1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月八日(火曜日)
午前十時三十三分開議
出席委員
委員長 神田 博君
理事 小笠 公韶君 理事 鹿野 彦吉君
理事 小平 久雄君 理事 笹本 一雄君
理事 長谷川四郎君 理事 中崎 敏君
理事 永井勝次郎君
阿左美廣治君 宇田 耕一君
内田 常雄君 菅野和太郎君
椎名悦三郎君 島村 一郎君
首藤 新八君 田中 龍夫君
中村庸一郎君 野田 武夫君
前田 正男君 南 好雄君
森山 欽司君 山本 勝市君
伊藤卯四郎君 加藤 清二君
佐々木良作君 多賀谷真稔君
田中 武夫君 帆足 計君
松尾トシ子君
出席政府委員
通商産業事務官
(大臣官房長) 岩武 照彦君
通商産業事務官
(重工業局長) 鈴木 義雄君
通商産業事務官
(繊維局長) 小室 恒夫君
委員外の出席者
参 考 人
(大日本紡績株
式会社社長) 原 吉平君
参 考 人
(日本綿スフ織
物工業連合会理
事) おおえ貞治君
参 考 人
(日本織物染色
同業会会長) 大西太郎兵衞君
参 考 人
(日本羊毛紡績
会会長) 吉田初次郎君
参 考 人
(日本綿糸布輸
出組合理事長) 鈴木 重光君
参 考 人
(日本輸出向絹
人絹織物調整組
合連合会理事
長) 前田 栄雄君
参 考 人
(日本紡織機協
会会長) 石田 退三君
参 考 人
(有限会社長瀬
鉄工所代表社
員) 長瀬繁太郎君
参 考 人
(奥村機械工作
所所長) 奥村 鉄三君
参 考 人
(愛知県刈谷市
長) 竹中 七郎君
参 考 人
(全国金属労働
組合兵庫地区本
部大阪機工支部
執行委員) 今崎 好男君
参 考 人
(豊和工業株式
会社労働組合執
行委員長) 石垣 卯一君
参 考 人
(全国繊維産業
労働組合同盟調
査部長) 井上 甫君
専 門 員 越田 清七君
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本日の会議に付した案件
繊維工業設備臨時措置法案(内閣提出第八三
号)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/0
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001・神田博
○神田委員長 これより会議を開きます。
本日は繊維工業設備臨時措置法案について、御出席の参考人の各位より意見を伺うことにいたします。本日本法施行の際それぞれその適用を受け、あるいは直接影響を受けることとなる業界、関連産業、労働組合の方々にそれぞれ御出席を願ったのでありますが、御出席の参考人は大日本紡績株式会社社長原吉平君、日本綿スフ織物工業連合会理事敲貞治君、日本織物染色同業会会長大西太郎兵衛君、日本羊毛紡績会会長吉田初次郎君、日本綿糸布輸出組合理事長鈴木重光君、日本輸出向絹人絹織物調整組合連合会理事長前田栄雄君、有限会社長瀬鉄工所代表社員長瀬繁太郎君、奥村機械工作所所長奥村鉄三君、日本紡織機協会会長石田退三君、愛知県刈谷市長竹中七郎君、全国金属労働組合兵庫地区本部大阪機工支部執行委員今崎好男君、豊和工業株式会社労働組合執行委員長石垣卯一君、以上十二名の方々であります。
この際委員長より参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず本委員会に御出席下さいまして厚くお礼を申し上げます。なお参考人の方々のうち、半数に近い方々は愛知、兵庫等より遠路をいとわずおいでを願ったわけでありまして、衷心より感謝いたしておる次第であります。申すまでもなく本法案は、繊維製品の正常な輸出の発展に寄与するため、繊維工業設備に関する規制を行うことにより、繊維工業の合理化を計らんとするものでありますが、わが国繊維工業の将来を左右するものとして重大な意義を有するばかりでなく、繊維業界、一般消費者、繊維機械工業、労働者その他にも少なからぬ関係を有するものと考えられますので、この際本案につき、それぞれの立場から忌憚のない意見を承わって、本案審査の参考といたしたいと存じます。
御意見の御開陳の時間はお一人おおむね十分以内にお願いいたしたいと存じます。なおその順序は委員長におまかせを願いたいと存じます。また御意見御発表の後委員の側から種々質疑もあろうかと存じますのでお含みの上お願いいたします。
それではまず原参考人よりお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/1
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002・原吉平
○原参考人 私は大日本紡績株式会社の原吉平でございます。今回繊維工業設備臨時措置法案について私の意見を聴取せられましたので、簡単に述べさしていただきたいと思うのであります。
まず最初にわが国繊維産業を概観いたしますと、一応飽和点に達しましたと考えられます部門と、また今後大いにその伸張を必要とするような部門もあります。従いまして今後日本の繊維産業全般の健全な発達を期するためには、どうしても総合的な施策を必要とするわけであります。しかも繊維産業は、その産業構造が中小企業と大企業とが並立しておりまして、むしろその基礎はより多く中小企業に依存しておる度合の高い産業であります。従いまして繊維産業全般としての合理的な方向を与えるためには、現在の段階におきましては、これを各企業または各産業の自主的調整のみによることは不可能でありまして、どうしても法的基礎において調整を行うほか方法がないものと考えております。
以下主として私のやっております綿紡績業の立場から、繊維工業設備臨時措置法案について意見を述べたいと思います。
第一番目に、需給関係から見た綿紡績の設備でありますが、わが国の綿業の需給関係が、すでに慢性的な供給力過剰の状態になっておりますことは、内需、輸出を含みまして綿製品の需要が九億三千万ポンドに達しました、戦後の最高記録を示しました昭和二十九年度におきましてさえも、綿糸布の在庫が約十万コリも増加しておりますことから見ましても明らかであります。昨年通産省の提唱によりまして、繊維産業総合対策審議会が設けられまして、その需給部会におきまして決定を見、かつ経済五カ年計画にも織り込まれるに至りました昭和三十五年度綿糸需要見通しは、二十九年度の需要をさらに上回る九億四千万ポンドとなったのでありますが、これを紡績するに必要な錘数は六百七十八万錘と見られておりますが、これを統計法に基いて報告されております本年三月末現在の綿紡績錘数は、実に八百二十五万錘となっておるのでありまして、これを前の六百七十八万錘と比較してみますと、現在の設備は昭和三十五年度の綿糸需要見通し量に対してさえも、なおかつ約百四十七万錘ほど過剰となっておるようなわけであります。このような過剰設備は、国内的に見ますればいわゆる不経済な二重投資であるばかりでありませず、これがために過当競争の原因となることによりまして、日本綿業の健全なる発達を妨げておるわけであります。
それから二番目に、過剰設備の国際的影響について申し上げたいと思います。これを国際的に見ますならば、設備過剰によって引き起される過当競争は、とかく対外的な安売りを招きまして、国際的非難を受ける原因となるわけであります。これは本年一月以降、政府の協力のもとに多くの犠牲を払って実施しておりますところの対米綿製品輸出調整措置を初め、われわれが綿製品貿易の面において常に内外に声明しております国際協調の精神にも反するおそれがあります。しかも戦後におけるわが国の綿紡績設備の増大につきましては、英国を初め世界各国の注目するところでありまして、一九五〇年に開かれました日米英の綿業会談におきましても、英国の代表が、日本における紡績設備の復興問題は、国内消費の水準とか、それから一定時における綿糸布の海外市場売れ行きの事情とか、または日本が必要とする原綿買付資金が得られるかどうかという、互いに相関連する三つの条件を勘案して、そのときの錘数をこれに応じてきめなければいけない、そのほかの方法によれば、必ず不均衡な状態が起るであろうと申しまして、さきに述べました需給関係の重要性を指摘しておるようなわけであります。わが国の綿紡績設備はすでに一九五〇年六月の四百万錘の制限撤廃以後、特に一九五一年には二百万錘、五二年には百十万錘という大幅の増加を示しまして、その後増加を続けて、本年三月末には先ほど申しましたような八百二十五万錘に達したのでありますが、右の事情を考えましても設備の増大を抑制して、さらに過剰生産力の調整を行うことによりまして、わが国綿紡績設備が無制限に増大するものでないことを、従ってまたいたずらに安売りによって国際的協調を乱すものではないことを示すことが、特にこの際重要であろうと思うのであります。
それから第三番目に、各国綿業の動向を簡単に申し述べて御参考に供したいと思うのでありますが、過剰生産力調整の問題は、自由企業を建前とする限り、もとより多くの困難を伴うものでありますが、このような傾向はひとり日本綿業においてばかりではなくて、世界綿業共通の傾向として注目されるわけであります。自由世界の綿業が生産能力と販売市場との間のアンバランスをどう調整するかという、いわば一つの転換期に立っていることは明らかでありまして、貿易自由化率の引き上げにより、またあるいはその他の政治的理由によりまして、国内市場の保護策及び植民地市場の確保策の望みを断たれた西欧諸国綿業が、自力更生ないし調整のための対策を真剣に考慮し始めて、またその一部がすでに具体化しておるようなことは、われわれとしても注目しなければならないわけであります。すなわち従来政府に対しまして綿業の保護政策を強く要望して参りました英国の綿業におきましても、昨年十月のコットン・ボードの総会以後、過剰設備の処理、設備の近代化、優良紡織設備の交代制、その他の機運が強まって参りまして、フランスでは業界の運営委員会によって、操短が実施せられておりますし、特にアルサス地方の多くの工場では、アルサス綿業事業団を設立して生産調節、過剰在庫の軽減及び非能率的な紡織設備の廃棄を企図し、すでに紡機三十万錘、織機五千台のスクラップ化が決定しております。イタリアでは三〇%の操短が計画されておる。またこのほか国際綿及び関連産業連合会でも全欧州的規模で過剰設備の処理問題を計画し、検討中といわれておるようなわけであります。
以上によって明らかなごとくに、日本綿業におきます過剰生産力調整の問題は、単なる綿業の縮小や後退を意味するものではなくて、局面を打開し、安定を通じて健全なる発展を遂げるための一つのステップとするところに重大なる意義があるのでありまして、世界綿業の動向をあわせ考えるならば、総合的な見地からすみやかに過剰生産力の調整をなし遂げることが国際競争力を増大し、輸出を振興する契機となるものと言えると思うのであります。
第四番目に、繊維工業設備臨時措置法案について申し上げますと、これはどうしても早急な成立が必要だと私は考えております。本法案はまだ不十分な点もあると思うのでありますが、もしもその成立がいたずらに遅延するということになりますれば、当初の目的を達成しがたいのみならず、かえってこの法律ができることを見越して設備増加を行なった者が得をし、設備の過度の増設を差し控えた者が損をするという弊害のみを残すこととなるのであまりすから、若干の不備はとにかくとして、早急に成立、公布、実施の必要があると思うのであります。すなわち登録制の実施を中心とする設備規制や過剰設備の処理を予想して、いわゆるかけ込み増設が行われていることは皆さんも御承知の通りでありますが、本法案がもしも不成立に終りますならば、今後の設備制限ができないばかりではなく、かえっていたずらに設備増加を誘発したにすぎないことになり、国内的には二重投資のむだを助長し、国際的には再び過当競争の原因を増大する結果を招来しますから、われわれとしては早急にその成立をはかっていただきたいと考えております。次に、本法案が施行されますならば、紡機メーカーとしての非常な大きな影響があると考えるのでありまして、本法案が設備規制や過剰設備処理を内容としておりますために、その成立が紡機メーカーに打撃を与えるおそれがあるとする向きもあるようでありますが、綿紡績におきましてはただに消極的な設備制限や過剰設備処理ということではなく、積極的に設備の近代化、合理化、すなわち量より質への発展ということが国際競争力強化の上から重要でありまして、これらの努力は一日もゆるがせにできないものであります。特に綿紡績業におきましては、業界が安定してこそ初めて近代化や合理化を強力に推進できるのでありまして、紡機メーカー自体としても紬紡績業の安定を通じて初めて紡績設備の量的増大にのみ依存することなくて、積極的に設備の改善、近代化の上にその基礎を築くという近代機械工業本来の姿に立ち戻ることができるのではないかと考えておるようなわけであります。
最後に結論的に申しますならば、まだ日本の経済全体としては私は平常化していないと考えておるようなわけでありまして、人のからだにたとえますならば、第二次大戦後においてようやくからだが回復しかけたところであります。従いましてわれわれがとる食事も、蛋白質とか脂肪質とか、いろいろな計画的な食事をとる必要があって、いたずらに暴飲暴食をするようなことがありますならば、また自分のからだをそこなうおそれがある。だからこの際に法律的にこれを規制して、適当な食事をやって、健康なからだに回復していくのが最もいい方向ではないか、健康なからだになりましたならば、そこで自由な、少々暴飲暴食してもかまわないのじゃないか、こういうふうに私は考えているわけであります。はなはだ簡単でありますが、私の意見をこれで終りといたします。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/2
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003・神田博
○神田委員長 次に敲参考人よりお願いいたします。敲貞治君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/3
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004・敲貞治
○敲参考人 私はただいま御紹介いただきました敲貞治でございます。
実は綿スフ連合会といたしましては会長の藤原さんが御出席の予定でございましたが、どうしてもやむを得ない用件がございまして、一昨日私に代理として出るようにということで、私が本日出席をしたわけでございます。私は連合会の理事をやっております。そうして愛知県の西三河の三州織物工業協同組合の理事長をやっておりまして、東海六県並びに愛知県の織物組合のお世話をさせていただいておるものでございます。
昨年来私たち中小企業の専業者の実情が非常に困っておるという観点から、また今後これを育成強化するという立場で議会並びに政府の御当局がいろいろな観点からわれわれのために御配慮、御高配をいただきましたことをまずこの席上から厚く御礼を申し上げます。
ただいま大日本紡の原さんから綿業界の総体の問題についてお話がございましたので、私は一中小企業者の立場から専業者の大体の状態と希望を簡単に述べさせていただきたいと思います。
現在私たちの関係しておりまする業界で綿スフ織物織機として登録されております織機台数は、力織機、それから小幅織機あるいは足踏み織機等を含めまして、最近で、大体の数字でございますが、四十三万台になっておるわけであります、そのうちで紡績関係が現在大体八万台というように考えております。この数字の変遷につきまして、四十三万台のうちで紡績の大体の八万台を除きました三十五万台の織機をば全国で一万七千軒の工場がやっておるのであります。力織機並びに小幅、足踏みというような設備を入れて平均二十台のきわめて零細な業者の集団であるということをまず御承知を願いたいと思うのでございます。私たちが織物業者の組合長といたしまして、いろいろ組合を指導して参りまして感じますことは、先ほども原さんからお話がありましたが、結果的に見て設備過剰による経営の困難という問題と、それから設備が老朽化しておるという問題、それともう一つ、根本的に大事なことは、これは中小企業者の宿命と申しますか、正しいベースに乗った経営をやり得ずにせつな的な経営をしておる、しかもそれが協同歩調で立ち上ることができない、こういう状態がからみまして、今日の設備の過剰になったというふうに考えるのであります。大体昭和九年から十二年までの、あの日本の好況時代の織物の生産高並びに紡績の錘数、それから織機総台数が、その後、戦争前後を通じましてだんだん減って参りました。また昭和二十九年から三十年にわたりまして、特に化繊方面の進出も多く伸びておりますが、生産高と紡績の台数におきましては、生産の総数の減った割合と、それから紡機が減った割合は、ほぼ同じような歩調で減少しておるのでございます。しかしながら織機の面について考えますと、先ほども申しげました昭和九年から十二年までは大体一切の織機を含めまして三十五万台のものが、現在約四十三万台、こういう数字になっております。もちろん紡績の方は当時九万九千台ののものが現在大体八万台というように同じような歩調で減っておりますが、専業者の方は不幸にして九年から十二年までに二十九万一千台のものが、今日三十五万台を持っておる、こういうような実情でございます。なぜこういうふうに台数が伸びてきたのかということを私たちが静かに綿業者の立場からして反省して参りますと、先ほども申し上げました通り、中小企業者は大体零細企業者が多いのでございまして、大きな資本を持って、そうして十分に経済力を持って、ほんとうの自由の立場から経済というものの運営を合理的に推進していくという力がないのでございます。お互いに共食いをして、そうして安売り競争をする、できなければやむを得ず時間延長までやって、そうしてまたあるいは出糸、出ヤードというようなものに経営を依存する、最悪の場合は多少素質の悪いものを作っても出さなければならない、これは決していいことじゃないのでございますが、中小企業の立場というものはそういうようなせつな的な考え方で、正しい経営に立ち戻ろうという意欲といいますか団結というものができないのでございます。そういうようなぐあいで勢い拡張生産一本やりというのが専業者のお題目であったのであります。それは決して好ましい姿でなかったのでありまするが、人が三十台で五時間でやれば、自分のところは四十台に伸ばす、そうしてわずかな工費をそこにとりまして、しかもそれは経営学上の立場から、これでは宗全に出血受注なんでございますが、そういうことをやむを得ずやる、もし断わるならばほかに仕事が持っていかれるというような意味で、共同戦線を張って立ち上がるということができないのが現在の中小企業者の立場でございます。こういった関係から、勢いわれわれの専業者が現在輸出関係で織っておりまする全体の量は輸出の約六割を占めておるのでございますが、そういったいろいろな内面的な問題から、いわゆるソーシャル・ダンピングのそしりもあるいはそういう事情に一つの原因があるのではないか、こういうふうに私は考えておるのでございます。いつですか外国の本の翻訳物を読んだときに、英国のある繊維関係の人が、この日本の繊維工業の隘路は中小企業者にあるのだ、それは設備が老朽であってそうしてきわめて安い仕事をしておる、そういうために安売りと粗悪品を作るのはそこに原因があるのだということを書いたものを読んだことがあったのでありますが、まさにそういう状態ありまして、設備の更新をはかるというよりは、たとい老朽織機でも、ふやして、せつな的なかせぎでその日を暮らしていくというのがわれわれの現在の状況でございます。そういった意味で私たちといたしましては、何とかこの苦境をば打開しなければいけない。それにはわれわれが立ち上って、この業者を正しい経営の姿に直すこと、そうして公正な時間の中で公正な工費をかち得るようにするにはどうしたらいいかということでいろいろ議論して参ってきておるのでございます。しかしながら現在のいろいろな法律の建前上、強制ということはいろいろ憲法違反とかむずかしいことがありまして、自由をいうことが強く尊重されておるのでありますが、私たち組合を指導しておる者の立場から考えますと、非常に浅学であり微力のためだとは思いまするが、中小企業者にはいわゆる普通に考えられる自由というようなものは決してその業者を立ち直らせることにならないのであります。自由とかいろいろなものはやはり経済力があって力のある者がやれることなんでありまして、力のない弱い業者はどうしてもその自由のために放任状態に陥るというのが、現状でございます。私はそういう意味で常にお役所の方にお会いするときには、中小企業者を助けるためには、やはりある程度法的に強制力を持ってもらわなければ実際はできないのだ。しかしそれは一方的な官僚的な主観でやってもらっては困る。業界の意見をやはり十分に聞いて、そこに意見が一致したならば、かりに法律で強制ができないような場合には、強力な行政指導をしてくれ、うしろだてになってくれ、そうしなければ中小企業者というものは正しい方向に向うことができないのだということをるる申し上げておるわけでございます。昨年来いろいろな見地から検討いたしまして、私たちは現在組合員を指導して、同一歩調で正しい経営の姿に戻していくという努力はしております。また設備の近代化に対します努力をしておりまするが、しかしこれは非常な困苦と努力が要る問題でございまして、一朝一夕にして効果を期待することはできないのでございます。かかる見地から昨年われわれの意向も政府でおくみとりくださいまして、繊維産業の総合対策審議会をお設け下さいまして、私も当時綿工連の関係で、紡績さんの方と一緒に過剰設備の処理という問題について共同委員会の委員としていろいろ運動して参ったのでございまするが、幸いに各方面の御了解を得まして、本年の二月にこの審議会の総会決定事項といたしまして、広幅織機で六万九千台、小幅織機で四万七千台、合計十一万六千台が昭和三十五年度を目標としての繊維需給の見通しから見て、この程度は過剰であるという結論をいただきまして、これが買い上げあるいはこの処分についての方途が講ぜられるようになったことは、まことに私たち心強く感謝しておるわけでございます。しかしながらこの買い上げの問題になるのでございまするが、やはり私たちはこの織機過剰をどうするかというときに、綿工連といたしましてはどうしても零細工場でやるのであるから、この過剰織機をば買い上げるためには何とか法律に根拠を置いて、そうして法律の力でこれを買い上げるようにしていただきたいということを切にお願いしたわけでございます。英国の話を申し上げて恐縮でありますが、英国も以前過剰設備のために非常な苦慮をされたときに、やはり国をあげて法律によって設備の制限、要するに買い上げとか廃棄というその処理問題を法律によってやったということを聞いております。戦争のためにこの問題がある程度徹底を欠いたために、現在英国が同じような状態で苦しんでおるということを聞いておるのでありますが、特にこのわれわれ織り布部門のように、中小業者が大多数を占めております分野においては、どうしても法律の力によってある程度強制的にこれを処理していただくことが、ほんとうに慈悲のこもった愛のある行政である、こういうふうに私は考えるのでございます。今度の繊維工業設備臨時措置法案を拝見いたしますと、この過剰設備の買い上げにつきましては、通産大臣から共同行為によってこれを行うことができるというふうになっておりまするが、この法案を拝見いたしますと、過剰設備の処理というものは、やはり一切個々の業者の自由意思ということが建前になっておるのでございます。この点、私たちは先ほど申し上げましたように、せっかく作っていただいて、何か画龍点睛を欠くうらみがある、中小企業者の実態というものが、もっと深刻なものを要求しておるのだということを申し述べたいのであります。過剰設備の処理ということに対しては、業界あげて、これを望んでおるのであります。しかしながら個々の業者にお会いいたしますと強制でなければだめなんだ、自由でやられたら正直者はばかを見るのだからできないのだ、こういうような思想が強いのであります。そうして設備が過剰であってこれを処理するということに対して反対するものがないのでございます。ただそれが自由に取り扱われる、自由な意思によってというような言葉のために、それが何となくあいまいとしている点に業者としては非常な不安を持っておるわけでございまして、強制的にやってもらいたいというのはわれわれ綿スフ織物業者の一般の声でございます。その建前からいたしまして、私は今度の法案に対しましては、われわれの連合会の規定あるいは調整組合の規定に、生産調整規定と同じように、設備の処理規定を設けていただきまして、過剰設備の処理が行えるようにしていただきたい。また必要に応じましては、この設備の処理規定に対し、中小企業安定法第二十九条のような大臣命令が出るように本案を修正していただきたいということを、強くお願いするわけでございます。織機の処理の問題につきましては、以上のように私は要望いたします。
