1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年三月六日(火曜日)
午後一時五十四分開会
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出席者は左の通り。
委員長 三輪 貞治君
理事
高橋 衛君
委員
西川彌平治君
白川 一雄君
西田 隆男君
深水 六郎君
阿具根 登君
海野 三朗君
上條 愛一君
藤田 進君
政府委員
通商産業政務次
官 川野 芳滿君
通商産業大臣官
房長 岩武 照彦君
通商産業省通商
局長 板垣 修君
事務局側
常任委員会専門
員 山本友太郎君
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本日の会議に付した案件
○繊維工業設備臨時措置法案(内閣送
付、予備審査)
○輸出保険法の一部を改正する法律案
(内閣提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/0
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001・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) ただいまより本日の委員会を開きます。
まず繊維工業設備臨時措置法案を議題といたします。この際、政府より本法案についての提案理由の説明を求められておりますから、これを許します。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/1
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002・川野芳滿
○政府委員(川野芳滿君) 繊維工業設備臨時措置法案につきまして、その提出理由及びその概要を御説明申し上げます。
繊維産業は、わが国民の生活上欠くべからざる衣料の供給を満すと同時に、輸出産業としてもまた第一位を占める重要産業であります。しかるに、近年わが繊維製品の輸出数量が急増し、その価格がまた過当競争により乱調を呈する傾向があるのに対し、国際的批判がきわめて強く、ために先般ガット加入の際における欧州諸国の三十五条援用問題、米国における日本綿製品の輸入阻止運動など、まことに遺憾な現象を見るに至りましたことは御承知の通りであります。これをこのままに放置することは、今後の輸出貿易及び繊維産業の発達のために著しい悪影響を及ぼす懸念があります。もちろん、欧米におけるかよう意動きは、先方の誤解等に基くところも少なくありませんから、わが国としては、その誤解等を解くことに努力することが必要であります。しかしそれにいたしましても、わが方もまた、できる限り相手国の産業経済界を過当に刺激しない方策をとることが肝要であると信じます。政府は、かような見地から従来より輸出行政面において貿易体制を整備し、輸出品の価格、品質の規制を行うとともに、生産行政面においても中小企業安定法の発動あるいは行政勧告によって生産調整を行う等の方法を用い、もって輸出貿易及び産業の健全な発展に努めて参りました。しかし今や繊維産業に関しては、輸出面における過当競争等の根源となっている過剰設備問題を解決し、産業構造の根本を改善することが焦眉の急であることを痛感されるに至りました。
ことに注意すべきは、わが繊維産業が中小企業によって構成せられる割合がきわめて大きく、特に繊布等の加工部門においてはその生産者のほとんどが小規模業者であり、それらが全国に散在して、わが国中小企業の中でも生産上、雇用上重要な一部門を航しております。しかも、これらの中小企業は、数年来の継続的な不況に悩んでおりまして、自立不能の状態に立ち至っているものが少なくありません。従って中小企業の根本対策としてもまた、繊維産業における過剰設備問題の解決が必要となって参りました。この過剰設備問題は、繊維産業の今後の運命を決する重大案件であり、合成繊維などの育成対策との調整をはかる必要もありますので、政府は、昨年八月閣議決定をもって繊維産業総合対策審議会を設置し、このための総合対策を諮問したのであります。同審議会は、学識経験者、業界人、労働者代表等数十名よりなる委員をもって構成され、その後、右の諮問に対して、慎重に審議を進めて参りました結果、先ごろ政府に対し、繊維工業設備の調整などに関する法律の制定を必要とするとの答申を提出したのであります。よって政府は、この答申の趣旨に従い、さらに検討を重ねました結果、ここに成案を得ましたので、これを法案として上挺することにいたしたのでございます。
本法案は、繊維製品の生産及び輸出の正常な発展に寄与するため、繊維工業設備に関する規制を行い、繊維工業の合理化をはかろうとするもので、全文四十九条よりなっておりますが、その骨子は次の通りであります。
まず第一に、本案には繊維工業設備の登録制を実施することを規定しています。すなわちこの登録によって、現有設備の実情を正確に明らかにし、各業種における設備の過不足に応じて、設備の今後の転換及び新増設を調整するのに必要な資料を得たいと存ずるのであります。ただし、本法によって登録を実施する業種は、さしあたり各種紡績業及び染色加工業であります。織物業については、現在中小企業安定法の命令に従って行っている設備登録によってゆく方針で、本法の適用から除いてあります。登録の対象となる設備は、紡績業における精紡機及び染色加工業における織物幅出機でありまして、法律に定められた繊維製品の製造または加工を行おうとする者は、その使用する精紡機または織物幅出機について、業種ごとに登録を受けなければなりません。
第二に、本法施行後においても、昭和三十五年度の繊維製品の需給を参酌して、設備が不足である業種があるときは、その不足の範囲内で、今後新増設される設備の新規登録を行ってゆきます。その際には、原則丁として設置計画の段階で申請を受け付け、定められた数の範囲内で調整して仮登録を行い、設備の完成を待って登録を行います。
第三に、過剰設備の処理ですが、本法による登録制を適用する業種及び中小企業安定法の命令に従って登録を行う業種のうち、昭和三十五年度の繊維製品の需給を参酌して過剰設備を処理する必要があると認められるものについては、処理すべき設備の数を定め、その業種に属する事業者に対し、廃棄、格納、転換、その他の方法によって過剰設備を処理するための共同行為を実施すべき旨、通商産業大臣を指示することができます。この指示に基いて事業者が行う共同行為については独禁法の適用を除外することになっています。
第四に、本法の運用に当っては、繊維関係の事業者のほか、関連事業者、繊維関係労働者、一般消費者などに影響するところが少なくありませんので、本法中の重要事項を審議するため学識経験者、消費者代表、業界人、労働者代表など繊維工業に学識経験のある者よりなる審議会を設けて、この審議会の活用によって本法実施の適正をはかりたいと思います。
以上が本法案の骨子でありますが、なお、本法による過剰設備の処理に関する共同行為をいたします際に、設備の売却を希望する事業者のために、調整組合連合会その他適当ね民間機関において、その買上げを行う必要があると思われます。その場合、買上げに要する資金は、原則として残存設備からの分担金でまかなうものといたしますが、しかし織物業のごとく、中小企業者が大部分である業種については、業界だけでこれを負担することは困難かと考えられます。よって政府として、その設備処理に必要な経費の一部を補助するため、昭和三十一年度の予算案に一億二千万円の補助金を計上してございます。この補助金の運用によって、織物業に対する本法の適用に際しては、十分な効果を上げうることを期待しております。
最後に、本法の実施に伴って繊維産業の設備の近代化がおくれ、あるいは、ひいて繊維機械工業に対して好ましからざる打撃を与えないため、繊維工業設備の入れかえ等を極力促進する考えであります。また、過剰設備の処理に伴って労務者の失退職を招くことは、避けなければならないので、設備の処理の程度、方法等については十分慎重を期し、適正な実施をはかって参りたい所存でございます。
何とぞ御審議の上御協賛下さらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/2
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003・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) 本法案に対する質疑は次回以降の委員会において行いたいと思いますが、異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/3
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004・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/4
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005・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) 次に、輸出保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。本法案に関連して最近の貿易概況について政府側より御説明をお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/5
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006・板垣修
○政府委員(板垣修君) 私より最近の貿易の概況と主要な問題点につきまして御説明を申し上げたいと存じます。
お手元に要旨をプリントにしたものがお届けしてあると存じますので、それによりまして御説明を申し上げます。
第一に一般的な概況でございまするが、昭和三十年度の輸出は、アメリカ、カナダ並びに英本国その他のポンド地域への輸出が非常に増加をいたしまして、本年三月末で二十億五千万ドルになると見込まれております。輸入も前年度より拡大をいたしまして、これも大体同額の二十億四千五百万ドルということになりまして、ちょうど輸出と輸入が見合うという想定をいたしております。一方特需の収入は前年よりやや減少いたしましたけれども、それでも五億五千五百万ドル程度には達しますと思われますので、国際収支全体のバランスといたしましては三億八千九百万ドル程度の黒字、これをユーザンスを差し引きました実質のバランスをとりましても二億四千四百万ドルの黒字になる見込みでございます。
