1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月二十二日(水曜日)
午後一時四十六分開議
出席委員
委員長 松山 義雄君
理事 今松 治郎君 理事 臼井 莊一君
理事 木村 俊夫君 理事 畠山 鶴吉君
理事 山本 友一君 理事 青野 武一君
理事 中居英太郎君
生田 宏一君 伊藤 郷一君
岡崎 英城君 佐伯 宗義君
關谷 勝利君 中嶋 太郎君
濱野 清吾君 堀内 一雄君
眞鍋 儀十君 早稻田柳右エ門君
池田 禎治君 下平 正一君
松岡 駒吉君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 吉野 信次君
出席政府委員
運輸政務次官 伊能繁次郎君
運輸事務官
(鉄道監督局
長) 權田 良彦君
運輸事務官
(航空局長) 林 坦君
委員外の出席者
運輸事務官
(鉄道監督局国
有鉄道部長) 細田 吉藏君
日本国有鉄道副
総裁 小倉 俊夫君
日本国有鉄道理
事
(営業局長) 唐澤 勲君
専 門 員 志鎌 一之君
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二月二十一日
空港整備法案(内閣提出第六七号)の審査を本
委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
空港整備法案(内閣提出第六七号)
国鉄経営等に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/0
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001・松山義雄
○松山委員長 ただいまより運輸委員会を開会いたします。
最初に昨二十一日付託されました空港整備法案(内閣提出)を議題といたしまして、政府より提案理由の説明を聴取いたします。吉野運輸大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/1
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002・吉野信次
○吉野国務大臣 空港整備法案につきまして提案理由及びその概要を御説明申し上げます。
航空が政治経済活動を能率化し、機敏迅速をとうとぶ現代の傾向に即応した最もすぐれた交通手段であることは異論のないところでございまして、世界の主要な国々におきましては、いち早く空港の整備に積極的な措置を講じました結果、すでにその建設を終え、航空路網は縦横に張りめぐらされ、航空交通は政治経済活動の一大動脈となっており、国民は多大の便益を享受しております。わが国の国土は、南北約三千キロに及び、ここに数多くの都市が散在しており、これらの諸都市を緊密に結びつけ、政治経済活動を能率化いたしますためには、航空路網を整備する必要がありますことはきわめて明らかでございます。しかしながらわが国におきましては、現在ようやく一部の幹線のみが整備されているにすぎない状態であり、早急に各地の空港を整備拡充することが強く要望されて参っているのでございます。この要請にこたえ、空港の整備をはかりますためには、空港を国または地方公共団体において管理し、この両者の費用負担においてその建設、整備を進めていく体制を確立いたしますことが最も適当であると考えられますので、この趣旨にのっとり、ここに空港整備法案を提出いたした次第でございます。
この法律案の要旨について申し上げますと、第一に航空運送の用に供する公共用飛行場を空港とし、国際航空路線のために使用されますものを第一種空港、主要血国内航空路線のために使用されますものを第二種空港、地方的な運送のために使用されますものを第三種空港と、その性格に従いまして三種類に分け、それぞれ政令で指定することにいたしました。
第二に第一種空港と第二種空港につきましては、運輸大臣が設置管理を行うこととし、第三種空港につきましては、地方公共団体に設置管理の責任を持たせることにいたしまして、空港の管理主体を明確にいたしました。なお第二種空港につきましては、地方的な利害も相当大きいため、将来地方公共団体が管理することを希望して参りましたときに、国が管理権を地方公共団体に移譲する道を開くことにいたしました。
第三に本法律案の骨子をなす空港の建設、整備のための費用の分担に関する規定を設けました。第一種空港につきましては、その利用範囲が国際的な規模にわたり、国の利害に重大な関係を持つ点を考慮いたしまして、全額国庫で負担することといたしましたが、第二種空港と第三種空港につきましては、国と地方との双方の利害に関係がありますため、国と地方公共団体とが費用を分担し合うことにいたしまして、両者の協力のもとに整備を進めることにいたしました。基本的施設の工事の費用につきましては、第二種空港では七割五分、第三種空港では五割を国庫において負担し、その他の付帯施設につきましては、第二種空港で七割五分以内、第三種空港で五割以内の補助を行うこととし、さらに北海道と離島につきましては、これらの地域の開発振興のため、特に国の負担率及び補助率を高めることにいたしました。
その他これらに関連いたしまして必要な規定を設けた次第でございます。
以上が本法律案を提案いたします理由及びその概要でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを希望いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/2
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003・松山義雄
○松山委員長 質疑は次会に譲ることといたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/3
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004・松山義雄
○松山委員長 次に昨日に引き続き、陸運に関し調査を進めます。質疑を許します。堀内君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/4
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005・堀内一雄
○堀内委員 私は運輸大臣にお伺いしたいのでございますが、現在陸上における運輸は、鉄道と自動車を主としてやっておることは申すまでもないのでございますが、鉄道と自動車にはおのおのその特徴があって、経営上にも利、不利があるのでございます。そこで現在わが国の私設鉄道は非常に困難な状態にあるのでございまして、すでに百四十五社の中で、五十四社が全く赤字になっておるような状態になっておるのであります。しかも一方バスはますます発展していくというような状態になっておるのでございますが、私鉄並びに自動車バスとの調整といったようなことについて、運輸省の方針をお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/5
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006・吉野信次
○吉野国務大臣 御承知の通り地方鉄道ではだいぶ経営がむずかしいものもございまして、それで地方鉄道軌道整備法で若干の補助をする点もございますけれども、これはもとより十分でございません。いずれにいたしましても、地方の鉄道軌道自体の経営をもう少し合理化をしなければならぬだろう、それらのことについて、いろいろ方策を考えておりますけれども、まだ総合的にどうするかということは、今せっかく研究中でございます。具体的に示す程度には至っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/6
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007・堀内一雄
○堀内委員 この問題はすでに整備法等もあって、ある程度やってはおられるのでありますが、それがきわめて抽象的であるということになってくるのでありますが、私はこの際監督局長なり何なりから、現在そうした方面において法制そのほかでやっておる実際の状況を一つ具体的にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/7
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008・權田良彦
○權田政府委員 御説明申し上げます。お説のごとくに、中小私鉄の現状は自動車事業等が著しく発展をいたしまして、輸送量も減って参りまして、一方また公共事業でございますので、運賃もなるべく低位に役立つようにしております関係から、その経営が非常に困難でございます。従いまして私どもといたしましては、今大臣からも御説明申し上げましたように、まずその一つといたしまして、昭和二十八年に成立をいたしました地方鉄道軌道整備法によりまして、資源の開発等のため、特に重要な地方鉄道の新設、大改良でございますとか、またその運輸が継続いたしませんと、国民生活に著しい障害を生ずるおそれのあります老朽いたした地方鉄道に対しまして、若干の補助をいたしておることは御承知の通りであります。これもただいま御指摘のごとくに、私どもはこれらの増額を強く希望しておるのでありますが、現在の財政状況その他からいたしまして、割り当てられております予算は、その必要額に対して十分とは申せないのでありまして、この点については今後ともなおこの増額について一段と努力いたしたいと思っております。さらに経営の合理化につきましては、いろいろと経営の近代化、対抗機関に耐えるようにいろいろ措置をいたすとともに、その施策についての育成をいろいろ考慮しております。またここに一つ大きな問題は租税でございまして、この租税の形態が私どもの考えといたしましては、やむにやまれない公共的機関である、経営の苦しい公共事業に対しまして、なおかつ不備の点がございますように私どもは考えております。たとえば地方税におきまする事業税あるいは固定資産税等につきましても、特に事業税は御承知の通りに外形標準になっておりまして、収入に対してかかってくる。しかし他の交通事業におきまして、自動車運送事業等は収益課税に相なっておりまして、同じ公共的使命を有するものについてもその均衡を失しておるように考えておりますので、政府部内においてはこれの合理化是正について努力しておりますが、これも地方財政の現状上、なかなか私どもの希望するようには参りませんが、なおこの是正合理化については一段と努力をいたしたいと思っております。なお今申し上げましたように、自動車の発達がきわめて著しく、中小私鉄はその沿線の状況上、路線の延長等が自動車との非常な競合関係を生ずる向きもございまするので、運輸省といたしましては幸いに自動車行政と鉄道行政とをあわせて行なっておりますので、部内で緊密に連絡をいたしまして、その一つ一つの免許処分でありまするとか、あるいは運賃の認可でありまするとか、あるいはまたその経営の運行内容でございまするとか、あるいは連絡運輸であるとかいう点について、この調整を現実の処分においても慎重に考慮しつつすでに行なっておる次第でございます。なお将来ともこの輸送調整には極力努めたいと思っております。それからこれは監督行政とは直接には関係がないという面もございまするが、地方鉄道は御承知の通り、国有鉄道と相待って国の交通網を形成いたしておりまするので、その間に連絡運輸が行われておりまして、これらの連絡運輸の問題、またそれに伴いますところの共同使用と申しまして、設備を両者で共同使用いたしまして、輸送の円滑をはかっております。こういう点について国有鉄道と地方鉄道の間が契約において処理せられておりますが、この内容についても十分これらの育成を考えつつ私どもは考慮を払っておる次第でございますが、なお今後ともこの育成については十分努力いたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/8
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009・堀内一雄
○堀内委員 今の監督局長の御答弁についてはさらに二、三お伺いしたいのでございますが、大臣がお忙しいそうですから、とりあえずいま一つ大臣にお伺いしておきます。御承知のように大都市を中心とした大きい私鉄会社と、地方の中小私鉄との関係は全く業態が異なっておるのでございます。大都市を中心とした大私鉄会社はむしろ非常な好況にある。しかもその需要が満たされないというような状態にあるのに比べて、地方の中小私鉄は非常に経営困難であるというような形である。これに対しまして政府としましてどのような指導方針を持っておられますか、その点についてお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/9
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010・吉野信次
○吉野国務大臣 お話の点はその通りでございまして、大都市の方はやはり人数が多いものですから、割合に経営が楽でございます。地方の方はそうは参らぬのでありまして、同じ私鉄でございますけれども、そこに経営の難易に非常な差があるわけでございます。その点は十分私どもは気がついておるわけであります。たださればといってそれを具体的にどういうふうにやるかということについては、いろいろの関係もございますので、その点は将来の問題としてよく考究いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/10
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011・堀内一雄
○堀内委員 私は現在の首都整備法等においても問題になっておることは、やはりその点だと思うのであります。大都市における交通の非常に困難な状態を緩和するというような点、これに伴って大都市の私鉄をいかに指導するかという点、それから地方鉄道との関係というようなことにつきましては、監督局長からもお話がありましたが、たとえば地方の鉄道に対する税金の問題のごとき、百四十五社の中で五十四社が完全な赤字である。赤字であるにかかわらず外形課税になっておりますので、みんな税金を納めておる。固定資産税においても同じことでございます。政務次官はかって自動車の方の税金を所得課税の方に直すことに非常に努力された。現在もむしろ自動車の方の経営は非常に有利である。有利であるその自動車の方の税金が所得課税になり、困難であるところの鉄道の税金が外形課税になっておる。これは非常に困難な問題を起しておるようでございます。政務次官は御就任以来非常に御尽力は下すっておることと存じますが、その点について経過並びにお考えをお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/11
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012・伊能繁次郎
