1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十年六月十六日(木曜日)
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議事日程 第二十八号
昭和三十年六月十六日
午後一時開議
一 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
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第一 積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙
第二 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙
第三 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第四 日本住宅公団法案(内閣提出)
第五 住宅融資保険法案(内閣提出)
第六 公営住宅法第六条第三項の規定に基き、承認を求めるの件
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●本日の会議に付した案件
議員請暇の件
日程第一 積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙
日程第二 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙
日程第三 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第四 日本住宅公団法案(内閣提出)
日程第五 住宅融資保険法案(内閣提出)
日程第六 公営住宅法第六条第三項の規定に基き、承認を求めるの件
午後二時開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。議員松本七郎君から、欧州各国における政治経済状況調査視察のため、来たる二十日から本会期中請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/2
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003・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって許可するに決しました。
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第一 積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第一、積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/4
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005・長谷川四郎
○長谷川四郎君 積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員の選挙については、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/5
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/6
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007・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
議長は、積雪寒冷単作地帯振興対策審議会委員に
松浦 東介君 田中 彰治君
奧村又十郎君 石山 權作君
中居英太郎君を指名いたします。
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第二 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/7
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第二、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙を行います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/8
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009・長谷川四郎
○長谷川四郎君 湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員の選挙については、その手続を省略して、議長において指名せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/10
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011・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
議長は、湿田単作地域農業改良促進対策審議会委員に
