1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月二十日(水曜日)
午前十時五十二分開議
出席委員
委員長 田中 角榮君
理事 首藤 新八君 理事 長谷川四郎君
理事 山手 滿男君 理事 内田 常雄君
理事 前田 正男君 理事 永井勝次郎君
理事 中崎 敏君
阿左美廣治君 秋田 大助君
小笠 公韶君 菅野和太郎君
齋藤 憲三君 笹本 一雄君
椎名悦三郎君 鈴木周次郎君
中村庸一郎君 野田 武夫君
淵上房太郎君 山本 勝市君
加藤 精三君 鹿野 彦吉君
神田 博君 小平 久雄君
堀川 恭平君 南 好雄君
村上 勇君 加藤 清二君
片島 港君 櫻井 奎夫君
多賀谷真稔君 田中 武夫君
帆足 計君 伊藤卯四郎君
菊地養之輔君 佐々木良作君
田中 利勝君 松平 忠久君
出席国務大臣
通商産業大臣 石橋 湛山君
出席政府委員
経済企画政務次
官 田中 龍夫君
総理府事務官
(経済企画庁調
整部長) 松尾 金藏君
通商産業政務次
官 島村 一郎君
通商産業事務官
(大臣官房長) 岩武 照彦君
通商産業事務
官(鉱山局長) 川上 為治君
通商産業事務官
(石炭局長) 齋藤 正年君
労働政府次官 高瀬 傳君
労働事務官
(職業安定局
長) 江下 孝君
委員外の出席者
議 員 八木 昇君
参 考 人
(常磐炭礦株式
会社社長) 大越 新君
参 考 人
(東部石炭協会
専務理事) 長岡 孝君
参 考 人
(常磐市長) 矢吹 莊司君
参 考 人
(全国石炭鉱業
労働組合常磐地
方本部執行委員
長) 齋藤 茂雄君
参 考 人
(日本炭鉱労働
組合常磐地方本
部執行委員) 渡邊 家次君
専 門 員 越田 清七君
専 門 員 谷崎 明君
専 門 員 菅田清治郎君
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七月二十日
委員山本猛夫君及び八木昇君辞任につき、その
補欠として山本勝市君及び片島港君が議長の指
名で委員に選任された。
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七月十九日
離島振興法に基く予算措置に関する請願(池田
清志君紹介)(第四三三〇号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
石炭鉱業合理化臨時措置法案(内閣提出第一一
三号)
ガスの普及に関する臨時措置法案(多賀谷真稔
君外十三名提出、衆法第五〇号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/0
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001・田中角榮
○田中委員長 これより会議を開きます。
去る十六日本委員会に付託せられましたガスの普及に関する臨時措置法案を議題となし、まず提出者よりその趣旨の説明を求めます。多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/1
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002・多賀谷真稔
○多賀谷委員 ただいま議題になりましたガスの普及に関する臨時措置法案について御説明申し上げます。
ガスは家庭燃料としてきわめて卓越しており、家庭におけるガス化は、生活上大なる便益をもたらすものであります。従って、戦後都市住宅の復興、生活水準の向上等に伴って、逐次ガス事業も復興し、家庭燃料のガス化が促進されてきたことは当然というべきでありますが、今日なお都市におけるガスの需要は旺盛なものがあり、ガス事業者としてもこれが充足に努力しつつあるのでありますが、十分の成果を得ない現状にあるのであります。これは既存のガス事業者の有する製造及び供給の設備能力がすでに過小となったためであり、当面の急務として施設の大拡充を必要とするのであります。
また翻ってわが国の森林資源の現状を見ますると、長年にわたる過伐の結果、依然として憂慮すべき事態にあり、森林資源の保全は治山治水上はもちろん、資源に乏しいわが国としては絶対的要請であります。しかるに家庭燃料の実態を見ると、薪炭等木質系燃料は、家庭燃料の約八割にも及んでいるので、特に都市における家庭燃料をガス化することは、森林資源の保全に寄与するところまことに大なるものがあるのであります。
またガス事業は、石炭を有効適切に消費する産業であり、ガス製造の増加は、石炭の消費を増大せしめ、石炭鉱業の安定化に資することになるのであります。
以上のような、家庭生活の合理化及び国民経済的見地から、既設事業者の施設を大拡充し、また積極的に無ガス都市にガス事業の開設を促進し、ガスの普及をはかることはきわめて有意義と存ずるのであります。幸い政府においてはガス事業拡充五ヵ年計画を策定し、これが実施に努められており、また木材資源利用合理化方策を閣議決定とし、同方策の一環として、都市のガス化を推進されているのであります。しかし今日までの経過を見るに、いまだ十分に効果ある施策が見られないのでありまして、真に都市におけるガス供給のための設備を拡充し、ガスの普及を強力に推進せしむるためには、ガス事業の助成を法制化する必要があると思うのであります。本法案は、如上の目的を有するものであり、法案の内容について概略を述べると次の通りであります。
十カ条の本文及び附則からなっており、実体的意義を有する規定は第三条以下であります。構成といたしましては、通商産業省にガス普及促進審議会を設けるとともに、通商産業大臣はガス普及計画を立案し、すべての措置はこの普及計画に従って展開するのであります。助成措置の重点は、資金の確保にあり、政府に対し普及計画実施に必要な資金の確保を義務づけているのであります。また無ガス地域にガスを供給しようとする地方公共団体に対しましては、ガス工作物設置のための補助金を交付するばかりでなく、起債についての優先的取扱いをも命じているのであります。
なお計画の実施を確保するため、ガス事業者に対し、通商産業大臣をして、業務または経理上の改善を勧告し得ることにいたしたのであります。以上は本文の概要でありますが、附則におきまして施設の拡充を促進せしめるとともに、ガス消費者の負担を軽減せしめる目的のもとに、固定資産税の軽減、ガス工作物の償却範囲額の拡大、電気ガス税の軽減等をはかることにいたしたのであります。
以上がこの法案の説明でありますが、ガスの普及促進をはかるためにはこの法律が最も適切なものと信じ、あえて御審議を願うこととしたのであります。この意を了とせられ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切に希望してやまないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/2
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003・田中角榮
○田中委員長 本案に対する質疑は後日行うことといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/3
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004・田中角榮
○田中委員長 次に石炭鉱業合理化臨時措置法案を議題となし、審議を進めます。
まず、本法律案について御出席の参考人各位より御意見を伺うことといたします。
御出席の参考人の方々の氏名を申し上げます。常磐炭礦株式会社社長大越新君、東部石炭協会専務理事長岡孝君、常磐市長矢吹莊司君、全国石炭鉱業労働組合常磐地方本部執行委員長齋藤茂雄君、日本炭鉱労働組合常磐地方本部執行委員渡邊家次君、以上であります。ただいま申し上げた諸君はいずれも常磐炭鉱地帯の方々ばかりでありますが、本委員会はさきに九州、北海道に現地調査を行い、北海道、北九州、宇部、各炭鉱地帯における各界の代表者からつびさにその意見を聴取いたしましたので、かように取り計らった次第であります。
参考人の諸君におかれましては、御多用中のところ、遠路もいとわず本委員会に御出席下さいましたことを感謝いたします。
本法律案の内容につきましては、すでに十分御承知のことと存じますが、種々論議のある法律案であり、本委員会といたしましても、十分質疑を行い、慎重に審議をいたしておる次第でありますので、簡単でけっこうでありますから、忌憚のない御意見を御発表願いたいと存じます。
御意見御発表の時間はお一人十分程度とし、その順序は委員長におまかせ願いたいと存じます。御意見の御開陳が終りましたならば、委員から質疑もあるかと存じますので、あらかじめお含みおきの上お願いいたします。
それでは大越参考人よりお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/4
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005・大越新
○大越参考人 常磐炭鉱の大越でございます。
私は本法律案に、ただいまから申し述べさしていただく五つの要望を申し上げまして賛成するものでございます。
その要望の第一点は、重油消費抑制に関する二つの法律案をぜひ御採択を願いたいということが第一点でございます。次に第二点は、石炭の消費の拡大をはかっていただきたい。なかんずく御案内のように、常磐地区は宇部地区と同様に、比較的低品位の石炭が多いのでありまして、そうした低品位の石炭を大いに活用する施策を、合理化の一端として強力にお取り上げ願いたいということでございます。次に第三点は、失業対策の充実、これを完全に取り上げて施策をしていただきたい。次に第四点は、合理化資金の確保でございます。それから第五点は、御案内の標準炭価の制定に当りましては、ことにわれわれ常磐地区は御案内のように非常に坑内の湧水が多い。またただいま申し上げましたように、比較的低カロリーの石炭が多いのであります。そういう事情を特に御勘案願いまして、そうして合理化の進む実情を勘案して標準炭価の御配慮をいただきたい。以上申し上げました五点でございます。
これらの各事項につきましてこまかいことについての御説明は、皆様もうすでにおわかりのことと思いますのでやめますが、総じて常磐炭田地区には、御案内のように、これぞという関連産業もまだできておりませんし、ことに常磐地区の総合的開発といったような面につきましては、宇部、あるいは西九州、北九州という方面に比べますと、まことに幼稚であります。従いまして今日まで石炭事業がどうやらいいときには、山形、岩手、福島、あるいは茨城の山間部の貧農村の次男、三男といいますか、そういう方々がいわゆる出かせぎに来ておられたわけであります。従来はそういう面でそういう方々の労務を充足し得る職場ではあったわけでありますけれども、もう今日の段階におきましては、炭鉱数が約半分にも減るという実情で、とうていそれも満たし得ないどころでなしに、現在あの地区におります石炭従業者それ自体の子弟の就職にも、まことに困っておるという現状であります。皆様新聞でも御案内の通り、福島県のあの勿来関で有名な、今度市になりましたが、勿来地区、それから平近辺の内部市地区、あの辺一帯は炭鉱事業がおもなんで、それがこういう状態になりますと非常に困っておる。ただいま新聞にも出ますように、あの地区かな炭鉱従業者の子女あるいは人妻、そういった方々が京浜その他に人身売買をされてくるというのが、非常に数多く報道されておるわけであります。そういう事情で、あそこで失職しますとどこに職場を求めるということもございませんで、そういう面から考えれば、なお一そう常磐は、数は少いとはいいながら、この失業対策に十分な御考慮を一つお願いいたしたいと思うのでございます。従いましてあの地区のそういう面から考えましても、低品位のものを活用する合理化の一端に強く取り上げていただくということになりますれば、そういう面で合理化も非常に推進でき得るだろうと思います。ただいまわれわれあの地区の業者といたしましても、比較的すそ物の三千五百とか三千七、八百のカロリーの石炭で、いわゆるこれを電力化する火力発電、あるいは製塩、その他東京にも近いというようなことで、でき得れば一般炭をもって、先ほどお話のありました都市ガス化ですか、そういう面の施策を取り上げていただければ、まことにけっこうだと思うわけでございます。
はなはだ簡単雑駁でございますが、以上をもちまして私の陳述を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/5
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006・田中角榮
○田中委員長 次に長岡孝さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/6
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007・長岡孝
○長岡参考人 私は東部石炭協会の専務理事をいたしております長岡でございます。本法案に付属いたしまして政府の方から本委員会に提出せられておりまする資料を拝見いたしまして、これらの資料とこの法案との関係につきまして、多少考えましたことを申し述べさしていただきます。
大体合理化計画に関する点と、整理事業団に関する希望と、標準炭価及び販売価格に対する私どもの希望と、かような三つの段階に分けて、簡単に申し上げたいと存じます。
法案にございます合理化計画についての三十四年度の全国の石炭の生産の目標は、四千九百万トンと資料で拝見いたしております。私どもの考えでは、この内地炭の生産を確保いたしまする方法は、ただいまのままでは、またただいまの法案では、困難なように考えられます。すなわち第一には、言い古したことではございますが、二十六年以来重油に奪取せられましたその市場の回復を、手近な方法ではありますが、原重油の実質的な輸入の制限に待つより仕方がないと確信いたしております。
第二には、先ほど常磐炭鉱社長も言われましたような、多少長期にわたる需要の開拓をいたすために、たとえば平−東京間に、これは距離が二百キロにすぎませんので、ガスを強圧で送りまするパイプ・ラインを作るような長い、低い利子の資金を、国で心配をせられて、将来の全体の需要の拡大を期する点が、絶対に必要だと思っておるのでございます。同じく政府から提出しておられまする長期生産計画を拝見いたしますと、三十四年までにおよそ五万七千に上る人員の減員を予定といいますか、見通しておられるのであります。これまた全体といたしまして、なかなか自然減耗のみに期待することはできまいと思いますので、これらのことを実際に行いまする場合に、障害になりまする点を排除いたしまする手だてが必要だろうと思います。私どもの見通しでは、かような大勢の人間の減員ということを期待するのはなかなか困難であろうという点から、再び前の重油の輸入制限に戻って参る必要があることを痛感いたしております。
なお次に資料で出ておりまする長期資金計画を拝見いたしますると、五年間に千五百八十億円という起業費と返済金が必要なのでありまするが、これを調達いたしまするのもこの法律案だけでは具体的にむずかしいような気がいたします。すなわち、旧債の返還に関する特別の処置とか税制に関する、改正による自己資金の調達とかだけでもいけないので、新たな金融制度か金融機関を期待しなければいけないのじゃないか、かように考えております。要するに、資料を拝見いたしまする点では、四千九百万トン、五万七千人の減員、千五百八十億円の調達、またそれらにさらに現在の賃金ベースをそのまま延ばしたと仮定をいたしまして、ようやく一八%内外の生産原価の低下を見込んでおられますることは、なかなかこれだけの法律ではむずかしいと思います。根本的にいろいろ施策を新規に、これから法案の通過後私どもも力を皆様におかりしなければならぬか、かように考えております。整備事業団に対する私どもの考えは、一つは財源の点でございます。これも先ほど申しました資料によりますると、最近の情勢では大体金利の変更による財源三十六億ほど、その他四十五、六億を残存業者の負担ということに相なっておるのでありまするが、金利の改訂は、見方によりますると今まで支払っておりまする生産業者の支払うべきものを、本法案の整備事業団の仕事のために振りかえるものとも見えるのでありますので、残り四十五億ほどのものにつきましては残る業者、これらもなかなか困難な状態にありまするし、整備せられまする出炭力も、今までの実績から申しますると数百万トンに上ったものでありましても、今後の生産力においては必ずしもそれだけのものを予定できませんという点から、残りまするものの受益といいますか、期待といいますか、そういう点は必ずしも大きなものには考えられないと思いまするので、ぜひその四十五億円ほどの負担は五カ年で半分政府、半分残存業者、二十二億ほどのものを政府、二十二億ほどのものを残存業者、一年にいたしますればおよそ四億円ほどの負担ということになさることを希望いたしております。もう一点整備事業団の仕事に対する希望を申し述べますれば、事業団が買収することのできます租鉱権者の鉱業施設というものは、事業団が買収する採掘権の上に設定せられていた鉱業権にかかわるものでなければならない原案になっておるのでございまするが、租鉱をやっておりまするものもやはり生産上は鉱業権者と同じような仕事をやっておるのでございまするから租鉱権者が事業を廃止しよう、廃止して整備をしてもらいたいという希望がございまする場合は、鉱業権者に租鉱料の六カ月分ほどを払わなければならぬ責任がございますので、これをやはり補償をしてやるような業務の方法にせられること、そして、必ずしも鉱業権者が鉱業採掘権の買い取りを希望いたしません場合におきましても、さような租鉱権者の施設は買い取るように業務を運営していただきたい、かような希望でございます。
第三の標準炭価の問題でございますが、これにつきましては、御承知のように全国的の炭価の水準は生産費その他に関係が深いと思います。けれども一つ一つの石炭価格のできまする姿は、買手がそれぞれの消費場所におきましてそれぞれの消費方法に応じた石炭の最終メリットに応じて買いまするのが現在の経済上の普通の結果でございまするので、その場合のもとになりまする値段を、全国的の水準との間に単純な工業分析上の発熱量の比などできめるようなことは無意味であると思うのであります。常磐地方に関係を持っておりまするわれわれから申しますると、同じ発熱量を持つ、灰分の少い石炭をたくさんに出しております。また化学的に変化の容易な石炭、若い石炭をたくさん出しております。従いまして、従来もいわゆる家庭用の石炭というような特殊の立場がありましたのみならず、今後も化学工業上の特殊な立場が予定せられまするので、石炭の値段に対する標準値段の建て方及びその価格に対する本法案の意図しておられまするところも、さような全国の水準という点と、一つ一つできまする売り買いの価格という点は、従来並びに今後それぞれの石炭の持っておりまする総合的なメリットを十分に考えられて処置せられないと、とんだことになると思うのであります。この点を特に希望いたしておく次第でございます。以上私どもの大体の考えを述べまして本法案に対する意見といたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/7
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008・田中角榮
○田中委員長 ありがとうございました。次に矢吹荘司さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/8
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009・矢吹莊司
○矢吹参考人 私ただいま御紹介にあずかりました常磐市長であります。実は昨日午後の四時ごろ電報に接しまして急遽上京しました関係から、数字的の何らの資料も持っておりません。ただ現在炭鉱所在地の町村としてのありのままのお話を申し上げたいと思うのであります。最近炭鉱の不振によりまして、その町村等への影響、それから町村と労働者との関係を簡単に申し上げてみたいと思うのであります。
炭鉱が不振を来たしますと、町村の経済は非常に苦しくなるのであります。私の常磐に例をあげて申し上げるならば、年度において約六千万円の収入の減を示しております。それはとりもなおさず炭鉱不振の結果でございまして、その不振炭鉱に準じてこの炭鉱所在地の町村ほど現在においてみじめな町村はないと申し上げても差しつかえないと思います。大きければ大きいように、小さければ小さいように、その不振に苦しまなければならないので、年度の当初予算を組みますときに、かろうじて歳入歳出をまとめて折り合いをつけるということになっておりますが、会社が不振の結果、歳入減となりますれば、従ってその数字は赤を出すのであります。それは年度末の決算において赤字決算となって現われまして、どうにもこうにもならぬというような結果を生むのであります。私の郡はもとは一市二十九カ町村でございましたが、ただいまは五市三町四カ村になっておりますが、いずれの町村でも悲鳴をあげております。
それから町村と労働者の関係でございますが福島県下におけるところの失業者はこの常磐地区ほど多いところはないと言って差しつかえないのであります。その失業者はしからばどの方面から流れて来るかというならば、炭鉱の不振によって、炭鉱の要求により、あるいはその他の事情でやむを得ずやめてきた者がみな町村に流れて来るので、町村としてはその受け入れをしなければならぬということになりまして、そのまかないは容易でないということになりますので、失業対策として非常に頭を悩ましておる次第であります。もしこうしたような炭鉱の不振が続くということになれば、炭鉱はもちろんのことでありますが、町村がばたばたと倒れてしまうという結果を見るのであります。これをこまごましく申し上げるならば時間を要しますので、簡単に申し上げますが、私の市は入口四万三千を数えておりますが、その中においてしからば義務教育を受ける生徒がどのくらいあるかと申し上げるならば、約一万人に近いほどあるので、あります。その義務教育費だけでも年度の予算の三分の一は投じなければならないというふうでありますので、いやがおうでも義務教育を実施する上において大きな金が必要である。しかし歳入がなくてどうにもならぬというようなことにおいて、一般炭鉱所在地の市町村は悩んでおりますので、その点は委員各位におかれましても十分御了察を願いたいと思うのであります。また失業予算として失対事業を旅行しておりますけれども、なかなか容易なものではない。今ごろになりますと、自由労組の方から盆手当を出せとか、あるいは夏期手当を出せとか交渉を持ち込まれましても、町村には金がないというようなことを考えますときに、町村と炭鉱とは離るべからざる関係を有するものでございますによって、そうした窮状を御了承願いまして、私といたしましてはどうか浮き沈みのない石炭鉱業になさしめてもらいたいということをお願いいたしまして、私の意見といたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/9
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010・田中角榮
○田中委員長 ありがとうございました。
次に齋藤茂雄君にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/10
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011・齋藤茂雄
○齋藤参考人 私は全炭鉱常磐地方本部執行委員長の齋藤であります。今回政府は炭鉱の合理化法案を提案いたしておりまするが、本法案は現在の炭鉱の空白な状態の中で今のままで放置するならばゆゆしい問題であるということで、石炭対策としてこの法案は出されたというふうに私は考えるわけであります。従ってそういう炭鉱の実情に即した法案であるという考え方については私も賛成をしたいと思うのであります。ただ問題は、具体的に、しからばこの法案の中でどういう点が現在の炭鉱の置かれておる実態と相応しないかという問題について、私は意見と批判をただいまから申し上げたいと思うのであります。
まず炭鉱の近代化の問題でございますが、政府の法案を見ますると、この中では主として縦坑を中心とした政策が考えられておりますけれども、これは政府の考えておりまする点は、単に縦坑の開さくによっていろいろの問題が出て参りますけれども、これによって炭鉱の合理化が完全であるという考え方は、私はどうしても考えられないのであります。従ってこの縦坑の開さくという問題は、きわめて中小炭鉱には縁の遠い問題になろうかと考えております。縦坑の開さくと同時に、中小炭鉱に対しましても同等の措置をこの中で講じなければ、今日の中小炭鉱の合理化という問題は、何一つ取り上げられないのではないかというように考えて参るものであります。この面だけから考えますと、大手炭鉱に対する全面的な救済であるというように判断をされるわけであります。さらに政府は昭和三十四年度の計画におきましては四千九百万トンの出炭計画をもくろんでおりますけれども、この問題は需要と出炭とのバランスを完全にとっていかなければ、過去の日本の炭鉱に対しまする統制時代の問題におきましても、出炭計画と需要計画がアンバランスを生じて、必ずしも出炭に応じて百パーセント需要が満たされたという状態がなかったのであります。従って炭鉱自身が坑口あるいは港湾の貯炭ということがしいられて参るのであります。こういう面につきましては、やはり需要と生産が満たされる必要があるのではないかというふうに私は考えておるのであります。この中で生産に対します問題で、中小炭鉱に対しまする政府の買い上げの問題もございますけれども、単に中小炭鉱の買い上げで、しからば生産と需要がマッチできるかどうかという問題でありますけれども、中小炭鉱の中でこの政府案に基いて自分の炭鉱を買い上げてもらいたいという炭鉱を例にとって考えるならば、そういう炭鉱がほんとうにノーマルな出炭が維持できるならば、買い上げという考え方は出てこないと思うのです。従ってそういう中で買い上げということによって、出炭と需要とのバランスをとろうとする、いわゆる三百万トンをこれによって年間十分消化できるという考え方は、私は少し当を得ていないのではないか。完全なノーマルな生産をやる炭鉱を基準として、そういうことならば、一応三百万トンという数字は可能だというふうに私は考えますけれども、こういう点が非常に問題があるのではないかというように考えております。さらにまた問題は、政府は重油あるいは輸入炭の消費の制限、あるいは火力発電所の増強の問題、さらにガスの問題、こういう問題を大きく施策として取り上げて、出炭をされた石炭が完全に消化できる態勢をまず作る必要があるのではないか。そういう点についてはこの法案の中できわめてその具体策が盛られていないということについて私は残念に思うのであります。こういう点もう少し法案の中で明確にする必要があるのではないか、かように考えているのであります。それからそういう施策の中でも、問題は経済の著しい変動の場合あるいは天災地変の場合に、そういう正常の計画の場合と違いまして、こういう場合に貯炭ができた場合どうするかという問題につきましても、これは全然考慮をされておりません。従ってそういう場合には政府はやはり一つの突発事故として政府貯炭とすべきではなかろうか。今日までの状態におきましては、そういう貯炭は一切経営者が、鉱業所が埠頭に貯炭をしている。従ってその石炭が風化されまして、結局は商品価値が落ちてしまう。そういうところに今日まで石炭を十万トン掘りましても、それが完全な意味での十万トンとして需要が成立をしていなかったというきらいが非常にあるわけであります。さらにこういう点については資金の問題も大いに関連するであろうと思いますけれども、この法案の中にそういう貯炭に対します具体的な考え方が盛られるならば、そういうものも私は当然解消できるのではなかろうかというように考えているのであります。
それから不良炭鉱と申しますか、一定の能率基準に達しない炭鉱の買い上げをする場合でありますが、この場合考えていかなければならないことは、資金を投入しても、あるいは合理化をいたしましてもその炭鉱が完全に立ち上れない。こういう場合の認定が、政府案の場合資金の投入をして、その炭鉱をほんとうに育成するというのではなくて、この法案の趣旨からいきますと、そういう小さな炭鉱は買い上げてしまうという考え方だろうと思うのであります。この点については企業が継続できる炭鉱については大いに資金の投入あるいは合理化の一端としていろいろな施策を講じられて、その炭鉱の持続をある程度この中で考えていく必要があると思うのであります。こういう中で買い上げられた炭鉱の労働者がやはり失業するという今日の状態で、常磐地方におきましては中小炭鉱の休廃山が続出して参りまして、皆様も御存じのように人身売買という問題が社会問題として常磐地区におきましては取り上げられております。さらにそういう方々も含めまして炭鉱を離職された方々の救済事業を行なっておりますけれども、それだけでは完全な生活を営むことが不可能であります。従って今日の状態におきましては現在職業を持って炭鉱に働いている者が、何がしかのいわゆる援助をして今日生活を営んでいるという状態であります。そういう中でこの法案が通された場合に、大体数字的に発表されておりますのは、常磐地区で八千名と称されております。これに家族を含めますと二万五千ないし三万の方々がやはりそういう状態になってくると思うのであります。こういう問題につきましては、政府はこの法案の中で率直にこういう問題に対する救済処置について考えていない。従って政府の法案の中にあります炭鉱整備事業団というものが、ただ単に炭鉱を買い上げるということでなくて、そういう労働者の賃金の未払い、欠配は代位弁済をすべきではなかろうか。あるいは退職金、それから就職のあっせん、こういう問題につきましてもっと具体的に労働者自体の救済処置を明確にして法文化する必要があるのではないか。こういう点がこの法文化の中で不明確な点であります。従って一面にいわれております点は、この法案は炭鉱労働者の首切り法案ではないかということが率直にいわれております。そういう具体策がないところにそういう問題が出てくると思うのであります。さらに中小炭鉱の場合に特に考えてもらわなければなりませんことは、大手炭鉱は今日まで何とかかんとか販売先を確保して参っておりますから、そういう面につきましては、全国的な平均からいきまして、約七〇%は大体大手じかに販売されるというのが数字的なものではないかというように考えております。従って残された全国出炭量の三〇%、これがいわゆる中小炭鉱の出炭数量であります。これに対します販売網の確立というものを政府案の中で明確にされていない。こういう販売組織を十分法案の中で考えて織り込む必要があるのではないかというように考えております。そうしないとこれは先ほど申しましたように生産はしたけれどもその炭の需要が完全に満たされないというところから、さらに苦しい状態が出てくるのではないか、かように考えているものであります。
時間の関係上非常に詰めましたけれども、問題は生産と需要の関係と、それから中小炭鉱の買い上げの問題につきましては、全部がそういうことでなくて、やはり事業の継続できる炭鉱については完全に政府が資金の投資あるいはその他の合理化施策によって、そういう炭鉱の助成、育成をはかるということを具体化してもらう。さらにまた不幸にしてそういう炭鉱が買い上げされた場合には、労働者に対する費用の点につきましては優先的に政府の法律の中で、先ほど申し上げましたようなあるいはどういう名称でもけっこうであるけれどもそういう中でもっと具体的に保障していくべきだ。さらに労働者の職業の問題につきましては、これを失業対策事業として考えるのではなくて、単に机上のプランとして考えるのではなくて、恒久的な一つの定職として職業をあっせんをするという考え方を十二分に持っていただきたい、かように考えているわけであります。
従いまして結論を申し上げますならば、この政府案の中では非常に肝心な点が具備されていない。従って現在政府が出しております法案につきましては私は反対の意思表示をいたします。今政府案に対します率直な批判と私の意見を申し上げたわけでありますが、常盤地区自体の実情を十分勘案されまして、中小の群集している地区の率直な意見として十二分に委員会の中で取り上げていただきまして、この法文化の中でそういうものをもう少し具体的にはっきりしていただきたいということを最後に申し上げまして、私の意見にかえる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/11
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012・田中角榮
○田中委員長 ありがとうございました。次に渡邊家次さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/12
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013・渡邊家次
○渡邊参考人 日本炭鉱労働組合常磐地方本部の渡邊であります。ただいま議題になっております石炭鉱業合理化法案につきまして結論を申し上げますと、前者の方も言われましたように、私はわれわれが考えているような内容と方法を持っていないという判断に基きまして、この合理化法案につきましては反対の意思表示をするものであります。
