1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十二年五月十五日(水曜日)
午後二時二十分開会
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出席者は左の通り。
委員長 千葉 信君
理事
榊原 亨君
高野 一夫君
山本 經勝君
早川 愼一君
委員
勝俣 稔君
小西 英雄君
紅露 みつ君
寺本 広作君
片岡 文重君
高田なほ子君
椿 繁夫君
藤田藤太郎君
山下 義信君
奥 むめお君
衆議院議員
野澤 清人君
国務大臣
内閣総理大臣 岸 信介君
厚 生 大 臣 神田 博君
運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君
郵 政 大 臣 平井 太郎君
労 働 大 臣 松浦周太郎君
政府委員
法制局長官 林 修三君
大蔵政務次官 足立 篤郎君
厚生政務次官 中垣 國男君
厚生大臣官房総
務課長 牛丸 義留君
厚生省公衆衛生
局環境衛生部長 楠本 正康君
厚生省引揚援護
局長 田邊 繁雄君
運輸省鉄道監督
局長 權田 良彦君
郵政省電気通信
監理官 松田 英一君
労働政務次官 伊能 芳雄君
労働大臣官房総
務課長 村上 茂利君
労働省労政局長 中西 實君
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本日の会議に付した案件
○環境衛生関係営業の運営の適正化に
関する法律案(衆議院提出)
○引揚者給付金等支給法案(内閣提
出、衆議院送付)
○労働情勢に関する調査の件
(公共企業体等の仲裁裁定に関する
件)
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001・千葉信
○委員長(千葉信君) それでは社会労働委員会を開会いたします。
環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律案を議題といたします。御質疑願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/1
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002・山下義信
○山下義信君 前回に引き続いて、残余の諸点について質疑をさせていただきます。
まず、同業組合の設立につきまして、本案によりますというと、一都道府県について一個の同業組合の設立、こういうことになっておりまして、一個以上は認めないことになっておるわけでありますが、都道府県ことという地域にされたということは、どういう御趣旨であるかということを承わりたいのであります。これらの営業につきましては、都道府県単位で過当競争を規制するという必要がどこにあるかという点が私どもとしては不明であります。都市、郡部、あるいはさらに個々の市町村等、そういう限られた地域、比較的狭い地域でこれらの業種は競争関係があるわけでありまして、従って、都道府県という大きな区域内でこの種の業種の競争が行われておるということは、了承しがたいように思われるのでありますが、御提案の趣旨はどういう御趣旨でありましょうかという点を野澤委員に伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/2
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003・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 立法の趣旨といたしましては、この法律が環境衛生面から経済立法の様相まで含んでおります関係上、そういう部分の地域の場合にはでこぼこが是正されないというようなことから、あくまでも都道府県を単位にしてやっていきたい。同時に、基準の設定等の事務は都道府県の事務とされておりますので、環境衛生同業組合の重要な事務が、料金とか、営業方法等に対する基準の設定でありますので、そういう観点からいたしまして、組合は、なるべく都道府県単位が好ましい、こういうことから都道府県単位にきめられたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/3
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004・山下義信
○山下義信君 本案が知事の監督下に置かれるという建前になっておりますことについては、また別の観点から議論があろうかと思いますが、しかし、ただいま申し上げますように、この業種の競争は府県単位において行われておるのではないのでありまして、比較的小地域において営業の競争というのがあるのが常態であります。一方、中小企業団体法案におきましては、商工組合の地域は一定してない、どこでも作られることになっておる。そしてその商工組合を設立いたします地域につきましては、主務大臣がその適否を一一認定するということになっておりまして、こういうやり方の方が、この業種を正当な営業の競争状態に置きますことにつきましては、つまり過当競争を避けるという点においては、この同業組合の設立の地域は、むしろ団体法のような形態が適当ではないかと思われるのでありますが、今の御説明につきましてはなお若干足りないことがありますので、もう一度どうかお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/4
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005・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) あまり長くしゃべるとまたしかられますものですから、簡単にお答えして申しわけありません。実はこの地域の問題でありますが、お説のように、不当な競争が行われるという現実的な問題点は、町とか市とかあるいは一定の地域で現象が起きて参りますが、少くともこの適正化の法律を適用しようという業者の実態というものは、その業態自体がほとんど料金が主体になって運行される場合が多いと思うのであります。そのために特定な地域をごく小部分にとりますというと、市の境、町の境等においてはなはだしい懸隔が生ずる。同時にまた、一定の都市地域と郡部との料金の差等を設ける場合でも、組合々々によってその基準が変るというようなことでは、環境衛生の大きな目的から申しましても、行政上非常にやりにくい、こういうことから、一府県一単位ということで選定をいたしたのでありますから、どうぞ御了承願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/5
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006・山下義信
○山下義信君 次には、この指定都市に対しましての扱い方、これは現にただいま各種の議論が行われておるわけでありますが、これが申すまでもありません、従来地方自治法の改正によりまして、五大都市の市長に対しましては、特別都市の指定があってそうして知事の権限が市長に委任されてあるにかかわりませず、再びこの法案によりましてその権限が知事に取り上げられておる。こういう格好になっておりますが、これはどういう御趣旨でそういう逆行的な御規定をなさったのでありますか、野澤委員から御説明を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/6
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007・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 当初に原案が発表されましたときには、この五大都市という問題は出ておりませんで、審議の過程において、五大都市の十六項の地方自治法による委任事項が追及されて参りまして、いろいろその間話し合いもされたわけでありますが、この法律のねらいとするところは、たとえて申し上げますというと、美容業のような業態でありますというと、一つの府県に幾つもの組合が派閥的にできておる、従って、これらの組合の技術の指導あるいは施設の向上というような面につきましても、かなり差がありますものですから、どうしてもこれを一本化したい。都道府県一単位という組合の設立の趣旨も、そこから出発いたしまして、一応都道府県一つということにきめました場合に、それではその権限をどうするかというので、最初自民党で提案しました当時には都道府県知事の権限になっておりました。それを小委員会等でいろいろもみまして、この両党提案の原案ができます際には、都道府県知事に委任することを条件にして厚生大臣に全部集約しようじゃないか、という目的は、五大都市の問題がそこに介在したからでありまして、実際は自治法の改正によって十六項目のうちの一つに環境衛生の問題が取り上げられておりましたので、当然これはその方に移譲すべきでありますけれども、一府県一組合単位ということを法の大きな目標としておりますので、それを実現するためには、暫定措置としても、これを県一本にまとめておく必要があるのだ、こういうことで、決して法を無視してというのではなしに、従来の幾つも分派活動をしておりました派閥的な組合を県一本化にするという目標のためにあらゆる角度から検討しました結果、こういう措置を講じましたので、やがて一年、二年と経過する間に、あるいはまた、もっと短時間にあるいはそういう事態が起きるかもしれませんが、五大都市に委任しました事項については、やがて法律を改正してでも、これはその自治法にマッチさせる必要があるのじゃないか。けれども取りあえずの措置としては、府県一本ということに強力に推進する必要がある。それをしなければ先ほども申し上げました通り、市の境界線と郡部の境界線とにおいて全く異なる基準が生まれ、全く異なった感覚で組合の運用、運行が行われる。そういう事態を派生しては困る。これは自民党も社会党も共通した一つの結論でありまして、さような結果、こうした処置をとったわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/7
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008・山下義信
○山下義信君 府県単位に、これを都市と言わず、郡部と言わず、辺陬な市町村と言わず一本にする必要があるということにつきましては、もっと論議をしなければなりませんが、しかし、府県一本にする必要というその必要度と、実際に必要があるかないかということと、この自治法の建前において、しかも厚生行政の一部を、これを五大都市の首長に知事の権限を移譲してよろしいという非常に大きな行政上の筋を通していった、この大きな建前と、それを無視して逆転させて、無理に府県に一本にする必要があるかどうかという点は大いに私どもとしては検討する余地があると思うのです。今野澤委員はその点にもお触れになりまして、相当考慮する必要のあることと、将来にわたってまた研究する必要のあることを御答弁に相なって、大体において異論はないようでありますが、この点については、一体厚生省はその行政の建前をどう考えておるのか。厚生行政の相当な大幅を、五大都市の特別都市に対しては移譲しておいて、そうして今日のこの段階になっては、この環営法に関する限りは、それは不都合なんだということで、それを無視して、こういう建前でいこうということについては、どういう考えを持っているのかということを政府当局の考えを承わりたい。政務次官も見えておりますから考えを聞かなければならぬ。そうして、あわせてこのことは、前段の問題にも関連をいたしますが、五大都市の場合におきますれば、その都市を区域とする同業組合を作らせてどうして悪いのか。今日は五大都市においては首長が実際移譲せられたこれらの環境衛生の行政について、その権限下にいろいろ指導してきておるその業者との関係が実際にあるにかかわらず、その実態を無視して、こういう案の組み立て方を考えたということは了承しがたい。これは五大都市の関係者が反対するばかりではない、筋を通すという上においてもじぐざぐになっていくのです。これはただ環営法においてのみならず、この五大都市に移譲せられた厚生行政の一部分においても行政上の建前上非常な大きな問題でなければならぬと私は考える。この点はこれはどういうふうに考えているのであるかということをお尋ねいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/8
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009・中垣國男
○政府委員(中垣國男君) 山下先生にお答えいたします。
ただいま御指摘になりました五大都市にこれらの権限を移譲すべきではないかというお意見に対しましては、先ほど野澤さんから御答弁なさいましたように、いわゆる基準というようなもの、その営業方法等に関しましての基準、あるいは料金のような事務、そういったような事務は、現在におきましても都道府県の事務とされておるのでありますから、重要な部分にこの水準の保持、基準の設定が含まれておるという、そういう意味で、別に矛盾をしてはいないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/9
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010・山下義信
○山下義信君 今のこの五大都市を区域とする組合を作らせて、どこが悪いかという点については、どういう見解をお持ちでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/10
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011・中垣國男
○政府委員(中垣國男君) 都道府県一単位ということにしましたのは、こういう基準の問題やなんかの設定のときに、幾つもの組合が単位があることによりまして、そこに一つの差ができていく、そういうことがかえって不当な競争等のもとになる場合がありまして、公衆衛生上のそういうサービス等について炎けるところが発生するおそれがある、そういうふうに考えまして、むしろこの際、都道府県に一単位であることの方が、むしろこの組合を設けることについてはかえってやりやすいのではないか、こういうように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/11
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012・椿繁夫
○椿繁夫君 いろいろ政府から御答弁がありますけれども、私はこう思うのです。この法案は昨年の通常国会に提案されたものですが、同じように昨年の通常国会で自治法の一部改正が行われて、そうしてその結果、十六項目というものが五大都市に移譲された。ところが、この法律そのものは、まだそういう自治法の一部改正が実現しないときに立案を提出されたものでありまして、その後の自治法の改正という事実が発足した後においてこれが立案されたものではないから、不用意のうちにこの法律案が私は通ってしまったのじゃないか、こういうふうに実は思うのです。ただ出してきた以上、いろいろ理屈をつけなければならぬから、ただいまのような苦しい御説明が行われるのじゃないかと私は思うのです。先ほど提案者の方から、一府県一組合にするということが非常に実際にも適しておるし、いいというお話しでありますけれども、食品あるいは興行場法あるいは旅館業法、公衆衛生、こういうふうなものの認許可の件が十六項目の中に入っている。指定都市の首長に委任をされておる。それにこれと密接不可分の関係にある同業組合を切り離して、そうして府県一本の組合にするということになりますと、何ら行政権を持たない府県知事がこの組合の指導監督に当るというようなことになって、事実上その運営をやっていく場合に非常な混乱が起ると思うのですよ。ですから、どうですかね、立案されたときの状態と、ただいま一年半も経過して、今日審議しておる情勢とは大へんな違いがあるのですから、これはとてもこのままでは参議院はちょっと通りませんぜ。それについてのちょっと所見を承わりたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/12
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013・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 先ほども申し上げましたのですが、ごもっともな御所見で、実はあなたの御見解のよりに、立案当時がどうであったかということは、そうであったとも言えるし、七うでなかったとも言えるわけです。ただ衆議院でこの審議にかかりました当時には、すでに自治法の改正は確定したものでありまして、従って、衆議院の委員会ではただいまのようなお説が当然出て参りました。そのためにかなりの時間をかけてこれは論議いたしました。論議した結果が厚生省の意向といたしましても、また、七団体に予定されておる業者等の意向も聞きまして、どうしても一府県一単位ということで、なるべく同一行動のできるようにしてほしい、こういうふうな切々たる事情をわれわれども拝聴しまして、その結果申し上げましたように、都道府県知事の許可であり、認可事項であったものをわざわざ厚生大臣一本にこれをしぼりまして、しぼり上げた結果が、今度は地方に委任することをどうするかという場合に、知事に委任ができるというふうに、逆にこの法律を持ってきまして、持っていった理由は、先ほど申し上げましたように、相当の含みをもってこれはやった仕事なんです。従って、一応出発して、同一府県同一組合ということであれば、五大市が支部を結成することは将来差しつかえないのだ、そういう県一本の組合が発足し、県一本の基準というものができるようになってきて差しつかえないという判定がついたならば、いつでも五大都市に自治法の通りに施行しても差しつかえないのじゃないか。その場合になって、知事の権限だ、市長の権限だということで争いが生じても困るからというほどこまやかな神経も使いまして、せっかく厚生大臣までまとめ上げたのでございますから、どうかその間の御事情につきましては、御賢察を願いたいと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/13
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014・椿繁夫
