1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年二月十四日(火曜日)
午前十時十七分開議
出席委員
委員長 徳安 實藏君
理事 大島 秀一君 理事 荻野 豊平君
理事 瀬戸山三男君 理事 前田榮之助君
理事 三鍋 義三君
逢澤 寛君 伊東 隆治君
大高 康君 久野 忠治君
志賀健次郎君 田中 彰治君
二階堂 進君 廣瀬 正雄君
今村 等君 島上善五郎君
楯 兼次郎君 中島 巖君
山下 榮二君 山田 長司君
出席国務大臣
法 務 大 臣 牧野 良三君
建 設 大 臣 馬場 元治君
出席政府委員
法務事務官
(訟務局長) 濱本 一夫君
建設政務次官 堀川 恭平君
建設事務官
(大臣官房長) 柴田 達夫君
建設事務官
(計画局長) 町田 稔君
建 設 技 官
(河川局長) 米田 正文君
建 設 技 官
(道路局長) 富樫 凱一君
建 設 技 官
(住宅局長) 鎌田 隆男君
委員外の出席者
専 門 員 西畑 正倫君
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二月十三日
委員楯兼次郎君辞任につき、その補欠として久
保田鶴松君が議長の指名で委員に選任された。
同月十四日
委員荒舩清十郎君及び久保田鶴松君辞任につき
その補欠として久野忠治者及び楯兼次郎君が議
長の指名で委員に選任された。
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二月十一日
東北興業株式会社法の一部を改正する法律案(
内閣提出第三四号)
同月十日
国道十七号線大宮、鴻巣間の道路改修工施行に
関する請願(松永東君紹介(第四七四号)
同(福永健司君紹介)(第四七五号)
金ケ作地区に住宅建設反対に関する請願(片島
港君紹介)(第四七六号)
阿閑村の海面埋立工事反対に関する請願(福田
昌子君紹介)(第四七七号)
地盤変動対策事業促進に関する請願(五島虎雄
君紹介)(第五四七号)
建設業法施行令の一部改正に関する請願(三宅
正一君紹介)(第五七三号)
上桂川の治水対策確立に関する請願(岡本隆一
君紹介)(第五七四号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
道路整備特別措置法案(内閣提出第二三号)
日本道路公団法案(内閣提出第二四号)
東北興業株式会社法の一部を改正する法律案(
内閣提出第三四号)
建設行政に関する件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/0
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001・徳安實藏
○徳安委員長 これより会議を開きます。
道路整備特別措置法案、日本道路公団法案の両案は関連がありますので、一括して議題として提案理由の説明を聴取いたします。ただいま建設大臣が閣議中でございますので、将来前例としないという御了承を得まして、本日は堀川政務次官から説明を聴取することにいたしたいと思います。御了承をお願いいたします。堀川政務次官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/1
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002・堀川恭平
○堀川政府委員 ただいま議題になりました日本道路公団法案につきまして、提案の理由及びその要旨を御説明申し上げます。
政府は、道路整備事業促進の一環として昭和二十七年度以来、道路整備特別措置法及び特定道路整備事業特別会計法の規定に基きまして、建設大臣の行う有料道路整備事業及び地方公共団体の行う有料道路整備のための資金の貸付を行なって参ったのでありますが、現在及び将来の交通情勢に即応してさらに道路の整備を促進するため、民間資金の導入をはかることによって、有料道路の建設を飛躍的に拡充するとともに、これを総合的かつ効率的に運営する必要がありますので、これがため新たに日本道路公団を設立することといたしたのであります。本法律案はこの日本道路公団の組織、業務、財務、会計等について所要の規定を設けようとするものであります。
以上がこの法律案を提案いたしました理由でありますが、次に本法律案の概略を御説明申し上げます。
まず第一に、日本道路公団は法人といたしまして、その資本金は公団が設立された時において、特定道路整備事業特別会計の有する資産の価額から負債の金額を控除した額に相当する額で政府から出資されるものとなっております。
第二に、公団の役員として総裁一人、副総裁一人、理事五人以内及び監事二人以内を置くこととし、その任期はおのおの四年といたしております。
第三に、公団の行う業務といたしましては、あわせて御審議を願いますところの道路整備特別措置法に基く有料道路の新設、改築維持、修繕その他の管理及び有料道路の災害復旧工事を行うことを主たる業務とし、あわせて有料自動車駐車場の建設及び管理並びに国または地方公共団体の委託による道路の新設、改築等をも行わせることといたしてあります。
第四に、公団の財務及び会計でありますが、公団の予算、事業計画、資金計画、財務諸表、道路債券の発行、借入金等につきましては、その業務の公共性にかんがみまして、建設大臣の認可または承認を受けることを要するものといたしております。
第五に、公団は、建設大臣の監督に服するものとし、建設大臣は、公団に対して監督上必要な命令等をすることができることとし、また公団の業務の監督等に当らせるため、特に日本道路公団監理官の制度を設けることといたしております。
最後に、公団の設立に関する事務は、建設大臣が任命する設立委員に処理させることとし、公団成立の際に、現に特定道路整備事業特別会計の有する権利及び義務は、公団が承継することといたしております。
なお、日本道路公団が昭和三十一年度に施行すべき事業に必要な資金は八十億円でありますが、これは一般会計からの補助金二十億円、資金運用部からの借入金十億円、道路債券発行による借入金五十億円をもって充当する予定であります。
以上がこの法律案の提案の理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さらんことをお願いをする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/2
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003・馬場元治
○馬場国務大臣 ただいま議題になりました道路整備特別措置法案につきまして、提案の理由及びその要旨を御説明申し上げます。
現行の道路整備特別措置法は、有料制によって道路の整備を促進する措置を講ずるため、去る第十三回国会におきまして御審議の上、制定されたのでありますが、以来政府におきましては、同法の規定に基きまして、建設大臣の行う有料道路整備事業及び地方公共団体の行う有料道路の整備のための資金の貸付を行い、有料道路の整備促進に努力して参りまして、すでに十三カ所が完成し、十六カ所の工事を継続施行中であります。
しかしながら、政府といたしましては、現下の国及び地方公共団体の財政事情にかんがみ、かつ今後の交通情勢に即応するため、民間資金の活用による有料道路整備事業の拡充とその総合的、効率的運営をはかる必要がありますので、あわせて御審議を願っております日本道路公団法案によりまして、新たに日本道路公団を設立することといたしたのでありますが、これに伴いまして公団の行う有料道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理に関し、道路法に対する特別の措置を定めるとともに、都道府県または市町村の行う有料道路についても所要の規定を整備する必要がありますので、現行の道路整備特別措置法を廃止し、新たに道路整備特別措置法を制定することといたしたいと存ずる次第であります。
以下、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一に、公団は、建設大臣の許可を受けて、一定の要件に該当する一級国道、二級国道、都道府県道または指定市の市道を新設し、または改築して料金を徴収し、工事完了の後料金徴収期間が満了するまで当該道路の維持、修繕及び災害復旧を行うことができることとしたのであります。
第二に、公団は、建設大臣の許可を受けて新設し、または改築した道路の維持及び修繕に特に多額の費用を要し、かつ当該道路の道路管理者が維持及び修繕を行うことが著しく困難または不適当と認められるときは、建設大臣の許可を受けて、さきに申し上げました料金徴収期間の経過後においても、当該道路の維持、修繕等を行なって料金を徴収することができることとしたのであります。
第三に、公団は、有料道路を管理するに当っては、その管理に必要な限度において道路管理者にかわって一定の権限を行うことができることとしたのであります。
第四に、都道府県及び市町村である道路管理者は、建設大臣の許可を受けて一定の要件に該当する都道府県道または市町村道を新設し、または改築して料金を徴収することができることとしたのであります。
第五に、料金徴収の対象は、原則として道路交通取締法にいう諸車及び無軌条電車とし、料金の額は、道路の通行者または利用者が受ける利益の限度内とし、その基準は、政令で定めることとしたのであります。
以上がこの法律案の提案の理由及び要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/3
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004・徳安實藏
○徳安委員長 次に東北興業株式会社法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。馬場建設大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/4
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005・馬場元治
○馬場国務大臣 東北興業株式会社法の一部を改正する法律案につきましてその提案の趣旨及び法案の概要を御説明申し上げます。
東北興業株式会社は、東北地方の振興をはかるため同地方における殖産興業を目的として昭和十一年に設立された会社でありまして、政府の財政援助のもとに東北地方の振興に関する各種の事業の経営と投資を行なって、同方の開発に大きな役割を果して参ったのでありますが、戦後政府の財政援助がすべて打ち切られたため、事業を整理縮小して近年に至っております。
今回政府におきましては、同会社に東北地方開発の一環としての使命を一層積極的に遂行させるのを適当と認めるに至りましたので、同会社の事業資金の調達に万全を期するため、同会社の発行する東北興業債券の元利の支払いについて政府が保証をいたすことを必要と認めるものであります。
現行の東北興業株式会社法には、東北興業債券の元利の支払いについて政府が保証をなし得る旨の規定がありますが、この規定は法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律の規定によりましてその効力を停止されている状態であります。そこで今回同法の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、政府が東北興業債券の元利の支払いについて保証契約をすることができるように規定を整備いたそうとするものであります。
以上がこの法律案の提案の理由と法案の概要であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/5
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006・徳安實藏
○徳安委員長 以上各案に対する質疑は次会にいたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/6
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007・徳安實藏
○徳安委員長 建設行政に関する件につきまして調査を進めます。
前会に引き続き、馬場建設大臣並びに政府当局に質疑を行います。前田榮之助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/7
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008・前田榮之助
○前田(榮)委員 建設大臣に御質問を申し上げます。昭和三十年度の予算にいたしましても、今審議中の三十一年度予算にいたしましても、健全財政の建前から予算編成は一定のワクを設けて、そのワク内で各予算とも緊縮財政を堅持するために、各省とも非常に膨大な要求があったのにもかかわらず、それを大蔵省において一定の査定をされて、余儀なく不満足ながらも各省は、縮められた予算の中で施行しなければならない羽目に立ち至っておることは御承知の通りでありまして、大臣におかれましても、予算の要求、ことにお持ちになっておる抱負経綸が十分に施行できない点については、非常に苦慮されたことと存ずるものでございます。しかしながら現馬場大臣が三十年度の予算編成には直接関係しておられぬので、このことをしいて追及しようとは思いませんけれども、やはり同じ政党のもとに内閣が組織され、この内閣において編成されたものは、たとい前任者がやったことといえども、全然責任なしと逃げるわけにはいかないと思うのであります。そこで私がお尋ね申し上げたいのは、昭和三十年度の、今提出されました補正予算の出で、公共事業費が相当大幅に削られておるという点であります。昭和三十一年度の予算編成についても、三十一年度の予算を完全にこなし得るという見通しのもとに編成されておると思いまするが、三十年度があれほど窮屈な予算で、予算が足りなくて、これを増額するのに苦慮されたはずなのにもかかわらず、それが相当大幅に削減されておる。そういうことになりますと、三十一年度の予算もそれだけゆとりのある予算であるかどうか、また三十一年度の予算を十分にこなし得る見通しと自信があるのかどうか、三十年度がこういう状態であるならば、三十一年度の予算も全くわれわれは全幅的に信頼をして、自信をもってやっておられるとは想像がつかぬということを言わざるを得ない事情にあると思うのであります。このことは三十年度の予算についても当該大臣は重大な責任があると思う。国会において国民の代表者によって決定され、三十年度の公共事業はかくかくやるのだということを明確にし、国会に責任を持ち、また国会議員もこの程度なら必ずやるべきである、こういう責任をもって議決を行い、そのことが、いかなる理由があっても、公共事業費はあまりに大き過ぎるからこれは要らないのだということになるならば、天変地変か何かの変動、情勢の変化というものがない限りにおいては、それは言えないと思うのであります。にもかかわらず、他の、予算の組みかえとかいろいろな理由から来ているとしても、それは内閣全体としてはやむを得ない事由かもわかりませんけれども、公共事業に関係する当該大臣といたしましては、これは重大な責任であると思う。こういう点について三十一年度の予算に対する編成の自信またその責任、こういう点を、三十年度の今日の状態を見た観点から、大臣の所信をまず第一にお伺いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/8