なお、織機の老朽設備に対しましては、これは私たち真剣に考えておるのでございます。特にこの点につきましては、綿工連といたしましては、昨年来この運動を強く展開いたしまして、業者がようやくその必要性を感じたのでございます。御承知の通り、今日いろいろな製品を見ましても、いわゆるカナダであるとか、アメリカであるとか、オランダ、ベルギーあるいは英国のような、所得の高い国の日本に対する要求品は、高級品でございます。この大勢というものは、絶対に将来の見通しとしてわれわれは関心を払わなければならないのでございまして、業界といたしましても、従来のあの生産拡張一本やりの考え方から、質の同上へ強く転換しようという意欲が、ほうはいとして起っておるのでございます。愛知県におきましても、この方針のもとに、昨年すでにかなりの織機の計画をやったのでありまするが、ことしはこれを個々の組合あるいは業者の意欲にまかせずに、愛知県全体をあげて一つの近代化促進委員会というものを結成したわけでございます。そしてこれに基きまして、五カ年計画を立てたわけでございます。もちろんこれは単なる思いつきではございません。ことしの一月の初めから四月の終りまでにわたりまして、通産局並びに愛知県の商工部の関係官と業界組合長が寄りまして、数十回の会合をしてりっぱな成案に達したものでございます。近々のうちにこの成案ができまして、これは中小企業庁並びに繊維局の方に補助金等のお願いで陳情するつもりでございます。非常な真摯な努力で、愛知県におきましては、大体五カ年計画で一万一千台という計画を立てたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/4
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005・神田博
○神田委員長 敲君、時間の制限をお守り下さい。本日は本会議がありますから……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/5
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006・敲貞治
○敲参考人 この織機の買い上げ等については、特に機器メーカーのお方の御協力も得なければならないということも存じております。われわれは政治力がきわめて小さいのでございまして、かかる意味におきまして、愛知県においては連合会長の野崎さん等に顧問になっていただきまして、この問題がりっぱに遂行できるように段取りをしておるわけでございます。そういう意味におきまして、このわれわれの過剰設備の処理に対しましては、法的な根拠を強く打ち出していただきたいということと、今度の近代化の問題に対しまして、政府並びに議会におきましては、できるだけの御援助を賜わりたいということを述べまして、私の公述にかえます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/6
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007・神田博
○神田委員長 次に大西参考人にお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/7
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008・大西太郎兵衞
○大西参考人 私は日本織物染色同業会会長大西でございます。
まず染色加工業について本法を適用しなければならない理由を申し述べたいと存じますが、それには二つの理由がございます。一つは紡績部門並びに織布部門とのバランスの点でありまして、いま一つは染色加工業の合理化という観点から申し上げたいと存じます。本法は繊維産業総合対策審議会において策定されました、繊維五カ年計画を推進するための裏づけとして立法されたものと考えられまするが、戦後繊維の増産計画は何回か立てられ実施されて参りましたが、とかく原料繊維の増産のみに力が注がれ、染色加工部門その他関連部門に対するところのバランスについては、十分な配慮が行われなかったのであります。それがために原料繊維の増産は染色加工設備の単純なる増設を招くのみで、品質向上のための設備の改良またはそれらの導入等がこれに伴わなかったばかりでなく、原料繊維の供給量とのアンバランスをもたらして、現に相当の過剰設備をもしておるのであります。また染色加工の場合には、需要者の趣味嗜好との関係が特に密接にその加工内容に変化をもたらすものでありまするがゆえに、これが影響として設備的にかなり広範に陳腐化しておるということも事実でございます。
繊維五カ年計画によりますと、昭和三十五年度までに綿その他の在来の天然繊維につきましては、大体横ばい、ないしは減産されることになっておりますので、今後単純な設備の増設は、いたずらに過剰設備に伴うところの受注競争を激化させるばかりで、百害あって一利なしと言わざるを得ないのでございます。かような状態では合理化も不可能でありますから、本法の適用を受けて、単純な設備の新増設はこれを制限すべきであると考えるのでございます。
次に合理化につきましては、染色加工業の合理化は、特徴的に申しますると、品質の向上とコストの引き上げが並行的に行われなければならないのでございます。すなわちここ数年来、英米両国を初め欧洲の繊維工業国の染色加工技術は、長足の進歩を遂げておりまして、特に需要者の満足するようなもの、すなわち洗たくしても、日光にさらしましても、色が落ちたり変色したりしない堅牢度の高いものや、また洗たくをいたしましても縮まないもの、あるいはしわのよらないというようなものなどが、それらの国内市場はもちろん、海外市場においても大量に供給されておりまするが、このことは染料薬品の品質の向上と相まちまして、特に染色機械の飛躍的な進歩によるところが多いわけであります。後進国の実情を見ましても、逐次自給自足の方向にありまして、染色加工設備も近代化されたものが設置され、その加工度も向上しつつあるのでありまして、わが国の染色加工業が在来の染色方法を行なっていたのでは、遠からず海外の主要市場を喪失することは、火を見るよりも明らかな事実でございます。すでに三部海外市場からわが国の繊維品につきまして非難を寄せておることは、御承知の通りでありまするが、今日ではただ安いだけでは売れないのでありまして、むしろ多少高くとも品質のいいものが歓迎されるのであります。しかしながら在来の設備によってこれらの問題を解決することは、きわめて困難な事情があります。また合成繊維並びに酢酸繊維の大幅な増産が見込まれておりまするが、元来これらの繊維の染色加工は、在来の繊維よりはるかにむずかしいばかりでなく、在来の設備ではその品質を保ち、需要者の満足を得ることは困難でありまして、合成繊維並びに酢酸繊維の増産とにらみ合せて、その加工に適した設備が設置される必要があるのであります。すでに過剰であるような設備の増産は、過当競争を激化させる要因となるばかりでなく、国家的にも大きな損失と言えるのでありまして、加工度を向上して、より多くかせぐという世界的な動向にマッチして進むことが、合理化への策であり、わが国繊維品の輸出振興の道であると考えるのであります。かような意味におきましても、染色加工業は本法の適用を受くべきものと考えるのであります。
第二に、織物幅出機を規制する理由とその規制方法でありますが、染色加工設備は、加工する織物の種類とか、その織物を白く仕上げるか、無地染にするか、柄をつけるかなどによっても使用する設備は一定でありませんし、また使用する染料薬品の種類によっても異なることがあります。まことに複雑なものでありまして、そこに漂白、染色、捺染などの基本的な加工工程に使用する設備も同時に規制する必要があると存じておりますが、すべての設備を一度に規制することはかえって弊害を招くおそれがありますので、加工工程上大部分の織物が通る最終工程の織物幅出機のみを規制の対象にしたことは、適当な措置と考えられるのであります。また規制の方法につきましては、合後新増設を原則的に禁止して、合成繊維及び酢酸繊維の加工の用に供されるものだけについて新増設を認めるようにし、既存設備につきましても、先ほど申し述べました品質の向上に役立つような改造あるいは入れかえに力を注ぎ、過剰設備は在来の繊維の加工から合成繊維並びに酢酸繊維の加工に転換するよう指導して、業界全体の合理化がはかられるように期待しておるのであります。私ども染色業界は中小企業が主体でありまして、常に過剰設備と不当なる競争によってあえて不安定な経営を続けて、塗炭の苦しみをしておる次第でございます。本法の成立によりまして、染色業界が安定なる経営を続けて、発展をこいねがうものであります。切に本法の成立を熱望いたす次第でございます。
以上簡単でありますが申し述べまして、また御質問によってはお答えいたすことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/8
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009・神田博
○神田委員長 次に吉田参考人にお願いいたします。吉田初次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/9
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010・吉田初次郎
○吉田参考人 私は日本羊毛紡績会会長の吉田であります。
近年の繊維工業の情勢にかんがみまして、長期的に見た総合的対策の必要であることは、業界のつとに考えておるところであったのでありますが、政府におかれましても、昨年の夏に学識経験者並びに業界の代表によって繊維総合対策審議会ができまして、諮問されたのであります。審議会におきましては、きわめて慎重に将来の需給の予想を立てまして、そのもとに必要なる総合対策を検討いたしまして政府に答申したわけであります。法案はまだ十分とは申されませんが、審議会の答申の骨子、趣旨を入れましてできたのであります。しかしながら他の産業との関係、ことに立法上の立場から非常に緩和されまして、繊維工業の現状におきましては、この措置は必要最低の限度と思いますので、ぜひともこの法案の実現を要望する次第であります。つきましては、何ゆえにこれを要望するかということにつきまして、少し御説明いたしたいと思います。
まず第一に、繊維品は輸出における過当競争の排除が必要であることを感ずるのでありますが、繊維産業は戦前戦後を通じまして、輸出産業の第一位を占める重要産業の一つであります。しかしながら近年繊維品の輸出の数量が急増いたしまして、その価格が乱れるに及んで、米国等国際間に相当批判の的になっておることは皆様すでに御承知の通りのことでありまして、米国におきましても、ダラー・ブラウスの問題、また四月の初めにおきましては、羊毛製品の輸入制限に関する公聴会も開かれましたし、カロライナ、アラバマにおきますところの日本製品の販売を制限する法案通過のことも御承知の通りであります。もちろん輸出品の品質なり価格面の規制はある程度行われておりまするが、生産過剰による過当競争を続ける限り、根本的な規制は困難と思うのであります。しかして過当競争によって起る主たる原因は、設備の過剰にあると思います。また最近海外市場の動向を見ますると、後進諸国の自給度が非常に進みまして、あるいはアメリカを見ますように、輸出量の増大に伴うところの自己防衛のための織物関税の引き上げの動きであるとか、今後繊維製品の輸出の方向は、数量の増大よりはむしろ高級品の輸出ということに進むべき時期にきておると思うであります。このようなところに過当競争を排除しなければ、輸出市場を失うことは明らかであるということが心配されるのであります。
次に重要な点は、繊維関連産業の慢性的の不況を打開するということであります。繊維関連産業におきましては、中小企業によって構成されておる割合が比較的多いのでありまして、一般的に申しますると、紡績業は比較的に大資本によって経営されておりまするが、織布等の加工部門の生産者はほとんど中小企業であります。また毛紡績におきましても、紡毛紡績は中小企業による経営がはなはだ多く、紡毛カードを一台ないし二台有する零細な企業が企業者の半数を占め、十台以下の業者が全体の九割を占めておるというような現状であります。これらの業種におきましては、小資本で経営できますために、好況時には設備が直ちに乱立し、設備過剰のために、たとえば紡毛、紡績のごときものは最近におきまして、継続的な不況に見舞われておるような状況であります。もちろんこれらの業種にありましては、すでに中小企業安定法に基きまして調整組合を設け、自主的に設備制限等を行い、あるいは同法に基きまして通商産業大臣の命令によって需給調整をはかってはおりまするが、これらの製品の種類別、個別的な需給調整では、各種の繊維が競合的あるいは補完的な関係にありますので実効がはなはだむずかしく、どうしてもこれには根本的に繊維産業全体の構造的の不権衡を是正するところの策が必要であると思うのであります。
繊維産業全般にわたることは以上簡単にいたしまして、次に私の関係しますところの紡毛、羊毛工業の立場から簡単に公述していきたいと思います。
紡毛紡績につきましてはすでに触れておりまするが、その設備は戦後、戦前の二倍になっておりまして、そのためにその不況を打開すべく調整組合を結成して、自主的の調整に努力しておる次第であります。一方梳毛紡績におきましては、設備は戦前の水準を少し上回っている程度で、比較的順調の経過をたどっておるのであります。その理由といたしましては、従来原料が割当でありまして、昭和二十八年の十一月末の設備によって割り当てておる関係上、その後ほとんど増設が見られおらないわけであります。原毛の輸入が外貨割当の面で制約を受け、操業度が低下しておるために、過剰設備の問題が今までは現われてこなかったのであります。しかるに最近わが国の対外収支が好転いたしまして、貿易の自由化への転向が明確化するにつれまして、一部梳毛設備の増設もすでに行われ始めたのであります。ことに貿易自由化の一環といたしまして、最近羊毛輸入に自動承認制、いわゆるAA制を採用しようという声が盛んでありますが、もしこのAA制が採用されますと、今まで羊毛輸入が割当制を通じて抑制されていたものがその押えがなくなるために、その反動として輸入が急激に増加することが考えられます。この場合に設備の新増設が自由になっておれば、従来より羊毛輸入が抑制されていたために押さえられてきたところの増設がこの際に急に微増して、一般羊毛の輸入が自由になればその輸入も急増いたしますから、毛製品の生産過剰に陥るおそれが多分にあるわけであります。この意味におきまして、もしも貿易自由化の傾向になり、AA制が採用されるところの機会が近ければ近いだけに、その前にぜひとも設備面を規制しておく必要があるのであります。最近羊毛業界におきましても、設備の合理化、近代化が盛んに叫ばれておりまして、老朽設備を近代的な設備に切りかえる向きが非常にふえてきました。これによりまして毛製品のコストを下げ、品質を向上するという動きが盛んになってきたわけであります。今後の毛紡績の行き方は、ただ単に設備をふやすということだけでなく、既存の老朽設備をできるだけ新式ものにかえていくことにあるのでありまして、いたずらに設備のふえることは業界の行き方に逆行するものでありますので、これも設備制限をいたしまして、その範囲内において老朽設備をどんどん新しくかえていく、これによって機械の注文も出る、製品の質も上る、能率も上るという方に進むのが行くべき道ではないかと考えられる次第であります。
以上簡単に繊維工業設備臨時措置法案につきまして意見を述べましたが、繊維産業は国民生活に不可欠な衣料を供給するとともに、近来輸出産業としても非常に重要な地位を占めるようになりましたので、かかる産業の正常な発展のために、本法案の早期実現を強く要望いたしまして、私の説明を終ることにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/10
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011・神田博
○神田委員長 次に鈴木参考人にお願いいたします。鈴木重光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/11
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012・鈴木重光
○鈴木参考人 私は輸出者の立場から、本法案に対する意見を申し述べたいと思います。私は本法案の趣旨に賛成の意見を有するものでありますが、以下その理由及び見解につきまして、二、三綿糸布輸出業者としての意見を申し述べます。
まず第一に、本法案の趣旨は、繊維製品の需給事情を勘案して、繊維工業設備の増設、処理等に関する適正な規制を実施するという基礎を確立することにあるのでありますが、わが国の綿業界といたしまして、次の二、三の理由によりましてその必要が痛感されるのでございます。まず第一に世界の綿製品貿易というものは、ここ数年来、年に五十数億ヤードの動きを毎年示しておるのであります。この間わが国の輸出量は、綿布で十一億ヤードあまりでございまして、これに綿糸及び綿製品等を綿布に換算しまして十二億ヤード余りということになるかと思うのであります。それが昭和三十五年度で、綿布だけで十三億ヤード、まず全体として十四億ヤードから十五ヤードくらいを予想している計画になっておるようでございます。一方内需につきましては、合成繊維による代替がだんだん行われて参りますので、量的に綿が伸張するということはあまり期待できないのでございますし、消費者の嗜好の点やいろいろ入れますと、綿製品の内需及び輸出合せての需要が今後どんなふうに伸びていくかということの推定をするということはなかなかむずかしいのであります。原綿はすべて御承知の通り輸入に待つのでございまして、それが外貨を食うというふうな点から考えまして、飛躍的にこの設備をふやすというふうなことは、もとより許されません。現在の設備でどうか、現在の設備をフルに動かしますならば、輸出が多少伸びるとしましても、内需に非常に伸びなければいけない、外貨はもとよりかせげないということになりますので、ここに相当の問題があるのでございます。つまり需要には限度があるということが、第一の問題であります。
それから第二に、設備の方はどうかと申しますと、戦後綿の設備は、先ほど来皆様が申し述べましたように、だんだん伸びて参りまして、八百二十五万錘という設備でありまして、これがフルに稼動いたしましたならば、今申しました内需、外需を含めまして、相当の過剰になるということ、ただだんだん細番手化するという問題もありますけれども、現状では多過ぎるということは、事実であるのであります。
第三に、輸出の状況を見ますと、私どもの綿製品輸出業者の立場からこれをよく検討いたしますと、従来も競争関係にある諸外国におきまして、価格の安い製品が一時に殺到した。しかも昔の日本製品は安かろう悪かろうであったのでありますが、今はいいものが安く殺到するということで、向うの需要家にきらわれた昔と違いまして、今は向うの同業者にきらわれておる。自然そこにレジスタンスが起りまして、アメリカを初め、各方面でいろいろ日本品排斥の火の手が上りつつあるという状況にあるのであります。そこで何らかこれに対する対策を講じなければならぬ。今、われわれ輸出業者が中心になりまして、アメリカ、カナダ及びヨーロッパに対して、綿布及び綿製品の輸出の規制を実施しつつあるのでありますが、これだけではいけない。やはり設備の制限というものが当然命題になってくるわけであります。そこでそういうように海外に殺到するということが、おそるべき結果を招来する。たとえばガット加入に対して、特殊のレザーブの条項を適用されるというようなおそれもある、あるいは関税の障壁をさらに高められる、あるいはより以上の手段が講ぜられるおそれがあるのであります。これではならぬというのが実状でございます。
それからもう一つわれわれ輸出業者として最も悩みに感じますのは、数量が多いために、相場に非常な変動がある。これが苦情あるいはキャンセル問題、あるいは先方の業者を場合によっては破綻の窮地に追いやる等々の結果を招来いたしますので、やはり適正な数量を、オーダリー・ビジネスと申しますか、秩序ある状態において商売をしていくということが要請される。そういうことが最もわれわれ輸出業者として痛感されるわけでございます。次にわが国の紡績設備が過剰であることは、先ほど来盛んに述べられましたので省きますが、ひとり紡績設備のみならず、織布設備はすでに先般ああいうふうな処置がとられましたけれども、なおかつアンバランスであるということは事実でございます。これもさらに検討の要があろうかと存じます。加工設備もこれまた大西さんがるる申し述べました通り、相当の制限が必要であろうかと、輸出業者の立場からも痛感する次第でございます。
次に消費者はどうなるか、お前の言う通りにしたならば、国民は非常に高いものを買わされることになるのではなかろうかということになるのでありますが、幸いにして、この法案を拝見いたしますると、これは五カ年間の時限立法でありますのと、毎年一回ずつ通産大臣が審議会を招集されまして、これをレギューしていくということになっておるようでありますので、非常に深いふちへ追い込まれてしまうような心配はない、毎年レギューし直すということにもなっておりまするから、今言ったような適当な計画経済の樹立、その一環をこの面にも見出すという方法によりまして、当業者皆様の研さん研究によりまして、消費者各位にもいいものを適正な値段で供給するという線が打ち出せるはずだと私は思うのでございます。また労働関係、あるいは繊維機械の製造業者の立場等もいろいろございましょうが、それは私は論ずることはやめますが、それぞれ安定した線に落ちつく。労働関係も落ちついた状態において、適正な労銀の期待ができるはずだと私は思いますし、また製造業者の方も、設備の代替と申しますか、新しいものと取りかえるということ、あるいは海外への機械そのものの輸出等々いろいろございますので、簡単にそれだけ触れておきたいと存ずるわけであります。
輸出業者といたしましては、こういう法律が一日も早く実施に移されることを切に希望いたす次第でございます。
簡単でありまするが、私の意見を開陳いたした次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/12
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013・神田博
○神田委員長 次に前田参考人にお願いいたします。前田栄雄君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/13
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014・前田栄雄
○前田参考人 私は輸出向絹人絹織物調整組合連合会理事長をしております前田でございます。今度の繊維工業設備臨時措置法案につきましては、私どもの業界といたしましては一日もすみやかに法制化されますようお願い申し上げる次第でございます。
私ども絹人絹織物業者といたしましては、朝鮮動乱直後の暴落以来、長期の不況に悩んでおりまして、それがために、原糸高製品安の状態が非常に長く続きました。われわれはこれを一日もすみやかに克服したい、そして安定した操業に持っていきたいということをいろいろ業界内で研究いたしました結果、何としましても、この原糸の供給量と設備のあり高というもののアンバランス、つまり過剰設備ということが、われわれ業界の持っておる最も大きなウイーク・ポイントである、これを克服しなければいけないというので、当時不況対策といたしまして、政府並びに国会に対しましてこの過剰設備の処理につきまして、再三にわたりまして、しかも長期に陳情いたしたのでございますが、当時の状態といたしましては、とうていこれを取り上げるような状況でない、憲法上いろいろの問題もあるということから今日に至ったのであります。幸いに昭和二十七年にそういうふうなわれわれの業界の要望をいれられまして、中小企業安定法を制定していただきました。私どもはその法律によりまして、数量制限を自主的に行い、しかも一方におきましては議員各位の非常な御協力によりまして、二十九条の命令を発動さしていただきました。それがために織機の新造設が制限され、これで今日まで、われわれはやって参ったような次第でございます。それでその法律に従いまして、われわれ絹人絹業界といたしましては、さっそく調整組合を作り、あるいは中央に連合会を作りまして、今日におきましては輸出向けの調整組合連合会の登録台数が全国で十三万八十二台、それから内地向けの絹人絹調整組合連合会の登録台数が十五万六千五百九十一台でございますが、両方合せまして二十八万六千六百七十三台という工合になっておりまして、当初心配いたしましたいわゆるアウトサイダーというものも、輸出向けにおきましてはインサイダーが九八%、内地向けにおきましては九六%、ですからアウトサイダーはそれぞれ二%あるいは四%にすぎない。ほとんどこの調整組合の趣旨に賛同いたしまして、現在ほとんどがインサイダーとなっておるような状況でございます。しかしながら何といたしましても中小企業の寄り合いでございまして、少しでも前途に光明を見出し、あるいは好調のような状態が見えますと、すぐに織機をふやすというのが従来のやりくりでございましたけれども、幸いに先ほど申しましたように、織機の新増設の制限がございますので、新規にはふえません。けれども過剰設備をわれわれ業界で非常にたくさんかかえております関係上、操業が非常に不安定な状況にあることはいなめないのでございます。昭和三十五年度を週期といたしましての原糸の需給状況からにらみ合せますと、われわれ絹人絹業界としては約六万数千台の過剰設備が三十五年度においてある。従ってそのうちの三万七千台を買い上げの対象にいたしまして、何とかここ四、五年の計画でそれを整備いたしたいということを政府に向っても再三陳情しておったような次第でございます。幸いに昨年の秋通産省におきまして繊維産業総合対策審議会をお作りになりまして、ここの答申案によりまして現在繊維業界としての過剰設備を何とか処理しなければならないというふうな趣旨から本法案を御制定になり、今度ここへ出すことに相なりましたことにつきましては、われわれ業界といたしましては一日もすみやかな法案の成立をこいねがっておるような次第でございます。
