1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年三月七日(水曜日)
午後零時八分開議
出席委員
委員長 佐々木秀世君
理事 大坪 保雄君 理事 中川 俊思君
理事 野澤 清人君 理事 岡 良一君
理事 滝井 義高君
植村 武一君 小川 半次君
加藤鐐五郎君 亀山 孝一君
木崎 茂男君 草野一郎平君
熊谷 憲一君 小島 徹三君
纐纈 彌三君 高橋 等君
渡海元三郎君 徳田與吉郎君
中村三之丞君 中山 マサ君
八田 貞義君 山中 貞則君
亘 四郎君 井堀 繁雄君
岡本 隆一君 栗原 俊夫君
八木 一男君 中原 健次君
出席国務大臣
労 働 大 臣 倉石 忠雄君
出席政府委員
労働政務次官 武藤 常介君
労働事務官
(大臣官房総務
課長) 村上 茂利君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 富樫 總一君
労働事務官
(職業安定局
長) 江下 孝君
委員外の出席者
労働基準監督官
(労働基準局
労災保障課長) 松永 正男君
労働事務官
(職業安定局失
業保険課長) 和田 勝美君
専 門 員 川井 章知君
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三月七日
委員越智茂君、菅野和太郎君、千葉三郎君、濱
野清吾君、坊秀男君及び赤松勇君辞任につき、
その補欠として木崎茂男君、山中貞則君、徳田
與吉郎君、纐纈彌三君、渡海元三郎君及び田中
稔男君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員木崎茂男君、纐纈彌三君、渡海元三郎君、
徳田與吉郎君及び山中貞則君辞任につき、その
補欠として越智茂君、濱野清吾君、坊秀男君、
千葉三郎君及び菅野和太郎君が議長の指名で委
員に選任された。
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本日の会議に付した案件
健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出第七八号)
右案の公聴会開会承認要求に関する件
労働保険審査官及び労働保険審査会法案(内閣
提出第四八号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/0
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001・佐々木秀世
○佐々木委員長 これより会議を開きます。
この際公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。内閣提出の健康保険法等の一部を改正する法律案について公聴会を開会することとし、議長に公聴会開会承認要求をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を願います。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/1
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002・佐々木秀世
○佐々木委員長 起立多数。よって公聴会承認要求をいたすことに決しました。
なお公聴会開会の日時及び公述人の選定等に関しましては委員長に御一任願いたいと存じます。賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/2
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003・佐々木秀世
○佐々木委員長 起立多数。よってそのように決しました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/3
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004・佐々木秀世
○佐々木委員長 労働保険審査官及び労働保険審査会法案を議題とし、質疑を続行いたします。井堀繁雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/4
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005・井堀繁雄
○井堀委員 労働者災害補償保険及び失業保険における審査制度の問題はきわめて重要な役割を従来果してきたものと思うのであります。これをこの際改正しようとする政府の法案の提案理由の説明を伺っておりますると、たとえば失業保険、労災保険の事務を一本に統一して、その能率化を期したいという点については、私どもも十分理解ができるのであります。ただ、この際非常に重要な結果をもたらすのではないかと懸念されまする節が二、三ございまするので、この点について労働大臣の御答弁を伺っておきたいと思うのであります。
