1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年三月二十日(水曜日)
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議事日程第十九号
昭和三十二年三月二十日
午後一時開議
第一 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 租税特別措置法案(内閣提出)
第四 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣提出)
第五 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
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一 最低賃金法案(和田博雄君外十六名提出)及び家内労働法案(和田博雄君外十六名提出)の趣旨説明
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●本日の会議に付した案件
フィリピン共和国大統領ラモン・マグサイサイ氏等の遭難につき弔意表明に関する決議案(三木武夫君外四名提出)故マグサイサイ、フィリピン共和国大統領の葬儀に参列する特派大使任命につき外務公務員法第八条第三項の規定により議決を求めるの件 日程第一 所得税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 法人税法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 租税特別措置法案(内閣提出)
日程第四 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第五 国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)
就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
学校給食法の一部を改正する法律案(内閣提出)
最低賃金法案(和田博雄君外十六名提出)及び家内労働法案(和田博雄君外十六名提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑
午後一時十二分開議発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/0
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001・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/1
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002・山中貞則
○山中貞則君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、三木武夫君外四名提出、フィリピン共和国大統領ラモン・マグサイサイ氏等の遭難につき弔意表明に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/2
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003・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「口異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/3
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004・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
フィリピン共和国大統領ラモン・マグサイサイ氏等の遭難につき弔意表明に関する決議案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。松本瀧藏君。
〔松本瀧藏君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/4
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005・松本瀧藏
○松本瀧藏君 最初に決議案を朗読さしていただきます。
フィリピン共和国大統領ラモン・マグサイサイ氏等の遭難につき弔意表明に関する決議案
フィリピン共和国大統領ラモン・マグサイサイ氏は今般同国内において飛行機事故により逝去いたされました。
同大統領はアジアにおける最も偉大な国際政治家でその見識と力量とは内外の斉しく敬服していたところであります。
常に、わが国との親善の為に尽力され、平和条約の締結や、賠償問題の解決に示されたその友好的な態度はわが国民にとつて感銘なお新たなるものがあります。
前途なお春秋に富む身をもつて突如として逝去されたことはわが国民の挙げて痛惜哀悼の情にたえないところであります。
衆議院はここに謹んでフィリピン国民及び故大統領その他の遭難者の遺族に対し深厚なる弔意を表します。
右決議する。
〔拍手〕
趣旨を説明さしていただきます。
一九〇七年生まれのラモン・マグサイサイ氏は、一九五三年に行われましたフィリピン大統領選挙において突如として現われ、四十六才の若さをもって独立後の第三代目の大統領となったのであります。マニラにおいて彼の選挙演説をじかに聞いた者にとって、今なお耳に残っておることは、彼の名句、ソーシャル・ジャスティス・マスト・ビー・タンジブル、すなわち、「社会正義は民衆の身につくものでなくてはならぬ」という、それに現われておる彼の所信であります。彼がフィリピンの大衆にひどくもてたゆえんのものは、大衆政治家としてこの社会正義の観念を実践するため、民衆の中に溶け込んでいったからであります。かじ屋のむすことして生まれ、一バス会社の修理工として働きながら大学を卒業した彼は、世情に通じ、また、その勉強に涙ぐましい努力を続けていったのであります。地方を視察するに当り、農村に行けば、農夫とともにすきを手にし、漁村を訪れれば、漁民とともに、はだしになって海岸の砂浜を歩き、町にあっては、みずから自動車を運転して、無警告のままスト中の組合本部に乗り込んで調停をはかるなど、けだし、独立直後のフィリピン国内事情からして、最も時代が要求した大政治家でありました。
彼は、大統領就任以来、その若さと健康をもって、彼の政治信念を貫徹するために、文字通り東奔西走し、この三年数カ月、営々と働き続けてきました。それだけに、フィリピン国民は、彼に熱狂的な信頼と親しみを寄せ、ラモン・マグサイサイ氏を大統領と仰ぐ無限の誇りを持っていたことは当然というべきであります。
彼は、国内問題ばかりでなく、国際問題、なかんずく、東南アジアと日本の問題にも精力を傾注しました。特に日本との賠償問題の解決や平和条約の締結に示されたる熱意と努力には、決議案の中にもありますごとく、感銘なお新しいものがあるのであります。ダイナミックな政治家ではありましたが、その反面、彼には情にもろいところがあり、キリノ内閣の国防長官としてフク団討伐に成功した彼は、そのゲリラ隊長の遺児を引き取って養育するなどの人情家でありました。
また、彼は謙虚な性格の持ち主でもあったのであります。日比賠償交渉妥結のために特使として一昨年鳩山内閣の当時日本へ派遣されたネリ氏に向って言った言葉があります。すなわち、「自分は、政界では、日本の鳩山総理に比すればはるかに若輩である。政治経歴からしても、その体験からしても、日本の総理は大先輩である。よくアドヴァイスしてもらうのだ」と注意しておるのであります。あの苦い戦争の体験を持っておる彼は、どちらかといえば、初めは親日的ではありませんでした。しかし、このように、彼はいつの間にか親日家になっていました。われわれに会うたびごとによく語ったことは、過去の戦争の悪夢を忘れて将来に目を転じ、日比両国は互いに信頼し合って提携することであるということでありました。故大統領が腹心のネリ氏を初代の駐日大使に抜擢したのも、その意図からであったといわれております。
マグサイサイ氏の遭難の報に接し、弔問のため大使館にネリ大使を訪れるや、大使の落胆はその極に達していましたが、ぼつぼつと語るその言葉の中に、マグサイサイ大統領は、私が赴任するに当り、ひそかに指令していた。それは日比協力の長期計画に関してであり、フィリピンの将来は実に日本との協力にあるということであった。大統領の具体的指令がまさに緒につかんとしたやさきにこの悲劇であるという一節があり、ネリ大使の心中察するに余りあるものがあったのであります。また、それだけに、ラモン・マグサイサイの名前は、不思議なほどわれわれ日本人にも近親感を与えていたのであります。
この一代の風雲児ラモン・マグサイサイは、フィリピンの英雄ホセ・リザールに次いで、やがてはフィリピンの伝説の主人公として後世にその名前は残るでありましょう。マニラ湾の有名なあの大夕焼けの消えるがごとく去った故マグサイサイ大統領は、今は香り高いサンパギータの花に埋もれて、マラカニアン・パレスの大広間に眠っているのであります。
彼が限りなく愛したフィリピン国民に心から哀悼の意をささげまして、趣旨の説明を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/5
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006・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/6
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007・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は可決いたしました。(拍手)
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008・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、故マグサイサイ・フィリピン共和国大統領の葬儀に参列する特派大使に本院議員芦田均君を任命するため、外務公務員法第八条第三項の規定により本院の議決を得たいとの申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/8
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009・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって、その通り決しました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/9
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010・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第一、所得税法の一部を改正する法律案、日程第二、法人税法の一部を改正する法律案、日程第三、租税特別措置法案、右三案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。大蔵委員長山本幸一君
〔山本幸一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/10
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011・山本幸一
○山本幸一君 ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。
所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
今回の改正は、政府の説明によれば、低額所得者の負担の軽減に留意しつつ、税率の累進度の緩和に重点を置いて所得税負担の一般的軽減をはかるため、所要の改正を行おうとするものであります。
改正の内容につきましては、まず第一に、基礎控除額を八万円から九万円に、一人目の扶養親族についての扶養控除額を四万円から五万円に引き上げるとともに、給与所得控除については、年収四十万円から八十万円までの給与についても新たに一割の給与所得控除を認め、その最高限度額を八万円から十二万円に引き上げることとし、また、税率につきましては、新たに百分の十の最低税率と百分の七十の最高税率を設けることとしているのであります。次に、貯蓄の奨励に資するため生命保険料の控除限度を引き上げ、年一万五千円をこえ三万円までの払い込み保険料についても、その半額に相当する金額を生命保険料控除として控除することとしております。さらに、配当控除制度の合理化をはかるため、課程所得一千万円までに該当する配当所得については百分の二十、一千万円をこえる配当所得については百分の十の配当控除率を適用することとし、また、不動産所得、配当所得等の資産所得に対して実情に即する課税を行うため、資産所得の世帯合算課税の制度を創設することとしております。このほか、税制の簡素合理化に資するため所要の改正を行うことといたしております。
以上の改正は本年四月から実施することとしておりますので、昭和三十二年分の所得税につきましては減税の程度が四分の三となるように定めておりますが、給与所得に対する源泉徴収については、四月以降この改正後の平年度の税額によることとしております。
この措置によりまして所得税の負担は著しく軽減されることとなります。この所得税の一般的減税による減収額は、初年度約一千九十二億円、平年度約一千二百五十四億円となりますが、租税特別措置法等による改正分をも含めて増減収を通算いたしますと、昭和三十二年度におきまして約九百五十一億円の減収が見込まれるのであります。