○伊能政府委員 ただいま堀内先生からお尋ねがありました、また鉄道監督局長からも御答弁申し上げたと存じますが、外形標準課税の問題につきましては、私ども政府内部においてもあの課税体系が妥当かどうかということについては、いろいろ論議を重ねておりまして、また国会等においてもこの点は先般来御審議をわずらわした点でございますが、当時、昨年の春の国会におきまして、たまたま地方税法の改正案が国会に上程されました際に、自動車運送事業中、トラック、タクシー、ハイヤー等につきましては外形標準課税を撤廃して、事業所得の所得課税にすることが妥当であるということが政府部内で論議されました。提案された地方税法案の内容は、さような形で、バス事業については地方鉄道事業と同様に外形標準課税が適当であるという政府の案でございましたが、これにつきましては、同じ自動車運送事業のうち、バス事業が特に他の自動車運送事業と、その事業の性質が異なっておるという点が認められるかどうかということが、国会審議のおもな論点でございました。私どもは当時交通事業全般について外形標準課税は撤廃さるべき問題で、所得課税によって収益があった場合に課税をせらるべきである。収益のない場合にその毎日々々の運輸収入に対して課税をされるということは、穏当を欠くのではないかということで論議をいたした結果、国会の修正案としては自動車交通事業だけに限局をせられたような次第でありまして、私現在の地位に相なりましてからも、この点については、交通事業はあくまで所得課税であって、運輸事業の収入に対して課税せらるべきものではない。収益が上った際に課税せらるべきが適当であるということで、現在政府部内において地方税法の一部改正につきましては、軽油税でありますとか自動車税でありますとかいうような問題についても審議を重ねておりまするが、われわれ運輸省の立場としては、自動車交通事業といわず鉄道事業といわず、交通事業については、その公共的使命の性格上、収益の上らないものに対して課税をされるということは、公共事業としての使命達成の上に大きな欠陥がある。従って何とか収益の上った場合に課税をするような、所得課税方式をとってもらいたいということを強く主張しておるような現状でございますが、御指摘のような点につきましてはなおわれわれとして一そうの努力をいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/12
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013・堀内一雄
○堀内委員 ただいまの御答弁で経緯はよくわかりましたが、私設鉄道の方面の人たちは、政治力の強い現在の政務次官が政務次官になられたことについて、非常な希望をつないでおるのであります。従いまして今後さらに御尽力の上、みなの希望をかなえるよう御心配を願いたいと思います。なおただいまの大私鉄の問題と地方の中小私鉄の問題について、大臣があまり御存じないのはごもっともと思いますが、政務次官なり局長なりに今までの、現在の方針をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/13
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014・權田良彦
○權田政府委員 お答え申し上げます。地方鉄道と申しましても、今仰せられまするようにいろいろとその内容が違っておりますことは、御指摘の通りでございます。東京、大阪、名古屋等大都市を中心といたしまする地方鉄道は、人口の都市集中に伴いまして、いわゆる通勤通学輸送、ラッシュ輸送と申しますか、輸送の量が一日の中で変るというような特異性もある。地方の中小私鉄においては、当該地方になくてはならない不可欠の交通機関として動いてはおりまするが、量的には今お話の通りに、そう大都市の交通ほどお乗りになるお客も多くないというような事情がございます。これらは当然経営に響いて参りまするが、ただ今一般の概観で申し上げますると、概して公共事業である地方鉄道軌道の経営状態は、先ほども申し上げましたように、運賃を比較的低位にいたしますることが一つの要請でございますので、この方を公共料金として査定を加えておりまする関係上、極度にもうかるというようなお話でございますればさようでもございません。それぞれに重要な経営上の問題を蔵しております。私どもといたしましては個々の事業体別によく経営状態を分析いたしまして、たとえば先ほどお話申し上げました地方鉄道軌道整備法等におきましては、これはもちろんそういうものには補助をするまでの段階に至っておりませんので、先ほど説明申し上げましたような資源の開発上やむを得ないもの、あるいはそれの経営が成り立たないとその地方の国民生活が非常に困るというような、いわゆるほんとうの小さいと申してはあれでございますが、中小私鉄に補助をいたしておるのであります。それからまた運賃につきまして申し上げますると、地方鉄道軌道の運賃は、御承知の通り一律にしておらないのでございまして、各個々の会社の申請別に、それぞれの正確な原価計算を行いまして、その上において当該地方の状況、他の交通機関との状況等、いろいろ交通政策的なことも勘案いたしまして、各個別々にケース・バイ・ケースにいたしておるわけでございます。従いまして概して申しますれば、中小私鉄における運賃は大都市付近の鉄道よりやや高目に相なる。これは今申し上げておる輸送の状態、経営の状態から当然であろうと思いますが、かように認定をいたしております。なお先ほど申しましたように、監督の面ではございませんが、国有鉄道といろいろ連絡運輸をいたす共同使用の関係、こういうようなものの契約料金につきましても、両者の間に、いろいろ調査をいたしまして、でき得る限り地方の中小私鉄の負担が軽くなるように、いろいろ配慮あっせんいたしております。具体的にはさような措置を講じておりますので御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/14
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015・堀内一雄
○堀内委員 ただいまのお話わかりましたが、ただ御承知のように軌道整備法にいたしましても、現在その適用を受けておるのは九社だけであって、しかもそれがごく特殊のものだけということでありまして、現在の地方鉄道の困難な状態は、先ほど申しましたように百四十五社の中で五十四社は完全なる赤字であるというような状態で、ただ一割以上の配当をしているのは、大都市の近郊の大私鉄あるいはケーブルカーを経営している鉄道に限るというような状態でありまするので、さような点から考えましても、私はこのまま放任いたしますると、この私鉄というものはまた戦前の状態のようになるおそれがあると存ずるのでございまして、そういう点から一つ今後この問題を、幸い優秀なる新局長を得たことですから、大いに一つ努力していただきたいと思います。
次に国鉄の総裁にお伺いいたしたいのです。申すまでもないことでございますが、国鉄と私鉄との関係は、私は親子のような関係になっておると思っております。現に国鉄が昨年度におきましても七十五億円の連帯収入を持っておるということは、それが私鉄が国鉄の培養線だということを物語っておると存ずるのでございます。ところがその私鉄の経営状態というものは、先ほどから申しましたような困難な状態にあるのでございますが、それについて国鉄といたしまして、私鉄の取扱いと申しますか、育成と申しますか、そういうような点についてどんなふうな御方針でありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/15
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016・小倉俊夫
○小倉説明員 ただいま国鉄と私鉄との関係につきまして御質問がございまして、まことにごもっともなお話だと存じまするが、国鉄と私鉄とはもう昔から唇歯輔車の関係にあるということは、みなみな一般に是認するところでございまして、鉄道の培養、——培養と申しますと少し失礼に当りますが、地方鉄道は旅客、貨物を国鉄に流してくれる。また国鉄の方からも私鉄にお客さんを流し込むというふうな関係で、きわめて密接な間柄になっております。貨物の輸送につきましても、鉄道の貨車を、よく迎車と申しておりまするが、国鉄の貨車を私鉄の線に入れまして、私鉄沿線の貨物を国鉄へ持ってくる。また客車につきましても直通運輸などの契約をいたしまして、鉄道の客車をそのまま私鉄の線路の上へ走らせるというふうなことで、きわめて緊密な連絡をとっておるのでございます。ことに先ほどお話のございました通り、地方の私鉄と東京付近の私鉄とは非常に様相が変ってきておりまするが、いなかの線におきましては、ただいまのように貨物あるいは旅客につきまして相互お互いに唇歯輔車の関係にございまするし、また東京付近におきますれば、東京近郊の膨大な通勤通学の客を地方の電車が東京に運び込む。それを受けまして山手、中央その他でこれを消化する。その反対の帰りにはやはり山手、中央、京浜等の旅客がまた地方鉄道に流れていくというふうなことで、これまたきわめて緊密な共同的な輸送をいたしているのであります。ただ最近の事象といたしましてお話しになりました通りに、私鉄の経営がなかなか思わしくなく、中には経営に困難をいたしている向きが多々あるということは、私よく承知しております。そのうちの一つの現われは、連帯運賃の精算などで、国鉄に入れる運賃精算の少したまったというようなことも承知しておりますが、それにつきましては適当な手段を尽しておいおい回収いたしておるのでございますが、さように運賃の割賦につきましても、あるいは併算主義をとり、あるいは通算主義をとり、そういうことは十分私鉄の意思をくみ入れまして取りきめをしていくというようなことで、私どもは私鉄と相提携して交通の機関をになっていきたい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/16
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017・堀内一雄
○堀内委員 副総裁にお願いするのですが、時間が非常に詰まっておりますので、具体的な問題を簡単にお答え願たいと思います。第一に今のような唇歯輔車の関係にある私鉄を愛護する、育成するという意味から申せば、先般の国鉄の使用料の問題のごとき、一度にぽっと三十倍にするといったような、ああいう行き方は私は妥当でない、こういうふうに思っているのでありますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/17
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018・小倉俊夫
○小倉説明員 用地使用料その他の関係だろうと思いますが、あれは一時にあまり高額に上げては負担し切れないという御陳情もありましたので、これは過渡的に下げております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/18
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019・堀内一雄
○堀内委員 次にお伺いしたいのは、国鉄と私鉄の列車の相互乗り入れということについて、すでに国鉄から私鉄へ、また私鉄から国鉄の路線へということも実行しつつあるようでございますが、こういう問題について今後どんな方針をおとりになる考えか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/19
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020・小倉俊夫
○小倉説明員 けっこうなことだと思いましてできるだけさようにしていきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/20
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021・堀内一雄
○堀内委員 次に国鉄の車両予算を見ましても、車両の整備については非常に御心配のようでございますが、すでに外国におきましてもブルマンカーというような制度もあるのでございますけれども、今の民間の車両借り入れとかいうことについてはどんな御方針でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/21
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022・小倉俊夫
○小倉説明員 車両は国鉄におきまして非常に不足しておりまして、たとえば旅客は戦前の三倍以上になっております。旅客人キロから申しますと五倍以上になっておりますが、車両の方は客車、電車を合せましてもわずか五割しかふえておりません。貨車につきましてもやはり五割程度しかふえておりませんが、貨物の要請は三倍以上にも上っておりまして、非常に困った事態でございます。こういう点につきましては車両の増備計画を立てていきたい。しかし毎度申します通りに鉄道は非常に貧乏しておりますので、なかなか予算が回って参りませんが、重点を特に車両の増備にも向けまして、できるだけ作って参りたいと思いますが、それのみでは不足いたしますので、前回御承認を得たような民有車両の方法でできるだけ不足を補っていきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/22
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023・堀内一雄
○堀内委員 その次に国鉄の収入の問題で、先般の総裁談では、従来国鉄の切符とか団体輸送とかを取扱っておる会社が非常に少いようで、十数社とかいうように聞いておりますが、関連の私設鉄道を愛護するというような意味からして、私設鉄道の方と環流で旅客あっせんというようなことについて共同してやらせる御意図がありますかどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/23
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024・小倉俊夫
○小倉説明員 ただいまのは団体乗車券、団券と存じますが、私が聞いております範囲では、団券の発行は現在単数になっております。将来これを複数にしたいということで考えておりますが、ただいまの先生のお話は旅行あっせん業者ではないかと思います。旅行あっせん業者は全国に数百ございまして、これは鉄道と緊密な提携をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/24
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025・堀内一雄
○堀内委員 その次に監督局長にお伺いしたい。いろいろな関係で名前をあげることは遠慮いたしますが、ある私鉄におきまして連帯運輸の滞納が一億円以上にも及んでいるということになって、その会社更生のために非常に困っておると聞いておるのでありますが、こういうものにつきまして監督局といたしましてはどんな御指導をなされ、また今後においてどんなにして救っていくかということにつきまして、お考えがありましたならば承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/25
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026・權田良彦
