1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年七月十九日(火曜日)
午後一時四十八分開議
出席委員
商工委員会
委員長 田中 角榮君
理事 長谷川四郎君 理事 山手 滿男君
理事 内田 常雄君 理事 前田 正男君
阿左美廣治君 秋田 大助君
小笠 公韶君 齋藤 憲三君
鈴木周次郎君 野田 武夫君
淵上房太郎君 加藤 精三君
小平 久雄君 堀川 恭平君
加藤 清二君 櫻井 奎夫君
多賀谷真稔君 田中 武夫君
帆足 計君 伊藤卯四郎君
田中 利勝君
社会労働委員会
委員長 中村三之丞君
理事 中川 俊思君 理事 松岡 松平君
理事 大橋 武夫君 理事 山花 秀雄君
理事 吉川 兼光君
植村 武一君 臼井 莊一君
小川 半次君 亀山 孝一君
菅野和太郎君 草野一郎平君
小島 徹三君 山本 利壽君
横井 太郎君 高橋 等君
滝井 義高君 神田 大作君
堂森 芳夫君 山口シヅエ君
出席国務大臣
通商産業大臣 石橋 湛山君
労 働 大 臣 西田 隆男君
出席政府委員
自治政務次官 永田 亮一君
経済審議政務次
官 田中 龍夫君
総理府事務官
(経済審議庁調
整部長) 松尾 金藏君
通商産業事務官
(鉱山局長) 川上 為治君
通商産業事務官
(石炭局長) 齋藤 正年君
労働政務次官 高瀬 傳君
労働事務官
(職業安定局
長) 江下 孝君
委員外の出席者
大蔵事務官
(銀行局総務課
長) 谷村 裕君
労働事務官
(労政局労働法
規課長) 石黒 拓爾君
商工委員会専門
員 越田 清七君
商工委員会専門
員 谷崎 明君
商工委員会専門
員 菅田清治郎君
社会労働委員会
専門員 川井 章知君
社会労働委員会
専門員 引地亮太郎君
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本日の会議に付した案件
石炭鉱業合理化臨時措置法案(内閣提出第一一
三号)
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〔田中商工委員長委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/0
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001・田中角榮
○田中委員長 これより商工委員会、社会労働委員会連合審査会を開会いたします。
先例によりまして案件を所管する委員会の委員長である私が委員長の職務を行います。
石炭鉱業合理化臨時措置法案を議題となし、審議に入ります。まず石橋通商産業大臣よりその趣旨の説明を求めます。石橋通商産業大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/1
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002・石橋湛山
○石橋国務大臣 ただいま議題となりました石炭鉱業合理化臨時措置法案につきまして御説明申し上げます。
一昨年来、わが国の石炭鉱業は深刻な不況に悩まされておりますことは周知の通りでありますが、この間、約二百の休廃止炭鉱と約九万人の炭鉱失業者とが発生したのであります。しかもなおその不況はとどまるところを知らざるありさまであります。わが国の石炭鉱業が、このような深刻な不況を招来した原因は多々ありますが、根本的には、わが石炭の生産費が高いことにあると申して誤りがないと存じます。すなわち今日のわが国の石炭は、採掘条件の悪化、能率の低下等によりまして生産費の異常の騰貴を来たし、ここにすなわち割安な重油や外国炭が大幅に石炭の需要分野に進出することになったのであります。従ってわが石炭は、これらの輸入エネルギー源と競争するために企業採算を無視した価格において対抗せざるを得ない情勢に立ち至ったのであります。加うるに昭和二十八年下期以来のわが国経済界の不景気は、石炭需要の減退を招来し、いよいよ石炭企業の困難をはなはだしくいたしたのであります。もしこの情勢に対し、今日抜本的対策を講ずることなく、現状のままに推移いたしますならば、わが国石炭鉱業は衰減の一途をたどり、容易ならざる事態を発生する懸念があります。
ここに政府といたしましては、わが石炭の生産費を引き下げ、輸入エネルギー源と十分競争し得る石炭価格を合理的に形成せしめるための抜本的対策をとる必要を痛感し、鋭意検討を進めて参ったのでありますが、このたびようやく成案を得るに至りましたので、すなわちここに石炭鉱業合理化臨時措置法案を提出し、御審議を仰ぐことにいたした次第であります。
本案の目的は、第一章にその概要をしるしてあります通り、一定の計画に基いて縦坑開さく等の合理化工事を実施し、また坑口の開設を制限し、非能率炭鉱を整理いたす等の方法により、石炭鉱業全体の合理化をはかり、もって国民経済の健全なる発達に寄与することを目的とするものであります。またこの合理化の効果を炭価に反映せしめるための措置としては標準炭価を設定公表いたし、合理化の進捗に応じて逐次これを低下せしめるとともに、一時的な状況によって著しくこれを上回る石炭価格の生じた場合には、価格引き下げの勧告を行なう等の手段によってこれを一定水準にとどめようとする次第であります。
第二章には、石炭鉱業合理化計画についての規定を掲げました。ただいま述べました石炭鉱業合理化のための諸施策を総合的に実施するための措置といたしまして、通商産業大臣は、石炭鉱業合理化基本計画及び石炭鉱業合理化実施計画を策定公表することを定めました。石炭鉱業合理化基本計画は、昭和三十年度から三十四年度までの長期計画でありまして、その定める事項といたしましては、合理化工事の概要、炭鉱整備計画の概要及び合理化の目標等であります。
次に石炭鉱業合理化実施計画は、石炭鉱業合理化基本計画を実施するための年度別計画であります。なお政府は、この合理化計画達成のために必要なる資金については、その責任として、これを確保に努めることを規定いたしました。
第三章は、石炭鉱業整備事業団についての規定であります。合理化工事の実施は必然的に炭鉱の操業度の向上をもたらしますので、これに伴って石炭の生産を需要に対応した適正規格に集約化するため、一面非能率炭鉱の整理を行う必要があります。この整理の実施機関として石炭鉱業整備事業団を設立いたします。この事業団は合理化計画に定める整備基準に該当する炭鉱の採掘権及び鉱業施策をその事業主の申し出に応じ買収するものであります。その目標は大体三年間に、年産約三百万トンに相当する炭鉱を買収する予定であります。これに要する資金は約八十億円でありますが、この財源といたしましては、炭鉱の事業主から前年中の出炭量に応じて一律に徴収する納付金と、日本開発銀行及び中小企業金融公庫から貸付を受けている炭鉱主から徴収する納付金との二つをもって充てる計画であります。この後者は開発銀行及び中小企業公庫の炭鉱向貸付金の金利を引き下げましてその引き下げ額に相当する金額を徴収するのであります。
またこの措置の実施によりまして発生する炭鉱離職者に対しましては、事業団から平均賃金の一月分に相当する金額を支払うほか、未払い賃金がある場合には、事業団が炭鉱の事業主にかわってこれを弁済し得る措置を講じました、なおこの合理化計画の実施によって生ずる炭鉱離職者に対しては、それ以外の炭鉱失業者とあわせ、特に炭鉱地帯に諸種の事業を興してこれが配置転換を有効に実施する計画であります。
第四章は坑口の開設の制限についての規定であります。生産体制の集約化の措置をいたしまして、既存非能率炭鉱の整理を行うほかに、新規に非能率炭鉱の発生することを抑制するために、石炭の掘採を目的とする坑口の開設について、許可制をしくことといたしました。この制度によりまして既存の炭鉱の合理化をはかるための坑口及び新規の炭鉱については高能率炭鉱の坑口以外は坑口の開設を許可しないことといたしました。ただし、この措置はその性質上必要最小限の期間にとどめるために特に三年間に限り実施することといたしました。
第五章は、石炭の販売価格及び生産数量の制限についての規定であります。上述の措置とともに、生産費の引き下げが炭価に反映する措置を講ずることが国民経済に寄与するゆえんでありますので、合理化による生産費の低下に応じて毎年通商産業大臣は石炭鉱業審議会の意見を聞き、標準炭価を決定公表いたします。そしてもし石炭の販売価格が、この標準炭価を著しく越える場合には、その引き下げを勧告することにより炭価の合理的引き下げをはかる措置を講ずることといたしました。なおはなはだしい不況に悩んでいる石炭鉱業の現況にかんがみ、炭価が標準炭価を著しく下り、合理化計画の達成に重大な支障を生ずるような事態に対しましては、通商産業大臣の指示により生産数量及び販売価格の制限に関する共同行為を実施し得るように独占禁止法の例外措置を認めることといたしました。
第六章は、石炭鉱業審議会についての規定であります。通商産業省に石炭鉱業審議会を設置し、合理化計画、標準炭価、坑口の開設の制限等重要事項につきましては、これに諮問することといたしました。
以上のほかに第七章に、この法律実施上の補完規定とも申すべき雑則を、第八章にこの法律の違反行為に対する罰則をそれぞれ規定いたしております。
なお、本法はその目的にかんがみ、現在計画されている石炭鉱業の合理化が達成せられる五年後に廃止いたす所存でありますが、事業団につきましては、その保有する鉱区に関する鉱害賠償の処理に相当の期間を要しますので、その処理の終了するまで存続せしめうるように別に本法の廃止法を定めることといたしました。
以上はなはだ簡単でありましたが、この法案の構成につきまして御説明申し上げた次第であります。
政府といたしましては、申すまでもなく一切の偏見を排し、公正無私の立場において考慮した結果、この法案こそ現在のわが石炭鉱業及び産業界の実態に即し、その健全なる発展をはかるため最も適切の策なりと信じて御審議を願う次第であります。何とぞ各位におかれましても、政府の意の存するところを了とせられ、御協賛を賜わらんことを切に希望してやまない次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/2
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003・田中角榮
○田中委員長 引き続き本案について質疑に入ります。念のため委員諸君に申し上げますが、本日政府委員及び政府説明員として、経審より長官高碕達之助君、政務次官田中龍夫君、調整部長松尾金藏君。大蔵省より主計局長森永貞一郎君、銀行局長河野通一君。通産省より大臣石橋湛山君、官房長岩武照彦君、石炭局長齋藤正年君、鉱山局長川上為治君、労働省より大臣西田隆男君、政務次官高瀬傳君、職業安定局長江下孝君、自治庁より長官川島正次郎君、以上の諸君が出席をせられる予定であります。
質疑の通告がありますので順次これを許します。大橋武夫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/3
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004・大橋武夫
○大橋(武)委員 私は最初に通商産業大臣にお伺いいたしたいと思うのでございます。この石炭鉱業合理化ということは、石炭界にとりまして非常に大きな問題でありまするばかりでなく、特にわが国の産業全体にとりましても非常に重大な問題であると存ずるのであります。従いまして政府がこの法案において意図しておられまする石炭鉱業の合理化という実が上るか上らないかということにつきましては、単に経営者諸君の協力を必要といたしますばかりでなく、関係労働者諸君の協力もまたどうしても得なければならない、かように存ずるわけなのでございます。そこで第一にこの石炭鉱業合理化措置を推進せられるに当りまして、今日まで関係労働者諸君に対しまして、政府はいかなる協力を要請せられておりまするか、この点を第一にお伺いいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/4
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005・石橋湛山
○石橋国務大臣 御説の通りこの法案を執行するためには、特に企業者及び労務者の協力が必要であります。従ってそれぞれの向きについて、事務的には石炭局から労働組合等にも話を通じております。ただ完全にその賛成を得るというところまではいっておらないことは現在遺憾でありますが、なお今後努力して参れば、私がただいま申し上げましたように、実はほかに非常な名案というものがあるとも思いません。必ず労働組合等の協力を得られるものと信じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/5
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006・大橋武夫
○大橋(武)委員 今日まで関係労働組合に対して政府が協力を要請せられるに当ってとられました具体的な措置は一体どういうふうなものでございましたか。政府委員からでもよろしゅうございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/6
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007・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 御存じのように、炭鉱の労働組合には全国に二つの組織がございまして、俗に炭労及び全石炭と申しております。その中央の組合の幹部と数回にわたりまして、この法案の説明並びに協力の要請方の話し合いをいたしました。今大臣からお答えいたしましたように、どうも全面的にこれに賛成だというわけにはいかないという態度でございました。なお両派の社会党の方々にも数回御説明をいたしました。その際にもあらためて組合の関係の方も入って、なお説明あるいは相談をいたしましたけれども、やはり最終的にはこの法案に賛成であるという返事は得られなかった次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/7
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008・大橋武夫
○大橋(武)委員 どういう点において反対である、ないしどういう点に賛成ができないということになっておりますか。その反対をしておられまする条項並びに理由について伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/8
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009・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは両組合で若干差はございますが、主要な点は一致しておりまして、第一点はこの法案の基礎になっております石炭の需要の関係でございますが、政府の見積っておりますよりも、もっと需要を拡大することが可能ではないか。もしそれが可能であるならば、人員はこの法案に考えてあるよりももっと離職者と申しますか、失職者と申しますか、そういうものを減らし得るのではないか、こういう点が第一点。
それから第二点といたしまして、この法案で合理化を進めると、当然離職者が出てくるわけでありますが、その離職者に対する就労対策と申しますか、むしろ転職対策と申しますか、そういうものが非常に不十分であるという点、この二点が一番根本的な点でございます。なおそのほかに問題になりました点は、この法案の附帯資料では一応賃金ベースは現在のベースをそのまますえ置くということになっておりますが、その点について、現在の炭鉱労働者の賃金はほかの産業に比べて十分とはいえないから、当然ある程度の賃上げをしたものを見込むべきではないかという点が問題になっております。
それからこの法案では、未払い賃金の代位弁済をすることになっておりますが、その未払い賃金の中には、当然退職金は含まれないわけでございますが、退職金も含めてそういう措置をとるべきではないか、技術的な点になりますと、そういう点でございます。なおこの法案に関連いたしまして提出されております重油ボイラーの設置の制限等に関する臨時措置に関する法律案につきまして、もう少し制限を強化いたしますならば、もう少し石炭の需要をふやし得るのではないかという意味におきまして、その面でももう少し政府原案は強くして、特になお輸入炭等の制限ももう少し強化して、需要拡大にもっと力を入れるべきではないかということが問題になったのでございます。大体おもなことはそのような点でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/9
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010・田中角榮
○田中委員長 大橋さんに申し上げますが、労働大臣は本会議で緊急質問があるそうですから、大臣の質問の方をなるべく早くお願いできれば幸甚だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/10
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011・大橋武夫
○大橋(武)委員 本会議が済んだらまたこっちへ来られますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/11
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012・田中角榮
○田中委員長 もちろん出席を求めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/12
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013・大橋武夫
○大橋(武)委員 それではただいま局長からお話のありました労働組合の反対をしておられまする事項の中の第一点、石炭需要の拡大が可能ではないかという点ですが、これについては政府のお考えはいかがなものでございましょうか。すなわち組合の諸君においては、石炭需要を政府の見積りよりももっとふやして見積るべきではないか、従って整理人員をもっと減らすことが可能ではないか、こういえ主張をしておられるそうでありますが、それについての政府のお考えはどういうお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/13
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014・石橋湛山
○石橋国務大臣 われわれとしても需要をふやすということは希望でありますので、極力努めなければならぬのでありますが、あまり楽観的に見積りをすることはこの際危険だと思うのです。たとえば電力の関係にしましても、豊水渇水の問題がありますが、これらもあまり楽観的に——楽観といいますか、現在は御承知のようにしばらく豊水が続いておるのでありますが、これがいつまた渇水がくるかむろんわからないので、渇水がくるものとして計算することも危険であります。またそのほか石炭の新しい需要、あるいはガス、あるいは石炭化学というようなものにも需要を起すように努めてはおりますが、しかしこれもいろいろ技術上の制約その他がありますので、急激にその方面に新しい需要をふやすということもなかなか困難な仕事でございますから、できるだけ内輪の計算をしたのがこの程度で、間違いない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/14
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015・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると今回の合理化に当りましては、政府といたしましては確実なところを見積った、従ってこれ以上石炭需要の増大を見積ることは不確実な見積りになるおそれがある。従って合理化の基礎として不安である、こういうお考えと承わったわけであります。
次に離職者の就労対策ということが問題になっているようでございますが、この法案の措置によりまして、どの程度の離職者を政府は見込んでおられますか。またその離職者に対しましてどういうふうな就労対策をお考えになっているのですか、これを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/15
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016・石橋湛山
○石橋国務大臣 それは配付した資料の中にも、この離職者数はございます。三十年度において大体四千七百、三十一年度が一万四千二百、三十二年度が八千三百、そういう計算をいたしております。そのうちで対策を要するものという見込みが三十年度において四千二百三十、三十一年度において一万五千三百三十、三十二年度において一万六千八百三十六、かような計算をいたしております。それからこれの吸収、転職の計画は、三十年度の吸収計画としましてはやはりこの資料にございますが、四千三百、所要事業費が七億四千四百万円、かような計算をしているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/16