法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
まず第一に、中小法人の負担の軽減に資するため、現行年所得五十万円まで行なっている軽減税率の適用範囲を拡大して、年所得五十万円から百万円までの所得についても三五%の軽減税率を適用することといたしております。次に、重要物産免税制度につきましては、国民経済上重要な新規産業育成のための制度であることを明確にし、一定の期間内に新増設された設備の所得について、新増設の事業年度及びその後三年間免税を行うとともに、免税所得額に一定の限度を設けることとしているのであります。このほか、人格のない社団または財団で収益事業を営むものに対して、その収益事業の所得について新たに法人税を課税する等の所要の規定の整備を行うこととしているのであります。
以上の措置によります法人税の減収は、軽減税率の適用範囲の拡大により、昭和三十二年度約十五億円、平年度約二十二億円の減収が見込まれますが、租税特別措置法等による改正分をも含めて増減収を通算しますと、昭和三十二年度におきまして約七十一億円の増収が見込まれるのであります。
租税特別措置法案について申し上げます。
本法律案について、おもな内容は次の諸点であります。
まず第一に、現行の利子所得非課税の措置は、本年三月末をもってその適用期限が切れることになっているのでありますが、昭和三十四年三月三十一日までに預け入れられた一年以上の長期預貯金等の利子所得につきましては、同日までに支払われるもの及び同日後でも預け入れの後三年以内に支払われるものには所得税を課さないこととし、同日までに支払われるその他の預貯金等の利子所得についても、一〇%の税率により、他の所得と分離して課税することとしております。また、配当所得に対する源泉徴収税率も、今後二年間、現行通り一〇%の軽減税率を適用することとしております。
次に、現行の輸出所得の特別控除の制度につきまして、その適用期限を昭和三十四年来まで二年間延長し、プラントの範囲を拡大することとしております。
次に、現在の特別償却制度を充実合理化し、特に鉱業及び法人の営む造林業につきましては、その特殊性に応じた償却を認めることといたしております。
次に、増資新株の配当に対する法人観の免除、増資登記の登録税の税率の軽減、概算所得控除、配当控除額の五%割増しの制度等は、今回これを廃止することといたしております。
また、価格変動準備金につきましては、その毎期の繰り入れ限度額を二割引き下げるとともに、欠損を生じてまで積み立てをすることができないこととしております。
交際費に対する課税につきましても、損金に算入される限度をおおむね二割程度引き下げて、なお二年間これを存続することといたしております。
その他、航空機の乗客に対する通行税の軽減措置を一年間延長し、協同組合課税を適正化し、外航船等の旅客の飲用に供する酒類に対しては酒税を免除する等、制度の整備を行うほか、法文の全体をわかりやすく書き改めることとしているのであります。
以上の措置による増減収は、初年度には増収約二百三十五億円、減収約三十五億円、差引純増収約二百億円を見込んでおります。
以上三税法改正案につきましては、三月一日以降慎重審議を続け、また、三月十三日には特に公聴会を開きまして、学識経験者から賛否こもごもの意見を聞いたのでありますが、その詳細につきましては、これを会議録に譲ることといたします。
ただ、この際、主要な質疑応答の内容につきまして若干御報告申し上げたいと存じます。
まず、「今回の税制改正は、低額所得者に対する減税が少く、特に課税最低限が低過ぎるではないか。また、減税率は、なるほど低額所得者に大きいが、手取り増加率は高額所得者の方が大きくなっている。減税率と手取り増加率を考えて累進税率をきめるべきではないか」という質疑に対して、大蔵大臣より、「課税最低限は、そのときどきの情勢等を考えてきめるべきであって、従来は税率の引き下げよりも控除の引き上げに重点を置いたが、今回は中産階級以上の減税に重点を置いた。また、税率の改正は、手取り増加率よりも減税率がどうなるかを考えてきめるべきであり、全体の減税額と見合って各所得階層につき減税率をきめた」という答弁がございました。
次に、「大蔵大臣は、今回の税制改正において、五千万円以上の所得者は相当の増税になると本会議で答弁しておられるが、決して五千万円の線から増税にはなっておらないではないか」という質疑に対して、大蔵大臣より、「五千万円以上の所得者は、おおむね配当所得が主たる所得になっているので、大部分の人は増税になるが、事業所得あるいは勤労所得のみで五千万円以上の所得者があるとすれば、これは減税になる」という答弁がございました。
次に、「給与所得者とその他の所得者との間に、課税上負担の不均衡があるから、これを是正するため、給与所得控除を二〇%から二五%に引き上げるべきではないか」という質疑に対して、大蔵大臣より、「事業所得をできるだけ正確に把握するよう努めることにより、給与所得との不均衡を是正していきたい」との答弁がございました。
次に、「利子や配当のような資産所得は、給与所得や事業所得に比べ、一番担税力が大きいのに、長期の預貯金利子を非課税にしたり、配当控除を認めたりするのは、負担の公平を著しく破らないか。また、配当控除を一律に二〇%などとすることは、低額所得者ほど負担が重くなるから、むしろ、法人擬制説をやめて、法人実在説をとるべきではないか」という質疑に対して、政府側より、「長期預貯金利子については、最近の経済情勢や今回の減税による納税者の手取額の増加などを考え、特に、貯蓄奨励のため、二年間を限って非課税にした。また、配当控除については、負担の均衡という点から、法人と個人との間において、法人擬制説を徐々に薄らかしていく方がいいと考える」という答弁がございました。
次に、「資産所得の世帯合算制度を新しく作らなくとも、実質課税の原則によって課税できるのではないか」という質疑に対して、政府側より、「実質課税の原則だけでは十分でないので、高額所得者については、資産所得課税を担税力にマッチしたものに改正いたしたい」という答弁がございました。
次に、「証券業者の名義貸しによる預かり配当所得についての報告金額の限度は、名義貸しによる脱税を防止するため、できるだけ低くすべきではないか」という質疑に対して、大蔵大臣より、「よく実情を調査の上、負担の公平と証券界に与える影響等を考慮して善処する」という答弁がございました。
次に、「特別措置は負担の公平を著しく破っているが、今回の改正案では、特別措置の整理がはなはだ不十分である。特に減価償却については、特別措置によるよりも、むしろ時代おくれとなっている固定資産の耐用年数を改正して中小企業を救うべきではないか。また、概算所得控除は、実際上中小企業の負担軽減となっているので、国民皆保険が実現されるまで、多少控除率を引き下げても存置すべきではないか」という質疑に対して、政府側より、「特別措置は今の段階では相当整理したつもりである。固定資産の耐用年数の改正について、実情に即するよう常に検討している。また、概算所得控除は、行く行くはやめなければならないものであるから、健康保険加入を促進するという意味で、今回の減税を機会にやめることにした」という答弁がございました。
次に、「重要物産免税については、もうかった場合に免税するということになり、おかしなことにならないか。むしろ利益が出るまで国から補助するということの方が正しいのではないか」という質疑に対して、政府側より、「対象品目を、国民経済上重要な新規産業で、採算に不安のあるものに限り、期限をつけて取得価額の四割まで免税するように改めたい」という答弁がございました。
次に、「一部会社に対し、片方において特別措置により税法上免税の恩典を施すなら、片方においてその利益配当に対しては強い制限を行うべきではないか」という質疑に対して、政府側より、「免税になる所得の大部分は、これを社内に留保するという方向に行政的に努力するよう善処する」との答弁がございました。
最後に、「人格のない社団または財団は、近代社会において自然発生的にできた千差万別の団体であるが、これをこの法律でとらえようとすることは非常にむずかしいのではないか。むしろ、現実に利益を受けた個人に課税すれば足りるのではないか」という質疑に対して、政府側より、「現にこれらの団体は収益事業を行なって相当の収益を上げているので、これらに公平に課税する必要がある。なお、収益事業の範囲については、どうしても課税しなければならないものに限定し、該当するものには税務署から積極的に通知して申告させ、その他これが統一運営をはかるよう十分慎重を期する」という旨の答弁がございました。
以上が質疑応答の概要でございます。
以上三法律案は、昨十九日質疑を打ち切りましたところ、法人税法の一部を改正する法律案につきまして、小山委員より各派共同提案による修正案が提出されました。修正案の内容について申し上げますと、「法人でない社団または財団の収益事業に対して課税する場合、継続して事業場を設けてなすものに限る」とするものであります。
次いで討論に入りましたところ、社会党を代表して有馬輝武委員は、政府原案の三法律案に対して反対の旨の討論をなされました。
次に採決に入りましたが、まず第一に、法人税法の一部を改正する法律案の修正案については全会一致をもって可決し、修正部分を除く原案については起立多数をもって原案の通り可決せられ、よって本案は修正議決いたしました。次に、所得税法の一部を改正する法律案、租税特別措置法案の二法律案につきまして採決いたしましたところ、いずれも起立多数をもって原案の通り可決いたしました。
以上、御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/11
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012・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。石村英雄君。
〔石村英雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/12
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013・石村英雄
○石村英雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法、法人税法並びに租税特別措置法を改正する三法律案に対しまして、反対の意思を明らかにせんとするものであります。(拍手)
申すまでもなく、この三つの法律案は、このたび政府与党が掲げました一千億減税の内容をなすものでございます。その内容を、具体的に、しさいに検討いたしてみますと、一般国民にとっては、一千億の減税は、いわばウナギのかば焼のかおりをかがされただけで、肝心のかば焼は隣りのお屋敷に持ち込まれたということになるのであります。(拍手)
以下、数点にわたりまして、反対理由を明らかにいたします。反対の第一点は、課税最低限、すなわち免税点が非常に低くて、最低生活費に大きく食い込んでおるという事実でございます。今回の改正案による免税点は、給与所得で、独身者十一万八千八百九十一円、五人世帯で二十七万五十七円、事業所得は、独身者九万円、五人世帯で二十万五千円となっておりますが、これらの層のエンゲル係数は四五%から五〇%前後に達するでございましょう。なぜこのように最低生活費に大きく食い込んだ免税点を設けたかというと、その根本原因は、結局、政府、自民党が最低生活費には租税を課すべきでないという根本原則を無視しているからでございます。(拍手)この政府、与党の態度は、ひいては、所得税に縁のない低額所得者に対して、今回の一千億減税に当り、何らの措置を講じなかったということになったのであります。改正案が発表され、三十二年度予算案が国会にかけられますや、直ちにこの点が問題となりました。この非難に対しまして、大蔵大臣は、「税金を納めていない者に減税のしょうがない。金を分けてやるわけにはいかない」と答弁し、与党も、せんだっての予算案の採決に当りまして、河野金昇君がやはり同様の討論をいたしました。その場限りの逃げ口上でありますならばともかく、ほんとうにそのように考えているといたしますと、政府にいたしましても、与党にいたしましても、まことに知恵のない、思慮の浅いことだといわざるを得ません。(拍手)
現在、所得者教は全国で約二千八百万人、そのうちで所得税を納めておる者は約一千万人でございます。所得税を納めない千八百万人につきまして、家族を含めますと約五千八百万から六千万になるでございましょう。九千万国民のうちの六千万人の悲痛な叫びを無視しているのが、今度の一千億減税の正体でございます。(拍手)これらの人々は、なるほど所得税は納めておりませんが、多くの税金を負担しておるのでございます。その日の生活に困っている者といえども、マッチは毎日するでございましょう。そのマッチをすれば直ちに税金、ときには駄菓子も食べましうが、駄菓子を食べると、これまた砂糖消費税、ラムネを飲めば税金、女の子が身だしなみにクリームをつければこれも税金、労働者がその日の疲れをいやすため二十度の安しょうちゅうを飲むといたしますと三五・三%税金がかかります。たばこも、バット三十円のうち税金が十九円十六銭、四十円の新生は二十六円九十四銭の税金でございます。一千億減税するのならば、間接税にも手をつけてくれ、それがいやなら、せめて社会保障を拡充してくれと、六千万の国民は叫んでおるのでございます。(拍手)悲痛な六千万人の国民の血の叫びに対して、政府与党は、「金を分けてやるわけにはいかない。病気になったら今度は五十円よけいに取りますぞ。汽車賃、バス賃も上げますぞ。新生、バットもなるべく売らないようにして、専売局に五十五億円もよけいかせがすぞ」というのが、政府与党の答えでございます。これでは全く踏んだりけったりだといわざるを得ません。(拍手)