山村新治郎君 小枝 一雄君
青木 正君 小川 豊明君
吉川 兼光君を指名いたします。
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第三 在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第三、在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長植原悦二郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/12
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013・植原悦二郎
○植原悦二郎君 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置を定める法律等の一部を改正する法律案につきまして、外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この法案は、在外公館の増設、昇格及び廃止並びにこれらの在外公館に勤務する外務公務員の在勤俸の額の設定等のために、在外公館の名称及び位置を定める法律、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律並びに外務省設置法等の一部を改正する法律の三法律の一部を改正するものでありまして、その要旨は、第一に、わが国はヴェトナム、カンボジア、セイロン及びイランに公使館を設置しておりますが、これを相互に至急大使館に昇格せしめることにつき、本年二月相手国との合意が成立しましたので、在外公館の種類の変更に関する政令をもってこれらの昇格を実現せしめたのでありますが、今般これらの四大使館を法律上正式に大使館にしようとするものであります。
第二に、在ラオス日本国公使館は、法律上はすでに設置されておりますが、実際には設置されておりませんので、今般先方から大使交換の申し出があり、わが方としても、ヴェトナム及びカンボジアの両国と大使を交換しており、アジア地域重視の見地からも、この際大使館に昇格せしめようとするものであります。
第三点は、最近スイスに各種の国際機関が設置せられ、かつ種々の国際会議が同国において開催される等、在スイス公使館の使命がますます重大となり、米英仏伊加等の諸大国が大使を置いておる現状にかんがみ、これを大使館に昇格せしめようとするものであります。
第四は、在アフガニスタン日本国公使館は、法律上は設置されていますが、予算措置が伴わなかったため、及び、かねてから先方が大使派遣を希望してきたものの、隣国イランに公使を派遣していた関係上、実際上の開設は今日まで見送ってきたのでありますが、今般イラン公使館の大使館昇格も実現しますので、これを大使館に昇格しようとするものであります。
第五は、イスラエルとの外交関係開始につきましては、先方の熱心な要望にこたえ、昨年夏在外公館増置令をもって在イスラエル日本国公使館を在トルコ大使兼轄といたして設置したのでありますが、今般同公使館を法律上正式に設置しようとするものであります。
第六に、グァテマラ及びニカラグァとの国交回復に伴い、彼我の通商貿易関係の緊密化のためにも、また国連その他の各種国際機関等においてわが国に対する支持を獲得するためにも、この際わが公使館を新設し、在メキシコ大使の兼轄にしようとするものであります。
第七に、エチオピアとわが国とは戦前から親善関係があり、また通商貿易の拡大のためにも、この際わが公使館を新設しようとするものであります。
第八に、ベルリンは、その国際政治上の重要性にかんがみ、総領事館を新設しようとするものであります。
第九に、カサブランカは西アフリカにおける重要都市であり、同地方におけるわが貿易市場の拡大のために領事館を新設しようとするものであります。
第十に、在ラングーン日本国大使館は昨年十二月から大使館としての職務を行なっているので、従来の在ラングーン総領事館は廃止しようとするものであります。
この法案は、右に述べました在外公館の開廃及び昇格に伴う関係法律の改廃を行うものであります。
本法律案は、五月十六日内閣から国会に提出、同日本委員会に付託されましたので、五月十八日から六月十五日まで六回にわたり会議を開き、慎重に審議を重ねました。まず政府当局の説明を聞き、質疑応答が行われました。そのうちおもなる点をあげますれば、まず、委員から、本法案において多数の大使館を早急に設置することは、わが国が再建途上にあり、かつ外貨事情も必ずしも有利でない今日、考慮すべきではないかとの質問がありましたが、政府当局側は、これは一応もっともであるが、諸外国特に英米その他ドイツ等の例によるも決して多きに過ぎるものでなく、予算上の関係においては、兼轄制度その他によって、でき得る限りの節約をはかっているとの答弁があり、また、委員から、大使館の昇格を政令をもって行うのは国会を軽視するものではないかとの質問に対して、政府側としては、大使の交換はいずれも相手国からの早急実現の熱望があり、やむを得ず、制度上許されておる政令をもって一応昇格し、ここに国会の承認を求めた次第であるが、今後はなるべく政令をもってせず法律をもっていたす所存であるとの答弁がありました。