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017・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると、労働組合側と政府のお話し合いにおいて問題になっております就労対策は不十分ではないかという、その問題となっております点はどういう点でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/17
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018・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これはわれわれの計画では失業対策を二つに分けまして、今大臣から御説明いたしましたように、本法の施行によって直接生ずる離職者というものと、それから一般の合理化によりまして漸次減少していく離職者というものを分けまして、この法律の施行によって直接できる離職者に対しましては一般の失業対策というものと特別に区別いたしまして、すでに今年五月の閣議決定で、失業対策というのではなしに職域転換対策というふうな意味で、計画的に、今大臣から御説明いたしましたような事業に就労するということをきめまして、労働省の方で計画をしているわけでございます。それから一般の分につきましてはこれは従来通り当該対策事業でありますとか、あるいはその他の一般の失業対策に関する各種の事業に吸収するということになっているのでございますが、その最初の計画の事業につきましても、これは政府の方といたしましては十分この政府の措置によって離職し、またその離職した者のうちで就職を希望する者につきましては、十分これで吸収できると思っているわけでございますが、その点について組合側は若干の不安を持っているかと思います。それから一般の離職者につきましては、従来の方法で措置するわけでございますが、それにつきまして従来の措置ではどうも運用に十分でないところがあるという点で不満である。それからもう一つは政府関係の公共事業の場合には、炭鉱の平均賃金に比べまして若干収入が下るような場合がどうしても出て参りますが、そういう点で不満であるという、大体事業の施行につきまして実施上完全に吸収ができないのではないかという点と、それから収入の点で若干低下する場合がある。その二点がおそらく不満の中心点であろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/18
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019・大橋武夫
○大橋(武)委員 第三の賃金ベースのすえ置きという前提で政府が計画を立てている、この点は無理じゃないか、賃金ベースを引き上げて計画を立つべきじゃないかという点が問題になっているそうでございますが、これに対する政府の御見解並びに組合側の見解を承りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/19
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020・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 お答えいたします。賃金の問題は、御存じのように政府がきめるのではございませんで、労使間の団体交渉によってきまる問題でございまして、この法律はそれについて何らの規制をいたしておりません。従って将来の問題については政府はこの法律の施行によっては全然干渉することはできないのでありますが、ただ見積りをする場合には何らかの基準がございませんと見積りができないわけでございまして、今申しましたように将来は結局団体交渉できまるわけでございますから、将来を予定して見積りを立てることはできない。そういう見地からただ現在の賃金水準をそのまま採用したというだけの意味でございます。ただ本法の目的は、結局コストを引き下げて、それに応じて炭価も下げて需要を拡大していくということが石炭鉱業の抜本的な解決策であるという観点に立っておりますので、もし賃金を引き上げます場合には、従来の合理化の遅れと申しますか、労働生産性の向上の遅れている部分を取り返して、なおそれ以上に能率が上りました場合には、それを労働者に還元するということを何も否定しているものではございません。賃金の基準と申しますものは各産業間にあるバランスをとって団体協約できまるものではございますが、そういった物価のベースあるいは各産業間の賃金較差というものについて、特に石炭についてだけ不利な扱いをするというような考え方は全然ないわけであります。そういうふうに考えているのでございますが、組合側の方の考え方は、ほかの国におきましては炭坑夫の賃金が他の産業よりもむしろ高いのが現状であり、それに対して日本の現状はまだその程度になっておらない、従ってもう少し他の外国並みにほかの産業と較差をつけるところまで賃金を引き上げて計算すべきではないかというのが組合側の主張のように承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/20
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021・大橋武夫
○大橋(武)委員 石炭合理化ということになりますと、当然これに伴いまして労働生産性の向上ということがあるわけでございます。従いまして労働生産性の向上に伴ってそれに即応して賃金のベースが上るということは賃金の原理からいって当然だと思うのですけれども、この点についての政府のお考えはどうでございますか。所管大臣として伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/21
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022・石橋湛山
○石橋国務大臣 むろん一般経済の今後の状況によりまして、たとえば全体の物価が上る、従ってそれにつれて炭価も——炭価は比較的には合理化で下げるのでありますが、しかし一般物価が上る場合にはそれについていく、そういうような場合とか、あるいは今のお話のように生産性が向上する、ただし現在非常に高炭価になってしまって、炭価の中に占める労賃の割合が非常に大きいということになっておりますから、今局長が言いましたように、合理化によってある程度このおくれを取り返してもらって、その上にプラスして機械化あるいは合理化、それから労働の生産性がふえるということになりますれば、それはむろん一面においては需要者にも分配されるでありましょうし、企業者にも分配されるでありましょうが、従業者に当然分配されるべきものと信じておるわけであります。ですから、決して賃金が上ることを絶対否定しているわけではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/22
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023・大橋武夫
○大橋(武)委員 賃金の問題がいろいろの産業上の争議の原因になったりいたしまして、そのために生産能率が阻害されるということが非常によくあるのでございますが、この石炭産業におきましても、やはり始終全問題が問題となっておるようであります。従いまして労働生産性が上った場合において政府としてどういう考えを持っておるかということは、実際こうした問題を予防し、あるいは現実に発生した場合に、これを処理するに当って大きな指針となると思いますので、特にこの点をお伺いするわけでありますが、政府の方では、ただいまの労働賃金はその能率に比べてむしろ割高についておる、従ってこの能率の下っておる分を合理化によって能率上のおくれを取り返すと申しますか、そういうお言葉でただいま大臣は仰せられましたが、その程度までの間は賃金の引き上げということはおそらく考えられないということだろうと思うのであります。そうすれば、その限度を越えて能率が向上いたしました場合には、これは当然賃金が引き上げられるべきだということになるわけでございますが、現に大臣もそういう御意向のようにただいま御答弁をなすっておられましたが、そこで問題となるのは、どの程度の能率になったならば、それでおくれを取り返されたと考えてよろしいのか。つまり、ある程度まで上ったところでこれはおくれの取り返しであるから賃金の引き上げはできないのだ、しかしその限度を越えれば当然能率に応じて引き上げるのだ、これが今の政府の御方針だそうでございますから、どの程度まで能率が上った場合におくれが取り返されたという御判断をなさるのでしょうか。これは今後の炭鉱における賃金問題について非常に重大な点であると思いますので、特にお考のほどを承わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/23
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024・石橋湛山
○石橋国務大臣 これは価格の面から申しますれば、現在日本の石炭は、先ほども申しましたように、重油とか輸入石炭と競争ができないようなありさまに陥っておりますから、その競争のできる程度まで合理化によって能率が上って参れば、そのあとは適当に分配ができる、かように考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/24
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025・大橋武夫
○大橋(武)委員 競争ができるというのは炭価のことでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/25
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026・石橋湛山
○石橋国務大臣 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/26
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027・大橋武夫
○大橋(武)委員 炭価の問題になりますと、労働能率だけで炭価が左右されるわけでは私はないと思うのであります。特に日本の産業について生産費が割高になっておる原因として、労働能率の点はむろんあると思いますけれども、それと同時に企業の負債が多いこと、かつまたその負債の利子が高いこと、これが日本においては生産費を非常に高めておる原因になると思うのでございますが、大臣は、こうした企業の負債、ことに高利の負債によるコスト高をもカバーするだけの労働能率の向上がなければ賃金の引き上げは不可能である、こういうお考えなのでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/27
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028・石橋湛山
○石橋国務大臣 いや、そういう意味ではむろんございません。金利の問題は、一部この法案の中にも引き下げの何が入っておるのでありますが、むろん今後において——これは石炭鉱業だけに限りませんが、全体の産業の資産の構成、金利の問題は全般的に考えなければならぬ、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/28
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029・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると、金利の問題は今回の政府の法案の合理化の措置で十分だというお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/29
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030・石橋湛山
○石橋国務大臣 決して十分とは私は個人的には考えておりません。なお全般的にやらなければならぬ問題でありますから、この問題が残っておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/30
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031・大橋武夫
○大橋(武)委員 この金利の問題を考えずに、単に労働だけでもって合理化をやろうという考え方は、いささか片手落ちのような気がいたすのでございまして、この合理化法案に並行いたしまして、今日特に石炭鉱業というものは、高利の負債に悩んでおるのですからして、これに対する抜本的な措置は政府としては当然お考えにならなければならぬ問題である、こういうふうに私は考えておったわけです。今日この法案において不十分であるといたしまするならば、その足らざる部分については、いかにこれを早急に実現されるお考えでありますか、あらためて大臣のお考えを承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/31
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032・石橋湛山
○石橋国務大臣 これにありますように、開銀及び中小企業金融公庫からの金利は、とにかく日本の現在の金利としては少し安い方に落しておると思います。ただしその落した部分は合理化の資金にしばらく使わなければなりません。しかしそれでも炭鉱の負担をそれだけ減らすことになるわけであります。残るところは、もっと全般的の日本の産業全体の金利が一体どうあるべきかという問題を解決しなければならないので、私には私個人の意見はございますが、現在政府としては、いまだ最後の結論にいっておりません。話しはしばしばしておりますが、まだその程度も、それからそれじゃどうしてやるかということも結論には到達しておりませんので、ここではっきりしたことを申し上げることができないのを遺憾といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/32
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033・大橋武夫
○大橋(武)委員 そこでコストの問題について、金利の面は別といたしまして、この金利の面をはずして、労働能率それ自体について外国と競争できる程度になったならば、賃金の引き上げが考慮できる、こういうお考えでございましょうか。それとも金利の高いのをカバーしなければ引き上げができない、こういうお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/33
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034・石橋湛山
○石橋国務大臣 これは何に比較するかということは、先ほど申しましたように、外国の重油や石炭との比較ということもありますが、国内の全体の物価の上からも考えなければなりませんから、今の金利を全体に下げるというような問題は、全体の物価の上に響いて参りますから、むろんお話のように、金利の分までを労働能率で取り返さなければならぬというふうには考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/34
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035・大橋武夫
○大橋(武)委員 それから第四に問題になっておりまする未払い賃金の中に、退職金を含めろという組合側の要望があるそうでございますが、これについては政府はどういうお考えを持っておられますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/35
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036・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 未払い賃金は、すでに提供した労務に対する対価でありまして、確定的な債務でございます。退職金の方は退職によって初めて生ずる債権でございますので、その間に法律上の優先権と申しますか、保護の程度につきましてはおのずと差があってしかるべきではないか、こういうふうに感じておるわけであります。従いまして代位弁済という制度によります優先弁済の措置は、未払い賃金についてのみ講ずることとしたわけであります。ただし離職者に対しましては別に事業団から平均三十日分の一時金を支給することにいたしております。これは退職金の方は今申しましたように法律上保護の未払い賃金に比べまして、だいぶ低くなっておりますので、実際に買い上げ代金によりまして会社が清算いたします場合に、退職金支払い規定がありましても、支払いが受け得られないような場合が出てくるということも想像いたされますので、鉱業権者の支払い義務とは離れて、事業団が別に一カ月分に相当する分を支払うということにいたしまして、労働者の生活保障の最低限度を確保するということにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/36
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037・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると結局結果的には労働者としてはほとんど退職金を手にできないという場合が相当あるということもやむを得ない、こういう前提のもとにこの法案ができてくるわけでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/37
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038・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは御存じのように退職金は団体協約できまる問題でございまして、退職金の支給規定につきまして大へんまちまちでございます。金額も企業によりまして非常に異なっておるわけであります。その点と、先ほど申しました法律上の保護程度の差というものと、両方考え合せまして、退職金につきましてはそれぞれの企業の能力と、それから労使関係の協約とにまかせまして、そのかわりに最低保障として三十日分の離職金を支給する、こういう考えにいたしたわけでございます。実は退職金につきましては法律上これだけのものが適当であるというふうな前例がございません。それで予告手当相当分の規定が基準法にございます。それが三十日分ということになっておりますので、これをとりまして、その程度を最低保障として労働者に保障する、これは買い上げ代金とは全然別個に事業団から支払いますので、鉱業権者の債務その他に全然無関係に、直接労働者の手に渡るという形で、最も強い法律上の保護を受ける形になるわけでございます。そういう形で最低保障をすることにしたわけでございます。なお具体的なケースによりまして、鉱業権者の手元に債務弁済をいたしまして、ある程度残る場合には当然退職金として別に請求ができることになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/38
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039・大橋武夫
○大橋(武)委員 ただいまお述べになりました三十日分の平均賃金というものは、基準法の予告手当外だと言われておりますが、そうすると基準法の予告手当というものは当然未払い賃金として代位弁済される、そのほかに三十日分がさらに支払われる、こういうわけでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/39
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040・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 基準法の予告手当は、これは今申しました離職金とは全然別個でございます。従って買い上げいたします場合には、買い上げ申し込みをいたしましても実際に買い上げになるまでには若干の日時を要しますので、通常の場合予告手当を支払う必要はないことになるのではないかと思います。これとは別に、労働協約によります退職金を支払わなければならないということになると思います。今予告手当について申し上げましたのは、実は国が退職金に相当するようなものの最低保障を考える場合に、何を基準にしたらいいかということを求めて、基準法の予告手当というものを基準にしたということを申し上げた次第でございまして、予告手当につきましても、当然退職金の性質でございますので、民法に申します先取特権の適用がないもの、従って未払い賃金と同様に扱うことは不可能なものというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/40
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041・大橋武夫
○大橋(武)委員 予告手当というものは未払い賃金ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/41