社会党は、これに対しまして基礎控除を十万円に引き上げる、あるいは扶養控除を二万円上げる、あるいは勤労控除を二五%に引き上げる、さらにまた、零細な事業所得者に対しましては二〇%、最高六万円の特別控除を行なって、免税点を大きく引き上げることを主張いたしておるのでございます。
反対の第二の理由は、減税の重点が高額所得に置かれておる点でございます。政府は、年収五十万円から百万円までの層の租税負担が大きいから、この中堅層の税金を下げるのだ、こう説明しております。五十万円、百万円の者が中堅層とはわれわれは考えませんが、それはそれといたしまして政府は百万円までの減税に名をかりまして、実際は五百万円から一千万円と、だれが見ましても大きな高額所得者に対する減税を行なっておるのでございます。
納税者にとっての減税のありがたさというものは、結局、手取りが幾らふえるかということでございましょう。そこで、改正案によって手取り増加率を調べてみますと、給与所得五人世帯で、年収三十万円ではわずかに一・四%、五十万円では六・八%、百万円で約一四%、五百万円ではこれが三二%となり、一千万円では三七%にも達するのでございます。住民税を加えて計算いたしますと、三十万円や五十万円ではほとんど変りがございませんが、五百万円では約四四%、一千万円では驚くなかれ五五・九%、約五六%の大きな手取り増加となるのでございます。三十万円や五十万円の人たちは、汽車賃やバス賃が上りまして、さらに物価も上りますので、財布は、ふくれるどころか、むしろ、へこんでしまいますが、一千万円の人は五割六分もふくれますから、財布がはち切れて、トランクでも買いにいかなければならなくなるのでございましょう。(拍手)これが一千億減税の正体であります。これがいわゆる仁徳以来の仁政の正体でございます。世に伝えられる仁徳帝の仁政がこのようなものでありましたならば、おそらく、難波の昔、天皇制打倒の大デモが起ったでございましょう。昭和の今日では、この法律が通りますと、自由民主党政府打倒の叫びが全国津々浦々に大きくわき起ろでございましょう。(拍手)
反対の第三は、依然として法人擬制説に立脚して配当の税額控除を行なっておることでございます。今回の改正では、配当所得の免税点が従来の百二十二万円が百四十九万円と拡大されております。配当所得が担税力が一番強いということは、税制調査会すらこれを認めておりますが、それを百四十九万円までは所得税を一文も取らないことにいたしておるのでございます。汗水たらして百四十九万円かせぎますと、税金が約十五、六万円かかるのでありますが、一方、別荘に寝ころんで配当を百四十九万円もらっておると、税金は、所得税は一文もかからないのでございます。まことに奇怪な税法だといわざるを得ません。(拍手)この配当控除に伴う奇怪さは数多くの例がございますが、これを省きまして、いずれにいたしましても、この矛盾は、法人擬制説に立脚する限り、とうてい免れることのできないものでございます。われわれは、とのような不労所得に課税しない、あるいは軽減するやり方に、あくまで反対せざるを得ません。(拍手)
反対の第四は、家族合算制度の新設でございます。現在、家族の資産所得が名義だけ家族のものとなっておる場合は、実質課税の原則によって本来の所得者に合算されますが、新設される家族合算制度は、この場合のことではなく、名実ともに家族のものである資産所得に対しまして、一定の条件のもとで世帯主に合算せんとするもので、いわば家という観念を新たに税法に導入いたしておるのでございます。われわれは高額所得あるいは資産所得には高率の累進税をかけるということには賛成でございますが、このような家族制度の復活という反動的な立法には断固として反対せざるを得ないのでございます。(拍手)
反対の第五は、所得税法と法人税法双方にわたる問題でございますが、重要物産の免税制度を依然として設けておる点でございます。この点につきましては、ある程度改善が行われました。しかし、根本において矛盾を重要物産の免税制度というものははらんでおりますから、少々改善をいたしましても、それは何ら改善にならないのでございます。つまり、この重要物産免税の結果、現実に赤字となった場合には何ら恩恵がなく、利益が上った場合に初めて恩恵があるのでございます。もし国民経済上必要ならば、赤字となる場合にこそ恩恵を与えて産業を助長すべきでありまして、利益を上げているものに免税をする必要はごうもないのであります。昭和三十一年度の商業、鉱工業対策費は、試験研究費三十億円を含めまして、約五十四億円弱にすぎません。重要物産の免税は、年度当初の見積りでさえ八十数億円、今日推算すれぼおそらく百億円をこえるでございましょう。もしこの百億円をもって日本の産業に投じますならば、日本の産業は飛躍的に発展するでございましょう。われわれは、このような矛盾した免税に反対するものでございます。(拍手)
第六には、いわゆる人格なき社団、財団を法人とみなして、その収益事業に課税せんとする点でございます。この点につきましては、昨日の大蔵委員会で、与党の諸君の良識によってある程度修正されました。しかし、今日なお人格なき社団、財団という観念はきわめて未熟でございます。従って、この法律の適用は、多くの問題を含み、非常な不安を世の中に巻き起しておるのでございます。たとえば、純演劇を愛好し、また、よき音楽を求めて勤労大衆が集まって行う事業が、収益事業といたしまして重税を課せられることになるおそれが多分にあるのでございます。文化の向上のためにも、この大衆団体の行為に課税するとは、まことに文化の敵だといわざるを得ません。(拍手)
反対の第七は、中小法人に対する税が過重であるという点でございます。今回の改正で、従来五十万円まで三五%であった法人税が百万円までに引き上げられました。しかし、所得五十万円未満の法人は、全法人中約六七%に達しておるのでございます。この六七%の中小法人は、今度の改正では何らの恩恵を受けられないのでございます。むしろ、現在各種の租税特別措置を利用いたしまして、実効税率が二〇%前後から高くて三〇%前後になっておる大法人が、百万円までに引き上げられた結果、減税がさらに追加されたといわざるを得ません。われわれは、所得税法同様、法人税法が大法人目当ての減税案であるといわざるを得ないのであります。(拍手)
反対の第八は、租税特別措置法についてでございます。今回の改正のうたい文句の一つは、税の不公平を是正するということでございました。しかし、税の負担を不公平ならしめておる根源は、所得税法あるいは法人税法そのものにありますが、その不公平を拡大強化しておるのが租税特別措置法でございます。従って、政府与党が不公平の是正を言うならば、租税特別措置法を全廃しなければなりません。しかるに、改正法は、ただ文章を全面的に改めただけで、同工異曲のものでございます。ある点を少し是正したかと思うと、他の点では現行より悪くしておるのでございます。その最もひどいのは長期性預金の利子の全免でございます。利子が先に申しました配当所得とともに量も担税力が大きいことは、税制調査会さえこれを指摘いたしております。税制調査会は次のように答申いたしております。「利子所得が、資産所得の一つとして、配当所得に次いで強い担税力を有することは否定し得ない。アメリカ、イギリスでも利子所得の課税上の優遇には慎重である。この意味では、利子所得の税負担を他の所得よりも軽くすることは、公平の原則に反するといわなければならない。ことに預金利子非課税の措置が預貯金の額を税務当局に知られることをおそれてのものであるとすれば、このような制度は税制上受け入れることはできない。」税制調査会は、このように手きびしく論難しておるのでございます。しかるに、政府与党は、一年以上の預貯金につきまして免税といたしております。税制調査会が税制上受け入れることができないと極言していることを、あえて強行いたしておるのでございます。この一点のみで改正案が支持し得ないものであることは明白で、多言を要しないと存じます。
その他多くの点において、租税特別措置法には、われわれの支持することのできない矛盾をはらんでおります。たとえば、探鉱用機械設備の特別償却の拡大あるいは鉱業用坑道等の特別償却の新設等でございます。われわれも設備の償却を十分に行なって産業の基盤を強固にするという点については認めるにやぶさかでありませんが、それは、むしろ、所得税法、法人税法全体の償却規定を再検討いたしまして、広く中小企業、機械工業等を新時代に即応せしめるべきであって、特別措置によって大企業のみを保護せんとする不公平に反対せざるを得ないのでございます。(拍手)
以上、約十点にわたって三法律案反対の理由を申し述べました。これを一言にしていえば、一千億の減税は、高額所得者、大企業のための減税であって、低額所得者、中小企業にとっては縁もゆかりもない改悪法であるということに帰着いたします心何とぞ、私の所論に御賛成下さいまして、三法律案に反対し、否決されんことを望みます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/13
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014・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 三案を一括して採決いたします。日程第一及び第三の委員長の報告は可決、第二の委員長の報告は修正であります。三案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/14
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015・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告の通り決しました。(拍手)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/15
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016・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第四、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸委員長淵上房太郎君。
[淵上房太郎君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/16
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017・淵上房太郎
○淵上房太郎君 ただいま議題となりました国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。
まず、本法案の趣旨を簡単に申し上げますと、現在、国鉄は、老朽施設及び車両の取りかえ、輸送力の増強、鉄道の近代化等を行い、経済拡大の要請にこたえるとともに、サービスの面上、経営の合理化を促進すべき段階にきているのでありまして、これに要する資金は向う五カ年で約六千億円であります。右資金のうち、一部は外部資金によることとし、老朽資産の取りかえを可能ならしめる減価償却費の計上のための経費、及び、採算のとれない輸送力増強施設のための経費に充当すべき自己資金はこれを運賃値上げによることといたしたのであります。
運賃値上げ率の決定に当りましては、国民生活並びに物価に及ぼす影響等を考慮し、最小限度の一割三分にとめておりますが、運賃改訂の内容について概要を申し上げますと、旅客運賃の賃率はおおむね一割三分程度の値上げでありますが、寝台料金、特別二等車料金及び特別二等船室料金は据え置きとなっております。定期旅客運賃は、最高割引率につき若干の修正が加えられておりますが、通学定期の割引率は現行のままであります。次に、貨物運賃もおおむね一割三分の値上げでありますが、海陸輸送の調整及び鉄道の輸送原価を考慮し、貨物賃率の遠距離逓減率につき修正が加えられております。その結果、遠距離貨物で、値上げ率が大きくなり、国民生活に急激な影響を与えるおそれのあるものについては、割引その他特別の措置がとられております。なお、青函航路及び関門トンネルの貨物常業キロ程の短縮、重量減トン制度の改正等、運送制度を合理化いたしまして、利用者の利便をはかることとなっております。
さて、本法律案は、三月五日本委員会に付託され、翌六日政府より提案理由の説明を聴取し、自来十回にわたり委員会を開会、十五日には学識経験者、利用者、労働組合関係者及び報道関係者を参考人として招致し、その意見を徴する等、慎重に審査いたしました。
本法案審査に当りましては、運賃値上げの物価及び国民生活に及ぼす影響いかん、国鉄五カ年計画には政府資金を投入すべきではないか、適正な運賃原価の要素をどう考えるか、政策的要請により原価を割った運賃については一般会計から補給すべきではないか、労働力の増加なく、資本の増加のみで予定の収入をあけ得るか、固定資産の貸付状況などの諸点に関し熱心な質疑応答が行われましたが、詳細は会議録によって御承知願います。
かくして、三月十九日質疑を終了し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して下平委員は、現在わが国産業経済発展の隘路となっている国鉄輸送力の不足を打開する必要あることは認めるが、老朽施設の取りかえば政府の責任において行うべきであり、償却不足は自然増収でまかない得ると信ずる、また、鉄道の近代化は外部資金によるのが妥当である、かかる観点より、これら資金を運賃値上げに求めることは承服できないとの理由をもって、反対の意見を述べられました。自由民主党を代表して木村委員は、国鉄が公共企業体として独立採算制を建前としている点並びに一般経済の現状より見て、輸送施設の拡充整備のため一割三分程度の運賃値上げはやむを得ないが、私鉄、バス、海上運賃の値上げに対して慎重なる態度をとること、五カ年計画の遂行については、極力経費の節減、計画の繰り上げによって国民の期待以上の効果を上げること、運賃改訂による増収額はあげて輸送力の増強に振り向けること、並びに、さらに一そう経営の合理化をはかること等を要望し、賛成の意見を表明されました。