次に、来年度、すなわち昭和三十一強度の国際収支の見通しを申し上げますると、輸出は大体二十二億ドルを見込んでおります。輸入も本年度より若干増加をいたしまして、二十二億二千万ドルということに想定をいたしております。特需はさらに減りまするが、これも大体四億五千万ドルというふうに想定をいたしておりまするので、結局三十一年度の国際収支のバランスは二億五百万ドル、今のユーザンスを差し引きました実質バランスが一億七千五百万ドルの黒字というふうに見込んでおります。
こういう工合に来年度も大体本年度に引き続きまして国際収支は黒字ということで、順調な経過をたどるものと想定をいたしておりまするが、一面輸出につきましては来年度はやや警戒を要すべき徴候も現われておるのでございまして、第一にはアメリカ、カナダ等におきまする輸入制限運動の熾烈化という問題がございまするし、西欧におきましては大体景気は本年より悪くなることはないと思いまするが、大体頭打ちの傾向を示しておる。従って現在西欧におきましても景気抑制策をとっておる。従ってその結果国際輸出競争は本年よりさらに激化すると思われまするし、また、アルゼンチン等特定市場との間には清算勘定の運営上、貿易不均衡是正の問題が起っておりまして、この面から日本の輸出をはばむいろいろな要因が出て参ると予想されまするので、今後とも輸出の振興につきましては大いに努力する必要があると思いますとともに、輸入につきましても輸出を促進するために一般的輸入を促進するという問題がございます。それからことにヨーロッパを中心として起っております貿易の自由化等の動きに対しましてどういうふうに対処するかというような問題があるわけでございます。
それから次に、最近におきまする諸外国との貿易上のいろいろな問題点を簡単に申し上げますと、第一に最近行なっておりまする通商交渉の点でございまするが、現在いろいろな国と通商交渉をやっております。第一にドイツでございますが、昨年の十月ドイツと交渉をいたしまして清算勘定の廃止を決定いたしまして現金決済に移行いたしました。それから本年の一月にイタリアとの間にも同様の交渉をいたしまして従来のオフアー取引勘定を廃止いたしまして現金決済に移行いたしました。しかし、ドイツとの間には昨年の交渉の際に懸案として残っておりましたところの日本からのドイツに対する輸出の待遇をどうするかという問題、それから僭越分の決済についてどういうふうにするかという問題が残っておりますので、本年二月から再び交渉を現在続けております。それからドイツ及びイタリアに続きまして清算勘定を廃止するために交渉中の国といたしましては、タイとスエーデンがございます。タイにつきましては十二月末から現地において交渉をやっておりまするが、清算勘定の廃止につきましては、大体合意に達しましたが、まだ米の買付につきまして、日本側が要望いたしておりまする数量の問題、それから価格の引き下げの問題等につきまして、いまだ妥結に至っておりません。それからスエーデンとの間につきましては一月下旬から交渉をやりましてスエーデンとの間では清算勘定廃止の合意がみられましたが、しかし向う側の日本に対するOEEC待遇、すなわちヨーロッパの経済機構と同様の待遇を与えるという代りに、日本ももう少しスエーデンの特殊鋼その他機械類を輸入してくれという要望がございまして、まだ細部の点について目下交渉中であります。それからその次にオランダとの間にも清算勘定の廃止の線で交渉しようということで目下検討中でございます。従ってヨーロッパの諸国につきましてはドイツ、イタリア、スエーデン、オランダというような国々との間には清算勘定が大体廃止の方向に向うというふうに考えられます。
それから次に、現在やっております交渉といたしまして、台湾と貿易改訂の交渉をやっております。すでに二月下旬から現地において交渉を開始いたしております。最近は、台湾との間ではわが国が入超傾向にありますので、台湾側の買付を促進するということが必要であると同時に、日本側が買っております大宗である砂糖、米などの主要輸入品につきましては、従来相当割高のものを買っておりますので、この価格引き下げということを主眼点といたしまして現在交渉をいたしております。それからトルコとの間につきましては、昨年の二月に通商協定ができたのでありますが、同国が日本の資格商社制度すなわち、現在トルコとの通商の関係は特に六社だけに限定をいたしておりますが、これは向うは認めない。一方、向う側では価格審査を行なっておるというような関係上、昨年中、両国間の貿易は非常に不振をきわめておりまして、日本側だけは無理をして綿花を買いましたが、日本側からの輸出に対するライセンスがおりないという状況で、本年の一月下旬からトルコと交渉を開始いたしまして、最近ようやく意見の一致を見て、日本側も資格商社制度の改訂をする。そのかわり、向うも日本に対して輸入許可証を出すということで、やっと合意に達しました。それからパキスタンとの関係におきましても、貿易協定の期限が切れましたので、近く東京において交渉が開始されることになっておりますが、同国は、最近アメリカの援助に大幅に依存しておりますので、わが国の輸出は大幅に最近減っております。従ってパキスタンに対するわが国の輸出をいかにして確保するかという点が、今度の交渉で一番大きな問題に意ろうと思います。
それから日英間の協定につきましては、御承知のように、昨年十月新しい協定ができたわけでありますが、この三月、中間レビューといたしまして、ロンドンでレビューをすることになっております。日本とスターリング地域との間の貿易は、昨年以来非常な伸びを示しておりまして、そのために、日本としましてはスターリング地域からもう少し物資を買わなくちゃならぬということになりまして、昨年そういう意味の協定を結んだわけでありますが、その結果、進行状況は非常に良好でございます。現在日本のスターリング地域の物資の買付は非常に円滑に進んでおります。最近もレビューの予備交渉を東京でやりましたが、イギリス側は大体において日本側のスターリング地域の物資買付状況につきましては満足の意を表しておるようでございます。
その次に、主要市場との貿易の動向でございますが、第一に問題でございますのは、アメリカとの関係でございます。アメリカに対しましては、御承知のように、昨年は異常な輸出の伸びでございまして、その一年前よりは二億二千万ドルもふえました。全体で五億一千九百万ドルという輸出になる予定でございます。今後もアメリカの景気動向は大体持続されるというのが通説でございますし、ガットの関税交渉の結果、関税引き下げの効果も期待されますので、大体その面においては明るい期待が持たれるわけでございますが、一面アメリカに対しましては、綿織物陶磁器、合板、マグロ等につきまして、日本からの輸入を制限しようという運動が強く行われておりまして、これが対策として、日本側といたしましては、輸出貿易管理令あるいは輸出入取引法による輸出数量、価格等の規制というよう意工合に業界の自主的調整をやりまして、アメリカの制限運動を抑止しようと今努力をしておる最中でございます。それからもう一つ、豚毛の問題というのがございまして、アメリカの外国資産管理規制に基きまして、豚毛の原産地証明というものを、従来日本政府としては出して、その豚毛をアメリカに輸出しておったわけでございますが、昨年その検査に端を発しまして、日本側の検査が不十分である、豚毛の中には中共産の豚毛が非常にたくさん入っておるということで、非常に厳重な抗議を受けておりますので、現在その取調べを完了するまで、この原産地証明の発行を停止しておる。従って日本の豚毛の対米輸出がとまっておるという問題があるのでございますが、現在この問題につきまして、輸出入取引法の活用、検査制度の適正化等によりまして、この弊害を是正することにいたしました。そのほか、この問題打開のために、外交交渉として米側とできるだけ早く解決できるように、日本側の善意がわかりますれば早く停止措置を解除してほしいと、ただいま折衝中でございますが、まだ解決するには至っておりません。
アメリカに次ぎましてドル地域での主要な市場でありますカナダにつきましても、昨年は非常に輸出が伸びました。従来カナダと日本との関係は七対一ぐらいの状況でありましたが、昨年は四対一以下のいい比率になったと思います。今後もカナダは日本の市場といたしまして非常に重要なところでございますので、努力を続ける必要があると思いまするが、カナダにおきましても、アメリカと同様に、綿製品その他につきましては制限運動が起っておりますので、大体アメリカに対すると同様の輸出体制を現在とろうとして努力いたしております。
その次にアルゼンチンの問題でございまするが、アルゼンチンも、昨年は鉄鋼を中心といたしまして、非常に輸出が伸びたのでございます。清算勘定の結果、日本の輸出が非常に伸びて、一方買付の方はそれほど伸びませんでしたために、貸越債権が非常にふえまして、これをどうするかという問題が起ったわけであります。従って昨年わが方から調査団を向うに派遣いたしまして、羊毛、小麦等の買付促進につきまして交渉を行いました。大体これらの物資の買付が軌道に乗ったわけでございまするが、小麦等につきましては、遺憾ながら船腹等の関係で、十分買い付け得ないという事情が残っておるのであります。なお、アルゼンチンは新政権になりましてから、今後できるだけ早くオープン・アカウント制度をやめまして、決済制度を自由化、多角化したいという強い要望がございまして、近くその提案があることになっております。その提案を見た上で、累積債権の処理の問題とあわせまして、今後アルゼンチンとの貿易をいかに持っていくかということを検討したいと思っております。
その次に、韓国との関係はいろいろと関連した問題がありますけれども、本年の一月になって一応再開はされました。しかしながら、その後また向う側としまして、対日輸出禁止品目を定めたというニュースも受け取りました。一方また日本側といたしまして、韓国から買う品物に適当なものがない、そういうような関係で、日韓の貿易はなかなかむつかしい問題が今後も残っておるというふう考えております。
それから、最近キューバから通商交渉をやりたい、協定を結びたいという申し出が出ております。御承知のように、日本は砂糖を非常に買うわけでありまするが、従来キューバとは通商協定もできておりませんので、日本といたしましては直接キューバから砂糖を買っておりません。従ってキューバからもう少し日本は砂糖を買ってほしいという要求が来ておるわけでありまするが、御承知のように、キューバは日本の品物をありま買っておりません。今度の交渉におきましても、ガットの三十五条などを援用しておって、日本の繊維品につきましては関税クオータの設定ということを主張いたしまして、無条件の最恵国待遇を与えない、一方向うからもっと大量のコミットをしてくれということなどがありまして、向うとの交渉を開始するところまでは至っておりません。
