1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月二十七日(月曜日)
午前十一時四十四分開議
出席委員
委員長 有田 喜一君
理事 小笠 公韶君 理事 椎名悦三郎君
理事 長谷川四郎君 理事 前田 正男君
理事 南 好雄君 理事 岡 良一君
理事 志村 茂治君
赤澤 正道君 須磨彌吉郎君
山口 好一君 岡本 隆一君
佐々木良作君
出席政府委員
検 事
(法制局第二部
長) 野木 新一君
総理府事務官
(原子力局長) 佐々木義武君
総理府事務官
(科学技術行政
協議会事務局
長) 鈴江 康平君
経済企画政務次
官 齋藤 憲三君
文部事務官
(大学学術局
長) 稻田 清助君
特許庁長官 井上 尚一君
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本日の会議に付した案件
科学技術庁設置法案(内閣提出第五一号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/0
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001・有田喜一
○有田委員長 これより会議を開きます。
科学技術庁設置法案を議題といたし、質疑を続行いたします。質疑の通告がありますから、これを許します。岡良一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/1
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002・岡良一
○岡委員 科学技術庁設置のために、本年度予算に計上されたる予算は、いかほどでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/2
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003・鈴江康平
○鈴江政府委員 三十一年度予算といたしましては、人件費、庁費その他でございますが、合計九百八十五万八千円でございます。このほかに金属材料技術研究所を新設いたすことになっておりますが、金属材料技術研究所に対しましては、一億円の予算が計上されております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/3
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004・岡良一
○岡委員 そのほか各省関係の予算で、なおこの科学技術庁が発足いたしますると、運営上、予算がこちらの方へ回ってくる、そういうものはないのでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/4
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005・鈴江康平
○鈴江政府委員 科学技術庁に吸収されます局といたしましては、科学技術行政協議会事務局並びに資源調査会事務局、及びそれぞれの委員会の予算がございます。そのほかに原子力局が入りますので、その予算が全部その中へ入るわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/5
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006・岡良一
○岡委員 それらの予算は、今お手元にはないのでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/6
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007・鈴江康平
○鈴江政府委員 ただいま詳細なものは手元にないのでございますが、御要望によりまして、直もに作成いたします。しかし、大体のことを申し上げますれば、原子力局の方は大体三十六億くらいの予算がございますが、ただそのうち、十六億は国庫支出負担行為でございますので、実際の予算は大体二十億程度、それから科学技術行政協議会は大体七、八千万円でございます。それから資源調査会が、約三千四百万円程度でございます。詳細はまた資料を作りまして、いずれ差し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/7
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008・岡良一
○岡委員 詳細な資料をいただきたいと思います。特に明後日は、委員長のお取り計らいによって、大蔵大臣にも御出席を求めたいと思います。今お聞きいたしましても、せっかく日本の行政の上に科学技術というものが大きくクローズ・アップされた。しかしその総予算が二十三億程度にとどまるということでは、日本の国の総予算の〇、五%にも満たない。それでは、予算の裏づけとしては非常に弱体を感じますので、この点は、今後のわれわれの努力にもよるところと思いますが、十分検討したいと思います。
それから、昭和二十九年度の組織別研究機関一人当りの支出額表というものを資料としていただきました。これで見ますと、大体国営の研究所、また大学、大学に付置されたる研究所、あるいは一般公営の研究所等におきましての一人当りの支出額が、おおむね国営については四十三万円、大学については三十七万円、付置研究所も同様、公営が三十九万円、そうして人件費を除く一人当りの支出費というものは、それぞれ国営、大学、大学付置研究所、公営において二十万円を上下いたしておるようであります。ところが一方民間における研究機関の費用でありますが、公益法人、営利法人、また法人でない団体、個人等で、これは人件費を除く一人当りの支出なのでありますが、それぞれ三十三万円、四十九万円、三十五万円、五十八万円というふうに、平均が四十八万円、一方国の研究に要する費用は、人件費を除いての一人当りの支出額が二十万円前後、まことに二分の一にも満たない額になっておるのであります。こういうことで一体ほんとうに国の責任における科学技術の発展が期待できるのかどうかということを、この二十九年度の研究機関の一人当り支出額から私どもは憂えるのでありまするが、これについての齋藤次官の御見解、御所信を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/8
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009・齋藤憲三