○權田政府委員 ただいまのお尋ねは私鉄の連絡運輸精算金の問題だと思います。この連絡運輸精算金と申しますのは、申し上げるまでもなくこれは国有鉄道と私鉄との問の連絡運輸契約によりまして、相互に決算をいたす契約上の債権債務でございます。これは私法上の問題ではございますが、滞納すべき性質のものではないと考えておりますが、ただいまお話のようないろいろの経営上の困難から、だいぶたまっておるようでございます。運輸省といたしましては絶えず事実上の行政指導によりまして、国有鉄道と会社との契約状況をよく調査しておりますが、できるだけ早くこれを返させることが望ましいものでございますから、事実上中に立っていろいろと世話をしておるというような面もございます。金額を申し上げますと、昭和三十年九月一日にはその額が約五億四千万円にも上ったのでございますが、両者にいろいろあっせんいたしまして、本年の一月一日現在では四億三千七百万円まで減少を来たしております。なお昨年の十一月にいろいろ御要望もございましたので、特に滞納額三千万円以上の会社の代表者を直接招致いたしまして、いろいろとその中の経営状態並びに契約関係、それと国鉄との返済契約の内容を吟味いたしまして、これの履行を強く厳重に説諭いたしまして、九月末の今申しました滞納会社のうち特にひどいものには、今後すみやかにこれを返せるように検討あっせんをいたしました。なお残りのものにつきましても、文書をもって早期完済するようにいたしておりますし、また具体的には、そういった各社別にたまりました滞納の支払い方法について、常に注意をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/26
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027・堀内一雄
○堀内委員 国鉄の方にお伺いしたいのですが、中央線の旅客の混雑というものは御承知のように非常なものでございます。ところがあそこは線路の関係で客車を非常にふやすことができない。そこで先般浅川と与瀬の間に信号所を作っていただいたのですが、あれが単なる信号所でありますために、大して車両も増加できないのですが、あれを行き違いのできるような信号所にしますれば、まだよほど増加できるということを聞いておるのでございますが、国鉄においてその点何か御計画があるかどうかお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/27
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028・小倉俊夫
○小倉説明員 中央線の混雑というものは非常血ものでございまして、私どもも始終頭を悩めておるのでございます。それで同じような現象は山手線にも京浜線にもございまして、これは東京の人口が急激に膨張しつつある、また政治経済がますます中央に集まってくるということで、非常な交通量の増大になって参りまして、私ども通勤輸送にあづかるものといたしましては非常に心配しております。ただ山手線と京浜線は、三十一年度に線路が分離いたしまして緩和されますが、中央線につきましては、さような方法もないので非常に心配しておりますが、中央線につきましては、今回ホームの延伸その他によりまして、現在は八両ないし九両の連結で足りますが、将来九両、十両にいたして参りたいと存じます。ただ先生のおっしゃいました信号所の点につきましては、あれは目下のところ改良費が不足でございまして、おそらくあそこの信号所の設備費といたしましては二億くらいかかるだろう、こういう予定でございまして、これは今すぐに急速にすれ違いの設備をするのはむずかしいのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/28
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029・堀内一雄
○堀内委員 副総裁にいま一度聞いておきますが、今あなたのおっしゃるのは山手線その他のことで、私の聞いておるのは浅川と与瀬の間でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/29
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030・唐澤勲
○唐澤説明員 ちょっと補足的に説明させていただきます。中央線の混雑は非常なものでございまして、何かは手を打たなければいかぬとかねて思っておるのでございますが、特に中央線の特色といたしましては繁閑の度が多いので、季節的に非常な波動が多いものでございますから、その波動に応ずることが一番大事だと思います。それに対しまして、今先生のおっしゃられましたようなああいう信号所の設備をするということも一つの方法で、それによって列車を一本にすることも考えなければならぬと思いますが、今のは相当の金もかかりますので、順を追ってそれをやって参りたいと考えております。さしあたって今考えております一つの方法としましては、これから作ります客車を軽量化いたしまして、軽い車にすること、そうして今の車両で三両のモーターで五両というような軽量客車を、若干金がかかっても作るように努力するというふうになりますと、両数も一両ずつよけいつけられる。特に季節的に波動の多いところには、普通の客車を三両つけるところを軽量客車を五両つけることによって、緩和をはかるというようなことをやりたい。またその他中央線につきましては、ピーク時には貨物を押えて旅客車をよけいやるというような、あらゆる方法をやりたいと思っておりますが、抜本的には金の面その他でなかなかできません。極力そういうふうに考えて参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/30
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031・松山義雄
○松山委員長 臼井君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/31
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032・臼井莊一
○臼井委員 ただいま堀内委員から中央線の混雑の問題が出ましたが、私もやはりそういう問題に関連して国鉄の御意見を伺いたいのですが、大体大都市の近郊、大都市を中心にした国鉄の輸送計画は、今のお話にございましたように、各線とも非常に混雑を来たしておりますが、これについてどういう将来の御計画をお持ちでございますか。その点を一つお伺いいたしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/32
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033・小倉俊夫
○小倉説明員 大都市への通勤通学の混雑は重々承知いたしておりまして、ことに一番東京付近において混雑度が高いと存じております。それで大体輸送量の増加を見ますと、旅客において二%ぐらいずつ上って参りますのが、都会地の通勤では四%ぐらいずつ上って参ります。それでも非常に膨大な輸送量の増加でございまするので、残念ながら輸送力がなかなかそれに追いついて参らないのでございます。しかしながら鉄道といたしましては、国鉄の輸送量が、バス、私鉄に比べまして、都市近郊において比較にならぬほど膨大でございまして、従いましてその責任がきわめて重大だと存じておりますので、あらゆる手を打って参りたいと思っております。都会地の輸送と申しましても、大阪付近に比較いたしますと、さらに東京が一番混雑いたしております。それにつきましては先ほどもちょっとお話申し上げましたが、三十一年度におきましては、山手線と京浜線とを分離する工事が完成いたしまして、十月あるいは十二月ごろから両線が独立して走る。これによりまして計算上は倍の輸送力がつくわけでございます。また中央線につきましては、先ほど営業局長からの話もございましたが、ただいま八両ないし九両の編成で動いておりますのをぜひ十両までにいたしたい。これにつきましては、ホームの延伸、ホームを少し延長しなければならぬとかいうような多少の問題もございますが、目標といたしましては十両連結に持っていきたい。さらにまた予算上につきましては、足りない予算のうちから、特に通勤輸送に重点を置きまして予算を組んでおる始末でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/33
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034・臼井莊一
○臼井委員 いろいろお考えになられたと思いますが、具体的に東京の近郊についてお伺いいたします。中央線については今お伺いをし、また京浜、山手の分離というものは前々からやっておられて、ことしこれを完成するということは非常にけっこうであります。総武線と常磐線でございますが、常磐線も現在朝晩の通勤時には上野からさらに有楽町に乗り入れをしておりまして、これは非常に便宜を与えております。これも京浜、山手が分離すると、上野でまたもとのようにストップせざるを得ない。そうなりますと、上野はまたその乗りかえで非常に混雑を来たし、通勤着にも不便を来たす。いろいろ通勤着の話を聞いてみますと、現在のように有楽町まで乗り入れをいたしておるから非常に便利だというので、常磐線の、たとえば柏とか松戸といった方面へ居住を新たにしたというような方も聞いておるわけであります。こういう方には非常に失望を与えるし、また今申し上げたように非常に混雑を来たすわけでございますから、これに対する何か御対策はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/34
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035・唐澤勲
○唐澤説明員 山手線と京浜線の分離がことしの大体十一月ごろに完成いたします炉、そうなりますと山手線と京浜線が別々の線路を走ることになりますので、今乗り入れております常磐線は上野で打ち切らざるを得ない。そういうことはもう当初から問題でございまして、しかし一たん乗り入れてしまえば、なかなか上野で切るということは困難だから、初めから乗り入れしない方がいいのじゃないかというような議論もいろいろあったのでございますが、せっかくその工事の過程におきまして利用できる線路があるならば、その期間だけでも乗り入れした方がいいだろう、しかし完成して両方が分離した場合には、上野でとまってもらうのだということで、この乗り入れを実施したようなわけでございまして、せっかくなれて、便利に有楽町まで入ってこられた方々に上野でとまっていただくということは、まことに申しわけなく、また大へん御不便をかけるということは万々承知でございますけれども、実質的に両方分離した場合には、上野でとまらないような新しい線路を造成することは、この区間では事実上とても不可能でございますし、また一つの案としまして、日暮里で分離した山手線の方へ乗り入れしてはというような案はございましたが、これはべらぼうな金額がかかりますし、かつまた山手線が分離しましても、それぞれ相当車両を入れて回数を多くしていきますれば、乗り入れというような余裕もなくなってくるということで、これは技術的にもどうしても困難になりますので、どうしても上野でストップせざるを得ない。その場合には、上野において常磐線の方の列車の回数も増し、編成両数もぶやし、そうして山手線、京浜線の方もラッシュ・アワーを楽にしていって、乗りかえもできるだけ楽にするということでごしんぼう願うより、どうもやむを得ぬのではないか、かように考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/35
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036・臼井莊一
○臼井委員 もう一つは総武線ですが、これまた千葉方面からの東京都心への通勤着が秋葉原で乗りかえる。それがために秋葉原と有楽町あたりまでは非常に混雑する。これは山手と京浜が分離すればややその度が緩和されますが、いずれにしても、そういう点で現在東京都の住民をなるべく近県に分散して、そこに住宅をかまえさして都心に通勤させる方が、都市の建設の上においても理想的であるという考えで、いろいろ計画されて、現在首都圏というものを考えているようですが、たとえば千葉、埼玉、神奈川というものを入れて、東京都の将来を考えている。そういう意味において、国鉄としてもそういう観点に立って計画を立てなければならぬと思うのですが、総武の問題については、戦前に考えられておりましたように、将来複々線を作るお考えがあるのですか、計画があるかどうかをお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/36
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037・唐澤勲
○唐澤説明員 総武線の増強につきましては、いろいろ考えておりますが、今お話のございましたような根本的な複々線の問題、あるいはあれを中央へ乗り入れる問題については、なか宏か問題が大きく、技術的にも、またお金の面でも困難で、まだ研究という程度でございます。と申しますのは、中央へ乗りかえる、つまり総武線から来まして、秋葉原で乗りかえるのが、あそこでおりる方が、ラッシュで見まして、七割か八割だろうと思っておりますが、そのうちのほとんど九割くらいが神田、東京、有楽町の方へ参ると思います。従ってこれを便宜にするためには、どうしてもこちらへ直接その客を運ばなければならないことになりますが、今のあの御承知のような秋葉原の構造では、乗り入ればどうしてもできませんので、別に向うから直接線を引っぱらなければならない。しかし高架で持ってくることはできませんので、結論的にはどうしても錦糸町の辺から地下をもぐって、東京駅の下に持ってくるということになると思います。しかしこれをいろいろ概算したこともございますが、相当大きな金がかかりますし、かたがた運輸省の方で都市交通全体について、通勤緩和、あるいは郊外と都心を結ぶという問題もございますし、それらの問題も取り上げてもらいまして、将来これを国鉄がやるということになれば、それぞれの方途をとってやらなければならないかとむ思いますが、国鉄自体としましては、あまりにも問題が大きいもので、直接これを具体的にやるという計画には未だなっておらずに、研究の程度を出ないわけであります。複々線の問題も同様でありまして、これも中央へ乗り入れの問題と関連するのでありますが、複々線にしただけでは、やはり秋葉原の問題ということになりますので、やはり中央へどうして持ってくるかということが問題だろうと思います炉、その点を全体として、あるいは国として、政府としても考えていただきたいというふうに考えております。さしあたっての問題としましては、総武線の編成両数をふやすことは、まだホームの関係等でなかなか困難でございますが、時間帯を詰める、ヘッドの時間を詰めるというようなことを考えまして、車両を三十一年度においても若干つぎ込みまして、ラッシュにおける電車、列車の回数をもう少しふやしたいということで、さしあたり具体的な計画としては考えておるのでございますが、根本的な問題といたしましては、まだ国鉄として具体的な策を立てて実施に移すというところまで参っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/37