次に、討論に入り、日本民主党大橋忠一君から、同党を代表して次の附帯決議の動議が提出され、その決議を付して本案に賛成の意を表せられました。その附帯決議案は次の通りであります。
附帯決議案
一、大使の階級を多くし大使の任命につき任地の実情に応じ少壮者をも任命し得る制度を確立すること。
二、大公使は格式若くは情実による老朽無能者を排し任地の需要に適う役に立つ人材を任命すること。
三、在外公館の固定経費、人件費を節約し流動経費を増額して館の効率を挙げること。
四、名誉領事制度並に兼轄制度を拡充し重要ならざる正式公館を整理すること。
五、公正なる立場の査察使による査察を厳重にすること。
六、在外公館の種類を変更するには、特に緊急の必要ある場合を除き、政令によらずして法律により之を行うこと。
続いて自由党北澤直吉君、日本社会党森島守人君及び日本社会党松本七郎君から、それぞれの党を代表して、附帯決議を付して本法律案に賛成の意を表明せられましたが、これらの詳細につきましては委員会議録により御了承を願います。
かくて、採決の結果、本法律案並びに附帯決議案は、いずれも全会一致をもって可決せられました。
以上、御報告申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/13
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014・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/14
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015・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
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第四 日本住宅公団法案(内閣提出)
第五 住宅融資保険法案(内閣提出)
第六 公営住宅法第六条第三項の規定に基き、承認を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第四、日本住宅公団法案、日程第五、住宅融資保険法案、日程第六、公営住宅法第六条第三項の規定に基き、承認を求めるの件、右三件を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。建設委員長内海安吉君。
〔内海安吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/16
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017・内海安吉
○内海安吉君 ただいま議題となりました日本住宅公団法案、住宅融資保険法案、公営住宅法第六条第三項の規定に基き、承認を求めるの件、以上三案件につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
初めに、日本住宅公団法案について申し上げます。
まず、提案の理由及び法案の要旨は、去る六月二日の本会議におきまして建設大臣より詳細なる御説明がありましたので、省略いたします。
本法案は五月二十日本委員会に付託されたのでありますが、今回政府より提出されております法案の中でも重要施策に関係の深い法案であるという観点から、委員会におきましても連日慎重に審議されたのであります。
その際問題となりました点は、主として公団設立の是非を中心とする基本的な問題であります。そのおもなものについて申し上げますと、第一には、ことさら公団の新設をすることなく現行の公営住宅並びに住宅金融公庫の機能を拡充強化すれば十分ではないかとの質問に対しましては、行政区域を越えた住宅供給、強力な宅地造成、民間資金の導入等を容易ならしめるためには、公団設立がぜひとも必要であるとの答弁がありました。第二は宅地造成の具体策についてでありますが、これに対しましては、本年度約百万坪の宅地造成を計画しており、その方法としては、国有地の払い下げ、民有地の買い上げ等により大体の見通しがついているとの答弁でありました。第三は、本年度公団住宅二万戸の建設計画は果して実現可能であるかどうかという点でありますが、これに対しましては、従来の経験にかんがみ、資金的裏づけと土地の準備ができているので、十分の自信があるとの答弁がありました。なお、詳細は速記録に譲ることといたします。
かくて、討論に入り、日本民主党を代表して廣瀬正雄君、自由党を代表して瀬戸山三男君より、それぞれ本法案に対する賛成の意見が述べられ、また、日本社会党を代表して西村力弥君、日本社会党を代表して中島巖君、労働者農民党を代表して石野久男君よりそれぞれ反対意見が述べられ、採決を行なった結果、多段をもって本法案は可決すべきものと決定した次第であります。
続いて、瀬戸山三男君より次のような附帯決議案が提案され、採決の結果、多数をもって本法案の附帯決議とすべきものと決定いたしました。附帯決議の内容は次の通りであります。
附帯決議
一、今年度四十二万戸の住宅建設政策は、或は増改築を建設戸数に加算し或は六坪住宅を設計し、或は充分の措置なく民間自力建設二十四万五千戸を予定し、或は住宅金融公庫の融資率を引下げる等幾多懸念せらるる点が多いので政府はその実施に当っては格段の工夫と努力を払うこと。