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042・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これはやはり未払い賃金ではございませんで、退職金と同じ性質のものと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/42
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043・大橋武夫
○大橋(武)委員 これは雇用契約に基く予告期間の賃金でしょう、それに相当するものですから、これは賃金じゃないですか。これは退職手当でしょうか。一つ労働省ともよく御相談の上で御回答願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/43
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044・石黒拓爾
○石黒説明員 労働法の問題がありましたので私から御説明申し上げます。
予告手当はよく御承知の通り、通常基準法の原則から申しますならば、三十日前に予告して予告の日から三十日経過した日に解雇が完了する。その場合に予告をいたしまして三十日たったという場合に予告期間中の賃金が払ってなければ、もちろん未払い賃金となるべき性質のものであります。しかしながら即日解雇いたしたいということで三十日分の予告手当を提供して即日解雇するということはここに申す未払い賃金にはなりません。もちろん労使間の自由なる合意に基く退職金とも異なる性質のものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/44
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045・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうするとそれはこの法案においては一体何になるのでしょうか、賃金になっておるのですか、賃金外になっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/45
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046・石黒拓爾
○石黒説明員 私の方の立場からその点につきまして申しますと、ただいまも石炭局長から申し上げましたように、大体買い上げになるべき炭鉱というのが内定しましてから正式に買い上げられるまでには時間がある。従いましてその間に解雇の予告をするということによりまして、予告手当を払う必要のない場合が多いのではなかろうかというふうに考えるわけであります。どうしても即日解雇いたしたい場合には、三十日分の賃金をくっつけて解雇しなければなりません。予告手当をくっつけないで即日首を申し渡しましても、判例上解雇の効力が発生いたしませんし、どうしても渡さなければならないしかけになっておりますので、特に保障する必要はないものだというふうに申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/46
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047・大橋武夫
○大橋(武)委員 特に保障する必要がないというのは解雇が無効である。従ってそれは当然賃金である。そのためにそれは未払い賃金として処理されるから特別に考える必要はない、こういう意味ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/47
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048・石黒拓爾
○石黒説明員 判例にございますのは、大橋委員も御承知の通りでありますが、しいて即日でなくてもよろしい、できるだけ早く切ろうというのであやまって予告手当がくっつかなかったというものは、判例上三十日たった日に解雇になるというふうな判例もあります。そういう解釈をとりました場合には、これはもちろん未払い賃金の中に入っております。どうしても本日この日に切らなければならないという、いわゆる意思表示の転換ができないような解雇でしたら、これは無効の解雇ということになりまして、以後の賃金は依然として未払いとして残っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/48
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049・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると現実に従来の事業主から三十日間の平均賃金が支払われていない限りは、その三十日分のいわゆる予告手当なるものは、予告手当ではなくて未払い賃金になるのだから、当然この法律においては未払い賃金として代位弁済される、こういう趣旨に了解いたしますが、それでよろしゅうございますか、どうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/49
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050・石黒拓爾
○石黒説明員 予告をいたしまして、その予告期間中働かしておる分には、当然その期間の賃金として未払い賃金であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/50
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051・大橋武夫
○大橋(武)委員 予告だけをして金を渡さずに働かさずにおる場合は、三十日間は解雇が成立しないでしょう。従ってその間においては平均賃金を支払わなければならぬでしょう。そうしてそれは当然雇用期間中の賃金なんでしょう。従ってその債務が払ってないとすれば、それは法律上未払い賃金となるわけなんだから、従って未払い賃金だろうと私はこう言っているのですが、どうです、そうじゃないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/51
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052・石黒拓爾
○石黒説明員 その点は御説の通りでございまして、無効の解雇に基いて働かせない場合には六割の賃金補償をいたします。それは入ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/52
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053・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると六割だけが未払い賃金になるので、あとの四割は未払い賃金にならないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/53
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054・石黒拓爾
○石黒説明員 休業中の賃金は、基準法によれば六割の補償をすればよろしいという規定になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/54
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055・大橋武夫
○大橋(武)委員 私は基準法を聞いておるのじゃなくて、今議題になっております合理化法案の何条ですか、未払い賃金については代位弁済をする、こういう規定かありますから、三十日間の予告手当は代位弁済の対象になっておるのかおらないのか、こういうことに事実上なるのかならぬのかということを承わっておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/55
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056・石黒拓爾
○石黒説明員 その点は先ほど申し上げました通り、解雇予告手当そのものは賃金ではございません。解雇予告をしてその間の三十日間の賃金は当然賃金でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/56
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057・大橋武夫
○大橋(武)委員 それはどういうことなんですか。あなたのお説によると、その間働かなければ六割しか払わなくていいのだ、こういうお話ですね、そうすると六割だけが未払い賃金になるので、あとの四割というものは未払い賃金にも何にもならないのだ、単なる予告手当の残りなんだ、こういうことですが。それとも六割を未払い賃金と見れば、その最後の日からさらに三十日間予告手当というものの債務が発生するのですか、どうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/57
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058・石黒拓爾
○石黒説明員 六割になるか八割になるか、あるいは全額かという問題につきましては、この問題とは直接関係がございませんので、使用者の責めに帰すべき休業がありました場合にはその間は六割になる、それで即日解雇のつもりで予告手当を払わぬで解雇の申し渡しをした、その申し渡しが無効であったという場合に、働かせなかったということが使用者の責めに帰すべき休業と見られる場合には六割となる、こういう趣旨で申し上げたのであります。場合によりましては全額になることももちろんございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/58
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059・大橋武夫
○大橋(武)委員 私は具体的な合理化の際の山の買収のときの法律関係を伺っておるので、抽象的に原理原則を伺っておるわけではないのです。そこで一体三十日間の予告手当はこの三十四条によって完全に保護されるかどうかということを一つはっきりお答え願いたいのです。保護されるのかされないのか、されるとすれば完全に全額保護されるのであるか、それとも一部だけが保護されるのであるか、この点をはっきりお答えいただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/59
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060・石黒拓爾
○石黒説明員 即日解雇するための予告手当そのものはいかなる意味においても賃金そのものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/60
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061・大橋武夫
○大橋(武)委員 そういう理屈を聞いておるのじゃなくて、私の言ったのは保護されるのかされないのか、その結論を聞いておるのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/61
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062・石黒拓爾
○石黒説明員 予告手当というお言葉でございましたが、予告手当そのものは賃金ではございませんから保護されません。そのかわり解雇したいと思えば金を現実に支払わなければならないという意味におきまして、この法律に特別の規定がございませんでも、これは必ずとれることになっておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/62
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063・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると予告手当ではないが、実際上は未払い賃金になる場合が多い、従って未払い賃金だから保護される、こういう御趣旨ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/63
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064・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは先ほど御説明いたしましたように、通常買い上げが予定いたしましてから、現実に買い上げをいたしますまでの間は事業を継続いたすわけでございます。その期間は通常予告手当で予定しております通常三十日以上かかる、その程度は十分かかるのじゃないか。一つ一つの財産について評価をいたしますので大へん時間がかかるので、そのくらいかかるわけでございます。従って実際問題といたしましては予告手当を払って解雇をするという問題がほとんど起らないのではなかろうか、あらかじめ一カ月の予告をいたしまして解雇をいたしますので、そういう問題は起らない。それからもう一つ運用上申し上げますのは、労組との間にある程度話がつきませんと、実際問題といたしましては買い上げの際に非常に紛争が起りますので、紛争の起るような場合には買い上げないという運用に事実問題としてなるわけでございますから、その場合には当然こういう問題についても清算した上で処理されるということになるのであります。そういう意味で大橋委員の御心配のようなケースは、実際問題としては起らないのではなかろうかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/64
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065・多賀谷真稔
○多賀谷委員 関連して……。今の解雇手当の件ですが、実際問題として、ことに基準監督署あたりの問題として起るのは、この予告手当を払わなくてもいい、こういう見解を出すきらいがあるのではなかろうかと思うのです。いやしくも政府の買い上げの対象になる山であるから、それで清算をする場合には、すなわち二十条ただし書の適用によって、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」これでやむを得ないのだ、私はこういうことになるきらいがありはしないかと思うのです。先ほどから答弁を伺っておりますと、そういう場合にも当然予告手当は支給すべきであるという見解を私拝聴いたしまして、非常に喜びにたえないわけでありありますが、もう一つ明確に私はこの法律の申請については、この二十条一項ただし書は適用ない、こういうように解して差しつかえないかどうか、お答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/65
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066・石黒拓爾
○石黒説明員 本法によります買い上げは鉱山の経営者が申し出でをいたしまして、自由な合意による契約で買い上げるのでございます。天災事変その他やむを得ざる事由には当らないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/66
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067・大橋武夫
○大橋(武)委員 次に予告手当のほかにお出しになります三十日分の手当でございますが、これは現実において、おそらく退職金を事業主は任意には支払われない状態になっておるのでございましょう。その場合にこれをかわりにやるのだ、こういうことを言っておられます。従ってこれは退職手当のかわりに三十日分の平均賃金でがまんしろ、こういうことになると思いますが、現実に御計算になりました退職賃金の平均金額と、この三十日分の平均賃金の平均金額とはどのくらいな割合でどちらが多いでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/67
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068・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは実は退職金につきましては、賃金のように一つのきまった基準というものはございませんで、その炭鉱の違いによりまして、あるいは離職するときの条件によりまして、非常に大きく違っております。たとえば大手の炭鉱が会社側の都合によりまして、希望退職を募って、その募集に応じて退職するというふうな場合には、通常の退職金の倍額あるいはそれ以上も支払われるというようなことになりまして、こういう場合の例によりますと、平均で十万円を越えるようなもの、二十万円近いような場合もございます。それから中小炭鉱等になりますと、非常に減りまして、大体三万円ないし五万円というのが、そういった場合も含めまして通常のようであります。現在の炭鉱労働者の平均賃金は一万六千円程度でございます。それが月収でございます。従って三十日分になりますと、大体二万円程度というふうにわれわれは予定しております。その点は中小炭鉱の通常の解雇の場合に比べまして、若干少いわけでございますが、しかし現実に会社の整理、倒産というふうな場合におきます退職金というものは、けた違いに少く、ほとんど出ないか、出ましても十日分とか、非常にわずかなケースが多いので、整理、倒産のような場合の退職金の実際の例に比べますと、この金額は決してそう少い金額ではないというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/68
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069・大橋武夫
○大橋(武)委員 それから未払い賃金を代位弁済される場合は、法律上当然の責任にはなっていないので、法律の規定を拝見いたしますと、代位弁済は事業団の任意にできることになっておりますが、いかなる場合にいかなる条件で代位弁済をなさる御予定でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/69
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070・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは立法の形式上、法律技術的に弁済することができるという形にいたしましたので、実はこの点はこういう措置をとりませんでも、十分支払い能力がある場合には全然必要がないわけでございます。むしろ若干問題になるような場合にこの規定を発動する必要がある、理屈から言えばそういうことでございますので、こういう形になったのでございますが、別に条件をつけませんで、こういうことをやらなければ賃金債務の確保が困難な場合には、すべて適用いたすつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/70
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071・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると、従来の事業主が弁済の能力があり、現実に支払える場合には、代位弁済をしないが、それ以外の場合には必ずするという意味で、この条文ができておる、こういうふうに解してよろしゅうございますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/71
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072・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 お説の通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/72
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073・大橋武夫
○大橋(武)委員 次にこれは特に大臣に承わりたいと思うのでございますが、この石炭合理化に伴いまして整理される山はともかくとして、残る山については、合理化のためのいろいろな措置が行われると思うのでございます。つきましては、産業の合理化ということになりますと、労働生産性の向上ということがやはり欠けてはならないと思うのでございますが、特にこの石炭合理化に伴う石炭界における労働生産性の向上対策として、政府はどういうお考えをお持ちでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/73
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074・石橋湛山
