1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月十五日(火曜日)
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議事日程 第四十五号
昭和三十一年五月十五日
午後一時開議
第一 売春防止法案(内閣提出)
第二 公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
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○本日の会議に付した案件
議員請暇の件
消防団員等公務災害補償責任共済基金法案(内閣提出、参議院回付)
日程第一 売春防止法案(内閣提出)
日程第二 公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
午後一時五十六分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/1
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。議員門司亮君から、国際自由労連の代表として沖繩の労働事情を調査のため、五月十六日から五月二十五日まで十日間請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/2
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003・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって許可するに決しました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。参議院から、内閣提出、消防団員等公務災害補償責任共済基金法案が回付されております。この際、議事日程に追加して右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/4
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005・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
消防団員等公務災害補償責任共済基金法案の参議院回付案を議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/5
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/6
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007・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、参議院の修正に同意するに決しました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/7
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第一、売春防止法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。法務委員長高橋禎一君。
〔高橋禎一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/8
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009・高橋禎一
○高橋禎一君 ただいま議題となりました売春防止法案について、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、政府の提案理由の要旨を申し上げます。終戦後の世相の混乱と道義の頽廃並びに性道徳の低下によって売春を行う女子の数が著しく増加したばかりでなく、それがすこぶる露骨となって参りましたことは御承知の通りでありますが、さらに、最も遺憾にたえないことは、売春に関連して、善良の風俗の維持、保健衛生、女子の基本的人権の確保等の観点から、とうてい許されない事態のますます増加するの傾向にあることでありまして、すみやかにこれに対する諸般の対策が必要であると考えられるのであります。しかるに、従来のいわゆる勅令第九号、刑法、児童福祉法、労働基準法、職業安定法、風俗営業取締法、性病予防法、各自治体の条例等、既存の取締法をもっていたしましては、その運用上少からぬ困難があり、十分これに対処することができない状況にあるのであります。しかして、いわゆる売春対策といたしましては、国民一般の民主主義的自覚、道徳観念の高揚、衛生思想の普及向上等が要請されることはもとよりでありますが、これと同時に、売春を助長する行為等を処罰する諸規定を整備強化するとともに、社会政策的見地から、売春を行うおそれある女子に対し保護更生の措置を講ずべき総合的文化立法制定の必要が痛感されるのであります。このよ
うな要請にこたえるため、売春問題対策審議会の答申をしんしゃくして、ここに本法案を提出するに至ったものであります。
