1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十一年十二月十二日(水曜日)
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議事日程 第十号
昭和三十一年十二月十二日
午後一時開議
第一 結核予防審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
第二 売春対策審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
第三 旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律案(第二十四回国会、大平正芳君外十一名提出)
第四 一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第二十四回国会、赤城宗徳君外三名提出)
第五 関税及び貿易に関する一般協定の譲許の追加に関する第六議定書の受諾について承認を求めるの件(参議院送付)
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●本日の会議に付した案件
議員伊藤好道君逝去につき院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞は議長に一任するの動議(小林かなえ君提出)
日程第一 結核予防審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
日程第二 売春対策審議会委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件
アメリカ合衆国ニュー・ヨークにおいて開催の国際連合第十一回総会に出席するための日本政府代表及び同日本政府代表顧問任命につき外務公務員法第八条第三項の規定により議決を求めるの件
日程第三 旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律案(第二十四回国会、大平正芳君外十一名提出)
日程第四 一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第二十四回国会、赤城宗徳君外三名提出)
一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 関税及び貿易に関する一般協定の譲許の追加に関する第六議定書の受諾について承認を求めるの件(参議院送付)
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
日中貿易促進に関する決議案(岸信介君外二名提出)
原爆障害者の治療に関する決議案(岸信介君外二名提出)
午後五時十九分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
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002・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御報告いたすことがあります。議員伊藤好道君は去る十二月十日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
この際、弔意を表するため、小林かなえ君から発言を求められております。これを許します。小林かなえ君。
〔小林かなえ君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/2
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003・小林錡
○小林かなえ君 ただいま議長から御報告になりました故衆議院議員伊藤好道君に対し院議をもって弔詞を贈呈し、その弔詞はこれを議長に一任するの動議を提出いたします。(拍手)
私は、ここに、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼の辞を申し述べたいと存じます。
伊藤君は、去る十日早朝、病魔のため、卒然として逝去いたされました。まことに驚愕、悲痛きわまりないものがございます。
伊藤君は、明治三十四年十二月愛知県挙母市に生まれ、長じて第一高等学校を経て、大正十一年東京大学法学部に進まれました。大学においては、当時の進歩的学生の集まりであった東大新人会に参加せられ、その有力なるメンバーとして、純真なる青年の意気と崇高なる理想とを抱いて大いに活躍されたのでございますが、これこそ君の全生涯を貫く社会主義の研究と実行との源泉となったものと思うのでございます。(拍手)
大正十四年優秀なる成績をもって法学部卒業後、日本経済新聞の前身であります中外商業新報社に入社されましたが、その研究心の旺盛なる、さらに進んで、勤務のかたわら、東大経済学部にいわゆる学士入学をされまして、昭和三年同学部をも御卒業になったのであります。
中外商業時代は、もっぱら経済部にあって、国内経済の諸問題の研究や、対外的な通商関係の調査等に従事せられたのでありまするが、その性格上、いわゆるジャーナリスト的ではなく、学究的にその知識と研さんとを積み重ね、着々功績をあげられたのでございます。同社において「中外財界」編集主任、論説委員、さらに経済部次長等に累進せられ、中堅幹部として重きをなしておられたのでありますが、この間における深い研究と豊かな経験とが後年衆議院議員としての君のはなばなしい御活躍の基盤を作ったものであることは申すまでもございません。
昭和十二年、不幸にしていわゆる人民戦線事件に連座されましたために職を退かれ、つぶさに辛酸をなめられたのでございますが、事件終了後、すなわち昭和十四年、満鉄調査部の嘱託となられ、自来数年間、静かに経済問題の調査研究に天与の才能をもって没頭せられたのでございます。
終戦後は、躍如として社会の第一線に立たれ、雑誌「デモクラシー」の編集長に就任され、社団法人社会主義政治経済研究所の理事となられ、また、経済復興会議中央常任委員、生産復興運動本部書記長として社会主義の立場より、わが国経済の復興対策の樹立とその推進に尽力されたのであります。君が社会党に入党されたのは実に昭和二十年のことでありましたが、たちまち衆望を集められ、昭和二十四年には中央執行委員となり、次いで政策審議会副会長に就任されるに至ったのであります。
君が本院に議席を有するに至られたのは、昭和二十七年の第二十五回衆議院議員総選挙に、郷里の愛知県第四区より出馬してみごと当選の栄を得られたときでありまして、その後引き続き現在に至るまで、当選三回、在職実に四年三カ月に及んでおるのであります。
君が本院議員に当選するや、たちまちその鋭鋒を現わし、まことに目ざましい活躍を示されたことは、私がここにかれこれ申し上げるまでもなく、各位のすでに十分御承知のところでございます。すなわち、君は社会党の政策審議会長に選ばれ、政策立案の最高責任者として国民経済の向上発展に終始一貫精励努力を重ねられたものであります。君の立案施策は、深い洞察と透徹した理論とによる鋭い追求より生まれ来たったものでありまして、これは、君がたびたび本議場及び予算委員会等において行われた質疑討論を通じて、あまねく大衆の熟知するところでございます。(拍手)かくて、君はその全力を傾けて党の方針と政策とを確立すべく努められたのでありまして、国政審議のために、また社会党のために尽された君の功績は、まことに顕著なるものがあったのでございます。(拍手)
昨秋における左右両社会党統一の際には、君は、統一大会準備委員会の綱領政策小委員長として、そのきわめて困難なる事業の推進に当られ、ついに二大政党対立の時代を実現せしめたのでございまして、このかくかくたる功績は後世長く政治史上に伝わるものと信じております。(拍手)