現在石炭の状態を若干申し上げますならば、今までの日本の石炭界というものは少くとも莫大な国家資金によって擁護されて今日に至っているわけであります。それ以来の借財金というものは大体三百五十二億円、こういうふうにいわれておりますが、しかしながら石炭の経営者自身は莫大な資金を投入された中で炭鉱の合理化をやっておるにもかかわらず、現在のようにあらゆる産業に比べて多くの失業者を生むという状態に立ち至っておるわけであります。従いまして私どもは、この合理化法案の持つ内容は、一貫して言えることは、労働を強化し、その中から失業者を生む、こういうことによって合理化をする、こういうふうにまず考えられるわけであります。従って、われわれが擁護するいわゆる合理化法案というものが、現在の石炭界の情勢の中では最も必要とする、こういうことに対しましては私どもも全く同感であるわけであります。しかしながらこの中においては、昭和三十年度においては四千三百万トンの石炭を出す、あるいは三十四年度においては四千九百万トンの出炭を行う。こういう中から石炭の合理化を行う。こういうことでありますけれども、それならばなぜ五年間において中小炭鉱から二万七千名の余剰人員を出すのか。少くとも中小炭鉱から二万七千名の余剰人員を出すならば、わずか三百万トンの石炭を消費すれば失業者が出ない。こういうことになるならば、どうして三百万トンの石炭をほかに使う政策を考えないのか、こういうふうに私どもは考えるのであります。そうすれば二万七千名の余剰人員は出ないのではないか。さらに私どもこの余剰人員が出ることに対して反対する理由といたしましては、現在の失業者の状態を見ますると、非常に悲惨な状態にあるわけであります。加えて二万七千名、あるいは縦坑の開さくによって三万三千名、合計六万名の失業者が出るということになれば、一体炭鉱の町というものはどういう状態になっていくか、こういうことを私ども考えるわけであります。現在の状態におきましても、炭鉱の町というものはほかの町と非常に変ったケースがあるわけであります。炭鉱の周辺の商店あるいは理髪屋さん、一切が炭鉱によって生活をしておる。こういう町がたくさんあるわけであります。これが炭鉱の閉山ということによって炭鉱労働者だけでなくして、ほかの方々も全部失業者になっていく、こういう特殊なケースがあるわけであります。従って私どもは多くのこのような国民一般の方々の生活を擁護するためにも、どうしても炭鉱の閉山あるいは廃山という法案は出してもらいたくない、こういうふうに私どもはお願いする次第であります。
次にこの法案の内容に盛られておりますところの標準炭価ということであります。少くとも、中小炭鉱を維持する、そのためには標準炭価を作る。こういう考え方に基いて標準炭価を作るということであれば私どもけっこうでありますけれども、これは必ずしもそうではない。いわゆる合理化を行なって中小炭鉱を買い上げて、その中で大手が合理化を行う。その中で標準炭価を設ける。標準炭価を設けるということになれば必然的に生産原価ということを考えない標準炭価というものはあり得ない、私どもはこのように考えるわけであります。こういう点については全く考えられていないのではないか、こういうふうに考えるのであります。
次に事業団が行うところの賃金の支払いでありますけれども、この法案の中にはこの事業団が支払いの代位弁済をすることができる、こういう法案になっておるわけであります。この代位弁済ができるという法案は、しなければならないという法案とは全く根底から違うわけであります。従って私どもはこういう幾多の欠陥を持っておる法案については反対せざるを得ないわけであります。いろいろそのほかにも申し述べたい点が多々あるわけでありますけれども、要するに私ども常磐地方における中小炭鉱に働く労働者の意欲と申しますか、一昨々年以来一日五十円あるいは一日百円、そのほかに主食、こういう中で炭鉱労働者は自分の企業を守ってどうしても失業者にはなりたくない、こういう意欲の中から今日まで一日五十円ないし七十円のわずかな金で生きておるわけであります。もちろん子供にやる小づかい等はないわけであります。そういう中でとにもかくにも失業者にはなりたくないのだという、自分の意思と、そういう良心的な企業を維持するという考え方から、今日まで一年半あるいは二年間にわたって労働者が耐えておるわけであります。こういう中で炭鉱が買い上げられるということになれば、このように産業を発展させようという労働者の意欲は全く根底から踏みにじられる、こういうことにもなって参るのではないか、このようにも私ども考えるわけであります。従って少くとも石炭を確保して国民に利益を与える、こういう考え方については私ども全く賛成するわけでありますけれども、そのことによって一部の方々が人身売買とかあるいはまた子供に学校へ弁当を持たしてやることができない。こういう不幸のどん底に再びより多くの人間が入っていくという内容を持つ法案に対しては、結論的に申し上げまして絶対反対を申し上げると同時に、われわれもう少しよりよき法案を提出して下さるようお願い申し上げまして、簡単ではありますけれども意見にかえる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/13
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014・田中角榮
○田中委員長 ありがとうございました。これをもって参考人各位の御意見の開陳は終りましたが、質疑がありますので、これを許します。淵上君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/14
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015・淵上房太郎
○淵上委員 参考人各位にはお忙しいところを御意見をお述べ下さいまして、まことにありがとうございました。協会の専務理事の長岡さんに一、二お尋ねをいたしたいと思います。先ほど租鉱権の補償の問題についてお話がありました。申すまでもなく租鉱料は千差万別いろいろありますが、この租鉱権の補償をしたらどうかということでありますが、まことに私どもいい考えだと考えております。その租鉱区に鉱業権者がさらに第二の租鉱契約を設定することもあるまいが、整理される租鉱権の補償方法としてどういうふうにしたらよいかという点につきまして御意見をお聞かせ願いたい。鉱業権者との関連もありましょうし、採掘権者との関連もありましょうけれども、その補償をどういうふうにしたらよろしいかという点につきまして御意見を伺っておきたいと思います。これが第一点。
もう一つ、標準炭価の決定の方法につきまして先ほどお話がありましたが、ちょっと先ほど聞き方が悪かったかもしれません、徹底を欠きましたので、標準炭価の決定方法に関するあなたの御意見をもう一度お聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/15
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016・長岡孝
○長岡参考人 先ほど租鉱権者が鉱業権者に対して放棄料を払う——放棄料というのは御承知の租鉱料をだしぬけにやめる場合には六ヵ月払うわけであります。その補償をするようにしていただきたいという点が一つ。
それから今淵上先生のお話の、あと鉱業権者がやるあるいは租鉱をさせるということを排除する補償方法はどういう方法かというように承わったのであります。あとの方につきましては、深い考えは持っておりませんでした。坑口の制限の条件などでできるのではないだろうかというような、ぼんやりいたしました考えで言っておりました。
それから標準炭価の点が不明瞭という御指摘がございました。標準炭価がどういう形で表示せられるかは何も私どもは具体的には聞いておりません。生産費を基準にしてその他国際価格あるいは他の燃料などを考えてというふうに法には書いてあるように拝聴いたしております。具体的なことを聞いておりませんので、逆に一番中心になりそうに思われるのが、全国炭価水準の点が多いであろうと思われましたので、その全国炭価水準と、九州、北海道、常磐、山口等で売買せられる値段——かりに売買せられる基準の値段ができまする場合に、全国平均が五千何百カロリーである、それに対して山口の石炭あるいは常磐の石炭が何百カロリーであるから、その比率で、下の方で売られてもいいのではなかろうかというふうな単純な進み方をせられることは間違いであろう、こういう意見を申し述べた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/16
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017・田中角榮
○田中委員長 中崎敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/17
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018・中崎敏
○中崎委員 今回も北海道へ参りまして、関係業者の意見もいろいろ聞いてみたわけでありますが、その中に、政府は中小炭鉱に対してはほとんど何にもやってくれないというふうな意見もありました。そういうふうなことが一つの大きな要素となり、一面大きな炭鉱に対する一連の保護措置に反して、中小炭鉱には今みたいに非常に冷たい扱いがされておるというふうな意見がありました。
そこで私今日のこの石炭界における行き詰まりの現状を見ましたときに、このままではどうにもできぬのじゃないかという気持においては別に他の人と変ったわけではありませんが、ただ問題は、一つにはこうした合理化法という、われわれの立場からいえば、ある意味においては、炭鉱大手筋を擁護するの余りに、中小炭鉱にはいかにも冷酷な仕打ちである、首切りをし会社をつぶすような考え方の法案であるという考え方を持っておるのであります。そこで現在のままにこれを進めていくとすれば、言えかえれば、こうしたラジカルな、急進的な法律によらないで、政府はほんとうに腹を据えて、そうして中小炭鉱についてもう一歩進んだ、指導的助長的な立場に立って、この適当な策を施すとすれば生きる道があるのだというふうな方法があるのかどうか。これは今重油の規制といいますか、これについての意見もありましたが、これについては大勢的にいって、重油を半分に押えつけるとか、あるいは重油の使用を極度に規制するとかいうことはなかなかできないというのが、経済機構の現在の状態ではないかと思うのでありますが、これにある程度の規制を加えるとしても、これに非常に大きな期待を持たないで、そして他の金融的措置あるいは税法上の措置そのほか一連の、たとえば販売機構等に対する相当画期的な、業者の自主的な考え方の上に立って、販売機構をこういうふうに整備すればこうなる、しかもこういうふうなことができるのだという考えがあれば、お聞きしておきたいのであります。これについては長岡さんに一つ聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/18
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019・長岡孝
○長岡参考人 ただいま非常に広範な、中小炭鉱をいかにすればかくのごとき法律案以外のものでも石炭の安定ができるかというようなお話でありました。私どもは、中小炭鉱の経営の一番の困難は金融にあると思うでございます。やはり構想といたしましては、特殊の、石炭金庫のような制度がほしいと思っております。一般の事業運営につきましては、現在やっておりまする方法を踏襲いたしまして、開発資金それから開発の方法等につきましては、みずからそれぞれの責任で計画、執行できると思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/19
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020・中崎敏
○中崎委員 まず金融が一番大きな問題であって、たとえば大企業に対する程度の割合において、中小企業が政府機関の金融並びに一般市中銀行からの金融をかち得るならば、これはある程度の危機は切り抜けられると思うのであります。しかし現在のようないわゆる乱売といいますか、お互いが競って値段をくずすというような態勢のもとにおいては、幾ら掘っても握っても、また金を借りてきても、結果においては行き詰まりが来るのではないかというふうな気もするのでありますが、何といっても一番大きな問題は相互に協力し合って、そうして自主的に販売機構というようなものも確立して、その上に立って、出炭の側についてもまた出炭の制限をやるというような、むしろ供給の側の面の整備が十分に整ったなら、その危機が救い得るのではないかというふうにも私は考えるのであります。その点について、そういう態勢ができるのかできぬのか、そこらの点を一つお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/20
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021・長岡孝
○長岡参考人 生産物を販売いたしまする方法につきましては、ただいま改善方策をいろいろ研究しております。その他経営一般につきましても、各地連合会を持って連絡をいたしまして、みずから立ち行く方策を研究いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/21
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022・田中角榮
○田中委員長 永井勝次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/22
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023・永井勝次郎
○永井委員 矢吹さんにお尋ねいたしたいのであります。炭鉱関係が非常な不況である、その結果として炭鉱地帯の自治体の減収というものは非常に大きなものがあります。一面収入がうんと減って、この法案が施行されれば、首切りが大量に行われて、失業者がどんと出る、しかもこの法案は首切りだけは数字をはっきり、六万人近く首切るということを言っておりますけれども、それの裏づけとなる職場転換なりあるいは失業対策なり、こういったものは、活字では一応書いてありますけれども、内容の具体性は非常にない。そうするとこの法案を施行することによって、炭鉱地帯の市町村は収入がぐんと減る、首切りによって出た失業者はどんとかかえて、そうして生活扶助なり何なり、既往の予算のワクの中でこういう問題を処理していかなければならない、こういうことになると思うのですが、その結果として満足な失業対策がなければ、これはもう非常な社会不安が起ってくる。ほかへ動くといっても、移動するような条件もない、こういうふうに労働者に非常に大きな犠牲をしているとともに、それが所在市町村に集約されるというような、こういう法案に対して市長さんは御賛成であるというような御意見、これはどこに根拠があるのか、これを一つ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/23
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024・矢吹莊司
○矢吹参考人 私は一種の医者でございまして、炭鉱のこういう方面の内部にわたっての研究はございません。従って町村と炭鉱との関係の経済を申し上げたので、炭鉱が不振であれば町村が従って振わない。内容においても困る。失業者についても流れてくるものは主として炭鉱方面の人が多いのだから、その意味において何とかその会社を支えるだけの程度の御支援をしてもらった方が一番私どもの自治体としては仕合せだという意味でもって、失業者の研究や炭鉱の運営関係等についての意見は持っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/24
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025・永井勝次郎
○永井委員 そうしますと、市長さんは所在の炭鉱の安定をはかる。甲なら甲、乙なら乙、こういう炭鉱の二、三の安定は考えているが、そこから出る何万人という失業者なんかの生活上の問題、こういうことは考えていない。それから市の収入が非常に減収になって自治体の運営に非常な支障を来たす、こういう関係もあまり考えていない、こういう御趣旨なのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/25
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026・矢吹莊司
○矢吹参考人 そういう趣旨ではありません。それは違います。とにかく炭鉱の一つの事業をする以上には何千人かの人間を使って生活し得られるだけの事業をしなければならぬ。その事業が不振を来たすとその影響が町村にくるから、どうかその炭鉱が支えられる程度までの御援助をいただきたいという趣旨です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/26
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027・永井勝次郎
○永井委員 それではこの法案に御賛成なのは、つぶさないで支えていくようにしてほしい、こういう前提に立ってこの法案に賛成だという御趣旨なのですか。それならこれは三百三十万トン買い上げて買いつぶすという案なのですから、市長さんの案とは大分違のです。ですからその点は炭鉱地帯の市町村としてはもう少しこの法案についてお考えを願いたいと存じます。
その次に長岡さんにお尋ねしたいと思います。中小炭鉱は、今日のような苦境に至るまでには長い間非常な苦闘が続けられてきたと思うのであります。借金なんかも相当たくさんできておる。それで八十億前後の資金で買い上げられるといたします場合、買い上げを希望する山、それから買い上げ対象になる効率の悪い山、常磐地帯におけるこういうようなところの炭鉱の借金というものは、詳しくはおわかりでないでしょうが、大体大よその見当はついておると思いますので、そういう関係の借金はどのくらいあるか。借金の性質はどういうふうになっているか。たとえば労務賃金の不払い、税金公課の不払いというようなものもありましょうが、最も大きなのは銀行の借金ではないかと想像されるのであります。そこで中小炭鉱の今度の買い上げによって、労務賃金は特別措置によって支払われる。税金公課というものも取られない。そうしますと、これを買い上げてもらって何とか淡い期待を持っていても、銀行がまず優先的にこれを回収する。そうするとこの法案は結果的には中小炭鉱の救済にはならないで、中小炭鉱を通して銀行の救済という間接救済の形ではっきりと出てくるのではないか、こういうふうに思われるのであります。これは決して買いつぶされる中小炭鉱の若干の潤いにならないで、税金を払ったり、銀行への借金払いであったり、一つは買いつぶすことによって大手炭鉱への集約になって、大手の救済になり、今後の経営を楽にする。こういう条件を確立するための地ならしとしてつぶされるのである。こういうふうにお考えにならないか。借金の大よその見当、それから借金の内容、銀行へ回収される実情等おわかりでしたら……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/27
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028・長岡孝
○長岡参考人 御質問の常磐地方の中小炭鉱の借金の額でありますが、金融機関を別にいたしまして公租公課、税金、電気料、労働賃金の未払い、資材代の未払い、さよらな未払いを合計いたしましたものを最近に総計いたしましたものは約三億円ありました。その他に金融機関の借財があるわけであります。比較的九州、北海道に比べまして、何と申しますか、自分の金でやれる限度の事業をやるという傾向がございますので、おそらく割合に少いなという感じをお持ちではないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/28
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029・永井勝次郎
○永井委員 金融機関の銀行関係は、大よその見当でよろしいからどのくらいあるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/29
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030・長岡孝
○長岡参考人 ちょっと申し上げる材料がありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/30
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031・永井勝次郎
○永井委員 大越さんと組合代表のお二方にお尋ねいたしますが、この合理化法案を通過させることによって二割の石炭価格を引き下げるのだ、こういうことを約束しておるわけです。現在は赤字で売っておる。その赤字で売っておる価格からさらに二割を引き下げるというのでありますから、これは大へんな引き下げになるわけであります。こういうことはわれわれ尋常な常識では考えられないことなのであります。そこで将来この法案の実行に伴って、石炭の価格が政府から示されるというような行政措置を通しまして、相当これは炭鉱業界に影響を与える結果になるのではないかと思うのであります。もし二割の炭価引き下げということ、今日約束したことを実行するとするならば、これは炭鉱業者にとっては大きな犠牲であります。またこの法案の審議に当っては二割引き下げるのだということを口実にして、この法案を通し、一千二百九十億の財政技融資というものを炭鉱に行わせる。こういう一つの欺瞞として二割を下げるのだといって、実行に当っては実際に炭鉱業者の経営に影響を与えないような、二割引き上げないで、やむを得ないのだということで、黒字の出るような安定した価格を示すということなれば、この審議に当って二割を引き下げたということはうそを言ったということになる。二割がほんとうに下るのか。二割を下げるというのは、ただ一千二百九十億の金を引き出すところのえさにしているのであるかどうか、こういう問題がこの法案のポイントだとわれわれは考えるので、二割の引き下げということは可能性があるのかどうか。実際は引き下らぬのじゃないかとわれわれは考えているのですが、その点について大越さんと労組代表のお二人から御意見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/31
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032・大越新
○大越参考人 お答えいたします。私は炭鉱に職を奉じましたのは常磐炭田の常磐炭礦でありまして、九州、北海道はまだ一回ずつ視察した程度でございますので、他地区のほんとうの事情まで突っ込んではよく承知いたしませんが、しかしあの法案にもございますように、今の従業員一人当り月十二トン四、五分ですか、そういう個人の能率でございますね、これがあれに盛られておるように、三十二年、三十三年になりまして、十六トンとか十八トンというようなことになりますれば、これは二割は下るとは思いますが、しかし実際現場員の立場になってみますと、なるほ日本の炭鉱の能率は皆さん御承知のようにイギリスとかアメリカに比べてまことに微々たるものである、しかしこれもいわゆる炭鉱の石炭の置かれている自然的条件がまことに悪い条件にあるということでございますので、これがそこまで持っていくということにはよほど——先般来お話がありましたが、大手の縦坑のみならず、中小にしましても、相当外国の機械を輸入するとか何とかして合理化をやらなければだめだ、結局それには相当の資金を入れてもらってやらなければだめなんであります。それができて、その上に労務者の数が減るということができますれば、二割やそこらのあれはできるのじゃないかと思いますが、最初に申し上げましたように、失業対策の問題と合理化に投ずる資金の裏づけといいますか、そういうことがほんとうにできなければあれは実現し得ない、こう思うのでございます。
〔委員長退席、永井委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/32
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033・齋藤茂雄
○齋藤参考人 コスト二割下げるという問題でありまするが、この問題については、現在の常磐地方の炭鉱の場合には非常に老朽炭鉱が多いし、また非常に中小でございますので、設備もそんなにございません。現在平均いたしますところは、能率は大体九トンが平均ではなかろうか、個人当り十トンということになるといい炭鉱という評価がなされると思います。ここで二割のコストを下げるという問題でありますが、しからばその二割のコストが何によって下るかという問題が、私が先ほど政府案について指摘をいたしましたように、その近代化いわゆる合理化の方策の問題が非常に問題になるのではないか、よしんばそれが完全にそういう面で近代化され、合理化されたといたしましても、今日の状態では全部の炭鉱のほとんどが赤字を出しております。その赤字を埋めてさらにここで二割の引き下げをするということになれば、これを総体的に見まして相当な引き下げの額になると思います。そういう形が、単に現在の労務者の一人当りの能率を引き上げて、いわゆるコストの軽減をはかるということは、今日の状態ではもう労働力の限界にきておるのではないか、従って今のような政府の考え方を前提として二割を引き下げるということは、私は非常に不可能だというように考えておるわけであります。そういうことを強行する中で労務者の首切りが出てくる、あるいはその中で賃金の切り下げという形が現実的に生まれてくる可能性があると思うのであります。一つの炭鉱の例をあげて申し上げますならば、大体三千七円というのが——現在のコストであるという炭鉱がございます。三千七円ではどうしてもやれない、二千七百円でなければやれないということで問題があります。その二千七百円にするためにどうするかということでいろいろ話を聞いてみますると、その三百円の引き下げはほとんどが労務賃金の二〇%切り下げという形でなければ出ないというのが、現実に炭鉱の置かれておる実態だと思うのです。従って先ほどの質問でございますけれども、私はそういうことは口では簡単に言えると思いますけれども、現状の炭鉱の実態の上から考えまして不可能ではないか、ただここで炭鉱の地質の状態がアメリカ、イギリスのように、ああいう炭鉱の地質の状態であれば問題は別でありましょうけれども、今の日本の炭鉱の地質の問題からいって、あのような形で能率を引き上げてそれで完全に消化できるという状態は、相当思い切ったあらゆる施策を施した上でなければ、こういう判断は不可能ではないかというように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/33
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034・渡邊家次
○渡邊参考人 まず二割の炭価を引き下げるということは、この法案を骨子として考えた内容であるというようにも考えられるわけです。この法案の中から二割の炭価を引き下げるということになると、結論的に申しますと、これは非常に困難である。このように考えられるわけであります。現在の炭鉱の大体の生産原価は、この法案によると大手あるいは大手についていける中小が標準になる、買い上げられた後に、五年間において幾ら下るか、こういうのが下るか上るかという問題のポイントになる。こういうふうに考えるわけであります。そうなって参りますと現在の石炭の生産原価というものは、大体三千七、八百円ぐらいだろうというふうに考えております。従ってこれを二割下げるということになりますと、二千七、八百円ないし三千円ということになりますが、現在の坑内における企業の実態を申し上げますと、大体生産原価というものは、物品費、労務費あるいは経費、こういう内容に組まれておるわけでありますけれども、大体人件費が五〇%、そのほかの経費が五〇%、こういう内容で、トン当りが三千七、八百円、従いまして一トンに加えられておる人件費というものは大体千七、八百円くらいであろう、こういうふうになるわけでありますけれども、そうなって参りますと現在の坑内の実態というものは物品費であろうが経費であろうが、いわゆる保安にこれ以上節約するならば重大なる災害が起きる、これ以上軽減はでき得ない、たとえば一枚のザラ紙を使うにいたしましても、表を使ったら裏を使う、こういうことをやっておるのが大体現在の企業の実態であります。従って現在の状態はぎりぎりにしぼった生産原価である、こういうことになっておりますので、さらに現在の社会情勢においていかに合理化しようとも——この合理化法案の内容においては現在の十二・四トンを十八・四トンにするのだ、こういう内容でありますけれども、これをいかに合理化しようとも、五年間に十八・四トンということは現在の機械設備においては困難であります。そうなって参りますと、八百円の値下げということは不可能である、こういうふうに私ども考えておるわけであります。結論的に申し上げますと、現在全然余裕のない生産原価の方式をとっておる、従って生産原価において切り詰める余裕がない、さらにそれ以上炭価を下げるということになると、能率以外にない、しかもその能率は先ほど前者の方も申されましたように、坑内の非常に悪条件の中で、あるいは機械設備といってもそんなに現在以上、倍出すとかあるいは三倍出す機械というものは、現在のところないわけであります。しかもその機械を消化するということになると、機械を入れて訓練してこれを消化させる、そういうことになれば一年や二年ではできない、こういうことになりますので、生産原価を二割引き下げるということはおそらく不可能である、あえてやろうとすれば五〇%かかる人件費を削る、人件費を削るということは人員に余剰を出す、そのことによって五〇%の率を四〇%くらいの人件費にして、その中で合理化をはかって値下げを行う、こういうことになるわけでありまして、それ以外に炭価を下げるという方法は今のところない、このように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/34
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035・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 大越さんでも長岡さんでもよろしゅうございます。今お聞きのように合理化によって石炭の生産費を政府の目的とするように二割下げることは不可能だということを言われておる。私もそうじゃなかろうかと思っておるのですが、ところがこの合理化に非常に片手落ちがあるということを多分お感じになっておると思う。それから生産費を下げる方法が一つあると思うが、そういう運動をおやりになったかどうかということをお聞きします。たとえばさっきもお話しになりました金利の問題、八分中一分五厘下げるだけで、三百万トン買付するのに、その金利が四十億円出てくる。もしこれを全体のトン数に割り当てるならば、御存じのように四百億幾らも出てくるということになるわけです。一応目の子算にはなるけれども……。金利は政府が行政措置をやり得ることなんだ。炭価を下げるのに合理化だけで中小炭鉱やら労働者だけに犠牲を負わして二割下げるというような片手落ちをやらないで、政府が行政措置をやれる金利を、一分五厘下げるならば、四百億から金利が下ってくるというのだが、なぜこれをやらぬのだ。それからたとえば鉄道の運賃、こういうものも政府が行政措置をやろうと患えばやれる。ところが国鉄は逆に値上げをしようとしておる。電気料金は、これも政府が行政措置をやれる。ところが去年の夏よりことしは二割も上げておる、こういうように政府が行政措置でやれる鉄道の運賃なり電気料金なり、金利なり、こういうものを相当値下げしていけば、当然炭価の生産費は下る。そういうことをあなた方は、政府は片手落ちするかということについて、強い意思表示なり運動なりをされたことがあるかどうかということをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/35
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036・大越新
○大越参考人 ただいまの伊藤さんのお話でございますが、これは御案内のようにわれわれ大手も石炭協会を持っております。これは伊藤さんの方にもきっと協会の方からいろいろ金利値下げの問題なんかもお願いに上っておることと思います。金利の問題は今日まで何回となく値下げを陳情しておるわけなんでございますが、なかなかわれわれ考えているような線に下げていただけない。最近どうやら金利の値下げというようなことが出てきましたのですが、それはこの法案によって今度買い取りの資金の方に回すといったことに変ってきたようであります。