次に、法案の内容を簡単に申し上げますと、第一に、本案は売春の反社会性を明らかにし、売春を行うおそれある女子に対する保護更生の措置を講ずることといたしておるのであります。すなわち、既存の諸施設の活用、現行法令の適切な運用をはかるほか、新たに都道府県に婦人相談所を設置することとし、婦人相談員を都道府県に必ず置き、市にはこれを置くことができることとして、売春を行うおそれある女子につき指導を行い、相談に応ずるようにいたすとともに、なお都道府県には収容保護の施設を設けることができることとするのであります。しかして、これらに要する費用については、国が一定額を負担または補助することといたしております。
第二に、本法案においては、売春行為それ自体はこれを処罰の対象とせず、主として売春の周旋、困惑等による売春、売春をさせる契約、場所の提供、対償の収受、前貸し、いわゆる管理売春、資金提供など、売春を助長する各種の行為を刑罰をもって取り締ることとしようとするものであります。
第三に、いわゆる売春婦あるいは売春業者の保護更生または転廃業のため、若干の猶予期間を置き、保護更生の規定を刑罰規定より先に施行するものとしているのであります。
なお、附則において地方条例との関係を明確にしております。
さて、本問題については、過去数回の国会において論議し尽されたのでありますが、委員会における質疑のおもなもの一、二を申し上げますと、第一は、いわゆる単純売春を処罰しない理由等についてであります。これに対し、政府より、性秩序の維持は各人の自覚による道徳の確立に待つべきものであって刑罰法規をもって規律すべきかいなかについては法理論上疑問の余地があり、世界の立法例について見てもその類例はきわめてまれであるのみならず、法運用の実際問題といたしましても、売春自体の捜査は困難であり、立証が困難であります。また、婦人は被害者でもあるというふうな考え方もあり、たとい違法であるとしても、責任の面において処罰するに忍びない点があるので、現段階においては単純売春を処罰せず、今後調査研究したいとの答弁がありました。
第二は、本案の諸規定と地方条例との関係についての質疑に対し、政府より、売春をし、またはその相手方となる行為、その他売春に関する行為は、すべてこの法律によって規律しようとする国の意思が明らかになったのであるから、国のこの意思に反することとなる、いわゆる売春条例の現行規定は、本法案の施行後当然無効となるし、今後新たにこの種条例を設けることもできないこととなるのでありますとの答弁がありました。
第三は、本案には、保安処分の規定がないのが欠点であるとの質疑に対し、政府より、この問題は売春対策審議会において検討中であるので、引き続き今後検討するつもりであるとの答弁がありました。
なお、収容保護につき、政府から、三十一年度においては、四千万円の予算をもって、主要府県に婦人相談所及び婦人相談員を置いてその業務に当らせ、三十二年度においては、収容施設を必要とする都道府県に漏れなく設置し得るよう、予算措置を講じたいとの説明がありました。
本案は、本月八日委員会に付託され、活発なる論議の後、十二日質疑を終え、討論採決の結果、全会一致をもって政府原案の通り可決されたものであります。
右、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/10
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011・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第二、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員長佐々木秀世君。
〔佐々木秀世君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/12
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013・佐々木秀世
○佐々木秀世君 ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査の経過並びに結果の大要を御報告申し上げます。
公共企業体等労働関係法は、公共企業体等の職員の労働関係を規律するため昭和二十三年に制定された法律でありまして、その後昭和二十七年に改正が行われたのでありますが、なおわが国の実情に適しない点及び技術的な不備欠陥が労働関係の円滑な処理を妨げる状況にありますので、現行法の基本的建前はこれを維持することとしつつ、所要の改正を加えて、健全なる労使関係の確立を促進しようとするのが、政府の本改正法案提出の理由であります。
次に、本法案のおもなる点を申し上げますれば、第一は、交渉単位制を廃止し、わが国労使関係の一般的慣行に従って、労働組合が団体交渉の当事者となり、その指名する交渉委員が団体交渉を行うことに改めたことであります。
第二は、政府として仲裁裁定をできる限り尊重する精神を明らかにし、あわせて給与準則、給与総額の制度に若干の改正を加え、裁定実施に関する紛議をできるだけ避け、円滑合理的な労働問題処理の慣行を確立いたそうとすることであります。
