1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和三十年七月二十八日(木曜日)
午前十一時八分開議
出席委員
委員長 松原喜之次君
理事 加藤 高藏君 理事 内藤 友明君
理事 森下 國雄君 理事 大平 正芳君
理事 奧村又十郎君 理事 横路 節雄君
理事 春日 一幸君
有馬 英治君 宇都宮徳馬君
菅 太郎君 杉浦 武雄君
竹内 俊吉君 中山 榮一君
福田 赳夫君 坊 秀男君
前田房之助君 山村新治郎君
山本 勝市君 淺香 忠雄君
川野 芳滿君 黒金 泰美君
小山 長規君 薄田 美朝君
古川 丈吉君 井手 以誠君
石村 英雄君 横山 利秋君
井上 良二君 川島 金次君
田万 廣文君 平岡忠次郎君
出席政府委員
法制局参事官
(第三部長) 西村健次郎君
検 事
(刑事局長) 井本 臺吉君
大蔵政務次官 藤枝 泉介君
大蔵事務官
(主計局長) 森永貞一郎君
大蔵事務官
(主計局法規課
長) 村上孝太郎君
委員外の出席者
会計検査院事務
官
(検査第三局
長) 小峰 保栄君
専 門 員 椎木 文也君
—————————————
七月二十八日
委員田子一民君及び石山權作君辞任につき、そ
の補欠として薄田美朝君及び井手以誠君が議長
の指名で委員に選任された。
—————————————
本日の会議に付した案件
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法
律案(内閣提出第一四七号)
昭和三十年産米穀についての所得税の臨時特例
に関する法律案(内閣提出第一四九号)
金融機関の資金運用の調整のための臨時措置に
関する法律案(内閣提出第一五〇号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/0
-
001・松原喜之次
○松原委員長 これより会議を開きます。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律案、昭和三十年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案、金融機関の資金運用の調整のための臨時措置に関する法律案の三法律案を一括議題として質疑を行います。黒金泰美君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/1
-
002・黒金泰美
○黒金委員 ただいま議題になっております補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律案につきまして、いささか政府の御見解を承わりたいと思います。
第一に、この問題につきましては、補助金の予算というものが、申請の点におきましても非常にルーズである。あるいはまた査定におきましても非常に困難である。またこの監査が不十分であり、従ってその全体として見まして、予算の執行の中で最も大きな盲点になっていることは、これはもう周知の通りであります。従いまして、この法案を政府がお出しになったお気持もよくわかりますし、またこの法案をお出しになって効果がないということは、私は言えないと思います。従って根本的には私は反対ではありませんけれども、この法律が出ましただけで、これで補助金の予算がほんとうに適正に執行できるという保障が果して得られるものか。また一方から申しますならば、非常にきびしい規定をこの中に盛っておられる、これが行き過ぎの点がありはしないか。もっとほかにも、これを罰するならば罰しなければならない点、あるいは政府自体において非常に自粛しなければいかぬ点が多いのではないか、かような見解からいささか質問をしてみたいと思うのであります。
根本の問題といたしまして、やはり現在の日本のあらゆる階層、国も貧乏でありますし、地方の団体も貧乏であります。あるいはまたいろんな各種の組合、農業団体、その他の補助を受けるもの自体が非常に今窮屈でありますために、心ならずもこのような事態が起っておるのではないか。ことに終戦後のいろいろな道義の頽廃、ことに卑近な言葉で言いますならば、人の力を借りて何とかうまくやっていこう、そういう者が非常にほめられるというような道義の頽廃、こういった点に私は根本の問題があるのじゃなかろうかと思う。そういう点に思いをいたさずして、ただ厳罰だけをもってこれに臨むということでは、ちょうどこのほど行われました売春禁止法と同じような問題になるのではないか。売春をする弱い者だけをいじめてみましても、これは決して跡を断たない。そのような趣旨からこの間あの案は流産になったように思うのであります。こういう点につきまして、政府御当局は、この法案はこういう厳罰をもってすれば必ず跡を断ち得る、改善できるという自信がおありになるのかどうか。この点を政務次官からはっきり御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/2
-
003・藤枝泉介
○藤枝政府委員 補助金の不正不当な使用が行われがちである、それについて今黒金委員のおっしゃったいろいろな原因のありますことは、私も同感でございます。われわれも、もちろんこの法律だけで補助金の使用が適正に行われると考えておるのではございません。予算の問題につきましても、たとえば補助単価を非常に切り過ぎておるというようなことも一つの原因になっているということでありまして、これは御案内の通り、本年度の予算におきましても補助単価の引き上げを相当に、ことに事務職員の補助につきましてはやっております。あるいは地方財政の窮乏のために、たとい補助をもらってもなかなか自己負担ができないというような点にもかんがみまして、補助率の引き上げ等についてもできるだけの処置をいたし、また年来やっておりますこれを執行する中央の職員の訓練、あるいは規律厳守、そうした問題も随時努力を重ねて参りまして、こういうものとすべてがマッチしなければ、この法律だけで所期の目的を尽し得るとは私も考えておりませんので、ただいま申しましたような全般の問題を十分考えつつ、しかもこの法律を出しましたのは、今までともすれば何か村のため、県のためであれば、補助金を多少ごまかしてもそれは許さるべき行為であるという、ような風潮の多い点にかんがみまして、税金その他の貴重な資金でまかなわれておりますこの補助金というものが、正しく使われなければならないという一つの社会道義と申しますか、そういう観念を植えつけていくために、ぜひともこの法律を御承認いただきたい。われわれは単にこの罰則をもっておどかすという意味でなくて、ただいま申しましたような貴重な資金である補助金を公正に使うことが正しいんだ、それがたとい一時村のため等になりましても、決してそれは許さるべきでないんだという思想を植えつけたいということを衷心より念願いたしておるのでありまして、この法律の中にも、受け取る方ばかりでなく、これを交付する側にも相当の義務を負わせまして、不当干渉の防止とか、補助金の交付の遅延をさせてはいかぬというようなことをいたしまして、両々相待ちまして初期の目的を達したい、こう考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/3
-
004・黒金泰美
○黒金委員 ただいまのお話しで、非常に抽象的ではありますが、各般に心を配られたという政府の御趣旨はわかったのであります。この補助金というものは、予算の中で、平たく申せば一番厄介な、一番いやな性質の費目だろうと思います。従って予算を組まれる当局におかれましても、いろいろと心を配っておられることと思いますが、できればこういう補助金というものをなくしていくということがよろしいことではないか。少くとも重点的、効率的にはかっていかなければならないものじゃないか。このことは歴代内閣において絶えず叫ばれながら、なかなか実現できない。これにつきましては、国民一般の問題、あるいは今の民主政治の一つの盲点でもあるかと思います。そういう方面の改善も必要でありましょうけれども、来年度の予算をおきめになる際に、この補助金に対して一体どういう根本的な対策を考えておられますか、一つその点をよろしく御説明願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/4
-
005・藤枝泉介
○藤枝政府委員 すでに御承知のように、本年度の予算が来年度平常化いたしますと、一面において六百数十億の減税が行われ、一方において事務的な支出の自然増等が行われまして、その間、正確な数字はまだ積み上げておりませんが、相当大きな開きが出てくるのではないか。従って来年度の予算編成というものは、相当な困難に逢着いたすと思います。特にただいま御指摘の補助金等につきましては、その間にありまして相当思い切った整理統合等を考えなければならない段階になっておると思います。ただいまも御指摘のように、歴代の内閣がこの補助金の整理について取り組んで参ったのでありますが、なかなか所期の目的を達しておらない。先日も当委員会でお話しがありましたように、一戸当りにしますと、極端なものは一円あるいは数十円というような補助金もまだ存しておるというような状態でございまして、これは政府としてもできるだけそうした少額の補助金を整理する、あるいはもうすでに普及されたものの補助金を整理する、さらには同種の補助金の統合をはかるというようなことに最善の努力をいたしたいと思います。ことにただいま申し上げましたような来年度の財政の状態から考えますと、補助金の重点化を思い切ってやらなければならない段階になっておると思いますので、政府といたしましても、この点については真剣に取り組まなければならないと考えておる次第でございまして、また国会側の御協力を得なければならないことであろうと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/5
-
006・黒金泰美
○黒金委員 ただいまのお話しで、御趣旨は非常にけっこうでありますが、いろいろと障害もありましょうけれども、来年度は一つ断固たる整理をなさって、こういう問題が起らなくて済むような基礎を作っていただきたい。これをまず念願いたします。
次に伺いたいのは、この補助金を受ける側の貧困の問題であります。たとえば地方団体におきましても今非常に苦しい財政状態にある。従って補助金を受けましても、これは今の補助金の御査定によれば非常にきびしい査定であります。万やむを得ない個所しか工事が認められないというのが実情であろうと思いますが、そのような工事に対してせっかくの政府の補助がきまりましても、地元の負担ができない。実際問題として、起債にでも財源を仰がなければとうてい負担できないというような実情にありまして、せっかく補助までしてもらわなければ困るような仕事さえも、補助金を返上しなければならぬというような実情さえ現われておるようなわけでございます。このような事態に対しまして、やはり地方団体の財政の窮乏を救うということもあわせて考えなければいけない問題だと思うのであります。この点につきましては、根本的には地方財政と国の財政のその区分を整理いたしますとか、あるいはまた交付税その他の交付金を増しますとか、いろいろな方法があると思うのでありますが、政府におかれましては、現在どのようなことを具体的に考えておられますか、その点を一つ承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/6
-
007・藤枝泉介
○藤枝政府委員 せっかくの補助金が、地方団体その他の地方のこれを受ける団体の財政的な窮乏によって、必ずしもそれが全部受け切れないという実情のあることは御指摘の通りであろうと思います。その意味において、先ほどもちょっと申しましたが、国の財政の許す限りにおいて、二面においては補助率の引き上げ等も行い、また地方団体における財源等につきましても、できるだけのことをいたさなければならぬと思っております。しかしいずれにいたしましても、先ほど申しましたように、来年度の国の財政そのものも相当な危機に瀕しておるときでありまして、中央・地方を通じまして事務の配分を考え、さらにそれに伴うところの財源措置というものをもう一度根本的に考え直さなければならぬ、また地方団体間におきましても、御承知のように貧富の懸隔が非常に出て参りました点につきましては、さらに地方の税制そのものについても考えなければならない時期に来ておると思います。前々から申し上げましたように、国においても来年度の税制をいかにするかということについて、税制調査会等を設けまして根本的な再検討を加えたいと存じておりますが、それらをにらみ合せて、地方の財政の問題も考えていかなければならぬと思います。しかし、とにかく国も地方も相当貧乏になっておるときでありますので、補助事業等につきましても、国と地方の財政力に応じて、それが受け切れる程度においてこの補助等も考えていかなければならないのではないかと思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/7
-
008・黒金泰美
○黒金委員 ただいま政務次官の御答弁がありましたが、地方財政と国の財政の根本的な調整、あるいは双方の事業の間の調整、そういった問題が一番の基本になると思うのであります。これを、今おっしゃるような方向で来年度の予算までに必ず実現するという自信がおありになりますか。来年度の予算までにこのようなことを何とか根本的に解決するだけの仕事をなさるお約束ができますかどうか、一言承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/8
-
009・藤枝泉介
○藤枝政府委員 繰り返して申し上げますように、来年度の国の財政はまことに危機に瀕しておるのでありまして、何とかこれをやるためには、先ほど申し上げましたようなことを根本的に考えていかなければならぬ、せっかく努力をいたしたいと考えておる次第でございまして、一つ国会側の御協力もぜひお願いいたしたいと存ずる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/9
-
010・黒金泰美
○黒金委員 ただいまの政務次官の御答弁で、何とか来年度からこういう点につきまして十分な改善を政府の方でお考えになっている、かように考えて非常に力強く思う次第であります。
次に承わりたいと思いますことは、実はこの法案は前々回の国会でありましたか、われわれ自由党の内閣当時すでに提出になった法案でございます。前回の法案と比べますると、刑罰の点においていささか軽くなっておりましたり、多少の訂正はございますけれども、ほとんど変りのない法案であります。今回の国会が開かれましたのは三月の中旬と記憶いたします。ところがこの法案が出て参りましたのはごく最近の話であります。なぜこのようにおくれたのか、承わるところによりますと、これは人づてであり、新聞の記事でありますからよくわかりませんけれども、政府の部内におきまして、この補助事業を主として管轄しておりまする役所の方で、このような非常にきびしい法案が出ては迷惑だというようなことでもって、いろいろごたごたしておったためにこの提出が非常におくれたように聞いております。ことに仄聞いたしますところでは、もうこの会期末に提出をするならば、おそらくは審議未了に終るだろう、審議未了に終るならばまあ出してもいいのじゃないかというような気持でお出しになったとさえ一部でいわれておるのであります。われわれこれを審議いたしますときに、政府において確固たる信念を持ってこの法案を通そうというお気持があるのかどうか、その点を参考までに承わっておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/10
-
011・藤枝泉介
○藤枝政府委員 この法律案を提出いたしますことが大へんおくれまして、皆様方の御審議の期間を非常に制限いたしますようになりましたことは、まことに申しわけありません。そのいきさつについては、ただいま御指摘がありましたが、むしろこの法律そのものの性質に対するいろいろな議論というよりも、何か政府側において行政的に善処することによって、これと同じような効果が出せないかというような点でいろいろな議論はいたしておりました。しかしどうしても政府側の行政的な措置だけでは十分でないという結論に達しまして、実はこれを提出いたした次第でございまして、われわれは前内閣から引き続いてこの点を提出申し上げたような次第であります。そういう長い検討の結果、これは必要であると政府として確定いたしまして御提出申し上げたのでありまして、ぜひともこの国会によって成立をさせていただくようにわれわれは念願をするものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/11
-
012・黒金泰美
○黒金委員 ただいまの御答弁の中で、ちょっと気になりますから、念のために承わっておきたいと思います。政府の行政的な措置でこれにかわるようなことをいたしたい、こういうことを言われる趣旨、目的は那辺にあるのでありましょうか、またその行政措置というのは、一体どういうことを考えておられるのでありましょうか、この点の経過を一つお聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/12
-
013・藤枝泉介
○藤枝政府委員 この法律の中にもありまするように、補助金の交付に際してのいろいろな政府の処置、条件をつけるとか、あるいは返還を命ずるとかいうような処置等につきましては、あるいはこの法律がなくてもできるのではないかというような点もございます。さらに冒頭に黒金委員が御指摘になりましたように、受ける方ばかりでなくて、出す方にもいろいろ欠陥があるのではないかという点も考えまして、その出す方の欠陥を是正することによって所期の目的が達せられるかどうかというような検討をいたしたのであります。出す方はもちろん、先ほどお答え申し上げましたように、十分いろいろな点で努力をいたしますが、やはり受ける方に対しましても、ある程度の規制をする必要があるという結論に達しまして、この法案を御提出申し上げたような次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/13
-
014・黒金泰美
○黒金委員 今のは、どうもそのために二カ月も延びたような理由にならないと思いますけれども、その点はそれといたしまして、この法案の第三条を読んでみますると、官庁に対する訓示規定、それから補助金を受けますものに対する道徳律のような規定をしておられますが、この法律の効果はどういう点にあるのでありましょうか、法律効果を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/14
-
015・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 この第三条におきましては、御案内のように、国民から徴収された税金その他補助金の財源となっております資金の非常に貴重なゆえんを説きまして、公正かつ効率的にせよ、こういうふうに各省各庁に訓示をいたしております。第二項におきまして、やはり同じような理由によって、誠実に補助事業または間接補助事業等を行うように努めなければならない。これは、第三条は単に一見訓示規定のごときものでございますが、この精神がこの法案の全文を通じて流れるべきものであろうと思うわけであります。従って、たとえば第六条の交付の決定処分をいたします際に、できるだけすみやかにその交付の決定をするとか、いろいろの規定がございますが、そういう場合に、この第三条の目的、補助金を効率的に使用できるような時期に間に合うように交付をやらねばならぬとか、またこの第三条の精神に反しまして、きわめてルーズな交付等をいたしますときには、予算執行の関係から法令に違反するというようなことにもなろうかと思うのであります。第三条、これだけでは何ら訓示的規定以外に出るわけではございませんが、全文を通ずる解釈原理としていろいろ生きてくるであろう、こういうふうに思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/15
-
016・黒金泰美
○黒金委員 終戦直後におきましては、このような訓示規定がアメリカの司令部から非常に好まれまして、各法律によく見受けたのです。最近このような法律的効果を伴わない条文というものは、あまり立法上ないように思いますが、それをあえてここにお入れになっておる趣旨は何か意味があるのでありましょうか。これに違反した場合にどうなるか、ことに第二項の違反につきましてどういう制裁規定がありましょうか、その点を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/16
-
017・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 この点については、参議院でもいろいろ御質問を受けたわけでございますが、第三条のこの条文に反しますということは、いわば十一条の条文に反することになろうかと思います。従って十一条の方の違反には罰則がついておりますから、第三条第二項の違反に対しては、論理的には直接的に罰則がついていないことになろうかと思います。ただ先ほど政務次官も申されましたように、現在の補助金の執行の適正化という問題で一番大きな問題は、私は補助金のごとく何らの反対給付のない、義務制のない補助金につきまして、もらい得だと申しますか、これをたくさん取ってくるのが村の英雄であるとか、そういうような。パブリック・ファンドと申しますか、公けの金に対する見方というものが、いわば戦前と相当変っておるのじゃなかろうか、こういう点から、この法案におきましては、その第一の目的がそうした公けの資金に対する道義水準の確立ということを考えておるわけでありまして、そのために、この法案の中には相当数の取締り法規がありますが、そのいわば解釈原理と申しますか、そういう根本を流れる精神をここに直截に表明しているという意味において、補助金の執行の適正化というような、今まではちょっと考えられないような法案でもございますし、こうした規定が意味がないようで非常にある、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/17
-
018・黒金泰美
○黒金委員 ただいまの点は、御趣旨だけはわかりました。そこで承わりたいのでありますが、言葉が悪いですが、どろぼうにも三分の理という言葉がありまして、立場々々でいろいろな考え方があります。この補助金を受ける方の側になりますると、別に自分たちで特に悪いことをしたい気持でやっているのではないのだ、やむを得ずしてやっておるのだという気持が多分にあると思います。と申しますことは、先ほど政務次官からの御答弁の中で、最近予算の単価をかなり引き上げたと言われましたけれども、工事費や何かにつきましては、なかなか具体的に申してそういかない。かりに表面の単価だけはそう参りましても、人を集めるためにはどうしても飯を食わさなければならぬ。いろいろな付随した仕事が出てくる。実際にお役所でそろばんをおはじきになるようにいかない。そういう点がみんな地元の負担にかぶってくる。なかなか容易でない。またあるいは予算の窮屈なためでありましょうけれども、正確に自分のほんとうに必要な量だけ持って参りますれば、やはり査定を受けてほしい数量が減ってしまう。それではかなわないから、多少は水増しをして持っていこう。そうしなければ実際の仕事ができないというような気分が非常に強いのであります。ことにいろいろな災害や何かの予算になりますと、中間的に査定の段階があり、それがまた各省に参りまして査定を受け、それをまた濾過したものが主計局に参りましょう。このおのおのの段階におきましての査定者について、いろいろと問題が起るわけでありましょうけれども、究極の予算の締めくくりをしておられる主計局におかれまして、このような点を一体どうお考えになっているのか、ほんとうに実情に合って、この仕事はしなければいけない、これだけはもっともだというときには、ほんとうにそれができるだけの、形式的なワクでなしにほんとうの予算をつけてやる、できるだけのことをしてやるということをしなければ、これは、補助をやってみても無意味になる場合が非常に多い。あるいはまた地元の負担が非常にふえて、かえって困る場合が多い。そこまでほんとうに親切にしておやりになるものがなく、こうやって一方だけ罰することは非常に片手落ちである、こういうふうに思うのでありますが、こういうことに対する予算御当局のお心がまえと申しましょうか、これを一つ承わりたい。