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009・馬場元治
○馬場国務大臣 予算が議決せられまして国会を通過いたしました以上は、その運営の衝に当りますわれわれといたしましては、その議決の趣旨に基きまして、予算を完全に消化して事業を滞りなく施行いたしますことが当然の責任であると存じます。しかるところ昭和三十年度の予算の成立は、御承知のようにずいぶんおくれてしまいまして、従ってこれを実行に移す時期がおそくなりましたために、完全に消化し得ない部分が出て参りましてまことに遺憾に存じております。従来も完全に消化し切れない部分が若干出たことは、これまた御承知の通りでありますが、さればといって、それが決して肯定せられることでなく、完全に消化しなければならぬ筋合いのものでありますことは、まさにお説の通りであります。ただ三十年度はそういった特殊の事情もありまして、消化し得ざる部分が残りましたことは遺憾ではありますが、現実の姿として、さような特殊の事情のためにある程度の消化未了のありましたることは御了承を賜わりたい、かように存じます。
なお三十一年度の予算について、三十年度がこの状態であったから三十一年度も消化し切れないのではないか、自信のない予算ではないかという御疑念を持っておいでのようでありますが、御承知のように公共事業費は、ある程度の削減を余儀なくされたような事情でありまして、まだまだたくさんの公共事業費を組みたいというのがやまやまでありまするわれわれの立場といたしましては、極力これが完全消化に努めまして、遺憾なきを期したい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/9
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010・前田榮之助
○前田(榮)委員 三十年度の予算に関しましては、予算の議決がいろいろ当時の事情からおくれて、執行する期間が非常に縮められた関係上、ついに予算が完全に消化できなかった、こうおっしゃるのでありますが、当時の実質的な事情から言いますると、そういう情勢におかれておるとも考えられないことはないのでありますが、しかしながら、施行期間が短かいということは、予算成立また予算提出の当時も大体これは見通しがつくのであってそういうことで当該担当者が言いのがれるということは、これは許すべきではないと思うのであります。ことに公共事業という国家の発展の基礎ともなるべき重要な仕事といたしましては、もし期間が短かければ、施行に対して非常な努力を払って、これを消化するように万全を期さなければならないはずなのであります。またそれの見通しがつかなければ、それは年度の終りごろまで待って補正するなどというようなことでは、これは国民に対する忠実なゆえんではないと思います。これは予算を編成する、また予算を審議するときにおいて、施行の期間が非常に短かくなることは、当時見通しがつき、十分わかっていなければならないはずであって、そういうことでは私は国民が納得いかないと思う。それでは公共事業等のような重要なものに対する誠実な態度ではないと思う。もっともっとそこには重大な補正をしなければならぬ今日の状態になったことについての理由が説明されない限りには、われわれは納得するわけにはいかないのであって、ただ単に期間が短かかったために、ついにかようなことになったということで、これを見のがすというわけにはいかないと思う。何かそこにいわゆる公共事業という重要な仕事をやる責任の重い立場にあるところの建設大臣として、この点もう少し重大な理由を、具体的に一つ御説明を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/10
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011・馬場元治
○馬場国務大臣 御所見まことにごもっともでありまして、私どもといたしましては、つつしんで拝聴しなければならぬと、かように考えます。ところが事実問題といたしまして、何分にも本予算の通過いたしましたのが、御承知の通り非常におくれましたので、事業の進捗がそれだけはばまれて、非常な努力をいたしましたにかかわらず、かような結果になったというこの現実の事情を御了承賜わりたいと存じます。決して怠けているわけではないのでありまして、災害の査定なんかにつきましても、係官は昼夜兼行でやって、へとへとになるまで努力をいたしておるのでありますが、以上申し上げましたように、何分にも時日が非常な制約を受けておりましたために、思う存分のことができなかったことは、何とも遺憾千万に存じております。今後はいやしくも議決をいただきました予算は完全に消化いたしまして、所期の目的を達成することのできますように、さらに一段の努力を払いたいと、かように存ずる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/11
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012・前田榮之助
○前田(榮)委員 将来非常に誠実を約束されるので、これ以上追及することを差し控えたいと思います。ただこの中で、たとえば住宅の問題といたしましても、これは鳩山内閣の政策の中で、国民に公約された政策の最も重大な問題であるのであります。ことに今の日本の現情からいたしましても、国民生活の衣食住の中で、衣も食も大体に国民の希望するところに近いところまで進んでいるが、残念なことには住の点ではなお非常に不足を感じておるのであります。またこれは日本ばかりでなしに、世界各国の政治情勢から見ましても、この衣食住の中の住宅については、各国とも全力をあげて、競うてこの解決に努力をいたし、相当の成果を上げているにかかわらず、残念なことには日本の住宅は、これはただ単に現内閣並びに与党だけの責任ばかりでなしに、国民全体あるいは政治家全体の責任ともいうべき重大な問題が、まだ見通しの上からいっても、十分な住宅問題解決の方向というものが完成されておらない情勢であると私は思うのであります。そこで馬場建設大臣に進んでお尋ね申し上げたいのは、住宅政策の三十一年度の四十三万戸の公約されておる問題であります。この四十三万戸の住宅を完全に建てられるか、四十二万戸約束されました三十年度がやはり公約された通りではなかった。それを今度は三十一年度に果して——今全力をあげてやると言われたから、おそらくそれはできないとはおっしゃらぬと思いますが、四十三万戸は完成するということを言明されることができるか、と同時に、この四十三万戸を建てることによって日本の住宅政策、現存二百七十余五月も不足しておるものを、何年間で問題を解決しようとされるかという長期計画、この長期計画の見通しというものが計画されていない限り、国民は四十三万戸を建てるとか、四十二が戸を建てるとか言われても不安を感じるのでありましてこれはまた各国もそういう計画については、十分具体的な案を立てて進んでおるわけですから、この点についての馬場建設大臣の長期計画に対する御所信をお伺いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/12
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013・馬場元治
○馬場国務大臣 お話の通りに住宅の問題はきわめて深刻でありまして、現在のいわゆる衣食住のうち一番切実な問題となっておるのであります。従いまして住宅問題の解決につきましては特に心魂を打ち込まねばならぬ、かように考えておるのでありますが、ただいまお話の通りに住宅対策については、ただ一時的の対策では相済まぬのでありまして、長期の計画を持たなければならぬことは当然の次第であると存じます。そこで現在わが国における住宅の不足数が幾らであるか、昭和三十年の四月一日現在の不足数を大体二百七十二万戸と推定をいたしております。そこで年々火災その他によって失われます戸数、老朽して使用に耐えなくなった戸数、そういうものを合せまして約二十五万戸と推定をいたし、十年間で住宅問題を完全に解決をするという目途のもとに計画を立てまして、昭和三十年度よりこれを実施する、かような考えを持っておる次第であります。三十年度の四十二万戸、三十一年度の四十三万戸の計画というのは、そういった長期計画に基きまして樹立いたしました計画でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/13
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014・前田榮之助
○前田(榮)委員 長期計画のもとの、いわゆる十カ年計画によって、四十三万戸の住宅不足を解決していくと言われるのでありますが、そうだといたしまするならば、そこにほんとうにお言葉通りに政治性があるといたしますならば、ただ政府出資の住宅がその中の半数にも足らないような計画でおりますと、これは今日非常に国民が住宅不足の必要性を痛感をしておる間は非常な努力を払いますから、民間資金による二十数万戸の建設もある程度までは、見通しもつかないとも言えないと思うのでありますが、これは私の見通しといたしましては、現状においてここ二、三年たちますと、民間資金によるところの建設は何らかの方策を講じなければ、そう簡単にはいかぬ。たとえばこれに対して何割かの国庫融資あるいは補助その他資材等の供給部面による援助というような施策を加えない限りは、これは支障を来たすのではないかという杞憂を持っておるのであります。そういうことについて何らかのお考えがおありかどうか。また近代的科学の進歩の上に立って、この住宅建設に一大改革を加えるときがすでに来ておるのではないかと思うのであります。いたずらに大材を使うとか、いたずらに今日の鉄筋コンクリートの建設の従来の方式だけを見ておるということでなしに、新しい科学の進歩によるところのものを、すでにドイツあたりでは発見され、進んでおるやに聞いておるのでありますが、日本にそういうことをやるのには、相当ないわゆる住宅建設を科学的に一大発展をさせるための政府の施策あるいは政府の援助、こういうものが日本の今の学界や技術界においては必要な点であると思うのであります。そういう点に対する建設大臣の御所信をお伺いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/14
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015・馬場元治
○馬場国務大臣 政府の資金による建設が少いじゃないか、こういう御意見であります。でき得ますれば政府資金をうんと投じまして、できるだけたくさん、しかも安いものであり、設備のよいものであり、坪数もよけいにいたしたい、かように考えるのでありますが、何分にも思い通りに現在の財政状態ではできないことを遺憾に存じております。自力建設の見込みにつきましては、だんだん国民所得も上昇して参っておりますし、ただいまのところ自力建設の意欲が漸次衰えるであろうということは考えておりません。おそらく建設の意欲は、国民所得の増大に比例いたしましてかえって高揚するのではないか、かように考えておる次第であります。なお住宅の建設につきまして、現在のようなやり方がさらに飛躍的に改革せられる時期が来るのではないか、これはまことにごもっともな御意見でありまして、私どももその点には特に注意をいたしまして、現在のままの建築の方法が最高のものであるということは決して考えておりませんので、列国の例などもよく調査をいたし、日本の風土、気候その他の環境に適応する最良の建築の方法が何とか見つからないものかと、実は研究を続けておる次第であります。なお学界あるいはその道の専門家等の意見も聴取をいたしておるのでありますが、今後ともそういった方面には特に力を入れまして、なるべくりっぱなものが安い費用でできないものかと、住宅の構想というものの根本的な問題に関連をいたしましてさらに研究を続け、万全を期していきたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/15
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016・前田榮之助
○前田(榮)委員 今科学技術の進歩による新しい住宅の建設については、馬場建設大臣も将来非常に熱意を込められる模様でありますし、今新しい方法として現われようといたしておるドリドール利用の不燃化建築の問題もありますが、これはまた後ほど局課長さんに御質問申し上げた方が適当だと思いますから、後日にお譲りすることにいたします。
そこで建設大臣にお尋ねいたしますが、今度は災害復旧の問題であります。従来日本は災害国ともいわれており、災害復旧事業は歴代の大臣が三カ年復旧で、三・五・二の比率で行うということをしばしば本委員会でも約束され、努力は払われたのでありますが、大体実行された例はほとんどないのであります。ただ昨年、本年等の災害が幸いにも非常に少かったために、そのことなくして、そう心配する事態に至っておらないのは国家のためにもまことに慶祝すべきことであると思うのでありますが、ただ、こういう年ばかりは予想されないので、災害ということを相当考えなければならぬ。それで馬場建設大臣は、災害復旧については、従来の大臣が約束されたような、つまり三カ年復旧という方針をそのまま踏襲されていくのか、また新しい構想を持っておられるのか、この点が第一点であります。