○椿繁夫君 その御説明によりますと、何か一府県一組合の原則を固めてしまって、これができれば都市に支部などを設けていけばいいんじゃないかというお話なんですが、私はこれは逆に考えるのです。その指定都市にはやはり組合を認めて、指定都市のあるところは二つの組合を認めて、そうしてこれを連合会か何かの組織にして連絡調整をとらせるというふうなことの方が自治法の改正の趣旨を殺さないでいくことになるんじゃないか。ただ一つのこういう組合の運営上のことなどだけで、五十年にわたる特別市制運動というものに終止符を、去年自治法の改正をやって打ったわけですね。そうしてしかもその結果として、府県知事に委任されておった事務を指定都市に委譲することになったこの自治法改正という法律の大精神を組合の運営上の便宜というふうなことだけで、私はその改正の意義を喪失するような内容を持つことににわかに賛成はできない。どうですかね、その点。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/14
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015・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 全くその通りだと存じますが、実はそのために苦心惨たんして、先ほど申し上げましたように、都道府県知事の許可、認可権というものを厚生大臣にしぼった、これが一つ。それからどれだけの期間がそのままいかれるかわかりませんが、それはそう長い期間でないという私どもの話し合いでございまして、その結果たとえば知事が処分を決定するというような場合には、知事は必ず市長の同意を求めなければならぬと、こういうことにしまして、地方自治法で委任しました事項についての趣旨を冒涜するようなことのないように、十分慎重な連繋のもとにこれを進めていくようにすることが必要だと、こういうことで、処分の場合等については、政令で話し合いをすることの内容もとってありますし、また、その場合に、知事と市長と対立したような場合にどうするかといとようなことも懸念しまして、厚生大臣に引き上げてあるわけであります。
それから支部を作るという意味は、お説のように、支部が結成されて連合会ができ、一府県一連合会という行き方もこれは見方でありますから、正しい考え方だと思うのであります。けれども、従来の七業種の中の大半がかなり深刻な経済情勢に置かれているために、すてばち的な、投げやり的な経済行動が多いものですから、それらのものを一応軌道に乗せるまでの暫定措置としては、われわれどもの考えの及ぶ限りは、やはり御協力願うより仕方がないんじゃないかと、こういうことで、全知全能を集めた結果がここへ参ったのでありますから、どうか御了承願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/15
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016・椿繁夫
○椿繁夫君 全知全能というものをだいぶ傾けられたようですけれども、重要な組合運営並びにそれを指導監督する場合に、処分を決定するときには、必ず指定都市の市長の意見を通さなければならないということにする。もし議が整わざるときは、これを知事に決定権を与えないで厚生大臣の方に集約するような苦労をしたということでありますけれども、先ほどから申しますように、行政権が市長にあって、しかもその非常な権限を持つ組合の指導と監督が行政の長になくて、別の府県知事がこれを持つということは、私はどうしても、先ほどから指摘されているように、これは筋が通らぬと思う。なるほど政令にゆだねて、指定都市の市長の意見を聞かなければならぬようには配慮されたようでありますけれども、法律的な裏づけというものが否認されているわけですから、自治法の改正の趣旨と非常なへだたりがあるように私は考えます。ですからこれは重ねて一つ……。御苦労を煩わしたことはわかりますけれども、筋が通らぬように思うので、重ねて所見を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/16
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017・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 先ほども次官からお話があったと思うのですが、組合の事業の重要な部分として、水準の保持ということ、あるいは基準の設定ということが非常に大きなウエートをもっているわけであります。こうしたものが、それでは現在地方自治法に権限が委譲されたから、それじゃ水準の保持とか基準の設定というものを全部市の方に委任したという形でなしに、実際は府県単位でこれらの指導にあずかっておるわけです。いずれにしましてもお説のように、もう法律の裏ずけがあるのだからそのようにしなさいと言われればそれまでだと思うのです。けれども、そうしたのでは、せっかくこれだけの中小企業者の中の零細企業者の経済活動等についても保護育成したいという法律の趣旨を生かすためには、地域的にごく小部分で差が生じても困る、一応スタートだけはスタート・ラインに並ばせることが必要じゃないか、こういうことで全く苦労をした点でございますので、この点は曲げて御賢察をお願いすると申し上げるよりほかないと思うのでございます。さらにまた、おそらく御満足がいかぬことだろうと思いますが、行政面から実情については環境衛生部長からでも一応御説明願いまして、実態に即した行き方をとっていただくよりほかないと思います。よろしくお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/17
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018・椿繁夫
○椿繁夫君 それは承知しておりますよ。衛生部長より……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/18
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019・千葉信
○委員長(千葉信君) 衛生部長の答弁を聞きますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/19
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020・椿繁夫
○椿繁夫君 はい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/20
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021・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) ただいま政務次官からお答えを申し上げた通りでございまして、一応私ども地方自治法の改正の場合に、水準の保持並びに基準の設定というようなことは、従来通り府県の事務として残すということでお互いに了解が成立したわけでございます。ところが、この組合は組合活動のうちの重要な部分として水準の保持、基準の設定というようなことがございますので、ただいまるる御答えがありましたような結果になったものと存じます。なお御指摘のように、なるほどこの常時の監視、許認可、その他の行政事務は確かに市長に委任をされております。市長の権限となっております。そこで両者が関係してこなければならぬ仕事だと私どもは考えますので、そこで政令の段階におきまして府県知事の専行とせずに必ず市長の同意を得てものを処理する、こういうことにいたしまして、両々相待って進んでいくという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/21
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022・山下義信
○山下義信君 この問題は重大な問題であると同時に、すでに委員長から御報告のありましたように、地方行政委員会からの申し入れ事項もありますので、論議はあとに残ると思いますが、ともかくも実際は競争の行われている地域で組合を作って、そして何も府県一区域というように知事が基準を決定をするからといって、それだけに広範な府県単位にするということは、これは実情に私どもはそぐわぬと思う。また先ほどの野澤委員の御答弁の中に支部を置くことはあるいはそういう点も考えられないではないが、しかし、支部で組合を作って府県の連合会を作るということはどうかと思うというお言葉があったが、私は支部という考え方はそれだけには限らぬと思うのです。支部の組合、まあ支部というとおかしいが、地域組合を作らせて、それを府県単位に積み上げていくというのでなくして、私どもはそういう行き方が一つ考えられると思うのですが、そういう行き方でなしに、かりに原案のごとく、府県単位に一組合であるとしても、実際の運営上は支部がなければ、つまり支部組合という意味でなしに、あるいは郡単位あるいは市町村単位か何かに支部がなければ、実際に府県単位という膨大な組合をどう運営していきますか。その総会を開くといっても、いろいろ総代会などの総会にかわるべき構想もあるようではありますが、その組合の運営をするに当っては、やはり組合の支部というようなことも考えなければならぬと思いますが、しかし、法律の上には支部設置というものは認められていない。こういう点は運営上どう考えておられますか。提案者の野澤議員に伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/22
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023・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) ごもっともでございまして、この点につきましては、当然同一人格のもとにおける支部の運営上の必要さというものは当然起きてくるだろうという想定のもとに話し合いをいたしております。ただし、別個の人格を持った地域組合を作るというような考え方は、この際、業者の特性から考えてみても一応避くべきではないか。こういうことを府県単位に要約されたのでございますので、御了承を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/23
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024・山下義信
○山下義信君 府県単位については、今申し上げましたような幾多の意見もあるわけでございますが、私が納得がいきませぬのは、全国単位の連合会を作るということは、どういう御趣旨でございましょうか。何の必要があって全国を通じて一個の連合会を作る。これは法の五十三条でありますか、こういう規定を作られるのはどういう趣旨でこの連合会を必要とされるのか。この御趣旨を承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/24
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025・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) これは法文にもあります通りに、厚生大臣の認可事項の中に連合会で行うべき仕事の中で、最も大きく取り上げられていますのは、適正化基準でございます。各都道府県でこの基準が異なったような出発をいたしますというと、環境衛生という面からみまして、行政上非常にやりにくいというような考え方からいたしまして、二段階にこの適正化の行き方を分けたわけでございます。つまり各都道府県にアンバランスができないように、連合会では適正化基準を設けて、今度は省都道府県ではその適正化基準に従って適正化の規定を設ける、こういうふうに二段階に分化いたしまして、府県別にアンバランスの生じないようにしていくことが必要ではないか、これが骨子でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/25
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026・山下義信
○山下義信君 私どもは環境衛生関係の法規におきましては、基準の設定は都道府県にゆだねる、都道府県条例をもってそれぞれの基準を設定することになっておりまして、全国一定の基準を定めるということになれば、各地域の実情に沿う基準は作られぬのであって——全国一定の基準を作るということと、各府県の実情に沿うような基準を作らせるという考え方とは違うのです。また、全国を一本にする——競争も何も行われておりませんし、全国一本に価格をきめなければならぬという必要性も私どもにはどこにあるかわからない。関連のある団体法におきましては、御承知のごとく、サービス業については、全国一本の組合を作ることは除外されてある。向うの団体法における考え方はこういうサービス業などというものは、何も全国一本にする必要はないのだという考え方でこの法案が組まれてある。こちらの方では、全国一本に組合を作っていこうという、私はその必要性につきまして今御答弁がありましたが、どうも納得がいかない気がするのです。こういうものをお作りになるゆえんのものは、実際の真意は別にあるのじゃないか。つまり、言えば、これは各府県ごとに同業組合を作らせ、この連合会を、一本の中央で総連合会を持つ、そこを一つつかみさえすればすべてこの営業のコントロールができる、こういうことを考えられたならば私は幾らか納得ができる。なるほど便利がいい、統制をするのにはごく便利がいい。各都道府県の同業組合を動かすということはめんどうですけれども、だんだんと次第順序を経なければ操作がむずかしいが、しかし、連合会を一本に、中央で全国一単位のものを作らせる、それを把握すれば網の元を握っていると同じようで、もうすぐに統制が自由自在にできるということの便利を考えられたのならば、なるほどその必要性はあろうかと思われますが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/26
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027・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) ごもっともでございますが、先ほど申し上げましたように、二段階にこの適正化の規程と基準とをというお話を申し上げましたことは、あくまでも連合会で全国一体の基準を作ってそのまま強行突破しようという考え方ではないのでありまして、つまり骨組の設計だけを連合会でやっていく、それにひさしを出したり、屋根をふいたりしますことがいわめる適正化規程でありまして、その土地の環境実情等にもマッチするように、適正化規程というものを作らせよう、なぜそれじゃそう一本にしなければならぬのかと申しますというと、これは先生もよく御存じの通り、少くともこの衛生基準というものは、日本国内で基準となるべきものは一本にしなければならぬじゃないか。けれども、そうかといって自主性を失わせたのではいけませんから、あくまでも骨組だけであって、これに肉をつけ、皮をつけるというような行き方については、その都道府県の特性を生かし、また、地域差というものも生かして、十分自主的に運行のできるようにしたい、こういうことで、全体のものと都府道県のものとを二段階に分けたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/27
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028・山下義信
○山下義信君 一応の御答弁は承わりましたが、それは第五十四条の連合会がなすべき事業の中の一部をつかまえての御答弁でございますが、要するところ、この種の業種についての指導を連合会がやる、結局全国の各都府県の同業組合に対する総指導のこれは本部ですが、ただ基準の基準たるべきものをきめるというだけの役目じゃなくして、あらゆるこの同業組合の営業その他についての総指導をやろうということが、五十四条の各号を見ますというと任務を負わされている。これは確かにそういう任務がこの連合会に負わされておるのでありまして、俗に言う統制本部、それならそれの私はよしあしは別として、多少全国一本の連合会を作ったというこの考え方に、なるほどそういうことを考えたのかということもうかがわれますが、これは私は問題なろうと思う。あるいはうがって考えると、これは一つの政治的な考えが含まれているのじゃないか、これは世間に評判が高い。この種の業者の組織を作り、この連合会を作り、統制と言いますか、こういう考え方は、やがて一面においてはそれらの同業者に自主的な運営をさせるとは言いながら、非常に官僚統制のにおいが強いと同時に、こういうことを考えたそもそもの動機は、政治的な意図が多分に含まれている。一つのこれが政党の政治基盤になり、政治勢力になる。歯にきぬを着せずに申しますというと、選挙の地盤になり得る、党勢拡張になり得るという多分の意図からこれが出発せられて、そうしてあたかも業者を保護するがごとき、利益を与えるがごとき粉飾を試みつつ、そういうにおいを発散しながら、この真の目的は、この種の業種に包含される実に数十万の零細業者をして、そうして一面に好餌をひらめかしながら、一面においては、それが政党の選挙地盤になり、政治地盤になる動機がひそめられておるのではないかということが世評に非常に高い、われわれも多分の疑義なしとはしない、これはそうでございますという御答弁も予期はいたさないのでありますが、そういう弊害に陥りやすいことだけは確かだ、弊害に陥りやすいことは確かなんでありますから、結局この種の組織をして、いかにボス化を回避するかということが裏づけになっていなければならぬのでありますが、私は端的にそういう何と言いますか、好ましからぬ目的がひそんでいるのではないかという疑念に対して、提案者からも一つ御答弁をいただいておかなければならぬ、当然これは伺わなければならぬ過程であると私は思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/28