去る昭和二十八年には、スエーデンの首都ストックホルムにおける社会主義インターナショナル第二回大会に出席し、日本社会党のために万丈の気炎を吐き、帰途西独、英仏その他欧州各国を訪問してつぶさに政治経済の情勢を視察し、かつ国際親善に寄与されたことは甚大なるものがございます。
社会党統一後も引き続き政策審議会長の任にあられ、来春の党大会に備えて、経済五カ年計画要綱案の立案に薄身の努力を傾注されていたのであります。しかるに、不幸、突如として病を得られ、君が気魄による闘病も、親近の身を削るがごとき看護も、ついにその効なく、今や幽明所を異にし、ほほえめるがごとき君の温容は再び相見ることができません。まことに痛惜のきわみでございます。(拍手)
君は、資性英明、理論に長じ、計数に詳しく、鋭い理解力と判断力とを身につけておられました。また、君は、事に臨み、沈思熟慮、その真相を把握し、分析し、深くこれを掘り下げて、もって事理を明らかにせずんばやまざるの概がありました。しかも、人に接する態度やまことに穏健、説くところや実に明快であったのでございます。かくのごとく、君は、きわめてすぐれた素質、天分に恵まれていたばかりでなく、豊富な体験と該博なる知識とを有し、しかも、高潔なる人格と高邁なる識見とをあわせておられたのでございます。さればこそ、政治家としての君は、その政策面において、また人物面において、社会党の支柱として絶大なる信望を一身に集め、将来に嘱望せられていたことは当然といわなければなりません。(拍手)
第二十五臨時国会に臨み、真に平素の鏤骨砕身のため疲労の極、去月ついに病床に倒れるに至られたので、初めは病名すらよくわからず、疲労のためとのみ診断せられておったのでございますが、君が長きにわたるところの心身の無理使いは、今やいかんともいたしがたいところまで浸潤していたらしく、一日も早く登院をしたいとあせっておられた君の念願もついにこれをかなえてあげる由なく、この国会中ついに溘焉としてゆかれたのでございまして、これこそ、この議政壇上に倒れたと何ら異なるところなく、(拍手)政治家としての真骨頂を発揮せられたものと信ずるのでございます。(拍手)
今や、わが国民主政治もようやく軌道に乗り、二大政党が政策をもって相競うべき時代に至りました。このとき、年歯いまだ知命を越ゆることわずか五才、前途洋々、今後の活躍が大いに嘱目されていた君が、練達にして有為の才能を抱きながら突如として去られたことは、社会党員各位の哀惜悲痛はさぞかしとお察しいたしますとともに、二大政党対立上互いに切瑳琢磨して政治の上に貢献しなければならぬわれらの悲嘆もまた言葉に尽されないものがございます。(拍手)
ここに、いささか君の生前の功績を追慕いたしまして、静かにその風格をしのび、つつしんで追悼の言葉といたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいま小林君から提出されました動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/4
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005・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、動議は可決せられました。(拍手)
ここに議長の手元において起草いたしました文案があります。これを朗読いたします。
衆議院ハ議員伊藤好道君ノ長逝ヲ哀悼シ恭シク弔詞ヲ呈ス
この弔詞の贈呈方は議長において取り計らいます。
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日程第一 結核予防審議会委員任
命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/5
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第一につきお諮りいたします。内閣から、結核予防審議会委員に参議院議員勝俣稔君を任命するため、国会法第三十九条ただし書きの規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/6
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007・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
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日程第二 売春対策審議会委員任
命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/7
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第二につきお諮りいたします。内閣から、売春対策審議会委員に参議院議員一松定吉君及び同藤原道子君を任命するため、国会法第三十九条ただし書きの規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/8
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009・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) なお、内閣から、アメリカ合衆国ニューヨークにおいて開催の国際連合第十一回総会に出席するための日本政府代表に参議院議員佐藤尚武君を、また、同日本政府代表顧問に本院議員植原悦二郎君、同北村徳太郎君、同松岡駒吉君、参議院議員岡田宗司君及び同黒川武雄君をそれぞれ任命するため、外務公務員法第八条第三項の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
「「異議なし」と呼ぶ者あり」発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/10
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011・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。
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日程第三 旧軍人等の遺族に対す
る恩給等の特例に関する法律案(第二十四回国会、大平正芳君外十一名提出)
日程第四 一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(第二十四回国会、赤城宗徳君外三名提出)
一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/11
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012・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、日程第三及び第四とともに、内閣提出、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を追加して、三案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/12
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013・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/13
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014・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
日程第三、旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律案、日程第四、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。内閣委員長山本粂吉君。