第二点といたしましては、本年も災害の時期になりまして、災害がないとは保証がつきません。おそらく私は、やはりある程度までは必ずあるものだと思うのでありますが、そういう場合において、従来は予備費というものが予算の中に相当額計上されてそれに備えられておったのであります。今年の予算の中には十分な備えがないと私は思う。災害が昨年と本年非常に少かったというところから、国民に一つのゆるみがきていると同じように、政府にもゆるみがきているのじゃないか、こういうことはきわめて不健全な態度であると思うのでありますが、馬場建設大臣のこの二点に対する災害復旧の所信をお伺い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/16
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017・馬場元治
○馬場国務大臣 災害復旧は、従来とても思うような成績を上げ得ていないということはまことに遺憾千万なことであるのでありますが、幸いにして本年度は大きな災害がなくて済みましたことはまことに天佑とも申すべきことでありまして御同慶にたえないのであります。そういう時期なればこそ、将来のあるいは発生することあるべき災害に備えまして災害の復旧をはからなければならぬ、さような考えを持っておりますることは前田さんと全く同様でございます。ただ、予算がなかなか思う通りに参りませんで、災害の復旧を迅速に全面的に行うということが事実の上においてできていないのはいかにも残念でありますが、御承知の昨年の負担法の改正に基きまして、緊急なるものについては三年でこれを完成いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/17
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018・前田榮之助
○前田(榮)委員 法務大臣が来られたので、中島君が待っているようでありますから、そちらを先にして下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/18
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019・徳安實藏
○徳安委員長 それでは、牧野法務大臣が御出席になりましたから、そちらの方の質疑を行います。中島巖君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/19
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020・中島巖
○中島(巖)委員 法務大臣の御所見伺うと同時に、これに関連して建設大臣の御所見も伺いたいのですが、参議院の方から呼ばれているそうでありますけれども、なるべく努めて建設大臣もこの席におっていただきたい、かように委員長にお願いするわけであります。
そこで法務大臣にお伺いいたしますが、私が本日法務大臣の御出席を要求いたしましたのは、ダム災害に対する賠償の問題についてお伺いしたがったからであります。建設省所管事項のように見えますが、その影響するところが全国にわたり、また全国的に見て同様のケースが幾多あるので、これに関連する法も広い範囲にわたっております。そのため法務大臣の御出席をわずらわして御所信をお伺いいたしたいと考えたのであります。私は最初法務大臣の御出席をわずらわすについて抽象的の質問をいたす考えでありましたが、今までの歴代の法務大臣は官僚出身の方が多く、事なかれ主義、いわば責任回避のように見えて仕方なかったのであります。ところが牧野法務大臣はきっすいの政党人であり、御性格も公明正大、気宇闊達であることを私は深く信じていますので、お尋ねせんといたします条件の具体的なアウトラインを申し上げて、率直なる御所見をお伺いいたしたいのであります。
具体的な問題としまして、天竜川地域に中部電力所有にかかるダム式の泰阜発電所なるものが昭和十二年に建設されたのであります。これ以前は、この地点の上流、下流を問わず河床が下り、堤防の根継ぎによって堤防の補強をなしてきたのであります。この発電所堰堤は、当時の河床より三十一メートルの高さで構築され、その上部に高さ七メートルの開閉自在の門扉が取りつけられているのでありますが、すでに昭和十八、九年ごろ、すなわち設置後数年にして土砂の堆積は三十一メートルの堰堤の高さにまで達しているのであります。従って上流地方も数メートルの河床の上昇を来たしたところがあり、この河床上昇地域は上流二十キロメートル山吹村の地点にまで達しているのであります。この堰堤の名称は、地点が長野県下伊那郡泰阜村門島であるので、俗に門島ダムと呼ばれていますが、この門島ダムの下流地域並びに上流約二十七キロメートル以上の地域は、河床は門島ダム設置当時と何ら変化がないのであります。河床上昇は門島ダムによることは明らかなのであります。河床上昇が顕著になった昭和二十年ごろより、この河床上昇地域に当る川路、竜江、竜丘、下久堅、松尾、喬木、座光寺、豊丘、市田、上郷等関係十方村は、今までにかつて見られなかった堤防の決壊、耕地の流失等の災害が何回も起っています。災害のないところは、河床上昇のため、また地下水の浸透のため二毛作地帯が一毛作となり、その一毛作も冷害のため減収になっています。地方事務所耕地課の調べでは、関係十カ村で二百八十八町五反をこえています。また日本三大桑園の一つといわれる川路村、竜江村の桑園地帯も、この地下水の浸透のため桑の葉が黄色となり、枯死するのが順次拡大しつつある状態であります。地方事務所耕地課の調査によりますと、この間の大きな水害だけで農耕地及び農作物の損失が十三億五千八十七万七千円に達し、また長野県土木部で施行した災害復旧並びに防災工事は、河床の上昇顕著となった昭和十九年より昭和二十九年の十一カ年間に投じた工事費は、八十六カ所九億四百三十一万三千円に達しています。また天竜川は国の直轄河川でありますので、中部地方建設局の防災工事も行われ、ことに喬木村伊久間等は二回にわたる堤防のかさ上げ工事をしているのであって、相当莫大なる国費を投入していると思われるのであります。
私はこれらはすべて門島ダム設置による河床上昇が原因であると考えるのでありまして、具体的に門島ダムが原因しているかいないかの事項に関しては、後刻建設大臣並びに建設省側の政府委員に質問をいたすつもりであります。この問題は、一見一地方の問題を取り上げたごとくに見えますが、実は一地方の問題ではありません。国は現在電源開発事業、また農林省関係では愛知用水公団を初めとする農地改良事業等、また建設省が現に実行しつつある多目的ダムの設置等、国の予算の上で大きな比重を占めているのであります。
そこで法務大臣にお伺いいたしたいことは、ダム設置のために起きた災害に対するその責任の所在を明らかにするために、関係法についての御所見であります。まず第一に憲法第二十九条に、「財産権は、これを侵してはならない。」と規定されていますが、これに対する御所見をお承わりいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/20
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021・牧野良三
○牧野国務大臣 お答えをいたします。ただいまお述べの事実によりますと、容易ならぬ損害があるようであります。これはすべて賠償しなければなりません。具体的の事実をお示しでありますから、調査をいたしまして、まず第一には、それが公けの営造物の関係を持っておるか、それともそうでないか、それによりまして、民法の規定によるか、国家賠償法の規定によるかが違って参りますけれども、お示しのような場合にそのまま放置しておいてはならないと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/21
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022・中島巖
○中島(巖)委員 だいぶ法務大臣から具体的な問題に入っていただいて、大へん話が進行するように考えるのであります。それで次に法務大臣にお伺いいたすのは、憲法第二十九条と関連いたしまして民法七百九条並びに七百十七条であります。民法七百十七条におきましては、「土地ノ工作物ノ設置又ハ保存二瑕疵アルニ因リテ他人二損害ヲ生シタルトキハ其工作物ノ占有者ハ被害者二対シテ損害賠償ノ責二任ス但占有者カ損害ノ発生ヲ防止スルニ必要ナル注意ヲ為シタルトキハ其損害ハ所有者之ヲ賠償スルコトヲ要ス」と規定されております。これに対する法務大臣の御解釈並びに御所見を承わりたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/22
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023・牧野良三
○牧野国務大臣 ただいま中島委員からお示しの通りでございまして、民法七百十七条の適用がございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/23
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024・中島巖
○中島(巖)委員 ただいまの法務大臣の御説明並びに御所見をお伺いして、問題の焦点は非常にしぼられてきたように感ずるのであります。そこで具体的の問題といたしまして、発電所堰堤が民法七百十七条に明示してある土地の工作物に該当するやいなやの点であります。この一点こそ本日法務大臣の御出席をわずらわした中心点であるのであります。
そこで私の調べたところによりますと、昭和三年六月七日の大審院判例に、土地の工作物とは、土地に定着して人工的作業をなしたるにより成立したるものとあり、大正元年十二月六日大審院判例に、土地の工作物とは、建物、障壁、地窖のように土地に接着して築造した設備をいい、機械のように工場に据え付けられたものは含まない。また大正二年六月十三日東京控訴院判例に、土地の工作物とは、土地に付着する工作物の意味で、必ずしも陸上の工作物に限らず、堤防、せき、埠頭もそうであるとされております。また昭和三年六月七日大審院判例には、土地の工作物とは土地に接着して人工的作業をなしたるにより成立せるものをいい、コンクリート擁壁もまたこれに属するとあります。この他それらと類似した一脈相通ずる判例は数多くあるのであります。
しかしながら発電所堰堤とはっきり明示した土地の工作物であるかいなかの判例は見当らないのでありますが、ただいま申し上げた各種判例から目て発電所堰堤は当然法七百十七条の土地の工作物に該当すると考えるのでありますが、法務大臣の御所見はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/24
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025・牧野良三
○牧野国務大臣 私はただいま中島委員のお述べになりました御所見は正しいと存じます。但しここでお願いがございます。あまりに問題が具体的にたりまして、これほどまでに具体的にたると国会で論ずることはどうかと思います。これは裁判所の問題であります。だからこの程度で勘弁して下さい。そうじゃないと、これを掘り下げていくと弁護士の範囲になってしまう、そして裁判所の問題になってしまって、国会で大臣の答弁する域をちょっと越えることになると困る。但し今のあなたのおっしゃることはもうすべて正しい、私はそれを承認しますが、牧野が承認するのじゃなくして、国務大臣として答弁するということになると、事は多少考慮しなくちゃなりませんから、なるべくはこの程度でとどめていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/25
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026・中島巖
○中島(巖)委員 ただいまの法務大臣の御答弁は、私はなはだ心外なのであります。なぜなれば国会は国権の最高機関である、しかも法務大臣はそれらの裁判所を統轄しておるところの最高責任者である。従いまして今日の委員会におきましてもし御答弁ができぬとするなれば、研究いたしましてあとで法務大臣名をもちまして、文書なり何なりによって御回答すべきである、かように私は考えるのでありますが、御所見いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/26
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027・牧野良三
○牧野国務大臣 そこなんです、大事なことは、私が裁判所を管轄しているとまことに楽なんですが、裁判所は私が管轄していないのです。そうして旧法時代におきましても司法権だけは独立しておるもので、法律の解釈というものはすべて裁判所にある。そこで私が——あなたのおっしゃることは正しいが、ここで法律の解釈の最高オーソリティには、法務大臣というものはならないのです。これはどうしても裁判所なのであります。そこである程度のところで、解決は裁判所に持に持っていくわけです。但しあなたの御意見、御質疑に対する私の所見としては、もう御所見通りであります、こういうふうにお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/27
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028・中島巖
○中島(巖)委員 どうも法務大臣の御答弁は私不可解なのです。国会は国の唯一の立法機関である。従いましてよく研究して文書なり何なりによってはっきり御答弁を願うのが当然だと思います。けれどもこうした法律の抽象論でもって時間をとることは、委員各位にもたいへん御迷惑でありますので質問を続けますけれども、もしただいま法務大臣の言われたようなことでありますれば、法律上に対するところの解釈は国会においては全然質問ができぬ、こういう結果になると思うのであります。この点法務大臣もよくお考えを願いたいと思います。
