1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年五月三十日(水曜日)
午前十時五十五分開会
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委員の異動
本日委員千葉信君辞任につき、その補
欠として村尾重雄君を議長において指
名した。
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出席者は左の通り。
委員長 青木 一男君
理事
野本 品吉君
宮田 重文君
江田 三郎君
島村 軍次君
委員
井上 清一君
小幡 治和君
木島 虎藏君
木村篤太郎君
西郷吉之助君
佐藤清一郎君
菊川 孝夫君
田畑 金光君
松浦 清一君
村尾 重雄君
吉田 法晴君
豊田 雅孝君
廣瀬 久忠君
堀 眞琴君
国務大臣
国 務 大 臣 船田 中君
政府委員
防衛政務次官 永山 忠則君
防衛庁次長 増原 恵吉君
防衛庁長官官房
長 門叶 宗雄君
防衛庁防衛局長 林 一夫君
防衛庁教育局長
事務取扱 都村新次郎君
防衛庁人事局長 加藤 陽三君
防衛庁経理局長 北島 武雄君
防衛庁装備局長 小山 雄二君
通商産業政務次
官 川野 芳滿君
通商産業大臣官
房長 岩武 照彦君
特許庁長官 井上 尚一君
事務局側
常任委員会専門
員 杉田正三郎君
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本日の会議に付した案件
○理事の辞任及び補欠互選
○国防会議の構成等に関する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
○通商産業省設置法の一部を改正する
法律案(内閣提出、衆議院送付)
○連合審査会開会の件
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/0
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001・青木一男
○委員長(青木一男君) これより委員会を開きます。
千葉信君より理事の辞任願いが出ております。これを許可するに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/1
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002・青木一男
○委員長(青木一男君) 御異議ないと認めます。
つきましては理事が一名欠員となりましたので、補欠の選任を行いたいと存じますが、成規の手続を省略して、その指名を便宜委員長に御一任願うことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/2
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003・青木一男
○委員長(青木一男君) 御異議ないと認めます。それでは私より理事に江田三郎君を指名いたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/3
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004・青木一男
○委員長(青木一男君) 国防会議の構成等に関する法律案の討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/4
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005・松浦清一
○松浦清一君 私は日本社会党を代表して、本案に対して反対の討論を行います。
この法案は御承知の通り、昨年の第二十二回特別国会に内閣側から提案をされまして、衆議院の与党諸君によって修正をされ、原案では内閣総理大臣を議長として内閣法第九条の規定によりあらかじめ指定された国務大臣、すなわち副総理、外務大臣、大蔵大臣、防衛長官、経済企画庁長官、識見の高い練達の者のうちから内閣が両議院の同意を得て任命する者五人以内とありましたものを、この閣僚以外のいわゆる識見の高い練達の者のうちから五人以内という議員を民間から入れる条章とそれに関連する条章を削除して、会期最後の日に、すなわち七月三十日に本委員会に対する修正者側の説明を聞いたのであります。この修正案は七月二十七日衆議院において議決をされ、二十九日からようやく本委員会における審議が始められたのであります。三十日にはすでに国会は終ったのであります。審議を尽すべきを尽さざるままに、ついに廃案となった、そのままの法案が再び今国会に提案されたということであります。
法案の内容はすでに御承知の通り、防衛庁設置法の第三章の規定に基いて、国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否等について協議をして、その計画を策定する機関であります。しかも防衛庁設置法第四十二条第二項においては、これが内閣総理大臣の単なる諮問機関ではなくて、「内閣総理大臣は、左の事項については、国防会議にはからなければならない」、こうありまするから、この五つの国防に関する方針を諮るべきことが義務づけられておる会議であります。その「はからなければならない」義務を負うた内閣総理大臣が、国防会議の議長たる内閣総理大臣に諮らなければならぬのでありますから、何とか答えを出さなければならぬことは申すまでもないのであります。かくてわが国防衛の大計は、防衛に関係のある産業まで支配する大きな権力をもって、この会議は存在することとなるのであります。かつての吉田内閣以来の保守政権によって計画をされてきたわが国の防衛体制は、日米安全保障条約に基いてわが国の防衛力を漸増し、それにつれて、アメリカの駐留軍を漸減していくという方向をとっていることはすでに政府自身の説明によって明らかであります。すなわち昭和二十五年、七万五千で出発をいたしましたわが国の警察予備隊は、その後十一万に増強されて保安隊となり、さらにこれが十三万となって自衛隊にかわり、さらにまた二十九年には十六万四千となり、また昨三十年度におきましては十九万五千となり、三十一年度においては二十一万に増強をされまして、陸の自衛隊、海の自衛隊、空の自衛隊といういわゆる三軍均衡の軍備体制は、いよいよ強く確立されようといたしておるのであります。