ところがわれわれの方では買い上げと申しましても、実際輸出入絹織物と絹織物をわれわれは作っておりますが、できております人絹織物のうち輸出が四五形、また絹織物におきましては総出来高の三五%が輸出でございます。われわれは綿糸布とは違いまして、絹、人絹におきましてはその全部のものが中小企業である私どもの手で作られております。紡績のような大きな企業がわれわれにはございません。従って昨年度においても絹、人絹が輸出において非常に大きなウエートを占めておりますが、その全部がわれわれの手で作られ、人絹織物の方で先ほど申しましたように四五%、絹織物に三五%の輸出を誇っておるのでございますが、残念ながらわれわれの力では弱小企業、零細企業であります関係上、その持っております設備は十五年の耐用命数を過ぎてしまったような織機が大部分でございます。昭和十七年の戦力増強企業整備の規制におきまして、われわれ部門におきます鉄製織機はほとんど全部整理されました。そして残された半木製の老朽織機が今日現存しておるのでございますが、先ほど申しましたように全国の絹、人絹の登録台数二十八万数千台のうち四〇%が耐用命数の十五年を経過したような織機でございます。従いまして今のような老朽織機で欧米の各国と世界の競争場裏において角逐し、しかも、十分に輸出品として競争力を持つということは、われわれの現在の状況においてはその設備において非常にウイーク・ポイントがある。従って先般来政府の方にお願い申し上げまして、ようやく一昨年来から若干の設備近代化資金が盛られまして、そして昨年からやや本格化いたしたのでございますが、絹、人絹部門で昨年と一昨年とで設備近代化をやりました数字が四千百五、六十台でございます。そういうふうな状況で、二十八万台対四千台ではほとんど微弱なものでございますが、本年度におきましてもやや昨年度より多く近代化資金が盛られましたことにつきましては、業界は非常に喜んでおるような次第でございますが、今度この法案が通過した暁におきましては、一方においてそういう最も老朽化いたしました織機を整備いたしまして、その資金でもってまた近代化の方にも金を回し、そしてより多くの織機を近代化して、国際競争力を蓄積いたしたいというふうな気分でおるような次第でございます。ところが先ほど綿、スフの方からもお話がありましたように、われわれの業者団体というものは、何といたしましても中小企業の団体でありまして、大企業の集団のようになかなか計数的に、あるいは計画的に行き得ないのが悩みでございます。今度の法案によりまして、これはどこまでも自発的な供出によって設備整理、処理をやっていくということでございますけれども、そうありたいのは当然でございますが、ともすれば人が整備されて自分があとまで残りたいというのがわれわれ人間の最も弱点でございますが、それがわれわれ中小企業の団体においてはあからさまに出てくる状態でございまして、自由供出というふうな行き方においては、何といたしましても、その主義、主張、あるいはいいことは業界全部がわかっておっても、それは達成しにくいというのが業界の実情でございますので、なるべくならば、この法案に政府のお力もお借りいたしまして、そして適正に業者が中心になり、政府のバックアップによりまして処理が一日もすみやかに、また円滑に実施に移されるように相なりまして、そしてわれわれが輸出産業としてりっぱに一日も早く立ち上るように御措置を願いたいと思うのであります。
なお最後にお願い申し上げたいことは、これは本法案とはちょっと離れるかもしれませんが、議員の各位に切にこの機会を利用してお願い申し上げたいのでありますが、合成繊維関係あるいは酢酸人絹と申します新興繊維関係は、われわれの中小企業安定法の綿、スフあるいは毛あるいは絹、人絹の部門からはずされておるのでございます。合成繊維の育成五カ年計画というものもございまして、国策繊維として将来増産を企図するという面から、政府がこれの育成に力を入れられておることは当然でありますけれども、われわれの設備制限の対象からこれが除外されております関係上、ともすれば綿、スフあるいは絹、人絹の連中は、われわれはナイロンを織るのだ、われわれはビニロンを織るのだからといえば、当然設備については制限を受けずに、自由に増設できるということになっております。そうしますれば、一方において本法案に準じまして綿スフ、絹、人絹が一万二千台くらいの整備を初年度においてやる。一方においてはナイロンを織るのだから、おれは織機増設は自由だということになりますと、政府の貴重な国費でもって整備をし、一方に無計画な増設ができるということがありましては、まことに国に対し、政府に対して、また国民に対して申しわけないと思いますので、これについての善後措置につきましては、先般来私どもは政府にもよくお願いし、また関連業界とも話し合いを続けておるような次第でございます。
もちろん合成繊維は、将来五カ年計画によって育成、増産を企図されております関係上、これを絶対的に制限するという行き方は、私どもはとりたくないのであります。しかしながら計画的にその増産のピッチに合せまして、適正に制限して、それに見合った増設をやっていく。ただナイロンを織るのだ、ビニロンを織るのだ、合成繊維を織るのだということに籍口して、無計画な、無方針な増設をこの際抑制しなければこの穴が大きくなって、せっかくの本案の趣旨も骨なしになるきらいがあるということをお願い申し上げまして、私どもも今後政府当局ともよく御相談申し上げるつもりでございますが、議員各位におかれましても、適当の御配慮を切にお願い申し上げる次第でございます。一日もすみやかに本案が通過いたしますよう最後にお願い申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/14
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015・神田博
○神田委員長 次に石田参考人にお願いいたします。石田退三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/15
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016・石田退三
○石田参考人 日本紡織機協会の会長をいたしております石田でございます。ただいままで参考人の方々がそれぞれ本法案に賛成の趣旨をだいぶお話をいただきまして、私はそれに反対をするような趣旨でお話申し上げることは恐縮でありますが、一応私どもの業界にとりましては非常に重大な法案でありますだけ、委員の方々にお聞き取りをいただきたいと思うのであります。繊維産業の中でも特に綿紡績に関しましては、いろいろな問題がありますが、綿紡績始まって以来、昔は紡連でそれぞれの相談をなし、また現在では主要原材料の綿花の輸入は政府で完全なる統制をおやりになっておると伺っておるのであります。にもかかわらず、かような制限法案を提出しなければならぬという理由が私どもには何としてものみ込めないのであります。
またその次に申し上げたいことは、スフにいたしましても、原材料を作る方は野放しにしておきながら、この設備制限の法案をお出しになることが私には納得がいきかねるのであります。しかしながらこの法案を、どうしても業界安定のために、しいて御通過をなさるようなお気持ならば、私どもはもう一つ、私どもの業界に対してはいかなる救済案があるかをお尋ねいたしたいと思うのであります。
由来、日本の機械産業にどれだけの保護政策がとられておるかを委員の方方に十分頭の中で思い出していただきたいと思うのであります。特に紡織機の事業につきまして今までどれだけの手を打って私どもの事業の促進、と申しますよりも、紡機の研究等についてどれだけの政府の資金を出して私どもに御援助いただいたかを一つ御考慮いただきたいと思うのであります。ようやく二十九条発令の問題がありましてから、昨年初めて千二百五十万円の調査団の費用が、われわれに与えられた補助金の第一歩であります。しかもその研究の過程において、最近においてちらりほらりと補助金の交付がある程度で、私どもが紡機、織機は欧米の品物に追随するべくいかなる涙ぐましい研究をしておるかを御考慮いただきたいと思うのであります。かような状態で、二十九条発令によって私どもが大きな打撃を受けたことは皆さん御存じの通りであります。われわれは国内の産業の行き方については自分の商売であるだけ真剣に考えております。従って二十九条発令以後における織機の生産はぴったり注文がとまったために、われわれは伸ばすためには輸出をやるよりいたし方がないと存じて、輸出に精進をして参ったのであります。しかしこの輸出に精進いたします上において、いかに二十九条で阻害されたかを十分思い出していただきたいと思うのであります。われわれは国内の注文は皆無になったという意味におきまして、あらゆる海外からわれわれの織機に対しまして買いたたきを実行して参ったのであります。ようやく昨今三年目か四年目になって今の設備改善について地方庁並びに政府等が非常にお力こぶを入れていただいて、ようやく軌道に乗ったといい、またそれがためにようやく輸出の受注につきましても適正な値段を取り戻しつつある現状であります。この上紡機も国内の需給が全くとまるという線からいたしまして、ようやく開拓いたしましたわれわれの紡機の輸出仕向け地に対する引き合いの方法といたしましては、いよいよまた織機と同様に買いたたかれのうき目にあるのであります。こうした現状におきまして、私は本法案がなくても、現に実際その繊維産業が萎靡沈滞するならば、どなたが新しく新設をなさるか、もう一ぺん考え直していただきたいと思うのであります。そこには絶対に新規注文はないので、私どもは、長い間この注文がないために、どうして他の産業に変ろうかと考えて、日夜苦心したことも相当の期間にわたっておるのであります。この間にどうやら余喘を保ちながら、今日の状況を輸出によってある程度カバーしつつある現状であります。特に昨年、一昨年は、紡織機の輸出が船舶、車両に次いでようやく第三位の輸出額を占めるようになりましたことは、この間の事情を物語っておると存ずるのであります。こうした意味におきましても、今後国内の需給上、また設備上、過剰であることも私どもは十分納得をいたしておるのであります。従って、これ以上いたずらなる刺激を与えていただいて、私どもの輸出をとめるような法案に対しては、私どもは絶対に反対をいたしたいと思うのであります。
また、われわれが辛うじて飯を食わしていただくのは、この輸出産業以外にはもう望みがないのであります。特に先ほど来近代化について皆さんからお話がありました。私どもは非常にありがたいと存じて伺っておるのでありますが、この近代化にいたしましても、先ほど来申しておられますように、絹、人絹にいたしましても、何十万台に何千台というような少量なものでは、私ども多数の業者を控えておりますものは、これではとうてい営業はやり通せないのであります。ここで一番心配をいたしますことは、今日まで研究と創造に十分気持を使ってやって参りました仕事をここで一擲しなければならぬということは、私どもはいかにしても残念でたまらないのであります。この法案に近代的なる条文がきわめて薄いということを十分御認識いただきたいと思うのであります。もし法案をたって通すというお気持ならば、でき得るならこの中に、近代化に対する設備資金その他のあっせん等を政府の強力な力をもって御推進していただくということをつけ加えていただかぬ限りは、決してこの法案は満足に運営ができ得ないのであろうと私は存ずるのであります。
かように、一方的な一つの仕事に通産省では十分なる保護政策をおとりになるが、他の産業は顧みて知らないというような態度をとられますことは、私どもにとりましてはまことに遺憾千万と存ずるのであります。
またわれわれの輸出にいたしましても、それぞれの担当の方々、お役所に向っていろいろなことをやりまして、今日までは非常に優遇されたる輸出の方式でやらしていただいておることに感謝を申し上げておりますが、この法案が通過いたしますれば、なお一そうこの輸出に対して何らかの手を打っていただくことを御考慮いただかなければ、お前たちはもう日本にはなくていいんだ、消えてなくなれというようなごあいさつのように私どもは受け取れるのであります。
またわれわれの事業にいたしましても、多数の協力工場を控え、しかもその傘下には相当の労働者も控えておるが、今日まで二度ならず、三度ならず、人員整理とか、あるいはまたおかゆをすするような現状に追い込まれたこともたび重なっておるのであります。こうした問題が、われわれにとっては、自分の会社を維持する上により以上の頭痛の種となっておるのであります。またこの紡織機の事業は戦前——私は昭和十六年から紡績から転職いたしまして、この事業に関係をいたしたのでありますが、この事業になりますと、とたんに戦争に突入して、このときは軍需産業に転向ができる望みがあったのでありますが、今日こうした振って振り回されるような法案になりますと、私どもは今後の転業については思い半ばに過ぎるものがあるのであります。親会社はむろん申すに及ばず、協力工場ともどもに倒れて討ち死にをいたす以外の何ものもないというふうに私どもは考えているのであります。従って今後心配をいたしますことは、年々歳々新鋭な機械が現われている欧米に比べて、私どももそれに追いつくべく研究は先ほど申したように精進をいたして参りましたが、これで打ち切られるというような問題が起るとするならば、今後の繊維産業に対する新鋭な機械は全部海外に依存せざるを得ないような状況が実現するのではないかということを私どもは案じているのであります。
また、値段の統制、あるいは数量統制による価格の統制等を盛んにいわれておりまするが、八百二十五万錘になったと非常に心配なさっている今日の紡織界のあの価格はどういうことを実現しているか、御一考をわずらわしたいと思うのであります。紡機の設備がふえたからといって、最近では決して価格は下っておらぬ、むしろ優位な位置に立っておると思うのであります。こうした場合に受ける影響は、どちらかと申しますと、一般大衆が一番影響を受けるものであると存ずるのであります。また、設備過剰による生産増大であるならば、もっと商社を強化して、あらゆる地区へ輸出をしていただくことこそ望ましいことであり、またそうすることが昔の繊維王国を再現するものであると期待をいたすものであります。
特にまたわれわれの悪い癖で、どの商売でもさようでありまするが、いわゆる安売り競争がどこにでも実現されておりまするが、聞くところによれば、綿布にいたしましても、あの輸出が非常に安いものが売れたことにより、日本側の自然規制に待つための問題が特にこの繊維法案を大きく浮び上らせておるといううわさも聞いておるのであります。しかし、どの商売もこの苦労をしているときに、国内の受注が減ったために私どもが輸出に精進したあの苦労を考えていただくならば、なおも苦労の余地が多分にあるのではないかということを考えているものであります。
また、設備の近代化を目ざしているのだということをしばしば言われておりまするが、設備近代化を言れるならば、その紡機並びに織機の耐用年数をまず第一に訂正していただくことを委員の方々にお願い申し上げたいと思うの、であります。現在の耐用年数をもってしては、いかなるうまい話や字句を使いましても近代化は夢にひとしいと存ずるのであります。また審議会では買い上げの話がきまったように聞いておりまするが、これも並み大ていでこの資金を得ることは困難ではないかとも考えられるのであります。
こうしたいろいろの意味を考え合せますとき、この繊維法案については十分なる御審議をいただきたいと思うのであります。同時に、われわれ紡機メーカー、織機メーカーがいかなる苦労をし、いかなる経路をたどって参りましたか、この面についても委員の方々の十分なる御配慮を賜わりたいと存ずるのであります。今日までわれわれ紡織機メーカーは、政府にたよって何とか生きようということはあまり考えたこともなかったわけでありまするが、今日以後は、政府におたよりしてわれわれは生きる道を考えざるを得ない断末魔に追い込まれたと私は存ずるのであります。
なおいろいろ申し上げて泣き言を並べてみたいと存ずるのでありますが、時間の関係で、以上を申し上げまして、この繊維法案については御再考をわずらわしたいと存ずるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/16
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017・神田博
○神田委員長 次に長瀬参考人にお願いたします。長瀬繁太郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/17
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018・長瀬繁太郎
○長瀬参考人 関連産業を代表いたしまして、繊維工業設備臨時措置法案が国会に提出され、設備制限と過剰設備の処理を強行するに当りまして、私がこの委員会に本日参考人として公述する機会を与えられたことをまず感謝するのであります。
以下私の所信の一端を披瀝いたしまして、委員会各先生方の参考に供したいと存ずるのであります。一昨年織機の設備制限の中小企業安定法二十九条が実施されまして、機械製造業が致命的な打撃をこうむったことはすでに十分御承知のことと存ずるのであります。今回またまた右の法律が制定せられまして、繊維産業の安定のために広範な繊維産業設備の制限を施行されますならば、繊維機械産業界、さらに私どもの関係しております関連産業のこうむる惨状は今さら申し上げるまでもないのであります。繊維機械製造業は窮余の措置として心ならずも従業員の整理、賃下げ、事業の縮小、下請工場の閉鎖を行わざるを得ず、機械業界の転業による産業界の混乱、先ほど石田参考人から申しましたような製作技術の進歩の阻止、繊維機械の輸出の阻害などは必至の問題であると思うのであります。さらに本法施行の結果は、繊維品の生産は減少いたしまして、価格の騰貴を来たし、一部業者の利益をいやが上にも助長いたしますが、一般大衆の生活が圧迫せられることはこれまた火を見るよりも明らかなのであります。先ほどどなたか、大西さんだったと思いますが、消費大衆には安価な良品を提供するということをおっしゃったのでありますけれども、過去の実績の上から比較勘案いたしますと、その反対に独占企業が王座にあぐらをかいて、おそらく一般大衆は高い製品を買わされなければならぬ結果になることをおそれるのであります。産業界のうちにおきましても縮小閉鎖に伴って失業者は続出し、今日紡織機に専業しております機械産業の従業員は約二十万でありますが、一昨年施行されました二十九条の法律発動による実例のパーセンテージから申しまして、おそらく十万の失業者が出ることは必至だと信じて疑いません。かかる容易ならない社会的、経済的悪影響を与える危険のある法案の提出は、一部繊維業界の安定を念願するに急にして、わが国産業全体に対する認識の欠如によるものと思うのであります。要するに業界を擁護し、悪影響の防止をするために万全の策を確立しなければならぬと思います。ただ一部の利益のために百害の発生を顧みない弱肉強食のための改正は、友愛精神をスローガンとする鳩山内閣といたしましてははなはだ遺憾千万であると思います。もしそれが過剰設備でありますならば、それは不合理な国家権力による人為的措置によらずに、水の低きに流れるごとく、経済自然の法則に立って行うべきで、今日の設備制限はむしろ大企業、大資本の安定に終る憂いが多分に存するのであります。およそ立案立法するに当りましてその法律法令の実施後における社会に与える影響を十分考慮に入れましてその精神を法に十分織り込み、文明国家の法とし、また民主主義国家の法として国民に協力要請することは当然であると思うのでありますが、遺憾ながらその精神を織り込んでおりません。犠牲に対する対策、私は関連産業の代表でありますから、下請のことを申し上げますならば、たとえば下請産業に対して特別更生保護法の立案もしくは国家権力によって生産の制約を受ける紡機製造用機械を政府が買い上げる、あるいは工場管理を確立するとか、失業者に対する保障等、いろいろ法施行後における対策を講じてこそ、私は民主主義国家の法律として国民の協力を要請するゆえんであると思うのであります。先ほど申しましたように、そういうことがこの本案に対しましては織り込まれていないことははなはだ残念に思うのであります。私たちはこの法案がもし通過することによって、日本の大多数の国民、日本民族八千数百万の人たちが恩恵を受けるということが実質的に、理論的に、科学的に立証されるといたしますならば、私たちは喜んでその犠牲になることにやぶさかでは断じてありません。一部のものは利益を受け、大多数のものは不利益をこうむるということを思いますとき、遺憾ながら私たちは反対せざるを得ないのであります。終りに臨みまして委員各先生方にお願いしたいことは、最初この設備制限が立案されました当初と今日とではその反対の現象が現われておるという事実であります。設備制限をしようとして立案された法律が、その立案という声におののき一斉に登録しようということで、変則的な好景気と申しますか、変則的な制度に狂弄しておるというこの現実を静かにお考えを願いたいと思うのであります。
それから私はこの際、大西さんでいらっしゃいましたか、中小企業というものは非常に零細なもので、はなはだ弱いということをおっしゃったのでございますが、私は断じてそうでないと思う。それは、国家に寄与して日本再建の一翼になろうという自尊心がないためで、ああいう敗北主義的なお考えをお述べになることをはなはだ残念に思うのであります。一昨年の中小企業安定法二十九条によって受けた当時のあの惨状は実に惨たんたるもので、この際特に委員各位の参考に実情を訴えたいと思うのであります。私は名古屋のものでありますが、織機紡績は愛知県が全生産の大体六割を占めているのであります。その六割の大半は豊田、豊和の二大会社でありますが、その周辺の都市、農村はこの二十九条の発令によりまして、ことに刈谷市のごときは、税金の滞納、金融の枯渇、それからくる不渡手形の続発、あき巣、こそどろ等の社会不安を助長し、周辺の町村は火の消えたような暗黒の世界となったのであります。この一昨年の二十九条の発令は、断じて中小企業安定法にならずして、反対の中小企業不安定法になったことは事実が立証していると思うのであります。従って、本案もそういった前轍を踏むことをおそれるのであります。しかも今日登録制におののいて、実際において使用し得ない仕掛品はわれわれの推定によると八十万錘で、今日六百五十万錘でやれるのが、すでに八百二十五万錘という御報告でありますが、それに八十万錘を加えると九百万錘になる。これは、綿の配給がないという現実に処して、やむを得ずしんぼうにしんぼうしてきたところの紡績工場が発注したという奇形的な忙しさのこの反映を、議員各位は十分お考え願いたいと思うのであります。
さらに戻りまして、この法案が立案され国会に提出されるということを、私はつんぼさじきにいて早く知り得なかったのでありますが、本年の一月下旬これを耳にしましてから、たびたび当局、議員の皆様に猛烈なる運動をいたしまして、われわれの力は弱いけれども、われわれの苦難、悲しみをお訴えして、ここまできたのであります。今まであまり関連産業に対して委員会が御聴取になったことを聞きませんが、これは二十万人が死線を彷徨する大きな問題なるがゆえに、真剣な私たちの心を皆様にお訴えする機会を得ましたことは、ほんとうに喜びにたえないのであります。私たち中小企業者が全工業の五割の生産を上げておることは、賢明なる各先生方の十分御認識のところであると思うのであります。従って国家再建に一役買っておりますにもかかわらず、今日までこれら中小企業に対する法的処置は非常に薄かったのであります。戦後農民は土地改革によりまして、今日ではあのみじめな小作人の存在はありません。労働者は組織と団結と法的保護によって、みずからの生活権を擁護のできる立場にあります。大資本家、大事業家は、多額な国家の補助金を得ているのであります。ひとり国家の生産の六割を占める弱い中小企業に対しては、政府は法的保護並びに援助助成をしていただかなければならないのにもかかわらず、一昨年の痛手がいえないのに、またまた死線を彷徨させるがごとき法案が提出されたということは、私たちあぜんとしてなすところを知らないのであります。