二、政府は公団住宅の建設を数箇所の大都市のみに限定せず広く全国の要望ある都市にこれを建設すること。
三、政府は公団住宅の家賃をなるべく低廉ならしめるよう考慮すること。
四、政府は住宅金融公庫の融資率の引下げ及び小住宅(六坪等)の建設を今年度限りとすること。
次に、住宅融資保険法案について申し上げます。
まず、本法案の提案の理由及びその内容について申し上げますと、住宅建設に対する民間資金の融通を円滑にするため、金融機関が住宅建設資金を融通した場合、その貸付金に対し保険制度を新設せんとするものであります。すなわち、第一に、保険を行う機関は住宅金融公庫とし、公庫は金融機関を相手方とし、その金融機関が住宅建設等に必要な資金を貸し付けたことを公庫に通知することによって、金融機関の貸付金の額が一定の金額に達するまで、その貸付について保険関係が成立する旨の契約を締結することができること。第二に、保険関係が成立する貸付は、住宅の新築、増改築及び宅地等の取得並びに造成に必要な貸付で、貸付期限が六カ月以上のものであること。第三に、保険料の額は、保険金額に年百分の三以内で政令で定める率を乗じて得た額以内とすること等であります。
本法案は、去る五月二十三日本委員会に付託されて以来、数回にわたり審査いたしたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることといたします。
かくて、討論採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。
最後に、公営住宅法第六条第三項の規定に基き、承認を求めるの件について申し上げます。
本件は、公営住宅法第六条の規定に基き、昭和二十七年度以降毎三カ年をおのおの一期として公営住宅建設三カ年計画を作成し、その計画の大綱につき国会の承認を求めることになっておりますので、今回その第二期分として提案されたものであります。本計画は、さきに住宅対策審議会の意見を聞き、その答申に基いて、昭和三十年度より昭和三十二年度までの三カ年間に第一種公営住宅十万戸、第二種公営住宅五万五千戸、合計十五万五千戸を建設しようとするものであります。
本件は、去る五月二十三日本委員会に付託せられて以来、数回にわたり会議を開き、慎重に審査されました。問題になりました点は、住宅対策を大きく取り上げている現政府において、本計画が何ゆえに第一期の十八万戸建設計画を下回る十五万五千戸に減少された、かということでありました。これに対しましては、三十年度の五万戸を基本として、国の経済計画に上る国民所得の漸増等を考慮して本計画を樹立したのであり、従来の公営住宅の中で中層アパートの分を公団に移しているので、実質的には第一期計画に劣らないものである旨の答弁がありました。
かくて、討論、採決の結果、全会一致をもって原案の通り承認すべきものと決定した次第であります。
以上をもって三案件についての御報告を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。小松幹君。
〔小松幹君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/18
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019・小松幹
○小松幹君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました日本住宅公団法について、以下二、三の意見を述べて反対いたすものであります。
もちろん、われわれといたしましても、国民の渇望する住宅建設に対し、熾烈なる熱意こそ持て、それについて何らの反対をいたすものでもございません。しかしながら、政府が提案している日本住宅公団法は、わずかな民間資本導入のために新たな公団組織を設け、いたずらに重複する住宅建設機構を作り、しかも、結果として四千円以上の高い家賃と、狭い十二坪住宅を建設しようとする計画であるがゆえに、反対いたすものでございます。(拍手)
現在、住宅建設は公営住宅、公庫住宅、勤務者住宅、さらに公務員住宅、入植者住宅、厚生年金利用の住宅等に分れ、まことに複雑多岐でございますが、この上さらに公団住宅を加える必要が果してあるでございましょうか。しかも、わずか二万戸の住宅建設のために、何もわざわざ公団組織まで新たに設ける必要はないのであります。政府は、この住宅公団の新設によって選挙の一枚看板であった住宅政策を補い、さももっともらしく宣伝相務めておりますが、これこそは選挙公約の四十二万戸住宅建設のふろしきの大きかったことを補正する意味での新設公団であり、立法措置によって国民の批判の目を避けるていのものであるのであります。(拍手)
民間資本の導入、宅地の造成ということによって一応設立の申しわけはいたしておりますが、これらのことは、従来の産労住宅なりあるいは公庫業務の拡大活用によってできることでありまして、公団設立の絶対要件ではあり得ないのであります。このことは極言すれば、政府は一般賃貸し住宅資金に必要なわずか七億九千万円の資金を民間より受け入れるために住宅公団を設立しようとしておるにすぎないのでございます。このことこそ、政府の住宅政策の貧困を示し、政府投資の僅少、’住宅建設のから宣伝を如実に示しておるものであると思います。(拍手)