右をもって討論を終結し、採決の結果、起立多数をもって本法案は政府原案の通り可決すべきものと議決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/17
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018・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 討論の通告があります。これを許します。井岡大治君。
〔井岡大治君登壇]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/18
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019・井岡大治
○井岡大治君 私は、日本社会党を代表して、ただいま提案になりました国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案に対し反対の討論を行わんとするものであります。(拍手)
思うに、国鉄の消長が、わが国の産業、経済に重大なる影響を持っていることは、いまさら賛言を要しないところであります。それゆえにこそ、政府は、今回の運賃改訂に当って、国鉄の輸送力を飛躍的に増大し、いわゆる輸送の隘路を打開して、国家の産業、経済、政治、特に国民生活により大なる貢献をいたしたいと申しているのも、これがためであろうと信じます。
過去数年来、わが党は、同様の見地から、国鉄経営の合理化、近代化について、政府並びに国鉄当局に対し、しばしば警告を発して参ったのであります。政府は、基幹産業の重点施策と称して、一方においては、他の基幹産業に対し、莫大なる資金、資材を、いわば傾斜的につぎ込み、たとえば、造船のごときは必要以上の援助さえ与えながら、他方、全産業の基盤となるべき陸運、特にその基幹たる国鉄には、河らの対策を講ずることなくこれを放置し、従来、合理化といえば、ひたすら国鉄職員の努力、血のにじむような労働強化にのみ依存するというのがその実情であって、ついに今日の輸送の大混乱を招来するに至ったことは、私の最も遺憾とするところであります。(拍手)
最近のわが国の経済の飛躍的な膨張発展のために輸送需要の画期的な増大が起り、さらに二年連続の農産物の豊作等々により輸送の隘路はますます増大、それがために、たとえば、青森のリンゴを初めとして、豊作貧乏という泣くにも泣けない悲劇が全国至るところに続出する現象を呈していることは、諸君のひとしく承知されるところであります。交通政策に対する政府の無為無策は断じて許さるべきものではありません。(拍手)しこうしておくればせながら、ここにようやく気のついた政府は、国鉄再建五カ年計画なるものを発表して、国民の日をごまかそうといたしておるのでありますが、しかし、それと同時に、これに便乗して、その財源と称して国鉄運賃の値上げを打ち出して参ったのであります。しかしながら、今回の国鉄運賃の値上げは、その理由に乏しく、合理性を欠き、しかも、他の適切なる方策をもってすれば、運賃値上げを行うことなく、その再建計画を遂行し得るのでありますから、国民のとうてい承服し得ざるところであります。(拍手)
すなわち、政府の運賃値上げの理由は、第一に、累積せる老朽施設の取りかえを行なって輸送の安全を確保し、第二に、電化、ディーゼル化等によって国鉄経営の近代化をはかろうというのでありますが、いやしくも国鉄の累積した老朽施設は一朝にして起ったものではありません。長い戦争によって、極度に酷使を行いながら、補強の道は断たれ、加うるに、耐用命数を無視した無計画使用、さらに戦後混乱したインフレ経済の犠牲によるものであって、その復旧をもっぱら運賃にしわ寄せすべき性質のものにあらざることは明らかであります。(拍手)換言すれば、戦時国家の無謀なる酷使の結果で、その責任は、あげて、国、すなわち政府が負うべきであります。かかる事例に備えるために、日本国有鉄道法は、その第五条第二項に「政府は、必要があると認めるときは、予算に定める金額の範囲内において、日本国有鉄道に追加して出資することができる。」と規定いたしておるのであります。しかるに、政府は、今日までこれを顧みることなく放置しておったことは、明らかに政府の怠慢というも過言でありません。(拍手)政府は、みずからの責任を回避するために今回の国鉄運賃の値上げを行い、値上げ率一三%中五%をこれら老朽施設の取りかえに充当するというに至っては、全く言語道断と言うのほかないものと考えるのであります。(拍手)何ゆえならば、国有鉄道運賃法第一条によれば、運賃策定の基礎基準に、運賃及び料金は原則として原価を償うものと定め、運賃策定の基礎として原価主義をとっていることは明らかであって、戦時中及び戦後の償却不足を、あすの国鉄利用者に運賃として負担を負わしめることは、明らかにこの原価主義を逸脱せるものといわなければなりません。(拍手)その復旧は、運賃値上げによるにあらずして、当然政府みずから負担すべきものであります。従って、われわれは、この観点より、今回の国鉄運賃値上げには絶対に賛成することができません。(拍手)これが第一点。
第二点として、国鉄の電化、ディーゼル化等による施設、設備等の近代化でありますが、宮澤運輸大臣は、提案の理由の説明において、「政府はさきに臨時に日本国有鉄道経営調査会を設置して広く民間有識者の意見を聴取いたしました。」と申し、運輸当局は、あたかも運賃値上げが経営調査会の至上命令であるかのごとく喧伝これ努めておりますが、経営調査会は、その答申の中で、「工事経費の必要規模およびその資金調達方法」の項で、国鉄近代化のため、電化、ディーゼル化、客貨車の増備などのごとき、将来収益の増加が見込まれ、少くとも収益の増加の裏づけのあるものについては、外部資金によること、と明確に規定しているのであります。換言すれば、建設工事はもちろん、改良工事といえども、採算上収益増加可能なるものは外部より資金を導入することが企業会計の立場から適当であると申しておるのであります。しかるに、本年度国鉄予算は、経営調査会答申の原則を無視し、将来収益の存否いかんにかかわらず、そのすべてを運賃値上げに依存せしめていることは、明らかに経営調査会への挑戦と言うも過言でないのであります。(拍手)現に、政府の提案説明によれば、現在施工中の山陽本線、東北本線、北陸本線の電化工事六十一億八千万円、これに伴う電気機関車、電車等の百二十三億、さらに、通勤輸送緩和対策の東京、大阪付近の六十六億円、電車増備四十四億円、合計二百九十四億八千万円、すなわち、運賃値上げ一三%のうち五%をここに計上しているのでありますが、これは明らかに経営調査会の意見に違反し、運賃原則の原価主義を乱るものといわなければなりません。(拍手)さらに、七十五億、すなわち、残り三%の固定資産に基く地方公共団体への納付金、これは、端的に申せば、明らかに政府の地方財政政策の貧困に基因するものであって、これこそ、当然政府がその責任において解決すべきものである。にもかかわらず、国鉄利用者にその負担をあえて押しつけようとすることは、私どもの断じて了解することのできないところであります。(拍手)
第三点として、国鉄をめぐる醜聞の数々であります。国鉄当局の言をかりて申すならば、血のにじむような努力にかかわらず、次から次と、国民をしてまたかの感を抱かしめる汚職々々の連続であります。先般の決算委員会、運輸委員会において、この問題を追及いたしましたところ、政府は、新たに財政監理をするための役職を設けて、これが絶無を期す、と申しておったのでございますが、本日の新聞は、新たにこしらえたその人がまた汚職をやっておるというこの事実、われわれは、こういう醜聞を断じて見のがすことができないのであります。(拍手)しかも、これらの問題を解決しないで、国民にしわ寄せをする運賃値上げをしようというに至っては、われわれは断じて承服することができません。しかも、高架下また貸し事件を初め、鉄友会の問題、これは労働組合の問題ではありませんことは、決算委員会において明らかになっておるところであります。(拍手)このような、多数の外郭団体の不当利得、固定資産売却等にからむ不正事件等々、幾多の醜事実は、あげて、国民の国鉄に対する怒りとなって、国鉄の信用はもはや地を払っていると申すも過言ではありません。(拍手)かかる内部の不正を徹底的に究明することなく、輸送力増強の美名に名をかって国鉄運賃値上げを断行するがごときは、まことに思わざるもはなはだしきものといわなければなりません。(拍手)
しかも、今回の運賃値上げの内容が、旅客運賃値上げ、特に百五十キロ以内の通勤者、勤労大衆の値上げに重点が置かれ、ために、中には十割値上げに達する部分も存在するのであって、かかる無謀なる値上げは、われわれの断じて許し得ないところであります。(拍手)勤労大衆のふところに直接響く三等旅客運賃は、元来、従来の運賃率をもってしても、すでに黒字であります。反対に、独占資本の独占物資といわれる貨物運賃は、ほとんど大多数が運賃原価主義を著しく下回るものでありまして、独占資本の物資輸送犠牲の上に運賃値上げが行われようといたしておるのであります。勤労大衆の近距離運賃の黒字をもってカバーするという、全く順逆転倒せる従来の運賃制度を、今回の値上げをもって、さらにその不合理を拡大しようとしているのであって、われわれは断じてかかる無謀なる法律案を許すわけには参りません。(拍手)いわんや、国鉄運賃が直接間接インフレを増長する要因となり、国民生活に多大の悪影響を及ぼし、なかんずく低収入大衆に多大の犠牲を強要するものでありますから、この際わが党はこれを許すことができません。
以上、運賃値上げの反対の理由の大要を申し述べました。
なお、国鉄の輸送力増強は、目下焦眉の急を要することは言を待ちません。ゆえに、この際、私は、以下、これの大綱について申し述べ、わが党の立場を明らかにいたしたいと存じます。(拍手)
今回の運賃値上げの額は三百六十六億円、その見返り財源として、第一に、政府はさきに昭和三十二年度税の自然増収は二千億円近くあると申しておるのであります。まず、政府借入金五百八十五億円を、日本国有鉄道法第五条、この規定に基いて資本金に繰り入れることによって、元本返済額五十五億円を節減し、さらに、資金運用部からの借入金八十億円を百二十四億円とし、公募債二百十五億を三百十五億に増加し、利子補給五億円を加えて、政府原案より計二百四億円を増加計上し、この金額と値上げ額三百六十六億円との差百六十二億円については、固定資産による納付金七十五億円中、昨年と同様、三十七億円を納付することといたし、さらに三十八億円を浮かし、他方、本年度は五カ年計画の初年度であるから、物資調達の困難、要員の不足その他諸般の情勢を考慮して、工事勘定一千六十九億円中、百億円程度を減額することが適当なりと考えられるのであります。かくのごとくするならば、運賃値上げを取りやめても、なおかつ、国鉄のいわゆる五カ年計画はりっぱに遂行できるのではありませんか。(拍手)従って、運賃値上げを用いずして、適切なる五カ年計画初年度の事業はこれを遂行し得るはずであります。(拍手)
さらに、国鉄当局において解決すべき高架下問題を初め、国鉄資産の適正な管理運営により、決算委員会で指摘された幾多の醜悪事件を、大胆に、勇敢に、しかも誠実に履行することによって、国鉄の財政基礎は一段と強化されるであろう。私は、ここに、国民の名において強く要望してやみません。
政府は、わが国経済発展と国民生活安定のために、(「時間々々」「わかった、わかった」と呼び、その他発言する者あり)すみやかに、かかる無謀、無法なる国鉄運賃値上げ案を撤回し、社会党修正意見によってその所期の目的を達成すべきである。自由民主党の諸君は、わかった、わかったと言っておりますけれども、決してわかっておらない。この醜聞に対して、国民の怒りはどのようなことであるか、十分国民の声に耳を澄ましていただきたいことをお願いいたします。(拍手)——その所期の目的を達成して、国民の期待にこたえたいと思います。どうか諸君……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/19
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020・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 井岡君、簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/20
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021・井岡大治
○井岡大治君(続) 日本社会党の意見に賛成され、御協力あらんことを希望いたしまして、私の反対討論は終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/21
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022・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) ただいまの井岡君の発言中、不穏当な書辞があれば、速記録を取調べの上、適当の処置をとることといたします。
これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。
氏名点呼を命じます。
〔参事氏名を点呼〕
〔各員投票〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/22
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023・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。
投票を計算いたさせます。