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038・臼井莊一
○臼井委員 もう一つお伺いしたいのですが、千葉市の駅が戦後十年にも触るのに、国鉄の示された計画が非常に進みがおそい。こういうために、都市計画が非常に頓挫しているということを見るのでありますが、これについて、大体何年以内にこれを完成するというような御計画がございますかどうか、その点をお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/38
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039・唐澤勲
○唐澤説明員 この問題はずいぶん前から計画された問題でございまして、いろいろな事情で進んでおらないということを残念に思います。臼井先生十分御承知のことと思うのでございます。なかなか複雑な問題がございますので、だんだん一つずつほぐして参ろう。例の国鉄の本千葉の方を長洲に持っていく、そしてそこに京成も入るということは、すでに最近はっきりきめて、予算を計上しまして、長洲駅の建設に移ることになりますので、これは時日ははっきり記憶しておりませんが、三十一年度にはこれができて、京成に移るような段取りになるのじゃないかと思います。そうすればそれに伴いまして、千葉の駅の方も、それに応じて具体的な設計に移るということになると思いますので、何年後ということははっきりここに資料を持っておりませんが、順次実現の運びになっていく、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/39
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040・臼井莊一
○臼井委員 どうもいろいろお話を伺っておりますと、いろいろそれは金のかかる問題ですから、あながち国鉄ばかりを責めるわけにもいかぬでしょうが、どうも計画が一向に、近郊の都市に対して、人口の膨張に対する一応の計画はしてあるけれども、まだそれを実行する段取りがついてないように思う。一今のお話を伺っておりましても、房総線も総武線も高架がむずかしければ、地下に持ってこようというお話でありますが、しかしそれをどういう具体的に計画しているのかということもないようである。ただ現在、山手と京浜の分離だけがことしの九月に完成するという。そうすると、かえって常磐線などは以前に逆戻りする形に触ります。そういうように計画が立っていないというのは——これは計画が立ったからすぐ金が要るという問題でなく、やはり都市の人口の膨張とにらみ合せて計画を立てて、年度計画を一応目標を立てるということが必要だと私は思います。今運賃値上げの問題でいろいろ論議されておりますが、これを今すぐなかなか世論が許さないという一つの問題は、もちろん物価等の響きという問題もありましょうけれども、また外郭団体をもう少し整理し、経営を合理化してからというような論議もあるでしょうが、特に一番利用度の多い近郊都市の多数の通勤着に非常に迷惑をかけているということが、値上げに対して一般国民が同情的でないという大きな論拠であろうと思うのです。この千葉の問題を私伺いましたのは、その結果いろいろな事故が発生しつつある、こういう問題なんです。たとえばけさの新聞等において千葉版に大きく取り上げられておりますが、昨日も千葉の曽我から乗った学生が、ディーゼル・カーにドアにはさまれながら乗ってきて、振り落され重傷を負った、こういうことが出ております。これらもあの駅がどんどん進んでいて、そうして将来は曽我まではどうしても電化しなければ一あそこには川鉄という大きな工場もあり、また発電所も建設しつつあるという事実から当然予想されるのですが、それが一向進展していない、こういうところからきていると思うのです。またかりにそれが延びても、現在の通勤輸送に対してもう少し配慮すべき点があるのじゃないか。たとえば房総線をディーゼル・カーに化して定時に運転しているということは、非常にお客さんの便利でありますが、ただ朝晩の通勤時が非常に混雑するということはすでに御承知だと思う。ところがこういう事故が昨日に限らず、ときどき起きている。国鉄の輸送の安全化ということは、ひとりレールを完全にして脱線しないように、あるいは衝突等の事故がないようにということばかりでなく、定員以上の、二倍三倍になるような、ワクを越えるような輸送の仕方というものが戦後十年たっても、たとい通勤時といえども解消されていないというところに大きね問題があると思う。この点について当然対策を講ずべきだと思うのですが、それを講じていないというところに、非常に私たちは遺憾に思うのです。この点につきまして、どういう対策を講じられているか、お伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/40
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041・小倉俊夫
○小倉説明員 御指摘の事故につきましては、承知いたしております。はなはだ相済まないことだと存じております。先ほど申しましたように、国鉄の能力以上に通勤客が急激にふえておる現状でございます。しかし私どももただ手をこまぬいておるというわけではございませんで、先ほど申しました山手、京浜の分離であるとか、中央線の強化であるとか、なお総武線にはディーゼル・カーを配置いたしまして、従来蒸気機関車の運行のときには八往復くらいでございましたが、ただいまは二十回近くの運転をいたしております。今回また特に予算上、長距離輸送と相並行しまして、近距離の通勤輸送に特に重点を置いて、少しでも緩和いたしていきたい、かように考えておりますが、現在の東京都の交通量の増加には、私ども今極力手を打ちまして、ようやく輸送力の増加がとんとんでございまして、これを積極的に緩和するというところまでは力が及ばない現状でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/41
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042・伊能繁次郎
○伊能政府委員 関連いたしまして、運輸省の考え方もこの際申し上げておいた方がよろしいかと思いますが、さいぜん来大へん適切な御意見を拝聴いたしまして、運輸省といたしましては、御指摘のような東京、大阪、名古屋等のいわゆる大都市の通勤通学に対する輸送対策につきましては、毎々いろいろ研究をいたしておりまして、最近において御承知のように都市交通審議会というものを設置いたしまして、さしあたり東京に手をつけておりますが、これは東京都を中心として国鉄、東京都、私鉄、あるいは営団、地下鉄等の総合的な通勤通学輸送態勢の確立という問題を今取り上げまして、だんだんと議が進みまして、近く東京都を中心とする、近郊から都心への一部輸送系絡の網というものも審議会において完成する予定になっております。御指摘のように例をあげますれば、総武線、常磐線等につきましては、具体的な申請も出ております。それから京成電車が地下で都心に入りたい、東武あるいは東京急行、小田急、京王帝都、京浜、西武等がそれぞれ都心へ入るために、地下鉄をもって入りたいというような計画もありますし、また東京都の都市計画路線としてすでに上っております京浜の地下鉄網もございます。これらの問題を総合的に現在研究をいたしまして、ロンドン、パリーあるいはベルリンのように郊外から郊外へ通り抜ける。現在東京の例を申し上げますならば、京浜線のごとく大宮から桜木町に、また中央線のごとく、浅川から千葉まで行く、こういう線が一応東京都を貫く場合においては、理想的な形態であったと思うのでありますが、現在国鉄以外にはそういったようなくし刺しの輸送計画というものはございません。従って現在の地下鉄を郊外へどう延ばすか、また現在の郊外電鉄を地下を経て、さらに他の郊外電鉄もしくは他の交通機関に連結して、都心からくし刺しにしてはるかに郊外に結ぶ、そういう線について都市交通審議会でいろいろと御研究をいただきまして、近い機会に東京を中心としたさいぜん御指摘の千葉、埼玉、神奈川、山梨という方面の、いわゆる大都市交通系絡網というものも完成する予定に相なっておりますので、その暁には、今度はいかなるものに仕事をさして都民の便益をはかるかという問題等も急速に研究決定をいたしたい、かように考えておる次第でございまして、目下その点を鋭意研究中でございまするので、その際には常磐線あるいは総武線、その他中央線等の輸送緩和のためのそれぞれの機関、単に国鉄だけに依存することなく、それぞれの交通機関をして、その全能力を発揮せしむることによって、相当早い期間に御期待に沿い得るのではないか、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/42
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043・臼井莊一
○臼井委員 ただいま運輸省としても都市交通について、都市交通審議会等によって計画を立てられておるということは非常にけっこうでありますが、ただ私は私鉄が地下にもぐって能率を上げるようにしようというのに、国鉄がはっきりした計画を持たぬということは、私たちはどうもその職務の上において万全を期しておるというふうに考えられないのです。こういう近郊の鉄道と国鉄を中央へ乗り入れるということは、これが地下鉄にしても、そういうふうに入ってくるということは、建設費もかかるでしょうが、乗客もふえて、そうして採算的にも必ずしも不利じゃないと私は思う。ところが新線建設の地方の問題になりますと、本年も十分ではなくとも一応五十億というむのは計上されている。ところが一番緊要なこういう事故を起しつつあるような近郊の都市交通の問題について、国鉄はもう少し熱心にやっていただく必要があろう、こういうふうに私は考えるのであります。私鉄が縦横に都心に入ってしまってからでは、あとから計画を立ててこれを実行するということについても、私は非常に不便とそごを来たすのではないか。これをすみやかに計画を立てていただきたい。というのは、これは前の委員会でも私申し上げたのですが、終戦直後に総武線というものを中央へ持ってこなくちゃいかんから、一つ高架の道路だけでもとっておいて、あとで高架のつけられるようにしてくれということを申し入れたのです。そうすれば複々線を作れば、それに持ってこられるのではないかと言ったときに、将来は錦糸町をターミナルにしてあそから地下鉄をみんな集めるのだ、そういうお話でしたが、十年たっても一向この実行計画が出ないというところに、どうも納得がいかないのであります。こういう計画が進まないところに、新聞等によっても殺人列車の解消へとか、高い国鉄への非難の声を見ても見ぬふりをする、こういうふうな非難をされる状態です。こういうような点についてはもっとやりようがあると思うのです。たとえばディーゼル・カーを蘇我まで入れただけでは間に合わないので、もう少しで三月に多少の車両が入るところだったが、それが間に合わないうちにこういうことになって申しわけないというのだが、これは言いわけであって、それならディーゼル・カーでなくて、特に通勤時の混雑のときにはやっていると思うのですが、客車を特別に仕立てて車両を増結して、そういう殺人列車と今どき言われるようなことのないようにしなければならぬ。どうもサービスという点に欠けているのではないかと思うのであります。運輸省においても、そういう点をもう少し深く御監督願い、これらの点は、次官等も多分御承知なのでありますから、やっていただかなければならないと考えております。私はこの問題を取り上げて、ことさらに非難しようというのではありませんが、これらはあしたにでも私は実行してもらいたいと思うのです。込んでいる状態というのは毎日なのです。三月になればディーゼル・カーが入ってくるから車両増結ができるというけれども、そのうちにもし事故があったならばいかぬ。車両が足りなくて連結できなければ、あるいはディーゼル・カーが足りなければ、汽車があそこにあるのですから、汽車でもって通勤時を緩和する。これは即時やっていただくということを私は申し入れて、都市近郊の問題についてはもう少しお伺いしたいのですが、時間を分けていただいて、緊急の問題ですから御質問申し上げたようなわけです。運輸大臣がおいでになったのですから、そういう点を十分御検討願って、そういう非難の事故のないようにしていただきたいということを申し添えるのでありますが、この際運輸大臣としてもお考えがあれば一つ伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/43
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044・吉野信次
○吉野国務大臣 お話の点まことに、ごもっともでありますので、そういう趣旨でせっかく努力したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/44
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045・唐澤勲
○唐澤説明員 ちょっと補足的に、この総武線の問題でございますが、房総東線、西線をディーゼル化いたしまして、全体的には非常によくなったと思うのですが、ラッシュのときが問題で、そのときに列車も入れておりますが、なお相当込んでいる。この点は前から問題になっておりまして、かねがね少しでもと思いまして、実はこの二十五日からわずか三両ですけれども、蘇我と千葉の間は臨時に救済運転するということを考えております。なお本年度におきましては、実行予算でまだはっきりきまりませんけれども、若干の車両を入れまして、ラッシュには六両編成でやっておりますが、それをふやして、できるだけ混雑緩和をしたい。先生のおっしゃられるように、大きな問題から見ればこそくの手段かもしれませんが、できるだけそういう点も注意してやっておりますので、一言申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/45
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046・臼井莊一
○臼井委員 千葉駅は、何もりっぱな駅を作っていただく必要はないのですが、やはり新駅を早く作って、あそこのスイッチ・バック等を整理する。そして蘇我あたりまですみやかに電化するということによって、こういう点が解消されるのでありますから、一つ至急に見通しの立つような年次計画をお立ていただくことをお願いいたしまして私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/46
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047・松山義雄
○松山委員長 下平委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/47
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048・下平正一
○下平委員 この機会に運輸大臣並びに国鉄副総裁に二、三お尋ねしておきたい点がございます。
その一つは、国鉄の問題が世上やかましくなって以来、大きな問題として取り上げられたのが運賃値上げの問題だと思います。
〔委員長退席、木村(俊)委員長代理着席〕