このように毎年増強される軍備に対して、毎国会において論議の焦点となったことは、要約をいたしますると、第一にはこのような軍備は憲法違反ではないのか、第二にはこのような軍備はわが国の自主的なものではなくて、アメリカの強要によるものではないのか、第三にはわが国の経済力がこの漸増方針にたえ得るかどうかということ、第四には政府側の繰り返して説明される平和のためということは、かえって平和を乱す結果となりはしないかということであったのであります。私どもが繰り返し、繰り返し反対いたして参りました理由は、大体この四点に集約されることは記録に明らかであります。ところが私どものこの反対にもかかわらず、委員会の審議を通して政府は国民総所得の二%強を軍備費にあて、しかもこれが際限もなく拡大強化されることを明らかにしたのであります。新聞の報ずるところによりますと三十二年度における具体的な増強計画もすでに決定を見ておるとのことであります。すなわちその計画内容は、三十年度から始まった防衛六カ年計画の第三年目の業務計画と表現をして、陸上自衛隊においては制服隊員一万人、事務職員においては一千人、海上自衛隊においては制服隊員約三千人、航空自衛隊においては制服と事務職員とを合せて約八千人、合計二万二千人を増強する方針をきめた由であります。それにつれて各自衛隊の装備も増強されることはもちろんであります。このことは三十二年度予算要求の準備計画であろうとは思います。しかしながら政府が軍備拡充計画を立てて以来、予算案の作成に当って防衛関係予算が、その他の一切の内政予算に優先をして獲得されておりまする前例から見ましても、この計画は大体実現されるものと判断をして間違いないと思うのであります。かくて三十二年度末にはわが国の自衛隊は事務職員を含めまして、二十三万二千の勢力となるのであります。伝えられる防衛六カ年計画の最終年度たる昭和三十五年を待たずして日本の自衛隊と称する軍隊は予定の二十七万に達しそうであります。年間経常費も間もなく二千億を越え、フィリピン、ビルマ等のすでに決定された賠償費、やがてきまるであろうその他の国々との賠償額がきまれば、わが国の経済と国民生活はついにたえることのできない負担となるのであります。このような実情が明瞭となっておりまするので、私はこの法案が成立をして国防の大計が立てられ、これが実践されていきますると、その増強の適度に反比例をして、わが国の総合的な経済力の弱体化が見えすいておりまするので、本法案に賛成することができないのであります。
具体的な反対理由の第一点は、現行憲法との関連についてであります。日本の自衛のためと称する軍備が、憲法第九条に違反するかしないかということは、ずいぶん長い間の議論でございました。国会の中では保守政党の諸君が違憲でないと結論し、私どもの側では違憲であると主張をいたして参りました。これは昭和二十五年の警察予備隊創設以来の論争であったのであります。学界におきましても、善意な学者はすべて違憲説を支持いたしておるのであります。国民の大勢はどうかといえば、昨年二月の衆議院の総選挙は、この問題を最高の論点として戦わされましたが、その結果は、憲法改正阻止のために必要な三分の一以上の議席を革新政党に与え、その考えを明らかにしたのであります。これが反対第一の基本線であります。
第二の点は、日本固有の資源、生産、経済の総合した実力が、戦力という形において、力と力の関係において日本を守れるという考えは間違っておるということであります。伝えられる防衛計画六カ年の最終年度における二千億円に余る防衛費は、日本の経済力ではたえがたい大きな負担であると思うのであります。経済企画庁の立てられた経済自立五カ年計画は、具体的な科学性のないものであって、単に机上の作文にすぎないことは世論の一致した見方であります。この作文にはっきりいたしておりますることは、経済の自立ということと完全雇用ということを二つの目標に並列をさせまして、そうして総合的にかつ長期的な計画を立ててあることであります。そしてこれが目標を達成するためには、鉱工業、農林水産等の国民の総生産、財政金融、税制、物価等各方面にわたって政策の総合性を保持しつつ、長期にわたり一貫した施策の実施によって裏づけすることが必要であるというのであります。まことに概念的な表現であります。私どもは鉱工業の中に石炭と石油等の燃料価値の比重や鉄鋼やら防衛産業の具体化が周到に解明せられて、農林水産の中に総合食糧対策、肥料の問題が具体的に計画され、解明されなければ、この経済自立五カ年計画は単なる思いつきにすぎないと思うのであります。従って私どもはこの計画の中から昭和三十五年の最終年度に四千五百八十六万人と想定される労働人口が、完全に消化されるということを残念ながら信用することができないのであります。もちろん今後の経済自立五カ年計画では、前の総合経済六カ年計画と称する空想的なメモ書きに比較すれば、若干の科学性は認めます。しかし振り出しは完全雇用であって、結論では三十五年末における四千五百八十六万人の労働人口のうち、国民の総生産の伸びに比べてその就労率がこれに伴わない、四十五万人の完全失業者が存在することを証明をいたしておるのであります。日本の予想される経済力は、計画の最終年度二十七万人の自衛隊を養い、その装備と消耗品をまかなっていくだけの実力に成長することは絶対に不可能であります。わが国の経済を自立する方策についての論議は別の機会に譲るといたしましても、高崎経済企画庁長官の説明のごとく、わが国の経済力に余力ありと称して、毎年国民総所得の二%強を軍備費に消費するにはわが国の経済力はあまりに弱体であります。この意味で軍備の漸増方向に対して私は反対をするのであります。