インドネシアとの貿易につきましては、御承知のように、現在一億八千万ドルの焦げつき債権が生じておりまして、わが国としては、やむを得ずインドネシアとの間に輸出権制度を採用いたしまして、輸入に見合う輸出をやっていくということで、日本とインドネシア両国間の貿易はあるべき姿よりは少し低目になっております。これを根本的にどうするかということは今後の問題でありまするが、これはやはり賠償問題の解決とにらみ合わせないと、根本的解決はむつかしいじゃないかと考えております。
中共貿易につきましては、この一両年来非常に伸びて参りまして、三十年の暦年では、輸出が二千八百万ドル、輸入の方は八千万ドルという大きな数字になっております。前年の実績に比較いたしますと、前年は輸出において千九百万ドル、輸入は四千万ドルであります。ことに、輸入においては倍近くに伸びておるというような状況になっております。こういう非常に大幅な輸入超過になっておるという原因は、大豆や米などを買いまするがそれの見返りの物資として適当な品目がないということでございます。向う側といたしましては、日本側が出す消費物資その他の自由品目でなくて、日本が出し得ない禁輸品目を出してくれという要求があって、この点が常に相談がまとまらない原因となっております。この点が輸入超過という結果になっておるわけでございまして、御承知のように、戦略物資輸出統制の緩和に努めるほかございませんが、それと同時に、昨年十二月に日中輸出入組合というものができましたので、この組合を中心といたしまして、輸出と輸入を全般的にバランスさせる、すなわち従来の個別的な、一件々々の個別的バーターから総合的バーター、これはもちろんお互いに出し得る品目でなければいけませんけれども、出し得るものにつきましては、総合的なバーターを導入いたしまして、輸出と輸入とのバランスを実現したいというふうに考えております。だから東南アジアとか、中南米とか、中近東の諸国に対しましては、将来日本の輸出市場としてこれを永続的に確保をすることはもちろんでありますが、これらの国々に対しましては、やはり貿易と並びまして海外投資、技術協力という方面を積極的に推進する必要があると考えております。ことにこれらの国々、焦げつき債権を生じておるような諸国に対しましては、やはり賠償問題の解決と並びまして、債権をできれば向う側と交渉して投資に移すというようなことを考えれば、一石二鳥の効果をねらうのでありますので、今後こういうような後進国に対しましては、貿易と並んで投資を積極的にやっていくという方針で進めていきたいというふうに考えております。
ガットの関係につきましては、昨年の九月、御承知のように正式加入いたしたわけでございまするが、その後アメリカは互恵通商法の改正によりまして、さらに三カ年間に一五%の関税率を引き下げる権限を大統領が獲得いたしました。従ってこれを機会といたしまして、本年一月からゼネバにおいて関係国が集まって、関税交渉をやっております。日本もこれに参加をいたしまして、アメリカが主でありますが、アメリカに対して百品目、スエーデン、セイロン等、三国と関税交渉をやる予定になっております。現在交渉を開始しております。
その次に、輸出取引秩序の維持強化の問題でございますが、先ほど申しましたように、特にアメリカ市場におきまして、わが日本商品の輸出制限運動が、非常に熾烈に起っておりますので、これに対処するために、どうしても業界の自主的取引秩序の確立ということが必要でございます。それで昨年改正を見ました輸出入取引法に基きまして、現在業者の自主的体制といたしまして、いろいろな業者協定ができております。現在までの実施状況を見てみますと、輸出取引に関する輸出業者間の協定が三十四件になっております。生産業者間の協定が四件、それから輸出組合と生産業者との間の団体協約が四件という状況になっております。なお、この業者協定に関連する通産大臣が出しますアウトサイダー規制も昨年の十一月一日に合板について実施をされました。近くクリスマス用品であるところのガラス製光り玉、造花等につきましても、アウトサイダー規制が行われることになっております。これに関連いたしまして、法律以外におきまして、輸出業者間のアウトサイダー、取引体制の自主的整備という点は最近着々と進んでおりまするし、ことにその場といたしまして、輸出会議が非常に活用されているということは喜ばしい現象でございます。今後とも輸出会議を強力に運営いたしまして、昨年やりましたように輸出実績の検討、新輸出品目の設定ののみならず、具体的な輸出秩序の確立につきましても、この輸出会議を今後積極的に活用して参りたいというふうに考えております。
その次に、輸入の問題でございまするが、三十年度の下半期の外貨予算は、原材料、及び生活必需品の確保、スターリングその他オープン・アカウント地域からの輸入促進を旨といたしまして、従来よりも思いきりたっぷり組みまして、十二億六千四百万ドルという予算を組んだのであります。この実施に当りましては、原則として従来の小きざみ予算をやめまして、期の当初において輸入公表、輸入発表等をやりまして、早期に予算実施ができる態勢を整えましたので、非常に実施状況はよかったわけであります。昨年の十二月までの割当額は、当初予算が総額十二億六千四百万ドルのほぼ中ばに達した次第であります。なお、その後日本の輸入事情がだんだん増大傾向にありますので、逐次予算の追加が行われまして、この三月一日現在におきまして、本期予算の総額は十四億四千五百万ドルになりました。従ってすでに追加総額は一億八千百万ドルに達しておる次第でございます。
それから割当制度の問題につきましては、御承知の輸入者割当問題というのがございます。現在われわれといたしましては、輸入取引の合理化という見地から、実質的にはあまり大きな影響は与え意いようにして、しかし取引の合理化を確立したいということで、輸入者割当という方向に進んで参りたいと思っております。ただ、現在綿花、羊毛、鉄鉱石、あるいは燐鉱石というようなところで二、三残っておるのがございますが、方向といたしましては、こういうものを一括いたしまして、取引の合理化という意味から輸入者割当制度に統一したいと考えておりますが、これを実行することによって、非常にかえって弊害が出るというような事情もありますので、この点につきましてはもう少し現実の問題を検討いたしまして、慎重に処置したいというふうに考えております。それからよく伝えられております貿易の自由化という点につきましても、われわれといたしましては、ただ観念的に貿易を自由化するということなくて、現実的に可能な限度において、現行の関税制度の改善及び緩和をやっていくという方向へ進みたいと考えております。
先ほど申しましたように輸入方式の合理化につきましては、結局輸入墨の増大、輸入発表、外割基準の改善というよう意ことによって、不必要な競争を排除することに努めておる次第でございまして、将来できるものにつきましてはAA制度というようなこともやりたいと思っておりますが、これがやはり産業の安定とかそういう方面に不測の障害があるというような場合におきましては、その点は一つ現実的に処置をして参りたいというふうに考えております。今後は輸入方式の改善、グローバル制度の採用、あるいは一括発表であるとか、輸入組合の活用によります輸入態勢の整備、不急不要品を、どうしてもやむを得ず輸入しなくちゃならん場合には、これを超過利潤吸収の法的措置によって輸入の合理化をする。それから一般的に輸入手続の簡素化をやるという方向に力を尽していきたいと考えております。
それからその次に特殊物資の問題でございますが、砂糖及び特殊物資の輸入につきましては、先般法案の提案理由で御説明申し上げました通り、今回はバナナその他の特定物資につきましての法律案を提出いたしたいと考えております。しかし砂糖につきましては、大体今後は従来のような非常に不当に輸入量を制限するということでなくて、国民生活にとって必要欠くべからざる消費物資であるという点を考慮いたしまして、外貨の手持ちの許す範囲で、できるだけ輸入量を拡大するということで、従って超過利潤は発生しないという方向で輸入政策をやりたいというふうに考えますので、前国会に提案をいたしました砂糖に関する法案は、今国会は提案しないということに方針の決定を見た次第でございます。
それからその次に海外投資の促進の問題でございますが、先ほどもちょっと触れましたが、最近海外投資は、非常に増加の傾向を示して参りまして、六にございまする合併会社の設立は、昭和二十八年度に十二件、二十九年度に八件、三十年度に九件、これは四月から十二月まででございます。合計二十八億円ばかりの金額になっております。技術援助は二十八年度十件、二十九年度二十三件、三十年度十九件大体累年ふえて参っております。これを地域的に見ますと、合併会社は東南アジア地域が十一件、中南米が八件、台湾四件、インド、セイロン、ブラジル、アルゼンチン各二件という順序になっておりますが、最近特に中南米地域に対する投資の希望がふえてきたということは、注目すべき傾向であると思っております。しかしながら、これらの投資も、イギリスであるとか、アメリカとか西独等と比較いたしますれば非常に少いのでありまして、従って投資促進策といたしまして、今後租税協定などを締結いたしまして、二重課税を防止して輸出入銀行の投資、金融ワクを増大いたしますこと、融資条件の緩和並びに海外投資関係保険を創設するというような点に今後力をいたしたいというふうに考えます。従って海外投資保険制度につきまして、今回国会に御提案を申し上げた次第でございます。
で、輸出に対するいろいろな補助政策というものが、ことにガット、IMFでもそうでありますが、日本が正式に加入いたしましたガットにおきましては、非常に厳重に禁止されておりますので、どうしても輸出の伸張のために輸出保険が演ずる役割というのがますます大きくなると存じます。従って今回この輸出保険法の一部を改正いたしまして、一つは従来ありまするいわゆる輸出代金保険の対象を、貨物の輸出を伴わない技術の提供であるとか、あるいは海外建設事業の請負代金等にも拡大することが一つ、それからもう一つは、全く新しい保険といたしまして、ただいま申し上げました海外投資保険を新設するということにいたしたいと存じております。これは前に申しましたように、海外投資技術の海外進出を促進するために民間から強く要望されておりまするし、今後の推移に応じましてこれが拡充強化を順次はかっていきたいというふうに考えております。なお、この海外投資保険の内容は提案理由の際に御説明申し上げましたが、海外投資をした者が、その元本であるところの株式または持分を奪われた。それから戦争、革命または内乱により被投資会社が解散し、または経営が一定期間不能とはって株式等を処分したということによって受ける損失を填補するもので、一回の事故による填補率は五〇%・投資額を最高限度として保険することにいたしたいと考えております。