この問題につきましては予算委員会において、あるいは当運輸委員会において、しばしば質問をされたわけでありますが、速記録等を読んでみましても、運賃値上げに対する態度といいますか、値上げをするのかしないのかということが非常に不明確であるわけであります。速記録に現われた答弁が不明確であるばかりでなく、私がもう一つ運賃値上げに対して不明確に感じておりますのは、ことし国鉄が国民の批判にこたえていろいろの改問をしていくというが、三十一年度の予算案を見ると、この予算案の中からはどうしてもこれではやっていけないのじゃないか、予算の面からもそういう危惧がするわけであります。たまたま私は、けさの新聞を見ると、昨日自民党の与党の方々と国鉄の幹部の諸君並びに運輸大臣が加わって、運賃問題について協議をした、こういう記事が出ておりまして、最後に運輸大臣の談話が出ておりますが、その談話を見ると、会議の内容はこの客観情勢では何も言えない。しかしたとえば予算審議のときには、補正予算を組まないといいながらも、結局は補正予算を組んでいるのがならわしではないか、こういう新聞談話を発表されておるわけであります。この新聞の談話の真意は私にはまだわかりませんけれども、どうも運賃値上げに対して何か奥歯にもののはさまったような言い方をなさっておられる。新聞の推測を見れば、参議院の選挙があるから、参議院の選挙の前に運賃値上げを発表したのでは大へん支障があるから、参議院の選挙終了後に臨時国会においてやろうというような筋書きだというような推測も出ております。これは国民から考えても、あるいは私ども審議をする立場から考えても、遺憾なことだと思うわけです。しかも国鉄当局は従来からどういうことを言ってきているかというと、実は昨年の三月から大へんけっこうな文書を国鉄当局で出されて、その中で主張されておることは、国鉄は輸送の完遂を期する、国民の負託にこたえる、こういう立場から三つの目標をあげておるわけであります。その三つの目標は、第一番に施設の復旧をしなければならぬ、第二番目には輸送力の増強をはからなければならぬ、第三番目にはサービスの向上をしなければならぬ、この三大目標を当面の目標として国鉄は考えているということを国民の前に明らかにしたわけであります。そうしてこれを行うためには、さっきの小倉さんの答弁ではありませんが、国鉄は貧乏だ、金をどこから見つけてきてもらわなければ、これが改善できない、こういうことを訴えているわけであります。そうしてその金を見つける方法として幾つもありますが、最後には運賃値上げを強く要望しているわけであります。そういう経緯から見てきて、今言った新聞の発表、委員会等における答弁のいろいろの状況等を考えると、どうも運賃値上げについてすっきりしないと思うのです。そこでくどくなりますが、運賃の問題について国鉄当局の考え方、運輸大臣の考え方を私は明確にしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/48
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049・吉野信次
○吉野国務大臣 その問題については、たびたび申し上げた通りでございまして、私の考えは少しも変っておりません。今お引きになりました新聞記事は、私の全く関知せざることです。事実が全く違うのでございます。そういうことまで詳しく申し上げる必要はございませんけれども、なるほど昨日公邸において与党の幹部と私どもが打ち合せをいたしましたけれども、これはほかの問題でございまして、運賃の問題では全然ございません。その点だけ申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/49
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050・小倉俊夫
○小倉説明員 国鉄の考えにつきましても、前々からたびたび御答弁を申し上げておる通りでございまして、ただいま御指摘になりましたように、サービスの向上、輸送力の増強、老朽施設の改善ということをできるだけやっていきたい。それには現在償却費も十分に見られないような現状でありまして、思い余って力足らずと申しますか、現状は万事金がないために、いろいろな復旧その他ができないということは、前々から申し上げた通りでありまして、その点は私どもの考えは変っておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/50
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051・下平正一
○下平委員 新聞記事は正しくない、そういうことは言っていないというので、私も大へん安心をしたのです。そこで確認のために大臣にもう一ぺん聞きたいのですが、先日の予算委員会では、昭和三十一年四月一日から三十二年三月三十一日まで、その間には国鉄の運賃の値上げはしない、そういうように解釈していいかという柳田委員の質問に対しましては、その通りと申されましたが、今の大臣の御答弁から再確認するのですが、昭和三十一年度内——今年の四月一日から来年の三月三十一日までは、運輸大臣の責任において運賃を上げないということをはっきり御確認願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/51
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052・吉野信次
○吉野国務大臣 大体それでよろしいのでございます。ただお話がたびたび出ますから、あなたにお言葉を返すようでなんですけれども、私が運賃の値上げをするかしないかということの絶対権は持っておらないのです。これは国会できめる建前になっております。だから私が上げる上げないと言いましても、私はその権限を持っておらないのですから、その点だけは御承知を願いたいと思います。私はただ責任者として、三十一年度の予算を組むときに運賃値上げというような提案はしない、そういう措置をしないということだけはたびたび申し上げておるのです。お尋ねの上げる上げないは、ただ私の一挙手一投足でやれるようなお考えでございますと、そういうことはむろん御承知でございましょうけれども、もし委員会の発言で世上にそういうふうに誤解するといけませんから申しますが、つまり今の法律では、私から申し上げるまでもなく、運賃というものは国会できめるようになっている、このことだけははっきり申し上げた方がいいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/52
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053・下平正一
○下平委員 大へん運輸大臣に教えていただきましてなんでありますが、私も大体そのぐらいの程度のことは存じております。私がお伺いしておるのは、あなたが鳩山内閣の閣僚として、大きく言えば鳩山内閣の責任で運輸行政をあずかっておられるその立場から、運賃の値上げをしなければやっていけないのか、あるいは運賃を値上げしなくてもやっていけるのか、行政をおずかっておる責任の立場での御答弁をお願いしたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/53
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054・吉野信次
○吉野国務大臣 その点は予算委員会で申し上げた通りです。このままではやっていけないと私は思うのです。ですから採算の関係からいえば、国鉄の経営調査会の答申にある炉ごとく、若干の値上げは避けられないものだ、こういうことは予算委員会でも私ははっきり申し上げたのです。ただいつやるか、どの程度にやるか、どういう方法でやるかということが問題であって、またこの内閣としては低物価の方針をとっておりますし、運賃というものは採算の関係だけでもってきめられませんので、いろいろ複雑なることを考えて、三十一年度の予算を組むときには、その必要があるということは私も認めておりますけれども、その予算の計上の場合には運賃値上げは考慮しない、こういうことを申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/54
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055・下平正一
○下平委員 どうもすっきりしないのですが、はっきりとそうだとかそうでないという答弁だけでけっこうです。そうすると三十一年度内には運賃値上げはしない、したい気持は十分あるけれども、鳩山内閣の物価政策その他の面から運賃値上げはしない、こういうふうに理解してよろしいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/55
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056・吉野信次
○吉野国務大臣 これはいかがでございましょう。はなはだ失礼でございますけれども、ただいまのお尋ねは、この間の予算総会においての問答の速記があるわけでございますから、あの速の私が答弁したところと同じでございまして、それ以上私は別につけ加えることがないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/56
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057・下平正一
○下平委員 私がなぜそういうことを言うかと申しますと、国鉄の財政を再建して輸送の完璧を期する。さっき臼井委員からも発言があった輸送上の混雑緩和をするとか、これらのことは当面差し迫った問題なんです。そこで国鉄はそれの所要の資金をどうしても求めなければならぬと思うのです。この運賃値上げという問題は、今日の国鉄の経営というものが根本的に変ってくる問題なんです。運賃値上げをして百五十億なり二百億なりの金ができるとするならば、国鉄の三十一年度の経営のあり方、あるいは施設の増強のあり方とか、あるいは新線建設、改良、そういうものに重大な方針の変更がくるのです。大臣は運賃の値上げと予算は関係がないというようなことを言っておられますが、実はこの運賃値上げという問題は、国鉄の今年の経営の根本問題に触れる問題なんです。そこでこの根本問題がきわめて不明確のままでいるということは、私は当の責任者として非常に遺憾なことじゃないかと思うのです。大臣は予算委員会の議事録を読んでくれと言いましたが、私は十ぺんくらい読みました。何べん読んでみても、私が頭が悪いせいかもしれませんけれども大臣の言うことがちっともわからないのです。そうかと思うと新聞記事ではいろいろのことがじゃんじゃん出される。参議院選挙も出てくるということで、よくわかりませんので、端的にだれにでもわかるようにはっきり言ってもらいたいと思うのです。三十一年度内に値上げをするのかしないのかということについて、イエス、ノーでけっこうなんです。それによって国鉄の経営、予算の問題などに重大な影響があるのですから、それをまずはっきりさせていただかないと質問もちょっと困るのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/57
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058・吉野信次
○吉野国務大臣 私の言い方が少し言葉が足らないのでありましょうと思いますが、実ははっきりしておるつもりなのであります。三十一年度の予算を組むときには、それは考えていないのであります。予算を離れて国鉄の運営はできない。予算はどうあっても勝手に上げ得るように、そう聞えたので、そういうことはできません。三十一年度の予算で国鉄は運営するのでありますから、その場合に運賃値上げというものは考慮しない、こういうことでありますから、はっきりしておると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/58
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059・下平正一
○下平委員 この問題はあまり言ってものらりくらりでありますので、運賃値上げはしないでも今年はやっていけるのだというふうに理解しておきます。そこで実は三十一年度の予算案が問題になる。国鉄がともかくも三人目標に向って改善していかなければならぬが、そのために金が要る、そこで国鉄問題についてはその必要資金というものをどこから見つけてくるかということが問題点になると思います。先日も同僚中居委員の質問した中でも、この必要資金を生み出す場合に、国鉄自身で十分なる経営の合理化をする、むだをなくしていく、こういうことが一番当然なことだと思います。そのほかの方法としては運賃値上げもある、あるいはまた政府の援助という問題もある、こういうようなことが考えられると思うのであります。そこで三十一年度の予算案を見ると、そういう面から非常に無理な矛盾や脆弱性というものがあるわけであります。従って国鉄が従来公約してきたこと、あるいは政府が総合経層六カ年計画に基いての国鉄の六カ年計画というものを立っておられるが、これらについても何らの手段というものが講ぜられておらない、あるいは国民的の悲願であるところの輸送力の増強等についても、なかなか充足されていないので、大臣は運賃値上げをしないでこの予算でやっていけるとおっしゃいましたけれども、それではこの国鉄の六カ年計画、国民の要請にこたえるところの輸送力の増強、あるいは事故撲滅に対するいろいろの対策、こういうものが一体どの程度見込まれておるのか、大綱だけでよいから承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/59
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060・吉野信次
○吉野国務大臣 ちょっと私の言葉が足らないのだろうと思いますが、この三十一年度の現在の予算で、国鉄が希望するようなものは何事もやれるということを私は申し上げておるのではありません。決して私もこの予算は十分満足なものとは考えておりません。現に国鉄の予算として希望してきた工事費というものも、財政の現状から見て削られておる。これでもって今御指摘になりましたような何年計画というものが、この予算でやっていけるということを私は申したこともありませんし、そういう意味で申し上げておるのじゃないのであります。予算はこれでもって完全だとは申しませんが、しかし国の財政の現状なり、また今の運賃問題に関する世論と申しますか、空気の現状なりから見て、不十分ではあるけれども、とにかく三十一年度はここに計上した予算でもってやっていく、こういうつもりなのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/60
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061・下平正一
○下平委員 そうすると鳩山内閣の政策として出されておる経済六ヵ年計画、それらを達成するための交通政策としてのいろいろな計画というものが、本年度においては予算に盛り込めない、実施が不可能だ、こういうふうに考えてもいいのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/61