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〔山本粂吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/14
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015・山本粂吉
○山本粂吉君 ただいま議題となりました三法案につきまして、内閣委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、旧軍人等の遺族に対する恩給等の特例に関する法律案について申し上げます。
本案は自由民主党の大平正芳君外十一名の提出にかかるものでありましてその提案趣旨について御説明申し上げますと、太平洋戦争の様相ないしはその際における召集基準の変更などにかんがみまして、旧軍人または旧準軍人で、内地を初め満州、朝鮮、台湾、樺太など戦地に指定されなかった地域において、その職務に関連して死亡した場合、これを公務によって死亡した場合に準じて取り扱い、これら旧軍人等の遺族に対しましては特別な扶助料または遺族年金を支給することとし、もって旧軍人等の遺族を援護しようとするのがその目的であります。
〔議長退席、副議長着席〕
次に、法案の内容のおもなる点について申し上げますと、第一点は、旧軍人等の遺族で、戦傷病者戦没者遺族等残護法第三十四条第二項の規定によりまして、同条第一項の規定による弔慰金を受けた者のうち、当該旧軍人等で、営内に居住すべき者が、昭和十六年十二月八日から昭和二十年九月一日までの間における在職期間中、本邦及び政令で定める地域で、戦地以外の区域においてその職務に関連して負傷しまたは疾病にかかり、その在職期間内または在職期間経過後一年以内に、厚土大臣の指定する疾病にあっては三年以内に、その傷病が原因となって死亡したものである場合におきましては、これを公務による死亡に準じて取り扱うこととし、これに該当する旧軍人等の遺族に対しましては、通常の遺族年金額の六割に相当する特別な遺族年金を支給することにいたしております。ただし、当該旧軍人等の負傷または疾病が昭和十九年一月一日前に生じた者につきましては、その負傷または疾病が特に職務に関連することが顕著であると認められた場合に限ることといたしております。第二点は、以上のように、旧軍人等の死亡が公務死亡に準じて取り扱われる場合に該当するときは、これら旧軍人等の遺族はこれを恩給法上の遺族と見なし、その死亡原因については恩給局長の審査を必要とすることなく、これに対しましては普通扶助料年額に俸給年額に応じて定めた倍率を乗じて得た金額に相当する特別の扶助料を支給することといたしております。この扶助料は、現行恩給法の平病死による公務扶助料と比較して申し上げますと、下士官、兵におきましては同額であり、準士官以上の将校におきましては逓減いたしておりまして、上級者になるほど薄くなっておるのであります。この特別な扶助料または遺族年金に明年一月分からこれを支給することとし、受給者がこれを受け取るのは明年四月以降となるのでありますが、該当する人員は約三万六千人と推定され、その所要経費は平年度約十一億円と見込まれております。
本案は、去る第二十四回国会において本委員会に付託され、提案者より提案理由の説明を聞き、提案者及び政府当局に質疑を重ねた後、継続審査となり、今国会におきましては去る十二日本委員会に再付託となったものであります。かような次第でありますので、今回は、提案理由の説明を省略いたしまして提案者並びに政府当局に対し質疑を行なったのでありますが、これらの詳細につきましては何とぞ会議録によって御承知を願います。
十二月五日質疑を終了し、本案に対する内閣の意見を求めましたところ、反対意見のない旨が述べられたのであります。かくて、討論省略、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
なお、本案に対し、委員全員より
旧軍人等の遺族に対する恩給の特例に関する法律案に対する附帯決議
過般の太平洋戦争は、近代的科学戦であり、国を挙げての総力戦体制のもとに、国内も戦場化するに至った実情を考慮し、旧軍人等と同様の立場でその犠牲となった者の遺族に対しても、政府は、本法律案の趣旨にかんがみ、速やかに、適切なる措置を講ずべきである。
との附帯決議案が提出され、これについて受田委員より提案理由の説明があった後、採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決いたした次第であります。
次に、赤城宗徳君外三名提出の、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案につきまして御報告申し上げます。
現在、教育職員の給与制度におきましては、俸給決定の諸要素のうちで、特に経験年数の要素が重要視され、学歴等、他の要素は大きな比重をなしていないのであります。一方、教育職員免許制度においては、学歴の要素は高く評価されておるのでありまして、学歴の相違がそのまま免許状の相違に結びつけられておるのであります。それにもかかわらず、この学歴の要素が給与制度に明確に反映せしめられておらぬため、同一年令の者を比較した場合、高学歴者が低学歴者に比べて必ずしも高い給与を受けてはおらぬという実情にありますので、これら高学歴者の俸給額の調整をはかることを目的として、本改正案が提出されたのであります。
次に、改正点の要旨を申し上げますと、第一点は、高等学校等教育職員紋別俸給表または中学校、小学校等教育職員級別俸給表の適用を受ける教育職員中、旧制大学もしくは新制大学を卒業した者、旧中学校、高等女学校教員免許状もしくは旧高等学校高等科教員免許状を有する者、または人事院がこれらの者と同等以上の資格を有すると認める者につきましては、予算の範囲内で、人事院の定めるところにより、その定める日におきまして、二号俸をこえない範囲内で俸給月額を調整することができるものといたしたことであります。第二点は、人事院は、教育職員の初任給基準につきましても、右の趣旨を考慮して適切な措置を講じなければならないものといたしたことであります。
本法案は、去る二十四国会に提出され、自来継続審議中のものでありますので、本委員会におきましては、提案理由の説明を省略し、十二月五日直ちに質疑に入ったのでありますが、その詳細は委員会会議録によって御承知願うことといたします。
質疑を終了し、国会法第五十七条の三の規定により内閣側の意見を聴取いたしましたところ、田中政府委員より、本案実施には十数億の財源を必要とし、また教育職員の初任給は他の一般職員に比べ高くなっておるので、財政上、制度上適当でない旨の答弁がありました。
続いて、討論省略、採決の結果、本法案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決したのであります。
なお、本案議決後、委員全員を代表いたしまして受田委員より次の附帯決議案の提出があり、これまた全会一致をもって可決されたのであります。
一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議
本法の実施に当っては、政府は、昭和二十九年一月一日において中学校、小学校等教育職員級別俸給表の四級から九級までの職務の級に属することとなった教育職員並びに大学等の教育職員のうちで学歴、資格の高いものについても、適切なる措置を講ずること。
右決議する。
以上であります。
次に、一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御報告いたします。