特に私が申し上げたいことは、災害復旧の予算のごときは、年度割をして金を出しております。ところが実際に橋が流れた、たんぼがこわれた、これを年度割で直すわけに参りません。従ってその分は立てかえておく。立てかえておきましても、後年度の金がなかなか入って参りません。そうなって参りますと、結局その間の金利は一体だれが負担をするのか。こういった金利の負担をさせておきながら、こういうようなきびしい法律をお作りになる、これは無理じゃないか。やはりそういうことはちゃんとできるような方策を講じておいて、その上でもってこういう悪いことをしなくても済むように、少くとも、たとえが悪いですが、どろぼうに三分の理を与えないだけの腹づもりがなければ無理じゃないか、私はかように思うのでありますが、この点につきましての御見解を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/18
-
019・森永貞一郎
○森永政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、先ほど政務次官からもお話しがございましたが、私どもも、今後の予算編成に当りましては、特に補助単価の査定に適正を一そう期して参りたい。こういう法律を出しましたからには、私どもといたしましても、その点につきましては十分に努力をするつもりでございます。現に人件費の補助につきましては、先ほどもお話しがございましたように、本年度予算では相当改善をいたしたつもりでございます。その他の事業費についても同じでございますが、ただここで一言申し上げておきたいことは、事業費につきまして、補助単価が非常に安いようなお感じをお持ちのようでありますけれども、私ども実はそう無理に査定をいたしておるつもりでもないわけでございまして、この点は、たとえば会計検査院の御指摘によりましても、自己負担を免れて、しかも所定の事業量を遂行しておるという例が非常に多いわけであります。これは、補助単価が非常に安いという場合にはとてもできないわけでございまして、これが必ずしも全部の例であるとは申しませんが、一がいに不当に安過ぎるともいえないかと思うのであります。学校等の場合がよく例にあげられまして、非常に安いという話がございます。私どもも、その点は随時実情に合せて検討をいたして参っておりますが、あるいは地方的にはそういうことになっておるところもあるかもしれませんが、あるいはまたある場所では、これで十分まかなわれておるというところもあるわけでございまして、一律に不当に安いというふうにも考えていないということだけは御了承いただきたいと存じます。今後の問題といたしましては、できるだけ実情に即して適正な単価を実現いたしたく、なお一そうの努力をするつもりであります。
なお災害復旧の問題につきましてお話しがございました。これは、補助単価の問題というよりは、むしろ復旧所要年限をどうするかという問題であるかと存じます。私どももこの災害復旧につきましては、財政の許す限りできるだけすみやかなる復旧を期したいのでございますが、二十八年・九年につきましては、五・三・二の三カ年復旧という原則が財政上の理由から守られなかった点につきましては、私どもも非常に遺憾に存じます。今後は、先般国会に提出いたしました国庫負担法の改正によりまして、特に緊要なる施設につきましては、できるだけ早く、三年で復旧するというような方針で臨むというようなことにも相なっておるわけでございまして、これもまた財政全般とのかね合いの問題、もちろん財源の許す限りということではございますが、できるだけ早く、緊要なものにつきましては復旧いたすように努力を重ねたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/19
-
020・黒金泰美
○黒金委員 ただいまのお話しで抽象的にはよくわかるのです。それで、何とか相手方に抗弁の余地を与えないような予算の執行を大蔵御当局においてまず率先示していただきたい。このことを念願いたしておきます。
次に承わりたいことは、この法案で補助金を受けます事業主体は非常にきつい罰則を受けております。この補助金を、たとえばここで不正な理由によって申請をした、あるいは不正な見積で持ってきた、ところがこれに対しましては、本来これが不正であるか公正であるかということを見分けるために長年訓練せられた方がこれを見ておるわけであります。そういう方がごらんになって、そうみすみすとこれを通せるものじゃないと思います。よほど知能的にうまくできておりますのか、本来ならば非常におかしいと思うのであります。そういうような方が、しかも数段階にわたってごらんになってこのような結果が出てくる。私は本来ならば非常におかしいと思うのです。そういうことが行われることは査定官の方に、これは非常に恐縮な言い分でありますけれども、何かこれは欠けるところがあるじゃないか、平素の訓練なり、あるいはまたその心がまえにおいて何か欠ける点があるのじゃないか、かように考えられますけれども、これは主計御当局において——これは主計局だけとは申しません。第一次の県の査定もありましょうし、あるいは各省の査定もありましょうが、これに対してどういうお考えを持っていらっしゃるか、主計局長から伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/20
-
021・森永貞一郎
○森永政府委員 間違った査定、あるいは粗漏な査定をいたしまして、不当に国庫に損失をかける。これは役人といたしましても、まことに申しわけないことでございまして、そういうことがないように、われわれの方でも一そう精励しなくちゃならぬわけでございます。ただ御承知のように、この補助金の対象になりまするものが、実に数多いわけでございまして、災害復旧を例にとりましても、十万円以上というような非常に低い金額のものが対象になりまする関係上、数万件というようなことにも相なっておるわけであります。そうしますと、勢いどうしても机上査定にゆだねざるを得ない点も少くないわけでございまして、書面審理、あるいはせいぜい写真等によってこれを査定するというようなことも、またやむを得ないというような結果にも相なってくるかと存ずるわけでございます。そういう場合には、自然やはり目こぼしも出てくることもやむを得ないかと存ずるわけでございまして、もちろん私どもとしては、本年度の予算でも、こういった監査の方面の陣容の充実をはかっております。今後においてもできるだけ重点的に、こういう方面の強化をはかって参りたいと思いまするが、しかし何しろ十数万件、あるいは全体の補助金ということになりますと、もっと多いかもしれませんが、そういうような対象を相手にするわけでありますので、極力精励しましても、なおかつ目こぼしができる。できるだけ目こぼしがないように努力するつもりでございまするが、何分にも対象が多い関係上、全く粗漏なきを期する意味の完璧は、なかなか期しがたいのでございまして、補助金を受ける対象について、何よりもまず自粛自戒を求めることが必要になってくる、かように考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/21
-
022・黒金泰美
○黒金委員 今承わったところじゃ、ちょっと的はずれじゃないかと思う。私は主計局の査定を今とやかく申しておるのではありません。その第一段階のところでは、まさか十数万件の損傷個所があるというものじゃないと思います。まず第一に出て参りますのは、県の土木課なり道路課なり、そういうところに出て参ると思います。そこでもって査定が十分にできておりますならば、かりに建設省がそれをうのみにし、あるいは主計局がうのみになさっても、これは適当なことができるのじゃないか。ところがそこでもって、私は非常に不信用なことを申して地方庁の方に申しわけないのでありますが、ついやはり自分の県に補助費をできるだけ持って参りたい、ほかの県にとられるくらいなら、自分の県を何とか直したい、これは人情であります。従ってそこでもって甘くなる。それがまた今度は農林省なら農林省に参りますれば、災害のときに、できるだけ多くの災害の補助金を大蔵省の方から自分の方に持ってきたい、建設省にとられるくらいなら、自分の省に持ってきたい、これも人情でございましょう。従ってそこをごらんになるのが主計局長の眼識だと思いまするけれども、しかしながら、私はその個々の点を申し上げているのではなくて、その第一段階なり第二段階なりの点について、やはり土木部なり農地部に長年なれた技師がおられて、どうしてこのようなずさんな、これだけの法律を出さなければならないような事態になるのか、その点についての主計局長の御見解を承わりたい、これでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/22
-
023・森永貞一郎
○森永政府委員 別に役人の仁義で同僚をかばったということでもないわけでありますが、一般的に申し上げますと、私が申し上げたようなことで、無理からぬ事情もあるかと存じます。しかし御指摘のように、農地部なり土木部なりでもう少し気をつけたらいいのではないかという面は、確かにあるわけでございます。たとえば二十八年度災害で考えてみますと、農林省の所管の災害で、二重査定になりましたものが五百八十カ所もある。これは同じ農林省の中ということではなくて、建設省との間の所管の食い違いということもございましょう。そうすると、なかなか農地部だけではわからぬ。建設費とも相談しなくちゃならぬというようなこともあるかと存じますが、そこらあたりにもう少し気をつけけてやれば、こういう点は防止できるという面は、確かにあろうかと存ずるのでありまして、それらの点につきましては、私どもとしても今後一そう努力をして参らなければならぬ、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/23
-
024・黒金泰美
○黒金委員 その点につきまして、何らか具体的な将来の訓練方法なり、対策がおありになるかどうか、重ねて承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/24
-
025・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 ただいまの二重査定というふうな問題は、これは明らかにあやまちでございます。これは二つの所管の間において十分なる連絡がありますれば、防止できるというふうな筋合いのものでございまして、われわれもかねてからこれらの是正対策を考えておったのでありますが、最近でございますけれども、こうした趣旨にのっとりまして、たとえば農地の灌漑水路、それから河川の水路というふう、に、非常にまぎらわしいものについては、どういうふうにしてこうした重複的な申請をなくするようにするかという、両省間のこまかい申し合せ事項が作ってございます。そして、たとえば単なる申請事項の区別だけではなくて、見地におきましても、ここは建設省がすでに補助対象としたという場合には、建設省の色のついたくいを打つとか、そういうふうなことをやりまして、こうした二重査定等のあやまちをなくするように鋭意努力することにいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/25
-
026・黒金泰美
○黒金委員 今の御努力を、どうかこの上ともに徹底させていただきたいと思うのでありますが、さて、これはわれわれとしては非常に申し上げにくいことでありますが、今のような過失のために、第一段階のお役人の方、あるいは農林省のお役人の方、あるいはそれを認めた大蔵省の主計御当局の方、これはこの法律によって一体どういう制裁と申しましょうか、責任を負うことになっておりましょうか、一つはっきり御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/26
-
027・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 この法律の第六条に、交付する側のいろいろなことが書いてございます。たとえば法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか、補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか、金額の算定に誤まりがないかどうか等を調査し交付する、こういうふうに書いてございますので、もし今申し上げましたような間違いがあったというときに、たとえば過失とか、あるいは故意とか、いろいろ条件は問題がありましょうが、それぞれの条件を満足しますれば、たとえば国家公務員法八十二条の懲戒処分の原因にもなりましょうし、それからその場合に、もし情を知ってやったというようなことになりますれば、背任とか、あるいはさらに横領とか、そうしたいろいろな刑事的な責任もかぶってくるかと存じます。それからさらに、この重大な過失とか故意がございますれば、予算執行職員の責任によって弁償責任も負わなければならぬ、こういうふうになろうかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/27
-
028・黒金泰美
○黒金委員 それは第一段階の県庁のお役人についても、またそれがまとまって参りました際に、たとえば農林省のお役人についても同様でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/28
-
029・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 これは国が交付するという意味において今申し上げたのでありまして、農林省とか、そういう国の予算の執行官庁の職員についての話でありまして、たとえば都道府県の職員についてそういうふうな事態が起ったとします場合に、先ほど申し上げましたような懲戒処分の問題は、国家公務員法が適用になっておりますから、これは適用になると思いますし、それから横領とか背任とかいうような問題は、これは交付する側と受ける方とではちょっと事情が違いますけれども、やはりそうした刑事的な責任がかぶさることは当然だろうと思います。ただ私の方で申し上げたいのは、なぜこの法案では受ける方——受ける方と申しますと、都道府県以下の職員はずっと入るわけでありまして、交付すると申しますと、国が交付する場合をいっているわけでございますが、交付する側にあまりはっきりした制裁規定を置かずして、受ける方にこうした厳重な刑罰規定があるかという問題でございますが、これはわれわれがこうした補助金の執行適正化という法律を作ります場合の考え方を御紹介いたしたいわけでございますが、国家資金というものが神聖であり、かつこれが効率的に使用されなければならないということは、ひとり補助金に限ったわけではございません。一兆円予算全部についてそうあるべきであります。ただそれがなぜこの補助金についてだけこうした特別立法を必要とするかという理由でございますが、これは補助金というものの非常な特殊性と申しますか、補助金につきましては、もらう方が何らの義務も感じなくていいのだということはないのであって、当然義務を感ずべきであり、義務を感ずることは当りまえでございますけれども、交付しますときに明瞭な反対給付を求めておらぬわけであります。そこでもらった方はもらい得だという感じに陥りやすい。そこに、一兆円の国家予算の中で三千億の補助金について、きわめて乱用に流れやすい理由があるわけでございます。これは、結局その補助金によって非常に利得する側が、そうした国の資金といいますか、公けの資金に対して何ら厳正な考え方を持たずしてたくさんとろうとするから、こうした放漫な現象が現われてくるのだ、こういうふうに考えますと、補助金が放漫に流れやすい根源をつくのが補助金の執行の適正化として一番端的なわけでございまして、そうした意味から、われわれは受ける方といいますか、補助金によって最も利得を受けるものに最も多く自粛を要求しているということでございます。ただ刑事罰がついておりますのは、これによって何ら罪人を作りたいというわけではないのでありまして、こうした法律によってはっきりと取締り法規を確定して、補助金と申しますか、公けの資金に対する道義的な責任が確立しますと、それによって申請も必要な、かつ十分な額に自粛されるであろう、これは申請する側の自粛ということなくしては、交付する側だけではどうして能力が足りないという趣旨から、われわれはこうしたねらいをつけたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/29
-
030・黒金泰美
○黒金委員 ただいまのお答えは、私が伺ったのとは少しはずれているのです。補助金を受ける府県の場合は、刑罰の適用があります。私の聞いているのはそうではなくて、いろいろなこまかいものになりますと、市町村や何かの補助金も一応県で見ている場合がございます。その県で見た人が、もし今のこの法律で言っております義務に違反するというような場合にどうなるか、この法律は国の役人にだけしか適用がないのか、それとも県の人にもあるのか、もし国の補助金について県の人にもあるとするならば、どういう方法で今おっしゃったと同じ責任を負うのか、それとも適用がないなら、一体そのブランクはどうなさるのか、これを伺いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/30
-
031・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 ただいまおっしゃいましたのは、市町村に対して都道府県の職員が補助金を分配するときに、そういうふうなあやまちがあった場合にどうするかという問題であろうかと存じます。その場合には、この法律の十一条に書いてありますように、補助金を受けたものが補助金を交付したときの目的通りに配付しなかったということで、第十一条の罰則にかかることになろうかと思います。これは第三十条において処断することになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/31
-
032・黒金泰美
○黒金委員 それは受けたものの配分の場合であって、その県に一括して受ける基礎を市町村から持ってきた、その査定が誤まっておった場合に、府県の役人は一体この法律でどういう責任を負いますか。これを承わっているのであって、何回も伺いますが、私の承わることに対する答弁が違うのであります。私の承わっていることをお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/32
-
033・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 この法律でねらっておりますのは、国の損害といいますか、国の財政的損害を防ぐということが目的になっております。従って、二十九条の未遂を削りましたのもその意味でございますが、府県の吏員が下から上ってきます申請書の査定において間違ったということだけでは、国は何らそのパブリック・ファンドと申しますか、公けの資金に損害を受けておりません。おそらくはその場合、都道府県の職員は国に対して誤まった基礎でもって要求をするだろうと思います。誤まった基礎でもって要求をしたときに、たとえばこの二十九条の違反ということになりますれば、その場合に国に対して損害を与えたということになりまして、二十九条違反ということになりましょうが、ただ途中の査定において誤まったというだけで、何ら国の資金に関係なく終った誤まった査定というものは、この法律の対象にはなっておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/33
-
034・黒金泰美
○黒金委員 ところがそれならいいのであります。先ほど主計局長からも御説明になったように、何十万、何万というような補助金が出て参ります。一々各省でほんとうに査定ができるならけっこうであります。しかしながら、出張旅費は削られている、実際に人手は足りない。そこでもって第一段階の査定を府県の方にまかしている分が相当あると思います。しかもその査定しましたものを大体のみ込んで、そのままで主計局に持ってくるものも多いと思います。そういう点につきまして、これはその国の官庁である主計局の職員だけを縛っている。しかしもうすでに第一段階の査定が終って基礎ができておりますと、ともすればそれに引きずられるのが人情であります。従って、私は先ほど来その方々は一体どうなんですか、主計局長に御意見を伺い、しかもそれに対する制裁がどうなっておりますかと、伺っておりますが、第一段階については、これではブランクになる、この法律の考え方は非常にずさんではないか、こう伺っておりますが、その点は一体どうお考えになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/34
-
035・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 これは同じ答えを繰り返すようでございますが、この法律でねらっておりますのは、国の財政的な損害を防ごうということでございますので、そうした中間におきますところの査定というものによって、農林省なり建設省なり、国の交付官庁といいますか、補助金の執行官庁が引きずられるというふうなことによって、この法律の所期の目的がなかなか達成せられないというふうなことも考えまして、たとえば第六条において、そうした非常に間違いの多いような補助金の場合には、みずから行って現地調査をせよとか、そういうふうな規定があるわけでございますが、要はこの補助金を許します補助事業者、あるいは間接補助事業者がそうしたあやまちといいますか、でたらめな申請をしないという、一種の自粛的な雰囲気というものが生まれてきませんことには、先ほど主計局長もおっしゃいましたように、この相当大きな件数について地元だけが査定をするということにおきましては、その内容の適正さというものは確保できないわけであります。われわれはこの法律によって、何度も繰り返すようでございますが、罪人を作るというよりも、要求するものの申請を自粛するように御協力を願いたいというのがその本来の趣旨でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/35
-
036・黒金泰美