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062・吉野信次
○吉野国務大臣 そうではないのでございます。これは三十一年度だけの問題について触れております。鳩山内閣の五カ年計画は、私どもは十分実施する確信を持っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/62
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063・下平正一
○下平委員 五カ年計画を先の二、三年はやらないで、向うに行ってひょっこりできるということなら、何も五カ年計画を立てる必要はない。五カ年計画なら五カ年計画に基いて、初年度の計画はかくかくの通りということで五カ年の計画が達成できるのです。今大臣の言われるように三十一年度だけは別だ、五カ年計画は向うに行ってから努力するということでは、おそらく計画は達成されないと思います。私の見るところでは、この予算の中にはそういうものがほとんど含まれていないと思う。しかし時間もあまりありませんから質問を少し飛ばします。
国鉄が出された文書の中で、この前にも同僚委員が指摘しましたけれども、施設の復旧の問題については、不測の事故が発生するおそれがないとは言えない状態にあるとして、減価償却の問題を大きく取り上げられておりますけれども、政府当局が調査を依頼した調査会においても、減価償却は四百二十七億、この第三次再評価ベースにおいて行うことが最も妥当だ、こういう結論が出ております。にもかかわらずことしの減価償却は二百七十七億円が織り込まれておるようであります。さらに資金の面では借入金、公債、こういった面も大へん重要だと思うのでおります。ところがこの資金面の調達面においても、昨年よりかなり低下をしていると思うのです。金額的にはなるほど五十八億円という増額がなされておりますけれども、昨年度はきわめて確実なる資金運用部資金を百十五億円融資しておった。ことしはこれを六十億円減らして五十五億円、そのかわりとして鉄道公債、これに昨年より百十八億円増の二百五十億円を組んであるわけなんです。資金の面においてもっと責任を持って見てやるとするならば、私はこの公債にゆだねるという行き方はきわめて不安定だと思うのです。そういう点について先日来経理局長は、公債については消化の能力があるというようなことを言われましたが、あまり的確なる責任ある発言ではございませんでしたけれども、今まで鉄道公債の発行というものは途中の年度において、昭和二十九年度等においては、予算を変更して減額をしなければならぬというような状態になっております。去年より百十八億円も増加した国鉄公債二百五十億円いうものについて、国鉄当局でどの程度の自信を持っておるか、あるいは運輸大臣の方で減価償却をして実体上資産の維持をすることが一番大事だと言っておりながら、二百七十七億ということであってはいかにも私はおっしゃることと違っておるのではないかと思う。この二つについて国鉄当局あるいは大臣からお考えを聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/63
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064・吉野信次
○吉野国務大臣 先ほど申しました通り、三十一年度の予算は十分なものとは考えていないのです。償却の点についても何にしても……。公債の方の点は国鉄当局から申し上げた方がいいと思いますが、ことし長期鉄道債を盛りましたのは、市中の金融事情もだいぶよくなっておりますから、その程度のものは消化ができる、こういう意味で計上いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/64
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065・小倉俊夫
○小倉説明員 ただいま鉄道公債の発行について御質問がございましたが、最近の鉄道債の消化状況を申し上げますと、十二月の発行につきましては十月、十一月に引き続き二十億円を出しました。十二月は事業債、公社債等の発行条件の改訂がありましたので、これは少し条件が悪くなっております。つまり発行者に有利に改訂されておりますが、そのために当初は消化に懸念を持たれておったのでございます。ところが事業債、社債等の発行が市場で比較的少かったものでございますから、引き続き満額消化いたしました。つまりこれらは金融市場の消化能力が比較的よかったという現象だろうと思っております。こういう点から見まして来年度の鉄道公債、これに電電を合せまして三百二、三十億になります。国鉄が二百四十億、電電が多分八十何億と記憶いたしておりますが、それを合せた発行額につきましては、これは金融を扱う大蔵省とも十分連絡をとりまして、大蔵省の方でそれだけの発行は消化が大丈夫であるということできまりましたと承知しておりますので、この点は私どもとしては大丈夫消化できる、かように確信をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/65
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066・下平正一
○下平委員 ここで確信があると言われるが、それは将来の見通しの問題でありますので、それに対してどうこうというわけにも参りませんが、そこで私どもが考えていけば、こういった公債に依存をしたということによって、必ず未消化の部面が出てくる。しかしこれは見通しの違いですから違いとして、その次に伺いたいのは、国鉄の財政の根幹をなすものは何といっても運輸収入であります。この運輸収入の見積りというものが、実は運賃値上げの問題にもかかわるし、一切の問題にかかってくると思います。そこで先日も私お伺いしたのですが、国鉄当局の予想されておる増収は八十億円を予想されたというのです。ところが大蔵省の査定になってきて百五十三億に増加をされた、こう言います。そこで一体どうしてそんなに開きがあるのか、国鉄の経営者が実際の経験から基いて見込みを立てた数字が八十億、全然国鉄に経験のないところに持っていったら百五十三億と倍の増収になってきた。そこでこれはおかしいのではないか、ここらあたりに水増しが非常にあるのではないか、こういう質問をしたところが、それは実は国鉄が八十億の増収計画を見積った時期と、大蔵省が見積った時期と、時期の違いがあったからそうなった、こう言っておりました。しかしおそらく国鉄当局が見積った時期も、昨年の十月か十一月だろうと思いますが、大体上半期の実績を見て見積ったのでしょうが、大蔵省の見積りと国鉄当局の見積りの間に、よし一、二カ月の相違があったにしても、その増収額が倍額になるというようなことは常識の問題だと思う。日本の経済から貨物の状態においても旅客の状態においても倍額に増額をする、八十億円の増収見込みが百五十三億になるなんということは、常識論としては考えられないことなんです。現に最近ずっと情勢がよくなってきた国鉄の実態を見ても、四十億の増収というところが関の山何です。おそらくことしの期末決算においては、四十億円内外というものが、ようやく努力の結果の増収額なんです。おそらく百億円を増すというようなことは、とうてい常識では考えられぬと思う。大臣の予算の説明を聞いてもあるいは国鉄当局の説明を聞いても、どういう表現をしてあったかといえば、この増収を確保するためには異常な努力を要します、この一語に尽きている。こんな抽象的な異常な努力というようなことで、ことしよりも百億円の増収なんということは私たちの常識論からは考えられないが、一体根拠というものはどんなふうに求めておられるか。なおそれによって二、三質問したいと思いますが、まずそう急に倍額になったということですね。この点について一つ御説明をいただきたいと思うのです。特にこれは運輸大臣の方で査定されて、関与されておると思うので、お答えをいただきたい、と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/66
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067・吉野信次
○吉野国務大臣 ことさらに水増ししたというわけではございません。数字上のことでございますから、政府委員から詳細に説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/67
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068・權田良彦
○權田政府委員 お答えを申し上げます。御案内の通りに当初予算を組みます場合に、日国法によりまして国有鉄道が予算を編成して、運輸大臣の方へ認可を求めて参りますが、運輸大臣は大蔵大臣と協議をいたしまして査定をいたしますが、その場合に査定をいたしました基礎を申し上げます。まず旅客関係でございますが、昭和三十年度の推定実績が千三百四十二億七千六百万円でございまして、これにちょうど三十年度は御承知の通りに、天理教関係の特殊輸送がございましたし、駐留軍収入等の特殊なものがございますので、これを除きましたものに、対前年割合の増率が約二分二厘でございますが、これをかけました基礎になるものが千三百六十億円でございます。これにさらに駐留軍の収入が九億円と、配達料が七億円ございますので、合計千三百七十六億円となる見込みでございます。次に昭和三十一年度の貨物関係の純収入でございますが、昭和三十年度の推定実績、まだ年度が終っておりませんが、これを前年について推定をいたしますると、約千百九十一億九千七百万円に相なるかと査定できるのでございまして、これに駐留軍収入を除きまして、六分四厘という対前年増率をかけますると、千二百四十一億円という収入が査定されます。これに駐留軍収入二十七億円を加えまして、千二百六十八億円といたしたのでございます。この六分四厘増の推定は、昭和三十年度推定実績は、二十八年度実績と大差がないのでございまして、二十八年度と三十一年度の三年間にならしますると、毎年約二分の増に相なりまして、二十九年度は異常な減収実績であったと査定いたしたのであります。ことにこれを最近の実際の各月分の収入傾向をながめまして、石炭増産の関係、あるいは青函航路の復元関係等を織り込みますときに、目下のところ妥当であるというので、かように査定をいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/68
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069・下平正一
○下平委員 百五十三億の数字を出す根拠の御説明をいただいたわけでございますが、数字上の説明はきわめて簡単でございます。それは八分五厘上ることにすれば、運賃値上げも何も要らなくて二百億も三百億も増収ができます。しかし、およそ私はそういった数字のかけ合せでなくて、長い間の経験を持って、責任を持って国鉄を預かっておられる方々の数字とあまりにも違っているというところに、私は大きな疑問があるのです。私も国鉄に二十一年ほど奉職をいたしておりましたけれども、その増収は私は困難だと思います。おそらく達成できない。これは単に勘だけでなくて、今年の経済の実態を見てもこれは達成できないと思うのです。ここは確かに水増しされていることは明らかなんです。そこでこれも論争にほりまして水かけ論になりますので、次に聞きたいと思いますのは、それでは百五十三億円の増送をする、前年対貨物において六%、旅客において三〇何%、これだけの増収をするためには、ただでさえ疲弊して疲れ切った資材、設備、車両、さらに今の輸送情勢に応ぜられない車両の状態、これに見合う車両の新設なりあるいは施設の復旧なり、こういう面が当然伴っていかなければならぬ。ところで工事費の面やその他の面を見ても、こういった輸送の増強、百五十三億円の増収を上げるための手段がいささか欠けているように思うのです。今日のこれだけの予算の中でこれだけの増送は、実際に輸送に当る場面において、幾ら貨物があっても貨車がなくて送れない。たとえば貨車の使用状態を見てごらんなさい。私どもの付近なんか、一週間から十日、二十日も貨車が間に合わなくて送れない状態です。そういう状態にしておいて、単に。パーセンテージが幾らになるかということだけで増収が上ってくるのだということは、私は非常に甘いと思う。この予算を見れば、百五十三億円に見合うだけの施設、車両の増強はなされていないが、こういう点についてはどういう形で百五十三億を増収されるか、これは特に経営を担当しておられる総裁、副総裁にお伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/69
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070・小倉俊夫
○小倉説明員 ただいま御指摘の通りでございまして、前々からこれも申し上げておりますが、ただいま施設が老朽化し、それから車両は足りないということも全く事実でございます。しかしながら一方には非常に急激に増加して参りまする輸送要請に応じまして、ただ手をこまぬいておるわけには参りませんので、あらゆる努力をして輸送力を増強いたしたい、こう考えております。その具体的な例を申しますと、今回の予算の中には、通勤輸送、長距離輸送、電化、気動化、そういうところに特に重点を履きまして、通勤輸送と長距離輸送にはあわせて約八十億の手当をいたしております。電化につきましても約八十億、それから気動化に対しましては約十五億を計上いたしまして、超重点的に輸送力の増強をはかるということにいたしております。しかしながら御承知の通りに、もう全国至るところで輸送力の行き詰まりが生じつつありますので、それらは何とか部分的な増強をいたして切り抜けるよりいたし方ないと考えておりますが、車両につきましては、これもただ車両をふやしたから輸送力がつくというものではございませんで、輸送力をふやすには、線路の強化も要りますし、機関車も要りますし、すべての面がそろわなくては輸送力の強化にならぬことは、御専門の方々は御承知だと存じますが、中でもただいまは車両が不足であります。しこうして車両費は八億余しか計上いたされませんが、しかしそれは幹線増強の中でも気動化の中でもそれぞれ車両費はございますので、こういうものをしぼりまして極力車両の増加をはかりたい。これが一番簡単に輸送力の増強になりますので、そこに重点を指向していきたい。しかしながらそれだけではまだ不足いたしますので、今年いたしました通りに、民有車両というのも関係の向きにお願いしまして、民間の投融資をお願いすることにより車両の増備をはかっていきたい。要するに比較的経営が経済的になりますところの電化と気動化、こういうものに重点を置きまして輸送力の増強をいたしていきたい、かように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/70
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071・下平正一
○下平委員 小倉副総裁の話を聞いておりましても、結論としては、今国民が要望している百五十三億の増収に必要なる輸送力、車両の設備とか、施設の改善その他は、今日の予算の中では思うようにはいかないという結論だと思います。そういうふうに承わってよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/71