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029・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 手きびしい御質問でございますが、これは巷間伝うるところ、さような御見解の方もあるやに私どもも聞いております。しかし、そうした政治的意図があったかないかということは過去の一つの過程でありまして、私どもとしましては、そうした世上の風評に対してはきわめて慎重な態度で今日まで審議を重ねてきております。しかもまた、最初自民党で党自体が単独提案しておったのでありますが、これと見合う社会党の方から中小企業安定法の一部改正として同一趣旨のものが上程されました。やがてそれが衆議院の委員会でいろいろと論議された結果、特にこの弱小企業とまで言われる環営法対象の七業種の業態にマッチするという建前からいけば、一党の党利党略というようなことに誤解を受けたり、また、ややもすれば誤解されやすい要素を含んではならぬ。こういうことが自民党からも社会党からもお互いに意識的にこれは話し合いが進みまして、その結果、共同提案ということで、これが最初出発した通り、自民党だけが社会党の申し入れに対して全然聞かなかった、そうして参議院まで持ち込んだということであれば、先生の御見解は正しいものとこれは了解しなければなりませんが、とにかく過去の過程においていろいろありましても、われわれが審議します過程においては、そうした過去のいざこざとか、あるいはまた、そうした雰囲気というものには何らわずらわされずに、今日の社会情勢から弱小企業を保護育成するという建前でこの環営法の提案をいたしたのでありますので、どうかその点誤解のないようにお願いしたいと存じます。
なお、ボス化のお話がありましが、この点につきましても、かなりやかましく論議されまして、どうしてボス化を防ぐか、こういうふうのことも再三取り上げられました。そのために自主的な運営を組合がしていく関係上、役員のリコール制も規定しておこうじゃないか、こういうことで役員のリコールということも一応法文の中に取り入れた次第でございますので、どうぞ御了承願いたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/29
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030・椿繁夫
○椿繁夫君 先ほど何か指定都市の市長には附加基準を設定する権限がないかのごときちょっと御発言があったように思うのですが、この十六項の移譲に基いて市長は附加的な基準をやはり設定する権限があるように私は承知しております。で、いろいろまあ先ほど組合を一府県に一つという原則をもってきておらるるのだから、これは繰り返されるのは仕方がないとしても、自治法の改正の趣旨を滅却しないために、指定都市の存するところには、二つの組合の設立を認める。そうしてその全国連合会は、連合会において十分な連絡はとれるわけでありますし、厚生大臣の統制も、おのずから私はとれるんじゃないか、こう思いますので、指定都市の存する府県には、二つの組合を認めるということに同意できませんか、重ねてお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/30
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031・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) たびたび申し上げましたように、衆議院としましては、苦心惨たんしてまとめ上げた状態でありますので、私一存で御同意しかねる状態であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/31
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032・山下義信
○山下義信君 次に、いろいろ疑義がありますが、質疑を進めますが、第九条によりまする適正化規程の設定といいますか、この問題ですね。適正化規程を定める場合の要件は、「過度の競争により、」云々と、こういうことです。それで過度の競争というのは、何を標準にして言うかということを明確にしておかなければならぬと、こう思うのです。それでその基準というのは、どういうふうに考えるか、何が過度の競争であるかということを明確にしておかなければならぬ。これは抽象的なことは承わってもしようがない、できるだけ具体的に、過度の競争とはいかなる基準をもって言うかということを明確に願わなければならぬ。たとえば理容業でいうならば、百円散髪をやっておる、これは過度の競争かどうか。たとえばふろ屋でいうならば、現在十円の入浴料金のところもある。これは過度の競争かどうか。どういう状態になったらば、どういう料金が、どういう競争が過度の競争であるか。たとえばサービスその他においても、いろいろな場合が考えられますが、その基準はどういうふうに考えているかという点を、まず提案者から承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/32
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033・野澤清人
○衆議院議員(野澤清人君) 料金のような場合に、百五十円でやるべきものが百円で実施されたら、それは過度の競争かどうかというようなお尋ねかと存じますが、まあ一般に考えらますことは、常識的な解釈以外には過度の競争の判定はないと思います。つまり商品の売買でありますならば、仕入れ価格が百円である。それが競争が激しくなって、百二十円で売っておったものが、百十円になり、百五円になるのは、これは普通の競争であります。けれども、百円のものが、九十五円になり九十円になって、その業体自体に直接ひびが入るというような状態に立ち至った場合に、これは過度の競争ということが言い得ると思うのであります。従って、料金等の場合においては、物品の販売と違いますから、いずれの線にラインを引くか、これが組合の自主的活動の分野としては、相当大きく取り上げられなければならぬ問題だろうと思います。従って、たとえば百五十円で料金がまめられたものが、その半額の七十五円なり、あるいは五十円なりで、数でこなせばよろしいというような、不当な料金で競争するというようなことは、当然これは過度の競争と考えられる。ただし、その場合に、適正な基準というものがどれだけであるかということの線の引き方によって、過度であるか過度でないかの判定がつくと思いますので、どうかこの辺のところにつきましても、十二分に行政官庁としても検討を加えておることでありまして、各業者の陳情等によりましても、厚生省自体が、今までがなり料金等で苦しんでおりますかり、もしお差しつかえなければ、厚生三局の方から、その点についての御見肝を承わっていただければ、大へんけっこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/33
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034・山下義信
○山下義信君 重大な問題でありますから、この点は厚生大臣から御答弁を願いたいと思うんです。結局コストを割らなければ過度の競争とは言えないという、これは一例でありますが、提案省は基準として一例をお述べになったのでありますが、私今日六体的に、百円理髪の場合はどうか、十円ふろ代の場合はどうか、原価を割っていなければ過度の争競と言えないかどうかという点を、一つ厚生大臣の方ではどうお考えになりますか。幸いに商工業関係には御通暁の厚生大臣でありますので、一つ過度の競争の基準いかん、具体的には百円散髪の場合いかん、十円入浴料金の場合はいかん、原価を割らぬければ過度の競争と言えないかどうか。いま一つは、原価を割っても、申し上げるまでもなく、流通機構の営業をいたしておりまするものは、営業のこつは、言うまでもなく時期を失せざることが営業のこつでありまして、どんなに勉強しても、その売買の時期を失したらば、非常な損失を来たすのでありまして、ある意味におきましては、これはいかぬ、これは売れない、これはだめだといったときには、すみやかにダンピングして、見切りを早くつけますことが、これは何と言いましても、商業経済のこつであります。従って、コストを切りましても、それはその業者のそのときの、たとえばいろいろ飲食物を早くやらなければ腐るというときなんか、これは原価を切って処分しなければ処分の方法はありせん。一体過度の競争とは、いかなる基準をもって言うかということを、一つ厚生大臣からお示し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/34
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035・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま山下委員より、過度の競争とは、一体どういうことかというようなことのお尋ねのように承わったのでございますが、これは今、山下委員もお述べになられましたように、これはやはりそのケース、ケースによって私は考えてみなければならないのではないか、利益が出ないから、直ちに過当競争だというようなことにはならないと思います。
〔委員長退席、理事山本經勝君着席〕
私もかように考えておるのでございます。すなわち、過当競争であるかどうかということは、たとえば、ある業者の数が非常に多いというような問題、そこで非常な競争が行われておる。それからまた、競争が激甚になってきて、顧客の奪い合いをして、そうして市場を混乱に陥れておる。そこでそういうような状態が続くといたしますと、どうしても営業が障害によって成り立たないというような問題がある。そこでこれは適当な処置をとるの必要があるんだというような場合に、これは過当競争というふうに見なければならないのであって、原価を割った、そこで過当競争だということには私はならないと思います。そのときのやはり事情冷々によりまして、そのケース、ケースによりまして、そうして判断をしていく、こういうことになるのではないかと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/35
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036・山下義信
○山下義信君 今の具体的に私の伺いました百円散髪、十円ふろ代は原価を割っていない、その営業者はそれで十分な利潤でその業態の維持ができるという場合には、これは過当競争とはお認めになりませんか。いかがでしょう。厚生大臣に伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/36
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037・神田博
○国務大臣(神田博君) お説の通りと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/37
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038・山下義信
○山下義信君 きわめて妥当にして明快な御答弁を得たのでありまするが、その過当競争の事態が発生して、適正化規程を設定いたしますときには、それぞれ審議会等もあることであるし、かつまた、公正取引委員会との関係が本法案には規定されてあるわけでありますが、私はなお各種の、この七種の業種につきまして、政府当局は、一々過度の競争の場合は——過当競争はこういう場合であるという、例示的な多くの基準の具体的な考え方が取りまとめられてあるかどうかという点を、楠本環境衛生部長から御答弁を願いたいと思うのです。
で、もしあれば、その一端をここで御答弁を願って、もしそれが非常に詳細なものでありまするならば、資料として御配付を願いたい、こう思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/38
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039・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) この過当競争の認定の見解、基準というものは、当初以来研究をいたしておりますが、まだ完成の段階に至っておりませんが、後ほど資料でお答えをいたしたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/39
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040・山下義信
○山下義信君 この基準はですね、本法案の非常に重要な点でありましてですね、本法が立案せられる目的の一つ一つというよりは、重要部分でありますから、すみやかに本案審議中に一つ資料を御提出を願いたい。
私はこの機会に厚生大臣に伺いたいのであります。先般、社会保障調査の一環として、実はふろ代の値上げのことを大臣に伺いました。私が少し執拗な御質問を申し上げましたが、欣然としてある程度の御意向はお示しを願ったようであります。これはどの程度世論の反響があるか、民主的に、一つのアドバルンとしてこの席でお答え下さるのがいいだろうか、しいて御見解を求めたのでありますが、了として御意向の一端を漏らされました。
〔理事山本經勝君退席、委員長着席〕
自来、世論は喧々ごうごうといたしておるのでありますが、せんだって新聞紙上を拝見いたしますというと、厚生省のふろ代の値上げの案が決定をした、近く本月、五月二十日前後には認可をする方針であるということが非常に大きく報道されたのであります。これは事実でありますか、どうでありますかという点を、この機会に承わっておきますと同時に、もしそれが事実でないと、こういうことでありますならば、今後の御方針はどういう御方針を持っておられますか、この二点をお伺いしたい。
さらに関連いたしまして、大臣はせんだって私の質問に対する御答弁の中で、場合によってはこの問題を一つ各地方々々に考えさせて、何も厚生省が、厚生大臣が無理にこれをやらなくちゃならぬということはないのであるから、実情に沿うように各府県で考えさせてもいいのだ。あるいは私は本法案の成立をお見越しになりまして、この法案が成立した後に、このふろ代の値上げの問題等も一つ本法の初仕事と言いますか、この法案によって一つこの問題の解決をはかろうというようなお含みがあったのではないかと、実は御答弁を伺いながら私は私なりに憶測をいたしたのでありますが、この点につきまして、ちょうどいい機会でございますので、問題になっておりまするふろ代の値上げに対しまする厚生大臣の御方針、また、具体的な御措置についての御予定、こういうものを一つお示しを願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/40
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041・神田博
○国務大臣(神田博君) ふろ代の値上げの申請の取扱いの問題につきまして、先般私ここにお答え申し上げたのでございますが、今の実際の実情は、そのときと私はまだ変っておらない——と申しますことは、先月一ぱいで調査を完了いたしたい、その調査の結果によって、上げるか上げないか、要するに据え置きか、多少値上げをやるかということを考えてみたい、こういう意味で、私もざっくばらんに申し上げたのでございますが、そのときなおつけ加えまして、政治的には私は上げたくないと考えております、しかし、実際において原価が高騰して、上げないことによって——実態がまあ中小企業でございますから、衛生面、あるいはまた、その他の面において、むしろ浴場を使用する方に、将来に向って御不便等があるようなことであるとするならば、これは要望をある程度聞かなきゃならぬかもしらぬ、こういうふうに答えを申し上げた次第でございますが、環境衛生部長がちょうど私があの当時答弁しておった時分には休んでおったのでございますが、私は簡単に出動できると考えておったのでございまするが、どうもちょっと病気が長くなって、途中休まれた関係上、その後、この法案の審議が私どもの考えておりまするよりも少しおくれておるというような気がいたしまして、その間そちらの方の勢力がこちらの方へ回ったと申しましょうか、そんなわけでまた実は調査の完了を見ていないような分の段階でございます。手があき次第、一つこの問題の実態を把握いたしたい、その結果によって判断をきめたい、こういうふうにやはりただいまでも考えております。そこで、今もう一つお尋ねでございました——当時私もお答え申し上げたのでございますが、ふろ屋の料金は地方地方で実情が違うのであるから、厚生大臣が全国的にA地区、B地区というようなふうにきめるよりも、これはむしろ地方にこの権限は委譲して、そして地方々々の実情に応じたふうに考えさせてはどうだろうかというような考えをもって検討いたしておる、こういうことを申し上げたのでございまして、それが、今のこの法案の通過を前提として答えたかどうかということのお尋ねでございましたが、私はこの通過と関連して実は申し上げたのではないのでございまして、現行法のままでもそういうことができるというような、一つのまあ法解釈をいたしておりまして、それによってお答え申し上げたわけでございます。この点につきましても、先般お答え申し上げました通り、そういうようなやはり考えを持ちながら、このふろ屋の料金問題を検討している、こういうふうに考えておりますので、御了承願いたいと思います。(奥むめお君「関連して……」と述ぶ)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/41
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042・山下義信
○山下義信君 そういたしますと、私の伺いました、先般新聞で報道されましたようなこの料金が厚生省でもって考えられて、もうきまって、これは実施が近くされるのだという、この新聞の報道につきましては、事実でありますか、いかがでありますか。
なお関連いたしまして、具体的に厚生省の方では、ふろ代の値上げの調査作業は一体どういうふうに具体的には進んでいるかということも、事務当局、楠本環境衛生部長から関連をして御答弁をしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/42
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043・千葉信
○委員長(千葉信君) 待って下さい。奥君、関連してやって下さい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/43
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044・奥むめお