○黒金委員 ただいまの御答弁では、私の疑問はちっとも氷解しないのです。そういうような査定がルーズに行われるところに、私は非常に大きな原因があると思う。しかも第一段階の査定がルーズに行われぬために、あなた方は出張旅費をどんなにつけておられますか、実際に行ってみられますか。みられないからそれにまかせる。まかしているためによけいな補助金を出して、それが国の損失になっているのであります。その第一段階を何ら防がずしてこの法案が完全に効果を生ずると思いませんけれども、何回も同じ御答弁しか得られませんから、私は判断の材料にこれをとどめまして、これで一応とめますけれども、しかし私が次に承わりたいのは、この第三条の規定にありますような訓令規定、これは今この法律ができて初めて訓令されるものではないと思います。今までにも、さっきお話しがありましたように、五百何十件というような二重査定が行われ、いろいろな問題がございます。これに対しまして、国の支出をしました側で、今法規課長から御答弁があったような、その制裁を受けた例がございましょうか、ございませんか、この点を一つ承わりたいと思います。なぜかならば、私は人をとがめる先にみずから自粛するのが当りまえだと思うのであります。本来懲戒権を持っており、しかもそういうでたらめなルーズな査定をやって国家に損失を与えたというなら、まず自分の方のその職員を懲戒して、一罰百戒を与えてぴりっとさせる、その上にこの法案をお出しになるならまだ筋はわかるのであります。おそらくないでしょうと思いますが、承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/36
-
037・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 これは私全部の省のそうした問題についてよく存じませんが、ただいま会計検査院の小峰三局長から伺いましたところ、ないようでございます。私が申し上げますのは、この法案が出ます途中におきまして、世上いろいろ取りざたされましたけれども、やはりこうした法律が非常に必要だというゆえんも、私はそこにあるのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/37
-
038・黒金泰美
○黒金委員 私は何回伺っても、その相手方さえ罰すればよいのだというようなお考えには不満であります。従って、今度は政務次官に確固たる御信念を伺いたいと思いますが、これだけの五年の懲役まで課そうというのであります。これだけのことをなさる以上は、その査定をうかうかとのんだ関係職員に対しましては、厳重なる懲戒、制裁をお加えになるおつもりがありますかどうか、この御決意を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/38
-
039・藤枝泉介
○藤枝政府委員 ただいま法規課長からお答えいたしましたように、毎年度会計検査院から相当こちらの交付する側の非違、不当等も摘発されております。それにもかかわりませず、大てい戒告とか、せいぜいその場所から転勤させるとかいうような程度であったように私も伺っております。これは事態もいろいろございましょう。先ほど黒金委員から御指摘のように、県の第一段階の査定をそのままうのみにするというようなことで、ある程度恕すべき点もあったというような点もございましょう。しかしこの法律がこうして補助を受ける側についても相当厳格な刑罰をもって臨むという以上は、やはり先ほど法規課長からも申し上げましたように、この第三条の規定を生かしまして、これに違反するようなものについては、十分な処分をいたさなければならないというふうに考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/39
-
040・黒金泰美
○黒金委員 私も、実は予算の査定をやったことのある人間でございます。なかなか眼光紙背に徹しない。これはもう人間のしからしむるところでありますけれども、しかしながら、私はもし自分が査定した事業の相手方が、自分でも正当と思って判をついた書類のためにこのような結果が生まれましたならば、職にいたたまれないと思うのであります。どうかこういう点は十分にお考えになって、そして今後の予算の執行についてお考えを願いたいと思います。ことに私がはなはだ遺憾と思いますのは、どういたしましても第一次の査定に引きずられがちであります。この法案では、先ほど村上さんからもお話がありましたように、第一次に携わる地方庁の人がこれは抜けております。これは何とか一つあらためてお考え願えないか、かような感じがいたすのです。
次に承わりたいと思うのでありますが、もしも国の出先官庁が、この補助を受ける団体と同じような、不公正と申しては悪いのですが、あるいは公正を欠くような手段によって、たとえば建物を建てるというような経費を多く持っていった。それがかりに私用に使われれば、これはもう問題はございません。そうでなくて、ほかの用途に使われた、こういう場合に対しては、現行の法律でどういう責任を負うのでございましょうか、一つ承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/40
-
041・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 別の用途という意味がなかなかむずかしいのでございますが、普通の補助金でございますと、これは県の予算に入って何らわからないといいますか、もらった補助金という糸のつかない一般財源の中で処理されますから、ほかへの使用ということが非常に行われるわけでございますけれども、官庁の予算は、たとえば施設費なら施設費でもらったものは、ほかの用途といいましても、施設費の中でしか使えないわけでございます。そういたしますと、結局施設費という議定科目の中で、最初作りました予算の積算というものにどの程度縛られるかという問題になるのだろうと思います。現在のところ、たとえば流用とか、その他の議定科目内における融通手段は合法的に認められておりますので、そういうことで転用しますことは、これはちっとも差しつかえない、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/41
-
042・黒金泰美
○黒金委員 私の質問の仕方が悪かったかと思います。ただ実際問題として、これははなはだ残念なことでありますけれども、たとえば出張旅費にいたしましても、十だけ必要なものを十二取って参りまして、できるだけ自分のところの仕事をいたしたい、これも人情でございます。こういったようなことが行われました場合に、何らかの制裁規定がございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/42
-
043・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 たとえば十で済む旅費を十二取ったという場合に、それが取り過ぎではないかというお話しではないかと思うのでありますが、旅費とその上るところの行政効果との関連性というものは、非常にむずかしいわけでございます。その要求する本人がどういう見当で十で済むものを十二取ったのだという算定をする、あるいはそれが間違っておったという判定をする、これはなかなかむずかしいことと存じます。たとえば一つの行政指導のために、十あれば大体足りると思うものを十二取ったといたしますときには、それがいわゆる行政指導のために使われておって、そうして行政指導の実が上っておれば、私は目的外の使用とは言えないんじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/43
-
044・黒金泰美
○黒金委員 そうなりますと、これは非常に根本の問題に関係してくるのでありますが、ある市町村の理事者が、十で足りるものを十二補助金をちょうだいした。その効果が上ったらいいのでございますか。今のお話しでは、国のお役人なら、同じ目的に必要以上の国費を使って、その行政効果が上ればいいのだとおっしゃいましたね。そうすると、今度は補助金を受ける対象の人間は、国のものでないからいけないのですか。やはりその町村の行政の実績が上がれば、多少割増ししてもらっていってもいいんじゃないですか。その効果の判断はこの法律ではしていらっしゃらない。とにかくその必要最小限度のところを押えて、それ以上こえたらこれは罰則になる、こういう法律なんですが、その点は一体どうなんでしょうか。ちょっと矛盾するんですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/44
-
045・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 私の説明が少し悪かったと思うのでありますが、私の申し上げたのは、目的外に使用するかどうかということを言ったのであります。たとえば災害復旧のために取った金を改良工事に使った、これははっきりいけないというわけであります。私が申し上げた、さっきの旅費の問題でありますが、たとえばその管内の中小企業を指導するというのに、十万円の旅費を十二万円取った。中小企業を指導するために十万円の旅費が全く正しいのだというのは、私はちょっと神様以外にはわからぬのじゃないかと思うのでありますが、十二万円取って、中小企業の指導をした場合には、これは目的外の使用とは言えないだろう。しかし災害復旧のために補助をくれといって取った金を、改良工事にまで及ぼすような請求の仕方をすると、それは目的外の使用になる、こういうことを申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/45
-
046・黒金泰美
○黒金委員 私はそういった例がやはり補助金にもあると思うのです。たとえば何か防虫のために薬剤をもらってくる。どれだけかければいいという一応のはじきがある。しかしそれ以上かければいいにきまっている。それをある程度ごまかして多く持ってきた。それがこの法案の趣旨では犯罪になるのです。国家の公務員については、むしろあなたのお話しではほめられる。どうも思想の統一がこの法案にないように思う。国の役人だけ助かって、補助金をもらいに行く人だけとがめられる。私はこの点についても非常に不可解に思うのでありますけれども、その問題も水かけ論になりましょうから、やめにしておきましても、私はこの法案自体が、たとえば市町村の理事者に対して非常な厳罰をもって臨んでいる。この点のお気持もわかりますけれども、今の世間の状態からして、かりに刑事訴訟をいたしてみましても、これは相当長引きましょう。長引いている間は、やめなくても済むでありましょう。そうして時間がたつ。そのうちには、ああいう刑罰まで受けても村のためにやってくれた、町のためにやってくれたといって、まかり間違えば、今の時代世相からいうと、これは佐倉宗五郎になりかねないと思う。そういうふうな点をお考えになったことがあるのかどうか。もしもその人が信用できないというならば、たとえばこういうことでもって問題が起った以上は、五年間理事者の地位につけないとか、そういったことをする方がむしろよほど痛い。これをやられてみましても、私はむしろその村では、かえって今の風潮からいえば、ほめものではないにしても、英雄になるおそれがあるのではないかしら、こんなふうにまで考えるのです。ことに今申し上げた通りに、これに対しまして、国の査定官の方の制裁はきわめて軽い。今政務次官は、これから大いに注意して制裁を実行いたしますと言われましたが、おそらく私の考えでは、譴責か、よほどよくって左遷という程度でありましょう。一方が監獄に入らなければいけないというときに、せいぜい転任くらいで澄まし顔ができる、これでは権衡を失しているのではないか。また先ほど申し上げた通りに、国の役人が予定以上に金を使っても、業績が上ればそれでいいのだ、こういう考えのときに、この法律はどうも刑罰が行き過ぎである、この法案自体の趣旨は、私は決して反対するものでありませんし、ごもっともと思いますが、片手落ちじゃないか、同時に片手落ちであるのみならず、私はこれで起訴されましても、あまり痛痒も感じない、任期だけ勧められるというようなことでは実効は上らない。何らか私は行政的な責任をとらせればいいのではないか、このように考えますが、政務次官のこういうことに対する御見解を一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/46
-
047・藤枝泉介
○藤枝政府委員 冒頭にもお答え申し上げましたように、この法律は、いわば貴重な補助金、国家資金でまかなわれる補助金を、たといそれがいわば村のため等になっても、不当にとるべきでないということで、今さら自然犯と法定犯の刑法論を展開しようとは思いませんけれども、人殺しやどろぼうと違って、補助金については、黒金委員も最初に申されたように、何かこういうものが許されるべき行為であるということに対して、やはりこれが社会悪であると申しますか、反社会的なものであるということを規定いたしたいということが、この法律の目的でありますことは先ほども申し上げた通りであります。ただいまの、その結果刑罰で臨んでもなかなか実効が上らぬのじゃないか、偽われる英雄を作るのではないかという御心配があるいはあるかもしれません。しかしただいま申しましたような趣旨を徹底することによって、これは防止しなければならないと考えております。
それと、ただいまも御指摘がありましたように、何か効果を上げるためには、一種のパージ的の規定を設けた方がいいのではないかということでございますが、これも地方自治法その他の関係からいいまして、なかなかむずかしいことじゃないか。もし追放的な規定を設けましても、やはりこれが確定するまでには相当時間もかかることでございまして、違反があったからといって直ちに追放的な規定を適用するというわけにはいきませんで、最終的にはやはり最高裁判所までいくというような問題もあろうと思います。ねらっておられる御趣旨の点はなかなかいい考え方であろうと考えるのでございますが、地方自治法、選挙法等の関係もありまして、なかなかパージ的な規定を設けるのはむずかしいのではないかというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/47
-
048・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 ちょっと補足説明をしておきますが、今の公民権停止の制裁規定を置いたらどうか、われわれは法制当局ともいろいろ相談してみたのでありますが、補助行政と公民権とは直接関係がないように、いわばそうした国民の基本権のようなものを制裁規定の中に入れるのはおもしろくないではないかというような法制当局の見解でもございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/48
-
049・黒金泰美
○黒金委員 次に承わりたいのは、今までは予算をもらいにいく、あるいは施行の状況、こういう点を伺いましたが、実際問題として中間の監査の機構が非常に不十分である、あとから不当な点が見つかって罰してみましても、あるいは金を取り上げてみましても、それは本来の目的を達することでなく、そういう罪人が出ないように、初めの査定で気をつけるのは当りまえでありますが、もしあやまちがあっても、途中の監査によりまして是正をしてあげる、間違っている点は注意する、そうして一人も罪人を出さないようにするのが予算執行者の義務ではないかと思います。実際の現状を見ますると、財務局あるいは各庁においてそういう仕事をすることになっておりますけれども、人手の関係もありましょう、経費の関係もありましょう、実際なかなかできていない、その結果がこの法案が出るような原因になっております。この点の対策を一体どう考えるのか、この点を一つ主計局長から伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/49
-
050・森永貞一郎
○森永政府委員 御趣旨ごもっともでございまして、二十八年度の災害につきましては、特にああいう大災害でもございましたし、また申請査定が早々の間に行われたというようなことから、お話しのような事例が非常に多いのではないかという点を心配いたしまして、私ども建設省、農林省、運輸省その他関係各省と協力いたしまして、第一次査定が済みましたものにつきましても、さらに重ねて再査定をするというようなことをいたしたわけでございます。その成果は、私ども非常に上ったと思います。たとえば農林省所管の事業につきましては、当初の査定より平均して五割も減っている。運輸省についても同じような実情があった。建設省の河川は、比較的もとの査定ががっちりしておったかとも思いますが、しかし大体各省とも、第二次の再査定を実行することによりまして相当成果が上ったわけでございます。その経験に顧みまして、その後におきましては、私どもの方の所管である財務局も必ず災害の査定に立ち会うというようなことにいたしまして、乏しい財源の中からできるだけそういった方面には——これは大蔵省だけではございません、各省とも旅費その他の予算を重点的につけるという努力をいたして参っておるつもりでございます。さらに、会計検査院から局長もお見えになっておられますが、会計検査院におかれましても、でき上った後の検査だけでなくて、あるいは事前検査というようなことで、こっちが要求するそういう点にも非常に御努力を願っておるように伺っておるわけであります。その成果も大いに上っておると思います。本年の予算におきましては、御承知のように、すでに会計検査院の局増設につきまして御承認を願っておりますが、今後も、必要に応じまして会計検査院等にお願いすることにいたしまして、私どもも十分やって参るつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/50
-
051・黒金泰美
○黒金委員 ただいま主計局長のお話しがありましたが、成果がしらないためにこの法案が出てくるということですが、この上ともに十分に徹底してやっていただきたいと思います。何とか罪人を作らないようにお願いいたします。
最後に承わりたいのでありますが、もうことしの予算に組まれました補助金で査定が終り、交付されておるものがありましょうか、あるいはありますまいか、伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/51
-
052・森永貞一郎
○森永政府委員 暫定予算におきましても、六月分以降は補助金を組んでおりますし、また本予算も七月一日に成立いたしまして、配付もいたしておりますので、部分的にはすでに交付を終っておるところがあるかと思います。しかし全体の計画、なかんずく新規に属するようなものにつきましては、まだおそらくは各省の原案の策定が進んでいないのではないかと思います。従いまして、大部分の補助金につきましては、まだ未交付のものが多いのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/52
-
053・黒金泰美
○黒金委員 そこで承わりたいのでありますが、この附則の第一項であります。「ただし、昭和二十九年度分以前の予算により支出された補助金」となっておりまして、もしも昨年あるいは一昨年に不公正な理由によって決定しました補助金の年度割の額が、ことしの六月あるいは七月に出ておった、この場合には、この制裁規定が適用になるように思いますが、私は大体こういう罰則というものは、法律が出た後の行為についてだけ適用されてしかるべきじゃないか、それが将来を戒める道だろうと思うのであります。この条文で見ますると「予算により支出された補助金」こう書いてありますために、ことしの予算の支出によりますものが、過去に不公正の原因があったという場合には、この罰則の適用を受けるように思いますが、この点の御解釈はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/53
-
054・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 こういうふうな法律の適用がございますのは、施行されてから後に、実際に交付処分のあったものに限られておることは当然であります。ただいまお尋ねの年割額という意味でございますが、一つの継続事業として、申請についてはすでに済んでおって、一応の決定処分がありますといたしましても、毎年その年割額を出しますときには、またことしの事業分量というものに対して、実際に具体的な交付をいたすわけでございますから、その際のタイミングがこの法律施行後になっておりますれば、それは当然適用になってしかるべきかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/54
-
055・黒金泰美
○黒金委員 よろしゅうございます。今の場合には助かります。そうではなしに、かりに六月、七月に交付されました分は、このただし書きで除かれませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/55
-
056・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 この法律の附則には、いわゆる「二十九年度分以前」というようになっておるわけでございますが、さらにこういう法律というものは、非常に実体的な公平性を考えなければならぬというところから、この法律の第二十七条に「他の法律又はこれに基く命令若しくはこれを実施するための命令に基き交付する補助金等に関しては、政令で定めるところにより、この法律の一部を適用しないことができる。」というふうに書いてありますので今おっしゃいました六月、七月の交付の決定のありましたものについて、除きます必要のある部分については除けるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/56
-
057・黒金泰美
○黒金委員 そうすると、除きますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/57
-
058・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 今おっしゃいましたのは、六月、七月に交付の決定があって、すでに交付してしまった、こういうわけでございますね。それは、具体的な事案の点から見て、その方が妥当ならばそうした方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/58
-
059・黒金泰美
○黒金委員 私はるる質問をいたしたのでありますが、この法案の中には、二月も三月もお延ばしになったにしては、ずいぶんずさんな点があるのではないか。同時にこれだけお出しになって、これで補助金等にかかる予算の執行の適正化ができたなどというのは、とんでもない話である。先ほど政務次官からお話しがありましたし、主計局長からもお話がありましたが、いろいろな点で対策を講じなければとうていこれはうまくいかない、かように考えておるのであります。これ自体に反対はいたしませんけれども、しかしよほどお考えにならないと片手落ちになる。そして正直に申して、主計局の方々がじくじとしてその地位におられないような結果になるのではないかと私は案ずるのであります。どうかこの執行については、十分に万般の御用意をなさった上でこれを実行なさるように切望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/59