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072・小倉俊夫
○小倉説明員 さようでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/72
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073・下平正一
○下平委員 そこで次に質問を移したいと思いますが、これだけの増送をするためには、どうしてみても国鉄に今従事をしております四十数万人の職員の協力態勢というものがなければならぬと思うのです。昔のような国鉄が独占の時代ならさておいて、今たとえば旅客輸送を見ましても、私の長野県からここまで来る団体旅客といえば、ほとんどバスで来ます。バスにみんなとられてしまうのです。あるいは近距離輸送にしてもそうです。あるいは小口の貨物にしてもそうです。そこで今国鉄の下部の従事員がどういうことをしているかといえば、旅客誘致あるいは貨物を駅へ集荷してくる、こういうことについて非常な努力をしておるわけなんです。ある小さい駅の駅長さんなんかのところに行きますと、実は村長さんになれば、どんな小さな村の村長さんでも十万や十五万の交際費を持っているが、国鉄の現場の駅長さんはそんなものはびた一文もない。たとえば学校のPTAの方々や学校の先生を呼んで、修学旅行の計画を一つ国鉄でやってほしいといって、駅へ招待してお茶を出すわけですが、それにしてもお茶菓子ぐらいはどこから出すかといえば、みんな駅長のポケット・マネーなんです。あるいはまた従業員のみんなでお金を出した互助団というようなものの中から、この旅客誘致、貨物誘致のお金を出しているのが現状なんです。そこでこれだけ大きな増送をするためには、この四十四万人の従事員のほんとうの献身的な協力がなければ、私は達成が不可能だと思うのです。そこでこの従事員に対する待遇の改善にしろ、あるいは従事員に対して精神的にも協力をさせるというようなことについて、どういうようなお考えを持っておられるか、一言お伺いをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/73
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074・小倉俊夫
○小倉説明員 御指摘の通りに輸送力というのは機械ばかりではできませんで、主たるものは人間であります。ことに鉄道のような非常に技術上もむずかしいし、また労務上もつらい輸送に従事するには、やはり精神的に士気が高揚しなければ満足な輸送ができないと考えております。これにつきましてはやはり給与をよくしていくということを考えなければなりませんが、これは国鉄が毎々申します通り余裕もございませんし、またかりに余裕炉ありましてもいろいろな他の産業の振り合いもあります。誤解があるといけませんから逆に申しますと、そういうこともいたしたいけれども、現在はなかなか給与の方面には十分な手当が回りかねる、これは率直な申し上げ方であります。しかし輸送につきましては、幸い鉄道には昔からつちかわれた輸送に奉公するという精神が十分残っておりますので、まあ私どもは相率い、相携えて輸送の完遂に努力いたしたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/74
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075・下平正一
○下平委員 具体的に質問をいたしますが、今給与の面が出て参りましたけれども、国鉄に働いておる職員諸君の給与等は、法律その他によって民間の同種産業と大体同率ということになっております。これは常識だと思うのです。そこで今日の国鉄従事員の給与ベースを、同一産業の民間の私鉄その他に比べてみると一体どうなっているかというと、民間の方が大へんいいのです。これは昨年の実績でありますが、平均年令とか動続年数、こういうものを勘案してみて、国鉄は現在一万五千三百八十一円ベースになります。ところが民間の同種産業のベースを見ますと、同様な計数を使ってみて一万六千八百二十五円、その開きというものは千四百四十四円国鉄が低くなっておるような状態なんです。公共企業体になる以前の国鉄の給与というものはよかったのです。公共企業体になってからだんだんと給与が悪くなってきて、そうしてついには同種の民間産業その他に比べてみて千円何がしの差ができてきておる、こういうような問題が起きております。これは私がちょうちょうするまでもなく、国鉄の小倉副総裁はこの間の事情は十分承知しておると思うのです。協力をしていただくということについて、小倉副総裁が輸送に奉公をするという精神が国鉄にはあると言われましたけれども、とんでもない話なんです。大家族主義という精神かもしれませんけれども、今の国鉄の労働者はその奉公精神だけでは現実の生活が困るのです。だからやはり人並みに給与を上げてくれという手段がとられなければ、心から協力をして国家的な要請である輸送に協力する態勢が出てこないと思うのです。従来の過程から申しましても、裁定とか調停というものが出ても、いつも政府その他によって無視されてきておるのであります。国鉄従事員のこういった給与面における差額等についてどういうふうにして改善をして、協力をさせるかという点について一つお伺いをしたいと思うのです。
もう一点、確かに現有設備を使って、現有車両を使って増送を上げるには、そっくりそのままの人員態勢は必要はないのです。しかし百五十三億、六%以上の増収を上げるということになりますと、これは私の記憶では、たとえば操車場へ行きましても、今は一人操車掛が旗を振って貨車を操配しておるのに、五人の連結手がついております。どうしても六人ぐらいにしなければ、この車のはけができないのです。どうしても多少の人員増というものは避けられないと思うのです。そこで国鉄当局にお伺いをすれば、この増送をするためには八千人の人員を要するということを大蔵省に要求をしてある、こういうお話をお伺いしました。ところが今日出てきた予算案を見れば、一人の人間もふやさない、増員は一名も認めないという案であります。なおさらに御承知のようにこの委員会で、各委員等がだれしも一生懸命になって新線開業をやっております。新線開業がことし五線できるそうであります。それに四百人近くの職員が要るそうですが、新たに線路を敷いて、そこに鉄道の営業を開始する、この職員数さえも増加を認めないという状態になっております。さらに期末手当の問題を見ましても、昨年も私運輸大臣に御質問をしたのでありますが、これだけの増送をやらせるというならば、せめてその代償として公務員並みぐらいの賞与は出してやるべきだと思うのです。それ以上出せとは私に言いません。せめて公務員並みぐらいはこれだけの増送をやらせるのだから、それだけ多く見てやるから働いてくれという立場というものが必要だと思うのです。ところが今度の予算案を見てくると、依然として期末手当が一・五カ月、奨励手当が〇・五・合計で二カ月分、国家公務員の方は合計で二・二五カ月分、依然として〇・二五の差がついている。この前私が運輸大臣に質問したら、大臣ではなくて伊能さんだと思いましたが、国鉄は業績を上げて業績手当という形があるからそこから出せばいい、こう言っていました。しかしながら非常に苦しい、死ぬくらいまで働いても達成できるかできないかわからないような割当をもらって、そうしてその割当ができないからといって業績賞与をもらえないのが、今日の国鉄の従事員の立場なのです。私はこれだけ増送をしろと言って協力態勢を求めるなら、この予算の面で期末手当にしろ奨励手当にしろ、せめて国家公務員並みくらいには支給してやるという予算を組むのが、当然協力をさせる態度だと思うのですが、この期末手当の点あるいはベースの点等について、これは運輸大臣にも裁定その他を通じて関係がありますので、従事員に対する協力態勢の具体的な問題として御所見を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/75
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076・吉野信次
○吉野国務大臣 お話の点はまことにごもっともでございます。ただ国家の財政の現状、国鉄の経理の現状から、十分なことはいたしかねることは私は非常に遺憾に思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/76
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077・下平正一
○下平委員 ただ遺憾に存じますということだけでは、少しも前進をしないままでございまして、少くとも大臣は、異常な努力というものを期待されていると思うのです。この異常な努力というものは、現場の人間とは言いません、総裁以下国鉄に従事している労働者の諸君が一体になって努力をすることだと思うのです。この努力を期待されている以上、遺憾ではあるけれども公務員よりも〇・二五だけ賞与が少いということは、これは当面の責任者である大臣のお答えとしては、いささか遺憾ではないかと思うのです。もう少し、せめて公務員並みくらいなことは骨折って賞与を見てやるから働いてくれという、労働者に対する親切、心、愛情というものがなければ、との増送というものはできないと思うのですが、私はこの点について何とか大臣からもっと愛情のある答弁、これをいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/77
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078・吉野信次
○吉野国務大臣 前に申し上げましたように公務員との比較のお話が出ましたが、なるほど予算面から言えば仰せの通りでございますけれども、実質的には私は必ずしも公務員よりは少いとは考えておりません。その点が数字の問題ですから、政府委員からなり国鉄の当局者が——しかし大体の考え方の点、つまり従事員に対するあたたかい気持を持てということは、私もその通り考えております。できるだけそうしたいと思いますが、ただ先ほど申しました通り、国鉄の今の経理の状態ではどうもそういうわけにはいかない、こういうことです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/78
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079・小倉俊夫
○小倉説明員 お答え申し上げます前に御了解願っておきますが、先ほど私が国鉄の職員諸君は輸送について協力的であるというふうな意味のことを申し上げましたが、決して国鉄イズムといったようなことはございませんで、国家輸送の一端をあずかってともに手を携えていっておりますので、私が信頼しておるというふうな意味の発言でございますから、御了解願います。
ただいまの給与につきましては、それは民間から比較しまして、私は詳しい数字はございませんが、いいところよりもあるいは落ちるかもしれませんが、民間の鉄道業者といいましても、必ずしも全部が全部にわたって上だということも言えないかと思います。ただ最近は民間の方がよく触りつつありますので、しかしそれはまたかつては鉄道の方がよかったこともございます。といって、私は決して国鉄職員がよけいもらっているなんとは毛頭考えておりません。御指摘の通りに、過去から見まして比較的に国鉄職員の給与が、比較的の意味ですね、待遇が低下しておるのではないかと懸念しておるものでございます。しかしながらこれは公共企業体でございまして、私どもほんとうに困るのでございますが、片一方ではお前たちが赤字を出してけしからぬとしかられますし、片一方では給与が低い、人員が足りないというふうに、両方からおしかりをこうむるので、実は非常に答弁に窮しておる次第でございます。やはり給与がよければ能率が上るということは、これは常識的に言えることでございますが、国鉄は現在貧乏いたしておりますので、現在のところにおきましてはそういう給与の大幅な改善ということは、とうてい望めない現状にあるということだけ申し上げておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/79
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080・下平正一
○下平委員 大臣にさっきの御答弁でもう一度お伺いしたいのですが、国鉄の経営当局からは、この国鉄の労働者の生産性というものは昨年に比べて大へん上ってきている、指数にして一〇八ぐらいになっているという資料が出ているはずであります。そこで、これだけの増送をするについて、どうしたって八千人くらいの人間はほしい、これがなければ増送ができない、こういう国鉄当局の要求に対して大臣は、一名も増加はいかぬ、新しく線路を作るのでさえも人間は増加しちゃいかぬ、こういうのは一体どういう根拠から出ておられるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/80
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081・吉野信次
○吉野国務大臣 別に深い根拠もありませんが、すべての企業というものにはやはり理論上出し得る能率というものがあるわけです。ところがどの企業でも、理論上の出し得る百パーセントの能率というものは出ておりませんから、やはり企業努力というものによって改善する余地というものはあるので、国鉄についても同様だと思います。ですから、人もふんだんにふやせばそれは当然ですけれども、それでは合理化にならないのです。人の要るところの面は人の配置転換かなんかやって、人も止るべくふやさない、なるべく経費もかけない、かくのごとくにして今申したような非常な増収をはかるように努力してほしい、こういうのが私の考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/81
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082・下平正一
○下平委員 時間がありませんのであと一、二問でやめたいと思いますが、結局大臣の答弁を聞いておりますと、ときに金がないから、やむを得ぬから一つ現状でやっていけ、こういう注文だと思うのです。国鉄当局の方は、そうは言っても金をつぎ込んでもらわなければ思いきったことはできないということで、せんじ詰めてみれば、あれだけ大きな国民的な批判を起し、あるいは国鉄輸送という問題が大きな問題になってきていながらも、現実の対策、昭和三十一年度の予算の面からもおそらく改善は期待をされない、こういう結果になると思うのです。これは一番の原因はどこにあるかといえば、やはりこの前の国会でも、あるいは今度の同僚委員の質問の中でもあったように、公共性と企業性の矛盾、公共企業体そのものの定義といいますか、そういうものがまだあいまいもことしているところにあると思うのです。そこで私はいろいろ政府の施策等について質問をしたのですが、私たちが考えている二、三の点について申し上げて政府の所見を聞きたいと思うわけです。公共性を追求するという立場からするならば、どうしてもそれなりの裏づけというものが私は必要になってくると思うのです。そこで、この裏づけの点で先日私どもの中居委員が、ほかにも裏づけをしているのだから、政府でも裏づけをしなくちゃならぬじゃないか、こういう御質問に対して大臣は同感だ、こういうふうにお答えをされておったようでありまするが、たとえば今根本的な公共企業体そのものの矛盾を解決するということは、だれがやっても困難だと思うのです。しかしこの矛盾が解決をされ広いからじんぜんとして日を送っていいかといえば、これは送れない問題だと思います。ところが今の予算の中では、これはじんぜんとして日を送っているだけの予算しかない。もっと極端な言い方をすれば、政府がお金がないから国鉄の資材を食いつぶし、従業員の労働強化をする、これで当面はやりくりしていこう、こういったことで総裁以下ぎゅうぎゅう押しつけている、こういうことにもとれないことはないと思うのです。もう少しこの公共性を追求する限りにおいては、政府自身の責任を果すという面をお考えになったことがあるかどうか、この点を一つお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/82