数字的にはあとから出られます奥村君からるる皆さんにお訴えすると思いますが、最後に私はこの弱い中小企業、ことに織機、紡機を製造しております弱い中小企業も、これひとしく日本人民であり、国民であり、人の子であります。憲法は、私たちに健康にして文化的な生活を営む権利を認めております。どうか私どもが安んじて日本再建の一翼として事業に専念できまするよう、先生方の十分なる御配慮をお願いいたしたいと思う次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/18
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019・神田博
○神田委員長 次に奥村参考人にお願いいたします。奥村鉄三君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/19
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020・奥村鉄三
○奥村参考人 本国会におきまして、日本の三つの重大要素であります衣食住の、衣料に関する重要な法案の提出に当りまして、参考にお呼びをいただきまして、お聞き取りをいただきますことを深く感謝をいたす次第であります。
今回のこの法案が、機械を製造せんと欲するもの、あるいは機械を設置せんと欲するものに対する制限をなすことは、職業の選択の自由を制限することであります。憲法第二十二条には、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と規定されておるのであります。この法案はまさに憲法違反である、かように私は断言をいたしておるものであります。もしそれ、これが憲法違反でないとするならば、公共の福祉にどこが反するのか、国民大衆の、世界人類の衣料の大政策を進めていくものの設備の制限をするというようなことは、どこが公共の福祉に反するかということをわれわれは立法府に問いたいのであります。なお憲法第二十五条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」とあります。今回の法案を実施されますことによって、付帯的にはあるいは最低限度の生活に追い込まれ、もしくはそれ以下に追い込まれる者もでき得ることを想像いたしますと、この二十五条のねらいはこの法案とは直接の関係がありませんけれども、関連いたしましてこの二十五条にも適用せられて判断されるものと思考されるのであります。
第二には、本法案はいわゆる独占禁止法に抵触をいたしております。政府といえどもこれは否定ができませんので、その条文中に独占禁止法の公正取引に関することは除外すると明記しておる。法治国のわが国は、もしこの法案が必要欠くべからざるものであるならば、まず独占禁止法を改正して、独占禁止法にこの繊維工業臨時措置法が触れないようになさることが適正な方法であろうと思うのにかかわりませず、この法案の中に共同行為等々についての独占禁止法に触れるところを除外するということは、私ども国民の納得のいかないところでございます。これが本法案に対する前提に反対するゆえんのものでございます。
第三には、この法案を御提出になります動機の沿革を顧みますと、相当の長き経過を要したとは存じますけれども、少くとも急速にこれが実現の過程をたどって、参りましたのは、さきにタオルの織機を制限し——一昨年の十一月二日には織機を制限をいたしまして、当時、この後に来たるものは紡績機械であると流布されておったことは御承知の通りでございまして、昨年の五月、緊糸に換算して滞貨は五十万五千六百十一コリであった。三十単糸にして百八十二円五十銭に低落しておるのであるから、この辺で設備を制限しなければ共食いになり、あるいはまた維維界の恐慌がくるであろうということをしきりに業界の方々がお述べになって、本法案が促進せられてきたと思考されるのでありますが、参考に私は謄写をいたして参りましたから、後に御高覧に供しようと存じております。本年の四月の納会において綿糸の滞貨は三十二万コリの平常時をむしろ下回っておる、価格においては二百七十三円八十銭に暴騰しております。どこが不安定であるか。いろいろな方々がお述べになりましたが、繊維業界が現在、品がすれであって、先物と当限がさや寄せをしておって、どこが不安定であるかを私どもが判断をいたすに苦しんでおりまして、諸般の統計を調査、研究をいたして参りましても、現段階における繊維業界の国内需要においても、国外の輸出の振興においても不安定と判断すべきものは何らございません。もしありとするならば、言いにくい話でありますが、十大紡の独占企業を確立することならあるかもしれません。
そこでなお参考に申し上げておきたいと思いますのは、十大紡の倉敷紡の会長の塚田公太君が、「実業之日本」の五月一日号に掲載をいたしておりまする一節をとってみますと、日本綿紡の将来——むずかしいところは時間がありませんから避けます。生産が今のところ少しも過剰にはなっていない。高級綿製品を作れば欧米にもどんどん輸出される。現在の八百万錘の設備では昭和三十五年になったら足りなくなるので産業で発展の余地は十分ある。こういうように堂々と「実業之日本」に論陣を張っておいでになる。また名古屋通産局の「動態月報」四月号におきましても、繊維工業部門において綿糸、綿スフ、毛糸、人絹、絹織物、そういうようなもののいろいろな統計をあげて、その報告には、在庫は減少しておる、安定はますます高度化しておる。堅調の一途をたどっておると報告をいたしております。しかしてここで日本の紡績界を論じますときは、大体十大紡がおおむね中心になりますから、あえてこれを一つの目途といたしまして判断いたしますと、昨年下期の十月の決算は、十六紡の利益は三十七億七千八百万円の利益を上げております。まだ決算はいたしておりませんが、「ダイヤモンド」の報ずるところを引例いたしますと、四月の利益金はおよそ六十億を算するであろうといっております。ことしの下半期の十月の決算は、もうほとんど十月まで売り尽しておるところが多いのでありますから、その推定は九十億円を下らずと称しておるのであります。そうしますと、新紡におきましても、新々紡におきましてもおおむねこれに準じております。名前ははばかりますが、私が直接に調査いたしたところによりますと、ことしの上半期は昨年の下半期に比較して、大体倍の利益を上げておる、下半期は三倍の利益を上げる、かように言っております。そうして滞貨があるのか、あるいは売れ行きが悪いのかというと、品がすれである。もし不安定であるというならば、その業界から私に資料を提供していただきたいと思うほど不可解に感じておるのであります。
次に、今度の法案は大体通覧をいたしますと、大企業独占を助長する法案の内容が多くて、中小企業に対しては多くは顧みられておらないという法文の内容がしみ込んでおることを遺憾に思うのであります。ただいまも御公述になりましたごとく、紡績界においてただいまは百三十社あると存ずるのでございますが、そのうちの十大紡を除きますと百二十社、この百二十社において十社に対抗することはできない。平均の錘数は五万台くらいになるでありましょう。織布業者は平均十四台以下のものが四割前後を占めておるほど中小企業が多いのであります。さきの第二十九条を発動されましたときも、中小企業のために何としても増設を認めて、コストを高めて採算をとらして、正常なる業務をとらせなければならぬということを主張いたしましたが、その当時は綿業界のほとんどの方が委員でございまして、顧みられなかったのでございます。今回の法案の内容を見ますと、結局こまかい弱小企業というものは整理統合するか、大企業に合併吸収されることになるのでありまして、中小企業の崩壊は日本経済の構造に一大変革をもたらしまして、政治においても経済においても、きわめて重大であるのでありまして、われわれはこの法案のねらいどころに遺憾な点を考えておるのでございます。
それから、これが総合対策審議会でできて非常にりっぱな成案であるということで御賛成の御趣旨も相当ございましたが、これらの方はおおむねその総合対策審議会のメンバーもしくは関連をいたしておいでになる方であって、私ども機械工業者はその対策審議会に一名も加わっておらないのであります。繊維工業の十大紡を初めとして、工業に携わっておられます方が日本の輸出の第一位を占めるほどしし営営と努力健闘せられました長き歴史には、満腔の敬意を表するものでありますが、また織機を作り、紡績機械を作り、その準備機を作った人々は、少くとも豊田翁のごときは今日はございませんけれども、過去においては国定教科書に出るほどの、国家にとってりっぱな功績を上げておる。その織機メーカー、あるいはまた世界の水準を越えるほど今日独力をもって築き上げてきましたこの機械工業界に対して、一言のごあいさつもなく一方的な審議、答申をせられ、それによってとり上げられたということは、私どもはこれは片手落ちな審議会の答申ではないかと思うのでございます。今後におきましては車の両輪のごとく——私の先輩の井上準之助氏は、理論はいかにりっぱであっても、一つのボタンを押してどこに繁栄が行くか、どこに破滅が行くかを知らざる者は政治を語る者ではないと私に青年時代に教訓をしてくれたのでありますが、ただいまの引例を申し上げますと、これは一方にのみ偏したところの答申でございますので、今後こういうことのないように政府当局もお考えをいただきたいということで、この審議会答申の内容について、今日は批判は別といたしまして、納得のいかないことを申すのでございます。その結果といたしまして、機械工業、これに関係する下請工業及び関連工業並びにこれに関係をする労働者に対して、いかなる対策が盛り込まれておるかというと、何らこれについては触れておりません。たまたま議会戦術と申しますか、答弁要旨を作るといいますか、輸出産業をどうしようとか、設備の更新をどうしようとか、耐用年数をどうしようとかというゼスチュアは当局はお使いになりますけれども、一つも確定したきめ手というものはございません。ここに繊維局長もおられますが、何らきめ手がないと私に言明しておる。そうして今日政治は、一方において完全雇用を行い、他面において社会保障政策をするということが最大の目的であるにかかわらず、七十万の完全失業者をいかに救済するかというので、わが国の労働所管の方面においては御研究をいただいておりますが、私はまだ寡聞にして、この繊維工業の波動を受けて失業していく者に対して、労働省と十分な詮議をいたして対策が樹立されておると聞いておらないのでございます。これをどうしていただくか、これが今日きわめて重要な問題であると思うのです。
さらにまた、答申の中で一つ私が敬意を払いますことは、消費者の立場を考慮いたしておる。すなわち価格が高騰いたしますれば、これに対して適当な勧告をするということが答申されておる。ところが今回の臨時措置法案に対しては、通産大臣の勧告の分は抜けておるのであります。私が一番心配しておるのは、私どもの直接の工業にも重大でありますことは申すまでもありませんが、これが消費者大衆の価格の値上りを心配するものでございます。現に……(「今上っておる」と呼び、その他発言する者あり)なるべく早く申しますが……(「ゆっくりやれ」と呼ぶ者あり)ダイヤモンド印のワイシャツは六十双で大体一割五分くらい上げております。昨日の新聞の報道するところによりますると、相当のものは二割近く値上りをするといっております。別に私は利潤追求をせられることを否定はいたしませんけれども、一方において非常な利益を上げつつ、他面物価の高騰をするということは私どもは遺憾に考えるのであります。ことに本年の繊維の消化力というものは、アメリカの昨年の有史以来の経済界の好調につれまして、ことしは非耐久消費財部門が最も旺盛になると言われております。現にそれは現れておる。繊維品、くつ、身の回り品、台所品というものが世界の趨勢であります。また日本もこれに準じておるのでありますから、この消費量はますます本年から上っていくのでありまして、この衣料の消化量の水準が上りますことは、文化生活の向上として私どもは歓迎をいたしておるのでありますが、そういうときにこういう設備制限をするというようなことは、私は時期が間違っていると考えられるのです。昨年の五月ごろは一応こういう問題は取り上げられたかもしれぬが、現在の段階、ことにジュネーヴ精神によって世界の平和招来ということから、消費部門が非常に助長されて参りましたその波動を受けつつあるが日本においても、この点は大いに考えをいただきたいと思うのであります。輸出の正常化についてこの法案が出ております。なるほどアメリカにおいて輸出の問題は、少しは論議されておりますけれども……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/20
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021・神田博
○神田委員長 奥村参考人、時間を守っていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/21
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022・奥村鉄三
○奥村参考人 わが国は百万俵も買っておる。昨年は百万俵を下っておりましょうけれども、その百万俵の八%くらいしかアメリカに輸出していない片貿易であります。その日本が、ただいまお話のありましたように、良品であって廉価であって、問題のブラウスのごとき、一ドル・ブラウスといわれているが、日本は一ダース五ドルで積み出している。アメリカに行くと一枚が一ドルで売っておる。それが安過ぎるのだということが、問題の焦点のようになって、大騒ぎをしておいでになるのであるが、わが国は餓死か輸出かよりほかない。二、三年前に皆さんがおっしゃったのです。その餓死か輸出かよりほかないというので、懸命に、中小企業も大企業も努力をして、今日までドルをかせいで、その悩みを除くことはけっこうでありますけれども、問題を解決するときはすぐ設備制限、設備制限とおっしゃる。もっと輸出の窓口について研究するところがなくてはならないし、また紡績屋さんもいろいろな面において御研究を願って、ただ設備制限をして、職業選択の自由を妨げるということにのみ熱中せずして、他の方途をお考えいただきたいと思います。
そこで機械工業の立場を、御注意もございますから簡潔に一つ申し上げておきたいと思います。機械工業が生きることは、ただいまの法案でいくと、繊維工業が生きるということであって、第二十九条のときでも、むしろ織布屋さんの代弁者のごとく、私どもは主張をいたしたのでございますが、まず第一に二部制で十六時間ぶっ通して働いているような機械は、耐用年数を七年もしくは十年に短縮して、資本蓄積は配当に回すことなく、設備の更新に回していただくことが考えられなければならぬと思うのであります。
それから技術の温存と向上でございます。需要のないところは技術は向上いたしません。ここで二、三——法案では五年でございますが、二、三年間ストップに近いようなことになりますと、現在かかえておりまするメーカーの技術は崩壊いたします。下請もまた崩壊せざるを得ないのでありますから、この技術が下ったならば……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/22
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023・神田博
○神田委員長 奥村参考人に御注意申し上げます。もう二十五分近くなっておりますから、結論を急いで下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/23
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024・奥村鉄三
○奥村参考人 それでは結論を項目だけ申しますが、その技術の温存をするために方途を考えなければ、わが日本の紡績機械あるいは染色機械というものは、米、英、イタリアその他の輸入に待たなければならぬという、外貨の流出になるということにお考えをいただきたいと思うのであります。また賠償に引き当てになるかならぬかは、いろいろな議論もありましょうが、賠償に引き当てにしていただいて、政府は買い上げて、つなぎ作業をなさしていかなければならぬ。輸出振興についてもいろいろおっしゃいましたから申しませんが、ただ一千万や二千万の旅費の補助だけで、今日の紡績機械の輸出は困難でございますから、これは積極的な関係を持たしていただかなくては、ならぬと思います。ことにこの機械工業のこの法案が通りますと、直ちに失業者が出ます。詰めかけている下請業者というものは、かかえている従業員にどうしてその退職金を出そうか、どうして彼らに職を与えようかということにしし営々と努力をしておりますが、今日は遺憾ながらその方途を発見するに至っておらないのでありますから、不用機械、不用土地、不用建物、そういうようなものはお買い上げになって、そして、お前たちは心配はないのではないかという、こういう筋道が立ってこなければ、こういう法案というものは片手落ちだと存ずるのであります。今後の方針につきましても、方針々々とおっしゃいますが、この法律の実施は、公布されてから二カ月以内でありますから、二カ月と二十日間はありましょうけれども、もしこの法案が国会を通って公布されたとすれば、これにおけるところの勤労者、この事業者というものは、立ちどころに崩壊するか、もしくは廃業するか、あるいは転業するか、今のところ転業の道はほとんどありませんが、そういうような事柄について法案の中に十分の織り込みがなくてはならぬ。ダムを作るときに何十億という巨額を御出資になる政府並びにこの恩恵を受ける独占企業を確立するという繊維工業界は、何百億の金を積んでこれらの機械工業者に対してその道を講じておいて下さっているとは思いますけれども、そうあるとすれば、こういうところで御発表になるのが当然であるが、御発表にならないのは紳士のお方であるから御発表にならなかったのかもしれません。どうぞあらゆる意味において、今日の、特に東海、北陸地帯はこの方面の発達しておるところでございますので、一方に偏せず、いわゆる車の両輪のごとく共存共栄の実を上げるように努力をしていただかない限りは、先刻申し上げたように憲法違反の疑いも強く、独占禁止法に抵触して、しかも大企業を助けて中小企業を圧迫するような法案には断じて承服ができない。しかも現実の綿業界は好調に堅調を加えているというのは事実でございますから、この事実を背景としてどうぞ各委員においても御検討いただきたいと思います。最後にこの重大性にかんがみられて、本法案の審議を二カ月有余も審議に上すことなく、みずからの手に慎重に御研究を願っておりました皆様の見識に、敬意を表しまして私の公述を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/24
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025・神田博
○神田委員長 傍聴の方に御注意いたします。衆議院傍聴規則によって議場における言論に対して賛否を表明したり、また拍手をすることは禁じられておりますので、委員会の秩序を乱さないように十分御注意願います。この際午後二時まで休憩いたします。
午後零時五十八分休憩
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午後二時二十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/25
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026・神田博
○神田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
午前の会議に引き続き、繊維工業設備臨時措置法案について参考人より意見を聴取いたします。まず竹中参考人にお願いいたします。竹中七郎君、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/26
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027・竹中七郎
○竹中参考人 私は人口五万の愛知県刈谷市の市長をやっております。この市は三十年前におきましては一万くらいでございましたが、先ほどの石田参考人は自動織機の社長でございますが、その自動織機がくる、あるいは民成紡績という会社がきまして、三万都市になり、合併して五万都市になったのでございます。この会社の盛衰というものに私の市の盛衰がかかっておる、こういうことであります。それでこのたびの繊維工業設備臨時措置法案が出ますと、一番問題になりますのは、機械メーカーである豊田織機の衰退を来たす、こういうことであります。それにつられまする下請工場——この下請工場のパーセンテージを申し上げますと、大体先ほども参考人から申されました通り、機械メーカーの約半数が愛知県にあり、その一五%以上が刈谷市と刈谷周辺にあるのでございます。それで人員におきまして、これに携わる者が約四千五百でございまして、家族をまぜますと一万五千ないし二万になりまして、刈谷市の人工対比を申し上げますと、三分の一くらいに相なるのでございます。この問題が起りまして衰退いたしますと、刈谷市というものはなって参りません。いわゆる失業が起る。まず第一に下請工場の失業が起り、そしてそれにつられまして本工場の首切りが始まる。われわれの商店におきまする盛衰も、この豊田に依存すること非常に大でありますから、商売と申しますか商業方面が衰退する、かようなことに相なるのでございます。日本全体をお考えになりまして、あるいはこの繊維工業を考えられまして、こういう法案を御提案になりましたが、一つの業者の方を重点に置きますと、他の方において必ず犠牲が起る。特に法律をお出しになりますとそれには罰則がつきまして、そしてはっきりして参ります。この繊維界の方々は最も優秀なる商売人でありますから、これまでしなくてもいいじゃないかとわれわれ小さい町の市長といたしましても考えるのでございます。私も三年前には参議院におりまして、ちょうど中小企業安定法案の審議にあずかったものでございます。その時分にはあれは福井の絹、人絹の問題がございまして私もこれは必要である、かように考えたのでございますが、現在その反撃が三年間われわれの市におきまして出て参ったのでございます。この二十七年ころにおきましては、豊田系統から市民税といたしまして五千万円以上入っておったのが、昨年におきましては一千万円、約五分の一に下ってくる、こういう状態でございましたが、ようやく安定いたしまして、この三十一年度は三千万円くらいになるのじゃないか、かように考えておったのでございます。その際におきまして追い打ちの整備ということになりますと、われわれの町としてはどうしても耐え忍ぶことができない、こういうことで私の市会におきましても、もはや通産省並びに国会の方に二回陳情に参っておりまして、その間また一回私の土地の当局の者が参りまして陳情をいたしておるのでございます。
さような状態で私は専門家ではないのでございまして、ただいま専門家の方々、石田さんその他が申されまして十分御承知のことと思いますが、私この法案を拝見いたしまして、繊維産業総合対策審議会が答申しておられるうちで、最後に、懸念されておる点が四つばかりあるのでございます。すなわち消費者に対する影響、労務者に対する影響、零細企業に対する考慮、あるいは繊維機械工業等に対する影響というこの四つでございますが、これがはっきりしておらない。これをはっきりしていただかなければ、われわれの町としては混乱を来たすものであると私は考えるのでございます。
そういう意味におきまして、私は簡単に自分の陳述をいたしたいと思うのでございますが、現在この法案は貿易の正常化をはかる、こういうことでございます。設備が多いから安売りをする、こういう考えと、バイヤーが多過ぎる、バイヤーにおいて左右せられる点がたくさんあるのでございまして、この問題を解決しなくて、設備だけをやってどういうふうになるか。これは繊維産業だけではなくほかの産業でもそうでありまして、日本の産業全体に零細と申しますか、あまりたくさんな売手がおって、それが競争いたしまして安売りになりまして日本の信用を落す。これをまず第一におやめになることが必要である、かように考えるのでございます。そういう意味におきまして、もしもこれが通るならば私はこういうことを提案いたしたい。それは転換させることでございます。機械メーカーの転換をするには一年くらいはかかるのでございます。一番零細であります下請を助けるには一年間この法案を延ばすということが必要である。そういうことをするというと、何と申しますか、その間を縫って注文をしていろいろなことをやりますが、そういうことをすればあるときには参るのでございますから、そういうとろいことはやらない、一年間もやれるものではありません。現在は受注その他が多くありますけれども、これは一時の現象でありまして、一年間という一つの期間をとっていただきたい。