それから電力料金の問題でございますが、これもわれわれ石炭業者としてはまことに重大な問題です。ことに常盤地区におきましては、先ほど私から申し上げましたように、非常に坑内、水が多いのでございまして、いわゆる保安電力なるものが、九州、北海道と比べますと比較にならぬ。排水通気電力が大体七四、五%くらいまでなるわけです。従いまして生産費に占める電力代というものが非常に大きくなりますので、これも機会あるごとに陳情しておるわけでございますが、どうもなかなかわれわれ考えておるようには参らない。それから鉄道の運賃問題でございますが、これは今のところではガス発生とかあるいは製鉄用とかいうようなハイ・カロリーの石炭もまた宇部産も、われわれ常磐地区で生産されている比較的低品位の石炭も運賃は同じことでございます。そういう面になりますと、生まれつき悪いので、どうもわれわれが悪いといわれても困る、比較的低品位のものを持ってきて競争するとなると、そういう面でも困る。これはそういう面で、それぞれの道でわれわれずいぶん運動を続けてきたわけでございます。一つ御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/36
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037・長岡孝
○長岡参考人 石炭鉱業の負担しております金利につきましては、日本石炭協会から数次発表もいたしておりまするし、政府に数次その低減方をお願いしておるのであります。中小炭鉱におきましても同様であります。これは少し長い期間運動を続け過ぎたために、少しく今御批判のように何をしておるのだというようなお感じがあるのかもしれませんが、昭和二十五年の自売開始以来、それまでに炭鉱に負担のかかっておりまする赤字の解消のためにもまたその後の段階の収拾のためにも、長く、強烈にわれわれとしてはやりましたつもりでありますが、あまり期間が長かったために感じがにぶいようにお考えであるかもしれませんが、今後とも、今度の合理化法のためにお使いになる建前で、国の出しておられる金を、六分五厘にするというところよりもさらにできますならば造船等にとっておられますような、利子の補給と申しますか、あるいは当分とらないといいますか、さような方法で三分五厘くらいまでの国家の金の低金利を期待いたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/37
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038・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 いま一点だけ。多分、私が今申した政府が行政措置をやれる三つの重大な問題については、あなた方御関心をお持ちであろうことは私は間違いなかろうと思う。ところが、どんな運動をおやりになったかしらないけれども、この大事な法案を作るに当って、それを説明するに当って、政府はこれを毛頭考えておりません。たとえば昨日私がその問題で政府側に質問をした、これは名前を言ってもいいが、名前だけは今日は言わぬが、とにかく政府の最高責任者です。これが、今の鉄道の問題とか電気の問題とかそんなものは小さな問題だから考えておらぬ、それよりかも合理化によってとにかく炭価を下げさすということが一番大きな問題だ、こういうことを言う。だから、あなた方運動をおやりになったかしらぬが、政府は考えておらぬ。この法案はもう幾日もたたないうちに、二、三日くらいのうちに問題になってくる。自由党と民主党はこれを上げようとやっておられる、あなた方のお考えを無視して上げようとお考えになっておられる。しっかり一つ腹をきめてこの二、三日のうちにおやりにならぬと上げてしまわれますよ。この点私はあなたに御注意申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/38
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039・永井勝次郎
○永井委員長代理 内田常雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/39
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040・内田常雄
○内田委員 私は自由党の内田でございますけれども、現地の公聴会に参加する機会がありませんでしたが、一点だけをお尋ねいたしたいのであります。私はこの法律案によりまする合理化措置が成立するものとしての前提で申し上げますが、この法律案によりますと、標準炭価を政府がきめる、そのきめ方は石炭の生産費を基準としてきめる、こういう原則になっておるようでございまして、この標準炭価に対して鉱業権者または租鉱権者の石炭の販売価格が著しく高い場合には販売価格の引き下げを勧告することができる、こういうことになっておる。これは国家が相当の資金をつぎ込むのですから標準炭価をきめることは大義名分上やむを得ないこと、あるいはけっこうなことだと思いますけれども、私は法文を読んでみましてその点に心配があるので、経営者あるいは組合の方はこの点はどういうふうにお考えになっておるかということをお尋ねしたいと思います。
石炭の炭種というものは非常にたくさんありまして、有煙炭もあれば無煙炭もある、工業用炭もあれば家庭用炭もある、工業用炭の中には燃料炭もあればガス発生炭もあるというようなことで、非常に品種といいますか銘柄が多いので、これはむしろ私どもこれから政府になおただしたいのでありますが、どういう形で標準炭価を作るのか、標準炭価は各銘柄ごとに作るのか、あるいは標準炭質に応じて大ざっぱに数本ないし、一本の標準炭価を作るのか、どちらかの標準炭価を作ると思いますが、標準炭価と言われる以上は、おそらく石炭の銘柄数百、数千に対して数百本、数千本の標準を作るのではなくて、一本か数本の標準炭価を作ると思います。ところが石炭の市価というものはカロリーなりあるいは生産費なりにかかわりなく、その品位、用途によっておのずから市価の構成がされてきておる。さような際にこの法律案の第六十条で標準炭価に比して市価が高いということで単純に勧告をするようなことになりますと、石炭の価格構成というものを非常に混乱させるのじゃないかということの私は心配を持っておるのでありますが、おそらくこの点に関しましては先般各地で行われました公聴会で意見が述べられたと思いますが、どういうふうにお考えになっているか、どういうことを希望されておるのか、あるいは場合によってはこの辺について、この法律案を直さなければならぬのじゃないかと考えますから、端的に一つ御意見を承わりたい、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/40
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041・大越新
○大越参考人 標準炭価につきましては、この法案が浮かび出てきたときから、すでに石炭業界の皆様方が非常な関心を持っておるわけでございます。終戦以来の統制時代のように、ああしたさまざまな炭種のそれぞれのカロリーによって幾段階もこまかに炭価をきめられるということは、これは絶対だめだ。今お話のようにわれわれも標準炭価なるものはどこをどのように押えてきめられるのか、これもわれわれはっきりいたしておりませんので、考え方としては以前のような統制時代のきめ方ではだめだという考えを持っておるわけですが、ことに今の生産原価からとはいいますが、これもおそらく常磐産、宇部産は御案内のように石炭の質が悪い。といって生産費が特段に安く上るような石炭の賦存状態ではございません。先ほど申し上げましたように非常に坑内湧水も多い。あるいは宇部産にしましても、まかり間違えば海水も浸入するというような状態に置かれておるわけでございます。従いましてそういう悪条件のところにある石炭企業は、同じ合理化を進めるにいたしましても非常に難易度が違うわけでございます。そういう点をよく勘案されて、この標準炭価なるものをあまりこまかくしないで、マーケット・プライスということを大ざっぱにきめていただきたいというのと、生産原価面につきましても今申し上げましたような坑内の事情が非常に災害を伴うような場所にある場合には、やはりその災害に対する補償の面も、そのときの生産費だけでなしに十分考慮に入れて原価なるものを考えていただきたい、こういう二点を強く考えておるわけでございます。
〔永井委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/41
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042・内田常雄
○内田委員 私の質問の仕方が悪かったと思いますが、この法律案の五十九条によりますれば、生産原価を基礎として標準炭価をきめとるあります。従ってカロリーは低くても賦存状況が悪いために一トンを掘り出すための人手がよけいかかるとか、あるいは山元のコストが高いものは、おそらくその点な考慮して政府もおきめになると思いますし、また経常費ばかりでなく、災害復旧というそういう特別の出費等も生産原価の要素に入ってくると思いますが、そういうことよりも石炭というものはその品位なり用途によって——たとえば生産原価が三千五百円でありましても、それを工業用炭として向ける場合には二千五百円でなければ売れない。ところがこれを家庭用炭といいますか、暖厨房用などに回すときには五千円でも取引されておる。ことに木材資源の利用合理化に関する方策につきまして、政府やわれわれ議員におきましてもいろいろ試案がありまして、できるだけ木材資源を愛護するという意味において木質の燃料を鉱物質の燃料に置きかえるという方向にもいっておりますために、そういうことも、反映して、暖厨房用等の石炭は、生産原価よりも高い値段で市場においては取引されておるという実情にある。これは原料炭についても同じようなことが言えると思いますが、そういう場合に生産原価主義で標準炭価をきめるということになっておるために用途によって高い値段ができておるのはけしからぬといいますか、六十条の趣旨に反するということで引き下げの勧告命令が出るようなことがありはしないかということを私はあなた方のために心配をしておるのです。そういう懸念は皆さん方の方にはないものであるか。今大越さんがおっしゃるように十分生産原価を考慮さえしてくれれば、用途により市場で形成されている価格は心配しなくてもいい、それは引き下げられてもいいのか、さようなことをお聞きしておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/42
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043・大越新
○大越参考人 それは内田先生のおっしゃる通りにハウス・コールということになると、カロリーだけで値段がきめられる、あるいは生産原価だけで値段がきめられるということは、われわれ業者としては絶対に反対であります。やはりハウス・コールならハウス・コールの用途の価格できめていただくというのがほんとうであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/43
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044・田中角榮
○田中委員長 時間がありませんから、多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/44
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045・多賀谷真稔
○多賀谷委員 業者の方にお尋ねいたしますが、ことに中小炭鉱の代表の方にお願いいたしたいと思いますが、需給のアンバランスを大きく引き起すものは電力用炭であります。ことに中小炭鉱が電力用炭として納めておりますのは、直接納めておるのが二五%程度、それから販売業者を通じて納めておるのが三〇%程度であります。国鉄に比べますと、電力については中小炭鉱とかなり多くの取引をしておると思うのであります。ところが御存じのように電力は豊水と渇水とでは非常に石炭の需要が違う。豊水が一割になりますと、電力用炭で二百数十万トンの差が出てくる。だんだんそれが多くなればなるほどその差は著しくなるわけです。これに対してわれわれが政府に対して一体豊渇水による処理はどういうように処理するのか。これを全部炭鉱業者に負わせることは過重ではないかというように話しましたところが、政府はその点についてはどうもお手上げだという答弁をいたされました。電力用炭の豊水による犠牲は、全部炭鉱業者が背負っておる。一方においては電気会社においては、渇水準備金百数十億も積み立てられておる。こういう問題についてどういうようにお考えであるのか、この問題はまた制度的にどういうように救済をされたらいいとお考えであるかということを第一点としてお尋ねいたしたい。
続いて第二点は、今後合理化は、工事が進捗いたしますに従って大手炭鉱と中小炭鉱の優劣が激しくなると思うのであります。今は必ずしもコストは中小の方が高いというわけではありません。現実の問題は、あるいは中小の低いところも多いと思いますが、今後合理化工事が進捗するにつれまして、自然条件の優劣によって、ほとんどその経営の良否が左右されます関係上、私はかなりコストについても差が出てくると思います。こういう問題については、どういうように将来の問題として中小炭鉱ではお考えになっておるか。
それから第三点といたしましては、よく中小販売路がない、こういうことを聞いております。それにつきましては、何か一つの販売機構を作って、一緒に協同的におやりになったらどうかということをわれわれ始終考え、政府としてもいろいろあっせんしておるけれども、どうもまだ一本になるような機運になっていないというのは、どういう点に隘路があるのか、また協同的な販売に対しては考えておられないのかどうか、この三点についてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/45
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046・長岡孝
○長岡参考人 第一は、電力用炭の豊渇水による影響をこのままにしておいてよろしいかという御質問のようでございましたが、おっしゃいます通り、中小側の最近数年間における電力事業者用炭の納入実績は、かなり鉄道における大手中小の比率よりも多いところにおります。従って具体的に関西電力、九州電力、東京電力あたりの大きな消費者に対する接触といいますか、実際上の関係も深くなっておりますので、現在におきましては、かなり無理をいたしましても、ほとんど東京電力のごときはその貯炭場の全能力三十数万トンになりまするまで、比較的その豊水、渇水の影響の少いような平均のとり方をしてもらっております。
御質問の、将来について何か制度を考えておるかどうかという点、あるいはどういう点を政府に要望しておるかというような点につきましては、具体的にはっきりは申し上げられませんけれども、将来とも何かの方法で電気事業者に平均してとってもらわなければならないということを確信いたしております。
第二の、合理化計画の進むに従って、中小の仕上りも必ずしも天然条件などに支配せられて安きを望めないのではないであろうかという御心配は、まことにごもっともでございます。この方面につきましては、やはり運搬系統の単純化、やり方は違いましても機械化、それから作業方法の改善等に、金だけでなく経営上あるいは技術上の知識の拡充を必要といたしまするので、自分らの間におきまして極力負けないように努力をいたすつもりでおります。
第三点はちょっと失礼いたしましたが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/46
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047・多賀谷真稔
○多賀谷委員 販売……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/47
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048・長岡孝
○長岡参考人 販売機構につきましてどういうふうに考えておるかという御質問でございました。これは先ほどほかのお方の御質問の際にちょっと申し述べたように記憶いたしておりまするが、ただいま研究中でございます。従来とも各地に中小炭鉱の石炭を専門に販売する会社はあるのでございますけれども、問題はやはり資金にあると思うのであります。これが生産をいたしまする者の要望と販売を担当しまする者の要望とが必ずしも一致いたしませんでしたために、的確に生産販売が固まらないというふうな感じがいたしております。これをいかに乗り切るかを今研究いたしている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/48
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049・多賀谷真稔
○多賀谷委員 市町村の代表の方に質問いたしますが、市町村は非常に炭鉱の不況によって、単に炭鉱の従業員だけでなくて、その商店あるいは関連産業全部失業状態になっておると思うのであります。そこで市町村財政は非常に苦しいと思いますが、そういう状態の中で、たとえば今後多くの失業者が出る。そうすると国の方では失対事業をやらないか、ワクはとってある、こういう話が出てくる。ところが市町村の財政では、その二分の一の労務費の負担ができない。あるいは資材費の負担ができない。それだけでなくて、単に労務費あるいは資材費の負担はできるにしても、今度はその仕事場がない。すなわち土地なら土地を買うにしても用地の買収費がない、こういう状態で、せっかく政府が予算措置をしても、市町村は現在の地方財政では受け入れられないのではなかろうか、こういうふうに炭鉱所在の市町村の財政を私は考えるわけですが、一体それに対してどういうようにお考えであるかお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/49
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050・矢吹莊司
○矢吹参考人 町村といたしましては、そうしたような失業者に対しましては、できるだけ考えをいたしまして、援助しておりますが、現在のところでは、そろそろ経済的に行き詰まって参りまして、町村の関係のある小さい工事をなるべく避けたい、政府がもくろんでおるところの大きな事業に振り向けたいというような考えを持っております。町村の負担によるような事業でなく、政府の大きな事業に振り向けたいというような希望を持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/50
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051・多賀谷真稔
○多賀谷委員 そういたしますと、結局一般の失業対策では、もう炭鉱地帯の町村の財政の逼迫から、失業者は救済できない。だから国営で、全額国庫負担のような失業対策を起してもらいたい、こういうようなお話ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/51
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052・矢吹莊司
○矢吹参考人 もちろんそういうようになっておりますが、私の地方では、石炭鉱業によるところの被害も相当ございまして、それが政府の調査の結果、今後拡大するおそれがあるので、これを食いとめなければならぬというような工事もたくさんございますので、その方面に重点を置いてもらいたいと思っておるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/52
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053・多賀谷真稔
○多賀谷委員 鉱害賠償ですね。——わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/53
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054・田中角榮
○田中委員長 田中武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/54
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055・田中武夫
○田中(武)委員 時間がありませんので、簡単にお尋ねいたしたいと思います。まず長岡参考人にお伺いいたしますが、参考人は先ほど、本法案には賛成である、しかし中小鉱業の立場をもう少し考えてもらいたい、こういうことであったと思うのですが、この法案は、中小企業を買い取ってつぶそう、こういうことでありますので、この法案の中において考える限り、そのつぶし方において手心を加えてくれという考えか、それとも具体的にこの法案審議の中において、どのような御希望を持っておられるか、承わりたいと思うのです。
それから矢吹参考人にお伺いいたしたいのですが、先ほどからの質問にも関連があるかと思いますが、参考人も原則として原案には賛成のようであります。しかしながら常磐地方には失業者が多く出て困っておる。ことに地方財政も逼迫しておるのに、日雇い労働者等の要求もあって困るからお考え願いたい、こういうことであったと思うのですが、それではこの法案の中において、この法案を審議するに当って、どのような点を具体的に考えてもらいたいという御希望なのか、承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/55
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056・長岡孝
○長岡参考人 ただいまこの法案の炭鉱整備の点について、どういうことを中小側は希望しておるかという点が第一の御質問のように承わったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/56
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057・田中武夫
○田中(武)委員 そうじゃないのですよ。中小企業のことも考えてもらいたい。原案には賛成しておられて、中小鉱業のことを考えてもらいたい、こういう御意見のように伺ったので、この原案は買い取ってつぶすのだ、それならどういうことを希望しておられるのか、聞かしてくれ、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/57
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058・長岡孝
○長岡参考人 買い取ってつぶすことにつきまして、反対の意見を述べたのではもちろんございませんから、買い取り方あるいは買い取り方法についての中小の希望と、こういう点でございましょうか。これは現在までに政府その他にこまかい点につきましてはいろいろの希望を申し出て相当程度いれられてきているように考えております。そこで先ほど申しましたように、整備事業団の事業の財源の点と租鉱権者の問題、これだけを本日は申し述べた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/58
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059・矢吹莊司
○矢吹参考人 私意見を述べる前に申し上げた通り、昨日突然電報に接して参ったので、何らの用意もなかった、従ってその法案等においても見ておかなかったということになりますので、今直ちに回答することはできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/59
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060・田中角榮
○田中委員長 これをもって参考人各位の御意見に対する質問を終ります。参考人の方々には御多用中のところ、長時間にわたり率直なる御意見を拝聴し、本案の審査に多大の参考となりましたことを厚く御礼申し上げます。
午前の会議はこの程度にとどめ午後二時まで休憩いたしますが、石炭鉱業合理化臨時措置法案及び重油ボイラーの設置の制限等に関する法案、この二法案に対する質疑所要時間は、七日、八日の理事会で各党より要求せられ決定された通り、民主党六十分、自由党百八十分、社会党両派各百八十分であります。これを石炭に三百九十分、重油に二百十分と分けたいと考えております。右によりますと石炭については民主党三十分、自由党百二十分、社会党両派各百二十分となります。先ほど各党理事に御相談して、本日午後及び明二十一日午前午後の会議で質疑を終了いたしたいと考えます。各党の質疑者は御連絡の上へ法案の審議に御協力を願います。この際政府委員諸君も、ただいまの発言の通りでありますから、ふるって御出席を願います。
これにて休憩します。
午後零時五十三分休憩
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午後二時四十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/60
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061・山手滿男
○山手委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。
石炭鉱業合理化臨時措置法案について質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、順次これを許します。片島港君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/61
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062・片島港
○片島委員 通産大臣にお尋ねいたします。この前のわが党の多賀谷君の質問のときに、豊渇水などによるところの電力用石炭の調節ということは非常に困難であって、こういう自然的な現象については全く手がない、こういうようなことを言っておられました。私は、そういう自然現象に対しても、政府当局としては当然何らかの手を打つことを考えておらなければならないのじゃないかと思う。そうでないならば、たとえば炭価の引き下げというようなことをここに考えてみましても、炭価を引き下げるためには、拡大された需要に見合うところの増産、あるいは、物価はもうこれ以上上らないとか、賃金はこれでとめておくとか、あるいは資金上特別の優偶をしてやる、あるいは税法上の特別の優偶をしてやるというような、いろいろな条件が完成をせられて初めて増産ということも、コストの引き下げということも可能であると思うのであります。こういう、私が今申し上げました、指で数え切れないくらいの諸条件というのは、どれ一つとして、これは確定をしたものがない。わずか半年、一年くらいの間に、二十九年度における石炭の需要を見ましても、四千八百万トン、いや四千六百万トン、いや四千三百、四千百五十だというふうに、くるくる変っておる。それを五年も六年も先のことを考えて、賃金の問題、物価据え置きの問題、資金上の問題税法上の問題等、これらの人為的の条件に果して確信が持てるかどうか。一カ年間においても非常に見込み違いをしておるのでありますが、自然条件においては手がないと言われたが、私が今読み上げた諸条件については、大臣は確信を持っておられるのかどうか、この点を大臣にお伺いをしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/62
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063・石橋湛山
○石橋国務大臣 ただいまあげられましたいろいろの条件、それは絶対に動かさないというのじゃなくて、今度の計算の基礎は、賃金ベースは現在のまま、物価も上らないもの、こう一応計算しておるのでありまして、むろん今後の経済界の動きによりまして、物価全体が上る場合には、これはまた別のことでありまして、これは動いていいと思うのであります。相当機動的に動けるものと考えております。たださいぜんお話しになりました電力——水の豊水、渇水は、これは豊水になるか渇水になるかということは、長年の計算によって今やっております。電力の方でやっております渇水積立金などの基礎になります水量は、何か世界的の基準があるのだそうでありまして、相当長い期間の平水状態をとって、それを基準にして計算するものであります。従って最近のように豊水になりますと少し狂って参りまして、たとえば三十年度でも、電力の方の計画では約八十万トンほど石炭の消費を見ておったのが、実際の需要は二十五万トン程度でとどまるというふうな狂いが生じてくるのであります。これは計算上の狂いでありますから、実はこれはいたし方がないのであります。しかしこれについてはまたむろんそういう狂いが始終起っているというわけではありませんで、なお電力の方の計算につきましても十分科学的に検討いたしまして、できるだけ狂いの少いようにする、またほかの需要を喚起する、あるいは現在でもなるべく電力の方に使うところの石炭によって石炭界に悪影響を及ぼさないように、たとい当面においては石炭が要りませんでも、電力会社の購入する石炭の量は相当ふやさせて調節をするというようなことをいたしておりますから今後もやはりそれと同じような方法で、できるだけ需給の調整をはかっていく、かような考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/63
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064・片島港
○片島委員 この自然的な現象については、これは大臣もなかなか予見ができないようなことが多いのでありますが、私が先ほど申し上げましたような条件というのは政府の施策次第によってどうにでもなるものであります。しかしながら、この条件が一つ狂えばこれは大きな破綻を来たしてしまいます。あらゆる計画がくずれてしまう。私は現在のいわゆる資本主義政策のもとにおいて、これをどれも狂わせないようにやっていくということは、不可能ではないかと思う。炭価の引き下げの問題につきましても、先ほどから参考人に、これは業者側にも労働組合側にも聞きましたけれども、きわめて自信がないようであります。でありまするから、やるとすれば、いろいろ変ってくればそれに従うということでなくて、政府としては変らせないという強い決意のないことには、私はこの問題は完成しないのではないか。そこで私は大臣の決意を聞いたわけであります。この問題は重要な問題でありますから、私はいろいろな資料をもってさらにあとでまた質問をしたいと思います。
さらに進みまして、標準炭価の問題でありますが、標準炭価を決定して公表せられる場合に、よほど実態をつかんでおられないことには、個々の炭鉱における生産コストというものをよほどしっかりつかんでおらなければ、標準炭価というものは決定できないのでありますが、今日までいろいろな条件のもとに置かれておる炭鉱の生産コストというものを綿密に通産当局としては調査せられたことがあるかどうか、その点をお聞きをします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/64
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065・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これはわれわれの行政をやりますためにも非常にこういったコストの調査ということが必要でございまして、これは価格統制をやっておりました時代に原価をとる取り方というものが大体きまっておりましたので、そのやり方で出してもらうということにいたしております。大手炭鉱につきましてはこれは集まっております。中小炭鉱につきましても各出先当局を通じてできるだけ集めるようにしておりますが、ただこれは全部について集めるということは困難でございます。しかし中小炭鉱のうちでもそれぞれの型と申しますか、業態によってその代表となるようなもので適当な報告の能力のあるものに、できるだけ出してもらうようにやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/65
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066・片島港
○片島委員 この前からのいろいろな御説明によりますと、標準炭価というものは何らの拘束力もないものである、ただ政府が公表するだけだ、こういうようなことでありましたが、そういたしますと、炭鉱の開さくその他の機械化などによって非常な莫大なる投融資が行われて、これが減価償却なども当然見ていかなければならないということになりますと、特にこの政府のお世話になった大きな独占企業というものは、炭価をきめる場合に、拘束力のない標準炭価というものにはそう従う必要はないのでありますから、これがむしろ最低炭価というようなことになって、政府としてはこれをうまく規制をしていくということが困難になりはしないかと思うのでありますが、標準炭価のきき目というものについて一つ御答弁をお願いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/66