○奥むめお君 ちょっと大臣にお伺いしたいのでございますが、この法律で衛生を順守する、衛生措置をよくするということをまあ名目にうたっておりますわけですが、今まで衛生措置のことでいろいろ取締りの監督の人が回って歩いております。これは業者が一番きらうところで、一番またおそれるところで、もううるさい人が行くから、一ぱい飲ませてしまわなきゃいかぬ、どこかへ連れ出そうとか、あるいは来るのだから早う掃除せいというようなことで、業者としては連絡をとって、非常にこの衛生監督に対して、皆が衛生的な措置をしようという気よりも、監督されることがうるさい。で、またまいてしまおうというようなことがずいぶんあっていますですよね。で、その人数も非常に少かったわけですね、取締りの。この少い人がたまたま回ってくるのを、もう魚屋でも肉屋でもふろ屋でも、もうほんと、そういう取締りの人が来るということを一番きらっていましたのよ。それがこの法律の出る前後から大へん仲よしになりましてね、ぜひ一つ役所の力で取り締り、衛生をよくしてもらいたい——私その間のいきさつがちっともわからないんですよね、大臣はね、そのそういう民間の事情をご存じでございますか。非常に衛生監督に来ることをきらっていまして、むしろお客から、消費者からおこられて、そんなにハエがいて、お前のところ困るじゃないかと、もっときれいにしなければその魚買わぬぞと、いろんなことがあったんですよ。それが急にこの法律——を業者がまあ厚生省と大へん仲よしになって、厚生省の命令一下でわれわれはどんなにも衛生がよくなるのだと言わんばっかりなんですね、そんなに今までの事情をご存じかということが一つ。それから一片の法律でそんなに衛生措置がよくなるとお考えでございますか、まずそれを伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/44
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045・山下義信
○山下義信君 議事進行。私の質問とちょっと違うようでありますので、先に私の御答弁を願って……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/45
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046・千葉信
○委員長(千葉信君) わかりました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/46
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047・神田博
○国務大臣(神田博君) ただいま山下委員から、新聞に伝えられておるふろ屋料金の改訂は厚生省の案であるかどうかという意味のお尋ねと承わったのでございますが、これは私どもの作業は目下進行中でございまして、あれはそのものではないというふうにはっきりとここで申し上げておきたいと思います。それからなお、その他の点につきましては、環境衛生部長から一つお答えをさせたいと、かように御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/47
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048・千葉信
○委員長(千葉信君) 楠本君、もう時間がありませんから簡潔に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/48
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049・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) 目下資料の整備と、それから資料を検討いたしましてこの作業を進めておる段階でございまして、上げる、上げないは別といたしまして、できるだけ早く、かような作業は終りたい、目下せっかく努力をしておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/49
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050・神田博
○国務大臣(神田博君) 奥委員にお答えいたします。ただいまのお尋ねは、この食品関係の業者が非常にまあ衛生面において欠けるところがあって、いろいろ厚生省の担当官において検査に行くことをうるさがっておったと、ところが、最近それがまあ非常になれ合ったというか、連絡がよくついておるような様子に見えるが、どうかというような意味のお尋ねのように承わったのでございますが、私はこのだんだん物が出回って参りまして、競争が激しくなって参っておりますから、結局この需要家の気分と申しましょうか、歓心を買うと申しましょうか、そういったこの清潔に衛生面の環境をよくしないとやはりお客を得ることができない。そこで最近においては、いろいろまあ店の実態等を見ますると、競って店舗の整備をやっているというようなふうに私一般的に考えておりまして、むしろまあそういう店舗の方に固定させる資金が多くなりはしないだろううかと、そのためにまあ運転資金等が困りはしないかと、資金の方はどうなるかというようなむしろ心配を持っておるようなわけでございまして、まあ一般的のこれはお答えでございまするが、漸次お客の方の人気をとる意味からいっても、衛生面というものは自発的に十分気をつけていかなければならないというようなふうに私は相なっておるんじゃないかと、そこでまあ担当官が相当の知識を持っておるといたしますれば、それらの方に指導を受けると、あるいはまた、いろいろいい情報を聞くと、改造のための意見を聞くというような意味でよく連絡がついて参っておるんじゃないかと、まあこんなふうに考えておるのでございますが、もちろんこれは一般的の考え方でございまして、あるいは多くの中でございまするから、今御指摘のような好ましくないこともいろいろ、なきにしもあらずではないかとも、これはまあおっしゃられると、そういう気もいたすのでございますが、もしそういうことがなおあるようなことでありまするならば、これははなはだ遺憾でありまするから、十分これは監督上注意いたしまして、さようなことのないように、適正な指導、監督が行われるように最善の努力をいたしたいと、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/50
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051・千葉信
○委員長(千葉信君) 御質問の中途でございますが、本日の日程の関係がありますので、本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと思いますが……。
〔高田なほ子君「委員長、この程度の前に、先ほど山下委員の質問に対して若干明確を欠く点がありますから、一言だけお許し願いたい。そうしてもう一つ資料の要求をさしていただきたい、発言をお許し願いたい」と述ぶ〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/51
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052・千葉信
○委員長(千葉信君) 奥さん、いいですか。——それじゃ高田君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/52
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053・高田なほ子
○高田なほ子君 ふろ賃の値上げの問題にからんでの御答弁は若干明確を欠くと思うのです。調査中であるということは、はなはだ当りのよい御答弁のように聞えますが、値上げをするということの前提に立つ調査と、最も科学的な適正な価格を設定しようとする調査とはおのずからからその前提が違っていると思うのです。で、現在どういう調査をされているかわかりませんが、伝え聞くところによれば、浴場者側では、すでに厚生大臣がその値上げをすると言ったことに気をよくして、かなりの値上げを前提としたような動きが露骨に現われてきているのです。従って、その調査中でありますというのではなくして、ふろ屋さんの方のこの値上げの要求に押されるような調査であるならば、そんなものは何にもならないのです。なぜならば、この石炭の値上げによってふろ賃を値上げしたというが、今度石炭の値が下ったときに値下げをしてくれるかと消費者側が言えば、そんなものはその石炭の値下げとふろ賃とは何のかかわりもないというような薄情な突っぱり方をしているところから考えて、私は今度の調査というものが、相当にその含みを持つ調査であってはならないと思うのです。特にふろ屋などは、またどこへでも業者が勝手に作ってもいいというものじゃなくて、ちゃんとあれはもう制限地域のある商売だと私は承知しております。しかも赤字冷々と言いながら、どんどんふろ屋ができていくし、高層耐火の実に堂々たるふろ屋さんが今作られつつある。そういうものが一つの赤字だ、借金だというようなことになって、ふろ屋は赤字があるというような、そういうことをもとにした調査であるならば、そうしてそれがもとになってのこの料金の設定であるような調査の方法であるならば、これまた何をか言わんやです。私は調査の前提としては、しかるべく厚生大臣のふろ賃値上げというこの言葉を白紙に返されて、最も科学的な納得のいくような調査方法をあえて御要望申し上げるために発言をいたします。何かお答えいただけますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/53
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054・千葉信
○委員長(千葉信君) 資料の要求も一緒に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/54
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055・高田なほ子
○高田なほ子君 資料の要求をもう一つさしていただきますが、これは先ほど提案者からもお話のように、前の国会では自民党提出をされ、その提出をされた後、公正取引委員会は消費者の権利を守ろうといったような立場からの意見書を出しておられるわけです。で、私はこの問題をずっと以前から実は関心を持っておったので、古い当時の新聞を拝見しまして記憶に残っておりますが、この法案を審議する上において非常に重要な意見でありますから、公正取引委員会の意見がありましたならば資料として提出してもらいたいのであります。これは新聞にも発表されたことでありますから、当然資料としてあるだろうと思うのです。お願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/55
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056・千葉信
○委員長(千葉信君) 神田厚生大臣、何か答弁されますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/56
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057・神田博
○国務大臣(神田博君) ちょっと今の高田さんのお尋ねにお答えいたしたいと思います。
何か厚生省で今やっております調査がふろ賃の値上げを前提とした調査をしておるのじゃないかという大へんまあ御心配があるようなお尋ねのようでございましたが、決してそういう意味の調査ではないのでございまして、それからまた、料金の算定に当りましては、決して——石炭の占める割合が相当多いことは御承知の通りでありますが、燃料費だけを対象としてやっているのではございませんで、各般の原価に織り込みますものを対象として調査いたしております。
それからまた、もう一つは、主婦連からもいろいろ原価についての調査の資料が参っておりますので、これらもむろん十分な参考として調査を進めることにいたしております。そこで、諸般のすべてを対象として、しかも今度の調査は現行料金制度が、いろいろとこの前も申し上げたのでございますが、これは高田委員がおられなかったので今のお尋ねがあったと思いますが、私そのとき自分の意見も加えて申し上げたのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/57
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058・千葉信
○委員長(千葉信君) 大臣簡略に……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/58
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059・神田博
○国務大臣(神田博君) たとえば、燃料だけの問題であるということなら、夏冬料金同じだということもおかしいことになるし、それからまた、おとな子供の問題も当を得ているかどうか、あるいは婦人の髪洗いの問題もどうするかといったようなことも、すべてにわたって根本的な調査をいたしていきたい。それからまた、減価償却の問題等についても、施設の関係とこれは一体をなすものでございますから、これらのものも十分考慮いたしたい、こういうことでございまして、決して値上げの陳情があったからそれだけを基礎にしてやろうということではございません。すべての事情、すべての原価を対象として、そして適正な判断をするに足る材料を得てそして考えたい、こういう意味でございますので、御了承を得たいと思います。
なお公坂からの意見を聞いたかということでございますが、これらは今のところ聞いておりません。資料等は政府委員からお答えさせることにいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/59
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060・楠本正康
○政府委員(楠本正康君) ただいま御指摘のございましたように、公取委員会から本法案に対しまして何か意見が出ておるということは、これはただいま大臣からも申し上げましたように、聞いておりませんし一向存じません。なお、当初、十分この法案は事務的には公取委員会と相談をいたしまして意見を開いております。これはむろん、この程度のものならば異議がないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/60
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061・山下義信
○山下義信君 議事進行について。ただいま高田委員から御要求になりました公取委員会に関する資料がないということならば、本案審議上非常に重大な関係がありますから、次回に、公取委員長をここにお呼び願いたいということを提案いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/61
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062・千葉信
○委員長(千葉信君) 了承いたしました。
本案に対する本日の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/62
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063・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。
速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/63
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064・千葉信
○委員長(千葉信君) 速記を始めて下さい。
それでは次に、引揚者給付金等支給法案を議題といたします。御質疑を願います。なお、衆議院における修正点に対する質疑もあわせてお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/64
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065・山下義信
○山下義信君 私は、本案に対しまする総理への御質問を申し上げます。
第一点は、この在外引揚者給付金等支給法案は、法律的の根拠はないが、政策的措置としてこの法案を提出したんだと、こういうことであります。政策的措置ということになりますと、いかなる政策であるかということをお尋ねしなくちゃならぬのでありますが、おそらく私が想像いたしまするのには、戦争の跡始末と言いますか、戦争被害者対策という政策と言いますか、そういう観点からこの種の措置をおとりになったことであろうと思うのであります。しかし、戦争被害者への対策ということになりますと総理に伺わなければなりませんのは、今日まで戦死者あるいは戦病者その他援護法関係者、その他、他の社会保障諸制度等によりまして、部分的には、また時期的にも次第順序がありまして、区々の対策は立てられましたけれども、いまだかつて歴代の内閣におきまして、戦争被害者に対する総合的政策というものを立てられ、一貫した御方針のもとにその対策が実施されたということは私ども知らないのであります。そのことを見ないのであります。そこで、今回引揚者給付金等支給法案、すなわち戦争の跡始末、広い意味における戦争被害者に対する対策という、そういう政策的観点からこの施策をなされたということになりますれば、岸内閣におかれましては、今日まで歴代の内閣のなされなかった戦争被害者に対する総合的対策というものを確立されて、これをお考えになるという御意思はないかこうかということであります。戦争被官者に対しまする、戦争の跡始末に対しまする施策としては、これでもう一切が終了したのであるかどうか。この鳥につきましては、衆議院でも御論議に相なったようでありますが、本院におきましても重ねて伺わなくちゃなりません。まだあとに残ったものがあるのかどうか、これで打ち切るのかどうか。たとえば農地改革の補償の問題でありますとか、あるいは預金の問題、あるいは古い債券の問題、なお、私どもが非常に関心を持っております動員学徒の措置の問題、あるいはまた、沖縄島民の玉砕者に対しまする援護法の措置の問題等もまだ未解決ではないかと私どもは考えるのであります。そういう点に対しまして、総理のこの戦争被害者対策についての御方針はどういう御方針を持っておられるかという点を伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/65