○齋藤(憲)政府委員 ただいま御指摘の昭和二十九年度の組織別研究機関の一人当り支出額でございますが、まだ私は国営、大学あるいは付置研究所の実態の、何と申しますか、あり方をよく存じておりません。ただ私が視察をいたしました国営及び大学の研究所のあり方は、まことに貧弱であります。その研究費の総額は相当の.額に達しておるにかかわらず、一人当りに参りますると、非常に貧弱な研究費しか実際に渡っておらない状態であります。その原因は那辺にあるのか、非常に広範多岐にわたる問題を自由研究として、研究の主任に助手をつける体系、そういうものがよく私にはのみ込めないので、どうしてああいうふうな小さな金額になるのか、よくわからないのであります。ところが民間に参りますると、主として必要な研究目標がきまっておって、それに対して、極度に必要な要員を集めまして、重点的に研究をするから、割合に研究費というものは潤沢にいくのではないかというふうにも考えられるのであります。一例を申し上げて相済みませんが、一週間ほど前にも、私は東大付属の伝染病研究所に参って、その研究室を訪れたのでございます。その研究室の主任は、赤字を三十六万円出しておる。そうするともう器具さえ貸してくれない。赤字を出したものには器具さえ貸してくれない。ところが一方から考えると、赤字を出すくらいに研究をやるというのがむしろ非常にいいことであって、どうしてもその研究を達成しなければならないから、無理をして赤字を出した、赤字を出すと器具も貸してくれないから、研究をやめねければいけない、こういうような非常に不自然な状態もあるようであります。そこで大学とかあるいは国営、それから大学付置研究所が非常に一人当りの研究費に事を欠いておるというのは、これはどういうことからそういうふうになっているか、その研究というものは自由であるという建前から、非常に広範な、しかもたくさんの人が思い思いに研究をやるためにそういうふうになるのか、これは文部当局その他国家機関を持っている当局に聞いてみなければよくわからぬのでございます。とにかく私といたしましては、日本の国営及び大学の研究所の研究費一人当りというものは、非常に不足なもので、これは悪口を申しますると、ほんとうにたばこ代とか、はな紙代に終ってしまうのではないかという点がたくさんあるので、こういう点に関しましては、十分研究をいたしまして、何とかそういうことのないように、もっと効率研究の行われるようにいたさなければならぬのじゃないか、さように考えておるのであります。ただその程度しか、私はよく存じませんから、お答えができないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/9
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010・岡良一
○岡委員 これは科学技術庁とは直接関係がありませんが、いただいた資料を見ましても、国立学校設置法第四条による大学付置研究所調なるものによれば、国内における十八の国立大学におきまして、自然科学の研究所が四十七、研究部門が三百三十六あるわけであります。しかも自然科学関係が、教授一名、助教授一名、助手二名というような、人的にもきわめて小単位な研究部門に人的構成がなっておる。そうなれば、おそらく教授の専門というものによって、たくさんの若い研究者がそれぞれその能力を分散し、しかもこういう少数の者が乏しい研究費をもって生み出してくる研究の成績というものも、これはやはりお互いが共同して、総合的に研究を進めてくる結果から見れば劣るのではなかろうか。またいろいろな事情もあって、その研究が一つできた、学位をもらった、学位をもらって、これから本物の研究が始まろうとするときに、またよそへ勤めにいくというような事情の方もたくさんあり得るだろうと思う。こういうことになってくると、やはり日本の科学技術そのものの振興から見て、文部省関係、国立大学関係における研究の現状というものは、非常に遺憾な現状にあるのではないかと私は思う。幸い文部省から担当の局長がお見えでございますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/10
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011・稻田清助
○稻田政府委員 ただいまの御質疑でございますが、現在の国立大学における研究の状況を御心配いただきましての御質疑、われわれといたしましても、まことにごもっともに存じながら、われわれも同様な憂いを持っておるのでございます。ただ、今日御審議いただいておりまする明年度予算におきましては、国立大学の講座研究費——これは付置研究所も該当いたしますけれども、二割、講座研究費を増額いたしております。それからいわゆる特配的に、重点的に配分せられます科学研究費の方は、昨年相当大幅に増額していただきました。一方講座研究費が増額いたしますれば、ますます重点的に科学研究費の配分ができ得ようかと存じまするので、両方相待って、許された範囲内におきまして、でき得る限り研究費の効率的使用を心がけたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/11
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012・岡良一
○岡委員 先ほども実は予算の点に触れたのでございますが、昭和三十九年度の大学並びに大学付置研究所の人件費を除く一人当り支出額は、それぞれ十四万九千円並びに十七万八千円であります。十五百万円、十八万円といたしましても、平均すれば十六万五千円ということであります。これに比べて、むしろ公営、国営がそれぞれ二十一万円でありまするので、五万円ばかり開きがある。民用の研究所を見ると四十八万円ということで、大学が特に、この人件費を除いた研究費が非常に少い。二割ばかり増加を認められたと申しますが、そうしますと三十一年度の一人当り人件費を除いての研究費に要する支出額の見込みは、大学並びに付置研究所で一体どの程度になっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/12
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013・稻田清助
○稻田政府委員 御承知のように、ここに計上しておりますのは、人文、社会、自然を通じましての広い分野の基礎研究の経費でございます。それからまた御承知のように、研究所等におきましては、いわゆる講座研究費的な人頭計算によります。研究費のほかに、特別事業費というようなものがむしろ中心でございまして、これを一人当りとして勘定いたしますことは、ちょっと実態に合っておりません。一人当りといたしますれば、今申しましたように、覇よそ一講座七十万円ほどが二割増になっておりまするけれども、それ以外の点におきまして、いろいろ研究しておる点を御留意いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/13
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014・岡良一