第三は、従来の公共企業体等仲裁委員会並びに中央及び地方公共企業体等調停委員会等十一の委員会を統合して、公益委員五人及び労使委員各三人計十一人の委員をもって組織する公共企業体等労働委員会を設置することとして、委員会の簡素能率化をはかり、機動的に強力な活動を行う態勢を整える措置をとったことであります。
以上のほか、臨時公労法審議会の答申に盛られた意見をできる限り尊重して、所要の事務的、技術的改正を行なっておるのであります。
本案は、四月十六日本委員会に付託せられ、同十九日倉石労働大臣より提案理由の説明を聴取した後、連日熱心なる審議が行われ、十二日には、審査の慎重を期するため、参考人として臨時公労法審議会議長藤林敬三君を招致して意見を徴したのでありますが、昨十四日の委員会において質疑を打ち
切り、直ちに討論に入りましたところ、日本社会党を代表して森本靖君より反対の旨が述べられ、自由民主党を代表して大坪保雄君より賛成の旨が述べられたのであります。
次いで、採決に入りましたところ、多数をもって原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/13
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014・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。横山利秋君。
〔横山利秋君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/14
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015・横山利秋
○横山利秋君 私は、日本社会党を代表いたしまして、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案に対し、反対討論をいたすものであります。(拍手)
先ほどのお話にもあったように、公労法は、昭和二十三年七月一日、マッカーサー元帥から内閣総理大臣あて発せられました書簡によって、当時の複雑な労働事情の中で、占領軍の一方的判断から強制されてでき上ったものであります。さればこそ、政府は、その提案理由において、本法はいわゆる翻訳立法の最たるものでありまして、その後若干の改正はありましたが、なおわが国の実情に適しない点が多く、また技術的な不備欠陥が随所に見られ、このため公共企業体等の労働関係に無用の摩擦、紛争を招いている場合すらあり、従来とも本法改正を要望する声が少くなかったのであります、と述べて、これを裏づけしているのでありますが、このことは、一方において、保守党政府がいかに当時占領軍に対して易々諾々として命これ服従に努力していたかを、おろかにも、みずから証明しているのであります。(拍手)倉石労働大臣が、その就任の際、労働行政に関する所信を披瀝するに当り、公労法を改正すると天下に公表いたしましたことは、この意味から、おそまきの感はありましても、その良識を了とし、その推移に多大の注目を払ったものでありますし、倉石行政が、労働法については、とかく無知もうまいともいうべき保守政界における重石たることを、ひそかに期待いたしたものであります。しかるところ、本国会に提案をされましたこの改正案を知った人々は、どうもこれは重石ではなかった、保守党内の得手勝手な意見に、あちらこちらへと流された軽石ではなかったかと歎じているのであります。俗に、仏作って魂入れずという言葉がありますが、この改正案は、仏も作らず魂も入れない改正案と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)就任当時大みえを切って公労法改正の大だんびらを振り上げた脱兎のごとき倉石労働大臣は、いまや処女のごとくおとなしい格好であります。しょせん、労働法の真の改正を保守党政府に求めるのは、木に登って魚を求めるのたぐいと、今さらながら痛感いたすものであります。(拍手)
そもそも、公労法改正に当りましては、基本的に考慮しなければならない点が三つございます。その三点をしっかりと腹に入れていなければ、中心を失い、群盲象を探るのたぐいを免れがたいのであります。
その第一は、労働問題に共通の原則でありますところの労使の自主解決尊重という点であります。政府、与党は、しばしば、公労法の紛争が定期的闘争であるとか、あるいはまた、かつ長期にわたって三公社、五現業の業務に支障を及ぼすと非難いたしておるのであります。しかしながら、それは全く間違いもはなはだしいのであります。給与総額制度を厳重にして、これ以上給与を支給するときは一々主管大臣や国会の承認を要するものとして、財布の口をしっかり締めておいて、公社当局に対し団体交渉の当事者たるの能力を剥奪したり、労働条件について公社法で規制をしておるのであります。そのためにこそ、闘争は長期となり、かつ政府や国会を相手として政治的になることは、今日では三才の童子といえども知っておるところであります。かてて加えて、労働者が公社及び現業の経営について十分なる理解と認識をする機会をこの法律第八条で閉ざしておきながら、何かといえば、労働者は経営の現状に対して理解がないとか、賃金値上げを要求すると非難するがごときは、全く盗人たけだけしいといわなければなりません。(拍手)
