1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年四月三日(水曜日)
午前十時三十八分開議
出席委員
社会労働委員会
委員長 藤本 捨助君
理事 大坪 保雄君 理事 大橋 武夫君
理事 亀山 孝一君 理事 野澤 清人君
理事 八木 一男君 理事 吉川 兼光君
植村 武一君 小川 半次君
草野一郎平君 小島 徹三君
田中 正巳君 高瀬 傳君
中山 マサ君 古川 丈吉君
山下 春江君 井堀 繁雄君
岡本 隆一君 滝井 義高君
堂森 芳夫君 山口シヅエ君
山花 秀雄君
海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別
委員会
委員長 廣瀬 正雄君
理事 木村 文男君 理事 中馬 辰猪君
理事 中山 マサ君 理事 山下 春江君
理事 櫻井 奎夫君 理事 戸叶 里子君
臼井 莊一君 床次 徳二君
眞崎 勝次君 受田 新吉君
中井徳次郎君 山口シヅエ君
出席国務大臣
厚 生 大 臣 神田 博君
出席政府委員
総理府事務官
(内閣総理大臣
官房審議室長) 賀屋 正雄君
厚生政務次官 中垣 國男君
厚生事務官
(引揚援護局
長) 田邊 繁雄君
委員外の出席者
大蔵事務官
(主計官) 小熊 孝次君
厚生事務官
(引揚援護局援
護課長) 小池 欣一君
専 門 員 川井 章知君
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本日の会議に付した案件
引揚者給付金等支給法案(内閣提出第一一五号)
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〔藤本社会労働委員長委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/0
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001・藤本捨助
○藤本委員長 これより社会労働委員会、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会連合審査会を開会いたします。
先例により委員長の職務は私が行います。
引揚者給付金等支給法案を議題とし、審査を進めます。
まず趣旨の説明を聴取いたします。神田厚生大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/1
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002・神田博
○神田国務大臣 ただいま議員となりました引揚者給付金等支給法案につきまして、その提案の理由を御説明申し上げます。
過般の大戦の終結より、きわめて多数の同胞がその生活の本拠とする外地からほとんど無一物になって引き揚げ、地縁、人縁の乏しい内地で生活の再建をはからねばならなかったのでありまして、内地の戦災者等に比較いたしましてもその再起更生にさらに大きな障害があったことは、ここにあらためて申し上げるまでもないところでございます。
政府は、これら引揚者に対しましては、その実情にかんがみ、応急的な援護を行うとともに、住宅の供与、更生資金の貸付等の援護更生施策を実施いたして参ったのでありますが、多年の懸案であった在外財産問題につきましては、昨年六月、内閣総理大臣から在外財産問題審議会に対し、在外財産問題処理のための引揚者に関する措置方針について諮問がなされたのであります。同審議会においては、きわめて慎重かつ、熱心にその本質及び実態の究明を行い、昨年十二月に至り、内閣総理大臣に対し、右の諮問に対する答申が提出されたのであります。
政府といたしましては、右の答申の趣旨にのっとり、引揚者に対する施策を実施するという基本方針を定め、その実施法等につきましては、できるかぎり、引揚者の要望に即することを旨として種々考慮いたして参ったのでありますが、ようやく先般、諸般の調整を終り、ここに引揚者給付金等支給法案として提案する運びに至った次第であります。
以下この法案の概要について御説明いたしたいと存じます。
まず第一に、終戦時、外地に六カ月以上生活の本拠を有していた者等所定の要刊を満たしている者を本法にいう引揚者とし、これら引揚者に対しましては、終戦時の年令の区分により、五十才以上の者に三万八千円、三十才以上五十才未満の者に二万円、十八才以上三十才未満の者に一万五千円、十八才未満の者に七千円の引揚者給付金を支給することにいたしたことであります。なお、外地に長く残留することを余儀なくされ、講和条約発効後引き揚げた者は、その実情にかんがみ、外地に生活の本拠がなかった場合においても、引揚者給付金の支給対象とし、さらにそのうち、いわゆる戦争受刑者につきましては、年令にかかわらずすべて二万八千円を支給することにいたしました。
第二に、ソ連の参戦または終戦に伴って引き揚げねばならなくなった者あるいは外地に残留することを余儀なくされていた者が外地において死亡した場合及び引揚後二十五才以上で死亡した場合は、それぞれその遺族に対し、遺族給付金を支給することとし、その額は、外地で死亡した者の遺族につきましては、死亡した者の終戦時の年令の区分により、十八才以上であった場合は、二万八千円、十八才未満であった場合は、一万五千円とし、引き揚げ後死亡した者の遺族につきましては、引揚者給付金の額に見合う額といたしたことであります。
第三に、一定金額以上の所得のある者等、現に生活基盤の再建をなし得た者には給付金を支給しない趣旨のもとに、その所得税額が八万八千二百円をこえる者及びその配偶者には、引揚者給付金及び遺族給付金を支給しないことといたしたのであります。
第四に、引揚者給付金及び遺族給付金は、記名国債で交付することにし、その利率は年六分、償還期限は十年以内、発行期日は昭和三十二年六月一日にいたしたことであります。
その他、不服申し立て、国債元利金の免税、実施機関等所要の事項を規定いたしておりますが、この法律により引揚者給付金及び遺族給付金の支給件数は約三百四十万、国債発行総額は五百億円に達するものと見込んでおります。
なお、以上申し述べましたこの法案による措置に合せて、政府は、引揚者に対する生業資金の貸付、住宅の貸与の援護施策につきましても、その拡充に努力いたす所存であります。
以上がこの法案を提出いたしました理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/2
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003・藤本捨助
○藤本委員長 以上で説明は終りました。
次に質疑の通告がありますので、順次これを許します。山下委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/3
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004・山下春江
○山下(春)委員 今回政府におかれましては、戦後十二年、外地で敗戦を見まして、心身ともの苦悩を切り抜けて命からがら帰って参りました君たちに対して、何らかの処遇をすべきであるという問題が、長い間非常に大きな問題として取り扱われておりましたのに対して、非常に適切な結論をお出しになって、引揚者の給付金等の法律をお出しになりましたことに対しては、われわれ長い間その問題について検討をして参りましたものとしては、まことに感謝にたえない次第であります。ところで、もはやこの法案に対して先輩、同僚からあらゆる角度から御質疑の済んだあとでございまして、私が蛇足を加える必要はないのでございますが、ただ一点だけどうしても納得のできない点がございますので、これに対してぜひ大臣に御決意を承わって御善処を願いたいという問題があります。それは、いろいろよくお考えを願ったのでありますが、ただ引揚者のワクの中に入っておるケースで、巣鴨の戦犯として抑留されておりました人たちに対する処遇が抜けております。これはおそらく審議会におきましても政府におきましても、いろいろな議論があろうことをも勘案して取り除かれたと思いますけれども、この問題は大臣も御承知の通り、巣鴨に入っておる者が果して帰還したものであるかどうかということについては、非常に疑わしい点があると思うのであります。私、今から思い出しますと、二十三年の暮れでございましたが、終戦直後には巣鴨の戦犯に対して国民の投げ与えておりました眼は非常に冷たいものでありました。ところがだんだんよくわかって参りまして、それでむしろ巣鴨につながれておる——しかも三十二年、三年ころには、すでに死刑を宣告されておる者が、あの巣鴨プリズンの中できょうも一人、あすも二人と処刑をされた。われわれ全く魂をかきむしられるような毎日を過ごしておりました。私は二十三年の暮れにこの事情をよく国民に伝えまして、私の選挙区で婦人が四百人ばかりほんの一握りのもち米を持ち寄って、郷土のもちを正月前だから二切れ食べさせた。青年たちは川に出て小魚をつってそれを干して、彼らが青年期にやはり糸をたれてつったであろうその魚だよといって、私は連合軍が管理しておる巣鴨プリズンにその一切れのもちを持ち、一匹の小魚を下げて、県の二十八人のBC級の戦犯の方たちを訪れたことがあります。このほんのわずかな小さなもちが一切れ当り、小魚が一匹当りそのものが、あの連合軍が管理しておりますプリズンの中では、私は約四時間問答をしてやっとそれを目的の人たちに渡すことができたのであります。半日かかっていろいろな点で問答をいたしました。プリズンにいる日本の管理者たちに対しても、そういう越権なつらがまえをして越権な行動をする資格がどうしてあなたたちにあるのか、連合軍の管理を手伝わされておるあなたたちは、命令にそむくわけにはいくまいが、心の中にもっと謙虚なものがなければいけないと、私は管理者にもけんかをしてきたのであります。そういう状態を、私はあの二十三年の、きょうも処刑者があったというような、全く国民としてはたえられない、プリズンを訪れた何べんかの記憶を今呼び起してみましても、これはこれに該当させないということは、どうしても血も涙もない処置でありまして、人数は総計千人ぐらいでありますけれども、これは何としてもこの法案から漏らしてはならない人たちであります。講和発効後の人たちはこれに当ることになっておりますが、過去において二十二国会等におきまして、あの中で処刑を受けました処刑者に対しては、われわれは特別に恩給のワクの中に入れて差し上げた。いろいろ最低の恩給年限、一時恩給に到達する年限を、あの在監中の日時を加えた等の措置も、やはりこういった国民的な感情は、そのまま法に漏れたからといってほおかむりをすることのできないものであります。ちょうどあの講和発効のあとさきを考えてみましても、マヌスの監獄やモンテンルパの死刑囚を、われわれ引揚委員会がほんとうに心血を注いで内地に連れ帰そうとした努力は、今から考えてみても、私どももよく向う見ずにやったと思うほどのことでございます。豪州大使館等へ何十ぺん訪れましてもはかがいきませんので、あたかも英国のエリザベス女王の戴冠式という世界民族をあげてのお喜びの日に、はなはだ国際エチケットを心得ないしわざではありましたが、この喜びの日に、あなたの支配下である豪州の小さな孤島、灼熱瘴癘の地マヌスにいるわれわれ同胞、戦犯を内地に帰して下さい。私はエリザベス女王に、身の落度があったら、政府にも国会にもそのとががこないように、私の責任において建白書を送ったこと等を今思い起しましても、これが今日十二年たちまして、この大問題が政府の手によってかくも整然と処理されようというときに、この問題がこの法律から抜けますことは、過去において私どもがいろいろ積み重ねて参りました戦犯という問題は、日本国民は一体これをどう解釈すべきであろうか。私は日本国の敗戦の歴史の上における一つの大きな課題とさえ思うこの問題に対して、なぜならば、第一次大戦には戦犯というものはございませんでした。それが第二次大戦に、世界のいろいろな批評もあった戦犯という、勝った者が負けた者を一方的にさばくというこの戦争裁判というものは、不法であるという議論があったようなこともありまして、この問題をわれわれ日本国民がどう考えてこれを処遇すべきかということについてはこれを省きまして、今回行われようとする、これら問題の傷あとの最終処理として提案された政府としては、はなはだ片手落ちな処遇であったと思うのであります。そういう点で、人一倍感激性の強い、ヒューマニストである神田大臣は、もともとお聞きになっていればお抜かしにならなかったと思うのでありますが、この小さな法案上のことでございますから、ひょっとして大臣のお耳に達していないために抜けたのではなかろうかと思いますが、この問題については、大臣はどのように処遇をしようとただいまお考えでいらっしゃいましょうか、御決心を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/4
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005・神田博
○神田国務大臣 ただいま山下委員より、戦争の跡始末に関する、特に巣鴨の処刑者の問題につきまして、いろいろとお述べになられたことにつきましては、私もまことに同感でございまして、これはとやかく申し上げる筋もないと思います。全くお説の通りと私も考えておる一人でございます。そこで問題は、そうした事情にあられる方々が、引揚者給付金等支給法案の中に盛られておらない、こういうことはわれわれ国民感情としてはなはだ遺憾でないか、何か救済する方法はないかというお尋ねのように承わったのでございますが、御承知のように、この法案がここまでに至ります過程におきましては、非常な大きな問題でございまして、大筋の折衝に非常な時日を費しておったことは、御承知の通りだと存じます。急転して妥結いたしまして、そして法案化したことでございまして、いろいろの角度から、ことに今の巣鴨の問題に限らず、戦争直前の強制引揚者等の問題も関連して起きておるような事情もございまして、私どもこの法案を立案するに当りましては、関係当局といろいろ折衝の上でここに至ったわけでございますが、何しろ戦争の規模も非常に広大なものでございましたし、従いましてこの終戦の跡始末もいろいろなことが次々に起きておるようなわけでありまして、今お述べになりましたのもそのうちの大事な一つと考えております。そこでこの法案に、それならばどう処置するかということになりますと、ただいま政府の方といたしましては、ここでは盛っておらないわけでございまして、今どうしようということになりますと、お答えしがたい事情があるわけでございますが、大事なことでございますので、この法案の検討をお願いいたします最終の段階に、これは考慮しなければならないことであろうかと存じます。私だけでこれをどうするというようなことを今ここでお答えしかねる事情と一つ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/5
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006・山下春江
○山下(春)委員 ただいまの厚生大臣のお答えは、私一人で今どうするということは言えない事情にある諸般の情勢を一つぜひ考慮してくれ、考えてくれということでありますが、これらの問題は私は、これは法律上の議論ということになりますと、いろいろな議論があろうと思いますが、厚生省が敗戦後の過去十二年行なって参りました諸般の行政は、決して法律的なりっぱな基礎があってやったというものばかりでなくて、そうでなかったところに、厚生省が従来経験のない仕事をよく処理されてきたというそのことに、むしろ私は非常な人間性を感じ、厚生省という役所の尊さを感じておるのでありますが、厚生大臣の決意に対して困るという養分を出す人は一体だれでございましょうか。
〔藤本社会労働委員長退席、廣瀬海外同胞引揚及び遺家族援護に関する特別委員長着席〕
それをこの委員会に連れてきて、私どもは究明しなければなりませんが、日本の厚生大臣がきめたことを、それは間違っておるからいけないというようなことを言う人があるとすると奇怪千万で、それをここに連れてきて究明しなければなりませんので、それは大へんなことだと思うのでありますが、それは一つ大臣、厚生大臣のことに対して御決意なされたことを、しかも戦犯という問題が、だれでもが憎い、鬼のような行動だというならば別でございますが、第一次大戦には国際裁判というもの、勝った者が負けた者を一方的に処断するという戦争裁判というものはございません。第二次戦争において初めて勝った者が負けた者を一方的にさばく——私は言いたくはないけれども、しからば一体長崎、広島に原子爆弾を落したものは、世界の戦争史上どういうふうな処断を受けておるかということを、言いたくはないが言わざるを得なくなってくる。そういうことを考えてみて、日本が戦争裁判にかけられて一方的に、何らの抗弁も許されないで処断されたこの人々を、国民の名においてこれを何とか、その子供たちが自分の父はお国を守るために戦争にいったのではなくて、その結論は国の罪悪人として戦争裁判の記録に残されたのだということで、そのままにおいてよいものであろうか。私はこの戦争裁判というものに対しては死ぬまで考え続けなければならない重大な問題だと思います。外地で非常な無難苦行をしてきたすべての人たちに対して、財政の許す範囲内において、十分ではあるまいけれども、あなた方のお心をお見舞しますというこの法律は、私は政府としては無限ないい意味を持っておると思う。その中にこれを入れなかったということ、しかも入れないということを厚生大臣が私一人では言えないと言うのなら、私どもは、言える人、そのじゃまをする人をここに連れてきて、そのじゃまの理由をよく究明しなければならないのでありますが、これはおそらくそれほど大臣が御心配の必要はなくて、厚生大臣としてぜひ入れるのだという御決意におなりになれば、私は決して異論はない。またこれに対して大臣の処置が悪かったという国民は一人もいないことを私は確信を持ってお願いするのでありますが、もう一度勇気を出して御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/6
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007・神田博
○神田国務大臣 山下委員の戦犯についての考え方に私は全く同感なんでございますが、問題はこの中に入れるか入れないかという問題になるわけでございまして、入れなかったことについての私の答弁について、山下さんあまり考え過ぎておられるのじゃないか。何か私が入れたい気持をこわす人があるのじゃないかというふうにお考えじゃないかと思いますが、もしそうだとすれば、これは非常な誤解でございまして、私はそういう意味でお答えを申し上げておるのではないのでございます。みな申し上げなかったので、これは私の方に手落ちがあったと考えておりますが、先ほども申し上げましたように、大きな戦争の跡始末でございまして、この問題に関連して学徒動員の問題をどうするとか、徴用工あるいは応召の報道班員というようないろいろな問題がまだ残っているわけでございます。そういう意味からいえば、今の戦犯の問題もやはり未解決のケースである、こうお考え願いたい。なぜ入れないかということは、どなたがじゃまをしているとか、どなたが熱心さが足りないというような問題ではないのでございまして、結局引揚者給付金等支給法にどの程度入れるかということについて話のついたものをまとめたのが、今御審議願っておる法案でございます。そこで未解決の問題は、今お述べになりました問題、私が今申し上げている動員学徒とか、徴用工で内地における爆撃等によって非常に傷害を受けられた方々、報道班員、傷痍軍人の問題など、たくさん残っている。金額から申しますと、こういう大きな金額はおそらくないでしょう。大筋としては、これは最後の一番大きな問題をここで一つ解決をしたいということでございますが、内容になりますと、まだいろいろあるわけでございまして、そういうものをにらみ合せて考えていかなければならないのではないか、こういう意味で私はお答え申し上げました。これに入れることを反対しておるとかどうとかいう意味ではございませんから、その点誤解のないようにしていただきたい。ただこれをどうしようかということは、先ほど申し上げましたように、まだ審議の途上でございますから、今私が申し上げたこと、あるいは山下委員がお話になられたようなこと、さらにまたそれ以外のこともありますが、そういうものをずっとしぼってみて、そこでどうしようかというようなことについてまとまったお答えをせよということになりますと、私一人ではできない。いろいろ政府の方針がございますから、厚生省だけでお答えしかねる、こういう意味で申し上げたのでありますから、さよう御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/7
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008・山下春江
○山下(春)委員 私はなはだ不勉強でなんですが、今回の法案には、今大臣が仰せられた学徒動員とか、そのほか閣議決定、あるいは総動員法に基くものとか、援護法の三十四条の内容がみなこの中へ入っていると思うのです。私はこの法案をお組み立てになったのは、とても頭のいいりっぱな組み立て方だと思って感心しているのでありますが、それでもなお残ったものは援護法でおやりになるのがよろしいのではないかと思います。今の戦犯の問題をこの法案の中から残しておきますと、将来これをどういうケースで解決してあげるかという、いいチャンスがなかなか見つからないと思うのです。この法案はまだ未解決の面があるから、戦犯の問題はそのときに一緒に考えたいから、ここでは残ったケースとして考えて、この法案は法案として通してくれという大臣のお気持のようでございますが、それはちょっと困るのでございます。私がこれを力説いたしますと、政府は、お前は戦犯は千人だけだと言うけれども、これがあちこちに燎原の火のように燃え広がって波及するということを大へん御心配のようでございますが、国会も良識を持っておりますので、決してさようなことを申し上げる意図はございません。ただ今申し上げたように、戦犯のケースがこの際この法律から漏れますと、筋の通った処置の方法が当分見つからないと思うのです。従って一番心を痛めているこの問題がすとんと落ちて、なかなか次のチャンスが見つからぬということに相なるおそれがございます。この中へ第三国人の戦犯をお入れになったということは、この法案が一番適当だとお思いになったからだと思いますが、私もこれに対しては大賛成で、よくお入れ下さったと思うのであります。日本人の戦犯だけをここから残さずに、この際これを処遇することが筋も通り、一番いい機会だと思うのでありますが、まだ研究が足らないからというのでなく、この際これを入れて処遇しようということで、一つ人間的な厚生大臣の御発言をいただけないものでしょうか。そうすればこれに関する大臣への質問は終るのでございますが、それでないと大臣にうんと言っていただくまでやらざるを得ないことになるのでございますが、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/8
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009・神田博
○神田国務大臣 山下委員から情理兼ね備えたお尋ねでございまして、先ほどもお答え申し上げているように、戦犯に対する考え方については私も全く同意見でありまして、この処遇の問題をどうするかということでございますが、今この法案の審議の途中でございますので、今の考え方をまっすぐにこのまま入れる——この法案にこだわるわけではないわけでございますが、しかし、それではなかなか山下委員御納得が無理なようでございまして、私の気持は変りない、同じである、こういうふうに一つ御了承願って、どうするかということは、これは御審議を願っておることでございまして、皆様方の賢明な御良識できまることと考えておりますので、さように御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/9
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010・山下春江
○山下(春)委員 実は神田厚生大臣はヒューマニストであり、そういうことに対する特別な御熱情のある方でございましたので、私はなるべく理屈を申し上げないでお願いをしたいと思ったのでございますが、大臣、実は巣鴨に在所しておりますのは未帰還者なのです。今はあんなふうに出たり入ったりしまして、巣鴨にもいろいろな風評もございますけれども、講和発効前までは、私はあのプリズンの中を日本と思うことは間違いだったと思うのです。従って、厚生省が未帰還者の留守家族援護法というもので、あれは未帰還者としてお扱いになった。あの門を出るときに初めて日本に帰還したのだということで、帰還手当をちゃんと出しておいでになる。これは、あすこから出所するときに厚生省が出張して業務をおやりになっているのでありますから、厚生省の方が一番よく御承知で、あれは帰還した人々の中に入っておらない。日本国内にああいう入れものがあったものですから、あたかも帰還したように見えるのですけれども、未帰還者なんです。ずっと以前に作られた法律が、巣鴨に在所している者も未帰還者として処遇してきたことは間違いないのであって、未帰還者であるならば、何で今ごろそれを未帰還者として扱わないかということは、これは法律上理屈を言わないで、私は大臣にいい気持で処置してもらいたいと思ったのでございますが、理屈からいって、法律からいって合わないのでございますが、それはどうなりましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/10
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011・神田博
○神田国務大臣 今の山下委員のようにこの法律が解釈できれば、もうそれはその通り執行すればいいわけでございますから、御心配の要はそこでとれるわけでございます。問題は、今の巣鴨のあの施設をそういう解釈できるかどうか。無理にでもできるということになれば問題ないのでございますが、できるかどうか、そういうことは一つ後刻十分研究をさせていただく、こういうことにお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/11
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012・山下春江
○山下(春)委員 ぜひそうお願いしたいと思います。それは未帰還者のワクにりっぱに入っております。ただ今若干の方が残っておられまして、それはやや自由みたいなことに、講和発効後はなっておるのであります。ところが講和発効後のケースはこの中にりっぱにお入れになって、一番きびしかった時代を入れてないということは、ちょっとがまんしろといわれても、私どもどうやってがまんしていいかわからなくなってしまうのですが、一番きびしい、何らの自由を与えてないときは認めない。今ルーズになっているのに、講和発効の二十七年後はやるぞ。これじゃ、そこからこっちはいわば漏れたら仕方がないと私は思うのですが、そこまではやっていただかないとこれはどうにもならないのです。そこで予算等のこともあろうと存じますが、これらの法律が従来、終戦後行われておりました中に、これくらいな数字は自然に出てくるようなことになっておりましたので、私ども、ここで莫大に予算を膨張するようなことをお願いしておるわけではございませんから、大臣のお気持もわかったような気もいたしますので、このことはぜひ一つ大臣、真剣にお考えいただきまして、われわれ委員会の心の届きますように御配慮を願いたい、こう考えておりますが、そのことについて軽く一つ御返事をいただきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/12
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013・神田博
○神田国務大臣 ただいま山下委員からお述べになりましたことは、十分了できるのでございますので、よく一つ検討いたしまして善処いたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/13