〔参事投票を計算〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/23
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024・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。
[事務総長朗読〕
投票総数 三百十八
可とする者(白票) 百九十六
否とする者(青票) 百二十二発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/24
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025・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 右の結果、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名
阿左美廣治君 相川 勝六君
逢澤 寛君 愛知 揆一君
青木 正君 赤澤 正道君
秋田 大助君 足立 篤郎君
荒舩清十郎君 有田 喜一君
有馬 英治君 五十嵐吉藏君
伊藤 郷一君 生田 宏一君
池田 清志君 石坂 繁君
一萬田尚登君 稲葉 修君
今井 耕君 今村 治郎君
植原悦二郎君 植村 武一君
臼井 荘一君 内田 常雄君
江崎 真澄君 遠藤 三郎君
小笠原三九郎君 小川 半次君
越智 茂君 大石 武一君
大倉 三郎君 大島 秀一君
大高 康君 大坪 保雄君
大野 伴睦君 大平 正芳君
大村 清一君 太田 正孝君
岡崎 英城君 荻野 豊平君
加藤 精三君 加藤 高藏君
加藤常太郎君 加藤鐐五郎君
鹿野 彦吉君 神田 博君
亀山 孝一君 川崎末五郎君
川島正次郎君 川村善八郎君
菅 太郎君 菅野和太郎君
木崎 茂男君 菊池 義郎君
北村徳太郎君 吉川 久衛君
清瀬 一郎君 久野 忠治君
倉石 忠雄君 黒金 泰美君
小泉 純也君 小枝 一雄君
小金 義照君 小坂善太郎君
小平 久雄君 小林 郁君
小林かなえ君 小山 長規君
纐纈 彌三君 佐々木秀世君
佐藤 榮作君 佐伯 宗義君
齋藤 憲三君 櫻内 義雄君
笹本 一雄君 笹山茂太郎君
薩摩 雄次君 志賀健次郎君
椎名悦三郎君 椎名 隆君
重政 誠之君 島村 一郎君
白浜 仁吉君 周東 英雄君
須磨彌吉郎君 杉浦 武雄君
鈴木周次郎君 鈴木 善幸君
鈴木 直人君 薄田 美朝君
砂田 重政君 世耕 弘一君
瀬戸山三男君 關谷 勝利君
園田 直君 田口長治郎君
田子 一民君 田中伊三次君
田中 角榮君 田中 龍夫君
田中 久雄君 田中 正巳君
高岡 大輔君 高橋 禎一君
高橋 等君 高見 三郎君
竹内 俊吉君 竹尾 弌君
千葉 三郎君 塚田十一郎君
塚原 俊郎君 辻 政信君
徳田與吉郎君 徳安 實藏君
床次 徳二君 内藤 友明君
中垣 國男君 中島 茂喜君
中嶋 太郎君 中曽根康弘君
中村 梅吉君 中村三之丞君
中村庸一郎君 中山 榮一君
永山 忠則君 長井 源君
夏堀源三郎君 並木 芳雄君
南條 徳男君 二階堂 進君
丹羽 兵助君 西村 直己君
野澤 清人君 野田 卯一君
野田 武夫君 馬場 元治君
橋本登美三郎君 橋本 龍伍君
長谷川四郎君 畠山 鶴吉君
八田 貞義君 花村 四郎君
濱野 清吾君 林 唯義君
原 健三郎君 原 捨思君
廣瀬 正雄君 福井 順一君
福井 盛太君 福田 篤泰君
福永 一臣君 福永 健司君
藤枝 泉介君 藤本 捨助君
淵上房太郎君 船田 中君
古井 喜實君 古川 丈吉君
保利 茂君 保科善四郎君
坊 秀男君 堀内 一雄君
堀川 恭平君 眞崎 勝次君
眞鍋 儀十君 前田房之助君
前田 正男君 牧野 良三君
町村 金五君 松浦 東介君
松岡 松平君 松田竹千代君
松永 東君 松野 頼三君
松山 義雄君 三木 武夫君
三田村武夫君 南 好雄君
宮澤 胤勇君 村上 勇君
粟山 博君 森下 國雄君
八木 一郎君 山口 好一君
山崎 巖君 山下 春江君
山手 滿男君 山村新治郎君
山本 粂吉君 山本 正一君
山本 猛夫君 山本 友一君
横井 太郎君 吉田 重延君
米田 吉盛君 渡邊 良夫君
否とする議員の氏名
阿部 五郎君 青野 武一君
赤松 勇君 茜ケ久保重光君
淺沼稻次郎君 飛鳥田一雄君
有馬 輝武君 淡谷 悠藏君
井岡 大治君 井谷 正吉君
井手 以誠君 井上 良二君
井堀 繁雄君 伊瀬幸太郎君
猪俣 浩三君 池田 禎治君
石田 宥全君 石野 久男君
石村 英雄君 石山 權作君
稻村 隆一君 今村 等君
小川 豊明君 大矢 省三君
岡田 春夫君 岡本 隆一君
加賀田 進君 加藤 清二君
春日 一幸君 片山 哲君
勝間田清一君 神近 市子君
神田 大作君 川村 継義君
河上丈太郎君 河野 正君
木下 哲君 木原津與志君
菊地養之輔君 北山 愛郎君
久保田鶴松君 久保田 豊君
栗原 俊夫君 小牧 次生君
小山 亮君 五島 虎雄君
河野 密君 佐々木更三君
佐々木良作君 佐竹 新市君
佐竹 晴記君 佐藤觀次郎君
櫻井 奎夫君 志村 茂治君
島上善五郎君 下川儀太郎君
下平 正一君 杉山元治郎君
鈴木茂三郎君 田中幾三郎君
田中織之進君 田中 武夫君
田中 利勝君 田中 稔男君
田万 廣文君 多賀谷真稔君
高津 正道君 滝井 義高君
楯 兼次郎君 戸叶 里子君
堂森 芳夫君 中井徳次郎君
中居英太郎君 中崎 敏君
中村 高一君 中村 時雄君
永井勝次郎君 成田 知巳君
西村 榮一君 西村 彰一君
西村 力弥君 野原 覺君
芳賀 貢君 長谷川 保君
原 茂君 原 彪君
日野 吉夫君 平岡忠次郎君
平田 ヒデ君 古屋 貞雄君
細迫 兼光君 前田榮之助君
正木 清君 松井 政吉君
松尾トシ子君 松岡 駒吉君
松平 忠久君 松原喜之次君
三鍋 義三君 三宅 正一君
水谷長三郎君 門司 亮君
森 三樹二君 森島 守人君
森本 靖君 八百板 正君
八木 一男君 八木 昇君
矢尾喜三郎君 安平 鹿一君
柳田 秀一君 山口シヅエ君
山口丈太郎君 山花 秀雄君
山本 幸一君 横錢 重吉君
横路 節雄君 横山 利秋君
和田 博雄君 渡辺 惣蔵君
川上 貫一君 小林 信一君
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(議院運営委員長提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/25
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026・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 日程第五は委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/26
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027・益谷秀次
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。
日程第五、国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。議院運営委員内田常雄君。
〔内田常雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/27
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028・内田常雄
○内田常雄君 ただいま議題となりました国立国会図書館法の規定により行政各部門に置かれる支部図書館及びその職員に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、議院運営委員会を代表して説明をいたします。
御承知のように、国立国会図書館は、国会議員に対してのみならず、行政、司法の各部門並びに広く国民に対して図書館奉仕を提供することを使命とするものでありまして、これがために、現在各省各庁その他の方面にわたり、合計三十二の支部図書館が置かれてあるのでありますが、さきに総理府所管に科学技術庁が設置されましたに伴い、国立国会図書館の行政各部門に置かれる支部図書館として新たに科学技術庁図書館を加え、また、中央気象官が気象庁として運輸省外局に昇格されましたに伴いまして、支部図書館たる中央気象台図書館を気象庁図書館に改めるなど、現行の法律に所要の改正を行う必要があるのであります。
[議長退席、副議長着席〕
これがこの法律案を提出いたした理由でありまして、右の支部図書館設置に要する経費は、さきに本院において可決せられました昭和三十二年度予算案においても織り込み済みのものであります。この法律案は、国立国会図書館を所管する議院運営委員会におきまして検討の結果、全会一致をもって成案を得たものであります。何とぞ御賛成をお願いいたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/28
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029・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり]発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/29
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030・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
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就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
学校給食法の一部を改正する法律案(内閣提出)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/30
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031・山中貞則
○山中貞則君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわち、この際、内閣提出、就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律の一部を改正する法律案、学校給食法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/31
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032・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 山中君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/32
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033・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。
就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律の一部を改正する法律案、学校給食法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。文教委員長長谷川保君。
〔長谷川保君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/33
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034・長谷川保
○長谷川保君 ただいま議題となりました就学困難な児童のための教科用図書の給与に対する国の補助に関する法律の一部を改正する法律案及び学校給食法の一部を改正する法律案について、文教委員会における審議の経過及びその結果を御報告申し上げます。
まず第一に、前者の法律案について、その要旨を簡単に申し上げます。すなわち、現行法によれば、市町村が経済的事由により就学困難な小学校児童の保護者に対して教科用図書またはその購入費を給与する場合、国は予算の範囲内でこれに補助することができると規定しているのを、今回その範囲を拡大して中学校生徒の保護者にも適用するように改正するものであります。次に、後者の法律案について、その骨子を簡単に申し上げます。すなわち、現行法によれば、学校給食費の負担が困難と認められる小学校児童の保護者に対して市町村が学校給食費の全部または一部を補助する場合、国は予算の範囲内でこれに補助することができると規定しているのを、今回その範囲を拡大して、中学校生徒の保護者に対しても適用するように改正するものであります。
両法律案は内閣提出にかかり、前者は去る二月七日、後者は二月十八日、それぞれ本委員会に付託され、以来、慎重に審議を重ねて参りました。
本委員会における質疑のおもなものは、一、現行法による準要保護児童に対する国庫補助の現状と、この両法律案によりそれぞれ補助対象の範囲が拡大する結果、予算上かえって低下するおそれはないか等、二、栄養士制度、学校給食専従職員の地位、待遇等、きわめて熱心な質疑がなされたのでありますが、その詳細については会議録によって御承知願いたいと存じます。
かくて三月二十日に至り、両法律案はともに質疑を終了、討論を省略して採決の結果、全会一致をもりて両法律案はそれぞれ原案の通り可決すべきものと決定した次第でございます。
次いで、社会党河野正君から、後者の法律案に対して、学校給食の重要性にかんがみて、政府はすみやかに、義務教育諸学校に栄養士の制度を創設するなど、所要の措置を講ずる必要がある。この附帯決議案が提出せられ、採決の結果、これまた全会一致をもって可決せられました。