-
060・松原喜之次
○松原委員長 奧村委員より関連質疑の要求がありますので、これを許します。奧村又十郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/60
-
061・奧村又十郎
○奧村委員 私は関連して一点だけお尋ねしたいと思います。
ただいま黒金委員からのお尋ねにもありましたように、補助金の適正使用について一番深い関係のあるのは、第一次査定を適正にするということである。そこで査定をやるのは大体県庁の役人なり、また中央官庁の役人の方が査定をやられる。特に昭和二十八年度の災害などの査定においては、二重になったり、あるいは水増し査定が行われた。そういう場合の誤まりといいますか、あるいは故意にそういうまずい査定をやる場合もあるが、全国的にずいぶんそういう誤まった査定が多かったが、役人の方々の査定官の側の責任を今までほとんど追及しておらない、処分したことがない、こういうことでありますが、私はこれははなはだおかしいと思うのです。検査院のお役目として、不正があり、あるいは間違いがあれば、告発しなければならぬことになっておるはずですが、そういうことをなさらなかった、どういうわけでなさらなかったか、そういうことは一つもそういう事件がなかったからか、その点をお尋ねします。特に昭和二十八年には、農業災害などは非常にでたらめな査定があったということは、数字によってはっきりしている。先般参議院決算委員会でも問題になったが、和歌山県の御坊市のごときは、会計検査院で五千五百万円でできるという工事を、一億五千八百万円の査定をしている。そういう場合に、査定に携わった方々の中でだれか間違いを起しておりはせぬか、それをお調べになって、その根源をつくのが会計検査院のお役目であろうと思うが、そういう事件があっても、それに携わった方々の責任をとことんまで追及しておられぬのは、これは会計検査院の任務が果されておらぬ。私は実は、和歌山県御坊市の事件のごときは、会計検査院がいかに活動なさったかということをお聞きしたかったのだが、きょうはここでお聞きしたい。あの事件について、一つも役人の方々の責任を追及されておらぬということでありますが、今度この法律を作って補助金の適正使用を計画されるが、この法律で果してその査定の方々のあやまちをただすことができるかどうか、その点、会計検査院はどう考えられるかをお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/61
-
062・小峰保栄
○小峰会計検査院説明員 お答えいたします。二十八年度災害は、御承知のように非常に大きな災害があったわけであります。査定も短期間にやる関係で、一時に非常に大きくたくさんの件数を担当官が扱ったわけであります。私どもが見ましたのも、必ずしも全部ではないのでありまして、私どもが刑法上の処分ということを検察庁に通告するということになりますと、いわゆる犯意のある犯罪という疑問のあるものに限るわけであります。ところがこれは、別に悪いことをしよう、犯罪をしようという意図のもとに間違った査定をしたわけではないのでありまして、少くとも私どもとしては、そういう立証は不可能であります。結果において、私どもが検査いたしますと、そこに不正査定がありましたり、あるいは水増しが出て参りましたが、これは犯罪になるという立証は、会計検査院としてはとうていできないのであります。ですから私どもとしては、犯罪としての処理は、もちろんこれはできなかったわけであります。
それから行政処分の点でありますが、これも、あのいわばどさくさと申しますか、非常な未曾有の災害の査定に当りまして、これは故意があるとか、あるいは過失があるとかいうことは、あとになりましてそう一々断定するだけの資料というものは、私どもとしてなかなか集まらないのであります。たとえば御坊の例をお引きになりましたが、御坊などは顕著な事実でありますが、あれとても、査定官において犯罪の意思は毛頭ございません。ないとはいえないかもしれませんが、あるということを認定するだけの資料は私どもとしては集めてありません。また、重大な過失あるいは故意があったというようなことも、これまた私どもとしては、それだけの資料をつかむことはできなかったわけであります。
それからこの法律が出たあとのことでありますが、これはだいぶ中にもいろいろ御意見があるように、それが受給者に限らず、奔走する側、補助金を交付する側に対する道徳律というようなものがありますし、これが出ますれば、従来のように、何らそういう明文のなかったような時代とは取扱いがおのずから変ってくるのではなかろうかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/62
-
063・松原喜之次
○松原委員長 午前中の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。
午後零時三十分休憩
————◇—————
午後二時三十分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/63
-
064・松原喜之次
○松原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律案、昭和三十年産米穀についての所得税の臨時特例に関する法律案、金融機関の資金運用の調整のための臨時措置に関する法律案の三法律案を一括議題として質疑を続行いたします。石村君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/64
-
065・石村英雄
○石村委員 まず補助金等に関係する法律案についてお尋ねいたしますが、こういう特別な立法をせられる御趣旨は、倫理的な効果があるというお話しを承わったのですが、現在の法規によっても、こうした罰則にあるような処罰はできるのではないでしょうか。特にこういう特別立法を設けなければならぬのはどういう理由があるか、お話し願いたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/65
-
066・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 ただいまの御質問でございますが、現在の刑事法規その他におきましても、たとえばはっきりと交付官庁を欺罔いたしまして、そうして補助金をたくさん取るというような場合には、詐欺なら詐欺罪というものの適用があるわけであります。ただここに会計検査院もおられますので、詳しい御説明があるかと思うのでありますが、従来までも不当にこの補助金の交付を受けました事案というのは、果してこの交付官庁側が欺罔されたかどうかというようなことが非常に疑わしい事件があるわけでございます。そういうことになりますと、普通の刑法の、たとえば詐欺罪でやろうという場合にも、交付官庁側が完全な詐罔に陥って交付したかどうかということが、これが非常に大きな犯罪成立の要件になるわけでございまして、こうしたことから、二十九条というような今度は偽わりだけでなくて、その他の不正な手段によっても補助金等の交付を受けた場合は、これは反社会的な行為であるということをはっきり書きますことは、現在のごとき補助金が放漫に流れております大部分の事案に対して、明白な反社会性の烙印を押し得ることになるのではなかろうか。それから第三十条の目的外の用途への使用でございます。これも、場合によっては背任あるいは横領というようなことも起るかと思いますけれども、そういうはっきりした成立要件でなくて、いわゆる国が補助目的というものから、こうした事業に対してのみ補助するんだという本来の趣旨から申しますと、そうした厳重な条件でもって使用すべきものを使用しなかったというような場合に、それが直ちに刑法の背任、横領などになるかということも非常に疑わしいわけでありますが、この第三十条に、こうした公けの資金というものをもらったときの条件以外のことに使えば、それも反社会的な行為であるのだということをここに烙印づけますということは、今後の補助金の適正化ということに、従来の実例から徴しても非常に貢献するところがあるのではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/66
-
067・石村英雄
○石村委員 そうしますと、これは刑法の詐欺とか横領とか、背任とかという程度のことにならないものをこれで罰しようという趣旨ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/67
-
068・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 ならない程度とか、なる程度ということではございませんで、犯罪のそれぞれの成立要件というものには、いろいろな事案について特殊性があるわけでございますけれども、補助金なら補助金の行政につきまして、非常に典型的なものにつきましては、こうした特別法によって、普通の詐欺よりは異なった要件でも、その被害法益を守るために、特別的な刑罰を科そう、こういうわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/68
-
069・石村英雄
○石村委員 そうしたねらいがあるので、結局反対も強いということになると思うのですが、それはさておきまして、現在の補助事業というものを性質的に分けてみると、単純的な、省令的なものと、国としてどうしてもやらせなければならぬ事業、こういう二つの性質に分けられるのではないか、こう考えますが、大蔵省としても、やはりそういう性質の区分をお考えになっていらっしゃいますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/69
-
070・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 この法律は、適用になる対象として、補助金等と書いてございます。その中身としては、補助金、負担金、利子補給金その他云々と書いてあります。その中に入っております、たとえば負担金のごときは、その根拠法において負担するというふうな、国が義務づけられておるような書き方をしてあるのもございます。従って、そういう意味から単に省令的なものから、国がどうしてもその一部の財源を負担すべきであるという、その両者の間にまたいろいろな程度がありましょうけれども、いろいろな種類があるということは認めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/70
-
071・石村英雄
○石村委員 単なる省令的なものは、これは問題でございませんが、国としてどうしてもしなければならぬ、させなければならぬという事業について、補助金を出すという場合には、それがほんとうに実行できるような措置を国としてやはり講じなければならぬ。補助金を出すだけでなしに、一部地元負担とかいろいろなことがありますが、それが従来の災害なんかを見ますと、いなかの小さな村なんかで、もうその村として地元負担の能力がない程度のものも、法規によって負担させられる。ところが、実際はそれは芳ばしくないというところから、不正も行われやすい傾向があると思いますが、こうした場合に、政府としてどういう処置を考えられるか、出ても出なくてもいいという省令的なものならばかまわないと思いますが、どうしてもやらなければならぬ、やらせなければならぬという事業について、単に補助金だけ出しておいたからそれでいいんだというわけにはいかないと思うのですが、従来の政府の措置なんか非常に不十分であった、こう考えます。大蔵省としてその点いかにお考えになっていらっしゃいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/71
-
072・藤枝泉介
○藤枝政府委員 ただいま御指摘のように、たとえば災害復旧等を考えてみますと、これは単に省令で出すという意味でなくて、やはり国土保全の上から、国の事業としてやっていかなければならない問題であろうと思います。従いまして、こうしたものについては、もちろん地元の負担というものもありますが、その負担については、あるいは起債の問題でこれをめんどうみる、あるいは地方財政全般として、こうした補助金に対応する財源を確保するというような点を考慮して参ったのでありますが、非常に災害の規模が大きいというようなことになると、国の財政、地方の財政ともに相当窮屈なときでありまして、ただいま御指摘のように、国の補助金は出るが、地元はなかなか持ち切れないというような場面も出て参るかと思います。これが手当につきましては、ただいま申しましたように、起債等を考えるとともに、各種のこうした災害に対する補助の法令によりまして、負担の非常にかかるようなところにつきましては、たとえば補助率を引き上げるとか、そういうことをいたしまして、必要なる事業が単に政府が補助金を出しっぱなしで、あとはどうでもいいという考えでなく処置をして参ったつもりでございます。もちろん国の財政全体の窮屈なところから、その点が十分でないという御批判もあろうかと思いますが、考え方として、ただいま申しましたようなことによりまして、補助金を出した目的が達成できまするように努めて参りたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/72
-
073・石村英雄
○石村委員 そうした問題について、従来補助金をお出しになる場合、そうしてその事業がどうしてもやらせなければならぬ事業というときに、同時に地元が財政的にどういう状況にあるか、これを補助金を出して事実目的通りにその事業が達成できるかどうかというような面までお調べになって出していらっしゃるのですか。また今までのことは別として、今後はそうした方針をとるということでございましょうか、お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/73
-
074・藤枝泉介
○藤枝政府委員 これはもちろん具体的に一つ一つ、たとえば災害が起った場合に、その地方がどういう状態になっておるかというような点については、もちろん考慮のうちには入れまするけれども、十分でない点もあろうかと思います。ただ地方の財政全般として考えまして、国が補助金を出すその事業に見合いますところの地方の財源につきましては、あるいは交付税その他の財源、あるいは起債等につきまして、それと見合った財政計画を立てておるわけでございます。さらに先ほども申しましたように、具体的の場合に、その特殊な、非常に負担のかかる、しかもその地方団体としては、それだけの財政的な負担ができないというような面につきましては、あるいは特別交付税の制度その他を活用いたしまして、その財源の確保に努めておるということが現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/74
-
075・石村英雄
○石村委員 私の聞きたいのは、今後そういう場合に、十分調べておやりになるお考えがあるかないかということであります。たとえば昨年の国会で問題になりました、山口県の佐波郡というところの出雲村とかいう村なんか、あの寒村で全村ほとんど被害を受けておるわけであります。耕地の流失なんかもちろんのことですが、耕地が流失しなくても、小さな町の家財道具もみな流される、家もこわされる、そういう状況で地方負担はできっこないわけなんです。それで地方負担をさせられておる。そうして、またさらにこうした耕地関係の問題で言えば、現在ある土地改良協会とかなんとかいうものが事業分量による分担金を取っております。それが現段階では三分、末端まで行けば七分というような分担金を取っておって、本来の自己負担分でさえ出せないのに、その分担金も出さなければならぬということになると、地方団体はやりようがないわけです。ところが災害による復旧事業はしなければならぬということになると、勢いいろいろな問題が起らざるを得ないと思うのです。この点に対して大蔵省が、今後そうした場合に、単に補助金を言ってきたから値切って出しておくというような態度では、こんな法律をいくらお作りになっても、効果が上るとすれば災害復旧が全然できないということになる。もし災害復旧ができれば依然としてごまかしが行われるということになる。このどちらかになってしまうと思うのですが、その点について十分お考えを願いたいと思いますし、その決意を披瀝していただきたいということと、こうした土地改良協会のようなものが三分とか七分とかいう大きな負担金を取る問題について、どういう御処置をなさるお考えであるか、その点もあわせてお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/75
-
076・藤枝泉介
○藤枝政府委員 最初の、将来その地方の負担にたえないような補助事業を、しかもそれは国家的な要請からしてもやり遂げなければならないという点につきましては、御承知のように、土木災害、農地災害等につきまして、ある程度負担がその地方団体の税収入その他とのつり合いがとれないような場合には、負担率を引き上げていくような法律の規定もございますので、補助率の引き上げ等も考えられます。そのほかに先ほど申しましたように、そういう一般の標準によっては把握できないような地方の財政需要に対しましては、特別交付税の制度もございますので、それらを活用いたしまして、ただいまお話しのようなことを支障なく行いたいと考える次第でございます。
なお外郭団体と申しますか、そうしたものが一種の負担金を市町村等から取っておることが事実であることは承知いたしております。この問題をどう解決するか、非常にむずかしいことでございまして、外郭団体といたしましても、その目的の推進のために官庁の仕事、地方団体の仕事に協力をいたしておるのでありまして、何かの形で財源を求めなければならないのであります。ただ、たとえば災害復旧費が非常に多いのにかかわらず、その災害復旧費の補助金だけを基準にいたしまして、それから何分天引きする、納付金を納めさせるということは必ずしも妥当でないと考えられますので、この点は関係の各省とも十分打ち合せまして善処いたしたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/76
-
077・石村英雄
○石村委員 ただいまのような問題は、ぜひとも積極的に方針をお立て願いたいと思うのであります。これをおやりにならなければ、ただ大蔵省はこんな法律を出して、補助金を出すことだけ制限すればいいんだと考えておるとしかとられないことになると思う。どうかこうした問題を御研究になって、はっきりした措置を講ぜられること、それをやられなければ、この法律を出した意義はなくて、むしろ地方団体を苦しめるにすぎないということになると思います。
次に具体的な条項でお尋ねいたします。第二条一項の四に「相当の反対給付を受けない給付金」というのはどういう性質のものであるか。また政令で定めるということになっておりますが、政令はどんなものをお定めになるお考えであるか、お示しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/77
-
078・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 現在法律におきまして、あるいは予算科目におきまして、補助金、負担金、利子補給金という名前以外に、たとえば損失補償金とか交付金というような名前で出しておりますものの中に、いわば補助金と同じように、反対給付のない、従ってその予算の執行が放漫になりやすいものが相当ございます。従ってそういうものを具体的によりまして、たとえば増産奨励金というふうな名前で呼ばれておりましても、補助金と同じにすべきものであるとすれば、そういうものをこの政令で一々指定して参りたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/78
-
079・石村英雄
○石村委員 その政令の腹案はできておりますか。できておれば、今でなくてもいいのですが、資料としてお願いしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/79
-
080・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 まだ最終的なものではございませんけれども、中間的にはできております。従ってあとで要綱的なものを差し上げてけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/80
-
081・石村英雄
○石村委員 二条の五項について、たとえば外航船利子補給法によって船会社が資金の融通を受けるというときは、これは間接補助事業としての対象になるかと考えますが、その通りでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/81
-
082・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/82
-
083・石村英雄
○石村委員 次に三十条の罰則規定では「第十一条の規定に違反して補助金等の他の用途への使用又は間接補助金等の他の用途への使用をした者は、」となっておりますが、十一条には「善良な管理者の注意をもって補助事業等を行わなければならず、」とあって、その次に「いやしくも」と書いてあるのですが、この「善良な管理者の注意」というのは、単なる訓示規定にすぎないものであるかどうか。三十条の罰則の中には、善良なる管理者の注意を払わないというような場合も、やはり「他の用途への使用」というものの中に含ませてお考えになっていらっしゃるのかどうか、はっきりお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/83
-
084・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 三十条で「他の用途への使用」云々と書いてありますのは、十一条のところに、この補助金を交付しますときに、交付官庁側としては、これはどういうふうな内容の事業にどういうふうな条件で交付するという、交付の決定の内容とか、あるいは条件等々をつけるわけであります。そうしたものに従って、しかも善良な管理者の注意をもって補助事業を行わなければならない、これは非常に抽象的な規定でございまして、具体的には、この交付の決定の内容等に従ってやらない場合は三十条にかかる、こういうことになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/84
-
085・石村英雄
○石村委員 昨年問題になりました造船リベート問題ですか、ああしたものは、結局不当な価格で船を作らしたということになるのだと思いますが、リベートをもらって、そのリベートをほかに使ったというような意味で、この三十条の罰則規定を受けることになるのでございますか、それともそういう不当な価格で請け負わしたということだけで罰則規定の適用を受けることになりますか、この点はっきりお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/85
-