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014・山下春江
○山下委員 私それでは、大臣がこのことについては、われら委員会の——しかも、国民もまた、これをやっていただくことの方が納得できると思う。すべての意見をおくみ取り下さいまして、御善処願うものと了承をいたしまして、大臣に対する質問はこれで終ります。
一言、局長にお尋ねをいたしておきたいと思います。むろんこれは手落ちなくやっていただいたと思うのでございますが、これもいろいろな問題を包蔵しておりましたあの太原の問題、あるいはその他の現地で除隊になった連中は、引揚者の公務員並みの処遇を受けておらないのですね。一般引揚者の処遇を受けておる。従ってあれは、こういう場合にその中に入れれば、これまでいろいろ議論されていたことが埋まるのではないかと思います。これは入れてございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/14
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015・田邊繁雄
○田邊政府委員 この条文で申しますと、御質問の点は、第二条第一項第四号、「終戦に伴って発生した事態により昭和二十年八年十五日以後引き続き外地に残留することを余儀なくされた者で、」云々書いてございますが、山西省において現地復員をして現地にとどまった方々、これらの人々はその当時、当時の軍司令官によって現地除隊をしております。これらの者を外地に残留することを余儀なくされた者と解釈するかどうか、この点にかかるわけであります。その点は、実情に即して十分考慮をいたしたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/15
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016・山下春江
○山下(春)委員 法の解釈は局長仰せの通りだと思うのですが、実情に即してという御答弁は、大体この際これはそのワクに入れるべきものと考えて処置するつもりだとおっしゃったことだと思ってよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/16
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017・田邊繁雄
○田邊政府委員 この点は、前々からお話し申し上げております通り、山西の部隊の引揚者が閻錫山の部隊に参加をした。その際に当時の軍司令官は、自己の意思によって部隊を離れたものと認め、現地除隊の身分上の取扱いをしておるわけでございます。問題は、そういう人事上の取扱いが間違っておったかどうかということでございます。これは終戦後、私どもの復員官署において復員の処置をとったわけではございませんので、現地において当時の軍司令官がそういう処置をとったわけでございます。人事上の取扱いでございますので、その取扱いが明瞭に間違っておるということであるならば、今日においては取り消すことにやぶさかでないわけでございますが、たとえば、その後帰った人々について一々確かめてみた結果、帰るんだという軍司令官の命令が各人に徹底しないために、知らず知らずして現地にとどまってしまった、こういう場合は、自己の意思によったものと考えられませんので、そのときは取り消すべきであると思います。しかし、明瞭に部隊を通じての帰還命令が徹底しており、それを十分承知しながらもあえて残ったという場合におきましては、その人事上の取扱いは間違いではなかったが、今日の事態において特別の考慮を加えるかという立法上の措置が要るのではないかと考えます。それはそれとして、第二条第四号にいう、残留を余儀なくされた者であるかどうかという点については、それとは離れて解釈をする余地があるし、またそういう点につきましては十分実情に即した考慮を加えて参りたい、こう申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/17
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018・廣瀬正雄
○廣瀬委員長 受田新吉君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/18
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019・受田新吉
○受田委員 この法律の趣旨ですが、第一条に掲げてあるこの趣旨の給付金支給の精神といいますか、あるいは法律的根拠というものはどういうところへ置いておられるのか、お答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/19
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020・神田博
○神田国務大臣 この法律の趣旨といたしますことは、提案理由にも述べておりますように、海外同胞が生活の本拠とする外地から無一物で引き揚げてこられて、地縁、人縁がほとんど内地に乏しいので、生活の再建をはからなければならない。こういうことから勘案いたしまして、何らかの措置をとらなければならないのじゃないか。これは歴代政府が考えておったわけでございますが、御承知のように、昨年在外財産問題審議会の答申がございました。これは十二月になって答申があったわけでありまするが、これは超党派的と申しましょうか、学識経験者、あらゆる方々が御参加されまして、いろいろ御審議を願った結果、全生活の基盤を失って帰ってこられるのであるから、そこに特別な政策的措置を講ずることが適当だ。これはもちろん国家財政の見地を勘案してのことでありまするが、内容的に申しますれば、そういう意味であるから一定の給付金を支給する。さらにまた生業資金の貸付であるとか、あるいは転業のあっせん、補導、あるいは住宅事情の緩和というような趣旨で政府が適当な措置をとったらどうか、こういう答申等もございまして、政府におきましても、この答申を尊重して解決いたしたい。こういう方針を決定いたしまして、この仕事を厚生大臣の担当にするというようなことでありまして、厚生省としてお引き受けして、この仕事を受け持った。いろいろ長い歴史的というくらいの長い時日も経過しておることでございますが、引揚者団体等とも十分な折衝をいたしまして、いろいろこれは議論があったわけでありまするが、この法案に盛られておる趣旨でこの辺で妥結を見たと申しましょうか、話し合いができた、そこで立法化した、こういうことであろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/20
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021・受田新吉
○受田委員 在外財産問題審議会の答申を尊重されて、政府としてはいろいろ考慮の末、この法案を出したのであるということでございますが、政府の今回の法案に類似する法律として、例の戦傷病者戦没者遺族等援護法がありますし、未帰還者留守家族等援護法というものもあるわけです。これらの法律の定義といいますか、よって立つ法律的根拠というものにいろいろ考え方があると思うのです。審議会の答申の際にもいろいろ論議された問題を蒸し返すことを私はいたしませんけれども、とにかくこの法律を提出された根拠として、法律的な義務の云々はさておいても、とにかく国としての重大な責任を感じてこの法律を出したということにはなりますかどうか、お答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/21
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022・神田博
○神田国務大臣 今お問いになりましたその通りの理由である、こういうふうにお答えいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/22
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023・受田新吉
○受田委員 そうしますと、国の責任を論議した法律の前例といたしては、戦傷病者戦没者遺族等援護法の第一条に「国家補償の精神に基き」とありますが、精神的にはそういう気持をお持ちでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/23
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024・神田博
○神田国務大臣 私がお答えを申し上げましたのは、国家補償というような考え方で申し上げたのではないのでございまして、今度の戦争の犠牲者はこれは全国民だと思います。全国民が犠牲者であり被害者である。しかしその中に、政府が援助と申しましょうか、どうしてもこれだけはしなければならないということの、しかも今までいろいろやって参った戦争跡始末の施策の一環として、御議論はあろうと思いますが、バランスのとれた一つの施策だ、こういう意味でこれをすることが戦争の跡始末として必要だ、こういうふうに考えておるという意味で御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/24
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025・受田新吉
○受田委員 これまでの戦争犠牲者に対する国の施策の一環ということになりますと、これまでの幾つかの関係法律のよって立つ法律的根拠というものは、その背後に精神的には国の補償の責任を考えておるという形、そういうものとわれわれは認めてよろしいと大臣が言われたと了解してよろしいか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/25
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026・神田博
○神田国務大臣 その法律的な問題でありますれば、政府委員から一つ答弁させたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/26
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027・田邊繁雄
○田邊政府委員 戦傷病者戦没者遺族等援護法あるいは留守家族等援護法におきます法律上の根拠の御質問でございましたが、戦傷病者戦没者遺族等援護法は第一条に「国家補償の精神に基き」云々となっております。この「国家補償の精神に基き」という意味は、国家公務員の災害補償の精神に基くものであります。留守家族等援護法は、軍人恩給が復活するまでの暫定措置法という精神から出ておるのでありまして、各条項を見ればそういう精神は随所に現われておると思います。そういった意味の国家補償の精神と援護的な精神、社会保障的な性格、そういうものとが一緒になったものであると考えております。それから留守家族援護法におきましては、法文におきまして「特別の状態にかんがみ」と書いてあります。講和発効後におきましても、ソ連、中共と国交が回復しないために、自分の意思によらず、自分の責任に基かずして当該地域に抑留され、また留用その他で残留を余儀なくされた方々の特別の状態、これは前例のない状態でございまして、既存の法律体系からはそれに対する理論的な原理は出てこないのであります。こういう諸般の実情を考慮いたしまして、いわば補償という言葉は当らないと思いますが、補償に似たような、その場合には国のある程度の責任と考えていいと思いますが、そういうところから出た援護法という処置でありまして、遺族援護法の精神とはいささか違っていると思います。今回の処置におきましては、またそれとは趣きを異にしております。たびたび申し上げておりますように、在外財産問題審議会の答申に基く特別の政策処置でございます。本来ならば、上陸直後こういったものを差し上げて、生活再建に資していただくのが適当であったかと考えておりますけれども、何分にも占領下でございますし、諸般の事情のために特別の処置ができなかった。それが終戦後十年たった今日、いまだ生活の再建の十分でないと認められる方々に対しまして給付金を差し上げてそういった趣旨を実現しよう、こういう考え方と思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/27
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028・受田新吉
○受田委員 特別の政策的措置は、答申に盛られた政府に対するお答えであったわけでありますが、国が施策としてかかる給付金を支給するという背景に立つものは、国が責任を感じてなされておる行為であるとわれわれは認める。これに対して大臣は同感だとおっしゃったわけです。だから国の責任においてこれを処置するということにおいては政府委員としてもお認めになるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/28
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029・田邊繁雄
○田邊政府委員 引揚者が戦争犠牲者として特にその被害の甚大であったという点を是正しようという趣旨でございますれば、そういう犠牲は国の責任でございますので、これは国の責任と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/29
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030・受田新吉
○受田委員 この法律的義務に基く議論は、時間もかかることですし遠慮させていただきます。大体国の一任でこの法案をお出しになったことにおいては間違いないわけなんです。ところがこの法律の定義が第二条に掲げられてあるわけです。引揚者の定義の第一項、第一、第二、第三、第四と、こうありますが、このそれぞれの号に当る該当人員をどのくらいずつ予定されているか。すでに対象人員三百四十万と、それから交付金額五百億円に上る公債を支給するとはっきり言っておられますから、それぞれの号に適用する数字も出ておると思いますので、それをお示しいただいたらと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/30
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031・田邊繁雄
○田邊政府委員 第二条の第一項に該当しておりまする引揚者の数は約三百万でございます。そのうち第一号、第二号、第三号、第四号と分けての御質問でございますが、ほとんど大部分が第一号でございます。第二号以下に該当すると認められますのは、昭和二十八年以降の、中共からの引き揚げが始まって以降、外地に生活の根拠のなかった人が若干含まれておりますので、それらのごく少数の方が第四号に該当するものと考えております。第二号は八月十五日以前のソ連参戦に伴う混乱の状態において帰ってきた方々でございますが、この数は大体の見当で七、八万と考えております。死亡者が出ておりますので、その当時の数の総数よりも、今日はさらに減っておると思います。しかしほとんど大多数が第一号の該当者であると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/31
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032・受田新吉
○受田委員 これに関連して遺族給付金を受ける場合ですが、この給付金の支給を受ける場合の対象になる人員をお示し願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/32
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033・田邊繁雄
○田邊政府委員 引き揚げたあとで死亡された方と引き揚げる前、引き揚げ中になくなった方と二つに分けております。引き揚げたあとに死亡された方は所得制限をいたしまして約二十八万人、それから引き揚げ中になくなった方は所得制限を加えまして約十五万人と考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/33
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034・受田新吉
○受田委員 この数を確かめて大臣にお尋ねしたいことがあったのでございますが、大臣早く切り上げるそうでありますから、私は政治的に処理を急ぐような問題について、二、三点をお尋ねしておきたいと思います。
大臣はこの引揚者の定義という点について、今山下さんからのお話の問題が出ましたので、この問題は繰り返しお尋ねを避けますけれども、なお問題とされているのは満洲に開拓民として残された人々、今日まだ帰還しておられない人々もあるし、すでに死亡された人もありますが、こういう人々の取扱いがすでに未帰還者留守家族援護法及び戦傷病者戦没者遺家族援護法でそれぞれ何らかの形で擁護されている向きもあるわけです。ところがこの法律の規定を見ますと、すでに遺族給付金を受けた者の中に開拓民などがあって、その人には、新しい給付金は支給しないということをうたっておられるわけでございます、が、しかし厳密に言ったならば戦傷病者戦没者遺家族の援護法というこの法律で救済する対象になったものを、この引揚者給付金の対象にまた入れるというのはどういう考えでそういうふうにされたのか、こちらの方は国家補償の精神である。こちらの方は今あなたのおっしゃったような国の責任でやるということになっている。同じ立場に立つ開拓民が一方ではこちらの適用を受け、一方ではこちらの適用を受けるという、法律的根拠もあいまいだし、支払い方法もはなはだあいまいだと思うのですが、これはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/34
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035・神田博
○神田国務大臣 今お尋ねがございましたことは、政府といたしましては親切と申しましょうか、当を得ているしいうふうに考えて、実は措置を講じたわけでございまして、これは見方、考え方の問題でございますから、私の方から押しつけた答弁を申し上げるという意味ではございませんが、この方が実情に沿うのではないかという気持でこういうような立法をしたのでございます。これは立法技術の問題ですし、大事なことでございますから、政府委員から詳細に答弁いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/35
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036・田邊繁雄
○田邊政府委員 御承知の通り開拓民の中には陸海軍の要請によって戦闘参加して戦没された方々もあります。これは一般邦人ではあるけれども、あたかも軍人、軍属と似た事情にございますので、特に戦傷病者戦没者遺家族援護法によりまして戦闘参加者として三万円の弔慰金を差し上げておるわけであります。ところが満州開拓民の中には、戦闘に参加してなくなった方ではない方があるわけでございます。これが従来問題だったわけであります。これは戦闘参加者として取り扱うわけにいかないというケースが相当たくさんあるわけであります。御承知の通り開拓民が僻地から引き揚げのセンターにきて、そこで待っている間に病気でなくなった方がございます。その死亡の状況は、他の一般引揚者で途中でなくなった方々と似ておるわけでございますので、こういった方々が長い間の問題でございましたので、今度の法律でそういった方々に対する措置を講じよう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/36
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037・受田新吉
○受田委員 そうしますと、法律の論拠が、援護法と給付法律では違うのだ、一方は閣議決定に基いて戦闘に参加した人々である。そういう二つの要素を持っている人だということになるのです。一方は閣議決定に基いて出たのであるが戦闘に参加しなかった、そこに違いがあるのだという御説のようです。しかしこれは厳密に言って、満州のあの混乱時の様相から見てそういう判定ができますか。一様にこれは戦闘に参加した形で行われた、なくなったあるいは苦労されたと見るべき筋合いのものじゃないか。きわめて明瞭に差異のはっきりした者は別として、あの陸海軍が全部引き揚げて、満州国境地点が空白になっている混乱期に、開拓民だけ残しておいて、そうして現地の困難な戦闘に参加させるような形にしておいて、戦闘に参加したかせぬかという区別が実際できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/37
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038・神田博
○神田国務大臣 これは受田委員のお尋ねごもっともと思いますが、厚生省といたしましては、先般の援護法でも御説明申し上げたと思いますが、戦闘に参加したという者はそれぞれ証明があって推置をとって参ったわけでございまして、その証明のなかった方々をこちらの方で一つ補っていこう、こういうことでございます。それはできないじゃないかという議論になると、今やっておることがおかしいじゃないかということになるわけでございますが、あの混乱期でございますから、非常にむずかしい問題であることは私も想像できます。了承できますが、しかし政府の方といたしましては、前の援護法の際には証明のできた者だけをそちらの方で補って、ほかの方はその後ほっておいたと申しましょうか、何もしておらなかったのですが、今度それを均衡せしめたい、一般の引揚者の問題を解決する際に、ここでこの問題を取り上げて善処いたしたい、こういう趣旨で立法化したわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/38
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039・受田新吉
○受田委員 そうしますと、第十二条に書いてある遺族給付金を受けることのできない中の第二項の規定は、別にこういう規定を掲げなくても、援護法にはっきり明文が書いてあるのですから、それによって救われているはずなんですが、これはなぜ書かれましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/39
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040・田邊繁雄
○田邊政府委員 条文を読みますと、八条の規定が遺族給付金の条文でございますが、これだけで参りますと、遺族援護法では弔慰金をもらい、さらにこの法律でも給付金をもらう、こういうことになるわけでございます。それを調整したのが第十二条の第二項であります。これがないと両方もらうということになるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/40
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041・受田新吉
○受田委員 それではその議論は午後に回しまして、大臣の政治的な感覚から見ていただきたい問題として、最後に行政機関職員定員法の改正規定をこれに書いておるのでございますが、十人ほどふやしている。この十人ふやした根拠は何かお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/41
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042・神田博
○神田国務大臣 これは人のことでございますから、たくさんちょうだいできればそれに越したことはないわけでございますが、この仕事を主としてやるところは都道府県と申しましょうか、第一線は外の方でございますから、私の方はそれをまとめていくということでございますので、大体十人あれば所要の成果をあげることができる、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/42
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043・受田新吉
○受田委員 この法律の通過がおくれまして法律の実施がおくれた場合には、この行政官職員定員の問題はどういうように取り扱うわけでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/43
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044・神田博
○神田国務大臣 これは法律がおくれれば、それだけやはりこの方がおくれていくということになろうかと思います。しかしそうたくさんおくれるようなふうにも実は政府といたしましては考えておりませんので、できるだけ早く御審議願いたい。この提案に至りますまでに、野党である社会党とも十分御協議いたしまして、関係団体である引揚者の方も御了解を得ておると申しましょうか、そういうわけで与党の方も十分連絡がとれております。もちろんこれは大筋の話でありまして、法律の内容、体裁等につきましては、まだそこまでの御了解を得ているわけではございませんが、そういう意味合いでありまして、とにかく三百数十万の方方がお待ちになっておるという意味で、できるだけ早く通していただきたい、こういう考えでおるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/44
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045・受田新吉
○受田委員 これは予算にも関係する問題なんで、年度初めから改正しておくかあるいは途中から定員をふやすかということに関係してくるので、非常に技術的な問題になってくるのですが、いつからでもいいように定員法の改正をやる。その月から、たとえば五月から、六月からというふうに適当に調整してあるようにしてあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/45
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046・田邊繁雄
○田邊政府委員 これは技術的な規定でありますが、厚生省の引揚援護局の定員は毎年減ることになっております。ことし三十二年度においては、五月十五日現在において二百七十名落されるわけでございます。その落し方を、早く申しますと、十名減らすということになるのでありまして、現実に人が減るのは五月十五日でございます。従って十名増員という形は五月十五日以降において初めて実際の効果があるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/46
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047・受田新吉
○受田委員 五月十五日までには法案が通るという見通しでやられるわけですね。そうするともう一つ、附則に総理府設置法の改正などいろいろなものを取り上げておるのですが、これも大体この法律でうたうべき筋合いのものかどうか、私は性格が違うと思うのですが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/47
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048・神田博