○岡委員 それは全くその通りでございましょうけれども、しかしこの数字も、やはり文部省関係において、この科学技術——人文科学も含めて、科学の振興に対する予算的な努力がきわめて低調であるということの一つを物語っておると利に思うのです。そこで重ねてお伺いいたしたいのですが、先ほども申しましたように、きわめてわずかな人たちが集まって、きわめてつましい研究目標を立てておる。その結果、いわゆる大学に油ける共同的な研究という姿が出てこない。乏しい予算であればあるほど、この予算を能率的に使うという意味で、そういうようなことが今後の研究の面における行政において考えられていいのではないかとも思うのですが、そういう点についてのあなたの方の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/14
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015・稻田清助
○稻田政府委員 お話のごとく、今日の基礎研究の分野におきましても、共同研究の大切なことは、私どもといたしましても常に感じております。その点からして、最近、年々御審議をいただきますが、国立学校設置法の改正においてもごらんいただきますように、近ごろ国立学校設置法一条第二項の研究所というものを設けまして、これは主として共同利用のために設ける研究所でございます。たとえば、原子核研究所であるとか宇宙線観測所であるとかいうような例でありまして、これは単に、付置せられます東京大学だけでなく、国公私立の研究者が共同利用するという趣旨で設けた研究所でございます。将来もこういう趣旨の研究所が現われるとも思いまするし、また一方輸入機械等によりまして、かなり大きな機械を設置いたしました場合に、たとえば金研に設置いたしました十三段ロールのような例でありますが、これは単に東北大学の金属材料研究所だけでなく、一般研究者に共同利用せしめるという条件で、東北大学に付置しておる。こういうような配慮を用いております。さらに科学研究の総合研究費の運用その他によって、研究者の共同利用という点は、もっと今後伸ばしていきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/15
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016・岡良一
○岡委員 ぜひとも一つそういう方向に、やはり日本の科学技術行政、科学技術の振興の基礎的な分野でありますので、御努力願いたいと思います。
いま一つ率直な御意見を承わりたいのは、大蔵省が科学技術等に対する予算を支出するというときに、どうも大蔵省の感覚が——科学というものは、結果が十年先に出るか、十五年先に出るかわからないという、いわば非常に深遠な性質を持っております。ところが予算を出す段になると、そういう科学そのものの特質というものに理解がなく、どちらかというと、いわゆる行政事務の予算単価的なもので積算の基礎にして、結局予算が大きく規制を受けてくるという傾向がありはしないかということを私ども心配しております。そういう点は、事実においていかがなもせありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/16
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017・稻田清助
○稻田政府委員 いろいろな見解がございましょうけれども、その点について、財務当局と十分覇打ち合せをし、誤解をなからしめることがわれわれの任務だと考えておりまして、平素からそういう点についてよく大蔵省とはお打ち合せをし、大蔵省も基礎科学の重要性ということはよく認識していただいていると私どもは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/17
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018・岡良一
○岡委員 これは科学技術庁が設置されて、いよいよ国が科学技術の研究応用に進まれるときにも、予算的に重要なフアクターになりはしないかと思うのですが、齋藤次官の御見解を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/18
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019・齋藤憲三
○齋藤(憲)政府委員 科学技術は、申し上げるまでもなく、基礎科学並びに応用の面にわたりまして、きわめて広範な分野を占めているものでございまして、科学技術庁のねらいますところは、その中から、なるべく国家経済に重要な、直接的な影響を持つ科学技術分野を重点的に取り上げて、これに対する根本的な行政施策を実行していくという建前でいきたいと考えているのであります。従いまして、この点に関しましては、大蔵当局とも十分に話し合いをいたしまして、あまり時代的に重要な性質のものでないものとか、あるいは国民の経済的な観点に関係の薄いものとかいうようなものは、もちろんこれは第一段階の対象とはならないと思うのでございます。それで、今いろいろな科学技術の世界的な水準において、どうしても日本がこれを取り上げて、強力に応用面を推進して、経済部面に寄与する必要のあるものに対する予算措置を講ずる場合におきましては、大蔵当局とよく話し合いをいたしますならば、これは十分了解ができるものである。こう信じているのであります。これは直接科学技術庁に関係のある問題でございますが、原子力予算に関しましても、最初は非常に過少な見積りを大蔵省といたしてもやっておったのでございますが、大蔵大臣初め関係者とよく話をいたしますると、その点は十分了解を得られたのであります。ただ日本の全般的な財政規模の割合に応じて、できる限りの予算措置をしてもらったようなわけでありまして、この点、将来、科学技術の振興に対しましては、十分大蔵当局と話し合いをいたしまするならば、十分な予算措置というわけには、これは難点があるといたしましても、できる限りの規模を造成するような予算措置を講じてもらえるものと考えておりまするし、ぜひともその点に対して努力いたしたいと考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/19
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020・岡良一
○岡委員 いずれにいたしましても、科学技術の試験研究は、すぐ年度内に反対給付の実が結ばれるという話のものでもないので、この辺に対する理解と、いま一つは、やはりそういう実態を把握せられて、大蔵省が予算を査定するときには、これまでの行政事務の単価的な考え方をさらりと捨てて、科学技術を育てようという親心を十分持った、理解ある査定をさせるという努力を、科学技術庁の方でも、また文部省の方でも、十分力強く持っていただきたいと思います。