第三には外敵から侵されないだけの軍備を持つことが平和を守る手段であるとの考え方についてであります。この法案審議の過程を通じて明らかにされましたように、日本を取り巻く列国の軍備は、情報として流布されている六カ年計画の最終年度におけるわが国の軍備をもってしても、列国の現況と比べて見ればわかります通り、これは比較にならない弱体なものであります。自主独立の防衛体制と政府はよく申しますが、三十五年度末には列国はわが国のそれよりも増強の意思さえ持てば、さらに速度を早めてこれを増強することができるのであります。日本は世界のいずれの国に比べても人口の密度は高い、その数も多いのでありますから、世界の強大国のまねはできないまでも、無理な方法をもってすれば兵隊の数を作ることはできないことはないでありましょう。しかし兵隊の数だけでは戦力にならないことは論ずるまでもありません。いつまでもアメリカの腰にぶら下っているわけにもいかないのでありますから、その真の戦力たる国の総合的な経済力、いわゆる戦力たらしめることができがたいとするならば、世界に平和を求める道は他に求めることが当然と思うのであります。私はここで質疑の際にも申しましたように、無理にでも日本が戦争の危険を感ずるとすれば、それはアメリカ一辺倒の外交政策の中に大きなあやまちを犯しているからであります。すなわち日米安全保障条約とその行政協定であると思うのであります。この日米安全保障条約と中ソ友好同盟条約とが背中を向けて対立しているその中に、アメリカと共同防衛を語り合いながら、大きな戦争の恐怖を感じておるのであります。この日米、中ソの対立関係を解消することにわが国は全力を集中すべきであります。私は静かに日本の経済自立を考え、平和を求めるの道を考えてみて、アメリカとの経済提携はそれは大切にすべきであります。しかしながら今日のごとくアメリカ一辺倒方式は断じて改めるべきであると考えるものであります。その上でさらに世界に対して原爆の平和利用や、国際管理を強く要請することも一つの道であります。われわれ日本人にはそれを世界に要求する権利と条件があるのであります。さらにまた世界に向って徹底的な軍備縮小を要請し、国際連合による警察軍によって侵略国に膺懲を加えていくことについても努力が払わるべきであります。どういうわけで日本が国際連合に加盟できないのか、それを深く考えてみるべきであります。国際連合に加盟すれば軍隊の供出、共同防衛の必要が起ってくるかもしれません。しかしそれは持っているから起ってくるのであって、軍隊を持っていなければまたおのずから道は開かれると思うのであります。平和は軍備の強化にその道を求めるべきではなくて、軍縮の方向への努力の中から生れてくるものであるとの観点から、私はこの法案に反対するものであります。
第四には、日本の軍備はアメリカに隷属している傾向がきわめて強いということであります。すなわち飛行機を中心として多くの艦艇の供与または貸与を受ける海空自衛隊のごときは、全くアメリカ依存の上に成り立っていることは周知の通りであります。このことは日米安全保障条約に基くものであって、この義理合いから再軍備論者をして軍備を急がしている理由となっていると思うのであります。しかしながら日本の国の実情は、前にも申し上げましたような事情にあるのでありまするから、モスコーに行った河野農林大臣がどのような腹芸をしたかしないかは知りませんが、そのことはともあれ、早急に日ソ交渉を再開して、まずソ連との平和を求め、それを契機として中共との平和のための交渉を求め、この二つの対立した安全保障条約をときほぐして、日米中ソ一本の平和条約、安全保障の条約締結にまで押し進めるための最善の外交努力を払うべきであります。現在の鳩山内閣にはその方向への強靱な理想がないのであります。この理想を実現するために努力を払うということは万人反対するものはないのであって、現在のアメリカ隷属軍の増強は、およそこの理想実現への道とは反対の方向をたどりつつあるのであります。従って私は世界に平和を求め、国民生活の安定を求めるがゆえに、この法案に反対をするのであります。
第五には、現在世界で国防会議類似の機関を持っている国は、アメリカ、イギリス、フランス、イタリアを除いてほかにはないのであります。イギリスの国防委員会は本案と性格が類似していて、内閣総理大臣の単なる諮問機関に過ぎない。アメリカの国家安全保障会議は、大統領の行う国家安全保障に関する重要施策の決定は、この審議結果に基いていると言われているほど大きな権限をこの会議に持たしているようであります。軍備のない理想世界が実現することが世界の人類にとって最も仕合せな世界であることは寸毫も疑いを入れないところであります。しかし現在の世界情勢のもとにおいて、たといそれが許容のできないものであったといたしましても、みずからの経済力によってあのような大軍を維持できる国は、その国防の大綱や基本方針あるいは出動の可否等を打ち立てていく機関があるいは必要であるかもしれません。しかし、海外出動は絶対にしない、総理大臣も防衛長官も言明されておる日本の軍隊、そしてたといそれがわれわれの求めざるものであったといたしましても、現在わが国の軍隊は韓国にも及ばない、北鮮にも及ばない、台湾にも及ばない、インドシナ、ヴェトナム、パキスタン、イラク、トルコ並みの軍隊のために、アメリカやイギリス並みの国防会議は絶対に必要がないと思うのであります。現在の統合幕僚会議で本案の目的とする国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連する産業等の調整計画の案を作成して、これを内閣総理大臣に報告をして、内閣総理大臣はこれを国会の承認を求めて実行すればいいと思うのであります。また、この法案の目的の一つである防衛出動の可否については、海外出動はしないとの言明もあり、その他の出動については、内閣総理大臣は当然国会の承認を要することになっておるのでありまするからこれは問題はないはずであります。
第六の理由として私の強調いたしたいことは、鳩山総理も船田防衛長官もまた高碕経済企画庁の長官も国防会議を作って、ここで防衛の大綱等をきめ、日本の経済力に対応して増大する国民の総所得の二%強を軍備に充てていくということをしばしば申されてきたことは前にも申し上げた通りであります。果してわが国の経済的実情が、国民生活の実態がいわゆる軍備に充てる余力をもっているでございましょうか。私はこの辺のところはなかなか納得ができないのであります。昨年二月、衆議院の総選挙に際し、自由党の公約は四十二万戸の住宅を立てるということであります。社会保障制度の拡充強化をはかって、自主独立の外交をやるということが主要な政策であったことは御承知の通りであります。ところが、最近労働省の発表によりますると、本年三月末におけるわが国の完全失業者は百六万に達して、これは戦後最高のものであるというのであります。経済自立五カ年計画のいう完全雇用とは、その出発点において早くも大きな蹉跌を来たしておるのであります。そのほか、半失業状態にあるもの等を含めますると、わが国の実情は完全に就労のできない者が七、八百万人くらいに達しているのではないかと判断されるのであります。完全に就労していてさえ、今日の働くものの賃金と物価との関係は決して楽ではないのであります。