さらに法務大臣にお伺いいたしたいのは、民法第七百十七条と関連いたしまして、国家賠償法であります。またただいま私が取り上げている発電所堰堤に関しては不可分の関係にある河川法であります。この二つの法は本案件に直接関係がある部分として、河川法第六条は河川管理に関する件を規定し、法第二十条は「左ノ場合二於テ地方行政庁ハ許可ヲ取消シ若ハ其ノ効カヲ停止シ若ハ其ノ条件ヲ変更シ又ハ既二施設シタル工作物ヲ改築若ハ除却セシメ又ハ原形ノ回復ヲ命シ又ハ許可セラレタル事項ニ因リテ生スル危害ヲ予防スル為二必要ナル設備ヲナサシムルコトヲ得」、こうなっております。そして次に六号をつけまして、一は「工事施行ノ方法若ハ施行後二於ケル管理ノ方法公安ヲ害スルノ虞アルトキ」、二は「河川ノ状況ノ変更其ノ他許可ノ後二起リタル事実二因リ必要ヲ生スルトキ」、六は「公益ノ為必要アルトキ」とかように規定されておるのであります。そこでこれと関連して国家賠償法第一条には、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」、かようにあるのであります。
そこで、お伺いいたしたい第一点は、国家賠償法第一条の国または公共団体の公権力の行使についてでありますが、発電所堰堤設置の許可は公権力の行使であるかどうか、第二点は国家賠償法第二条に「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったため」としてありますけれども、具体的な問題といたしまして、たとえば発電所の堰堤の築造を許可し、これがため土砂の堆積を来たし、すなわち異常なる河床の上昇を来たした、しかるに護岸工事は旧河床のままであった、もしくは部分的に補強工事を施したが、河床上昇の率だけの補強工事はできなかった、これがために降雨の際堤防が決壊して災害を生じた、この場合河川管理に瑕疵があるものと私は考えるのでありますが、法務大臣の御所見を伺いたいのであります。
この点非常に重大なる点でありますので、もっと具体的に申し上げます。門島ダムを設置して数年後は、すなわち昭和十九年は堰堤において土砂堆積は三十メートル、湛水区域外の川路村、龍江村地元で三メートルないし五メートル、堰堤より上流二十七キロの地点まで河床の上昇を来たしているにかかわらず、当時の護岸の状態は堰堤築造前の旧河床のままであって、これがため川路、龍江、松尾、喬木等の各村に大災害が起った、これは当然だと思います。河川管理者が公権力の行使により堰堤の築造を許可したのだから、築造後これによって起る河床の上昇に伴う防災工事は当然国家がなすべきである、しかるになしていない、すなわち河川管理者に瑕疵があったものと私は考えるのでありますが、法務大臣の御所見いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/28
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029・牧野良三
○牧野国務大臣 御質疑が二点ございます。第一の国家賠償法第一条にいいますところの公権力であるかどうか。許可は公権力であると存じます。
第二条の解釈に関する損害賠償の責任があるかどうか、あると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/29
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030・中島巖
○中島(巖)委員 法務大臣も非常にお忙しいところを御出席いただきまして私のお伺いいたす点は大体私の考えておったような御答弁をいただいて非常に満足であります。しかし先ほどお尋ねいたしました法七百十七条の発電所堰堤が土地の工作物でありやいなやの第一点でありますが、お帰りになってお調べの上、おわかりになりましたら文書をもって御回答をお願いしたいと思います。
法務大臣に対する質問はこれをもって打ち切りまして、建設当局に対して質問を続行いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/30
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031・牧野良三
○牧野国務大臣 ただいまの工作物であるかどうかということは、ここではっきりお答えいたします。工作物でございます。これはちっとも疑いございません。これで文書回答はごめんこうむります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/31
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032・中島巖
○中島(巖)委員 よくわかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/32
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033・徳安實藏
○徳安委員長 それでは暫時休憩をいたしまして、午後一時から再開いたしまして、本日説明を受けました諸件に対して、政府当局より補足説明を聴取することにいたします。
それでは一時休憩いたします。
午前十一時三十二分休憩
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午後一時十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/33
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034・徳安實藏
○徳安委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前は道路整備特別措置法案、日本道路公団法案及び東北興業株式会社法の一部を改正する法律案に対する提案理由の説明を聴取いたしたのでありますが、これにより以上各案につきまして逐次補足説明を聴取いたしたいと思います。富樫道路局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/34
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035・富樫凱一
○富樫(凱)政府委員 お手元に差し上げてあります資料に日本道路公団法案要綱というのがございます。この要綱に基いて、おもな点について御説明申し上げます。
第一は目的でございます。第二に法人格でございますが、日本道路公団は日本道路公団法による特殊法人とする、一種の営造物法人と申すべきであろうと思いますが、道路管理者の権限の一部を行いますので、広い意味で申し上げますと行政機関の一つとも言えるのであります。第三は資本金でございますが、これは二十八年度に一般会計から特定道路整備特別会計に十億入れてございます。それとほかに積立金が三千六百万円ほどございますが、この十億は返さなくてもよろしいということでこの十億を資本金に入れまして合せて十億三千万円、これは資産の評価のいかんで多少の変動がございますが、それを資本金に考えております。
第四は役員でございます。それから第五が職員の任命について、第六が役員及び職員の公務員たる性質、それから第七に業務の範囲をあげてありますが、公団は、有料道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理を行う。それから前号の道路の災害復旧工事を行う。三に有料自動車駐車場の建設及び管理を行う。この有料自動車駐車場については今具体的にきまっておりませんが、すみやかに具体的計画を立てるつもりでおります。それから四号が前三号に附帯する業務を行う。それから五号に公団が国あるいは地方公共団体の委託を受けられるようにいたしておりますが、また国または地方公共団体は公団の事業の委託も受けられるようにしたい考えでございます。国の場合につきましては建設省の設置法を改正する考えでおります。
第八は業務方法書、第九は事業年度、第十は予算等の認可、第十一は決算、第十二は財産諸表、それから第十三が利益及び損失の処理、第十四が借入金及び道路債券でございますが、この十四に、公団は、建設大臣の認可を受けて長期借入金若しくは短期借入金をし又は道路債券を発行することができるということにいたしております。
それから第十五は、政府からの貸付等で、政府は、公団に対し、長期若しくは短期の資金の貸付をし、又は道路債券の引受をすることができるようにいたしております。
それから第十六は債務保証でございますが、政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において道路債券の元本の償還及び利息の支払について、保証契約をすることができるということにいたしております。三十一年度におきましては五十億を予定いたしております。
第十七は償還計画、第十八は補助金でございますが、政府は、予算の範囲内において公団に対し、第七第一号、これは新設改築でございます、及び第二号、これは災害復旧でございます、第二号に掲げる業務に要する経費の一部を補助することができるものとするとしております。
第十九は建設大臣の公団に対する監督、第一十は大蔵大臣との協議をきめております。
第二十一は権利義務の承継でございまして現行道路整備特別措置法第三条の規定により建設大臣が自ら行っている有料道路の整備事業及び同法第七条の規定による地方公共団体に対する資金の貸付に関し公団成立の際現に国が有する権利及び義務は、原則として公団が承継するものとするということにいたしております。現在県が貸付を受けて行なっております有料道路、また国が直轄で行なっております有料道路は、公団が原則として引き継ぐということでございます。
第二十二は特定道路整備事業特別会計法の廃止、公団ができますので特別会計法は廃止いたしますが、しかし三十年度と三十一年度の決算に関しては従前の例によるとしております。
それから第二十三は道路整備費の財源等に関する臨時措置法の特例でございます。三十一年度におきましては二十億を交付金として出しておりますが、これは臨時措置法の特例として扱いたい考えでございます。
政府は、道路整備費の財源等に関する臨時措置法第三条第二項の規定にかかわらず、昭和三十一年度以降三年間は、毎年度当該年度の揮発油税法による揮発油税の収入額の予算額に相当する金額の一部を、道路整備五箇年計画係る道路に関する工事で公団が行うものに要する経費の一部として、公団に対し補助することができるものとする。公団のやる事業のうちで五カ年計画によっておるものがございますから、そういうものに対する経費の一部として公団に対し補助するわけでございます。
第二十四は非課税措置でございまして、登録税法、印紙税法、所得税法、法人税法及び地方税法に所要の改正を加え、公団については、非課税とすることにいたしております。
以上が日本道路公団法案に対する要綱でございます。
次に、道路整備特別措置法案の要綱について御説明申し上げます。
第一がこの法律制定の趣旨を書いてございますが、これは提案理由に言われたと同様のことでございます。第二はこの法律の目的でございます。
第三は公団の行う有料道路の管理等でございまして、公団の行う有料道路に対する管理について規定いたしております。公団は、一級国道、二級国道、都道府県道または指定市の市道、都道府県道または指定市の市道にあっては、国の利害に特に関係があるものに限る。が次の各号に規定する条件に該当する場合においては、建設大臣の許可を受けて当該道路を新設し、または改築して、料金が徴収することができるものとし、公団は当該道路の工事完了の日の翌日から料金徴収期間の満了の日まで当該道路の維持、修繕及び災害復旧を行うものとするとしまして、一、当該道路の通行者または利用者がその通行または利用により著しく利益を受けるものであること。二、通常他に道路の通行または利用の方法があって、当該道路の通行または利用が余儀なくされるものでないことであります。ここで、公団の行う有料道路は一級国道、二級国道でございまして、国の利害に特に関係するものにありましては、都道府県道または市道もやれるようにいたしております。この有料道路としての条件は一、二とあげておりますが、現行の法律では三まであったわけであります。有料道路の新設、改築に要する費用は償還を要するものであることという条件が現行の法律には三番目に入っておるわけでございますが、公団の費用は主として償還を要するものでありますので、この公団に対しては第三十項を除いたわけでございます。(2)は関門のトンネルでありますとかあるいは明石、鳴門のフェリーのような、建設費の償還が終りましてもなお維持費に多額の費用を要するものについては引き続き料金がとれるということを規定いたしたものでございます。公団は、建設大臣の許可を受けて新設し、または改築した有料道路の維持及び修繕に特に多額の費用を要し、かつ当該道路の道路管理者が当該道路の維持及び修繕を行うことが著しく困難または不適当であると認められるときに限り、(1)の規定にかかわらず、建設大臣の許可を受けて、当該道路の維持、修繕及び災害復旧を行なって料金を徴収することができるものとすると規定いたしております。(3)は公団が道路管理者の権限を代行することができる規定であります。(4)は、公団が一級国道、二級国道をやる場合には当該道路の道路管理者と協議し、それから都道府県道または指定市の市道をやる場合には当該道路の道路管理者の同意を得なければならないと規定しておるのでございます。一級国道、二級国道は国の営造物でありまして、公団は建設大臣の許可を受けて有料道路を作るのでありますから、その場合には道路管理者と協議する。一級国道、二級国道については「協議」としております。それから都道府県道または指定市の市道は都道府県の営造物あるいは指定市の営造物でありますから、その道路管理者の同意を得なければならないものといたしております。(5)は許を得てからその工事を廃止しようとする場合のことを規定いたしておりますが、建設大臣の許可を受けなければならないものといたしております。
第四は道路管理者の行う有料道路の管理等でございまして、有料道路は公団がやるもののほかに、道路管理者がやるものがあるわけでございます。これは現在の道路法におきましても、橋梁あるいは渡船につきましては有料で作ることができることになっております。この法案におきましては、道路管理者は、道路の新設または改築に要する費用の全部または一部が償還を要するものであり、またそのの条件がさきにありました有料道路に必要な条件を満たしておる場合には、建設大臣の許可を受けて有料道路を作ることができるということにいたしております。第四の(2)は、廃止する場合のことをきめてございまして建設大臣の許可を受けなければならぬように規定いたしてあります。
第五は料金の額の基準でございますが、これは大体現行の法律と変りございまいせん。