○石橋国務大臣 それはこの法案に明らかなように、縦坑ということを書いてありますが、とにかく縦坑とか、あるいはそのほかの機械化によって、労働生産性を上げるというのがこの法律の趣旨でございます。しかしそのほかに、実は石炭については、外国から調査団を入れるようにという世界銀行あたりからの勧告もありまして、今度の生産性本部の一つの仕事として、調査団を招いて経営その他についても一つ十分検討して、今の日本の炭鉱というものが果して経営上どういうものか——あるいは経営者の方では、今さら調査してもらわなくてもわかっていると言いますが、しかしこれは世界的水準によって調査して結論を出してもらうのがいいと思いますので、調査団を招いて、一つあらゆる面において検討をいたしたいと思っておりますから、この法案にはとりあえず縦坑その他の機械化ということが基礎になっておりますが、そのほか経営上の問題についてもこれから検討して、十分生産性を上げるようにあらゆる面から努力をいたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/74
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075・大橋武夫
○大橋(武)委員 機械設備の面からする合理化については、この規定にもある通りでございますが、特に私の伺いたいと思いますことは、労働条件あるいは賃金制度等の面からするところの合理化措置というものについて、何らかのお考えがおありでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/75
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076・石橋湛山
○石橋国務大臣 労働関係については、なかなかむずかしい問題を含んでおりますので、十分労働組合等とも話し合いをしませんと、賃金制度等について最後的結論を下せないと思いますから、これらもただいま申し上げました調査等の結果を待ちまして、十分各方面と話し合いをして、合理的な措置をとりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/76
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077・大橋武夫
○大橋(武)委員 それでは労働大臣にお伺いいたしたいと思うのでございますが、この石炭合理化に伴いまして、労働条件、賃金制度等において、石炭合理化を推進するために何らかの対策をお考えになっておられましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/77
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078・西田隆男
○西田国務大臣 さっきからいろいろ大橋さんの御質疑を開いておりましたが、生産性の向上をはかるということは、ただ単に労働力の向上を期するということだけではございませんで、企業の合理化、機械化、設備の近代化、それに資材材料の節約、こういうものを含めて、その以外に労働力の向上がなされなければ、結局企業全体の生産性の向上ははかられないと私は考えております。従って、現在における炭鉱の生産原価の中で占める労働賃金というものは、五〇%を少し上回っておると思います。平年と申しますとおかしいですが、平常の状態における石炭の生産に要する賃金の占めるパーセンテージは、三五%から四〇%ぐらいが大体普通のベースだと考えております。従って賃金の占める割合を三五%ないし四〇%にするためには、今言うように、経営の合理化、機械化、設備の改善、資材その他の節約、これに労働生産性の向上、こういういろいろなファクターが集中的に、総合的に実行された場合にだけ達成できると考えております。従って先ほど通産大臣は、ある程度の能率が上らなければ労働賃金の値上げはやらないというような御意見がございましたが、これは総括的に申しますとそういうことも言えると思いますが、私は労働行政の面から、原則として、炭鉱の生産性の向上によって得た果実は、労使双方と消費者とで適当に配分すべきである。これは現在かりに十三トンの能率が十六トンまで上らなければ、販売価格は下げないのだといういき方は好ましくはない。経営者もしくは労働の面において多少不十分であっても、やはり上った果実に対しては、当然上ったときから徐々に還元していくべきものである、こういうふうな基本的な考え方で、労使双方、これに政府が援助してやっていった場合においては、その目的を達成することはさして困難ではないと考えております。具体的なお尋ねのありました点につきましては、通産省と経審と労働省と大蔵省と連絡会議を持ちまして、いろいろなこまかい実施における詳細な点については、ただいま検討を加えておる段階でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/78
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079・大橋武夫
○大橋(武)委員 この石炭合理化ということは、私は今日のわが国における各方面の産業合理化の第一のプログラムに上ったものだと思います。従って産業の合理化は石炭合理化に終るものではないのであって、でき得れば同様な措置がいろいろな他の産業についても必要である、こういうふうに考えるべきだと思うわけでございます。しかるにこれらの各種の産業を通じまして、今日特に労働三法の改正ということが伴わなければ労働能率の向上は期し得られないのではなかろうかということが、一般に言われておるわけでございまして、この点につきましては、すでに労働大臣は社会労働委員会において、労働三法の改正について、その全部または一部の問題を言われたのでありましょうが、とにかく調査を進めるというお答えをなすっておられますが、特にこうして現実に産業合理化の第一の過程として石炭鉱業の合理化ということが日程に上って参っております以上は、私はこの労働政策の刷新ということも早晩日程に上せざるを得ない問題である、かように考えるわけでございますが、この点についての労働大臣のお考えを重ねてお伺いいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/79
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080・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。これは予算委員会あるいは社会労働委員会、本会議等でたびたびお答えをいたした通りでございますが、御承知のように、インフレの上昇期におきましては、比較的賃金の値上げというものが容易に行われるような情勢でございます。しかしデフレ傾向を帯びてきて経済の基盤ができて、そうしてノルマルな状態で経済が運営される場合においては、もちろん賃金ベースというものはノルマルな状態に置かれるのが合理的なわけでございますけれども、もしそれに差等がついておる、あるいは政治的な意味合いにおいて賃金の値上げが叫ばれるというような場合に、もしいろいろな現在ある法規の関係において抑制できなくて、再び日本経済そのものを破綻に導くようなおそれがあると考えられる場合においては、あるいは法的なことも考えなければならぬと考えておりますが、しかし単に石炭合理化法案を出して、この目的を達成するのに法的な規制を加えるという観点から、私は労働三法というものは考えておりません。最近労働三法——労働基準法、労働組合法、労働関係調整法等に対しまして、改正した方がよくないかという議論が相当今世論のようになって起っております。大事な労働三法をかりに改正するとした場合においても、慎重なる態度をとるべきである。特に労働基準法のごときは国際条約との関係もありますので、国際的に及ぼす影響も非常に大きうございますから、この問題につきましては、本年度の予算にもすでに若干の予算を計上しまして、労働省自体として、基準審議会と申しますか、調査会というものを作りまして、八月には第一回の会合を催して、そうして基準法というものを改正すべきであるかどうか、するとすればどういう点をどういうふうに改正すべきであるかということを、全くのフリー・トーキングで、いわゆる第三者、全く企業その他に関係のない、労働に関係のない人たちだけの間で自由活発に討議してもらって、そうしてその結論を得た場合においては、中央審議会の答申を得て政府としては何らかの処置を考えたい、かような考えで八月には第一回の会合を開催する目的で今準備をいたしております。それから労働組合法とそれから労働関係調整法につきましても、これはそういう審議機関は設けておりませんけれども、労働省自体としましては、基準法あるいは憲法調査会等の問題とも関連しまして、これも慎重に検討いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/80
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081・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると労働大臣のお考えは、今日石炭合理化に伴っては何ら労働政策については考える必要がないんだ、石炭合理化の必要の起ったのは別に労働政策とは全く関係ないことだ、こういうお考えなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/81
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082・西田隆男
○西田国務大臣 石炭の合理化促進法案が提出されておりますのが、労働行政の面に関係がないと申しておるのでございません。ただその問題は、この法律案が施行されました場合にどうしたらいいかという問題に関連してだけの労働三法の改正をどうするかといろ問題を考えておらない、こういう意味合いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/82
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083・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると、私はこういうふうに先ほど質問したのですが、それは、石炭合理化あるいはいろいろな産業における合理化の必要がだんだんできておる、こういう事態に対してやはり労働三法について考え直す時期がきておるのではなかろうか、こういう前提のもとに質問したわけですが、それに対しては大臣は別にそうは思わないというわけではないのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/83
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084・西田隆男
○西田国務大臣 これは日本の経済の将来の問題を現実の事態から、将来到達するという関連性に立って労働三法というものを改正したらいいじゃないかという声が国民に起っておる、かように考えておりますので、そういう観点に立って労働基準法、労働組合法、労働関係調整法というものを調査研究して役に立つようなふうにやりたい、かように考えて審議会を作っているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/84
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085・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると最後に、その審議会の結論がそれまでに得られれば、次の通常国会あたりには何か具体的な措置に出られるお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/85
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086・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。審議会でいかような結論が出るか見当はついておりませんが、審議会で自由に討議した結果、その結論を今度は労働基準法の法律による審議会がありますので、中央審議会に諮問いたします。その諮問の答申を待っていかようにするかということを考えたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/86
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087・大橋武夫
○大橋(武)委員 しかしそれは三年、五年先じゃなくて、次の通常国会というような、かなり具体的な時期の目標があってのお話でございましょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/87
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088・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。何月何日までに結論を出すということは考えておりませんが、審議会を新規に作って、予算の金額もある一定限度に限定されておりますので、その金を使っておる間には当然審議会の結論を得たい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/88
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089・大橋武夫
○大橋(武)委員 私は何月何日までにきめろというようなことを聞いておりませんよ。次の通常国会に間に合うかどうかということを伺ったのです。まじめに御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/89
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090・西田隆男
○西田国務大臣 おしかりを受けましたが、まじめに答弁しております。審議会にかけまして——これは八月に第一回をやりたいと思っております。審議会の結論が通常国会までに出まして、その前に中央基準法審議会、これは法制に基いてできた審議会ですが、これに諮問をせねばなりません。この間審議会を作って検討して結論が生まれました以上、政府はその結論に対して責任をもってぜひとも早くやるということは、これは常識でございます。従って、あなたのおっしゃるようなひもをつけるということは考えておりません。この結論がいつまでに生まれるかということは今お約束はいたしかねる、かように申したのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/90
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091・大橋武夫
○大橋(武)委員 そうすると、結論が出れば通常国会に出したいという考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/91
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092・西田隆男
○西田国務大臣 労働省に作っております審議会の結論が出まして、この審議会の結論を今度は基準法の中央審議会にかけて答申があれば、それによって決定して、通常国会に間に合いますならば当然出すことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/92
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093・大橋武夫
○大橋(武)委員 わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/93
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094・田中角榮
○田中委員長 ただいま議長から定足数不足のため本会議開会中は委員会を休憩されたい旨の通知がありましたが、関連質問を許します。伊藤卯四郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/94
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095・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 関連して一点だけ、御答弁が食い違えば二点も三点も伺わなければならないと思いますが、ちょうど労働大臣もお見えになっておりまして、先ほど生産性の向上、いわゆる高能率、低コストという問題について石橋通産大臣と、あわせて西田労働大臣がお答えになった点とを考えてみまして、そう大きな食い違いとは言えないけれども、どうも解釈上においていささか違っているような気がするのです。そのこまかい点は私は掘り下げようとはしませんが、ちょうど労働大臣も一緒におられるから伺うのですが、労働大臣は、炭鉱の問題についてはくろうとのくろうと、一番詳しいと私は尊敬している。そこで先ほどから御答弁をされた生産性の向上といわゆる高能率、低コストのこの合理化法の目的を達成しようとする中に、今まで石橋通産大臣や労働大臣が答弁された点を伺っておりますと、結論としてはこれはやはり条件の悪いところというか、中小炭鉱というか、そういうところに最後のしわ寄せ、犠牲がきて、さらにまたそれよりもっと弱い労働者の方に最後のしわ寄せがきてしまう、こういうようにならざるを得ないのじゃないかという気がするのです。西田労働大臣は炭鉱のことは詳しいのだから、この法案をお出しになる前に多分閣議などで相当論議をされたものだと私は思うのですが、その際にこういうことを論議されておるのかどうかを伺うのです。それは、石炭の生産費を構成しておる諸要素です。たとえば鉄道の運賃あるいは電力の料金、金利、こういうものは労働賃金を除く以外の生産費の構成要素としてはこれは大きなものです。この三つの点は、これは政府が行政措置上やれることだ、民間がこうなので、これは政府が行政措置をやるべきものだ。これらの問題について、こういうものを並行して引き下げるとか、あるいは今後絶対上げないとか、さらに二、三割下げていくのなら設備の近代化によっても下げるが、こういうものも漸次下げていくべきであるというのが、私は当然とられなければならぬ措置であると思うのであるが、そういう答弁はされていない。今の西田労働大臣の答弁の中にもこの大事な具体的な三つの問題についてはちっとも触れられていない。むしろ国鉄は赤字であるからこれを上げようということをこのごろ総裁が言っておられる、金利といっても下げようとしておらぬ、電力料金は去年の秋よりことしの方が上っておることは御存じの通り、一体こういう点になぜ触れられないのか。西田労働大臣は一番詳しいのであるが、こういうことを一体論議されたのか、こういうものは論議をしないで、このままにしておいて、何でもいいから条件の悪い炭鉱をつぶして中小炭鉱労働者だけにしわ寄せしたらいいじゃないか、こういうお考えのみでやられたのかどうか。そんなばかなことはないと言うなら、この行政措置や三つの条件を当然あなたは考慮をされておらなければならぬはずだと思うが、こういう点はどうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/95
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096・西田隆男
○西田国務大臣 伊藤さんと議論するつもりはございませんが、今あなたのあげられた鉄道運賃あるいは電力料金とかいうものが、生産原価の中で多少の値下りをいたしましてもそれは大したパーセンテージになりません。具体的に申しますならば、電力料金は石炭一トン当り二百円から三百円程度になっています。それを一割下げたところで三十円であります。鉄道運賃は若松までが二百十四円、これを一割下げたところでトン当り二十一円しか下らない、この程度の値下りで、今の中小炭鉱の窮状が救われないということは、伊藤さん百も二百も御承知のはずです。従って今のままほうっていくならば、この法律ができると中小炭鉱の弱いところにいわゆるしわ寄せがいくというが、打っちゃっておけばおくほど弱い炭鉱にしわ寄せがいって、労働者も経営者も塗炭の苦しみになるから、一つ重点的にこういうふうな救済の法律案を作って、そうしてこれで一般日本の石炭の生産ベースと日本の産業の石炭の需要の限度とがきまった場合、これに対応してその前後をしのぎ得るような中小炭鉱ならば幾らできてもよろしいのじゃないかというような観念に立って、この法律案が作られておりますので、閣議でそういうことを強力に主張しなかったことははなはだ申しわけないと思いますが、これは今おっしゃったような目的達成のためには大したファクターとなっていないことを二つ御了承願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/96