○神田国務大臣 これは法律体裁の問題になるわけですが、こうしたことは今までもだいぶあるように私記憶しております。この問題を取り扱う際に、政府の方針といたしましても、これを提案する法案が出たときにはこの審議会を廃止する、その法律は単行法ではなしに本法で審議していただくという方針になっておりまして、これらの措置をとったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/48
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049・受田新吉
○受田委員 この審議会というものをこの法律でなくするということは越権行為だと思うのです。大体この法律でうたうべき性格のものではない。そしてまたこれを廃止するという態度がはなはだ不謹慎であると思うが、これはどうですか。この法案ができることによって政府はこの審議会はもう御用なしだと承わってよろしいのかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/49
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050・神田博
○神田国務大臣 これは考え方の問題でございますが、在外財産問題審議会には特定の御審議をお願いいたしまして、その特定の御審議の答申をちょうだいいたしておりまするから、私はこの審議会はすでに所要の目的は達成されたのではないだろうか、政府もまたその審議会の答申をそのまま文字通り尊重いたしまして措置をとっておる、こういうふうに考えておりますので、先ほどお答え申し上げたように考えて処置をとったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/50
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051・受田新吉
○受田委員 審議会の御用は全く終れりとして処置をとったということでありますが、審議会のなすべき仕事の中においては、今後国際的ないろいろな問題などもまだ十分討議しなければならない問題も残っておる。ただ現状の段階においての答申が終ったのであって、そのほかまだ未解決の国際的な諸関係によるところの十分検討しなければならない問題は、高い立場から見れば当然検討しなければならぬと思うのです。これを抜きにしてさしあたり単なる現状における答申で事足れりとする考え方に対しては、大臣としてははなはだ不謹慎だ、この審議会に対する敬意を払っていないと思うのですがどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/51
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052・神田博
○神田国務大臣 この在外財産問題審議会に対する敬意を私が払っておりますことは、どういうふうに表現したら御了承願えるか、私どもといたしましては、他の審議会等もいろいろございますが、この審議会には特に私は敬意を表しておるわけでございます。非常に実質的な成果もお上げになっていることも私承知いたしております。非常に敬意を払っておりますが、そういうことを十分申し上げる機会がなかったので、受田委員のあるいは誤解を受けたかもしれませんが、この機会にこれは十分御了承願いたと思います。ただもう一つ私がこれを廃する事情を申し上げたのでございまして、何と言いましょうか、この問題は決して私は逃げるという意味ではございませんが、総理府設置法の項目を、私の方がむしろこの法律にお貸しして、これができたような格好でございますので、これ以上の御質疑は総理府担当大臣に一つお聞き願いまして、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/52
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053・廣瀬正雄
○廣瀬委員長 中山マサ君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/53
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054・中山マサ
○中山(マ)委員 私がお尋ねしたいことは、第二項と第三項との問題でございますが、第三項には、特に配偶者には与えないということ、配偶者という問題が特に書いてございますが、第二項においては、配偶者がたとい死亡いたしました場合でも、その点では配偶者に対してやはりやっていただけるわけでございますか、大臣にお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/54
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055・神田博
○神田国務大臣 今のお尋ねの趣旨をもう一ぺんお聞きいたしたいのでありますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/55
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056・中山マサ
○中山(マ)委員 この三項のところに、これだけの収入のある者及びその配偶者には与えないと、特に配偶者ということを書いてございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/56
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057・神田博
○神田国務大臣 何条でございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/57
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058・中山マサ
○中山(マ)委員 第三でございます。この終りの方ですが、提案理由の説明の中で、そういうことが書いてございますが、そうすると、第二におきましては配偶者ということは一つも出ておりませんが、それは一視同仁に扱っていただけるかどうかということをお伺いすることが一つ。
それからもう一つ、これはこれにあまり関連はないかもしれませんが、私はさっきの山下議員のお話の中の戦犯者というものがこれに入っていないという点と関連いたしまして、いろいろと引き揚げの問題にも差別待遇があるようにも考えるのでございます。この間も引揚委員会で質問した問題でございますが、この暮れに帰って参りました引揚者の中に四人の第三国人があった。法務省の方ではこの人たちに不法入国という名前をかぶせておったのでございます。私ずいぶんこの問題でそのとき追及いたしましたが、大臣はその当時お越しになっておりませんので、私は厚生大臣として、引揚者をそういうふうに——かっては日本のために働いた人たちを、法務省がそういうふうに不法入国というワクに入れることを、厚生大臣はこの引き揚げという問題からどうお考えになるかという、この二点をお尋ねしたいのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/58
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059・神田博
○神田国務大臣 今の第一点のお尋ねでございますが、これは引揚者等に対する給付金の支給に関する措置要綱の第三号をおっしゃったのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/59
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060・中山マサ
○中山(マ)委員 そうです。終りの方に、配偶者には与えないということが特に書いてあるようでございますが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/60
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061・神田博
○神田国務大臣 お答えいたします。これは所得制限の場合に、合算の制限を加えた。こういう場合には、配偶者には上げない。これは所得税法にもみなやはりこういう夫婦の場合の合算所得というような合算課税をいたしておりますものですから、こちらもその裏を受けまして、税法と一緒に足並みをそろえた、こういう考えでございます。夫婦だけは一体ということを尊重して、税法と同じような考えで、とったわけでございますが、これはあとで政府委員からよくお答えさせることにいたしたいと思います。
第二点は、引き揚げて参った戦争参加の第三国人と、こういう意味でございましょうか。それは私実は初耳でございまして、はなはだおしかりを受けるかもしれませんが、法務省の方でとられた措置は、あるいはこの法律上の問題をそのまま適用された結果じゃないかと思いますが、具体的な問題のようでございますから、よく法務省の方と連絡いたしまして、適当な機会にお答えいたしたいと、かように考えますので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/61
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062・中山マサ
○中山(マ)委員 その第二点で私はどうしても納得がいかないのであります。とにかく外務省の渡航課長が向うへ行って、その人たちを受け取ってきておるのであります。自分たちが受け取ってきておきながら、これを不法入国というワクの中に入れて、韓国へ送り返すということを申しまして、幾ら私が責め立てましても、この間なかなかその線を譲らなかったのでございますが、韓国との間だのいろいろな問題についても非常に行き悩んでおる今日、そういうふうにして、かつて同胞として日本のために働いた人たちを、自分たちが受け取ってきておきながら、不法入国者であるというようなことはどう考えても納得がいかない。結局外務省がいわゆる不法入国の幇助罪を犯しているとしか私には考えられないのでございますが、厚生省として、法務省がそういうワクの中に入れることを黙って今日まで見ておいでになっておるということは、厚生大臣は今知らなかったとおっしゃるのでございますが、どうもそれは私によけい納得がいかなくなっちゃうのでございます。その点はぜひ一つ法務省に抗議を申し込んでいただいて、これは特殊な場合でございますから、いわゆる今までの国際法の慣例にならって、しゃくし定木的に、引揚者をそういうふうに扱うべきではない。私は国際間の情勢の緩和、ことに向うの国とも何とか御交際ができるような立場になっていかなければならないということを皆が望んでおるのでございますから、この際一つでもそういう妙なものを作り出したくないというのが私の考え方でございますので、大臣はこの点でよく考えるとおっしゃって下さいましたが、何とかしてぜひ一つ法務省と御交渉を願いまして、引き揚げの問題として、これは特別に扱うように御進言願えますでございましょうか、どうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/62
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063・神田博
○神田国務大臣 先ほどお答え申し上げたのでございますが、ただいま政府委員その他からも話がありまして、ここで聞いたわけでございますが、その具体的な問題は厚生省からもすでに外務省に御連絡いたしまして、不法入国の取扱いはしない、もうその直後に解決しておるのでございます。これは外務大臣も厚生大臣もそこまで参りませんうちに十分もう話がついておったそうです。それで知らなかったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/63
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064・中山マサ
○中山(マ)委員 今解決がついておったというお話を伺いまして私非常に喜ぶのでございます。この間引揚委員会で私がこれを問題にいたしておりましたときは、法務省はどうしても不法入国者のワクを取ろうとは言わなかったのでございますが、私は特に大臣に御努力願いたいと思いまして、今日少し問題がそれておるのでありますけれども、この機会をとらえてお願いをしておく次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/64
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065・廣瀬正雄
○廣瀬委員長 床次徳二君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/65
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066・床次徳二
○床次委員 大臣お急ぎではなはだ恐縮でございまするが、法律の適用の問題でございますので特に大臣に政治的な立場において考えていただきたいと思います。
先ほどの御答弁によりまして在外者の引き揚げの問題は今度の審議会の結論によってこれが大体政府としては最終的のものと承わるのであります。問題となっておりますのは今まで在外財産保有の引揚者の立場としていつも対象になっておりながら初めからはずされてしまったような状態です。これは政府がぺてんにかけたような感じがするので関係者は非常に遺憾に思っておるのであります。この点はよく知っていただきたいと思うのですが、それは在外者が内地に引き揚げました時期がたまたま終戦より前であったという立場のためにこの法律の適用から漏れてしまったという状態なのでありまして、政府は御承知でありましょうが、内南洋からマレー、シンガポール、ジャワという地域の者でありまして、これが日本の海軍の作戦のために自発的でなしに日本政府の勧告あるいは強制的命令によって引き揚げざるを得なくなった、従って財産等の始末は全然ついておらないという状態の者であります。これが引き揚げる時期が八月十五日以前であるというために落ちておるという形になっておるので、実態におきましてはその他の者とほとんど差をつくべきものではない。もちろんそれは早く引き揚げてきたのだからゆっくり引き揚げて、財産処分あるいはその他の立場においても困ったことはないはずではないかというお話でございますが、これは作戦命令その他によって急速に引き揚げてきて、財産等は全部地元に残してきておるので、いわゆる在外財産保有者としての形に入っておる一つなのであります。どうもただいままでの審議会その他の答申を見ましても当然かかるものは対象にしてしかるべきものと思うのですが、今日の法律の建前が終戦のときを限度にしたためにそれが落ちておるということははなはだ遺憾であります。他に方法を講ぜられるならばいざ知らず、そうでないときはこの機会においてやはり全部包括して処理せられるべきものと私は思うのであります。ただ取扱いに際しまして多少の差がついてもかまわないと思います。処理すべきことはやはりこの法律において処理するのが当然である。規定ができないで漏れてしまったからあとで何とかしたらいいだろうということを係員の御答弁で今日は聞いておるのでありますが、これははなはだ遺憾であると思っております。外務省その他関係省においてもよく知っておることでありますので、この点私は除外するのは本意でなかったということを信じておりますので大臣の御答弁を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/66
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067・神田博
○神田国務大臣 今の床次委員のお述べになられましたことは私もそのお気持はよく通ずるのでございますが、何しろこの法案を政府がきめましたときには戦後の措置ということが中心でございまして、こういうような御審議を願うような法案になったわけでございます。戦争中軍の命令によって引き揚げを余儀なくされたとかあるいは軍の命令によって所有の土地を徴用されてしまったとかあるいは退去を命ぜられたとか、それから財産の処分を命ぜられたということはたくさんあるわけでございますが、シンガポールとか南洋の委任統治領のごときは今お述べになられたようにそれは日本政府の責任において引き揚げを完了したわけでございますから、戦後の引き揚げとは非常に趣きが違うことは床次委員も述べておられるわけでございますので私から申し上げるまでもございませんが、ただ何とかこの法律で一つ措置したらいいかどうかということについては政府部内におきましてもいろいろ議論がございまして、この法律の中で取り扱うことができなかったということは一つ御了承願いたいと思います。これに類似のものと申しましょうか、伊豆七島でございますか、小笠原でございますか、小笠原の引き揚げは別ワクで解決をしておるような例もございますが、これは敗戦後の善後措置というようなことで、しかもこれは日本政府の力がなくなってから引き揚げたものだけを対象にしていこうということになったのでございまして、今お述べになられましたようなことは、これは次の機会等において適当に考慮しなければならぬ点があるかと思いますが、しかしまだそこまで政府の意思は決定いたしませんので、これはあけすけに申し上げたのでございまして、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/67
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068・床次徳二
○床次委員 私再び質問したいと思わなかったのですけれども、戦前と戦後において非常に差があるかのように言われた。これは事実において非常に相違がある。この点は当時の事実を見ますと非常に明らかでありまして、日本の命令によりましてやりましても、何ら処置することなくして、からだ一つで出てきた、むしろリュックサックを持ってきておった方がいいというような人があるくらいで、この点は比較にならない。ただ時期において差があるという状態であります。政府のお言葉によって別個の考えをしていただくならばけっこうでありますが、別個に考えるか考えないか、非常に不明瞭である。この際全部こういうものは解決すべきであると考えておるので、この点は別個に考えられるならばこれはまたその趣旨において拝聴いたしたいと思うのでありますが、そうでない限りにおきましては、私はこういうものは類似のものにおいてはなるべく一緒に解決すべきものだということを考えておるのでありますが、この点御考慮願えるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/68
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069・神田博
○神田国務大臣 今の床次委員のお考えのようなこともわれわれの中にも十分あったわけでございますが、いろいろの事情で残ったわけでございまして、他の戦争の跡始末等の問題がございますので、その際に十分一つ善処するようにいたしたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/69
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070・廣瀬正雄
○廣瀬委員長 中井徳次郎君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/70
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071・中井徳次郎
○中井委員 大臣お急ぎのようですから、基本的な問題で一、二点だけお伺いしておきたいと思います。長年問題になっておりました引揚者の処遇が一応線が引かれたわけでありましょうが、金額その他についてもいろいろと議論もありましょうけれども、政府はそのお気持でこの法案をお出しになったと思うのでありますが、ただ問題はまだ韓国だとか北鮮だとか中共とか、講和条約を結ばれておらぬところがたくさんございます。そこでそういうところの条約はどういう形になるかと想像いたしまするに、今一般的には無賠償あるいは私有財産の放棄と日本人の財産の没収というふうな形でどうやらいくのではないかというふうな公算が非常に多いのであります。しかしこれはあくまで見通しでありまして、具体的にどうなるかということは今後わかりません。そこで講和条約その他がだんだんと前進をいたしましてそういうことになった場合に、たとえば多少の賠償を向うは要求する、それについては見返りとしてはその金額の三分の一は私有財産でもってこれに充てる、あるいはまた全額賠償はこれこれであるけれども、しかしながらそれは法人の持っておった財産でもって充てるというふうな内容になった場合に、私は政府としては引揚者に対する処遇はこれでもう終りだというのではなくして、将来に問題が起る可能性が十分にあると思います。そこでそうなりました場合には政府はどういうお考えであるか、この点について私は基本的な政府の考え方を一応今明確にしておいてもらいたい、かように思う次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/71
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072・神田博
○神田国務大臣 今のお尋ねの問題は、これは非常に大事なことでございまして、どういうことに結末をつけるか、これは今後の交渉に待たなければならないわけでございまして、しかも問題自体が私の主管外のことになって参っておりますのでお答えしかねる点もあるのでございますが、ただ一つ最後にお述べになりました在外財産の問題の処理というものは、在外財産の問題から発生した在外同胞の処遇ということについてはこれで一応私どもは終結を告げさしていただく、こういうふうに考えておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/72
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073・中井徳次郎
○中井委員 今の大臣の御答弁、もう少し時間をいただきたいと思うのだが、大きな問題だろうと思うのであります。あなたは主管外と言われました。条約を結ぶときには外務大臣と、あるいは内閣総理大臣その他政府が一体となってお結びになるでありましょう。しかしその処理の問題の中で、たとえば百億ドルの賠償を要求する、しかし八十億ドルまでは在外資産でもって差引をしてあと二十億ドルだけを、金額はもっと減るでありましょうけれども、そういうことになりました場合に、政府は一般の在外からの引揚者、この引揚者と政府との間における権利義務の関係ははっきりとこの際確立をして、そして政府はその引揚者に対して今度は明らかに法的に義務を持つようになる、かように思うのであります。そういう点について、今のような二万五千円か何かで、ししとして四十年も朝鮮や満州におって何億という財産をつぶして帰った人たちに二万五千円ではいさようならということは、これは常識的にも法制的にもとうていわれわれは考えられないのでありますが、今の大臣の御答弁は何か勘違いしておられるのじゃないかと思いますので、これはもう少しはっきりとその辺のところを御回答が賜わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/73
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074・神田博
○神田国務大臣 在外同胞、あるいは在外に資産を持っておった邦人、あるいは在外同胞でなくとも内地におって外地に資産を持っておったというようなことは、これは相当莫大なものがあったことは今お述べの通り私もよく承知いたしております。そこで問題は、これは今のお尋ねに対してお答えになるかどうか、はなはだ私もちょっと自信がないのでございますが、これは扱ったときのいきさつをお答え申し上げますとあるいは今お尋ねのお答えになろうかと思うのでございます。在外財産の問題を扱うということになると、これは内閣においても厚生大臣の仕事ではないのでございまして、外務大臣がやるか大蔵大臣がやるか、どなたか担当大臣がおできになると思います。石橋内閣の一月の閣議におきまして、在外引揚同胞から在外財産の補償をしろという要求は非常に強い、そこで政府としても在外財産問題審議会を作っておって、その審議会の答申が昨年の暮れになって出ておる。この答申案によると、政府が在外同胞の財産の補償をすることについての責任があるかないかということについては、結論が出なかったことも御了承の通りと思います。そこで政府としては補償はしないという見地に立って引揚同胞が全生活の基盤を失なったということで、一つ審議会の答申も尊重をして処遇をいたしたい。そこでそういうことになると厚生大臣の主管になるから、厚生大臣が担当大臣として主管を、する、こういったいきさつで実は御指名を受けたのでございまして、その見地に立って今度のこうした法案の提案を見た、処置をいたした、こういうような関係でありまして、ただいまお尋ねになられましたことにつきましての答弁を私がこれ以上申し上げるということは適当ではないのじゃないかというような気もいたしますので、以上で御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/74
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075・中井徳次郎
○中井委員 いきさつはよくわかりました。よくわかりましたが、そういうことになりますと、たとえばサンフランシスコ条約その他におきまして在外財産は返す、私有財産は返すというふうなことで、他国においては、南アメリカの方その他においてはたくさん返してもらっておるところもありまするから、おそらく私はそういうことになれば、あなたの答弁とは逆に、これはあなたの主管でなくなるかもしれませんが、外務省になるかもしれませんが、そういうことになれば政府が返す義務がある。こういうことに法律的にはなってくると思う。それはないということになれば、これは憲法二十九条との大へんな問題が起る。一片の法律をもってしてはそれを否定するわけにいかない、かように考えるのでありますが、いかがでございますか。見解だけを聞かしておいていただきたい。その問題は必ずあとに残ると思いますから、この法案の審議に際しまして念のためにお尋ねをいたしておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/75
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076・神田博
○神田国務大臣 よくわかりました。もちろん在外に資産を持っておる方々は、みずから在外財産を放棄すれば別でございますが、そういうことはなさらぬでございましょうから、今お述べになりましたような事情で在外資産が返ってくるという場合において、それが所有権者によってその財産の所有が認められると言いましょうか、配分を受けるということは当然のことだと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/76
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077・中井徳次郎
○中井委員 さらに念を押しておきますが、その場合に、おそらく韓国、北鮮、中共などというのは、私有財産についてはそのまま返すというんじゃなくて、賠償の対象にする。何万ドル、何千万ドル、こういうふうな対象にするということになれば、それで差引勘定することになれば、金額において政府と引揚者との問の権利義務の関係が起る。この点につきましては、サンフランシスコ条約などと多少変った内容のものがあるいは出てくるんじゃないかと私はおそれますのでお尋ねをするわけでありますが、政府が払うべかりしものをそういう在外資産でもって払う場合には、その金額だけは政府が当該在外財産の所有者に対して補償しなければならぬ、こういうことになってこようと思うのでありますが、いかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/77