それからこれは昭和二十九年度の科学技術行政協議会と航空技術審議会の共同で発行されておる年報であります、が、この年報を見ますと、日本の科学技術に関する導入外資の対外支払い額は、現在までで総額が二百九億七百三十六万円ということになっております。しかも二方技術外資に対する支払い額が百四十六億七千三百二十四万円、こうなっております。それでこの技術外資に対する支払いというものが、いわば技術導入に関する契約条件で、そのほかいろいろあろうと思いますが、非常に大枚な導入技術に対する支払いを日本は行なっておるのであります。この点について今後いかにしてわが国の科学技術を——ももろん根本的には、振興させることによって外国の特許その他に対する支払いというものは少くすべきでありましょうが、具体的にいかなる方法によって、このような大きな科学技術の導入による国の負担というものを軽減させていくか、それは科学技術庁の重要な任務ではありましょうが、なお具体的にどういう方法が必要なのかという点について、御所信があれば承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/20
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021・齋藤憲三
○齋藤(憲)政府委員 科学技術の導入のために、外目に向って金を支払う額は、今御指摘の通り、相当の額に上っておることを私ども常に心配しておるのでございますが、主として大きな分野は特許関係にもあると思うのであります。また特許以外のものといたしましても、日本の科学技術がおくれておるために、どうしても外国の科学技術にたよらなければならないというようなところから、年々多額の金が外国に科学技術導入のために流れていくというととは、まことに国家としては嘆かわしいことだと考えて陥るのであります。しかし、今日の生産態勢を近代的な国際水準に持って参りまして、コストの安い、品質のいいものを作り上げて参りますには、科学水準の下なものではとうていできないのでありまして、どうしてもある一定の水準において生産態勢を確立していかなければならないことは、申すまでもないと思うのであります。私は、この点につきましては、日本の特許庁というもののあり方に対しまして、根本的な刷新を加える必要があるということを考えておるのであります。この特許庁の特許の審査の方法及び工業所有権の設定につきましても、今日の段階においては、時間的にもまた審査の方法においても幾多の弱体欠陥があると思うのであります。また、せっかく工業所有権の設定を見ましたものに対しましても、その重要性を検討いたしまして、これを直ちに中間工業に移して、中間工業試験の是なるものに対しましては、大量生産に移して、今まで外国へ流れたところの金を流れないようにするというふうな措置も、きわめて必要なことではないかと思うのであります。特に考えられますことは、この日本のいろいろな製品に対して、国際水準に比較するところの明確な基準がない。たとえて申しますならば、日本には、御承知のように、JISという規格がある。しかしJISという規格がある一方に、また三Sという規格を防衛庁などでは使っている。三Sという規格は、JISよりも非常に上回った規格である。同時にまた、大きな会社では、それ自体において一つの規格を持っておる。それでございまするから、日本の製品の規格が、世界製品の規格に比較いたしまして、ほんとうに遜色のないものでありまするならば、そういう規格品をもって、どんどん外国から来るところの品物に対応して、国内製品において輸入の禁止もできるので、はないか、そういう面もたくさんあるのではないかと考えるのでございます。でございますから、科学技術の導入のために、日本の金が外国へ流れていくということを防ぐためには、科学技術の水準を実質的に上げて参りまして、その科学技術によって、世外の製品に劣らざる製品を日本で作り上げていくということ以外にないと私は思うのであります。しからば、日本の科学技術の実態が、ある一つの品物を作りますのに対して、総合統一した力が発揮されておるかということについて、個々の商品に対して検討を加えてみますと、やり得る場合がたくさんあるけれども、やらないでおるところがたくさんあると思うのであります。と申しますのは、たくさんの科学技術者が外国の市場を検討上て参りました報告の中にも、日本の商品というものは、世界の市場で売れる条件を具備するのに、八割しか具備していないものがたくさんある。あともう三割だけがんばれば、幾らでも外国の特許やその他に依存せずしてやれる品物がたくさんあるにかかわらず、日本の商品というものは八割しかいっていない。だから、こういう問題は、日本の商品の実態を検討すると同時に、世界の市場もよく検討して、日本の生産というもののあり方を決定する必要があるという報告を私はたびたび読んだことがあるのであります。こういうことから振り返って考えますと、日本の科学技術というものは、個個においては非常にすぐれておる面がある。たとえて申しますならば、キヤノンあるいはニコンのレンズは世界一である、しかし、これを写真機に組み立ててみると、一年もたたないうちにシャッターが狂ってしまうというような部面がたくさんある。これを総合統一した形において、日本の技術の水準をもう少し上げれば、日本の商品は何も外国の力を待たず上てやり得るという部面がたくさんあるということも考えられますので、結局は、くどいようでございますが、日本の科学技術の水準を総合統一した形において、もっと水準を上げるということによって、外国に流れるところの日本の金の高を減らしていくということしかないと考えるのでございます。今後科学技術庁が設置せられましたならば、特許の奨励、実施の面に対しましても重点を置きまして、日本人の独創からなるところの発明発見を、過去のごとくおそい速度でもって実現するということでなく、もっと早く実現する方策を講ずると同時に、車要な生産態勢に対しまして再検討を加えて、なるべく総会統一した力を集めまして、世界の生産品に対応することの可能な状態に持っていって今のような悲しむべき状態を是正していきたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/21
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022・岡良一
○岡委員 そこで、私のお尋ねをいたしました問題をさらにしぼって、今も御答弁にありましたように、現在の日本の特許庁のやり方の中に、特に外国における発明あるいは発見等の特許権等に対する補償あるいは技術に対する対価の支払い等の関係において、あるいは審査の手続あるいは審査の機能等において弱体であるというお説がありましたが、なるほどおくれた空白の瞬間を取り返すために、進んだ高度の外の技術を導入して、わが国の科学技術の水準を高める努力は必要ではあるが、それにしても、あまりにも莫大な資金を技術導入に費しておる。これは根本的にはわが国の科学技術の水準を高めるところにはあるけれども、現在のままでは、やはり払わなくて済むべきものを払っておるきらいがある。そこに特許庁の審査の手続なり審査の機関なりにおいて、強化しなければならない面があろうというような御見解でありましたが、幸い特許庁の長官もお見えになりましたので、さしあたり、具体的にどういう点に強化の重点を置こうという点について御見解があれば、お漏らし願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/22