第六は料金徴収の対象でありまして(1)は諸車並びに無軌条電車から徴収することができるということで、これは現在の法律と変りはございません。(2)はトンネル、橋並びに渡船施設、道路用エレベーター、その他政令で定める施設については、(1)にかかわらず、当該トンネル若しくは橋または施設を利用する人からも料金を徴収することができるものとすると規定いたしておりまして、特に人のために施設をし、またそれを通行することによって人が利益を受ける場合につきましては人からもとり得るという規定でございます。これは、人からはとらない考えでございますが、場合によっては人からもとらなければならぬことがあるだろうということで規定いたしたものでございます。
第七は料金に対する運輸大臣の意見の聴取であります。これは現行の法律においても同様であります。
第八は有料道路の工事の検査でありまして、これは公団あるいは都道府県もしくは指定市が有料道路を作りました場合には建設大臣の検査を受ける、それから市町村がやった場合には都道府県の知事の検査を受けるということにいたしております。
第九は有料道路の供用の開始について規定いたしたものであります。
第十は道路管理者が権限を行う場合の意見の聴取等であります。これは占用許可、監督処分についてはあらかじめ公団の意見を道路管理者が聞かなければならぬということを規定いたしたわけであります。
第十一は道路管理者に対する処分等の請求でありまして公団が必要な場合には道路管理者に必要な処分を請求することができるようにいたしてあります。
第十三は公団が行う有料道路の管理に要する費用で、これは原則として公団の負担であります。
第十三は道路に関する費用についての道路法の規定の準用であります。
第十四は収入の帰属、第十五は法令違反等に関する監督、第十六は訴願、第十七は道路法の適用等でありまして、この法律による道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理についてはこの法律に定めるものを除くほか、道路法の規定の適用があるものといたしております。道路法の規定のうち第五十条から第五十三条までを除く。これは道路に関する費用を主として規定いたしたものであります。
第十八は経過規定でありまして、現行の道路整備特別措置法を廃止することになりまするので、公団ができますまでの間の経過規定を規定いたしたものでございます。地方公共団体の事業で公団が引き継ぐものは地方公共団体との間に合意の成立が必要であるということを規定いたしております。
以上が道路整備特別措置法案の要綱であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/35
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036・町田稔
○町田政府委員 先刻建設大臣より御説明申し上げました東北興業株式会社法の一部を改正する法律案の内容につきまして一言簡単に補足御説明申し上げます。
東北興業株式会社法はその第十二条の二におきまして、「政府ハ東北興業債券ノ元本ノ償還及利息ノ支払二付保証スルコトヲ得」と規定いたしてあります。しかして東北興業債券は政府の元利保証のもとに昭和十三年より昭和二十年までの間に十五回にわたって発行せられ、その元本総額は一億三千五百万円に上っておったのであります。しかるに昭和二十一年法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律が施行せられまして、その第三条におきまして、「政府又は地方公共団体は、会社その他の法人の債務については、保証契約をすることができない。」と規定せられ、東北興業株式会社法第十二条の二の規定はその効力を停止されて現在に至っておる状態であります。今回の改正案は、この東北興業株式会社法第十二条の二の規定を改正いたしまして、法人の財政援助の制限に関する法律第三条の規定にかかわらず、政府が東北興業債券の元本の償還及び利息の支払いについて保証することができる旨を明らかにいたしますとともに、その保証の限度額を国会の議決を経た金額の範囲に限らしめようとするものであります。
しこうして以上の改正規定に基きまして、東北興業株式会社が昭和三十一年度において発行いたします東北興業債券につきまして、その額面九億円を限り政府がその元利の支払いにつき保証することができますように、昭和三十一年度一般会計予算の予算総則第二十条に所要の規定をいたして、すでに国会に提出いたしておる次第でございます。
以上でこの法律案の内容につきましての補足説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/36
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037・徳安實藏
○徳安委員長 以上各案に対する質疑は次会に譲ることといたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/37
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038・瀬戸山三男
○瀬戸山委員 今補足説明のありました東北興業に関する審議の都合がありますから、建設当局から次会までに東北興業の今日までの業績、それと現況、そういう資料を一つ出してもらうように、委員長から要求を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/38
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039・徳安實藏
○徳安委員長 瀬戸山君の要求をお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/39
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040・徳安實藏
○徳安委員長 それでは午前中に引き続き建設行政に関する件について質疑を行います。前田榮之助君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/40
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041・前田榮之助
○前田(榮)委員 午前中に引き続いて大臣に御質問を申し上げます。
この公共職業の中で道路の問題でありますが、前の国会におきまして、衆議院の絶対多数の方々の同意のもとに衆議院を通過いたしました議員提出案でありまする縦貫自動車道路の問題であります。参議院の方へかかって今継続審議になっておると存じておりますが、馬場建設大臣は、この縦貫自動車道路をいかに考えておられるかということをお尋ねしたいわけであります。
御承知の通りに、自動車の発達はすばらしいものがありまして、現在の国道をもってしては、これにこたえた交通網ではないと思うのであります。ことに日本は国鉄がやっております鉄道が狭軌でありまして、この力たるや、そう多く期待することはできない情勢であります。最近の新聞の報ずるところによりますと、国鉄の一部にも、東海道線だけは広軌を新しく併設すべきであるという意見が出たということが新聞に出ておったのを拝見いたしましたが、このことは、かりにやるといたしましても、なかなか困難でありますし、また今日の自動車の時代に、そういうことよりも縦貫自動車道路によってこの交通難を打開すべきであると思うのであります。交通は時間の問題が多く取り上げられる、つまり高速度をもって処理せなければならぬことになりますと、いわゆる縦貫自動車道路、こういうことでなければならぬ。しかしながらこの問題につきましても、前の法案を本委員会を通過させる場合にいろいろ論議があったけれども、しかし全会一致をもって通過いたしたものであります。しかしながら今の法案を通過させただけではいかないのであってその所管大臣である馬場さんがこれにいかに熱意を持って処すかということが重大な問題になってこようと思っているのである。従ってこれに対する馬場建設大臣の御所信をお聞き申し上げたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/41
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042・馬場元治
○馬場国務大臣 輸送力の問題につきまして、鉄道よりは自動車と、だんだん自動車に対する期待が大きくなって参りまして、特に近距離ばかりでなく、遠距離の輸送に対しても自動車の寄与することが非常に大きくなって参りました。これに必要な道路を整備いたしますことは、まことに急を、要する問題であると考えます。そこでさきに衆議院を通過して現在参議院に継続審議になっております法案、いわゆる縦貫道路の問題でありますが、これにつきましてはぜひ実現をさせたい、日本の北端から南端に至るまでのいわゆる縦貫道路、これをぜひ実現をさせたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/42
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043・前田榮之助
○前田(榮)委員 大へん御熱意のある御答弁を伺って力強く感じたものでありますが、そうだといたしますと、三十一年度の予算の中に、あなたの熱意が調査費とか、あるいは計画費とかいうようなものの中に現われてこなければならぬと思いますが、ただ熱意を示されて、これがから念仏に終ることは非常に残念なことでありますが、三十一年度の予算にはいかなる具体的な施策が織り込まれておるか。もちろんこれに今直ちに何百億円というものを計上して工事にかかるなんということは、順序がありますから期待はいたしておりませんが、少くともこの法律案が通過するとしないとにかかわらず、その熱意があるなら、建設省においてその準備工作として何らかの予算措置が講じられなければならぬと思うのであります。前に自動車道の計画、調査が建設省で行われたときには、いわゆる東海道線に沿うた線を主として御調査になったのであります。ところがこの間の法律案の各党共同一致した案そのものは、いわゆる中央線を中心とした案であって、これは田中案というものが基礎になっておるにいたしましても、これらの人だけの調査、計画にたよるわけにはもちろんいかないのであって、従ってこのことは、法案が通る通らぬにかかわらず、東海道線を調査をし、続いては今衆議院を全会一致で通過いたしましたこのものの調査くらいは当然のこととして進められるべきだと思うのですが、これが予算の中にいかなる措置が行われておるか、お尋ねを申し上げる次第であります。
〔委員長退席、瀬戸山委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/43
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044・馬場元治
○馬場国務大臣 全体に対して調査を進めたいのでありますが、なかなか思うにまかせませんので、予算といたしましてはわずかな額でありますが、調査のための費用を計上いたしております。なおこの問題は日本の道路政策の根幹をなすものであると考えまして、慎重の上にも慎重に研究する余地があると考えまして先般来関係省とも協力をいたしまして、アメリカの大使館に、アメリカにおけるその道の専門家の調査団をこちらに招いて調査を依頼いたしたい、かような考えをいたしましてただいま駐米大使を通じまして先方と調査団の派遣その他について折衝をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/44
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045・前田榮之助
○前田(榮)委員 アメリカさんの力をたよられるのもいいのですが、アメリカにたよる以外に日本の自主的な立場に立って、建設省がもっと積極的に進まれなければならぬ問題があると思うのであります。建設省は、これは私が断定を下すことはあるいは当を得ないかもわかりませんが、従来東海道線に沿う線を主として調査をいたしました関係といいますか、感情といいますか、そういうしこりが残っておる傾向があるのであります。従って中央線の縦貫自動車道が当委員会で論議をされる際におきましても、その傾向が相当見えまして、一部には反対的な言辞も聞き取れるようなこともあったのでありまして、すなわちかかる重大な交通網は、自動車は都市を中心にしなければならぬような関係から、中央線よりも東海道線に沿うたところの静岡、浜松、名古屋等これらの市街地の周囲を通過すべきであるということから、東海道線に相当執着がある傾向があったのであります。しかしながら当時の衆議院の非常に熱意を持って努力をされた方々の意見は、それとは違うのであって、中央線を中心にして、そうしてそれに枝をずっと張って日本海方面、太平洋方面と南北の交通が一本で利用できる、いわゆる背骨の形の縦貫道、もちろん日本海方面にも東海道方面にも二本縦貫道路を作るということは、理想的な案としていろいろ意見もあったのでありますが、ともかくも議員提出案として中心になって論議をされ、希望されたものは中央線を通るところの縦貫道路であったことは間違いないのであります。そこに建設省と非常な深刻な対立をしたと申し上げることはできませんけれども、ちょっとした対立傾向があったのであります。
そこで馬場建設大臣にお尋ねを申し上げることは、何としても馬場建設大臣は建設省の上に立たれて建設省の意見を中心に考えられる傾向は相当にあるんじゃないかということを私は危惧するのであります。しかしながら馬場さんもやはり政党人であり、議員であり、国会の空気を十分御理解なさった方であるから、いたずらに建設省のいわゆる官僚の方々にこびるというようなことはなさらぬと思うのでありますが、あなたの頭に描かれておるいわゆる縦貫道路としての近代的自動車道路を作る場合において、東海道線をとると考えておるのか、あるいは中央線をとると考えておるのか、この点をこの際明確に一つ御公表をいただければ仕合せだと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/45
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046・馬場元治