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078・神田博
○神田国務大臣 何と言いましょうか、仮定のことでございまするが、そういうことが予想され、そういうことが起きた場合においては、今お述べになったような措置がとられることはあり得る、こういうふうに私考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/78
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079・山下春江
○山下(春)委員 関連して。今の床次先生や中井先生の御質問とは性質が違いますが、しかしやや関連しておる問題であります。この法律が施行されましてから後に起る事態の中の一つに、今ソ連や中国内で釈放されて一般邦人になっておるケースがあります。その人たちは、この法律施行後に帰ってくる人たちがあり得るのでございます。その人たちにもこれを適用していただけるかどうか、あるいはこの法律が施行された後に死亡がはっきりした者も出てくるのであります。そういう者はこの法律でやっていただくことができるかどうか。できればソ連や中国にいる何らの処遇を受けていない一般邦人、多年苦しんできた者が扱っていただければ、私どもは非常に筋の通った意味で処遇がつくと思いますので、その点を伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/79
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080・神田博
○神田国務大臣 今のお尋ねは、その通りに考えております。もちろんなくなった場合は弔慰金というようなことになると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/80
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081・受田新吉
○受田委員 私昼からと思ったのですが、今話が出たのですが、今在外財産問題審議会を廃止されるということについて、厚生大臣がこういうことをやられるということは越権だと申し上げたのですが、それは中井さんからも問題が出た通り、まだ残された国際的な問題がある。韓国との関係とか、北鮮の引揚者、咸鏡北道にたくさんいる人々の引揚げなどの問題が残っておる。また没収日本人財産返還法という米国で審議中のやつがある。こういうようなものは一括して国際的な、法律的な研究をする機関が要ると思うのです。それを今これで厚生省所管事項として片づけてしまうと、そういう問題をだれがやるか。引揚同胞対策審議会設置法は残っておる。これは一年ごとに廃止する廃止すると言って五年も六年も七年も今日まで長引かしておるじゃないですか。引揚同胞対策審議会というものは期限つきであったもので、今日までほんのわずかな問題を討議するような格好に見ておられるか知りませんが、これは大事な機関である。それと同様に、この審議会をこの法律で廃止するということは、そういう問題の研究機関がなくなってしまうのであります。それを私は今お尋ねしておったのですが、これを一つお答え願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/81
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082・神田博
○神田国務大臣 先ほど来お答え申し上げた通りでございまして、大体今中井委員からもお尋ねがございましたが、この審議会があろうとなかろうと、一切の行政というものは政府が当然責任を負ってやるべきでございますから、ここで廃止をいたしましても、また必要の時期が参りますれば、これは何らかの形で生まれてくるわけでございまして、ただいまといたしましては、先ほど述べたような、この審議会に託された一つの重大な任務が成果を上げた、そこで一応ここで終末をつけようというか、礼をあつくして廃止をいたしたい、こういう考えなんでございまして、お気持の点はよく了承できるのでございますが、政府の方でも今申し上げたような事情であることも一つ御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/82
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083・受田新吉
○受田委員 大臣は、厚生省所管外のことにわたる問題もあるというので非常に遠慮された向きがあるのですが、総理府設置法の関係もありますので、昼からは大臣とあわせて石田官房長官にも御足労をいただいて、お二人に結論を出していただきたいと思いますので、一つお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/83
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084・山下春江
○山下(春)委員 先ほど局長からせっかく御答弁願ったのですが、席を譲らなければならないので、しり切れトンボになったのであります。先ほど局長は、山西問題で、現地復員をした者は、抑留をやむなくされた事情が判明すれば別途に考える、こう言われましたね。ところが、六カ月外地におった者となると、現地復員でもいいじゃありませんか。あの終戦のときに、現地復員の形になってしまった。しかし帰ったのがついこの間のことであるというならば、それでもいいはずでありますが、その前にこの山西組はこの中にお入れになったかならなかったか、大へん不勉強な質問をいたしますが、お答え願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/84
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085・田邊繁雄
○田邊政府委員 お答えいたします。山西組を特に入れるというふうには法律技術上書けませんので、その点ははっきり出てないわけでございますが、山西組は昭和二十七年四月二十九日以降引き揚げたものでございます。しかし、中には、外地に生活の本拠を持っておった方もあるわけでございます。まあ、あるかないかわかりませんが、あったとすれば、それは第二条の一号の方に入るのじゃないかと思います。向うで商売をやっておって応召したという方もあろうと思います。これは山西組であるかどうかということではないので、生活の本拠を失ったということで入るわけであります。
それから内地から応召されて、向うに行って、現地復員をされて帰ってきた人という従来からの問題は、現地復員を取り消すかどうかという一つの問題があるわけでございますが、これは先ほど来申し上げている通り、人事の問題でございますので、間違っておったということじゃないと、こういう問題は軽率にはできないわけであります。気の毒だから取り消すのだ、認めるのだということになりますれば、人事によって援護法の対象が今後どうにでもなるという悪例を残すことになると思います。もしこれに適当な措置を講ずるということであるならば、立法以外にはないのじゃないか、あるいは立法に準ずる措置をとる以外にはないのじゃないかと思います。単なる私どもの独断と申しますか、措置によって人事上の扱いをされるということは慎しまなければならぬと思っております。
それと離れまして、引揚者給付金の対象としてそれを考えるかどうかの問題につきましては、現地復員の原因となったその残留事情と、それからここに書いてあります「残留することを余儀なくされた者」ということの解釈を同一視するかどうか、こういう問題になってくるわけでありますが、現地復員の基礎となった事情と、ここに書いてある「余儀なくされた者」ということとは全く同じに解釈する必要はないのであって、この法にはゆとりがあると私は考えております。これはいろいろ他との関係その他もございますが、そういった気持だけを申し上げ、入れる余地はあるということだけを申し上げまして、実情に即して十分考慮を加えたい、こう申し上げておるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/85
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086・山下春江
○山下(春)委員 局長はわかっているようでありますから、これ以上追及いたしませんが、結局法改正以外にないということでございますから、法を改正した方がすっきりとするならばそうした方がいいと思うのでございます。要するに現地復員の起った原因ということですが、こういうことは局長もお認めになるだろうと思います。あのときの参考人等も引揚委員会で言うたこともありまして、まあそれは周知徹底されていなかったということでございます。現地復員とは、きのうまで敵国の非常な山の奥地に残っておった者が武装解除されるということであります。もし現地復員の命令があったと是認すれば、それはおそらく混乱期において非常な心細さというか、およそ周知徹底を欠いた点と精神上の受ける打撃とで、不徹底な結果に終ったであろうと思います。そういう混乱期にあったのでございますから、これは現地復員という措置がとられたのだと断定することも少し行き過ぎた気の毒な点もあると思いますので、その辺の法律に払う明文化されているものだから、法は曲げられぬということの気持もよくわかりますが、現地の起ったであろう実情もおわかりかと思いますので、まあ諸般の情勢を勘案して——あれはラーゲルにおりましたから、余儀なくの方です。これは全く余儀なくのケースに入ると思いますから、その辺を法改正をしなくても、実情に即した運用を守るのだと言っていただければ、法改正をいたしませんで、それらも二十七年以後ではあるし、当然入るものだと私ども了承していきたいと思いますが、その辺はどうでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/86
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087・田邊繁雄
○田邊政府委員 どうも話が二つのものを一緒にしておられるのじゃないかと思います。私は、現地復員を取り消すという措置については、単なる私どもの方の便宜論だけではいかぬ点があるのだということを申し上げておるのであります。それはそれとしておいて、かりにやむなく現地復員をしたことを是認するとしても、ここにいう「外地に残留することを余儀なくされた者」の中に入るかどうかということについては、十分考慮して参りたい、こう申し上げておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/87
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088・山下春江
○山下(春)委員 その通り、その二つを一緒にして言っておるのですが、現地復員を取り消すかどうかということで、取り消すことがうまくないとおっしゃれば、取り消さぬでもいいじゃないか。ということは、とにかく一般邦人として二十七年以後に帰ってきたのですから、それでもそのケースに入るじゃないかということで二様の方法で私は申し上げておるので、現地復員を取り消せば余儀なくの方がずっと生きてくるのです。取り消さぬ場合は一般邦人の中に入っているのですから、一般邦人は二十七年後に帰ってきたのですから、当然このケースに入れていただいてもいいのだ、こういうふうに解釈するのですが、それは前でございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/88
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089・田邊繁雄
○田邊政府委員 解釈としてはそれでけっこうだと思います。ただ私申し上げたのは、「外地に残留することを余儀なくされた者」という条文がありますので、山西組の一人々々について当った場合に、果して余儀なくされた者であるかどうかに若干疑問が出てくる。しかし、その疑問の点は、現地復員をした基礎になった事情と全く同じように解釈する必要はない、こう申し上げたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/89
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090・山下春江
○山下(春)委員 考え方は大体同じようでございますから、ぜひこれは一つ御研究の上適用されるように御配慮願いたいと思います。これで終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/90
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091・廣瀬正雄
○廣瀬委員長 それでは午後二時に再開することとし、暫時休憩いたします。
午後零時二十九分休憩
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午後二時二十四分開議
〔藤本社会労働委員長委員長席に着く〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/91
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092・藤本捨助
○藤本委員長 休憩前に引き続き会議を再開いたします。
休憩前の質疑を続行いたします。床次委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/92
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093・床次徳二
○床次委員 先ほど大臣にお伺いしたのでありますが、その点に関しまして少し次官に承わっておきたいと思います。今回の法案は在外財産問題審議会の答申を基礎として出されたと思うのでありますが、さようでございませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/93
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094・中垣國男
○中垣政府委員 今度の引揚者に対する給付に関する法律は審議会の答申に基いてなされたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/94
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095・床次徳二
○床次委員 全くその通りであると思うのでございます。それでこの審議会の審査の対象となりましたものは、在外財産を持っておった者で、しかも戦争によりまして引き揚げを余儀なくされた者が対象だと思うのです。従って本法の対象におきましてもそれと同様に、在外財産を持っておってそうして内地に引き揚げざるを得なくなった者を対象にしたのだろうと思いますが、その点は相違はなかろうと思いますがいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/95
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096・中垣國男
○中垣政府委員 外地に財産を持っておったところのそういう内容の問題につきましては、非常に広い意味の財産を持っておったというふうに御解釈を願いたいと思います。といいますのは、かりに会社であるとか、そういうところに勤めておった者は、特別に自分の財産はなかったかもしれませんが、生活の根拠そのものが外地で行われておったのでありますから、それもやはり一つの財産の形というふうに考えてやったものであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/96
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097・床次徳二
○床次委員 ただいまのお言葉によりまして、非常に実情に沿う考え方をお持ちのことをけっこうだと思うのでありますが、しかしながら一番問題になりますものは、多額の財産を持っておった者でしかもそれが全生活の基盤をなしておった者、これはきわめて明瞭なものであって、この中で一番処置を慎重に考えるべきものだと思うのであります。従って審議会の答申等におきましても、この在外財産が果して補償を受くべきものなりやいなやということに対しましては慎重な議論をしておられるのでありまして、ただ審議会におきましては必ずしも補償すべきかいなかというところまでは明瞭な結論に達せずに、しこうしてその実際上の処理が必要だという意味におきまして、結論的にいろいろの給付金その他の事業を示唆しておられるのが答申案の趣旨である、かように考えるのでありまして、従って私どもは在外財産を持っておって、しかもこの全生活の基盤を外地に置いてきたという者に対しましては、やはり本法案の対象とすべきが当然である、かように考えるのでありますが、この趣旨につきましては御異存はなかろうと思いますが、いかがでありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/97
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098・中垣國男
○中垣政府委員 お答えいたします。ただいまの前段において御指摘になりました問題につきましては、やはり審議会の勧告そのものは、なるほど給付に際しましては補償すべきであるという結論にはもちろん達していなかったのでありますが、何らかの形でこれらの人に給付すべきであるという結論は出たのでありまして、それに基いております。そこでほかにそれと同じようなものがあって、そういうものは全部本法の対象にすべきではないかという御意見に対しましては、これは必ずしもそうであるといって答弁しにくい点があるのでありまして、たとえば引き揚げ当時に秩序が比較的に保たれておったというような場合に、たとえば政府の考え方で一定の地区から引き揚げを命令等でさせた、しかもそれがまだ日本の官憲の秩序の保護の中で行われておった、そういう場合に、本法を適用すべきかどうかということにつきましては、今度の法律はそれを適用しておりません。しかしその内容におきましては、御指摘の通りにこれをどうするかということは、本法によらずに別個にこれは考えてみていいのではないか、実はさように考えておりますが、本法におきましてはそれらのものは全部除外をしておるつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/98
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099・床次徳二
○床次委員 別個に考えてもいいじゃないかという最後の言葉じりをとらえるわけではありませんが、さようなことになりますと、実はせっかく本法案を出された趣旨が相当没却せられるのではないか。私どもは今度の機会におきまして、大体戦前の在外資産という問題をこの法案の実施によりまして一応解決をしていきたいというところが趣旨であるような気がするのでありますが、しかし別個に考えていただくならばこれまたけっこうでありますが、本法と趣旨を同じゅうした方法によってもしそれをお考えになるならばぜひお考えをいただきたいと思うのであります。ただ問題はそこにも御答弁によって問題が残るのでありますが、私どもは引揚者が全財産を失ってきたということ、ここに大きな問題を見出すのでありまして、お言葉のように日本の官憲の力によりまして相当秩序正しい引き揚げによりましてある程度財産を持って帰った者に対しましてはそれほど本法の適用を考えなくてもよいのではないか、この点は確かにそうだと思う。答申案によりましても、全財産の基盤を失ったか失わないかということに対しましては、これは相当重点を置くのであります。私が今問題といたしたいのは、今度の戦争に関連いたしまして引き揚げて参りました者の中にいろいろな種類があるのでありまして、終戦を待ちまして引き揚げてきた引揚者もありますし、八月十五日以前において引き揚げて参りました者もあるわけであります。その引き揚げて参りました動機等を見て参りますると、日本の政府の命令によって引き揚げざるを得ない、また外地の事情によって引き揚げざるを得ない者がありまして、なるほど南洋その他内地の勢力のありましたところ、当時の日本の領土にありましてはある程度まで秩序正しく引き揚げられている。しかしこれらの人たちも引き揚げそのものは秩序が正しいけれども、財産そのものは置いてきたというのが大部分じゃないか。これは実情をごらんになればおわかりになると思います。いわんや日本の領土でないところ、マレー、シンガポールあるいはジャワというような区域におきましては、これは全く日本の勢力は及ばないのであります。ただ領事館その他日本の外交官の連絡によりまして、軍の作戦ということを考えましたために引き揚げざるを得なくなったのでございます。全くその事情は外国のしかも準敵国の立場にあるところの管理下にあったわけでございまして、従って財産その他の処分は全然しておらないのであります。ただ時期が日本政府の示唆命令によりまして非常に早く引き揚げてきたという状態なんでありまして、この点におきまして考えてみると、やはりこれらの人たちは、引き揚げの時期が八月十五日ではないけれども、内容におきましては本法において目的とするものとはほとんど変りがないものと私は考えておるのであります。むしろこういう人たちに対しまして本法と同じように適用を受けさせるということの方が純理にあうのではないか、かように私は考えておるのであります。ただ具体的な事例に対しまして政府としてはあるいは御調査が十分でなかったかとも思うのでありまするが、事情によりましては、少くとも日本政府の命令指示によりまして、しかもその当時の事情からいいまして全財産の基盤を失ってきている。今日場合によりましたならば、これまたいわゆるそれぞれの国における敵産管理の形におきまして、平和条約締結の際におきましてはこれらの私有財産があるいは賠償の見返りになることもあり得るかと思います。これは先ほども質疑のあったところでありますが、さような状態にはありまするが、とにかく本法の目標といたしまするところのものとは差がないという実情はおわかりいただいたと思うのであります。この点に対する御見解を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/99
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100・中垣國男
○中垣政府委員 お答えいたします。ただいまの問題につきましては、本法は、日本が敗戦をいたしまして、その結果日本の国権が及ばなくなった、そういう地帯から引き揚げてきた者に対する給付というものをば一応限定をいたしました関係上本法の趣旨を貫いて参ったのでありまして、御指摘のように内南洋であるとか、マレーであるとかその他の地区からも実際は同じような状態で引き揚げてきた者がおる、それらも補償をすべきではないかというお考えに対しましては、この法律とは別な立場においてやはり私どもも同様に考えております。そこでただいまのところこれらの引き揚げの状態につきましては非常に条件がまちまちであったろうと考えられるのでありまして、それを一言にこうするああするというような問題にお答えいたしますような資料は実は現在のところ持っておりません。ただしほんとうに本法の適用を受ける人と同じような人がまだあるという問題につきましては、やはり今後の問題といたしまして十分考えてみたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/100
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101・床次徳二
○床次委員 ただいま述べられましたところによりまして、政府の提案せられました法律案の中には、いわゆる在外財産を持っておる引揚者に対しまして適用しておらない部分がある、残された部分があることが明らかになったのであります。しからば在外財産問題審議会そのものにおきましてかような区別をしておったかどうかという点なのですが、在外財産問題審議会の答申等におきましては何らその点においては区別はなかったのだと思うのです。事情そのもののみを対象として考えておる。ただこれが政府の法案化する際におきまして事務的な一つのワクをつける場合、終戦時というものが、大部分がそれでありますので、大部分の該当するワクというもののために一つのワクができてしまって、そうしてまあ一つの異例でありまするが、終戦前の引揚者が漏れてしまったのじゃないか、かように私ども考えるのでありますが、一応その場合に承わりたいのは、在外財産問題審議会におきましては必ずしもこれを除外するつもりではなかったのじゃないかと思うのであります。この点の御意見いかがでありましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/101
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102・中垣國男
○中垣政府委員 御指摘の通りに審議会の答申というものは特別にそういう区分けをするような答申はしておりません。ただ引揚者に対する給付という問題をいろいろ検討いたしました結果、終戦に伴う引揚者に対する措置ということを考えて参りますときに、やはりそこに一定の線を引いて、こういうようなやり方がいいだろうということでこの法律を出したわけなのです。そこで御指摘の、この区別をしていないにもかかわらず別にやったということでありますが、それにつきましては先ほども申し上げましたように、引揚時の状態によりまして——繰り返すようでありますが、非常に秩序正しくあるいは一定の荷物等持って帰れるような場合もあったようであります、あるいはまた先ほど御指摘なさいましたように、そうでなくてほんとうにそのまま帰ってきたという場合も、この適用されている以外にもあるのじゃないかと考えます。そういうものにつきましては、やはり今後の問題といたしましては厚生省としても考えていかなければならない、かように実は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/102
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103・床次徳二
○床次委員 これは事情をお調べいただきますれば明瞭になると思うのでございまして、大体本法と同じような状態にありまするものは本法の中において見ていただくなり、あるいは今後において処理せられるのが当然必要だと思うのです。私の私見を申し上げましては恐縮でありますが、むしろこの際本法と一結に解決せられる方がいいと思っておるのであります。これは希望として申し上げておきます。なおただいまの御答弁の中に、引き揚げいたしましたときの条件いかんによりましてだいぶ事情に差があるということでありますが、この点は答申案の中にも多少そういうことに触れておるのであります。すなわちすでに生活の基盤の再建をなしたと認められる者もあるのであるから、これらの者を除外する等の配慮を加えることが国民感情にも適合し、世論の納得も得るものと考えられるというふうに書いてあるのでありまして、従って引き揚げた事情いかんによりましてもうその必要はないというものも確かにあり得る、かように考えるのであります。しかしながらこの点は事情がよくわかっていないとおっしゃるのでありますから、あえて追及はいたしません。これは一つ政府において十分お調べをいただきまして、私が申し上げますように本法との間に大した差がないあるいはどの程度の差があるかということを御記載をいただきまして、必要な処置をとっていただきたいと思うのであります。私自身から意見を申し上げまして恐縮でありまするが、つまり引き揚げました時期が終戦より前でありまするために、ある程度までの生活の基盤は内地におきましてその後できたかもしれぬ、ただ帰りました当時が戦争当時に入ってしまったためになかなか再建の基盤を得なかった人もあるわけでありまして、この点に関しましては一つできるだけ資料についてお調べをいただきまして、せっかく解決せられるならば本法をもちまして一応在外者の引き揚げ、しかも財産を残しております者の引き揚げに対しましては処置をいたしまして、そうして一応再建のめどを得られるような措置を講ぜられることが必要だと考えております。私の聞きました範囲内においてただいま申し上げましたような事情に該当する者は数はそう多くないのでありまして、大体小一万、資料の非常に調べやすいのは、内南洋のいわゆる日本官憲のもとにあったところは資料は確かに明らかに相当残っておるはずであります。それ以外の日本領土外にありますものに対しましては、外交文書等によりまして経過はおわかりだと思います。なおその当時の取扱いは大体わかっておるのでありますが、一応一つお調べいただきまして、せっかく本法を提案せられました以上は、本法案がほんとうの趣旨目的を達するように一つ今からでも御調査を追加せられることを要望して私の質疑を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/103