それからその次に為替制度の正常化の問題でございますが、これは主として大蔵省関係の仕事でございますが、通産省にも非常に重要な関係を持っております。一つは為替管理の問題としてはLUA、これは註にも書いてございまするように、日本側の銀行の外貨支払いを保証するために大蔵大臣が外銀に差し入れます保証状でありますが、この廃止問題が起って参ります。さしあたり六カ月以上のものにつきましてこの廃止をいたしたのでありますが、今後全面的に廃止するという問題が起っております。全面的に廃止する場合には、外国為替銀行の実力のある数行に実質的に限定されるという問題につきまして、通産省といたしましてこの点につきまして慎重に検討中でございます。
それからその次に商社の機能を強化するという意味から、商社の外貨保有制度というものが最近実施されました。これは貿易商社の海外活動を促進するために必要なもので、二月以降有力商社二十社につきまして、為替銀行から外貨資金を買い入れまして、これを海外支店等の運転資金として使用することを認めたわけでございます。これによりまして本制度の活発な利用が期待されるわけでございます。これに引き続きまして、今後できますればさらにこの商社機能を強化する意味におきまして、本支店間の交互計算勘定制、さらにできますれば為替持高集中制度の二つを認めれば、初めて商社の海外活動というものが戦前並みになるわけでございます。このうち交互計算勘定制度だけにつきましては、若干の制限を設けまして、できるだけ早い機会に実施するということにつきまして、ただいま大蔵省と意見の一致を見ております。ただ輸出為替の集中を免除するいわゆる持高集中制度の適用につきましては、まだ相当大きな問題があるので、今後とも第二段の処置として大蔵省とも折衝を続けたいと考えております。
次に、簡単に貿易金融の動向を申し上げますと、最近御承知のように市中金融が緩和して参りました。実質的に金利は大幅に低落しておるわけでございますが、こういうような状況にかんがみまして輸出前貸手形の優遇措置についてその是非を論ずる議論も多少起っておるようであります。しかし、通産省といたしましては、輸出促進の立場からいたしまして、ことに下ったといいながら、まだ国際金利に比べれば、まだずっと高いわけでございますから、当分の間優遇措置は存置をしていきたいというふうに考えております。
それからブラント類の輸出金融を担当しております輸出入銀行につきましては、船舶を中心とするプラント輸出が非常に好調で、この貸し出しは急増しつつあります。かような情勢に対応いたしまして、三十一年度の資金量は前年度の実行計画であるところの四百七十億円を約八十億円上回ります五百四十八億円、そのうち二百四十億円が新規財政投融資からまかなうわけでございますが、五百四十八億円を予定いたしております。しかしはがら各国の輸出競争は激化の一途をたどると考えられますので、わが国産業の国際競争力強化のため、輸出入銀行の所要資金の確保をさらに十分にする。それから業務運営の改善、合理化につきましては、今後とも努力をいたして参りたいと思いますし、さしあたりこの融資の協調比率につきましては、現在の資金量では七対三というのが輸出入銀行あたりの希望でございますが、できるだけ通産省といたしましては、特に重要な品種につきましては八対二を確保するように、今後とも大蔵省と折衝をして参りたいというふうに考えております。
最後の貿易振興予算につきまして簡単に申し上げますと、三十一年度の国会に対する要求は十億七千九百万円になっております。これは前年度に対しまして約一億五千二百万円の増加でございますが、このうち五千万円が項目整理によるもので、従来工業試験所あたりについておった輸出関係をこちらにつけたという関係でございますが、実際にふえましたのはここにございまする農水産物輸出促進の一億円でございます。大体におきまして昨年度は横ばいという数字になっておりますが、本年度の数字といたしまして特に特記すべきものとしては、今の農水産物関係のほかに、機械見本船の東南アジアへの派遣補助、パキスタンにおける電気機械サービスセンター設置補助、意匠改善費、特産品対米輸出振興費というような項目があげられると存じます。
以上簡単でございましたが、概略御説明を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/6
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007・三輪貞治
○委員便(三輪貞治君) 輸出保険法の一部を改正する法律案について、質疑のある方は順次御発言をお願いします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/7
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008・白川一雄
○白川一雄君 局長は最近南米の方へ行かれたそうですが、ブラジルなどでは、日本が計画したものにどんどん外国が進出して、このまま放置しておくと、将来日本のブラジルに対する輸出はだんだん減退をたどるだろうということを、新聞でも、また講演でも聞くのですが、御視察の御感想をちょっと承わらしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/8
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009・板垣修
○政府委員(板垣修君) ブラジルにおきましてもアルゼンチンにおきましても、先ほど申し上げましたようにアルゼンチンにつきましては、昨年は非常に伸びたわけでございますが、貸越債権ができてしまって、従来のように十分出せるかどうかという問題が起っているのでありますが、ぼやぼやしておりますと、もちろん各国がその機に乗じて進出してくるという問題がある。ブラジルにつきましても、あそこでは為替制度として為替競売制をやっておりますので、日本なら日本、フランスならフランスは、その国が買った量しか対日輸出為替は競売に付せられない。従ってブラジルに対する日本の輸出は、日本がどれくらいブラジルから物を買い得るかによってきまる。一時は非常に落ちて、昨年ごろは週十五万ドルから二十万ドルまで落ちたのでありますが、最近はやや回復して、対日輸出為替、向うから言えば輸入為替ですが、競売が週百万ドルくらいになっております。今後日本がブラジルへの輸出を維持、さらに拡大しますためには、どうしても、多少割高であっても、ブラジルから物の買付を増進していくことが絶対に必要であると存じます。ドイツであるとか、ことにドイツがおもでありますが、日本よりは非常によけいにブラジルの物資を買って、よけいに出しておるというような状況は確かに見られます。それからもう一つ、先ほどちょっと申し上げましたように、ブラジルとかアルゼンチンとかいう国は距離が非常に遠いので、この距離を克服する手段としても、貿易と並んで投資を促進することが非常に大事なことで、アルゼンチンにつきましても、新政府は今後従来よりは工業化計画をスロー・ダウンはしても、どうしてもやらなければならない工業計画は相当あります。電力にいたしましても、交通網につきましても。それからブラジルにつきましてはやはり投資活動が盛んで、だいぶん鉄鋼所の建設、造船所の建設について、各国に対してオッファーを出しているようでありまして、もし日本に実力があれば、こういう方面に投資として日本が出ていくことになれば、非常に向うに対する地盤を確保する上において有効ではないかという印象を深く受けて帰って参りました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/9
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010・白川一雄
○白川一雄君 南米の方は御承知の通り移民の問題とも関連しておることでありますが、聞くところによると、最近は農業移民というのはほとんど希望が持てない。工業移民でなければいかぬということを聞くのでありますが、やはりこれに並行していくのはプラントと人とが一体になった投資をしていかなければ実現しないのではないか。今少し景気がよくなって参ったものでありますから、とかく事業家方面は国内のよさのために、海外に行くことに積極的でないというような声を聞き、反面国策としてドイツその他の国は非常に積極的にやりますので、いろいろな事業、日本自体が研究し調査もしたようなものもどんどん外国に取られていっておるということを聞くので、日本の国としてもほんとうに移民の問題等を解決する一つの方法としても、積極的に海外投資というものが国策として実現しなければならないのではないだろうかということの実情を聞くにつけまして、一種の焦慮を感ずるような気持もするのでございますが、局長の御観察の上では、日本が工業で進出するとすれば、どういう方面が適当であろうという御観察になったか、できますれば、承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/10
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011・板垣修
○政府委員(板垣修君) まことにお説の通りでございまして、私も向うで短日月でございましたが、一応アルゼンチンとブラジルの様子は現地の大使からも意見を聞いて参ったのであります。ただいまお話しの農業移民はもちろんございますし、ブラジルなどにつきましては、農業移民の余地は相当あると存じます。しかしながら、その他の南米地域におきましては、農業移民の余地はあまりないし、人を消化するという意味におきましては、農業移民の方が工業移民よりも効果があるわけであります。これがものになるまでには、一代ではだめで、二代三代かかるということになります。ことに相当多量に農業まで移民を消化するということになりますれば、やはり向うの政府で計画移民として施設をしてもらわなければならぬ、それだけの労を向うがとってくれるかどうかという問題がございまするので、やはり私といたしましては、工業移民の方に向けなければならないという印象を受けて帰って参ったのでありますが、その対象となる業種につきましては、現在すでに両国政府が計画しておるいろいろな業種があるわけであります。ことにアルゼンチンにおきましては、今一番力を入れておるのは、交通部門と電力部門と石油開発、鉄鋼でございますが、そのうちやはり私は、資金的な面は別といたしましても、日本としてこれに参加し得るものはやはり鉄鋼部門、それから交通部門、それから電力、こういうものは十分に参加し得ると思います。