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066・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 戦争による被害者、これに対する対策、これを総合的にという御意見もあったようでありますが、なかなかこの被害者という言葉は、広く言えば全国民ことごとく被害者と言うこともできましょうし、なかなかこの範囲をきめます上におきましても、そういう総合施策を立てるということはなかなか困難だろうと思います。今日までいろいろその程度に応じまして、あるいは戦傷病者であるとか、戦没者の遺族等の援護法であるとか、あるいは恩給法の問題というような施策を講じて、逐次今日までやってきたのでありますが、しかし、同時に、それが年代的にも多少の相違がございますし、内容につきましても不均衡な点もあると思われますので、その是正について検討いたしたいという考えで、今回臨時恩給等調査会というのを設けたわけでございます。これらのこの調査会におきまして、今までとってきましたいろいろな措置についての不均衡な点も十分検討して、均衡が得られるようにしなければならぬと思いますと同時に、この調査会におきましては、今御指摘がありましたが、動員学徒に対する措置につきましても検討をしてもらう考えでおります。で、引揚者等に対する措置につきましては、今回のこの措置をもって一応措置を終りたいというのが政府の考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/66
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067・山下義信
○山下義信君 今私が触れましたことは、これは総理から御答弁をいただいてもよろしいのでありますが、関連いたしまして厚生大臣からでもよろしいのでございますが、沖縄島民の玉砕者に対しましての援護法の措置はもうすでに実施は終了いたしましたか。承わるところによりますと、関係者から、玉砕をいたしまして援護法の適用を受くべき者は約五万以上をこえるということで、政府の方では、あるいは一万、二万という御調査のようでありまして、その間にお話し合いがまだ済まないというようなことも開いておりますが、すべて沖縄島民の犠牲者に対しまする援護法の措置は完了いたしておりますかどうかという点を、この際伺っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/67
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068・神田博
○国務大臣(神田博君) お答えいたします。沖縄のただいまお尋ねのありました点は、現地に調査官も派遣いたしておりまして、大体大部分完了に近くなった、大半が完了していると、こういうふうな実情になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/68
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069・山下義信
○山下義信君 大半完了いたしているということはどういう意味でございますか、具体的に。その弔慰金の支給の対象等も決定して、それで逐次その弔慰金が支給されつつあるという意味でありますか。どういうことでありますか、具体的に。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/69
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070・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 沖縄におきまする戦没された軍人、軍属、一般邦人の方々につきましては、終戦後長い間こちらから離れておった関係上、今日になって実施します場合に事務的にいろいろ困難があるのでございます。そこで、内地において戦死された方々の名簿を持っております分についてはとうに済んでおります。ただ現地召集というものがありました関係上、戦死をされたという事実はわかっておりましても、その方が戦死をされたかどうかということについてははっきりした資料のない場合が多いのでございます。その資料を収集するための作業及び確認するための作業、いわば確認業務といっておりますが、これが若干おくれておりますので、これの促進を目下しているわけでありまして、現地に旧軍人の専門家を派遣いたしておりますが、それにさらに本省からも出張を命じて、現地の関係市町村当局と十分連絡をとりつつ進めているということだけ申し上げておきます。
それから一般邦人であって、いわゆる戦闘に参加されたという方も相当数あられることでありますこの点につきましても、先ほど申し上げました、身分が軍人であったか、軍属であったかということに関連いたしまして数字が違って参りますので、それをもあわせましてその作業を急いでいるような次第であります。軍人、軍属に関しましては、すでに先ほど申し上げました通り、本省において名簿を持っているものはほとんど済んでおります。現地において確認しなければならぬ分につきましても、漸次進行いたしましておりまするし、今年度からそういうふうに人員も増強いたしましたので、相当進捗するものと期待し、また、一そう努力を重ねて参りたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/70
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071・山下義信
○山下義信君 沖縄島民が、一般のシビリアンである島民が、女学生や中学生等とともに突入して玉砕をした島民に対する弔慰金を、援護法の第三十四条の適用が済んでいるかどうかということを伺っているのです。軍人軍属の明確な人たちに対する恩給法の適用は言うまでもないわけです。それで一般の島民、一緒に全滅をした島民が現地に五万とか数万とかいう話でありまして厚生省の方の調査が済んでいるのか、それに対する弔慰金の支給は済んでいるのか、どうなっているのかということを伺っているのです。生存者に対する引揚げの給付金の支給を促進するという場合でありますから、言うまでもなく、われわれは今次戦役の戦死者に準ずるような人たちへの措置も当然これは急がなければならぬことでありまして、それを伺ったのでありますが、御答弁が要領を得ない。どうなっているかということを伺っているのです。済んだかということを伺っているのです。その数は何万かということに、調査が済んだか、きまったかということを伺っているのです。まだきまらないのですかと、こういうのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/71
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072・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 作業は全部終ってはおりません。先ほども申し上げました通り、軍人軍属であったか、戦闘参加者であったかということは、これは処遇において非常に違っておりまするので、その点を確認することが非常に重要であると思います。しかもその資料は遺憾ながらないのであります。やむを得ない事情のもとにそういうことになっておるのでありまして、その点につきましては、鋭意現地の関係当局と力を合せまして、確認行為を急いでおる次第でございます。できるだけの努力は今日まで続けておるつもりでございますが、十分な成果をあげておりません状態でありまするので、今後できるだけ努力をいたしまして、早くこの作業を終るように十分努力をいたしていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/72
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073・山下義信
○山下義信君 少数の沖縄の島民が、この援護法による弔慰金のまだ支給を受けてないという人たちが、わずかな数であってもこれは重大な問題でありますが、それが数万に及んでおりまして、いまだにその支給の実施ができていないということは、総理もそこでお聞きでありまするから、これはぜひ早く一つ御決定になりまして、戦死者に準ずる被害者に対する措置でありますから政府部内におきましても御勉強相なって、これを御完了願わなければならぬと思います。
この際私は総理に伺いますが、今次戦役に動員された国民の総数、しかして戦死者、行方不明者あるいは国内及び外地で空襲その他、戦闘関係で死こいたしました戦闘員の数及び傷病者の数、これらにつきまして、政府に確たる御調査ができておりますかどうかということを伺います。また、これらの死者のうち、何らか国からの措置を受けた者がどのくらいあるかということにつきましてもお示しを願たいのてあります、
また、戦死者の寡婦、孤児等はどうなっておるかどいうことについてお示しを願いたいのであります。
これらの戦争犠牲者に対しましてはすみやかに解決をして、そうして生存者の引揚者に対する給付金等とあわせて、戦争被害者に対する跡始末を完了しなくちゃならぬのでありまするから、これらの点に対しまする政府の調査がどうなっておるかという点を承わりたいと思います。
私がこの点を特に総理に伺って、今次戦役に対するこれらの被害者の総数を総理の口から御答弁いただきたいと思うのは、特に岸総理につきましては、戦争犠牲者に対するこの跡始末については特段の御留意を願わなければならぬ筋合いがあると存じまするので、また、総理におかれても、その点十分熱意をお持ちであると存じまするので、この点を一つ御答弁を願いたい。
また、現在問題になっておって未解決になっておりまする貴金属の、およそ七百億円と言われておりまするこの未処理のこれらの貴金属の財源を戦争被害者に対しまする一切の跡始末の財源等にお考えになりますかどうですかという点をあわせて伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/73
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074・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 今次戦争による戦死者等につきましては、軍人軍属であった者、戦闘に参加した者、終戦後外地で死こした者等につきましては、当時の陸海軍省及び復員局並びに現在は厚生省におきまして調査いたしております。一般国民の戦災による被害者につきましては、昭和二十四年、当時の経済安定本部で調査したものがございます。その詳しい数字はあとで申し上げることにいたしたいと思います。
そうして戦歿者遺族、戦傷病者あるいは未帰還者等の留守家族等に対しましては、御承知のように、恩給法、遺族援護法、留守家族援護等によりまして、扶助料、遺族年金、弔慰金、傷病恩給、傷害年金、傷害一時金、留守家族手当等の支給をいたし、また、療養の給付をいたして参っておりますし、さらに、国鉄運賃の減免の措置や、あるいは遺児の育英のことも実施いたしておりますほか、母子福祉資金の貸付等、一般の社会保障制度の拡充にも努力して、これらの人々に対する処置を講じて参っております。
なお、戦時中の戦時災害による一般国民の被害に対しましては、当時戦時災害保護法によりまして、遺族給与金及び傷害給与金が支給されております。
以上申し述べましたように、戦争犠牲者に対しましては、重要施策としていろいろな方法、措置を講じてきておりますが、今後は、先ほど申し上げました、今回設置される臨時恩給等調査会におきましていろいろな不均衡等につきまして十分の審議をいたし、その結果によって、さらに措置を講じて参るというほか、一般には社会保障制度の拡充強化によりまして、特にそういう災害を受けた人々の生活の安定や、それらの人々に対する保護の方法を講じて参るようにいたしたい、こういうふうに考えております。
数字につきましては田邊局長から……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/74
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075・田邊繁雄
○政府委員(田邊繁雄君) 数字について申し上げます。軍人軍属で戦時中戦死または戦傷病死した者、及び終戦後未復員中に外地で死亡されました方々の総数は約百九十四万人、それからいわゆる動員学徒、徴用工あるいは戦闘参加者という方々で、いわゆる軍属に準ずる者として戦時中戦時災害でなくなった方々が約十万、それから終戦後外地で抑留等によって残留しておる間に死亡した一般邦人の数は、死亡処理をした数が現在まで約二十万、なお、現在未帰還となっております数は、ソ連、中共地域について約四万七千、この中には軍人軍属と一般邦人と入っております。次に、傷病者でありますが、軍人軍属で戦傷病によって、款症以上と申しますか、一定以上の不具廃疾の状態になっておる方々は約十二万、それから先ほどお話のございました、戦時中における一般の戦災死亡者等の数でございますが、かつて経済安定本部で調査したものがございますが、それによりますと、死亡者は約三十万、負傷及び行方不明者が約三十七万人。
それから今までどれだけの援護の実績をあげておるかという御質問でございますが、まず遺族援護法による裁定の状況を申し上げますと、遺族弔慰金の裁定件数は百八十八万五千件、それから遺族年金の裁定件数は百四十一万五千件、それから傷害年金等あるいは一時金が五万三千。それから軍人恩給でございますが、公務扶助料の件数が百六十万九千件、それから傷病恩給十二万三千件、なお、申し添えておきますが、遺族年金、傷害年金で裁定済みのものは軍人恩給復活以来、恩給に移行し得るものは大部分移行しております。遺族年金におきましては九割以上、傷害年金におきましても九割以上軍人恩給の方に移行しております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/75
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076・山下義信
○山下義信君 私はこの際、戦争被害者の、しかも死亡者等につきましてはしばしばわれわれもその数字等につきましては、機会あるごとに伺ったのでありますが、ここで総理とともに、今次戦役に動員をせられた国民の総数果していかん、軍人として召集せられた者、あるいは徴用工その他で産業界に動員せられた者、広い意味で今次戦役にはそういう国家の強制力によってこの戦役に動員された者がどのくらいの数になったかということだけは、この席でお互いに確認をしておくことが必要であろうと存ずるのであります。今は法的の措置を受けた数字を御報告になったのでありますが、今次戦役に動員せられた軍人軍属、及び一般の国民が軍需工場等に徴用せられた、すなわち広い意味で総動員法によって動員をせられた者を加えると、この国民の動員総数はおよそ幾ばくであるかという数字を一つ総理の口から御答弁を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/76
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077・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 軍人軍属として召集された数は約一千万と聞いております。徴用工及び学徒動員等の数字はちょっとまだ明確にわかりません。総数はちょっと今わかりかねます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/77
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078・山下義信
○山下義信君 私はこの法律案に当りましては、政府の御用意を願ったつもりでございますが、この戦役に幾ばくの国民が動員をされ、幾ばくの国民が軍人と一般国民と犠牲を受けたかということの総数は、常にわれわれは念頭を離れてはならぬと思う。その総数さえわからぬようなことでどうなるかと言わなければなりません。ことに軍需工場等に動員をせられた、当時の俗にいう産業戦士として国家の強権で働いたそれらの総数は、当時の、岸総理としてはその概数を御承知でなけらなければならない、お忘れになったのかわからぬ、私は十分それらにつきましては、大略の総数くらいはいつでも即座にお口に出るくらいに御留意を願いたいと思う。そういう総数がすぐここで大体のことが出ませんようでは、はなはだ私は遺憾に思う。
次に、伺いたいと思いますのは、この法案の審議の過程におきまして、私は忌憚なく申し上げますというと、当初政府部内においてお取り上げになるときからいたしまして、自来この法案の提出に至りまするまで、その所要資金あるいは内容等につきまして、私どもははなはだ納得しがたい節があると思うのであります。それは金額等におきましてはもとよりのことでありますが、当時新聞紙上等に伝えるところによりますというと、大蔵省は百五十億ないし二百億くらいでなけらねばいかぬ。一方関係団体におきましてはそんなことでは承知なりがたいといって、要求額が要請されておる。だんだん政府におかれましては、次第にその金額を三百億となし、三百五十億となし、四百億となし、最後には、三月五日でありますか、厚生大臣があっせんと言いますか、御尽力になって、そうして岸総理以下、またあなたの方の自民党の六役と言いますか、党首脳部がお集まりになって今日の五百億の財源にしようということに御決定になった。私はこの金額が漸次増額せられたということよりは、この過程において、政府当局あるいはその他の諸君がこの直接関係のある団体の人たちといわゆる直接取引と言いますか、いろいろによくお話し合いになるということは、私はこれはよほど注意をしなくちゃならぬことではないかと思う。勢力がある、圧力の加えることのできるそういう団体の要請に向っては、だんだんと政府がそれに追従していく、いわゆる押しまくっていけば要求がだんだんと通っていくということは、私は政治のあり万としてははなはだ寒心にたえないと思う。出すべきであるならば、初めから五百億を出したらよろしいのであります。どういうわけでだんだんと金額が増大するか。しかもその過程においては、それらの団体と直接に政府が話をする。しからば政府に向ってあらゆる要求するものが、こういうやり方をすれば要求が通るのである。正しいことであっても、正直なものであっても、押しまくるということがなけらねば要求は通らぬのであるということに相なっては、私はこれは政治のあり方としてははなはだおもしろくない傾向ではないかと考える将来とも総理はこういうやり方を何ごとにでもなさるというお考えでありますか。私はこの際世人が納得いたしませんから、世人が今回の支給法案につきましては、なかなか一部においては批判が高いのであります。それでまた、その政府と関係団体の交渉のあり方につきましても世論はきびしい筋合がございます。これは私は特に岸総理のこういうやり方に対する御所見を承わっておかねばならぬと思うのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/78