086・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 私、外航船舶の建造融資に関する具体的な事実関係、あるいは法律関係についてそう詳しく承知しておりませんので、あまり正確でないかと思いますが、あの外航船舶建造融資利子補給につきましては、いわゆる補助事業者というのが銀行でありまして、間接補助事業者というのが船会社であります。そこで船会社が、たとえば十億円というふうな船価を申請しまして、その十億円の利子補給を受けながら、実際は九億円で船を作って、一億円をほかの事業に使うということになりますれば、安い利子補給を受けた一億円をほかの用途に使うことになりますから、第二条の第四項の第二号の規定と相関連しまして、第三十条の違反になる、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/86
-
087・石村英雄
○石村委員 ただいまのお話しだと、十億もらって九億の船しか作らぬというような御説明でしたが、十億は造船会社へ事実は一応渡してしまって、一億ほどあとで返してもらったという、こうした例は、単に造船疑獄問題だけでなしに、地方の災害復旧事業なんかでもよくあることなんです。さっきも申しました土地改良協会の負担金が出せないというようなことから、土木業者からリベートをもらって、その金で出したというようなことは非常に多いと思いますが、こうしたことは、三十条のどういう何で処罰規定を受けることになるのか、その点お示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/87
-
088・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 リベートを受けたというのが、当初から十億受けた融資を、そのまま九億を船に使って一億をほかに使えば、非常に明瞭になるというので、一応十億払っておいて一億返してもらって、それを別の目的に使うというふうなカモフラージュをしたということならば、やはり安い利子補給を受けた金一億を他の用途に使ったということになるのではないかと先ほど御説明したわけでございますが、この点のこまかい事実関係その他から、正確なことは、そのうちに刑事局の方も来られるでございましょうから、その方からお聞き願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/88
-
089・石村英雄
○石村委員 その点はそれではあとで質問します。もしリベートをもらったというようなことがかりにない場合、不当な価格で請け負わせたというようなことだけである場合、それは何ら処罰は受けないということになるわけですか。たとえば災害復旧でも、土木業者に必要な経費以上の請負をさせた、リベートはそのときもらっていないというような場合には、これは何ら問題にはならないということになるわけでしょうか、これも、刑事局の方でもいらっしゃらなければわからないということなら、あとで聞きます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/89
-
090・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 非常に具体的な問題を微に入り細にわたってお尋ねになりますので、私ははっきりお答えできないのでありますが、いわゆる請負業者と補助事業者との間の経済取引の力関係によりまして、いわば請負業者にぼられたというときには、この補助事業者には何らの故為がないわけでございますから、従って刑事事犯の対象になることはないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/90
-
091・石村英雄
○石村委員 そうすると、十五条を見ますと、事業の完了によって、調査して補助額を確定する、こうなっておりますが、こういう性質の規定が、従来の補助金を出す場合の、法律ではないでしょうが、やり方にあったでしょうか、どうでしょうか、お尋ねします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/91
-
092・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 従来国が経費を支出します場合には、たとえば前金払い、概算払い、いろいろ工事の完了に先だちまして支払う方式もございまして、こうした額の確定ということには従来の補助制度ではございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/92
-
093・石村英雄
○石村委員 そうすると、さっき例を上げたような不当な価格でやったという——これは結果において不当な価格というとき、あとで補助額を確定するときに、この価格は不当だというような額の決定がその時にあるじゃないかと思います。そういう場合には、これは不当な価格で請け負わしたんだということにかりになると、それは一五条の規定によって返還させるということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/93
-
094・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 先ほど申し上げましたように、この補助事業者がその請負業者との間の商取引におきまして、ある程度高い単価で引き受けざるを得なかったという事例、これは現実の経済取引の問題でございますが、そうしたことのないように、たとえば現在の地方自治法二百四十三条では、地方公共団体が請け負いさせる場合には、やはり一般競争入札というふうなことを原則としてやれというふうな規定もございますし、そうしたいわゆる競争の利得を享受するような発注方式を十分とって、しかもなおかつこの工事の単価がやや高かったということにつきましては、現在刑罰規定をかけるあれがないじゃなかろうかと思うのであります。その際、たとえばいわゆる談合だとか、そうしたことによりまして、請負業者の方で独禁法に反するとか、その他法令に違反しますような行為がありまして、それによって地方公共団体の側としては、受けた損害を賠償してもらうということになりますれば、それを補助金額の確定といたしまして返さしても差しつかえなくはなかろうか。大体そうした発注をいたします場合に、十分そうしたぼられる心配のないような発注方式でもってやっておいて、しかもある程度単価が高かったというものについては、この額の確定の際にも十分しんしゃくして、そうしたことにまで無理を言うわけにいくまいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/94
-
095・石村英雄
○石村委員 こうした問題について、会計検査院で従来指摘せられている例があると思いますが、会計検査院のお考えをお願いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/95
-
096・小峰保栄
○小峰会計検査院説明員 ただいまの御質問でございますが、検査上不当な価格で請負に出ているという例はちょいちょいございます。それが請負人にごまかされたのかどうかという点になりますと、なかなかわからない場合が多いのでございます。そういうような場合は、大体今大蔵当局から御説明があった点で十分ではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/96
-
097・石村英雄
○石村委員 次に十九条の加算金の問題ですが、この加算金は、もし善良なる管理者の注意を払ってやった結果、予定額より少くて済んだというきわめて良心的なやり方をしたというときに、確定額との差額が当然出てくると思いますが、これに対して加算金をやはり取ることになるわけですか。それとも十七条該当でないというようなことで払わなくていいということになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/97
-
098・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 第十九条に明定しておりますように、いわば目的外に費消したというような、不正な原因から取り消しを受けた場合以外には加算金はつきません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/98
-
099・石村英雄
○石村委員 では確定額との差額が出てきても、それで返還命令が出てくるじゃないかと思いますが、その返還命令が出ましても、これは加算金がつかないということになるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/99
-
100・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 返還命令が出まして、納付期日までに納付しなかったときに、納付期日以降延滞金が生ずるだけで、加算金には関係ございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/100
-
101・石村英雄
○石村委員 それからこの処罰の対象ですが、これは代表者、地方団体なら知事とか、あるいは市長というものになるんですか、それとも実際の事務担当者が処罰の対象になるのか、また両方が対象になるのですか、この点お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/101
-
102・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 これもあとで参ります刑事局に聞いていただく方がよかろうと思うのでございますが、私の考えますところでは、結局偽わりの手段あるいはその他の不正の手段によって、補助金等の交付を受けるについて最も有力な役割を演じました者ということになるのではなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/102
-
103・石村英雄
○石村委員 あと刑事局の方が見えてから、御回答をお願いしたいと思いますが、こうした問題は、やはり法規課長は御存じになっていらっしゃる方がいいだろうと考えます。
補助金等の問題は私はこの程度にしまして、資金規制の関係は明日お尋ねしたいと思います。そこで明日までに資料としてお願いしたいのですが、それは過去一カ年間の今度の資金運用の調整のための臨時措置法案の対象としておる金融機関の、銀行でいえば預金の増加というものの実際の数字と、その一カ年間における今度の法律案の対象としたこれらの金融機関の債券なんかの増減の表、これを明日お出し願いたいと思いす。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/103
-
104・松原喜之次
○松原委員長 井手以誠君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/104
-
105・井手以誠
○井手委員 まず委員長に御相談いたしたいと思います。私は大蔵大臣の出席を要求いたしておりましたが、どうしても都合がつかないようであります。この適正化に関する法律案は、知事なり市町村長が、場合によっては懲役にかかるという重要な法案でありまして、当然私は、こういう法律案の審議には大臣が出席すべきだと存じております。明日はぜひ大臣が出席されるよう、委員長から取り計らいを願いたいと思います。大臣が出席されるまで、私は質問を留保することを特に申し込んでおく次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/105
-
106・松原喜之次
○松原委員長 承知しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/106
-
107・井手以誠
○井手委員 先刻黒金委員の質問に対して、次官や法規課長は、補助金というものは、地方に対して慈善事業をしておるような口吻でありました。地方がもらうとか、利得があるとか、たくさんもらった方がいいとか、そういうのはけしからぬという言葉を使っておる。私はそういう考えであればこそ、こういう妙な法律案が出たものと考えております。ここで私は補助金の性格を説こうとは思いませんけれども、負担金を含んだ多くの補助金は、国が法令を制定して、国がしなければならない仕事を、地方に委任させておるのが多いのであります。また地方団体が行う仕事にいたしましても、国がこれを義務づけたり、あるいは基準を示したり、及び国の施策を実施しておるのがこの補助金でありまして、何も地方に恵んでやるようなものではないのであります。従ってこの補助金、負担金による事業の完遂ということは、国も地方公共団体も一体となって責任を持つことが正しい行き方であると私は信じております。そのためにこそ、負担金の区分というものは、公共土木事業の負担法にいたしましても、はっきり負担区分をいたしております。しかるにこの法律案では、一方ばかり罰しようとしている。何ゆえに補助金の交付を受ける団体ばかり罰して、査定を誤まった中央の官庁を罰しようとしないのか、私はこれが一番聞きたい。さらにいま一点は、地方公共団体に対してはきびしく臨んでおるけれども、あるいはこの法律案に私企業を含んでおるということは申されましたけれども、膨大な金額を含んでおる融資についてはどういうふうに考えておるか、これはきわめて片手落ちな法律案ですが、この点について、今から若干質問をいたしたいと存じております。
まず、ただいま申しました補助金や負担金については、当然国も一体となって責任を負わねばならないじゃないか、与えたり、恵んだりするものではないということについて、補助金の性格をお尋ねいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/107
-
108・藤枝泉介
○藤枝政府委員 補助金の性質は、ただいまお話しになりましたような性質のものが非常に多いと思います。ただいま私どもの言葉の足りないところから、あるいは井出さんに誤解をいたさせましたかもしれませんが、慈善的に恵む金であるなら、まだ多少そこに何かあってもいいと思いますが、国も義務としてこれを出し、そうしてそれが国家目的に完全に使われなければならない性質のものであり、しかもその原資は、税金その他の公けの資金であるというところに、補助金の適正に使用されなければならない要請があると考えておるのであります。従いまして、また補助金が適正に使用されるということにつきましては、御指摘の通り、国も、これを受ける地方の団体も、お互いに努力をいたしまして、それが適正に行われるように努める義務があると私も考えておるのであります。
ただ、今回提出申し上げました法律案に、交付する側の刑罰規定等が抜けておりますることについては、先ほど来お答えを申し上げましたように、現在の刑法、あるいは国家公務員法、あるいは予算執行職員等の責任に関する法律等によりまして、あるいは刑事責任を、あるいは行政上の責任を負わせておることによりまして、国側の、交付する側の責任を明らかにする、またその根本にさかのぼりましては、国自体が、たとえば補助の単価の適正化をはかる、あるいは補助の決定の日をすみやかにする、あるいは御指摘もありましたように、負担の率について適正化をはかるような根本的な施策をとりまして、国と地方と相待ちまして、補助金の適正な使用に努めたい。その一環として、この法律案を提案申し上げたというふうに御理解をいただきたいと考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/108
-
109・井手以誠
○井手委員 補助金を出す側については国家公務員法がある、私どもの考えでは、一方では現在も刑法があると思う。詐欺をしたような場合にはりっぱな法律があるのであります。それで、一方だけ新たな刑事罰を加えて、一方交付した側の同じ責任でなければならない公務員の場合は、現在の法律でやっていこう、その片手落ちのやり方に対しては、どのようにお考えになっておりますか。
それから閣議においてもずいぶんこの問題はもめたようであります。実施官庁である建設省や農林省は反対を唱え、行政措置でりっぱにできるはずである、現在の法規でも刑事罰はある、刑法があるからりっぱに不正を改めることができるという解釈のもとに、行政措置でできることを強調されておったけれども、大蔵大臣の強引な横車によって——横車か適正かどうか知りませんけれども、強力な主張によってこれが提案されたと私どもは承わっております。現在の法律でどうしてできないのか。現在の法律はどういうもので取り締まることができるのか、現在の法律で取り締まれる条文と、それでは取り締まることができない理由をこの際明らかにしていただきたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/109
-
110・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 午前中も御答弁申し上げたのでございますが、この法律の刑事罰規定がいかにも片手落ちだというふうな御批判でありますが、われわれがこの立法をいたしますときの考え方といたしましては、一体この補助金がなぜ乱用に流れるかというような原因を考えてみたわけでございます。その原因がどこにあるかということを考えてみますと、先ほどからも表現が悪いというので非常におしかりを受けたのでございますけれども、そうした補助金の交付の受け方、あるいはその事業というふうなことに最も利害関係と申しますか、それから最も大きな利得を受ける立場の者が一番関係があるのではなかろうか。交付します官庁側の中には、非常に職務熱心の結果、いかなることよりも橋をりっぱにしようとか、あるいは道路をりっぱにしようとかいうような熱意のあげく、まことにぜいたくきわまる橋を作ろうという人もおるかもしれませんけれども、また他面補助金というものは、全体の金額が限られておるわけでございますから、全国各地からいろいろな請求がございますれば、嫁一人に婿八人にも九人にもなるわけでありまして、そういう面から、当然交付する側は、何らかの査定をして均衡を得させなければ、補助金の額そのものは足らぬわけでございます。それによって何かわいろでももらっているというなら話は別でございますけれども、そうでなければ、交付します官吏に特殊な利益が帰着するかといえば、帰着するわけではないのでございます。そういう点から申しますと、最も端的にこの補助金が放漫に流れる原因をつくためには、先ほどからも申し上げますように、何らの反対給付なくして補助金の交付を受ける立場の者の方をまず自粛いただきまして、それによっていわば交付する側も大いに研究をいたしまして、両々相待って補助金の適正なる執行がなされるのではなかろうかということから、こういうような立法がなされたわけでございます。
それから補助金の刑事罰の規定が、なぜ従来と違ってこの規定によって初めて有効かというお話しでございますが、これも午前中御答え申し上げましたように、現在の補助金に関します不正事件は相当ございまして、不当事項その他で批難されております事件が何千件とありますのに、たとえば詐欺罪というようなことで事件になっておりますものすら、一年に三件とか四件とかいうような非常に微々たる事件である。それはどういうことから来るかと申しますと、結局詐欺という場合における、相手を欺罔したかどうかという条件が非常に立証が困難だということから来ている。従来明らかに、たとえば山口県でございますか、沈んだと称して補助金をもらって船を作ったところが、沈んだはずの船がゆうゆうと浮いて運航しているというような事実もあるわけでございまして、そうした場合に、はっきりそれがわかりながら、なぜ詐欺罪なら詐欺罪でやらないかということは、ただいま申しましたような、相手方が欺罔されたかどうかという立証の困難というふうな点から、今まで不十分な適用しかできなかったわけでございます。今度の二十九条ができますと、その点についてはっきりした規定ができるわけでございます。三十条の規定は、先ほども申しましたが、目的外の使用というような点につきましても、非常にはっきりすれば、背任とか横領という犯罪も成立するでございましょうけれども、背任、横領の犯罪に関しましては、ほとんど一年に一件あるかなしかというふうな実情でございます。そういうことも、たとえばこの金が私腹を肥やすものでないのだというようなことから来るのではないかと思うのでありますが、国の資金の効率性という面から申しますと、私腹を肥やそうが、目的外のことに使われようが、それは同じでありまして、三十条にはっきり規定するということは、そういう意味からも実益があるのではなかろうか、こういうように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/110
-
111・井手以誠
○井手委員 法制局にお尋ねいたします。先刻も申し上げましたが、負担金を含む多くの補助金は、国の施策を、法令できめて国にかわって地方公共団体が実施に移す。あるいは地方の事業にいたしましても、国が法令によって義務づけたり、基準をつけたりしてやらせている。地方も中央も一体になって事業の完遂を行わなければならない責務があると考えております。ところがこの法律案は、補助金を受ける地方公共団体の責任を問おうというのでございますが、現行の刑法その他の法律では取締りができないかどうか。建設大臣などが主張しております行政措置でほどうしてもできないのかどうか、また取り締ろうとすると、現在どういう法的根拠があるのか、さらにまた公務員については、新たに刑事罰は設けられないで、現在の国家公務員法によって必要な処置をしようということでございますが、あまりにも一方的であると考えますので、それらの点について法制局の見解を承わりたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/111
-
112・西村健次郎
○西村政府委員 お答えいたします。ただいま井手委員の御質問の点、補助金等による事業の執行というものは、国と地方公共団体が一体となってやるべきもの、この点はお話しの通りだと思います。しかしながら、この法律の第三条にありますように、これはもともと国民の血税をもってまかなわれるものであり、これが適正に使われなければならない、これは申すまでもないことであります。そこで、しからばその不正使用の場合において、現行の刑法等によって十分まかなえるじゃないかというお説のようでございます。この点につきましては、ただいま村上法規課長からもお話しがありましたように、実際詐欺罪としては、人を欺罔するということが要件となっておりますが、そういう立証が非常に困難な場合が多いのであります。かたがた補助金等は、不正の目的のために、不正な手段によって交付されてはならないという大命題を掲げました以上、そういった詐欺その他偽わりの行為による補助金等の収得というのも、一つの別の類型としまして、いやしくもそういう不正不法に交付を受けている者を罰するということは、この罰則を新たに設けた理由であろう、こう思っております。なおしからば、実際問題といたしまして、現行法でまかなえるのか、まかなえないのかという質問でございますが、この点につきましては、私よりむしろ法務省当局が御答弁した方がいいかと思いますけれども、一般的に申しまして、ただいま私が御説明しましたように、やはり欺罔行為というものを必要とする詐欺罪の構成要件に、必ずしも合致しない場合も多い、立証も困難である。しかし、さればといってそれを放置するわけにいかないというのが、この法律の立法理由であろうと思うのであります。なお国の公務員の方を罰しないのは片手落ちではないかというお説に対しまして、これは一つの立法政策の問題であろうと思いますが、現行法におきましても、おそらくその場合においては、背任罪が成立するであろう、これは私は疑えないところじゃないかと思います。ただし、ここでこの法律に特別にそういう規定を入れまして、国の方をやれと言ってみましても、現実にはやはり同じじゃないか。たとえば復旧の補助金等を受ける方の側にも、先ほど申し上げましたように、欺罔行為というものは構成要件が非常に変ってきております。一方国の公務員の方につきましては、そういう規定をよしんば入れても同じじゃないか。従いまして、もしそういう事実があれば、現行法でそれはやっていけばいいのではないか、こういうふうに私どもは考えております。はなはだ不十分でございますが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/112