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067・石橋湛山
○石橋国務大臣 もしこまかいことが必要ならば石炭局長から申し上げさせますが、大体は標準炭価を作りまして、それよりも上る場合と下る場合とあるわけでありますが、もしここにありますように、標準炭価より著しく上って、全体の上から申しまして経済的によろしくないと見られる場合には、これは一応勧告するわけであります。しかしお話のように勧告でありますから、言うことを聞かなければそれまでだというわけでありますが、これを避ける方法、きめ手は政府として持っておるわけであります。というのは、たとえばそのときには重油を幾らかよけいに輸入する、あるいは外国炭を入れるというきめ手はありますから、そしてまた業者も行政府にそういう処置をされるようなことはむろん好みませんし、また相当協力をしてくれることと思いますから、十分この標準炭価というものは有効であると思います。下る場合はむろんそれと反対に生産制限を強化するということにならざるを得ないわけであります。こういうことで標準炭価というものは相当有効だと私は確信しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/67
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068・片島港
○片島委員 下る場合には生産制限をやる、また上る場合は重油を入れる。品物が足らなければ値段が高くなる、余ってくれば安くなるのであります。政府はとうていわれわれが考えた場合に手の届きそうもないような目標を掲げて、需要がこのくらいある、この需要というものは私たちから考えた場合には、これだけ伸びるかどうかということに何ぼそろばんをはじいてみても自信がない。そういう大きな高い目標に需要というものを、または増産というものを考えておるならば、当然これは相当安くしなければそれだけの需要まで達することができない。安くなるようだったら生産制限をするということになると、それだけの増産ができない。こういうジレンマに陥って、おそらく政府が目標としておるような増産と引き下げというものがお互いが制約をせられるようなことになるのではないかと考えるのでありますが、この関係はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/68
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069・石橋湛山
○石橋国務大臣 長期計画としてはお話のようなことにならぬと思います。日本の経済が今後どこまでいくかというわれわれの決意と、また日本の環境にもよりますが、現在考えておる石炭需要は、エネルギーの全体の使用量から申しますと、現在私どもが考えておるエネルギーがこれだけではむしろ足りない方にいくのではないか。現に専門家の中でも足りないという説をなかなかやっている人もあります。私もこれは非常な内輪の計算であると思いますから、三十五年度において石炭の国内の生産の五千万程度使えないということでは困るのでありまして、これは必ずそれだけの需要は起すようにわれわれは努めねばならぬし、また起ると思っております。ですから、長期のそういう点からいうと、御心配になるような生産制限をこの上しなければならぬということはないと思います。先ほど申しましたのは一時的のマーケットの関係です。何かの事情でもって急に石炭の価格が上るとか、あるいは下る、こういう一時的の現象として起った場合の対策でございます。そのときにはこれはやむを得ませんから勧告をして、なお効果がなければ増産をするなりあるいは外炭を入れるなりあるいは重油を入れるなりして値を下げる。これは一時的の問題でありまして、長い目で見ればこの計画通りになる。かように確信しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/69
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070・片島港
○片島委員 炭鉱の買い上げをやる場合に、この法律によりますと、申し入れと勧告という二つになっておるのであります。申し入れがなければもちろんやらない。しかし申し入れがなくても勧告という手があります。勧告というのは非常に重要な意義を持っておるものであって、結局強制というような形になってくるのではなかろうか。これはなかなかおどし文句にいいのでありまして、お前たちは一生懸命やらないと勧告がくるぞ、こういうことをやられますと、勧告がくるということになれば一カ月分の香典料で首になるから、勧告が来ぬように一生懸命がんばらなければいかぬということで、自然そのしわ寄せが労働強化というような形になってくる。この勧告がくるということは、政府がこれをやるだけの決意がある、必ずやるというのはすでに御発表の通り三百三十ばかりの炭鉱について買い上げ対象を考えておられるし、買い上げ価格についてもすでに御説明になっておりますし、また全体の買い上げにどれだけの経費がかかるかということもちゃんと計算をしておられるということになりますと、申し入れと勧告というこの二つを区分けして——まだ皆さんにははっきりしておるかどうかわかりませんが、申し入れと勧告を合計した三百三十炭鉱というものについてはすでにリストができておるはずである。リストができておらなかったならば、三百三十でございます、トン当りは幾らでございます、所要経費は幾らでございますということは言えないはずである。そうしてその三百三十炭鉱のうち、おそらくなんぼだけは申し出があるであろう、申し出のないやつはなんぼ、その炭鉱については勧告をやろう、こういうふうに考えないと、三百三十炭鉱、トン当り所要経費幾らという計算が出てこない。このリストができておると思うのでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/70
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071・石橋湛山
○石橋国務大臣 買い上げには勧告するつもりはありません。全く業者の申し出によってのみ買い上げるわけであります。ここに出ております三百万トン、三年間に買い上げというのは、われわれが専門的に一応炭層とか、いろいろの条件の上から計算をしまして、このくらいのところが申し出をしてくる炭鉱になるであろうという想定のもとに計算をしたのでありまして、どこどこの炭鉱を買い上げるという計画を立てておるわけじゃないのであります。いろいろの物理的条件から計算しておるだけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/71
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072・片島港
○片島委員 それはそれでよろしいが、それにいたしましても、三百万トンというものを買う以上は、やはり品位、コスト、出炭量、こういう基準に基いて技術的に計算をせられたいというならば、やはりどことどことどこ、こういうふうに出てこないと、そういう数字は出てこないと思うのであります。リストを作って見なければ計算は出てこない。目をつむれば日本の炭鉱というものが頭に浮かんできて、あそこの品位はこのくらい、コストはどのくらい、出炭量がこのくらいだから計算をして見ると三百三十万トンになる、こうなってこなければならない。そうすると地図が描がかれて、リストが出てこなければならぬと思うのでありますが、それがわからぬままにどうして三百万トンということが出てくるのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/72
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073・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは大臣からも御答弁申し上げましたように、炭鉱の申し出によって買うわけですから、だれが申し出るかわからない。従ってリストの作りようがないわけです。ただ大体三百万トン程度の能力のものを買おうということ、それからそれが合理化にどの程度の効果を来たすかを見るために、その買い上げされるものが平均どのくらいの能率のものになるであろうかということも計算いたさなければなりません。また失業対策の関係から、大体どのくらいの労務者が地区別に出るだろうかということも計算する必要がありますので、その限度において大体平均的なもので地区別にこの程度になるということを計算して、今の買い上げによります所要経費なり何なりを出しておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/73
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074・片島港
○片島委員 これは何回も言っていたのでは時間がもったいないから、発表ができないならできないでよろしい。申し出がなければ買わないのだから、幾らになるかわからないというなら三百万トンになるか、六百万トンになるか、八百万トンになるかそれはわからないわけです。あなた方は何か使わなければ三百万トンというものは出てこない。大かた申し出があるであろうと考えたところのあなた方の想定したリストがあるかどうか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/74
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075・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今も申しましたようにわれわれの計算は、大体の買い上げの対象になる分について、平均的な能率なり炭価なりをべースとして計算してございます。具体的に個々の山について、これが申し出るだろうというふうなリストは作っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/75
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076・中崎敏
○中崎委員 議事進行について……。ただいまの片島君の発言はきわめて重要な問題だと思うのです。ことに人員が五万七千名であり、およそ買い上げるところの炭鉱を二百万トンを目標にして、一トン当りの炭価を乗じて、金利を下げて、それでなんぼ割り当てて、業者がなんぼの炭価でセーブして、それで払うという一つの計画が立てられておる。そういうふうなものについて、どういう炭鉱が買いつぶされるのか、それからその従業員はどうなるか、その地方における経済はどうなるのか、これはきわめて大きなところの関心の的であります。それをただ漫然と、今日まで石炭行政がどう行われ、現在炭鉱がどういう情勢にあるか、個々の炭鉱がどういう方向にあるかわからないままにこの案を立てるわけがない。この量要なる資料を出さない限りは、議事をこのまま進行しても意味がないので、暫時休憩をして、政府側において十分協議してもらいたいと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/76
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077・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 再度お答えいたしましたように、買い上げは希望によるものでございますから、具体的にこの山というふうな計画を立てようといたしましても、またわれわれがたとえ立てましても、それは実際に実施する場合には相当違ってくるということは当然われわれとして予想しなければならない。ただ大体三百万トン買い上げます場合には、それに該当する能率なり品位なり、そういった買い上げの法案に予定しております条件に該当するものがこのくらいある。そのうちで大体……(中崎委員「へ理屈を言ってもだめだ」と呼ぶ)どういうふうになるかということを計算して、それで失業対策の人員を出したわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/77
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078・中崎敏
○中崎委員 何を言っておるのかわからない。君、三百万トンという案があるだろう。五万七千人という数字はどこから出てくるのだ。現実に希望者があるかないかという問題ではない。三カ年間にこうこうこういうふうに出るだろうという君たちの案があるはずだ。それを出せというのです。でたらめを言っては、しょうがないじゃないか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/78
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079・山手滿男
○山手委員長代理 中崎君に申し上げますが、政府側にはその案はないというのです。
〔中崎委員「ないということはない」と呼ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/79
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080・片島港
○片島委員 リストはそれはないかしらぬが、しかし買い上げについて、先ほどから大臣が説明されたような基準はあるわけです。あなた方が考えたのは、これより多いということは前に説明されておる。申し込みをわれわれが受け入れるのは三百万トンくらいであるが、あなた方の予定しておる基準はもっと多い、基準に当てはまるか当てはまらないかによって、あなた方は買い上げをやるかやらぬかを決定するのですから。それではその買い上げ炭鉱の基準だけをここで明らかにしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/80
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081・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは法律によりまして、買い上げの場合の基準は、審議会できめなければならないことになっておるわけであります。その原案としてわれわれが考えておりますのは、大体出炭の能率と出炭の品位との二つを基準にいたしまして、能率が大体合理化目標の七〇%未満のもの、それから出炭品位が合理化目標の九〇%未満のもの、その二つの条件の組み合せに該当するものが買い上げの対象になり得るものというように現在のところ考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/81
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082・片島港
○片島委員 品位、コスト、出炭量、こういう三本立によってあなたたちは考えられていると言われましたが、これでは品位と能率だけしか言っておられないのでありますが、出炭量についてはどういうふうにお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/82
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083・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 出炭量については全然別にわれわれの方としては差別待遇をする考え方はいたしません。従って大炭鉱でも小炭鉱でもこの基準に該当するものにつきましては買い上げをいたす考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/83
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084・中崎敏
○中崎委員 今のような重要な問題を、これでは首を切られる連中には実際たまらないのです。もう一つは、どういうふうになるのかということの目標なりあるいは腹のきめ方です。引導を渡すには渡しようがある。そういうようなものについての、たとえば九州地区ではどうとか常磐地区ではどうとか、山口県の地区ではどうとか、北海道地区ではどうとかというくらいのことでもせめて示してもらわなければ議事進行上重要な問題は私たちは検討できないのであります。その意味においてまず政府が確信のないところの意見をこの際伺っても仕方ない。あらためて資料として出すなり何なりというところの誠意を示してもらわないというと、議事進行に対して私たちはこれ以上協力するわけにいかないということをはっきりしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/84
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085・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今中崎委員の御質問にございました失業対策の問題につきましては、大体現在のわれわれの予測によりますれば、地区別にどのくらいの数字になるかという問題は本会議で労働大臣からはっきりお答えしてございますので、この点につきましては——ただし今申しましたようにこれはすべて個々の炭鉱について確定したものではございませんので、一定の基準に従って計算したものでございますからこまかい点までその通りになるかどうか別にいたしまして、われわれが現在予想し得る限りでは大体地区別にこうなるのだという数字は本会議で労働大臣から説明になりました。労働省にそれに基いて失業対策を立てていただくようにお願いしてございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/85
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086・片島港
○片島委員 その大体の買い上げの基準というものに該当するものは相当多いということはわかり切ったことでありますが、その基準に該当するものの中から約三百万トン、こういうことになるわけであります。そうしますと三百万トンの場合にはこのくらいの失業者が出るということが言われておりますが、その基準に合致をする全炭鉱、七百なら七百、八百なら八百という炭鉱について、これが適用せられるということになった場合には、どのくらいの首切りが必要になってくるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/86
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087・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今のわれわれの計算の基準と申しますか、その全部について調査がございませんので、それについて大体このくらい、三百万トン程度、合理化系統の面と資金の面からと、両方の面からこの程度の目標ということになっておりますので、大体その目標程度のものが整理された場合にどのくらいになるかということを計算いたしまして本会議にも御答弁したわけでございまして、その基準に該当するもの全部について詳しく調べたものはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/87
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088・片島港
○片島委員 それはあなたの方は逆だ。その基準に該当するものが先にわかってから、その中から三百万トンとこうなった場合に、その基礎から、基準から初めて今度の首切りという数字が出てくるのであるから、初めに枝葉の方から人間が出てきてからに元の方がわからぬという答弁はでたらめだ、しかしそのやつはあなたの方が資金がないからそれだけのものは買わぬということがきまっておれば首も切られないでしょうから、その点は特に追及しようとは思いません。
次に買い上げ炭鉱の支払いの方法、順序について御答弁を願いたいと思いますが、離職金の一ヵ月分以外には規定はないけれども、この未払い賃金とかあるいは退職手当とかいうものはどういうふうになるのでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/88
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089・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 未払い賃金につきましては法律の規定によりまして代位弁済という形で先に支払いをいたしておきまして、炭鉱の売却代金を支払う際に相殺によって差し引いて決済するというようにいたします。それから退職金につきましてはこれはすでに民法その他の法律上の取扱いも未払い賃金とは取扱いが別になっておりますので、これにつきましては法律上のこういう制度はございません。しかし実際に炭鉱を買い上げします場合に、炭鉱の経営者と労働者の間に紛議が起りました場合には、買い上げが円滑に参りませんので、そういった紛議なしに話のついたものについて順次買い上げをいたすという考え方でございますから、その際に経営者と労働者と十分話し合って、金額なり確保の方法なりについて話し合いがついたものについて実際問題としては買い上げるということになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/89
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090・片島港
○片島委員 そうしますと退職手当は出さぬでいいということになる。退職手当も出してやるということがきまらなければ当然労使の間で紛争が起きる。これはきまり切っている、紛争があったら買い上げぬというのでありますから。それでは退職手当を出さぬでいいから買い上げてやらぬということになりまして、離職金一カ月分だけは保証するがほかのことはめんどう見ないということになる。やはりこれは退職手当によって、労使間において協定できまっている分については当然見てやらなければならぬと思うのでありますが、これは片手落ちではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/90
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091・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今私がお答えいたしましたように、未払い賃金と退職金とは、他の権利に対する優先権の取扱いにつきまして法律上の取扱いが違っております。従ってこの法律でも法律上の取扱いは差別をつけなければなりませんが、実際上の問題としては紛議が起るような場合には買い上げができないということになりますので、経営者の方としては今お話のように話し合いの労働協約で退職金がきまっているものにつきましては、その額を基準にして支払わなければおそらく組合との話はつかないのでありまして、また買い上げしてもらえないということになりますから、実際問題としてはその面で解決つくことになる、こういうようにわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/91
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092・片島港
○片島委員 次に進みまして労働省に伺いますが、この前炭鉱の整理せられた失業者については配置せられるような、その具体的な案を労働大臣が本会議において答弁をせられておりますが、その配置、すなわち受け入れ態勢はすでに本年度のそれぞれの事業計画において確定しているのかどうかという点が第一点。それといま一つは、政府の六カ年計画にもかかわらず失業者はさっぱり減らないで、かえってふえているのでありますが、失業対策というものは、炭鉱労務者の今度首になる人よりもたくさんあるほかの失業者というものも考えなければならぬ。そうすると、やはりどちらも失業者でありまして、どちらも職がないのでありますから、それぞれどこに配置をする、ここに配置をするという総合調整をして失業対策というものを立てなければならぬのであるが、この首切り法案によるところの失業者と、それから一般に今漸増しておるところの失業者とを組み合せて失業対策というものができておりますかどうか、これを第二点としてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/92
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093・江下孝
○江下政府委員 第一点の具体的な計画でございますが、大臣が御答弁いたしましたように、今回の石炭合理化法案の実施に伴います離職者につきましては、特に政府の買い上げという行政措置によるものでありますので、従来の失業対策といささか趣きを異にいたしまして、できるだけ恒久的な職場に配置転換をする、こういう方針で考えております。そのためには失業対策事業という従来の事業とは別に、建設的な河川あるいは道路その他の事業を特にこれらの地帯に起しまして、そうしてこれに時を移さず配置転換をしていく。本年度の予定といたしましては四千人をちょっと越える程度でございますが、これにつきましては関係各省とも相談をいたしまして、その時期が参りますれば計画を必ず立てまして実施をすることにいたしております。具体的に今何の工事をそれではどうするということまではまだきまっておりませんが、逐次こういう計画を立てて参りたいと思います。それから全体の失業対策は、お話の通り確かに今年は昨年以上に失業情勢が悪化するというふうな予定で私ども考えております。そこで予算的にもこの悪化ができるだけ食いとめられるようにということで、一般の失業対策事業、特別の失業対策事業、あわせまして、従来十七万人の吸収予定のものを五万人ふやしまして二十二万人の吸収予定をいたしました。そのほかに特に失業対策に有効な公共事業、特に道路事業等に重点を置いた予算を編成いたしております。仰せのごとく今後におきましては失業対策事業だけでなくて、これらの建設的な事業と総合的に失業対策を実施するという観点で、目下諸般の施策を進めておるわけでございます。特に労働省に失業対策部を設置いたしまして、今申し上げました各省間の有機的な統合的な失業対策の推進をはかるという目的で、これを行う予定にいたしておりますので、失業情勢の悪化ということは言われておりますけれども、できるだけこれを食いとめていくということで、大体私どもとしては見通しを立てておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/93
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094・片島港
○片島委員 私はそういう計画をいろいろやろうと思うておるというのではなくして、これの受け入れ態勢が、事業計画がもうきまっておるのかどうか。こういうことになった場合は各省に相談をしてできるだけやってもらおうというのでは不安でならない。これは長期計画なんです。数年先を見通して石炭の問題だけは非常に先までこまめに計画が立っておる。ところが失業者、離職者についてはそういう計画が立っておらない。やろうと思っておると言うが、これでは不安で仕方がない。一番最初に離職する者の行く先をきめてから、それから石炭のことはあとで考えなければいかぬ。人間の方が物よりも大事である。あなたの方は今年四千人でそのときになったならば何とか確定するようにしたいと言っているが、もう受け入れ先がはっきりと確定をしておるのかどうか。今から出るものについては予算的にも事業計画的にもぴしっときまっておるのかどうか。それから各省と相談してやろうというのではなく、その確答をとっておいてからやるのでなければ非常に不安でありますから、私はその点を聞いておる。
それから今の漸増する失業者についても、これも何とかやろうというのではなくて、これについては労働省はやろうと思っても、あなたのところは予算も持たなければ、一般の産業経済計画の中に首を突っ込んでおらぬから、失業対策をやろうと考えておるけれども、——ぴしゃっと人間を入れるところを作っていかなければ、先に計画を立てていかなければならぬ。物の計画よりも人間の計画を先に作らなければならぬのである。この炭鉱失業者と一般に漸増する者とを受け入れる計画が、予算的にも事業計画的にもできておるかどうか。これだけイエスかノーかを御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/94
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095・江下孝
○江下政府委員 具体的にどこの河川、どこの道路にこの四千人余りの者を就労させるということまでは、まだできておりませんが、しかし、先ほど申し上げましたように、すでに閣議決定をもちまして明確にこれらの炭鉱の離職者に対しては建設的な事業を実施して、これに配置転換をすることということがきまっております。そこでこれによって各省はすでにこれらの建設的な事業を起すことに同意をいたしております。そこで私どもとしましては、各省の同意を得ておりますので、逐次これらの建設的な計画を実施して参る、こういうわけでございます。そこで決して御心配のような点は、私どもとしてはないようにいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/95
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096・片島港
○片島委員 非常に心配をする。これは全然受け入れ態勢がないので非常に心配をいたします。しかしこれはあなた方の考え方とわれわれの考え方——人権を尊重しない、物を先に考えて、人間のことはあと回しにするという考え方には反対であるけれども、これは見解の相違であるから仕方がない。
時間が少いので最後に——これは自治庁長官に来てもらえばよかったのでありますが、買い上げが炭鉱の所在地の市町村というのが非常に心配をしておる。ここに失業者をどうっと出されて、それをどういうふうに処置していこうか。受け入れ先が今聞いたようにはっきりしておりませんから、しばらくの間、政府がめんどうを見るまで、そこに失業者がもたもたたくさん出てくる。政府でその失業対策を考えてくれぬということになると、市町村はもうえらい難儀な目にあわなければなりません。特に税金などで非常な減少を来たしておる。財源が少くなったところへ持ってきて、そこに失業者だけがごろごろしてくるとこれは大へんだということになって、全国の炭鉱所在地の市町村から非常な陳情が参っておるのであります。この買い上げ炭鉱所在地の市町村に対する政府の御処置はどういうふうになっておりますか。この点は通産大臣から——おそらくこういう重大な問題は、これはおれの所管でないといって逃げるわけにも参らないと思うのでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/96
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097・石橋湛山
○石橋国務大臣 その通りでありますが、実はこの法案を成立させて実行することが市町村を救う一つの道であると考えております。その買い上げを希望しなければならぬような炭鉱は、このままにうっちゃっておけば、自然に失業者が起って非常に困難だ、租税を取ろうにも取れないというような状況に陥りつつあるのでありますから、この法案そのものがある程度市町村の救済にもなると思います。しかし昨日も労働委員会と共同の委員会で御質問がありましたから申し上げたのでありますが、それはこの法案を実施したために市町村に特に打撃を与えるとは私は思いませんが、しかし市町村が……(「それではどうして反対をするのだ」と呼ぶ者あり)それは心配するからであります。心配すればこれは切りがないのであります。ですからほんとうに市町村が困られるということならば、これは別に一つ考えることにいたしましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/97
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098・片島港