もう一つは、一年間に十大紡の方々が一番利益を得られるのでございますので、その方々が新鋭機械にかえるということを機械メーカーとはっきりしていただく。これに対して通産省がしっかりと約束をとるとか、附帯決議にしていただく、こういうことになるならば下請の方々の窮状が救われるのではないか、そういうことを考える次第でございます。私の町の豊田織機は何と申しましても日本第一の織機メーカーであり、その次には豊和というような関係でございまして、小さなわれわれの町といたしましては、最も中心であります豊田自動織機の衰退ということは非常に問題でございます。一年間ありますれば、社長の石田さんが頭を練られまして、必ず更生をしていただける、かように私は考えるのでございます。でありますから、こういう法律を作るときには一つの犠牲者をまず考えて、そしてこれを成立さしていただきたい。こういうことを賢明なる議員各位にお願いいたしまして、この法案をもちまして犠牲の大ならぬようにしていただきたい、かように考えるのであります。私の陳述は以上で終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/27
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028・神田博
○神田委員長 次に今崎参考人にお願いいたします。今崎好男君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/28
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029・今崎好男
○今崎参考人 私は紡績産業の基礎産業である機械産業を中心とする事業場に働きます、十六万ないし十七万の従業員と、その家族の本法案に対する意見を代表する一人として、ただいま出されておりますこの法案に対し全面的に反対をいたしたい。まずこの結論から申し上げておきたいと思うのであります。
なぜ反対をするか、御承知のごとくこの法案は繊維産業総合対策審議会の答申に基いて作成をなすったのでございますが、午前、午後に引き続き各参考人からも陳述されましたごとく、この繊維産業総合対策審議会の構成を見ますときに、機械機械産業の業者ないしはこれに伴う従業員の代表が参画をいたしておりません。でございますから、委員に選ばれました方々の手前みその答申である。また意図する問題に対して作文を作られたにすぎない、かような見解に立たざるを得ないのであります。なぜかと申しますと、あの答申案の内容ないしは提案の説明にもございましたごとく、日本の繊維産業がわが国の経済に占める重要性と、海外市場におきますところの信用回復の問題について強調なすっておるのであります。またこれらを解決する手段といたしまして、繊維製品を制限する、そのまた手段として設備をまず制限する、かようにおっしゃっておるのでございますが、現在日本は原綿を政府におきまして一括して購入なさっておる。そしてまたこの原綿の割当統制ないしはこれによりまして製品の規制を行うことが、今言われました問題に対するところの安定策である。何となれば政府は前に通産省の勧告をもちまして、紡績業者に対しまして操短を行わしめたのでありますけれども、この操短によってどういう結果が起ったか。ちっとも生産は低下しなかった。いわゆる精紡機の回転を早くする、ないしはフルに回転することによって価格を上げ、価格が上りまして、また在庫品がはけた。そこでより多くの生産をするためにあらゆる努力を払ってきておるのであります。かような実態からいたしますと、設備の制限を行なっても現状におきましてはほんとうの安定ということにはならない。まず原綿に対する何らかの措置を講ずることがとりもなおさず法案を改正する答申案の趣旨に沿うものである、かように考えます。
また第二点といたしまして、すでに周知の通りではございますが、紡績産業は日本の経済上重要な地位にありますが、それゆえにこれに関連する他の産業に対する対策をなおざりにすることができないのであります。前述いたしましたごとく、この関連産業に従事いたします従業員の数は十五、六万、家族を含めまして数十万になんなんとするのでありますが、この法案の施行と同時に約半数以上の失業者を出さなければならないということを覚悟しなければいかぬのでありますが、この答申案ないしは法案の中で、これらに対する対策をどういうふうに規定しておるか。それらのためにいわゆる審議会を設けて、各代表を選んで十分意見を聞いて善処していきたい、この善処というのは非常に危険でございます。行き詰まったときに答弁なさる言葉が善処で、あろうかと私は考える。何ら具体策がないのに善処という言葉でもって当面ごまかしていこうという気配が濃厚である。かようなことでわれわれはこの法案について審議会ないしは提案なすっておる内容を了解することはできないのであります。
第三点といたしましては、審議会ないしは提案の説明の中で、関連産業に対する影響を取り上げておりますけれども、これはもちろん自分たちの面接関係する問題でないということもありますが、非常に過小評価をなすっておる。注文が若干減るであろう、だからこれに対して耐用年数を短縮する、ないしは更新の助長を希望する、希望という表現、この一字によりまして、十六万ないしそれに付随する家族の人たちの生活が断たれようとする、かかることは断じて許されぬと私は思うのであります。しからば過小評価でないかどうかということを具体的にこの答申が行われた後において起った現象によって反証したい、かように考えるのであります。すなわち今刈谷の市長さんも叫ばれましたごとく、現在繊維機械工業を中心とする関連産業の所在地の各自治体におきましては、失業者の増大することをおそれ、また貧困な財政の立て直しに際し、極端な税の減収をおそれまして、この法案に反対するところの意見書を提出する決議を行なって、すでに関係官庁に対して提出を終っておる。この事実に徴しましても、この法案による影響というものが関連産業に対していかに大きいかということもわかっていただけると思うのであります。
それから次に申し上げたいことは、日本の紡績産業は御承知のごとく今や斯界を風靡するところまで発展を見ております。しかしこの発展がどういう経過をたどって発展して参ったかということは、今さら私が申し上げるまでもないことでございますが、この発展の陰に基礎産業である機械工業者が、紡績の一等国といわれた英国の機械に匹敵する機械を作り出すために陰の努力を払って参っておるのであります。ところが審議会に出られました皆さん方はほとんど機械屡ではなくて繊維屋さんが多いのでありますが、この日本の繊維業界を今日まで成長せしめたところの陰の力となった機械屋さんの影響に対して何ら考慮を払うところの考えがない、かようなことでは手前みそのそしりを受けましても、これに対して何ら弁明する余地はなかろうと私は考えるのであります。昔からいわれておることでございますけれども、政治というものがいかに国策上必要であったといたしましても、またある業界を成長せしめる上において必要であったといたしましても、その陰に泣く多くの国民があるといたしますならば、その法律というものは悪政のそしりを受けるのが当然であると私は考えるのであります。そこでこの法案に対しまして、いろいろ具体的に数字をあげまして立証いたしたいのでございますが、時間の関係もありますので、質疑の中で十分解明をしていただきたいと思うのであります。
最後に申し上げたいことは、この法律は現在の紡績業界の状態におきまして尚早であり、必要でないと私は考えますが、絶対なものであるといたしましても、前申し上げましたように多くの国民が泣かない、いわゆる関連産業に対する十分の措置を考慮するための独立立法を並立して提出なすって、ともに審議を進めていく、一方を成立させたときは、陰の力となる基幹産業もともに、自己の見通しの上に意欲を持って研さんし成長し得るところの道を立ち開いていくことこそが、真に国民を規制する民主的な法律である、私はかように考えますので、委員の皆さん方は、どうかこの法案にあわせて、関連産業に対する今後の助成対策の立法をともにやる、そうでなければ、一方的にこの法案を通さないという形に持っていっていただきたいと思うのであります。何となれば、前にも申しましたように、この法案の内容の中では、それらの問題を第四章の設備審議会において議するようになっておるのでありますけれども、審議会というものはどういうものであるか。これは前に申し上げましたごとく、繊維総合対策審議会しかりでありますが、最終的には力の関係によって決する。これは最近の裁判の例を——これは例になるかどうかわかりませんが、見ましても、法の解釈にも幾通りもあるわけでありますが、ましてやこの審議会というものは何ら効力がないといわれてもしかりであり、効力ありとせんか、それはその審議会を構成するメンバーの力の関係によって決する。すなわち十大紡を中心といたしますところのき大な業者によって支配される結果が招来するということを懸念するからであります。どうかこの点を十分御勘案をいただきまして、この法案を廃案ないしは、絶対必要であるといたしますならば、関連産業に対する今後の助成措置立法をあわせて御審議していただきたい、かように考えまして、私の御意見とする次第です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/29
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030・神田博
○神田委員長 次に石垣参考人にお願いいたします。石垣卯一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/30
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031・石垣卯一
○石垣参考人 石垣でございます。ただいま同じ労働者の立場で意見が述べられましたが、私も労働組合の役員をいたしまておりすので、変った立場から、多少意見の食い違いもあるかもしれませんが、よろしく御聴取願いたいと思います。
私は、先般の二十九条、織機の設備制限のときにも、やはり参考と人してここへ呼び出されまして、いろいろ御意見を申し上げまして反対をしてきたのでございますが、不幸にいたしまして、これは発動されました。そこでそのあとで起りました被害は、また後ほど申し上げたいと思いますが、そういうようなことから、今回この法案が出ましたのを私どもは昨年の十二月の半ばに承知をいたしまして、とりあえず東海地方、すなわち愛知、三重、静岡、岐阜、この地方の私どもと同じような紡織機産業に従事しております労働組合、労働者、いわゆる労働組合の比較的大きいのが二十三ばかり寄りまして、いろいろこの法案の内容を検討いたしました。そこで私どもといたしましても、政府のお出しになる法案について、もちろんわれわれに関係はあるけれども、その出たもの全部を反対するというわけじゃございませんが、たまたまこの法案につきましては絶対にわれわれは承服することができない。そこではっきりと反対闘争委員会というものを結成いたしまして、通産省を初めといたしまして、労働省その他関係の各省へ陳情をいたしますと同時に、先生方にもいろいろお会いをして、われわれの立場からお願いもしようというので、たびたび上京をいたしまして陳情をいたしたのでございますが、先生方も非常にお忙しいために、私どもなかなか会っていただくことができません。その点非常に残念に思っておるわけでございますが、たまたま本日私にも意見を言えということでございますので、非常に喜びにたえない次第でございます。
なお四月に入りまして、私どもはそれぞれの職場、あるいは街頭で反対署名の運動をいたしまして、衆議院議長並びに参議院議長あるいは商工委員長にも、われわれの署名簿を付しまして請願をいたしてきたのでございます。
次に私どもが反対をいたします理由を説明いたしますと、なまいきなようでございますけれども、私どもは国際的に見て、最近の国際情勢はどうなっておるか、こういう問題について私どもの立場から申し上げますならば、米国、並びに大きなところではソ連、イギリスあたりが、現在盛んに原子爆弾を作っております。それによりまして、私ども観念的に申し上げますならば、十年に一回ぐらいは戦争がある、こういうことが言われて参りました。そこで昨年あたり、もしも米ソ戦わばということで非常に問題になったんでございますけれども、その後この大きな国の双方が、戦争をしてはいかぬ、われわれは絶対に戦争をすべきではないということで、私どもは現在では大きな戦争はない、世界の二大強国は戦われないであろうということで、非常に安心をいたしております。世界の国民がひとしく、今のところでは安心をいたしておると思うのでございます。
そこでいろいろ情報を見ますと、日本では戦前、いわゆる昭和十二年の一番景気のよかったころに、私ども国民は一人一人が大体年間十三ポンドぐらいの衣料を消費しておった。それが戦争になりまして、これを政府から締めてきたために、使用はぐっと減って参りまして、終戦直後は非常に少かったのでありますが、三十年度になりましてまたこれが、戦前の一番よかったときの十三ポンドに復活をしておる、今後はますますそれが上回るであろうということが資料によってわかったわけでございます。そこで、それでは外国の状態はどうかと申しますと、やはり富める国は非常にぜいたくに使っておるということがわかるわけでございます。三十年度のアメリカの統計で参りますと、大体四十ポンド一人一人が使用をしておる。英国は、三十年度では三十ポンドをはるかに上回る状態である、こういうことがわかったわけでございます。そうしますと、戦争はない、そうして経済状態がお互いの国がそれぞれよくなってくる。従いまして私どもは、先ほどもどなたか申されましたように、着る物あるいは家がほしい、こういうことにはお互いが欲望を持っておりますので、できるだけいいものを着よう、これはやはり国民の感情として当然で、今後ともますますこういう繊維品の問題については上回ってくるだろうということが言えると思うのでございます。
そこでもう一つ戦争がないということにつきまして別な立場から申し上げますと、これははっきりダイヤモンドの資料なんかを見ますと、アイクが出馬する、これによって戦争がないという一つの大きな立証になる。なおソ連が先般スターリン批判をいたしました。それからそれによって世界の平和政策ということを非常に大きく打ち出しております。これによりましても私どもはここ当分の間は絶対に戦争をしないであろう、こういうふうに考えるわけでございます。
それから先ほど米国が日本の繊維品を統制した、すなわち南カロライナ並びにアラバマ州ではこれを法律で禁じまして、そして絶対に日本の製品を買うな、こういうことで制限をいたしておるように新聞では伝えておったのでございます。そこで私どももいろいろそれぞれに調べてみたわけでございますが、これはCICで調べてもらったその報告によりますと、なるほどこの州ではそういうものを決定をした。ところが実際に業者が小売店頭に日本の製品を売らないという表示をしておるのは三分の二で、三分の一は業者はこの法律に従わぬで現在でもやっておる。それからもう一つは、最近消費者であるところの特に婦人団体から、この法律はけしからぬ、悪法だ、すなわちいい品物を安く売るのに何が文句がある、州でこの法律をきめたということはまことにけしからぬ。その証拠に新聞を見せてくれたのでありますが、日本の基地と一ドル・ブラウスという大きな見出しでアメリカでは新聞に出ておりました。こういうことで新聞でも相当大きく批判をしておる。日本が基地問題についていろいろ反対をしておる。その理由、それをアメリカがあまり強行をしてはいかぬ、日本の国民感情が悪くなる、こういうような批判であります。なお一ドル・ブラウスの問題についてもあまり強硬なことをしてはいかぬ。日本の国民感情が悪くなる、こういうようなことをあわせて批判をしておるのを見たわけでございます。
なお国内事情につきましていろいろ資料を——私どもも繊維品のことにつきましては専門家でございませんので、資料をそれぞれひっぱり出して調べてみたのでございますが、最近の日本の綿業の事情につきまして、生産の指数はますます上昇しておる。これは先ほどもどなたかの証人が申されましたが、在庫は非常に減っておる。それから取引高については、すでに八月までは契約をしておられて、現在では十月あるいは十一月先物をすでに売買をしておられるような状態である。それからそれぞれの紡績業者が借金もしておられるようでございますが、それについては相当な政府並びに銀行へ金を返しておられる。先ほど利益の問題も申しておられましたように、こういうのは資料で発表をいたしておりますのを私が見たわけでございます。そこでこの問題は明らかに私どもはでたらめな資料ではない、すなわち綿業経済統計月報とか、海外市況週報とか、いずれにいたしましても、綿工連の調査部から発行されたものでございますので、決して私はでたらめではない、そういうふうに考えるわけでございます。なお海外に対する見通しが載っておるわけでございますが、それによりますと、ビルマ並びにインドネシアヘの製品の消化については、業界はしっかりと確保ができた、そこでタイ、パキスタンの委託加工の問題についても近く調印をされるらしい、こういうことが情報として載っておりました。なお欧州に対する輸出の問題については、七月末まではすでに約束ができておる、こういうことでございます。そこでさしあたり月間一億ポンド以上の生産をしなくては、とうてい業界としてはまかなっていけないであろうというようなことが載っておったわけでございます。
それから次に私ども機械産業の立場からいろいろ申し上げたいと思うのでございますが、最近政府でも非常に奨励をされておりますオートメーション、こういうことがいわれております。もちろん私どもも毎日何とか新しいい機械、質のいいものができるような機械ということでいろいろ研究をいたしております。そこでその一つの資料といたしまして、参考になるかどうかわかりませんが、戦前では一番調子のよかったときで一コリ四百ポンドを大体十一人工で製造しておった、こういうふうに出ております。それが終戦直後になりますと、これがどういうことか、人間がだれたのか、機械ももちろん悪くなりましたのだと思いますが、手入れがされておらないために焼け機械なんかでやっておったということもあると思いますけれども十八人工かかっておる。同じ一コリ四百ポンドを十八人工かかっておる。それが最近三十年度では七人工でできるようになっておる。これだけ機械が進んできた。もちろん人がなれたということもあるかもしれませんけれども、あるいは材料がよくなったということがあるかもしれませんけれども、いずれにいたしましても機械ももちろん改良されております、そこで七人工でこれができておる、こういう状態でございます。そこで現在私どもはまだまだ機械の改良ということについては十分考慮の余地がある、こういうふうに考えるわけでございます。そこで輸出をすれば、それでも機械の改良になるではないか、こういうふうに考えられるわけでございますけれども、こういうことを言ってはあるいはしかられるかもしれませんけれども、現在インド、パキスタンあるいは東南アジアの方へ少しずつ輸出はいたしております。しかしながらこの輸出は、今日本で私どもで作っておる最高の優秀な機械と申しますか、新しい機械を輸出するわけではございません。これは私どもが終戦前あるいは終戦直後に作りました標準のものを現在輸出をしておるのでありまして、あまり操作のむずかしい機械を輸出をいたしますと向うがよう使わない、こういうことがどうも実情であるようでございます。もちろん使う国もあると思いますけれども、その輸出のほとんどは標準ものを輸出いたしておる、これが実情でございますのでどうしても私どもはアメリカだとかイギリスだとかいうところを追い越すまでは、もっとどんどん研究をしなければならぬ。そのためにここでこういう法案を出されては非常に困る、こういうことが言いたいのでございます。
なお二十九条の問題につきましては、私どももこの法案を出されたあと、すなわち将来のことはわからぬとしても、半年か一年の間はおそらくゼロになるだろう、そうすると当然会社にいたしましてはわれわれに対して首切りをやってくる、あるいは賃下げをやってくるにきまっておる。そこで絶対にこの二十九条の発動はやっていただいては困るということを申し上げたのでございますけれども、それでは織機業者の方へ入れかえをする融資をしてやる、その予算化をしてやる。だから入れかえの促進が十分できるからがまんせよ、政府の方も十分にあなたたちが首切りにならぬような措置を請じてやる、だからがまんせよということで、とうとうこの法案が私ども反対をいたしましたにもかかわらず決定をいたしました。その後どうかと申しますと、その翌月、翌々月あたりは全然ゼロでございます。もちろん政府が予算化していただきまして、この金を業者の方がお借りになるにしても、大体手続に半年くらいはかかるのでございます。そういうことによりまして私どもも全従業員の約三割の首切りを出し、しかもなお首切りのあとで、残った人は一つ今までの給料よりも一割ないし一割五分の値下げをしてくれということで、これも首になるよりはいいだろう、やむを得ないであろうということでがまんをしてしのいできたわけであります。それが今度ここでまたこの法案が出されるということになりますと、これは織機よりもずっと規模が大きいために、ほとんど現在の従業員の全部にひとしい人が解雇になる、これは賃下げぐらいではとても乗り切ることができない、そこで何としてもまず私どもはこの法案は阻止しなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。
なお、今まで政府がいろいろな措置を終戦後でも講じてこられましたが、私どもは非常に忙しくなったり、また非常にひまになったりするわけでございます。それどういうことかと申しますと、たとえば朝鮮動乱が起る、そうしますと、ものすごく忙しくなりまして、会社は臨時工を入れてどんどん仕事をする。これが終りますと、でき過ぎまして一応一息ということでございますので、あとの注文がないわけです。そのために首切り、賃下げが起る。それから今度は綿花の割当がある。こういうふうに通産省が綿花の割当をするということで、機械の下見をされます。そうしますと、業者の力では割当をよけいもらおうということであろうと思いますが、注文が殺到する。そのあとでは、一時ストップという状態になるわけであります。また毛紡の確認をやる。そうすると、その毛紡が非常に忙しくなる。そのあとはまた山分の間仕事がない。こういう状態であります。今回でも、なるほどただいまは非常に忙しい状態でございますけれども、この法案がこのままでいきましても、なるほど幾らかはひまになるかもしれませんけれども、これが法律でストップされるよりは、その間何とかしてほかの仕事を少しずつでも見つけてしのいでいける、こういうことか考えられるわけでございます。そこで先ほども言われましたように、とにかくこの法案が出ますれば、まず一番最初に下請工場が切られる。そしてこの下請工場は、それではどうして食っていくかということでございますが、愛知県の場合をながめてみましても、なるほど自動車産業も相当発達しておるのでございますけれども、これに現在の紡績工業が全部集中するわけには参りません。そのほとんどは、何かかにか食っていかなければならぬということで、あせるにはあせるのでございますけれどもまず下請の織工の首切り、あるいは下請の中の半数以上は工場閉鎖をしなければならない状態になるであろう、私はこういうことを考えるわけでございます。
そこで今度の法案につきまして、先ほど今崎君が、どうしてわれわれのことも並行してめんどうを見てくれなかった、こういうようなことも言っておりましたが、以上申し上げましたように、日本の最近の状態、それから世界の動きなんかも私どもの立場からながめてみまして、一年前あるいは一年半前でしたら、あるいはこういう状態も考えられたかもしれませんけれども、きょう現在では、決してこの法案を出す必要はないじゃないか。それから将来は、私どもはいろいろ輸出ということも考えまして、まだまだ綿花の輸出も伸びるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。そこで私はこの法案はぜひとも一つ見送っていただきたい。この言い方はおかしいかもしれませんけれども、一応撤回していただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
それから、先ほど原さんがおっしゃったのですけれども、現在はかけ込み増設をしておる、それはその通りでございます。ところがそのかけ込み増設をしておるのは一体だれか、こういうことを言いたいわけです。もちろん十大紡も幾らかおやりになっておるようでございますけれども、私どもは注文の機械を見れば、これはどこの会社のタイプだということ——全然その系列に入っていない会社は増設をしておられない。いわゆる十大紡と直接取引でしておられる工場が増設をしておいとになるのだ、こういうふうな解釈をいたしておるわけでございます。それからもう一つ、鈴木さんがいい品物を安く売る、外国の業者に脅威を与える、そこでその反撃を食うからそれはまずいということを言われましたか、私はこれはちょっとおかしいと思うのであります。そんなばかなことはない、もちろん……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/31
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032・神田博