それからブラジルにおきましても、今サンパウロの近くにパウリスタ製鉄所の計画がございまして、これにつきましては現在、安東大使が非常に御熱心であり、向うの田村連邦代議士が非常に熱心に動いているわけでありますが、金額も六千万ドルという大きな金額になりますので、日本の今の製鉄業界といたしましても、あるいは機械メーカーといたしましても、まだやろうと踏み切るまでには至っておりませんが、もしそういうものに参加できるといたしますれば、非常に大きなものになるわけであります。
もう一つの業種としては造船部門、これはアルゼンチンにも三菱がペロン政権時代に実は話があったわけでありますが、政変になりましてこれがとだえましたが、アルゼンチンに造船部門、ブラジルにも造船所設置計画がありますが、こういうようなものができますれば、これを土台といたしまして、日本の経済進出というものの非常な根拠ができ、これに関連して、日本の輸出も伸びるというような気がいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/11
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012・白川一雄
○白川一雄君 それに関連してお尋ねしたいのですが、交通のことでございますが、ブラジルが日本との定期航空を承認いたしましたのですけれども、三月に一回くらいしか往復しないというので、そんなものは交通でないのじゃないかということを向うから批判されておるそうでありますが、実際、移民の上からいきましても、船で送るよりも飛行機でどんどん往復する方が、量的にも質的にも経費の上にも非常に有利だということを論議されておるのでございますが、貿易にも当然交通というものは関係があると思うのですが、南米と日本との航空路というものを、もう少し盛んに必要があるように感じておるのですが、その点、局長の御感想を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/12
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013・板垣修
○政府委員(板垣修君) 航空のことはまあ私の所管外でございますが、今のお話しの点は現地で私聞きまして、まだ航空協定は認可までは向うは至っていないようでございますが、大体現地の大使の話なんかでは、近いうちに航空協定は妥結し得る見込みがあるということでございます。そうなりますれば、日本航空が直接南米に飛べるわけでありまして、今の日航の計画では、聞くところによると、今お話しのように、三月に一ぺんという程度でございますけれども、これじゃ全く定期航空路の名をなさない、この点も私、日本に帰りまして非公式に話しましたが、三月に一ぺんということで、定期航空路でなく、試験飛行で始めておるそうでありますが、少くとも二週間に一回とか、一週間に一回くらいに、これをぜひ一つ早い機会に増す必要があるのじゃないかということを、私は個人的に日航の幹部に申し上げておるのでございます。今のお話しのように、やはり航空を盛んにいたしまして、移民を運ぶのでも、やはり航空機を大いに利用するということにつきましては、私も全く同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/13
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014・海野三朗
○海野三朗君 少し的がはずれておるかもしれませんけれども、今、白川委員から質問がありました移民の問題ですが、ブラジルあたり、あるいはアマゾン流域に渡っていった農民としますと、一本の木を切るにも十分な農具もないというので、今日ただ送り出してばかりいたって、そこにある機械力をうしろから、後続部隊がないので非常に向うの移民が困っておるという情報をこの間聞いたのです。たとえば、ここの大森林を開拓する許可をもらっても、その大森林をやるにも大きなのこぎりもない。小さなおのじゃなかなかやっていけない。すなわち機械力が後続部隊として続いてこないような報告を聞いて、向うに渡った農民が、半としぐらいは何とか食うていくのだが、一年くらいたつと、立っていけない。そういう連中が今度は都会の方に押し寄せてくるというので、かえってこちらから行つた農民の将来については、向うの土地の人から反対の気勢が起りつつあるという話を私は最近読んだのでありますが、そういう点については、あはたは各国を回ってこられたのでありますが、どんな話をお聞きになってきましたか、その移民についての御感想を。機械工業があとからついていかなければならない。あるいは農民にしてもそうです。ただ、すき、くわとってやるのではいけない。そういうものがあとから続いていかなければだめじゃないかと思うのですが、そういう方面の方は観察していらっしゃらなかったのですか。御所見はどうでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/14
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015・板垣修
○政府委員(板垣修君) そういう方面につきましては、実はブラジルは二、三日しかおりませんので、ほんとうのまた聞き程度でありますが、今お話しの、せつかく農業移民をやっても、機械力が十分足らなかったということは想像できることであります。私の承知しておるところでは、ごく簡単な機械類というものは、移民を送り出す際にいろいろ融資したり何かしてめんどうを見ておるようでありますが、ことに移植の場所いかんによりましては、ことにアマゾンの奥地に入るというようなところにつきましては、相当大規模な機械などをつけてやるということが必要であると考えます。御承知のようにこの間行って感じましたのは、何といっても向うの技術程度が一般的に低いわけでありますから、簡単な機械類もなかなか手に入らない。技術を身につけた現地人もいないわけであります。そういう意味からいいましても、確かに日本の農業移民に対してそういう機械もつけてやると同時に、やはり一定程度の技術、簡単な技術でも身につけたものが向うに入ってくるということになりますれば、日本の農業移民も、もっと成功し、伸びるのじゃないかという感じを持って帰ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/15
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016・海野三朗
○海野三朗君 ちょっと伺いますが、やはりそういうことは、これは管轄はどの方になるのですか、農林省ですか、外務省ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/16
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017・板垣修
○政府委員(板垣修君) 現在、移民政策の全般的な問題といたしましては、外務省でやっておりまして、特に最近、外務省に移住局ができましたので、この局が総括的にやっております。移住株式会社というものができまして、これが現地におきまする農民なり、あるいは農業はり、工業の企業に対する融資をやるということになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/17
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018・海野三朗
○海野三朗君 ただいまの話はまあわかりました。続いて輸出入のことにつきまして伺いたいのですが、先ほどの繊維などに関係しておることでありますが、日本は非常に評判が悪いというようなのは、つまり粗製乱造であるから評判が悪いのですか。大量を出されるから向うの業者が困る、それだから日本の輸出を制限しようとするのでありますか。一体どうなんですか。安い品物であれば一向差しつかえないように思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/18
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019・板垣修
○政府委員(板垣修君) 御承知のように昔は確かに粗製乱造、悪かろう安かろうということでありましたが、最近は、少くとも二、三年の動向を見ておりますと、日本品が粗製である、物が悪いという非難はほとんど姿を消しているのじゃないかというように存じます。最近アメリカ、カナダで問題になっております綿製品などの問題につきましては、安い品から多量に出過ぎるというところに問題があるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/19
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020・海野三朗
○海野三朗君 そういたしますと、実際からいえばまあ自由なわけでありますから、いい品を安くしていくということは、まあ自然の現象なわけなんでありましょう。それを向うの評判が悪いから、これをセーブしょうというように考えるのが、この臨時措置法案ではないかと思うのですが、その辺はどうなんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/20
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021・板垣修
○政府委員(板垣修君) まことに御説の通りでありまして日本側といたしましても、比較的安くていい物が出るのに何が悪い、ことにアメリカの消費者から見れば、これくらいいいことはないじゃないかという考えを持っておりまして、その線でたしか昨年あたりから向うでも啓蒙運動をいたしておりますし、アメリカの識者もまあそういうふうな考えに賛成されておるのであります。しかし遺憾ながら向うの消費者の声というものが強くちっとも表に出ない。反対運動だけが強く出て、向うの議会などを動かしまして、制限法案なども出す。向うの政府ももちろん日本側の言い分は十分わかっておるわけでありますし、国会にもさしあたり手が出ないというようなことで、お互いに何とかこれを阻止する方法はないかということで、今までいろいろと対策を練っておったわけでございます。日本側といたしましては何といいましても、議会で、理屈は何にいたしましても、制限法案が通ってしまえば、これはもう終りでございますので、何とかしてこれを阻止する方法が必要ではないか。そのためにはやはり多少われわれといたしましては、現在理屈に合わないと考えましても、一昨年に比べましてあまりに伸びがはなはだしいことは事実でございますので、この際一時輸出を自主的に調整をして、向う側の業界の反対運動をながめて、結局、長い目で見た対米輸出を確保した方が全体的に得ではないかという、こういう判断に基いて、今回まあ業界も自主的に規制するということになったのが実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/21