右、御報告を申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/34
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035・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。
[「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/35
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036・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案は委員長報告の通り可決いたしました。寺発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/36
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037・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) この際、最低賃金法案及び家内労働法案の趣旨の説明を求めます。提出者多賀谷真稔君。
〔多賀谷真稔君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/37
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038・多賀谷真稔
○多賀谷真稔君 ただいま議題になりました最低賃金法案につきましてその提案理由及び内容の概要について御説明申し上げます。
労働保護につきましては、すでに労働基準法の制定を見、労働時間の制限、女子年少者の保護、安全衛生の管理、災害補償等の法的措置がなされておることは、御存じの通りでございます。労働基準法は、その冒頭において、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」とうたつております。しこうして、労働時間と賃金は、労働条件における二つの柱となっており、天井と床の関係にあるのでありまして、いかに労働時間の規制が行われましても、賃金について何らかの最低保障がなければ、労働保護立法もその意義の大半は失われ、労働者の生活の安定は期し得られないのであります。(拍手)ここに、労働時間がそれ以上に上り得ないように天井を設けたと同様に、賃金がそれ以下に低下しないように床板を設ける必要が拠ると思うのでございます。
労働基準法が制定されましてすでに十年、この法律の眼目たる最低賃金制度が日の目を見ないことはまことに遺憾であり、本法案は、労働基準法をして保護立法としての本来の使命を達成せしめるために、その補完的立法として提出した次第でございます。
最低賃金制は、前世紀の末ニュージーランドに実施されて以来、オーストラリア、イギリス、フランス、アメリカ、オランダ、カナダ等に行われ、第二次世界大戦後の今日においては、インド、ビルマ、フィリピンのアジアの後進国及び中南米諸国に至るまで、われわれの調査によりますと、実に四十九カ国が法の制定を見、ILOにおきましても、一九二八年、第十一回総会において、最低賃金制度の創設に関する条約並びに最低賃金決定制度の実施に関する条約が採択されておるのでございます。
わが国の労働者の賃金は諸外国に比べて著しく低く、ことに中小企業の賃金はまことに劣悪なのであります。日本の資本主義が農村の貧困と中小企業労働者の低賃金を土台として発達し、現在においても、独占資本は、中小企業を隷属下に置き、その基盤の上にそびえ立っておるのでありまして、独占資本は、経営の危険をほとんど下請けの中小資本に転嫁し、中小資本は、また、その労働者に低賃金と長時間労働を強制して、全く中小企業の労働者は独占資本と中小資本との二重の圧迫を受けておるような現状であります。(拍手)しかも、最近における神武以来の好景気も、これらの低賃金労働者には潤わず、企業別労働者の賃金較差はますます拡大し、このままでは看過できないような状態を現出しておるのであります。(拍手)また、神武鳳来の好況は、大企業においては、臨時工、社外工という形の労働者を大量に発生せしめ、本工員と同じ作業をさせながら、きわめて低い賃金で使用し、社会問題を惹起しておることは、皆さん御存じの通りであります。(拍手)
さらに、わが国の賃金構造の特質に、男女別賃金較差の大きいことをあげなければなりません。同一労働同一賃金の原則は、賃金決定における大憲章であり、労働基準法の制定と同時に、その条章にもうたわれたところでありますが、婦人労働者は依然として低賃金に押えられ、工場に長年勤めている婦人労働者が男子見習工員よりも安い賃金をもらっているという事実を、われわれは幾多も指摘することができるのであります。この事実の中に婦人に対する不平等的、差別的考え方の封建性の残存を知ることができるのでありまして、これは全く非人道的、非社会的考え方であるといわざるを得ません。男女平等を真に叫ぶならば、わが国のこの慣習的賃金構成を打破、て近代的賃金構成になし、婦人の経済的地位の向上をはかることが緊要であると思うのであります。(拍手)
賃金は労働力の再生産を可能にするものでなくてはなりません。しかるに、現在の低賃金階層の人々は、労働力の再生産どころか、自己の労働力を消耗し続けているような状態であります。このことは、まず人道的問題であります。最低生活水準も維持できないような賃金で人を使用することは、社会正義上、許されないものであると思うのであります。現在、生活保護法による保護を行なっているのでありますが、その被保護世帯の約四割程度が、世帯主が就職して働いているのであります。就職している者に生活保護法の保護をしなければならないという現実は、わが国の賃金のいかに低いかを雄弁に物語るものであり、かかる低賃金は排除すべきであると考えるのであります。かような人格をも認めない低賃金の労働者に、資質の向上も能率の増進も望み得ません。中小企業も、いつまでも劣悪な労働条件に依存し、企業間で、お互いに、価格の引き下げ、コストの引き下げ、賃金の引き下げという形の過当競争を行なっていたのでは、ついには、かえって中小企業崩壊の結果を招来すると思うのであります。(拍手)
本法案は、いずれの企業にも賃金の最低線を画することによって過度の不当競争をなくし、わが党がさきに提出した中小企業組織法案、中小企業の産業分野の確保に関する法律案、商業調整法案及び今後提出することになっております中小企業官公需の確保に関する法律案、その他、税制、金融一般の改正案とともに、中小企業の製品の高度化と量産の推進をはかり、わが国の後進的産業構造の近代化を行わんとするものであります。他方、対外的見地よりいたしましても、本法案は必要欠くべからざるものであります。戦前におきましては、わが国の輸出品、ことに繊維製品に対するソーシャル・ダンピングの非難があり、戦後においても、依然として、その復活の危惧は払拭されておりません。ガット加入に際して、イギリスを初め十四カ国が第三十五条を採用し、また、最近、アメリカにおいての綿製品輸入禁止の法的措置が問題になったことは、御承知の通りであります。かかる国際情勢下において、政府は、労働基準法に最低賃金条項があるにもかかわらず、何ら実現に努力せず、賃金審議会が四業種についての最低賃金制定の答申をしてすでに三年、全然放置されており、わが国の資本家が、かつての低賃金と労働強化にその輸出の源泉を求めた夢の再現を企図し、最低賃金制度の実施を遷延するならば、全く逆に、わが国は国際市場における信用を失墜し、貿易への道は遮断されることは、火を見るよりも明らかであります。(拍手)
政府は最近輸出産業について最低賃金の業者間の協定の締結を勧める計画を持っているようでありますが、かような糊塗的な対策で、この重大な目的が達せられるかどうか、私は疑問に感ずるのでございます。本法案は、わが国製品に対する諸外国のソーシャル・ダンピングのおそれを解消し、わが国の貿易の正常な発展に寄与せんとするものであります。
さらに、本法案は、完全雇用べの道に通ずるものであります。わが国の雇用問題は、完全失業者の問題ではございません。むしろ、一千万と数えられておる、見えざる失業、半失業、潜在失業という名前で呼ばれている不完全就労者の問題であります。完全雇用とは、単に量の問題だけでなく、質の問題であります。単に職につけばよいというのではなくて、少くとも、職についた以上は、労働力を償う賃金が支払われなければなりません。雇用の質的転換をはからなければならないのであります。また、雇用の質の向上がなされるならば、家計補助のために労働市場に現われていた多くの者が姿を消し、労働力化率が健全化し、雇用事情が改善されると考えるのであります。最低賃金の設定は、労働時間の短縮、社会保障制度の確立とともに、わが国の非近代的雇用関係を解消し、完全雇用の達成に資するものであると考えるのであります。
以下、内容の概要について申し上げます。
第一に、本法案は、附則において、労働基準法の最低賃金の条項を一部改正し、その改正した労働基準法の規定に基いて定めたものであります。そこで、本法の適用労働者からは、雇用労働者でありましても、労働基準法の適用を受けない船員労働者、家事使用人、公共企業体等関係労働法以外の国家公務員は除外いたしました。
第二に、最低賃金の額は、十八才以上、一ヵ月八千円といたしたのであります。十五才以上十七才未満のものにつきましては別に政令によって決定することといたしております。最低賃金額決定の基準は各国においていろいろでございますが、われわれは、主として厚生省社会局委託による労働科学研究所の最低生活費の研究の結果によったのであります。これによりますと、昭和二十七年八月−十月間の調査で、住生活及び公租公課、社会保険料を除いて、家族と共同生活をしておる軽作業従事の成年男子の労働力の再生産に必要な最低限度の消費単位が七千円でありますので、これに独身者たるの条件を加え、さらに、その後のCPIの上昇率、地域差等により修正し、八千円といたしたのであります。しかしながら、この画期的法律を実施するに当り、賃金の階層別分布、企業の支払い能力、その他諸般の社会的、経済的情勢を勘案し、その経過措置といたしまして、施行後二年間は六千円を実施することといたしたのであります。
第三に、右の金額に達しなくとも使用できるものといたしまして、技能者養成者、精神または身体の障害により著しく労働能力の低位な者、労働者の都合により所定労働時間に満たない労働をした者、所定労働時間の特に短かい者、十五才に満たない労働者の除外例を設けたのであります。
第四に、中央賃金審議会は、物価の変動その他により、その金額を百分の五以上増減する必要があると認めたときは、労働大臣に報告しなければならない、という規定を設け、労働大臣は、その勧告に基き、その必要な処置を講じなければならない、といたしたのであります。
以上が本法案の概要でありますが、なお、本法案の円滑なる運用を期するため一カ年間の調査期間を設け、実態の把握に努め、本法案施行に万遺憾なきを期する所存でございます。(拍手)
次に、家内労働法案について、その提案理由及び内容の概要について御説明申し上げます。
わが国の労働基準法は雇用関係にある労働者を対象とするものでありまして、商社、工場または問屋等の業者から委託を受け、その物の製造等を自宅等で行う家内労働者に対しましては、法の適用がないのであります。わが国の家内労働には、陶磁器、漆器の製造業、西陣織を初めとする織物業の伝統的技術による手工業的生産の専業的なものと、竹製品、わら工品等の農家の余剰労働力を利用しての副業として発達いたしました副業的なもの、さらに、主として未亡人、半失業者、低賃金労働者の家族等によって行われております被服、手袋、造花、玩具等の製造に見られる家計補助としての内職的なものがありまして、これらは、資本制工場生産の時代になりましても、社会の最下層労働として依然として沈澱しておるのであります。
家内労働者は、労働保護法はもちろん、社会保険立法の恩恵の外にあって、報酬は業者の恣意にまかされ、作業の繁閑、景気の変動の危険も全部負担せしめられておるのであります。その労働報酬の劣悪なることは、中小企業の工場労働者のそれに比較いたしましても、なお格段の相違があり、しかも、作業環境も衛生上きわめて不良にして、これら健康上必要な最低水準にもはるかに達しない劣悪な労働条件をこのまま放置いたしますことは全く社会的問題であり、これが解決は緊要なりと考え、ここに本法案を提出した次第であります。(拍手)諸外国におきましても、このような事情にかんがみ、家内労働者を保護するために、最低賃金法の中で規定し、あるいは単独に家内労働法として制定し、あるいは若干の業種の家内労働の禁止をする等、その労働条件の改善に努めてきておるのであります。
また、本法案の制定は、最低賃金法案との関連において必要性を有するのであります。最低賃金法のみを実施いたしますと、同法は、前述いたしたごとく、雇用関係のある労働者を適用の対象とする関係上、一般中小企業の労働者と家内労働者との労働条件の較差はますます拡大され、このことは企業間の競争をきわめて不公正にし、かつ、経営者は、工場を解体いたしまして、機械器具を分散して労働者の自宅に持ち帰らせ、家内労働に逃避する危険なしとせず、最低賃金制度の実効を上げるためにも、企業間の公正競争を期する見地からも、本法案は必要なりと考えるのであります。(拍手)
本法案は、大企業労働者、中小企業労働者、零細企業労働者、さらに家内労働者と並ぶわが国の低賃金構造の最底部にあるこれらの労働者の最低報酬を保障するものであって、最低賃金法と相待って、わが国労働者の生活水準を引き上げ、労働者の生活の安定と資質の向上をはかり、もって、わが国経済秩序の確立をはからんとするものであります。
以下、本法案の概要について申し上げます。