その第一は、この法案の改正によりまして、従来の労災保険の場合におきましては、第一審が保険審査官で第二審が審査会、失業保険におきましても同様に第一審、第二審の形において、しかも二審におきましては、いずれも労、使、公益三者構成になる機関が決定的な意思をまとめるわけでありますが、この制度がこの際の改正でくずれ去るわけであります。このことは非常に重大なことだと私は思うのであります。そこで健康保険の審査委員会の制度は、この改正と同じ方法でただいま実施をされておるのでありますが、まだ実施後日が浅いのでありまするから、多くの事例を知ることができませんけれども、傾向としては必ずしも好ましくないと、私は幾つかの事実によって判断をしておるのであります。この点についてまずお尋ねをいたしたいと思いますが、三者の構成を改めるということは、一方においては能率的なよい結果をもたらすことについてば私は賛成であります。しかしいたずらに能率だけを期することが、この保険の審査機構としては、大きな任務ではないと私は思うんです。一番重要な任務は、保険の経営本質それ自身が、御案内のように労働者の保護をいずれも目的とする法律であると同時に、保険の制度である限りにおいては、雇い主の協力を得て、労働者の負担金によって行われるものでありまして、行政官は言うまでもなく、これを援助協力するといういわばサービス的な立場をとるものであります。あくまでその主体は労働者と雇い主によって構成され、運営さるべきもので、これが当然正しい行き方であります。この制度をゆがめる結果になるということは、私は非常におそろしいことだと思うんです。こういう問題について、どういう御配慮をなさってこの法案を押そうとされておりますかについて、まず第一に伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/5
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006・倉石忠雄
○倉石国務大臣 御承知のように、労働関係の諸法律の運用につきましては、労災保険審議会それからまた職業安定審議会においては、従来三者構成でやっておりますけれども、この審議会は、たびたび申し上げておりますが、最終的な準司法的、判定的な審査事務を取り扱うというのがその使命でございますので、従って公益的な立場に立って、学識経験者をもって構成するのが妥当ではないか、こういう私どもの考え方でこういう組織を考え出しました。そこで労使双方の方々の御意見につきましては、地方においても中央の審議会におきましても、それぞれ両者の代表の意見も聞いて、そうして判定の資料にする、こういうのが一番公正妥当ではないかという考えで、今回の改正をいたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/6
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007・井堀繁雄
○井堀委員 あげ足をとるわけではございませんが、公正妥当という言葉を用いる前に、さっき私がお尋ねしたように、この保険の性質からいって、やはり経営主体、それからその保護の目的、この二つの重要なものに合致することでないと、公正だといったところで意味をなさぬのであります。それから今あなたが、判定機能やあるいは準司法的な機能をこの委員会が行使したということについては、その通りであります。でありますから、私はなおさら公正を期するという点からすれば逆コースではないかと思う。すなわち、行政としまして三権分立の基礎を、やはりいずれの場合においてもわれわれは明確にしていかなければならぬことは言うまでもないのであります。この点からいきましても、従来の三者構成の委員会がこの種の機能をするということであれば、これは三権分立をそこなうような思想的な危険は比較的少いのであります。ところがその機能を、この改正案になると委員会から審査会に移すわけであります。委員会は、三人の行政的な地位を保障されている人であります。これが準司法的なあるいは判定機能を、委員会にかわって行うというのが改正案の趣旨なのであります。そうするとコースは逆でありますが、この点に対するお考えをこの際はっきり聞いておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/7
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008・倉石忠雄
○倉石国務大臣 私どもの立場から申しますと、労災保険のそもそものねらいは、災害による労働者を保護するという建前でありますから、そういう建前は、ただいま御指摘のお考えとちっとも変っておりません。そこで御承知のように、これはすべて企業側の負担において保険が成り立っているのであります。そこで地方で、すでに地方の審査官において相当量が——今までもそうでありますが、今後もなお同様に、地方の審査官程度において大体の話はつく。そこで従来の数によりますと、大体中央に持ってこられるのが二百件内外、こういう見込みのようでありますが、そういうものに対して、やはり今申し上げましたように、最終的裁定を下すのは、公平な立場に立っている学識経験者によって裁定が行われるが、その資料としては、どこまでも労働者側と使用者側との代表の意見を十分聞いて、そうして万遺憾なきを期していきたい。こういうのでありまして、従ってなおこの法律に基きまして、政令あるいはまた審査官の審査をいたしますについての議事規則と申しますか、そういうものにおいて十分に両者の意見を聞く機会を持つように遺憾なきを期していきたい、こういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/8
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009・井堀繁雄