○片島委員 これで打ち切りますが、あなたのところにもたくさんな陳情が来たはずだと思うのです。そして、市町村を預かっておる人たちが、から心配するようなことはない、やはり今までよりも非常にひどいことになるから何か恒久的にとおっしゃるならば、それはあなたの言うことは、あるいはいいかもしれません。この合理化法案が非常にスムーズに参りまして、計画通りにすっと行けばいいかもしれぬが、少くとも私は、暫定的には、市町村は相当こたえるのじゃないかと思う。非常にたくさんな資料が来ておりますが、私もまだ読み尽せないくらいであります。これが全部顧慮せられないで、そして大臣のように、これを作ることが市町村を救う道だなんというに至っては、これは私は大へんな考え違いじゃないかと思う。何らかの措置を考えてもらわなければならぬ。しかし考えて行われぬということになれば、私たちも所在の市町村当局と共同闘争をやって、この法案の審議に当って、今後また政府の方に質問を続けていきたいと思います。
私は、本日はこの程度にいたしまして、明日に保留しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/98
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099・山手滿男
○山手委員長代理 次は淵上房太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/99
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100・淵上房太郎
○淵上委員 この機会にもう一度お尋ねをいたしたいと思うのであります。合理化法が目的を達成するためには、予定された合理化作業が各面とも円滑有効に運営されなければならぬことは申し上げるまでもありません。こういう意味からいたしまして、私は租鉱権の問題につきまして、この機会にもう一度お尋ねしたいと思うのであります。
法案三十三条によりますれば、採掘権者の鉱業施設と租鉱権者の鉱業施設は買収されることになっている。それから事業団の業務の第一に、採掘権の買収というものがありまするが、租鉱権に対しては補償の道が何ら考えられていない。申し上げるまでもなく、租鉱権というものは一つの財産権であります。しかして租鉱をやめる場合には、放棄料として、鉱業法八十二条によりまして、鉱業権者に六ヵ月分ですか、放棄料を払わなければならぬ、そういうことになっておる。もし租鉱炭鉱が買収されて租鉱権が消滅した場合には、その立ちのき料を払わなければならぬが、何ら補償されないということになりますると、せっかくのこの合理化作業が運営できなくなるおそれがあるのじゃないか、かように私は思うのであります仄聞するところによりますと、石炭局では、初めは鉱業法八十二条の規定により、租鉱料に相当すべき金額を租鉱権者に払うという案があったようでありますが、最後的に出たこの法文には、租鉱権に対する補償というものは全然書いてない、何ら言及されておらぬのであります。
御承知のように、昨年の六月現在では、全国の炭鉱数六百九十一のうち、租鉱区で出炭している炭鉱租鉱区というものは、二百三十四鉱ありまして、大体三四%の割合を占めておるのであります。もっとも出炭量は非常に少い。月産全体で三百六十四万二千トンのうち、租鉱出炭は二十万七千トンでありますが、ただいま申しまするように租鉱権という財産権が消滅するものに対して、しかも放棄料を鉱業権者に払わなければならぬ立場に立つのでありまするが、これに対して何らの補償をしないということになりますれば、おそらく買い上げ希望も出てこないようになるのじゃないか。そうなれば、予定された合理化作業の一端に破綻を来たすおそれがないでもない、私はかように思うのでありますが、石炭局では、当初補償をするという案であられながら、ここに最後的にこれをおやめになった理由を、石炭局長から御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/100
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101・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これはお話のような面もございまして、租鉱権に基く炭鉱を、鉱業権と切り離して、その租鉱権者の施設だけを買うということを研究してみたわけでございます。そういたしますと、本来この買い上げの目的は、これによりまして恒久的に石炭の生産能力を圧縮するということが目的でございます。従って租鉱権者の施設を買い上げました場合には、当該租鉱区について二度とそこに租鉱権の設定をしないという約束を鉱業権者に取りつけてもらう必要があるわけであります。もしそういうことをやるといたしますと、これは鉱業権に対する重大な制限になりますので、当然その鉱業権者に対して租鉱権の放棄料というものを支払わなければならないということになります。しかもそれが、別に期限もございませんので、算定も困難でありますし、また非常に矛盾することにもなるわけでございます。従って租鉱権者の施設を、鉱業権とは切り離して買収するということは、今のような法律的な難点からどうも適当じゃないというふうに考えたわけでございます。ただこれは、鉱区はもちろん分割することが可能でございます。従って、もしそういう租鉱権を恒久的に設定する必要がない、それに同意できるような場合でございますれば、それは当然鉱区を買い上げることについても鉱業権者が同意を与え得る場合でありますから、その場合には鉱業権者と租鉱権者がおのおの同意をして、租鉱権については取りやめ、鉱業権者についてはその鉱区を買い上げるということになり得るのではないか。従って租鉱権と申しますか、租鉱権者の施設だけを単独に買うということになります法律上の難点を、実際上は大半防ぎ得るのではないかというのがわれわれの考え方であります。なおお尋ねの租鉱権の補償料というふうなものを考えたらどうかということでございますが、これは租鉱権者が契約期限の前に一方的に租鉱権を放棄いたします場合には、六ヵ月分の租鉱料を支払う必要があるわけでございますが、今申し上げましたように、租鉱権者の施設を買います場合には、鉱区と同時に買い上げる場合に限りますので、その場合には、従って鉱業権者の同意が当然得られておらなければならぬはずでございます。従って実際問題としては、この租鉱権の放棄料を支払う必要がないと考えられます。それ以外に租鉱権というのは一種の財産権であるから、その分についてもある程度見るべきではないか、こういうお話のようでございますが、これは鉱業法の規定によりましても、租鉱権は相続等の一般承継の場合以外は譲渡の対象にならないという、私権といたしましては、鉱業権に比べまして非常に不完全な権利でありますので、こういうものについて補償をするということはどのようなものであろうか、ほかの権利とのバランスの関係から見ましても、ちょっと適当じゃないのじゃないかと考えられます。またこういうものについて評価も非常に困難な面もございますので、一応補償の対象から除いた次第でございます。ただこれは、事前に租鉱権者が権利を放棄いたします場合に鉱業権者の鉱区が買い上げられる場合であります。従って鉱業権者の方から、むしろある程度、鉱業権者と租鉱権者と話し合いまして、その間に適当な解決をつけるというふうなことは十分実行できることじゃないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/101
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102・淵上房太郎
○淵上委員 どうもよくわからない節もありましたが、租鉱権は財産権であることをお調べになったかどうか知りませんが、譲渡が本質的にできないものであるということはわかりました。しかし譲渡できないから財産価値がないということじゃないと思います。租鉱権を失った場合の補償が法案に書いてありませんが、現実にはただいまお話のように、鉱業権者から鉱業法八十二条による放棄料を取ることを免除してもらう、これは事業団から実際に相談して免除してもらうという方法を講ずることが必要ではないか。もう一つは法律になくても、事業団の経費の中から補償の意味で払うこともできないことはないと思うのでありますが、この点に対してこの機会にぜひ伺っておきたいのであります。それは実は御承知のように筑豊地方は非常に古い炭田地帯で、かつ小さい炭鉱が多く、しかもその大部分が租鉱区なのです。先ほど申しますようにこの合理化操作を確実に健実に具現していこうというためには、相当考えてやらなければならぬ。現在その地方では相当騒いでおるのでありますが、何らか行政措置その他でこれが適正な措置を講ずることをお考えにならなければならないと思うのであります。そういうことをやっていいと思うのですが、この点に対してはどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/102
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103・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 買い上げの希望申し入れまた買い上げの対象になりますような租鉱権者の場合におきましては、おそらく十分なる租鉱料も支払うことができないという場合であろうと思われます。そういう場合に鉱業権をその鉱区につきまして相当の価格で事業団が買い上げるわけでありますから、これは鉱業権者が租鉱権者に対してある程度の財政上の援助と申しますか、しかるべき話し合いをするということは適当なことではないかとわれわれは考えます。お話のように、特に九州地方あるいは常磐地方というようなところは租鉱炭鉱がたくさんございまして、そういうもののうちで整理基準に該当するものについて買い上げるということは適当な措置でございます。買い上げを促進する上で必要な場合には、事業団なり地元、その他の局長なりがそういう面についてできるだけあっせんするということはぜひわれわれはやりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/103
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104・淵上房太郎
○淵上委員 最後にその問題ですが、法文にはないけれども、現実に即して事業団なりあるいは地方の通産局が適当なるあっせんあるいは措置を講ずるということをやって、それをやることによって合理化操作を円滑に推進していくということに了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/104
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105・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 ぜひそういうふうにやりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/105
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106・山手滿男
○山手委員長代理 次は中崎敏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/106
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107・中崎敏
○中崎委員 石炭業界の今日の混乱は政府の側においても相当大きなる政治的責任があるというふうに考えられるのでありますが、これに対して通産大臣はどういうように考えられるか。もちろん経済界全般として少数の例外を除いて概して不況なのでありますが、ことにある意味において石炭業界は混乱しておるということが言えるのであります。そうしたような事態に立ち至らしめたことについては政府の側においても相当政治的責任を感ずると思うが、この点一体どういうふうに思いますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/107
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108・石橋湛山
○石橋国務大臣 むろん石炭界ばかりではない、全体の経済界が不況に陥っているのは政府の政策に大いによるのです。その意味においては石炭業界に対しても政府の責任がないとは申し上げかねると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/108
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109・中崎敏
○中崎委員 午前中も関係者の意見を聞いたのでありますが、ことに金融の問題というものはあらゆる業界に共通の問題でありますけれども、ことに石炭業界においてもそれ以上に高度の重要性を持つところの大きな要素なのであります。ところがこれに対してもう年々歳々、ことに最近に至ってはほんとうにからだがすり疲れるくらいまで政府の方にも陳情し、実情も強く訴えておるのだけれども、一向政府の方では耳を傾けてくれない。ところがこの法案が提案されるや、突如として千五百数十億の金が石炭業合理化の名前のもとにおいて出されるというところの方向へ進められておる。今まで放任しておいて、しかも重要な基幹産業である石炭に対してはあまり資金的な考慮も払われなかったが、この法律案が用意されるや、突如として千数百億円の金が用意されて、それがこの法案実行の裏づけになるというふうなことに至ってはいささか政治的な考え方が聞きたい。言いかえると、何らか現在の段階において大きなる大手業者などの力によって動かされ、ことに普通の場合においてはそれほどに動かされなかったが、今度の場合は特に耳を傾けるとか、相当力を注がなければならなくなった事情があるのではないかとさえ考えられるのでありますが、そこらの事情を一つお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/109
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110・石橋湛山
○石橋国務大臣 お話のような事情は何もないのであります。結局石炭業に対しても今までうっちゃっておったのじゃない。相当資金を注ぎ込んだのであります。注ぎ込み過ぎたという非難も一面において昨日あたりは伺っておる。果して今まで注ぎ込み方がよかったかどうかは問題でありますが、戦争直後においては御承知のように石炭が常非に不足して困りましたから、その増産のために資金を相当に注ぎ込んで、その借金が今日石炭業者に残っておって苦しんでおるという面もありますから、今までの資金の注ぎ込み方がそのときどき必要であってからやったのでありますが、かえって石炭業界に災いをなしたということも言えば言えると思うのであります。決して今までうっちゃっておったわけではありません。最近においても不況対策として数億の資金を回すように努力しておるのであります。今度のこの法案によって千数百億というのは、多分合理化資金のお話だろうと思いますが、これはこの法案の裏づけがあるから出せるのであります。ほんとうに役に立つ金を出すようにこの法案の審議を願っておるわけであります。この法案の裏づけがあればこれだけの資金を注ぎ込んで、確かに日本の石炭業を建て直すことができる。こういう確信のもとにやっておるわけであります。今までうっちゃっておったということではないということと同時に、何も突然として金を出そうというのではなくて、出すのには法案の裏づけがなければならないのでありますから、法案を出そう、そうして石炭業の合理化をやりたいというのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/110
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111・中崎敏
○中崎委員 私が言うのは、まず第一にこの資金問題に限って主として申しておるのであります。その資金というものは行政措置でいけるのが大部分であります。どの会社に何ぼの金を出し、石炭に何ぼ出すかという法律の裏づけがなくても、政府資金というものは産業興隆という上に必要なものである。そういう意味合いも含めて政府の方で策定して一定の資金を流される、ところがことにそうした面において石炭というものについては非常に今年度あたりの計画を見ても少い。いわんや中小炭鉱については普通の市中銀行の融資がほとんどとだえたばかりでなく、さらにそのほか政府融資にいたしましても、ほとんど顧みられてない、そういう実情によって中小炭鉱というものがますます苦しくなっておる。一面において大きな炭鉱においてはいろいろの形において過去累積された融資の金額も相当になっておるが、中小炭鉱においては一時の急場を救うというような金さえも出されない。ところが今度この法案の裏づけによって残るところの中小炭鉱を含めたところの、ことに大手、炭鉱には縦坑開発の名において大幅な金が出されるということになるのであります。まず今日の混乱を考えてみますと、一つには中小炭鉱を初め、無用な、程度を越えたところの販売競争に大きな原因があるのじゃないか、その販売競争を一体政府は何がゆえに今日まで放任をしておいたか、そうして適正な指導をやらなかったか、ただほったらかしておいて、業者が言うことを聞かぬということを言われるのですけれども、大体において今日までに法的措置を含めたそうした石炭の今日の混乱を来たした一番大きな原因はそこにある、言いかえれば平均についていってもコストが五百円を割っておる、五百円よりも安い価格で投げ売りしている、その原因は一面金融にある、苦しいからどんどん投げ売りしていってあとは野となれ山となれという、そういうことが常識的に行われておるところに大きな赤字出血が行われておる、その他の原因というものは——もう少し炭鉱について計画的に、業者の指導よろしきを得たらばよろしいではないか、ことに必要ならばそういう面におけるところの措置を法的に講じたらいいではないか、そういうものを放擲しておいて、ああいうものはつぶれたらつぶしてしまえ——ちょうど池田君が通産大臣のときに言った中小企業の五人や十人どころじゃない、もっとたくさんの中小鉱炭がつぶれるような状況になっておる、それを今日まで放任しておいたというところに政府の大きな政治責任があるのじゃないかということを私は言っております。たとい今日これを買い上げても、依然として中小炭鉱は三百万トンの政府の計画ではどんどんつぶされてしまう、とにかくそういう弱いものをほったらかしておいたということ、そうして今度はますます大きな炭鉱が拡張され、政府の力によるカルテルが認められて、政府からいろいろな名前において金がどんどん出される。金利も下げられ税金も減らされる、こういう特別の法によって大きな業者は何ぼか残される、こういう運命をたどるのは必至だと思っておるのだが、言いかえれば三百万トンは第一段階の設備であって、次に何十万の中小企業が次から次に倒されてしまう、そうして少数の大手の炭鉱のみが残る、そういうことになるのじゃないかということを心配しておるのだが、販売というような問題についても、依然として政府はこの法案が通ってもほったらかしてかまわないかどうかお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/111
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112・石橋湛山
○石橋国務大臣 御承知の通り販売問題は——これは石炭のみに限りませんが、非常に重大であります。今までも中小炭鉱の販売については、相当当局としても心配をし指導をいたしておりますが、これはお話のようになかなか話がうまくいかなくて、今までごたごたしておったということは事実であります。今後もこういうことで整理をいたしまして、機械化なら機械化をして、そうして合理化して相当炭価が合理的に下りましたら、私は販売の問題もこの案によって大体解決するものと思いますが、なお必要に応じて販売というようなものについても、これは行政的の指導等によってやれるだけのことは指導していきたい、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/112
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113・中崎敏
○中崎委員 私は競争というものは公正なる自由なる立場に立ってやられるのが原則であると思う。ところが石炭業界におけるところの実情というものは、先ほど言うように大きな業者というものへいろいろな形で国家の莫大な、国民の膏血をしぼった金が流される、それに金利も何でだか知らないがいろいろな意味において軽くされておる、いろいろな経済的、国家的、社会的の背景の上にやっていっておる、普通の銀行といえども依然として大きい炭鉱業者へはどんどん金をつぎ込んでおる、ところが中小炭鉱側になるとほとんど恩恵が受けられない、不公正な立場に立って競争をしいられておる、そこで中小企業者が販売をしておるというのは、行き詰まってどうにもしようがない、金融の面で参ったのだ、そそれだからそういうものに対してはもう少し国家的に、まず金融の道をつけてやる、そうしてこれが対等の立場に立って競争し得るような、そういう政治が行われなければならぬ、たとえば最近においても北海道に行って実情調査をして参ったのでありますが、まずこの中小炭鉱というものは大手筋に比べてコストが非常に安い、その安いコストをもってなぜ中小炭鉱が次から次へとつぶれていかなければならぬか、ここに政治の貧困があり、一つの計画的な中小炭鉱をつぶそうというような——まあ計画でもないのだろうが、そういうふうな結果に陥るということになるわけなんです。そこでまず第一に政府の方では——この法案が実施されてもあすからすぐ出発して理想的な状態というものはとてもできるものじゃない、あらゆる施策が並行的についていって初めてまとまるものでありますけれども、その間において次から次へとつぶれる炭鉱が出てくる。そういうようなものに対してもやはり依然として目をおおうて、そうして大きな炭鉱の縦坑のような名前において資金でも出すような考え方を持っておるのかどうか、そこを一つお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/113
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114・石橋湛山
○石橋国務大臣 大きな炭鉱だけに資金を投じて縦坑を掘らせようとは決しておらない、縦坑を掘れる炭鉱は、おのずから自然条件がそれに相応しなければいけないでありましょうから、大炭鉱を持っておるところに限られるかもしれませんけれども、しかしそのほかの機械化というものはある程度の物理的の条件を持っておればできるのであります。そういうところには十分資金を出し合理化をさせる、そういう考えであります。今までも——きのうも質問が出たので局長から答弁をさせたのでありますが、大体出炭量に応じたように資金は出ております。決して中小炭鉱を特別にないがしろにしたということはないと思う、あとは信用の問題でありますから、市中銀行等の関係はまた別でありますが、国家としては今まで中小炭鉱に決して特別な冷遇をしておると私は思いません。それより最近においては、中小炭鉱に対して十分とはいかぬのが残念でありますが、とにかく心配はしておる、しかも実際はつぶれるのは大炭鉱の方が先につぶれるだろうというようなことをいわれるほど大炭鉱が窮境にあると私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/114
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115・中崎敏
○中崎委員 たとえば北海道においては、あの全体の中小炭鉱の急場を救うために、一億五千万円の預金部融資を、石炭局並びに大臣の方へは通じておると思うのだが、それが一応方針として承認された、ところがそれから先の大蔵省とのその後における話し合いがつかなかったのか、あるいはさらにそのほかの方面に産業政府資金を回すのに急にして、ついそうしたような方針を急に変えていかなければならなくなったのかどうかわからぬが、北海道全体の中小炭鉱の急場を救うために通産省の方から一応承認された、そういう方向に進められたその問題が今に解決しないために、ますます窮地に追い込まれた。言いかえればこうした急場を救う金さえも出されていない、何十何百かしれませんが、そういう中小炭鉱を救うために一億五千万円の金も出されていない。こういう状態を見たときに、政府の方でやるやるといってもかけ声ばかりで、われわれは納得がいかない、そういうふうな問題を今後どうするか。それからたとえば中小炭鉱においては、石炭を売るところの適当なルートがないために、大きな財閥的な事業の系列的な方面に石炭が優先的に買い上げられるために、一トン当り千五百円ぐらいの、大手炭鉱よりも安い値で現実に投げ売りをされておるという実情である、こういうような状態をもってして、炭鉱が続くはずがない、何ゆえそんな状態を放任しておるか、現実に中小炭鉱といっても月産三万トンや五万トンも出し得るところの相当近代化された中小炭鉱もある、機械設備の問題じゃない、現に金融に困って無理して売らなければならないという実情に追い込まれておる。そういうものを放任しておいて、こういう法律を作って、やたらにつぶしていこうという反動的の法律にはわれわれは賛成できない。だからそういうふうな急場をどうして救うのか、また優良な炭鉱でさえもなおかつ整理していく考えがあるのか、そこをお聞きいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/115
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116・石橋湛山
○石橋国務大臣 民間の資金は言うまでもありませんが、国家の資金といえども救済資金でただやるわけにはいかない、やはり融資する場合は、融資するだけの手続をしなければならぬ。それで保証でありますとか——福岡では現に県会で県としても融資保証をする、そこで国家の保証と両方合せて九割程度の保証ができるようになりましたから、そういうことで資金を流すことにいたしております。同じように、ほかの地方でもやってもらいたいといっておりまして、今詳しいことは必要があれば石炭局長から申しますが、北海道の方はそれができないようで、まだもたもたしておるというのではなはだ残念でございますが、今促進をするように努力はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/116
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117・中崎敏
○中崎委員 炭鉱については金融と販売とがちょうど車の両輪みたいなものになっておる。一面において金融が苦しくなれば安く投げるよりほかなくなってくる。そうして、増産々々もけっこうですが、やたらにそれをやると、やはり値段が下っていって苦しくなる。そういうような状態にあるのだから、まず金融と販売の関係は車の両輪のごとくに進めてやったらいい。その上に立って、君たちの炭鉱において過去の実績はこうである、そうしで能力はこの程度である、そこでこの程度の操短をやったらどうかというような、そういう態勢を作り上げていって、なおかつ及ばない、どうにもならないということになればこれは何をか言わんやです。そういうような努力がどこにもされていない。そうしていたずらにたやすい道を選んで、わずかのスズメの涙みたいな炭鉱資金をもってして、そうしてしかもそれは国民の膏血の上に作り上げるという、こういう行き方にはわれわれは賛成できない。であるから、こうした法案を出す前に、もう少し政府は腹を据えて、ときには大蔵大臣も踏み破って、正しい前には堂々として——河野農林大臣は相当ぼくはあの人の政治力を買っている。石橋さんはなかなかいいところもあるのだけれども、ときには非常に弱いのじゃないかというふうな感じを持っている。これは大蔵大臣は幾ら鼻っ柱の強い、日本銀行では法王であったかしらないが、国会や国の中枢ではそういうことは考えていない。だからもう少し腹を据えて、ほんとうにこの事業を何とかしてやるべきであるという考えの上に立ってどんどんこれをけ破っていくだけのあなたは腹がまえを持ってほしいと思うの、だがその点をまず納得のいくようにお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/117
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118・石橋湛山
○石橋国務大臣 今申し上げましたように腹があるないにかかわらず、ただ金を出すというわけにはいきませんので、出すには出すよような仕組みにいたして出さなければ、ただ救済してやるわけにはいかないのです。ですから、その点が組織ができますればそれは金を出すつもりでおります。それから、それにつけてもやはりこういう法案がありまして、これが裏づけになって初めてそういうこともやりよくなるのだと私は考えております。今のままでこれをやっていけといっても、これは単なる救済資金をとめどなく出すというようなことになりがちになるから、それでは困るわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/118
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119・中崎敏
○中崎委員 どうも救済資金という考え方は、石炭業界を現在のまま放任しおいて、そうして現在の不安定の状態において金を出さない。だからして私が言うように、一面において金を出せよるうなベースに持ってくる。販売機構も、生産についても相当政府の方で計画的に適当なる指導をやっていく。必ずしもこういうふうな無理やりに買い上げて六万人に近いような失業者数は単に六万人ではありません。これが家族四人ということになれば二十数万、さらにこれに関連するところの事業というもの、ほとんど炭鉱町というものはこれを中心にして生きている。それを基本的な炭鉱をつぶされることによって影響するところの範囲というものは実に莫大なものである。そういうような大きな社会問題を含んだ、さらに大きな政治問題を伴うようなことを、ことさらに簡単に踏み切っていくような、そういう無責任なことでなしに、政府としてはこれに手を尽して、これではしようがないというところまでやっていかなければならない。それを今のように販売業者が耳をかさぬといっても、現地側では首を切られるんだから、その前にもう一度お前たちは自発的に考え直してみないか、そういうところに政治力をほんとうにやられたかどうか、今後やるという考え方があるのかないのか、これをお聞きいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/119
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120・石橋湛山
○石橋国務大臣 それにいたしましても、この法案が御趣旨のように運営されるものであるから、これがなくてはその運営ができないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/120
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121・中崎敏
○中崎委員 どうもこれは法案をどうしても出さなければならぬということを固執しておられる。もう少し前にさかのぼって自分たちのやり方を反省してみるのだという考え方がないからそうなのだけれども、これはこの程度でおきましょう。
そこでお聞きしたいのでありますが、けさの公聴会の意見を聞きますと、どうしても三十四年度に四千九百万トンという生産数字を実現するがためには、重油に相当大幅な規制をされない限りにおいてこれは実行できるものではないという一つの意見があったのでありますが、あなたは一体重油に対してどういうふうな方策をとって四千九百万トンのところまで持っていこうというお考えであるのか、お聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/121
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122・石橋湛山
○石橋国務大臣 石炭ができますと、何でも重油を切ればそれでいいように言われますが、そういうものではないと思います。むろん重油も、今度は重油ボイラーの規制によって規制ができるような立法をお願いしておるわけであります。それによってもう少し様子を見たいと思うのです。この燃料エネルギーといえども、今の状況でいつまでもとまっているという考え方も持てないのでありますから、やはり、どれだけ伸びていきますか、なるべく需要を伸ばすようにしなければ、単にこれは燃料だけの問題ではない、日本経済全体の問題としてぜひとも伸ばすような方向に持っていきたいのであります。従っていきなり重油を非常に大幅に切って、そうしてやるということも、これは全体の産業の上から言うて行き過ぎだと思います。とりあえず、とにかく重油ボイラーを産業上できるだけ支障のない限りにおいて規制をいたしまして、それで重油の使用を減らす、そして石炭の需要を増していく、かような方法をとりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/122
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123・中崎敏