倉石労働大臣は、すでに今日まで仲裁裁定のケースに何回となく携わり、この点については十分熟知されているところでありましょう。さればこそ、就任当時の第二の公約である労使懇談会構想が発表されたのであろうと存ずるのであります。ところが、委員会における、情理を尽した、公約実現についての鞭撻の立場よりする私の質問に対しては、あいまいな答弁に終始し、ひとり公労法関係者のみならず、天下に対する公約を裏切るものであり、大臣の政治的実行力に対しても深い疑念を抱かざるを得ないところであります。事が根本的問題であるだけに、今後なお継続するであろう紛争について、政府がこの改正の機会をのがすことは、さらに一そうその責任を負わなければならぬところであると存するのであります。このうち、給与総額制について、政府は若干の改正をいたしました。しかし、本来これはもはや撤廃さるべき段階にあるのでありまして、その決断がつきかねるということは、政府みずからが任命した三公社、五現業の主管大臣や公社当局に財布がまかし切れないことを証明しているものでありまして、自分が任命した者を信用し切れないということは、全くばかげたことといわなければなりません。公社当局者に団体交渉の当時者たるの能力を与えるべく、給与総額制度を撤廃するとともに、各公社法にあります労働条件に関する余分な制限規定を削除することは、今日必須の要件であると存ずるのであります。しかも、仲裁裁定に限って給与総額制度に一部ほんの少し緩和をするという、こそくな手段は、かえって自主解決や調停で解決し得るものをわざわざ仲裁に持ち込ませるおそれすらあり、調停による妥結はもとより、団体交渉による協定に対してもこれは当然適用すべきでありまして、自主解決尊重の建前から、本末転倒もはなはだしいものと考えるものであります。(拍手)
本法改正に当って、第二の原則は、仲裁裁定の完全実施という点であります。今回の改正で、政府は、当該裁定が実施されることにできる限り努力しなければならないと追加をいたしました。このことは、逆説的に申せば、従来、政府が裁定の実現にきわめて不忠実であった歴史を、立法的にも証明するものであります。過般、倉石大臣は、本会議で、裁定は今日まで多くが実現されたと答弁をいたしました。まことに驚き入ったものであります。仲裁の実施という意味は、裁判の判決にもひとしいものでありますから、裁定の実施期日をおくらせたり、あるいはその内容を値引きしたりして、それも裁定を尊重して実施したのだ、こういう理屈は、法律を知らざるもはなはだしいものの言い方であります。(拍手)第一次裁定から二十件にわたる裁定が、文字通りほんとうに完全に実現をいたされましたのは、わずかに三件にすぎないのであります。いかに歴代の保守党政府がごまかしてきたかを証明して余りあるものであります。鳩山総理大臣は、本会議で、二度にわたって、今後は裁定を尊重すると言い、委員会で、倉石、一萬田両大臣も、実施とは百パーセント実施と考えると述べたのでありますから、われわれは、今後の政府のお手並みを、全労働者及び関係者とともに拝見をいたすつもりであります。もし、それ、この言明すらも裏切るようなことでありますなら、法の威信、政府の信用の失墜はもとより、紛争の激化は火を見るよりも明らかであります。そのときになって、うば車に乗って逃げ出されないよう、念のため、総理大臣に厳重に注意を申し上げておく次第であります。(拍手)
改正の前提第三の問題は、労働者の基本的権利の保障という点であります。官であれ、民であれ、労働者には憲法第二十八条によって保障された基本的権利が本来確保されているということは、労働省当局者も表明をされたところであります。しかも、公労法が制定される以前は、その権利は官公労労働者にもすべてあったのでありますから、今日国に雇用されているという理由によってのみ、業種のいかんを問わず、ストライキ権を初め多くの権利が剥奪されていることは、労働法上にも、常識上にも、筋の通らぬところといわなければなりません。いわんや、各国の事情を見まするに、今日いたずらに立法当時の惰性をそのままにせず、基本的権利を尊重して、根本的検討をなすべき段階にあると確信し、この点からも政府案に反対をいたすものであります。
以上が基本的問題でありますが、そのほかにも多くの指摘をしなければならない点がございます。このごろ、政府は、審議会とか、調査会とか、政府がお手盛りで勝手に作った諮問機関の出した答申すらも尊重しないという、まことに悲しむべきくせがついております。本改正に当っても、その例外ではございません。ことに、答申において全く議論もなかった常勤公益委員制度を、するすると改正案の中へもぐり込ませているのであります。私どもは、業務が多忙であるからという政府の答弁の裏面にひそむ野望を看過するわけには参らないのであります。どうも、政府は、最近、あらゆる工作をして、安上りの調停案や、安上りの仲裁裁定を出させるよう、仲裁委員会、調停委員会の機構、人事運営において、ひそかに介入をいたしておるのではないか、この公益委員の国会任命方式といい、あるいはまた、常勤委員が政府から給料をもらう職員であって、次第に中立性を失うおそれがあり、このようなことは、公益委員が労使双方から信頼されていなければならぬという大原則からはずれるようなことになり、まさに紛争解決の土に重大な支障を及ぼすでありましょう。語るに落ちる国会任命方式や常勤制度などは断じてとるべきではありません。