○井堀委員 頭のいい倉石さんですから、もっと私の尋ねていることに対してお答えを率直に願いたいと思います。ただいまの参与の制度で、労使の意向を反映させていこうという苦心のほどは、私もこの法案の中で認める。しかしそれは本質的なものではないのです。三者構成による委員会と三人の審査官によって判定を下されるのとは、非常に違いがあるのです。そのことを私は聞いているのです。すなわち三者構成の一つ一つのケースについては、私は格別大きな開きは出ぬかもしれぬと思う。しかしそれは本質的なものなんです。三者構成になっていて、その中の公益側の委員が実質的な仕事を処理していくというこのことは、私はいいことだと思うのです。しかしその三者構成をはずして、審査官が従来公益側の諸君がやってきたような仕事を能率的にやる。能率がよくなることは私は認める。しかしそれは角をためて牛を殺す、要するに功をあせることになる。この本質的なものが大事じゃないか。その本質的なものをこの際なげうって当面の能率的な——私は健康保険審査官制度を採用しようとする改正案のときにも同様の趣旨を述べて提案者側の反省を促した。もちろんわが党は反対をいたしました。そのことは何も立場上の問題ではなくて、こういう労働保険、社会保険になくてはならぬ、いな一番重要な役割を持つ審査制度であります。その審査制度が、行政的な立場の発言が大きなウェートを占めて、その当事者である人々の意見が刺身のつまのような形になることは、行き方としては非常に間違った、逆コースになる。その点に対するあなたのお考えを率直に聞かしていただきたいのです。それもやむを得ぬとおっしゃるのか、そうはならぬのだとおっしゃるのか。これは非常な違いがある。あなたの御答弁を聞いているとならぬのだと言われておりますが、それでは私の質問の趣旨を理解しての御答弁じゃないと思います。故意にごまかして答弁されるなら私は言いません。そうではなしに、これは大事なことですからお尋ねをしておる。どうぞその点はっきり御答弁いただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/9
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010・倉石忠雄
○倉石国務大臣 労働問題について一番熱心に御研究をしておられる井堀さんにこちらはごまかしてお答えをする意思は毛頭ありません。私は、ただいま御指摘のように、能率的にこの問題を処理いたして参るためにはこういう方がいい。また御心配の労働側の御主張も十分に取り入れるように参与の制度を設けて、これらの方々の意見を承わって裁定を下すのであるから、決して御心配のような点はなかろう、あり得べからざるものだ、こういう考えで、信念を持って申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/10
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011・井堀繁雄
○井堀委員 はっきり御答弁いただいて私の質問の趣旨は明確になったと思うのです。私の見解は後に述べる機会があると思いますが、その制度としては、確かに本質的には雇い主、労働者の利益を代表する——答申案では利益代表という言葉を非常にきらっているようでありますが、私はその言葉のニュアンスよりは本質的なものを尊量したい。そういう意味からいえば、やはりこういうものに対しては、被保険者になる労働者あるいはそれに直接的に協力する雇い主側の意見が絶えず強く審査制度の中に反映してこそ、審査制度というものが正しく成長していく、また正しく運営されていく。三人の方はきっと人格高潔なりっぱな方が選ばれるであろう、またそうあってほしいと念願しておるわけであります。しかし、悲しいことながら人間の弱点というものはいつの場合にもあり得ることなんです。裁判の三審制度が設けられ、さらにこれにいろいろなことが付加されておることを見てもわかるように、準司法的な性格を持つことを認める以上においては、そういうやり方は非常に危険があるという考え方がどうしても去らないのです。これは健康保険の場合におきましても、今のあの方方はりっぱな方であります。私ども個人的にもよく承知して尊敬できる人であります。しかし従来の委員会に比較いたしまして、被保険者の訴えがはっきり反映しているとは信じ切れない。しかも、今後そういうことがままあります。将来この三人の委員が選ばれてくる限りそういうあやまちがあるのに、あえてこの際改正することは非常に心配なのであります。しかしあなたは、その欠点を強く是正するために参与の制度を強調されております。参与の制度も、あなたのお気づきのように、行政的な立場をとる審査官に対する単なる補助的な、あるいはほんの形式的なものにならないことが大切だと思います。この点法案の中において不十分なものがあるではないかと思うのですが、お気づきはございませんか。これは提案者ですから十分だという御答弁をされると思いますが、将来の運営上問題が残ると思いますので、そういう点について立案に当りまして深く考慮されたことがあるかどうか承わっておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/11
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012・倉石忠雄
○倉石国務大臣 この審査会の三名の方は、原案に申しておりますように国会の御承認を得て任命するわけでありまして、相当権威を持たせ、しかも人選に当りましては政府も十分な調査研究をいたしまして、学識経験においてりっぱな方を御推薦申し上げて国会の御承認を得る、こういう形でその人選は十分慎量にいたすつもりであります。現行法のままでも、率直に申し上げますと、実は私どものところへも労働災害を受けられた方が、こういう事情で倒れた、これは労災保険に該当すべきではないかというようなことの個々のケースを持って来られる方もございます。そういうものについては私ども当局に命じて十分慎重に検討するようにいたしておるようなわけであります。いわんや今度国会の御承認を得てりっぱな人物を推薦するということになればよけいそういう点において慎重にやれるであろうと思いますし、政府もただいま井堀さんの御心配になりましたようなことについては、そういうことのないように十分気をつけて参りたいと思っております。それから、先ほど申し上げましたように、本法の二十三条でございますか、あすこでこまかいことは政令等に待つことにいたしております。そういう点でも十分御期待に沿うように政府は努力をいたして参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/12