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022・海野三朗
○海野三朗君 ほんとうから申しますと、日本という国がこの小さい島国に九千万の人が食っていかなければならないのでありますから、みな血眼になって勉強しておることでありましょう。そういう点から考えて、この臨時措置法案というようなものを出すということ自体が、どうも間違っておるのでははいかと私は思うのですが、ただ、外国からそういうふうに騒がれると困るから、それを減らすというのも一理があるようですけれども、そういうふうな措置をとるということ自体が、一体間違っておるではないですかな。それを一つちょっとあなたの御所見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/22
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023・板垣修
○政府委員(板垣修君) その点が間違っておるかどうかはわからないわけであります。アメリカの中でも、私今度ニューヨークに寄りまして、何も日本はそんな弱い態度をとる必要はないということを言っておる人もあります。それに対して日本は全然そういう措置はとっておらない。日本としてはいい物を安く売っておるのだから、アメリカの民衆の利益になっておるのだからということで、放っておきまして、もし議会で制限法案が通ってしまうと困る。今の自主的措置をとった法案が通るか通らぬか、これはまだわからないわけでありますから、日本側といたしましては、やはり万全の措置をとって、少くとも日本にとっては努力し得る最善の努力をしたということになれば、これ以上今後アメリカの政府の行動を、ここでそんたくすることはできませんけれども、何らかやっぱりそういうものを阻止する根拠はアメリカ政府に出てくるのでははいかというふうに考えるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/23
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024・海野三朗
○海野三朗君 そういたしますと、そういうふうな法案がアメリカの国会にもうすでに提出されておるのでありますか。商務官の人たちからの報告もあなたの方に届いておるかと思うのですが、何かそれらに類似した法案が、今アメリカの国会に出されておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/24
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025・板垣修
○政府委員(板垣修君) 現在すでに出されまして審議をされんとしておる状況なのでございます。ただ問題は、まあいろいろな形の法案ができておりまして、全般的に輸出商品を輸入制限するという法案、あるいは綿製品を輸入制限せんとする法案、あるいはマグロの関係の法案、いろいろなものがたくさん出ておりまして、それが結局六月までにどういう形にはって実際の審議に移るかどうか、私はまだわかりませんが、ただ今の綿製品に関する限りにおきましても現在出されておりますが、これですと、やはり日本側の自主的規制の効果はども一部現われた点もあり、アメリカ政府などの努力もあり、だいぶその辺の気勢はそがれておるという点を聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/25
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026・海野三朗
○海野三朗君 今日本ではこういうふうな臨時措置法案が国会に出されておるというようなことは、向うの国会に響いておりますか、どうなんですか。向うの国会にも響いておるのですか。向うにもいろいろな党派がございましょうが、向うで、つまり日本からの繊維物を規制しろというよう意法案が出ておるとすれば、やはり日本でもこれをやっておるというような情報を向うに提供しておるのですか、どうなんですか。この出先、いわゆる出先の商務官としてはどういうことになっておるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/26
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027・板垣修
○政府委員(板垣修君) この点は十分響いておるわけでございまして、もうすでにアメリカの議会が開かれる前から、日本側といたしましてはいろいろとそういう宣伝等もやっておりますし、それから日本のアメリカ駐在の大使がまあ正式に軍務省に申し入れておりまして、この点につきましてアメリカ政府といたしましては日本政府の見解に全然同意で、有名なダレス長官からスミス議員にあてた書簡などもございまして、この中にはアメリカ政府といたしましては、日本の綿製品その他を制限するということは、当を得ていないと考えておるというような正式の政府としての声明もすでにあるわけでございます。
それからその後日本側がとりました綿製品の自主的規制措置というようなものも、十分向うの議会にも響いておるわけでございますが、一方制限をせんとする議員たちがこれを聞くかどうかは、まだ私たちにはわからないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/27
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028・海野三朗
○海野三朗君 それでは向うの国会でこれが通過しそうなんですか、どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/28
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029・板垣修
○政府委員(板垣修君) それは全然わからないわけでございます。それで最近までの情勢では、やはり楽観を許さないということでございましたが、私ただいま申し上げたように従来綿製品業者、それから綿花業者とが共同しておりましたのが、最近では綿花業者あたりは多少消極的になったというような情報もございました。多少形勢がそがれつつあるのじゃないかというのが、これは先ほど申し上げた通りでありまして、これが果して通るかどうかということは、六月までたたないとまだわからないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/29
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030・海野三朗
○海野三朗君 私は続いて、ミシンのことを伺いたいが、日本から輸出したところのミシンの輸出高、まだほんとうに向うに輸出されておるかどうかは知らないけれども、アメリカに行って相当の、ミシンの台数が売れないでストックになっているという情報も聞いているのですが、どんなふうでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/30
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031・板垣修
○政府委員(板垣修君) 私もそういう調査を聞いておりまして、最近御承知のようにミシンにつきましては日本といたしましては、今、数量は忘れましたが、輸出数量の規制をやって参っておりますが、やはりその数量も多少荷もたれ気味であって、 ニューヨークでは売れないでストックがあるという状況でございます。従って一度きめた数量も実施においては、その範囲内でせばめて輸出数量を規制しておる状態であります。アメリカでは、ニユーヨークではミシンの方は多少売れ行き不振でストックが出ておるという状況であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/31
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032・海野三朗
○海野三朗君 それは品が悪いということで売れ行きが悪いのですか。どうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/32
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033・板垣修
○政府委員(板垣修君) 私も詳しくは存じませんが、品が、悪いということではなくて、やはり今まで出過ぎたということではないかと思います。ことにアメリカのミシンはやはり相当部分がまだ南米方面に出ておりますので、そういう方面の輸出状況の反映もあるのじゃないかというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/33
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034・海野三朗
○海野三朗君 品物が安くてよければいいわけなんですが、これを輸出するときには、いわゆる輸出組合を通してやるのでありましょうが、いいミシンも悪いミシンもどうもごっちゃにやったような話を私は聞いておるのでして、一流のメーカーの話も私聞いたのでありますが、どうも通産省自身が輸出をしても差しつかえない、いい悪いということについてはあまりお考えなしにどんどんおやりになったように聞いておるのですが、その辺どうなんですか、それが一つと。それからシンガーとパインの提携でありますが、生産を制限しておるにもかかわらずシンガーとパインの提携によって月五千台の増産をやるというような話も聞いておるのでありますが、その辺はどうなんですか。国内の生産を規制しょうといっているときに、シンガーとパインの提携というようなことでは、国内のミシン業者がこれは立っていかない。それで非常に困っておるという悲鳴を聞くのでありますが、そういう点については通産省はどういうお考えを持っていらっしゃるか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/34