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104・藤本捨助
○藤本委員長 戸叶委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/104
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105・戸叶里子
○戸叶委員 私伺いたいと思いましたことは、午前中大体質問となって大臣に聞かれたようでございますので、二、三点だけ伺いたいと思いますが、おそらくこれもあるいはどなたかから質問に出ていたかもしれないと思いますがお許し願いたいと思います。大体もしも日本の国で、社会保障制度がもっと確立しておったならば、こういうふうな法案が出なくてもよかったんじゃないかと思うわけですけれども、今日のような社会保障が満足でないためにこれが出てきたんだろうと私は考えるわけですけれども、そこで十四条の三項に、「第一項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」こう書いてありまして、いわゆる国債を流してやみ金融を発達させるようなことをしてはいけないというような意味だろうと思うのです。ところが実際問題として生活に困っておられるような方がこれをもらった場合にはどうしてもすぐにお金にかえたいというふうなことから、やみ金融というようなものを利用するという傾向が非常に多くなるんじゃないか、それからまたそれをとめるということはできないんじゃないか、こう思いますけれども、これに対してのお考えはどうですかということを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/105
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106・中垣國男
○中垣政府委員 戸叶さんにお答えいたします。ただいまお尋ねの公債を一般の担保にしたり、またこれを自由に担保設定等をさせないのは不当じゃないかというお尋ねに対しましては、一般にこれを市販にいたしますと、不当な安い価格になってしまいまして、全体の所有者の財産価値を低めるような結果になるおそれがあると思うのです。そこでこれを全然担保にして引き出すことができないかといいますとそうでないのでありまして、国民金融公庫等ではこれを担保にいたしまして金を借り入れることができる措置をとっておるのであります。
〔藤本社会労働委員長退席、廣瀬海
外同胞引揚及び遺家族援護に関す
る調査特別委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/106
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107・戸叶里子
○戸叶委員 そういうことも考えられると思いますけれども、それが徹底しなかったような場合に、二万五千円の額面をまあ二万円あるいはまたもっと安くしても売ってしまうというような場合が実際問題として出てきやしないかということを懸念するわけです。しかもそういうことをしなければならない人たちが非常に多いんじゃないか、こう私は考えるのですが、この点はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/107
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108・田邊繁雄
○田邊政府委員 実際の問題として御懸念のような場合が発生するおそれは多分にあろうかと思います。遺族国債の場合におきましても、そういう点は当初非常に心配されたところでございます。遺族国債の場合におきましては、当初国民金融公庫で国債を担保にして金を貸し付けるという方法をとりましたが、その後さらに政府においてこれを買い上げるという措置を講じたのであります。計画的に買い上げると申しますか、生活保護法の適用ある方、また生活保護の適用を受けないがボーダーライン階層にある者に対しましては政府から各県に割り当てまして買い上げを実施しておるわけであります。本法におきましても国債の護渡担保でございますので、当然政府または公共団体が買い受ける場合も予想はいたしております。法律上そういう道が開けるように予想いたしております。これは政令でなっております。従って遺族国債と同じような融通が可能である道を開くつもりではありますけれども、果して買い受けるかどうかということは、国債整理基金特別会計全体のワクで可能かどうかという問題がございますので、今後大蔵省当局にも実情に応じて十分御考慮いただくようにお願い申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/108
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109・戸叶里子
○戸叶委員 私がそういうことを申し上げます理由は、非常に裕福とまではいわなくても、五十万くらいの収入のある方が、一年に二千円なり、二千五百円なりをもらっても大して影響がないけれども、もっともっと困った方々で、もっともっとたくさんお金の取れるようにしてあげなければならぬという場合が非常に多いのじゃないか、こういうふうに考えますので、この法案の全体から見ましても、そういうような考慮が払われておらない点を非常に心配するわけでございまして、今田辺局長が言われた点から考えてみまして、ぜひ遺族国債のような取り計らい、たとえばボーダーライン以下の人とか、ボーダーラインにある人たちに対して、そういう考慮を近い機会にお計らい願いたい、こう思うわけでございますが、いかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/109
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110・中垣國男
○中垣政府委員 お答えいたします。計画的な買い上げ等につきましては、その公債の整理基金等の財政的なワクの問題を考えまして、それで御指摘通りに措置して参りたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/110
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111・戸叶里子
○戸叶委員 もう一つは、きっとこれも午前中に問題になったことだろうと思うのですけれども、今後日本とまだ国交回復がされておらない国とか、あるいはいろいろ国交上懸案になっている国との間で在外財産がある場合に、その政府との交渉においての結果、在外財産が取れるようになるとか、取れないようになるとか、いろいろ懸案中の問題があると思いますが、どういうふうにきまってもこの法案で解決ができるというふうにお考えになっていらっしゃるか。それとも今後の決定いかんによっての何か腹案を持っておられるかどうか、この点を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/111
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112・中垣國男
○中垣政府委員 お答えいたします。ただいまのお尋ねは非常にむずかしい問題だと思うのでありますが、実際の問題としましては、国交が回復して参りまして両国の政府が話をしました結果、あるいはその個人の財産というものが返還される場合があるかもしれないと思います。そういう問題が将来あるとしましたならば、そのときにやはりあらためて考えていかなければならない問題だと考えております。ただいまのところそういうことがあり得るかどうかという問題につきましては、どうもはっきりとしたお答えがいたしにくいのでありまして、もしそういうふうなことになりましたならば、そのときになお考えて処置していかなければならない、かように思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/112
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113・戸叶里子
○戸叶委員 その問題が起きたときに考えるというふうな御答弁でございましたけれども、実際問題としてすぐ目の前に迫っている韓国との間の財産の問題、こういうふうな問題等もあるわけでして、この法案を審議されるときに当然起きてくるような問題に対しての何ら腹案も持たずに臨まれるということは、少し私は危険ではないかと思いますが、この点の見通しといいますか、話し合いといいますか、そういうことについては何も考えておられないかどうか、もう一度伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/113
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114・中垣國男
○中垣政府委員 本法の趣旨につきましては、先ほど来御説明申し上げた通りでありまして、これを考えました当時におきまして、つまり国権の及ばなかった地方から引き揚げた方々が生活の基盤を失って、そうして帰ってきたのであるから、それに対する更生の資金を給付していくというような考えに基いてこれはやったものでありまして、特定の国と交渉した結果、個々の財産が返されるというような場合につきましては、実は何らの考慮はいたしておりません。ただしそういうことがあり得る場合もあると考えますので、そういうような国交が正常化した場合におきましてそういう問題が出てくれば、それはそのときに十分考慮しなければならない問題だと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/114
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115・戸叶里子
○戸叶委員 これは厚生省だけでは解決のできない、あるいは外交上の関係もありますことで、外務省とのお話し合いということも必要になってくると思うのですけれども、この法案の趣旨から言いましても、そういうような点に全然触れていない。それで触れていないということで片づけられてしまって、あとになってもしも大きな問題でも起きるようになったら、あるいはまた他に波及するようなことがあっても私は困ると思うものですから、今念を押しておきたい、こういうわけなんでございますけれども、厚生省だけでおきめになることができないというならば、今あえてどういうふうな考え方を持っていられるかということを追及はいたしませんけれども、この際よく考えておいていただきたいと思いますことは、その場になって考えるということでは、私は必ずほかの方に及ぼす影響が多くなるのじゃないか、こういうふうに思いますから、この辺は今のうちによく御考慮願っておきたい。こういうことを要望したいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/115
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116・中垣國男
○中垣政府委員 戸叶さんにお答えいたします。たとえば在外財産と申しましても、政府の財産であるとか、法人とか、その他の社団法人等の財産あるいは個人の財産といろいろあると思うのでありますが、国交の正常化に伴いまして、両国の政府間におきましてそういう問題、たとえば個人の場合等に日本に返還される、これはまことにけっこうでありまして、それは期待しておるのであります。そういう場合のことは全然考えてはいないかというようなお言葉でございますが、いろいろ考えてはおりましても、結論的にそれをどうするというようなところまでは、実は飛躍した考えを持っておらないということでありまして、もちろん返していただくことは大いに歓迎しているわけなんです。そこで、そういうような個々の個人に対しまする在外財産の返還を相手国がした場合、そのときはそういう事実に基きまして、政府としてやはりこれについては措置をとらなければならないと考えております。今後もそういうふうに努力をして参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/116
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117・戸叶里子
○戸叶委員 今の政務次官の御答弁でございますけれども、外国から返してもらいたい、そういうふうなことに触れているわけじゃなくて、たとえば具体的な例をとりますと、韓国との間の問題なんですけれども、韓国との話し合いで、大体韓国にある日本の財産というものは放棄したような形の結果になると思うのです。そういうような場合に、またそれに関係のある人たちが政府に対してそれの補償というようなことを言ってくるようなことはないかどうか。そうした場合に何かの腹案を持っておられるかどうか、こういうことを先ほどから私は懸念したわけなんですが、これに対してのお答えを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/117
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118・中垣國男
○中垣政府委員 韓国にある日本人の財産というものは、御承知の通りに、その財産の請求権をめぐりまして、ただいま外交上非常にいろいろ交渉しておるようでありますが、その際にただもしそれがゼロになった場合に、日本政府として何とか考えるべきではないかということにつきましては、ただいまのところ実はそれを何とかしてやろうという考え方は持っておりません。本法は国権が及ばなくなった時代におきまして引き揚げてこられた方ということに一つの線を引いておりまして、これを給付することによって少しでも手厚くしてやろう、こういうことでありますから、ただいまの段階においてはその程度よりお答えがちょっとできません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/118
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119・戸叶里子
○戸叶委員 誤解のないように申し上げておくのですが、私は何とかしてやれとかやるなと言うのではなくて、ただそういうような問題が起きたときに、何らかの腹案を持っておらないと、政府としてほかの方の国との関係でまた問題がありはしないかというので、念のために伺ったわけでございまして、私は別に何とかしろとかするなとか言ったわけではないのですから、その点御了承願いたいと思います。
次にもう一つ伺いたいのは、二十三条に「この法律により厚生大臣に属する権限は、政令で定めるところにより、都道府県知事その他政令で定める者にその一部を委任することができる。」とありますが、政令で定める者というのは何か。今何かお考えがおありになるかどうか、これを伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/119
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120・中垣國男
○中垣政府委員 お答えいたします。たとえば沖繩等におきまして日本政府南方連絡事務所に給付金を受ける権利を認定する権限を委任するような場合が、そういう場合になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/120
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121・戸叶里子
○戸叶委員 今考えていらっしゃるのはそれだけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/121
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122・中垣國男
○中垣政府委員 ただいまのところそうでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/122
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123・戸叶里子
○戸叶委員 巣鴨の戦犯の関係のことはきょう午前中に出たようですし、それから現地復員の問題も出たようでございますから、私の質疑はこれで打ち切りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/123
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124・廣瀬正雄
○廣瀬委員長 受田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/124
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125・受田新吉
○受田委員 まずこの取扱いに関する根本的な問題として、昭和二十九年七月一日法律二百一号で出た総理府設置法の中に、在外財産問題審議会というものが入れられたわけなんですね。ところがこの審議会なるものは最初どういう趣旨でできたかということについて提案理由の説明があるわけなんです。この説明の中に、在外財産問題の処理はきわめて主要であって、閣議決定によってすでに在外財産問題調査会というのを一応作っていろいろやったが、しかし最終決定にはまだ相当の重大な問題があるので、さらにこれを総理府の中に入れて慎重に検討する必要があるという意味でこれが設けてあるという規定があるわけです。調査会から審議会と発展してきておる。ただ答申が出たら片づくという意味の設置理由というわけではないのです。ところが二十九年の七月一日に法律二百一号で設置された在外財産問題審議会なるものが、実際に総理大臣から諮問のあったのはいつかというと、二十九年の七月一日と三十一年六月四日の二回にわたって諮問があった。それで二回目の諮問について今度答申したわけなんですが、この答申が出たらこの審議会のお役目は終ったものだ、あとは在外財産問題を審議する必要はないとお認めになるかどうか、お答えを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/125
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126・中垣國男
○中垣政府委員 厚生省といたしましては、終戦後におきまして生活の基盤を失った人たちや国権の及ばなくなった地方から帰ってきた、そういう人を対象として本法を出しておりますので、厚生省といたしましてはこの審議会はもうやめてもいい、かように実は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/126
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127・受田新吉
○受田委員 厚生省はやめてもいいという御所見でありますが、きょう三時からの官房長官及び厚生大臣の御出席はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/127
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128・廣瀬正雄
○廣瀬委員長 官房長官は急に病気をされまして、副官房長官も工合が悪いそうです。内閣の方から審議室長が見えておりますから、審議室長に質問して下さい。それから厚生大臣は間もなく見えるだろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/128
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129・賀屋正雄
○賀屋政府委員 お答え申し上げます。ただいまお話のように、在外財産問題審議会は、昭和二十九年に総理府の付属機関として設けられたものでございまして、最初の諮問は在外財産問題の処理方針いかんということでございまして、この諮問に対する答申を、当時の九人の委員の方々でいろいろ御審議をいただいたのであります。しかしながら、この問題を法律的あるいは条約上の見地からどういうように処理するかという点になりますと、なかなか議論が輻湊いたしまして、容易に一致した結論を得ることができない。しかしながら、一方において現実に在外財産を置いてこられた引揚者の方々が、非常に生活にお困りになっておるという現実の事実がございまして、いつまでも法律論あるいは条約の解釈論等に時日を費しておりましても片がつかないということから、審議会の構成等も変えまして、御指摘のように昨年の六月新しく在外財産問題を処理するために、引揚者に対する措置をどうしたらいいかという観点に切りかえまして、御審議をわずわらすということにいたしたわけでございます。その結果、受田委員もこの審議会の委員にお加わりいただきまして、御承知の通り十六回にわたってきわめて熱心に御審議をいただいたわけでありまして、その結果が昨年の十二月十日の答申に相なったわけでございます。この答申の中にも明らかにしてありますように、いろいろな措置を並べまして、これらの措置をとることによって、多年にわたる懸案の解決をはかることが適当であるというふうに述べられておるのでございまして、在外財産の処理の問題について、法律的な問題はあるいは後に残るかもしれませんが、ともかく最も焦眉を要する、引揚者に対する在外財産を置いてきたことから生ずるいろいろな措置を、この答申の線に沿って、今回御再議願っておりますような法律案によりまして解決するといたしますれば、この審議会が設けられました一番大きな使命といいますか、目的は一応終了したと考えられますので、この審議会はこの際廃止するのが適当である、こう考えた次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/129
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130・受田新吉
○受田委員 これは期限付の機関として設置したものではないと私は思うのでございますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/130
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131・賀屋正雄
○賀屋政府委員 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/131
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132・受田新吉
○受田委員 そうすると、今賀屋さんが申されたように、答申に対して一応のピリオドが打たれるようなりっぱな法案を出された、これでごかんべん願いたい。従って所期の目的は達したので、これを廃止したいという御意向と了解してよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/132
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133・賀屋正雄
○賀屋政府委員 先ほども申し上げましたように、法律上あるいは条約上の問題等は未解決に残っておりますが、今日なし得る在外財産問題に関する措置といたしましては、今度の答申によって解決されたものという考え方に基きまして、この審議会の目的は十分達したという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/133
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134・受田新吉
○受田委員 政府委員にお尋ねしますが、引揚同胞対策審議会というのが終戦直後から、昭和二十三年だったと思いますが、期限付でできておったわけであります。それを漸次一年ずつ延長してきたわけなんですが、当時の行きがかりと申しますか、この引揚同胞対策審議会の中に在外財産の問題も検討するようなことが内容に私はあったと思うのです。ところがそれでは不十分だというので、またこういう審議会もできたわけなんです。従って引揚同胞対策審議会というものは、看板だけで大した仕事はしなかったという批判を受けながらも、今日長期にわたって続いてきたという理由と比べてみると、この問題はまだ条約上の問題、国際間の諸問題、また未解決地域に関する問題等々、幾多懸案が当然調査研究されなければならない性質を持っておると思うのですが、それと比較して、この在外財産問題審議会の重要性が薄いような形に今回法条の改正がなされたのでございますが、それとの比較論に立った御所見を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/134
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135・田邊繁雄
○田邊政府委員 引揚同胞対策審議会は、同じく法律によって設置せられ、総理府に置いてある審議会でございますが、その審議事項の中に、当初在外財産に関する事項というものがあったことは御承知の通りであります。その後引揚者団体等におきましては、この問題は別個の角度から審議をすることが適当であるということで、主として財産ということに重点を置いて、在外財産問題調査会、後にそれが発展して審議会になったのでございますが、在外財産問題審議会を廃止して、引揚同胞対策審議会を置いておくことはおかしいではないかという御議論でございますが、それはおかしくないと思います。と申しますのは、引揚問題は御承知の通り、未帰還問題という広い意味におきまして、今日まだいろいろ問題が残っております。在外財産問題の方は、これは広い意味においての在外財産と申しますか、生活の基盤を失ったという問題に関連しての引揚者の処遇につきましては、政府としては今回の処置が原則的に最終であると考えておりますので、先ほど政務次官からお答えのありました通り、厚生省としてはこの審議会が廃止になってもいいのではないか、こう考えております。純粋の在外財産問題につきまして、条約上その他まだいろいろ問題が残っておるとおっしゃいますが、事態が残っておるのでありまして、事態がどう発展いたしますか、これは政府におきましてその必要はないという議論があるのではないかと思います。
なお在外財産問題審議会におきましても、多年にわたる懸案の問題の解決をはかるということが適当であるということをいっておりますが、この措置を講ずるならば、多年の懸案は解決するという考え方を在外財産問題審議会もお持ちではないか。受田先生もそういうお考えに立って審議会にお加わりになったと思います。従って政府の意見は別として、審議会としては今回の措置を講ずることによって多年の懸案を解決する措置を講ずることになったのだという考え方をお持ちになったのではないかと私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/135