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079・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 山下委員の御指摘のありましたように、政府が外部的の強い力でもって迫ってくるならば、その要求をだんだん認めていくというような印象を与えるということはいかぬというお話に対しましては、私も全く同感でございます。ただ今回のこの問題の処置につきましては、いろいろな御批判もあろうかと存じますけれども、実は内閣にこの引揚者等の財産処理の問題につきましての審議会を作りまして、広く関係者やあるいは有識の人を入れましてこれらの結論を得たのでありまして、政府はその結論の線に従ってこの案を編成をいたしたのでございます。山下委員も御承知のように、この問題は相当古い沿革を持っております。また、これに関係をされていわゆる引き揚げの犠牲に会っている国民も多数ございまして、この問題に関して、従来相当長きにわたって、その解決を政府に陳情いたし、また、それらの団体なり、人々の間には研究もされまして、こういう方法で補償を受けべきであるとか、あるいは処理を受くべきであるというような研究等も従来あったのでございます。そういうような事態でございますから、政府がそういう審議会を設けて、それらの方々の意見も十分聞いて、そうして一つの結論を出してもらって、その結論の線に沿ってこういう案を作ったわけでありますが、その結論そのものには、実ははっきりと金額の明示はございませんで、やはり給付金を出すについては、いろいろ生活安定の点や、その人のいろいろ社会的地位等も考えて、これに対して措置をする、給付金を与えることがいい、こういうようなことになっております。それをどういうように、どういう標準できめるかということにつきましては、政府部内におきましても、いろいろな見当からこれを検討いたしましたことも当然でございます。また、先ほど申しましたようないきさつもございますので、政府の考えをこの団体のおもな人々に十分理解してもらって、そうして政府の案に協力してもらうということも、これも政治としてはとらなければならないし、また、関係者の方から言いますと、従来そういう研究もありますので、自分たちの研究に近いものを出してもらいたいという強い陳情のあったことも、これは事実であります。しかし、別にわれわれとしては、そういう意味において、各般の政治的事情も考慮してこれをきめたわけでございますので、自然その間におきまして、しばしば政府の案を説明し、了解を求めるというようなことも必要であったと思います。しかし、それが今山下委員の御指摘になっておるように、結局強大な団体であり、強大な力をもって政府に迫るなら、政府が結局それの言うことを聞かざるを得ないというふうに追い込まれるものであるというような印象を与える点につきましては、これは政府として厳に注意をしなければならぬことであり、また、そうあってはならぬことであると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/79
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080・千葉信
○委員長(千葉信君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめたいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/80
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081・山下義信
○山下義信君 いま一点、簡単でありますから……。私は顔ききが口をきけば、すぐ百億、百五十億金が違ってくるというあり方につきましては、非常に注意しなければならぬことだと思う。今総理から、今後そういうことについて注意をするとおっしゃいましたから、この点は一つ将来に期待をいたします。大へん途中で時間をとりまして恐縮であります。ただいま委員長からおしかりを受けたのでありますが、この機会に総理が、かつてお漏らしになりました三悪の追放ということは、これは非常にけっこうであります。双手をあげてわれわれといたしましても賛成をいたします。汚職、貧乏、暴力の三悪の追放、これは非常にわれわれとしても共鳴を惜しまない点であります。つきましては、この三悪追放に関しまして、総理の具体的な御所見を最後に私は承わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/81
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082・岸信介
○国務大臣(岸信介君) いわゆる私が、私の政治をやっていく根本の心がまえ、また、私の信念として三悪の追放ということを申したのであります。しかして、これをいかに具体化するかということは、いずれもこれらの問題は、考えようによりますというと、何も私が事新らしく言ったのではなくして、おれもそういうことは当然考えておると言われる方が国民の中にたくさんあるだろうと思う。また、従来の政府といえども、この三悪を是認した内閣というものはないので、どうしても汚職をなくし、あるいは貧乏をなくして国民の福祉を増進し、また、暴力をなくしていくということは、だれもが考えると思いますが、それを私は民主主義の政治を、また、平和なわれわれの国民生活、また、国際間における平和というものを増進していく上から申しますというと、この三つを、特に私の政治をやっていく心がまえの中心として、考えなければならぬという気持で、ああいう発表をいたしたわけであります。従いまして、具体的な問題につきましては今後研究を要すると思いますが、その一、二をただいま申し上げてみますというと、この貧乏の追放につきましては、一面において経済繁栄を考えなけれでならないから、各種の経済政策において、日本の経済が繁栄する政策をとりたいと思います。これにつきましては、財政の点からも、産業の点からも、あるいは外交の点からも、考えなければならぬ問題があると思います。しかし、産業が繁栄しても、国民のうちには決して、すべてにそれが潤って行き渡らないということがありますから、社会保障制度の拡充ということをぜひともやって、そうして国民がひとしく福祉を享有するようにしたいというのが、この貧乏の追放についての私の政策の方向でございます。
それから汚職の追放につきましては、これは言うまでもなく、一つは、一番根本は道義の高揚であると思います。いずれにしても政治の中枢に立つ者が、また、政治に非常に力のある政党というものが、私は国民から疑惑を持たれるようなことのないように、人事並びに運営をやっていくということが一つ、それから公務員等の汚職問題が、ろいいろ新聞等にも出る、そうして国民が行政的な面において、非常に綱紀が弛緩しているのじゃないかという何か疑いも持たれるのでありまして、さらにこの綱紀粛正についての、これも従来いろいろ何されておりますか、やはりこれは今ありますところの法規の点においても、私は相当改正しなければならぬものがあると思います。たとえば公務員の一つの例をあげますというと、背任等につきましても、一般民間よりもかえって軽いというのは、私は綱紀の粛正の見地からいりと望ましくない、これは一つの例でありますが、綱紀粛正の問題と、それから行政機構を簡素化して、責任の所在を明らかにするという方向において考えたい。
暴力の問題につきましては、これは言うまでもなく、大にしては国際的な戦争というものは、暴力の最もはなはだしいものでありますから、平和外交を推進することによって戦争をなくする、また、われわれの生活におきましても、街の暴力団等につきましては、従来も取り締りをしておりますけれども、これを徹底して、平和な善良なる国民の生活を維持するようにしていかなければならない。また、われわれはその例を示す意味において、すでに国会の運営の正常化ということを申しておますが、国会の運営につきましても、従来国民が、国会内において暴力があるというような印象を受けているということも、これは非常に間違っていることでありますから、こういうことについても、特に意を用いて参りたい、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/82
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083・千葉信
○委員長(千葉信君) 本法案に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/83
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084・千葉信
○委員長(千葉信君) 次に、労働情勢に関する調査の一環として、公共企業体等の仲裁裁定に関する件を議題にいたします。御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/84
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085・片岡文重
○片岡文重君 私はこの際、総理大臣に対しまして、この公共企業体等の仲裁裁定に関連をいたしまして、二、三お尋ねをいたしたいのでありますが、これからの——今日までもそうであります——が、これからの日本の発展を期するためには、労働者の協力がなくしてはとうていやっていけないと思います。労働者の協力を得るということは、やはり使用者側に対する労働者の信頼、少くとも不信の念を持たせるようなことがあってはならない。お互いに信頼をされるためにはお互いが誠意をもって紛争を解決し、紛争の起らないように協力をしていくべきであると考えておりますが、そのためには、やはり労働組合も今日までの運動に対して十分反省を願わなければならぬこともありましょう。政府においてもやはり真剣に謙虚な態度で反省を願わなければならないかと考えております。特に政府は権力を持っておられるのですから、たとえば今次三十二年の四月一日からの賃金に関する紛争に対しての仲裁裁定をめぐっての紛争において、公労法違反その他の公社法違反として、政府が今度大量のかつて見ない過酷な処罰をせられたようです。しかし、この大量の不当処罰をされるに当っては、その使用者側であり、また、監督者側である当局並びに政府においても、その処断を必要とする事態を惹起せしめるに至った責任というものは十分に反省されてしかるべきであると思う。で、この委員会におきましても、宮澤運輸大臣、平井郵政大臣、並びに労働大臣等に対して、しばしば御質疑を申し上げましたが、私どもとしては、当然御反省あってしかるべき事態であると考えておるにかかわらず、一言の反省のお言葉も聞くことができません。しかも今日までの過去を顧みて、そういう事態が初めてであったかと言えば、労働者が政府を信頼することのできない事態は、数々のそういう政府が少しも謙虚な気持にならないばかりでなしに、端的に言えば、労働者を、いな労働組合というものを敵視しているようなやり方と、今までのたとえば誠意をもって実行するという言葉をもって、少しも実行してこなかった仲裁裁定の取扱い等に対して惹起された不信が、今日のこの処断の原因をなしているとも考えられる。で、政府はそういう過去の歴史を考えることなしに、また、今日とった処置等についても考えることなしに、ただ権力を振りかざして処断をして労働行政終れり、こういう姿では、今後の労働組合、労働者の協力を得るなどということはもちろんできないでしょうし、誠意をもって話をするなどということは、とうてい望み得べくもないと私は考えますが、今後一体政府はどういうふうにして、この健全な労働慣行を樹立するために、政府としての政策をお持ちになっておるか、もちろん労働組合の行動、運動方針等に対してとやかく言うべき筋合いではありませんが、岸内閣の労働政策として今日見られるものは、ただ美しい言葉をもって事をごまかして、しかも機会さえあれば処罰をする、こういう結果にしか私たちには見受けられない、しかし、政府としては、まさかそうではなかろう——そうではなかろうと思いますが、私たちから見ればそうしか見えません。そこで、一つ岸内閣としては、どういう態度をもって今後この労働組合、特に公労協関係、三公社五現業の諸君に対して臨まれようとされるのか、広く日本の労働問題に対して研究をしてほしいのですが、特にこの三公社五現業の従事員諸君に対して、どういう労働行政をもって臨まれようとされるのか、まずその点をお尋ねしたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/85
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086・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 御意見のように、この労使両面においてお互いに信頼し、協力する関係ができないというと、私は産業の発達もなければ、国の繁栄も期せられないと思います。こういう意味において、労使ともに十分に相手方の立場を十分に認識して、そうして民主的にすべてのことが解決されていくという労働慣行を作っていかなければならぬと思います。そのためには、政府はこの一般の私企業に対しましては、従来もその方針でありますが、今後においてもそういう紛争であるとか、争議であるというものにはあくまでも介入をしない、そうして労使の間におけるところの団体交渉やその他の方法によって解決されることを私どもも期待をいたしております。ただ公企業体のものにつきましては、その事業が公共の福祉に関係するところがきわめて大であり、従って、その場合の争議、紛争等におきましても、労使いずれにも属せない国民大衆に非常な影響をもつことが大きい、こういう立場から、この労働組合につきましても、また、労働運動の方法につきましても、他の私企業とは違って、この争議権につきましての制限があることも御承知の通りであります。従って、それにかわるべきものとして、調停及び仲裁裁定という制度が第三者によってされる。その場合においては、公企業体のこの企業当局並びに監督の地位にある、また、この公企業体が縛られておる予算の責任を持っておる政府において、これを誠意をもってその仲裁裁定というものを実現するということは根本でなければならぬと思うのであります。
しかるに、従来その点につきましても、今御指摘のように、必ずしもそれが、過去においてそれじゃその通りの何かできておったかという点につきましては、特に労務者側からみるというと、非常な不満の点があったと私は思います。今回のこの春闘に対しましては、私は政府の首悩といたしまして、現に野党の鈴木委員長ともお目にかかって仲裁裁定を申請し、仲裁裁定があれば、これを誠意をもって実現する、これはただ単に、一応おざなりの何ではなくて、私としては完全実施することを努力する、表向きは、法制上そういうことをその当時言うことはできないけれども、私の真意はそこだというところまで実は腹を打ちあけまして、そうしてそれを私は実施することにそれ以来努めて参ってきたわけであります。同時に、やはり公企業体というものの本質からいい、また、過去の争議の場合におきましても、いわゆる実力行使という名のもとに行われることが、一般国民生活の上に非常な不便をもたらし、また、国民経済上も重大な影響を与えておるということで、ずいぶん広く国民から批判を受けておるというのにかんがみまして、そういうことが起らないようにということを、今度の春闘に際しましても、私は再三再四、あらゆる方法で労働組合の側に反省を求め、この自粛を求めてきたのでございます。しかるに、不幸にして実力行使の結果は、相当な国民に迷惑をかけたという現実が出て参りました。で、私は最初から、決して法をもってただ処罰すれば、能事足れりとは考えていないけれども、ほんとうにそういうことを将来なくし、それから国民も十分納得して、そうして公企業体を信頼する、公企業体における労使の関係に対して信頼を持つというためには、やはり違法行為、法規を逸脱しておるという者に対しては、これはやむを得ず処分して、そうして将来を戒め、将来そういうことをなくするのだ、それでよき労働慣行ができて、そうして国民がこれを信頼するというふうな基礎として、まず前提として、法規はお互いに守る、いかなることがあっても守るという、この基礎を作ることが必要であると考えておるわけでありまして、もちろん今お話しがありましたように、ただ政府は監督の立場にあり、また、法規を運用するということで、法規の適用なり、法規によって厳罰に処せば、それで能事足れりとは考えておらないのでありまして、今申したような意味において、公企業体の特質を考えつつ、労使の間において協力し、そうしていろいろな問題を、話し合いによってきめていくという、よい労働慣行を作るように、政府としてはあらゆる面から協力をしたいと、こういりふうに思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/86
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087・片岡文重
○片岡文重君 仲裁裁定を実施するということについて、予算措置を講ぜられたのは、その予算の内容の是非については別として、とにかく予算措置を講じられたということは、岸内閣が初めてであります。しかし、その予算措置を講じた、だから仲裁裁定に従ったのだということをおっしゃるようですが、これは御記憶にもなっておられると思いますが、昨年の、公労制度の臨時審議会ですか、そこで答申をされた審議会の答申を見ましても、給与については、企業当局の自主性をできる限り認めるようにすべきである。この答申に基いて、各公社の公社法というものは改正をされました。ところが、今度の補正予算の内容を見ますると、この企業当局の自主性で、わずかに使用できる予算総則を、基準外賃金、基準内賃金と、画然と区別をして、その間の移流用を禁止する立場をとっております。これは明らかに仲裁裁定の本旨をじゅうりんするばかりでなしに、この各公社の公社法を改正したその趣旨をじゅうりんしておられるのです。こういう措置をとっていながら、なるほど仲裁裁定を重んじて予算の措置を講じた。そういうことで予算の措置を講じたと言っておきながら、その予算措置の内容というものは、その公労法というものを全くじゅうりんしたやり方をとっておる。こういうことで、こういう詳しいことを知らない国民大衆は、岸内閣は法を尊重し、労働者のためにも善政を施しておる、にもかかわらず、組合はひとり実力行使にのみ狂奔しておると、こういうことになると思います。しかし、私たちこの経過を承知し、その予算措置の内容を見ると、その真実が、今申し上げておる通りであるだけに、私たちとしては、ふんまんにたえない。こういうことは、しかし直接影響を受ける労働者諸君にとっては、必ずわかることです。わかってくるからこそ、政府に対する信頼というものは、ますます薄らいできます。こういうやり方を今後もなおかつ続けて、そうして誠意をもって善処すると言っておられたのでは、私たちとしては、その誠意という言葉を信ずるわけには参りません。私は今お尋ねしたその二つのうちの一つは、これから一体岸内閣は、この労働行政をどういうふうにしてやっていこうとされるのか、具体的に一つ御所見を披瀝していただきたい。この予算措置をとったと同じようなことをやっていかれるのかどうか。そういう点についても一つ触れて言及していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/87