また、かねてからの問題であります公務員、公社職員諸君の政治活動の問題についても、今回改正をしておらないことは、遺憾にたえないところであります。同じ局内で働いておりながら、片一方の電通の諸君は政治活動はよろしい、逓信の諸君はいけないなどというがごときは、全く理屈の通らないこと、はなはだしいものであります。いわんや、今回特定郵便局長だけこれを認めようと法律案を提案するがごときは、郵便局長や売春業者の大量入党で自民党を強化したい人がおるそうでありますが、これは党利党略の最たるものであります。反対党の凋落を願うわれわれといたしましても、こんなことでは、かえっておそれ入る次第でありまして、どうぞ、みずから善処されるよう、心から御忠告をいたす次第であります。
いずれにいたしましても、要するに、この改正案は、ぬるま湯の改正案であって、うっかりしていたら、かぜを引きそうであります。それが証拠には、この春の公労協の紛争に対して政府のとった態度でも明瞭であります。調停案に示された、予算措置をすべしという点について、政府は今日まで何をしたでありましょう。調停案が出た翌日、大蔵大臣は、のめない、反対だと、これを否定いたしました。また、次から次へと、最近組合員のために働いておる組合役員に弾圧が加えられておるのであります。表に労働法改正を、裏に弾圧を加えるというこの状態は、羊頭を掲げて狗肉を売るというたぐいであり、まさに鳩山内閣の労働政策の本質ここに見えたりといわなければなりません。(拍手)法律でしぼったり、弾圧すれば、それで労働者はおとなしくなると考えておるといたしまするならば、これほど甘く、これほど愚かで、これほど危険な考え方はないのであります。それは歴史の示すところでありまして、春秋の筆法をもっていたしますならば、保守党政府の弾圧政策と低賃金政策が今日の労働階級を強く団結せしめたとも言い得られるのでありましょう。(拍手)従って、公労法の改正をするに当っては、本法の歴史的事情を深く考慮し、根本的に公社法、公務員法をあわせて検討するとともに、公労法の改正にあらずして、廃止こそ断行すべきであると考えるのであります。(拍手)憲法すら改正をしようとする自民党は、それなるがゆえに、事労働法の改正には全く憶病でありまして、一般世論が、保守党は脱皮しなければだめだといわれているゆえんは、ここにあると存ずるのであります。その意味からも、絶好の機会をここに取り逃がすことは、自民党の健全な発展のために惜しんで余りあるものだと私は存ずるのであります。
以上、私は、本改正案に反対し、本来これは廃止案であるべしとの基本的立場を明らかにいたしまして、反対討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 大坪保雄君。
〔大坪保雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/16
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017・大坪保雄
○大坪保雄君 私は、ただいま議題となりました公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案に対しまして、自由民主党を代表して、簡単に賛成の討論をいたしたいと存じます。
現行の公共企業体等労働関係法は、周知のごとく、占領下、特殊の事情のもとにおいて制定された、直訳的な立法でありまして、わが国の実情に適しない点が多く、技術的な不備、欠陥も随所に見られ、公共企業体等の労使関係に無用の紛争、摩擦を引き起させるきらいのあったことは、すでに各方面から指摘されてきたところであります。従いまして、かかる不備、欠陥をできる限り是正して、これをわが国の実情に適合せしめ、合理的にして健全なる労使慣行の確立を促進せしめることについては、何人も異論のないところと考えるのでありまして、今回、政府が、いろいろの角度からの検討の結果、この改正案を提案しましたことは、私どもの大いに賛同するところで、社会党の諸君といえども、あえて同感を惜しまれないことと信じます。私どもとしましては、公労法の改正については、三公社、五現業のあり方そのものについて、さらに基本法たる労働三法にも根本的の検討を加えて、これらとの関連につき、その調整の可否等、これが抜本的解決の方途にまで突き進んでもらいたかったのでありますが、一応この程度の改正も、今日の状況下においては一進歩たるを失わないと思うのであります。
まず、交渉単位制でありますが、これは全くわが国の実情に適しない、アメリカからの直輸入制度でありまして、しかも、複雑、難解、従って、実際は有名無実化しておりますのみならず、これがかえって関係者間に無用の紛争を惹起せしめているきらいすらあったのでありますが、今回の改正によって、わが国の労使関係の一般的慣行に従い、労働組合を団体交渉の当事者として、公共企業体及び組合が、それぞれ指名する交渉委員によって団体交渉を行うことといたしましたことは、今後労使の関係を円滑かつ合理的に進めていく上に、きわめて大きな意義を持つものと考えるのであります。