まず、提案の理由及びその内容について申し上げます。国家公務員の給与に関しましては、御承知のように、去る七月十六日、人事院より国会及び内閣に対して報告及び勧告が行われましたが、政府は、この人事院勧告を尊重する方針のもとに鋭意検討いたしました結果、その内容については今日なお考究を必要とするものがあり、かつ多額の経費を必要とするために、目下のところ早急に結論を得ることが困難な状況にあります。しかし、人事院勧告の中の「毎年三月に俸給、扶養手当及び勤務地手当の月額の合計額の〇・一五ヶ月分に相当する特別手当を支給するものとする。」との点につきましては、勧告の趣旨にかんがみ、すみやかにその趣旨を達成することが妥当であるとの結論に達しました。けれども、勧告の通りに特別手当という新しい手当の制度を設けますことは給与体系をさらに複雑にするおそれがありますので、すでにある期末手当を増額することによりその趣旨を実現することがより適当であると考えましてこの際、国家公務員に対一二月十五日に支給する期末手当の額を〇・一五カ月分増額することにいたした次第であります。なお、本改正法律案により増額されることとなる部分の本年十二月における支給につきましては、各庁の長が既定人件費の節約等によりまかない得る範囲内で定める割合により支給することといたしております。以上が本法律案の提案理由並びに内容の概略であります。
本法律案は、十二月十一日国会に提出、即日本委員会に付託となり、直ちに政府より提案理由の説明を聴取するとともに、審査に入った次第であります。
ここに質疑のおもなる点について申し上げますと、まず第一に、赤字財政に悩む地方公務員に対する措置についてはどうかとの質問につきましては、政府から、地方においても、国同様、既定経費の節約等によってまかなうものといたしますが、特に資金繰り上必要やむを得ない地方団体に対しては短期資金の融通を行う等の措置によって、地方公務員に対しても、国家公務員と同様、期末手当の増額が可能となるよう万全の措置をとる考えであるとの答弁がありました。次に、本法律案とも関連して、全国には多数の日雇い労務者がいるが、これらの人々に対して政府として特別の考慮を払う用意があるかとの質問に対し、政府から、昨年は就労日数をふやして六日としましたが、本年も、諸般の事情を考慮した上、さらに一日分就労日数をふやすことに決定した次第であるとの答弁がありました。その質疑の詳細につきましては速記録によって御了承願いたいと存じます。
かくて、質疑の終了とともに、討論を省略し採決に入りましたところ、全会一致をもって本案は原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/15
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016・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 三案を一括して採決いたします。三案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/16
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017・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって三案は委員長報告の通り可決いたしました。
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日程第五 関税及び貿易に関する一般協定の譲許の追加に関する第六議定書の受諾について承認を求めるの件(参議院送付)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/17
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018・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 日程第五、関税及び貿易に関する一般協定の譲許の追加に関する第六議定書の受諾について承認を求めるの件を議題といたします。委員長の報告を求めます。外務委員長前尾繁三郎君。
〔報告書は会議録追録に掲載〕
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[前尾繁三郎君登壇]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/18
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019・前尾繁三郎
○前尾繁三郎君 ただいま議題となりました関税及び貿易に関する一般協定の譲許の追加に関する第六議定書の受諾について承認を求めるの件につきまして外務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この議定書は、米国の互恵通商協定法の改正を契機としてジュネーヴにおいて開催されましたガット締約国の関税交渉会議で作成されたものでありまして二十二カ国がこれに参加いたしております。
この議定書の目的とするところは、締約国がそれぞれの関税障壁を除去または緩和し、もって国際通商を一そう促進することにありますが、わが国は米国及びスエーデンと交渉いたしまして、米国から七十大税目、スエーデンから二税目について関税譲許を獲得し、これに対応してわが国は、米国に対して六十一税目、スエーデンに対して八税目について関税譲許をいたしております。わが国は、他の二十一の参加国とともに、本年五月二十三日にこの議定書に署名をいたした次第であります。
この議定書は、わが国がその譲許を適用する旨の通告を行い、これを受諾することにより、わが国について効力を生ずることになっております。しかるに、わが国の主要交渉相手国であり、かつわが国の輸出貿易上最も大きな比重を占める米国は、すでに本年六月末にこの適用通告を行い、新たな関税譲許をすべての締約国に対して適用しております。また、この議定書の規定によりますれば、譲許の適用通告を行なった国は、これを行わない国と交渉した譲許の適用を停止または撤回することができることになっておりますので、わが国の適用通告がおくれる場合には、米国はわが国に与えた譲許の適用を停止または撤回するおそれもありますので、政府はこの議定書の国会承認を急いでおるものであります。
この議定書により、米国がわが国に対して与えました譲許は、魚肝油、絹紡糸、絹ハンカチ、玩具、ライタ―を初め、全部で七十六税目に及んでおり、わが国の対米貿易が少からず伸張いたしますことは予想にかたくないのであります。なお、このほか、来園は日本域外の二十に上るガット諸締約国と交渉しており、その結果、米国がこれらの諸国に関税譲許を与えましたことにより、わが国の輸出品が今後受ける間接利益は相当の額に上ることと考えられます。
本件は、十一月十九日予備審査のため本委員会に付託されましたが、参議院において承認の後、二十八日本院に送付され、同日本委員会に付託されました。本委員会においては、政府の提案理由の説明を聞き、質疑を行いましたが、その詳細は会議録により御了承を願います。
かくて、質疑終了の後、十二月十一日、討論は省略し直ちに採決の結果、本件は全会一致をもってこれを承認すべきものと議決いたした次第であります。
以上、報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/19
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020・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本件は委員長報告の通り承認するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/20
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021・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告の通り承認するに決しました。