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136・受田新吉
○受田委員 懸案を解決すべきであるという意見は、未解決になっている残余の問題をほうっておけという意味じゃないのです。われわれの一応の段階としてそういう答申がされたのであって、政府に意があるならば、在外財産問題審議会の機構も必要でないと、うたってはないのです。当然われわれの所期の目的は達せられたので、この審議会は解散せよ、廃止せよということはどこにもうたっていないわけです。従って国会から出たりする議員のメンバーくらいは、一応の段階においてはお許しいただいていいと思うのです。けれども法律的にあるいは国際間の問題等の解決に当っては、条約的にあるいは今後の外交交渉の問題等において、いろいろと理論的にも調査研究をしなければならない必要が残っておる。そういうことになるならば、引揚同胞対策審議会が長期にわたって一年一年と延長してきて、その未解決事項の範囲は、ある程度対象人員は減ってきても、事項の重大性には変りないというので、今日までこれが延長されたわけなんです。それと同じように、一応の当面の対策ができたからといって、在外財産問題全般の問題は片づいていないのですから、そうした専門的な立場の人々によって、残された問題の検討を加えるということは、私は筋としては通るのじゃないか、かように思うのですが、そういう残余の問題はどういう取り計らいによってしようとなさっておるのか、審議室の最高責任者である賀屋さんより御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/136
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137・賀屋正雄
○賀屋政府委員 お説の通り条約等で対外的に在外財産の帰趨がどうなるかということが、きまっておりません地域もまだたくさん残っております。その方のそういった在外財産問題と関連して、対外的な解決をどういう方法でやるかということは、当初在外財産問題審議会においても予想しなかった問題でございまして、ある何らかの措置がとられたあとで、その在外財産問題について自余どういう措置をとるか、その措置を研究するというのがこの審議会の主たる目的であったわけでございます。将来の問題につきましては、これは外交上の問題といたしましても非常に重要な問題でございますので、外務省等が主体となられまして、主張すべきところは主張するということで、その点につきましては政府部内において措置方針を考えて、対外交渉に当るということになろうかと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/137
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138・受田新吉
○受田委員 専門的な機関として、調査研究機関として何かの形のものが残っておって、有害無益とは私は思わないのでございますが、いかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/138
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139・賀屋正雄
○賀屋政府委員 お答えいたします。ただいま申し上げましたように、今後の対外折衝の際にこの在外財産という点を頭において、どういうような態度でもって外交方針等を進めていくかという点につきましても、もちろん民間の有識者の意見を聞くということは、決して有害なことはないと考えておるのでございますが、ただいまのところでは、そのために特に審議会を残しておく必要はないという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/139
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140・受田新吉
○受田委員 審議会をこのまま存置しておくことにおいて、費用がどれだけかかると計算されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/140
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141・賀屋正雄
○賀屋政府委員 予算の点でございますが、こうした審議会の予算はその構成員のいかん、数、性格等によりましていろいろございますが、大体年間百万円前後でございまして、予算といたしましては、そう大きなものは必要でないと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/141
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142・受田新吉
○受田委員 その百万円という予算が、これからもそのままの形で必要かどうかということに私は疑義があるのです。これは金を使うまいと思えば使わなくても済む審議会です、われわれ委員としても一文も金をもらっていないし、みなサービスで出ているのだし、それから学識経験者の立場の方に審議会を開くからちょっと出席せよということであっても、これはわずかのものである。百万円も経常的な金は私は要らぬと思うのです。ほんの気休めの予算があればいいわけなんです。そういうスズメの涙程度の儀礼的な予算を計上してこの審議会が存置されるとすれば、今後の問題を討議する機関としてこれを存置しておかれることが、今後の問題処置に当っての一つの橋頭堡といいますか、足がかりがそのまま続けられておるという意味においても、妥当ではないかと思うのです。従って政府はこういう問題を簡単に考えて、国民に与える心理的な影響とか、あるいは国際的に考えても、在外財産問題は片づいたから、今後条約の問題等においても日本は冷淡だというような弱腰な気持にならせるおそれもある。また韓国とかあるいは北鮮の未引揚者の問題とか、直接われわれには日本政府としての態度、国民的な感情を盛り上げて、あちらに伝えるという意味においても、重要な要素がたくさん残っておる、そういう際に、こうした機関があって、日本国としては常に検討を加えているのだということを示す方が、対外的にも日本の立場をはっきりしていいのじゃないかと思うのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/142
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143・賀屋正雄
○賀屋政府委員 今後の対外的な問題の点からこの審議会を残しておいてはいかがかという御議論でございますが、在外財産問題審議会という形で日本の対外的な主張を高めていくという方法が果して適当であるかどうかという点については、まだ政府としては踏み切りがついておりませんので、一応こうした大きな引揚者に関連する措置がとられました機会に、この審議会は廃止いたしまして、また別の観点から、必要であれば、そのときは、またあらためて考える、こういうことにすべきではないかという考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/143
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144・受田新吉
○受田委員 西ドイツの在外財産処理に関する取扱い、あるいはイタリアの連合国に対する在外財産問題の処理の取扱いという問題についても、それぞれの国で、日本とは変った立場で、国内法的に在外財産処理の問題を適当にするように条約の中にうたってある。そういうあり方から見ると、日本の場合は、在外財産については、条約的にも、これら敗戦国、同じ立場に立つ国国と比べてきわめて不平等な取扱いがされ、冷淡な取扱いがされてきたということにおいては、賀屋さんもよく御存じの通りなんです。従って日本が条約的にも在外の私有財産を全く無残にもはぎとられたような形に現状が置かれておるという際に、今後条約の改正の問題とか、あるいはまた在外財産の処理について未解決の国々との交渉に当ってのかけ引きの根拠になる問題とか、いろいろ検討する必要があるということになるならば、当然そうした理論構成をする機関でもあり、また一方においては国際的に一つの筋を通した審議機関として、日本国の意思を代表する機関として、日本国民の世論を代表する機関として、こうしたものが存置されていたって、私は有害無益にはならない。多少の有益ではないか。多少の利益があるならば、これを廃止してどこかに空白を覚えさせるよりは、これを存置して多少の利益を残しておく方が、やり方としては適当であると考えるのでありますが、検討の余裕はございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/144
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145・賀屋正雄
○賀屋政府委員 同じようなことを繰り返しましてまことに恐縮でございますが、将来の国交未回復の国々との条約締結等についていろいろ問題になりますことは、在外財産問題に限らずいろいろ各方面にわたって問題を含んでおると思うのでございますが、それに一々審議会を作るということも、作って悪いということは決してないと思います。また在外財産問題についてはすでにこういう審議会があるからこれを残しておけという御議論も一つの考え方でございまして、残しておいて決して積極的に悪いという点は、私はなかろうかと思うのであります。そのためにこの審議会を残しておくということでありますれば、また現在の構成等につきましても再検討する必要もありましょうし、当初これができましたときのいきさつからも多少はずれてくるのではないか。それは先ほど申し上げましたように、ある国との条約その他の取りきめに対しまして、在外財産が一定の方法によって処理せられましたあとの問題をどうするかということにつきまして審議をするというのが大きなねらいであったわけでございますので、そういった点から考えましても一応従来の任務として参りました問題は片づいたのではないか、さらにここで新しく将来の外交交渉等についての意見を民間の有識者から徴するという趣旨で残すということでありますれば、構成その他の点につきましてももう一度考え直す必要があるかと思いますので、またそういう事態がむしろ必要だということになりました際にはまた考えることにいたしまして、この際は一応廃止する、——何度も同じようなことを申し上げてまことに恐縮でございますが、政府としてはそういうふうに考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/145
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146・受田新吉
○受田委員 総理府の付属機関というようなものを軽々しくつけたりもいだりするということは、これはまたあなた方行政の衝に当る立場の方としては考えてみなければいかぬ。こうした機関の廃止ということは簡単なのです。けれどもこれを新たに設けるということになると、非常にめんどうな手続も要るし、そこにいろいろな支障も起ってくるということになると思う。設置とか廃止とかいうものは軽々しく考えてはならぬのです。従ってここに一応の付属機関ができて、一応の答申もされ、それに対するある程度の法案も出た。しかしまだ残された問題が尾を引いているということになると、それがまだ解決を見ていないという段階においては、それをせめて一年でも二年でもその情勢をながめていく期間は、この付属機関を置いておく方が、これは政策として、あなた方のやり方として、国民感情にもマッチするし、渉外的な基盤にもなって適切ではないかと思う。簡単につけたりもいだりするやり方は適当でないと思うのです。また適当なときにはこれを設けたいと、つけたりもいだりするということは、あなた方の軽いお気持でお考えになることは適当ではないと思うのです。もう一度同じようなお答えがあればやむを得ませんが、多少変った意見でもあれば一つ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/146
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147・賀屋正雄
○賀屋政府委員 別に変った意見はございませんが、つけたりもいだりすることはよくないということはお説の通りだと存じます。今回廃止いたしますのは引揚者に対する措置方針ということで大きな政策がきまりましたので、これがちょうどいい機会じゃないかということで廃止することにしたのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/147
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148・受田新吉
○受田委員 新たに設けようとすれば、また大へんめんどうな手続が要る、そういうことを思うたときには、今簡単にこれを廃止しておいてまた適当な機会に何とかそういうものを設けたいということをおっしゃったのですが、適当な機会といっても一年か二年か三年、未解決の国との交渉だって、そう長引くとは思わぬのですが、また長引いてはならぬのです、ほんとうは。そうするとせいぜい一年か二年の間の問題です。ここで急いで、この答申が出た、それに対してある程度案が出たというので、さっと取りやめるのだというのは、少しせっかちじゃないかと思うのです。そこなんです、問題は。ごく簡単な問題なのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/148
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149・賀屋正雄
○賀屋政府委員 未解決の地域に対して条約上どういう措置がとられるかということは、なるほど未解決でございますが、今回の法案で措置いたそうといたしております内容におきましては、そういった地域からの引揚者に対しまして適用いたしておるのでございまして、その未解決の地域との条約なり取りきめがきまりましたあとのためにでありますれば、とりあえずどうしても残しておかなければならないという理由はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/149
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150・受田新吉
○受田委員 これはあなたと押し問答をするようになりますが、こうした設置法関係の法律というものはあまり簡単に設置したり廃止したりするという考え方は私は妥当でないと思うのです。一応ここにこういうものができて第一段階として調査会、第二段階として審議会という形でできた。しかしまだあとにどういう問題が残っておるかということになれば、残された問題も、法律の実施の問題も政府の責任ということになるのですが、そうした残余の諸問題についての総合的の検討をも続けていくということは最終段階の問題解決までは私は必要だと思う。それは長期的にわたるとは思われない。これは性格としては臨時的のものですから、あまり簡単にもいでしまうと私がさっき申し上げたようにいつでもこれが新しくつけられるということにもなりかねない。あなたがおっしゃるように適当な機会にまた何か設けたいということですが、構成の問題については構成を変えてもよろしうございますよ。それを今取り上げて、国会議員とか学識経験者とか、こういうものに対する比率を変えるとか国会議員をはずすとか、これはけっこうです。国会議員ははずすべきだ。ところが専門的な検討を加える機関はやはり残しておく方が関係者にも親切だし政治的なやり方としても上手なやり方だと思うのです。しかもこの法案を見ると引揚者給付金等支給法案のしっぽへ、一番最後にこれがつけてあるのです。いかにも便宜主義的に総理府の付属機関をとったりもいだりしたように見えて、哀れな最後をとどめたような形になっておる。これでは総理府の付属機関としてあと味が悪いですよ。総理府設置法の一部を改正する法律ぐらいで、適当なときに、この法律が通った後に、たとえば七月か十月ごろになって臨時国会でもやるとかというんなら多少貫禄があるけれども、これを見て、法律の末尾に便宜的にちょっぴり結びつけているというやり方は、二年近くも真剣に検討した審議会に対する敬意を払う度合いにおいても、軽々しいと言わざるを得ないし、この問題に対する引き揚げの関係者に対しても、ただ冷酷な感じを与えると思うのですが、この法律案にちょっぴり結びつけて処理するというのは、どういう気持だったのでしょうか。厚生省に何か責任を転嫁したように見えるのですが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/150
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151・賀屋正雄
○賀屋政府委員 お答えいたします。この法律案の附則で、在外財産問題審議会を廃止する規定を設けておりますが、これはもっぱら法律上の技術的な問題でございまして、総理府設置法を改正するということでございますので、附則で規定いたして、それがたまたま一番最後になったということで、別段在外財産問題を軽く見たとか何とかいう意思は毛頭ございません。また厚生省との関係でございますが、これは厚生省がどう、内閣がどうということではなく、政府の一致した考えとして今度の法案が出るということが、この在外財産問題の一番大きな成果でもありますので、その法案が出ます際に、この審議会がりっぱに終了をして解散をする、こういうことでこの法案に盛ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/151
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152・受田新吉
○受田委員 午前中神田厚生大臣にお尋ねした際には、この在外財産問題審議会の廃止については、厚生省でなくて、これはやっぱり総理府関係であって、厚生省としてはどうもよく廃止する趣旨がわからないというような意味のことじゃなかったですか。とにかくあなたの総理府の方から、何かこれを押しつけたんじゃないかという印象を与えるような——私は大臣の答弁から、ひがみかもしれませんけれども、あなたの方が、総理府の方が便宜主義的にこの法律に乗っかってきたような印象をひがみとして受けたとしたならば、私はなはだつまらぬ男と見えますが、ある程度根拠のあるひがみと思います。あなたの方から御依頼された事実がございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/152
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153・賀屋正雄
○賀屋政府委員 全くそういうことはございませんで、部内で打ち合せまして、この際廃止するのが適当であるということで、一致した見解に基いてこういう法案をこしらえたわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/153
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154・受田新吉
○受田委員 この規定を入れたことは、閣議決定として、神田厚生大臣、何ら異議なく賛成されましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/154
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155・神田博
○神田国務大臣 お説の通りでございまして、政府といたしましては、在外財産問題審議会の諮問の答申がございまして、その答申をのみ、その趣旨を尊重してこれを解決するということになりましたので、自然審議会に課せられた目的は、一応有終の美をおさめた。そこでこの問題を解決するに当って、自然設置法も改正いたしたい、こういう趣旨で、閣議では満場一致で、どなたも御異議がなく御了承を得た次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/155
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156・受田新吉
○受田委員 この問題はそれくらいにしておきます。これ以上は、また適当な機会に論議するとして。
次に厚生大臣、あなたはこの法案を出された責任者でありますが、あなたの省で所管される例の戦傷病者戦没者遺族等援護法ですね。この法律の三十四条関係の弔慰金支給の対象になる満州開拓民——閣議決定に基いて考えたという意味においては、この法律案の第二条にも、引揚者の定義の第一号に書いてあるのですが、この満州開拓民という立場に立たれた方々の取扱いは、厚生省はよほど慎重にやらなければいけないんです。ところが弔慰金で対象にされた人々と、それからこの法律の対象になっておる人々との、二つになっている。私は午前中ちょっと触れたのでございますが、満州開拓民というのは、あのソ連参戦後において、軍人は全部引き揚げる、そうして役人どもはまっ先にしっぽを巻いて逃げ帰った。まことにずるいことでありまするが、平素の官僚の悪さを物語るものとして、ソ満国境にあった、当時司政の衝にあった役人たちは、いち早く家族を連れて逃げてしまった。そのあとに、長期にわたって満州の開拓、祖国の発展のために、ソ満国境にまで及ぶほどの満州開拓民が、せっせと勤労に従事していた人々だけが残った。そこへさっとソ連軍が大挙押しかけてきた。従ってその混乱の中において敵方のローラーに敷かれ、銃火の犠牲となって、あの満州に永遠に骨を埋めた人々ははかり知れないものがある。この混乱の際にだれが公務で死んだか、戦闘に参加したかせぬかという検討を加える余裕は全然なかった。それを確認するにしてもきわめて困難な状態にあった。そういうところで苦労されてなくなられた方々に、資料がこちらの方にないから、資料のない人はこの方の法律、資料のある方は戦傷病者戦没者遺族等援護法の適用を受ける、こういう区分けをするということは、あなた方としてはなくなられた方々に対して不謹慎だと思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/156
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157・神田博
○神田国務大臣 これは私おしかりをちょうだいいたしておるのですが、私どもこれを作りました気持を申し上げますと、戦闘に参加した方だけに差し上げて、そうしてその他を顧みなかったということが一つの問題だと思います。私どもは戦闘に参加しない、他の引揚民と同様な状態においておなくなりになった方、国策に従ってあちらに出ていかれた方なんでありますが、それが今まで何らの処遇を受けておらなかった、これは、この機会をはずせばなかなか解決しないということで、これをこの法案に盛り込むことに非常に苦労しまして、最後の最後になってようやくここに入れることができたような状態でございます。引き揚げ同胞の問題につきましては、外地の財産を基準として補償せいという声が高かったものでありますから、外地でなくなったことに対する代償として、そういうことをおっしゃって私どもの耳に入れてくれた方は、はなはだまっ正直に申し上げますが、聞いておりません。在外同胞の在外財産を解決するに当りまして、生きて帰った方々を、これだけの人道問題として、また日本の終戦の跡始末として解決するならば、やはりこれは外地におって帰れなかった人の処遇を考えるべきものである。しかしてまた特に開拓民のごときは、一人も漏れなくこれは処遇すべきものであろう、こういうような考え方をもちまして、これはほんとうに非常な苦心をいたしましてこの法案に盛り込んだ。もちろんこれは国家財政の関係もございますし、いろいろの関係もございまして、十分でないことは先般から私の方から申し上げている通りでございまして、この点につきましてはどういう御非難もちょうだいしなければならぬと思いますが、しかしこの財政多端の際に、とにかく全額から申しますれば、私は日本の今日の経済状態から考えますと、巨額の金だと思っております。おそらく今後こういう大きな金がどういうふうになるかということの見通しがつかないのじゃないかというくらいでございます。そこで申し上げたいことは、開拓民の方々で戦闘参加以外の方々をこの法案に盛りまして、この処遇を期した、こういうふうに御了承願いたいのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/157
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158・受田新吉
○受田委員 生きて帰られた方々の場合は別として、遺族給付金を受けるべき御家庭に対する場合を私は取り上げたいと思います。
あのソ満国境の困難な情勢の中でなくなられた方々を、どれが戦闘に参加し、どれが戦闘に参加しなかったかというような判定は、これは神でないとできないことです。とにかくソ連軍参戦以後の情勢というものは、開拓民十万の人々にとっては全く餓鬼地獄のような情勢の中で生命を失われ、あるいは必死の抵抗を試みられて引き揚げてこられた、こういう形になるのであって、特になくなられた場合に戦闘に参加したかしないかという判定は一体だれがするのか。その調査などは容易ではありません。むしろあの混乱期になくなられた方には戦死者と同様の取扱いをして援護法の適用の対象にしてあげて、弔慰金三万円を、この法律に規定されている二万八千円とは二千円だけの違いではあるけれども、とにかくその家族に与えたい。印象の上において非常に大きな差があるのだから、判定の困難な段階においてなくなられた方々に対しては、せめて援護法の対象の中に入れて差し上げるというあたたかい親心をなぜお持ちにならなかったか、私はそこに非常に疑義をいだくのであって、この法で何とかやりたいと思って最後の段階で努力されて入れたとおっしゃったけれども、むしろ援護法の対象の中にこの方々を入れて差し上げるのが、温情あふるるりっぱな厚生大臣としてとるべき措置じゃなかったかと思うのですが、事務局とお話し合いされるときに、何かあなたの御意思と違って事務当局が立案した傾向はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/158
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159・神田博
○神田国務大臣 受田委員の御意見は私どもよく理解ができるのでありますが、今受田委員がお述べになられたような方々は、援護法によってすでに済んでおるというふうに私どもは考えておるのであります。今日のはそれ以外の方だ。もし豊田委員の言われるような方がありますれば、それは今でも援護法からお出ししてあげることであって、この法律でお出しして差し上げるという方は、戦争に参加しなかった人であります。なお詳細は政府委員からお聞き取り願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/159
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160・田邊繁雄
○田邊政府委員 戦闘参加者特に開拓民が辺境の地帯から移動する過程において、ソ連軍または土匪等に襲われてなくなれた方々が相当ございますが、これらの方々に対しては、大臣の言われたように、でき得る限り戦闘参加者として処置するようにいたしております。ただいま死亡の状況がわからないのではないかということでありますが、これは死亡として処理されておる方々でございまして、死亡の状況はわかっております。そこでその方々が戦闘に参加したかどうかという認定については、戦闘に参加した方という範囲についてゆるやかに解釈して三万円の対象にしておりますが、どうしても戦闘参加者として取り扱えないものがございます。しかし収容所にたどり着いて冬を越す過程において病気でなくなられた方々、これは他の一般の引揚者と同様に戦闘参加者と認めることはできない、こういう問題が残るわけでございます。その点について今大臣の申されましたように、判定して差し上げた、こういうわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/160