いわんや失業無収入で生活しておるものの悲惨を思うべきであります。さらに住宅の関係につきましても、最近建設省の発表によりますと二百七十万戸の住宅が不足をしておると伝えておるのであります。さらに社会保障の点につきましても母子寮の不足、託児所の不足、養老施設の不足は申すまでもなく、生活保護の不徹底、戦争終って十一年になるのにまだ戦争未亡人に対してさえその施策はきわめて不十分であることは御承知の通りであります。今、時を同じくして本院の社会労働委員会に提案審議されておりまする健康保険の改悪案を見ればわかりまする通り、この健康保険制度は昭和二年実施以来今日に至りまするまで約三十年労働者の疾病、負傷等における医療生活の保障を行う制度として今やわが国の社会保障制度の一大支柱をなす制度であることは申し上げるまでもないのであります。ところがこの保険が昭和二十八年給付額が保険収入を上回るようになって、保険経済はきわめて困難な事情になったと称して三十年度の予算では保険料率を千分の五を引き上げて二十五億円の増収を行うことを決定したのであります。それだけ労働者たる被保険者の負担が加重させられたわけであります。これに対して私どもは医療費の二割を国家において負担して被保険者の負担増を起きないことを政府に対してしばしば提言して参りましたが、社会保障制度の拡充強化を公約をした政府は、三十一年度においてまたまた療養費の一部を被保険者に負担せしめることにより二十三億円の制度の改悪をはかろうといたしておるのであります。すなわち被保険者の負担増を計画いたしておるのであります。衆議院の修正案にしてもなお十七億八千万円の被保険者の負担増は免れないのであります。さらに労働者の直接生活の悪条件もさることながら、軍事費に圧迫をされた国の予算は、一般事業費等の削減となって、たび重なる災害に、あるいは風水害のために倒壊した校舎は旧に復せず、切れた堤防は今なお砂袋を積み重ねたまま放任をされて、流れた橋は木の仮橋のままに捨て去られておる現状であります。私が兵庫県の加西郡のある村に参りましたところが、その村の村長が陳情があるという話であります。何の話かと思って聞いてみましたところが、昭和二十五年の水害の際に、その村を貫流しておる川の堤防が切れて、これを修復するために国庫補助を申請をしたというのであります。これの修復費用は六十万円、きわめてわずかであります。よろしい、それは引き受けてやるから直しなさいという話であったので、貧乏なこの村には金がございませんので、農協から日歩四銭の金を借りて、この堤防を修復した、ところが六年経った今日に至るもびた一銭も政府は金をくれないのだ、一体どうしたのであろうかという話であります。これは単なる一例にすぎません。全国の各村々に、この災害のために、その修復がいまだにできないで、非常に困っておるところが実に多いのであります。国の経済に余力があるから、軍備の拡充ができるのだ、先般防衛庁の方から出されました資料によってもわかりまする通り、日本を取り巻いているアジア関係の諸国の軍備の実情を見ましても、日本がこれから飲まず食わずで二十年やっても、追っつかない強大な軍備を持っておることは、防衛庁自身がよく御承知の通りであります。かくのごとく国土の荒廃はそのままに捨ておかれ、忘れられて、そのままの状態で国の防衛力と称して兵隊の数ばかり少々ぐらいふやしたって、日本の国の戦力、防衛力は増強されないのであります。国民の生活が何の不安のないまでに安定をして、荒廃された国土が復興して、経済は自立安定をして、その総合的な力が充実することが、すなわち日本の国の絶対的自衛力が強まるときであります。わが国の実情は自衛隊の増強よりも、さらに緊急になさねばならぬことが実に多いのであります。従って私は国力と国民生活の実態を無視して、軍備の増強が計画されていこうとする、この国隣会議の構成等に関する法律案に対して反対をするのであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/5
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006・島村軍次
○島村軍次君 私は緑風会を代表いたしまして、ただいま議題になっておりまする国防会議法案に関し、賛成をいたします。
本案は、十九国会において設定されました防衛庁設置法の四十二条にすでに明らかに明記されておるところでありまして、前国会におきましても、慎重審議され、すでにその全貌は明らかになっておったのでありますが、さらに今国会におきましても、政府の提案以来きわめて慎重に本委員会において審議、討議されましたことは、従来多分の問題点の多いと称せられた国防会議法案も、現在のわが国の自衛体制強化の点から考えまして、あらゆる角度からその内容が明らかになって参ったのであります。
問題の主要な点は、先ほど松浦委員のお話にありましたように、すでに法律できめられた国隣会議のその構成の問題であります。すなわち国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否等につきまして国隣会議に諮問する、内閣総理大臣がこれに諮問する、こういう内容であります。もちろんこの国防会議は、すなわちわが国の自衛体制強化のその肉づけをする重要な今後の、将来計画に関する大会議でなければならぬのであります。従いまして本法律案の提案の過程において明らかになりましたように、民主主義のわが国におきましては、どうしても単に内閣だけでなくして、民間人をこれに加えるということの必要性のあることは、内閣総理大臣並びに防衛庁長官をこれを認められるところであります。ただ審議の過程におきまして、今国会に提案されました議案が、民間人を排除して内閣の内部においてその構成員が作られているということに対しましては、われわれは少くとも遺憾の意を表したいのでありまして、将来わが国の国力に応じ自衛体制強化の際におきましては、さらに進んでこれらの点に関して十分な配慮を望みたいことが第一点であります。