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013・井堀繁雄
○井堀委員 それではいま一つ他の点についてお尋ねいたします。この改正によりまして、被保険者の立場から言うと、一番問題になるのは、中央で統一的な機能を発揮することのできることです。そのために、地方の従来こういう制度によって便宜を受けておりましたものが大幅な制限を受ける結果が生まれると思うのです。こういう点はよほど考慮を払うべきことだと思いますが、どういう方法でその弱点を補強されるかについて、今までの説明や法案の内容では伺うことができない。これは事務当局から御答弁をいただいて、あとで大臣の所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/13
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014・富樫總一
○富樫(總)政府委員 ただいまの御質問、これは私の受け取り方が間違っておったらまたあとで訂正いたします。たとえば、従来福岡なら福岡でやっておった。それが福岡の審査会がなくなって審査官からすぐ東京の中央に出てくる。そうすると、労使の関係者などが一々東京に出てくるとかあるいはこっちから行くというようなことでめんどうになる。そういうことの不便で制約を受ける、こういう趣旨に了解いたしました。それにつきましては、第一に、従来の審査官が大体一年間に三千件扱っております。三千件のうちほとんど大部分、二千八百件くらいは審査官の段階で処理され、二百件が地方の審査官がやる。ところが今度は、審査官の段階に労使の参与員がつきますから、審査官の段階におきまして従来よりもよりよく関係者の御得心を得る処置ができて、中央に出てくるのは、従来の二百件が相当しぼられてくるということを期待しておるのであります。さて、それにしても相当のものが中央に来るということは、もちろんあるわけでございまするが、これにつきましては、審査官の段階におきまして、十分調査した資料等は見まするが、同時に必要がございますれば、審査会の委員の方々がみずから現地に出張して調べるというようなことをいたしますように、予算上の工面もいたしておるわけでございます。私の方は今度初めてでございまするけれども、従来とも社会保険におきましても年に二百件くらい中央で扱っているようでございますから、いろいろ配慮して、その点につきましてはさしたる支障がないように承わっております。また失業保険も従来とも中央で扱っておりまして、その点につきましてはさしたる支障がないように承わっております。大事な御注意として十分先生の御意見を承わりまして、運用上遺憾なきを期したいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/14
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015・滝井義高
○滝井委員 今局長から、今まで地方で大体三千件のうち、二千八百件以上が片づいておって、中央に出るのは二百件くらいだ、こういう御説明がございました。実はわれわれが中央のことを非常に心配するのは——そのために昨日この資料を要求したのです。私の勘が当っておったのです。私はおそらく炭鉱の多い北海道やあるいは福岡が多いと今までの労災関係から直感をしたので、実はこの資料を要求したのですが、その通り直感が当っておったのです。二百件以上は北海道、山口、福岡、佐賀、長崎なんです。この五つを合せますと千七百件で半数以上になるのです。こういう遠隔地が特に労災なり失業の問題が多いところだとするならば、その処理をするために中央に出てくるであろう、過去の実績から考えまして、二百件というものは、現地でうんと証人を呼んで、どうしてもまとまらぬので、中央に出てくる形をとると思うのです。そうしますと当然中央においてもやはり証人その他を呼ばなければならぬ、こういうことになる。今度のこの法案あるいは予算の状態から見て、ちっとも予算はないのです。昨日の岡本君の御質問にもあったように、労災で脊髄骨折があったり、あるいは大腿の骨折があったというような場合には、もう経済的な余力がほとんどないのです。そういう余力のない者が今度は東京に出てこなければならぬ、あるいは労働組合その他いろいろな人に運動を頼まなければならぬということになれば、当然相当金が要るのです。労働組合等は無一文でやってくれましょう。しかしやはり中央に来て意見を述べるような機会を作ってもらう、もちろんこれは参与の形かどういう形で意見を述べるかも明白でありません、直接そこへ来て意見を述べるのか、また実質的な意見を述べるのかあるいは単なる意見を述べるのか、意見の述べ方もこの法案でははっきりしていないのですが、そういう点で中央以外の遠隔地が多いということです。こういう法案をやられるとするならば、やはりこういう現実の災害の発生の状態から考えて、遠隔地にもそういうような委員会を暫定的に置かなければいかぬのじゃないかという感じがするわけです。たとえば北海道とか九州とか、そういう労災の多いところ、少くとも三千件の半数以上を占めておるというところには、やはり何らかの考慮がなければ、この制度というものは結局資本家擁護になってしまう。なぜ資本家擁護になるかと申しますと、現在の労災はメリット制なんです。こういう労災に問題を持ち込むところというものは必ず大きな負傷のものなんです。