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097・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 私もあなたと今ここで議論を好んでしようとも思わぬ。しかしながら今の運賃の問題なり電力の問題なり、金利の問題には触れられなかったが、なるほど輸送賃、電力は生産費の構成の額からいえば、私もさのみ大きいとは思っておらぬ。しかし心理的な影響というか、あるいは炭鉱というものが何か政府の行政措置の上に理解なく追い詰められてきてしまっておるという点が金融界に与える影響なり社会的に与える影響なりというものは、相当大きなものであることを、私は見のがすことはできないと思います。特に金利の問題について一千億近くからの借金がある。これに対する金利というものは無視できない。金利が今度のでも、わずか一分五厘下げたということだけでも四十億からのものが出てくると政府は計算している。ですから、これは決して小さな問題ではない。だから現実的にそういう炭価に計算する金利のごときは非常に大きい。さらに今申し上げたように金融界なり、対社会的に与える一つの影響上から見ても、政府は石炭の炭価を下げるためには業者と労働組合の努力も期待するが、さらに政府も行政上これこれの努力をしているということを説くことが私は公平なる政治の処置であるということで尋ねているのです。額の多いとか、少いとかいう問題ではなくて、片手落ちの処置であってはならぬ。それでは協力することにもおのずから不平不満が出てくるのです。当然そういうことは——それがトン当り合せてわずか何百円しか救うことにならないとしてもそれがやはり公平なる政治の処置としてとられることがこの法案を出す自然の準備でなければならぬ。そういう点をあなたは軽くお考えになっているようですが、私はこれを軽く考えないでやるべき問題であるという点を尋ねているのであります。そういう点について数字の上で今こまかく論議をしようとしているのではない。今申し上げるような大きな政治の一つの見方の上から当然そういうことは閣議においても、また法案説明の上においても、あるいはこの法案を出すについての、国民あるいは業者に与える影響の上から見ても、まさしく政府の努力はかくあるということを示されることが当然の処置ではないかと思って尋ねでいる。あなたは詳しいだけに、当然そういうことは論議されたであろうと思ってお尋ねしたのだが、そういうことは小さいことだから、論議をしておらぬと言われるならば、きょうは忙がしいから日にちをあらためてお伺いしますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/97
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098・西田隆男
○西田国務大臣 お答えいたします。精神の上において重要な要素であるということは異議はございませんが、伊藤さんも御承知のことでありますが、ただ日本の国の産業がある影響を受けて、そうしてそれが非常に窮境に立っているというか、そういう場合に、たよるものは行政的手段だけであるというような感覚に基いてやっておられると、企業の健全化はなかなか望めません。従って経営者も労働者側も自分たちの考えによって立て直そうという意思決定をされることが精神的な面においては一番大事なことであって、行政処置にたよる、そのことだけが全部の解決にはならないと考えております。従って今まで石炭鉱業に対して行政府としてどれだけの努力をしてきたか、援助をしてきたかということは、御説明をしなくても御承知のことかと思うのでありますが、今問題になりました復金の償還のたな上げのごときもそのままになっております。金利のごときもああいう二十何億のものを負けることもあります。そうしてきましたけれども、石炭鉱業の実態がよくなって、利潤が生まれましても、なお開発銀行の借入金の償却は依然として停頓したままであるというような考え方が経営者と労働組合との間にあったのでは、企業の合理化はただ行政措置で、今言う通り金額はわずかであっても、精神的に好影響を与えただけでは進捗しがたい。かように考えたのでありまして、別に悪意があって閣議で申さなかったのではございませんが、その意味合いも御理解願って今後は経営者と労働組合の双方の協力によってそれを政府側が行政措置によって補助をしていくという建前で石炭鉱業を立て直していくという考え方を進めていただきたい、かようにお願いをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/98
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099・伊藤卯四郎
○伊藤(卯)委員 私は今西田さんの答弁された点についてはだんだん疑問を深くするのでありますが、きょうは時間がありませんから質問をいたしませんが、いずれ商工委員会においでを願って十分論議をいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/99
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100・田中角榮
○田中委員長 善処いたします。滝井義高君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/100
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101・滝井義高
○滝井委員 石橋通産大臣にお尋ねしたいのですが、この石炭鉱業合理化臨時措置法案を読んで見まして、まず第一に私わからない点は、この法案は大体炭価を引き下げるのが目的か、炭価を引き上げるのが目的かわからぬ。なるほど合理化ということについては、読んで見ますと、合理化の中には一人当りの出炭量を十二トンくらいから五年後には十八トンくらいにするんだということは説明その他で大体わかるのです。そのためには縦坑の開さくを六十八坑いわゆる機械化でやっていく。同時に今度は中小の炭鉱の買い上げを三年間に三百万トン——中小が主となるでしょうが、能率の悪い炭鉱を三百万トン三カ年で買い上げる。そのために炭鉱の整理事業団というものを作るのだ。さらに非能率の炭鉱ができるのを防ぐために坑口の開設の制限をやっていく。同時に政府はさらに標準炭価というものを決定をして、必要があるならば不況カルテルの結成を勧告する、こういうことになっております。これだけではなるほど常識的に言えばちょっと炭価を下げるような感じがするのですが、だんだん深く考えてみると、必ずしも、あとでまた質問しますがそうでもない。この法文の中には石炭の生産費を引き下げるのだという言葉は一つもないのです。もちろん私は石炭の生産費が下れば必ずしも石炭の価格が下るとは、そのままその通りにうのみにはできないと思いますが、生産費を下げるというようなこともないのです。どうも読めば読むほど実はわからぬようになる。合理化がどうも不合理化法案のような感じがして仕方がないのですが、この点明確にお教えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/101
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102・石橋湛山
○石橋国務大臣 この中に生産費引き下げという言葉があるかどうか実はよく記憶しませんが、趣旨は生産費を引き下げて合理的に価格を下げようという——なるほど今非常な不況にある炭鉱業を目の前に置いてこの立法がされるものですから、非常に炭価が暴落して、そのために合理化を阻害するというような場合があるかもしらぬということを予想してそういう一項があることは事実であります。それと同時に炭価が上らないように、今の生産費の低下に見合って年々標準炭価をきめて、もし標準炭価より上るものがあればこれを下げるように勧告する。これは勧告するだけでは効能がないと言われるかもしれませんが、これは方法があるのでありまして、生産をふやすこともできますし、あるいは万やむを得なければ、外国炭の輸入あるいは重油の輸入によって値段を押えるという道は幾らでもある。ですからむろん合理化によって値段を下げて、それを炭価の上に反映させるということが大眼目であります。ただ現況においては非常に暴落するということもなきにしもあらず、だからその一項も入れたというわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/102
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103・滝井義高
○滝井委員 生産費を下げることが大眼目である。同時にそれは価格を下げることになる。現実はたくさんの貯炭があって、そうしてさいぜん大臣は輸入や外炭と競争はできないということをおっしゃった。現在は一カロリー三十銭、四十銭というものもあるわけなんです。これは大体どういうことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/103
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104・石橋湛山
○石橋国務大臣 それは不景気のためにそういう現象が起った。これでは困るのです。それでは炭鉱は成り立たない。このままにうっちゃっておけば炭鉱はつぶれるということなんでありますから、炭鉱をつぶしちゃ困るのですから、つぶさないで、しかも値段は合理的に下るように、今のような不況のために下るというのは決して健全な値段の下り方ではないのでありますから、これは防がなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/104
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105・滝井義高
○滝井委員 不況のために炭価が現実に下っておるわけなんです。下っておる炭価をそれならば上げることになるのではありませんか。合理化によって上げることになるじゃありませんか。そういう理論からいけば……。炭価が下っておるということは、現実に重油その他と石炭とが競争できる状態が出てきておるというわけなんです。ところが出てきておるその状態を合理化によって、不況なんだからこれを景気をつけてやって上げるということになれば、これは現実の結果としては重油や外炭と競争ができない状態が出てくるじゃありませんか。この矛盾は大体どう解明されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/105
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106・石橋湛山
○石橋国務大臣 現状にうっちゃっておいて、炭価がなるほど今は一時的に下っておりますが、この炭価がいつまでも下っていくものとは思いません。これはだんだん石炭が実際に自然にまかされてつぶされていく、石炭が減っていくということになれば、いつかは底をついて上らなければならぬものである。しかし今のようなものは原価が下ったんじゃない。ただマーケットの値段が下っておるのであるからこれは困る。マーケットの値段が下るということは私は希望しないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/106
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107・滝井義高
○滝井委員 私もそう思います。とにかく石炭の生産費が下っておるのではなくて、いわゆるマーケットの炭価が下っておるというところだと思います。ここに日本の石炭鉱業の一つの矛盾も出てきておるのではないかと思います。従って生産費が下ればすぐに炭価が下る、こういう論理は普通は出てくると思うが、なかなか日本には出てこないところもあると思うのです。その問題はもう少しあとで触れるところがあると思います。
次にお尋ねしたいのは、この法案の目的やいろいろの政策はよくわかる。わかるが、しからばこれをいかに具体的に実行していくかという問題なんです。まず合理化というものは生産設備の充実をしなければならぬというので、厖大な財政資金を投入して縦坑の開さくその他をやっていきます。そういうことは、私はそのあとに能率の悪い炭鉱の整理というものが出てこなければならぬと思う。ところがこの法案を見ると、先にいわゆる能率の悪い炭鉱の整理というものが出てきて、合理化という本来の目的はむしろそれよりかおくれる形を現実にはとられておるわけなんです。それはそれとして、しからばそういう合理化が進むが、同時に炭鉱の能率の悪いものの整理というものが申し出で行われるということなんです。それほど政府が石炭の値段を下げて、同時に世界的な競争力にたえ得る石炭産業を作ろうというなら、なぜ政府は勧告をしないかということなんです。もちろんこれは勧告というものをやらなくたって、金融上その他いろいろ実質的にやれるのだ、なるほどこの法案を見ると、私は生産面においても流通面においても、相当広範な統制的な権力を政府が握る形が出ておると思う。ただその統制的な権力をある程度カバーするために、この石炭鉱業審議会というものが民主的な機関として出てきておる、これは認めます。しかし全般的に流れる精神というものは、私はやはり流通あるいは生産面における広範な統制権力を国が握ろうとする点があると思う。ところが、そういうものがあるが、一方においては非能率炭鉱が申し出なければならぬというところに、私はこの石炭鉱業合理化法案が描いた目標の達成の困難性があるような感じがするのですが、その点困難なくやれるという御自信があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/107
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108・石橋湛山
○石橋国務大臣 これは強制力をもってある企業をつぶすということは、現在のわれわれとしてはやりたくないのです。またやるべからざることだろうと思うのです。でありますから、今炭鉱業者はみなしろうとではないのでして、十分炭鉱のことはよく知っており、また石炭界の今後の状況等も判断する人たちでありますから、みずから自分のところの炭鉱はどうしても整理をした方がいいと、こう考える者は私は申し出ると思う。申し出でやるというのが一番——何も急激にそうやらなくちゃいけないとも考えておりませんので、従ってこの三年間に逐次そういう炭鉱の整理をしていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/108
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109・滝井義高
○滝井委員 まあ大臣は炭鉱業者は自分の炭鉱のことをよく知っておるから、おそらく申し出てくるだろうとおっしゃいますけれども、これは炭鉱というものを一つ始めたならば、西田大臣はおられませんが、西田大臣にお聞きになるとわかりますが、なかなかこれは業者だけの問題ではいきません。鉱害もあります。未払い賃金もありますし、いろいろ銀行等の債務もありまして、なかなかそれは業者個人で勝手におれの炭鉱はもうやめだというわけにはいかないのが現実のいわゆる能率の悪い炭鉱の現状だと思うのです。そうしますと、なかなか自分ではやめられないのですが、一方においてはこの金利の引き下げによる納付金、そういうようなものは強制的にどしどし徴収していくわけですね。ところが今度は政府が一方徴収した金で買収するところのその相手方である炭鉱というものは、炭鉱自身の希望によってやる、こういう、一方においては強制的なものでどしどし納付金を取り上げていくけれども、一方の炭鉱の買い入れの申し出というものは、その希望によるという。こういう二つの矛盾した政策をこの中でとっておる。そうしますと金は集まったが——この金の集まり方も私はあとで質問しますが、問題だと思います。金は集まったが、申し出がなければ何にもならぬということなんです。大臣は一番よく知っているから、申し込むだろうとおっしゃいますが、私はなかなかそうはいかないと思う。しかも三年という余裕があれば、みんな情勢待ちです。どういう工合にいくかというと、三年の期間があるのですから、三年ぎりぎりのところまで待っていても間に合うわけです。そういう点われわれにわかるように、もっと具体的に一つ御説明願いたいと思いますが、どうもそこの矛盾が私にはわかりかねる。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/109
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110・石橋湛山
○石橋国務大臣 具体的にといえば、一つ政府委員に答えさせますが、現在炭鉱が困っておらなければ、何もこんな法案は必要がないので、ほうっておいてもつぶれてしまうという危険が目の前に控えておるのでありますから、この法案によって相当の申し込みがある、私はかように考えております。
それから金をとる方は、どうしても法律にこういうふうに書かないと、一種の租税みたいにとらなければなりませんし、ただ申し込みを待って金をとる、これこそ金が集まりませんから、どうしてもその方はある程度の強制力を持たなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/110
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111・滝井義高
○滝井委員 齋藤さんにお尋ねしますが、なるほど政府は三年間に三百万トン、約三百三十二ですか、そのくらいの見込みをしておるということを聞いておりますが、現在あなたのお見通しでは、具体的に現実の調査から見て、どの程度の申し入れがことしじゅうにありそうでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/111
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112・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 本年度は法律の施行が遅延いたしますので、実際に買い上げます炭鉱は、これはわれわれの一応の計画でございますが、四十万トン程度のわずかなものということになっております。しかしもうすでに、まだ法律も通らず、国会で御審議中の現在、われわれのところへ実は買い上げを希望して申し入れに来る業者も相当ございます。そういう状況から見ますならば、私に大臣が御説明いたしましたように、十分買い上げができるものと思っております。
それから納付金でございますが、これは別に実際に買い上げに要る金以上にとる考えはございません。買い上げが非常に安く済んだとか、あるいは量が満たなかったというような場合には、当然後年度の納付金でそれを減額して処理いたしますが、その間に矛盾が生ずることはないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/112
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113・滝井義高
○滝井委員 実際に今年度四十万程度のものが買い上げられるだろうということですが、炭鉱の数にしたらどのくらいか、あとで御説明願いたいと思います。そうしますと、そういう四十万程度の炭鉱が買い上げられる、しかも買い上げを希望する炭鉱というものは、ほうっておけばつぶれていく、こういうことなんです。私医者でありますが、われわれ医者の方には安死術というのがございます。これはやってはいけないことなんですが、たとえば胃ガンの患者が苦しんでおる。そうするとこれにモルヒネをやってやると、非常に楽に死んでいく。こういうのは医学上やってはいけない。それを医学的に安死術という。ちょうどこの法案は中小炭鉱の安死術なんですね。苦悶をしておるのをそのまま見てはおれない、だから一つ国のあたたかい温情で殺してやろう、こういうことなんです。トン当り二千三百円か二千五百円か知らないが、それを一つモルヒネのかわりにやる。それでいわば安死術をやることになるのです。そうしますとその安死術を受けた炭鉱というものは、当然莫大な公租公課があります。国税がある、社会保険の滞納がある。これは現在筑豊炭田に行くと実に多い。そのために労働者はみんな迷惑をしておる。たとえば落盤で死んでも、労働基準法のいういわゆる労災補償金さえももらえない、こういう状態である。あるいは健康保険があるけれども、保険料の滞納のために健康保険証も使えない。こういう莫大な公租公課の山がある。しかも一方においては、銀行から莫大な債務を背負っておる。こういうことから考えて、そういう四十万トンの炭鉱の買い上げがあるそうでございますか、どうですか、そういう可能性のある炭鉱は今大橋君からいろいろ御質問のありました三十三条関係の平均賃金の三十日分に相当する金額や、あるいは賃金債務の代位弁済、いわゆる未払い賃金、こういうようなものを、政府はその四十万トンの今年買い上げの対象になりそうな炭鉱を具体的に見てみて、どうですか、労働者にやれそうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/113