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国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/21
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022・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、議院運営委員長提出、国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/22
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023・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/23
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024・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。議院運営委員長椎熊三郎君。
〔椎熊三郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/24
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025・椎熊三郎
○椎熊三郎君 ただいま議題となりました国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律の一部を改正する法律案について、提案の理由を簡単に御説明申し上げます。
本案は、今般一般職の職員に対し本年末に支給する期末手当を増額支給することに対応いたしまして、議長、副議長及び議員並びにこれらの秘書に対しましても、本月十五日に支給すべき期末手当を一般職の職員と同じ割合で増額支給する必要があると認めまして本案を提出した次第であります。
御賛成あらんことをお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/25
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026・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/26
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027・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
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日中貿易促進に関する決議案(岸信介君外二名提出)
(委員会審査省略要求案件)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/27
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028・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、岸信介君外二名提出、日中貿易促進に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/28
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029・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/29
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030・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。
日中貿易促進に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。加藤高藏君。
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日中貿易促進に関する決議案
日中貿易促進に関する決議
本院は、日本並びに中国の双方で開催した商品見本市の成果にかんがみ、政府は、ココム及びチンコムの緩和と民間通商代表部設置並びに直接決済による支払方式を確立するために必要なる措置を早急に採り、やがて政府間貿易協定を締結する等日中貿易の一層の促進を図るべきことを要望する。右決議する。
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〔加藤高藏君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/30
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031・加藤高藏
○加藤高藏君 私は、ここに、自由民主党並びに日本社会党共同提案にかかわりまする日中貿易促進に関する決議案の趣旨を御説明申し上げ、議員各位の御賛同をお願いいたしますとともに、政府においてこれが趣旨を了とせられ、万遺漏なく適切なる措置を講ぜられんことを要望するものであります。(拍手)
まず、決議案を朗読いたします。
日中貿易促進に関する決議案
本院は、日本並びに中国の双方で開催した商品見本市の成果にかんがみ、政府は、ココム及びチンコムの緩和と民間通商代表部設置並びに直接決済による支払方式を確立するために必要なる措置を早急に採り、やがて政府間貿易協定を締結する等日中貿易の一層の促進を図るべきことを要望する。
右決議する。
現下の国際情勢の推移と、日本並びに中華人民共和国において相互に開催された商品見本市の成果によって、両国間の貿易関係は著しい拡大の転機を迎えんとしている現状にかんがみ、政府は、この際ココム並びにチンコムの制限を一そう緩和し、日中両国間に、民間通商代表部の相互設置と直接決済による支払い方式を確立するとともに、科学技術の交流を促進し、やがては政府間貿易協定を結ぶなど、日中貿易の一そうの促進と発展のために最善の方途を講ずべきである。
以上が決議案並びに提案理由であります。
今さら申すまでもなく、わが国の経済は、その貿易に対する依存度が高いため、世界の経済的動向にきわめて敏感であることは当然であります。このため、わが日本の経済がその自立と繁栄、安定と発展とを求めるためには、当然長期かつ永続性のある新市場を確保することが必要であります。その意味におきまして、地理的にも、また歴史的にも、わが国にとって密接な関係のある中華人民共和国との貿易が急速にその比重を高めて参りましたのは、当然のことといわねばなりません。御承知のごとく、私どもは、すでに昭和二十八年七月と本年三月の二回にわたり、衆議院本会議におきまして、日中貿易促進に関する決議案をそれぞれ満場一致可決いたしました。本日ここに上程いたしております日中貿易促進に関する決議案は実に三度目の上程でありますが、これはまさしく日本国民がひとしく熱望し発展せしめて参りました日中貿易の歴史の三つの段階にそれぞれ照応するものであります。
第一回目の決議は、国民的要望にこたえて、それまで終息しておりました日中貿易を再び復活させた、歴史的な決議でありました。また、本年三月に行われました第二回目の決議は、北京、上海日本見本市の開催を前にいたしまして、特にココムの輸出制限を緩和することを要請するものでありまして、自由主義諸国に先がけて挙行される中国での見本市の成否をかけた、まことに重大なる決議でありました。幸い、政府は、これら国民の声を代表する決議を尊重されまして、北京、上海日本商品見本市への適宜の処置を講ぜられたのであります。