第一に、家内労働者とは、委託を受けて物品等の製造等に従事し、これに対し報酬を支払われるものをいう、と規定いたしまして、その最低労働報酬額は、都道府県労働基準局長が物品ごとに決定することにいたしたのであります。
第二に、最低報酬額決定の基準は、最低賃金法に定める時間労働賃金に当該物品等の製造等に要する標準所要時間を乗じて得た額とすることにいたしました。
第三に、労働時間の制限、その他作業環境の規制等の問題がありますが、労働の実態から、規制することは事実上困難でありますので、これらは今後の研究に待つことにいたしたのであります。
第四に、機構といたしまして、最低報酬額その他を審議するため、中央家内労働審議会、地方家内労働審議会を設け、さらに、監督組織といたしまして家内労働監督官を置くことにいたしたのであります。
本法の施行は、最低賃金法と同じく一カ年後でありますが、調査の必要上、家内労働審議会のみを公布と同時に発足することにいたしたのであります。
以上、これらの二法案は、わが国の労働階級が長年にわたり熱望いたしました法案でありますとともに、わが日本経済の正常な発展の見地からいたしましても緊要欠くべからざる法案でありますので、何とぞ、慎重御審議の上、本法案に御賛同賜わらんことを望みます。(拍手)……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/38
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039・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) ただいまの趣旨の説明に対し、質疑の通告があります。これを許します。小林信一君。
〔小林信一君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/39
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040・小林信一
○小林信一君 私は、ただいま提案理由の説明がありました最低賃金法案と家内労働法案に対しまして質問をいたすものであります。
この制度は、ただいまも説明がありましたが、すでに世界におきまして四十数カ国が実施をいたし、結果といたしまして、一般的経済諸指標の好転、労働者の生活水準の向上等が招来されておりますのでわが国におきましても、最低賃金制の実施は早くから各方面が要望しておりまして、実現の一日も早からんことが期待されておるのであります。ことに、昨今のごとく、使用者と労働者の賃金交渉の上手下手、強い弱いによりまして、産業別または企業間に賃金の開きが大きくなり、賃金問題にいろいろな混乱の状況がありまして働く諸君が非常な不安を感じまして、これが生産能力に非常な悪影響を及ぼしておることは事実であります。労働争議になり、あるいは、それが社会問題になり、ひいては社会全般の不安にまで参っておりますことを考えますときに、何らかこれに対して善処する事態に立ち至っていることを私は痛感するものでございます。このときに当りまして、この法案がただいま提案され、これにつきまして、その提案理由の説明がありましたのに対しまして、私は衷心より敬意を表するものであります。(拍手)働く人たちはもちろん、事業経営に当る人も、おそらく、この溝案の成り行きに対しましては重大関心を持っていることと推測するものでありまして、この法案の実施に当っては、いろいろな障害となる問題がたくさんあります。あるいは事前に解決すべき問題があるのでありますが、これらの人々も十分それを承知しておりますので、この際、提案者に対しまして、これらの人々の立場からしましても、これらの諸問題を提案者はどういうふうに考えておられるかということをお伺いすることが、私は、国民の最も強く要望するところである、また、これに適切な御説明をすることが提案者の責任だと考えて、二、三の質問をいたす次第でございます。
まず第一の点は、わが国経済の実情から見て、本法の施行が中小企業、零細企業、いわゆる弱小企業と申すものに少からぬ圧迫を与えるものではないふという懸念が、これは国民全体が持っておるところでありまして、ただいまも提案者からその点多少説明があったのでございますが、なお、このことにつきまして、十分な御説明をこの際受けたいと思うのでございます。御承知のことと存じますが、わが国には小規模企業が無常に多く、その生産量も相当な比率を占めております。従って、本法の施行がこれら弱小企業に圧迫を与えるとするならば、それは、ひいて、わが国経済全般に少からぬ動揺を招くことになるのではないかと思うのであります。率直に申しますと、本法の施行に当っては中小企業助成の措置が肝要だと思うのであります。ただいま、提案者も、その点につきまして、社会党としてはかくかくの用意がある、こういう点が述べられておりますが、この点、最も国民の関心を持つところでございまして、もう少し具体的な考えを、国民が納得いくところを、ぜひともこの際御説明願いたいと思うのでございます。
次は、本法施行と雇用との関係についてでありますが、御承知のように、わが国は現在失業情勢緊迫化という重大な事態に直面しております。完全失業者の数は七十万前後でございますが、先ほども説明者の申しましたように、われちれが関心を持たなければならない問題は、潜在失業者の問題である。今まさに一千万になんなんとするということがいわれておりますが、このような状態の中で本法を施行いたすとしますならば、ますます失業者をふやすことになるのでありまして、この法の施行の結果、各企業の賃金負担が従来よりも相当程度高くなることは明らかなことでございます。特に小規模の企業ほど負担程度は多くなると私は思うのであります。そうなりますと、小規模企業の中では雇用人員を減らすものも出てくるのではないかと思われるのでございます。すでに現在失業情勢が緊迫化している上に、さらにこれ以上失業者が出てくるという事態を招来するとなれば、これは非常に憂慮すべき問題でありますが、提案者はこの点どういうふうに御解明になっておられるのか、御説明を願いたいのであります。
第三点は、本法は本文で八千円の最低賃金額を規定しているのでありますが、八千円を規定した理由あるいは根拠がどこにあるかという点でございます。ただいまも御説明がありましたが、しかし、聞くところによりますと、小企業の労働者の中には、八千円よりもまだ低くてもよい、こういうふうな者さえあるわけでございます。職業を与える、この問題が最も重大な問題でございまして、八千円というものがそういう諸般の事情からして果して妥当であるかどうかをお伺いしたいのでございます。
また、これに関連いたしましての問題は、附則の中で、施行後二カ年間は六千円の暫定措置をとると規定している点でございます。この二カ年の暫定期間を置いた理由は何にあるかという点でございまして、これは、経済の好転が今後二カ年の間に十分なされるという簡単なところからか、あるいは、いろいろな事情を整備して、これが受け入れられるような態勢を作っていくために二カ年が必要であるか、こういう点につきまして、きわめて簡単な点でございますが、国民の疑問を納得させなければならないと私は考えるので、御説明を願いたいのでございます。
次は、最低賃金について労働組合の間に意見の相違があることを私は伺っておるのでございます。御承知のことと思いますが、先般、提案者の有力な支持団体であると思われるところの全労会議が、独自の形で最低賃金法要綱のようなものを発表しております。その内容を見ますと、ここに提案になっております内容と相当の隔たりがあるように見受けられるのであります。私は、最低賃金制を施行する必要があるとの前提に立ちまして質問を申し上げているわけでありますが、提案者と伺じ側に立っている労働組合との間に意見が違ってくるのは、これは非常にまずいことだと想うのでございますが、この点、提案者は何かの考えを持っているのかどうか。提案者側の意想統一が少くともなされることが、この法案の最も重要な問題だと考えるのでございますが、これに対する御意見を伺っておきたいと思います。
本法施行に当りまして、労働者総数のうち大体何割がその適用を受け、つまり恩典を受けるか、一企業から見た場合、一年の賃金増加額はどれくちい見積っているかという点をお伺いしたいのでございます。これは企業の立場かち見た場合相当の心構えを必要とするのであろうと思うので、お聞きするのであります。
最低賃金法案につきまして最後に特にお聞きしたいのは、国家公務員と、並びに地方公務員との問題についてでございます。本法附則で、国家公務員については本法と見合うような措置をとるとうたっているのでございますが、その意味は、国家公務員にも最低賃金立法を考えるべきであるとおっしゃっていると思ものであります。当然地方公務員も適用されることから考えれば、国家財政はもちろんのこと、地方財政の窮乏が現在叫ぼれている現状から、実現不可能であると断定されるおそれなしとしないのでありまして、これらの問題はいかように考えておられるか、あわせてお伺いをいたす次第であります。
次に、家内労働法案について、ごく簡単にお尋ねいたしたいと思います。家内労働につきましては、今まで何らの保護立法が行われていないことは、多くの人の知るところであり、仲介人の中間搾取と家内労働者の低工賃問題が、一時、社会的問題として取り上げられたことも事実であります。このような家内労働の問題を取り上げ、家内労働者の保護を目的として家内労働法案が提案されたことについて、私はその意義を高く評価するものでありますが、ここで質問いたしたいことは、労働基準法も満足に実施できない現在の行政実態の中で、かりに家内労働法が制定されても、果して十分にその施行ができるかどうか。せっかく法律ができましても、それがうまく運営されなければ何らの意義がない。この問題について、こういう見地に立って提案者の心構えをお尋ねいたしたいと思うのでございます。
最後に、最低賃金法案と家内労働法案が同時に提案されているわけでありますが、両法案がどのような関連性を持っているか、この点を御教示願いたいと思いましたが、ただいま多少その点に触れて御説明がありましたので、できるならば、さらに詳しく御説明を願いたいと思うのであります。
以上、私は、この二法案がわが国労働立法史上画期的なものであり、労働者の生活安定、ひいてはわが国産業の発展のために重大な礎石を提供すると考える立場に立ちまして質問を申し上げたのでございますが、提案者の御懇切な御説明をお願いする次第であります。(拍手)
〔赤松勇君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/40
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041・赤松勇
○赤松勇君 ただいまの御質問にお答えいたします。
まず、賃金増加額はどの程度のものか。これは非常に重要な問題でございまして、この際数字をあげて御説明申し上げたいと思います。
まず、適用人員の全体に対する割合につきましては、一人から九人までの所におきましては五・四%、十人から二十九人までは三%、三十人から九十九人までは一・九%、百人から四百九十九人までは一・一%、五百人以上につきましては〇・一八%、この全体の平均は一・七%——これは六千円の場合でございます。従いまして、私どもは、こういう賃金増加額から考えまして、当面三年間は準備期間として、六千円をこの際法律の中に盛り込むということは最も現実的なもので昂る、こういうふうに考えておるのでございます。(「二年と三年はどうだ」と呼ぶ者あり)一年は調査期間です。二年間は実施期間です。
次に、先ほど多賀谷君が若干触れましたが、中小企業に対する問題でございます。提案理由の説明の中にもありますように、すでに、私どもは、中小企業組織法、あるいは中小企業の産業分野の確保に関する法律、商業調整法、中小企業官公需の確保に関する法律、その他中小企業対策というものを社会党は熱心にやっております。なお、そのほかに、減税、あるいは機械の貸与、中共貿易によるところの輸出の増大、あるいは設備の改善の資金の融資、こういうような中小全業対策をしっかりやる。なお、私どもは、別個に、できれば、国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫の中に、別ワクでこの面に対する対策をも考えたい、こう考えておるのでございます。
そこで、六千円の最低賃金さえ支払い得ない中小企業がもし存在するということになりますれば、私はこれは政府の重大な責任であると思うのです。まさにその責任は重大であると言わなければなりません。私は、ここに一、二の例を提示いたしまして、皆さんの御参考に供したいと思うのでございますが、全日本中小企業協議会の調べによりますと、これは、昭和三十一年十一月現在、全国百三十一の中小工場を調べた、その賃金実態でございますけれども、従業員九人以下の零細企業では、平均年令二十八才、扶養家族一・三人、平均勤続四・九年、そこで月一万一千四百二十七円という数字が出ておるのでございます。さらに、商業関係において、世田谷区の池尻商報会に属する百二十五の加盟店が、最近、店員諸君が転職をする、そこで、商報会発展のために、将来に希望を持って働ける給与規定、退職金制度をこの際作らなければならぬということで、この四月から基準賃金及び基準外賃金を含めまして六千二百円というところの線を出しております。これは、満十五才から半年ごとに年令給百円を増していく。さらに経験給を二百円ふやしていく。従って、十八才になりますならば七千七百円という額が出てくるのでございます。このように、今日の目覚めた中小企業の諸君は、その中小企業発展のためにも、このような最低賃金制を確立しなければならぬ、こういう時代に到達しつつあるということを、どうぞ自由民主党の諸君も深く反省していただきたいと思います。(拍手)