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114・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは今お尋ねがございましたように、炭鉱の希望によっても買い上げるわけです。われわれの方で調査いたしますのは労働能率でありますとか、炭層の自然条件でありますとか、そういうような客観的な基準で調査いたしましてある程度こういうものが範囲に入るということで調査いたしますが、その中でどれが一体買い上げに来るであろうかということは、ちょっと現在のところでは具体的には申し上げかねるわけであります。またこういった今申しましたような条件に該当する炭鉱は、お話のように中小炭鉱が非常に多いわけでありますので、その正確な経理状況というものは実は資料がございませんわけで、また金融機関等について尋ねましても、御承知のように金融機関は非常に信用を重んじますので、なかなか正確に資料を出してくれない。また資料を出してもらいましても、それはどの炭鉱にそれが該当するのか、大体このくらいの能力の山でこんなものがあるということでありまして、それが具体的にどれに該当するのか、そういう点について的確な資料が実は得がたいのであります。ただわれわれのところで地方の通産局を通じて調べたところによりますと、公租公課の未払額というものは比較的少い。これは各地区で中小炭鉱を全国の分を合計しまして二百くらい調べた例がございます。それによりますと大体平均いたしまして公租公課の滞納分は五億円ないし六億円程度、それでトン当りに直しますと百円そこそこくらい、従って公租公課はある程度優先的に弁済されるわけでありますが、これだけで中小炭鉱の退職金が払えないというふうには考えておらないのであります。
なお参考までに申し上げますと、今までのこの調査によりますと、全部の債務を入れまして全国で二千円足らずというふうな資料になっております。ただしこれはほかの調査によりますともっと多いものもございますが、これは買い上げ対象になるもの、あるいはそうでないもの全部ひっくるめまして、中小炭鉱全般についてでございますから、買い上げお申し込みになるのはこれより若干悪くなると思いますが、平均しまして二千円足らず、これは資産勘定を全然除きまして負債だけを全部計上したものでございます。そのほかに流動資産が相当ございますので、それは買い上げの対象にならないけれども、本人が別に処分し得るもの、たとえば未収代金とか、動産というものがございます。そういうものを差し引いて考えますと、この状況ならばその程度鉱業権者の手に残る。手に残れば労務者に支払われるのではないか、たださいぜん申しましたように、この買い上げの対象が具体的にきまって初めてどうなるかということがわかりますので、これだけで確かに払えるという点について実は不安があったものでございますから、そこで先ほどお答えいたしましたように、退職金と申しますか、三十日分のものを特別に支払うことにいたしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/114
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115・滝井義高
○滝井委員 今の御答弁で三十三条ないし三十四条関係は必ずしも空文にならないという一応の不安はあるが見通しはある。こういうことで幾分安心をいたしておきます。
次にはこの法案を見てみまして、さいぜんも申しましたように、どうも非常に統制的な権力が国に移る。と同時に大手の近代的な資本を保護するニュアンスが非常に出ておるということです。と同時に一方においては目的の一番初めにあるように、国民経済の健全な発展をはかる、こういうことをうたっておるわけであります。国民経済の健全な発展をはかるためには、当然炭価が安くなる、それは生産費が安くなって適正な利潤が同時に保障されておらなければならないことになるわけであります。ところがここに私たちが考えられることは、そういう場合に合理化のために生産費がどんどん下っていくということになり、その合理化に追いつけない中小炭鉱が相当に出てくる。そうしますと、中小炭鉱はやはりつぶしてはいけないという観念は大臣のさいぜんの御答弁からも明白なんです。つぶれるものがあるから、やむを得ぬから救わなければならぬ、こういう一応の観念があるわけです。つぶしてはいけない、これはわれわれも大賛成です。そうしますと、一方においてはこれをやらなければならない、莫大な金をつぎ込まなければならないので、つぎ込んで生産費をどんどん下げていくと、やはり中小はそれに追いついていけないという状態が出てくる。ここに、この法案の炭価引き下げというものに逆行する面が、ある一定の限界までいくと出てくるということです。この限界と国際的な重油、外炭との競争力というものをどういう工合にマッチさせるかということが非常にむずかしい問題として、私は政治問題として登場してくると思うのです。どうもそこらの矛盾が私わかりかねるのですが、その点御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/115
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116・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 今のお話では、大手炭鉱を合理化するとコストが下って中小炭鉱が競争ができなくなる、従って中小企業の振興という建前からして中小炭鉱の発展については政府が援助をすべきであるのに矛盾するじゃないか、こういう御質問のように伺いました。実はこの合理化は縦坑中心というふうに一般に伝わっておりますので、大炭鉱以外に合理化がないようにとられがちでありますが、そういうことは決してございませんので、中小炭鉱につきましても条件のそろっておるところにつきましては、十分政府で援助をして合理化をはかってもらう、そういうことで中小炭鉱につきましても、合理化につきましては大炭鉱と全く同じ立場で、実はわれわれやっていくつもりであります。また現在でも開発銀行の推薦等につきましても、大手炭鉱と中小炭鉱と区別して考えるというような考え方は全然ございませんので、合理化の資金についてもめんどうを見ていく考え方でございます。ただそれに幾ら合理化をやりましても、自然条件その他で合理化したところへどうしてもついていけない炭鉱につきましては、この法案にありますように、希望によって買い上げをして、それで労働者の方面あるいは鉱害その他の対社会的な面、そういう面に支障を来たさないようにするというふうにやりたいと考えておるわけであります。これは財政資金の今までの貸付の残高について申しましても——大手と中小は現在生産の比率が約七割対三割ぐらいになっておりますが、開発銀行なり中小企業金融公庫なり政府関係金融機関の大手並びに中小に対する貸付残高を見ますと、やはりちょうど七割、三割ぐらいの比率になっておりまして、決して政府資金が大手炭鉱にだけ回るというようなことはございません。そういう意味で御了承願いたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/116
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117・滝井義高
○滝井委員 財政資金、機械化その他は大体中小も大手も同じ条件でやっていくのだ、こうおっしゃっておりますが、なるほどここの答弁ではそういうことになるでしょう。しかし現実に具体的にこれが炭鉱の中で動いていく場合には、必ずしもそうはなっていかないわけです。私はやはりここに日本の地下資源としての石炭鉱業の一つの矛盾が出てきていると思う。というのは、大手筋のとる層というのは条件のいいところしかとっていかない。中小は非常に条件の悪いところをとっていくのだから、従って条件の悪いところをとるものが、同じ金を借り、同じ機械化をしていっても、これはなかなか一緒にならぬことは当然です。生産費が一方は高くつき、一方は安くなることは当然です。そこであなたの方は標準炭価というものをきめておるのではないかと私は思う。標準炭価である程度カバーをしていこうというのじゃないですか。そうでなれけば標準炭価というものは要らないはずです。自由競争にまかしておってもいいはずです。そういう差があるからこそ、標準炭価というものを置いて、ある程度目安をつけてやっていこうということだと思う。これは条件の同じところで、どんどん競争させていくというなら何も標準炭価を持っていかなくとも、どんどん炭が出てくれば、経済の一つの原則で、だんだん安くなってくるのです。しかも生産費が下っていけば、出てくるはずです。ところがそういうことをしておったのでは、中小がつぶれてしまうから、一つの標準炭価というものを作っておるんだと私は思う。そうでなければ標準炭価というものは要らないのではないかと思う。その点どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/117
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118・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これはちょっとお言葉に逆らうようでありますが、そういう意味ではございませんで、お聞き願いたいと思いますが、標準炭価というものは——これは今のお話のように、元来価格というものは、通常の場合にはコストというものが基準になってきまるべきものであります。従って炭鉱全体として合理化をやってコストを下げていきますれば、これは当然炭価の面にも反映するはずでございますが、それは長い目で見て、また一般論としていえばそういうことでございますが、しかし個々の場合には、そのときどきの需給関係なり、あるいはその他の事情によりまして、コストを正確に反映しない場合がある。そこでそれに対する保障として標準炭価をきめたわけでありまして、コストの高いところを保護するために標準炭価を作ったのではないわけでございます。これはコストの高い山も低い山も当然同一の市場で競争いたしますれば、一物一価の法則で同じ価格で売らなければならないことになるわけでございますから、その売られる価格をコントロールしようということでございまして、中小炭鉱のコストが高い場合に、これをカバーするためにきめるということになりますれば、この法律の大目的である価格引き下げという目的が達成せられないことになりますので、かえって本法の目的に矛盾するのではないかと思うのであります。ことに中小炭鉱が必ずしも自然条件が悪いからコストが高いかどうかということはむしろ問題でありまして、現在これはすでに発表されておりますコストでも、大手と中小では五百円くらい違っておりますが、現在のコストはもっと違うというふうに世間では一般に見ておるようでございます。それは労働能率につきましても、大手と中小では大手がはるかにたくさんの投資をしておるにかかわりませず、実際の能率の差はせいぜい一割か二割程度の差しかありません。しかも賃金に相当大きな差がございます。また厚生施設その他にも非常に大きな差がございますし、本社費その他の間接経費もはるかに少い。実際の現状では中小炭鉱の方がはるかにコストが安いのですが、ただ販売上の不利な点、あるいは金融上の不利で、むしろ倒産その他の件数が多いだけであります。従って今御心配のような点は、むしろ現在のところではないのでありますが、ある程度大手炭鉱の合理化が進んで参りますと、現在の状況でついていけない、これから先これ以上合理化のむずかしい炭鉱については、そのときにはついていけないことになりますので、そういう炭鉱は一つこの政府の計画に従って買い上げを申し込んでもらいたいというようにわれわれ考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/118
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119・滝井義高
○滝井委員 時間がありませんので、その点もう少し質問したいと思いますが、先に進みます。
一応合理化によって炭価も下る。おそらく国民経済に寄与する形が出ることになるでしょう。なったにしてもそこに相当の従業員の犠牲が出てくる、たとえばこの法案にしても、縦坑の開さくあるいは炭鉱の買い上げで約五万七千の失業者が出る、こういうような恒常的な大量の失業者が発生をしてくることになるわけなんですが、そうしますとあとに残る勤労者に対して、この法案は何ら恩典のあるところがないわけなんです。物価と賃金とはおそらく据え置きの形でいくのでしょうから、こういう点は通産省はどうお考えになるのですか。たとえば労働者の労働の強度を緩和してあげるとか、あるいは労働時間を短縮するとか、労働者の幸福については大体どうお考えになるか、こういう点が実はこの法案からは感ぜられないのです。労働大臣はおられませんけれども、立案をしたあなた方の方の気持をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/119
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120・石橋湛山
○石橋国務大臣 むろん生産能率が上れば、先ほども申しましたように賃金を決してくぎづけにするとかいうような意味はないのでありまして、いろいろの条件によって、たとえば全体の物価が上って参ればそれに従って賃金が上るということも当然でありますし、また生産高がふえて参りますれば、さっき労働大臣も言いましたように、ある程度の分配が労働者にあることも当然であります。ですから能率が上るということは結局労働者階級にもそれだけの利益が分けられるというふうに考えておるわけであります。ただ生産能率だけ上げて炭鉱に働いている者はいつまでも同じ生活をさせておくというような考えで立案されているわけでは決してありません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/120
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121・滝井義高
○滝井委員 そうだろうと思います。しかし安い金を借りてもその金利は取り上げられていく、しかも残った炭鉱はトン当り十八円かの納付金を納めなければならない、こういうことから考えてみると、必ずしも賃金がよくなっていくという状態はどうも出てこない感じがするのです。なるほど政府の方の送炭原価とそれから出炭の総原価ですか、そういうものとの間におそらく差はつけてやっているでしょう。その経費を納めるだけの差は作ってやっておかなければできぬですから作ってやっておるとは思いますけれども、どうも今の炭鉱の経理状態から考えて、莫大な借入金を持っておる、しかも銀行には負債はある、財政資金は借り、負債はある、未払い賃金は残っておる、そういうものがあり、しかも納付金を払ってそのあとに労働者の賃金をどんどん上げていくということは、これはどうも現実の問題から割り出していくと考えられない感じがするのです。そういうところにこの法律というものの——なるほど経済法である、だから経済的なことを通産省はやればいいのだ、労働関係は社会政策でやってくれ、こういう感じがどうもするのです。たとえば今年の予算を見ても、特別失業対策費なんかの中には決してこの合理化のために出る失業者の予算は組まれていないのです。こういう政府の施策を見ても、緊急失業対策をたくさんやるのだ、三十五億も予算を組んでおりますと言うけれども、三十五億の中にはこの法案によって出る炭鉱失業者の予算は組まれていないのです。これは臨時国会があれば組むのかもしれませんが、組まれていない、こういうことなんです。こういうことでは、石炭の生産費や炭価を下げていくのだけれども、しからば一般労働者のためにはどうしてやるのだ、どうして労働賃金の向上をはかってやるのだという面が何もない、提案理由の中にもないのです。こういう点もっと大臣は——もちろん経済閣僚でございましょう。これは担当ですけれども労働問題はおれは知らぬと言われればそれまでですが、やはりこれは何らか積極的にこういうことをやるのだということをしてもらわなければ困ると思うのです。その点西田大臣の方には聞いておるのですが、予算がなくて不満足なんです。この法案を通すことによって労働者にどういう幸福が来るのだ、こういうことでなくてはこの法案は世の中の国民経済の健全な進歩には資し得ないのです。この点について一つ大臣から明確に御答弁願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/121
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122・石橋湛山
○石橋国務大臣 確かにこの離職に対する職業転換の予算につきましては、三十年度の予算は非常に不十分であります。そのかわりそれで今いろいろ処置をしておるのでありますが、なおこれはなるほどこの法案に表から労働賃金をどうするとか労働者の生活をどうするということを書く立場ではございませんが、しかしやはり生産が上るということが基本だと私は思うのであります。いわゆるないそでは振れないので、とにかく生産が上り収入がふえるということが第一に労働者のみならずすべての者の生活を豊かにするゆえんでありますから、経済法としては特に表面に分配の問題までにそう触れぬでも、おのずからそのことはいわばわかり切ったことなんです。分配が最後の問題なんですから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/122
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123・滝井義高
○滝井委員 わかり切ったことが処置をされていないところにこの石炭鉱業合理化臨時措置法案の大きな問題があると思うのです。果してこの案は通るかどうかわかりませんが、通れば臨時国会でも開かれれば、大臣は当然やられると思いますから信頼をして先に進みます。
この石炭鉱業の合理化臨時措置法という非常に重要な法案を出されてきたのですが、この資金の出所と配分なんです。これを少しお尋ねいたしたいのですが、この法案を五カ年間にいよいよ生々発展せしめていくためには、千二、三百億の金が要ることになる、そうしますと大体どういう場合にその莫大な金をお使いになっていくのか。同時にそういう莫大な資金というものはどこからどういう場合に出してくるのか、これを一つ御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/123
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124・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは資料でも長期資金計画という表をお配りしてございましてそれに掲記してありますが、それにありますように、大体起業費が百七十五億から百九十億程度毎年要るのであります。そのほかに償還が百二十億ないし百四十億、そこで合計全体の資金需要が三百億から三百三十億円程度毎年要る、こういう考え方であります。それに対しましてどのくらいの調達ができるかというのを考えましたのが下の表でありまして、この自己資金と申しますのは、大体大部分が減価償却でございまして、そのほかに若干の増資その他の分、あるいは社債等を見込んでおります。それから市中借入れが九十億ということになっておりますが、これは現在で申しますと、ちょうど昭和二十九年におきまして実際に調達されました資金の量を基準といたしまして計算してございますので、この程度のものは今後確実に調達できるのではないか。その両方を差し引きますと、そこにありますように六十億ないし八十億の資金が不足することになりまして、その分を財政資金で見る、こういう考え方であります。現に昭和三十年度の開発銀行の融資予定は石炭に対して六十億ということになりまして、計画通りということになっておりますが、このほか中小企業金融公庫からもさらに融資されることになっております。来年度以降の問題は、むしろ来年度の問題でございますが、合理化の建前から見まして、本年度より若干ふえる程度でありますので、確実にやられるものと確信しておるような次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/124
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125・滝井義高
○滝井委員 通産省の当初の財政資金の見積りは八十億ではなかったですか、これが予算削減で六十億になったのではないですか。初めは八十億と記憶しておりますが、通産省からいつか出た資料には八十億と書いてありましたが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/125
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126・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは当初の計画はおっしゃる通り八十億でございます。従って三十年度の計画はここにもありますように後年度以降よりもちょっと減っております。これは今非常に不況でありますので、実際資金の計画がこの程度しか出ないだろうということでございます。それと同時に償還期限の問題も実は関連いたしております。この設備資金の返済というのは大体約定ベースと申しますか、銀行等に対してこの程度は毎年こういうふうに支払いますという約束の数字をそのまま計上いたしてございますが、実際は不況ないし資金繰りの関係でこれが少しずつ延びて、なお今度の法案の立案に際しましても、大蔵大臣から財政資金の返済できぬものについては特別に考えるというお話もございますので、設備資金の返済の面と考え合せますと、六十億で本年度は十分いけるものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/126
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127・滝井義高