○中崎委員 現状によりますと石炭の生産高は四千二百万トンないし三百万トンのものでありますが、それは三十四年度には約六、七百万トンふえていくというのが現実にあなたたちの計画の数字に発表されておる。そうすると、重油を大幅に制限しないで、そうしてこれだけの六、七百万トンの需要増加が一体どこから見込まれてあるのか、これを具体的に言うてもらいたい。ただ机上のプランで、いつでもわれわれはだまされ通しで、ただ計画であるということで、過去のこととして無責任にほおかぶりをせられて困るが、一体どういうふうな基礎の上に立ってこれだけの実際の需要増加が見込まれるか、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/123
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124・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは昭和三十四年度におきます産業別の需要の見通しを資料として御配付してございますので、それによって各産業別にどういうふうに政府が需要を見積ったかということを御了解願いたいと思うのでありますが、この数字の見積りにつきまして、これが水増しのものであるかどうかという一つの例といたしまして申し上げれば、この前御質問がありましたように、電力用炭等につきましては、たとえば本年度の見積りで申しましても七百二十五万という非常に内輪な見積りをしておるわけでございます。それで電力の昭和三十四年度におきまする八百五十六万トンという数字は、これは従来の計算によります平水ベースで計算いたしたものよりも相当低いところに見積ってある、大体四%程度の豊水があるものと思って見積ってございます。そういうように全体の計画といたしましては、経済六カ年計画というものがございますので、その生産目標をベースにいたしまして、その間における原単位の向上というふうなものも十分織り込みまして、その上でなお若干ゆとりをとって計算してございます。たとえば重油からの転換需要につきましても、重油の転換需要は重油の量で七十万キロぐらいございますので、石炭の量に直しますれば百二、三十万トンぐらいになるはずでございますが、このうちで重油転換の需要として見込んでおりますのは八十七万トンだけでございます。そのように十分慎重に計算してございますので、経済六カ年計画が大体あの線に沿って進行いたしますならば、この程度の需要は十分あるものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/124
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125・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 関連して……。今の齋藤局長の政府の方で作られた三十四年度までの年度別需要計画というものを私は信用いたしますが、それに十分自信を持って出しておられるのでしょうね。——それでは法律の条文にこれを保障するというということをなぜ書けないものでしょうか、それを一つ聞かしてもらいたい。それほど信用があるものなら需要の年度別を十分保障するということは書けるでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/125
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126・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 需要の保障ということを法律で書くということは法律の性質、体裁からいってもちょっと書けないというふうに考えますので、法律の条文には載せないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/126
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127・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 それほど年度計画がはっきり確実なものなら、需要の年度別計画というものを何らかの形で保障するということは当然のことじゃないか、自信が持てなければこれは書けません。政府が責任を持たなければならぬ。自信が持てるということなら年度の需要計画を何らかの形で保障する、そうして生産もそれに見合う程度にする。そうして経済界の変動なり天災地変で今度増炭をする、その場合に政府が責任を持つというのは当然の話でありませんか、どうしてやりませんか、それを一つ聞かしてもらいたい、大臣いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/127
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128・石橋湛山
○石橋国務大臣 なかなかおもしろい御議論ですが、昭和三十四年度において石炭を四百何十万トン使用するということを法律に書くということは、今までの日本には少くも例はございません。ですからそこまでいかぬでも、これは今局長が言いましたように、ずいぶん内輪の計算になっておりますから、私は自信がないといえば足りない方の自信がないということも言える。現にきようも見たのですが、石油の方から申しますと、この計画では三十五年度には石炭換算で約六百万トンのエネルギー不足になるという調査を出してきております。それだけは石油を入れなければならぬ、これは石油業者からの話でありますから、計算は石油の立場からやっておるのでしょうから、ある程度の割引をしなければならぬでしょうが、こういうふうに今後のエネルギーの消費というものは、これからなお不景気になり、国民経済がだんだん窮迫して失業者がどんどん出るということを予想すれば、エネルギーがどんどん減るからこの見積りでも余ってくるということになるかもしれませんが、われわれはそうできないのですから、これは一つ超党派的に経済の振興を大いにはからなければいけない時期だと思いますから、従ってこの内輪の計算のエネルギーの需要というものは、これだけは必ずあるし、またあらしめねばならぬ、かように考えております。法律に書くことは行き過ぎだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/128
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129・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 石橋通産大臣は、それは法律でやっぱりきちっとすべきだというようなお考えであるように私はこれを拝聴いたしました。それは当然のことです。そうでなければ先ほど中崎君から言われたように、机上の数字ばかり作って、かって実行されたことはない。民主党の経済六ヵ年計画の上から作られたものなら、なおさら法律に対する信用、法律に対する権威、鳩山内閣の信用の上からいっても当然作らなければならぬ。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そこでこれは大臣もそのような考えだし、今民主党の諸君の方からもそれはそうだということであるから、いずれこの法案を最終的に扱うに当って、そういうことが国会できめられるということであれば、当然石橋通産大臣は賛成であろうと思うが、そういう場合には御賛成でしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/129
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130・石橋湛山
○石橋国務大臣 何年度に石炭を幾ら使うという法律を作ることは賛成いたしません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/130
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131・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 何年度に幾ら幾らということではない。いわゆる政府の需要の年度計画を何らかの形で政府が責任をもってやる。そのかわり生産を押えていくのです。需要と見合う程度に生産をやらすということのためにこの法案を出しておるのでしょう。そうでなければ、この法案を出した意義がないと思う。需要の年度計画を作る。生産はこれに見合う程度の生産をやらす。そこで今度はもう貯炭ができないようにするのがこの法案のねらいなのです。今後経済界の変動、天災地変が起って、足らぬ場合もあるし、余る場合もある。そういう場合について、政府はこれらに対する保障を講ずることは当然のことではありませんか。私はそういう意味の法律を、何らかこれを明文化しておく必要があるということを言っておるのですが、この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/131
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132・石橋湛山
○石橋国務大臣 ここに数字を入れなかったといって、法律自身がそういう約束をしておるのです。伊藤君の言う意味が入っておらないということではないのです。何も法律に数字を書かなくても、この法律自身がもうすでにさような約束をしておるわけです。御懸念はないものと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/132
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133・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 それではまるで禅問答みたようなものであって、解決はしません。今、私のお尋ねしておるようなことをこの法案の中に含んでおると言われるならば、含んでおるぞということをはっきりさすことが何でできないのですか。われわれは今度はだましませんぞということをきちっとすることを反対する理由は何もないと思う。いずれ修正とか何とかが起った場合に、あなたはこれに文句を言われる論拠はなかろうと思うから、あらかじめそういうことをお含みおき下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/133
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134・中崎敏
○中崎委員 私も今の問題に関連しておるのですが、たとえば政府が需給の安定をはかるためにこの法律案を出しておる。需給の安定をはかる意味において、本格的にその責任を持つのも必要だけれども、具体的には最後はこの計画を進めておるけれども、ストックが計画よりもずっと持たれて、あるいは急に渇水になって石炭が非常に要って、思わざるところの不足を来たすような場合に備えるため、ある幅の事務的貯炭を業者に認めさすとか、あるいは政府がある範囲において、その貯炭買い上げについての責任を持つというふうな裏づけがないと完全にならない。政府がやりっ放しに切って知らぬ顔をするというのではなくて、この実行についても政府が責任を持つという考え方の上に立ったら、ある範囲におけるところの貯炭義務と責任を政府が一緒になって持つのだという考え方の上に立って、この法案が考えられなければならないのではないかということを聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/134
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135・石橋湛山
○石橋国務大臣 政府自身が貯炭を持つということは、実際問題として困難だと思います。そこで狂いが起るのは、多くは電力会社でありますから、電力会社はたとえ豊水であってもある程度の石炭を買い上げる、あるいは鉄道の方面の貯炭を相当にやらせるというようなことでやっていけるものと思っております。政府自身が貯炭を持つということはできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/135
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136・中崎敏
○中崎委員 政府の方におきましては、ある程度の責任を持つという意味合いにおいて、政府自身がかりに持たれない場合においても電力会社に持たせる。これは経済力が余分にある場合にはできる。あるいは一つの販売組織みたような、あるいは協同組合なり、あるいは大手と中小炭鉱との一つの団体におけるところのプール組織みたようなものを設けて、そこに一定の買い上げというか、貯炭という意味を含んだところの数量を持たせる。それに必要なところの資金については、政府の方が責任を持って実行していくのだというふうなことになったら一体どうなるか。少くともこの貯炭等についても、いわゆる非常時に対処するところの需給責任というものは政府側において持つべきだと思うのだが、この点については一体どう考えるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/136
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137・石橋湛山
○石橋国務大臣 それは政治的にはむろんその責任を負わなければならない。それにはこの法律のように石炭が価格その他の上においてある程度規制され、安定をすればそういう方策はとりようがございますから、これは十分やれると思います。それを政府がこういった場合には貯炭をするとか、買い上げるとかいうことまで法律に規定をする必要はないと思います。これはまず石炭界が安定するということがねらいでありますから、安定をすればその上の需給の調整ということは非常にやりよくなる、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/137
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138・中崎敏
○中崎委員 たとえばそうしたようなものの安定のために必要な一定の範囲におけるストックを持つ。それに要する資金は政府の方であっせんするとか責任を持つということは法律の条文の中にたくさんある。初めてではない。少くともこうした画期的な私有財産を取り上げるというふうなところまですでに来ているのだ。言いかえれば業者が自発的にという形であるけれども、形ではなく実質的にはつぶしてしまっている。青息吐息で行き詰まらしておいて、しようがないから買って下さいというところまで持ってきている。そういう画期的な法律であるから、言いかえれば自由主義を根本的に否定した法律であるのだが、それについての裏づけとして少くとも融資についての責任を持つというくらいは書かないと仏を作って魂を入れないということになるのだが、その際においても通産大臣は責任を持たないのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/138
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139・石橋湛山
○石橋国務大臣 この法律によってつぶそうというのではないのです。ですから無理につぶそうと申しているわけではございません。実際の今日の石炭業界の実情に合うようにしているわけですから、それ以上に政府が買い上げるとかいたす場合に資金をどうするかということまで言わぬでも、それは当然必要に応じてやるべきことはやるのでありますから、そこまで心配をされぬでもいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/139
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140・中崎敏
○中崎委員 通産大臣は産業合理化促進法という法律の内容を御存じですか。この法律の中には明らかに資金の問題について政府は責任を持っている。こういう炭鉱法として重大なる内容を規定する法律案において、そういうことのないのはむしろ不思議だと思う。当然買い入れていいと思う。当然そうすべきだと思う。たとえば電力という場合には書いてあるかどうか知らないけれども、相当大きな金が運用されているわけですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/140
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141・石橋湛山
○石橋国務大臣 この法律の中にも合理化実施計画につきましては資金を政府が確保することに努力するという意味が書いてありますが、今の商品を買い上げる資金を確保するということはこれには書いてないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/141
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142・中崎敏
○中崎委員 だから合理化のために必要だというのは、言いかえればあなた方の方では大きな縦抗を掘るのだという名前で、国家の莫大な金をつぎ込もうとされる。そのほかはどういうふうに近代化されるかは知らないけれども、こういうことのために金を出されるけれども、今のような需要計画といかにマッチさせるか。生産計画もけっこうでしょう。けれどもほんとうに販売する側においてこれを計画的にやるためには、必要な資金をいかに確保されるかということが結局最後の問題です。その裏づけなくして、この法案というものはたての一面しか見ておられないと思う。だからそういう必要な流動資金についても、やはり政府の側においてある程度の責任を持ち、長期の金でなければ出さぬのか、あるいは短期にしても必要な範囲においては出すような方向にいけるのか。この合理化というのはただ単に炭鉱をどういうふうに掘り上げるかというのではない。全体の石炭の需給を安定するという石炭界全体、産業界全体の合理化ということなのです。需給というものを一緒に考えてみたときに、そういう必要な資金であれば、たとい流動資金でも出す考えがあるかということを聞いているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/142
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143・石橋湛山
○石橋国務大臣 私はそこまで法律に書いて政府が責任を持つ必要はないと思います。これは生産の上において安定をさせる法案でありますから、これによって安定ができる、石炭鉱業が安定をする、私はこう信じておりますから、それ以上にやれば今度はあなた方の主張されるように石炭の専売でもやるということにならなければならない。こそまで私は行きたくない。やはり業者の努力によってもやってもらわなければならない。どこまでも何もかもみな国家がめんどう見るということは、われわれとしては行き過ぎだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/143
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144・中崎敏
○中崎委員 それでは合理化資金というのは運転資金は全然含まないというのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/144
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145・石橋湛山
○石橋国務大臣 それはむろん設備資金であります、この出そうというのは。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/145
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146・中崎敏
○中崎委員 金というものは御承知の通りに足があるからどこへでも足がはえて歩くのです。言いかえれば賃金の払いが足らなかったという場合にもこの金を使える。言いかえれば全体としてその事業そのものの合理化推進の上に使われるという意味においては、必ずしもこれが流動資金だ、これは何だというようなことで——たとえば一時的に流動資金にその金が使われるということになると、これは違反だというのでひどい目にあう。政府はそれまで厳重に取締りをするのかどうか、そこのところを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/146
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147・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 現在開発銀行を通じて政府がめんどう見ております資金は設備資金でございます。従ってその設備資金を運転資金に流用するということはもちろん認められないことであります。ただごく短期の間の場合には、資金繰り上これが一時ほかに流用されたかどうかわからないような場合もあり得るとは思いますが、建前といたしましては開発銀行の資金は運転資金に流用することは認められないわけであります。従って第六条にも「工事に必要な資金の確保に努める」ということで、あくまで設備資金だということを明瞭にしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/147
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148・中崎敏
○中崎委員 販売機構を確立しない限りにおいては石炭の安定は期待できないと思う。そうすると、そういういわば広い意味からする石炭業界におけるところの合理化なんだ。ただ単に掘るという、そうした山だけの問題でなしに、石炭業界全体の安定のための法律だと思うのですが、一体この法案の本質、ねらいはどこにあるか。ただほんとうに大臣の言われるように掘ることだけをねらいとしたものであるか。もう少し広げたところの需給までも見た安定であるか。需給の計画を策定するとかなんとかという意味における供給と需要の参考的な資料にすぎないというのでなしに、もう少しやはり実体を持ったところの、ねらいのあるところの法案だと考えているのだが、一体その点はどうなんですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/148
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149・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今大臣からも御説明いたしましたようにこの法律は合理化を最終目的といたすのでございますが、合理化を達成するために必要な限度において安定という問題も考える。そのために生産数量なりあるいは価格なりの制限に関する協定も認めているわけであります。ただそういうやり方で合理化の条件としての安定というものを達成するという前提で考えられます限り、従来のような運転資金の不足というような問題は原則として起ってこないのじゃないかというのが大臣のお話でございまして、われわれもそのように考えている次第でございます。ただし実際問題になりますと、昨年の暮れからの貯炭融資の場合におきますように、政府がある程度、大手と中小との販売関係が非常に混乱いたしました際に、政府の方から生産を適当な数量に抑制したらいいのじゃないかということで、指導もいたしまして、自発的に抑制するということになりましたが、その抑制するために必要な貯炭の融資につきましても、大臣からあっせんをしていただきまして、運転資金の融資をやるわけであります。これはこの法律があるなしにかかわらず、そういうことを現にやっておる次第でございますから、その点は特に法律に書く必要はないということを大臣からお答えした次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/149
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150・中崎敏
○中崎委員 合理化についてただ単に生産部面のみならず、必要に応じては配給部面についてもまた合理化の対象とし、ねらいとしているということが明らかになったわけなので、大臣の考え方が狭かった、実際に合ってなかったということが明らかになったわけなんであります。
さてそういう、ふうにしますと、結局においては運用ができるのだというふうなことであるならば、この法律だってやっぱり運用でやれる場合にはやれる。ことにこれには罰則はない。ナンセンスなんです。これに違反しても何らそれを実行させるところの裏づけのないナンセンスの法律案で、そういうものと行政措置でやるような範囲とは一体どういうように違うか。こういうことについて私たちは十分に納得がいかない。しかもそういうふうな法律を作るからには、ほんとうの最後のねらいは配給面におけるところの安定である。それが業界の安定であり、同時に経済界の安定だ。ただ安いものを投げ売りして一時的に安いものを消費者が買ったというだけでは問題は解決しない。国民経済全般の姿を見たときに、その法律をうまく運用するというふうなことにそのねらいを置くというならば、やっぱりその配給面についても相当十分考慮を払っていかなければならぬ。その意味において、きわめてこれは不完全であるということを指摘しておきたいのでありますが、さて次には四千九百万トンの目標達成のためには私は少くとも長期需要面の開拓がなくてはならぬと思う。ところがこの点については最近低品位炭の火力発電によるある程度の消化も考えられていると思うのでありますが、これとても九牛の一毛なんであります。やっぱりあらゆる手を講じてやらなければならぬ。ところが通産行政の面においてもたとえば石炭の液化というふうな問題が必要であるということで、通産委員会においては満場一致で決議されたこともある。ところが一体政府はこの問題の実行のために今日までいかなる努力を払ったか。いやしくも国会において満場一致をもって決議されたそれが政府の方で無視されるということならば、われわれが国会で幾ら論議してもだめだ。今日までに一体いかなる努力を払い、いかなる措置を講じたかということを、一つお聞きしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/150
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151・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今のお話は昨年の通産委員会の四千八百万トンの需要確保に関する決議のことをお話しではないかと思うのでありますが、石炭の液化につきましては、その技術的な方法は、戦争中にも現にやりましたので、その当時の方法はわかっておりますが、ただその当時及び現在までに研究されている限度におきましては、コストが極端に高くなりまして、とうてい経済的ではない。これは液化をいたします場合には通常石炭を一ぺんガス化いたしまして、ガス化したものを合成するわけでありますが、まず第一段階のガス化したガスの値段が現在の重油の値段に比べまして相当高いというくらいでありますので、それをさらに合成して液体燃料にいたしますということになれば、非常に高いものになるわけでございます。現在までの実積の研究では全然経済的に採算に乗らないということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/151
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152・中崎敏
○中崎委員 今石炭局長のお説を伺いましたが、戦争中においてやったんだかやらぬのだか知りませんけれども、それからすでに十数年たっておる。いわゆる科学は日進月歩で進んでおる。その戦争中の頭をもってこの国会の決定を無視して、そうして一方的独善的な考え方を持っておる。そういうふうな考え方を持っておって果してこの重大なるところの石炭、しかも日本の化学工業という石炭工業と関連のある化学問題の解決がつくとお考えになりますか。現在ドイツなどにおいては最新の相当進んだ技術をもってこの石炭の液化も実行されておるということも聞いておる。だから石炭局長くらいをドイツへやって、調査でもやらしたら、どうなのか、一つ意見を聞きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/152
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153・石橋湛山
○石橋国務大臣 きのうも申し上げましたように、その問題についてはなお一つ石炭鉱業全体のサーヴェイを十分にやりまして、外国の技術者も呼びまして、そうして相当の金をかけて石炭の調査をする。これは経理面あるいはこれの消費面また今も申すようないろいろな石炭の利用の方法等あらゆる面にわたって、日本の技術のみならずアメリカあるいはドイツ、ことに大陸の技術者のサーヴェイをしてもらおうということになっておりますから、そういう上で一つできるだけのことはやりたい。でありますが、今局長が言いましたように、液化の問題は現在の日本で知られておる限りの技術においては経済的に引き合わぬ。それどころではない、完全ガス化という問題も技術的に多少の不安がありまして、これに思い切って資金をつぎ込んでやるというところまではいっておりませんが、しかしながら通産省としては、あらゆる面においてできるだけのことはやって、石炭の新しい需要の分野を開こう、こういう考えでやっておることは申すまでもございません。決してこれを怠っておるわけではございませんから御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/153
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154・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 さっきから伺っておると、安定安定とおっしゃるが、安定とは何ぞやといわざるを得ないような気がする。というのは、さっきから私お尋ねしたように、需要増についても保障する何ものもない。それから運転をする資金においても、何らこれを保障するものがない。ただ合理化についての資金が出ていくが、しかしながら貯炭ができたり、あるいは不況になって困っておるために、運転資金として合理化資金を使っては相ならぬという、それから需要増についての計画は法律で保障せぬという、一体それらをやらないで、安定という道がまだほかにありますか。言うことがあったら一つここで教えて下さい。それ以外に何か安定ということがありますか。どこの国にあるのか、それを一つ聞かして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/154
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155・石橋湛山
○石橋国務大臣 外国のことは存じませんが、ともかくこの法律によって、このねらう通りに合理的に原価が下っていく。そして需給の——なるほど需給の方には未確定の分子はあります。しかしながら大体において今までの日本の石炭界のように無方針に生産がふやされるということがない、また需要との関係もある程度規整が行われる。これが安定の根本だと思う。この根本が立てば、あとの需給の関係についてはそれほど心配をする必要がない、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/155
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156・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 やはり需要増が増大して、たくさん掘らして出すところに高能率、低コストということが言えることは、これは石橋通産大臣も経済、財政学者だからおわかりでしょう。これは申し上げるまでもない。やっぱり品物をたくさん作らすところに、いわゆる高能率、その結果が低コストということにもなります。そういう点から二十九年度の四千百五十万トンを三十四年度に四千九百万トン、これだけ需要をふやしていくから、たくさん掘らすからコストが安くなるのだ、こういう計算だろうと私は思う。これでなければならぬと思う。そうすればその需要の計画をやはり保障していく。必ずそれだけは政府が責任を持って掘らすと同時に、お前らの売る先も保障してやる、さっきの言葉を繰り返すようだけれども、天災地変があった場合に政府が責任を持ってやる、これを法律で保障するというところに一つの安定があると思う。さらにそれ以外に、資金面においてやはり貯炭ができた、運転したい、困るだろう、天災地変や経済界の変動で、計画通りいかぬで貯炭ができた、その場合には運転の面においての資金というものについてこういうようにこれを保障してやる、この二つが私は安定化であるだろうと思う。それをやはり何らかの形で、法律で保障するか、行政措置においてそういう場合にはこうしてやるとかいうことを明らかにする以外には、私は安定保障ということは言えないと思いますが、それ以外に何かありますか。私はそれ以外にはないと思うが、それならば、そういうことをすべきであるということをおっしゃるのが正直であると思う。この点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/156