しかしながら、その二万戸の建設住宅が真に大衆の望む低家賃の住宅であり、零細なる家なき勤労者の住宅に分譲され得るていの安価なものであるならば、公団新設もまた何をか言わんやでございます。しかし、現在見込まれておる四千円以上の高家賃の計算では、大衆のための住宅建設であるとは言いがたいのであります。いたずらに高ねの花を思わしめる高級耐火住宅であります。すでに、公団住宅は、その発足の当初において、国民大衆より遊離した設計によって設置されようとしておるところに、最大の欠陥を見出すのであります。政府が住宅建設に注ぎ込む熱意は、組織や機構を作ることではありません。投下資金の増加をはかり、宅地、家屋の造成を至急にやることであると存じます。
さきに、鳩山首相は、防衛分担金を減額しても住宅を建設すると公言いたしました。また、一萬田大蔵大臣も、昨年十二月十二日の日本経済新聞社の座談会で、庶民住宅は防衛費という観念でやると言われております。その選挙前の宣伝的熱意は了解いたしますが、かりにも国土を住宅建設によって防衛しようとする御熱意がおありになるならば、何がゆえに、わずかな一般住宅資金七億九千万円ないし四十四億の産労住宅を民間資本に転嫁せず、政府みずからの財政投資の増加によって公営住宅の飛躍的増築をはからなかったかと言いたいのであります。(拍手)結局、政府は、防衛分担金を減額し得なかった公約不履行の肩がわりに公団を設け、資金不足を民間に求め、責任を転嫁しようとしているにすぎないのであります。
政府は、また、住宅公団設立の事由の中に、東京都等の公営住宅建設の不振をあげ、その打開のために公団を行政区画を越えて新設したいと言っておりますが、公営住宅不振の原因は、政府資金の少額に加え、地方自治団体の住宅建設起債のワクの増加がなされず、しかも時期をはずれたための資金不足が原因であって、このことの積極的解決がなされるならば、何も公団を作って公団住宅に切りかえる必要はないのであります。政府は地方自治団体の住宅資金対策を何ら考慮もせずして、公営住宅にかわるに公団住宅を持ち出したことは、本末転倒もはなはだしいと言わなければならないのであります。(拍手)
国民が現在一番望んでいるものは家賃の低い公営の住宅であり、家賃の高い公団住宅ではないのであります。民間資本を入れる公団住宅が高価な家賃となることは当然であるのであります。しかも、政府は、公団住宅のうち一万戸は勤労者の住宅であって、産業労働者のためのものであると説明しておりますが、月々一万円以上になる頭金の高い分譲契約等のことが果して勤労者のあがない得る分譲住宅であるかということは、多分に疑問があるのであります。(拍手)半面、分譲に当って悪質なる産業資本家の好餌となることも考えられるのであります。公団分譲住宅は、従来の公庫産業労働者住宅より見通しが不明確であり、建設分譲にも問題があると思われるのみならず、結果として産業資本家の住宅建設の積極性を弱め、産労住宅の複雑性を増すのみであって住宅建設のために何ら前進する意味のものではありません。
次に、住宅公団という法人組織がいかなる経済的な立場を持っておるか、性格は不鮮明であります。ただ民間資本を導入するというだけで、営利法人か公益法人か不明であります。家を建てて管理するのみで、建設大臣の言葉を借りればサービスの団体であるようにも解釈されます。しかしながら、資本主義社会において、民間資本の投資が無計画に行われ、資本の利潤を考えないで公益奉仕するとも考えられないのであります。民間資本はあくまでも営利を追求すると思わねばなりません。今後政府がこの公団資本の利潤を擁護してやらない限り、民間資本の利潤は住宅家賃に倍加され、その利用者に負荷されることは必定であります。
日本の政治家や日本の政府は、何か財政的に行き詰まったり経営に困難を生すると、公社を作ったり公団を新設したりして、その責任を転嫁するならわしがあるようでございます。(拍手)そのことが政治として必ずしもよい結果をもたらしていないこともまた事実でございます。かつての食糧営団、住宅営団等、その公益性のゆえに民間の官僚化となり、民間資本が公益という仮面のもとに利潤をむさぼり、逆に国家資本が民間に悪用され、不明瞭なる公団運営となって当初の目的を満足されなかった例も幾多あるのでございます。また、現実においても、多く設立されている国鉄公社等のごとき何々公社も、その公益性のために、政府資金に泣きつくか、あるいは運賃値上げに利潤の場を求めるかしなければ、経済的に自立し得ない赤字団体となってしまう例もあるわけであります。今この住宅建設という限られた数年間の一時的組織の住宅公団が営利団体でもないとするならば、投下された民間資本の利潤は今後どのようになるでありましょうか。また、将来水ぶくれにふくれる公団組織はいかに運営していくかが問題でもあります。公団によって建設された住宅に一切負荷され、寄生虫的な存在となることは必定であります。数年の後の住宅のガンは住宅公団運営であることも予想されるのであります。
以上のことからして、一時的に公団組織を作るよりも、従来の公営、公庫住宅建設を強力に推し進めることが住宅対策として最上の策であると考えるのであります。
なお、私は最後に一言申し上げたいのでありますが、この公団組織による住宅建設は都市中心であり、農村住宅、開拓住宅、漁村住宅のための努力が何ら払われていないことを率直に感ずるのであります。(拍手)国家資本の投入の均衡をはかること、農村にも文化の恩恵、住宅の建設をもたらすために、従来の公営、公庫住宅建設を強力に拡大推進し、さらに国設住宅の全面実現まで企図していくことが、現在零細なる国民の多い日本の歩むべき道ではないかと私は存じます。