○滝井委員 資金調達の中で莫大な減価償却をやっていくことになるわけですが、莫大な減価償却をやりながら、同時に相当の自己蓄積も、六十億ですか六十二億くらいやるようになっておる、現在の炭鉱の経理の状態から見てそういうことができるかどうかということなんです。たとえば終戦以来基礎産業という名目で石炭につぎ込まれた費用というものは、復金が五百三十億、見返り資金が五十二億、開発銀行が百三十一億、七百十三億というものがつぎ込まれておる、しかもその七百十三億というものがつぎ込まれた上に、今度この合理化法案によって千二、三百億というものがつぎ込まれていく、そうすると約二千億の金がつぎ込まれた形になる、過去において莫大な金が石炭産業につぎ込まれたけれども、これがいわゆる原価の引き下げというものには成功しなかったというのが現実ではなかったかと思うのです。ここに一つの問題がある、こういう点で、私はこの合理化法案というものがますますわからなくなってきておる、過去において莫大な金をつぎ込んでおって、しかもそれが必ずしも原価引き下げに作用していなかった、国際的な競争にもたえ得なかった、こういうことなんです。その国際的な競争にたえ得なかったものにまた莫大な金をつき込んでいく——世界的な重油と石炭との運命的な比較をしてみても、第一次世界大戦以来重油はぐんぐん生産が伸びていく、石炭はプラトーを歩む、運賃というものも大型タンカーができて重油の運賃はぐっと安くなっておる。熱管理が発達して、十使っておったものが六か七で間に合うようになってきた。重油は灰が出なくなって人件費がうんと省けていく、こういう石炭と重油との運命的な問題を考えていくと、私はこの合理化法案というもののねらっておるところがますますわからなくなって、これではどうも炭価の引き下げができないという感じがしてならない、この資金のやりくりの面その他から見ても、五百億をこえる減価償却をやっていってなおそこに自己資金の六十億くらいの蓄積ができる、こういうことはどうしても考えられないのです。それが大体できるという御自信があるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/127
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128・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 従来の莫大な財政投資の結果、コストがちっとも下らないじゃないか、こういうお話でありますが、これはこの間に物価が相当上昇しておりますので、実は比較が非常に困難でございます。試みに昭和二十五年度の上期と昭和二十九年度の上期、この五カ年間の差をとってきたわけでございますが、賃金なり物価なりを、二十五年度のものを現在の標準ベースに引き直して考えますと、二十九年度の実績と比べてみますと千円程度下っておる計算になっております。われわれの方も今度の合理化法案では大体千円程度コストを引き下げるという計画でありますので、私どもは十分実現可能なものと考えております。
〔田中商工委員長退席、中村社会労働委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/128
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129・滝井義高
○滝井委員 五カ年間で、将来千円、過去においても千円下っておるそうでございます。下っておるにかかわらず、しかもなお国際的な競争にたえ得ない、私はおそらく五カ年間に三千百五十円になっても、石油その他がもっと安くなってたえ得なくなると見ております。従って私はこれだけ、千億以上の莫大な財政投資をつぎ込むならば、低品位炭の利用と申しますか——日本の石炭というものはいわば二級品と申しますか、量としては大体低品位炭が多いわけです。従ってそういうものの利用をむしろこの際考えて、需要の喚起をやる方が能率を上げるのじゃないかということを、実はこれを読んで考えたのです。これは通産省の問題であると同時に、経済審議庁の問題となると思いますが、日本の石炭の分布というものは南と北にある、水力というものは中央にある。しかも工業地帯というものはそれぞれかたまって偏しておる、こういう条件から考えてみると、コストの問題というものは輸送費の問題にも重大な関連をしてくると思う、そういうことから考えるならば、やはり十分石炭の出るところで低品位炭を利用するような化学工業との結びつきというものを莫大なる千二百億という財政投資をやって考えた方が、むしろ私は合理性があるのじゃないかということがどうも感ぜられて仕方がないのです。これは経済審議庁の方の御意見も聞かなければならないので、実は経審の方に残ってもらったのですが、総合的なエネルギーをどうするかという——これはもちろん国民的な背景を必要としますが、そういう点から考えて、どうも合理化法案というものは石炭のみを見て——この法案はいわゆる林を見て山を見ていないという感じがするのです。だからむしろそれならば、もっと私は日本全体の石炭の分布の状態あるいは工業の分布の状態等から考えて、日本経済全体の状態から申しまして、合理化法案というものは考え直すべきじゃないかという感じがして仕方がない、これだけは、日本経済の中の林を見て全部の山を見ていない法案ではないかという感じが結論的にするのですが、経済審議庁の意見をお伺いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/129
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130・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 石炭関係の分だけ私からお答えいたしますが、実は利用面につきましては、法律上この法案に織り込むべき規定がないという意味で、何ら法案の中には出てこないというだけでございまして、われわれといたしましてはお話のような低品位炭の活用につきましては、縦坑開さくと同程度の重要性を持つものという考え方で積極的に進めておりまして、すでに常磐地区に低品位専門、しかもこれは従来商品として売られておらない部分の炭を専門にたく発電所を作ろうという計画で今進めております。製錬事業につきましてもすでに四社の計画がございますが、これも優先的に資金をつけていくというふうに、現在企業的に見通しのついておるものにつきましては、縦坑開さくと同順位をもってやっていきたいという考え方でございます。ただ石炭化学工業等につきましては、なお技術的に非常に未解決の問題が多いわけでございまして、そういう点につきまして省内に委員会を作りまして技術的な検討をやるということになって、委員会が最近発足いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/130
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131・松尾金藏
○松尾政府委員 ただいま御指摘のございました点の、石炭の需要の喚起についてさらに再検討すべきではないかという御意見は、私どもも考えの方向として全く同様であります。今石炭局長から低品位炭の利用あるいは石炭化学の方面での需要喚起の話がございましたが、今度のわれわれ経済審議庁で現在まで一応の案を得ております六カ年計画、長期計画におきましても、そういう配慮は十分にいたしておるつもりでありますが、その細目につきましては、さらに今後の検討を要する点であると思います。御承知のように、石炭の国内炭の生産につきましても、確かに一時的には生産の減少が起っておりますけれども、三十二年度、三十五年度という長期計画の目標の数字におきましても、かなり大幅な絶対量の生産の増を期待しておるわけでございます。御承知のように、三十五年度には五千万トンの国内炭の需要を予定したような今後の需要見通しをわれわれとしても持っているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/131
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132・滝井義高
○滝井委員 いや、私が言っているのは、石炭鉱業の合理化のために莫大な金を今後つぎ込んでいくわけです。その金をつぎ込みながら、中小炭鉱を安死術で殺していくわけなんです。だからそういうことをやらずに、低品位炭自身あるいは能率の悪い炭鉱から出る炭自身を、その莫大につぎ込む合理化の金の一部をさいてでも国内でどんどん利用した方が、安死術を受ける炭鉱の労働者もすぐそこで使えるということなんです。この法案の欠点は、失業対策がはっきりしていないという点です。失業の方は社会政策でやれ、こうなって、労働者の幸福を考えていない。莫大な金をつぎ込んでいながら、一方において労働者が犠牲にされるという、ニュアンスにおいてはそういうことがあるのですから、莫大につぎ込む金を半分でもそれを減らしてでも、そこに需要喚起の産業を起した方がいいのじゃないか。たとえば北九州の特定地域総合開発でも金がなくて進み得ない。六カ年計画ができているけれども、あれは私は机上プランで、できると思っていないのです。実際に石炭鉱業は日本においては、なるほどこの計画が実現した後において四千五百万トン、五千万トン使われます。しかし資源調査会の結果を見ても一九七〇年に至って石炭の使用というものは五千万トンなんです。そういう状態から見ても、もう石炭産業そのものは限界にきておる。限界にきている産業に莫大な金をつぎ込むよりか、別な産業につぎ込んでいってこれを長く生かし、そこで同時に労働者を雇用した方がいいのじゃないかという、むしろ政策の転換を私は言っているわけです。だから、過去において千円下った、あるいは将来において千円下るとおっしゃるけれども、それは国際的な競争力の見地から見ましたら、必ずしも下ったことにはならない。それは絶対値においては下っておるけれども、競争的な面においては下っていないということになる。そういう点から私は、むしろこういう法案に莫大な金をつぎ込むよりか、もっと政策を転換した方がよくないかということなんです。そういう点を経済審議庁に意見を聞きたい、こういうことなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/132
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133・松尾金藏
○松尾政府委員 当面の低品位炭の利用なりその他の点につきましては、先ほど石炭局長から答弁がありましたから、私から重ねて言うことを避けたわけであります。資金の面におきましても、先ほど通産省から答弁がありましたように、本年度の財政資金等においても、その点は事業計画がはっきりしておる限りはできるだけ財政資金の投入もいたしたい、現在そのような考えで進んでおります。なお、長期の観点からそのような方向にさらに検討すべきじゃないかという点は、私ども全く同感であります。ただ御承知のように、エネルギーの全体の総合的な経済的な価値の比較ということは非常にむずかしい問題でございますので、現在ここで直ちにこれこれの分量をこれこれに回すというふうな、具体的なところまでまだ十分検討は進んでおりませんけれども、今後の長期計画の検討に対しては、さらに対策について掘り下げをすべきものだ、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/133
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134・滝井義高
○滝井委員 時間がないので先に進みますが、次はこの法案における鉱害賠償の問題についてでございます。この法案を読んでみると、鉱害の復旧に対する具体的な計画というものが明白でない。なるほど一応整理の対象になった炭鉱が申し出て買い上げられます。そうしますと、おそらくこの法案では、買い上げになった後の鉱害というものは、これは事業団がやってくれることになるだろうと思います。ところが問題は、その前のすでに起っておる鉱害についてはどうなるかということです。これは地方財政とも重大な関係のある問題なんです。たとえば橋梁あるいは道路あるいは家屋、こういう公共事業の対象になるもの、あるいはならないもの、個人の田地田畑、こういうようなものは、現実に買い上げの対象となるような炭鉱の事業主は鉱害をおっぽり出しておるわけです。従って、なるほどおそらくこの法案では、事業団が、買い上げた後において、それから先の鉱害は見ることになると思うのですが、その前に現実にある鉱害というものはどうするのか、これを一つ御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/134
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135・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これはお話の通りでございまして、事業団が買い上げました以後は、事業団が鉱業権者になりますので、法律上の直接の責任者になりますから、事業団が鉱害に責任を負うことになるわけであります。ただ、その事業団が発足前の鉱害、すでに発生しており、しかも復旧に適した状態にまできておる鉱害につきましては、これは買い上げの際に関係者と鉱業権者とが話し合いをしまして、俗に打ち切り賠償と申しますが、恒久的に解決する処置を講ずる。そういう措置をとった後に買い上げる。買上代金の中でそういう分を優先的に支弁充当させるようにいたしたい、こういうように考えておるわけであります。その場合に話がつかない場合も予想いたしまして、裁定制度も法律の中に特定した次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/135
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136・滝井義高
○滝井委員 なるほど買い上げの際に打ち切り賠償として話し合いをつけさして、そうして優先的に払わせる、こういうことです。ところが公租公課がとられ、銀行の債務がとられ、そうして未払い賃金がとられて、その次おそらく鉱害にいく、そういう場合にこれは残るかということです。ここにさいぜんから私が言うように、この話ができない限りは、買上炭鉱が幾ら希望したって買い上げの対象にならぬ、ここにこの法案の一つの大きな盲点がある。現在われわれの住んでおる筑豊炭田においては、買い上げの対象になる、未払い賃金のどっさりある、公租公課のどっさりたまっているところは全然鉱害をやっていない、鉱害はそのまま放置されている現状である。これに対する具体的な解決がなければ、おそらくその所属の市町村はあげて反対するでしょう。政府は現在四十万トンの買い上げの希望がありそうだというそういう炭鉱について、具体的に鉱害というものがどういう状態で解決されておるのか、あるいはどういう状態で放置されておるのか、こういう点を御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/136
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137・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 先ほど申しましたように、買上炭鉱が別に確定しておるわけではございませんので、これは具体的にこの山についてこうだというふうなことは御説明いたしかねる次第でございますが、ただこの買い上げの対象になり得る炭鉱につきまして従来の例からどの程度の鉱害が現実にあり、また将来起るだろうかということを予想いたしてみますと、それは過去の分も将来の分も全部ひっくるめまして、大体トン当り五百円程度でとどまるのではないかというわれわれの見通しでございます。買上代金はトン当り平均二千三百円というふうにわれわれ計画しておりますので、公租公課、未払い賃金等のものを支払いましても、鉱害につきましてある程度筋の通った解決を講ずるだけの金は十分出るものとわれわれは思っております。なお債権者その他の、債務が買上価格を上回る場合、十分その場合もあり得るとは思いますが、そういう場合には政府あるいは事業団が中に入りまして、債権者間に話し合いをさせまして、鉱害について十分合理的な処理ができる程度のものを残すというふうに話をつけさして買い上げるというふうにいたしたい。従来の場合には鉱害について何ら処理しないで倒産する、現実に支払い能力がないのでそのままそれが地方団体の負担に残るというようなこともございましたが、買い上げをいたしますれば、その問題はむしろ非常に好転するようにわれわれは考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/137
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138・滝井義高
○滝井委員 鉱害の問題で、なるほど二千三百円で買い上げてそれでまかない得るものはけっこうだと思います。しかしまかない得ないものが出たときには、これは明らかにそこに一つの大きな問題を残したままになるわけです。そういう買い上げの対象になって全部の鉱害の賠償まで進む、こう記憶しておった。そういう考えのもとに買い上げられたものが、今度は実際に鉱害の賠償を支払いができなくなった、こうなったときには一体だれが責任を持つことになるのです。現在われわれの方の炭鉱の実情を見てみますと、鉱業権をAからBに売り渡した場合には多くAの鉱害というものは一切過去にさかのぼって、買ったBが背負っていっておるのが現実なのです。だからわれわれの常識をもってするならばAから政府が買い上げたならば、一切の過去における鉱害の賠償の責任も政府に移っていかなければならぬものなのです。当然そういうものでなくてはならぬのに、この法案は今局長の御説明のように、新たに起ってくるものについてはこれは政府が責任を持つが、過去のものについては、それは事業主と話し合って打ち切り補償でなければならぬ、こういうことになればこれは大へんなのです。私はその点政府が責任を持つべきだと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/138
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139・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは従来の鉱業権者と申しますか、要するに買収前の鉱業権者の時代の損害につきましては、法律上はあとの鉱業権者が連帯して賠償責任を持っておるわけです。法律的にそういう責任があるわけでありまして、従ってそういう事前処理をしない場合には、当然事業団が賠償の責任を有するということにはなるわけであります。ただそういう形で事業団が過度の責任を負うということは、事業団の経理からいっても望ましくない、またその場合には納付金をよけい取らなければいかぬというふうな問題になりますので、すでに起って賠償に適しているような状態にまで熟しておる鉱害につきましては、あらかじめ十分測定ができるわけでありまして、話し合いもつくはずでありますから、できるだけ事前に話し合いをつけて処理をする、しかもその金を賠償として支払わなければ事業団が買い上げないということになりますれば、これは債権者といえどもどうもいたし方がないので、当然それはある程度了解がつくのではないかという、実際上の運用について申し上げましたので、そうでなしに法律的にどうだということになりますれば、当然前の鉱業権者と連帯賠償の責任は法律上持つことになるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/139
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140・滝井義高
○滝井委員 大体わかりました。そうすると今度新しく事業団がその鉱区を買い上げます鉱業権者になります。そうしますとたとえば麦、米等の作物の補償というものは、これは年々歳々やっていくわけなのですが、この法律は五年で一応はなくなってしまうことになるわけなのです。限時立法ですが、その責任というものは永久に今度は買った事業団についていくと思います。そうした場合に政府は永久に麦、米のいわゆる差額補償をしてくれるでしょうね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/140
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141・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 私が今実際上の処理の方法として打ち切り賠償をやりたいと申しましたのは、今申しましたように減収補償というものを永久的に続けるのでは事業団の性格と非常に矛盾して参りますので、こういった年々賠償の場合にもある程度のまとまった金額を支払って、そのかわりに年々補償打ち切りということをやっております。まとまったものを支払いまして、そのかわり年々賠償はしないという処理のやり方がございますので、できる限りそういうやり方でやる。それから完全復旧いたしますれば、これは当然年々の減収補償はする必要がございませんので、そういう完全補償の形で処理する、完全復旧をいたしますか、あるいは打ち切り賠償というような形で、将来無制限に賠償を支払うというようなことをしないように処理をしたいということを申し上げた次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/141
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142・滝井義高