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035・板垣修
○政府委員(板垣修君) 第一の輸出のミシンの種類の問題でございますが、これは御承知のように、何百というような種類がございまして、通産省といたしましても、輸出検査制度で許可しておりまして、もちろん許可にはずれておるものは出さないわけでございますが、それ以上に、特に優良のものは通産省といたしましては輸出いたしてよい、その他はいかんということにはどうしてもいかないわけでございます。そのために、チェック・プライス制度によりまして、一定の基準に合わせてしかも一定の値段で出すものはこれは認めざるを得ません。それから日本といたしまして、日本はブランドで出ておる品物は一、二に限られておりまして、アメリカのバイヤーがヘッドで買ってアメリカのブランドで売っておるということでありまして、それまで通産省といたしましては輸出をどんどん優良なものだけを出させるというわけには現状ではいかないわけでございます。それからシンガーとパインの関係につきましては、私詳しいことは存じませんが、その点につきましては、まだ政府といたしましては、シンガーとパインの正式の技術提携というものは認可いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/35
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036・海野三朗
○海野三朗君 今の外資導入というような形で、外貨の形でなしに無為替でもってどんどん入ってきつつあるのだ。それに対して通産省はどうだといってこの前聞きましたときに、重工業局長でありましたか、の答弁では、その点については何も制限とかそういうことはやることができないのだというような、至ってあいまいな答弁をされた。また過日も通産大臣が何かそういうことに対しては至ってこう不明朗な返事をなさったようでありますが、国内の業者を救うためには、やはりあらゆる点においてこれを阻止するという態度に出なければならないのでは意いか、こういうふうに思うのですが、ミシン業界も非常なショックを与えられておるわけであります。そういう点について、あなたはしばらくお留守であったからわからないかもしれませんが、ずいぶん業界はごたごたしておるのです。そういう点はまだ十分お聞きになりませんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/36
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037・板垣修
○政府委員(板垣修君) 私留守の間に、もし新しい発展があったとすれば、別でありますが、私出るときまでの承知しておるところでは、今お話しのシンガーミシンから機械を無為替で入れたいという申請があったわけでございますが、政府といたしましては、これは外資法による提携を前提といたしております関係上、今の国内のミシン業界に対する影響というものを十分に勘案してきめなくちゃなりませんので、許可はいたしておらない次第でございます。ただ、この点につきましては、アメリカ側からも非常に強い要請がございますので、その点との関連も考慮しなくちゃならんと思いますが、ただ、今の通産省の考え方といたしましては、国内の業界に非常な大きな影響を与える外資導入なり、あるいはその類似の提携ということにつきましては慎重に決定しなくちゃならんというのが、ただいまの考えであると私は存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/37
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038・海野三朗
○海野三朗君 そうしますと、今六割しか作るなだとか、七割しか作るなとかいって規制をしておられるようでありますが、それに対するお見通しはどうでありますか。現在生産を制限しておられる、そういうことに対してのお見通しはどうなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/38
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039・板垣修
○政府委員(板垣修君) 生産の方は私存じませんが、輸出の方の市場が現在の状況で多少弱含みであるということに触りますれば、やはりしばらくの間は現在の輸出数量規制手段は続けざるを得ないと思いますが、これは今後どういうふうに海外の市場がなるか、この点につきましては私今ちょっと予備知識を持ち合せておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/39
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040・白川一雄
○白川一雄君 先ほど貿易をだんだんFA制度からAA制度に移していかれるという御方針を承わったのですが、これは画一的に全部そういう方向に持っていかれるのでしょうか。それとも業種別にケース・バイ・ケースできめていかれる御方針なのか、そのお考えを承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/40
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041・板垣修
○政府委員(板垣修君) 先ほど、将来できますれば、できる限り、輸入の自由化という意味から、AA制度ということが一番望ましい制度でございますが、われわれとしましては、現状において、これを一般的にAAに持っていくという考えはございません。一つ一つ現在洗っておりまして、これをAA制度にすることによりまして、国内の産業の面から見ましても、ほとんど障害がないというものだけを拾い上げていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/41
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042・白川一雄
○白川一雄君 私どもの希望はやはりAA制度になって、民間ができるだけ安いものを使えるということになるととが希望なんでございますけれども、事柄によりますと、輸入という面だけ見てはいけないので、入った品物が現実に日本の実際生活、また産業上の必要度からFAをAAにかえるということにしませんと、非常に混乱を来たすのじゃないか、たとえて申しますれば特に石油界なんかの事柄につきましては、AA制度にかえる前に、かえても差しつかえないところの体制を先にしいておかなければ非常な混乱をきたすのではないかというふうに見ておるのでありますが、この点につきましてはいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/42
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043・板垣修
○政府委員(板垣修君) ただいまの仰せの通りで、石油につきましては御承知のように複雑な割当制度を従来のいろいろな経緯もありましてやらなくちゃならんので、この際こういう必需物資なら思い切ってAAにしたらいいじゃないかという御議論もときどき出ますが、これは重油規制問題という点からも実施できませんし、その他の面についてもお話しのような点もありますので、石油などについて全面的にAAということはちょっと考えられないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/43
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044・白川一雄
○白川一雄君 石油のことでは現在のFA制度にしても外貨割当については十分一つ御検討にならなければいけないのじゃないか。と申しますのは、一例を申しますと、潤滑油にいたしましても、わずか百二十万か三十万の割当を無数の商社に割り当てておりまして、入ってきた油は非常に低品位の油が多くて、実際に必要な……現在の日本の御承知のように電力関係等は長足の進歩をして需要が高まっているにもかかわらず、ケーブル・オイルのようなものがきわめて少量に制限されて、いわゆる雑油に属するところのものがどんどん入っておる。はなはだしきに至りましては廃油のごときものが多量に日本に入れられておるというような点は、私は正常な姿ではないのじゃないか。やはり日本の外貨を使っていく限りにおきましては、実際の需要の面の適否というものから見なければいかぬものだろう。ところが従来の複雑な経緯にのっとったしきたりによってのみ律せられておる感が非常に強いので、考えようによっては、正常な産業の発展を阻害しておるとも極論で承るのでないかというような感じがあるので、これは油の面は一例でありますけれども、こういう点につきましては、外貨割当の当局に立っておられる通産局長といたしましては画期的な勇敢さをもって一つやってもらわないと、なかなか革正できないのじゃないかという感じを持って見ておりますから、その点について何か御参考になる御意見がありましたならば、お聞かせ願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/44
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045・板垣修
○政府委員(板垣修君) ただいまのお説の通りでありますが、あまり画期的なことをやろうといたしましても今のように非常に物資につきまして市場が違いますので、統一した制度がなかなかとりにくいというところに難点があるのであります。ただいま例にあげられた潤滑油につきましても、石油全体についてはAAは考えられないのでありますが、潤滑油についてはできればAAもいいのじゃないかというようなことで研究はいたしております。そうすると、高級潤滑油と雑潤滑油との区別が現在はなかなかつかないというような点からすると、ただいまお話しのように、あるいはAAまでいかなくても、産業上必要な高級潤滑油について、量をもっとふやすということも考えられると思います。そうかといって、具体的にそれが輸入者への割当という問題になりますと、なかなか過去の実績なり過去の経緯とかありまして、なかなか一刀両断にいかないものがあるわけでございますが、今後そういう点を十分に注意いたしまして、できるだけ現在の輸入制度を合理化し、適切な方向へ持っていきたいというように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/45