この見本市は、すでに御承知のごとく、本年十月北京において開催され、今また上海において開催中でありますが、その成果は私どもの予期いたしましたより以上に輝かしいものでありました。それは、かつて同じく毎年北京で開かれたソ連や東欧諸国の見本市をはるかにしのぐほどでありまして、入場者が一日平均七万人をこえたという従来その比を見なかった一事によっても、うかがい知ることができるでありましょう。のみならず、この見本市において、中国国民は、わが国産業経済の水準に瞠目し、その工業力の高きを再認識するとともに、日常消費物資に対しましても特になつかしさと親しみの情を新たにいたしたのであります。これらの所産はすでに日中貿易の面に顕著な影響を現わしておるのでありまして、西欧諸国に先んじてわが日本製品が中国六億の国民生活の上に大きな地歩を固める足がかりとなったことは、まことに御同慶にたえません。このような大きな成果は、実に、民間諸団体の努力とともに、国民的願望の結集のたまものであると信ずるものであります。
さらに、政府は、去る九月にも、また、閣議におきまして、ココムの禁輸について特認を一そうゆるめるという決定をいたしました。これはまことに時宜に適した措置でありまして、私どもの心から賞賛を惜しまないところであります。これによりわが国の対中国貿易は一段の進捗を見たのであります。しかしながら、その後の世界の趨勢、特に東西貿易の発展を見て参りますと、すでに特認の活用だけでは時代の進展についていけないという情勢であります。今ここにあらためて決議案を提出いたしましたゆえんは、日中貿易が新たな発展の転機に差しかかっているからであります。
すでに中国は第一次五カ年計画を達成しようとしており、目下明後年から開始される第二次五カ年計画の準備を進めておるのでありまして、これに要する膨大な建設資材、鉄鋼製品等の需要が起ってくることは言を待たないところであります。さらに、この建設について中国六億の国民の生活水準がいささかでも高まることを考えますならば、対中国貿易の将来はさらに飛躍的に伸張する可能性があると言えましょう。西欧諸国は、この際中国の市場を確保するために虎視たんたんとしておるのであります。地理的に絶対的に有利なわが国が手をこまぬいている理由は絶対にないのであります。わが国の対中国輸出が中国のこの建設にどの程度の比重を占めるか、これが今後の中国市場におけるわが国の地位を決定するでありましょう。
さらに、最近の日中貿易の発展は、その取引品目その他に著しい変化を見せて参りました。今後、わが国からは機械類、プラント等の輸出が期待され、また中国からは、長期永続的な鉄鉱石、石炭、工業塩、農産品等の輸入が要望されてくるでありましょう。先ほども申しました通り、西欧諸国は中国市場への進出に懸命の努力を示しております。このような対中国貿易の段階において、私どもは、ぜひともココムの制限を一そう緩和し、また両国間に通商代表部を設置することによって、この趨勢に対処しなければならないと考えるのであります。
去る十月、日中貿易促進議員連盟の代表団が中国を訪問いたしまして、中国側と日中貿易問題について協議し、日中貿易の一そうの促進に関する共同コミュニケに調印いたしたわけであります。このとき、中国側は私どもの主張をいれ、民間の代表部を交換することを認めました。また、支払い決済問題については、今直ちに政府が中国政府との間に支払い協定を締結することの困難さは万々承知しておるところでありますが、しかし、民間為替銀行をして直接決済の方式を確立せしめることは、緊急の要務であり、また可能なことであると考えるものであります。(拍手)
日中両国間の科学技術の交流もまた重要な問題でありまして日中両国経済の将来に不抜の関係を打ち立て得るでありましょうことは、今さら言を待たないところであります。
先にプラント輸出が新しい特徴であると申しましたが、これを拡大発展させるためには、政府保証の裏づけがなければ、プラント輸出は一種の冒険となるわけであります。ここに強く政府のバック・アップを必要とする段階にきたといわなければなりません。近き将来日中両国の政府間において貿易協定の締結が強く要望されるであろうことは疑いのないところであります。
今こそ、両国貿易の新たなる大転換期に直面いたしまして、他国に率先してわが国経済自立と発展を確立するためのあらゆる施策を打ち立てるべきであるといえましょう。幸いにして、今国会におきまして日ソの共同宣言が可決され、その国交が回復されたのでありますが、このことは日中間の関係に対しましても大きな影響を与えずにはおかないのであります。
政府は、このような新たなる情勢において国家経済百年の計を打ち立てるため、今こそ対中国関係の調整に一そうの意を注ぐべきときかと存じます。従いましてその経済的大道の基礎を開くために、政府は、本決議の趣旨を了とせちれ、ココムの禁輸を一そう緩和するとともに、民間通商代表部の相互設置と、直接決済による支払い方式を確立し、また、最近の課題たる科学技術の交流を促進せしめ、やがては政府間貿易協定を締結するなど、日中貿易の促進のために万全の措置を講じられんことを切望いたしまして簡単ながら、本決議案の趣旨説明にかえる次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/31
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032・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。これを許します。細迫兼光君。
〔細迫兼光君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/32
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033・細迫兼光
○細迫兼光君 ただいま議題となりました日中貿易促進に関する決議案に対しまして、私は、日本社会党を代表して、これに賛成の意を表するものでございます。(拍手)
われわれは、日ソ国交回復が最後の手続を残すのみとなりました今日、日本・中国間の国交回復問題こそ日本が当面する最も重要な問題であると考えております。(拍手)鳩山総理大臣は、モスクワからお帰りになりましたときに声明を発せられました。その一節に、日ソ国交回復によって今や東西への窓は開かれ、と申されました。まことに、今まで長きにわたって閉じられておりました西の窓はまさに開かれようとしております。しかしながら、その西の窓は、日ソ国交回復だけではなお半開きの形であると申さなければなりません。西には、今、中国大陸に中華人民共和国が否認すべからざる政権として存在しております。この国との国交が正常ならずして、わが国の国際的地位が安定したとは言い得ない。これは何人にも異論のないところだと信ずるのであります。(拍手)
思うに、今日日本が目ざして進まなければならない目標は大よそ次の三つの問題に集約せられると思います。すなわち、第一に日本の独立の達成、第二に平和の確立であり、第三に国民生活の安定と向上であります。
独立達成のためには、もちろん、これを阻害しているいろいろなきずなを断ち切らなければなりませんが、独立の基礎、独立の保証は経済の独立に求めなければなりません。中国大陸と自由なる経済取引ができないでは、日本の経済の独立はあり得ないでありましょう。(拍手)日本の経済は近来向上しているといわれておりまするが、朝鮮戦争のおかげであったり、アメリカの特需、MSA資金に依存したり、スエズ運河の閉鎖による影響を頼みにしたり、主としてこういう偶発的な事情に一喜一憂しなければならないようなこういう経済は、安定した経済、独立性ある経済とは申されません。東南アジア、東南アジアと叫ばれながら、思うようには伸びない東南アジアとの関係を思うときに、いよいよ中国との緊密な経済関係の重要性を痛感せざるを得ないのであります。すなわち、われわれは、ここに一歩を進めて、中国の計画的な建設と基本的に緊密に結びつくことによって、初めて日本経済の永続的な繁栄、自主的な繁栄を期待できるに至ると信ずるのであります。ここに至って初めて日本の独立の基礎ができるといわなければなりません。