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088・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 仲裁裁定の内容は、御承知のように、その一項としては、予算単価に千二百円を乗せることでございまして、それはそういう処置を講じております。ところが、いわゆる予算単価と実行単価との間に、相当大きな開きがある。一部におきましては、その開きをやみ給与というような言葉ですらこれというようなものもできるほど、給与にこれは一つのギャップができておる。こういうことは、給与体制としておもしろくないから、これをなくするように努力しようということも、仲裁裁定の趣旨でございますかに述べられておるわけであります。そういう意味において、決してこの基準内賃金と基準外賃金との移流用を絶対に禁止しておるというわけではございませんで、その場合においては協議するということになっておりまして、従って、そういう事態をなるべく将来大きく発生せしめない意図から出ておるわけであります。しかし、公企業体といたしまして、一体公企業体の、一面においてこの公企業体ができ上った趣旨から申しまして、これに自主性を認めていくということが一方においては必要であります。一方においては、やはり公企業体の性質上、予算というものに縛られる、予算の制約を受ける、この間において、どういうふうにその間を調整するかというのが、この公社制度の私は大きな一つの問題であると思います。現在の制度が最も妥当であり、これが唯一の方法とも考えません。従って、その問題に関しては、十分一つ検討を将来加えて参りたいと思います。これは公社制度そのものについての考えであります。それで労働関係につきましては、これは言うまでもなく、この労働問題につきましては、労使双方の話し合いということを尊重して、それでものが解決していく慣行を作っていくということが、私はすべての、この公企業体といわず、それから一般私企業といわず、これが中心をなさなければならない。これによってこの労務者の生活も安定し、向上して、その能率もあがって、使用者側との協力関係が一そう緊密になって、そうして産業が発達し、繁栄するというふうに持っていかなければならぬのでありますから、そういう意味において、各般の労働制度につきまして、組合制度につきましても、あるいはその他の賃金制度につきましても、政府としては考究をして参りたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/88
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089・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は総理に二、三の点について伺いたいのであります。
まず第一点に伺いたいのは、今も片岡委員の、今後の岸内閣の労働行政についてのお話がありました。私は一方から見れば、公社に自主的にあらゆる権限をまかしていきたいというのが、今まで労働大臣その他の大臣からお聞きをしておるわけであります。そこで私は見まするに、その三公社五現業の労働者は、争議権というものを禁止されておる。片方には一切の経営の権限がまかされておって、公労法というものができて、そうしてそこで仲裁裁定という形の中で給与の問題が決定され、団体交渉というものによって身分、労働条件の確定がされるということであります。問題は、私はその今の法律だから従わなければならぬということをよくお聞きするのですけれども、実質的にこの三公社、五現業の労使関係を円滑に行い、そうしてよき慣行を作っていこうとすれば、何といってもこの仲裁、最終的には仲裁というものに従うという形のものが双方の責任において行われるということを私は確立しなければならぬ、ところが、今の公労法の建前から見ると、予算上資金上云々ということで、公労法の三十五条を見ますと、明確にこの仲裁に従うということを書きながら、最後に予算上資金上ということで規制を受けている、こういうものの考え方を私はこの前この委員会でお尋ねしたところが、世界の中でインドだけがそういう制度をとっている、国際的には仲裁の概念というものは、尊重することじゃなく、従うということが明確に確立しなければならぬと私は思うのであります。そういうことが十六条と三十五条によってしり抜けになっている。こういうものが今まで七回も仲裁裁定がたな上げされておる、実施されなかった、今度の予算単価と実行単価の問題を見ますと、労働組合と当局とが明確に団体交渉で協定をしたままで、今度の裁定によってさっ引いていくというような格好、内容を見ると、将来この処理をすると書いておきながら、引いていくという問題が出てきているわけです。私はこの問題を追及するのではありませんけれども、労働行政の、労働者の罷業権をとったという立場からすれば、私はこの公労法の改正というものを実質的に仲裁裁定の概念に従うという形にされることが労働行政のよき慣行を作る第一条件であろうと思うのです。そこの点について、まず第一に岸総理の御意見を伺いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/89
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090・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 私も大体藤田会員の御見解と同じ考えを持っておるのでありますが、公企業体につきましては、この争議権が制限されております。従って、他の私企業の場合と違って、それじゃ団体交渉してまとまらなかったらどうなるかという最後のけじめとしては、最後の何としては仲裁裁定だと思います。この制度があるのでありますから、この制度で公平なる第二者がこの仲裁裁定をしたことに対しては、政府も労使双方もみんなこれに服従するということで、それで争議の終末をつける問題だと思います。それでなければ、一体仲裁裁定というものの意義が私はないと思います。そういり意味において、私はこれはどんな困難があっても普通のイージー・ゴーイングではむずかしいことであっても、特に政府としてはやらなければいかぬというのが私の今回の所信であり、そういうふうな意味において処したのでございまして、仲裁裁定の内容等につきまして、多少解釈上の見解を異にする点があることははなはだ遺憾でありますけれども、私はそういう精神で完全に実施するという意味で、実は将来のよき慣行を作る上においてはそうしなければいかぬ、それが出発点になるという考えでおります。公労法を直ちに今改正して十六条をなくするかどうかにつきましては、なお研究の余地があると思いますけれども、それがありましても、私が今申すようなことの慣行を作ることが将来の問題の基礎になる、こう思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/90
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091・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私はもう二点お伺いしますが、もうおしまいですからしばらく……。(「だいぶ時間が超過している。」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/91
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092・千葉信
○委員長(千葉信君) 私語を禁じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/92
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093・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 今の公労法の三公社五現業というのは、何といっても現業だと思うのです。そうなると、たとえば林野庁の現業には、山できこりをしているような人が多い。たとえば郵政の郵便屋さんがほんとうにそういう形で、普通の一般の労働者の仕事とちっとも変らない仕事をしておられる、それに今の法では政治活動の制限を行なっているわけです。ここにも禁止事項としてありますけれども、この際、私は関連して伺っておきたいのだが、こういう三公社五現業の、公社は政治活動は一切許されているが、現業の方に政治活動の制限がされているということ。現業庁として仕事は一般の経営と同じ形で行われておるわけであります。非常に不合理だと思う。岸総理はこの点についてどういう考えをお持ちになっておりますか、一つ聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/93
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094・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 五現業につきましては、これは一体三公社五現業のいわゆる公企業というものが一般の私企業とは違ったものであり、また、三公社五現業の間にも、政府が直接に経営しておる事業と、公社という形態をとっておるということのために、やはりすでにそこにおのずから私はいろいろな点において差異があると思います。従いまして、私は今この五現業について、その仕事が現業であるがゆえに、直ちに政治活動をこれに許すべきだという藤田委員の御意見に対しましては、私直ちにまだ御賛成を申し上げるわけにいかないのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/94
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095・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 最後にお聞きしておきたいのですが、これはもう根本的な問題なんです。憲法論から発していけば、二十八条の問題で、労働者に罷業権を与えるということになるのですけれども、三公社五現業の公共企業体ですね、公共企業体に、民間の公共事業でも一定の予告制限その他によって、労調法の関係で、残念ながら制限があるのですけれども、三公社五現業の労働者に罷業権を与え、今の民間の労調法にも関係しておるような形で罷業権を与えて、そうして団体交渉と今の仲裁の、岸総理が御返答になりましたような仲裁という問題が、民間では任意仲裁になっております。私は調停あっせんという形で、罷業権を認めるという形が、私はやはり独立した企業における労使の関係の、罷業権を与えるということが出発点でなかろうか。私は外国を見ましても、鉄道や郵便その他に罷業権が与えられているということは、先進国はほとんど制限がないわけです。日本でこういうことがあるものだから、この際岸内閣はもう少し大きく、広い目でこういう根本的な問題を解決するお気持があるかどうか、ここのところをお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/95
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096・岸信介
○国務大臣(岸信介君) 今回のこの春闘に対するいろいろな各方面からの批判の中に、今藤田委員のお話のように、むしろ公企業体の労働組合にも罷業権を認めていったらいいじゃないかという御議論も私も拝見をいたしております。しかし、同時にこれは私は、決して労務者諸君を敵視するとか何とかということではございませんが、現在の日本の労働組合の発達の段階において、こういう国民生活に非常に影響の深い、影響の大きい問題について、そういう罷業権を認めて、果してうまく国民が不安を感ぜすにいけるようになっているかどうかという点につきましては、実は私まだ確信を持っておりません。理論的に言うならば、今藤田委員の言われたことは、一つの私は理論的の何としては考えられる問題ですが、しかし、日本の、これは国際的の現実と言われますけれども、やはりその国その国の国情にもよらなければならないと思いますが、私は、まださっき申したような意味において、まずこの仲裁裁定に対して、それを完全に実施する、それに服従するという慣行を作り、そうしてある程度のよき労働関係が、慣行ができるというようでないと、今のところは、私はまだ確信に到達し得ないものじゃないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/96
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097・千葉信
○委員長(千葉信君) 片岡君、時間の関係がありますので、要旨を簡単に願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/97
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098・片岡文重
○片岡文重君 簡単に伺います。せんだって労働大臣は、名古屋において、本国会終了後に、内閣に公社制度審議会を設置するということを述べておられます。この公社制度審議会を設けるということになりますれば、おそらく公社の——今日の三公社の運営をどうするかということにもなってくるでありましょうし、必然的に公労法関係の問題に触れてくると思う。そこで、この今岸内閣でお考えになっておるこの公社制度審議会というものの構想、それからいつごろ発足するのか、どういう手続をもって発足されるのか、特に国会終了後にこの設置をなさんとされる意図、こういう点についてお示しをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/98
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099・岸信介
○国務大臣(岸信介君) まだそういう公社制度審議会という一つのものを作るということは、内閣としてはまだそういうことを決定もいたしておりませんし、これは労働大臣の一つの構想として考えておることであろうと思います。まだ審議をいたしておりません。ただ私もしばしば委員会等において申し述べておるのでありますが、この公社制度というものについては、いわゆる経営の側における、さっきからも御議論がありました自主性の問題であるとか、あるいは公企業体におけるこの労務者と企業当局との関係であるとか、予算等の関係であるとか、いろいろな点において私はやはり検討を要するという、また、今後検討して参りたいということを申しておりますので、それの一つの構想として、労働大臣がそういう構想を持っておるのであろうと思いますが、内閣としてはまだきめておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/99
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100・片岡文重
○片岡文重君 労働大臣は内閣にこれを設置するということを言っておられるのですから、当然閣内においてそういう相談がなされて、その上でのまあ御発表だと思うのです。特にこれは一公社だけではなしにですね、この公社制度全体に関する大きな影響を与えるものである。その従業員によっても容易ならざる問題です。従って、もしそういう構想もないし、そういう御相談もなかったということになれば、これは個人のお考えを御発表になるのに別にわれわれがどうこう言うわけには参りませんけれども、少くとも責任ある立場にある者が、内閣にこういうものを設けるのだということをはっきりと明言をしておる、そうして公労法の改正をも並行してこれをやるのだと、こう述べておられるのですから、これは閣内においてやはり何らかの話はあったのではないかと私どもには考えられるのですけれども、そういう点には全然ないのですか。(国務大臣松浦周太郎君「私の関係ですから、私がお答えします。」と述ぶ)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/100
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101・千葉信
○委員長(千葉信君) ちょっと……まだ発言を許しておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/101
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102・片岡文重
○片岡文重君 それともう一つ——私は岸総理大臣にお伺いしております。そしてもし今のところその内容等についてお考えを持っておられないとするならば、将来——近い将来においてこれに類似するようなものを作ろうとお考えに——組閣後です—なったのかどうか、そういう点をお尋ねしたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/102
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103・岸信介
○国務大臣(岸信介君) そういう具体的の構想につきまして、閣内において——これはまあ労働大臣に聞いていただかなければなりませんが、他の国務大臣に何か話をしたかどうか知りませんけれども、内閣としてそういうことを取り上げて話し合いをしたという事実はございません。また、岸内閣ができましてから以来今日まで、そういう具体的の構想につきましてはまだ何ら触れておりませんが、ただ先ほど来申すように、私自身としても、全体的に公社制度というものを検討してみたい、また、検討してみなくちゃならぬじゃないかという考えは持っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/103
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104・千葉信
○委員長(千葉信君) 約束の時間が来ましたので、岸総理大臣の退席を認めます。
質疑を続行いたします。質疑のある方は順次発言を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/104