○馬場国務大臣 縦貫道路につきまして、いわゆる中央道を通るのか、あるいは東海道線を通るのか、これは今お話のありました通りに、従来ずいぶん議論のあった問題のように承知をいたします。私省内のそれぞれの担当者の意見も十分検討をいたしました。よく聞いてみたのでありますが、私の考えといたしましては、縦貫道路としては中央道をとりたい、かように考えております。もっとも東海道線も先般現地を私視察をしてみましたが、現在の東海道、いわゆる国道第一号というものも非常に荒れておりましてこれを改修することがまことに急務であるということを痛感をいたしております。東海道線の修復、さらに進んでは東海道方面にいま一つ大きな道路を作らなければならぬということは考えるのでありますが、いわゆる縦貫道路の一環としての中央道というものはぜひこれを作りたい、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/46
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047・前田榮之助
○前田(榮)委員 大臣の縦貫自動車道路に対する御意見は私の考えておることと全く一致いたしておるので、心から敬意を払い、感謝を申し上げ、なお一そう実現方に御尽瘁賜わるよう切にお願いを申し上げる次第であります。
最後に一つお尋ねを申し上げたいのは、先般の委員会で問題になりました特別失対事業の問題であります。特別失対事業というものが失業者を対象として、しかもできるだけ能率的な公共事業を行う。しかしながら能率的な事業を行うけれども、普通公共事業とは趣きを異にして、そこには失業者の就労ということが条件になる、こういうことでなければならぬと思うのであります。この点は労働省、建設省の両方とも、趣旨については理論的に問題はもちろんないと思う。しかしながら主として公共事業を建設行政の立場で行おうとするものとの間には、おのずから力の入れ工合が変ってくるおそれがあるのであります。それで問題は、失業者の分布状態が片寄っております。従って公共事業を行う場合においても、公共事業を全国に公平に分布するということは特別失対事業だけではいかないから、他の公共事業とあんばいをしておやりになることだと思うのであります。ただこういう場合において地方の公共団体、市や県は失業者を多くかかえておりながら公共事業をやるような工事、建設省の立場で考えたような工事がない場合もあろうと思うのであります。さりとて今の制度の中で、単なる失対事業だけでこれを処理することはできない場合があるのでありましてことに地方公共団体が地方財政の非常に逼迫しておる場合において、相当高率なる補助率でやりましても、現在の地方財政の立場からいたしますると、失対事業というものが、割当ワクはもらってもそれを完全にこなすことは困難であるという地域もできておるわけであります。そういう場合におけるところの建設行政として、やはり特別失対事業をやるか、あるいは公共事業をやるといたしますと、地方財政の立場から普通の失対事業とは補助率が違うのであって、その点はできないという結果に終ることがあるので、これの処置が相当重大な問題にたろうと思うのであります。この特別失対事業並びに公共事業に対して、これらの事業をやらなければならぬところに特別な補助率あるいは補助の制度をお設けになるお考えがあるかどうか、この点を一つお聞かせを願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/47
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048・馬場元治
○馬場国務大臣 特別失対につきましては、御承知のようにこれが実施に当りまして、非常な実は苦心をいたしております。失業者のあるところに仕事がなかったり、仕事があるところに失業者がなかったり、その他いろいろな条件の都合もありまして、非常な苦労をいたしたのであります。本年はその従来の苦い経験にかんがみまして、それらの点をよほど緩和して参ったのでありますが、それにいたしましても、今お話のような御心配もあろうかと存じますが、三十一年度は、公共事業並に大体いたしまして、それらの点の御心配のないようにいたして参りたいと費えております。なお詳細な点につきましては、関係局長から御説明申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/48
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049・前田榮之助
○前田(榮)委員 なおいろいろ質問がありますが、局長に質問をしてよろしい点もありますので、あとの中島君にお譲りして私は一応打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/49
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050・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長代理 中島巖君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/50
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051・中島巖
○中島(巖)委員 最初建設大臣と河川局長にお願いいたしておきますが、私午前中、法務大臣の出席を要求いたしまして、いろいろと質問をいたしたのでありますけれども、これはダム設置のための、災害に対する責任の所在がどこにあるかという法的の論拠の質問をいたしたのであります。建設大臣も河川局長も、途中で参議院の関係で一時抜けられたのでありますが、後刻当委員会においてこれに対する担当官庁としてのいかなる処置をとるかという質問を適当な機会にいたしたいと思いますので、会議録を一応お調べおき願いたいと思います。
そこで建設大臣にお伺いいたしますが、現在政府は、治山治水を根幹として、農業改良事業等を兼ねた多目的ダムの建設に力を注いでおられます。私はこれこそ国土開発の最も大きな仕事として、強力に推進を願うものであります。この大きな国策を遂行するには幾多の困難な障害に当面するものと考えるのでありまして、これに関連する法規の整備こそ必要安であろうと思うのであります。現行法規としていろいろありますが、そのうちで河川法こそ、総合関発に関する限り、憲法のごとき性格を持った、その中心をなすものと考えるのでありますが、大臣の御所見はいかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/51
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052・馬場元治
○馬場国務大臣 河川に関しまする問題は、現在のところ河川法を中心といたしまして、この法の精神に基いて処理をいたしておることは御承知の通りであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/52
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053・中島巖
○中島(巖)委員 そこで午前中に引き続きまして、ダム災害関係のことをなるべく建設大臣からお伺いしたいのであります。けれども、御就任日も浅いので、河川局長にお尋ねいたしたいと思います。もし河川局長のおっしゃる答弁に建設大臣が了承できないことがあったなれば建設大臣から御注意願いまして、そして河川局長の答弁は建設大臣の答弁と私了承するに御異議ありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/53
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054・馬場元治
○馬場国務大臣 政府委員の答弁につきましては私全責任を持ちます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/54
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055・中島巖
○中島(巖)委員 それで河川局長にお尋ねいたしますが、私午前中法務大臣に質問をいたした続きで、最も具体的な問題について質問をいたしたいと思うのであります。
河川法と国家賠償法に関連して、具体的な問題として天竜川上流地域の門島ダムの河床上昇に関する問題であります。従来の災害状況等については、先ほど法務大臣に質問の際申し上げたので、省略をいたします。この河床上昇に対して、今まで国並びに県のとってきた処置に了解に苦しむ諸点があるので、この際お尋ねいたしてはっきりいたしたいと思うのであります。
門島ダムは昭和十二年に建設され、わずか数年にして三十一メートルの堰堤は九七%まで土砂で埋まつておる。昭和二十年にも、上流地域の松尾、川路等の堤防が決壊で大災害を生じております。そこでこの天竜川の河川管理者である長野県知事物部薫郎は、昭和二十一年七月四日に、当時の門島ダムの所有者である日本発送電総裁新井章治に対して、門島ダムの河床上昇の予防対策としての厳達命令を発しております。この命令は人力によってはおおよそ不可能と思われるような強力な条件を付してあります。必要な個所のみを読み上げてみますと、
昭和二十一年七月四日
長野県知 物部 薫郎
日本発送電株式会社
総裁 新井章治殿
天龍川通り泰阜並に犀川通り水内堰堤し流地籍の水害予防対策に関する件
管内天龍川筋下伊那郡川路村並瀧江村地籍及び犀川筋上水内郡水内村地籍は航れも発電施設たる堰堤の影響に因り洞筋の土砂沈積夥敷く計画当時仮定せる堆積量をも既に相当超過し延ては上流部広範の地域に亘りて極度の河床隆起を生ぜしめたる結果出水時に於ては屡々異状の高水位を誘発し且つ甚だ敷き長期湛水となる傾向ある為に異例の水害を頻発し捨て措きと難い事態に立ち至りたるを以つて河川治水計画確立の重要性に鑑み堰堤に因る堆積土砂の除却を計る等右両地籍に対する水害予防の根本対策を樹立し之が実行方取り計はれたし。猶ほ差し懸つて左記の応念措置に付ては再び出水期を控へたる此際夫々格別の工夫を集注して急速に其のの施策の実現に特段の努力を致されたし。
一、天龍川筋泰阜調整池内埋没土砂の措置
先づ阿知川口上流のものより処理し面して天聴峡日の疎通能力を旧態に復することに努め同時に川路、龍江両村地先河床の埋没上砂を二米以上浚渫すること。と、こうなっております。
この厳達命令の中に見のがすことのできない二点重要事項があると思います。
第一点は、「発電施設たる堰堤の影響に因り河筋の土砂沈積夥敷く計画当時仮せる堆積量を既に相当超過し」となっております。すなわち、泰阜発電所門島ダム設置を許可するについて、十砂の堆積量、換言すれば河床上昇にはなはだしき誤算があったのでありまして、国家償法第一条の公権力行使に重大なる過失があったことを、河川管理者たる知事みずからが認めているのであります。
第二点は、付帯条件に、川路、龍江両村地先河床の埋没土砂を二米以上浚渫すること。」となっておりますが、この条文は人力では不可能に近いものであると思うのであります。なぜかと申しますと、この付近の川幅は六、七百メートルもあって、両村地籍は川に沿って、その長さ三千メートル以上もあり、あの中心地帯を天龍川の本流が流れております。かりに浚渫しても、上流より土砂は小やみなく流れ込むし、また第一に、何十万立米のこの莫大なる土砂の捨て場がないのであります。
そこで私思うのは、なぜに不可能に近い厳達命令を知事が出したかということであります。これは出時の状況を知る者ならすぐうなずけるのであります。
昭和十六年度の土砂の堆積は、三十一メートルの堰堤に対して三十メートルの高さとなり、三百メートル上流では三十四メートル強となっております従って上流地方の河床上昇も想像がつくのであります。昭和二十年十月五日の災害は、川路村では町村小学校二階まで浸水し、六日間に及び、浸水家屋百二十三戸、浸水反別百二十九町六反、また堤防の決壊、道路橋梁の流失と、相当な被害なのであります。また同日、川路村より上流六キロメートルの松尾村では、数百メートルにわたって堤防が決壊して、耕地七十町歩を流失して、全く、石ばかりの白河原と化したのであります。その他、喬木、座光寺、上郷、市田、豊丘村等、河田隆昇により、前記川路村、松尾村と同様に、いつ堤防が欠壊して白河原と化するような危険が起るともわからぬ箇所ばかりで、とうてい護岸や堤防のかさ上げ程度では防げる限界ではないのであります。河川管理者の知事としては、堰堤の撤去命令のかわりに、人力で不可能のこの厳達命令を出したものと私は想像するのであります。河川管理責任者として当然の措置でありまして、この厳達命令を出すには相当苦慮したものと想像するのであります。しかるに当時の建設省の岩沢技官は、満二年後の昭和二十三年六月十五日に、県の係官、会社側、地元川路の安藤村長らを招集して、この最後通牒ともいうべき厳達命令を取り消し、怪しげなる代案に変更したのであります。実にその後の幾多の災害や、現在並びに今後の不安というか、恐怖すべき事態の原因こそは、建設省の責任であると断ぜざるを得ないのであります。なぜこの知事の厳達命令を変更せしめる挙に出たのであるか、その間の事情をお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/55
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056・米田正文
○米田政府委員 今お話の岩沢技官の当時に、前知事が出した命令を取り消したという事情については、私存じませんので、この次にお答えいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/56
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057・中島巖
○中島(巖)委員 河川局長はその間の事情を知らない、こういうお話でございますので、私の方からその間の事情をよく説明いたしますから、次の委員会でその責任の所在をはっきりしていただきたいと思います。
私は、岩沢技官が招集いたしましたときの会議録をここに持っていますが、全く建設省の態度は了解に苦しむ、けしからぬと思うのです。この第一回の会議は、昭和二十三年六月十五百午後二時に、建設省の技監室で行われています。なぜか河川局長は出席していません。岩沢技官の司会で、建設省側五名、県側四名、地元の川路村の安藤村長、会社側二名となっております。建設省は知事の厳達命令にかわる代案として、川路村水制工事をし、天竜峡の狭窄部の岩盤を除去する、これが工事費一千三百万円を会社側が負担すること、天竜峡付近の砂利採取設備に会社側が協力することの二条件を出しております。