しかして現在の内閣法におきましては、いわゆる総理大臣の権限があまりにも強くして、憲法調査会の論議の際にも、あるいは自衛隊法の改正の法律案の審議の際にも、これらの諸点が相当強く論議の対象になったことも皆さんの御承知の通りであります。その権力の強い総理大臣が議長となり、しかして各省大臣、特に関係のある大臣がこれに加わるということは、いわゆるその国力に応じた国防力の強化の点から当然でありまして、これをいかにわが国の国民の経済、国民の生活にマッチせしめるかということが、すなわち国防会議の主眼点、すなわち目的、目標でなければならぬと思うのであります。さような点から考えますというと、前段申し上げましたように、もっと広く民間の意見を聞くの体制が必要であるのでありますが、われわれは審議の過程においていわゆる防衛庁の試案五カ年計画を承わり、かつまた世界の経済情勢あるいは今日の外交情勢あるいはさらに世界の外交関係等をつぶさに検討を加えますというと、その全貌は日一日と変りつつあるのでありまして、われわれは自衛体制の強化のためには、この世界の大勢、特に世界の産業とわが国の国民生活との関連をいかに調整していくかということに対しては深く考慮を要するものと認めざるを得ないのであります。国防会議の設立されるに当りましては、これらの諸点に関して十分なる配慮を望みたいことが第二点であります。
さらに戦前のいわゆる陸海空軍の考え方が、ややもすると現在の国民の間にはいかに将来の自衛体制があるべきかということに対して多大の不安があることも、これは事実であります。従って十分国民の間に納得せしむるの措置が必要であるのであります。従って国防会議に論議される事項は、すみやかにそのつど十分に国民の納得するような公開をして、そうして国民を納得せしめた上でわが国の自衛の体制の強化をはかる必要があるのであります。従いまして従来のあるいは秘密主義あるいは軍の機密というような点に隠れて、そうして疑心暗鬼を生ぜしめるがごときことは厳に慎しまねばならぬと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)すなわちわれわれは今後政治優先のこの原則をどこまでも貫いて、内部の国防会議の論議されましたこと、決定されましたこと、これはすみやかに国民の前に公開し、しこうしてその国民の協力を得てわが国の自衛体制が今後スムーズに強化されることを望んでやまないのであります。
以上の希望の諸点を申し上げまして、私は本案に賛成をするゆえんであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/6
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007・堀眞琴
○堀眞琴君 私はただいま議題となっております国防会議の構成等に関する法律案に対しまして反対をいたすものであります。
その第一点は、本法律案は憲法違反の法律案ということであるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この法律案が防衛庁設置法の第四十二条に基いて提案されたことは提案理由の説明によって明らかであります。しかしながら防衛庁設置法、自衛隊法、いずれも憲法違反の立法であることは、今日の法律が立案せられた当時から、国会においてもまた国会外においても論議されたところでありまして、もはや今日、自衛隊法、防衛庁設置法が憲法違反であるということについては一致した見解が行われておると思います。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)政府もその点に関しましては疑義を持つものと想像されます。なぜなれば、吉田内閣当時において戦力を持たない軍隊という解釈で自衛隊法を立案いたしたのでありますが、鳩山内閣になりましてから、自衛のためには国力に相応した自衛体制を整備しなければならぬという工合に、憲法上拡張解釈をとって参ったのでありますが、しかし自衛隊の整備、あるいは防衛庁の設置、それらの諸問題は世間においても憲法上疑義があるので、従って鳩山内閣としては憲法改正を行い、いわば日陰の軍隊を日の当る立派な軍隊にしたいというのが鳩山首相のこれまでしばしば述べてこられたところであります。つまり鳩山内閣自身が自衛隊法なり、防衛庁設置法なりに対して憲法違反の疑義を持っておるということの証拠だと言わなければなりません。従って防衛庁設置法の第四十二条に基く本法案は、防衛庁設置法とともに憲法違反の立法であると言わなければならぬのであります。
なお、政府が今日まで自衛体制の整備の名前においてとって参りましたその経過をたどってみまするというと、最初に警察予備隊として七万五千の自衛力を設け、ついで十一万人、さらに今日の、初期の七万五千に約三倍する兵力を持つに至りましたが、それらの過程を通して一々憲法違反の事案を積み重ね、実際上には憲法改正をしたと同じ効果を持たしめようとすることが十分に看取されるのであります。その意味から申しまして、私はこの本法案は憲法違反の法案であるということを第一に指摘しなければならぬのであります。
第二には、国防会議の任務並びに性格に関連しての問題であります。国防会議の任務につきましては、防衛庁設置法の四十二条の第二項に規定してあります。諮問機関としてこれらの第二項にあげられた諸問題について、これを審議し、内閣にこれを提出するというほかに、さらに第三項には、国防会議は、国防に関する重要事項について必要に応じ、内閣総理大臣に対してその意見を述べることができる、こういう規定になっております。この国防会議——諮問機関としての国防会議、最終的な決定機関としての内閣との関係を見る場合に、私どもは幾つかの疑念が起ってくるのであります。
一つは、決定機関としての内閣に対し諮問機関としての国防会議の比重が小さい場合、その発言権が内閣の決定に重大な影響を与えるということの少い場合においては、おそらく国防会議としての本来の趣旨は、そこではきわめて弱いものとなることが想像されます。その場合においては、私は昨年の二十二国会において国防会議法案が流産したあとに、内閣に防衛関係閣僚懇談会が設けられて、必要のある諸問題についてこの懇談会が諮問に応じて懇談会をいたした事実があるのでありますが、今さらあらためて閣僚懇談会を法律的な基礎を持つ国防会議法に基く国防会議にこれをかえる理由はないと思います。そうでなくて、もし国防会議が最終的な決定機関としての内閣に対してその発言権が非常に大きな比重を持つという場合においては、また二つの疑問が起ってくるのであります。一つは、国防会議を構成する議員は、内閣法に定められたところの副総理、外務大臣、大蔵大臣、防衛庁長官、経済企画庁長官によって構成されております。この中で防衛庁長官を除いてはいずれも軍事的には必ずしも専門家ではありません。防衛庁長官はこれまた個人としては軍事専門家ではありません。しかし防衛庁長官にはアシスタントとしての軍事専門家がたくさんついております。従って防衛庁長官の発言がかなり強力にこの会議を左右するだろうと思います。のみならず、本法案の第六条によりますると、「統合幕僚会議議長その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができる。」という規定になっております。勢い国防会議において最も強い発言権を持つ者はそれらの軍事的な専門家、あるいはそれをアシスタントとする防衛庁長官の発言ではないかと想像されるのであります。そうなりますると、防衛庁長官が幾たびも述べていられる政治優先の原則というものがここで破壊される危険があると心配されるのであります。