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157・石橋湛山
○石橋国務大臣 私は、先ほど申しましたように、この法律によって生産計画が立ち、原価も下っていけば、お話のような非常な需給のアンバランスを起して、今日の石炭界がこうむっているような難局に立つことはないと信じておる。しかしそれでも、時に何かの事情によって一時的なアンバランスが起るというようなときには、むろんこの行政的な措置を——現在でもいたしておるのでありますが、これはこの法律ができて、これだけの基礎ができますれば、その場合の需給調整は非常に容易になると思います。ですから、わざわざ法律に書かぬでも、そんなことは当りまえのことだ……。
〔伊藤(卯)委員「今までの行政措置では、半年たったってできないじゃありませんか」と呼ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/157
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158・石橋湛山
○石橋国務大臣 それは基礎がなくて……。
〔伊藤(卯)委員「基礎がないと言ったって、できておりゃせぬじゃないか、審議会はできておらないじゃありませんか」と呼ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/158
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159・山手滿男
○山手委員長代理 不規則発言を禁じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/159
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160・石橋湛山
○石橋国務大臣 産業界が野放しになっておる場合にはなかなかむずかしいのでありますが、これだけの基礎ができれば、これは十分にできる、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/160
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161・中崎敏
○中崎委員 次にコストの問題。現在石炭は、御承知の通り全体として一トン当り五百円程度の赤字で売られておるということであります。コストが悪い。それで中小炭鉱の場合においても、はなはだしいのは一トン当り千五百円程度の赤字で投げ売りをしておるという事実があるようであります。そこでこの法律が実施されて、そして政府の目標によれば、最終的には二割程度の値下げになるというが、当面ここ一年、二年の間においては、まず五百円程度の出血コスト、採算割れというものは、当然ほとんど大部分——多少他の面でカバーできたとしても、大部分が値上げの要素になるのじゃないか。そうしてまた中小炭鉱については、千五百円も赤字で出血しておるというのだが、それを依然そのままに放置しておくような考え方を持っているのかどうか。言いかえますと、政府は石炭のコスト二割を下げるというのだけれども、ここ一年、二年の当面においては少くとも相当の値上げになるのじゃないか、それはすなわちカルテルとか、あるいは標準炭価等の形において、現実にさらに値上げになるのじゃないかということを聞きたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/161
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162・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今お話がございました、千五百円も下値のコスト割れのものがあるということでございますが、こういうふうなものは通常統計面等には載って参りませんので、正確にはわれわれも申し上げられませんが、しかしそういうものは非常に数量がわずかでございまして、中小炭鉱がもし千五百円もコスト割れで相当の部分の石炭を売らなければならぬといたしますれば、とても現在のような状態で推移することは不可能でございます。ただ全体として、今御指摘になりました、五百円程度コスト割れじゃないかという点でございますが、これは石炭協会等もそう申しております。それを現実にどのくらい見るかという点はなかなかむずかしいところでございますが、三百円ないし五百円くらいは赤字のところもあるかと思います。しかしこれは全部が、現在の何と申しますか一般の大勢を支配しておる炭価からきた赤字ではございませんので、今お話が出ました、千五百円かどうか知りませんが、非常に極端な出血が出ているものも若干ある、その部分もそれに含まれる、こういうふうなものは、当然ほかの事業との関係においても是正されることは必要でございますが、反面この整理が進み、あるいは需要が伸びますれば、石炭鉱業のように固定費が全体の七割ないし八割というふうな価格構成になっております場合におきましては、一割増産いたしますれば、コストとしては七%ないし八%程度はすぐに下るわけであります。従ってこれは非能率炭鉱の整理と需要の増大等に従って、その面で吸収されるものも相当あると思いますので、今お話しの、五百円すぐ上るというようなことはないものとわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/162
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163・中崎敏
○中崎委員 どうもこの問題については納得いきません。この法律が通ってカルテルができたら、政府の方も一緒にしり押しするかどうか知らぬが、必ずやそこまでの値上げは少くともされるだろうということを私たちは心配しておるのです。これはどっちがしっかりするのか、そのときになったら大よそわかると思いますが、そういうような方向にあるということだけは言うておきます。
さて今度は縦坑に関する問題でありますが、政府は縦坑によって合理化をはかる、そうして炭価を引き下げるということを大きなねらいとされておる。ところがこの場合においては、電力の場合でも同じなんだけれども、初めは何だか豊富低廉な電力を供給するというので、どんどん莫大なる国家資金を投じて、電力の開発をしたのだけれども、結局においては、最終的には現在よりも二割程度の値上げになるのが必至であるということが言われておる。言いかえますと、近代的設備等もあるでしょうが、だんだんと投資の金額がよけいになると、これが償却、金利等に高い圧力を加えることによって、コストが上って、これから二割も上る。ちょうどこの石炭の場合においても、二割下げじゃない、逆にだんだん縦坑だなんということによって、大きな国家資金が犠牲を払わされ、結局においては石炭代金の値上げになるのは必至であるというように考えるわけなんだが、ほんとうにこれについてはどういう見通しを持っておられるのか。電力の二の舞をまた演ずるのではないか、そうしてほおかぶりするのじゃないかということを私たちは心配しておるのだが、その点を一つ聞きたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/163
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164・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 電力の場合には、御存じのように固定資産の償却及び金利というものが、コストの上で非常に大きなウエートを占めておりますが、石炭の場合にはそうではございませんで、これは各委員からもお話がありましたように、四千円見当のコストといたしますれば、まず半分以上は労務費、あとの半分から資材費、金利その他全部をひっくるめて出るわけであります。償却といたしましては、相当投資いたしましたところでも、大体トン当り三百円程度のものでございます。従って相当縦坑その他の合理化構造をやりましても、それによる全体の能率の向上、それから操業度の向上というふうな方面によりますコストの引き下げの効果が、償却ないし金利の増大というようなものよりもはるかに大きなウェートを占めるものとわれわれは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/164
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165・中崎敏
○中崎委員 操業度の拡大と言われますが、あるものを犠牲にしてしまって、その犠牲の上に立ったところの操業度の向上であるならば、これは現実に比較してどっちがどうとも言えぬと思う。片方を犠牲にして、知らぬ顔をして口をぬぐっておって、そうしてこちらだけプラスになったという計算は間違いじゃないか。そこでまず金利の面についても、たとえば今まで一割なり九分程度で貸しておる場合に、これを五分五厘なり六分なりで融通した場合、この金利の幅というものは、この金を貸したことによって売り値が下っても、何らこれはほんとうのコストの引き下げじゃない。言いかえれば、それだけの金を国家がただくれてやって値下げをしておるにすぎないのだから、そういうものを除いて、ほんとうにコマーシャル・ベースの上に立って、縦坑の開発がやられるか、あるいは中小炭鉱の場合においても、現在ある程度の金をつぎ込んでやれば、相当に設備も近代化されるし、経営も合理化されて、そうしてさらに増産の上に役に立つという面もたくさんあるのじゃないかと思うのですが、そういう点を比較勘案して、縦坑の優劣というものは一体どういうものか、それをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/165
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166・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 再三御説明いたしておりますように、縦坑一本掘るだけで非常にコストが下るというものではございませんで、縦坑工事と申しますのは、縦坑を掘ることによりまして坑内構造をすっかり変え、新しい生産方式に見合うような合理化された坑内構造に変えるということでございまして、それによります全体的なコストの引き下げがこのくらいになるということは資料でお出ししてあったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/166
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167・中崎敏
○中崎委員 いろいろ問題がございますが、一応次に進みます。
次に失業に関する問題でありますが、この炭鉱が行き詰まって人身売買までやられておるということは、新聞などでも、また現実のなまの事実としてもわれわれはこの目で見ておるわけであります。現在においてもそうなのでありますが、さらにこの整理が強化されることによって、相当大きな社会問題と同時に経済問題が惹起されることは明らかである。これに対して本年度は、政府のお金によってこの対策として四千人程度の失業対策を予定して、それを今後実情に即して実施していくというような方針のようであります。さてこの四千人程度で一体十分であると思うのかどうか。現在こういうふうな法律を作って、そうして整理を強行しないで、その場合においてはもちろんただ政府が手をつかねて、つぶれるものはつぶれろというような考え方でなしに、大体現状でいけるような態勢に政府は一応他の面においていろいろな施策をやる、たとえば融資をやるとか、あるいは販売機構について一応政府の打つべき手を打って、どうやら漸次安定の方向に業界を向けた、この法律によらないで他の手を、打って現状よりも悪化しない方向にかりに行くとすれば、一体どういうことになるのか、そこのところをお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/167
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168・江下孝
○江下政府委員 先ほども申し上げました四千人をちょっと上回ると申し上げましたのは、この法案が通りまして、事業団が買い上げます対象の事業場に働いているものについての話でございまして、もちろんそのほかに合理化全般によりまして相当数の失業者が石炭方面から本年度出ることは私も承知しております。そこで実はこれは数字を申し上げたいと思いますが、ことしの六月に大体炭鉱地帯だけで失業対策的に運用しておる事業でどれだけの失業者を吸収しておるかというと、四万七千程度でございます。もちろんこのほかに今後合理化措置によりまして相当失業者が出るという予定のもとに、今建設省と特別の失業対策事業あるいは公共事業というものについて話し合いを進めております。四千人というのは、ことしの四半期に出ます、つまり買い上げによるものについては特別にきっちりした計画を立てていく、こういうふうに申し上げたつもりでございます。決して今起っておる失業者に対してなおざりにしておるということではなかったのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/168
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169・中崎敏
○中崎委員 政府の五カ年計画によると、約五万七千の直接の炭鉱に従事しておる者が失業になるというのであります。そうしてその家族の中で現に働かなければならぬ者も相当いる。言いかえるとこの炭鉱地帯においてはほとんど他の産業がないので、別に就職しようと思ってもなかなか口がない。それに関連産業はほとんどみないかれてしまうのだから、そうしたものが一体どういうふうな数になるのか。私たちまだ残念ながらこの資料を持ちませんが、いずれにしても相当の数になると思うのであります。そこで五カ年間に五万七千というと、一カ年間に一万二、三千見当になるのであります。そのほか家族とかあるいは関連産業一切を入れたときに、相当に大きなる失業対策の人間的な人数割の予算が持たれないと、なかなか解決しないと思うのです。他へ流れていこうと思っても、住宅の関係もあり、なかなかこうした専門的な立場の人は簡単に転業できないし、なかなか就職難です。今度の問題はますます深刻だと思うのであります。そういういろいろな角度から、ことに四千人という失業者の対策について一体何カ月と見ておられるか知りませんけれども、それにしてもなお足らないと思います。そうしてそのほかに今度は現に行き詰まって依然として人身売買が行われておるというのだが、そういうものを一体依然としてほっておいていいものかどうかという問題です。これを十分に間に合わすためにはどのくらい予算がさらに必要なのか。さらに他の失業対策として組まれておるものを、これが重点だといってこっちと同じことをやったのでは、人身売買というものはやはり同じように行われているのだから、一時的に弥縫的にそういうことをやるよりも、ほんとうに救うために新しい対策として十分にやるためには一体どのくらい必要なのか、その点を一つお聞きしておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/169
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170・江下孝
○江下政府委員 本年度の予算でございますが、実は先ほどお答え申し上げましたように、失業対策事業の関係で五万人の増加、そのほか公共事業への就労促進ということを特に強力に実施するということで腹を固めておりまして、これによりましてさらに四万人程度の増加を見込んでおります。そのほか鉱害復旧事業が若干昨年度より予算が増加いたしました。この分によりましても約小一万、下水関係の工事等におきましてもやはり五千人程度の増加を見込んでおります。それらのものを合せまして、これは大臣が予算委員会等でも説明いたしたのでありますが、大体本年度におきまして建設的な事業によって昨年度より十四万人の就労増加というものを予算的には計画をしておるわけであります。そこでこれらの予算が実は今まで暫定予算でございましたので、若干予算の令達等おくれましたために、多少炭鉱地方等ではまた情勢が悪化しておるということは、これは率直に認めなければらぬと思います。しかしながら今建設省とも話し合いを進めておりますが、特別失対事業、公共事業というものが全面的に今申し上げましたような予算で実施になりますと、今のような暗い実情はだんだん炭鉱から消えてなくなるというふうに予想いたしております。いろいろ数字につきましての御質問がございましたが、これはなかなか的確にどのくらいそれでは失業者が出るかと言われましても把握することは非常に困難でありますが、一応労務者については先ほど申し上げましたような見当で把握しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/170
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171・中崎敏
○中崎委員 専門家でもち屋のことでありますから、もち屋はもち屋でもう少し見通しのつくようなお考えをお持ちかと思いましたが、必ずしもそうでないので、いささか失望したわけであります。それはそれとして、実際において、ことに今年度に入ってからというものは、失業の状態というものはほんとうに深刻なのであります。ほんとうに都会に限らず、全国到るところ、農村に至るまで、潜在失業者はもちろん、購買力の減退、ことに農村における昨年の秋口からの収穫を通して、相当深刻なことは御承知の通りであります。これに対して公共事業を含めて十四万人程度では実際において焼け石に水だと思うのであります。しかもこれは事業団そのものの実行による失業対策事業を四千人くらいと見ておられるというのでありますが、これではもちろん九牛の一毛で、焼け石に水だと思うのであります。相当の出費を重ねて、相当長期にわたるものだと思うのでありますが、そうして国の費用というものは、実に思わざる方向に多端にわたる出費がある、そういうふうな大きな犠牲を払って、まだなおかつ通産大臣はこの法案を強行して犠牲を出さなければならぬのかどうなのか。言いかえればただ石炭合理化法に基く直接の費用だけ、政府の負担だけで済むというのでなしに、広範な範囲において社会不安と生活苦、と同時に国の経費出費を伴うのであるが、それでもなおかつこれを強行しなければならぬのかどうかを伺っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/171
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172・石橋湛山
○石橋国務大臣 現在石炭鉱業界の状況を見まして、また将来の日本の産業に低廉なるエネルギーを供給するという上から見ましても、この法案はどうしても実行をする必要がある、かように信じておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/172
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173・中崎敏
○中崎委員 先般北海道に行きましたときに、ある市長からの陳述を聞いたわけであります。この町はほとんど炭鉱中心の町で、人口は約十一万ばかりある。ところが今度の整備で——今日までも失業などで市の財政はめちゃめちゃだ、それで今後においてもこの実施によって実は相当の脅威と不安を感じておるのだ、その裏づけとなるところの市の収入については、政府の方において十分の考慮が払われない、また今後どういうふうに払われるかということに大きな不安と疑問を持っておるのだ、いわんや失業対策の問題については非常に困るのだ、たとえば生活保護が目に見えるほどどんどんふえていく、生活保護の二割はやはり市の財政において負担しなければならない、そうして失業者がどんどん出てくるから市の収入というものは減ってくる、事業に対する固定資産税もなかなか取り立てることができない、個人の財産についてもそうなんです。まるきりにっちもさっちもいかないような市の破綻を来たしておるのだが、一体政府はこれらの点についてどういう配慮を払われておるのかというようなことを聞かれた、ただこの法案この法案というような考えで無責任に過ごすことはできない、そこで一体通産大臣はそういった市町村財政の面においていかなる努力を払い、いかなる見通しを持っておるのか、それをお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/173
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174・石橋湛山
○石橋国務大臣 先ほども申し上げましたように現状のまま置いたら非常なことになる、そこでこの法案によって、一面において石炭鉱業の立て直しをはかると同時に、今の市町村の非常な混乱ということは、さらにそれぞれの地方庁との話し合いによって必要な措置はとらなければならぬと思います。これは何も所管を云々するのではありませんが、別途自治庁の問題として、ほんとうに市町村で立ち行かないものがあるならば、何とか、立ち行くようにめんどうを見るということは言うまでもない、しなければならぬことだと思いますが、それゆえにこの石炭合理化法案をやらないということにはならないと思います。石炭合理化法案をやらなければその市町村は助かるかといえば、実はそうではないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/174
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175・中崎敏
○中崎委員 この法案は政府提案の法案であります。従って閣議にかけられ、各関係省間の調整が十分にされ、検討がされて、そうした後において国会に提出されたものと思う。それでなければ無責任きわまるものだ、そこでこうした大きな問題が現実に、市の財政が行き詰まり、どうにもやり切れぬというような現実が目の前にぶら下っておる場合に、もしあればなんというような、そういう安易な考え方を持ってこの法案を出されるから、実行についても各省間の連絡が十分にとられないで、つぎはぎになって法案だけが一方的に独走していってしまう、だからまずその前において、その結果等を十分に考えられ、こういうふうな問題はどうするかというような話し合いを十分につけられて、しかる後にこの法案が出されてこそ初めて責任のある行き方だと考える。それからあなたが今言われたようなことは、海のものとも山のものともわからぬというような状態において、この法案が一方的に進められておるということは無責任きわまるものであると私は考えるのでありますが、これに対して通産大臣は一体どういう処置を講ぜられようとするのか、そこをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/175
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176・石橋湛山
○石橋国務大臣 私が申し上げますのは、この法案によってさように市町村に打撃を与えるとは信じておりません。しかしながら現在地方財政というものは、この法案の実行されるされないにかかわらず、非常な窮状に陥っている部面が多いのでありますから、これはその問題として、別途に取り扱わなければならぬこととして、今研究をしておるというのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/176
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177・中崎敏
○中崎委員 それではお聞きしておきますが、もしこの法案実行によって現実に大きな影響を受けたというふうな場合には、いかなる責任を持ちますか。あなたの方ではこれには全然影響がないということを言われるが、現実にこういう事態においてこういう影響を受けたということが出てくれば、あなたはどういう責任を持ちますか、お聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/177
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178・石橋湛山
○石橋国務大臣 どういう責任を負うかと言われても困ります。それはそのときに考えなければなりませんが、一体どういうわけでこの法案が地方にそういうような打撃を与えるかということを考えてみますと、特にそういう点を取り上げて、この法案として考究しなければならぬというほどの点を認めておらないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/178
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179・中崎敏
○中崎委員 これは一つの大きな根本の考え方の上に立っての問題でありますから、ただ意見の相違だとか、こういうような国民の生活に重大なる関係のある問題を、ああそうですかといって引き下るわけにいかない。そこで一つお聞きしておきたいのでありますが、現実に三百万トン生産しておるところの炭鉱を買い上げるという。それを政府は一方的に一つの買上価格をきめて——これが適正な価格でも何でもない一方的にきめて買い上げる。そうしてその反面においていやがおうでも売らざるを得ないような状態に持っていかれてしまう。そこに問題がある。持っていかれるということは、あなたは政府の政治責任があるということを先ほど言っておられた。こういうふうに石炭業界が混乱して、たくさんの中小炭鉱が参り、そうしてたくさんの失業者が出てきて、人身売買までやらなければならぬという状態にまで追い込んだということは、政府の責任もあるということを言っておられる。そうした責任の上に立って現在の事態が進んでおる、だからそこでこの法律を強行されるというと、スズメの涙ほどの涙金で炭鉱を取り上げられてしまう。ほうっておけば今度は炭鉱がつぶれるというのであるけれども、そういうふうな手放しの自由放任主義のもとにこの内閣ができていない。計画経済をできるだけ取り上げて、そうして基幹産業を中心に、中小企業者を守って、多数の失業者なり生活困窮者が出ないような、そういう政治をやっていくといっておる。ところがわずかばかりの、スズメの涙ほどの対策費をもってこの問題が解決すると思っておられるならば、それは大きな間違いだ。そこを私は言うのでありますが、スズメの涙ばかりの、四千人ばかりの対策費をもってこの問題が今度解決するなどというなまやさしい考え方を持っておるから、こういう大きな資本家擁護の法案が簡単に出されてしまう。ほんとうに苦しんでおるところの大衆の身の上に立って、何とかおれたちはそういう悪い政治でないような方向にもう少し考え直すべきじゃないか。そうすれば現在行き詰まっておるところの中小企業者は一体どうするのか、全体の石炭業界はどうするのかということが先に反省されて考えらるべきだと思う。それを前提としていないところに、本来一方的なそういう弱い者いじめの法案に対しては、われわれは賛成できないのだ。従ってその影響というものははかり知るべからざるものがあります。何ら影響がないというそんな甘いことをあなたは考えているから、ここに大きな社会問題が起る、政府を恨む、あなたはなかなか選挙は上手だから、当選はしてくるかもしれないけれども、大衆はなかなか救われない。そこらのことをよくお考えになって、ほんとうにそういうふうな影響について、おれたちはもう少し真剣に、そのような問題は検討してみようじゃないかというような腹がまえがなければ、この法案には賛成できないということを申し上げたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/179
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180・石橋湛山
○石橋国務大臣 お尋ねの点については十分考えております。それからこれは同じことを繰り返すのでありますが、無理に三百万トン取り上げようというのじゃありません。これは政府で計算しておるように、もし買い上げ炭鉱があるとすれば、もうすでにそれは非常な窮境に立っておるわけであります。むしろそこまで窮境に陥るところまで来たということは、広い意味においては政府の責任もあることは先ほど申し上げた通りでありますから、それゆえに、この罪滅しにこの法案をやって、炭鉱事業の整理をし、そうしてそういう窮境にあるものを救おう、もしこれをやらなければなお一そうわれわれは無責任になりますから、われわれの責任を果すためにこの法案の御審議を願っておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/180
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181・中崎敏
○中崎委員 無理にやろうとしないと言われますけれども、それでは無理にやろうとしないで、四千九百万トンの出炭目標が、あるいは六千万トンにも五千二百万トンにもなるということならつぶさぬでいける。そうでしょう。ところがあなたの合理化計画というものは四千九百万トンということで三百万トンの整理をやって、そうしてこの法案というものはようやく需給のバランスに立っているのです。もしつぶさないで、かりに三百万トンのものが百万トン減って、どうしてあとの二百万トンの処理をします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/181
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182・石橋湛山
○石橋国務大臣 いや、これは原価の問題で国内的にも国際的にも競争能力のある石炭でなければ困るのですから、競争能力のある石炭を今後五千万トンまで出そう、不幸にしてその競争能力が物理的にないと認められるものは、これはほうっておけばやはりいけなくなるのでありますから、そこでこの法案によりまして、そういう炭鉱に対してはできるだけの救済をする意味で買い上げをしよう、かようなわけであります。私は無理に買い上げるのじゃなくて、これはどっちにしても、もしそういう炭鉱が幸いに競争の能力ある炭鉱に全部がなれば買い上げる必要もないわけですからそれは必要ありませんが、おそらくそうならないだろうということをわれわれは心配して、そこでわざわざこういう事業団を作って、大体三百万トンぐらいは三年間に買い上げなければならぬだろう、これは泣く泣くこういう法案を作ったのであります。決して無理にこれをやろうというわけじゃないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/182
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183・中崎敏
○中崎委員 どうも大臣は観念を混同していらっしゃるのじゃないかと思いますが、それはもう少し考え直さなければならぬ。結局において無理にする、せぬにかかわらず、ここ三年間の中において三百万トンの炭鉱を一応買いつぶさなければこの計画は成り立たぬということだけは——結果において三百万トンの炭鉱を、これはABCというのかそれは知りませんが、いずれにしても三百万トンの炭鉱というものは買いつぶされてなくなっていくということだけはお認めにならなければならぬのですが、その点はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/183
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184・石橋湛山
○石橋国務大臣 いや必ずしも買わぬでもいい。もしその三百万トンの炭鉱が、先ほど局長が言いましたように、品質の上からいうて合理化の目標を九〇%はこえている、あるいは原価においても七〇%をこえているとかいうような基準になって、十分これから競争していけるという力があるものは、われわれは決して売って下さいとは申し上げません。けれども、残念ながらおそらく先ほどからお話がありましたように、競争力をどうしても保ち得ない炭鉱が相当にあるだろう、こう思うから買い上げる。問題はそこにある。そのコストが、どれほどのコストで今後生産ができるかということで、数量だけの問題ではない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/184
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185・中崎敏