次に、第二の平和の問題でありますが、世界の平和なくしては、特に東洋の平和なくしては日本の平和はあり得ないことは言うまでもありません。東洋平和を口にして中国との平和関係を無視することは、耳をおおうて鈴を盗もうとするにひとしいものといわなければなりません。(拍手)
次に、第三の、生活の安定の問題。経済の永続的、自主的発展なくしては、国民生活の安定向上はあり得ません。わが日本経済の永続的な自主的な発展にとって中国の建設計画との緊密な結びつきが絶対の要件であることは、先に述べた通りであります。
かくのごとく見てくるときに、現在日本国民が現に目の前に解決、達成しなければならない課題として持っておるところの民族の独立、平和、国民生活の安定と向上という三つの課題の解決達成は、中国との国交回復、これが唯一のかぎであるとは申しませんが、これが最大の要因であることは断言してはばからないところでございます。(拍手)日中国交の回復は、かくのごとく重要な意義を持つものと信じます。本決議案は、いまだ十分わが党をして満足せしむるものではありませんけれども、日中国交回復の漸進のために、漸進的意義あるものと信ずるのであります。
最後に一言つけ加えまして注意を喚起しておきたいことは、こうした国の日中貿易促進、親善関係を積み上げていこうとしておるそのことが大切であると信じて、そのために動こうとしておるときに、末梢的な問題にこだわってこの国の大きな歩みを阻害しないように心を配らなければならないということであります。(拍手)たとえば、かつて、中国見本市の人々に対しまして指紋をとることを強要して、不愉快な印象を招いたことがあります。あるいは、最近、在日華僑の最も有力な諸君十二名、この人たちは永住許可証を持っておりまして、あるいは長く親の代から日本に住んでおるような人もあるのでございますが、これら十二名の強力な華僑に対しまして国外追放を迫ってやまない官憲があるということであります。本会議でありますから詳しくは申しませんが、こういうことは、まことに親の心子知らずというような、非常識もはなはだしいものであるといわなければなりません。(拍手)こういうことのないように要望をつけ加えまして、日中国交回復への漸進的な意義を持つところのこの決議案に対し、われわれは賛成の意をここに表するものでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/33
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034・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/34
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035・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
この際通商産業大臣から発言を求められております。これを許します。通商産業大臣石橋湛山君。
〔国務大臣石橋湛山君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/35
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036・石橋湛山
○国務大臣(石橋湛山君) 日中貿易の促進につきましては、政府においては、かねがね留意をいたし、その促進をはかって参ったのでありますが、なお、かような本院から強力な御決議がありましたのを力といたしまして、一そう今後これに対して力を注ぎたいと存じますから、このことを申し添えます。
――――◇―――――
原爆障害者の治療に関する決議案
(岸信介君外二名提出)
(委員会審査省略要求案件)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/36
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037・長谷川四郎
○長谷川四郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、岸信介君外二名提出、原爆障害者の治療に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/37
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038・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/38
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039・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
原爆障害者の治療に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。古川丈吉君。
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原爆障害者の治療に関する決議案
原爆障害者の治療に関する決議
昭和二十年八月広島市及び長崎市に投ぜられた原子爆弾は、わが国医学史上かつて経験せざる特異な障害を残し、十年後の今日、なお多数の要治療者をかぞえるほか、これによる死者も相継ぎ、障害者はきわめて不安な生活を送っており、人道上の見地から考えてもまことに憂慮にたえないとともに、国としてこれらの特異な被害者の治療等につき医学的見地から深い研究をすすめる要がある。
よって政府は、すみやかに、これらに対する必要な健康管理と医療とにつき、適切な措置を講じ、もって障害者の治療について遺憾なきを期せられたい。
右決議する。
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〔古川丈吉君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/39
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040・古川丈吉
○古川丈吉君 ただいま議題となりました、自由民主党及び日本社会党共同提案の原爆障害者の治療に関する決議案について、提案者を代表して提案の趣旨説明をいたします。
まず、決議案の案文を朗読いたします。
原爆障害者の治療に関する決議案
昭和二十年八月広島市及び長崎市に投ぜられた原子爆弾は、わが国医学史上かつて経験せざる特異な障害を残し、十年後の今日、なお多数の要治療者をかぞえるほか、これによる死者も相継ぎ、障害者はきわめて不安な生活を送っており、人道上の見地から考えてもまことに憂慮にたえないとともに、国としてこれらの特異な被害者の治療等につき医学的見地から深い研究をすすめる要がある。
よって政府は、すみやかに、これらに対する必要な健康管理と医療とにつき、適切な措置を講じ、もって障害者の治療について遺憾なきを期せられたい。
右決議する。
以上であります。
御承知の通り、昭和二十年八月広島、長崎に投下されました原子爆弾は、両市民の大半を死亡せしめました。また、爆心地から四キロ以内におった者及び爆発から二週間以内に焦土に足を入れた者は、みな放射能の影響を受けたのであります。その被爆者の数は、昭和二十五年の国勢調査によると約二十九万人で、そのうち、広島、長崎に居住する者二十三万人、全国各地に散在する者六万人であります。この原子爆弾による障害は、わが国医学上かつて経験したことのない特異なものであります。放射能による脱毛、出血、下痢等の症状は、一時小康を得て治癒するかに見えても、その喜びはつかの間で、再び悪化し、やけどのあとは隆起し、手術をしても効果なく、そのあとは常に痛み、ことに暑さ寒さには耐えがたき疹痛を覚えて、生ける心地なく、人間としての気力を失い、その上醜い姿と変り果てて、全く人生に絶望を感じております。(拍手)さらに、放射能による血液疾患については、今日まで医学上いまだ完全なる治療方法が発見されず、年々多数の死亡者を出し、その被害の深刻さは外部疾患より一そう悲惨であります。(拍手)本年になって、広島市で二十二名、長崎市で十名の死亡者を出しております。その日からすでに十一年余を過ぎた今日、なお約三十万に近い被爆者は、毎日、あるいは障害の苦痛に呻吟し、あるいは死の恐怖におびえ、まことに不安な生活を送っております。実に気の毒であります。人道上からも、とうていこのまま放置することはできません。(拍手)