次に、従来の仲裁委員会及び中央、地方の調停委員会を整理統合して公共企業体等労働委員会を設け、調停仲裁機構の簡素かつ能率化をはかったことは、きわめて適切な措置でありまして、特に、今回の改正案によりますと、労働委員の中の公益委員は、仲裁を行うほか、いわゆる準司法的事務をも行うこととされており、その職務の重要性及び特殊性にかんがみ、その任命手続は慎重にすることを要するのでありますが、今回、これを、労働大臣が労使委員の意見を聞いた上で作成する委員候補者名簿の中から、衆参両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命することと改正されており、このように、国の最高の機関たる国会において、公益委員たるに適するかどうかについて慎重に検討した上でこれを任命するということは、従来の選任手続に比べて、はるかに公正性、中立性を確保し、その権威を高めるものと信ずるのであります。
なお、公益委員五名のうち二名以内は常勤とすることができるということになっておりますが、この新しい選任方法や委員の常勤性に対して、社会党の諸君の中には、これは政府が選任したものであるから、労働委員会の政府への隷属性を感ずるとか、その中立性が侵される危険があるとか反対論を唱えられる向きがあるのでありますが、政府が選任したものであれば、政治的偏向があり、中立性が侵されるというならば、一般の官吏やその他の委員に対しても、みな疑いを持たなければならぬことになり、通常の常識をもっては了解のできないことでありまして、まことに、思い過ごしでなければ、偏見というほかはございません。(拍手)公益委員の常勤制も、三公社、五現業等の事業が、全国的かつ大規模であることや、国の事業としての公共性、重要性にかんがみれば、これら職員の労働関係の実情や、その事務処理上、必要な事項を常時把握しておく必要があることなどからいって、この改正は最も適切であるといわざるを得ません。
さらに、今回の改正案につきまして最も重大なことは、仲裁裁定を一そう尊重するために、公労法第三十五条を改正して、「政府は、当該裁定が実施されるように、できる限り努力しなければならない。」と、裁定実施のための政府の努力義務を明定するとともに、各公社法等の給与準則、給与総額に関する規定を改めて、予算総則の給与総額制度に弾力性を持たせることとし、仲裁裁定の実施確保の措置を講じたことでありまして、このことは、公共企業体等の労働関係の円滑かつ合理的な処理の上からいって、きわめて当を得たもので、まさに労働政策上一歩を進めたものというべきであります。(拍手)
本法の改正に当っては、政府の説明によりますと、労使、公益の各界を代表する委員をもって構成された臨時公労法審議会を設けてその意見を聴取した結果、各側委員の意見の一致を見たものをほとんどすべて取り入れて作成されたものであるとのことでありますので、各方面よりの賛同も受けられるものと期待される次第であります。もちろん、いかに整った法律でありましても、それが適切に運用されない限り死文化することは申すまでもないところでありまして、私は、この際、特に、労使関係当事者はもちろんのこと、この法律の運用に当るすべての関系者が、公共企業は、一般民間企業とは異なって、国民全体に奉仕することを最終の目的とするものであること、及び、その事業が国民の経済生活並びに一般公共の福祉、安全に対しても広く深き関係を持つものなることを認識されて、本法の目的、趣旨に即した適切なる運用に努められ、健全にして合理的なる労使慣行の確立をはかられんことを切望いたし、また、社会党の皆さんも、この法律が国鉄、電電、専売等三公社及び国の経営する五現業における職員の労働関係の平和を維持するための重大なる法律であることに思いをいたされ、かつは、臨時公労法審議会においては、労働委員側の皆さんも、使用者側委員とともに、仲よく賛成をされておる実情もあり、さらに、労働問題に関する学者も一致して賛成しておられるものでありますので、政府案であれば何でもかんでも反対するというようなことのないように、この際、虚心たんかい、欣然と賛成せられんことを切望いたしまして、私の本改正案に関する賛成討論を終る次第であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/18
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019・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、本案は委員長報告の通り可決いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) この際暫時休憩いたします。
午後二時三十六分休憩
————◇—————
〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102405254X04919560515/20
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