-
113・井手以誠
○井手委員 どうも、その不十分とおっしゃる点が私は非常に不十分に思っております。政務次官にお尋ねいたしますが、査定というものは何ゆえにあるのか。申請する場合に虚偽の申し出をした、これならばそういう筋も立とうと思いますが、現地で、中央からもわざわざ出向いて査定したものの責任が申請した者だけにあるのか、私はこの点が聞きたいのであります。査定によって復旧の補助金の交付の金額がきまるのです。中央の役人が現地で査定したものが間違っておったというならば、誤まった査定をした役人こそ処罰の対象にならなければならぬと私は考えます。当然その場合、虚偽の申告があるならば明らかにされたはずである。現地まで来ておってそんなことがわからない役人ならやめてもらいたい。査定のない申請に対してごまかしがあった場合には処罰するというなら、話がわかりますけれども、現地に来て査定した場合、当然明らかにしなければならないはずの査定について、申請した者を罰しようというのがわからないのであります。先般建設大臣にお伺いいたしますと、建設省は、今度二十名を増員して、一つ残らず現地で査定すると言われた。そのように陣容が整っておる今日、査定したものに虚偽の中背がわからないはずはないのであります。どうですか、それでもわからないのですか。それほどわからない役人が多いのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/113
-
114・藤枝泉介
○藤枝政府委員 現地で査定をいたしましたものにつきましては、会計検査院の方で不当不正の行為として指摘されるようなものは原則として少い。実は午前中にも申し上げましたように、現地の査定ができない面が、何万件という補助の対象でございますので、そこにやはり問題が一つあろうと思います。現地の査定をいたした場合に、さらにそれが不正に行われたというのは、その用途そのものについて査定をいたしまして補助金を交付したのに、その用途に使われるものを他の用途に使ったというようなことは、これはあり得ると思いますが、その用途に使いつつ、しかも査定と実際の仕事とが食い違いがあるというようなことは、会計検査院から実例であとでお答え申し上げてもよろしゅうございますが、実際にはない。ただ何万件もある補助の対象でございまして、現在の国の各行政官庁の能力では、全部を現地査定ができないところに一つ問題もあろうと思います。従いまして、こうした法律で処罰をすることが目的でないことは、もう繰り返し申し上げた通りでありまして、われわれといたしましては、今後できるだけ現地の査定ができますように人員も充実いたしたいとは存じますが、何分国家の財政全体の問題でございますので、それが十分にできないところになお問題が残っておるというふうに考える次第でございます。非常に巧妙な欺罔手段を用いられた場合に、相当の能力を持っておっても欺罔されるという場合もないではないと思いますが、ただいま申しましたように、現地査定ができるようなものについては、この法律が目的としておるような不正な行為は行われていないのが普通であるということは、申し上げられると考えるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/114
-
115・井手以誠
○井手委員 その点は、一つ法制局にも確かめておきたいと思います。現地で査定した場合の責任でございます。おそらく今後建設省あたりは、全部現地査定になるのだろうと思いますが、現地査定した場合には、責任は査定した者に私は出てくると思う。もしその場合、査定してもなお不正があったという場合には、申請した者も査定した者も両方罰せられるようになりますか。その辺を確かめておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/115
-
116・西村健次郎
○西村政府委員 今の御質問の点は、法務省がお見えになっておりますから、むしろそちらの方がよいのじゃないかと思いますが、私の考えといたしましては、現地で査定するといいましても、それは地理的に現地だというだけであります。その場合において、国の公務員がかりに地方公共団体の補助金等の受給者と通じてインチキな査定をすれば、おそらくその人は背任罪に問われるので、具体的の場合にどういうふうにかかってきますか、その点わかりませんけれども、一般的にいって、今申し上げたようなことになるのじゃないかと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/116
-
117・井手以誠
○井手委員 政務次官にお尋ねいたしますが、水増しだとか不正だとか盛んにおっしゃいますけれども、不正があったということは、いわゆる中央の実施官庁の監督の不行き届きが私は前提であると思う。中央さえしっかりしておって、動かされないような態度を持っておったならば、そういうことは起らぬはずである。これは議論にわたりましょうから、私はあまり多くは申し上げませんが、大体この法律を出す趣旨そのものが、政府の無能を暴露するものであると私は考える。自分たちのやれないことをたなに上げておいて、——もちろん悪いことはやかましく言っていいのです。うんとやっていい。山口県佐波郡の出雲村や八坂村の責任者に私はあとで問いたいと思いますが、政府はどういう処置をされたか、自分たちがやらなければならない監督をおろそかにしておいて、地方がごまかしたからといって罰を加えるということはけしからんと思う。そこでお尋ねいたしますが、今までは水増しと不正申告だとおっしゃいましたが、不当に査定した場合にどうなりますか。私は数字を上げて申し上げましょう。二十八年度の水害に対して、大蔵省は最初千五百六十五億円に復旧費を査定しておる。それを二十九年度の予算編成に千百七十億に削っておる。これに対しましては、私ども注意をいたしましたけれども、がんとして聞かない。ところが今日になりますと、あれは間違いであった、千五百五十五億が正しかったということを申されておる。この責任はどうなりましょうか。そのためにどのように地方は困ったか、政府は二十八、二十九年の二カ年間に六割を復旧いたしました。このように声明しておきながら、実際は三割くらいしか復旧していない。三十年度には、少し基礎が間違っておったということで六割五分の復旧だと申されておる。予算委員会でさように発表されておる。この誤まった査定はどういうことになるのでございましょうか。これが第一
先刻来いろいろ査定の話が出ましたが、私は、査定というものは一回でいいと思う。緊急査定、これは特別でありますが、本査定で済むはずです。今までは財務局も査定される、行政管理庁も査定される、会計検査院も現地に出向いて査定をされておる。建設省以外の人は、現地を調査して帰ってきて、悪いものがあるならば、建設省や農林省にその不当を申し出ることが正しいやり方である。ところが現地において一々指図なさっておる。最初は、ある工事について百万円と査定されたものを、八十万、七十万とずっと切り下げられておる。その査定の責任はどうなりましょう。今後起るでございましょうが、査定が次々に変ってくるこの責任はどうなりますか。もし査定が変って参りましたならば、前に査定されたものは、それは虚偽のことになるのでございましょうか。当事者はそれは処罰されるでございましょう。こういつた責任を一つお伺いいたしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/117
-
118・藤枝泉介
○藤枝政府委員 二十八年の災害を例におあげになりましてのお尋ねでございます。あの当時非常な大災害であり、しかも復旧を急ぐために早急な査定をいたしたのでありますが、災害の度合いも非常に大きいために、会計検査院としても事前の査定というようなことを当時実施をされまして、それらの結果を見ますと、最初に査定をいたしましたものと相当そこに開きがあるということで、実施官庁である建設省、農林省と、私ども最後の財政を預かります大蔵省の方とで一緒になりまして、その再査定をやったわけでございます。その金額につきまして、さらにあとでまた訂正があったじゃないかということでございますが、何分実施を査定いたします関係上、十分全部の箇所を査定できない点で動いて参ることもあろうかと思います。しかし、ただいま御指摘のように、明らかに間違った査定をやるというような場合におきましては、公務員として当然公務員の責任を問わるべきであるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/118
-
119・井手以誠
○井手委員 その問わるべきであるという公務員の責任についてです。これほど災害地に対して迷惑をかけた大蔵省の査定、あなたの方はあまり基礎がある査定ではないのであります。過去幾らくらいの水増しがあった、実際請負いをさせればこれくらい下った。そういう情実をかけて査定をされておる。そのために地方は多くの不利益を受けておる。二カ年間に六割の復旧をさせるといいながらも、三割しか復旧しないではございませんか。その責任はどうなりますか。関わるべきだとおっしゃいましたけれども、だれもやめておりませんよ。国会議員は、活動が鈍いと国民の厳正な批判によって落選させられる。会社の経営が悪くなると重役は交代せしめられる。役人はどんなことをしても責任を問われないのですか。私は、ここで一々査定官が現地へ行ってどうしたこうしたとは申しませんけれども、地方の報告によりますと、地方の接待で一番多いのは、大蔵省や会計検査院であるといわれている。この点について、私はあとでさらに追及いたしますけれども、この査定を誤まった役人、根本的に間違った査定をした大蔵省の責任はどうでございますか。二十八年度の災害に対する査定について、私はただいまの答弁では納得いたしません。地方に対しては厳罰をもって臨みながら、自分たちはほおかぶりするような態度は許されません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/119
-
120・藤枝泉介
○藤枝政府委員 その意味におきまして、実はこの法律案も御審議を願っておるのでありまして、法案全体を通じてごらんになりますように、なるほど罰則の点では、公務員の罰則を規定はいたしておりませんが、この法案全体は、交付をいたす方も交付を受ける方も、この補助金の性質を考えて、それが効率的に有効に使われるべきであるということを法案の全体の思想といたしておるのであります。従来ややもすれば、交付をする側にも手落ちもあり、また受ける方も、あるいは言葉は悪いかもしれませんが、一種の取り得であるというような思想がありがちであったものを、こうした法律の規制によりまして両方とも十分に考えて、そして補助金というような特別の性質の資金をほんとうに正しい意味に使うということを確立いたしたいと念願しておるわけであります。
なお例におあげになりました災害復旧の問題でございますが、われわれももちろん、原則としていわれております三・五・二の比率によって復旧ができますことが望ましいのでありますが、御承知のような財政状態でありますがゆえに、その復旧の度合いが遅れましたことはまことに残念でございますが、国の財政全体のにらみ合せにおいて、やむを得なかったことを御理解いただきたいと考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/120
-
121・井手以誠
○井手委員 財政の都合によって三・五・二が実施できなかった事情について、私はそうとがめるものではないのであります。二カ年間で六割を復旧すると説明しておいて、実際は三割しか復旧しない、一年後にそれは誤まりであった、千五百五十億が正しい復旧費である、そういううそをついた大蔵省は責任を取らぬでいいかと私は申しておるのであります。今までは水増しだとか、二重申請だとかおっしゃいますけれども、最近の査定を見ますと、十の工事をしなければならぬのに、八か七しか工事ができないような査定をされておる。今までは、実際の工事よりもよけいに申請されたからこれはけしからぬという。そういうものはどしどし処分なさい、なぜ今日までそれを処分されなかったか、不思議でならない。現在の法律で取締りできなかったから、この法律を出して取り締まるというならば話はわかる。山口県の佐波郡のごとき、ああいう不正工事に対して、関係者をどんどん呼んでひっかけようとしたけれども、やれなかった。やむを得ないから、こういう法律でやるというなら話はわかるのであります。そういうことはほとんどせずして、公務員の責任も問わずして、直ちにこういう原則をもって臨もうという態度は、私は不可解でたまりません。私はあらためてお尋ねいたしますが、従来は水増しがあったけれども、必要以下に査定された責任はどうなりましょう。これは小峰さんがいらっしゃいますから、よく御存じでありましょう。土木工事の石の控え、奥行きでございます。今まで四十五センチしたものを、これはけしからぬといって全部三十五センチに査定されておる。この査定が正しいですか。そういう査定をした国家公務員はいかになりましょうか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/121
-
122・藤枝泉介
○藤枝政府委員 具体的なただいまのお尋ねでございますが、どういう現実の場所においてそういう査定をいたしましたか、あるいは三十五センチで十分間に合うものであるからそういう査定をいたしたのか、あるいは間に合わないにもかかわらずそういう査定をいたしたのか、事実を明らかにいたしませんので、ちょっとお答えしにくいのでありますが、もしも非常に不当に、たとえば間に合わないにもかかわらず、それでは絶対にやれないものにもかかわらず、そういう査定をするということになりますれば、そこに公務員としての責任ば出て参るというふうに考える次第でございます。ただ事実を明らかにいたしませんので、的確なお答えができない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/122
-
123・井手以誠
○井手委員 事実をあげろとおっしゃれば幾らでもあげます。私は多くを申し上げませんが、九州の二十八年災害でも明らかなことであります。そこでただいま、不当な査定をした場合には公務員の責任が生ずるとおっしゃったことを私は記憶いたしておきます。一つこの点は間違いのないようにしてもらいたい、非常に重要な点でございます。
今二十八年の災害を例に取りましたから、引続き例に取りますが、大蔵省と建設省の間で一応話がまとまった九百二十億の残工事、これに対して地方庁、地方の公共団体とは話し合いがついておりません。九百二十億の工事では十の災害復旧が九つか八つしかできないという事態であります。結局百万円する工事を七十万円か八十万円でしなくては災害の復旧はできないのであります。こういう水増しではなく、逆に査定が低いものに対してどのような責任をとられるのか、一般公務員法によってどういうふうに処断されるのか、それを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/123
-
124・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 井出先生の御質問は、きわめて予算の査定がまずいではないかというおしかりでございますが、私も十年近く予算の査定をした経験がございますが、予算の査定をしておりますものは、ほんとうに寝食を忘れまして、何らの利害も顧慮することなくやっておるわけであります。その場合に、知識の不十分だとか、あるいは技術的な分析の不十分というふうなことで、ある程度間違った査定をするかもしれませんが、そうした場合に、一体公務員としての責任はどうか。公務員の責任と申します中にもいろいろあるでありましょう。そういう知識不十分、浅学非才の身にしてそういうふうな査定をするのはけしからぬとおっしゃって、左遷されるという場合もありましょう。しかし、少くともとにかく寝食を忘れてやっておりまして、その持っております知識が不十分でありまして、たとえば過小な査定をしたというときに、国家公務員法のたとえば懲戒処分とか、あるいは減俸というような犯罪が適用になるかどうかということになるのでありますが、それは職務上の義務に違反したとは言えないのじゃなかろうかと私は思っております。主計局の査定というふうなことは、机の上におきまして百里先の工事を見通して適切なる金額を査定しなければならぬという、きわめてむずかしい仕事でありますので、ほんとうに有能な方々が入ってこられまして、そういうことを現地査定とほとんど何らの間違いなくやれるような有能の士が集まってくることをわれわれは期待しておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/124
-
125・井手以誠
○井手委員 大蔵省が寝食を忘れて努力されておることは、私も知っております。ただ考え方の違いがある。あなたの方は、なるべく予算をしぼろう、しぼろうとなさっている。あまりしぼり過ぎて問題が生じておる。あなたなんかは人格も非常に高潔であるし、円満であるから問題はないのですが、現地に行かれた場合はまるで違うのです。そういう言葉ではなくて、命令ですよ。これはけしからぬじゃないかなどとおっしゃっておる。そういう査定の実際、私はそれを考えなければならぬと思う。私は現場に立ち会ったこともございますが、そういう態度の役人、それについて規定がないことが私は不思議でたまらない。おそらくこれは今後委員会でもいろいろ検討なさるであろうと思いますが、あなたの方からも、あまり明確なお答えもないようでありますけれども、いずれ大臣がお見えになってから根本的な方針についてはお伺いをいたしたいと考えております。
そこで私は、少し考え方をかえてお尋ねいたしますが、きのうかの朝日新聞によりますと、山梨県に交付された補助金十四万円、これは製パン工場設置費で、冷害対策費の中にあったそうでございますが、必要がなくて返上されたということが美談として載っておる。こういうふうに必要でないようなものを交付する役所はどういうふうになりましょうか。これは当然のことだと思うのです。また先刻も話がありましたが、補助金を交付する時分には、この団体に幾ら流してもらいたい、いわゆる外郭団体に流せという指示をなさっておるとか、それは公文書でないにいたしましても、いわゆる行政措置というもので、あるいは口頭でそういう指示がなされておる。実際災害復旧費その他ではなくして、それに関連した、たとえば食糧関係においては製粉関係の協会でありますか、あるいはどんなものでありますか、私ははっきりわかりませんからここで申し上げませんが、そういう中央の指導についてはどのようにお考えでございますか。先刻も黒金委員から御質問がありましたが、補助金を流す方にもそういう妙なものがあるのではありませんか。そういうことは今後一切やらないつもりでありますか。やったものはどういうふうに処置なさろうとお考えになっておりますか。この点お伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/125
-
126・藤枝泉介
○藤枝政府委員 先ほど石村委員の御質問にもお答えいたしたのでありますが、外郭団体の資金を作るために、たとえば補助金の一定割合をこれから天引きするというようなことの従来行われておりますことは、私も承知いたしております。これはその補助金の種類にもよりましょうが、ことに災害復旧などの補助金というようなものでそういう資金の造成をすることは、まことに好ましくないことだと存じます。先ほどもお答え申し上げましたように、なおこうした問題があるようでございますので、関係の各省とも連絡をいたしまして、適切な処置をとりたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/126
-
127・井手以誠
○井手委員 適切な処置ではなくて、はっきりした御言明を願いたい。何々協会というように、土地改良とかその他のようなものにはいろいろの協会がございますが、そういうものが補助金から天引きされている事実に対して、これは善処では済まないと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/127
-
128・藤枝泉介
○藤枝政府委員 私の存じておりまする関係では、そうした外郭団体で、個人の会員の場合は別でございますが、市町村などがその団体の会員になっているときに、市町村に対する負担金を決定するのに、補助金等を基準にして、その何割、何%というようなことをやっている外郭団体のあることを承知いたしておるのであります。そういうことは、市町村が会員でありまするから、会員としての会費を負担することは当然であると思うのでありますが、その会費の負担の方法を、特に災害復旧に関係するような補助金などを基準にしてやるとは妥当でないというふうに考える次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/128
-
129・井手以誠
○井手委員 それでどうしようというのですか。小峰さんにお尋ねいたしますが、それは適正なやり方でございましょうか、いわゆる補助金の何%を納めるという、団体に対する寄付行為と申しますか、天引き行為と申しますか、そういうことは会計検査院としてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/129
-
130・小峰保栄
○小峰会計検査院説明員 ただいま外郭団体、たとえば土地改良協会というような例をおあげになりましたが、外郭団体の寄付と申しますか、会費納入と申しますか、これは相当広範囲に行われていることは事実であります。災害復旧費などでも行われるのでございますが、たとえば事業主体にかわって設計を作る、あるいは工事の監督をする。土地改良協会関係の話が出ましたが、農林関係などは、御承知のように事業主体が、たとえば農業協同組合というようなところが多いのでありますが、自分で設計をするとか、あるいは監督をするとかいう技術的な能力の乏しいところが多いわけであります。そういうところにかわりまして、設計図面を引くとか、設計書を作るとか、あるいは工事の監督をするとか、こういうようなことを行う場合が非常に多いのでありまして、こういうものにつきまして、若干の設計料なり監督料なりを納めるということは、必ずしもそう悪いことではないと思うのであります。ただ所によりましては、相当程度の激しいところがございます。私どもといたしましては、たとえば工事費につきまして、その五%取るとか七%取るということになりますと、補助金に換算いたしますと一割近いものが引かれるということになりますので、そういう程度のひどいと思われるようなところは、どんどん注意をいたして、それを引き下げるような処置をとっているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/130