政府はすでに昭和二十九年度より被爆者の精密検査と研究治療を実施しておりますが、従来程度のやり方では、これを根本的に解決することはできません。広島、長崎を通じてなお精密検査を要する者三万七千六百六十一名、至急治療を要する者八千六百三十二名があるといわれております。その他、全国各地に居住する被爆者の中にも、精密検査を要する者、至急治療を要する者多数あることと思います。今次戦争の災害者は多数かつ多岐にわたっておりますが、原子爆弾の被害者は特殊なものであるにかんがみ、政府は、医学的見地から深い研究を進めるとともに、すみやかにこれら被爆者に対する必要な健康管理と医療とにつき国費をもって適切な措置を講じ、障害者の治療について万遺憾なきようにせられたい。
以上が本決議案提案の趣旨であります。議員各位、私は各位全員の御賛成を望んでやみません。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/40
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041・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 討論の通告があります。これを許します。今村等君。
〔今村等君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/41
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042・今村等
○今村等君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました原爆障害者の治療に関する決議案に対しまして賛成の意を表するものであります。(拍手)
原爆被害者救護の問題は、長崎、広島等一地方の特殊問題ではなく、原水爆禁止問題とともに、全国民すべての熱望しつつある重要課題であります。のろわしの原爆兵器の洗礼を受けた長崎、広島の惨状は筆舌に尽しがたく、今世紀最大の悲惨事でありました。当時、二十五万の市民が両市においてその犠牲に供せられたのであります。そして、やっと生き残り、原爆症の不安におののきながら両市に住居する者は約二十三万人、その他、全国各地に散在しておる者約六万人であります。そのうち原爆障害者として精密検査を要する者約五万数千人を数え、そのうち少くとも一万一千人が至急治療を要する者であるといわれておるのであります。しかるに、現在多少なりとも治療を受けた者は、わずかにその一割の一千人くらいにすぎないのであります。原爆投下の苦汁をなめてより、はや十一星霜を経ている今日、原爆障害者の援護措置はきわめて微々たるものであります。申しわけ的なものであって、原爆による死亡者に対する国家補償については、戦傷病者戦歿者遺族等援護法の一部修正によって、長崎、広島における国民義勇隊、勤労動員学徒、徴用工等、国家の権力によって徴用された者で原爆によって死亡した者に対しては三万円の弔慰金の支給の実現を見たくらいで、その死亡者に対してすらかくのごときでありまして、生存者の治療あるいはその他の援護の問題に至っては、ただ、昭和三十年度に、両市の地元関係者の治療費の予算化の運動により、一千二百四十四万円を一般会計に計上せしめ、昭和三十一年度予算には、前年度の倍額二千五百六十八万円を計上せしめたにすぎず、何ら法的措置は講ぜられていないのであります。最近特に放射能による血液疾患の死亡者が続出し、今年だけでも、長崎市において十名、広島市においては二十二名の死亡者を出し、全国二十九万人の生存者は、不安の念にかられ、死の恐怖におののいておるのであります。また、外部障害者は、幾度かの手術の効果もなく、やけどのあとはむごたらしく、ケロイドの痛みは暑さ寒さに激痛を覚えて体力は減退し、特に当時動員されて被爆した女学生たちは現在妙齢の域に達し、生まれもつかぬ醜い自分の姿に人生の希望を失い、みずからの尊き生命を絶つ者さえも出すに至ったのであります。
かかる重大なる事情に徴しまして、今日問題になるのは治療の実施にかんがみ、治療費の単価、精密検査の単価についても、レントゲン検査等を含めた十分なる診断を行う必要があり、また、二十九万人の生存者に対する健康管理を実施する必要があるのであります。さらに肝要なことは、治療を受けるために生活に支障を来たし、そのために治療を受けることをためらう者が多数おるのでありまして、かかる人たちには生活保障の要があるのであります。人道上放置することのできない原爆障害援護の問題が今日まで等閑に付されておったことは、まことに心外に存ずるものであります。(拍手)
本日ここに決議案が上程されましたことは、まことに喜ばしきことでありまして、新たなる施策並びに予算の裏づけ等、原爆障害援護法制定の一日もすみやかならんことを希求いたしまして、本決議案に対し満腔の賛意を表するとともに、満場の諸君の絶大なる御賛同を切望する次第でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/42
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043・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/43
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044・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
この際厚生政務次官から発言を求められております。これを許します。厚生政務次官山下春江君。
〔政府委員山下春江君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/44
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045・山下春江
○政府委員(山下春江君) ただいまの御決議にありましたように、広島、長崎両市に投下せられました原子爆弾による障害は、わが国医学史上かつてその経験を見ないところでございまして、非常な特異な障害を残し、多数の治療を要する方があるほか、この障害によると考えられます死者も少くございません状態でございましてこれが治療と健康の保持はまことに緊急の重要事と考えております。政府といたしましても、このような事態にかんがみまして昭和二十九年から精密検査を行い、昭和三十年度からは研究治療を進めて参ったのでありますが、今度はさらに立法化の措置等によりまして御趣旨に沿うべく鋭意努力をいたす決意をいたしております。(拍手)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/45
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046・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 明十三日は会期終了日でありますので、午前十時より開会いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午後六時三十三分散会、発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102505254X01719561212/46
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