私はここで明治憲法下のあの軍と政府との関係を思い起さざるを得ないのであります。なぜあのように軍が政治を指導するようになったか。本来の規定から申しまするならば、決して軍が政治に関与すべき制度ではなかったのであります。天皇下——天皇のもとに統帥権を持つ軍の立場というものは、むしろ政治から中立の立場をとる、政治も軍には関与しないという立場が本来的な立場であったことは、統帥権を確立した山県有朋のこれが制定された当時の考え方によって十分明らかであります。ところが実際軍と政府との関係をその後の過程について見まするというと、結局において軍が政府を指導する、政治に優先するという形をとって参った。制度の上ではそうなるべきではなかったのにもかかわらず、実際問題としては軍が政治を指導するに至った。つまり軍の専門家が政治の内部において、政府の内部において、たとえば軍部大臣等を通じてそれが大きな発言権を持っておったというところに起因すると思うのであります。国防会議の場合についても、やはり防衛庁長官なり、あるいは出席して発言することのできる統合幕僚会議議長、その他の関係者の発言が非常に大きな比重を占めるに至ることが心配されるわけであります。
それからもう一つの問題は、この国防会議が最終決定機関としての内閣に対して、その発言権が非常に強い場合において、しかも国防会議の任務として、防衛庁設置法の第四十二条にあげられているところの諸点から考えまして、おそらく国防会議の会議そのものがいわば内閣内におけるところのインナーキャビネットの性格を持つに至るのではないかということが心配されるのであります。インナーキャビネットの問題につきましては、学界においても相当問題の存するところであり、特に第一次大戦中にイギリスにおいてロイドジョージ内閣が、御承知のようなインナーキャビネットを戦時政策遂行のために作ったのでありますが、あの場合につきましては学者の間にも大して異論がないとは申しますが、しかしあの場合についてもかなりの異論があり、特に一九三一年のナショナル・ガバーメントの成立に際しまして、マクドナルド内閣のもとにインナーキャビネットの意見が強く盛り上った。ところがこれに対しまして、学界も当時の労働党も——労働党は二つに割れておりましたが、労働党も反対をいたしました。ついにインナーキャビネットは実際上には作られておらなかったのであります。
なぜインナーキャビネットが行政組織の上から問題になるか。閣内に特別な閣僚の会議を設けることが、内閣自体の政治的な意義を失わしめるというところにあったということは明らかであります。従って国防会議の構成、その任務等に関連しまして、国防会議がもしもその発言権がきわめて小さいものであるならば、何も国防会議を設ける必要はない。閣僚懇談会で十分に間に合う。もしその発言権が非常に大きいものであるとするならば、おそらくは政治優先の原則というものを果して貫くことができるかどうかということが問題であるばかりでなく、さらにインナーキャビネットとしての性格を持つに至るであろうということが、第二の私の反対の論点であります。
第三の論点は、防衛計画に関してであります。先ほど申しましたように警察予備隊以来、現在の自衛隊に至るまでの過程において、すでに三倍弱に増強されております。さらにこれが三十五年度の末に至りますと四倍弱に増強されるのであります。これらの計画は、一つはアメリカとの関係において、もう一つは日本の財政経済との関連において、私は非常に大きな問題点があるのではないかと思います。
まず第一のアメリカとの関連であります。警察予備隊そのものがマッカーサーの指示に基いて朝鮮戦争を契機に作られたことは明白な事実であり、その後の今日までの増強の計画、また今後の増強の計画も、これまたすべてアメリカの要請——アメリカの極東防衛の一環として日本の防衛計画を樹立するという点に、現在の防衛計画の増強の根拠があると言わなければなりません。のみならず政府当局においては、たとえば仮想敵国等については何ら予定しているものではないということを述べているのでありますが、しかしアメリカの防衛計画は明白に仮想敵国というものを予定しております。最近のアメリカの、たとえばニューヨーク・タイムス等を見ますと、毎号ソビエトをめぐっての米英のそれぞれの国の空軍基地やあるいは海軍基地等が、ほとんど毎号地図をもってこれを説明しながら載せております。ソビエトの空軍の計画はこうである、あるいは地上軍の軍隊は何個師団である、これに対抗するアメリカ側としては、たとえば空軍は何機あるいは地上軍はどのぐらい、イギリスの場合にはどのぐらい、西ヨーロッパ全体を含めてその軍隊は何個師団という工合に、毎号々々ニューヨーク・タイムスなどはこれを報道しております。すなわちアメリカの防衛計画のゲーゲンスタンドは、あくまでもソビエトということに向けられていることは、これはもはや否定することはできないのであります。もし日本の防衛計画がアメリカの防衛計画の一環として組み入れられたものとするならば、やはり同様にそのゲーゲンスタンドはソビエトにある、あるいは共産主義陣営にある、こう申しても差しつかえないと思います。