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105・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 労働大臣にお尋ねしたいんですが、まず第一に今の経理のおっしゃったことと労働大臣の発言の関係を一つ大臣にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/105
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106・松浦周太郎
○国務大臣(松浦周太郎君) 大体総理がお答えになったので、私は申し上げる必要はないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/106
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107・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 労働大臣は、新聞で公社制度をやるということを発表されたんじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/107
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108・松浦周太郎
○国務大臣(松浦周太郎君) 完全に国会終了後にそういうことを内閣に作ると私は申しておりません。そういうものを作る必要はあるだろうと、それで大いに検討する必要はあるだろう、ただ公労法だけを変えるという考えは持っていない、公社法をまず先に検討すべきである、それと見合ってやはり考える必要がある。また、先ほどお話があったようにですね、そういうことをするということは多数の勤労者が心配するというような方面に変えるのではなくて、お互いによりよき労働慣行なり、よりよき経営の体制を作り上げようということで、かえってそれができることの方がみんなが喜ぶ方向に行くのでなけれ改善にはならないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/108
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109・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は今岸総理の御答弁を聞いておりました。で、岸内閣はまず貧乏をなくするということを言われた。で、今の御答弁を聞いていると、いかにも、労使の間の仲裁の問題一つを取り上げてみましても、これを実施するということを建前にしなければならぬ、法律改正についてはなかなか明確に今法律改正の問題まで踏み込まれない状態にありまして、私はそういうこの閣内において労働行政という問題については、いろいろの角度からこのままでいいかどうかという御論議が私はあるものだと思っている。ところが、労働行政のほんとうの責任者でありまする労働大臣は、まあ今日たとえばこの公社ばかりじゃございませんけれども、労働基準法違反というような問題がたくさん私は世の中にあると思うのです。で私は第一に、この問題を取り上げようとしたら、私はやはり法を守るという立場からこれほど違反の大きいものはない。法を守るとするなら、労働基準監督官をたくさん置いて、そうして厳正に法を守る立場から監督をするということ、これが私は労働行政の根本であろう。片方には法を守れ守れと、法を守らぬ者は厳正に処罰すると言いながら、基準法の違反件数を見ても、これは私は国際的に何十万件という基準法の違反案件なんかは恥しくて外国には知らせられないという状態じゃなかろうかと思う。そういうことはほっておいて、そうして片方には労働者には弾圧することだけはなかなかせっせとおやりになる。ここのとろがなかなか私にはわからない。だから、まず基準法のたくさんの違反案件をどう処理しようとお考えになるか、ここから聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/109
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110・松浦周太郎
○国務大臣(松浦周太郎君) これは藤田さんもよく御存じの上にただ理論としてお聞きになることはよくわかっております。日本の労働基準法ができましたのは戦後の情勢であって、日本の産業というものの出発点は大体中小企業が中心であります。しかしながら、大企業においては大体基準法は私は守られておるものと確信をいたしております。多少の例外はあろうと思いますけれども、守られていないのは中小企業であります。
今中小企業が基準法の通りに右ならえに全部これをやりましたならば、日本の産業経済はどうなるでしょうか。私はそこのところを憂慮するものでありますから、われわれといたしては、この現在の基準法いうものを研究いたしております。臨時基準法調査会というものを作りまして、それによっていろいろ研究いたしておりますが、まだこれをどう改正するというところまで結論は出ておりません。従って、その結論が出て各企業に適応する基準法ができ上るまでは、これは摘発主義をとらず、いわゆるこの誘導主義と言いますか、協力主義と言うか、合理主義と言うか、一日でも早くこの基準法に照らして違反の出ないような方向に私どもはもっていきたいと思っておるのであります。この一つの違反もないということは申し上げません。ただそういう日本のような現状において、基準法が一律一体にできておる、中小企業がこれに準拠していくならば、経営ができないというものを大目に見て、摘発主義をとらずに現在のような方法をとっていくよりも、摘発主義をとってどんどんと罪人を出すことの方がいいか、そのことの違反と公共企業体の勤労者が汽車をとめて、かような迷惑を多数国民にかけたものと同じに考うべきものであるかどうかということは一つ御判断にまかせたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/110
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111・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私は同じであるとかないとかいう議論をしているわけじゃない。その法を守れ、法を守らなければ処断をすると言いながら、片方の方は中小企業はみなつぶれてしまうと、私はたとえば今日最低賃金の問題が非常に国民世論の中で高まっている。でこれは最低生活保障という、貧乏をなくする第一の方策だと私は思うのです。労働大臣も、厚生大臣も、ほんとうに困難な生活をしている人がたくさんあるということを認めておられる。それなら、労働大臣が今のような答弁をされるなら、なぜ政府としては、それじゃ中小企業を助成、保護育成していく方策を積極的におやりにならないのか、そういう問題が、いわゆる投融資の問題を見てもなかなかわれわれの納得するような動きをしていない。それで今のような状態をほったらかすということ、摘発主義をとらないで何とかやっていくんだと、何とか条件が備わるようにやっていくんだと言われますけれども、実際政策的にそういうことを内閣としておやりになっているのびどうか、私は非常に疑問に思うのです。だから、私は貧乏をなくし、ほんとうに労使のよき慣行を作っていこうという問題の一つとして、こういう問題は私は十分に、深刻に考えていただきたいと思うのです。それでお尋ねしているわけです。しかし、今のようなことじゃなしに、たとえば経済的な面からも、それじゃ中小企業を守っていく、そういう形の強い政府の政策的な意思がなければ、この問題はいつまでたってもふえるばかりで解消する問題じゃないと思うのですが、今の答弁だけを聞いていると非常に残念に私はその点を思います。だから私は、これとこれは同じとか何とかいう議論をいたしているのじゃありませんけれども、片一方においては非常に強い力で弾圧を……、法を守れ守れと言われますけれども、私は何も法を破ったとは思っておりません。実際に国民にあのような結果において御迷惑をかけたということについては、私ら自身としてもそれは考えるところはたくさんあります。しかし、あれを振り返って見ると、今論議の中心になっておりますように、きのうの委員会で、運輸大臣に対する質疑の中にあったように、たとえば二十三日の問題にいたしましても、それじゃ労働者が悪いのだ、私はそんなことは言えないと思うのです。そういう状態に今度の問題は動いていると思うのです。だから労働大臣もそれだけはっきりお言いになるのなら、そういう問題は総合的にお考えになって、岸内閣の政策として貧乏をなくする方針を立てていただきたいということを私は申し上げたいのです。だから、その点について御意見がありましたらお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/111
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112・松浦周太郎
○国務大臣(松浦周太郎君) 貧乏をなくすることは当然なことでありますが、その貧乏をなくすることはいろいろな面がありますけれども、やはり産業経済の発展をさせる、日本経済を発展させる以外に道はないと思うのです。それについて中小企業をほったらかしたじゃないかと言われますけれども、日本の財政経済の許す範囲内において、本年も二百七十億以上のものをふやしまして、大体千百億の国家融資、投資を中小企業にいたします。それくらいのものでは問題にならない現状なんです。けれども、そ以上急激にふやすことはできない財政状態でありますから、漸次年次を追うて、一方においてはそういう援助政策をやるとともに、他面においては中小企業団体が共同防衛の線において大企業に圧迫されないような組織も考えつつ、これはどうしてもそれはやっていかなければならないと思うのです。それをやっていかなければ、片一方だけでかけ声かけてもできないと思うのです。そうして中小企業が安定の域に達しましたならば、従って、給与も十分払うことができるし、それだけの収益があるのに払わぬというのは悪いのですから、私は現在払えと言っても払えないのが現状だと思うのです。最近における貿易の状況は、楽観の説もございますけれども、なかなかそうでもない。そこの中に競争してやっているのですから、事実調べてみると、お話のようなこの一律一体の八千円の最低賃金がやれるかどうかということは実際に調べてみたらわかると思うのです。でありますから、われわれはまず業者間の自主的な協定賃金を作って、それで地ならしをまずしていこう。それでその次に法律ができて、最低賃金を実際実施する場合においては、社会通念においても、また、それぞれの生活面においても、経営の面においても今まで四千円なり、四千五百円しか払っておらなかったものが八千円なり、八千五百円払えるということにするためには、やはり二年なり、三年なり経営改善に対する考え方を直していかなければならない。たとえば運賃に多く払っておったものを運賃が安く上るような方法を考える、あるいは経営費が多くかかっておったものを、それを集約して多くかからないようにする、それでコストを同じようにして勤労者の賃金を多くするという方向にいかなければ、暴利をむさぼっていて、今日の中小企業が安い賃金を払っているのじゃないのですから、そこを直すようにわれわれは努力いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/112
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113・千葉信
○委員長(千葉信君) 宮澤、中井両大臣も御出席中ですから、あわせて御質疑を願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/113
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114・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 私はまあきょうは公労法の問題が中心ですから、少しまだ質疑を行いたいと思うのですが、これはまあ一応あらためてやりたいと思うのです、この問題は。
そこで、私は運輸大臣にお聞きをしたいと思うのです。私は今の公社の状態、これを日本国有鉄道法というやつをずっと見てみまして、公労法と対比して今の現状というものを見ているわけでございますけれども、そこで、私はその国有鉄道というものが、今の設備、従業員が、国の動脈、産業経済の動脈である交通機関をまかなっているということは、非常に高度な神経と能力、それから経験、努力というものが私は必要とされていると思います。そこでその困難な——まあ困難という表現は別としまして、その中で努力をして、たとえば国鉄の輸送増強というよな問題をここに漸次上げていくという、それは四十四万幾らかの国鉄従業員が一体となって輸送増強その他をやっていかれるここだと思うのです。で、それはまた国民の要求するところであり、働いている人もそれだけの熱意を私は持っていると思う。そういう中で漸次その業績か上っていくという問題が出てきた場合に、今のこの公務員と、三公社五現業という格好がその業績という関係において、私は独立した業績というものの関係において、給与の面が考慮されていないのじゃないかという気がするのです。これは電電公社にも、個々の企業体において言えることだと私は思うのです。そういう場合に、その事業の業績によって給与をきめていくという、これまた業績に応じて給与を上げていくというものの考え方、私はそういう考え方に立つのですけれども、運輸大臣はどういうお考えに立っておられるか、それを伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/114
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115・宮澤胤勇
○国務大臣(宮澤胤勇君) その給与の問題ですが、戦前におきまして割合に今のような労働組合の運動というか、まあそれに縛られない自由な時代ですね、昔の——におきましては、自然と国鉄のような、割合に危険な——重労働という部分に入るかもしれません、非常な深夜作業をやり、現在御承知の通り、年々百数十人の死者を出している、これはもうほかの企業にはないことであります。ひどいときには二百人から出ております。作業の上からくる死亡、傷害を受けて死者となる、こういう仕事は自然とやはり給与の差というものがあったのであります。戦後になりまして、生活権の擁護というか、画一的な運動が起ってきた点からして、労働者の待遇というものが下の線においては一定になってきていると、こういうような場合ですから、たとえば私は他の公社の事業と国鉄のこういう仕事とは給与に差があっていいと思うのであります。しかしながら、また国鉄の仕事のうちでも、他の公社と同じように、そんなに給与を別にしなくてもいい仕事もあるのであります、国鉄の作業のうちに。ですから、給与という問題が一応今日が適当であるかどうか、さらに問題ですが、これは日本の経済全体、日本の経済力というものの持つ国民生活に対する給与の問題から出発しなければなりませんけれども、そういう点からいくと、国鉄と他の公共企業体との比較ばかりでなく、他の企業体内部においても、国鉄内部においても、私は職域、技術もしくは作業において相当な等差をつけていかなければならぬようにだんだんなってくるのじゃないか、こういうように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/115
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116・藤田藤太郎
○藤田藤太郎君 そこで私は、要するに、運輸大臣が今そういうお考えでおる、私らがこの仲裁裁定をめぐって一番やはり疑問に思っているのは、もう何回も大臣は御返答なされたと思うのだが、組合と当局とがおのおのその独立した採算によって企業の中で努力してきたことを、何か勝手に政府が処理をされるというところにわれわれは不満が今の問題でもあるわけです。むしろ運輸大臣の立場から言えば、これだけの苦労をしているんだから、今度の業績手当は一般の標準の給与のほかに、裁定が出たのですから何ですけれども、つけてやるくらいの私は指導があってしかるべきだと思う。それにいかにも賃金を安く切り下げるかどうかというような立場から今度の問題に取り組んでおられるような気がしてならないのです。だから私は、今の運輸大臣の言われたような気持というものを十分に私は国鉄の今後の業務ですね、それから経営に生かしていくように指導をしてもらいたいと思うのです。それだけ私は大臣にお願いしておきます。
今の運輸大臣にお尋ねしたことと同じことを郵政大臣にも聞きたいのです。前段の問題……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/116
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117・平井太郎
○国務大臣(平井太郎君) ただいま運輸大臣からお話がございましたので大体事は尽きると思っておるのでございまするが、私といたしましては、やはり先ほど運輸大臣がお話申し上げた通りに、当然企業体でございまするので、業績があがるということになり、また、その努力の結果が現われたというときにおきましては、これはもう当然何かそれに対して報いなければ相ならぬ、これはもう世の常でございまして、また、これなくしては働く意欲がないのであります。そこで、私の考えといたしましては、今各企業体には弾力条項という条項を認めております。これを用いて大いに業績手当も出すし、賞与も出していこうという大きな思いやりもあるのでございます。それで、われわれこれに担当しておるものといたしましては、これの運営の妙を一つ大いに発揮いたしまして、今後労働者各位に対して十分の思いやりをもって臨んでいくことにおいて、他の私企業その他との比較均衡もとれて、運営の全きを得ると、かように存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/117
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118・千葉信
○委員長(千葉信君) 労働大臣まことにやむを得ない御用事もあるようですから、本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/118
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119・千葉信
○委員長(千葉信君) 御異議ないと認めます。
本日はこれをもって散会いたします。
午後五時二十五分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/102614410X03319570515/119
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