-
131・井手以誠
○井手委員 条文について、少しお尋ねいたしたいと思いますが、農林漁業災害施設復旧、いわゆる暫定措置法の責任者は、この条文では知事だろうと思うのですが、あるいは知事だけの責任になりますか、その点お尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/131
-
132・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 刑事罰の規定の適用は、いわば行為者ということになっておりますので、そうした農林施設の復旧に関する国の補助金を一体だれが偽わり、その他不正の手段を講じてたくさんの補助金をとるのに主役を演じたかという個々の具体的なケースできまるのではなかろうかと思うわけでございます。刑事罰の規定の適用につきましては、刑事局長が来ておられますので、もし必要でありましたならば、そちらから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/132
-
133・井手以誠
○井手委員 どうも立案当局者の態度があいまいであると思うのです。この場合はこういうふうに処罰する、——法律の論議になれば、それはほかの方でいいでしょう。しかしこの場合はだれが責任者である、こういう場合にはだれが責任者ということが、はっきりあなたの方でわかっておらねばならぬと思うのです。ほかの補助金と違って、農地災害復旧施設の暫定措置については、最近改正されて、知事が責任者になっておる。知事がやったものに対して、政府が補助金を出すことになっている。そういう責任者は知事だけだろうと思う。知事が工事をやる。そういう場合はだれが相手方になるわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/133
-
134・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 私が申しましたのは、要するに刑事罰の規定の適用につきましては、故意をもって偽わり、その他の不正の手段を行使して補助金の交付を受けたということが必要なんでありまして、農林災害施設の関係の補助金を申請します場合にも、県庁の内部におきまして、いろいろなそうした補助金申請についての手続が行われるわけでございますが、その場合に、一体だれがほんとうにその申請書の結果を知って、それを地方の公共団体の名前で持っていって、そうして補助金の不当な交付を受けたかという個々の具体的な事案を見ませんと、いわばそうした法律におけるその経費の管理の責任者だけからは、この刑事罰の適用対象が一律には出てこないのではないかというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/134
-
135・井手以誠
○井手委員 非常に重要な点でございますので、明確にしておかねばならぬ。委員会の審議が運用に非常に重大なる影響があると思う。どういう場合にはだれが相手方になる、処罰されるということが明確でなくてはならぬと思うのです。一つ一つの事案について考えなくてはわからぬということでは、私はいけないと思う。この法律の場合には知事が最終責任者である、しかし、実際こういう場合にはこうだということが明確でなくてはならぬと思う。はっきりしておるじゃございませんか。土木の負担法、あるいは農林漁業施設災害、こういったものについて責任者はだれであるか。ほかの多くの場合は、下からずっと申請が積み上げられてきて、知事自身によって本省に持ってこられる。農林施設災害復旧については、知事自身が最高責任者である。これは昨年変りました。一番この法律の対象になるのは、公共土木事業のあの特別措置法と、この農林関係の暫定措置法でございましょう。目の前に予想されるこの一番多い対象に対しては、だれが責任者であるかということははっきりしておかねばならぬのであります。知事が一括して、内容にはどの工事どの工事をやると書いてあるでございましょうけれども、まとめて知事から申請される、こういう場合にはだれが責任者であるかとお尋ねしておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/135
-
136・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 補助金の適正化の罰則もいろいろございます。ただいま井手委員のおっしゃいましたのは、もらうときの不正な交付を受けた事案であるか、あるいはもらったあとで、それを知事がいわゆる間接補助事業者に配分するときのことであるか、そのいずれも言っておられるのではないかと私思うのでありますが、先ほども申し上げましたように、この刑事罰の責任というのはなかなか重大な問題でございまして、知事が申請を集めます場合に、個々の農業施設の災害復旧をしようというものから集まってきた申請書について、知事としてはもちろんいろいろな仕事があるわけでございますから、申請書の個々の内容について、はっきりした認識を持ち、しかもそれがうそであるということを知りながら出したとしますれば、これは知事が責任を負ってしかるべきだろうと私は思います。
それからまた知事を通して配分いたします際に、交付の決定の内容に従って、一定の条件に従ってその補助金は配分すべきことに相なっておるわけでございますが、その配分を間違えたという場合には、それはまた知事の責任であろうかと思います。しかしこの配分しました補助金を実際に農業施設の災害復旧に使わないということになりますと、それは間接補助事業者であるところの農業施設の災害復旧をやる者の責任であろうかと思います。要するに問題は、法律で一律に、こういう場合にはだれが必ずこの規定の適用の対象になるべきだというふうにきむべきだとおっしゃいますが、どうも具体的なケースを見ませんと、刑事罰の規定の適用対象としてだれを選ぶべきかということは、私はわからないのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/136
-
137・井手以誠
○井手委員 そういうことでは、どうも不安心な立法でございますな。今までの刑事罰を加える立法に、そういうあいまいなことはなかったと思う。こういう場合にはだれが責任者であるか。あなたは補助金を配分々々とおっしゃいますが、農地の災害復旧などは、集めて知事がまとめて申請するものでございます。あなたの方から、つかみか何か知りませんけれども、補助金を百万円やる、それを配分する、こういうものじゃございませんよ。一つ一つ綿密な査定をやって、集めた災害復旧の総額がこれこれ、そして内訳をやって申請をされる。農地災害の復旧については、責任者がだれであるかというくらいわからなくては、地方方は困りますよ。めったに仕事ができないことになる。一部では、この法律が通るならば仕事をせぬ方がよかろう、何も自分の利益のためにやっているわけじゃない、何も仕事せぬのが一番いい、災害があってもほっておけばいいじゃないか、こういう極論をする者さえも耳にいたすのであります。あなたの方は、この法律によって実質的には国権の最高機関になるという野心はないでしょうけれども、各省に対して、地方に対して非常ににらみがきくでございましょう。しかしにらみをきかされる地方にとっては、たまったものではございません。
せっかく法務省の方が見えておりますから、一つ法務省の方にお尋ねをいたしたい。今度提案されておりまする補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律、これは最近各地で不正工事、水増し工事を申請しておる、これはけしからぬ、そういったものは処罰する、知事も市町村長も懲役にやるぞというのがこの法律の趣旨でございます。ところが先刻来——あなたはお聞きではなかったかもしれませんけれども、申請をする地方だけを取り締って、査定を誤まった、あるいはいろいろなことがあった国家公務員に対しては、全然ここには規定がないのであります。それは一般の国家公務員法によって必要な措置をするとおっしゃる。現行の法律でも、閣議でいろいろもめたように、行政措置でできるという意見も相当強いのでありますが、現在の法律ではどうしてそれが取り締れないのか、また今までおやりになってどうしてもできなかったという事由がございますならば、一つこの際承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/137
-
138・井本臺吉
○井本政府委員 お答えいたします。新しい法案の罰則二十九条につきましては、従来刑法の詐欺罪などで取締りをして参ったのでございます。ところが詐欺的な行為をして補助金をもらった者が、検察庁あるいは裁判所へ出まして、実はその補助金は全部、交付をした役人側の方が大体承知した上でもらったものであるというような弁解が出がちでございます。これは事実役人側の方が知っていない場合も相当あるようでございますけれども、いろいろな事をかまえまして、かような弁解をすることが多くあります。さような点を調べる過程において、検事がずっと調べて参りますると、弁解が全部排斥しにくいというようなことから、その事件が、さらに受け取った金が個人のふところに入らずに、公共に使われておったというようなことで、全般をひっくるめまして、起訴猶予にしてしまうというようなことが往々にしてあったわけでございます。ところが今度かような法律ができますと、さような弁解は通らなくなると私は考えるのであります。一面それでは役人側の方の、補助金を交付した方はどうなるかということでございますが、詐欺をされて持っていかれたという場合には、これはどうも役人側を責めるわけには参りませんが、ある程度事情を知って、その不正な要求に応じたというような場合には、私どもは、それは大体刑法の背任罪が成立するのじゃないかと思うのでございます。さらに、場合によれば横領罪も成立するのじゃないかということで、役人側の方は処分ができるように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/138
-
139・井手以誠
○井手委員 御指摘の刑法では、詐欺罪が、査定を受けたということで犯罪をなかなか構成しない、弁解される、こういうことですが、それではお尋ねしますが、二十九条の「偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け、」この文章で、それでは救われるかどうか。査定を受けたというのは、結局同じことじゃないのでしょうか。どこに違いがあるでございましょうか。偽わりには間違いないはずであります。刑法の場合も偽わりの申請、この場合も「偽りその不正の手段により」と書いてある。査定を受けたと弁解いたしますならば、同じことじゃないでしょうか。その法的な解釈が第一点。
第二には、現地で査定した場合の責任はどちらにあるか。査定が誤まった場合はどうなるのか。たとえば手っとり早く申しますと、水害復旧の場合に、現地へ行って厳密な査定をされる。査定を通れば責任はだれに帰するのか、その点をお伺いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/139
-
140・井本臺吉
○井本政府委員 「偽りその他不正の手段により」というのは、刑法にかような用語が用いられておるわけでございますが、この第二十九条による場合におきましては、偽わりの手段によって補助金の交付を受けたという場合には、これは現行刑法の第二百四十六条の詐欺罪の特別法というように私は考えております。「その他不正の手段により」という場合には、これは詐欺罪にあらざるその他不正の手段によって補助金の交付を受けた者という場合で、交付をした相手方でその事情を知っている者も、この法律にひっかかるというふうに私は考えるのであります。従ってこの法律ができますことは、現行刑法よりも一歩進んだ規定の仕方だというように私は考えております。
それから現地に行って査定した場合に、だれが犯罪者になるかというお尋ねでございますが、査定する者が不当な事情を知って、さような補助金を交付すべからざる事情にあるにかかわらず不当な査定をしたということになりますれば、これは背任的な行為でありまして、おそらく刑法の背任罪の規定の適用がある場合があると思いますが、さような悪意のない場合には、これは行政上監督を受けるようなことになるかもしれませんが、刑法上の問題は起きないというように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/140
-
141・井手以誠
○井手委員 その現地査定の問題、これが今後一番多いと思いますが、現地査定が、かりに不正ではなくて、そういう意図ではなくて、誤まって、またはこれが必要だということで厳密に査定された場合には、申請者の行為は、それで一応解消したと私は考えるのでありまして、その後の責任は査定官にありと考えますが、いかがですか。その点が第一。
さらに刑法との関係でございますが、「不正の手段」ということがここに新たに設けられたのが大事な点であるように思うのであります。偽わりということは刑法にもあるが、「その他不正の手段」というところにこの法案の妙味があるように私は思う。その妙味のある不正の手段ということで、相手方も罰せられるということでありますならば、それはやはり国家公務員法が当然ここにかかってくるものだと私は思いますが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/141
-
142・井本臺吉
○井本政府委員 査定者が厳密な査定をいたしまして、その査定が善意の査定であって必要な査定でなかったということになりますれば、その場合には、犯罪は成立しないというふうに私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/142
-
143・井手以誠
○井手委員 それでは、査定が一応済んだものは、責任は査定した方にある、かように解釈してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/143
-
144・井本臺吉
○井本政府委員 私は査定の仕方によると考えます。査定者が、善意であくまでも公平にやった査定であったという場合には、これは査定者の責任である。その責任というのは、行政上の責任で、刑法上の責任でない場合のことをいうのでありますが、ずさんな査定で、悪意が認められるというような場合には別個でありますが、そうでない場合には、そういうふうな責任の問題は起きないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/144
-
145・井手以誠
○井手委員 ずさんな査定という場合には公務員が処罰される。それから善悪の査定であった場合には、申請者その他には責任がない、こういうふうに今承わったのであります。そういたしますと、現地査定が済んでおれば、この法規にかかるようなことはないと了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/145
-
146・井本臺吉
○井本政府委員 補助金の交付が、厳密な査定によって交付されたものであるか、あるいは不正な補助金の要求にその査定が関係があるか、その辺の因果関係の問題を検討いたしまして、別にその不正な要求が、厳密な現地の査定によって因果関係が中断されているという場合には、問題は成立しないと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/146
-
147・井手以誠
○井手委員 くどいようでございますが、非常に大事な点でございますので、重ねて伺いますが、不正な査定が行われた場合には、申請者もまた査定に当った公務員も処罰される、かように私は承わったのであります。そういたしますと、査定が不正でなければ、普通の査定であれば、かりに間違って申請者が多く加えておっても、片一方が善良な意思で査定したものについては、申請者の責任はないのでございますか、この点を重ねてお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/147
-
148・井本臺吉
○井本政府委員 その査定が不正な申請に影響されなかったということがわかれば、これは犯罪になりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/148
-
149・井手以誠
○井手委員 それでは少し変えてお尋ねいたしますが、「その他不正の手段」ということは、どういうことを予想されるのか。これはやはり立案者の方がよくおわかりであろうと思うので、両方からお尋ねいたします。こういうことは、一々あなた方がいつもおっしゃるように、何千件、何万件とおっしゃっておるのですから、いろいろな場合を想定してこの法律はできておると思うのです。ですから、抽象論ではいけません。その他の手段ということはどういうことをさしたものでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/149
-
150・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 ただいま刑事局長からも申し上げましたように「偽りその他不正な手段」、その他不正な手段の方には、相手を欺罔する、要素がないという点が違うのだというお話しでしたが、「その他」という意味は、そうした相手を欺罔するということ以外の手段、こういう意味でございます。不正な手段と申しますのは、それは申請者が、自分はこの災害復旧をするのに百メートルの堤防が必要であるということを確信しておる。実際はそう考えておる当人の土木技術が非常におさびしくて、五十メートルでもいい場合があるかもしれません。しかしその場合に、それはいはゆる土木技術の知識の不足であって、本人自身はきわめてまじめに百メートル要ると思っておるような場合には、これは不正な手段でないであろうと私は思います。そうではなくて、相手を欺罔するしないにかかわらず、申請する者が、実際には復旧工事の域を出ておるにもかかわらず、それについて、これは復旧工事の範囲に入るのだということで、実際に復旧工事に必要かつ十分な金額をこえて、復旧工事という名目で、いわば改良工事にも使えるような金を要求する、そういうふうなことが不正な手段である。それを申請者は十分認識しておって、そしてもらった金でもって、この際に村の木造の橋を石造にしようというようなことを考えておりますれば、それは不正な手段である。しかし不正な手段というのは、これは凡百の例があるわけでございまして、これを具体的に答えろと申されますと、これはいくら私が引例をいたしましても、尽きないわけでございますから、そういうことを意味するのだということで御了解願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/150
-
151・井手以誠
○井手委員 その改良工事の点が問題なんです。会計検査院でもあなたの方でも指摘なさっておるのは、その改良工事です。しかしその改良工事は、ある程度認められておるはずであります。それは農地の災害復旧についても、あるいは公共土木事業の復旧についてもあるはずであります。十全の効用をなさないような場合には、若干の改良工事は認められておるはずであります。地元では、このくらいしなくては、またさいの川原の石子積みと同じでまたやられるから、ここまでは改良工事をやらなければ真の復旧工事にならない、十全の効用をなさないということで工事を増して申請をする、それは認められておるわけであります。ところがあなたの方は、改良工事を水増し工事であるといってびしびし切られておる。それが不正の工事でしょうか。真に血税をもって災害の復旧をやろうという場合に、また次々の水害によって復旧しなくちゃならないような場合には、再びそういうことが起らないような、災害防除を含めた工事こそ、私は必要な場合もあると思う。その超過工事、改良工事の限界は非常にむずかしいものです。それをあなたは不正な手段というふうにおっしゃった。これは非常に重大だと思う。これを不正な手段というならば、ほとんどのものがひっかかりますよ。ひっかけようと思えばどんどんひっかけられる。頭の下げ方が悪いと思うと、これはどんどんやられる場合が出てくる。それは、あなたの方は非常ににらみがきくかもしれませんけれども、受ける地方はたまったものではございません。これは大事な点でありますから重ねてお尋ねいたしますが、改良工事、超過工事、これは見解の相違であるかもしれぬが、これも不正な手段であるとお考えになっておるか。そういうことであるならば、私は絶対に許しませんよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/151
-
152・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 そういう誤解があると思いましたので、具体的に木造の橋を石造にするということを申し上げたのでありまして、今おっしゃったような、いわば災害復旧の範疇に入るという改良工事を災害復旧工事と認めるべきであるかどうかという、いわば補助制度の実体論についての論議は、私は実際に補助金を交付する立場におりませんので、そうした精細な御討論に答える資格はないのでありますが、私が申し上げましたのは、もしかりに補助金の交付の条件として、災害復旧であるというふうにきまっておりますれば、落ちた木造の橋を石造でするというのは、これはもうはっきりしております。その点もいかぬと井出先生がおっしゃるならば、またお答えいたしますが、私が申し上げたのはそういう意味でありまして、いわば災害復旧の概念の範疇の中に、ほんとうの災害復旧のためには、改良と称せられるべきものの一部分が入るべきものではないかというような非常に微妙な災害復旧の概念規定の問題につきましては、今後の補助制度の運用におきまして御高見を拝承いたしてやっていくことになると思うのでありますが、私はその方の担任者ではありませんので、そうした誤解を避けるために、木造と石造というふうな例について御議論をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/152
-
153・井手以誠
