以上の点を資料として要求いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/39
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040・田中角榮
○田中委員長 この際委員諸君に申し上げます。法案審議に必要な諸資料の要求は文書をもって委員長まで御提出願います。政府も要求の各資料はできるだけ早急に御提出願います。
本日の質疑はこの程度といたします。明二十四日午前十時より会議を開きます。
本日はこれをもって散会いたします。
午後二時十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X02919550623/40
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