それからもう一つの、財政経済上の負担の問題であります。国民経済の二%が日本の自衛力の体制を整備する財政的根拠であるというのが政府の説明であります。なるほど国民所得の二%という数は、そのパーセンテージからいうならば非常に低いかに思われるのであります。しかし日本が二%でアメリカが一〇何%イギリスが何%であるとかいうような機械的な比較を行うことは非常に危険であります。なぜならば、日本の財政経済はまだきわめて底が浅い。戦争が済んで十一年になりますが、しかし先ほど松浦委員の申しますように住宅も社会保障制度も何らまだ完備しておらぬ日本の実情であります。アメリカの場合、おそらく歳出と軍事費との比較を見まするならば、六〇%前後を占めているでありましょうから、その割合は非常に大きいと言わなければなりませんが、しかしアメリカと日本との両者の財政経済を同じ水準の上においてこれを比較することは間違いであります。日本のまだ底の浅い財政経済の上から、よしんば国力の二%をその軍備のための負担とすると仮定いたしましても、そのことは日本の全般的な財政経済の上に大きな影響を与える。そのために社会保障制度も削減せざるを得ないという結果にならざるを得ないのであります。従ってこの点からも、この防衛計画に対しましては私どもは反対せざるを得ない。
なお、この問題に関連しまして、アメリカの撤兵の問題であります。三十五年度末には地上軍が十八万、その他海上、空軍、これに見合うだけの三軍均衡の状態が達成される、これが現在の防衛計画の内容であります。そのときにはアメリカの日本におけるところの軍隊が撤退するであろう、その可能性が出てくるのだというのが政府の説明であります。おそらくアメリカとしては地上軍をできるだけ早い機会に日本から撤退させようと考えていることは、すでに一昨年のアイゼンハワーの年頭教書以来明確になっております。しかし空軍、海軍等については、これを撤退しようという意思を持っておらぬこともまた明らかであります。さらにまた地上軍の撤退に見合って、それぞれの地域において同数の、ないしはそれに匹敵すべきところの軍事力、特に地上軍を設けようというのがアメリカの考え方であります。それだからこそ西ドイツ、また日本に対して、それぞれの防衛計画に基いての軍隊の整備を強要してきているものと言わなければならぬのであります。
なお私はここで何度も繰り返すようでありますが、オーウェン・ラティモアが日本に対するアメリカの国防当局の見解としてとっておるところのあの考え方をもう一度繰り返したいと思います。日本は極東におけるところの沈まざる航空母艦である。日本は極東において最も進んだ軍需工業地帯である。日本は九千万に近い人口を持つ、従ってまた有力な軍隊を提供し得る国である。この三つの観点がアメリカのペンタゴンの対日政策の根幹にあるのだということを指摘いたしております。このオーウェン・ラティモアの対日政策に対するところの指摘は、私はきわめて適切にアメリカの日本に対する軍事上の観点を説明したものと申しても差しつかえないと思うのであります。
それから第四番目に、私は最近の世界情勢から見まして、日本の自衛体制を整備するということは、少くとも逆行的な方向であるということを指摘しなければなりません。一昨々年の朝鮮の休戦、それに一昨年のインドシナの休戦、この二つの休戦以来、力の政策が国際紛争を解決する手段としてもはや破綻に瀕しつつあるということは、世界の識者の指摘するところであります。特にジュネーヴの会談、ジュネーヴにおいて四巨頭会談が持たれましてから、いわゆるジュネーヴ精神という——話し合いによって問題を解決する、平和の政策を今後の国際関係の基調にしよう、平和共存の外交方針を打ち立てよう、いわゆるジュネーヴ精神が樹立されましてから、世界の情勢は一歩々々平和の方向に動いております。もちろんそうかといって局地的な紛争が全部なくなるとは想像されません。現に中近東において、あるいはまた北アフリカにおいて各種の問題が起っていることも事実であります。しかしながらそれらの諸問題も、たとえば国連の事務総長が、紛争当事国間に交渉を続けるなどの方法によりまして、熱い戦争にこれが発展することを食いとめていることもまた事案だと申さなければなりません。鳩山首相が、軍備こそが平和の保障である、こういう発言をされているのでありますが、武装平和こそ危険なものは私はないと思います。今日の世界情勢に逆行するもはなはだしいと申しても差しつかえないと思うのであります。なおこの平和への傾向に関連いたしまして、軍縮がこれまた世界の大きな関心事となり、それへの前進が看取されるのであります。もちろんまだ軍縮は達成されておりません。しかしジュネーヴ会談以後、昨年の八月、国連において軍縮小委員会が開かれ、それから最近に至るまで幾たびか軍縮の小委員会が持たれ、そうしてその軍縮の小委員会においては、英仏の案であるとかあるいはアメリカの提案であるとか、ソビエトの提案等が行われました。ともかく軍縮に向って四大国はきわめて熱意のある態度を持っております。その上ソビエトにおきましては、昨年は六十数万、本年になりましてから、つい最近百二十万の軍縮を行う旨を声明いたしております。これらの事情はまたひいてはNATOの軍事政策に非常に影響を与えていることは、これまた新聞の報道いたしている通りであります。NATOはもはや軍事的な西ヨーロッパの結合としてではなく、これを経済的な結合として再編成をしなければならぬというのが、NATO理事会の一部に明白に最近は出ている傾向だと申しても差しつかえないと思うのであります。
これらの事情を考えるというと、私は防衛計画を主として、それに伴う各種の問題を審議すべきところのこの国防会議を構成しようということは、きわめて世界の情勢に逆行するものだと申しても差しつかえないと思うのであります。
以上の理由によりまして、私はこの法案に反対をいたすものであります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/7
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008・井上清一
○井上清一君 私はここに議題となっております国防会議の構成等に関する法律案につきまして、自由民主党を代表いたしまして、きわめて簡単に賛成の意を表明いたしたいと存じます。
御承知のように、第十九国会におきまして成立を見ました防衛庁設置法第四十三条におきまして、国防会議のことを規定し、国防会議の構成その他必要な事項は別に法律で定むる旨を規定いたしているのであります。わが国国防の基本方針、防衛計画の大綱、防衛計画に関連いたしまする産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否等につきまして、内閣総理大臣は国防会議に諮問すべきものとし、また国防会議は、国防に関しまする重要事項につきまして、内閣総理大臣に対し意見を述べることができるものといたしているのであります。わが国をめぐる内外の諸情勢にかんがみ、自衛力の増強をはかり、防衛体制を確立いたしまするがために、本法案の成立はまさに喫緊の要務であると存ぜられるのでございます。