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023・井上尚一
○井上政府委員 中途から私入って参りましたので、御質問のごく一部だけしか今お伺いしなかったのでございますが、外国からの技術の導入によりまして、払う必要のない実施料を払っているというような問題があったようでございます。こういうことに関連して、現在特許庁の審査、審判の機能を強化するのに、どういう方法を考えておるかという問題について、簡単に申し上げます。
特許制度は、言うまでもなく、新しい発明につきましての出願が参りました場合に、いわゆる新規性と申しますか、その発明が公知公用でないというが合には、これに対して特許権を認めるということになるわけであります。こういう場合に、外国の技術がこちらに入ってくる、外国人からの特許、発明についての出願がありました場合に、われわれとしましては、極力当該発明に関する技術の文献をくまなく渉猟しましてそしてその審査の結果、いわゆる新規性がある、公知公用でないという場合に特許権を認めるわけであります。ですから、逆にこれを申しますと、外国では公知になっておるような技術につきまして、日本でこれに関する文献が非常に少い、入手ができないという場合には、今仰せのような、元来、特許権として認める理由がないにもかかわらず、資料の不備の結果として、これを認めるような場合がないではないと思います。そういうことのないように、われわれとしましては、日本の文献は言うまでもなく、外国の技術関係の文献について極力広範囲に入手をしまして、そしてこれを調査し研究しまして、いわゆる公知技術の範囲をなるべく広く明確に把握したいというのが、われわれの審査上の重要な一点であります。ですからそういう観点から従来もいろいろ努めて参りましたけれども、なるべく予算を十分計上しまして、審査に必要なる資料の入手、調査研究に万遺憾なきを期して参りたいかように考えております。幸い今年度は、従来の金額に比しまして、一そう大きな金額の計上を見ることが可能と相なりますので、そういう外国資料の入手につきましては、十分な効果を期待することができる、こういうふうに考えております。なお、審査機能一般の充実強化につきましては、最近、特許、実用新案、意匠、商標を通じての出願の件数が、毎年著しい増加示しつつあるのに対しまして、何と申しましても審査人員の増員が必要でありますので今年度は従来に比して八十名程度の増員を考えております。そういうふうに審査人員の増員ということ、それと同時に、並行しまして、そういう新しい技術の進歩が不断に続いて参りますので、どうしても新しい技術についての研修と申しますか、そういう教育の機会を多くしまして、いわゆる審査官としましての質的な向上の面も考えて参りたいというふうに思っております。人員、資料の両面につきまして、言いかえれば人的、物的両面の審査能力の充実につきまして、従来にも増して、一そうわれわれの方としましては努力する、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/23
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024・岡良一
○岡委員 戦後外国の特許権、業権等について日本が補償した金額の総体、それから外国の特許権申請のここ両三、四年の年次的な申請件数、それから特許庁として十全に責任を持って審査し得るという場合における資料、人員等についての、私どもしろうととしてのわかりやすい構想と、それに伴う予算、本年度査定された予算というふうなことを、あとでもけっこうでございますから、資料としていただきたいと思います。また今お答え願える分はお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/24
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025・井上尚一
○井上政府委員 外国人の日本に対する出願の最近の傾向についての御質問について、ここにお答えを申し上げます。詳しいことはいずれ資料としてそちらへ差し上げる方がいいかと思いますが、特許について昭和二十六年以降の出願の件数を申し上げます。昭和二十六年が三千七十三件、二十七年が二千六百四十二件、二十八年が四千三十三件、二十九年が五千八百三件、三十年が七千百八十六件、これが外国人の日本に対しまする特許の出願の件数であります。このほか実用新案、意匠、商標等もございますが、多少煩雑になるかと思いますので省略しまして、実用新案、意匠、商標を通じました合計の件数を申しますと、二十六年が四千六百八十八件、二十七年が四千三百二十五件、二十八年が六千二百十件、二十九年が八千三百八十四件、三十年が一万七百四十七件。ついでにこれを国別に、昭和三十年について申しますれば、一番多いのはドイツでございまして、四千二百四十九件、次いでアメリカが第二位でございまして三千六百九十一件次が英国でございまして七、百八十七件、スイスが四百九十八件、今申しましたのは、特許、実用新案、意匠、商標の合計の件数であります。こういうふうに大体年々増加を見つつあるという傾向でありますが、同時にこれに対しましてこれは御質問にはなかったことでございますが、日本人の外国に対する出願も毎参年増加して参っております。これを特許権だけについて申しますれば、二十八年が四百一件、二十九年が三百七十六件、三十年が四百二十三件ということに相なっております。こういうような実情でございますので、勢い特許の実施料としまして外国に対して支払います方が、外国から、受け取ります金額に比べて、はるかに多くなっておるというのは、現在の日本の技術の段階にかんがみまして、まことにやむを行ない実情であります。これを金額について申しますと、特許権の実施料と申しますか、使用料についていいますと、受け取りと、こちらからの支払いと、両方を二十九年、三十年について申し上げます。二十九年の受け取り特許権の実施料使用料でございますが、これが一万五千四百六十八ドルに対しまして、二十九年におきまする支払いの方は千百八十七万百四十七ドルというわけで、差引非常な支払い超過であります。これが三十年には、受け取りが非常に増加しまして、受け取り特許権の実施料は十万五千二百六十五ドル、二十九年のちょうど七倍くらいに相なっております。それから三十年の支払いの方は千四百七十六万八千五百三十三ドルで、同様千四百六、七十万の支払い超過という状況であります。これ以外に、いわゆる技術者の招聘でございますとか、特許権利にはなっておらない、ノー・ハウ等に対する支払い、これは受け取り、支払い、いろいろございますが、ついでに申し上げますと、二十九年は受け取りが四十万四千四百五十四ドル、これに対しまして支払いが二百万二千一三百九十六ドル、それから三十年の受け取りが十二万六千二百六十ドルに対しまして、支払いが二百七力四千二百二十五ドル、そういうようなことに相なっております。