この会議録で最も注目すべき発言が三点あります。第一は、岩沢技官が川路村は建設省が技術的に最善を考慮した計画に不足がましいことを言わないことにせよと言っております。第二点は、長野県の穗積河川課長が、建設省案の工事をしても堰堤の影響が解消するとは、言えないと言っております。第三点は、自発の土木補償係長は、川路村はこの工事により、天竜川の本流を対岸竜江村に移さんとするのが念願である、また砂利採取計画によって相当の財源を得るのが目的であると発言しています。私の不審に思うことは、この奇怪なる土木発言に対して、建設省も県側も何の質問もしていない。当の川路安藤村長も発言をしていない。暗黙のうちに認めた形であります。その後回を重ねてでき上った協定書の協定者は長野県知事林虎雄と日本発送電総裁大西栄一氏、立会人は建設省河川局、商工省電力局となっております。協定の内容は四カ条であり、第一条はこの協定は知事の厳達命令にかわる措置であること、第二条は日本発送電は千三百万円円工事費を出すこと、第三条は物価の変動があっても会社は増額しないこと、第四条は砂利採取設備に会社は協力すること、以上であります。この協定書の中身は実に奇怪きわまる土木発言そのものであります。この自発補償金一千三百万円は川路付側の水制に一千万円、岩盤取り除きに三百万円を使われております。私は当時県会議員で土木委員をいたしておりましたが、川路村は竜江村の耕地を流して天竜川の河心を変え、新たに耕地五十町歩を造成するという風説がありましたが、この協定書を最近手に入れて実に驚き入っているわけであります。この重大なる知事の厳達命令にかわるべきこの協定は、対岸の竜江を初め関係村も今もって知らないと思います。
そこで私は建設省当局にお尋ねいたします。第一点は、私の今申し上げたことに間違いがあるかどうか、間違いがあれば御指摘を願いたい。第二点は、知事の厳達命令にかわる建設省案の打ち合せに川路村長一人だけを招き、同じ条件にある対岸の竜江村はもちろん関係村をなぜ参加をさせなかったか、そうしてこの協定参書も秘密にせずに利害関係村に発表すべきものだと思うが、御意見いかがであるか。第三点は、根本的の解決のできると思われる知事の厳達命令を山岩沢発言のごとき建設省の圧力で怪しげな代案として今日の事態に至らしめたことは、建設省に重大なる責任ありと考えるが、御所見いかがであるか。第四点といたしまして、ただいまの事柄は河川管理に重大なる瑕疵として国家賠償法第二条に該当するものであると考えるが、御所見いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/57
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058・米田正文
○米田政府委員 お尋ねの四点についてお答え申し上げます。第一点の今お述べになった点が間違いがないかという点については、帰りまして当時の記録をよく調査いたしまして御返事申し上げます。それから知事の厳達を取り消したときに竜江村が不参加であったという点についての理由も一同様に次の機会に御返事申し上げます。三の知事の通達を取り消したということに関する建設省の責任という問題も前同様でございます。四番目の、以上は国家賠償法として考えるべきではないかという点に関しましては、今私の考えている点を率直に申し上げますと、国家賠償の対象としては国の営造物が及ぼした影響についての賠償の規定を書いてあるのが国家賠償法でございます。私人の工作物、いわゆる許可工作物が損害を及ぼしたものに対する補償については、これは民法にもございますしあるいはまた河川法によって水利権を許可いたしますときにつけます命令書の中に損害賠償の条項をうたってございます。従いまして私人工作物の許可のものについてはそれぞれの所定の法規がございますので、それによって賠償すべきしだと思います。そういう規定はございますが、むしろ損害の判定というのが実際的には非常に問題でございます。その損害の程度というものが明らかになりますならば、御意見の通り国家賠償法ではなくて、民法なりあるいは河川法に基く処分のときの命令書にうたってあります補償条項によって処置いたすべきものだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/58
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059・中島巖
○中島(巖)委員 ただいま私の質問した第一点、第二点、第三に対しては調査の上回答する、かような話でありますので、私は適当な時期においてさらに質問いたしたいと思います。それから第四点の国家賠償はこれには出らない、そしてそれは公けの造営物でなければいけない、こういうようなお答えでありましたが、この法律上の解釈については午前中牧野法務大臣と十分渡り合つておる関係上、どうかあとで速記録をごらんになっていただきたいと思う。
そこで私は、答弁を求めるのではありませんけれども、ごく簡単に国家賠償のことについて私の意見を申し上げたいと思います。第一条には「国家は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務も行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」とあります。この門島ダムの設置の許可は公権力であります。この公権力を発動したときに、会社が堰堤の築造の規則に当るものによって土砂の堆積などをしるしたものを出しまして、それを県が調査してその結果を報告して建設省でもって許可をしておるわけです。それが非常に誤算があったということを河川管理者たる知事自身が知事の命令書の中ではっきり言っておる。従って公権力の行使に重大な過失があったのだから、これは一条に該当すると考えおります。
それから二条は「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」となっております。そこで河川の管理に瑕疵があったかどうかという問題であります。これは先ほど申し上げましたように、門島ダムを建設してわずか六、七年でもって川島ダムの三十一メートルの堰堤が三十メートル以上上っているのです。従いまして、その上流の河床もその通り上昇しておる。二十七キロの地域まで上昇しておるのでス。従いまして、この河床の上昇に伴うところの護岸工事が同時にできておりません。この昭和二十一、二年当時は門島ダム建設以前の河床のときと同じ状態で、両岸の護岸工事が全くできておらなかった。そこで国が公権力を行使して門島ダムの建設を許可したのである。そしてそれがために土砂が堆積いたしまして河床が上昇してこの被害が出たのである。だかAら、河床上昇に伴う両岸の護岸工事を国は当然やらなければならぬのである。しかるにこの処置を怠っておったためにこの災害が起きたのであるから、国家賠償法第二条の河川の管理に瑕疵があったという条項にぴったりと合う、私はこういう見解を持っておるのでありますから、この点御研究を願って、いずれかの機会に御答弁をお願いしたい、かよへに考える次第であります。
大へん質問が長くなりまして、委員各位にも午前、午後にわたって御迷惑と存じますので、私は結論を急ぐことにいたします。
門島ダムの河床上昇のための過去の災害に対しては民法第七百十七条により当然究極においては門島ダムの所有者が賠償の責任を負うべきものと思います。また河川管理の瑕疵と公権力の行使の過失により国家賠償法の定むるところにより国もまた責任を負うべきと信ずるのであります。
今後の問題でありますが、現在の河床の状態から見て、ダムの撤去よりほかに方法はなく、かりに私が当委員会でかような発言をしなくても、幸いにしてここ二、三年は豪雨はないが、もし明日にも一たび二、三百ミリの豪雨があれば、この河床上昇地帯は目をおおうような被害の惨状が展開され、その結果は、当然ダムの撤去となると思うのであります。またこの発電所の所有者たる会社といたしましても、土砂の堆積でダムの効率が発揮できず、出力五万二千五百キロの発電所が現在おそらく一万五千キロくらいではないかと考えられるのであります。これを水路式に改めて効率をあげることが採算上有利ではないかと思われるのであります。今かりにダムを撤去したといたしましても、過去二十数年にわたって堆積した土砂、すなわち河床の上昇は一朝一夕に旧河床に下るものではありません。今後の災害に対して当然賠償問題が起るのですが、その責任は当然ダム所有者と国が負うべきものと思います。これは、先ほどからの河川局長の答弁からいたしましても御答弁が非常に困難だと思いますので、私はあえて本日は答弁を要求いたしません。
そこでお尋ねいたしたいのは今後の対策であります。天竜川の土砂の流量は、その支流三峯川、小渋川の二河川が全量の八〇%を占めていると思われるのであります。この二河川の源をなしておる赤石山系は、日本にある三千メートル以上の山十五座のうちの実に八座を占めて、すこぶる峻険な山脈なのであります。この二河川の砂防こそ天竜川治水の根幹をなすものと考えます。これに対してすでに三峯川は砂防堰堤工事中でありましてまことに時宜を得た計画と思うのでありますが、この完成はいつごろになりましょうか、また小渋川に対しての御構想があれば、お漏し願いたいと思うのであります。
第二点にお伺いすることは、この河床上昇地帯の護岸と堤防のかさ上げであります。中部地建赤穂出張所では関係十方村全部にわたって計画書を提出済みと聞きますが、これこそ緊急中の緊急を要するものと思うのでありますが、御所見いかがでありましょうか。
以上二点について河川局長の御所見を伺いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/59
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060・米田正文
○米田政府委員 三峯川、小渋川等の砂防計画については、御承知の通りすでに着手をいたしまして工事進行中でございます。竣工期限については、実は三十一年度予算要求の当初においては計画を一度立てたのでございますけれども、最後に決定をして今御審議を願っております予算については、当初の予算とだいぶ変っておりますので、もう一度計画を立て直す必要に追られておるので、今ここではっきりした完成年度を申し上げることができないのでございますが、私どもとしては極力早期完成に計画を立て直しておるところでございます。
それから天竜川の堤防及び護岸水制等に関しましては、本年もすでに実施中でございますが、さらに三十一年度、におきましてもこれを継続いたしまして、緊急なところから実施をいたす予定で、ただいまその個所の決定を審議中でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/60
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061・中島巖
○中島(巖)委員 三峯川の関係についてはただいま御説明を伺ったのでありますが、小渋川に対して河川局長としての何らかの御構想がありましたら、お伺いをいたしたい、さように考える次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/61
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062・米田正文
○米田政府委員 小渋川に関しましては実は以前も調査をやっておりますが、また実施の計画にまで至っておりませんので、なるべく早く実施計画を立てたいと考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/62
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063・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長代理 私からちょっと河川局長にお願いをしておきますが、先ほど中島委員からの泰阜ダムに関する問題は、ほかにも類似のところが相当あると思います。そこでよく研究をしていただいて、積極的な考え方を立てられることを希望いたしておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/63
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064・廣瀬正雄
○廣瀬委員 大臣がたいへんお急ぎのようでありますから、ごく簡潔に、住宅の問題につきまして若干お尋ねをしたいと思うのであります。
住宅四十二万戸建設というのは鳩山内閣の金看板でありましたことは世間周知のところでありますが、金看板でありますだけに私は一戸もきずがついてはならないと思うのであります。ところが本年度の予算が約四億円削減されたということを承知いたしておるのであります。これはどういう理由によってさようなことになったのか。それからさような削減によりまして四十二万戸という公約にきずがつくのではないかと私は心配しておりますけれども、いかなる解釈をとっておられるか。さらに明年度の住宅建設は四十三万二千戸ということを打ち出しておるわけでございますが、この明年度の建設計画と本年度の四十二万戸建設計画との関連、つまり四十三万二千戸には本年度の四十二万戸の削減による繰越額が入っておるかどうか、そういうことについてまずもってお尋ねをいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/64
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065・馬場元治