その大きな負傷というものは、これはメリット制ですから、労災の掛金に非常な影響を与えるのです。そうすると、そういうものが一方的にぴたっと審査官の手で打ち切られたり、あるいは中央にいっても金がないために十分の弁護がしてもらえなかった、審査がしてもらえなかったということになりますと、その結果は、結局労災の保険料はメリット制なんですから、事業主負担が下ってくる、こういう結果が出てくる、結果的には資本家擁護になる可能性があるというのが、私たちがこの法案に非常に心配しておる点です。やはりこの点は実績から見ても遠隔地が多いのです。これは東京付近は多くない。百件をこえているのはわずかに大阪と兵庫と岐阜と福島くらいです。こういう点から考えても、今井堀さんが抽象的に御指摘になりましたけれども、私は具体的に井堀さんの御主張を理論づけたのですが、こういう点もっと納得いくように、大臣なり局長さんから御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/15
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016・富樫總一
○富樫(總)政府委員 いろいろ御心配いただくわけでありますが、メリット制度との関連につきましては、小さなけがなどにつきましては、メリット制度の関係でそれを別扱いにするというような話をちょくちょく組合側から聞きます。具体的にわかれば厳重に適正を期する措置を講じております。しかしながら百万円の二百万円のという大きな災害になりますと、それはもうメリットどころではない。こちらが給付制限をいたしますと、会社の方がえらい大損害をする場合があるので、多くの場合は、実情といたしましては、労使一致してこっちの方から金を出せ出せ、こういうことになるのが実情でございまして、そういう点につきましては、メリットと関連して使用者側擁護というようなことは、まず今まで聞いたことはないわけでございます。ただ仰せの通り、福岡あたりにいきまして特にこの事件が多いということは、私ども考えております。特に福岡には従来とも審査官を四名配置しておるのでありますが、この四名の定員が十分であるかどうかということにつきましては、再検討いたしたいと考えております。それからまた審査の内容は御案内の通り、むずかしい理屈よりも、業務上外の認定のほかに、実際の取り扱う案件の圧倒的に多いのは、傷害等級の決定のような問題でございます。これは実際に権威のある医学的、機能的検査が結局ものをいうわけでございます。そこでたとえば北海道におきまして、美唄と岩見沢というところに私の方の労災病院を目下整備中である。加えてさらに一番交通不便な釧路に労災病院を新設することに決定いたし、また福岡におきましても、御承知のように小倉と門司にありまするが、さらに山の方の炭鉱地帯に病院を一つ新設する。こういうところで十分に調査研究いたしますれば、従来の事態はだいぶ改善されるかと存じております。ただそれでも中央に出てくるという場合において、費用その他につきまして非常に工合の悪い場合が生じますと悪いので、委員が現地に出張して調べるというようなことにいたしております。要すれば予算関係は総務課長から御説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/16
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017・井堀繁雄
○井堀委員 今の問題は、これは私どもが今あなた方の提案理由の説明や条文を拝見してなかなかおおいがたい大きな弱点だと思いますので、これはまたいずれ委員会で御相談をすることがあると思います。
そこでもう一つこの法案として私は非常に大きな変化をもたらすものと思いまするのは、従来労災保険法の三十五条によりまする訴願前置主義、これを今後どうしておやめになったのか、これも理由が明確でない。このことは、第一段にお尋ねしたものとよく似た関係も出てくると思うのでありますが、これは大臣から答弁していただく筋のものだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/17
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018・富樫總一
○富樫(總)政府委員 ただいまの問題は、私は最初に法制局の審議が済んでさっと見てひょっと誤解したのでありまするが、他の部分の改正のために附則でその文章が出たのであります。しかししさいに現行法と照らし合せますると、訴願前置のところは従来と同じということで、変化はないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/18
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019・井堀繁雄
○井堀委員 今の基準局長の答弁でよろしいから、大臣のみ込んでなければあとで答弁していただいてけっこうですが、大事なことですから、はっきりしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/19
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020・倉石忠雄
○倉石国務大臣 訴願前置の問題につきましては、この法案を出しますときに部内でいろいろ話がありました。そこで、これはただいま政府委員の申し上げましたことで現行通りだ、こういうふうに私どもも解釈いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/20
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021・井堀繁雄