○神田委員長 石垣参考人、時間がだいぶ超過しておりますから、結論を急いで下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/32
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033・石垣卯一
○石垣参考人 脅威を与えることはもちろんでありますけれども、そこが商売のうまみじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。注意を受けましたので、結論を申し上げますが、先ほども申し上げましたように、どうか先生方におかれましては、現在の日本の国内の動き、世界の綿業事情や経済状態などもよく御検討を賜わりたい。私どもの立場から申し上げれば、絶対に今ここでこの法案を通していただいては困る。ぜひこれは引っ込めていただきたい。そうして将来どうしてもこういうものが必要だというときには、そのとき私どもまたいういろ御意見を申し上げたい、こういうふうに考えるわけであります。御静聴を感謝いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/33
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034・神田博
○神田委員長 この際お諮りいたします。理事会の申し合せによりまして、全国繊維産業労働組合同盟調査部長井上甫君を参考人に加えることにいたして、同君より参考意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/34
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035・神田博
○神田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。それでは井上参考人にお願いいたします。井上甫君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/35
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036・井上甫
○井上参考人 本日全繊同盟の滝田参考人が参るはずでありましたが、所用がありまして、私がかわりに意見を申し述べたいと思います。
この法案が通る場合に、問題になりますのは、先ほどから紡機の労働者の代表の方がいろいろその予測される問題について申し上げておりますが、それと同じように、繊維産業に働くわれわれ労働者もやはり大きな問題に直面するわけであります。しかしながらわれわれ繊維産業に働く者の立場といたしまして、まさに輸出産業の大宗としてのわが国の繊維産業の国際性というものを十分に考慮に入れて、そうしてさらにわが国の繊維産業というものを積極的に発展させるにはどうすればいいか、このような観点からわれわれはこの法案についていろいろと問題点を究明してきたわけであります。従いまして結論から申し上げますならば、以下具体的に申し上げますところの修正意見がいれられるならば、原則的に賛成したい、このように考えている次第であります。しかしながら先ほどから紡機の労働者の方も申しておりますように、この法案が出されてくるまでの経緯につきましては、やはり同じような労働者の立場でもってわれわれは真剣にこの問題を考えてきた次第であります。特に過般行われてきましたところの審議会には全繊同盟より三人の代表を送りまして、いろいろと意見を交換して参りました。またわれわれがほんとうに意図しておる点も申し上げて参りました。たとえば設備過剰の問題が取り上げられてきたときにおきまして、われわれは当初その具体的な根拠あるいは理由というものについては非常に疑念を持っておったわけであります。なぜかと申しますと、御存じのように、繊維産業におきましては基準法の特例といたしまして、現在深夜業の三十分が行われております。しかも昨年操短が行われておりまして、この際設備過剰の問題を云々するよりも、深夜業の三十分を撤廃したならば、おのずから操短という問題も解消するのではないか、あるいは自然に生産制限の目的も達することができるのじゃないか、このような考えを持っておったわけであります。そうするならば、何も現実にあるところの設備を縮小して、そうして余剰人員を出すなどというようなことはあり得ないであろう、このような考えを持っておったわけであります。しかしながら、御存じのように、繊維産業の歴史というものは、操短、人員整理の繰り返しでありまして特にわれわれが昭和二十七年の操短の際に、五万有余の労働者をわれわれの職場から失った、このような苦い経験を痛切に感じておるわけであります。たまたまこの問題が起ってきた場合におきまして、われわれは特に操短というものが合法化され、そうしてこの過剰設備に伴う処置というものが、独占資本の擁護のための線が非常に強くなるのじゃないかというようなことをいろいろ懸念いたしまして、その都度審議会におきましても発言いたしましたし、あるいは通産当局に対しましてもいろいろと意見を申し入れてきたわけであります。しかしながらこの間の情勢につきましては、そのつど情勢が変化いたしまして、われわれといたしましてもその間の事情は若干考慮していいのじゃないかというような考え方になってきたわけであります。と申しますのは、操短の合法化というような線がなくなっておりますし、また特にわれわれが主張いたします点は、労働者の完全雇用、しかもこの法律が施行される場合に労働条件に重大な変更を来たさない、このような条件が入れられるとするならば、一応この実態というものを認めてもいい、すなわち設備の総体的な過剰というものはある程度認めてもいいのじゃないかという結論に達してきたわけであります。また、現段階におけるところのわが国の繊維産業というものを客観的に分析して見た場合におきまして、特に内外の諸情勢に応じて大きな質的な転換を遂げるべき重大な時期に際会している、このような判断にわれわれは立っているわけでありまして、そのような角度からこの二つの条件というものがいれられるとするならば、われわれはこの法案が具体化される段階においては、これを了承してもいいというような態度を持つに至ったわけです。しかしながら、なおこの法案についていろいろな問題点というものをわれわれは考えております。たとえて申し上げますならば、登録制の実施によって繊維産業のいわば合理化努力の減退を防ぐために、高能率設備に対する入れかえとか、あるいは新増設の優先許可というような措置を講じようとするわけでありますが、しかし現実にそれに対する予算の裏づけがあるかどうかという点、またこのような問題が十大紡あるいは新紡、新々紡との間に利害関係が相反するような点がないかというような点をいろいろ考えてみまして、その上にわれわれが懸念いたしますのは、このような過程におきまして吸収合併というような問題が起ったり、あるいはそれがひいては労働条件に重大な影響を及ぼしてくるというような点を一つ指摘しておったわけであります。またこの法が施行される過程においては、大体中小企業、特に未組織の中小企業というものに非常に大きくしわ寄せがくるのじゃないか、このような点もいろいろと懸念しておるわけであります。また設備の抑制とかあるいは登録という問題だけでもって、果して現在スムーズな運営ができるかどうかという点があります。この点につきましては、昨年審議会が持たれてから今日に至るまでの間に増設がどんどん行われておりますし、またわれわれが非常に奇異に感ずるのは、操短にもかかわらず非常に生産量が上っているという点でありまして、これは明らかにスピンドルの回転数の増大やあるいはコリ当りの人員の縮小によって労働強化が行われているのじゃないか、さような点を非常に重視しているわけであります。またこのほかいろいろこの法案に伴う問題点があるわけでありますが、しかしながら冒頭に申し上げましたように、われわれといたしましては、この問題というものは、帰するところは労働条件というものに非常に重大な変更を来たすものである、従ってこのような点が一応解消されるという事実があるならば、これに対してわれわれは了承してもよろしい、このような態度をもって今日までこの法案を見てきたわけであります。しかしながら、毎回申し上げますように、われわれ労働者の立場からは、何と申しましても歴史的な経験を経ておりますところの操短による人員の縮小、あるいは労働強化というような点が最も懸念される点でありまして、もしも完全雇用が完全に実施され、そしてこの法律が施行された暁においては、この法律に便乗して、首切りとか賃下げとか強制配置転換とかあるいは労働強化等の事実がない、このような一応明確な見通しを立てる必要があるわけであります。しかしながらこの法案の内容をいろいろ検討してみますならば、具体的には非常に問題が多いわけであります。この法案の提案理由には、労働者あるいはその関連業者、消費者の利益も十分に考慮するのだ、このようなことを一応申し述べてあるわけでありますが、しかしそれだけではわれわれとしては、納得できないのであります。従いまして、以下具体的にこの法案の中にありますところの条文について、修正していただきたい点を申し上げてみたいと思います。
まず第一の点といたしましては、第二十五条の第二項にあるわけでありますが、「共同行為の内容は、一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがなく、」云々と、このようになっておりますが、この中に明確に労働者という文言を入れていただきたい、このように考えるわけであります。
第二点といたしましては、第二十六条に「通商産業大臣は、第二十四条第一項の規定による指示に係る共同行為の内容が前条第二項に適合するものでなくなったと認めるときは、その指示を変更し、又は取り消さなければならない。」こうなっておりますが、この場合におきましても、いわゆる後ほど設置されるでありましょうところの審議会の意見を聞いて、そして指示を変更し、取り消す、このように審議会の意向というものを尊重してもらいたい、このような趣旨であります。
第三の点といたしましては、後ほどこの法が施行される段階におきましては、審議会が新たに設けられてくるわけでありますが、この構成メンバーといたしまして、労働組合の代表を必ず加えてもらいたい。これは現在の法案の中には、このような文言も表われておりません。ただし提案理由の中には、その旨が入っておりますが、この点を何らかの形で明確にしていただきたい、このように具体的な修正意見を持っておるわけであります。
このような修正意見が取り入れられるとするならば、どうやらわれわれが考えておりますところの繊維産業の民主的な運営がはかられていくのではないか、このようなことを考えております。
最後に申し上げておきたいことは、先ほどから紡機の労働者の代表の方がいろいろと申し上げておりましたように、現実にワンダラー・ブラウスの問題であるとか、あるいは米国の南部諸州の日本の繊維品のボイコット運動云々であるとか、このような一連の国際的な問題を背景にしておるだけに、繊維産業は、現在非常に複雑な段階にあるだろうと思います。しかしながらわれわれはもちろん輸出産業の大宗としての繊維産業に働くところの労働者でありますだけに、十分その実態を認識し、かつプライドを持って労働に励みたい、このように常日ごろ考えておるわけであります。それにもかかわらず、このような問題がたまたま起ってくるということは、なぜそういう問題が起ってくるのかと申しますと、残念ながら繊維産業の場合には、労使の関係がフェアに行われていないわけであります。この点十分に諸先生方も認識していただきまして、たまたまこの法案の審議の過程においても、そういうような点を十分に参酌していただきたい、このように考えるわけであります。そして繊維産業のほんとうに民主的な発展をはかるためには、労使がほんとうにフェアに話し合いの場を持つ、このことのみが重要な要因である、このように考えておるわけであります。
なお今後いろいろ問題があるでありましょうが、この法が施行の過程においては、これが単に通産行政の分野だけでは十分にその目的を雄することができないのではないかと思います。なぜならば、われわれが懸念いたしましたような問題はもはや通産行政では解決のできない問題であります。必ずこれが労働行政と密接に結びつかなければならない。かような意味におきまして、十分にこの間の相関関係というものを認識していただきまして、いろいろとわれわれの希望する点に対して意見を十分に取り入れていただきたい、このように考えるわけであります。繰り返し申し上げますが、われわれ繊維の立場といたしましては、今まで申し上げましたような具体的な修正意見が取り入れられるならば、原則的に賛成していきたい、かように考える次第であります。以上をもちまして、意見にかえる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/36
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037・神田博
○神田委員長 以上で各参考人の御意見は一通り伺ったのでありますが、参考人に対する質疑の通告がありますので、順次これを許します。加藤清二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/37
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038・加藤清二
○加藤(清)委員 私は与えられました時間の間、要点をかいつまんで参考人にお尋ねしたいと思います。
〔委員長退席、小平(久)委員長代理着席〕
わが党は御承知の通り、平和産業の育成を心から念願いたしているものでございます。また私は過去のいろいろな因縁によりまして、繊維産業をこよなく愛しているものでございます。ところが、けさほど来お述べになりましたきょう御列席の方々は、この繊維産業のエキスパートでありまして、きょうお集まりの方々は繊維産業のオール・スター・キャストというところでございますが、この方々の御意見をいろいろ承わりまして、私非常に感銘が深かったのでございます。ところが、このお話を通観してみますと、私は一つの危惧の念を抱くのでございます。すなわちすべての産業がそうでございますが、特に繊維産業は過去の日本の経済の中心をなしてきた。斜陽という言葉が近ごろ言われますが、それでもなお輸出は第一位を占めております。将来この業はますます発展しなければならない。やはり戦前と同じように日本経済の中心を形成してしかるべきだ、そうあることを期待してやまないものでございますが、それにはどうしても大きな力が必要でございます。ところがけさほど来の話を承わっておりますと、せっかく持っているところの力、権利を他に奪われたり、あるいは他にのしつけて献上したりというような結果の生ずるような発言が間々ございましたので、私まその点をおそれるわけでございます。第一番は外貨の割当の問題でございます。第二番は輸出の問題でございます。第三は経済統制の問題でございます。以下順を追うてお尋ねいたしますが、繊維産業の不況を打開するに当って、今日のエキスパートの方々はだれしもそうでございましょうが、設備を制限するだけで事足りるなどということを考えていらっしゃる人は一人もないと思います。これは多く必要としている施策のほんの一部分なんです。ところが、それに熱中している間に、政府はとんでもないことを考えているようです。すなわち今まで与えられておりましたところの外貨の権限をどうかするとよそへ取られそうな形勢が見受けられる。新聞にも出ている。すなわち過去の設備制当でありましたものを商社割当に移行しようという空気がうかがわれているわけでございますが、これに対して業界としては一体どのように考えていらっしゃるのか。この点を原先生ないし吉田先生、これは綿と毛の両オーソリティでございますので、そのお方にそれぞれの立場からお考えを承わりたいのでございます。私の考えからするならば、この割当制度が今の制度でいいとは思いませんが、もしこれを改善するとするならば、せめて綿においてはカード下か、コーマ落ちを、毛においてはノイル程度をAA制に持っていくのが順序ではないか、かように考えるものでございます。この点いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/38
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039・原吉平
○原参考人 綿紡績業者の立場として、ただいまの御質問にお答えいたします。綿花の割当は現在紡績の設備とそれから輸出の数最のリンク制の二通りによって割当を受けているわけです。われわれはかねて主張しておりますように、できればこれはもう為替の割当というようなものはやめてしまって、自由買付ができるのがわれわれも望むところでありますが、日本の経済事情から見ましてそういうこともできない。そうするとある程度貴重な外貨はこれを有効適切な方法をもって割り当てねばいかぬ、こういうふうに考えているのであります。そうすると外貨を割り当てる場合には、だれに割り当てたらいいかということが問題になるわけでございまして、これを外国から買う商社に割り当てたらいいか、メーカーに割り当てたらいいかということになる。私はメーカーの立場としまして、その自分のところで使う原料はメーカーが一番知っていると思うのでありまして、そのメーカーの欲するものを買っていただくのが最も外貨の割当を有効に使うことじゃないか、こういうふうに私は考えているわけであります。それで商社に割り当てた場合には、この前に朝鮮事変のときにAA制がありまして、これをできるだけ早く有効に使えということでうろたえて大いに輸入を奨励したのでありますが、そのときなんかはあとで非常な暴落を食って持ち余して、そうして倉庫の中でゴムなんかでも使えぬようになったという話も聞いているわけであります。これがもしも実際に使う者に為替を割り当ててやって、それによって購入している場合には、大体にどういう製品を作って、どこへ売ろうかというような目当てをつけて、その割り当てられた外貨を有効に使うことができると思いますから、ほとんどむだなくいけるんじゃないか、こういうふうに考えるのであります。商社に割り当てられた場合には、これはどこでもそうだということではありませんが、もうけさえしたらば、とにかくあとはどうでもいい。それが有効適切なものか、国民の好むものが作られようが作られまいがそんなことはかまわぬ、割り当てられた外貨でできるだけもうけたらいいんじゃないか、こういうことになるおそれもあると思うのでありますから、やはり外貨割当はわれわれ生産者に直接割当をいただきたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/39
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040・吉田初次郎
○吉田参考人 御質問に対し御返答申し上げます。貿易の正常化が叫ばれていまして、従来の外貨割当の形式をいろいろと変更するように叫ばれておるわけでありまするが、その一つとしまして、今お話の従来のメーカーの割当制を商社に移行するという意見もあるようであります。羊毛紡績におきましてはほかの原料と違いまして、戦前も現在も羊毛の輸入はほとんど全部が委託買付、メーカーが信用状を発行して貿易商はただ口銭を取って輸入しているというのが大部分になっているわけでありまして、その理由といたしましては、羊毛は非常に相場の変動がひどいものであって、これを思惑に買うということは非常に危険があるということから、メーカーの設備に応じまして割り当てて、必要の原料を取ることが妥当であるというふうなことになっておるわけでありまするが、ただその中でごく小さいメーカーは自分自身で金融できないものがありますので、この程度のものを商社に移そうというような説があるように聞いております。この程度はしかたがないと思いますが、メーカーが自分の責任においてやるものは、その割当というものは当然メーカーにくるのが妥当でないか、こう思っておるわけであります。この羊毛紡績というものの取引方法がほかの商品と非常に違いまして、ほかの商品は輸入業者の勘定で買うものが、紡績はメーカーの勘定で買うので、いわゆるインデントでメーカーがLCをおろしておる、従ってLCを発行し、かつ相場のリスクを取っておるメーカーに割当をするのは当然と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/40
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041・加藤清二
○加藤(清)委員 先ほど来機械産業のお方の苦境が述べられておりましたが、要は繊維産業総体が発展し伸びていけば、それに並行して機械産業も伸びるというのは、これは理の当然でございまするし、過去の歴史もそうなっておるようでございまするので、私は最初にその繊維産業総体がもそっと伸びるにはどうしたらいいかという点についてお尋ねしたいと存じます。
その第一は御承知の通り企業内部の改革ということもございましょうし、それから業界全体の改革ということもございましょうし、また政府の施策の間違っている、この誤まりを修正するという点もございましょう、いろいろありまするけれども、何せ時間がございませんので、そのうちの一例をここに申し上げてみたいと存じます。私の承知しておりまする範囲でございますると、機械の耐用年数でございまするが、これは大体過去におきましては十二、三年を週期として変更されているようでございます。もちろん戦争の空白とか、あるいはそれ以前にもいろいろなことがございましたが、大体の平均は十三、三年から十五年程度の週期によって機械の進歩と変革が行われているようでございまするが、私の知るところによりますれば、これの耐用年数は機械の機は二十三年と記憶しております。それから半木製品は十五年と記憶しておりまするが、これでは週期にも合いませんし、今後はこの週期が一そう短縮いたしまして、次々と新しいスタイルが出て参ると存じます。またそうあらねば繊維製品の輸出ということは海外市場で競争ができなくなると思います。そこでこれに相呼応するために当然のことながら耐用年数の短縮ということが行われてしかるべきで、また他の機械部門と比較いたしてみましても、三十三年の、二十五年のなんというのはまずないようでございまして、近ごろでは租税特別措置法によれば三年か四年で減価償却ができるようでございます。減価償却の短縮はやがて社内蓄積の増強ともなり、これが機械設備の更新の基礎とも相なると存じますが、この点は一体いかようにお考えでございましょうか。これも経営を行なっていらっしゃる御両所と、もう一つは機械を作られる方に果して二十年も三十年もかからなければ週期がこないのかを石田さんにお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/41
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042・原吉平
○原参考人 お答えいたします。私は今材料を持っておりませんから、紡績機械の耐用年数が幾らだったかということを覚えておりませんが、多分二十年前後でなかったかと思っております。ただいまお話になりましたように、最近になりまして技術の進歩が非常にテンポが早くなってきております。紡績会社が現在までに発達してきた裏には、むしろ紡績機械の発達がおそかったため同じ機械で長い間かせいでもうけたということも言えるのでありますが、御承知のようにもう最近は機械の改良のテンポが非常に早くなって、終戦後におきましてもニューマティックとうような新しい機械ができまして、それによって各社ともどんどん取りつけるというふうになりました。従いまして先ほども全繊の組合の方がおっしゃいましたように、一コリ当りの使用人員というものもぐんぐん減ってきているようなわけであります。従いましてわれわれとしましては、不況時においても機械の合理化というものは当然やらなければならぬ、もうかればなおさらにもうかった金で早くやるということは、これはもうわれわれ工場を経営している者は当然の責務でありまして、従いまして耐用年数でも現在の二十年というのをもっと早くしてもらいたいと私は考えているようなわけでございます。紡績の機械メーカーさんとしては——私はそう思っていないのでございますけれども、どうもこの措置法案が通ったらばいかにも紡績機械のメーカーさんは倒れてしまうような非常に誇張したようなことをおっしゃっているようでございますが、私は紡績業者も紡績機械メーカーも、それからこれに従事している労働者も、いわゆる同寸共苦であって、一つが栄えて一方が栄えないというようなことはない、一方が栄えたならば必ずみんなが栄えていくものだ、こういうふうに確信しているようなわけでございます。今の耐用年数の問題なんかはいいことにお気がつかれたと思うのでございますが、われわれとしてもこの際に、外国との競争のためにもできるだけ耐用年数を短かくしていただくのだったら非常にけっこうだと思います。またこれは多分機械屋さんからも御賛成の意見があるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/42