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161・受田新吉
○受田委員 あなたの御答弁で、私ははっきりした線が出たと思うのです。収容所までたどり着いて、そこでなくなられたという資料のある者、戦闘に参加しなかったという資料のある者を除いて、そのほかの人は全部戦闘に参加した者としての取扱いをするとか、あるいはたどり着いたにしても非常な苦悩の末にたどり着いておるのだから、その人々を含めて戦闘に参加した者としての取扱いをするとかいうような幅のあるやり方をされて、この法に包含することをやめられるという方法があると思う。それは援護法の改正をして戦闘に参加という条項を改正する点もあるし、いずれにしても援護法で全部救うというような形で取扱いをされることが、この場合は私は妥当だと思うのであります。特になくなられた方は、開拓民としてソ連軍の参戦に直接影響されてなくなられたことは間違いないのだから、そういう人々に対して寛大な取扱い方をなさることが、厚生省の親心を示す意味において妥当であると思う。だから援護法の解釈によって救われない場合は規定の改正ということで開拓民の場合も一括救済する方法はないか伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/161
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162・田邊繁雄
○田邊政府委員 法文の字句はその字句の通りでございます。陸海軍の要請に基いて戦闘に参加し死亡した者というふうに相なっております。いかに最大限の解釈をいたしましても限界以外のことはやむを得ないことでございまして、ただいまでき得る限りその条項を適用するようにという御要望でございますが、そのお気持につきましては大体同感でございます。できるだけその趣旨によっておりますが、しかしいかに考えましても、その移動の過程におきましての敵と申しては何でありますが、土匪あるいはソ連軍に襲われたと認められない方もございます。また収容所に入ってからなくなられた方もございますので、現在あの法律の条項で読み切るといったこともできません。そういった関係もございますので、今回こういう法律によりまして、その残った問題を処理したいと思っておりまして、先ほど大臣の申し上げた通りの気持であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/162
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163・受田新吉
○受田委員 開拓民の死亡総数と、すでに援護法三十四条の弔慰金の支給を受けた人員とを御報告願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/163
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164・田邊繁雄
○田邊政府委員 開拓民で死亡された方は大体七万人であったと記憶いたしております。その中ですでに弔慰金の裁定の済んだ者が約一万五千人であったかと思います。なおまだ事務の進行中のものもございます。詳細な数字につきましては後刻調べてまた御説明申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/164
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165・受田新吉
○受田委員 死亡総数は七万と政府は踏んでおりますが、われわれは実際はもっと多いと聞いているのでございます。しかし政府の数字として一応納得してのお尋ねでございますが、弔慰金は二万五千人しか受けていない。これは結局五分の一です。すなわちソ連軍参戦後においてきわめて短期間に七万人がなくなられておる。なくなった人が七万人以上もおって、弔慰金の対象になる人は一万五千人しかないというようなことは現実にあり得ないことです。その中では戦闘に参加しないでごく少数逃げた人があるにしても、もうその場合の情勢は逃げるも何も議論の余地なく、事実上は全く混乱に陥って戦争に参加したような結果になっていると思うのです。そのときに弔慰金の対象になった人はたった一万五千人しかおらぬ。そのほかの者は全然手をつけておらないから今度はこの方の恩典に浴させようという考え方は、あまりにも冷酷な扱い方ではないかと思いますが、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/165
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166・田邊繁雄
○田邊政府委員 開拓民の死亡者の相当部分は年が非常に若い、十八才以下、十才前後から下の方が非常に多いのであります。これらの方々は収容所に到着してから病気のためになくなられた方が非常に多いのでございます。先ほど自分の都合でなくなったという表現がありましたが、戦時災害でなくなられた方は決して自分の都合でなくなったわけではございませんので、満州においてああいった状態のもとになくなった方は、一種の戦時災害と同じような状態でなくなった方であるという観点から今度の給付金が出ているわけであります。自分の都合でなくなった方に給付金を出すという考え方ではないわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/166
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167・受田新吉
○受田委員 自分の都合でなくなるという段階じゃないと私申し上げたのです。あの場面はたといそういうことで解釈されようとしても、あの大軍が一挙に押しかければ、逃げる人といえども、また戦線に参加する人といえども選択の余地はないのですよ。戦争に参加するような形に開拓民が立たれたわけじゃないけれども、とにかくソ連軍の犠牲となってなくなられた点においては全く同様なんです。そういう非常に不幸な事態におかれてなくなられた方々は戦闘に参加したという取扱いであなたの方として判定をされる必要がないかと言うのです。一々戦闘に参加したか参加しなかったかという区別をつけることが非常に困難な段階にある人々であるから、その取扱いをもう少し寛大にして法の適用をするなり、あるいは法の文章で救われないとすれば、むしろ援護法の改正をやってその人々を救うという形の方がよくはないかとお尋ねしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/167
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168・神田博
○神田国務大臣 これは私の答弁が十分でなく意を尽さないので反覆されるかと思いますが、こういうふうにお考え願いたいのです。満州の開拓民としてなくなられた方を遺族等の給付金で解決しようとした、そしてそれは今解決をいたしつつありますが、それだけでは解決しないものがある。戦闘参加等によってなくなられた方々に対しては援護法の中で解決しようということで、十分調査してその方の解決をいたしておる、すでにそれが一万五千名からございますが、なお今裁定中のものも相当ある、こう申し上げているのでありまして、その法律だけでは救われないものがある、その救われない方を一つこの法律で救いたいというのがこの法律の目的なんでございます。ですから受田さんがあの混乱の際に一体だれが死亡の確認をしたか、陸海軍の要請に基いて参戦したかしないかをだれが判定するのかというお尋ねですが、できるだけそちらの方にとろうとして努力しているわけなんです。しかし実際に調べて、一般邦人等と御一緒に引き揚げの途中において——あるいは匪賊その他の攻撃を受けなかったというようなことがはっきりしておられる方々で、今の遺族援護法によっては救われない方々がある。そういう方々の問題が何ら処遇をされておらないから、この法律によってそういう方々を一つ処遇いたしたい。年令を問わず——海外同胞の引き揚げは十八才未満の方方には処遇しないのでございますが、開拓民だけは国の要請によってあちらへおいでになったんだから、この方は年令を問わず全部処遇したい。しかも六カ月というような居住の条件はつけない。参戦の当日生まれた赤ちゃんであってもそれがはっきりした方には差し上げたい。すべてを漏れなく処遇いたしたい、こういうことで私ども政府としては措置をしようというのでありまして、今受田さんのお話を承わっておりますと、何でもかんでも入れろという御趣旨ではなく、できるだけのものは入れろということかと思います。その通り政府もやっておりますが、それだけでは救われない者が出る、そこでこういう処遇を考えたい、こういうふうに御了解願えれば、今お尋ねになりましたことと私どもの考えとぴったり合うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/168
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169・受田新吉
○受田委員 相当幅のある御発言でありますが、そうしますと死亡総数の七万人の大半は援護法で救われる見通しになりましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/169
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170・神田博
○神田国務大臣 先ほど援護局長が答弁いたしておりますように、そちらの方の申請が——七万人のうちすでに解決したのが一万五千名で、残っているのが二万以上、こうなっておりますから、半分くらいが向う、残り半分がこっち、全部裁定した場合、その裁定にいろいろ条件がございますからその事実認定がどうなるか——今ごらんのように聞いた話でございますから、正直に申し上げているわけでございます。御想像願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/170
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171・受田新吉
○受田委員 大体残りの裁定申請のものが全部条件にはまったものとしての計算と了解していいですね。寛大に了解します。
そこで問題があると思うのです。内地で空襲で学徒動員でなくなられた場合、あなた方の理論をもってするならば戦闘に参加したとか何とかいっても、空襲でどんどんやられたのです、戦闘に参加するも何もない、工場において直接たまを受けてなくなられたのであるから、これはもう戦闘に参加したかしないかという限界ははなはだむずかしい問題になってくるのです。一般の戦災でなくなった方もみな敵の弾丸でなくなられたわけですから、これはみな戦闘に参加したということになる。区別はできないわけです。そういうことになりますと、戦闘に参加したという基準をどこに置くかということになって非常にむずかしい問題になってくるのではないか。だからソ満国境で七万の人がなくなられたということになると——いつか援護法改正案のときに、こういうあれに対してあなた方が大へん反対されたことがある。故意または重過失の資料のある者以外は認めるということです。その点はこういう形にしてみたらどうですか。ある戦争に参加したということの証明がないという場合、たとえば自分の都合である地域におったが、そこへは匪賊が来た形跡はない、たまたまそこでコレラやチフスでなくなられたという証明がある者だけは戦闘に参加した者と認めないけれども、戦闘に参加しなかったという証明のない者は全部戦闘に参加したものとして取り扱うという幅の広い取扱いはできませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/171
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172・神田博
○神田国務大臣 それもなかなかむずかしいことでございましょうね。今あなたの言われた逆な場合ですが、資料のない者はみな認めるんだという認め方は、これも法律解釈としてちょっとおかしいことになりはしませんかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/172
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173・受田新吉
○受田委員 ところがその逆の場合ということになりますと、みんなまた非常にやってくる。そうなりますと結局どちらにしても判定は非常にむずかしいことになる。結局現地にあった人の場合は、混乱でなくなられた立場の方は一様に——わずかに二千円ですよ。二万八千円と三万円の二千円しか違わぬ、援護法の適用で弔慰金をいただいたことの方が、それはお気の毒な人の、なくなられたみたまに対しても敬意を払ったことになるのですから、取扱い方として弔慰金としての恩典に浴せしめる方があたたかい親心ではないかと私は思う。その取扱いにまとめられて、この法律の適用を受ける場合は、今申し上げたようなはっきりした戦闘不参加の証明がある、その証明というのは本人の証明でない、すなわち第三者が証明する場合これを資料として判定するという形にすればいいのである。本人はこれには参加しなかったということを言わぬでしょうから……。匪賊も敵軍も侵入しなかったところでなくなったのだという場合、これはきわめて例が少いと思うのですが、そういう場合だけ引揚者の給与支給法案で救ってあげて、あとの大半は援護法で救ってあげる——首を振らないで一つ援護法の適用というところに寛大な解釈をしてあげる方が、この取扱い方としては私は非常に親切だと思う。この法律案と援護法と二つあるものですから……。そのことについてもう一度御答弁願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/173
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174・神田博
○神田国務大臣 受田委員がお述べになっておられることと、私どもが考えておることとは根本においては違っておらぬのじゃないかと思うのです。今まで出さなかったことについての話は別として、この問題を解決しようという立場から考えた基本的な考え方は、私は同じじゃないかと思うのです。問題は政府といたしましては遺族援護法で解決しよう、あれでよいという気持でおやりになったのだろうと思うのです。ところがやってみるとそれじゃ解決できない者が出た。そこでこういう問題が生まれてきたわけです。そこでこの機会に在外引き揚げ同胞の援護の問題を考えた場合、遺族暖農法で解決できない問題をこの機会にあわせて解決いたしたい、こういうふうに考えて、こういう法律を御審議願うことになったわけです。ですから受田委員の言われたような具体的な方があれば援護法で解決していく、それで解決できない者をこちらの方にとるのだ、こういうふうにお考え願えればいいと思います。受田委員の方はできるだけ援護法で解決したい、その方が二千円よけいいくじゃないか、その方がみたまに対して安らかに眠ってもらえるし、国のあたたかい気持がわかってもらえるじゃないかということですが、具体的に解決できる者は、今おっしゃった今までの法律でいく、それでできない者はこちらでいく、それで全部解決するのだ、こういう考え方でございますから、説明がまずいものですから御納得いくのに骨が折れたのじゃないかと思いますが、考え方はそれと同じ考え方でございますから御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/174
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175・受田新吉
○受田委員 その御説明ならば七万人の大半はその方にいかなければならないと思うのです。今裁定申請している全部を条件に合う者としても、まだ三万五千しかなっていないのですから、半分も救っていないのは寛大な取扱いをされていない証拠じゃないですか、大臣そう思いませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/175
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176・神田博
○神田国務大臣 何と申しましょか、決して反駁するわけではございませんが、満州の開拓民の住んでおりました地域というものは、非常に広大であることは受田委員よく御承知だと思います。日本の数十倍の面積でございますから、いかにソ連軍、あるいは匪賊等がシラミつぶしに開拓民を殺そうといっても、そう私は手が届かないだろうと思うのです。正直な実際の話。やはり侵入してくるのは一定の径路を来るのでございますから、そこを通り魔のように通ったところはやられておりますが、通らないところは残っておっただろうと思います。そういう方々が逐次引き揚げておいでになった、内地に帰っておいでになった方も相当あると思います。それまでの来る途中においておなくなりになった方がある。いわゆる戦闘不参加である。病気その他でおなくなりになった方々をここで救おうというわけでございます。ですから直接戦闘に参加された方々はみんな倒れておりますから、私は通り道はみんなやられておると思うのです。通り道でないところが徐々に引き揚げてきた。そのうちのなくなった方と引き揚げ完了された方々がある。引き揚げ完了された方々に処遇せられますから、なくなられた方々にも同様に処遇しよう、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/176
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177・受田新吉
○受田委員 開拓民の方は大体国境にいたわけです。なくなられた人の大半は国境にいたのです。そうするとほとんど戦闘に参加されたと判定していいのです。沿線にいて一緒に残っていた人と、開拓民の場合は分布が違う。開拓民のなくなった死亡地域をごらんになればわかる。満州は日本の数十倍はないわけです。日本の三倍か四倍しかないのです。ごく面積は近いのですから大したことはない。ですからわかるのです。そこであなたに研究していただきたいのですが、あなた方の方の支給法案で、大体今度の戦争犠牲者の問題を処理済みだとお考えのようですが、まだ海軍の共済組合法の適用を受ける人とか、あるいは学徒動員で戦闘に参加しなかったように見えて、実は参加しておる立場に立たされておる、事実上空襲でなくなった立場の人とか、いろいろなケースの残余の方があるわけです。そういうものの取扱いをあわせてこの際片づけたい。あるいは援護法の十八才から二十才までの年令層にある人、あるいは六十才未満の人、こういう問題もあわせて検討したいということであったようですが、そういう方面の援護法の改正についてはさつぱり御意見がないようですが、どうしたことですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/177
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178・神田博
○神田国務大臣 その点につきましては、目下検討中でございまして、これは解決できるものをできるだけここで解決いたしたいということは、私ども厚生当局の非常な強い願望でございましたが、相手のあることでありまして、いろいろまた十分資料の詮議等の問題もございまして、これと同時に解決のできなかったことは、まことに遺憾でございますが、しかしこれは今後の検討によって、できるだけすみやかに一つ成案を得たい、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/178
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179・受田新吉
○受田委員 片手落ちのないようにするという大臣の御意見を私年頭に伺ったのですが、予算は来年度からのものにしても、法案は今回の国会にお出しになるという御用意はございませんか。そういう援護法改正は……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/179
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180・神田博
○神田国務大臣 これは政府におきまして新たに調査会を設けまして、そこで検討いたしまして均衡のとれた成案を得たい、こういうことになって閣議に了解になっておりますから、そのことも御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/180
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181・受田新吉
○受田委員 恩給審議会といいますか、仮称何ということになっておるか知りませんが、そういう機関を作るというときに、援護法の関係にある部分も含めるわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/181
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182・神田博
○神田国務大臣 その通りでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/182
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183・受田新吉
○受田委員 援護法関係の分くらいは早く抜いて、まだ適用をはずされている人には早く片づけてあげることです。審議会でねっちり、ねっちりやったら春日遅々として、果していつの日に成案を得るかわかりませんよ。あまり冷淡ですよ。これは今国会で何とかしてあげようじゃないですか。予算というものは大したものじゃないのです。学徒動員にしても従軍看護婦にしても、二十億か三十億で全部が救われるのです。恩給法で三百億というような案を立てられるのに比較したら、援護法で二十億か三十億かで厚生省、あなたの方の手でやれるのです。恩給局長でなくてあなたで直接やれるのです。あなたの在任中に、あなたに一つ手柄を立てていただきたいと私はひそかに祈っておる。さしあたり恩給法の審議会の対象にならない立場の援護法の対象になる人だけ救おうじゃありませんか。せっかく引揚者の開拓民に対して、こういう気持をお示しになった機会に、援護法三十四条の適用範囲を拡大するくらいのことはやろうじゃありませんか。うちの引揚委員会の方でも大体そういうことをやろうじゃないかということになっておって、政府の意思を確かめるということになっておるのですがね。どうですか、やっていただけますか、抜けるだけ抜いてでも……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/183
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184・神田博
○神田国務大臣 受田委員の御要望はまことに同感でございまして、私どもその点も含めましてこの際解決したい、そういう考えで折衝を実は続けておるのでございます。ところがその方がなかなか妥結いたしませんので、全部妥結してこれをやるか、あるいは妥結したものだけで、一つ長年の懸案であるから一応めどをつけて御審議願うか、こういう段階に立ちまして、あとの方は引き続いて相談をしていこう、この話のついた分だけは成案を得て御審議願う、こういうことに相なったわけでございまして、私どもの気持といたしましては、受田委員の述べられた決意とおそらくちっとも違っていない強い決意であるということは、もう御了承願えると思っております。話がつかないので、これもそのままにして、それがつくまで待ちますと、この方も未解決になるものでございますから、話のついたものは一つ分離して御審議を願う、今お述べになられたようなことはなお交渉しまして、成案を得次第御審議願う、こういうような段取りでこのような運びになったことを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/184
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185・受田新吉
○受田委員 あなたの誠意はよくわかります。ただ、ここで大急ぎでやらなければならぬ問題があるのです。それは学徒動員などで手や足をもがれて何ら処遇を受けてない人々、これは援護法の中の傷害年金と傷害一時金の規定を改正すればごく簡単にできるのです。しかも、その対象になっているのは二百名か三百名です。特別項症、第一項症、第二項症、第三項症までを含めても、三百人か四百人しかおらぬのです。あの青春を犠牲にして、結婚もできない、仕事にもつけないという、学徒動員で犠牲になった人々が、今路頭に迷っておるじゃないですか。この分だけでも今国会で、あなたの方で障害年金と障害一時金を改正して、これだけ抜いてやる。予算もわずかで済む。一億足らずなんだから、これはどこからでも金がひねくり出せるじゃありませんか。この方だけでもおやりになる御熱意を示していただくだけでも、この席で大臣の貫禄を十分私は尊敬しますがね。一つ今国会へ出すかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/185
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186・神田博
○神田国務大臣 そういう考えで折衝は続けておりますが、相手のあることでありますので……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/186
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187・受田新吉
○受田委員 相手というのはだれですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/187
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188・神田博
○神田国務大臣 それは予算当局その他ございますから、私の方の厚生省予算のやりくりによって解決できるものであれば、ここで私はお返事いたします、いつの幾日いたしましょうと……。しかし政府部内をまとめて参らなければならぬことでございますので、必ず出すというようなお約束はできませんが、御趣旨は私ども同意見でございますので、できるだけすみやかな機会に成案を得て御審議願う、こういうふうに御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/188
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189・受田新吉
○受田委員 今の、傷の重い人だけは人数が少いのですよ。たとえば第一項症にしても、一年に十二万三千円です。十二万三千円の第一項症の適用を受ける人がこのうちで何人おるか知らぬが、平均して八、九万円程度にとまったとしてみましても、予算的には一億円内外で済むじゃありませんか。大蔵省、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/189
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190・小熊孝次
○小熊説明員 ただいまのお話でございますが、遺族援護法の関係は、恩給その他全般的な問題に影響があるものと考えるわけでございまして、その分につきましては特別審議会を設けて検討することになっておるのでございますが、やはりその全体の一環として解決するものは解決する、こういうふうにするのが妥当じゃないか、このように考えておるわけでございまして、今回は取りあえず引揚者給付金、これは審議会の答申もございましたので、それを提出しておるわけでございまして、その他の問題につきましては、また別途検討いたす、こういうことにいたしたいというのがわれわれの考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/190