特許権は、言うまでもなく、万国工業所有権保護同盟条約によりまして、これに加盟しております国——現在四十四カ国加入しておりますが、名国も、特許権等につきましては、内国人と外国人とに平等の待遇を認め合うということが、この第二条に明瞭な規定がございまして、日本も明治三十二年以来これに加入して参っております。ですから、今日といたしましてははなはだ遺憾な状況でございますが、これを長期に見ますならば、外国人からの特許出願に対して特許を与えるという、権利を与えることによりまして、むしろ新しい外国の技術の導入がこれによってだんだん多くなり、結局ひいてはこれが日本の技術水準の向上促進に寄与する、長期的には、今後は戦前と同様に、日本の技術がむしろ海外にどんどん進出するというような機会が多くなってこようかという期待を持って、われわれといたしましては、今後科学技術水準の向上に一そうの努力をいたして参りたいと考えております。なお、特許庁といたしましては、外国に対する日本人の特許についての出願については、いろいろ経費を要しますので、この出願に要する経費の補助という制度を昭和三十年から初めて実施をしましたので、そういう方法等をも通じまして、日本の優秀な技術が外国にこれからますます進出していくということを期待したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/25
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026・岡良一
○岡委員 戦争中の科学技術の進歩の空白を埋めるという意味から、戦後年々二十九年、三十年、それぞれ日本円にして四十億または五十億弱と思われるような、外国の技術に対する補償を支払わなければならぬ立場にあるようであります。もちろん、そういうことをできるだけ少くしていこうということから、科学技術庁も発足したということに相なるわけでありますが、そういう関連性においても、やはり今御指摘のように、外国の高度の科学技術を日本の国に導入する、このことが日本の科学技術そのものの水準を高める大きな誘い水の役割をしているということから見て、科学技術庁というものの、いわば科学技術行政のあり方として一つの根本的な問題は、やはりこの特許に関する行政と、科学技術に関する行政というものは、不可分な関係に置かれている。特に現在私は置かれていると思うのですが、その点について、斎藤次官並びに特許庁長官の御見解はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/26
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027・齋藤憲三
○齋藤(憲)政府委員 御指摘の通り、科学技術行政と特許の関係は、密接不可分の点が非常に多いと私は考えるのであります。申すまでもなく、各国の科学技術のほんとうのあり方は、その国の創造的な英知に基礎を置くということが一番堅だなあり方でありまして、外国の発明発見を土台として、その国の科学技術の根底をつちかっていくということは、非常に尊敬すべき形ではない、私はこう考えるのであります。ただ日本の科学技術に対する重点施策というものが、今日までわれわれの考えるような方向に参っておりません結果、今日までの日本の発明発見というものは、外国に比較いたしまして非常に劣勢であります。ただ、今日われわれの企図すべきことは、この不可分の関係にある発明発見を、将来科学技術庁といたしましてはどういうふうに不可分な形に置くことが適当かという点に対しましては、今後急速に、かつ慎重に検討を加えまして、将来におきましては、この発明発見というものと科学技術行政というものが一体になり得るような措置を講じていきたい、さように考えている次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/27
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028・岡良一
○岡委員 これは将来の研究問題というのではなく、われわれが科学技術庁の設置を認めるということのためには、ぜひともその関係を、私どもは別途一本の行政機構にすべきであるとの主張を持っておるわけですが、しかしそれがかなわなくとも、具体的にいかなる緊密な共同の関係を持たれるのかということは、ぜひこの次の委員会等において、企画庁長官、特許庁長官、通産大臣あるいは正力国務大臣も加わって、私どもはこうすべきであると思うというような構想くらいはお示しをいただきたいと思うのです。それから、ついでにお聞きいたしますが、今、特許庁長官から御報告があったような形で、どんどん外国の新しい発明発見がわが国に導入されてきておる。それが結局特許権という形になっておるわけなんですが、独占的な保護を受けておるということになっておるのです。おそらく今後の科学技術の発展ということになれば、原子力に関する発見発明というものが中心になろうと思う。そして、御存じのように、一昨年の新しいアメリカの原子力法実施以来というものは、アイゼンハワー大統領も、相当思い切って、これまでは特許権は与えなかったものについても、またその公開を禁じておったものについても、特許権の内容を公開し、特許権を公然と付与しておる。これがどんどん日本に入ってきて、日本の方では、今のような姿だと、おそらくここしばらくの間は、原子力に関する新しい特許権というものは、ほとんど無条件にアメリカ側に与えなければならぬという形になる事態が考えられるわけですが、その辺の見通しはいかがで事。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/28
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029・井上尚一
○井上政府委員 今後の見通しとしまして、原子力に関する特許出願がますますふえてくるのであろうことは、これは御意見の通りであろうと考えますが、現実の問題としましては、今までのところは、原力子に関する出願と申すべきものはほとんどないと申し上げてもいいかと思います。これを抑制といいますと語弊がございますが、そういう外国人の特許によって、日本の原子力に関する技術が制約をこうむるというようなことは、もちろん好ましくないわけでございまして、何と申しましても、今後の日本としましては、原子力に関する科学技術を急速に発展向上さしていくということが、基本的にはまず第一点でございます。もう一つ、第二点におきましては、先ほども申しましたように、原子力に関する文献をできる限り広範囲に、多くの種類のものを各国から収集いたしまして、これによって、いやしくも外国において公知公用となっておるような発明技術につきまして、日本で文献がないという理由によって、言いかえれば、新規性がないにもかかわらず、間違って権利が与えられるということは万々ないように、これからわれわれの万としましても十分慎重を期して参るつもりであります。なおこれと並行しまして、われわれ特許庁の関係官、審査官としましても、原子力に関する造詣、うんちくを急速に充実しまして、これに対する審査の能力についても、これから万全を期する考えであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/29