○中崎委員 どうもおかしいですが、四千九百万トンの目標計画を立てながら、競争力がふえればというが、六千百万トンまで売れるのだというふうな前提があればいいけれども、ちゃんと四千九百万トンという目標をきめておいて、この線で安定するといいながら、あとつぶす方、生産の方はどうでもいいのだということでは計画は立ちません。計画の根本的な考え方を変えていかない限りには私は理論的には成り立たぬと思いますが、それはそれでいいです。
次に、この法案が法律になって実行する際においては、これとうらはらの関係にあるところの重油の規制というものが当然に問題になるのであります。ところが、この重油の規制について今この法案を出されてありますけれども、この法案があるいはそのまま通過するのか、さらには通過しないのか、あるいはまた大きな修正を見るのか、はっきりしないのでありますが、重油について、先般もワク外に五十万トンの割当がされる方向に進んでおるように聞いておるのであります。そうすると、こうしていろいろ計画はあるけれども、そのときの情勢に従って漸次変更もあり得る、そうしたような問題について通産大臣は、この石炭合理化の実行の裏づけとしての重油の関係については一体どういうふうにお考えになっておるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/185
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186・石橋湛山
○石橋国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、重油の規制を強力にやってくれというのは、石炭から見ればそれは確かにその通りでありますが、これはまた全体の産業のこともわれわれは考えなければなりませんから、重油の規制はいたしたいと思いますが、これも徐々にいたしたいと思います。急激な規制をいたしますとほかの産業に非常に大きな影響を及ぼしまして、石炭には都合がいいかもしれないが、全体の産業面にはよくありません。そこで、規制はいたしますが徐々にいたします、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/186
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187・中崎敏
○中崎委員 こうした重油なりあるいは石炭の計画なりという問題は数字の問題であります。ただ抽象的に、観念的に私たちはそう言われて、ああそうですかと言って引き下るわけにいかない。そこでこの重油の面については、今後五ヵ年計画の中にどういうふうな考え方をもってこれを規制されようとするのか、お聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/187
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188・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 重油の消費の見通しにつきましては資料としてお配りしてございますが、昭和二十九年度におきまして鉱工業用の用途に向けられました重油の数量は三百七十万キロ、それを昭和三十四年度におきましては二百九十五万キロまで圧縮する、こういうことになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/188
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189・中崎敏
○中崎委員 これはその一つの計画でありまして、一つの参考にはなると思うのでありますが、現にこれについては、先般の漁業への割当等がどういうふうにやられておるか、その前後における数字の上において変化はないか。私たちの考え方からいうと当然漁業については前の実績もあるし、そうしてまた漸次業界におけるところの受け入れ態勢は確立されておるのだし、水産業というものは日本におけるところの一つの基礎産業として大きな産業部門を占めておる。そういうふうなものが現在非常に苦境に追い込まれておる。漸次大きな資本産業のために漁業というものが非常に追い詰められ、ことに沿岸漁民の状況というものは実に惨たんたるものがある。それが漁村における漁業協同組合を中心して運営されておる。そういうようなものに対して当然できるだけ安い原価によって提供することによって、こうした行き詰まったところの漁民の生活を確保し、あわせて漁村の民主化をはかっていきたいというのが私たちの主張であるのであります。そういうふうな考え方になると、今後においてもやはりこれらの人たちの利益もひとしく守り、いたずらに外国の石油資本のみの利益をはかるということが能じゃないので、こうしたことは今石橋さんが言われるように石炭と石油というものがやはり同じようなウエートの上に立って、この両面の行政が進んでいくべきものだと考えておる。ところが石油の需要増加というものは自然の趨勢なんです。石橋さんが言われるように世界の趨勢にさおさして国際的な基準に立って競争を進めていく、石油資源の原動力についてもこれを認めないわけにいかない。石油が漸次増加することは世界の大勢であり、日本もある意味においてそういう方向をさおさしておる。それをことさらに無理に切り詰めていくというような考え方というものが果して調和を得たところの考え方であるのかどうか。石油資本の目に余るところの横暴並びにそうしたところの不当な利益については、他の措置によりましてこれを調整すべきものであると私たちは考えておる。ただ石油資本家がもうけておるからというので、今度は国の産業を根本的にくつがえして石油をどんどん切っていくという考え方が一体正しいのかどうか、こういう考え方の上に立って、相当大幅に毎年減らしていくというところの政府の考え方というものは、石橋さんが言うところの世界の大勢におくれないでついていくのだという考え方と逆行するのではないか、そこのところをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/189
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190・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今、漁業用の重油のお話がありましたが、私が申し上げましたのは、工鉱業用の重油の消費についての数字を申し上げたのであります。漁業用でありますとか、あるいは民用でありますとか、重油でなければならない用途につきましては、当然その需要がふえますれば、それに見合うだけの数量は確保するというのが通産省の政策であります。それから工鉱業用の重油につきましても、これは重油の規制の案で御説明いたしておりますように勧告によりまして逐次設備を転換してもらって、その転換に応じて配給量を減らしていく、その見通しが昭和三十四年度において二百九十五万キロになるというように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/190
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191・中崎敏
○中崎委員 たとえば石炭の場合においては漸次低品位炭の利用等も含めて、しかも設備の近代化によって漸次重油を現在よりもよけい工鉱業用に使っていかなければならない。そのほかにおいても、これは困る、それは困るというようにほんとうの実情に即したところの要望等があって、それじゃこれも認めましょう、あれも認めましょうと、だんだん幅が縮減されておる。ほんとうにもう最低のボイラー用の、今では実際使っておるか使っておらないかわからない程度のものが規制の対象になっておるにすぎない。そういう類のものを計算してみると、現在程度の五百三十七万キロ程度のものでいくのが一ぱい一ぱい、これ以上は圧縮できないというような状態になっておるのですが、それ以上あなたが言われるように二百七十万キロまで圧縮していってみて、漁業用の油には手を触れないで——漁業用の油は需要がふえておる。だんだん遠洋の航海もふえていっておるのですが、工鉱業用の重油をそこまで圧縮して、一体日本の産業はどうなるか、そういうことを十分考えてみた上で、果してあなたの計画が正しいかどうか、ただ単なるマスターベーシヨンなのか、そこを一つお聞きしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/191
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192・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 先ほども御説明いたしましたように、私が今申しました二百九十五万キロという数字は、船舶用、漁船用の数字は含んでおらない。きわめて具体的に農水産関係の数字の関係を申し上げれば、二十九年度の実績九十五万キロが百二十八万キロまでふえる計算をしておるのであります。また工鉱業用は二百九十五万キロに減らす。工鉱業の重油につきましても、たとえば鉄鋼の平炉でありますとか、あるいは金属工業の加熱炉でありますとか、ガラス工業の溶解炉でありますとか、そういった重油でなければならないもの、あるいは重油以外の石炭、ガス等においても十分操業ができるのであるが、しかしコストに非常に大きな影響を及ぼすというふうなものについても、これは生産が伸びるに従って需要がふえるものというように計算しておりまして、具体的に申し上げれば昭和二十九年度において百二十八万キロのものが百六十万キロまでふえるというふうに計画してございます。そういうふうに経済的に、あるいは技術的に、重油でなければならないもの、あるいは重油から石炭に切りかえますと、コストに非常に大きな影響を及ぼすようなものは除きまして、ボイラー用あるいは暖厨房用というような、経済的にも転換いたしましても比較的影響の少いものを逐次転換して参りまして、二百九十五万キロまで工鉱業用のものは圧縮したい、こういうことになっておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/192
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193・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 齋藤局長に伺いますが、二十六年に入っていた重油は二百何十万キロであったと思いますが、二十六年から漸次ふえて御存じのように三百万キロリッター程度にふえてきておる。その年度別にふえてきておる計数関係、それからそれが石炭との関係において、どのように実際に石炭が重油に切りかえられておるか、それらの点を具体的にお知らせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/193
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194・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 工鉱業用の重油について、これは石炭に関係のある重油でありますが、それについて申し上げますと、昭和二十六年度の実績が九十四万九千キロ、二十七年度の実績が百七十七万九千キロ、二十八年度は三百五十三万六千キロ、二十九年度が三百四十五万七千キロ、こういうふうになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/194
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195・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 それが石炭から重油に切りかえられたわけですが、この二十六年から九年までの間に重油のために切りかえられた石炭のトン数が幾らになっているかお知らせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/195
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196・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは実は石炭の全体の需要が減りましたうちで、重油の分がどれだけかということをここにトレースすることはなかなか困難でございますが、重油の使用量がふえるに応じまして、そのふえた量を石炭にある比率で換算するということで影響が考えられるのでございますが、その比率につきましても別にきまった意見はございません。ただ石炭業界等では、大体二倍という計算をいたしますと七百万トンくらいということになります。それから一・八倍程度のものだと——カロリーから申しますとそのくらいになるんじゃないかと思いますが、一・八倍程度でありますと、それよりも若干少いということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/196
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197・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 こまかいのは要りません。たとえば火力発電のごときも低品位炭にカロリーを高くするためにこれを混焼をしておる。あるいは鉄道その他セメントなどもやっておる。そのおもなる産業においてどのように石炭から重油に切りかえておるか。その率とそれからどういうおもなる産業において、混焼をどのように扱っておるか、そういう点をお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/197
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198・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 電力について申しますと、これは混焼用等に若干使っておりますが、大部分は保安用及びスタート用ということになっております。ただ新しい新鋭設備がふえまするにつれまして、そういった始動の際に油を使わなければならぬ、あるいはある程度ロードが下った場合に油を使わなければならぬという設備がふえて参りますので、そういう関係で油がふえて参る次第であります。電力について申し上げれば、昭和二十六年度には十二万キロ程度であったものが、二十九年度では三十三万キロ程度のものを使っておる次第でございます。この分は二十九年度はまだ若干残っておりますが、しかし電力事業につきましては、電力会社も相当協力いたしまして、今申しましたような技術的に保安用あるいはスタート用というふうな、油でなければならぬもの以外はできるだけ使わない。但し異常な渇水で予備設備を動員しなければならないような場合は、その予備設備に若干油を入れる場合がございますが、あまり使わないということで、将来も大体三十万キロ程度の油でやっていくということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/198
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199・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 二十六年以後政府が石炭から重油に切りかえろといって、奨励をして盛んに切りかえさせたのであるが、それはどの産業とどの産業で、そのために出した奨励資金というか設備切りかえ資金というか、そういうものがどのくらい出ておるか。それから奨励によって切りかえられたために石炭がどのくらい減っておるか、その辺のこともお示し願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/199
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200・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは前に御説明いたしたと思いますが、政府が勧奨したといいましても、別に公式に文書を出して勧奨したというふうなものではございませんので、それぞれの局の担当者に意見を聞かれた場合とか、あるいはそれぞれの局のそれぞれの事業の担当者がそういうことを勧奨した場合もあるという点で、公式に文書をもって勧告したというふうなことはいたしておりません。従ってどの分が勧奨によって転換したのだというふうなことのデータを出すことは不可能だと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/200
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201・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 すでにその当時、石炭から重油へ切りかえろといって盛んにおやりになったことは、内閣はかわっておるけれども、政府委員の方はおかわりになっておらぬ。従って行政庁としてはそれはおわかりになっておる。従ってその当時切りかえろといってお勧めになったものはちゃんと記録に残っておるはずでございます。従ってその切りかえさしたものがどれだけ石炭を使っておって、油にどれだけ切りかえて、そのために石炭がどれくらい要らなくなってきたかということは、きわめて明確に記録上残っておるはずでございます。だから奨励をして切りかえさしたもの、それがどれどれか、それからその切りかえたために、どのくらいの石炭が圧迫を受けて要らなくなってきておるかということ、それから混焼なども勧めておるのであるから、混焼によってどのくらいこの重油がふえ、石炭がそのために要らなくなってきておるかということも、数字上きわめて明確にわかっておるはずでございます。それをお出しを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/201
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202・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今御説明いたしましたように、政府が重油転換について公式に文書をもって勧告したような例は全然ございません。従って個々の担当者について、業者の方から聞きに来た場合に意見を述べるとか、あるいは場合によっては、ちょうど一昨年の石炭のストの当時でございますが、燃料が不足のために困っておるというような場合に、それでは油に切りかえたらいいのじゃないかというふうな、非公式の行政指導と申しますか、やったものはございますが、そういう形で行われておりますので、記録がございません。従ってその数字を出すことは不可能だと申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/202
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203・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 奨励のために切りかえの資金をお出しになっております。従って奨励資金を出していますから、国家の資金を出して、それの記録のないということはないはずでございます。ただ言葉だけの勧めではございません、そういう資金を出して切りかえさしておるのでありますから、従ってどれにどれだけ資金を出して、どのように切りかえたかということは、おのずから当時の行政庁として、どういうのに勧めたか、従ってどういうのにそういう資金を出したか、その出したところ並びに金額というものがわからないということはないはずでございます。これは会計検査院も当然そういうことをとられておると思いますから、そのとられた処置を一つお示しを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/203
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204・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは鉱山局長の所管でございますので、別に後ほど鉱山局長から必要がございますれば答弁いたしますが、重油の転換のために政府資金を融通したということはないように聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/204
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205・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 川上鉱山局長がお見えになったから、石炭局長とお打ち合せの上、御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/205
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206・川上為治
○川上政府委員 ちょっと今おくれて参りましたので、御質問の御趣旨がよくわかりませんが、今ちょっと石炭局長から聞きますと、政府の方で、石炭の方へ重油の設備を切りかえて転換したことに対して、何か資金のあっせんなり、そういうことをしたかどうかという問題かと思います。その問題につきましては、まだ今までは一件もございません。
それからもう一つは、この行政指導なりによって転換したものの業種別の事例をあげてくれというお話でございますが、はっきりした数字は今ここに持ってきておりませんが、昨年からことしにかけまして、非常にわずかでございますけれども、十数件ございます。石炭の方から重油の方へ切りかえた資料は、実はできておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/206
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207・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 私はさっきからそれを伺っておる。従って、そのために、やはり石炭から重油へ切りかえろということをお勧めになったことはきわめて明瞭でございます。そのためにまた、資金の方においてもあっせんされたことも、私は存じております。だから従って私がさっきから斎藤石炭局長にお伺いをしておったのは、お勧めになって切りかえたために、石炭がどのくらい要らなくなってきておるか、そめために重油がどのくらいふえてきておるか、二十六年以後石炭から重油へ切りかえて、重油がどのくらいふえてきておるか、そのために圧迫を受けておるところの、この要らなくなった石炭がどのくらいになってきておるか。それからさらに火力なり、あるいは鉄道なり、あるいはセメントなり、いわゆる混焼をしておるのである。これもお勧めになっておる。従って、そういう従来やっていなかったものも混焼を始めたのであるから、そのために粉炭が要らなくなって、重油がそのためにふえてきているのである。そういう混焼によって、油がどのくらい、特にそういう方面に使われるようになって、そのためにまた従来粉炭として使われていたものがどのくらい要らなくなったか、こういうことをお知らせ願いたいということをさっきから言っているのでございます。この点を一つお知らせ願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/207
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208・川上為治
○川上政府委員 これは非常にむずかしい資料でございます。私の方としまして三、四年前に、石炭の方から重油の方へ転換するようにという行政指導を、特別な業種についてやったことは事実でございます。しかしながら、そういう措置によって、しからばどの程度従来重油の方へ転換されたか、さらにまた先生のおっしゃいました混焼設備がどうなったか、重油専焼設備がどういうふうにふえていったかという詳細な資料につきましては、私の方では実は持っておりません。しかし二十六年度におきまして、重油全体の消費量が約二百万程度、二百十七万一千キロリットルというふうになっておりますが、これが二十七年度におきましては三百五十九万キロリットル、二十八年度におきましては五百五十六万キロリットル、それから二十九年度におきましては、御承知の通り五百三十七万キロリットルというふうに、この二十六年から二十七年、二十八年にかけまして、重油の消費量が非常にふえたということは事実でございます。特に二十六年の二百十七万キロリットルに対しまして、二十八年度におきましては五百五十六万キロリットルでありますので、倍以上ふえておることは事実であります。これは先ほども申し上げましたように、われわれの方としましてもその時分に転換を勧奨しました関係もあって、そしてこれが相当ふえたということも考えられますが、それだけではなくて、やはり当時、二十七年の暮れでありましたか、二十六年の暮れでありましたか、この石炭が非常に不足したという関係から、重油の消費が非常にふえた、そしてまた必然的に石炭の方から重油の方へ切りかえていったということも、これは見のがせない事実だと考えます。そういう両方の意味合いから、相当量これがふえまして、そして石炭の分野を相当侵蝕したことは事実でございますが、ただ今先生のおっしゃいましたような、では混焼設備はどうなっているか、専焼設備はどうなったか、それはどの程度ほんとうに食われたのかという点になりますと、これはなかなか正確な数字もつかめないと考えられますし、また私の方としましても、現在そういう資料を持っておりませんので、はなはだ残念でございますが、ただそういうことによって非常にふえたということは、これは事実でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/208
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209・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 私は、そういうこまかい無理なことを言って、あなた方を特に苦しめようとは思っておりません。ただ一つ、これは大臣に伺わなければならぬのは、先ほど齋藤石炭局長は、政府から、石炭から重油へ切りかえろという公文書を出したことはないと言われたようでございましたし、ただいま川上局長は出したと言われておるのですが、こういうことというものは、一応大臣はそういう点を統括しておられるのですから、御存じだと思うし、従って省議か何かお開きになることだと思いますから……。(「前内閣だった」と呼ぶ者あり)前内閣だったといったって、引続いてこの内閣に至ってもそういうことをしておる。君などは自由党時代からいるからなおさらよく知っておる。(笑声)そういう省議をお開きになってこういうものをおきめになると思うから、局長の間には十分な連絡がついておるし、従って大臣としてこういうことは御裁定になっておることだと思いますが、そういう点どうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/209
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210・川上為治
○川上政府委員 当時の事情は、私も関係しておりましたので、大体覚えておりますので、私から申し上げますが、先ほど齋藤石炭局長から、公文書でそういう石油の方へ転換しろという文書を通産省の方が出した、それは省議決定によって出したということはないということを申し上げたそうですが、私も実は公文書でそういうような措置をとったこともありませんし、省議におきましても、重油の方へ切りかえろということを決定しておりません。これは私一番よく知っておるのですが、省議におきましてそういう案が議題にされたことはございますけれども、しかし省議においてそういうことを決定すると、これは急激に石油の方へ切りかえられるというおそれが非常にあるので、これは大体現在の状態をもう少し見守っていた方がよくはないかということになりまして、省議ではそれは取りやめになっております。従いまして公文書によって重油の方へ転換させるというふうな措置をとったことはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/210
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211・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 それでは先ほど川上局長のおっしゃったのは、局長個人としてそういう方へ切りかえろということをお勧めになったというわけでございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/211
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212・川上為治
○川上政府委員 私は別に各業者に対しまして油の方へ転換しろという勧めをしたことは一つもありません。ただ通産省内部におきまして、たとえば輸出に相当影響があるものとか、あるいはまた燃料費がコストの中で相当大きな要素を占めておるとか、そういうものにつきまして、これは石油の方へ切りかえた方がよくないかという指導を各局においてそれぞれやったことは事実であるということを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/212
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213・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 どうも局長の答弁は、先ほど齋藤局長がああいった答弁をしたものだから、これをかばおうというところから、終始一貫をいたしておりません。これはお互いの内輪の仲として、かばおうという人情はわかります。しかしあなたのさっきおっしゃったことと今おっしゃっておることが全くちぐはぐであることは、あなた自身もこれはいささか困ったということで御答弁になっておるのだろうと思います。私はこれをさらに追及するなら、こういった重大な問題を、一局長がそういう扱いをしてよろしいかということをきめつけなくてはならない。けれども私はそれを今突っ込んで、あなた方をそういうようなことでより以上追及しようとは思いません。しかし今の話の点から、私は少し意地悪く突っ込んでいけば突っ込むとが十分にできると感ずるけれども、しかしそれでは結局川上局長をとにかくえらくとっちめることになるから、私はこれ以上は追及しません。そういう点は非常に重大な問題ですから、特に石炭局長と油の方の川上局長とは一緒になって、そういうことを十分御相談されなければならぬ。それからこれは特に日本の産業経済に重大な関係を持つものだから、省議としてそういうことをきめられて、そうして大臣の一つの方針として扱われる、またそういうことは閣議によってもきめられるというほどの重大なものであろう、私はこう思うが、その点どうでしょう。私の今申し上げておるようなことは、当然重大なこととして大臣がやはり方針をきめられなければならぬものだと思いますが、石橋通産大臣、こういう問題について、今後のこともありますから、どのようにすべきものであるか、局長が個人的に石炭は石炭、油は油ということでやるのはどうかと思うが、大臣はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/213
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214・石橋湛山
○石橋国務大臣 そういうふうに全面的に重油から石炭に転換するとか、石炭から重油に転換するというようなことならば、これはむろん通商産業省としては大臣の決裁も要しますし、あるいはまた政府の決定を要する。今局長の申しましたのは、たとえば輸出品について燃料が高くて困るという苦情があったときに、それでは重油にしたらよかろうというような一つ一つの産業の指導としてやったんですから、これは政府の方針として全面的にやったことではないと私も——私の時代ではありませんからこまかいことは知りませんけれども、私はそういうふうに聞いておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/214
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215・山手滿男
○山手委員長代理 残余の質疑は次会に行うことといたします。
次回は明二十一日午前十時より会議を開くこととし、本日はこれをもって散会いたします。
午後五時五十四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204461X04519550720/215
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