よって、こそくな、発展性のない、今次政府が提案しておる日本住宅公団の設立に反対し、本法案の撤回を求めるものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 中島巖君。
〔中島巖君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/20
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021・中島巖
○中島巖君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっている日本住宅公団法案に反対するものであります。
鳩山民主党内閣は、選挙の際、住宅四十二万戸建設を公約したのでありまして、内政問題といたしましては最も重要なる政策の一つであります。また、ただいま本会議場において討論、採決せんとする日本住宅公団法案は、鳩山内閣の住宅政策のその根幹をなすものであります。鳩山内閣の住宅政策全般が当面せる住宅困窮者と縁遠いものであり、その実質において昨年度の自由党吉田内閣にすらはるかに劣っていると断言せざるを得ないのであります。およそ、住宅政策策定に当っては、住宅困窮度の最も高い階層はいかなる階層であるかの点を把握し、しかる後に、これを基盤として住宅政策を樹立すべきであると思うのであります。しかるに、政府は、これらの基本的な資料は何らなく、建設委員会における答弁にも、大体月収一万二千円ないし二万八千円の低額所得者ならんとのことであり、その数字もつかんでいないのであります。ただいま申し上げましたごとく、住宅政策の基盤たるべき住宅困窮度の高い階層の調査すらなくて計画立案された政府の住宅政策は、選挙公約にとらわれて、ただ単に四十二万戸の数字に合致すればよいという、でたらめの政策であるとしか私は思えないのであります。(拍手)
以下、逐次具体的に政府の住宅政策を批判することにいたしましょう。
まず第一に申し上げねばならないことは、選挙公約の四十二万戸建設についてであります。国民の大多数は、政府みずからの建設もしくは助成融資によって四十二万戸が建設されるものと考えたのであります。しかるに、今国会に提案された内容は、民間自力建設二十四万五千戸を加えたものであって全く国民を愚弄した欺瞞政策であり、公約違反であると言わねばならぬのであります。(拍手)
第二に、政府の建設もしくは助成融資による住宅建設十七万五千戸でありますが、このうち二階などに一室を増設するもの三万戸を計画し、一戸当りの融資七万五千円を予算に計上しているのであります。便所も台所もない一室を一戸として計算することは、全世界で鳩山内閣をもって嚆矢とするものでありましょう。(拍手)
第三に、住宅困窮者の最も要望する公営住宅の建設であります。昨年度、すなわち昭和二十九年度は五万一千九百四十六戸であり、本年度は五万二千四十一戸であります。昨年度と比較してわずかに全国で九十五戸の増加であります。しかるに、その内容は、昨年度が一戸建十五坪ないし八坪であったのでありますが、現政府は、最高十二坪として七坪、六坪を加え、大幅に建坪を削減して、八坪以下六坪までの最も少い坪数の建設二万一千九百戸を計上しているのであります。住宅困窮者の最も多い階層の要望する公営住宅に対する現政府の政策が、昨年度の政策より実質的にははるかに低下していることがはっきりとおわかりだと思うのであります。(拍手)
第四に、住宅金融公庫についてであります。昨年度は四万一千六百戸であり、本年度は七万五千戸となっていますが、この七万五千戸のうちには、先ほど申し上げました増改築分、すなわち便所も台所もない一室を三万戸計上してあるので、これを差し引くと四万五千戸であり、昨年度よりわずかに三千四百戸の増加であります。戸数において七パーセント強の増加でありますが、その内容においては、公営住宅と同様に、融資率を大体において一〇パーセント切り下げを行なっているのであって、実質は昨年度より低下していると見るべきであります。昨年度における金融公庫の実績、すなわち需要供給の状態を見ますと、申込者十四万九千三百九十四人に対し、承認戸数四万一千六百人で、わずかに百人に対して二十七人九分であり、二十八年度においてもほぼ同じような状態にあるのであります。かくのごとく、多数の希望者のある金融公庫の拡充強化をはかるべきであるにかかわらず、逆に融資率を一〇パーセント引き下げているのであって、昨年度の住宅政策よりも劣っていることが、ここでもはっきりと現われているのであります。(拍手)
第五に、今回新たに創設される日本住宅公団法による事業計画であります。事業費百六十六億円を計上し、国有土地三十万坪を現物出資として、住宅二万戸を建設せんとする計画であります。すなわち、一戸当り八十三万円となるのであります。建設後の家賃については、建設委員会の質疑に対して、政府はいまだ正確な答弁をしていないのであります。公団のみに対しての大幅な保護政策も、他との関連もありまして、とることは困難だと考えますときに、公団の家賃は一カ月五、六千円であるということは大よそ想像がつくのであります。以上の点から見て、月収五万円前後の高額所得者を対象としたものと言わねばなりません。ゆえに、この公団法による住宅は、住宅困窮度の最も高い階層、すなわち月収二万円前後の階層に対しては何らの関係もないところの住宅建設であります。