○井手委員 木造を石造にする、それはべらぼうな話ですよ。そういうものはびしびし今の刑法でやり得るわけでしょう。そういうことは偽わりの申請ではありませんか。災害復旧とは原形に復することが主体であり、目的である。しかしそれについて、十全の効用をなさないものは若干の改良工事を加えることになる。しかるに木造の橋を石造にするというようなことは偽わりの申請であり、そういうものはびしびし刑法で取り締ることができると思います。私は刑事局長にお尋ねいたしますが、今お聞き及びの通りでありますので、大体常識で御判断を願いたいと思います。ことに専門家であり権威者の刑事局長は御存じだろうと思いますが、やはり現在の刑法では、そういう木造を石造にした場合に取締りができないのか。それができないからこういうような法律を作ったようなことをおっしゃいましたが、これは明らかに偽わりの申請であると私は考えます。その点について刑事局長の御見解を承わりますと同時に、どうしてもこういう法律を作らなくては補助金の適正化ができないかどうか。閣議においても、行政措置でりっぱにできるという大臣がかなりおられる。こういうような論議のむずかしい、賛否相半ばしたものに対して、法務当局はどのような見解を持っておりますか。どうしても必要であるとお考えになっておりますか。この罰則の規定が果して妥当なものであるかどうか、これでなくては真実の効果が期せられないのか、それらの点についてお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/153
-
154・井本臺吉
○井本政府委員 最初の木造の橋を石造の橋として申請をしたという場合には、非常に不当な復旧工事でありますし、客観的にも妥当でないと思いますので、その補助金が交付された経過を調べますれば、現在の刑法でもあるいは詐欺罪が成立する場合もあるかと思いますが、先ほど申しましたように、必ずさような補助金の交付の際には、交付した役人側にもある程度の了解を得てさような金をもらったということがよく弁解に出ますし、そのようなことがある程度うかがえるようなことも多いのでありまして、詐欺罪として処分することがなかなか実際問題としては簡単ではないのであります。
それから、さような法律がなければ補助金の適正化が期せられないかというお尋ねでありますが、私ども取締りの立場から申し上げてはなはだ恐縮でありますが、今までの事例をずっと見て参りまして、補助金の詐欺などに関する裁判例がございますが、われわれの方に集まっております事案では、これが全部非常に軽く処分されておりまして、補助金の関係で現在確定しておりますもので、私ども報告を受けておりますのは五件ございますが、全部執行猶予になっております。その他十数件今裁判係属中でありますが、これも中には相当どうかと思うものもありますが、実際の関係からいいますと、金が個人のふところに入らずに、村とか法人の一般のふところに入ったというような関係で、どうも処分する方の側の元気が出ないといいますか、とかく軽視しがちでありまして、この起訴された以外に、相当数が起訴猶予処分でうやむやにお茶を濁しておるというような実情に私どもの方ではなっております。従って補助金に不正があるから、あるいは不妥当な補助金が交付されたから、全部処置してしまおうというような大それた考えはございません。先ほど申し上げましたような詐欺罪に当るような事件でも、容易に処置できない事案が相当ありますので、そのようなことによって、一般の方々の、補助金についてば軽々しく請求をして、役人などとなれ合って多額な補助金をもらってはいけないのだということについてお考えいただくと同時に、取締りの方でも、相当処分しなければならない。しかも今度新しい法律によってある程度取締りの方の便宜をはかってもらえることになりますから、さような法律が出れば、私どもとしては、全般的に相当効果を上げ得るというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/154
-
155・井手以誠
○井手委員 効果を上げ得るという結論でございましたけれども、結局査定を受けたからとか申しますと、同じことじゃございませんでしょうか。もし法ができたから効果が上るというなら、それはおどしじゃないですか。先刻も申しましたけれども、今までは、あるいはこの法律のようなものが必要であったかもしれない。山口県佐波郡のああいう事件については、必要であったかもしれません。しかし最近は、百万円の復旧費が必要なものを、八十万円、七十万円と、実情に反して、財政その他の都合によって減らされておるのが実情でございます。そういうときに、こういうふうにおどしをかけるような、懲役にやるような規定を設けて、ほんとうの政策が成り立つものかどうか。これは議論になりますから多くは申し上げません。私はこの二十九条の処罰では、この立法目的が達せられない、一方的だと考えます。
そこで質問を若干変えますが、血税を出すのには適正でなくてはならぬ、公正でなくてはならぬことは申すまでもございません。ここに訓示的な規定を掲げなくても当然のことなんです。それでは、この地方公共団体に対しては非常にきびしく取り締られますが、融資その他の関係はどうなりますか。政府が出資したような場合、直接ではないにいたしましても、ここにいう間接補助金に類する融資——利子補給についてはここに書いてありますが、融資についてはどのようにお考えであるか。あの造船疑獄などを考えて参りますならば、やはり同等に、あるいはそれ以上に私は考えねばならぬ問題だと思うのであります。片一方は予算に組んだ補助金である、これの方が重いとお考えになるかもしれませんけれども、しかし開発銀行にいたしましても、何の銀行にいたしましても、政府が出資したものであれば、あるいは財政投融資であるならば同じことだと考えております。その融資についてもこの法律が適用されるのかどうか。私は先刻私企業についても適用されることも聞きましたし、法人云々のこともございますので、多分かかるのだろうと思いますが、政府の説明によりますと、私企業については何ら触れておられません。ただ二重申請があるとか、あるいは不正工事があるということばかり強調されている。まず大蔵当局にお尋ねいたしたいのは、融資などについての監督はいかになさるおつもりであるか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/155
-
156・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 融資についてはどうなるかという御質問でございます。国の支出いたしますすべての金が、国民の血税その他の貴重な財源であることはもちろんでございまして、その中で三分の一を占めるとはいえ、まず補助金だけを取り上げるということは、それではほかのいわゆるパブリック・ファンドはその使途がどうなってもいいのかとすぐ反問されるのは、ごもっともでございます。われわれといたしましても、決して金の価値に高低をつけておるわけではございません。ただ補助金というものが、この法律にも書いてございますように、反対給付のない給付金だということで、もらった方はその後何らの債務を交付者たる国の側に対して負わないという点で、今までにいろいろその執行の不適正なることについて云々されてきたという沿革から、まず、補助金を取り上げただけでございます。そこでわれわれといたしましては、今後におきましても、たとえば融資——融資と申しますのは、これは貸付契約に基いて貸し付けるわけでございますから、あとからこれを返還するという反対債務を相手は負うわけでございます。そこで国といたしましては、そうした発生しましたものの返還を要求する。いわば債権をどういうふうにうまく管理して、その貸付金から当然入るべき果実を収受し、かつまた返還させるかという問題を考えねばならぬわけでございまして、われわれといたしましては、約一年ばかり前からそうした債権管理に関します法案の審議を続けて参りました。おそらくは今度の通常国会ころには債権管理法案——仮称でございますが、そういう形で、債権についての管理の適正を期する法案も出ることになるであろうと思うわけでございます。こうした債権管理機構が確定いたしますれば、それによって現在やっております投融資による国の資金の適正な使用ということもなされるのではないかと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/156
-
157・井手以誠
○井手委員 それでは、この法律案は私企業については適用はないのでございますか。今まではあるように承わっておりましたが、この利子補給その他についても、地方公共団体あるいはこれに準ずるものであって、私企業ではないようなお話しもございましたが、どちらが正しいのですか。この法律は私企業にも適用されるかどうか、その点もお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/157
-
158・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 私ちょっと誤解いたしておりまして失礼いたしました。これはもちろん私企業に適用になります。たとえば造船疑獄のごとき場合は、融資と申すよりは、国といたしましては、安い利子の金という意味におきまして、利子補給をいたしておるわけでございますから、いわゆる造船疑獄における船主というのは、この二条の四項の二号の間接補助事業者、あるいは間接補助金を受ける者になるわけでございます。ただこれは利子という面から見ておりますから、その受ける利子に対しては、何らの反対債務を負うわけじゃございませんので、これは補助金と同じように取り扱っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/158
-
159・井手以誠
○井手委員 それではほかのものは犠牲にして、安い利子で多額の金を融通したいわゆる融資というものについては、全然関係がないと思いますが、それはそれでもよろしゅうございます。今お聞きしたのは、別に考えておるとおっしゃいますが、むしろ必要とするのはその方面じゃございませんか。あの造船疑獄から考えましても、膨大な金額が、片方は個人じゃなくて、地方のためであると思って、ある場合には間違った申請もあるでしょう。悪いものはどんな処分をしてもいいのです。その点は私は誤解のないように申し上げておきますが、片方の自分が利益する、自分のふところに入るものに対しては、むしろそういう方を先にこういう法律を作るべきじゃございませんか。逆ではございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/159
-
160・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 たとえば造船疑獄の問題につきましては、開発銀行及び一般の金融機関から船主が金を借りまして、船を作るわけでございます。その場合に国の立場といたしましては、開銀は開銀で通常の金利水準で貸す、金融機関は金融機関で通常の金利水準で貸す、その通常の金利水準を特に低めるために、国が利子補給金をやっておるわけでございます。この国の利子補給金に対しましては、反対給付と申しますか、ここでいう補助金と同じ性質の反対給付を受けない給付金であるということで適用になっておるわけでございます。今おっしゃいましたように、国が直接に非常に安い金利で金を貸すという場合、これはもちろん金を貸すという面におきましては、その貸した金を返してもらうという反対給付がくっついておるわけでございまして、それは決してやり切りになっておるわけじゃございません。それで、従来もそういうものについてはどうかという御説があるわけでございましょうけれども、先ほどから申し上げましたように、何らわれわれの方といたしましては、どちらに高低があるというわけでございませんで、国の出します金は、いかなる使途にも同じ価値であると思っておりますが、従来補助金に関しましては非常に問題がありまして、御存じのごとく第十七国会におきましては、参議院の予算委員会で全会一致でもって、こうした補助金の執行の適正に関する何らかの法律を出さなければ予算の審議をしないというふうな御説がございまして、そういう沿革から、まずこの補助金の適正化の法案が生まれてきたということでございます。従ってこの三千億の補助金以外にも、国の重要な支出でありまして、しかもその貴重な財源たることが忘れられるような執行の行われます可能性のある使途につきましては、今後といえどもわれわれは努力いたしまして、一兆円といいますか、財政のすべてが最も適正にその資金効率を上げて使われるように処置したい、こう考えるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/160
-
161・井手以誠
○井手委員 どうも参議院の決議があったからこういう法律を出したというのはけしからぬ。この法律を出せとは、おそらく参議院は決議しなかったはずであります。結論は、適当な処置をとれというのが参議院の趣旨でしょう。何かすべて国会の責任のようにおっしゃるのは私は解せないと思う。国会の意思はむしろ——全部は聞いておりませんけれども、多くの人々は、片手落ちじゃないかという批判が非常に強いのであります。それでは伺いますが、現在予想されておる——私企業も含まっておりまするならば、どういうものが大体利子補給その他に該当するものでございますか、対象はどういうものでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/161
-
162・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 これは非常にたくさんございまして、たとえば私企業といたしましては、典型的なものは石油の試掘に対する補助金だとか、あるいは発明工業化実施のための補助金だとか、いろいろ民間の会社等に出ておる補助金がたくさんございます。一々ここで申し上げまするのは煩にたえませんが、そうしたことがすべてこの適用対象になろう、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/162
-
163・井手以誠
○井手委員 そういう方面のいわゆる刑事罰に、至るまでの監査その他はどういうふうになさるのであるか、参考までに承わっておきたいと存じます。目的以外に使用されたような場合にどういうふうにお考えになっているか。目的以外に使用されるということについては、私は特に考えなければならぬ点が多かろうと思うんです。効果が上ればいいということではない。そういうこともありましょうけれども、一定の目的に使用されるものもかなりあると思うんですが、そういう場合はどういうふうに監査なさるおつもりであるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/163
-
164・村上孝太郎
○村上(孝)政府委員 この法案には、いろいろ補助金をもらってやります事業に対して、その後も絶えず交付官庁が接触を保ちまして、適正に使われるかどうかをよく見ろという規定がございます。たとえば十二条の状況報告の規定によりまして、補助事業者がもらった補助金をどういうふうに使っておるかということの報告を受けられるようになっておりますし、また十四条で、実績の報告を受けることもできるようになっております。そうしてこうした報告を受けるばかりではなくて、現実にその補助事業者がどうやっておるかということを現地において調べることができますように、第二十三条におきまして、補助事業者もしくは間接補助事業者等に対して特別に報告をさせたり、または当該職員にその事務所、事業場等に立ち入って帳簿書類その他の物件を検査させる、もしくは関係の者に質問させることができるようになっております。またこの補助金を交付しました相手方に対しましては、会計検査院の検査ということも行われるのでありますけれども、これらのいろいろな接触から、実際に与えました補助金というものが私企業においていかに適正に使われておるかというような状況判断もできるのではなかろうか、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/164
-
165・井手以誠
○井手委員 ちょっと時間もたちましたので、あとは根本問題の大臣についての質問は留保しておきたいと思います。
そこで最後に、せっかくお見えになっておりますから、刑事局長にお尋ねいたします。不正の申告、偽わりの申請に対して処罰するのが今までの論議でしたけれども、実情に反して、地方がいろいろと熱望したにもかかわらず、たとえば災害復旧のごとく、百万円要るものを八十万円に査定された場合の行為はどんなふうになりましょうか。一方は罰せられますが、こういう場合は国家の方はどうなりましょうか。その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/165
-
166・井本臺吉
○井本政府委員 予算の都合で百万円要るものを八十万円に査定を受けたということになりますれば、これは金がないのでありますから、やむを得ない、別に犯罪にはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/166
-
167・井手以誠
○井手委員 法律には、原形に復旧するのが建前で、改良工事を若干認められている場合に、財政の都合というものは、百やる工事の中で、あるいは三、五、二という標準で三カ年で復旧するという場合に、これを延ばす、ことしは百やる予定のものを五十にしておこう、こういう場合があると思う。これは私らもわかる、そうしなければならぬけれども、実際やってみるとそう理屈通りにいかないことはよく承知しておりますが、一つの百万円要る工事でどうしても百万円なくてはできませんというものを、また現地の査定官もそう思っているのを、上の方で、いやそれは八十万円で切れとか、七十万円で切れとか、そういう結果になった場合にはどうなるかということをお尋ねいたしておるのであります。財政の都合じゃなく、無理な査定をした場合に責任はどうなるのですか。これは何も問う必要はないのでございましょうか。刑事局長さんは、災害などについてはあまり御関係はないでしょうから、おわかりにくいでしょうけれども、百万円かけなくては橋の災害が復旧できない——現在では建設省が査定する、大省と交渉してもなかなかうまくいかない、結局中央でも縮められて、末端に行く時分には実際の工事費に満たない場合が多いのであります。そういう場合にはどうなります。財政の都合というわけにはいかぬと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/167
-
168・井本臺吉
○井本政府委員 それは、要求する方の側と査定する方の側の見解の相違ということだけの問題で、犯罪の成立ということはないと私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/168
-
169・井手以誠
○井手委員 刑事局長は、実際にはおわかりにならぬだろうと思いますから、私はこの点は追及はいたしません。なお明日大臣のお見えになったときに、根本問題に関してただしたいと思います。留保したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/169
-
170・石村英雄
○石村委員 刑事局長にお尋ねいたしますが、先ほど法規課長の御答弁がありましたが、法規課長の方か刑事局長の方かにお尋ねいたしますが、造船疑獄のリベートのような問題ですが、これはもちろん資金の融通を受ける間接補助事業として、この法律の適用を受けるのですが、十億の船を注文して、実際はその船は九億しかかからないというので、これは仮定ですが、一億リベートを船会社が造船会社からもらったという場合には、これは法律で二十九条か三十条かどちらか知りませんが、どちらかで処罰されるものか、処罰されるとすれば、二十九条か三十条がどちらか御答弁願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/170
-
171・井本臺吉
○井本政府委員 その船会社がリベートを受け取ったという場合に、この法律と直接関係はありませんが、先般の造船疑獄の際にも、例の商法の特別背任でやっておったわけでございます。従って一億円のリベートを受け取ったという点につきましては、この法律の直接の対象にはならないと考えますが、その一億円の利子補給に相当する金につきましては、この法律の三十条の規定の適用がある場合もあると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/171
-
172・石村英雄
○石村委員 大体わかりました。つまり一億に対する利子額をもらったという点で処罰を受ける、こういう意味なんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/172
-
173・井本臺吉
○井本政府委員 私ちょっと誤解しておりましたので訂正いたします。補給された利子は金融機関に帰属いたしますが、さような特定な用途に使うべく利子補給を受けた金を、造船に使わずにほかに使ったという点において、三十条の問題が起きるというように私は考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/173
-
174・石村英雄
○石村委員 つまりリベートという形で他に使ってしまったという意味だと思いますが、そうなんですか。リベートを受けて、その金を赤坂に使ったとか、ほかに使ったとか、一億円のリベートを受けて他の事業に使ったという解釈で三十条の規定の適用を受ける、こう解釈してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/174
-
175・井本臺吉
○井本政府委員 私はさように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/175
-
176・石村英雄
○石村委員 いま一つお尋ねします。リベートを受けない、しかし価格は非常に不当だということを船会社が知っていながら、政府が金利を安くして出してくれるのだから、かりに船会社をもうけさしてやろうということでやった場合、この条文の適用は全然受けないということになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/176
-
177・井本臺吉
○井本政府委員 船会社がさような融資を受けたところで、不当な補助金の裏づけのある融資を受けるという点で問題になると私は考えます。なお、造船会社に不当に高い価格で船を注文したということになりますれば、その船会社の社長なりあるいは取締役なりに、商法の特別背任罪の規定の適用がある場合があると存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/177
-
178・石村英雄
○石村委員 そうすると、この法の適用は全然受けない、こういうように確認してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/178
-
179・井本臺吉
○井本政府委員 融資を受けたところで問題があればあるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/179
-
180・松原喜之次
○松原委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十九日午前十時より開会することといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後四時四十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102204629X04019550728/180
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。