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043・吉田初次郎
○吉田参考人 毛の紡績におきましては綿と違いまして、根本的な紡績の観念が見たところあまり変っていないように見えますけれども、実際におきましては日本が戦時中しばらく鎖国的になっておりました間に、外国では非常に発達しまして、部分的に非常に改善が行われております。そのためにその部分を変えることによってその部分の能率が倍にも三倍にもなるような部門がある。たとえばウォッシングのごときは最近のものは戦前の三倍の能力があるというような工合に、毛紡績につきましては綿よりもむしろはるかにおくれておりまして、日本の設備は早晩かえなければならない時期になっておる。従いまして最近でも資力のある会社は設備をどんどん近代化して部分的にかえつつあるということがありますので、各紡績におきましては、今の償却年数というものは長過ぎる。これは当然短縮に賛成でありまして、四年でも五年でも短縮することを希望するものであります。従いましてメーカーの御心配になりますところの設備制限をかりにいたしましても、現状におきましてはできるところは設備をどんどんかえていかなければならぬという時代に来ておりますので、先般来お話がありましたごとき御心配はさほどないということを私も考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/43
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044・石田退三
○石田参考人 御質問に応じまして私からお答えを申し上げます。私はこういう法案を提案いたしますまでに耐用年数というものの御検討がいただきたいと存じておったわけであります。実は私の方で調べております調査によりますと、混打綿が十五年、練条機が十九年、粗紡機が二十年、精紡機に至っては二十七年、ワインダーが三十年、その他が二十五年というような長期な耐用手数で現在行われておるところに、今原さんがお話のように各社それぞれの力によって御改造をなさる会社はたくさんあろうと思います。しかしその力の及ばない人はこの耐用年数にとらわれてどうしても近代化することがおくれるのではなかろうかということを懸念いたすのであります。私どもは今日の綿紡の近代化ということを先決問題として取り上げていただきたいのは、この耐用年数の短縮ということを大蔵省側と十分の御折衝がいただきたいものだ、こういうふうに存じております。特に私が、余談ではありますが、御参考に申し上げたいことは、先日私の方でメキシコへ紡織機の工場を作るのに出かけて参ったのでありますが、あの土地でもこういったことは災いしで、中には三十年、四十年、五十年の古紡機を使って、見るかげもないような織物を織っておるのが現状であります。しかも綿花の産地でありながらこうした紡機を使っておるようなところは、だんだん綿業から置き去られていくというようなことも現実に指摘せられて参っております。いかなる理由を申し上げましょうとも綿紡その他繊維の発展はこの耐用年数の短縮をしてすべて近代化をしていただきたい。特にここで申し添えておきたいことは、私どもの紡機並びに織機メーカーが苦心して研究しておると先ほど申し上げましたが、その大半以上は紡績会社の技術陣の御援助が大きな力があると思う。この力によって、できれば日本式の新鋭の機械が今生まれつつあるとき、特にこの耐用年数には皆さんで十分な御検討をいただくようにお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/44
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045・加藤清二
○加藤(清)委員 まことに貴重な御意見を承わりましたわけでございまするが、仰せの通りこういう法律を出す前にそういう一切の準備を整えてから、この法律が行われる、こういうことであればまだしも、そういう必要欠くべからざることが行われずに、これが突如として出てくるものですから問題がいろいろ方々にかもし出されるわけでございます。そこで私は質問がたくさんありまするけれども、広範に広げますると時間がかかります関係上、この問題についてもう一つ突っ込んで聞きたいことがあります。
それは先ほど最終仕上げの面で大西さんがおっしゃったわけなんですが、リップル、サッカー、エバーグレーズなんというのは昔のものでありまして、きょうこのごろにはサンフォライズとかなんとか、最終仕上げの技術というものが非常に進歩発達して参ったわけです。またこのことは特に戦争の空白のおかげで日本は立ちおくれを見ておるような次第でございまするが、それがこの輸出振興に大きな影響を来たしている。まあ糸とか三桃のような白生地あたりまではそうでございませんでしょうが、柄物あたりになりますると最終仕上げの面が非常な影響ございまして、そのおくれを取り戻さなければ海外市場の競争に打ち勝つということはいかに商社ががんばってみてもどうにもならない状態下に置かれているではないか、かように思います。そこでこういうやさきに政府の最終仕上げ部門に対する施策のあり方について、本委員会でも過去において相当論議が戦わされておるのでございまするが、ただいまの業界の状態としては足踏みしておってもけっこうでありまするか、私の心配は杞憂でございましょうか、その点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/45
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046・大西太郎兵衞
○大西参考人 加藤先生の御質問にお答えいたします。戦争の空白がもちろんあったのでありまするが、朝野の皆様方が、先ほどの公述にも申しましたように繊維原料にのみ重点を置かれて、最終工程である、すなわち商品となるべき染色加工に対して、十二分なるところの御認識がなかった、御理解がなかったということが今加藤先生のおっしゃることの大きな原因だと私は考えるのであります。なおサンフォライズ等のお話もございましたが、これはむろんアメリカの特許でありまして日本の機械メーカーさんが、こういうものをもつともっと御研究になってアメリカのメーカーがサンフォライズあるいはエバグレーズのごとき機械を発明する以前に、日本の機械メーカーさんがかようなものに対して技術的に製作をされなかったということが私どもまことに遺憾に考えている次第であります。
なお捺染等につきましてお話がございましたが、これはイギリスのマンチェスターから日本の捺染がマンチェスター・グッズをも模倣しておるというような問題で、日英間に非常なトラブルが起きておりますことは先生も御承知だと思います。これは政府からも御慫慂があり、またイギリスのマンチェスターの商工会議所からの苦情によりまして、GHQ当時から、慫慂によりまして私どもが自主的に小委員会なるものを設置いたしまして、これの対策を講じておりましたが、たまたま日英問題がうまく話し合いがつきまして、意匠センターなるものを大阪に設置いたしまして、そうして政府からも御援助はいただいておりまするが、これは今では業者みずからの力において、この意匠センターの運営をいたしておりまするが、私はむしろこれは日英間におけるところの大きな通商航海条約の基礎観念からいきましても、いま少し政府御当局があるいはまた国会の御協賛を得まして、意匠センターの運営に力を入れていただくことが、私は今後の日英間の国際公法の円満なる運営に資するということを確信いたしております。なお私どもの将来についてのご心配の点につきまして、ありがたいお言葉をちょうだいいたしたのでありますが、私ども染色界というものは、私どもの素直な意見を申しますれば、日本の今日の経済、産業といたしましてはまずもって人口問題が解決しなければいけない。この国土を失いまして八千何百万人というような大きな人口が、わっさわっさとすし詰めになっておるといいますときに、何をもって日本は輸出と盛んにするか、国内原料のないときにどうしていくかということになりまれば、今日の話題といたしまして、米綿をアメリカから日本が輸入する、これを紡機にかけて糸にして直ちにイギリスへ出すあるいはインドへ出すというようなことでは、工賃がかせげない。これをさらに織布にいたし、なお織布をさらにさらしにいたすあるいは無地染めにいたすあるいはこれに柄を置く、あるいはエバグレースをかけるあるいは縮まらないところのサンフォライズの最高級の加工を施しまして、そのドルのかせぎで最高の加工費を伸ばすことによって、日本の労働力というものが、ここに消化されるのではないかということを常に考えておる次第でございます。この点におきましては、政府御当局、ことに繊維御当局も十二分に御認識を下さいまして、私どもの意見につき、また私どもの将来の業界の指導に対する十二分なる御援助をいただいておりますことにつきまして十二分に感謝をいたし、なお私どもは業界をしてさように指導していきたい、そうして外貨獲得、貿易の振興に尽くしたいと存じております。以上お答え申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/46
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047・加藤清二
○加藤(清)委員 機械技術の振興が一そう要望されております折に機械屋をたたくようなことをいたしますと、この機械が進歩でなくしてますます停頓してしまうということを先ほどどなたかがおっしゃったのですが、今の御意見を承わりましても、機械の進歩はぜひ輸出振興上も必要であるということのようでございます。そこで私は次に質問を進めますが、問題は輸出のことでございます。設備が多いか少いかの問題を論ずるに当っては、どうしても輸出の見通しということが何より人切なことになるわけでごさいますが、限られた員数——つんぼさじきにだれかを置いておいたというお話がありましたが、限られた員数で限られた材料によって需給の見通しを立て、そうしてそこから設備が多いとか少いとかいうことを論ずれば、別な論も出てくるのは当然でございます。
今日の輸出の状況でございますが、第一番にアメリカ輸出はもうこれでストップして伸びないと考えるべきか。
第二には、インドネシアの貿易は、私は賠償の問題が解決をすれば、昔通りには伸びなくてもある程度伸びるものと、こう考えますが、これはいかがでありましょう。
インド、パキスタンがいかに自家紡績が発達したといえども、なおかの地における紡績や機場を私この目で実地に見て参ったわけでございますが、その体験からいきますと、高級品はとうていできる機械ではなさそうでございますし、また日本の今日置かれているところの技術水準にまで到達するには、ここ数年ないしは十数年間を要すると見て参りました。従ってここも委託加工その他のいわゆる政治的な方法、手段によれば輸出振興は可能であると考えますが、これは間違いでございましょうか。その他中共からもすでに引き合いがたくさんきておりますが、これも皆様に作っていただきました繊維が高いからいけないのじゃない、悪いからいけないのじゃない、ただ国際上の問題、政治的な人為的措置によって輸出が行われていない、これにすぎない。もし昔通りに満韓支が許されるならば、紡毛に従事している中小紡の方々はここで完全に息を吹き返すことができることは、一時あの朝鮮へ毛布その他紡毛製品が出たことをもってみても明らかな事実でございます。これらも政府の輸出振興策いかん、ないしは賠償の早期解決いかん等等、いえば政治的な手の打ち方いかんによっては輸出は伸びるものと私は期待をし、それを望んでいるものでございますが、こういう考え方は間違いでございましょうか。この点を輸出に関係していらっしゃる綿布輸出組合の方にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/47
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048・鈴木重光
○鈴木参考人 まずアメリカ輸出でごさいますが、御承知のように本年度は一億五十万ヤードに押えたということでありますが、昨年相当伸びました内容を検討いたしますと、テクニックはそのまま申し上げますが、これは御承知と思いますが、ギンガムが相当伸びたと同時にエイティ・スクェアという、すなわち打ち込み縦横八十本といり非常に荒いもの、あるいはこれに類する生地綿布、こういうものが日本の非常に安いときに相当投げたという形で商売ができた。ギンガムはスムーズに出ていったのでありますが、そういう生地綿布類が相当出たということによって、ああいうふうな数字が得られた。
〔小平(久)委員長代理退席、委員長着席〕
本年の一億五千万ヤードは、あるいは達成困難ではなかろうかと実は存じておるわけであります。本日までのところは既約定品の積み出しで相当出たのでありますが、これから夏秋に向いましてギンガムのシーズン等も終れば、この生地綿布は、日本の相場が今中間思惑と申しますか、中間景気によりまして非常な高値を示現しておる状態でありまして、しかも先ほど来述べられたように、どんどん日本内地向きと申しますか、どこ向きともなく思惑が行われたという現状におきましては、アメリカ輸出は本年あるいは昨年より減るのではないかということを懸念しておるわけであります。
次にインドネシアでありまするが、これはお説の通りに私は考えるわけであります。大蔵省さんはトレード・バランスを非常に御心配になり、これ以上あそこへ貸せばいずれ賠償に取られてしまうだろう——これは意見の分れるところでありまするが、われわれはああいう消費物資で取られるならかまわないじゃないか、あるいは綿布で、これはキャンブリックと称するものが中心でありまするが、かりに一億ドル貸しができたといったところで、その原料であるところの綿花その他は半分以下なのである。あとは労働力を売るわけである、だから消費物資でむしろ貸し越しにうんとしておけ、どうせ取られる賠償だからそういうもので取られた方が得だ。これにかわって機械設備等を持っていかれたならば、日本の繊維業界が永久に浮かばれぬことになる素因を作るゆえんであるというような意見を持っておるのでありますが、これはなかなかいれられません、押えられまして、苦しいやりくりで今日の特殊のものに対して、その金額ににらみ合せて輸出を許すというふうなことをやりますためになかなかスムーズに運ばぬということがありまして、対インドネシア貿易はふるっておらぬのでありますが、賠償問題の解決した暁はというただいまの御質問には私ども同感でありまして、相当伸び得ると思いますが、これは今の間に合わぬことを遺憾とする次第であります。パキスタン、インド、これも最近私は行って見ておりませんが、お説の通り、ことにパキスカンはまだ自給自足になっておりません。綿花が足りませんから、相当日本から物を買うわけでありますので、これは引き続き今日までくらいの数字の輸出が期待されるわけであります。インドはそうはいかぬと思います。綿花も昔と違いまして綿種が相当改良されまして、そこの原綿だけで相当の細番、中番手が紡績できるのでありますが、いわゆる高級品はできませんから、その点は相当期待でましょうけれども、これも大きな期待はしない方がよろしい。中共でありますが、ただいま中共へいっております繊維品は、おもに混紡品、例のスフとか人絹糸であります。これらは別としまして、綿布はカーキー・ドリルが、あそこの巡査といいますか、軍用じゃないわけでありますが、そういうような人の制服用として少々いっておるわけでありますが、その他はナイロンとスフとの混紡の特殊織物等が向こうでできません関係上いっておりますが、悲しいかなこれは例の甲乙丙の三ランクに分けた貿易のワクに縛られて、カウンター・パーツの関係で大量は出せないといううらみがただいまのところはあるわけであります。しかしこれもお説のように、将来は大いに期待し得るマーケットであろうと思うわけであります。自然今回のこの法案におきましても、先ほど私申し上げましたように、毎年一年ずつレギュラーし直すことはぜひ必要だ。ことに五年の時限法である。十年先のことはとうてい今から逆睹するわけにいきませんので、そういうふうな大きなマーケットも控えてれるということを前提として、私ああいう意見を述べたわけでありますが、この法案の中には、具体的にはうたわれておりませんが、自然その結論としまして、余った紡機等は、やはりスクラップにしてしまえとかなんとかいうことは慎しむべきである、やはり格納なり何なりしておきまして、物を生かすということが大切だ、これは機械屋さんからいわせれば、そんなものはスクラップにしてしまえ、新しいものは作ってやるとおっしゃるかもしれませんが、それは国家経済上許すべからざることだ、石田さんのお気には入らぬかと思いますが、そういうふうに私は申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/48
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049・加藤清二
○加藤(清)委員 輸出の問題で、ただいま私は繊維製品の輸出のことを承ったわけですが、今度は一つ機械の輸出についてお尋ねしたいと存じます。もう先ほど石田さんのお話にもございましたように、ブラジルの輸出が可能であったり、あるいはインドの輸出が可能であったり、あるいはインドの輸出が目下振興しておったりするようでございまするが、私の思いますのに、賠償と関連させて輸出するということは、これは考えて考えられないことはないと思います。きのう、きょうは高崎長官がフィリピンに出向かれたようでございますが、日本が賠償を払わなければならない地域は、ほとんどが自給自足をしようとしている。特に工業に進もうとしている。未開地が工業に進む場合には、必ず軽工業に飛びつくわけでありますが、繊維のごときは、一番飛びつきやすいものでございます。そこでかの地の国家代表の方がこちらに来られました折に、私はいつもこのことを尋ねておったわけですが、ほとんどが、ぜひ日本の繊維技術がほしい、繊維の機械がほしいということを異口同音におっしゃっていらしたわけなんです。そこで今度賠償物資の中にこれを入れるということは、これは無謀でございましょうか。業界としてはいかようにお考えでございましょうか。これは機械メーカーの方にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/49
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050・石田退三
○石田参考人 機械の輸出の問題についてお答えをいたしたいと思います。実は戦後非常に変った現象といたしまして、世界のたいていのところへは、われわれの紡織機は輸出をしております。ただお尋ねの賠償関係の紡機の輸出、織機の輸出はあるであろうということを、非常に大きな期待をもって私どもは考えておるわけでありますが、これは具体的にどういうふうになるかということは、非常に懸念するところもあるわけであります。特に機械輸出の方は、むしろ繊維業者に対しては期待するような格好で、私どもは今日までは相当慎重に輸出をやってきたわけであります。ただ今度残されたものは、今御指摘のような賠償関係の輸出、いわゆるフィリピンあるいはインドネシア等の賠償が決定すれば、この方面からも工合よく妥結ができるであろうという引き合いが相当入っていることは、まぎれもないことである。従ってこうしたものをできるだけ私どもは獲得することに専念することには、やぶさかではないわけでありますが、それだけ繊維製品の販路は狭められるということも一面あるわけで、この点については十分私どもも懸念をしておるわけであります。ただそれ以外の国の輸出と申しますると、一昨年のような好調には輸出ができ得ないだろう。一昨年はパキスタンが中心で、ほとんど大部分の輸出をここへ持っていったわけであります。去年から本年にかけては、インドは、第一次、第二次のライセンスは、これまた相当の制約を受けております。しかしこのインドに関しましても、第三次のライセンスは今ここでストップしている現状であって、これ以上中へ入り込めるかどうかも非常に懸念しているわけであります。また中共方面の引き合いもありましても、これは今の現状においては、この輸出が完全にいくとは実は考えておりません。従って私どもは残されている賠償の関係の地域その他ずいぶんへんぴな土地までも、引き合いは十分有効にこれをつかんで参りたいということだけは考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/50
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051・加藤清二
○加藤(清)委員 あまり私一人で独占しておってもいけませんから、もうあと二点だけで終りますが、残る二点の第一は、現在非常に糸が暴騰しているようでございますが、私のようなしろうとが見ますと、糸は値下りの材料が多いにもかかわりませず、何がゆえに糸高になるのであろうか、こういう疑問を持たされるわけでございます。もともと日本の輸出の場合に、輸出振興は品質をよくしてコストを下げろ、こういうことのようですが、繊維だけはあまりこの言葉は当てはまらぬようでございます。従いまして、この価格が少々上ることは、別に輸出には差しつかえないかもしれません。なお私の懸念いたしますことは、レーバー・ダンピングとかなんとかいうことを盛んにいわれる。そこで工賃が高くなったから糸高になったとか、材料が高くなったから糸高になったとか、ないしは加工者その他のコストの材料が高くなったので、それで糸が高くなったというならば話がわかりますが、ただいまの状況でございますと、糸高、しかも毛のごときは去年の百ペンス前後で購入したその材料を使いながら、今後ストック高を見ているようでございますが、こういうことはやがて原料高の製品安でさなきだに苦しんでおります中小企業以下、機場、それ以降における加工業者を上そう苦しめることに相なると存じますが、一体この原因はどこにあるのか、どうしたらこれが解消できるのか、時間がないようでございますので、要点をかいつまんで、一つ原さんか吉田さんにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/51
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052・原吉平
○原参考人 今の質問にお答えするのは大へんむずかしいのであります。何で糸が高くなったかということでございますが、高いということが、適正利潤が幾らあったらいいという問題に関連しているか、ある一時点をつかまえて高いということか、その点が私ははっきりしていないのでございますが、御承知のように昨年の五月あたりは綿製品の滞貨が五十万コリになりまして、そうして非常な採算割れをしておったのです。全部損をしていたような状態であった。それから比べますと現在は非常に暴騰をしているわけであります。御承知のように現在はいろいろな統制があるとはいいながらも、まだ日本の経済は自由経済、しかもその現在の繊維製品の相場というものは大体大阪三品の定期を基準としておるわけでございます。ところが御承知のように、あれは一つの投機も行われているようなわけでございまして、これは天下公知のスペキュレーションなんです。それにまあ私の想像からいきますと、非常に去年から悪かったのですが、勧告操短なんかの結果によりまして、生産は比較的押えられて、そこにいきまして去年の暮れから輸出が割合に伸びた、それがために現在においては、適品薄を来たしておるわけです。それでいわゆる三品におきまして、相当商社が手持ちをつないでおったのを、今それをはずしている。それで三品でイレが出ておるというような結果になっておると思うのです。しかし実際の最終価格が、先ほどどなたか知りませんが、東洋紡のダイヤシャツが二割から値上りしたというような話もあったのですが、実際にそんなに大きな値上りはしてないと思う。概括的に申しますと、日本には御承知のように、綿花というものはほとんど産しないにかかわらず、日本の綿製品は世界のどこの綿製品よりも安いのであります。現在上ったと言っておりまするけれども、まだ英米やその他の綿製品の値段よりはずっと安いわけでございます。これはわれわれ繊維業者が今までに——これはわれわれだけじゃありません。紡績の労働者もあずかって力があると思うのでありますが、みんなが協力一致して、優良、安価ということに邁進してきた結果だろうと思います。それで日本国民ほど世界じゅうで安い綿製品を消費しておる国民はないと私は断言していいと思うのでございます。それで一時点をとらえますならば、今は去年よりは非常に暴騰しておりますが、またこれは下るときもできてくる。それだったならば、大体どれくらいもうけたらいいかということが、私は問題になると思うのでありますが、これはなかなかむずかしい問題でございまして、損しているときもあるかわりに、またもうけるときもある。だからわれわれは、こういうようにいいときに、今度は悪いときのことをよく警戒してやっておかないことには、また悪いときには非常に困る。お天気がいいからどこまでもこの天気が続くものだと思ってたら当てにならぬので、やがて雨が降ったり、暴風雨が来て非常に困らなくちゃならぬ。私が最後に申し上げましたように、日本の経済はまだ平常化してない、底が非常に浅いから、こういうような立法措置によって繊維設備なんかを、できる限り妥当な計画性を持たせて、そうしてこれを安定せしむるというのが今度の立法措置だ、私はそういうふうに考えております。そういう点からもよく御考慮願って、本案をできるだけ早くわれわれとしては通していただきたい、そういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/52