○馬場国務大臣 御承知の通りに昭和三十年度の住宅計画は四十二万戸、うち公営住宅の建設につきましては百二億円でもって五万戸の建設を実施して参ったのでございますが、地方財政の赤字を補填いたしますために今回三億九千百万円というものを節減するのやむなきに至ったのであります。これは他の一般公共事業と同様に、事業の実施の状況から見て年度内に支出を要しない、例年でありますと繰り越して事業化する分の一部をそいだのでありますが、戸数にいたしまして約二千戸分に相当いたすのであります。お話のように住宅の建設は一戸も減少することのないように努力をいたしたいのでありますが、地方財政の現況から見ましてまことにやむを得ない措置であったのであります。もちろんこの削減分につきましては、三十一年度の予算からこれを補うこととなりますので、昭和三十一年度の新規着工戸数の分は、公営住宅については四万八千戸で、昨年より二千戸減ずることになりますが、公庫住宅においては七万七千戸、公団住宅が二万三千戸、合計十四万八千戸という予定でございまして、昭和三十年度の繰り述べの二千戸を差し引きましても、十四万六千戸ということになります。昭和三十年度は御承知の通りに公営、公庫、公団を合せまして十四万五千戸でありましたから、それから見ますとまだ千戸だけは増加をする、こういう計算になっておるのであります。従いまして昭和三十一年度は予定通り建設ができる、かように考えておる次第であります。昭和三十年度につきましてもただいま申し上げました通りの次第でありますので、計画の四十二万戸は民間の自力による建設戸数と合せまして確保できる、かように考えて努力いたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/65
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066・廣瀬正雄
○廣瀬委員 明年度は四十三万戸建設するということを標榜いたしておりまして、国民に公約いたしたのでございますが、本年度の予算につきましてはいろいろ大臣から御説明がありましたけれども、私はこれは公約を誠実に実行したものだとは思っておりません。信頼を裏切ったというように私は考えております。ところが馬場建設大臣はまことに誠実な方と私は考えておるのでございますが、明年度のこの四十三万戸の住宅建設こそきず一つつけなくて、文字通りこれを完成するというような御決意があられるかどうか、私は建設大臣は特に誠実な方と存じますので、さような御決意のほどを承わっておきたいと思うのであります。
それから年度の途中で政府の財政政策が多少変更いたしまして、建設公債でも発行するというようなことになりました場合には、四十三万戸の住宅建設の内容あるいは戸数等につきまして再検討される御用意があるかどうか、内容につきましては公党住宅の増加でありますとか、あるいは公庫、公団の資金構成の改善でありますとか、各種の住宅の融資率の向上でありますとか、さような方面につきまして、建設公債を利用してこの住宅政策を再検討し拡充するという御意思があるかどうか、さような準備を持っていらっしゃるかどうかということをお尋ねいたしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/66
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067・馬場元治
○馬場国務大臣 三十一年度につきましては、予定の計画通りぜひともこれが建設を期したい、かように考えております。現在提出をいたしております予算でも、なおかつ私どもの考えておりますところから見ますれば遺憾な点が多いのでありまして、何としても公党住宅をできるだけふやしたい、そして低額所得者で住宅にお困りの諸君に住宅を提供したい、すみやかに住宅難というような声のないようにいたしたいというのが心からの願いなのであります。今お話のありました、年度内にもし政府の方針が補正予算その他を出すということになったならば、こういう仮定をおいての御議論でありましたが、さような場合がもしあるといたしますならば、現在の計画をさらに拡充いたしましてできるだけ国民の期待に沿いたい、かように考えておる次第であります。実は先般から住宅問題につきましてはしばしば直接都民の諸君の意見も聞きますし、その要望の強いこともしみじみ感じられますので、何とかいたしまして住宅問題の解決をはかりたい。現在御承知のように二百七十二万戸ばかりの住宅の不足がありまして、そのために十年かからなければ現在の計画をもっていたしましてはこれが解決ができないという状況でありましてまことに遺憾しごくであります。さような機会がありましたならば、もっと短期間にこれが解決のできまするように極力努力をいたしたいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/67
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068・廣瀬正雄
○廣瀬委員 日本の住宅政策は、昭和三十年度から初めて国家的に大きな問題になったというように私は考えて、かような意味におきましては喜んでおるわけでございますけれども、日本の住宅政策は大蔵省的なにおいが非常に強いということを私は遺憾千万に思っておるのでございます。たとえば本年度の四十二万戸建設という問題にいたしましても、数だけそろえればよろしいというような考え方は全く大蔵省のしろうとの考えでありまして、おそらく建設省の役人の方々は、さような数字だけそろえるということについては乗り気でなかったと私は思うのであります。また明年度の予算にいたしましても、大蔵省は公営、公庫、公団いずれにも非常にこまやかにタッチいたしておるのであります。非常に予算で、細、目におきまして縛ってしまつておるのであります。住宅というものは、御承知のように国民の要望する住居を建ててやるのが目標でなければならぬのでありまして、つまり国民がどんな種類の住宅を希望するか、しかもその希望する住宅を最も家賃を安く提供する、この三点なんであります。かような住宅政策の目標を全く顧慮しない大蔵省的な住宅政策が、私は日本の現在の住宅政策であるということを考えまして、まことに遺憾千万に思うのであります。たとえば家賃の点にいたしましても坪数の点にいたしましても、賃貸と分譲との比例にいたしましても、融資率の点にいたしましても全くさようでありまして、私は建設省に堂々たる住宅局があるのでありますから、住宅政策は建設省で完全に掌握いたしまして建設省的な住宅政策を打ち出してもらいたいということを強く考えておるわけであります。また翻って考えますと、本年度の予算の削減につきましては、住宅の予算は公共事業費の削減に大きな関連を持っておったわけでございます。ところが住宅というのは御承知のように予算面では明らかに公共事業ではないのであります。非常に社会政策的ないし社会保障的な要素を持ったところの事業なんであります。従ってただいま国家の大きな問題となり、与野党の攻防戦の課題になっている、私はかように考えるのであります。先般私はソ連、中共、ヨーロッパを回って参りましたが、諸外国におきましては住宅政策を非常に大きく取り上げまして住宅省のない国はほとんどないのであります。かように考えまして、現在の住宅政策が非常に大蔵省的であって、大蔵省が強い主導権を持っておるということ、それからまた国土省的な公共事業と一律には考えられない性格を持っておるというような観点から考えまして今度の行政改革に当りましては住宅省というものを提唱する、あるいは少くとも住宅庁というものを作ることを強く主張するというようなお考えが大臣にあられるかどうか、私はその点は非常に必要だと思っておりますが、さような御見解を持っていらっしゃるかどうか、そのことをお尋ねしたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/68
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069・馬場元治
○馬場国務大臣 住宅政策の重大性につきましては廣瀬さんのお話の通りであると思います。ただいわゆる行政改革に関しまして住宅省を独立して設置するかどうかというお尋ねにつきましては、なお検討の余地が十分にあると思いまするので、ただいまここで即答をいたしかねる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/69
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070・廣瀬正雄
○廣瀬委員 検討の余地があるというのはどういうような意味でございましょうか、もう一度重ねてお伺いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/70
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071・馬場元治
○馬場国務大臣 行政改革はおそらく内閣全般に対する問題が提供されるであろうと思います。たとえば予算局の問題をどうするか、内閣に所属いたしまする各種機関をどうするか、あるいは公団関係をいかに統合するかとか、あるいは国土省的な考え方あるいは内政省的な考え、いろいろな内閣の機構全般に対する問題が議論せられるであろうと存じます。従いましてそれらの問題と一連の関係にありまする住宅政策でありまするので、今これを直ちに一つだけ切り離して住宅省というものを作るがよろしいかどうかということにつきましては、なお各般の方面から慎重に検討する必要があろうかと存じます。その上で最後の結論が生まれるべきものである、かように考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/71
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072・廣瀬正雄
○廣瀬委員 私は具体的に申しますと、本年度の予算の削減につきまして公共事業と同じ範疇で考えられたということを非常に遺憾に思っておるわけであります。従って住宅政策につきましてただいま申しましたような見解を持っておることを申し上げたのでございます。住宅政策につきまして私の考えと大臣の考えは同じでございますか、その辺を一応伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/72
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073・馬場元治
○馬場国務大臣 住宅政策の重要性につきましては、廣瀬さんと全く同じ考えを持っておるつもりであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/73
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074・廣瀬正雄
○廣瀬委員 大臣は「建設月報」に諸施策を経済六カ年計画に対応させるということを書いていらっしゃるのでございますが、この経済六カ年計画というのは、わが党でただいまやっております経済自立五カ年計画の意味であるかと存じます。住宅建設の事業を計画的に遂行していかなくてはならないということは、午前中前田委員から御意見の御開陳がありまして、大臣の御答弁があったわけでございますが、私も全く同じ考えを持っておるのでございます。大臣が経済自立五カ年計画で住宅政策を推進していきたいというお考えのようでございますが、住宅建築につきましては、三十一年度から三十五年度までの計画といたしまして、経済自立五カ年計画では公営二十七万八千戸、公庫四十二万戸、公団十一万五千戸ということになっておるのでございます。これを五カ年の年次計画といたしましてどのように建設していくかということにつきましては、すでに大臣が計画的にやるということを「建設月報」で述べられておりますので、御計画があろうかと存じますから、一つ御発表願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/74
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075・鎌田隆男
○鎌田政府委員 経済五カ年計画に発表せられております住宅建設は、こちらとも事務的にいろいろ連絡の上できまっております。従ってあの考え方と建設省の大体の考え方と同じような考え方で進んでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/75
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076・廣瀬正雄
○廣瀬委員 同じ考えで進んでいることは、わかっておりますけれども、五カ年計画だけは数字で出ておりますけれども、五カ年の年次的な計画を建設省としてはさだめし持っていらっしゃるだろうと思ってお尋ねしたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/76
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077・鎌田隆男
○鎌田政府委員 公営住宅の建設評価につきましては、御承知のように公営住宅法によりまして三カ年計画が決定しております。この三カ年計画と後期の三カ年計画と関連する五カ年計画でございますが、ただいまのところ公式に決定をいたしておりますのは、第一期の三カ年計画、つまり昭和三十年から三十二年に至る三カ年計画ができておりまして、これによりますと、十五万五千戸、年間平均大体五万戸ないし五万二、三千戸、こういう計画で進むわけでございます。これに関連を持っておりますが、その次の三カ年計画につきましては、また国会の御審議を煩わさなければならぬ、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/77
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078・廣瀬正雄
○廣瀬委員 ただいま御答弁がありましたけれども、私ははっきり申しまして御計画はまだないと思うのであります。経済自立五カ年計画とマッチさせまして、もう少しはっきりした計画を立てていただきたいと思います。
大臣にまだ三、四点お尋ねがあったのでありますけれども、私の大臣に対する質問は保留しまして、きょうは一応これで打ち切ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/78
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079・瀬戸山三男
○瀬戸山委員長代理 それでは次会は公報をもってお知らせすることといたしまして、本日はこれで散会いたします。
午後三時二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404149X00619560214/79
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