○井堀委員 これはそうだとすると意見にわたりまするので、法案の扱い方で後にまた審議しなければなりませんが、不安のないようにしていただきたいと思います。その点は明らかになりました。
それからもう一点大事な点がございますので、これは大臣に伺っておきたいと思います。あとこまかい点については事務当局に時間の都合で伺いましょう。一応大事な点でもう一つありますのは、この改正に伴いまして三者構成の場合と著しく変化が起ってくるのは、いずれも被保険者、労災側の意思をどうして審査会に反映するかという道がこれでは不十分なんです。これは具体的な問題をあげるとわかりやすいのですが、時間の関係で省きまして、大きな筋で大臣の所見を伺っておきます。従来の三者制度ということになりますと、それぞれ組織が今大体できていますから、労働者側の代表が、それぞれ機関を通じあるいは組織を通じて労働者の意思をすみやかに伝えるという特徴が、今度の場合は参与という形で、この参与の制度についてはあなたが特に力を入れられておりますが、この説明の中では不十分だったと思います。あなたの御答弁をいただいたのでございますが、この点をこの法案で明確にすることによってあなた方のお考えがよく出てくるように思いますが、これは改正の一つだと思います。それで修正を加えて私どもはよいものにしたいと思いますから、それを一つ申し上げておきます。
そこで裏表の関係で審査官制度になった場合には、事故は表面の統計の上ではどうしても少くなってくる、訴願の手続その他の問題についていろいろとはばまれてくるので、この改正の中では目に見えないものが浮び上ってとない、こういう点に私どもはいろいろ不安を感じているわけです。この点は立案者側においても御心配があったと思うのであります。それをどういう工合に表現するかということについていろいろそちらの方の御見解を伺って、おいおい法律にするならそういうところに手を入れなければならぬじゃないか。しかしそういう点が十分だとお考えになれば、これは議論になりますから後に述べたいと思いますが、そう違わぬと思いますので、この点に対するお考え方を伺っておきたいと思います。これは私の意見を固める上に必要だと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/21
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022・倉石忠雄
○倉石国務大臣 冒頭に申し上げましたように、私どもは労災につきましては、どこまでも労働者保護の建前には変りはないのでございますから、そこでこういう制度の改正によって——ただいま私の聞き違いかどうか存じませんが、もし私のあれが正確であるといたしますれば、制度を改正することによって訴えを起してくるものがだんだん制約されるのではないか、こういう御心配のようでありますが、その点につきましては、私どもはそういうことを初めから期待しておりませんので、地方の審査会におきましても中央の審査会におきましても、決してそういう点を期待するのではなくて、今度の改正の方がより能率的で、公正妥当な、しかも最終判決を下す審査会は、原案にも申し上げているように、国会の承認を得てりっぱなものを作って、そとで皆さんに納得のいかれるような裁定を下してやっていこう、こういう考えにすぎないのでございますから、どうぞ一つ御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/22
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023・佐々木秀世
○佐々木委員長 井堀君にお願い申し上げますが、大臣は参議院の本会議の方から催促がきていますから、もしよろしかったらこの辺で……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/23
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024・井堀繁雄
○井堀委員 それでは大へん時間の都合に迫られているようでありますから、私の質問はこれで一応打ち切りたいと思います。いずれまたあとで事務当局を通じて大臣に進達してもらうことがあろうと思いますから、どうぞその趣旨を十分生かすように願います。私どもも本質的なものについては妥協はできぬにいたしましても、協力いたすつもりでありますから、運営上その他法案の決定については、与党とも相談の上でぜひ一つ配慮を加えていただきたいと思います。
それではこれをもって私の質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/24
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025・佐々木秀世
○佐々木委員長 他に御発言ございませんか。——なければ、本案に対する質疑は終了したものと認めるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/25
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026・佐々木秀世
○佐々木委員長 御異議なしと認め、本案に対する質疑は終了いたしました。
次会は明八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時四十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404410X01419560307/26
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