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046・藤田進
○藤田進君 御承知のように戦争による在外資産の損失補償というのが非常に大きな問題になって、また従って活発な運動の展開がされているわけですが、この種海外投資に保険をつけるということになりますと、そういう戦時中の損失に対する補償ということが、一つのやはり政府自体が填補してやらなければならんという考え方がはっきりと表面に打ち出されるわけですが、そういうようなことの影響はどのようにお考えでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/46
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047・板垣修
○政府委員(板垣修君) ただいまお話しの在外資産の補償問題と、今御提案申し上げておる輸出海外投資保険とは全然別の問題と存じます。在外資産の中には、確かに過去において投資したものがあるわけでございますが、やはりこの制度に乗るためには、その当時の満州なり中国本土への投資保険にかからなくちゃいかんわけでありますが、これは何年も前のことで、さかのぼって保険にかけることもできない。従って海外投資保険と今の在外資産の関係はもう一応全然別の問題として考えざるを得ないかとこういうふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/47
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048・藤田進
○藤田進君 言葉をかえて言えば、戦時中の軍人あるいは戦時傷病等の恩給なり、扶助料なり、そういうものが論ぜられる場合に、往々にして現在の防衛漸増方針を惧体化するために、過去のそういった人的な面の補償というものが万全でないために、これから先の防衛というものが非常にそういう面においてもむずかしいということも加味されて、恩給法の改正、増額というものを進めてきた感は、実際問題としてあるわけですね。ちょうど私はそれと同じような意味において、無関係といっても持っているんじゃないか。というのは、いまだあまり経験をしなかった海外における投資はどんどん発展していたのに、あの敗戦のために初めて海外投資の悲惨なことを知ったわけです。日本は知ったわけですが、そういう面もあって、私は海外投資というものはやはり腰だめであり、足踏みをしていたと思うのですが、そういう部分もあって、やはりこの保険というものが対象を改正、拡張し目的を変えられたというようにも感じられるのですね。こういう面においては無関係ではないように考えるのですか、この出された動機などから見て……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/48
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049・板垣修
○政府委員(板垣修君) 確かにお話の点も関連はございます。やはり過去の在外資産はいろいろございます。資産のうち投資というものが救われれば、今後の日本の海外投資というものは活発になる。そういう過去の関連性はございますが、ただいま提出いたしております海外投資保険法では、過去の在外資産の問題の処理はできないということを申し上げたのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/49
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050・藤田進
○藤田進君 それから現在の実績は資料によってわかりますが、メキシコ外各国に対する投資件数が出ておりますが、現在のところ南米等では、この間のアルゼンチンの政変、あるいはブラジルにおいても御承知のようにそういうようなととがありますし、あるいはまた東南アジアにおいては、台湾と中共との関係等からあるいはどういう変動があるかという点は、全然平和と言いながら、なおなしとしないわけですが、これがしかし今度の対象の表等を見ますと、革命その他そういう国の大きな変動というととも入ってくるわけですね。そういう相手国の国内の重大なる革命的な変動等によって、大きな填補を必要とするという場合に、果して現在の保険料率等でやれるのかどうか。それは非常時として、別にそのときに処理せられるということになるのか。いわば将来の国際的な、そういう平和ということで、そういうものの見通し等について今すぐお答えできなければ、およそのものを、参考資料を出していただきたいというのがまず第一番。第二の点は、貿易の概況と主要問題というのは、非常に詳しい説明で参考になりましたが、これを見ますと、通商局長におかれて、これだけは打開したいというものが多多あるように見受けられますが、これを要約すれば、やはり比較的技術的な問題が多いように思います。しかし今諸説ありますが、この貿易の発展、あるいはその他やはり世界経済の動向というものがどうなるのか。ことに東西の対立というものがあり、ソ連における共産党大会ですか、相当報ぜられたところによると、性格が変ってくることが、だんだんと東北にこの勢力が移ったような形で、スターリンの批判をするとかいうような、実にめまぐるしい、東の陣営において……。これに対して西の陣営においても、多少の動きは見受けられるような気がするのです。しかし大きな問題は、そういったことは、これはもちろん総理大臣なり外務大臣かもしれませんが、あなたはむしろ専門的な立場から、貿易を中心とする世界経済というものがどういうふうになってゆくか、これは国国によって消費経済等の影響は違ってくると思っておりますが、もしこの保険等の関連として、貿易の伸展等からそういうものが、できれば文書で、まずければ口頭でもよろしいですが、きょうでなくともいいですがいただければ、皆さんの見られた、通商局長というか……極東で見られた世界経済の動向はどうキャッチするかということですね、そういう点がきょういただいた御説明では、どうも私には理解できないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/50
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051・板垣修
○政府委員(板垣修君) 最初の投資の場合につきまして一応簡単に頭にあることをお答えいたします。確かに南米にはときどき政変騒ぎがある。ことにもっと大きく言って、西と東の問題がございますが、私どもの一応の想定といたしましては、従来の経験からいたしまして革命、内乱、そういうものによって投資保険が非常に大きな負担をかぶることは少いだろうという前提に立っておるわけでございます。さらに大きく申しまして、東と西の対立の問題は、ちょっと通商局長として今お答えするには大き過ぎる問題ですが、これは大体見方としては、世界の通説に従って、やはり漸次緩和の方向に向ってゆくということを前提として作業をいたしております。従って今後の貿易全般の問題についても、そういう前提に立っておるわけでございますが、私どもといたしまして、本来ならば外務省の仕事と思いますが、今お求めもございますので、一応通商局で考えております点を、多少作文的になるかもしれませんが、拡張いたしましてお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/51
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052・藤田進
○藤田進君 結果的に見て海外投資に対する保険ということは、いわば第一の目的としては、安心して海外投資をせしめ、この前の戦争によって大へん悲惨な境遇になった、そういう、いわば恐怖心というか、こういうものを除かれるのであろうが、実際にこれが適用に当っては、ことに革命、内乱等により、投資が全然元も子もなくなってしまうということは全然予想できないということに見ていいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/52
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053・板垣修
○政府委員(板垣修君) 大体そういう前提のもとに作業をやっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/53
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054・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) それからきょういただいておる資料の中で、海外投資保険の対象となり得る投資の実績というのがございますね、それで先ほどの御説明で海外投資促進ということで年次別の件数が出ておりますが、海外投資、技術提携でも、対象となり得ないものがかなりあるわけでありますね。その資料を、具体的な国名、相手方投資者、そういったようなものを資料として、なぜ対象となり得ないかという理由等の資料を提出して下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/54
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055・板垣修
○政府委員(板垣修君) 承知しました。そうすると、なり得ない技術提携、それから貸付金債権、そういうものの資料を作って来ましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/55
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056・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) 別に御発言もないようでありますから、本日の質疑はこれをもって終了いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414461X01019560306/56
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057・三輪貞治
○委員長(三輪貞治君) それでは本日の委員会はこれをもって散会いたします。
午後三時二十一分散会
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