きわめて簡単に理由を述べまして、賛成といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/8
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009・青木一男
○委員長(青木一男君) 他に御発言もなければ、討論は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/9
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010・青木一男
○委員長(青木一男君) 御異議ないと認めます。これより採決に入ります。
国防会議の構成等に関する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/10
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011・青木一男
○委員長(青木一男君) 挙手多数。よって本案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。
なお、本会議における口頭報告の内容、議長に提出すべき報告書の作成、その他諸般の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/11
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012・青木一男
○委員長(青木一男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。
それから報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
多数意見者署名
野本 品吉 宮田 重文
小幡 治和 木島 虎藏
井上 清一 西郷吉之助
佐藤清一郎 廣瀬 久忠
豊田 雅孝 島村 軍次
木村篤太郎
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/12
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013・青木一男
○委員長(青木一男君) 次に委員変更について御通知いたします。
本日、千葉信君が辞任されまして、その補欠に村尾重雄君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/13
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014・青木一男
○委員長(青木一男君) 通商産業省設置法の一部を改正する法律案を議題として質疑を行います。
別に御質疑もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/14
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015・青木一男
○委員長(青木一男君) 御異議ないと認めます。
これより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言がなければ、討論はないものと認めて御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/15
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016・青木一男
○委員長(青木一男君) 御異議ないと認めまして、これより採決に入ります。
通商産業省設置法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/16
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017・青木一男
○委員長(青木一男君) 総員挙手、全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。
本会議における口頭報告の内容、議長に提出すべき報告書の作成、その他諸般の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/17
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018・青木一男
○委員長(青木一男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。
報告書には多数意見者の署名を付することになっておりますから、本案を可とされた方は順次御署名を願います。
多数意見者署名
豊田 雅孝 木村篤太郎
廣瀬 久忠 小幡 治和
村尾 重雄 田畑 金光
菊川 孝夫 江田 三郎
堀 眞琴 佐藤清一郎
島村 軍次 西郷吉之助
木島 虎藏 井上 清一
野本 品吉 宮田 重文
吉田 法晴 松浦 清一
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/18
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019・青木一男
○委員長(青木一男君) 次にお諮りいたします。
五月二十五日、農林水産委員会から、農林省設置法の一部を改正する法律案について、連合審査会の開会の申し入れがありました。これを受諾することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/19
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020・青木一男
○委員長(青木一男君) 御異議ないと認めます。連合審査会の日時につきましては、明日午前十時ということで農林水産委員長に協議いたす考えでございます。
本日は、これにて散会いたします。
午後零時十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102414889X05619560530/20
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