この点が私の日本住宅公団法に反対する第一の理由であります。
住宅公団に対する反対の第二の理由といたしましては、住宅金融公庫の実績は、昭和二十八年度は百五十八億円に対して建設戸数五万三千六百五十戸、二十九年度は百四十二億円に対して建設戸数四万戸、すなわち一戸当り三十二万四千円であります。また、公営住宅について申し上げますれば、昭和二十八年度は百九億八千九百万円に対して五万七千九百四十戸、昭和二十九年度は百二十六億円に対し五万五千五百戸、すなわち一戸当り二十万九千円となっております。以上の計算でおわかりのごとく、日本住宅公団の本年度資金百六十六億を現在の金融公庫に流用すれば、実に五万一千二百戸の住宅建設ができるのであります。また、公営住宅に流用すれば、約四倍の七万九千四百戸の住宅建設ができるのであります。以上の理由によりまして、日本住宅公団の事業資金を公営住宅並びに金融公庫に活用せしめて、住宅に全く困窮している階層に対して三倍ないし四倍の住宅を提供すべきであると思うのであります。
公団法に反対の第三の理由として、公営住宅並びに金融公庫においても申込者百人に対して取得者三人ないし四人という現状において、新しく準官庁機構ともいうべき公団を設置して、一戸当り三倍以上の建設費をかけ、しかも住宅に困窮している階層を締め出し、高額所得者を対象とした日本住宅公団こそ無用の長物であり、その設立に対して強く反対するものであります。(拍手)
以上のごとく、今回政府提出の住宅政策全体、すなわち、公営住宅にしても、住宅金融公庫の活用についても、その実質において、前年度、すなわち吉田内閣の政策にすらはるかに劣っているものと思うのであります。ことに、日本住宅公団法のごとき悪法に対しては絶対反対をするものであります。
なお、過ぐる六月二日、本壇上において二階堂進君が自由党を代表して本法案に対し峻烈なる反対演説をされたとは、われわれの記憶に新たなるところであります。私は、自由党の諸君がわれわれに同調して本法案を否決されることを期待して、反対討論を終るものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/21
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022・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
これより採決に入ります。
まず、日程第四につき採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/22
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023・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
次に、日程第五につき採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/23
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024・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。
次に、日程第六につき採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/24
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025・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本件は委員長報告の通り承認するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/25
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026・長谷川四郎
○長谷川四郎君 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の趣旨説明は延期し、明十七日定刻より本会議を開くこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/26
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027・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/27
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028・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって動議のごとく決しました。
本日はこれにて散会いたします。
午後二時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102205254X02919550616/28
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