○滝井委員 ここでの議論では私はそれで済むと思うのです。ところが現実に農家を相手にして鉱害復旧をやりますと、りっぱな美田に返ります。けれども昔の、いわゆる炭鉱を掘る前の美田と比べれば、耕地整理をやってできた田というものは、明らかに昔の美田よりか落ちておるわけなのです。作物の生産力が落ちておるわけなのです。従ってその差額について現実にも長年の間ずっとやってきておるわけです。大手筋の鉱害後の田地田畑はそれが多いわけです。五年も十年春ずっとやってきておるものを、今になって政府の賠償の対象になったというので、そこで打ち切り補償をしようとしたって、これはなかなか農家は承知しませんよ。それはなぜならば、いわゆる莫大な補償費というものが現金収入として入ってくるわけです。だから田や畑を作っている農家というものは、その現金収入というものが現在唯一の収入になって、鉱害地では農家経済というものを潤しておるわけです。だからそこに一時に、たとえば三万になるか五万になるか知らぬが、もらったということでは農家はなかなか大へんなのだ。私はそういう問題は必ず起り得ると思う。今AからBに鉱業権を移す場合には、筑豊炭田においては必ずその作物の補償費というものをつけて、条件としてみんな鉱業権が移動されておる、租鉱権についてもそうです。それが現実なのです。だから政府が買い上げる場合についてだけは打ち切り補償でなければだめだということになれば、炭鉱の買い上げというものは進まない、こういうことになるわけです。それでは農民が承諾しない。こういう点についてはどうお考えになるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/142
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143・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 お話でございますが、これは今お話が出ましたそれが唯一の現金収入であるというようなケースは、これは未復旧の土地でございまして、復旧をいたしました場合には当然年々賠償というものは非常に減ります。特にただ復旧の当初はなかなか田がそこまで熟しませんので、なお若干の減収補償をいたしますが、それは逐次減らしていくというふうに現在われわれの運用ではなっておりまして、しかも補償額も非常に減っております。従って実際上の処理につきましては、復旧をした上でさらに減収補償の分はある程度まとまった金額を渡しますれば、話し合いがつくのではないか、それで合理的な線でなお納得しないというふうなものにつきましては、これは事業団の申し立てによりまして、あるいは鉱業権者の申し立てによりまして裁定の制度があるわけでありますから、その裁定で処理をして進んでいきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/143
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144・滝井義高
○滝井委員 買取りの上で鉱害というものが非常に大きな役割をすることは明らかなことでございますので、すみやかに鉱害復旧の具体的な計画の樹立と、その責任の明確化等については法がもし実施されるという段階が来れば、これは一つ慎重に御検討をお願いいたしたいと思います。
次に鉱業権と租鉱権の関係なのでございますが、たとえば石炭の層がたくさんあるわけですが、上層は租鉱権者が掘っている。下層は鉱業権者が持っている、こういう場合にその租鉱権者が買収の対象になったというときは、どういう関係になるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/144
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145・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは本法では鉱業権とともにでなければ租鉱権と申しますか、租鉱権自体は買収いたさないのでありますが、租鉱権者の持っている鉱業施設は買収いたさないということにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/145
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146・滝井義高
○滝井委員 租鉱権者の鉱業施設は買収するんじゃないですか。三十二条の二項で、「事業団が買収することができる租鉱権者の鉱業施設は、事業団が買収する採掘権の上に設定されている租鉱権に係るものでなければならない。」と書かれておるので、買収することになるんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/146
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147・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 法律の文句はどうも非常にごたごたしておりますけれども、要するに租鉱権単独では買わない。鉱業権とともに買う場合に、その鉱業権に租鉱権者が施設した施設があれば、その施設も買います。こういうことを表現したものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/147
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148・滝井義高
○滝井委員 鉱業権者の承諾を得て買うことになるということでございますが、現在炭鉱の形態を見ると、これは明らかに二つに分れておるのです。しかも租鉱権者というものは明らかに独立で炭鉱をやってきておるわけです。融資も受けておる。そういう場合に、租鉱権者でも月に一万トン以上出しておる人も相当おるわけです。そうすると、どうも鉱業権者が承諾を与えなければできないということになると、またここに、この法律の合理化促進の上に一つの隘路が出てくることになると思うのですが、その点はどういう工合に解決されていきますか。そういった非能率の炭鉱というものは買い上げの対象にならないので、ずっと永久に残っていくことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/148
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149・齋藤正年
○齋藤(正)政府委員 これは租鉱権に基きまして経営しております炭鉱が相当数からいえばたくさんございます。また大体におきまして非能率な炭鉱が多いものでございますから、当然われわれもその租鉱権者の施設につきましては買収の対象にしたいという考えでおりますが、ただ鉱業権と別に租鉱権だけを買う、あるいは租鉱権者の施設だけを買うということにいたしますと、その当該同一の区域でまた別に租鉱権を設定してそこで事業をやるということになりまして、鉱業権者の石炭の生産能力を縮小するという、買い上げの目的に合致しないことになるわけでございます。そういう意味で鉱区とともに譲渡する場合のほかは、租鉱権者の施設を買わないということにいたしたわけであります。通常租鉱権に出しますところは、大体従来の鉱区のうちで特定の区域を限って、たとえば残炭掘りというような形で区域を限って事業をいたしておりますので、その区域の分を鉱業権者と話をして、その分だけ鉱区を分離いたしました場合には、租鉱権者の施設も買う、こういうふうに考えております。なお租鉱権につきましては、炭鉱の数から申しますとかなりございまして、二百以上もございますが、生産量から申しますと昨年の六月の実績でございますが、出炭量は一カ月二十万トンしかございません。全出炭量三百六十万トンに対しまして二十万トン程度でございまして、生産能力としてはそう大きなものではない。炭鉱の数からいえば大きいが、能力は大きいものではございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/149
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150・滝井義高
○滝井委員 現在のように日本の石炭鉱業が老朽化してくると、租鉱権と鉱業権とが錯綜しておることが非常に多いのです。しかも大きな鉱区の中で上層は租鉱権者が掘っておる。下層は鉱業権者が掘っておる、こういうように入り組んでいる状態が非常に多いのです。従ってその租鉱権者が買い上げの対象にならないということになってくるということになれば、それは数は少いかもしれませんけれども、入り組んでいるということについては鉱業権者自身にも一つの影響を及ぼしてくる可能性が十分ある。これは私も研究が不足でございますので、なおまたひまなときにお伺いいたします。
次には自治庁の方にお尋ねいたしたいのですが、この合理化法が行われることによりまして、地方財政に非常に大きな影響を及ぼしてくる。自治庁はこの合理化法を政府が制定するときに、地方財政にどういう影響を及ぼすかという意見を述べられたと思いますが、どういうお考えを持っておりますか、これを一つまず述べてもらいたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/150
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151・永田亮一
○永田政府委員 石炭鉱業合理化法案が行われますと、それに従いまして、相当の失業者が出るであろうということは想像されるのであります。三年の間に、先ほどお述べになりました五万側千人かの失業者が出る、そういう失業者を救済しますためには、やはり公共事業その他によってこれを救っていかなければならないということが政府の方針であります。それでそのためには相当程度の失業対策費が国の方で組まれると思うのでありまするが、これに対しまして、地方の負担分もそれだけ増加をいたしますことは、ただいま御質問の通りでございまして、自治庁といたしましては、この地方負担の増加分に対しましては、地方財政計画の中にこの経費を織り込みまして、地方債を発行し、あるいは一般財源その他によってこれをまかなっていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/151
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152・滝井義高
○滝井委員 どうも永田さんの答弁、少しはっきりしないのですが、実は現在炭鉱地帯の市町村というのは、大がい今までは鉱産税あるいは固定資産税が入りまして、裕福な市町村だったのです。非常に財政的にも豊かであった。ところが昭和二十八年の末期以来、デフレ政策の進行によって急激に悪化してきた。黒字であった団体も大いなる税収の減を来たすとともに、一方においては炭鉱の合理化首切りによって膨大な失業者が出てきた。北九州だけでも現在四万以上の炭鉱失業者がおるという状態です。従って失業対策費がその支出の中にぐっと大きな地位を占めてきたばかりでなくして、生活保護のために二割のいわゆる地方負担というものが——国が八割負担して二割負担しなければならぬ。この生活保護費の負担というものが出てきた。あるいは教育費の中における学校の欠食児童、いわゆる弁当持ってこない児童が出てくる、こういうようなために、地方財政というものは急激に、二十八年の末期を契機として悪化してきた。この昭和三十年度になってから非常な赤字が至るところに出てきた。そうしたその予算というものは失業予算だといわれるような状態になってきた。失業対策費というものがクローズ・アップされてきた。今度すでに二十八年から二十九年の末期にかたって行われた政府のデフレ政策のために、地方財政、特に炭鉱関係の地方財政というものは急激に赤字の状態が出てきたのですが。その上に今度この合理化法案によって、いわゆる二万七千の失業者というものが三カ年間に出てくる。合理化のために五年の後には三万の失業者が出てくる、こういう情勢になってきますと、現在聞くところによりますと、この数字は正確かどうかわかりませんが、固定資産税やあるいは鉱産税の未納が五十億になんなんとしておるということさえいわれておる。こういう情勢の上にこの合理化法が加わってくると、一体炭鉱関係の地方財政はどうなるのだ。おそらく今年の地方財政計画の中にはこれは入っておりません。今地方財政計画のことを永田さんは言われましたが、おそらく入っていないと思う。それは政府の失業対策さえも、ことしの予算の中にはこの合理化による失業者の対策の問題は入っていないのですから、入っていないと思う。そうするとこれは一体どうするかということなんです。交付金の交付率を引き上げるとかなんとかいう問題もあるでしょう。しかしこれは現実には実現をしそうにありません。そうすると現実の問題をどうするかということです。たとえば私の住んでおる市などは、現在一号俸だけ全部の市役所の吏員が俸給の引き下げをやりました。そうして市長以下全部ストップです。そのために争議が起ろうとしておるという状態なんです。そういう状態をとらなければ、もはやこの自治体の財政危機は乗り切れないという情勢が出てきておるということです。その上に今度は合理化法のために莫大な失業者が出る。合理化のために莫大な失業者が出るばかりじゃない。炭鉱町というものはその炭鉱があることによって多くの中小の商店が飯を食っている。だから炭鉱が買い上げられるということは、その町に失業者がどっと出るばかりじゃなくして、中小の商工業者が同時に失業者になるということです。町ぐるみ失業者になる、同時にそれは地方自治体そのものの運営ができなくなるということです。この対策をどうするか、合理化とともにそれらの炭鉱関係の市町村の地方財政というものを、どういう工合にするか、一つ明確な御答弁をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/152
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153・永田亮一
○永田政府委員 炭鉱地帯の市町村が、最近になりまして非常に急激に赤字に悩んできておるということは、私も承知をいたしておるのであります。それにつきましてこの財政をどうして立て直していくかということにつきましては、ただいま地方行政委員会の方におきまして、地方財政再建促進特別措置法というのを提案いたしまして、これがもし通過いたしますならば、炭鉱地帯の特に赤字で困っておられる市町村から、財政の再建計画を出していただいて、これに対して政府資金なり起債によって、今までの赤字を解消し、さらに今後の赤字についても考慮をいたしていくつもりでございます。その場合に失業者の対策といたしましては、ただいま申し上げましたように国の失業対策費がきまりますと、それに対応する地方の負担分も当然増加をいたすのであります。これはそのつど毎年今後も地方財政計画の中に織り込みまして、地方債の発行その他によって失業者を救済していきたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/153
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154・滝井義高
○滝井委員 どうも永田さん、それは見当はずれですよ。現在町ぐるみ失業者が出て、赤字でどうにもならないというところに再建法を適用していく。そうすると再建法は公募債百五十億、政府資金は五十億なんです。そんなに赤字で悩んでおるところに公募債なんか発行したって、だれも買ってくれやせぬですよ。しかも再建整備だったら、税率を引き上げなければならぬ。貧しくなっている人に税率を引き上げて、その町村の立て建しをやれというのは矛盾もはなはだしい。政府の政策によって安死術を施して、その炭鉱がつぶれ、市町村がつぶれていくのですから、当然これに対して何らかの政府の施策というものがなければならぬ。地方財政の再建は、住民の税金を引き上げることによってやれ。そのために政府がある程度金を貸そう、こういうことなんです。こういう地方財政再建の法案で、不況に直面しておる市町村を救っていくというのは見当はずれです。政府の政策によってこういう状態になってきた市町村というものは、再建整備とは別個の法案で当然救われなければならぬ。私はこの合理化法によって出てくる失業者というものは、別個の労働立法によって救われなければならぬと思うのです。それと同じように、この炭鉱の合理化法案によって窮乏化するところの自治体は、当然別個の法案によって救われなければならぬと思う。今の御答弁では全く政府というものは、さいぜん私が言うように、合理化法案のただ林の木だけを見て山を見ていない、こういうことなんです。この法案を貫いていくならば、総合的な施策というものを自治体にまで、あるいは労働政策にまで貫いてこそ、この法案というものが生々発展をして、日本の国民経済の伸展に寄与することができるのです。今のような御答弁では——おそらく今の永田さんの御答弁を聞いたら、炭鉱関係の市町村長は皆腹を立てますよ。再建整備でやるなんといっても、貧乏になっているものに公募公債を発行しても、だれも銀行は金を貸してくれませんよ。石橋大臣にお尋ねしますが、どうですか、閣議でこういう炭鉱関係の地方自治体をどういう工合に救っていくかというお話は出なかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/154
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155・石橋湛山
○石橋国務大臣 特にその問題を討議いたしませんが、一体これをやるから市町村がつぶれるのですか。今のままではつぶれないのですか、ほうっておけば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/155
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156・滝井義高
○滝井委員 それはつぶれるかもしれません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/156
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157・石橋湛山
○石橋国務大臣 そうではない、私どもはこれをやることによって幾らかでもそういう市町村が助かるのではないかと思うのです。しかしその上になお一つ町村が今永田次官から答えられたように、ほかの法律によってはどうにも処置ができないということになれば、これは別途に考えなければならぬと思いますが、この法案のためにつぶれるのだとおっしゃられるなら、それは法案を実施しなければいいわけで、その炭鉱は買い上げなければいいわけですけれども、買い上げなければならぬような炭鉱は今でも地方税は払えないし、非常に困るではありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/157
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158・滝井義高
○滝井委員 それは政治家のとるべき態度ではないと私は思うのです。政治家は少くとも自分の政策を実行していくからには、その政策によって起る副作用というものを救っていくのが政治家なんです。そうでしょう。これを行わないでつぶれるなら別の政策を立てればいい。これを実行するならばますますつぶれる状態がはっきりしてくるから、ますますつぶれる状態がはっきりしてくるなら、その救う対策というものを立てていくのが私は政治であり、政治家の任務だと思う。だから大臣の言うのは逆説なんです。やらなくてもつぶれるならば当然民主党内閣というものはそれを救う政策を出さなければならぬでしょう。それを出すのが政治家だと思う。大臣はそのどっちか一つを選べということでなくして、私に言わせればどっちかやらなければならぬ。私はそうだと思う。だから大臣が逆襲してくるのはそれは筋が通らないのであって、少くともこの政策を民主党が掲げてきたからには、この政策から起る副作用についてはやはり政策をもって当ることが政治だと思う。若い私が尊敬すべき石橋大臣に教えるわけではありませんが、そうだと思う。そうでしょう。これは私は返すわけではありませんが、そうだと思う。だからやらなくてもつぶれるのではないかというなら、民主党は政策を出して助けてやらなければならね。やってつぶれるものをやられるからには、そのつぶれるものについてどうしていくんだという政策というものは当然考えられておらなければならぬ。それを考えていないところに私は不満がある。こういうことなんです。だからこれは考えられていないようでございますから、今後まだ時間がありますから、一つ地方自治体をどうするかということについても、ぜひ石橋大臣は責任をもってやっていただきたいということを要望いたして、私の質問をこれで打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/158
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159・中村三之丞
○中村委員長 ほかに御質問はございませんか。——それでは本連合審査会は終了いたしました。
これにて連合審査会は散会いたします。
午後四時五十分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204502X00119550719/159
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