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053・加藤清二
○加藤(清)委員 私のお尋ねしたかった点は、糸高ということは、なるほど綿については原さんがおっしゃった通りでございますが、毛の方について考えますると、これはイギリスあたりと比べてみて確かに高い。日本の毛製品を輸出する場合に出血輸出ということが言われますが、この出血の価格は内地高と比較して出血、こういうことに相なりまして、せっかく輸出すべきものが内地へやみで売られてしまったとか、港までせっかく行ったものが内地へ逆戻りしてやみ売りされたというような例を見るわけでございます。そこで綿がなぜ安くて、毛がなぜ高いかという、この比較検討をいたしてみますると、そこに大よそ設備という言葉が出てきそうでございます。従って設備を制限して設備が足りないときは、これは当然のことながら、内地高を来たす原因になるということは、過去の経済の歴史が物語っているようでございます。
そこで私は最後に一つ、三十九条の点について特に承わっておきたいのでございます。特に機械産業に関連なさる方々が口をそろえて反対していらっしゃる理由は、ゆえなきにあらずと思うのでございまして、二十九条の発動は、前にタオル織機の同じ二十九条がございましたが、この折には十二軒の機械屋のうちで、十軒倒れて二軒だけが残ったようでございます。この間の二十九条のときにもいろいろ審議がありましたが、そんな心配は杞憂にすぎないということでございましたけれども、案の定首切り、賃下げのみならず、倒産が起きて参りました。私の郷里でも撚機を作っている会社はぶっ倒れていきました。ここにいらっしゃる石田さんのところも、やむなくかわいい弟子を切られました。豊和さんも、大阪機工も、オー・エムさんも、みんな一緒に切っていかれたわけでございます。それに対して重工業局長は、今あそこにおりますけれども、どういう手を打たれたかということです。悲しい現実でございます。こういう過去の苦い体験からして、織機でさえもそうだから、紡機をやられたら大へんなことになると被害者が考えるのは、これは原爆をこうむった国民が二度と再び原爆はごめんだと言うのと相似たものがございまして、これは無理からぬことだと思う。その痛手がまだなまなましく残っている。残っている証拠は、三十九条の折に何とか機場の設備改善をしてやろうというので用意されたところのあの補助金そのものが、まだ全部配られていない。そうでしょう。食えないんだ。機場は病人なんだから、ごちそうを作って持って行っても、機場はよう食わない。機場は注射してやらなければだめだ。そこまでの親切が行われていない。従って機場の設備が改善されるだろうということを唯一のたよりにやったところが、一台も買ってもらえない。内地で買ってもらえないから、そこへ外国のバイヤーかエージェントがつけ込んできて、買手はわれらだけだということになって、たたかれたたかれ、何も好きこのんで安売りする人は一人もない。ところがやむなく二割も織機は値下げをさせられた。そこで私が思いますのに、一体二十九条を行なってどういう効果があったかということでございます。効果が現われたか。ひどいことを言っちゃまことに済みませんが、私が一番ピンときてるのは、労働者にしわ寄せさせられて、休暇制度をとられたり、あるいは首切りが行われたり、こういうことだけなんです。何ぞよいことが、よい芽が吹いたかと見るというと、どうもないようですから、あったら一つここでお教えをいただきたいのでございます。二十九条を行なったら一体どういう効果があったか。それからもう一つ、今度この法案がかりに通過して実行に移った場合に、どういう効果があるかということです。犠牲のことはだいぶ先ほど来聞きましたが、どういう効果があるだろうか。私はこの法律に密告制度をつければ、ある程度の効果は期待できると思います。しかしそうすると、これは道徳が破壊されてくるもとになる。密告制度がなければ、ちょっと期待はずれになるということを私は懸念する。なぜかならば、すでに先ほど来お話にも出ましたが、毛紡の確認をいたします折に、あれはたしか二十九年でしたか、私はこの委員会でやったんです。そんなことやったってあかんちゅうて、ところが四月に指令が出されて、その年の十一月になってどういう結果が生じたか。四月に百十五万錘であったものが、十一月末になって二百五万錘にふえちゃった。どうしてこんなにふえたんだろうと調べたところが、麻紡や絹紡が転換しておった。なぜかならば、それは外貨割当がもらえるからだ。自分のところだけはふやしたい。二十九条のときに同じことが行われた。かけ込み増産、一体どこを制限するんですか。安梅さんに私はお尋ねした。あなたのところ、ほんとに制限するつもりでございますか。そんなこと聞くやつがあるかとしかられた。このたびはまたそうなんです。設備が多過ぎるから減らしましょうというなら、みんな減らしたらいい。ところが注文が殺到しておる、一体どこが減ったか。設備が多い多いというのも、やっぱりおのれの会社の設備でなくして、よその会社の設備が多いということなんです。(笑声)おのれのところだけはふやしたい、これが現実なんです。操短でもそうなんです。先ほど操短をやってどんな効果があったかと言ったら、労働組合のものが帰休制度をとられたり、首を切られたり、新紡と新々紡と十大紡の対比のおかげでここにアンバランスが起きて、いろいろトラブルが起きただけなんです。どうなったか、果して生産は減ったか、過剰生産だからというので過剰生産を減らしたかというと、何のことはない、スピンドルがきりきりと回って夜昼なしに動いている、一交代が二交代、二交代が三交代になっただけで、生産はどんどん伸びてきた、こういうことです。人間欲がある以上は、どんなことをやったって制限のしようがないのですよ。そこで、もしほんとうに効果を上げようということであれば、これは密告制度か何かをやればいい。それでもなかったら、原さんのおっしゃった通り、必ず正直者がばかを見て、もぐりをやるやつが得をしてしまう、こういう結果を生じてくると思う。そして先ほど来国家権力によるとか、法律によってやってもらわなければいかぬというお話がございましたが、これは業界の方々が自主的におやりにならないと、最後に、せっかく持っていた自分の商売の選択権を戦時統制時代と同じように、それ、そこに見える官僚さんに取り上げられてしまうという結果を生ずる。この苦い経験は、戦時中に皆さんがほんとうに身にしみて、はらわたにしみ込んで体験されたはずなんです。官僚統制はいやだとおっしゃるその統制を再び復活させるおそれなきにしもあらずでございます。従って本法案は慎重に審議して、将来に悔いを残さないように、得たものは労働者に対する犠牲だけであった、下請産業に与えた犠牲だけであったというようなことにならないような、これと並行した施策が行われなければならないと存じまするが、この点を最後に繊維業界右総代の原さんに一つお願いを申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/53
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054・原吉平
○原参考人 どうも私はきょうは通産大臣みたようなことを聞かれまして、なかなかむずかしい問題でありますが、まあ私は加藤先生と同じようにほんとうに自由主義者なんです。あなたの方の政策は社会主義かもしれませんが、そういう自由主義者というのは——私は官僚統制は大体きらいなんです。そういう点は、あなたと私は意見が一致しておると思うのですが、それで私も終戦後いろいろな繊維なんかの統制を極力はずしてもらいたいということを急先鋒になって主張してきた一人であります。それでやってきたのです。そして大体そのことが実現しまして、日本の繊維もずんずん復元してきたのです。また輸出も伸び出してきた。そして御承知のように、綿製品は終戦直後においては日本の輸出の大体五割くらいを占めておった、現在においても約三割八分くらいは繊維全体で輸出をしておる、こういうような大きな産業で輸出に依存しているわけなんです。ところが海外の情勢が戦前と現在は全然違ってきておるわけです。と申しますのは、海外諸国においても貿易管理をやっておる、それから為替管理をやっておる。そして安くていい品は必ず売れると言えたのでありますが、現在の情勢においては安くていい製品は必ずしも売れない。だから戦前におきましては、日本綿製品は安くてよかった、たまには悪いやつもあったかもしれませんが、大体安くてよかったからどんどん輸出がふえていって、三十六億というような輸出を見たのであります。ところがだんだんと日本の輸出も伸びてきまして、十億以上突破してきますと、今度は第一に英国が黙っておらないということになって、結局英国が主唱して日本でアメリカそれから日本との三国綿業会談をやった。さらに今度は一九五一年には英国のバックストンで世界綿業会談というものをやって、そのときに最終的にこういうことをわれわれとしては申し合せをしたわけです。世界の綿製品の貿易は現在程度、そのときは約五十八億ヤールくらいに出ていたと思いますが、現在程度においてそうふえないだろうと思う、だから今後の綿紡績の増設についてはお互いが慎重な考慮をする必要があるだろう、こういうような申し合せをしたわけです、ところがその後日本ではそういう申し合せをしたのにかかわらず、どんどん紡機がふえておるわけです。それがどうも先ほどどなたか知りませんが、参考人の方で十大紡がもう独占をねらっておるのではないか、こういうようなお話をされておったようですが、これは事実と全く反対でございまして、最近綿紡機のどんどんふえておるのは、いわゆる十大紡ではありません。新紡、新々紡というような、むしろ紡績企業から申しますと、中小企業に属しておる業者の方がどんどんおふやしになっておって、むしろ十大紡は日本対英国みたような、いわゆるマンチェスターの立場に十大紡が立っておるというような状態になっておるわけです。これは余談でありますが、要するに日本だけ安くていい製品を作ればどんどん売れるかというと売れない。外国でもやはり一種の統制をやっておる。そうすると結局安くていい製品を作っても買うてもらえなかったら何にもならないわけですから、やはり買うてもらうためには海外と協調していかなければいかぬわけです。それでもしも現状のままほうっておいたら、過剰設備による過当競争というものが起って、安価輸出が起って、それで海外から袋だたきにあう、そうすると日本の輸出が縮まる、輸出が縮まると紡績業者も弱ってくる、関連産業も弱ってくる、そうして日本の経済は衰微するということになるから、どうしてもこの際安定した繊維産業の発進をはかるためにはこういう一つの交通規則を作って、そうしてそれによってみながやる。それでこういう法律ができたからといって私は違反者が一人もないということは毛頭思っておりませんが、しかしそこに一つの交通道徳と申しますか、交通規則ができたらやはり十人のうち八人が守るということになるから、そこで一つの基準ができて、外国もそれで納得するということになっておりますし、英国でも米国でも——私が先程言いましたように、この繊維設備法案というものに対しては海外では非常に注目して見ておるようなわけでありますから、日本の国際的信用を高める上からでもやはりこういうような一つの規則を作っていただいて、それによって今後行動するということが一本の経済を安定に導く一つの大きな方法とはないか、そういうふうに信じておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/54
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055・加藤清二
○加藤(清)委員 だんだん御意見を承わりましてまことにありがとうございましたが、この法案については、法案そのものにも不備があるし、それからまた業界も非常に複雑多岐であるということがよくわかりました。そこで業界とされても、企業そのものもある程度の改革処置をしなければならないだろう、業界全体としてもそれぞれ改良すべき要点を持っていらっしゃる。またこれに対する政府の施策そのものの改正も考えられるわけでございますが、いずれにいたしましても、これを短兵急に行えば、必ずその正しきを得ないということだけは業界の複雑性によってよくわかりました。
そこで、このことだけは一つ業界の方にもよく知っていただきたい。ただいま原さんが交通道徳とおっしゃいました。その通りでございます。ところが交通道徳の以前に、道路を敷く場合に、道路をうまく敷いたおかげでそこを通る人は仕合わせになったかもしれませんけれども、これが無限の広野でなくして、すでにその道路にに前から住まっている人があった、あるいはそこを耕作している人があったとなりますると、この道路を敷くために犠牲者が出るわけでございますが、この犠牲を並行して救うということは、これは当然のこととして考えられなければなりません。それを切り捨てごめんなどと原さんや吉田さんあたりがおっしゃる方だとは存じません。私の尊敬している方でございますので、業界は車の両輪のごとく、ともどもに栄えなければならぬと存じまするので、でき得べくんば今後の審議に当りましても、その犠牲者をいかに救うとよろしいかのお知恵を御拝借願いまするようお願いを申し上げまして、私の質問を終る次第でございます。どうもありがとうございました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/55
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056・神田博
○神田委員長 次は多賀谷真稔君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/56
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057・多賀谷真稔
○多賀谷委員 実は繊維の問題につきましても、現在法律でこういった繊維工業の設備に犠牲を与えるような法律案が出ているやさきに、あるいは繊維が高くなっておる、そういうような状態の中で、果して法律を作る必要があるかどうかという疑問も若干あります。あるいはまたそういう法律ができたことによって八十万錘からの設備がさらに増加を見た、こういう業界のだらしなさといいますか、そういうものに対しても、そういう業界に対してこれほどの法律をしてやる必要があるか、そういう気持すらある。これは一般消費者との関連において……。しかし加藤さんからも質問がありましたので、本日はそれ以上参考人の方に質問をするのは無理かと思いますからやめますが、一つ労働問題だけを質問してみたいと思います。
刈谷の市長さんにお尋ねいたしますが、この法案が出ることによって、あなたの力はどのくらい収入が減りますか。たとえば住民税の法人割はどのくらい減るのか、あるいはまた解雇されることによって、その労働者の次の年の市民税がほとんど入らなくなる。さらにまた支出の面では失業対策もやらなければならぬし、生活保護の費用もいるだろう、こういう面で市の財政はどういうことになるのかお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/57
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058・竹中七郎
○竹中参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げたいと思います。刈谷市におきましては先ほど人員で申し上げまして四千から四千五百、それに家族がある、こういうことを申しましたが、もしこれがはっきりいたしまして、豊田自動織機さんがいろいろな新鋭紡機などを紡績業者に売られるということになりますればいいのでありますが、やらないことにおきましては一年くらいの間に、われわれの方で先般の二十七年の経験からいたしますと、市民税におきましてもまた一般商社と申しますか、そういう商業者の収入あるいは下請工場、これが一番参りまして、四十八軒ございますがそれの半分くらいはやめなければならない、こういうことになると思います。そういうことになるとわれわれの方の市の収入におきまして——今刈谷市の予算は三億四千万円ばかりでございます。しかして実際入ります収入というものは固定資産税が一億、市民税が五千万ないし六千万であろうと思っておりますが、そのお税の方でまず一千万ないし二千万くらい減る。そこで市としてはますます困難になってくる町の繁栄が期待できないということになってくる。私は一年間に何千万円というような損害を刈谷市は受けるのじゃないか、かように考えております。はっきりした調査資料を持って参りませんでしたので、これでご了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/58
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059・多賀谷真稔
○多賀谷委員 全繊維の労働組合の方にお尋ねいたしますが、この法案成立によって人員整理というような問題はどの程度起るのか。あるいはまた移動性の激しい従業員であるからそういう問題は起らない、こういうようにお考えであるのか。この点をお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/59
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060・井上甫
○井上参考人 われわれの考え方といたしましては、この法案がもしも施行される場合におきましては、われわれの組織下にあるところの労働者にとってはあまり問題がないように考えております。しかしながらこれがやはり次次と今後行われてくる可能性というものも十分考えておりますので、この点に対する万全の措置は考えておりますが、現在のところはそのように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/60
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061・多賀谷真稔
○多賀谷委員 それはどういう意味なんですか。組織下の従業員についてはあまり影響がないというのは……。あなたの方の組織は比較的大企業の労働者を主としておられるから、比較的ないという意味なのか、それとも現在政府が考えておる方針でいっても、実際は労働者の方が移動が激しくて、比較的いわば労働者に弾力性があって、実際出血を見るということは比較的少い、こういうような意味なのであるか。ちょっとわかりにくかったのでお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/61
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062・井上甫
○井上参考人 補足いたしますと、私らが考えておりますのは、大体繊維の場合は御存じのように自然減耗率がございます。でありますから、大体現実に全繊傘下の組織を作っている組合の場合におきましては、その線に沿った整理というものが一応予測されたとしましても、それ以上のものは一応組織力を持ってはね返す自信がありますので、そういう意味でもって、未組織の、全繊の傘下に入っていない組合が苦しいのではないかというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/62
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063・多賀谷真稔
○多賀谷委員 では、メーカーの方の組合の方にお尋ねいたしたいのですが、この法案が成立されたといたしますと、どの程度の打撃があるのか、この点をまずお聞かせ願いたい。
それからさらに、失業者が出るといたしますと、私よく事情を知らないのですが、これは地域的、集団的に出るのですか。たとえば機械メーカーというのは比較的同じ地域に集団的にあるというので、地域的、集団的な失業群が出てくるのが、あるいは全国的な、ばらばらっとした失業群が出てくるのか、こういう点を一つお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/63
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064・石垣卯一
○石垣参考人 先ほどもちょっとお話いたしましたように、直接この紡機を製造しておるのが、現在では、下請の労働者も合せまして二十万くらいはある。そこで二十九条の織機の例から参りますと、とりあえず私どもは、半年ないし一年はゼロにひとしい数字で、ほとんど注文はないだろう。織機のときにそういうふうでありましたので、おそらくそういう状態にならざるを得ないだろう、こう想像いたしますと、少くともその二十万のうちの八割くらいは、これは完全に失業をする、こういうふうな見通しを立てておるわけでございます。
それからもう一つは、地域的にどうかということでございますが、私どもは大体、先ほども説明がありましたように刈谷を中心とする地帯、それから名古屋——豊和工業の場合は、これは名古屋市から少し離れておるわけですが、大体名古屋市を中心としたその周辺、それから関西、それから北陸は石川が特に大きいのですが、石川を中心としたその周辺、こういうふうなところから相当数の失業者が出る、こういうふうに考えておるわけです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/64
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065・多賀谷真稔
○多賀谷委員 最後に一点だけお尋ねいたしますが、先ほどやはり機械メーカーの労働組合の方からこの法律と並行的に繊維機械の何といいますか、促進法というようなものを出してもらいたい、それが出されるべきが至当である、こういう発言がありましたが、もしそういう法律を出すとすると、大体どういうような内容のものであれば、機械メーカーとしてはこの法律と並行して出されても救済できるのか、これをお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/65
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066・今崎好男
○今崎参考人 日本の繊維産業の発展の経緯と、機械産業が今日まで発展して参りました経緯を考え合せてみますときに、機械産業の方は繊維産業の従属的な形で発展をいたして参ったのであります。そういう関係におきまして、現状におきましても、繊維産業の政策によりまして非常に変動の激しい産業であるわけでありますが、終戦後今日までに至ります間においても、機械関係の方はほとんどの工場が戦災を免れて参ったのであります。紡績関係の方はかなりの戦災を受けて参ったのでありますが、ごらんのごとく立ち上りを見せておりますし、私たちの考え方からいたしますと、かなり資本の蓄積もなされて参っておるように見聞するわけです。これに反しまして、機械産業の方は事あるたんびに企業縮小をするか、さもなくば別の形で合理化をはかりつつ、辛ろうじて今日に及んでおる。今石垣参考人が申しましたように、この法律の施行と同時に——ここ近年は内需に関する限りほとんど期待ができない、かような状態になるわけで、失業者を出さないという形で、この法案とあわせて、機械産業に対する助成の独立立法を立てていただきたいと申しますのは、機械産業は今申しましたように資本の蓄積をやっておらない。しかし自己資金におきまして転換する能力がない。そこでわれわれとしましては、どうしても犠牲者を出したくない。そのためには転換もしくは助成するための研究、もしくは海外市場の開拓、これらに対して、この法案と並列して、機械産業助成の対策を立てていただきたいわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/66
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067・神田博
○神田委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ長時間にわたり、本案審査のため貴重な御意見の御開陳をいただき、厚く御礼を申し上げます。どうも大へんありがとうございました。
本日はこの程度にとどめます。次会は明九日午前十時より開会いたします。
これにて散会いたします。
午後四時五十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102404461X04419560508/67
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