さらに、労働大臣は、絶えず、社会労働委員会におきまして、政府の最低賃金制に対する考え方の中で、最低賃金制は反対である、あるいは、最低賃金制度は反対であるけれども、賃金協定は賛成だ、賃金協定については本年から基準局を通して各地域別にこれをやらせるつもりである。そうして、その一つの例としまして、例の静岡県のマグロ・カン詰工場の協定をいつも出されるのであります。ところが、最近、社会党に投書が参りました。これは決して最低賃金のための協定ではなく、まさにカン詰賃金協定である、賃金ストップの協定である、こういう不満の手紙が参っております。それは、この協定によりますと、調理工は、満十五才、女子初任給で百六十円、毎年五円ずつ昇給するという業者間の賃金協定だということになっておるのであって、労使間の賃金協定ではありません。しかも、輸出の増加で、業者は非常に利益をふやしている。けれども、賃金は、御承知のように、毎年五円ずつしか昇給しておりません。従って、私どもは、かような労働省や政府の考えておりますような業者間の賃金協定等につきましては断じて反対でございまして、この際思い切って最低賃金法及び家内労働法を施行することが、今日の情勢下において最も適切なものである、かように考えております。
次に日雇い労務者の問題でありますけれども、本年度の予算単価は三百二円になっている。この六千円を割ってみますると、一日二百四十円である。従って、二百四十円ならば当然上回っておるのでございますけれども、しかし、地域差やその他がありまするから、もしも下回るような部分があるといたしますならば、われわれは、これをさらに六千円以上に引き上げるように、あらゆる是正の努力を払わなければならぬと考えております。公務員につきましては、これは当然本法成立後におきまして給与法の改正をやりまして、この法の精神に沿うような諸般の手続をとりたい、かように考えております。
あとの部分につきましては、他の提出者に御説明をお願いいたします。(拍手)
〔井堀繁雄君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/41
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042・井堀繁雄
○井堀繁雄君 提案者の一人といたしまして、ただいま小林議員の御質疑の中で私がお答えすることが適当だと考える点が一、二ございますので、責任を分担する意味でお答えをいたしておきたいと思います。
七項目にわたりましてお尋ねになりましたが、そのうちの四番目にあげられました、提案をいたしております社会党の内部において、この案をめぐって意見の対立があるのではないかという意味の御質問にとれるような、すなわち、全労会議の案と総評の主張との間に食い違いがあることをもって、この提案に対する何らかの思想不統一があるのではないかという御心配のようでありましたので、明確にお答えいたしておきたいと思うのであります。
この提案につきましては、いささかもその懸念はありません。全く統一した見解の上に立ち、(拍手)また、十分それぞれの意見を消化いたしまして法案の中に盛り込んでおりますことを御了解願いたいと思うのでありますが、ただ、これだけでは御了解しにくいと思いまするから、多少説明を付加いたしておきたいと思うのであります。
それは、提案理由の中でもある程度言及されておりまするが、この最低賃金法を実施いたしまする日本の客観的な条件に対するそれぞれの観察については、意見があることは当然であると思うのであります。ことに、日本の産業構造の中における致命的な欠陥ともいうべき零細企業、支払い能力を疑われるような、すなわち、経済ベースの上に乗らないような企業が存在する日本の現状において最低賃金を実施する際に、それぞれ激しい論議が行われることは当然であります。ことに、政党といたしましてこの法案を考慮いたしまする場合と、また、立場を異にして労働運動を実践しておりまする団体との間に意見の食い違いがあることは、申すまでもないのであります。労働組合といたしましては、当然それぞれの問題を具体的に処理、解決する立場にあるのでありまするが、われわれ政党として、あるいは政治的にこの問題を処理いたします場合には、すなわち、立法的な手続を経てこの問題を処理する場合には、おのずからその立場と方針が異なってくるのでありまして、ここに申し上げておりまする最低賃金法というのは、画一的に全労働者にこれを適用しようという考え方でありますが、このことは六千円にするか八千円にするかという問題でも当然議論がありまするように、現在四千円以下のものもあります。あるいは、六千円に達しまするためには、その企業自身の支払い能力に重大な影響を持つという事実もあるわけであります。こういう問題をどうして解決するかということについて、本案は答えておるわけであります。それは、先ほど赤松君からも説明があり、多賀谷君も言及しておりますが、私どもは、この問題については、別途、中小生業の基本的な問題を解決する立法を二つ提案し、さらに三つ用意をいたしておるのでありましてこれらの政策とマッチして、この問題は当然成功するのであります。でありまするから、この期間を、たとえま準備期間を一年と見、六千円から八千円に到達する期間を二カ年の猶予を見たことは、かなりがまん強い、気長い期間を見込んでおるということが、御了解願えると思うのであります。こういう問題については多く論議をいたさなければならぬところでありまして、これは保守党の諸君からも委員会において活発な質疑がこの点に集中されてくると思うので、十分これに納得のいくような具体的資料をわれわれは整えておりますから、その機会に明らかにすることができると思うのであります。(拍手)
そこで、全労会議がここに出しましたのは、いわば段階方式の内容についてわれわれに提示しておるのでありまして、これはきわめて適切な見解であります。しかし、この見解をわれわれがそのまま法案の中に取り込むということについては、いろいろ技術上の問題について論議がありましたけれども、さりとて八千円一本にするということは先ほどの論議で明らかなような次第でありますから、とりあえず、今日、われわれの考え方といたしましては、二つに集約して皆さんの御了解を願えると思うのは、一つは、この中小企業の支払い能力を他の法律によってある限界に引き上げるということと同時に、他方においては、日本の今日の企業の中において、すなわち、資本主義の経済を肯定いたしまする立場におきまして、経済べースに乗らないような、労働の再生産をまかない得ないような企業というものに対しては、これは当然他の法規なり他の手続をもって保障すべき事柄でありますから、その手続を一方に積極的に講ずると同時に、その支払い能力に満たないものについては、原因がいろいろありまするが、最も多くの原因は不公正な競争の中にあるわけでありますから、その不公正な競争をどこで阻止するかということについて、一つには、中小企業対策の法律を考え、他方においては、その競争の限界を割るような賃金の底のない状態に底を入れようというところに最低賃金の重大な意義があるのでありますから、見方によりましては、中小企業対策として日本の最低賃金法というものは重大な意義を持っておるということを強調いたしておきたいのであります。こういう関係の上に立って考慮されておりまするから、われわれは全国一斉に行うべきであるという主張が一つ、他の一つは、申し上げるまでもなく、日本の憲法が厳然と国民の前に宣言いたしておりまするように、法律の前において平等でなけらねばならぬのでありまして、零細企業のもとに働いておる労働者であるからといって保護法からはずされるというようなことは、法治国として許されることではございませんから、この線を厳重に守っていこうというところに、この法案の精神があるのであります。(拍手)労働運動はそのワク内においてそれぞれ具体的に処理するものでありますから、意見がいろいろ出てくることは当然であろうと思うのでありまして、こういう点を十分勘案いたしまして解決処理をいたしたのでございます。
どうぞ御了承願って御審議をいただきたいと思うのであります。(拍手)
〔多賀谷真稔君登壇〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/42
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043・多賀谷真稔
○多賀谷真稔君 小林議員の質問中で、残りました分について答弁を申し上げます。
まず第一には、八千円の根拠でありますが、従来、最低生活費の研究を大別いたしますと、四つに分れている。
第一には、いわゆる実態生計費を用いたものでありますが、生活費そのものが実収入によって決定的影響を受けます関係上、あるべき姿が算定されないのであります。そこで、私たちは、これは採用いたしませんでした。
第二は、理論生計費といわれるものでありますが、これは各国の最低賃金の額を決定する際に多く用いられている方法であります。日本におきましても、マーケット・バスケットといって、労働組合がいろいろ採用いたしたのでありますが、このマーケット・バスケットにおきましては、なるほど、飲食物についてはその基準が十分出るのでありますが、飲食物以外の生活資料のミニマムの基準というものを作ることが非常に困難であります。また、飲食物のみマーケット・バスケットで示して、その他をエンゲル係数によって算出している方法もありますけれども、いかなるエンゲル係数を用いるかが問題でありまして、これは傾聴に値する理論でありますけれども、この点いまだ確たる結論に達しておりませんので、私たちは今後の研究に待ちたいと考えておるのであります。
第三は、家計費の構造を統計的に分析して消費性向を見出し、それの法則性から最低基準を算定しようという説でございますけれども、これはまだ研究が緒についたばかりでありまして、採用するに至っておりません。
第四の方法は、労働科学研究所の調査でありますが、世帯員につきまして心身の状態を調べ、最低水準と一応考えられる世帯を見出して、これらの人々が現実に支出している生活費をもって最低生活費とみなそうとする説でありますが、私たちは、いろいろの事情を考慮いたしましてこの方法を採用いたしたのでございます。そこで、この労働科学研究所の最低生活費の研究によりますと、昭和二十七年八月から十月間の東京における消費単位四千円といたしますと、ちょうど夫婦、七才の子供、三才の幼児の標準世帯にいたしまして、月約一万一千円となるわけでありますが、その生活以下の水準ではどういう状態が現出しているかといいますと、その家族の体格、体力はともに劣っておるのでございます。全血比重、血液中のヘモグロビンが低下いたしまして入浴も十分やっておりません。そうして、主婦及び児童の大部分は、オーバーもコートもなく、雑誌もほとんど読まない、こういうような状態であります。しかして、母の知能は高くとも、その子の知能指数は低く、読み書き能力も低下しており、生活環境の劣悪は子供の精神的能力の発展をも阻害しておるというような状態であります。これらの人々の生活はまさに危機線上にあり、人間的生存さえ十分に確保されていないと報告されておるのであります。そこで、四千円をこえると全血比重やヘモグロビンの量も増しまして、一応危機線上を通り過ぎますけれども、なお健康保健上十分でなく、七千円以上になって初めて健康状態もよく、衣服もととのい、住居費を除きますと、やや文化的生活においてミニマムを満たすことができると結論づけておるのでございます。この七千円に、その後の物価指数の上昇、単身者たるの条件、地域差等により修正いたしまして、八千円といたしたのでございます。この単身者八千円は、家族とともに同居しておる者を前提とするものでございまして、アパート等に住み、独立生計を営む者はこれ以上になるというわけでございます。
次に、最後の御質問で、現在労働基準法も中小企業では十分に順守されていないのに、家内労働法なんか作ってもどうして守られるか、こういう御質問であったと思うのでございますが、労働基準法が守られない第一の理由というのは、これは政府が監督行政をサボっておるからであります。現在、全国において監督官は一千一百名おりますが、事業所は実に九十五万もあるわけでありまして、毎日回りましても三年に一回しか検査ができない、こういう状態になっておるのであります。それでは十分守られないのが当然でございます。
第二には、労働基準法はございましても、先ほど申し上げましたように、賃金の保障がありません。そこで、労働者は、長時間労働をして初めて生活ができるという状態になっておるのでございます。そこで、労働者みずからが時間外作業を欲することはやはりいなめない事実でございます。そこで、私たちは、今度最低賃金法を作りましてそうして、最低賃金を保障することによって、そういうことのないようにいたしたいと考えておるわけでございます。
さらに、家内労働法につきましては、今申しましたように、最低賃金法が「ざる法」になります関係上、ぜひそれのふたをいたしたい、かように考えておるわけであります。家内労働法につきましては、家内労働監督官を別に置きますと同時に、この順守は、委託者、労働者の協力に待つとともに、政府におかれましては十分な監督、指導をされんことを望みまして、私の答弁を終ります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/43
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044・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) これにて質疑は終了いたしました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/44
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045・杉山元治郎
○副議長(杉山元治郎君) 本日はこれにて散会いたします。
午後三時四十二分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102605254X02319570320/45
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