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083・吉野信次
○吉野国務大臣 お話の通り私の立場からいえば、少し御無理と思われるようなことを国鉄の方にお願いしておるわけであります。それだから、なまやさしいことではない、非常に努力を払わなければならぬということを申し上げておるわけであります。なお根本において、国鉄の公共性、企業性というもののあり方については、この前も中居さんの御質問に対して、私が率直に申し上げた通り、実は私にもまだ割り切れない問題が多々ありますので、これは少し時をかしていただいて、だんだん解決の方に向っていきたいと思います。その見地から、国の方でめんどうの見方が足りないのじゃないかという御質問の要旨のように伺いますが、その点私もそう思うのです。ただ微力といいますか、財政の現状において思うことも十分に盛り得なかったということは、私も率直に認めているわけであります。しかし努力してないという意味ではありません。できるだけそういう方面にも今後機会あるごとに努力したい、こういうことだけは申し上げて差しつかえないと私は思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/83
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084・下平正一
○下平委員 吉野運輸大臣は力のある、大へんりっぱな方だと思っております。決して力がないなどということは毛頭私は考えておりません。そういうりっぱな、力のある方が運輸大臣をやっておられて、なおかつ国鉄の改善が思うようにいかぬということは、問題はやはり政府の政策にあると思うのです。私は大臣が交通政策について不熱心だとか、誠意がないということは申し上げませんが、大臣の答弁や国鉄当局の説明その他を聞いてみて、少くとも今の鳩山内閣が持っているところの交通政策というものは、全然政策がない。国民の要請に対して、少しも誠意を見せていないと私は考えるのです。これは大臣一人の責任ではないと思います。そこで根本的に問題が解決できないといっても、少し手を加えたり、少しめんどうを見るという気が政府にあるならば、改善をしていく余地は幾らでもある。一、二の例を申し上げますと、評価ベースの時期によって違っておりますけれども、今の国鉄の資産は大体二兆円といわれております。この国鉄の資産二兆円に対する資本金は幾らですか、八十九億円でしょう。こんなばかげた資本金というものはどこを見てもない。今民間産業等を見れば、どのくらいになっているかというと、民間産業の資産構成の中における自己資金の割合というものは、昭和二十九年度の下期において二四%になっている。今国鉄の八十億円という資本金を時価に換算をいたしましても、三百億程度だと思うのです。一般民間企業と公共企業体でございますから、資本構成においても違うことはもちろんだと思います。違う面を三分の二くらいに見てみても、千八百億円くらいの資本金というのが、企業の常識に合った資本構成だと思う。この面を改善をする。資本金を一般の並みに合うような構成にするという面を一つ見ただけでも、国鉄の改善というものはかなり進展するのです。電電公社が公社に移行する際に、当時の借入金は、政府出資に切りかえたというふうに私は聞いております。ところが国鉄に対しては、公社に移行する際の五百三十数億円の借入金をそのまま借入金で背負ってきている。欲を言えば、一般の民間企業、それから公共企業体の特性を勘案しても、千八百億くらいの資本に政府が投資しているという形に徐々にいくべきだと思うが、それも金がないから一時にはできない。さしあたって公社移行前の借入金の五百三十数億円くらいは、理屈の上から考えても、常識から考えても、資本に振りかえて差しつかえないのじゃないか。このくらいのことは、今の政府に金がなくてもできるはずです。そう金がなくても、資本投資に切りかえることくらいは、やろうという意思がありさえすればできるはずですが、こういう点について大臣は一体どういうふうにお考えになるか。またこの借入金を資本に振りかえるという点について、もっと親切な御答弁をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/84
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085・吉野信次
○吉野国務大臣 大へんごもっともなお尋ねでございます。借入金を資本金に繰り入れるかどうかということも一つの意見でございまして、またこれに反対の意見もあるようですから、その点は十分考慮しなければならぬと思いますが、御指摘になったように、国鉄の資産を九十億近くでやっておるということは、どうしても常識にも事実にも合わぬのですから、これはなるべく早く、できれば今年度中に是正する方向に進めたい、お説の点は私は全く同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/85
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086・下平正一
○下平委員 まだたくさんありますが、時間がもう切れて参りましたので、あと一問ぐらいにとどめたいと思いますが、公共性の問題の中で、大臣も大へん頭を悩まし、われわれ自身も実は頭を悩ましておるのはどの問題かというと、新線開業の問題です。この新線開業は、伝えられるところによると、二十四日にはまた少しふやすという話も出てきておる。現在二十三線が新線開業の工事を進めておりまして、ことしも五線ぐらいふやしていくということをいっております。新線開業ということ自体には私は反対をしないわけです。特に僻地における交通というものは、よほど国鉄あたりがめんどうを見てやらなければどうにもならない。そこでこの新線開業そのものに反対をするわけではありませんけれども、公共性から作られていく新線開業が、今度は企業の立場に立つ国鉄からどうなるかといえば、投下資本の利息あるいは諸経費に対する運賃収入の開きとか、こういうものからいって、二十三線が開業すれば、国鉄当局の計算では年々四十億の赤字が出るといわれておる。そうすると新線開業の公共性、新線開業は採算がとれないという企業の面からも、このしわ寄せというものは、どこかでこのめんどうを見てやらなければならぬと思う。ところが今日の立場では、すべてのしわ寄せが国鉄へ行っております。これも少し矛盾がありはせぬかと思う。私はこの新線開業の赤字を全額政府負担にせよとかいうことは考えておりません。その中にも企業の合理化あるいはいろいろの点で、国鉄の創意工夫を生かしていくべき点はあると思うのです。少くとも政府は新線が開業されて営業が一つの軌道に乗るくらいの期間、たとえば三年なり五年なりでもけっこうです、その間に生ずる赤字の何パーセントかは、政府の責任において見てやるというような形を考えられていいのではないか、しかもこれらもそう大した金額を要しなくて、実施できる問題だと思います。新しく開業される路線ほとんどが不採算でありますが、私が今言ったような考え方に対する大臣の御所見を聞いておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/86
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087・吉野信次
○吉野国務大臣 実は私も今お話しになりましたように、大体考えておるのです。つまり国有国営の形ですから、そこでまたさっきの公共性などの問題にぶつかるわけですけれども、公共性という立場からいえば、全然採算本位でないものは手をつけないわけにも参らないのは事実ですけれども、しかし国鉄の今の状態において、幾ら公共性があっても、採算に合わぬものを新線という名前でどんどんやるということは少し無理じゃないか。だから今の予算にはそういうことは出ておりませんけれども、できれば私も今お話のあったような公共性と企業性というものの調節についてやるのが至当だ、卒直に申し上げますと、私はそう考えたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/87
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088・下平正一
○下平委員 もう一点だけお伺いしたいのですが、これは先日中居君も申し上げていたようでありますが、政府の措置として簡単にできる一つの中に税金の問題があると思うのです。租税特別措置法という法律で、たとえば預金の利子に対する税金はただにするとか、株の配当に対する税金は安くするとか、あるいは会社の交際費については税金を減免するとか、価格変動準備金として税金を減免するとか、いろいろな措置があると思うのです。私は今国鉄がどのくらい税金を納めているか、数字的にははっきり言えませんけれども、大体四十億内外を納めておるように聞いております。特に今年から固定資産税——正確に言えば固定資産税という形ではなく、一括納付という形になるという話ですが、それにしてもかなり税金がかけられていく。それが平年度になれば七十数億円の税金がかかるといわれております。そこで公共性の立場から、政府が税金の面に多少手心を加えるとするならば、これは今の政府でもそう予算に重大なひびを入れなくてもできると思うのですが、この点が一つ。もう一つは、国鉄が一等、二等について税金をとっております。年間二十億か二十五億だと思うのですが、この税金もこの企業に還元するというようなことも、さしてむずかしいことではないと思うのです。こういう税金の面も今言ったような方針をとるとするならば、政府の方針の重大な変更、政策の重大な変更、予算の重大な変更、こういうことなくして国鉄に対しての援助が与えられる。そして国鉄は今言った面を少し見てもらっただけでも、ちょっとした政府の思いやりで国鉄の輸送に対するいろいろな施設なり、要求されている諸問題の解決はずっと前進するのです。そういう点について、税金の点についても少し所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/88
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089・吉野信次
○吉野国務大臣 お話の点はとくと考慮したいと思います。ただ税の問題の場合には、やはり本質論に返るのです。本質論と申しますのは、いわゆる普通の民間会社の性質を持っているか、あるいは国家の公けの性質を持っているかということで、ある税はかけるのが適当でないというものもありますし、ある税はかけた方が適当である、こういう本質論にからんでこまかいことを申し上げると、いろいろな問題がそこに出ると思います。しかしお話の通り、国鉄の負担する税はやはり非常に重い負担でございますから、そういう点についても私はとくと考慮してみたい、こう思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/89
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090・下平正一
○下平委員 大へん時間をかけていろいろお伺いいたしましたが、結論的に御答弁をまとめて考えてみると、どうも昭和三十一年度の国鉄予算というものは、その場過ごしの弥縫策にすぎないというふうに私ども感じます。従ってこれらの点については後刻また別の角度から質問なり意見を申し上げることにいたします。
最後にちょっとお伺いしたいのですが、今御承知のように国鉄労働組合が二千円のベース・アップ闘争をしております。それらの情勢がどうなっておるかということについては、時間がないのでお伺いをいたしませんが、心がまえとして国鉄並びに運輸大臣に一言だけお伺いしておきたいと思います。調停案が近々に出ると思いますが、賃金ベースあるいは年末手当その他の給与面については、さきに大蔵大臣が認められたように決して高くない、そういう状況の中で国鉄の労働組合の闘争に対して、政府あるいは国鉄当局はどういう考え方を持っておるか、その点が一つ。
それから従来は毎回調停、仲裁というものがじゅうりんされてきております。それで第三次鳩山内閣が成立して以来、初めて人事院の勧告を尊重するという線を出しましたので、この際国鉄労働組合に対して今の調停委員会が出す案について、基本的にどう考えておるか、この二つの点を当局と大臣にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/90
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091・吉野信次
○吉野国務大臣 私から先に申し上げますが、御承知のように調停は最終の段階ではございません。それから仲裁の段階があるわけでございますから、調停のときにどうやるかということは私も今ちょっと答弁しにくいことです。やはり法律できめた所定の段階を経まして最終的にきまりましたときに、初めて国鉄側としてそれをのむかのまぬかがきまる、こう思います。どちらかというと、私はわき役の立場でございますので、今ここでこれをのむかのまないかと仰せられましても、今の段階ではちょっと答弁がしにくいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/91
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092・小倉俊夫
○小倉説明員 ただいまの御質問でございますが、労働組合からはいろいろな申し入れ事項が参っておりますが、それにつきましては、極力受け入れられるだけの点につきましては受け入れて、相談をしていくという回答をいたしたいと思います。ただ先ほどの給与の点その他につきましては、これは簡単に受け入れがたい点もございますので、そういう点については別途考慮していきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/92
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093・木村俊夫
○木村(俊)委員長代理 それでは本日はこれをもって散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。
午後四時十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403830X01019560222/93
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