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030・岡良一
○岡委員 原子力に関する発明、発見等に関して、わが国に外国から特許権の申請があったときに、その審査にたえ得る機構として、八十名の審査官が増員されると申されましたが、その中には、担当部門というようなものが専門に構成されたものがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/30
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031・井上尚一
○井上政府委員 特許庁の人員の八十名の増員と言いましたのは、これは全体を通じましての増員であります。原子力に関する担当者といいますか、これに関する現在の審査能力について申しますれば、原子力と申しましても、申すまでもなく核分裂性物質以外に、アイソトープの関係でありますとか、あるいは原子が用の材料の問題でありますとか、そういうような部門につきましては、従来のおのおのの専門の審査官の審査能力でもって、十分審査が可能であると考えております。そして核分裂性物質関係のプロパーの問題についての担当者を今数名きめておりますが、これの今後の教育の方法としましてはへ場合によっては、これを海外へ派遣して留学させる、あるいは日本で大学ないし研究所等に派遣しまして、実地と理論と両方の勉強をし、習得させるということがまず第一であります。こういう方法でなおかつもし万一やむを得ないといいますか、現在の審査官の能力を越えた出願でもありました場合には、臨機の方法としまして、この方面の権威者に委嘱しまして、これに審査を願うというような方法も、ある特殊な部門につきましては、これまでもとって参りましたので、特許庁の審査官の能力が万一不十分な場合には、暫定的には、そういう方法でもってその補強を考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/31
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032・岡良一
○岡委員 何しろ原子力の分野は新しい分野でもあり、日本でももう十数年前から研究を重ね、しかも日進月歩の形で進んできておる原子力の新しい発明発見について、日本の機関がその審査にたえ狩るかどうかということについては、私ども常識上これを非常に危ぶむわけです。そういう場合に、特許庁の方でも、あるいは人を海外に派遣して、つぶさにその間の事情を調査させ、視察させ、研究せしめることももちろん必要ではありましょうし、スタッフをふやされることも必要だと思いますが、一方原子力局ができ原子力研究所も発足するということで、原子力行政というものが今大きく日の目を見ようとしておる。そういう点を十分御考慮になって、その間の調整と申しましょうか、共同関係と申しましょうか、そういう形で遺憾なきを期していただきたいと思うのです。これについては、いずれまた資料等をいただきました上で、あらためて所見を述べたいと思います。
ただ最後に、科学技術庁が政府の責任において発展することはまことにけっこうでありますが、御存じのように、わが国の産業構造というものは、中小企業が圧倒的に多い。これは数字を申し上げるまでもなく、圧倒的に多い。それで、この中小企業は、科学技術の日進月歩の進歩になかなか伴いがたい次金の事情なり、設備の事情なり技術の事情なりを持っておるわけです。そこで、ただ盲目的に科学技術の発展をはかると、資金においても、施設に訪いても、またこれまでの技術段階においても、それにたえ得るものとの間における大きな不均衡が起ってくる危険も考えられる。そういう危険をお感じになりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/32
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033・齋藤憲三
○齋藤(憲)政府委員 非常にむずかしい問題で、的確にお答えできないかとも思いますが、第一段のお考えに対しましては、科学技術庁が発足いたしますと、発明及び実用新案の奨励を行い、並びにこれの実施化を推進するということが条文上にも規定がございますし、発明奨励の問題に関しましては、従来特許庁が所掌いたしておりますものを科学技術庁に移しまして、この点から、重点的に今日の日本の発明及び実用新案のあり方に対する検討を急速に加えていきたいと考えておるのであります。特に原子力に関しましては、お話しの通り、全く新しい面でございますので、専門家の協力を得まして、原子力に関する発明及び実用新案等に関しましては、なるべく違算のないように、急速に発明の奨励を実行していきたいと考えておるのであります。特に一つの考え方といたしましては、将来原子力平和利用の進歩がいかなる方向に向って行われるであろうかということに関しまして重点的な考慮を払って、今日まで世界においてすでに解決せられておる分野は、これは今から発明云々を申しても追いつかないことでございましょうから、将来進歩するであろう方向に対しますところの研究の結果による特許権等は、他国に劣らざるよう、日本において急速に出願をするように努力をしてもらいたい、さように考えております。
第二段の、中小企業と科学水準の振興に関してでございますが、これは御指摘の通り、中小企業は資金面においても非常に微力でありますから、常に進歩する科学技術の水準に追いついて、中小企業がその生産態勢を確保していくことは、非常に問題があると思うのであります。しかし、その点につきまして、中小企業の業態をよく調査いたしまして、どうしても科学水準の段階においておくれておって、いかに努力しても追っつかない、努力しても努力しても、なおかつそれは過去の形態を追うものであって、とうていものにならないというものに対しましては、その業種別によって、科学水準の建前からその生産態勢に改善を加えなければ、私は相ともに不幸な境地に追い込まれるであろう、そう考えるのであります。従いまして、真に中小企業というものを近代的な生産態勢に持ち上げていくということに対しましては、まず第一に、そのやっておる中小企業の業種別に十分な検討を加えてみる必要があるのではないか、さように考えられるのであります。こういう点に関しましては、科学技術庁といたしましても非常に大きな問題として取り上げていかなければならない。実際科学技術を生産の態勢にマッチさせまして、科学技術の向上によって、日本の生産態勢を近代生産の態勢に上昇せしめるということは、非常に大きな問題であります。