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191・受田新吉
○受田委員 大臣、大蔵省としては幅のある回答と私は了解する。特に学徒動員の場合は、今まで何ら年金も一時金ももらってないのですから、これだけ抜いて新しくふやしたからといって、今までもらった額をふやすのじゃないので、新しく救ってあげるというのですから、これだけを抜くことは可能性があると思うのです。今の大蔵省のお答えは幅のある回答と了解して、ごく一部であるから何とか認められる、新しく救済してあげるごく限られた人だけをまず取り上げる、そういう一歩々々、ケース・バイ・ケースという形でどうでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/191
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192・神田博
○神田国務大臣 受田委員の御趣旨はよく了承できますので、一つすみやかに成案を得たい、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/192
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193・受田新吉
○受田委員 もう一つ。日本人であって満州国の軍人とか蒙疆の軍人であった人、この人々は、第二条の引揚者の定義の、終戦当時に外地に生活の本拠を有していた者の中に入ると思うのです。また第八条の遺族給付金の支給の中にも該当すると思うのです。該当するだけじゃこれは済まぬと思う。満州国の軍人などというのは、強制的に転換せしめられたのであって、何も好んで満州国の軍人になった者はおらぬのです。無理やりにさせられたのです。従って満州国の軍人で戦死した人は、日本軍人と同様の扱いで戦死されたんです。あのときは日満一体だったのですから。その日満一体の形で、日本の軍司令官の支配下に満州国軍人は動いておるのです。満州軍は単独行動をしなかった。今のことで言えば、日本の軍隊がアメリカの支配下に動かされて、演習でも、十一月四日にやったのでは、アメリカのレーダー基地からやられちまっている。そういうところを思うと、結局日本の軍人と同一の性格を有する満州国軍人に対しては——日本人は戦闘に参加して戦死者の取扱いを受け、満州国軍人であったがゆえに、日本軍人と同様に同じ司令官から命令を受けて動いていても、戦死者の場合は、第八条第一項の規定を受けてささやかなる給付金をもらって、それで霊が休まると思いますか。大へんな大問題ですよ。これはどうですか。あまりにも軽々しく取り扱っておられると思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/193
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194・神田博
○神田国務大臣 満州国の軍人の死亡者につきましては、三万円の弔慰金を上げておりまして、これは二万八千円になっております。額の問題は少額でございますが、そうした、これと違った取扱いをしておることを御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/194
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195・受田新吉
○受田委員 これは戦死者なんですからね、この法律の適用も受けないで——援護法の遺族年金の支給対象ぐらいまでは格を上げてやるべきじゃないですか。恩給法の扶助料にはならぬにしても……。ですから、満州国の軍人としてなくなった人は、日本軍人と同じ性格の戦いに参加し、同じ形で戦死されておるんであるから、援護法の遺族年金の支給規定を受けるという形に改正される方が筋が通るのではないかと思うので、今お尋ねしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/195
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196・神田博
○神田国務大臣 その点につきましては、今度できる調査会で十分検討を加えたい。御趣旨同感でございますので、よく研究いたしてみたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/196
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197・受田新吉
○受田委員 あなたのお気持としては、私の今お尋ねしていることはもっともだとお考えですか、大臣は私に共鳴されますかどうか、そこを伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/197
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198・神田博
○神田国務大臣 お尋ねになりますお考えの点は、もう私個人としては全く同感でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/198
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199・受田新吉
○受田委員 個人として同感だと言われたので、私は一応その成案を期待いたします。
いま一つ法律案の問題になるところは、この法律が施行されて後に三年間たつと、権利の請求がないと時効になる。ところが今後引き揚げてきた場合には、この法施行後において、法の適用をはずされた立場で戻ってきた人などの救済は、どういう形でなされようとされるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/199
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200・神田博
○神田国務大臣 これはこの法が施行されて権利確定してから三年間不履行の場合に無効になるという意味でございまして、これからお帰りになってから権利が発生するわけですから、その御心配はないようにお願いいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/200
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201・受田新吉
○受田委員 これから帰ってきて請求したときを起算日とされるわけですね。間違いないわけですね。そうしたら、第十八条の時効によって消滅する人は、はなはだお気の罪な立場に立たれるわけでありますが、一応こういう法律には、ある程度時効規定を設けなければならぬという慣例はあるようでございますけれども、引揚者の場合などは、これは特別な事情によって、しかも十年もたっているんですから、実態をつかむのが容易でないし、本人もうかつな場合があり、また周囲の人々もうかつな場合があって、手続等に実際に日時がかかる、あるいはそのままに放置されているというような事態が起るので、特に幅広く救済する規定を設けておかぬといかぬと思うのですが、いかがでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/201
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202・田邊繁雄
○田邊政府委員 ごもっともな点でありますが、私どもできるだけ法の趣旨の普及徹底をはかりまして、すみやかに給付金の支給を終えたいと思います。御心配の、知らないでおるために支給を受けられなかったということのないようにいたしたいと思います。時効の規定は、一般の社会保険の例によりますと二年でありますが、この場合は、特にもう一年延長いたしまして、三年といたしております。その辺は御心配のないように善処いたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/202
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203・受田新吉
○受田委員 在外公館等借入金の返済実施に関する法律という法律が出ておる。これが実際は期限つきで施行したところが、一年々々と延長して、ずいぶん長く延長したんです。だからこの法律もある程度相当幅をもってかかるという必要があるのです。もう戦後十二年ですからね。だからここの時効規定なども、もう少しゆっくりしておいて、野に遺賢なきを期するという言葉がありますが、野に遺民なきを期するようにしなければいかぬ。どこにも手落ちがないようにしなければならぬと思うのですが、もう少し時効を延ばされてはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/203
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204・神田博
○神田国務大臣 これは十一年もなっておりますから、国としましても早く整理をいたしたい。それから、おそらく引揚者においても、やはり早く整理をしたいという希望を持っておられたのでございますから、その希望というものを早く一つ、達成と申しましょうか、確定してもらいたいという熱意が非常に強いと私は思うのでございます。でございますから、三年間行わないときは時効によって消滅するということは、両方で急ぎましょうということでございまして、受田委員の言われることは、これは三年間あるわけでございますから、やってみまして、これじゃ解決つかないというような事情の見通しがつきましたら、将来においても延長することもやぶさかではないわけであります。とにかく長い十一年余の問題を取り扱っておりまするし、今後また帰ってくる人も取り扱っておるわけでありますから、両方で急いでいる。そこでこの十八条の規定くらいで両方の満足のいくようにというふうに考えたわけでございますが、実際問題としてみて、どうしても工合が悪いというようなことがありますれば、そのまぎわにいって考えてもおそくはない、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/204
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205・受田新吉
○受田委員 最後にこれを伺って私は質問を終ります。権限委任の規定、二十三条の「その他政令で定める者にその一部を委任することができる」という規定は、問題にもなかったと思いますが、政令の中で厚生省としては今の有力な団体を含めるという腹があるかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/205
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206・神田博
○神田国務大臣 これは予算委員会でも私御答弁申し上げておりますが、都道府県市町村というような公共団体を対象にしております。それ以外には琉球政府を考えております。
〔廣瀬海外引揚委員長退席、藤本社
会労働委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/206
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207・受田新吉
○受田委員 そうすると引揚団体は全然考慮に入れておりませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/207
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208・神田博
○神田国務大臣 今のところ民間団体は使わない、こういうような考え方でおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/208
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209・受田新吉
○受田委員 そうすると、この法律が施行されて後に、今のところは考慮しないが、その次には考慮する、そういうふうに考えてよろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/209
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210・神田博
○神田国務大臣 これは政府の認定事務になっておるものですから、国の行政以外にそれを認定することはむずかしいのじゃないか、こういう考え方をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/210
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211・受田新吉
○受田委員 そうすると、琉球政府は一応なっておりますが、厚生関係の団体というものには、国でなすべき業務を民間に委譲するということは、法律的な根拠を民間に与えるということは今まで許されていないという意味で、お許しにならぬのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/211
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212・田邊繁雄
○田邊政府委員 先ほど大臣から琉球政府と申し上げましたが、それは南方連絡事務所長でございまして、日本政府の出先機関でございます。それからこれは権利の裁定、認定でございますので、当然国が行うべきであって、民間の団体等にはまかすことはできないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/212
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213・受田新吉
○受田委員 ところが権利の認定をするに当って、資料の提供その他事務処理上についての協力は求めるのですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/213
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214・田邊繁雄
○田邊政府委員 引揚者団体は引揚者のための団体でございますので、引揚者の方々には資料を集める等にいろいろ御苦労を願うこともあると思います。その場合には、引揚者団体におきましても、その不備な点、足りない点を補っていただくのは、この団体本来の仕事でございますから、国が頼まなくても当然おやりになっていいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/214
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215・受田新吉
○受田委員 厚生省は引揚団体に対して、こういう調査等に当っては十分協力を求め、あるいはいろいろ協力してやるという気持を持ってあげる方が、特に特殊な事情にある場合であるから、妥当じゃないかと思いますがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/215
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216・田邊繁雄
○田邊政府委員 これは仕事の性質上、また諸般の事情から考えまして、都道府県知事に認定の仕事をお願いすることにいたしております。そこで事務の実施におきまして一番大事なことは、全国の認定の仕事がばらばらにならないように、一定の基準によって整斉と行われることが一番大事だと思います。そこでそれは一定の基準によって地方にやらせるようにいたしたいと思っております。引揚者団体が法の実施によってすみやかに引揚者が給付金をもらえるようにすることに協力されることは当然のことでありまして、別にそれを認めるとか認めないとかいうことは言う必要がない、当然なすべきことだと思うのでありまして、国からそれに委任するという性質のものじゃないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/216
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217・受田新吉
○受田委員 靖国神社の祭神について厚生省が協力してあげているということは間違いございませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/217
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218・田邊繁雄
○田邊政府委員 端国神社の場合におきましては、靖国神社へ合祀をする戦死者の諸元と申しますか、戦死者の姓名、本籍地、戦没された年月日、場所等が、靖国神社ではわかりませんので、それを厚生省なら厚生省に聞いてくる。そこで厚生省は都道府県と連絡をとって、できるだけ教えてあげるという仕事をやっておる。これはだれが聞いてきても教えてあげるのは当然でありますので、こちらが靖国神社の仕事に協力しているわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/218
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219・受田新吉
○受田委員 実際問題として市町村長あるいは府県知事がやるにしても、町村の更生会というものは、できているのもないのもあるわけでありますが、府県の更生会というものは、相当強力な組織体として現に有力な存在になっているわけなんですが、府県知事が、権限の行使に当って、府県の更生会を有力な協力体としてこれが援助を求めるということは、それは自由ですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/219
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220・田邊繁雄
○田邊政府委員 この点につきましては、各府県の認定の事務がばらばらにならないようにするということが一番大事なことでございます。協力を求めた結果ばらばらになっては困るわけであります。その点につきましては、慎重な態度をもって臨みたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/220
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221・受田新吉
○受田委員 そうしますと、府県知事が条例をもって更生会その他を利用する規定を作るという場合はあり得ると思いますが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/221
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222・田邊繁雄
○田邊政府委員 その点につきましても、全国的に統制をとって参りたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/222
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223・受田新吉
○受田委員 そうすると、府県知事の引揚団体に対する協力依頼も政令で制約するわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/223
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224・田邊繁雄
○田邊政府委員 これは事実上の取扱いでございまして、政令で国が都道府県知事に委任するということを規定するだけでございますが、実際問題といたしまして、よくお考えいただきますればおわかりになると思いますが、こういう仕事は、あまり個々の事務について民間団体が関与するということは、私はどうかと思うのでございます。やはり整然と、しかも画一的に、統一のとれた方針のもとに個々の事務が実施されるということが一番大事なことでございまして、その団体がその仕事に関与した結果ばらばらになってしまうということはどうだろうか、こう考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/224
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225・受田新吉
○受田委員 その問題は後にまた機会があると思いますが、あまりかたいひもをつけてやられなくても、府県知事の良識にまかせるという形で私はいいのじゃないかと思いますが、いけませんか。
それでは、大臣、大へん長時間お気の毒だったのですが、あなたは大臣に就任された直後に、自分の在任中に、できれば今国会のうちに、戦争犠牲者に対しては全面的に国家の責任を果す政策を実現したいと仰せられていたのを御記憶でございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/225
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226・神田博
○神田国務大臣 重々承知いたしておりまして、それは片時も忘れずやっておるつもりでございます。ただ微力でございますので、なかなか思う通りにはかどらぬ面もございますが、今お尋ねのことは、前に私が申し上げたことと同じでございまして、十分承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/226
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227・受田新吉
○受田委員 大臣がお考えになっておられる、戦争犠牲者のまだ処理の対象となって残っている面は何々とお考えでございましょう。大臣の構想の中から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/227
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228・神田博
○神田国務大臣 私ずっと前、引き揚げの委員会でもお答え申し上げておりますように、学徒動員の関係、それから徴用工の問題、あるいはもっと進めば消防等の、空襲時望楼等において果敢な勤務をされて傷害を受けた方々に対する年金問題、こういうことを主として考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/228
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229・受田新吉
○受田委員 それだけでしょうね、ほかに残っていませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/229
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230・神田博
○神田国務大臣 厚生省の立場として、大体そういうことを中心にしてやりたい。この前お答えしたときもその範囲であったと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/230
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231・受田新吉
○受田委員 あなたの所管に関連する問題として、まだどういうものが残っておりますか。構想がおありだと思うのですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/231
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232・神田博
○神田国務大臣 厚生省の所管としては大体そういうことになるのじゃないでしょうかな。ほかにお気づきの点がございますればお聞かせ願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/232
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233・受田新吉
○受田委員 恩給法関係はあなたの所管ではないのでございますが、これは関連する問題としてお答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/233
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234・神田博
○神田国務大臣 恩給、それから扶助料等の問題につきましては、これは給与担当大臣の所管でございまして、先般閣議におきましても、これは一般文官等との均衡の問題もあり、その他の問題もあるので、調査会を作って検討を加えたいということで、官房長官からも発言がございまして、私ども賛成いたしております。閣議で了承に相なっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/234
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235・受田新吉
○受田委員 戦災者の取扱いは、もうあなたの政府としては全然御考慮されないというお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/235
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236・神田博
○神田国務大臣 今のところ、これ以上どうという話は出ておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/236
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237・受田新吉
○受田委員 戦災でなくなった人、空襲で生命を失った人ですね、これは三十万くらいというように聞いておるのでございますが、これは人命に関する問題ですから、その人の取扱いだけは何とかしておかれる必要はないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/237
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238・神田博
○神田国務大臣 空襲等でなくなられた、戦時中の一般の国民のそうした手当について、戦時災害保護法でございますが、この方で、当時済ませてある、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/238
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239・受田新吉
○受田委員 これで質問を終ります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/239
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240・藤本捨助
○藤本委員長 他に御質疑はございませんか。——なければこれにて散会いたします。
午後四時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102604422X00119570403/240
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