今日までにおける中小企業対策というものは、この点からは万全を期していなかったと私は思うのであります。今日までの中小企業対策を聞きますと、単に金利をもっと安くしろとか、あるいは親会社、子会社の支払い関係を是正しろとか、いろいろな点に重点が置かれておったようでございますが、果して中小企業そのものが今後努力を続けていけば発展し得るような業態にあるのか、やっておる実態が、今日の科学水準に対比して、その面ではもういかに努力しても努力上がいのないような状態において努力しておるのか、そういうその仕事そのものの実態に対しては、あまり厳密な検討が加えられておらなかつたのではないかと私は考えるのであります。日本のように、生産状態が、中小企業者に負うところが非常に多い国柄におきましては、中小企業そのものの業態のあり方というものが、現代の科学水準に対比いたしまして果してやっていけろのであるか、やっていけないのであるかということに対しましては、今後科学技術庁といたしましては、行政の大逆な部面といたしまして、これに十分なる検討を加えていかなければならぬと思うのであります。でありますから、どうしてもやっていけないものは、これはやっていけるような態勢に切りかえていかなければならない、そう私も考えております。私もよく町工場を見て回るのでございますが、すでにセンターの狂った旋盤で、勘でもって精密機械をやる、そういうようなことでは、とうていオートメーションの発達いたします現代においては、努力してもだめなことだと思うのです。でありますから、センターの狂った旋盤は、何とか資金の面を融通して、りっばな旋盤を与えるとか、あるいはシェーパーの近代的なものを備えさせるとか、そういうような業態に持っていかなければできていかないのではないか、さように考えておるのでございます。今後はそういう点にも十分留意いたしまして、中小企業の面におきましても、近代科学の水準において努力を重ねるならば、その業態が発展していくような状態に置きかえる必要があるのではないか、さように考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/33
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034・岡良一
○岡委員 昨年度から本年度の予算を見ましても、あるいは政府の経済五カ年計画とか産業の六カ年計画を見ても、新しい機械の導入ということが強調されて、巨界銀行等からも、石炭鉱業においては、縦坑の掘さく用機械等の設備を近代化するといったようなことで、五百七十億からの金の融資を受けておる。しかしその恩典を受ける炭坑は、大手十二社で、機械工業はほんの選ばれたる大会社という形で、今日までの科学技術の応用の姿を見ても、大体大経営に重点を置いている。一方また日本の中小経営というものは、いわゆる系列化の名前においてだんだん大経営に支配され、従属させられていく傾向になっている。そういう傾向の中に、今度科学振興のために政府が音頭をとって科学技術庁を作り、そこで日本の科学技術水準が高められる。そのこと自体はまことにけっこうな話ではあるけれども、しかしそれを自分たちの工場に導入して、自分の工場の生産に活用できるという資金も伴わない。またこれまでの技術がそこまでいっておらない。もちろん施設はきわめて未熟な施設ということになれば、もう日本の中小企業というものは、科学技術振興の名のもとに自然淘汰を受けていかなければならぬという、そういう気の毒な運命をわれわれは予想で送る。であるから、日本のように圧倒的に中小企業の多いこういう産業構造の中で、科学技術を導入するということのためには、そのような憂慮すべき事態に対しては、政府としてもやはり責任ある配慮をわれわれに示してもらわなければならぬ。現に、中小企業には協同組合がある。その法律が改正され、企業組合が作られる。しかし現実には、協同組合といいましても、共同の事務所を持っておるものは一〇%にも満たない。いわんや生産のための共同施設を持つものに至ってはきわめて少い。企業組合の精神も何ら活用されておらない。これは中小企業自体にも、共同へという気持の上での目ざめがまだ足らないという点もあろうかと思いますが、しかしそれだけにその方面に対する新しき科学技術の導入による近代化に対しては、まだまだ考慮すべき問題が残されておる。われわれは、科学技術庁設置法を成立せしめるということには異議はありませんが、やはりその結果起り得べき日本の中小企業に対して、これらの科学技術をいかに導入し、彼らの経営をより新しき科学技術の採用によっていかに繁栄させるかという対策については、やはり政府としても十分なる配慮が願いたい。また研究に対する配慮という裏づけがなくては、われわれもうかつに科学技術庁設置法に賛成できないと言わなければならない。これは特に齋藤さんの専門の問題であります。中小企業金融公庫の問題もありましょう。現在の協同組合の問題もありましょう。そういう点、やはり通産省なり企画庁なりとして、明確な一応の御構想だけでもお示しをいただくというのが、この際私どもとしても非常に不可欠な問題だと思いますので、この次の委員会までに、何とかその御構想がおまとまりになれば、御報告を願いたいということを希望いたしまして、私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/34
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035・齋藤憲三
○齋藤(憲)政府委員 ただいまの御質問に対しましては、よく大臣とも相談して、次の機会にお答えすることにいたします。ただ、経済企画庁が立案いたしました鉱工業の雇用問題は、お説の通り、大企業が企業の合理化をやりますと、ここに雇用関係の増大をはかることができないので、当然中小企業の発達によって雇用関係の全きを期するというふうな方向になっておるのであります。そこで、先ほども申し上げました通り、私たちといたしましては、科学技術の振興によって、今日の中小企業がさらに発展し得るような業態にこれを持っていきたい、さような希望を持っておるのでありまして、これに対するもう少し掘り下げたお答えは、次の機会に申し上げることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/35
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036・有田喜一
○有田委員長 本日はこの程度にいたし、明二十八日、午前十一時より理事会、明後二十九日午前十時より委員会を開会いたし、質疑の後、討論、採決に入りたいと存じますから、さよう御了承願いたいと思います。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102403913X00719560227/36
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